以下、本発明の実施形態に係るエレクトレット発電素子および発電装置について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る発電素子1について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る発電素子の平面図である。
発電素子1は、図1に示すように、変位部材10(第1の変位部材)と、変位部材20(第2の変位部材)と、固定部材30とを備えている。後述するように、発電素子1では2自由度振動系が形成されている。
本実施形態では、変位部材10,20および固定部材30は、直方体形状であるが、直方体以外の形状であってもよい。また、変位部材10,20および固定部材30は、絶縁体で構成されているが、導体で構成されてもよい。
変位部材10と変位部材20は、弾性変形体41(第1の弾性変形体)を介して接続されている。変位部材10は、弾性変形体42(第2の弾性変形体)を介して取付部51に接続されている。弾性変形体41および42はいずれもX軸方向に伸縮する。変位部材10および20は、弾性変形体41および42が弾性変形することによりX軸方向に変位可能である。なお、弾性変形体41,42は、弾性変形するものであれば、図1に示すような、つる巻きばねに限られない。
弾性変形体41の一端は、変位部材10に設けられた変位支持点a1(第1の変位支持点)に接続されている。また、弾性変形体41の他端は、変位部材20に設けられた変位支持点a2(第2の変位支持点)に接続されている。
弾性変形体42の一端は、変位部材10に設けられた変位支持点a3(第3の変位支持点)に接続されている。また、弾性変形体42の他端は、取付部51に設けられた固定支持点b1(第1の固定支持点)に接続されている。
変位部材10は、変位部材20側に向いた変位面10a(第1の変位面)と、この変位面10aと反対側の変位面10b(第2の変位面)と、接続面10c(第1の接続面)と、を有する。接続面10cは、変位面10aと変位面10bとを接続する面である。
変位部材20は、変位部材10の変位面10aに対向する変位面20a(第3の変位面)と、この変位面20aと反対側の変位面20b(第4の変位面)と、接続面20c(第2の接続面)と、を有する。接続面20cは、変位面20aと変位面20bとを接続する。
図1に示すように、変位部材10の接続面10cには、エレクトレット電極層11を介してエレクトレット材料層12が設けられている。すなわち、接続面10cの上にエレクトレット電極層11が形成され、その上にエレクトレット材料層12が形成されている。このようにエレクトレット材料層12の下層には、エレクトレット電極層11が設けられている。
エレクトレット電極層11は、銅またはアルミニウム等の導体から構成されている。エレクトレット材料層12は、エレクトレット材料から構成されている。本実施形態では、エレクトレット材料層12は正に帯電しているが、負に帯電していてもよい。
エレクトレット材料層12を構成するエレクトレット材料としては、公知の高分子電荷保持材料または無機電荷保持材料を用いることが可能である。高分子電荷保持材料の場合は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が適用可能である。また、無機電荷保持材料の場合は、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物等が適用可能である。
固定部材30は、取付部59に取り付けられている。取付部59は、取付部51に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。図1に示すように、固定部材30は、変位部材10の接続面10cに対向する対向面30fを有する。この対向面30fには、エレクトレット材料層12に対向する対向電極層31が形成されている。この対向電極層31は、銅またはアルミニウム等の導体から構成されている。
変位部材10と固定部材30は、変位部材10の接続面10cと固定部材30の対向面30fが対向するように互いに平行に配置されている。
なお、発電効率の観点から、エレクトレット材料層12と対向電極層31の平面積は、図1に示すように、ほぼ等しいことが好ましい。
本願において、発電に寄与する面のことを発電面という。発電面には、エレクトレット材料層、あるいは対向電極層が設けられる。この発電面には、互いに対向する第1の発電面と第2の発電面とがある。第1の実施形態では、変位部材10の接続面10cが第1の発電面を構成し、固定部材30の対向面30fが第2の発電面を構成する。
次に、本実施形態に係る発電素子1の動作について、図2(a),(b),(c)および図3(a),(b)を参照して説明する。図2(a),(b),(c)は、本実施形態に係る発電素子1の発電原理を説明するための図である。図2(a)は、変位部材10が固定部材30に対して変位していない状態を示している。図2(b)は、発電素子1に振動エネルギーが与えられて、変位部材10が固定部材30に対して変位した状態を示している。図2(c)は、弾性変形体41および42の復元力により変位部材10が元の位置に戻ってきた状態を示している。図3(a)は変位部材10の振動の周波数特性を示すグラフであり、図3(b)は変位部材20の振動の周波数特性を示すグラフである。
図2(a)に示すように、変位部材10が固定部材30に対して変位していない状態において、対向電極層31にはエレクトレット材料層12に蓄積された正電荷に応じた量の負電荷(電子)が誘導される。なお、エレクトレット材料層12が負に帯電している場合には、対向電極層31には正電荷が誘導される。本明細書の以下の説明では、特に断らない限り、エレクトレット材料層の電荷によって対向電極層に誘導される正電荷または負電荷を総称して単に「電荷」という。
図2(b)に示すように、変位部材10が固定部材30に対して変位した状態においては、変位部材10と固定部材30との間の投影重なり面積が減少するため、対向電極層31の負電荷の一部が外部に放出される。
本願において、第1部材と第2部材間の投影重なり面積は、第2部材に投影された第1部材と、第2部材とが重なる部分の面積(重複する面積)のことである。本実施形態における投影重なり面積は、固定部材30に投影された変位部材10と、固定部材30とが重なる部分の面積のことである。
図2(c)に示すように、変位部材10が元の位置に戻ってきた状態では、変位部材10と固定部材30との間の投影重なり面積が元の大きさに戻る。このため、外部から対向電極層31に負電荷が流れ込み、対向電極層31に蓄積される負電荷が回復する。
上記のように、変位部材10が変位して変位部材10および固定部材30間の投影重なり面積が減少する場合、対向電極層31に静電誘導された電荷が発電素子1の外部に放出される。一方、変位部材10および固定部材30間の投影重なり面積が増加する場合、発電素子1の外部から対向電極層31に電荷が取り込まれる。発電素子1が振動エネルギーを受けると、弾性変形体41,42が弾性変形することにより変位部材10がX軸方向に振動し、変位部材10および固定部材30間の投影重なり面積が増減を繰り返す。これにより、対向電極層31に蓄積される電荷が増減する。その結果、発電素子1は発電を行うことができる。
発電素子1では、2自由度振動系が形成されている。すなわち、発電素子1では、変位部材10の振動に関与する共振系Iと、変位部材20の振動に関与する共振系IIが構成される。共振系IおよびIIは、共振系Iの共振周波数と共振系IIの共振周波数が異なるように構成されている。このように発電素子1は複数の共振周波数を有することから、本実施形態によれば、発電周波数帯域を拡大することができる。以下に発電周波数帯域の拡大についてさらに詳しく説明する。
図3(a)は、変位部材10の振幅を示す周波数特性を示す。周波数値fr1に大きなピーク波形P11が現れ、周波数値fr2に小さなピーク波形P12が現れている。一方、図3(b)は、変位部材20の振幅を示す周波数特性を示す。周波数値fr2に大きなピーク波形P22が現れており、周波数値fr1に小さなピーク波形P21が現れている。ここで、周波数値fr1は共振系Iの共振周波数であり、周波数値fr2は共振系IIの共振周波数である。
