JP6930142B2 - リチウムドープ負極の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、直接的ドープ法に用いる圧延リチウム箔を製造するにあたり、リチウム片に樹脂フィルムを重ねた状態で圧延する方法が提案されている。そして、特許文献2には、当該リチウム片とフィルムとの間に有機溶媒を介在させることも提案されている。
つまり、本発明のリチウムドープ負極の製造方法においては、第1負極活物質層と第2負極活物質層との2つの負極活物質層でリチウム箔を挟んだ直接的ドープ法により、実質的に、リチウム箔の厚さ方向における半分量のリチウムが第1負極活物質層にドープされ、当該厚さ方向における他の半分量のリチウムが第2負極活物質層にドープされると考えられる。このため、本発明のリチウムドープ負極の製造方法によると、製造困難な薄いリチウム箔を用いずに比較的厚い圧延リチウムを用いる場合にも、第1負極活物質層及び第2負極活物質層のそれぞれに適切な量のリチウムをドープし得る。
以下、必要に応じて、本発明のリチウムドープ負極の製造方法を単に本発明の製造方法といい、本発明の製造方法で製造されたリチウムドープ負極を本発明のリチウムドープ負極という。また、特に説明のない場合、単に負極活物質層という場合には、第1負極活物質層と第2負極活物質層とを総称したものとする。
以下、必要に応じて、上に例示したリチウム箔と負極との積層体を、本発明のリチウム負極複合体、或いは単にリチウム負極複合体という場合がある。
この電解液を用いたリチウムドープは、平板状のリチウム負極複合体に対して行っても良いし、ロール状のリチウム負極複合体に対して行っても良い。或いは、一旦ロール状に巻き取り、再度平板状に延ばしたリチウム負極複合体に対して行っても良い。何れの場合にも、比較的厚い圧延リチウム箔を用いた直接的ドープ法により負極活物質層に適切な量のリチウムをドープできるという、上記した本発明の効果に変わりはない。
しかし、本発明の製造方法によると、上記したように比較的厚いリチウム箔を用い得るため、リチウムイオン二次電池に必要以上のリチウムが持ち込まれる等の薄いリチウム箔に起因する問題を抑制し得る。つまり、本発明の製造方法は、リチウムドープ負極の製造効率を高めるために、非常に有用である。
以下、剥離層及び潤滑剤について説明する。
剥離層及び潤滑剤は、圧延工程において、樹脂フィルムとリチウム箔との間に介在して、両者の強固な付着を抑制できれば良い。なお、フィルムを用いない場合にも、圧延工程において、剥離層及び/又は潤滑剤がロールとリチウム箔との間に介在すれば、リチウム箔とロールとの強固な付着を抑制でき、リチウム箔の破損等を抑制し得る。何れの場合にも、剥離層及び潤滑剤は上記の機能を発揮できれば良く、その材料は特に限定しない。
R5 ySiO(4−y)×0.5 (1)
(式中R5は、それぞれ独立に、置換されていても良い炭素数1〜20の一価又は二価の炭化水素基であり、yは1.0〜3.0である。)
R6 ySiO(4−y)×0.5 (1−1)
(式中R6はそれぞれ独立にアルケニル基でありyは1.0〜3.0である。)
また、後述するシリコーンレジンの原料をシリコーン粘着剤の原料と組み合わせてシリコーン層を形成しても良い。なお、東レ・ダウコ−ニング株式会社製のSD4584は3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むものであり、当該原料を用いて得られたシリコーン粘着剤は、シリコーンレジンと共通する特性を発揮し、粘着性と剥離性とのバランスの良いシリコーン層を形成し得ると考えられる。
以下、シリコーンレジンについて説明する。
R1R2SiO(0.5×2) (2)
R1SiO(0.5×3) (3)
SiO(0.5×4) (4)
(式中R1、R2は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、ビニル基、及び、アミノ基の何れかである。R1、R2は同一であっても良いし異なっていても良い。)
R1R2Si(OR3)2 (2−1)
R1Si(OR3)3 (3−1)
Si(OR3)4 (4−1)
(式中R1、R2は、それぞれ独立に、H、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、ビニル基、及び、アミノ基の何れかである。R3は炭素数1〜3のアルキル基である。R1〜R3はそれぞれ同一であっても良いし異なっていても良い。)
具体的にはロールの材料は、ビッカース硬さ50HV以上であるのが好ましく、70HV以上であるのがより好ましく、100HV以上であるのが更に好ましく、150HV以上であるのがなお好ましい。ビッカース硬さ50HV以上の材料を例示すると、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル鋼、ニッケルモリブデンクロム系合金、ニッケルクロム鉄系合金、タングステン、タングステン鋼、モリブデン、チタン、チタン合金、アルミニウム青銅、真鍮、銅合金、炭素鋼等が挙げられる。価格、加工性等を勘案すると、このうちステンレス鋼を用いるのが特に好ましい。
