以下、本発明にかかる還元剤噴射装置を、排気処理システム1に適用した各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、還元剤として尿素水を用いる尿素水噴射装置を、還元剤噴射装置として例示する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
(第1実施形態)
第1実施形態の尿素水噴射装置100は、排気処理システム1を構成する。以下、排気処理システム1を先ず説明し、その後、尿素水噴射装置100を説明する。
<排気処理システム1の構成及び作動>
排気処理システム1は、内燃機関300から排出された排気を浄化する。図1に示すように、排気処理システム1は、排気管200と、尿素水噴射装置100と、アンモニア吸着剤(図示なし)と共に供されるSCR触媒400と、を備える。SCRは、選択的触媒還元の略称である。
内燃機関300は、車両に搭載された走行動力源である。排気管200は、内燃機関300から排出された排気を外部に導く。排気管200の一方の端部は、内燃機関300に接続されており、他方の端部は大気に開放されている。
尿素水タンク500は、尿素の水溶液(尿素水)を貯える容器である。尿素水ポンプ501は、尿素水タンク500内の尿素水を尿素水噴射装置100へ供給するポンプである。
尿素水噴射装置100は、尿素水タンク500から供給された尿素水を排気管200内に噴射する装置である。
SCR触媒400は、排気管200内における、排気流れ方向の尿素水噴射装置100下流側に設けられた還元触媒である。
この排気処理システム1では、尿素水噴射装置100から尿素水が排気管200内に噴出される。噴射された尿素水は、排気に含まれる水と反応して加水分解する。これにより、気体のアンモニアが排気管200内に生成される。このアンモニアは、SCR触媒400と共に供される吸着剤に吸着される。吸着されたアンモニアは、SCR触媒400を触媒として、排気に含まれるNOxを還元する。このようにして、排気処理システム1は、内燃機関300の排気を浄化する。
なお、厳密には、尿素水噴射装置100から噴射された尿素水の状態では還元剤とは言えず、尿素水の加水分解により生成されたアンモニアが還元剤として作用する。しかし本明細書では、アンモニアの原料とも言える尿素水のことを、単に還元剤と呼ぶ。
<尿素水噴射装置100の構成>
次に、尿素水噴射装置100の構成を、図1と図2を参照して説明する。図1に示すように、尿素水噴射装置100は、噴射弁10と、アダプタ20と、を備える。
噴射弁10は、尿素水タンク500から供給された尿素水を排気管200内に噴射する電磁弁である。噴射弁10は、噴射弁ボディ11と、電磁アクチュエータ12と、弁体13と、を備える。噴射弁ボディ11は、弁体13及び電磁アクチュエータ12を、内部に収容する。弁体13は、尿素水を噴射するために開弁閉弁可能な部材である。詳しくは、電磁アクチュエータ12への通電により発生した電磁吸引力により、弁体13は開弁する。弁体13が開弁すると、噴射弁10の先端(噴射弁先端14)に設けられた噴射口(図示なし)から尿素水が、排気管200内部に向かって噴射される。噴射された尿素水は、噴霧(尿素水噴霧40)となる。尿素水噴霧40は、噴射弁先端14から排気管200内部に向かって、徐々に断面積が大きくなる形状である。電磁アクチュエータ12への通電が停止すると、弁体13は閉弁し、尿素水の噴射は停止する。
アダプタ20は、噴射弁10を排気管200に対して設置する部材である。アダプタ20は、図2に示すように、アダプタボディ21と、アダプタ側取付部28と、を備える。
アダプタボディ21は、噴射弁10が挿入される管状部材である。以後、本明細書では、アダプタボディ21に挿入された噴射弁10の長手方向を、Z軸(図2参照)と定義して、説明を行う。
アダプタボディ21は、外周面(アダプタボディ外周面21a)と、内周面(アダプタボディ内周面21b)と、下面(アダプタボディ下面21c)と、Z軸方向において下面と反対側に位置する上面(アダプタボディ上面21d)と、を有する。なお、本明細書で言う上下とは、図面を参照した説明のための便宜的なものであり、実際に天地方向で上下に位置することを意図しない。
アダプタボディ21は、アダプタボディ内周面21bに囲まれた噴射弁収容室22を有する。この噴射弁収容室22は、アダプタボディ上面21dで開口すると共に、アダプタボディ下面21cで開口する。アダプタボディ下面21cの開口に噴射弁先端14が位置するように、噴射弁10は、アダプタボディ上面21dから噴射弁収容室22に挿入されて、固定される。図2に示すように、噴射弁10は、Oリング23と共に、噴射弁収容室22に固定される。Oリング23は、アダプタボディ内周面21bと噴射弁10との間をシールして、噴射弁収容室22のアダプタボディ上面21d側に排気が漏れ出ることを防止する。
アダプタボディ下面21cは、アダプタボディ上面21dに向かって凹んだ凹形状である。噴射弁先端14が設けられる開口は、凹形状のアダプタボディ下面21cのうち、奥まった場所にある。