発電素子1に対して外部から振動を与え、この外部振動の周波数を低い方から徐々に上げてゆくと、次のような現象が見られることになる。まず、外部振動の周波数が共振系Iの共振周波数fr1に達すると、図3(a)のピーク波形P11に示すとおり、変位部材10の振動振幅が急激に増大する。このとき、変位部材10の振動の影響を受けて、変位部材20の振動も増加する。図3(b)に示す小さなピーク波形P21は、このような変位部材10の影響を受けて発生したピーク波形である。このように共振周波数fr1を有する外部振動が発電素子1に与えられると、変位部材10の振幅が急増するだけでなく、その影響で変位部材20の振幅も増加する。
続いて、外部振動の周波数が共振周波数fr1からさらに増加して、共振系IIの共振周波数fr2に達した場合を考える。この場合、図3(b)のピーク波形P22に示すとおり、変位部材20の振幅が急激に増大する。このとき、変位部材20の振動の影響を受け、変位部材10の振幅も増加する。図3(a)に示す小さなピーク波形P12は、このような影響を受けて発生したピーク波形である。このように、共振周波数fr2を有する外部振動が発電素子1に与えられると、変位部材20の振幅が急増するだけでなく、その影響で変位部材10の振幅も増加する。
なお、共振周波数fr1,fr2は、変位部材10および変位部材20の質量、ならびに弾性変形体41および弾性変形体42のバネ定数のうち少なくともいずれか一つを調整することにより、所望の値に合わせることができる。
このように、発電素子1に対して共振周波数fr1をもつ外部振動が加えられたときには、変位部材10にはピーク波形P11に示すような振幅をもった振動が生じる。また、共振周波数fr2をもつ外部振動が加えられたときにも、変位部材10にはピーク波形P12に示すような振幅をもった振動が生じる。したがって、本実施形態に係る発電素子1によれば、共振周波数fr1,fr2近傍の周波数を有する外部振動が与えられたときに効率的に発電を行うことができる。すなわち、発電可能な周波数帯域を、図3(a)に示す周波数帯域R1程度にまで広げることが可能になる。よって、第1の実施形態によれば、発電周波数帯域を拡大することができる。
次に、本実施形態に係る変形例1,2および3について説明する。いずれの変形例も第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第1の実施形態の変形例1>
第1の実施形態の変形例1について図4を参照して説明する。図4は、本変形例に係る発電素子1Aの平面図である。
本変形例に係る発電素子1Aでは、図4に示すように、変位部材20は、取付部51に対向する取付部52(第2の取付部)に弾性変形体43(第3の弾性変形体)を介して接続されている。弾性変形体43の一端は、変位部材20に設けられた変位支持点a4(第4の変位支持点)に接続されている。変位支持点a4は、変位面20bに設けられている。また、弾性変形体43の他端は、取付部52に設けられた固定支持点b2(第2の固定支持点)に接続されている。
本変形例によれば、変位部材10および20をX軸方向に安定的に振動させることができる。また、弾性変形体の数が2つから3つに増えるので、共振周波数を所望の値に調整し易くなる。
<第1の実施形態の変形例2>
第1の実施形態の変形例2について図5を参照して説明する。図5は、本変形例に係る発電素子1Bの平面図である。
本変形例に係る発電素子1Bでは、図5に示すように、エレクトレット材料層が、変位部材10ではなく、変位部材20に設けられている。より詳しくは、変位部材20の接続面20cには、エレクトレット電極層21を介してエレクトレット材料層22が設けられている。すなわち、接続面20cの上にエレクトレット電極層21が形成され、その上にエレクトレット材料層22が形成されている。このように本変形例では、接続面20cが第1の発電面を構成する。
なお、エレクトレット電極層21およびエレクトレット材料層22の材料はそれぞれ、エレクトレット電極層11およびエレクトレット材料層12と同様のものを適用することが可能である。
固定部材30の対向面30fには、対向電極層32が設けられている。なお、発電効率の観点から、エレクトレット材料層22と対向電極層32の平面積は、図5に示すように、ほぼ等しいことが好ましい。
発電素子1Bは、変位部材20の振動により発電を行う。図3(b)に示すように、変位部材20の振幅は共振周波数fr2だけでなく、共振周波数fr1でも大きくなることから、本変形例によれば、発電周波数帯域を拡大することができる。
<第1の実施形態の変形例3>
第1の実施形態の変形例3について図6を参照して説明する。図6は、本変形例に係る発電素子1Cの平面図である。
本変形例に係る発電素子1Cでは、図6に示すように、エレクトレット材料層が、変位部材10だけでなく、変位部材20にも設けられている。変位部材20と固定部材30は、変位部材20の接続面20cと固定部材30の対向面30fが対向するように互いに平行に配置されている。固定部材30の対向面30fには、対向電極層31および対向電極層32が設けられている。本変形例では、接続面10cおよび接続面20cの両方が第1の発電面を構成する。対向面30fは、第2の発電面を構成する。
接続面10cにはエレクトレット材料層12が設けられ、接続面20cにはエレクトレット材料層22が設けられている。対向面30fには、エレクトレット材料層12に対応する対向電極層31と、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層32とが設けられている。
発電素子1Cに振動エネルギーが与えられると、弾性変形体41,42が弾性変形することにより、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の第1の投影重なり面積、およびエレクトレット材料層22と対向電極層32との間の第2の投影重なり面積が変動する。これにより、本変形例によれば、変位部材10および変位部材20の両方の振動を利用して投影重なり面積の変動に基づく発電を行うことができ、発電効率をさらに高めることができる。
発電素子1Cの発電量の周波数特性について、図7を参照して説明する。図7に示すように、共振系Iの共振周波数fr1の位置に発電量のピーク波形P1(半値幅h1)が得られ、共振系IIの共振周波数fr2の位置に発電量のピーク波形P2(半値幅h2)が得られる。なお、図7では、便宜上、2つのピーク波形P1およびP2の高さや幅を同一に描いているが、実際には、個々のピーク波形P1,P2の高さや幅は、変位部材10,20の質量や弾性変形体41,42のバネ定数などの諸条件によって決まる。
また、図7の縦軸に示す発電量は、発電素子1C全体の総発電量である。すなわち、ピーク波形P1には、変位部材10の振動による発電量だけでなく、変位部材20の振動による発電量も含まれている。ピーク波形P2も同様であり、変位部材10および変位部材20の各々の振動による発電量の和を示している。
図3(a)および図7に示すように、周波数帯域R1は、周波数fr1〜fr2の範囲をすべてカバーする連続した帯域ではなく、いわば「歯抜け状態」の帯域である。したがって、fr1〜fr2の範囲の周波数をもった外部振動のすべてについて効率的な発電が行われるわけではない。しかし、周波数特性が単一のピークのみを有する発電素子の発電特性に比べれば、発電可能な周波数帯域を広げる効果が得られることになる。
また、変位部材10,20の質量や弾性変形体41,42のバネ定数を変更することにより、発電量のピークP1,P2の位置をシフトさせることが可能である。例えば、実際の利用環境において発電素子に与えられる外部振動の周波数成分が図7の周波数帯域R1よりも広い範囲に分布している場合は、図8(a)に示すように、ピーク波形P1の共振周波数fr1をより低くなるようにシフトさせ、ピーク波形P2の共振周波数fr2をより高くなるようにシフトさせる調整を行うのが好ましい。図8(a)では、ピーク波形P1の共振周波数fr1はfr1(−)に調整され、ピーク波形P1は左側にシフトしてピーク波形P1′となっている。また、ピーク波形P2の共振周波数fr2はfr2(+)に調整され、ピーク波形P2は右側にシフトしてピーク波形P2′となっている。その結果、周波数帯域R1よりも広い周波数帯域R2が得られる。この周波数帯域R2は、周波数fr1(−)〜fr2(+)の範囲をすべてカバーする連続した帯域ではなく、「歯抜け状態」の帯域である。しかし、周波数fr1(−)〜fr2(+)の範囲の周波数成分を含む外部振動が与えられた場合に、好ましい周波数特性を示すことになる。