具体的には、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb2O5、TiO2、Li4Ti5O12、WO2、MoO2、Fe2O3等の酸化物、又は、Li3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
導電助剤及び結着剤以外の分散剤などの添加剤は、公知のものを採用することができる。
また、集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。
リチウムイオン二次電池用の一般的な正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物、Li2MnO3を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn2O4等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePO4FなどのLiMPO4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO3などのLiMBO3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。
有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。電解液には、これらの有機溶媒を単独で用いてもよいし、又は、複数を併用してもよい。
実施例1のリチウムドープ負極の製造方法を模式的に表す説明図を図1に示し、図1におけるA部分の要部拡大図を図2に示す。実施例1のリチウムドープ負極の製造方法におけるドープ工程を模式的に表す説明図を図3に示す。以下、上、下、先、後とは、図1に示す上、下、先、後を指す。
実施例1のリチウムドープ負極の製造方法は、図1に示すロールプレス装置1を用いて行う。
図1に示すように、ロールプレス装置1は、ロールプレス部2、搬送部3、及びリチウム箔供給部4を備える。
フィルムリチウム積層本体61aは、負極90とともに、第1ロール21と第2ロール22との間に通され、さらに、フィルム68bが剥がされた圧延リチウム箔65の状態で、負極90とともに負極巻き取りロール32に巻き取られる。
圧延リチウム箔65の材料であるリチウム原箔としては、厚さ100μmのリチウム箔を用いる。リチウム箔圧延工程では、このリチウム原箔の両面に、各々潤滑剤を塗布し、更にその上に各々フィルム68a及びフィルム68bを重ね、図略のロールプレス装置で圧延して、厚さ約20μmの圧延リチウム箔65を得る。
フィルム68a及びフィルム68bとしては、リンテック株式会社製、厚さ約25μmのものを用いる。当該フィルム68a及びフィルム68bは、ポリエチレンテレフタレート製の樹脂フィルム上に、シリコーン層が形成されたものである。当該シリコーン層の原料は、付加硬化型のシリコーン粘着剤であるKS−847H(信越化学工業株式会社製)を固形分換算で30質量部、同じく付加硬化型のシリコーン粘着剤であるSD4584(東レ・ダウコ−ニング株式会社製)を固形分換算で18質量部、及び白金触媒であるPL−50T(信越化学工業株式会社製)を1.6質量部に、溶剤としてのトルエンを加えて、固形分濃度を約30質量%としたものである。当該シリコーン層の原料を、上記した樹脂フィルム上に塗布し、130℃で2分間加熱し硬化させるとともに溶剤を揮発させることで、シリコーン層を形成する。シリコーン層の厚さは0.1〜0.5μm、樹脂フィルムの厚さは25μmである。このようにして得られるフィルム68a及びフィルム68bを、シリコーン層をリチウム原箔に向けて、潤滑剤を充分に塗布したリチウム原箔の両面にそれぞれ重ねることで、リチウム原箔、フィルム68a及びフィルム68bの積層体が得られる。
(負極形成工程)
(シリコン材料の製造)
1質量%のフッ化水素を含有する濃塩酸を準備し、0℃の氷浴下、20mlの当該濃塩酸に5gのCaSi2を加えて1時間攪拌し、その後水を加えて更に5分間攪拌して反応液を得た。当該反応液を濾過して得られた黄色の固形分を、水及びエタノールで洗浄し、これを減圧乾燥することにより、層状ポリシランを得た。この層状ポリシランを、アルゴン雰囲気下、500℃で加熱することにより、ポリシランから水素が離脱したシリコン材料を得た。
当該シリコン材料を負極活物質として用い、以下の方法で負極90を製造する。
