JP6931574B2 - 熱膨張係数測定装置、及び熱膨張係数測定方法 - Google Patents
熱膨張係数測定装置、及び熱膨張係数測定方法 Download PDFInfo
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Description
CTEαは、被測定物の標準温度における長さ寸法をL、標準温度からの温度変化量(測定時の温度−標準温度)をΔT、被測定物の温度を標準温度からΔTだけ変化させた際の長さ寸法の変化量(熱膨張量)をΔLとして、次式(1)により求められる。
図18は、干渉次数Nが正しい値であった場合に得られる実測データセットの一例であり、図19は、干渉次数Nの決定を一部誤った場合に得られる実測データセットの一例である。
図18,19では、20±Δt℃の7温度で測定した実測データセットの一例である。図18に示すように、干渉次数Nに誤りがない場合では、各データから得られる一次近似関数は、被測定物の温度と長さ寸法の本来の関係となる。式(1)から一次近似関数の傾き(ΔL/ΔT)を被測定物の長さ寸法Lで除算することでCTEαが得られる。
例えば、複数の実測データLiの幾つかにおいて干渉次数を誤って決定していた場合、その実測データLiを検証用データDiとしたデータセットでは、幾つかの検証用データDiと近似関数との差も大きくなる。これに対して、検証用データセット群(生成されたデータセット)のうち、評価指標値がより小さいものが含まれていれば、これは、近似関数との差が小さい、つまり、各検証用データDiが図18に示すような関係となり、各温度Tiに対して正しい長さ寸法となっている可能性が高い。本発明では、各データセットの評価指標値を算出することで、実測データLiが被測定対象の各温度Tiにおける長さ寸法の真値となるデータであるか否かを検証することができ、CTE測定の信頼性を高めることができる。
また、検証用データセット群から、CTEを算出するために最も適したデータセットを絞り込むことができ、当該データセットに基づいてCTEを精度良く算出することができる。つまり、干渉次数の決定の誤りにより、実測データLiに誤差が有る場合でも、正しいCTEに補正することができる。
そして、このような構成では、複数の光源を有していない(つまり、干渉次数Nの決定に不安要素がある)光波干渉計においても、CTEの測定精度を向上させることができる。また、複数の光源を用いる必要がないので、装置のコストダウンを図れ、かつ、1つの光源に対するメンテナンスを実施すればよいので、管理にかかるコストダウンをも図ることができる。
この際、各データセットから、二次以上の多項式近似関数で近似し、各検証用データDiと当該近似関数との残差を評価する方法が考えられる。しかしながら、実測データLiには、ばらつきが含まれており、二次以上の多項式近似関数で近似した場合に一次近似関数よりも残差を小さくできるとは必ずしも言えない。
このような実測データLiのばらつきは、例えば光波干渉計の光路中の空気の揺らぎ等によって空気屈折率が変動することで生じる。このような測定環境の変化によるばらつきに対して、例えば温度、気圧、湿度、二酸化炭素濃度を測定して空気屈折率を算出して補正することが考えられるが、これらのパラメータは測定中においても変動する場合がある。また、測定環境を維持するために、例えば、真空ポンプや真空チャンバーに光波干渉計を配置することも考えられるが、この場合、装置が大型化し、かつ、装置コストも高くなる。
データセットに含まれる各検証用データDiが正しいデータである場合、近似方法によらず、各近似関数で評価指標値が最小となる第一位の候補データセットとなり、異なる場合は、データセットに含まれる検証用データDiが誤っている、すなわち、CTEの算出に適さないデータセットである。
本発明では、上記のように、各近似関数に対する評価指標値に基づいた候補データセットが同一であるか否かを判定する。したがって、候補データセットが正確なCTEを算出するための正しいデータセットであるか否かを判定することができ、精度の高いCTEを求めることができる。また、真空ポンプや真空チャンバー等の装置が不要であるため、装置の大型化や装置コストを抑制できる。