逆に、想定される外部振動の周波数成分が、周波数帯域R1よりも狭い範囲に分布している場合は、図8(b)に示すように、ピーク波形P1の共振周波数fr1をより高くなるようにシフトさせ、ピーク波形P2の共振周波数fr2をより低くなるようにシフトさせる調整を行うのが好ましい。図8(b)では、ピーク波形P1の共振周波数fr1はfr1(+)に調整され、ピーク波形P1は右側にシフトする。また、ピーク波形P2の共振周波数fr2はfr2(−)に調整され、ピーク波形P2は左側にシフトする。その結果、2つのピーク波形は融合し、半値幅h1,h2よりも広い半値幅hhをもった融合ピーク波形PPが形成される。その結果、周波数帯域R1よりも狭い周波数帯域R3が得られる。融合ピーク波形PPが形成されることにより、周波数帯域R3は、「歯抜け状態」の帯域ではなく、周波数fr1(+)〜fr2(−)の範囲をすべてカバーする連続した帯域になる。したがって、周波数fr1(+)〜fr2(−)の近傍の周波数成分を含む外部振動が与えられた場合には、より効率的な発電を行うことができる。
実用上は、実利用環境で発生する外部振動の周波数成分を考慮して、適切な周波数特性をもつ発電素子を設計することが好ましい。そのためには、共振周波数fr1およびfr2をそれぞれ所望の周波数にシフトする調整が必要になる。また、想定される外部振動の周波数成分が全体的に高い場合や、全体的に低い場合は、周波数帯域自体を周波数軸fに沿って左側または右側に移動させる調整が必要になる。
以上、第1の実施形態およびその変形例1〜3において説明したように、接続面10cおよび/または接続面20cが第1の発電面を構成し、固定部材30の対向面30fが第2の発電面を構成する。第1の発電面には、エレクトレット電極層を介してエレクトレット材料層が設けられ、第2の発電面には対向電極層が設けられる。なお、本発明はこれに限らず、第1の発電面に対向電極層が設けられ、第2の発電面にエレクトレット電極層を介してエレクトレット材料層が設けられてもよい。したがって、一般的に言えば、第1の発電面および第2の発電面のうち、一方の面にはエレクトレット材料層が設けられ、他方の面には対向電極層が設けられている。
なお、変位部材の数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。例えば、変位部材20の変位面20bに弾性変形体を介して別の変位部材(図示せず)を設けてもよい。これにより、共振系の数がさらに増加し、発電周波数帯域をさらに拡大することができる。
<発電装置>
次に、発電素子1を備える発電装置100について、図9を参照して説明する。
発電装置100は、図9に示すように、発電素子1と、発電回路2とを備えている。発電回路2は、対向電極層31とエレクトレット電極層11との間に生じる電圧に基づいて電力を生成するように構成されている。本実施形態では、発電回路2は、ダイオードD1,D2,D3,D4から構成されるダイオードブリッジと、平滑コンデンサCとを有しており、対向電極層31とエレクトレット電極層11との間に生じる電圧を整流して直流電力を生成する。生成された直流電力は、出力端子T1,T2を介して負荷RLに供給される。
エレクトレット電極層11および対向電極層31は、発電回路2に電気的に接続されている。本実施形態では、図9に示すように、エレクトレット電極層11は、ダイオードD2のカソードとダイオードD3のアノードとの接続点Xに電気的に接続され、対向電極層31は、ダイオードD1のカソードとダイオードD4のアノードとの接続点Yに電気的に接続されている。
なお、発電回路2は直流電力に限らず、交流電力を生成して出力してもよい。例えば、発電回路2は、直流電力を交流電力に変換するインバータをダイオードブリッジに後段にさらに有してもよい。
また、発電装置100が有する発電素子は、本実施形態に係る発電素子1に限らず、変形例1〜3に係る発電素子1A〜1Cであってもよいし、あるいは、以下に説明する実施形態に係る発電素子であってもよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る発電素子1Dについて、図10を参照して説明する。図10は、本実施形態に係る発電素子の平面図である。第1の実施形態では、エレクトレット材料層と対向電極層との間の投影重なり面積を増減させることで発電を行った。これに対し、第2の実施形態は、エレクトレット材料層と対向電極層との間の距離(以下、単に「層間距離」ともいう。)を増減させることで発電を行う。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
発電素子1Dは、図10に示すように、弾性変形体42を介して取付部51に接続された変位部材10と、弾性変形体41を介して変位部材10に接続された変位部材20と、取付部51に対向する取付部52に取り付けられた固定部材30とを備えている。第1の実施形態の場合と同様に、発電素子1Dでは2自由度振動系が形成されている。変位部材10および20は、弾性変形体41および42が弾性変形することによりX軸方向に変位可能である。
第2の実施形態では、変位面20bが第1の発電面を構成している。変位面20bには、エレクトレット電極層21を介してエレクトレット材料層22が設けられている。また、対向面30fが第2の発電面を構成している。
エレクトレット材料層22および対向電極層31は、所定の基準面を挟むように配置されている。本実施形態では、エレクトレット材料層22および対向電極層31は、図11(a)に示すように、基準平面Sに平行になるように配置されている。なお、基準面は曲面であってもよい。例えば、エレクトレット材料層22が凸形状に形成され、対向電極層31が当該凸形状に勘合する凹形状に形成された場合、基準面は凸形状(または凹形状)に沿う曲面となる。
発電素子1Dでは、変位部材20は層間距離が変動するようにX軸方向に変位し、この変位動作により発電が行われる。本実施形態において、層間距離は、対向するエレクトレット材料層22と対向電極層31との間の距離である。
次に、本実施形態に係る発電素子1Dの動作について、図11(a),(b),(c)を参照して説明する。図11(a)は、変位部材20が固定部材30に対して変位していない状態を示している。図11(b)は、発電素子1Dに振動エネルギーが与えられて、変位部材20が固定部材30に対して変位した状態を示している。図11(c)は、弾性変形体41および42の復元力により変位部材10が元の位置を越えて固定部材30に接近した状態を示している。
図11(a)に示すように、変位部材20が固定部材30に対して変位していない状態において、エレクトレット材料層22と対向電極層31との間の層間距離はd1である。エレクトレット材料層22に蓄積された正電荷により、対向電極層31には負電荷が誘導される。
−X軸方向(X軸負方向)の力が変位部材20に作用すると、図11(b)に示すように、変位部材20は固定部材30から離れ、層間距離はd1よりも大きいd2となる。これにより、エレクトレット電極層21と対向電極層31から構成されるコンデンサの静電容量が減少するため、対向電極層31に誘導される電荷は減少する。反対に、+X軸方向(X軸正方向)の力が変位部材20に作用すると、図11(c)に示すように、変位部材20は固定部材30に近づき、層間距離はd1よりも小さいd3となる。これにより、エレクトレット電極層21と対向電極層31から構成されるコンデンサの静電容量が増加するため、対向電極層31に誘導される電荷は増加する。
上記のように、変位部材20が基準平面Sに対して垂直方向に(すなわち、X軸方向に)振動することにより、層間距離が増減するため発電が行われる。すなわち、発電素子1Dに振動エネルギーが与えられると、弾性変形体41,42が弾性変形することにより、エレクトレット材料層22と対向電極層31との間の層間距離が変動することにより、発電素子1Dは発電を行うことができる。
発電素子1Dでは、第1の実施形態と同様に2自由度振動系が形成されているため、第2の実施形態によれば、発電周波数帯域を拡大することができる。
次に、本実施形態に係る変形例1および2について説明する。いずれの変形例も第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第2の実施形態の変形例1>
第2の実施形態の変形例1について図12を参照して説明する。図12は、本変形例に係る発電素子1Eの平面図である。
本変形例では、変位面20bだけでなく変位部材10の変位面10bも第1の発電面を構成する。図12に示すように、変位部材20の変位面20bには、エレクトレット電極層21を介してエレクトレット材料層22が設けられるとともに、変位部材10の変位面10bにはエレクトレット電極層11を介してエレクトレット材料層12が設けられる。エレクトレット電極層11およびエレクトレット材料層12は、例えば環状に設けられる。