負極活物質として上記のシリコン材料を70質量部、その他の負極活物質として天然黒鉛を15質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、及び結着剤としてポリアミドイミド15質量部を混合するとともに、この混合物に適量のN−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状の負極合材を得る。次いで、負極用集電体91として、20μmの電解銅箔を準備し、ドクターブレードを用いて当該負極用集電体91の両面に各々負極合材を塗布し、負極合材を材料とする負極合材層と、負極用集電体91と、を有する負極前駆体を得る。この負極前駆体を乾燥させることで、負極合材中のN−メチル−2−ピロリドンが揮発する。
その後、乾燥後の負極前駆体を、図略のロールプレス装置により、負極合材層の厚さが70μmとなるように圧延する。なお、この圧延によって、負極合材層と負極用集電体91とが強固に一体化する。このときの負極合材層の密度は1.2g/cm3となる。圧延後の負極前駆体を更に減圧下にて200℃で2時間加熱することで、負極用集電体91と、負極用集電体91の一方の面に形成されている第1負極活物質層92と、負極用集電体91の他方の面に形成されている第2負極活物質層93と、を有する負極90が得られる。当該負極90については、ロール芯に巻き取って、負極巻き出しロール31に用いる。負極巻き出しロール31の負極90については、上記したフィルムリチウム積層体61とともに、以下の積層工程に供する。
積層工程では、図1に示すロールプレス装置1を用い、以下の手順でリチウム負極複合体95を製造する。
先ず、負極巻き出しロール31から、上記の負極形成工程で得られた負極90を巻き出し、第1ロール21及び第2ロール22の間に通す。また、箔巻き出し部41の箔巻き出しロール41aから、フィルムリチウム積層体61の一方のフィルム68aを剥がして第1フィルム巻き取りロール41bに巻き取る。次いで、図1及び図2に示すように、残りのフィルムリチウム積層本体61aを、圧延リチウム箔65を第1負極活物質層92に向けつつ負極90の上面に重ねる。
プレス工程では、積層工程で得られた負極90とフィルムリチウム積層本体61aとの積層体を、第1ロール21と第2ロール22との間に通す。第1ロール21及び第2ロール22の間を通過する際に、負極90とフィルムリチウム積層本体61aとの積層体には、第1ロール21及び第2ロール22からの荷重が作用するため、フィルムリチウム積層本体61aの圧延リチウム箔65は、当該荷重によって第1負極活物質層92に圧着されて一体化する。
第1ロール21と第2ロール22との間を通過した後の負極90とフィルムリチウム積層本体61aとの積層体には、フィルム68bが重ねられているため、巻回工程においては、先ず、当該積層体からフィルム68bを剥がす。剥がしたフィルム68bは、第3補助ロール35を経由して、第2フィルム巻き取りロール42に巻き取る。残りの積層体は、負極巻き取りロール32に巻き取る。図3に示すように、巻き取られた積層体において、圧延リチウム箔65は第1負極活物質層92及び第2負極活物質層93で挟まれる。したがって、当該巻回工程によって負極90及び圧延リチウム箔65で構成されるリチウム負極複合体95が得られる。なお、当該リチウム負極複合体95はロール状に巻き取られるため、本発明における巻回体に相当するといえる。
上記の工程で得られたリチウム負極複合体95については、以下のドープ工程に供する。
ドープ工程においては、上記のリチウム負極複合体95をロールに巻き取ったままで電解液に接触させることで、第1負極活物質層92及び第2負極活物質層93へのリチウムのドープを行う。ここで用いる電解液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものである。図3に示すように、圧延リチウム箔65に含まれるリチウムは、電解液の存在下で、当該圧延リチウム箔65を挟む第1負極活物質層92及び第2負極活物質層93に急速にドープされると考えられる。ドープが完了すると、圧延リチウム箔65は消失するため、ドープ後のリチウム負極複合体95すなわちリチウムドープ負極においては、第1負極活物質層92及び第2負極活物質層93は容易に分離できる。
(リチウム負極複合体の製造)
実施例2のリチウムドープ負極の製造装置を用いる実施例2のリチウムドープ負極の製造方法を模式的に表す説明図を図4に示し、図4におけるA部分の要部拡大図を図5に示す。実施例2のリチウムドープ負極の製造方法におけるドープ工程を模式的に表す説明図を図6に示す。以下、上、下、先、後とは、図4に示す上、下、先、後を指す。