これに対して、本発明では、検証用データDiを生成する際に、複数の温度Tiのうちの1つの温度(固定温度Tf)に対する実測データLfに対して干渉次数を固定し、その他の温度に対する実測データLiに対して干渉次数を前記範囲内で設定した検証用データDiを生成する。すなわち、全てのデータセットにおいて、固定温度Tfでの検証用データDfは、必ず実測データLfとなる。この場合、上述のような評価指標値が同じとなるデータセットの発生を防止することができる。
本発明では、上述した発明と同様、実測データLiが被測定物の真値に対して正しい値であるか否かを判定することができる。また、検証用データセット群から、CTEを算出するために用いるデータセットの候補を絞り込むことができ、実測データLiに干渉次数の誤りが有る場合でも、正しいCTEに補正することができる。
さらに、複数の光源を有していない(つまり、干渉次数Nの決定に不安要素がある)光波干渉計に用いる場合でも、CTEの測定精度を向上させることができる。さらには、複数の光源を用いる必要がなく、かつ、1つの光源に対するメンテナンスを実施すればよいので、装置に係るコストダウン、及び管理にかかるコストダウンを図ることができる。
これに加え、実測データにばらつきがある場合であっても、測定環境における多種のパラメータを測定したり、真空チャンバー等の装置を用いたりすることなく、候補データセットが正しいデータセットであるか否かを判定することができる。
以下、本発明に係る第一実施形態の熱膨張係数測定装置について説明する
図1は、第一実施形態の熱膨張係数測定装置1の概略構成を示す概念図である。
図1に示すように、熱膨張係数測定装置1は、光波干渉計2と、温度制御装置3と、制御装置4とを備えて構成されている。
図2は、温度制御装置3の一例を示す概略図である。
温度制御装置3は、本発明の温度検出部に相当し、図2に示すように、被測定物Wを収容する可変温度槽31を有する。当該可変温度槽31は、壁部が断熱材又は断熱層により構成されている。可変温度槽31の内部には、均熱プレートにより構成された載置台32が設けられ、この載置台32の上面(載置面321)は、被測定物Wが載置可能な例えば平面形状に形成されている。
また、載置台32には、載置面321と、光波干渉計2から入力される光の進行方向(X軸)とに対して直交する基準平面322が設けられている。被測定物Wは、例えば下面が載置面321に載置された梁部材によってエアリー点又はベッセル点において支持され、かつ、長さ測定方向の一端面W1が基準平面322に密着固定されるように載置台32に載置される。
基準平面322は、X方向に対して移動可能に設けられており、載置台32には、基準平面322を移動させ、その移動量を検出する移動制御機構323が設けられている。この移動制御機構323は、光波干渉計2に接続され、検出した移動量を光波干渉計2に出力する。
また、可変温度槽31の基準平面322に対向する位置には、レーザ光が入射される窓311が設けられている。この窓311は、例えばガラス等により構成され、光波干渉計2から出力されたレーザ光が通過する。
これにより、被測定物Wの温度が温度センサ35により検出され、温度コントローラ34により、被測定物Wの温度が所望の温度となるようにヒータ33が駆動されて、被測定物Wが加熱される。
また、温度コントローラ34は、制御装置4に接続されており、温度センサ35により検出された被測定物Wの温度を制御装置4に出力する。
光波干渉計2は、図1に示すように、レーザ光源21と、ビームスプリッタ22と、反射ミラー23と、受光部24と、計測制御部25と、を備えて構成されている。
レーザ光源21は、単一波長λのレーザ光を出力する。レーザ光源21としては、例えば、λ=633nmのレーザ光を出力する波長安定化He−Neレーザ光源等を例示できる。
ビームスプリッタ22は、レーザ光源21から出力されたレーザ光を被測定物Wの他端面W2に向かう測定光と、反射ミラー23に向かう参照光とに分離する。また、ビームスプリッタ22は、被測定物Wの他端面W2にて反射された測定光と、反射ミラー23により反射された参照光を合成して干渉光を生成する。同様に、ビームスプリッタ22は、レーザ光源21から出力されたレーザ光を被測定物Wの他端面W1に密着固定された基準平面322に向かう測定光と、反射ミラー23に向かう参照光とに分離する。また、ビームスプリッタ22は、基準平面322にて反射された測定光と、反射ミラー23により反射された参照光とを合成して干渉光を生成する。