アダプタ側取付部28は、アダプタボディ21を排気管200に取り付ける部材である。ここで、アダプタボディ21の排気管200への取付構造を簡単に説明する。図2に示すように、排気管200は、その内壁面(排気管内壁面201b)と外壁面(排気管外壁面201a)との間を貫通する排気管開口部201cを有する。この排気管開口部201cがアダプタボディ21によって密閉されるように、アダプタボディ21は排気管200に取り付けられる。具体的には、アダプタ側取付部28と排気管側取付部203とが締結される。より詳細なアダプタボディ21の排気管200への取付構造の一例は、後述する。
上述のように、アダプタボディ21は、アダプタボディ上面21dに向かって凹形状であるアダプタボディ下面21cを有すると共に、排気管開口部201cを密閉する。よって、アダプタボディ下面21cによって、排気管内壁面201bに対して外向き凹形状の凹形状空間30が形成される。また、噴射弁先端14は、凹形状のアダプタボディ下面21cのうち、奥まった場所に設けられる。よって、凹形状空間30は、その一端側に排気管内壁面201bに開口する開口部30aを有し、他端側に噴射弁先端14が設けられる空間とも言える。
凹形状空間30について説明する。凹形状空間30は、噴射弁先端14を、排気管内壁面201bから外側方向に離れた場所に位置にさせる機能を有する。これは、言い換えると、排気管200内に、噴射弁先端14が露出することを防止する機能である。
さらに、凹形状空間30は、図2に示すように、尿素水噴霧40の通路としても機能する。この機能を考慮して、凹形状空間30は、アダプタボディ下面21cと尿素水噴霧40との間の干渉を避ける形状としている。具体的には、凹形状空間30は、尿素水噴霧40よりも大きい。
また、凹形状空間30は、排気管200内部と連通しているので、凹形状空間30内に排気が流入する。この凹形状空間30内の排気から、噴射弁10へ熱が移動する。このため、凹形状空間30は、噴射弁10へ移動する熱を持つ排気を収容する機能も有する。ここで、凹形状空間30内の排気を冷却させる観点からは、凹形状空間30の体積は小さい方が好適である。なぜなら、凹形状空間30内の排気が待つ熱量は、凹形状空間30の体積に比例するからである。このように、凹形状空間30が、尿素水噴霧40の通路の機能、及び、噴射弁10へ移動する熱を持つ排気を収容する機能、を有することに着目して、凹形状空間30を、噴射弁先端14から排気管200内部に向かって、徐々に断面積が大きくなる形状としている。具体的には、凹形状空間30を形成するアダプタボディ下面21cは、尿素水噴霧40と略相似形状である。例えば、共に、円錐形状である。この形状は、アダプタボディ下面21cと尿素水噴霧40との間の干渉を避けること、及び、凹形状空間30の体積を小さくすること、を可能とするものである。
アダプタボディ21は、さらに、噴射弁10を冷却する機能を有する。具体的には、アダプタボディ21は、噴射弁10を冷却する熱媒体を流す噴射弁冷却用流路50Aを形成する。アダプタボディ21は、さらに、凹形状空間30内の排気を冷却する機能を有する。具体的には、アダプタボディ21は、凹形状空間30内の排気を冷却する熱媒体を流す排気冷却用流路51Aを形成する。図2に示すように、噴射弁冷却用流路50Aと排気冷却用流路51Aとは連通しており、同じ熱媒体を流すものである。熱媒体としては、排気管200内の排気の典型的温度域よりも低い温度域を持ち、且つ、噴射弁10の冷却目標温度以下の温度域を持つものが用いられる。噴射弁10の冷却目標温度は、例えば、100°Cである。このような温度域の熱媒体として、排気処理システム1が搭載された車両において利用可能な様々な熱媒体から、設計上好適なものが選択される。利用可能と想定される熱媒体としては、例えば、エンジン冷却水やエンジンオイルなどの内燃機関300の冷却に用いられる熱媒体、インバータ等の電気機器の冷却に用いられる熱媒体、還元剤(本実施形態では、尿素水)、などの液体である。もちろん、専用の冷却媒体を用いる構成でもよい。
排気冷却用流路51Aは、図2に示すように、熱媒体の流れ方向において、噴射弁冷却用流路50Aよりも下流側に位置する。この構成のために、噴射弁冷却用流路50Aを流れる熱媒体が、噴射弁10と熱交換(典型的には冷却)し、その後、この熱媒体が排気冷却用流路51Aに流入して凹形状空間30内の排気を冷却する。この構成と、熱媒体が凹形状空間30内の排気を冷却した後に噴射弁10を冷却する構成と、を比べると、前者の方が後者よりも、噴射弁10の冷却という点で有利である。この理由の詳細は、以下の通りである。