実施例2の製造方法においては、第1集電体91a及び第2集電体91bとして、実施例1の製造方法で用いた負極用集電体91と同じものを用いる。この第1集電体91a上に実施例1の製造方法と同様にして第1負極活物質層92を形成し、第1負極90aとする。同様に、第2集電体91b上に第2負極活物質層93を形成し、第2負極90bとする。実施例2の製造方法における積層工程では、第1負極90a及び第2負極90bで圧延リチウム箔65を挟んでリチウム負極複合体95とする。当該リチウム負極複合体95については、以下のプレス工程に供する。
プレス工程では、図4に示すロールプレス装置1を用いて、上記のリチウム負極複合体95をプレスする。プレス後のリチウム負極複合体95は、負極巻き取りロール32に巻き取り、実施例1の製造方法同様に、ドープ工程に供する。なお、実施例2の製造方法でロール状に巻き取られたリチウム負極複合体95においても、圧延リチウム箔65は第1負極活物質層92及び第2負極活物質層93に挟まれる。したがって、当該ロール状に巻き取られたリチウム負極複合体95もまた、本発明における巻回体に相当する。
実施例1の製造方法で用いた負極90の両面に厚さ20μmの圧延リチウム箔65を積層し、プレスしたリチウム負極複合体を、電解液と接触させた場合、電解液に接触させずそのまま放置しておいた場合、及び、電解質を含まない有機溶媒に接触させた場合、につき、それぞれ、リチウムドープの程度について評価した。電解液としては上記のドープ工程で用いたものと同じ電解液を用いた。この電解液に用いた有機溶媒を、有機溶媒として用いた。
電解液に接触させずそのまま放置したリチウム負極複合体を試験1−1とし、電解液に接触させたリチウム負極複合体を試験1−2とし、有機溶媒に接触させたリチウム負極複合体を試験1−3として、各リチウム負極複合体につき、圧延リチウム箔の層、すなわちリチウム層の厚さの経時変化を測定した。なお、試験後のリチウム負極複合体は、リチウムがドープされたものであるため、リチウムドープ負極ともいえる。
試験例1−1及び試験例1−2につき、結果を表1に示す。
ロールプレス装置による圧延時における剥離層及び潤滑剤の効果を評価した。具体的には、2つのロールの隙間及び2つのロールによる荷重を種々に変更しつつ、リチウム原箔をそのまま又は樹脂フィルムに挟んでロールで圧延し、変形や破損のない圧延リチウム箔の厚さの限界値を測定した。当該測定を、剥離層及び/又は潤滑剤の存在下若しくは非存在下で行うことで、剥離層及び/又は潤滑剤の効果を評価した。
試験例2−1では、剥離層を有するフィルムで厚さ100μmのリチウム原箔を挟み、かつ、フィルムの剥離層とリチウム原箔との間に潤滑剤としてのヘキサンを介在させて、フィルムリチウム積層体を構成した。ロールとしては、ステンレス鋼製のものを用いた。当該フィルムリチウム積層体を圧延し、得られた圧延リチウム箔の厚さは10μmであった。試験2−1の結果を、後述する試験2−2〜2−10の結果とともに、表2に示す。
なお、フィルムとしては、上記した実施例1の製造方法におけるリチウム箔圧延工程と同様に、リンテック株式会社製、厚さ約25μmのフィルムを用いた。当該フィルムは、剥離層にシリコーン粘着剤を含む。
試験例2−2では、フィルムを用いず、剥離層を設けたロールを用いてリチウム原箔を圧延したこと以外は、試験2−1と同じ方法でリチウム箔を圧延した。ロールプレス装置の2つのロールとしては、シリコーン層を一体に有するものを用いた。
以上のようにして得たシリコーン層を一体に有するロールを用い、リチウム原箔の圧延を行った。
試験例2−2で測定した圧延リチウム箔の厚さは、10μmであった。
試験例2−3では、フィルムとして剥離層を有さず樹脂フィルムのみで構成されたものを用い、一方のフィルムとリチウム原箔との間にだけ潤滑剤を存在させ、他方のフィルムはリチウム原箔に直接接触させた。それ以外は、試験例2−1と同じ方法でリチウム箔を圧延した。試験例2−3で測定した圧延リチウム箔の厚さは、80μmであった。
試験例2−4では、フィルムとして剥離層を有さず樹脂フィルムのみで構成されたものを用いたこと以外は、試験例2−1と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
試験例2−4で測定した圧延リチウム箔の厚さは、30μmであった。
試験例2−5では、ロールとして剥離層を有さない高密度ポリエチレン製のロールを用いたこと以外は、試験例2−2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
試験例2−5で測定した圧延リチウム箔の厚さは、50μmであった。
試験例2−6では、ロールとして剥離層を有さないポリアセタール製のロールを用いたこと以外は、試験例2−2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
試験例2−6で測定した圧延リチウム箔の厚さは、30μmであった。