反射ミラー23は、例えば被測定物Wに向かう方向に直交する方向に配置される。なお、反射ミラー23としては、ビームスプリッタ22との距離を可変可能な構成とし干渉縞を位相シフトして測定してもよい。
受光部24は、ビームスプリッタ22で合成された干渉光を受光し、光強度に応じた信号を計測制御部25に出力する。
この計測制御部25は、上述した式(2)に基づいて、被測定物Wの長さ寸法L(実測データLi=(λ/2)×(N+ε))を測定し、制御装置4に出力する。
上述したように、光波干渉計2により受光部24から出力される信号に基づいて測定される値は、端数εの値である。
干渉次数Nは、予備測定を実施することで、推算される。例えば、移動制御機構323により基準平面322を被測定物Wの一端面W1及び他端面W2のそれぞれに対応する位置に移動させて白色光の干渉を生じさせる。そして、一端面W1及び他端面W2の間の距離(移動量)を、被測定物Wの予備測定値L´として予備測定を実施する。この後、計測制御部25は、予備測定値L´をλ/2で除算してその整数部分を求めることで、干渉次数Nを推算する。
そして、計測制御部25は、上記の様に予備測定により推算された干渉次数Nと、被測定物Wに対する測定により得られた端数εとを用い、式(2)に基づいて被測定物Wの長さ寸法を測定し、実測データLiとして制御装置4に出力する。
制御装置4は、例えば、パーソナルコンピューター等のコンピューターにより構成されており、図1に示すように、表示部41と、入力部42と、メモリ43と、演算部44と、を備えて構成される。
表示部41は、測定結果等を表示させるディスプレイである。
入力部42は、例えばマウスやキーボード等の入力機器であり、ユーザの入力操作に応じた操作信号を演算部44に出力する。
メモリ43は、熱膨張係数測定装置1を制御する各種データや、各種プログラムが記憶されている。
演算部44は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路や、記憶回路等により構成されており、メモリ43に記憶されている各種プログラムを読み込み実行することで、各種処理を実施する。具体的には、演算部44は、各種プログラムとの協働により、図3に示すように、実測データ取得部441、次数範囲取得部442、データセット生成部443、判定部444等として機能する。
データセット生成部443は、実測データセットの各実測データLiに対して、式(2)の干渉次数Nを増減させた検証用データDiを生成する。
干渉次数Nの増減範囲は、入力部42の操作によりユーザが任意に設定することができる。次数範囲取得部442が干渉次数Nの範囲を取得していない場合は、予め設定された範囲で干渉次数を増減させる。
例えば、干渉次数を±nで変化させる場合、式(2)の干渉次数Nに対して、干渉次数Nを増減させた干渉次数N´(N´=N−n,N−(n−1),N−(n−2)…N,…N+(n−2),N+(n−1),N+n)に設定して各検証用データDiを算出する。この場合、各温度Tiにおけるそれぞれの実測データLiに対して、それぞれm=2n+1個の検証用データDiが生成されることになる。
ここで、検証用データDiは、以下の式(3)により与えられる。
また、データセット生成部443は、生成した検証用データDiの組み合わせを変更した検証用データセットを生成する。つまり、i=1〜kの各温度Tiに対する実測データLiを測定する場合、k個の実測データLiが得られ、各温度Tiの実測データLiに対して、それぞれ、m個の検証用データが得られるので、データセットの組合せ総数jはj=kmとなる。以降、これらのデータセットの集まりを検証用データセット群と称す。
近似関数算出手段444Aは、各検証用データセットに含まれる検証用データDiから近似関数を導出する。なお、本実施形態では、各データセットに対して、一次近似関数及び二次近似関数の2つの近似関数を導出するが、これに限定されない。例えば、近似関数としては、二次近似関数と三次近似関数との2つの近似関数を導出してもよく、1次近似関数と二次近似関数と三次近似関数の3つの近似関数を導出してもよい。