典型的には、凹形状空間30内の排気は、噴射弁10よりもはるかに高温である。また、一般に、冷却対象から冷却媒体に移動する熱量は、冷却媒体と冷却対象との間の温度差に比例する。このため、同じ温度域の冷却媒体に対して、凹形状空間30内の排気から移動する熱量と噴射弁10から移動する熱量とを比較すると、凹形状空間30内の排気から移動する熱量の方が大きい。このため、先に噴射弁10を冷却しても、冷却後の熱媒体の温度は、高くとも噴射弁10の温度程度となる。この場合、熱媒体と凹形状空間30内の排気との間には、凹形状空間30内の排気を冷却するのに十分な温度差がある。一方、先に凹形状空間30内の排気を冷却すると、冷却後の熱媒体の温度は、先に噴射弁10を冷却した場合と比べて、大きく上昇する。この場合、熱媒体と噴射弁10との間には、噴射弁10を冷却するのに十分な温度差がなくなる虞がある。よって、本実施形態では、排気冷却用流路51Aは、熱媒体の流れ方向において、噴射弁冷却用流路50Aよりも下流側に位置させている。
以下、上述の尿素水噴射装置100の構成について、より具体的な構造例を説明する。
噴射弁冷却用流路50Aは、熱媒体を、噴射弁収容室22に沿って、噴射弁先端14に向けて流す。図2に示すように、噴射弁冷却用流路50Aは、アダプタボディ21の噴射弁収容室形成部21gと流路区画部21hとの間に形成される。噴射弁収容室形成部21gの内壁面が、アダプタボディ内周面21bである。噴射弁収容室形成部21gは、噴射弁ボディ11と接触する。ここで言う接触とは、Oリング23近傍を除く、アダプタボディ内周面21bが噴射弁ボディ11と直接接触することである。接触する割合は、噴射弁ボディ11からの熱伝導の所望の効率に応じて、適宜変更できる。噴射弁収容室形成部21gは、噴射弁ボディ11及び噴射弁冷却用流路50A内の熱媒体と接触する。よって、噴射弁収容室形成部21gを介して、噴射弁10の熱が、排気冷却用流路51Aを流れる熱媒体に移動する。噴射弁冷却用流路50Aは、Z軸方向において、少なくとも、Oリング23から噴射弁先端14に至る領域に亘って形成される。このような構成は、噴射弁10を、確実に冷却するものである。なお、Z軸に垂直な平面による噴射弁冷却用流路50Aの断面は、噴射弁ボディ11の全周を囲む環状であってもよいし、C字形状であってもよいし、周方向に互いに離間した複数の部分からなるもの、であってもよい。
排気冷却用流路51Aは、噴射弁先端14付近で、噴射弁冷却用流路50Aと接続される。図2に示すように、排気冷却用流路51Aは、熱媒体を、アダプタボディ下面21cに沿って、噴射弁先端14からアダプタボディ21の下端(アダプタボディ下端21e)に向う方向に、流すものである。アダプタボディ下端21eとは、アダプタボディ下面21cとアダプタボディ外周面21aとが接続する箇所であって、凹形状空間30の開口部30aを囲む。図2に示すように、排気冷却用流路51Aは、アダプタボディ21の下面形成部21fと外周面形成部21iとの間に形成される。下面形成部21fの外壁面が、アダプタボディ下面21cである。つまり、下面形成部21fは、凹形状空間30内の排気及び排気冷却用流路51A内の熱媒体と、接触する。よって、下面形成部21fを介して、凹形状空間30内の排気の熱が排気冷却用流路51A内の熱媒体に移動する。
熱媒体を凹形状空間30の開口部30aに近づく方向に流す排気冷却用流路51Aは、少なくとも、噴射弁先端14よりも、凹形状空間30の開口部30aに近い場所まで達する。図3の例では、排気冷却用流路51Aは、凹形状空間30の開口部30aの近傍、すなわち、Z軸方向における排気管外壁面201aの位置まで達する。このような構成は、凹形状空間30内の排気を、確実に冷却するものである。なお、Z軸に垂直な平面による排気冷却用流路51Aの断面は、凹形状空間30の全周を囲む環状であってもよいし、C字形状であってもよいし、周方向に互いに離間した複数の部分からなるもの、であってもよい。
アダプタボディ21は、さらに、熱媒体流出路52を有する。熱媒体流出路52は、排気冷却用流路51Aと接続されている。熱媒体流出路52は、排気冷却用流路51Aから流出した熱媒体を、アダプタボディ外周面21aに沿って、アダプタボディ下端21eからアダプタボディ上面21dに向けて、流す。図2に示すように、熱媒体流出路52は、流路区画部21hと外周面形成部21iとの間に形成される。熱媒体流出路52と噴射弁冷却用流路50Aとは、流路区画部21hによって区画される。流路区画部21hは、噴射弁収容室形成部21gよりも、アダプタボディ外周面21aに近い。外周面形成部21iの外壁面が、アダプタボディ外周面21aである。外周面形成部21iは、流路区画部21hよりも、噴射弁収容室形成部21gから遠い。上述のように、熱媒体流出路52は、高温の排気管200から離れる方向に、熱媒体を流す。これは、熱媒体の温度上昇を抑えつつ熱媒体を流出させる構成である。なお、Z軸に垂直な平面による熱媒体流出路52の断面は、噴射弁冷却用流路50Aの全周を囲む環状であってもよいし、C字形状であってもよいし、周方向に互いに離間した複数の部分からなるもの、であってもよい。
アダプタボディ21は、さらに、熱媒体排出路(アダプタ側排出路53)を有する。アダプタ側排出路53は、熱媒体を、アダプタボディ21の外部に排出する流路である。アダプタ側排出路53は、熱媒体を、排気主流60と同じ方向に流すものであってもよいし、反対方向に流すものであってもよいし、排気管200から離れる方向に流すものであってもよい。図2の例では、アダプタ側排出路53は、熱媒体を、排気主流60と同じ方向に流す。アダプタ側排出路53は、管状のアダプタ側排出路形成部21jの内部に形成される。