また、取付部52だけでなく、取付部51にも固定部材30が設けられている。いずれの固定部材30の対向面30fも、第2の発電面を構成する。取付部52に取り付けられた固定部材30の対向面30fには、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層31が設けられる。取付部51に取り付けられた固定部材30の対向面30fには、エレクトレット材料層12に対応する対向電極層32が設けられる。対向電極層32は、例えば、エレクトレット材料層12の形状に合わせて環状に設けられる。
発電素子1Eに振動エネルギーが与えられると、弾性変形体41,42が弾性変形することにより、エレクトレット材料層22と対向電極層31との間の第1の層間距離、およびエレクトレット材料層12と対向電極層32との間の第2の層間距離が変動する。これにより、本変形例によれば、変位部材10および変位部材20の両方の振動を利用して層間距離の変動に基づく発電を行うことができ、発電効率をさらに高めることができる。
なお、別の変形例として、図示しないが、変位部材10にのみエレクトレット材料層を設けるようにしてもよい。
<第2の実施形態の変形例2>
第2の実施形態の変形例2について図13を参照して説明する。図13は、本変形例に係る発電素子1Fの平面図である。
本変形例では、図13に示すように、変位部材20は、取付部51に対向する取付部52に弾性変形体43を介して接続されている。また、エレクトレット材料層22および対向電極層31は環状に設けられている。
本変形例によれば、変位部材10および20をX軸方向に安定的に振動させることができる。また、弾性変形体の数が2つから3つに増えるので、共振周波数を所望の値に調整し易くなる。
上述した第1および第2の実施形態、並びにそれらの変形例では、変位部材20は、変位部材10の外部に配置されていた。これに対し以下に説明する第3〜第7の実施形態では、変位部材20は変位部材10の内部に配置される。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る発電素子1Gについて、図14を参照して説明する。図14は、本実施形態に係る発電素子の平面図である。本実施形態に係る発電素子1Gは、第1の実施形態と同様に投影重なり面積の増減に基づいて発電を行うが、変位部材20は変位部材10の内部に配置されている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
発電素子1Gは、図14に示すように、枠状に構成された変位部材10と、この変位部材10の内部に配置された変位部材20と、取付部59に取り付けられた固定部材30とを備えている。
枠状の変位部材10は、変位内面10e1(第1の変位内面)と、この変位内面10e1に対向する変位内面10e2(第2の変位内面)と、接続内面10e3と、接続内面10e4とを有する。接続内面10e3および10e4はいずれも、変位内面10e1と変位内面10e2とを接続する。
また、枠状の変位部材10は、変位内面10e1と反対側の変位外面10f1(第1の変位外面)と、変位内面10e2と反対側の変位外面10f2(第2の変位外面)と、接続外面10f3と、接続外面10f4と、を有する。接続外面10f3および10f4はいずれも、変位外面10f1と変位外面10f2とを接続する。
変位部材20は、図14に示すように、変位内面10e1に対向する変位面20e(第1の変位面)と、変位内面10e2に対向する変位面20f(第2の変位面)と、接続面20gと、接続面20hと、を有する。接続面20gおよび20hはいずれも、変位面20eと変位面20fとを接続する。
変位部材10と変位部材20は、弾性変形体41を介して接続されている。本実施形態では、弾性変形体41の一端は、変位部材10の変位内面10e1に設けられた変位支持点a1に接続される。弾性変形体41の他端は、変位部材20の変位面20eに設けられた変位支持点a2に接続されている。
変位部材10は、弾性変形体42を介して取付部51に接続されている。本実施形態では、弾性変形体42の一端は、変位部材10の変位外面10f2に設けられた変位支持点a3に接続されている。また、弾性変形体42の他端は、取付部51に設けられた固定支持点b1に接続されている。
本実施形態では、変位部材10の接続外面10f3が第1の発電面を構成する。図14に示すように、接続外面10f3には、エレクトレット電極層11を介してエレクトレット材料層12が設けられている。また、第2の発電面を構成する対向面30fには、エレクトレット材料層12に対応する対向電極層31が設けられている。
発電素子1Gに振動エネルギーが与えられると、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の投影重なり面積が変動し、この変動により発電が行われる。また、発電素子1Gでは、第1の実施形態と同様に2自由度振動系が形成されている。よって、第3の実施形態によれば、発電周波数帯域を拡大することができる。
次に、本実施形態に係る変形例1および2について説明する。いずれの変形例も第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第3の実施形態の変形例1>
第3の実施形態の変形例1について図15を参照して説明する。図15は、本変形例に係る発電素子1Hの平面図である。発電素子1Hは、変位部材10および固定部材30間の投影重なり面積の変動による発電だけでなく、変位部材10および変位部材20間の投影重なり面積の変動による発電も行う。
本変形例では、変位部材10の接続外面10f3、および変位部材20の接続面20gが第1の発電面を構成する。また、固定部材30の対向面30fおよび変位部材10の接続内面10e3が第2の発電面を構成する。
図15に示すように、接続面20gには、エレクトレット電極層21を介してエレクトレット材料層22が設けられている。また、接続内面10e3には、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層13(第2の対向電極層)が設けられている。
発電素子1Hに振動エネルギーが与えられると、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の投影重なり面積、およびエレクトレット材料層22と対向電極層13との間の投影重なり面積が変動する。これにより、本変形例によれば、変位部材10および変位部材20の両方の振動を利用して投影重なり面積の変動に基づく発電を行うことができ、発電効率をさらに高めることができる。
なお、エレクトレット材料層22は接続面20hに設けられてもよい。この場合、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層13は接続内面10e4に設けられる。
<第3の実施形態の変形例2>
第3の実施形態の変形例2について図16を参照して説明する。図16は、本変形例に係る発電素子1Iの平面図である。発電素子1Iは、投影重なり面積の変動による発電と、層間距離の変動による発電の両方を行う。より詳しくは、発電素子1Iは、変位部材10および固定部材30間で投影重なり面積の変動による発電を行い、変位部材10および変位部材20で層間距離の変動による発電を行う。
本変形例では、変位部材20の変位面20f、および変位部材10の接続外面10f3が第1の発電面を構成する。図16に示すように、変位面20fにはエレクトレット電極層21を介してエレクトレット材料層22が設けられ、変位内面10e2にはエレクトレット材料層22に対応する対向電極層13が設けられている。
発電素子1Iに振動エネルギーが与えられると、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の投影重なり面積が変動するとともに、エレクトレット材料層22と対向電極層13との間の層間距離が変動する。これにより、本変形例によれば、変位部材10および変位部材20の両方の振動を利用して投影重なり面積の変動に基づく発電を行うことができ、発電効率をさらに高めることができる。