試験例2−7では、ロールとして剥離層を有さないエポキシ樹脂とガラス繊維とで構成されるFRP(繊維強化プラスチック)製のロールを用いたこと以外は、試験例2−2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
試験例2−7で測定した圧延リチウム箔の厚さは、90μmであった。
試験例2−8では、ロールとして剥離層を有さないポリエーテルエーテルケトン樹脂製のロールを用いたこと以外は、試験例2−2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
試験例2−8で測定した圧延リチウム箔の厚さは、90μmであった。
試験例2−9では、ロールとして剥離層を有さないステンレス鋼製のロールを用いたこと以外は、試験例2−2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
試験例2−9で測定した圧延リチウム箔の厚さは、90μmであった。
試験例2−10では、剥離層としてDLC(ダイヤモンドライクカーボン)層を有するロールを用いたこと以外は、試験例2−2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
試験例2−10で測定した圧延リチウム箔の厚さは、80μmであった。
実施例1の(負極の製造)の項で製造した、プレス工程前の負極90を用いて電池を製造した。対極は金属リチウム箔(厚さ500μm)であり、電解液は上記のドープ工程に用いたものと同じ電解液であった。
3:搬送部 4:リチウム箔供給部
21:第1ロール 22:第2ロール
31:負極巻き出しロール 31a:第1負極巻き出しロール
31b:第2負極巻き出しロール 32:負極巻き取りロール
33:第1補助ロール 34:第2補助ロール
35:第3補助ロール 41:箔巻き出し部
41a:箔巻き出しロール 41b:第1フィルム巻き取りロール
42:第2フィルム巻き取りロール 61:フィルムリチウム積層体
65:圧延リチウム箔 68a:フィルム
68b:フィルム 90:負極
90a:第1負極 90b:第2負極
91:負極用集電体 91a:第1集電体
91b:第2集電体 92:第1負極活物質層
93:第2負極活物質層 95:リチウム負極複合体
Claims (7)
- 集電体と前記集電体の一方の面に形成された第1負極活物質層と前記集電体の他方の面に形成された第2負極活物質層とを有する負極の、前記第1負極活物質層上にリチウム箔を積層して、リチウム負極複合体を形成する積層工程と、
前記リチウム負極複合体を巻回し、前記リチウム箔が前記第1負極活物質層及び前記第2負極活物質層で挟まれた巻回体を形成する巻回工程と、を有し、
前記巻回体における張力は10〜50Nの範囲内である、リチウムドープ負極の製造方法。 - 第1負極活物質層を有する第1負極と、第2負極活物質層を有する第2負極と、でリチウム箔を挟んでリチウム負極複合体を形成する積層工程と、
前記リチウム負極複合体を巻回し、前記リチウム箔が前記第1負極活物質層及び前記第2負極活物質層で挟まれた巻回体を形成する巻回工程と、を有し、
前記巻回体における張力は10〜50Nの範囲内である、リチウムドープ負極の製造方法。 - 集電体と前記集電体の一方の面に形成された第1負極活物質層と前記集電体の他方の面に形成された第2負極活物質層とを有する負極の、前記第1負極活物質層上にリチウム箔を積層して、リチウム負極複合体を形成する積層工程と、
前記リチウム負極複合体を巻回し、前記リチウム箔が前記第1負極活物質層及び前記第2負極活物質層で挟まれた巻回体を形成する巻回工程と、
ドープ後の前記巻回体を解き、前記第1負極活物質層と前記第2負極活物質層とを分離する工程と、を有する、リチウムドープ負極の製造方法。 - 第1負極活物質層を有する第1負極と、第2負極活物質層を有する第2負極と、でリチウム箔を挟んでリチウム負極複合体を形成する積層工程と、
前記リチウム負極複合体を巻回し、前記リチウム箔が前記第1負極活物質層及び前記第2負極活物質層で挟まれた巻回体を形成する巻回工程と、
ドープ後の前記巻回体を解き、前記第1負極活物質層と前記第2負極活物質層とを分離する工程と、を有する、リチウムドープ負極の製造方法。 - 前記巻回体における張力は10〜50Nの範囲内である、請求項3又は請求項4に記載のリチウムドープ負極の製造方法。
- 有機溶媒とリチウム塩とを含む電解液を前記巻回体に接触させるドープ工程を有する、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のリチウムドープ負極の製造方法。
- 前記積層工程における前記リチウム箔の厚さは20μm以上である、請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のリチウムドープ負極の製造方法。
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