CTE算出手段444Bは、上述した式(1)に基づいて、一次近似関数の傾き(ΔL/ΔT)を被測定物Wの長さ寸法L(実測データLi)で除算してCTEαを算出する。なお、ここでは、一次近似関数からCTEαを求める例を示すが、二次近似関数からCTEαを算出してもよい。この場合は、二次近似関数の基準温度(例えば20℃)における接線の傾き(ΔL/ΔT)を求め、当該傾き(ΔL/ΔT)に基づいてCTEαを算出すればよい。なお、近似関数として、三次近似関数等を用いる場合も同様であり、多項式近似関数の基準温度(例えば20℃)における接線の傾き(ΔL/ΔT)からCTEαを求めればよい。
残差は、近似関数と各検証用データDiとの差により算出されてもよく、検証用データDiと近似関数との差に基づいて算出されてもよい。
図5は、本実施形態において、一次近似関数と検証用データDiとの残差の算出を説明するための図である。また、図6は、二次近似関数と検証用データDiとの残差の算出を説明するための図である。
本実施形態では、残差算出手段444Cは、図5に示すように、各温度Tiに対する検証用データDiと一次近似関数との差(残差Δs)をそれぞれ算出する。さらに、残差算出手段444Cは、図6に示すように、各温度Tiに対する検証用データDiと二次近似関数との差(残差Δs)をそれぞれ算出する。
そして、残差算出手段444Cは、これらの残差Δsにおける代表値を評価指標値sとして使用する。評価指標値sは、各近似関数に対してそれぞれ算出される。ここで、一次近似関数に対して算出された残差Δsの代表値を第一評価指標値s1、二次近似関数に対して算出された残差Δsの代表値を第二評価指標値s2とする。
また、評価指標値sとして使用する残差Δsの代表値は、例えば、残差Δsの絶対値の最大値を用いてもよく、各残差Δs又は各残差Δsの絶対値の平均値や二乗平均平方根を用いてもよい。
したがって、妥当性判定手段444Eは、第1番候補データセットの評価指標値sが、例えば、予め設定された第二許容範囲内であるか否かを判定することで、その妥当性を判定する。
次に、本実施形態の熱膨張係数測定方法について説明する。図7は、熱膨張係数測定方法を示すフローチャートである。
被測定物Wの熱膨張係数の測定では、被測定物Wの長さ寸法に対する干渉次数Nが予め予備測定により得られているものとする。この干渉次数Nは、上述したように、例えば、基準平面322を被測定物Wの長さ寸法に相当する移動量だけ移動させ、その移動量をレーザ光の半波長で除算した整数部分により得ることができる。
次に、実測データ取得部441は、メモリ43に記憶された一連の実測データLi(i=1〜k)を読み込む(ステップS2)。
そして、データセット生成部443は、読み出した実測データLiを元に、干渉次数Nを所定の範囲(±n)内で設定(変更)した検証用データDiを生成する。また、生成した検証用データDiから、各温度Tiに対して1つの検証用データDiを選択したデータセットを、全ての組み合せ分生成し、検証用データセット群とする(ステップS3)。
さらに、残差算出手段444Cは、データセットに含まれる各検証用データDiの近似関数に対する残差Δsをそれぞれ算出し、その代表値をデータセットの評価指標値sとする(ステップS5)。ステップS5では、上述したように、一次近似関数と各検証用データDiとの残差Δs、及び二次近似関数と各検証用データDiとの残差Δsがそれぞれ算出され、一次近似関数に関して第一評価指標値s1が算出され、二次近似関数に関して第二評価指標値s2が算出される。
この際、ステップS4で算出されたCTEαが、第一許容範囲外である場合、当該データセットは順位付けの対象外とする。第一許容範囲は、被測定物WのCTEαが概略既知である場合に、当該概略既知のCTEαを中心とした所定範囲となり、被測定物Wの素材等によって、その範囲を拡大縮小することができる。当該第一許容範囲は、例えば、入力部42の操作によってユーザが設定入力することで得られてもよく、メモリ43に予め記憶されていてもよい。なお、被測定物Wの大凡のCTEαが不明である場合等では、データセットの除外処理を行うことなく、データセットの順位付けを行えばよい。
図8は、実測データセットAに対して導出される一次近似関数及び二次近似関数の一例を示す図である。また、図9は、別の実測データセットBに対して導出される一次近似関数及び二次近似関数の一例を示す図である。