なお、エレクトレット材料層22は変位面20eに設けられてもよい。この場合、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層13は変位内面10e1に設けられる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る発電素子1Jについて、図17を参照して説明する。図17は、本実施形態に係る発電素子の平面図である。本実施形態に係る発電素子1Jは、第3の実施形態に係る発電素子1Iと同様に変位部材20が変位部材10の内部に配置されているが、変位部材10と固定部材30間の層間距離の増減により発電を行う点で第3の実施形態と異なる。以下、第3の実施形態との相違点を中心に第4の実施形態について説明する。
発電素子1Jは、図17に示すように、枠状に構成された変位部材10と、この変位部材10の内部に配置された変位部材20と、取付部52に取り付けられた固定部材30とを備えている。
本実施形態では、変位部材10の変位外面10f1が第1の発電面を構成する。変位外面10f1には、エレクトレット電極層11を介してエレクトレット材料層12が設けられている。また、第2の発電面を構成する対向面30fには、エレクトレット材料層12に対応する対向電極層31が設けられている。
発電素子1Jに振動エネルギーが与えられると、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の層間距離が変動し、この変動により発電が行われる。また、発電素子1Jでは、第1の実施形態と同様に2自由度振動系が形成されている。よって、第4の実施形態によれば、発電周波数帯域を拡大することができる。
なお、エレクトレット材料層12は変位外面10f2に設けられてもよい。この場合、固定部材30は、対向電極層31がエレクトレット材料層12に対向するように取付部51に設けられる。
次に、本実施形態に係る変形例1および2について説明する。いずれの変形例も第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第4の実施形態の変形例1>
第4の実施形態の変形例1について図18を参照して説明する。図18は、本変形例に係る発電素子1Kの平面図である。発電素子1Kは、変位部材10および固定部材30間だけでなく、変位部材10および変位部材20間でも層間距離の変動による発電を行う。
本変形例では、変位部材10の変位外面10f1、および変位部材20の変位面20fが第1の発電面を構成する。図18に示すように、変位面20fには、エレクトレット電極層21を介してエレクトレット材料層22が設けられている。変位内面10e2には、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層13が設けられている。
発電素子1Kに振動エネルギーが与えられると、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の層間距離が変動するとともに、エレクトレット材料層22と対向電極層13との間の層間距離が変動する。これにより、本変形例によれば、変位部材10および変位部材20の両方の振動を利用して層間距離の変動に基づく発電を行うことができ、発電効率をさらに高めることができる。
なお、エレクトレット材料層22は変位面20eに設けられてもよい。この場合、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層13は変位内面10e1に設けられる。
<第4の実施形態の変形例2>
第4の実施形態の変形例2について図19を参照して説明する。図19は、本変形例に係る発電素子1Lの平面図である。発電素子1Lは、変位部材10および固定部材30間で層間距離の変動による発電を行い、変位部材10および変位部材20で投影重なり面積の変動による発電を行う。
本変形例では、変位部材10の変位外面10f1、および変位部材20の接続面20gが第1の発電面を構成する。図19に示すように、接続面20gには、エレクトレット電極層21を介してエレクトレット材料層22が設けられる。変位部材10の接続内面10e3には、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層13が設けられる。
発電素子1Lに振動エネルギーが与えられると、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の層間距離が変動するとともに、エレクトレット材料層22と対向電極層13との間の投影重なり面積が変動する。これにより、本変形例によれば、変位部材10および変位部材20の両方の振動を利用して層間距離および投影重なり面積の変動に基づく発電を行うことができ、発電効率をさらに高めることができる。
なお、エレクトレット材料層22は接続面20hに設けられてもよい。この場合、エレクトレット材料層22に対応する対向電極層13は接続内面10e4に設けられる。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る発電素子1Mについて、図20を参照して説明する。図20は、本実施形態に係る発電素子の平面図である。本実施形態に係る発電素子1Mは、第3の実施形態と同様に変位部材20が変位部材10の内部に配置されているが、別の変位部材25も変位部材10の内部に配置されている点で第3の実施形態と異なる。以下、第3の実施形態との相違点を中心に第5の実施形態について説明する。
発電素子1Mは、図20に示すように、枠状に構成された変位部材10と、この変位部材10の内部に配置された変位部材20と、取付部59に取り付けられた固定部材30と、変位部材10の内部に配置された変位部材25(第3の変位部材)とを備えている。
変位部材25は、変位部材10の内部に配置されており、弾性変形体45(第3の弾性変形体)を介して変位部材10に接続されている。変位部材25の質量および弾性変形体45のバネ定数は、変位部材25の振動に係る共振系IIIの共振周波数が前述の共振系IおよびIIの共振周波数と異なるように設定される。
発電素子1Mに振動エネルギーが与えられると、エレクトレット材料層12と対向電極層31との間の投影重なり面積が変動し、この変動により発電が行われる。
発電素子1Mでは3自由度振動系が形成されており、第3の実施形態に比べて発電周波数帯域をさらに拡大することができる。
なお、変位部材10の内部に変位部材をさらに設けてもよい。これにより、共振系の数がさらに増加し、発電周波数帯域をさらに拡大することができる。
次に、より実際的な構成を有する第6および第7の実施形態について説明する。
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る発電素子1Pについて、図21(a),(b)および図22を参照して説明する。図21(a)は、本実施形態に係る発電素子1Pの平面図であり、図21(b)は図21(a)のX軸に沿う断面図である。図22は、図21(a)のI−I線に沿う断面図である。
本実施形態に係る発電素子1Pは、第3および第4の実施形態で説明した発電素子と動作原理はほぼ同じであるが、より実際的な構成を備えるものである。
発電素子1Pは、変位部材10として機能する枠状構造体70(第1の枠状構造体)と、固定部材30として機能する枠状構造体80(第2の枠状構造体)と、変位部材20として機能する板状構造体60とを備えている。本実施形態では、変位部材10が、変位部材20を取り囲む枠状構造体70として構成され、変位部材20が、板状構造体60により構成され、固定部材30が、枠状構造体70を取り囲む枠状構造体80として構成される。
なお、板状構造体60および枠状構造体70が変位していない状態において板状構造体60の中心が原点Oに位置するように、XYZ三次元直交座標系が定義される。XYZ三次元直交座標系は枠状構造体80に対して固定されている。
板状構造体60は、矩形状をなしており、XY平面に平行な上面および下面を有する。この板状構造体60は、その4つの角部の各々に変位支持点a21,a22,a23,a24が設けられている。なお、板状構造体60の形状は矩形状に限られるものではなく、円形状、楕円形状、多角形状、球状など他の形状であってもよい。
枠状構造体70は、図21(a)に示すように、変位内面70a1(第1の変位内面)と、変位内面70a2(第2の変位内面)と、接続内面70a3と、接続内面70a4と、変位外面70b1(第1の変位外面)と、変位外面70b2(第2の変位外面)と、接続外面70b3と、接続外面70b4と、を有する。
変位内面70a2は、変位内面70a1に対向する面である。接続内面70a3および70a4はいずれも、変位内面70a1と変位内面70a2とを接続する面である。変位外面70b1は、変位内面70a1と反対側の面である。変位外面70b2は、変位内面70a2と反対側の面である。接続外面70b3および70b4はいずれも、変位外面70b1と変位外面70b2とを接続する面である。