アダプタボディ21は、さらに、熱媒体導入路(アダプタ側導入路54)を有する。アダプタ側導入路54は、噴射弁冷却用流路50Aに熱媒体を導入させる流路である。アダプタ側導入路54は、熱媒体を、排気主流60と同じ方向に流すものであってよいし、反対方向に流すものであってもよいし、排気管200に近づく方向に流すものであってもよい。図2の例では、アダプタ側導入路54は、熱媒体を、排気主流60と同じ方向に流す。アダプタ側導入路54は、管状のアダプタ側導入路形成部21kの内部に形成される。
以下、アダプタボディ21の排気管200への取付構造について、詳細な一例を、説明する。
アダプタ側取付部28は、図2に示すように、アダプタボディ外周面21aから、径方向外側に突出した部材である。アダプタ側取付部28は、アダプタボディ外周面21aの全周に亘って設けられてもよいし、アダプタボディ外周面21aの全周の一部に設けてもよい。
排気管200は、詳しくは、排気を外部に導く排気管本体部201と、アダプタ挿入部202と、排気管側取付部203と、を有する。アダプタ挿入部202は、管状であり、排気管本体部201の外壁面(排気管外壁面201a)から、外側に延設される。アダプタ挿入部202の内周面202aは、一端が排気管本体部201の内壁面(排気管内壁面201b)に開口し、他端が解放端である空間を形成する。排気管側取付部203は、アダプタ挿入部202の外周面202bから、径方向外側に突出した部材である。排気管側取付部203は、アダプタ挿入部202の外周面202bの全周に亘って設けられてもよいし、アダプタ挿入部202の外周面202bの全周の一部に設けてもよい。
排気管側取付部203とアダプタ側取付部28とがV字型クランプ70により締結されることにより、アダプタボディ21は、排気管200に取り付けられる。詳しくは、アダプタボディ21が、アダプタ挿入部202内に挿入される。挿入される際のアダプタボディ21の姿勢は、噴射弁先端14が排気管200内部を向く姿勢である。挿入は、アダプタ側取付部28が、排気管側取付部203と接触するまで行われる。そして、接触したアダプタ側取付部28と排気管側取付部203が締結されることにより、アダプタボディ21は、排気管200に取り付けられる。なお、アダプタ挿入部202の内周面202aは、アダプタボディ外周面21aの形状と一致するものであってもよい。或いは、アダプタ挿入部202の内周面202a又はアダプタボディ外周面21aに複数の突出部が設けられており、アダプタボディ21がアダプタ挿入部202内に挿入される際に、圧着されるものであってもよい。
アダプタボディ外周面21aにおけるアダプタ側取付部28の位置は、以下のように設定される。アダプタ側取付部28と排気管側取付部203が締結された際に、アダプタボディ下端21eが、排気管内壁面201bと一致するように、アダプタ側取付部28の位置が設定される。このように、アダプタボディ下端21eと排気管内壁面201bとを一致させれば、排気管内壁面201bから排気管200内部にアダプタ20が突出することはない。これは、排気の圧損を増加させないための構造である。
アダプタ20は、縦長のステンレス部材を用意し、これを切削や研削することにより製造してもよい。例えば、ステンレス部材をZ軸方向に平行な平面で分割し、それぞれを切削や研削により成形して、成形後のステンレス部材を接合させることにより、アダプタ20を製造してもよい。或いは、一部を切削や研削により形成し、これに別の部材を溶接等することにより製造してもよい。
<尿素水噴射装置100の作動>
次に尿素水噴射装置100の作動について、図2を参照して説明する。
内燃機関300が始動されると、排気が排気管200内を流れる。このとき、排気管200内を流れる排気の一部は、凹形状空間30に流入する。そうすると、凹形状空間30内の排気が、噴射弁先端14に触れる。凹形状空間30内の排気から、噴射弁先端14に熱が移動し、噴射弁10の温度が上昇する。
ここで、排気管200内を流れる排気、及び、凹形状空間30内の排気について説明する。典型的には、排気管内壁面201bから排気管200内部方向に離れた排気の流れである排気主流60は、排気管内壁面201b近傍の排気と比べて、高温である。排気管内壁面201bから排気管200の内部に向かって負の温度勾配が生じる理由は、排気管200自体が持つ放熱作用による。また、凹形状空間30内の排気は、排気管200内を流れる排気主流60よりも速度が低下したものとなる。言い換えると、凹形状空間30内の排気は淀む。
内燃機関300の運転中において、噴射弁10は、制御装置(図示なし)の指示に従い、弁体13を開弁させ、尿素水を噴射する。噴射された尿素水は、噴射弁先端14から排気管200内部に向かって、徐々に断面積が大きくなる形状の尿素水噴霧40となる。上述したように、凹形状空間30を形成するアダプタボディ下面21cは、尿素水噴霧40との干渉を避ける形状を持つ。このため、尿素水噴霧40は、アダプタボディ下面21cとの干渉により拡散性が低下することなく、排気管200内に達する。