図8の実測データセットAは、各実測データLiに、測定環境によるばらつきがない場合の例である。このような場合、一次近似関数よりも二次近似関数の方が、残差Δsが小さくなる傾向がある。しかしながら、実際の測定においては、上述したように測定環境の変動等を要因とするばらつきが生じる。例えば、図9に示す実測データセットBは、測定環境により実測データLiにばらつきが生じた場合の実測データセットである。この場合、評価指標値sとして、残差Δsの平均値を用いた場合、一次近似関数に対する第一評価指標値s1はs1=0.8898となり、第二評価指標値s2はs2=0.9976857となり、s1<s2となる。
したがって、ステップS8において、Noと判定された場合、本実施形態では、ステップS1に戻り、被測定物Wの長さ寸法の測定を再度実施する。
妥当性判定手段444Eは、例えば第1番候補データセットの評価指標値s(第一評価指標値s1及び第二評価指標値s2)が、予め設定された第二許容範囲内であるか否かを判定する。第二許容範囲としては、例えば、求めるCTEαの精度によって任意に設定することができ、例えば入力部42から入力によりユーザが設定入力する。この場合、評価指標値sが第二許容範囲内である場合に、第1番候補データセットがCTEαの算出に適したデータセットであり、妥当であると判定する。
すなわち、第1番候補データセットと、評価指標値sが2番目に小さい第2番候補データセットとにおいて、評価指標値sの差分値が小さい場合、他の要因によるばらつきや誤差の重畳によって、第2番候補データセットが正確なCTEαに対応するデータである可能性もある。よって、第1番候補データセット及び第2番候補データセットの評価指標値の差分値が所定値以上である場合は、第1番候補データセットは妥当であると判定する。
ここで、本実施形態では、一次近似の第1番候補データセットと第2番候補データセットとの評価指標値sの差分値、及び、二次近似の第1番候補データセットと第2番候補データセットとの評価指標値sの差分値のいずれか一方が、所定値以上であるか否かを判定すればよい。なお、一次近似関数の第1番候補データセット及び第2番候補データセットの評価指標値sの差分値と、二次近似関数の第1番候補データセット及び第2番候補データセットの評価指標値sの差分値と、の双方が所定値以上となっているか否かを判定してもよい。
なお、上記のような評価指標値sが第二許容範囲内であるか否かの判定、及び第1番候補データセットと第2番候補データセットとの評価指標値sの差分値が所定値以上であるか否かの判定の双方を実施して妥当性を判定してもよい。
以上により、本実施形態では、実測データにおいて、干渉次数Nの決定に誤りがあった場合でも、当該実測データに基づいたCTEαが、第1番候補データセットに基づいたCTEαに補正されることになり、精度の高いCTEαの測定が可能となる。
本実施形態では、温度制御装置3により、被測定物Wの温度Tiを順次変更して、温度センサ35で被測定物Wの温度Tiを検出する。また、光波干渉計2により、各温度Tiにおける被測定物Wの長さ寸法 (実測データLi)を測定する。そして、制御装置4のデータセット生成部443は、各実測データLiの干渉次数Nを、所定の範囲(±n)に設定した複数の検証用データDiを生成し、各温度Tiに対して1つの検証用データDiを選択したデータセットを生成し、検証用データDiの組合せがそれぞれ異なる全組合せ分、当該データセットを生成する。この後、判定部444は、データセットに含まれる検証用データDiに基づいて、次数が異なる複数の近似関数を導出し、さらに、これらの近似関数と各検証用データDiとの残差Δsの代表値を評価指標値sとして、近似関数毎に算出する。そして判定部444は、複数の近似関数のそれぞれについて評価指標値sが最小となる第1番候補データセットを抽出し、これらの第1番候補データセットが同一であるか否かを判定する。
また、光波干渉計2において、複数の光源を用いる必要がないため、装置のコストダウン、メンテナンス等の管理に係るコストダウンを図ることができる。
すなわち、被測定物WのCTEαが概略既知である場合に、当該CTEαを中心とした第一許容範囲を予め設定しておき、その範囲を超えるデータセットを除外する。これによって、有りえないCTEαが算出されるデータセットを候補から外すことができ、迅速かつ安定してデータセットの妥当性の判定を行うことができ、正しいCTEαを迅速に導き出すことができる。