枠状構造体70の4つの内側角部の各々には、変位支持点a11,a12,a13,a14が設けられている。また、枠状構造体70の4つの外側角部の各々には、変位支持点a31,a32,a33,a34が設けられている。
枠状構造体80は、図21(a)に示すように、枠状構造体70の変位外面70b1に対向する固定内面80a(第1の固定内面)と、変位外面70b2に対向する固定内面80b(第2の固定内面)と、固定内面80cと、固定内面80dとを有する。固定内面80cおよび80dはいずれも、固定内面80aと固定内面80bとを接続する面である。なお、第1の実施形態における取付部51は、本実施形態では固定内面80a〜80dにより構成されていると言える。
枠状構造体80の4つの内側角部の各々には、固定支持点b11,b12,b13,b14が設けられている。
図21(a)に示すように、枠状構造体70の変位外面70b1および70b2には、凸部が設けられている。より詳しくは、変位外面70b1には変位凸部71(第1の変位凸部)が設けられ、変位外面70b2には変位凸部72(第2の変位凸部)が設けられている。変位凸部71はY軸正方向に突出し、変位凸部72はY軸負方向に突出している。なお、本実施形態では、変位凸部71および72はそれぞれ4つずつ設けられているが、これに限らず、任意の数の変位凸部を設けてもよい。
また、図21(a)に示すように、枠状構造体80には、枠状構造体70の変位凸部に対応する固定凸部が設けられている。より詳しくは、固定内面80aの、変位凸部71に対向する位置には、固定凸部81(第1の固定凸部)が設けられ、固定内面80bの、変位凸部72に対向する位置には、固定凸部82(第2の固定凸部)が設けられている。固定凸部81はY軸負方向に突出し、固定凸部82はY軸正方向に突出している。
本実施形態では、変位凸部71,72の頂面が第1の発電面を構成し、固定凸部81,82の頂面が第2の発電面を構成している。
変位凸部71の頂面と固定凸部81の頂面とは互いに対向しており、これら対向面のうち、一方にはエレクトレット材料層が設けられ、他方には対向電極層が設けられている。本実施形態では、変位凸部71の頂面にエレクトレット材料層75がエレクトレット電極層(図示せず)を介して設けられている。
固定凸部81の頂面には、対向電極層85が設けられている。この対向電極層85は、枠状構造体80上に形成された配線を介してパッドP1に電気的に接続されている。
変位凸部72の頂面と固定凸部82の頂面とは互いに対向しており、これら対向面のうち、一方にはエレクトレット材料層が設けられ、他方には対向電極層が設けられている。本実施形態では、変位凸部72の頂面にエレクトレット材料層76がエレクトレット電極層(図示せず)を介して設けられている。
固定凸部82の頂面には、対向電極層86が設けられている。この対向電極層86は、枠状構造体80上に形成された配線を介してパッドP2に電気的に接続されている。
なお、エレクトレット材料層75,76は、本実施形態では正に帯電しているが、負に帯電したものであってもよい。
パッドP1,P2は、前述の発電装置100において、発電回路2に電気的に接続されることになる。エレクトレット材料層75と変位外面70b1との間、およびエレクトレット材料層76と変位外面70b2との間に設けられるエレクトレット電極層は、弾性変形体91〜94(後述)上に形成された配線(図示せず)を介して発電回路2に電気的に接続される。
図21(a)に示すように、枠状構造体80にはストッパ突起89が設けられている。より詳しくは、枠状構造体80の固定内面80c,80d(内側面)には、枠状構造体70に向かって突出するストッパ突起89が設けられている。枠状構造体70が変位していない状態において、ストッパ突起89と枠状構造体70との間には所定の空隙寸法が確保されている。この空隙寸法は、枠状構造体70が弾性変形体95〜98に破損を生じる程まで過度にX軸方向に変位することを抑制しうる寸法に設定されている。
なお、固定内面80a,80bに、枠状構造体70に向かってストッパ突起(図示せず)が設けられてもよい。例えば、空隙寸法は、枠状構造体70がY軸方向に変位することにより、対向するエレクトレット材料層と対向電極層とが接触してショートすることを回避しうる寸法に設定されてもよい。この場合、枠状構造体70がY軸正方向に変位したときに、エレクトレット材料層75と対向電極層85とが接触しないように空隙寸法が設定される。
次に、板状構造体60、枠状構造体70および枠状構造体80間の接続について説明する。
図21(a)に示すように、発電素子1Pは、板状構造体60と枠状構造体70とを接続する弾性変形体91,92,93,94と、枠状構造体70と枠状構造体80とを接続する弾性変形体95,96,97,98とをさらに備えている。弾性変形体91〜98は、細長い線状構造体によって構成されており、図21(b)に示すように、板状構造体60および枠状構造体70,80の厚みよりも薄い。
枠状構造体70の内側の変位支持点a11〜a14と、板状構造体60の変位支持点a21〜a24とは、それぞれ1対1に対応しており、対応する変位支持点a11〜a14と変位支持点a21〜a24とがそれぞれ個別の弾性変形体91〜94によって接続されている。すなわち、変位支持点a11と変位支持点a21とが弾性変形体91によって接続され、変位支持点a12と変位支持点a22とが弾性変形体92によって接続され、変位支持点a13と変位支持点a23とが弾性変形体93によって接続され、変位支持点a14と変位支持点a24とが弾性変形体94によって接続されている。
枠状構造体70の外側の変位支持点a31〜a34と、枠状構造体80の固定支持点b11〜b14とは、それぞれ1対1に対応しており、対応する変位支持点a31〜a34と固定支持点b11〜b14とがそれぞれ個別の弾性変形体95〜98によって接続されている。すなわち、変位支持点a31と固定支持点b11とが弾性変形体95によって接続され、変位支持点a32と固定支持点b12とが弾性変形体96によって接続され、変位支持点a33と固定支持点b13とが弾性変形体97によって接続され、変位支持点a34と固定支持点b14とが弾性変形体98によって接続されている。
上記のように、板状構造体60および枠状構造体70が弾性変形体91〜94により接続され、枠状構造体70および枠状構造体80が弾性変形体95〜98により接続されることで、板状構造体60および枠状構造体70は、発電素子1Pに振動エネルギーが与えられたときにX軸、Y軸およびZ軸の全ての方向に変位することが可能である。
なお、板状構造体60および/または枠状構造体70は、枠状構造体80に対して固定されたXYZ三次元直交座標系のX軸、Y軸およびZ軸のうち少なくとも2方向に変位可能であるように構成されていてもよい。
弾性変形体91〜98は、図21(a)に示すような線状構造体から構成される場合に限られず、様々な形態をとることが可能である。例えば、弾性変形体91〜98は、湾曲または屈曲した細長い線状構造体によって構成されてもよい。このように湾曲または屈曲した形状とすることで、弾性変形体が弾性変形し易くなり、ばね定数を小さくすることができる。これにより、共振周波数を低周波数の外部振動(環境振動等)に合わせることができる。
ここで、図23を参照して、枠状構造体70の共振周波数を調整するための具体的な方法について説明する。図23に示すように、共振周波数frの調整方法は、弾性変形体の形状や材質を変える方法(すなわち、バネ定数を変える方法)と、変位部材の質量を変える方法とに大別される。
前者のバネ定数を変える方法では、弾性変形体の厚みt(Z軸方向の寸法)、幅w、長さL、材質(ヤング率E)を変える。弾性変形体の厚みtを薄くすれば、共振周波数frは低くなり、厚みtを厚くすれば、共振周波数frは高くなる。また、弾性変形体の幅wを狭くすれば、共振周波数frは低くなり、幅wを広くすれば、共振周波数frは高くなる。弾性変形体の長さLを長くすれば、共振周波数frは低くなり、長さLを短くすれば、共振周波数frは高くなる。また、弾性変形体の材質を柔らかくすれば(すなわち、ヤング率Eを小さくすれば)共振周波数frは低くなり、材質を硬くすれば(すなわち、ヤング率Eを大きくすれば)共振周波数frは高くなる。
後者の変位部材の質量を変える方法では、変位部材(すなわち、板状構造体60および枠状構造体70)のサイズまたは材質(比重)を変える。いずれの場合も、質量mを大きくすると共振周波数frは低くなり、質量mを小さくすると共振周波数frは高くなる。