以上の状況において、アダプタボディ21に熱媒体が流入される。排気冷却用流路51A内の熱媒体により、凹形状空間30内の排気が冷却される。凹形状空間30内の排気の温度が下がり、凹形状空間30内の排気から噴射弁10に移動する熱量が低減される。さらに、噴射弁冷却用流路50A内の熱媒体により、噴射弁10が冷却される。このようにして、排気から噴射弁10への移動熱量を低減しつつ、噴射弁10が冷却される。排気からの熱移動が原因の噴射弁10の不具合を防止できる。不具合とは、例えば、噴射弁10の弁体13の焼付、噴射弁10内で高温となった尿素水が原因の噴射弁10の腐食や、噴射弁10内で高温となった尿素水が原因の噴射弁10の噴射口付近での膠着、などである。
<第1実施形態の用語と請求項の用語との間の対応>
尿素水噴射装置100が、特許請求の範囲の還元剤噴射装置に対応する。尿素水が、還元剤に対応する。下面形成部21fが、凹空間形成部に対応する。下面形成部21f及び外周面形成部21iが、排気冷却部に対応する。排気冷却用流路51Aが、第1流路に対応する。流路区画部21h及び噴射弁収容室形成部21gが、噴射弁冷却部に対応する。噴射弁冷却用流路50Aが、第2流路に対応する。
<第1実施形態の作用効果>
本実施形態の尿素水噴射装置100は、
内燃機関300から排出された排気を外部に導く排気管200内に尿素水を噴射する噴射弁10と、
一端側に排気管内壁面201bに開口する開口部30aを有し、他端側に噴射弁先端14が設けられる、排気管内壁面201bに対して外向き凹形状の凹形状空間30を形成する凹空間形成部と、
凹形状空間30内の排気を冷却する排気冷却部と、
を備える。
この構成では、噴射弁先端14は、排気管内壁面201bから排気管外側方向に離れた位置となる。よって、噴射弁先端14が排気管内壁面201bから排気管200内に露出する構成と比べて、排気管200内を流れる高温の排気主流60を、噴射弁先端14に直接触れにくくすることができる。したがって、排気から噴射弁10への移動熱量を低減できる。
さらに、凹形状空間30内の排気が排気冷却部により冷却される。このため、噴射弁先端14が触れる排気は、排気冷却部により積極的に冷却されたものとなる。したがって、噴射弁10への移動熱量をさらに低減できる。
ここで、凹形状空間30内の排気は、上述したように、排気管200内を流れる高温の排気主流60に比べて、流速が低下する。言い換えると、凹形状空間30内の排気は淀む。このため、凹空間形成部によって形成された凹形状空間30内の排気は、排気冷却部の冷却により温度が低下しやすいものとなる。このように、凹空間形成部と排気冷却部との協働により、排気から噴射弁10への移動熱量が、さらに低減される。
以上のように、実施形態の尿素水噴射装置100によれば、排気から噴射弁10への移動熱量を低減できる。このため、排気からの熱移動が原因の不具合を防止できる。不具合とは、例えば、噴射弁10の弁体13の焼付、噴射弁10内の高温の尿素水が原因の噴射弁10の腐食や、噴射弁10内の高温の尿素水が原因の噴射弁10の噴射口付近での膠着、などである。
また、尿素水噴射装置100は、噴射弁10を冷却する噴射弁冷却部を備える。
この構成のために、排気から噴射弁10へ移動した熱により温度上昇した噴射弁10が、噴射弁冷却部によって、冷却される。よって、排気からの熱移動が原因の不具合を防止する効果が高まる。
また、本実施形態では、排気冷却部は、凹形状空間30内の排気を冷却する熱媒体を流す第1流路を形成する。噴射弁冷却部は、噴射弁10を冷却する熱媒体を流す第2流路を形成する。第1流路と第2流路とは、連通しており、同じ熱媒体を流す。この構成のために、異なる熱媒体を第1流路及び第2流路に流すことにより噴射弁10及び凹形状空間30内の排気を冷却する構成(後述の第2実施形態)と比べて、熱媒体の流路に関する構成を簡素化でき、部品点数の削減が可能となる。
また、本実施形態では、第1流路は、第2流路よりも、熱媒体の流れ方向の下流側に位置する。
この構成のために、第2流路を流れる熱媒体が、噴射弁10を冷却して、その後、この熱媒体が第1流路に流入して凹形状空間30内の排気を冷却する。よって、この構成は、熱媒体が凹形状空間30内の排気を冷却した後に噴射弁10を冷却する構成と比べると、噴射弁10の冷却という点では有利となる。なぜなら、前者が後者よりも、噴射弁10を冷却する第2流路内の熱媒体の温度が低くなるからである。このようにして、本実施形態では、噴射弁10が高温となることが原因の焼付などの不具合が防止する。
また、本実施形態では、第1流路は、噴射弁先端14よりも、開口部30aに近い場所を通ると共に、熱媒体を開口部30aに近づく方向に流すものである。この構成によれば、凹形状空間30内の排気を確実に冷却できる。