第1番候補データセットの評価指標値sが、第二許容範囲外の場合、近似関数と検証用データDiとの差が大きく、正しい実測データLiが得られていない可能性が高い。このような場合、第1番候補データセットに基づいてCTEαを算出しても、正しいCTEαが算出される可能性が低くなる。これに対して、本実施形態では、このような場合に、実測データLiを再度測定し直す。これにより、精度の低いCTEαが算出される不都合を抑制できる。
次に、本発明に係る第二実施形態について説明する。
上述した第一実施形態では、複数のデータセットにおいて、評価指標値sやCTEが同一となるデートセットが存在する。図10は、評価指標値s及びCTEが同一となるデータセットの一例を示す図である。
具体的に説明すると、図10に示すように、データセットAに対して、各検証用データの干渉次数を同一数(例えば1)だけ減らしたデータセットBや、同一数(例えば1)だけ増やしたデータセットCは、データセットAを平行シフトさせたデータとなる。これらのデータセットB,Cは、一次近似関数の切片だけが異なり、傾き(ΔL/ΔT)がデータセットAと同一となるので、算出されるCTEαや評価指標値sも同一となる。
しかしながら、判定部444は、評価指標値sが小さい順に順位付けするため、同一順位となるデータセットが複数あることは、正しいデータセットを特定する際に、処理を不安定にさせるだけでなく、計算処理においても負荷が増大するため、好ましくない。
第二実施形態は、このような評価指標値sやCTEが重複するデータセットの発生を抑制するべく、データセット生成部443の処理が第一実施形態と相違している。
なお、以降の説明にあたり、既に説明した事項については同符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、データセット生成部443では、ステップS3において、特定の温度(以降、固定温度Tfと称する)に対する実測データLfに対して、干渉次数Nを増減させた検証用データDfを生成しない。つまり、実測データLfについては、実測データLf(干渉次数N)に対応する1つの検証用データDfのみを用いる。
このため、順位付け手段444Dにより第1番候補データセットを絞り込む際に、データセットB,CがデータセットAと同一順位として選択されることがない。
これにより、複数のデータセットが、第1番候補データセットとして選択されることがなく、処理の安定化を図れ、計算負荷の増大も抑制することができる。
次に、本発明に係る第三実施形態について説明する。
上述した第一実施形態及び第二実施形態では、実測データLiの取得する温度間隔ΔTi(温度変化量)が等間隔となる例を示した。しかしながら、この場合、CTEαが異なるにもかかわらず、評価指標値sが略同一となるデータセットが存在する場合がある。
図12は、CTEが異なり評価指標値sが略同一となるデータセットの一例を示す図である。
具体的に説明すると、式(3)に示すように、各検証用データDiは、実測データLiに対して、半波長の整数倍を加減算した値となる。したがって、データセットA,B,Cにおいて1つの検証用データが同一であり、他の検証用データDiにおいて干渉次数Nが順次増加又は順次減少する場合のような特定のデータセットにおいて、評価指標値sが略同一となるデータセットが複数存在する場合がある。
ここで、データセットBは、20℃において、データセットAと同一の干渉次数の検証用データD4(=L4)を含む。また、データセットBでは、20℃より高温において、20℃から離れるに従って干渉次数Nが順に+1、+2、+3となる(1ずつ増大する)検証用データDi(D5=L5+n×λ/2,D6=L6+2n×λ/2,D7=L7+3n×λ/2)が選択されている。また、20℃より低温において、20℃から離れるに従って干渉次数Nが順に−1、−2、−3となる(1ずつ減少する)検証用データDi(D3=L3−n×λ/2,D2=L2−2n×λ/2,D1=L1−3n×λ/2)が選択されている。なお、データセットCは、データセットBとは逆に、20℃より高温において、干渉次数Nが順次1ずつ減少し、20℃より低温において、干渉次数Nが順次1ずつ増大する検証用データを含む。