なお、所望の共振周波数を得るために、弾性変形体の形状や材質を変える前者の方法と、変位部材の質量を変える後者の方法とを組み合わせてもよい。
次に、本実施形態に係る発電素子1Pの動作について説明する。
変位していない枠状構造体70にX軸方向の力が作用すると、変位凸部71(エレクトレット材料層75)と固定凸部81(対向電極層85)間の投影重なり面積、および、変位凸部72(エレクトレット材料層76)と固定凸部82(対向電極層86)間の投影重なり面積はいずれも減少する。このため、対向電極層85および86に静電誘導される電荷は減少する。その結果、パッドP1およびP2から発電素子1Pの外部に電荷が放出される。
X軸方向に変位している枠状構造体70が弾性変形体の復元力を受けて原点Oに戻ろうとするとき、変位凸部71と固定凸部81間の投影重なり面積、および変位凸部72と固定凸部82間の投影重なり面積はいずれも増加する。このため、対向電極層85および86に誘導される電荷は増加する。その結果、パッドP1およびP2から発電素子1Pの内部に電荷が取り込まれる。
このようにして、枠状構造体70がX軸方向に振動する際、パッドP1,P2から投影重なり面積の変動に基づく電力を取り出すことができる。
投影重なり面積の変動による発電は、枠状構造体70がZ軸方向に振動する際にも行われる。より詳しくは、変位していない枠状構造体70がZ軸正方向またはZ軸負方向に変位する場合、図22から分かるように、エレクトレット材料層75と対向電極層85との間の投影重なり面積、およびエレクトレット材料層76と対向電極層86との間の投影重なり面積は減少する。したがって、対向電極層85および86(すなわち、P1およびP2)から電荷が放出される。その後、弾性変形体の復元力により枠状構造体70が原点Oに戻る際には、いずれの重なり面積も増大するため、対向電極層85および86(すなわち、P1およびP2)に電荷が取り込まれる。このようにして、枠状構造体70がZ軸方向に振動する際にも、投影重なり面積の変動による発電は行われる。
さらに、枠状構造体70がY軸方向に振動する際、パッドP1,P2から、層間距離の変動に基づく電力を取り出すこともできる。より詳しくは、変位していない枠状構造体70にY軸正方向の力が作用すると、変位凸部71と固定凸部81間の層間距離は短くなり、変位凸部72と固定凸部82間の層間距離は長くなる。このため、対向電極層85に誘導される電荷は増加し、対向電極層86に誘導される電荷は減少する。その結果、パッドP1から発電素子1Pの内部に電荷が取り込まれ、パッドP2から発電素子1Pの外部に電荷が放出される。反対に、Y軸負方向の力が枠状構造体70に作用すると、対向電極層85に誘導される電荷は減少し、対向電極層86に誘導される電荷は増加する。その結果、パッドP1から発電素子1Pの外部に電荷が放出され、パッドP2から発電素子1Pの内部に電荷が取り込まれる。このようにして、枠状構造体70がY軸方向に振動する際には、層間距離の変動による発電が行われる。
以上説明したように、第6の実施形態に係る発電素子1Pは、枠状構造体70がX軸またはZ軸方向に振動する際、投影重なり面積の変動に基づく発電を行い、枠状構造体70がY軸方向に振動する際は層間距離の変動に基づく発電を行う。このように、本実施形態によれば、様々な方向の外部振動を利用して効率的な発電を行うことができる。
第6の実施形態では、第1の実施形態と同様に2自由度振動系が形成されているため、発電周波数帯域を拡大することができる。その結果、外部振動を効率良く電気エネルギーに変換することができる。
本実施形態では、図21(a)に示すように、変位凸部71と固定凸部81のペア、および変位凸部72と固定凸部82のペアがそれぞれ複数組(4組)設けられている。これにより、枠状構造体70がX軸またはY軸方向に振動する際の発電量を、ペア数が1組の場合に比べて4倍に増やすことができる。なお、ペア数は4組に限らず、任意の複数組であってもよい。
なお、エレクトレット材料層75は、変位凸部71の表面のうち、少なくとも頂面に設けられていればよいが、変位外面70b1の全面にわたって形成されてもよい。エレクトレット材料層76についても同様である。
また、エレクトレット材料層と対向電極層の配置を交換してもよい。すなわち、枠状構造体70の変位外面70b1および70b2に対向電極層を形成し、枠状構造体80の固定内面80aおよび80bにエレクトレット電極層とエレクトレット材料層をこの順に形成してもよい。
また、対向電極層85は、固定凸部81の表面のうち、少なくとも頂面に設けられていればよいが、図21(a)に示すように、固定凸部81の頂面だけでなく、固定凸部81の側面にも形成されてよい。固定凸部81の側面に形成された対向電極層85は配線として機能する。また、図21(a)に示すように、隣り合う固定凸部81の側面に形成された対向電極層同士を電気的に接続するために、固定内面80aに対向電極層が形成されてもよい。対向電極層86についても同様である。
また、接続外面70b3,70b4に変位凸部(図示せず)が設けられてもよい。この場合、変位凸部に対向する固定凸部が固定内面80c,80dに設けられる。これにより、枠状構造体70のX軸方向の振動によって層間距離の変動による発電を行い、枠状構造体70のY軸方向の振動によって投影重なり面積の変動による発電を行うことができる。
なお、枠状構造体70および80の形状は上記に限られるものではなく、円環状など他の枠形状であってもよい。
<発電素子の製造方法>
ここで、発電素子1Pの製造方法の一例についてその概略を説明する。
まず、シリコン基板等の半導体基板を準備する。半導体基板の厚みは、例えば300μmである。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて半導体基板を所望の形状に加工する。各部位の寸法は、例えば、板状構造体60の一辺の長さが3〜7mm、変位凸部71,72の幅が100〜200μm、高さが50〜100μmである。弾性変形体91〜94のサイズは、例えば、幅が100μm、厚みが30μm、長さが1mm程度である。弾性変形体95〜98のサイズは、例えば、幅が50〜100μm、厚みが30μm、長さが1〜2mm程度である。
なお、半導体基板として、表面Si層と、BOX(Buried Oxide)層と、Si基板とを有するSOI基板(Silicon On Insulator)を用いてもよい。SOI基板を用いる場合、弾性変形体91〜98は、表面Si層のみ、あるいは、表面Si層とBOX層から構成される。SOI基板を用いる場合はBOX層をエッチングストッパーとして利用できるため、エッチング工程を容易に行うことができる。
半導体基板を所望の形状に加工した後、アルミニウムまたは銅等の導体からなるエレクトレット電極層を、枠状構造体70の変位外面70b1,70b2に形成する。形成手法は、例えば、スパッタリング等のPVD(Physical Vapor Deposition)法を用いる。
次に、枠状構造体70の側面に形成されたエレクトレット電極層の上に、エレクトレット材料層75,76を形成する。例えば、アルカリ混入酸化により、アルカリイオン(例えばカリウムイオン)を含有する酸化膜を形成し、ヒータで加熱しながら酸化膜に電圧を印加する分極処理を行うことにより、エレクトレット材料層75,76を形成する。別の方法として、個別に用意されたエレクトレット材料層をエレクトレット電極層上に接着剤等で貼着してもよい。
次に、アルミニウムまたは銅等の導体からなる対向電極層85,86を、枠状構造体80の固定内面80a,80bにそれぞれ形成する。また、枠状構造体80の上にパッドP1,P2と、パッドP1,P2と対向電極層85,86とをそれぞれ電気的に接続する配線とを形成する。形成手法は、例えば、スパッタリング等のPVD法を用いる。なお、エレクトレット電極層を形成する際に対向電極層85,86およびパッドP1,P2等を一緒に形成してもよい。
上記の工程を経て、発電素子1Pが作製される。以降に説明する実施形態および変形例に係る発電素子も同様の方法により作製される。
次に、本実施形態に係る変形例について説明する。いずれの変形例も第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第6の実施形態の変形例>
第6の実施形態の変形例について図24を参照して説明する。図24は、本変形例に係る発電素子1Qの断面図である。