また、本実施形態では、凹形状空間30は、噴射弁先端14が設けられる他端側から、排気管内壁面201bに開口する一端側に向かって、断面積が大きくなる形状である。
この構成によれば、噴射された尿素水の拡散性低下を防止しつつ、凹形状空間30内の排気冷却性向上を実現することができる。この作用効果の詳細は、以下の通りである。
噴射弁10から噴射された尿素水噴霧40は、噴射弁先端14から排気管200内部に向かって、断面積が大きくなる形状である。ここで、凹形状空間30内の排気が持つ熱量が凹形状空間30の体積に比例するところ、冷却により凹形状空間30内の排気の温度を低下させる観点からは、凹形状空間30の体積は小さい方が好適である。そこで、凹空間形成部と噴射された尿素水噴霧40との間の干渉を避けること、及び、凹形状空間30の体積の小さくすること、という2点に着目して、凹形状空間30を上述の形状とした。この凹形状空間30の形状によれば、尿素水の排気管200内における拡散性低下を防止しつつ、凹形状空間30内の排気冷却性向上を実現することができる。
なお、上述の断面積が大きくなる形状とは、厳密に断面積が単調増加である形状を意図しない。例えば、凹空間形成部の外壁面に、凹形状空間30内の排気と第1流路内の熱媒体との間の熱交換率を高めるための凹凸が設けてあってもよい。
本実施形態のアダプタ20は、凹空間形成部と、排気冷却部と、凹空間形成部を排気管200に取り付けるアダプタ側取付部28と、を備える。
このアダプタ20によっても、上述の効果が得られる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態の尿素水噴射装置101を、図3を参照して説明する。説明は、第1実施形態との相違点を中心に行う。
<尿素水噴射装置101の構成>
第1実施形態では、噴射弁冷却用流路50Aと、排気冷却用流路51Aと、は連通しており、同じ熱媒体を流すものであった。これに対し、第2実施形態では、図3に示すように、噴射弁冷却用流路50Bと、排気冷却用流路51Bと、は異なる熱媒体を流すものである。この構成は、以下の点に着目してなされている。
一般に、冷却対象と冷却媒体との温度差が大きいほど、冷却対象はよく冷却される。ここで、典型的には、凹形状空間30内の排気と噴射弁10は、温度が異なる。このため、冷却のために、噴射弁10と凹形状空間30内の排気に対して熱媒体が所望温度差を持てばよいという観点からは、噴射弁冷却用流路50B及び排気冷却用流路51Bに流入される熱媒体の温度域は、必ずしも同じである必要は無い。異なる温度域であってもよい。言い換えると、異なる温度域の噴射弁10と凹形状空間30内の排気それぞれに対して、異なる温度域の熱媒体を用いて冷却しても、所望の冷却が可能である。そこで、利用可能な様々な熱媒体のうち、設計上好適な一の熱媒体を噴射弁10の冷却に使用し、設計上好適な別の熱媒体を凹形状空間30内の排気の冷却に使用する構成を実現できるように、上述の第2実施形態の構成を採用している。利用可能な熱媒体としては、第1実施形態で例示した様々なものが想定できる。このように、排気冷却用流路51Bと噴射弁冷却用流路50Bとに異なる熱媒体を流す構成することで、冷却のための設計自由度を増加させつつ、噴射弁10への移動熱量低減を実現可能にしている。
なお、噴射弁10と凹形状空間30内の排気それぞれに対して所望の冷却が可能であれば、排気冷却用流路51Bに流入させる熱媒体は、噴射弁冷却用流路50Bに流入させる熱媒体と比べて、高い温度域を持つものでもよく、低い温度域を持つものでもよい。
第1実施形態の尿素水噴射装置100は、アダプタボディ下面21cが凹形状であった。そして、凹形状のアダプタボディ下面21cが凹形状空間30を形成していた。これに対し、第2実施形態の尿素水噴射装置101では、アダプタボディ下面21cは平面形状である。そして、アダプタボディ下面21cが、アダプタ挿入部202の内周面202aと共に、凹形状空間30を形成する。
具体的には、図3に示すように、平面形状のアダプタボディ下面21cと、Z軸方向に断面積一定のアダプタ挿入部202の内周面202aと、によって、凹形状の面が形成される。なお、ここで言うZ軸方向に断面積一定とは、厳密に断面積が一定である形状を意図しない。例えば、アダプタ挿入部202の内周面202aに、凹形状空間30内の排気と排気冷却用流路51B内の熱媒体との間の熱交換率を高めるための凹凸が設けてあってもよい。このように形成された第2実施形態の凹形状空間30であっても、第1実施形態の凹形状空間30と同じ機能及び効果を有する。第2実施形態では、アダプタボディ下面21cを平面形状であるので、第1実施形態と比べて、アダプタボディ下面21cを容易に成形可能なものである。
第1実施形態の尿素水噴射装置100では、アダプタボディ21の下面形成部21f及び外周面形成部21iが、排気冷却用流路51Aを形成した。つまり、アダプタ20によって排気冷却用流路51Aが形成された。これに対し、第2実施形態の尿素水噴射装置101は、アダプタ20と離間した別体である排気冷却流路形成部58を備える。つまり、アダプタ20とは別体の排気冷却流路形成部58によって、排気冷却用流路51Bが形成される。