図13は、図12のデータセットA,Bの各検証用データDi及び一次近似関数を拡大した図であり、図14は、図12のデータセットA,Bにおける残差Δsを示す図である。
データセットBでは、図13に示すように、一次近似関数の傾き(ΔL/ΔT)は、データセットAとは異なる値となるので、算出されるCTEαも異なる値となる。しかしながら、図13及び図14に示すように、残差Δsは、データセットAと略同一値となる。したがって、順位付け手段444Dにより第1番候補データセットを絞り込む際に、データセットAと同一順位でデータセットBやデータセットCが絞り込まれる可能性があり、この場合、正しいCTEを特定できない。
図15は、第三実施形態において取得される実測データLiに基づいて生成されたデータセットの一例である。なお、図12と同様、データセットAは、実測データLiに対応する検証用データDiであり、実測データLiにおいて、干渉次数Nの誤りがなく、データセットAにより正しいCTEが算出されるものと仮定する。
第三実施形態では、ステップS1において、被測定物Wに対する各温度Tiの実測データLiを測定する際に、各温度Tiの温度間隔ΔTiを不等間隔に測定する。この間隔としては、特に限定されない。図15に示す例では、20℃を中心として、温度間隔ΔTiが対象となるように温度を変更しているが、1つのみの温度間隔ΔTiを他と異ならせてもよく、全ての温度間隔ΔTiを異ならせてもよい。また、1つの温度間隔を他と異ならせるよりも、複数の温度間隔ΔTiを異ならせる方が好ましく、全ての温度間隔ΔTiをそれぞれ異なる値とすることがより好ましい。
図15に示すように、データセットBは、20℃において、データセットAと同一の干渉次数の検証用データD4を含む。また、データセットBは、20℃より高温において、干渉次数Nを順次1ずつ増加させた検証用データD5〜D7を含む。
本実施形態では、図15に示すように、温度間隔が不等間隔となるので、温度設定の値と、与える次数変化の大きさが比例関係とはならない。したがって、図16に示すように、データセットAと、データセットBとでは、残差Δsが異なる値となる。
これにより、複数のデータセットが、第1番候補データセットとして選択されることがなく、処理の安定化を図れ、かつ、正しいデータセットを第1番候補データセットとして特定することができ、CTEαを高精度に算出することが可能となる。
なお、上記において一次近似関数について説明したが、2次以上の多項式近似関数においても同様である。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での変形等は本発明に含まれるものである。
例えば、第一実施形態において、第1番候補データセットを絞り込んで、当該第1番候補データセットに基づいてCTEαを算出する例を示したが、実測データLiの妥当性のみを判定してもよい。例えば全ての実測データLiを含むデータセット(実測データセット)の評価指標値sよりも小さい評価指標値sを有するデータセットが有る場合、干渉次数Nの決定に誤りがある実測データLiが含まれると判定し、実測データの再測定を促す表示を表示部41に表示させてもよい。
また、一次近似関数に対して算出される第一評価指標値s1と、二次近似関数に対して算出される第二評価指標値s2とを比較し、値が小さい方の近似関数に基づいてCTEαを算出してもよい。例えば、s1>s2である場合、二次近似関数の基準温度における接線の傾きからCTEαを算出し、s1<s2である場合は、一次近似関数の傾きからCTEαを算出する。
Claims (9)
- 被測定物の温度を検出する温度検出部と、
単一波長の光を用いて前記被測定物の長さ寸法を測定する光波干渉計と、
前記被測定物の温度を順次変更し、各温度Ti(i=1〜k)において前記光波干渉計により測定される前記被測定物の長さ寸法の実測データLiを取得する実測データ取得部と、
各前記実測データLiに対して、干渉次数を任意の範囲で設定した複数の検証用データDiを生成し、i=1〜kの各温度Tiに対する前記検証用データDiからそれぞれ1つの前記検証用データDiを選び出してデータセットとし、前記検証用データDiの選択の組合せがそれぞれ異なる複数の前記データセットを生成するデータセット生成部と、