低周波数成分を比較的多く含む環境振動に対して発電効率を向上させるために、弾性変形体のばね定数を下げて共振周波数を低下させることが考えられる。しかし、弾性変形体の機械的強度が低下することから、発電素子の製造工程あるいは使用時において弾性変形体が破損し易くなるという問題がある。そこで、本変形例では、板状構造体60に重錘体69を設ける。
より詳しくは、本変形例に係る発電素子1Qでは、図24に示すように、板状構造体60の上面に重錘体69が接合されている。この重錘体69の材質は特に限定されず、例えば、シリコン等の半導体、樹脂等の絶縁体、あるいは金属であってもよい。重錘体69と板状構造体60との接合方法は特に限定されず、接着剤による接着でもよいし、半導体基板(ウェハー)同士の直接接合であってもよい。
上記のように板状構造体60に重錘体69を設けることで、変位部材(板状構造体60、枠状構造体70)の質量は見かけ上増加する。このため、弾性変形体の強度を落とすことなく、板状構造体60の共振周波数および枠状構造体70の共振周波数を下げることができる。その結果、低周波数成分を多く含む環境振動下において、発電素子の発電効率を高めることができる。
なお、重錘体69は、板状構造体60の下面に接合されてもよいし、あるいは、板状構造体60の上面および下面の両面に接合されてもよい。
また、枠状構造体70の上面および/または下面に重錘体を設けてもよい。
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る発電素子1Rについて、図25および図26を参照して説明する。図25は本実施形態に係る発電素子1Rの平面図であり、図26は図25のI−I線に沿う断面図である。
本実施形態に係る発電素子1Rは、枠状構造体70の変位だけでなく、板状構造体60の変位も利用して発電を行う。以下、第6の実施形態との相違点を中心に第7の実施形態について説明する。
発電素子1Rは、図25および図26に示すように、板状構造体60と、枠状構造体70と、底部83を有する枠状構造体80とを備えている。
板状構造体60は、第1の発電面を構成する変位面60aおよび60bを有する。変位面60aには、Y軸正方向に突出する変位凸部61が設けられ、変位面60bには、Y軸負方向に突出する変位凸部62が設けられている。なお、本実施形態では、変位凸部61および62はそれぞれ2つずつ設けられているが、これに限らず、任意の数の変位凸部を設けてもよい。
枠状構造体80は、板状構造体60の変位面60aに対向し、第2の発電面を構成する側面を有する柱部77と、変位面60bに対向し、第2の発電面を構成する側面を有する柱部78とを有する。図26に示すように、柱部77および78は、枠状構造体80の底部83に突設されている。
柱部77の上面にはパッドP3が形成され、柱部78の上面にはパッドP4が形成されている。パッドP3,P4は、前述の発電装置100の発電回路2に電気的に接続される。
変位凸部61,62の頂面と柱部77,78の側面とは互いに対向しており、これら対向面のうち、一方にはエレクトレット材料層が設けられ、他方には対向電極層が設けられている。本実施形態では、変位凸部61の頂面にエレクトレット材料層65がエレクトレット電極層(図示せず)を介して設けられ、変位凸部62の頂面にエレクトレット材料層66がエレクトレット電極層(図示せず)を介して設けられている。なお、エレクトレット材料層65,66は、本実施形態では正に帯電しているが、負に帯電したものであってもよい。
柱部77の側面には対向電極層87が設けられている。この対向電極層87は、柱部77に形成された配線を介してパッドP3に電気的に接続されている。また、柱部78の側面には対向電極層88が設けられている。この対向電極層88は、柱部78に形成された配線を介してパッドP4に電気的に接続されている。
次に、本実施形態に係る発電素子1Rの動作について説明する。枠状構造体70と枠状構造体80間の発電動作は、第6の実施形態と同じなので説明を省略し、板状構造体60と枠状構造体70間の発電動作について説明する。
変位していない板状構造体60にX軸方向の力が作用すると、変位凸部61(エレクトレット材料層65)と柱部77(対向電極層87)間の投影重なり面積、および、変位凸部62(エレクトレット材料層66)と柱部78(対向電極層88)間の投影重なり面積はいずれも減少する。このため、対向電極層87および88に誘導される電荷は減少する。その結果、パッドP3およびP4から発電素子1Rの外部に電荷が放出される。
X軸方向に変位している板状構造体60が弾性変形体の復元力を受けて原点Oに戻ろうとするとき、変位凸部61と柱部77間の投影重なり面積、および変位凸部62と柱部78間の投影重なり面積はいずれも増加する。このため、対向電極層87および88に誘導される電荷は増加する。その結果、パッドP3およびP4から発電素子1Rの内部に電荷が取り込まれる。
このようにして、板状構造体60がX軸方向に振動する際、パッドP3,P4から投影重なり面積の変動に基づく電力を取り出すことができる。
投影重なり面積の変動による発電は、板状構造体60がZ軸方向に振動する際にも行われる。より詳しくは、変位していない板状構造体60がZ軸正方向またはZ軸負方向に変位する場合、図26から分かるように、エレクトレット材料層65と対向電極層87との間の重なり面積、およびエレクトレット材料層66と対向電極層88との間の重なり面積は減少する。したがって、対向電極層87および88(すなわち、P3およびP4)から電荷が放出される。その後、板状構造体60が弾性変形体の復元力により原点Oに戻る際には、いずれの重なり面積も増大するため、対向電極層87および88(すなわち、P3およびP4)に電荷が取り込まれる。
また、板状構造体60がY軸方向に振動する際、パッドP3,P4から、層間距離の変動に基づく電力を取り出すこともできる。より詳しくは、変位していない板状構造体60にY軸正方向の力が作用すると、変位凸部61と柱部77間の層間距離は短くなり、変位凸部62と柱部78間の層間距離は長くなる。このため、対向電極層87に誘導される電荷は増加し、対向電極層88に誘導される電荷は減少する。その結果、パッドP3から発電素子1Rの内部に電荷が取り込まれ、パッドP4から発電素子1Rの外部に電荷が放出される。反対に、Y軸負方向の力が板状構造体60に作用すると、対向電極層87に誘導される電荷は減少し、対向電極層88に誘導される電荷は増加する。その結果、パッドP3から発電素子1Rの外部に電荷が放出され、パッドP4から発電素子1Rの内部に電荷が取り込まれる。
以上説明したように、第7の実施形態に係る発電素子1Rは、枠状構造体70の振動による発電に加えて、板状構造体60の振動による発電も行うことができる。板状構造体60がX軸またはZ軸方向に振動する際、投影重なり面積の変動に基づく発電を行い、板状構造体60がY軸方向に振動する際は層間距離の変動に基づく発電を行う。枠状構造体70がX軸またはZ軸方向に振動する際、投影重なり面積の変動に基づく発電を行い、枠状構造体70がY軸方向に振動する際は層間距離の変動に基づく発電を行う。すなわち、板状構造体60および枠状構造体70の両者で3軸方向の変位による発電を行うことができる。よって、本実施形態によれば、さらに効率的な発電を行うことができる。
また、第7の実施形態では、第6の実施形態と同様に2自由度振動系が形成されているため、発電周波数帯域を拡大することができる。その結果、外部振動を効率良く電気エネルギーに変換することができる。
なお、板状構造体60が弾性変形体91〜94に破損を生じる程まで過度に変位することを抑制するため、あるいは、対向するエレクトレット材料層65,66と対向電極層87,88とが接触してショートすることを回避するために、第6の実施形態で説明したストッパ突起89と同様の突起を設けてもよい。例えば、枠状構造体70の接続内面70a3,70a4に、板状構造体60に向かって突出するストッパ突起(図示せず)を設けてもよい。
また、エレクトレット材料層65は、変位凸部61の表面のうち、少なくとも頂面に設けられていればよいが、変位面60aの全面にわたって形成されてもよい。エレクトレット材料層66についても同様である。
また、エレクトレット材料層と対向電極層の配置を交換してもよい。すなわち、板状構造体60の変位面60aおよび60bに対向電極層を形成し、柱部77および78の側面にエレクトレット電極層とエレクトレット材料層をこの順に形成してもよい。
また、変位面60c,60dに変位凸部(図示せず)が設けられてもよい。この場合、変位凸部に対向する固定凸部が接続内面70a3,70a4に設けられる。
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。