図3に示すように、排気冷却流路形成部58は、アダプタ挿入部202の外周面202bを周方向に囲む。排気冷却流路形成部58は、アダプタ挿入部202の外周面202bに対して、溶接やクランプ、ネジ止め等により締結される。排気冷却流路形成部58とアダプタ挿入部202との間に、凹形状空間30を周方向に囲む排気冷却用流路51Bが形成される。排気冷却用流路51Bは、凹形状空間30の周方向に、熱媒体を流す流路である。アダプタ挿入部202を介して、凹形状空間30内の排気の熱が排気冷却用流路51B内の熱媒体に移動する。なお、Z軸に垂直な平面による排気冷却用流路51Bの断面は、凹形状空間30の全周を囲む環状であってもよいし、C字形状であってもよい。
排気冷却流路形成部58には、排気管側導入路形成部21lと排気管側排出路形成部21mとが設けられる。排気管側導入路形成部21lは、熱媒体を排気冷却用流路51Bに導入させる排気管側導入路55を形成するものである。排気管側排出路形成部21mは、熱媒体を排気冷却用流路51Bから排出させる排気管側排出路56を形成するものである。
第2実施形態のアダプタボディ21の構造の一例は、以下の通りである。図3に示すように、アダプタボディ21を2重管構造とする。2重管構造における、内側管状部が噴射弁収容室形成部21gであり、外側管状部が外周面形成部21iである。噴射弁収容室形成部21gと外周面形成部21iとの間に、噴射弁冷却用流路50Bが形成される。噴射弁冷却用流路50Bは、噴射弁収容室22を、Z軸周りに囲むように形成される。噴射弁冷却用流路50Bは、噴射弁収容室22の周方向に、熱媒体を流す。なお、Z軸に垂直な平面による噴射弁冷却用流路50Bの断面は、噴射弁収容室形成部21gの全周を囲む環状であってもよいし、C字形状であってもよい。アダプタボディ外周面21aに、アダプタ側導入路形成部21kと、アダプタ側排出路形成部21jと、が設けられる。アダプタ側導入路形成部21kは、熱媒体を噴射弁冷却用流路50Bに導入させるアダプタ側導入路54を形成するものである。アダプタ側排出路形成部21jは、熱媒体を噴射弁冷却用流路50Bから排出させるアダプタ側排出路53を形成するものである。
<第2実施形態の用語と請求項の用語との間の対応>
尿素水噴射装置101が、還元剤噴射装置に対応する。排気冷却流路形成部58が排気冷却部に対応する。排気冷却用流路51Bが、第1流路に対応する。外周面形成部21i及び噴射弁収容室形成部21gが、噴射弁冷却部に対応する。噴射弁冷却用流路50Bが、第2流路に対応する。
<第2実施形態の作用効果>
第2実施形態では、
排気冷却部は、凹形状空間30内の排気を冷却する第1熱媒体を流す第1流路を形成するものであり、
噴射弁冷却部は、噴射弁10を冷却する熱媒体であって第1熱媒体と異なる第2熱媒体を流す第2流路を形成するものである。
この構成では、異なる温度域の熱媒体を使用して、凹形状空間30内の排気と噴射弁10とを冷却可能になる。よって、冷却のための設計自由度を増加させつつ、噴射弁10への移動熱量を低減できるという、第1実施形態では得られない作用効果を有する。
また第2本実施形態では、アダプタ20とは別体の排気冷却流路形成部によって、第1流路が形成される。このため、アダプタ20によって第1流路が形成される第1実施形態と比べて、アダプタ20の構成を簡素化できる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態の尿素水噴射装置102を、図3を参照して説明する。説明は、第2実施形態との相違点を中心に行う。
<尿素水噴射装置102の構成>
第2実施形態では、凹形状空間30内の排気を冷却するために、熱媒体(液体)を流す排気冷却用流路51Aを形成した。これに対し、第3実施形態の尿素水噴射装置102は、排気冷却用流路51Aに代えて空冷フィン59を備える。この構造の一例は、以下の通りである。
図4に示すように、空冷フィン59は、アダプタ挿入部202の外周面202bのうち、凹形状空間30を周方向に囲む領域に形成される。具体的には、空冷フィン59は、アダプタ挿入部202の外周面202bのうち、排気管側取付部203と排気管外壁面201aとの間の領域に設けられる。空冷フィン59は、アダプタ挿入部202に対して、溶接やクランプ、ネジ止め等により締結される。このため、凹形状空間30内の排気の熱は、空冷フィン59から空気に放熱される。第3実施形態では、空冷フィン59を介して凹形状空間30内の排気の熱を受け取る空気が、凹形状空間30内の排気を冷却する熱媒体である。なお、空冷フィン59は、凹形状空間30の全周を囲む環状であってもよいし、C字形状であってもよいし、周方向に互いに離間するものであってもよい。また、空冷フィン59に送風する送風ファンを設けた強制空冷式であってもよいし、送風ファンを設けない自然空冷式であってもよい。