複数の前記データセットのそれぞれについて、次数がそれぞれ異なる複数の近似関数を導出し、前記データセットの各前記検証用データDiと前記近似関数との差に基づく評価指標値を前記近似関数毎に算出し、複数の前記データセットから前記評価指標値が最小となる候補データセットを抽出して、各前記近似関数に対して抽出された前記候補データセットが同一であるか否かに基づいて前記候補データセットの妥当性を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 請求項1に記載の熱膨張係数測定装置において、
複数の前記データセットのそれぞれについて熱膨張係数を算出する熱膨張係数算出部を備え、
前記判定部は、算出された前記熱膨張係数が予め設定された第一許容範囲の範囲外となる前記データセットを除外する
ことを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の熱膨張係数測定装置において、
前記判定部は、各前記データセットの前記検証用データDiと前記近似関数との差の代表値を前記評価指標値とし、前記評価指標値が最小となる前記データセットの妥当性を判定する
ことを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 請求項3に記載の熱膨張係数測定装置において、
前記判定部は、前記評価指標値が最小となる前記データセットの前記評価指標値が、予め設定された第二許容範囲の範囲内であるか否かを判定する
ことを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 請求項3に記載の熱膨張係数測定装置において、
前記判定部は、前記評価指標値が最小となる前記データセットの前記評価指標値と、前記評価指標値が2番目に小さい前記データセットの前記評価指標値との差分値が、所定値以上であるか否かを判定する
ことを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱膨張係数測定装置において、
前記干渉次数の範囲を取得する次数範囲取得部を備え、
前記データセット生成部は、前記次数範囲取得部で取得した前記干渉次数の範囲内で前記干渉次数を設定した前記検証用データDiを生成する
ことを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱膨張係数測定装置において、
前記データセット生成部は、任意の1つの温度Tfに対する実測データLfの前記干渉次数を固定して検証用データDfとし、それ以外の前記実測データLiについて、前記干渉次数を前記任意の範囲で設定した前記検証用データDiを算出する
ことを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱膨張係数測定装置において、
前記実測データ取得部は、前記被測定物の温度の温度変化量を不等間隔で変化させた際の前記実測データLiを取得する
ことを特徴とする熱膨張係数測定装置。 - 被測定物の熱膨張係数を測定する熱膨張係数測定方法であって、
前記被測定物の温度を順次変更し、各温度Ti(i=1〜n)における前記被測定物の長さ寸法を単一波長の光を用いた光波干渉計により測定した際に得られる各温度Tiに対する実測データLiを取得するステップと、
各前記実測データLiに対して、干渉次数を任意の範囲で設定した複数の検証用データDiを生成し、i=1〜kの各温度Tiに対する前記検証用データDiからそれぞれ1つの前記検証用データDiを選び出してデータセットとし、前記検証用データDiの選択の組合せがそれぞれ異なる複数の前記データセットを生成するステップと、
複数の前記データセットのそれぞれについて、次数がそれぞれ異なる複数の近似関数を導出し、前記データセットの各前記検証用データDiと前記近似関数との差に基づく評価指標値を前記近似関数毎に算出し、複数の前記データセットから前記評価指標値が最小となる候補データセットを抽出して、各前記近似関数に対して抽出された前記候補データセットが同一であるか否かに基づいて前記候補データセットの妥当性を判定するステップと、
を実施することを特徴とする熱膨張係数測定方法。
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