第3実施形態は、第1〜第2実施形態のように凹形状空間30内の排気を冷却する熱媒体を流す流路を形成せずに、空冷フィン59により、凹形状空間30内の排気を冷却する。よって、凹形状空間30内の排気を冷却する熱媒体を引き込む管等の構成が不要である。このように、第3実施形態は、凹形状空間内の排気を冷却するための構造を簡素化できる。
<第3実施形態の用語と請求項の用語との間の対応>
尿素水噴射装置102が、還元剤噴射装置に対応する。空冷フィン59が、排気冷却部に対応する。噴射弁冷却用流路50Bが、第2流路に対応する。外周面形成部21i及び噴射弁収容室形成部21gが、噴射弁冷却部に対応する。
(その他の実施形態)
以上、発明の好ましい実施形態について説明したが、発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、以下に例示するように種々変形して実施することが可能である。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
第1〜第3実施形態では、排気処理システムを構成する還元剤噴射装置として、尿素水を還元剤として用いる尿素水噴射装置を例示した。しかし、本発明は、尿素水以外の還元剤を用いる還元剤噴射装置にも適用できる。例えば、炭化水素を還元剤として用いる還元剤噴射装置にも適用可能である。
第1〜第3実施形態では、排気冷却部及び噴射弁冷却部の両方を備える構成を例示した。しかし、排気冷却部及び噴射弁冷却部のうち排気冷却部のみを備える構成でもよい。
第1実施形態では、排気冷却用流路が、噴射弁冷却用流路よりも、熱媒体流れ方向において、下流側に位置する構成を例示した。しかし、排気冷却用流路が、噴射弁冷却用流路よりも、熱媒体流れ方向において、上流側に位置する構成であってもよい。
第1実施形態では、凹形状空間が、噴射弁先端から排気管内壁面に向かって、断面積が大きくなる構成を例示した。しかし、凹形状空間は、還元剤噴霧と排気冷却部との間の干渉を避けることができる形状であれば、噴射弁先端から排気管内壁面に向かって断面積が大きくなる形状でなくてもよい。例えば、第2〜第3実施形態のように、噴射弁先端から排気管内壁面に向かって断面積が一定である形状であってもよい。
第1〜第3実施形態では、噴射弁を冷却する熱媒体を流す噴射弁冷却用流路を形成した。しかし、噴射弁を冷却する構成は、噴射弁冷却用流路に熱媒体を流す構成に限定されない。例えば、空冷フィンにより、噴射弁を冷却してもよい。
第1〜第2実施形態では、凹部形状空間内の排気を冷却する熱媒体を流す排気冷却用流路を形成した。第3実施形態では、凹部形状空間内の排気を冷却する空冷フィンを構成した。しかし、凹部形状空間内の排気を冷却する構成は、上述の各実施形態のものに限定されない。例えば、第1〜第2実施形態において、空冷フィンにより凹部形状空間内の排気を冷却してもよい。第3実施形態において、排気冷却用流路に熱媒体を流すことにより、凹部形状空間内の排気を冷却してもよい。
第2〜第3実施形態では、排気冷却部がアダプタと離間した別体である構成を例示した。しかし、第1実施形態と同様に、排気冷却部がアダプタの一部として一体となっている構成としてもよい。この構成によれば、冷却のための排気冷却部及び噴射弁冷却部の両方をアダプタに纏めることができる。つまり、冷却機能を持つ複数の部位をアダプタに纏めることができる。この構成は、同様の機能をモジュール化するという観点で好適である。
第1〜第3実施形態では、噴射弁とアダプタとが別体である構成を例示した。しかし、噴射弁とアダプタとを一体である構成としてもよい。例えば、噴射弁の噴射弁ボディ11とアダプタとが一体の部品となっている構成を採用しても良い。この構成では、噴射弁をアダプタに固定するための構成及び工程を簡略化される。或いは、噴射弁ボディ11と、アダプタの一部と、が一体の部品となっている構成としてもよい。
第1〜第3実施形態では、アダプタと排気管が脱着可能な別体である構成を例示した。しかし、アダプタが排気管に溶接等により予め一体とされた構成としてもよい。
第1〜第3実施形態では、アダプタが排気管に取り付けられた際に、噴射弁の軸方向が排気管の伸長方向に対して垂直となる構成を例示した。しかし、アダプタが排気管に取り付けられた際に、噴射弁の軸方向が排気管の伸長方向に対して斜めとなる構成でもよい。例えば、噴射弁の先端が、排気管下流方向を向くように構成してもよい。
第1〜第3実施形態では、アダプタひいては噴射弁は、排気管の直線部に取り付けられた。しかし、アダプタひいては噴射弁は、排気管の曲部に取り付けられる構成でもよい。
第1〜第3実施形態では、アダプタを排気管に取り付ける構造として、アダプタ側取付部と排気管側取付部とを、V字型クランプで締結する構造を例示した。しかし、アダプタを排気管に取り付ける構造は特に限定されない。例えば、アダプタ側取付部と排気管側取付部とをガスケットを介してネジ止めすることにより、アダプタを排気管に取り付ける構造としてもよい。
第1〜第3実施形態において、排気管における還元剤噴射装置の排気上流側に、特許文献1と同様な排気管内に突出した排気偏向体を設けてもよい。これによれば、噴射弁先端に高温の排気主流に直接ふれさせ難くさせる効果が高まる。