JP6904113B2 - リチウム箔の圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム箔を圧延する方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。リチウムイオン二次電池は、現在、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウムを吸着及び放出できる活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そして、両極間に存在する電解液中を電荷担体であるリチウムイオンが移動することにより、リチウムイオン二次電池は動作する。
ところで、必要に応じて、活物質、電極、リチウムイオン二次電池等の対象物にリチウムイオンを導入する場合がある。以下、当該対象物にリチウムイオンを導入することを、リチウムをドープするという。
リチウムのドープ方法として、リチウムのドープ対象となる電極と、対極としての金属リチウムと、を用いたドープ用のリチウム電池を製造し電極にリチウムをドープする方法が知られている。以下、このドープ方法を電気的ドープ法という。当該電気的ドープ法においては、上記したドープ用のリチウム電池を充電又は放電することで、対極のリチウムイオンを電極に移動させて、電極にリチウムをドープする。リチウムがドープされた電極は、ドープ用のリチウム電池から取り外されて、リチウムイオン二次電池用の電極として用いられる。
このような電気的ドープ法は、リチウムのドープ方法として有効ではあるが、多大な工数を要するため、リチウムイオン二次電池を工業的に生産するための方法としては現実的でない。
他のリチウムドープ方法として、電極における活物質層にリチウム箔を積層したものをリチウムイオン二次電池の電極に用い、当該リチウムイオン二次電池内でリチウム箔から活物質にリチウムイオンを直接ドープする方法も提案されている。以下、このドープ方法を直接的ドープ法と呼ぶ。当該直接的ドープ法を採用すれば、リチウムのドープに要する工数を低減できる可能性がある。
ところで、直接的ドープ法用のリチウム箔としては、比較的薄いものを用いる必要がある。厚いリチウム箔を直接的ドープ法に用いると、余分なリチウムがリチウムイオン二次電池内で異物となるおそれがあり、また、リチウムイオン二次電池のコストが高くなるためである。
リチウムは比較的柔らかく延び易い性質を有する。しかしながら、柔らかいリチウム箔は圧延時に過剰に変形するために、圧延後のリチウム箔には型崩れや破損が生じ易い。このため実際には、薄くかつ良好な形状のリチウム箔を圧延により製造することは容易ではない。以下、必要に応じて、圧延前或いは圧延中のリチウム箔をリチウム原箔といい、圧延されたリチウム箔を製品リチウム箔という。
製品リチウム箔の変形の原因の1つは、以下のように予想される。圧延時においては、圧延用のロールからリチウム原箔に大きな力が作用する。すると、ロールとリチウム原箔とが強く接触し、場合によってはリチウム原箔がロールに圧着される。既述したように、リチウム箔は柔らかく延び変形し易いので、一旦リチウム原箔がロールに圧着されると、圧延後のリチウム箔つまり製品リチウム箔を変形や破損なくロールから剥がすのは困難であり、結果的に製品リチウム箔には型崩れや破損が生じると考えられる。特に、圧延によって薄い製品リチウム箔を製造するためには、上記の型崩れや破損がより生じ易くなると考えられる。
特許文献1には、リチウム電池の負極活物質用の製品リチウム箔を製造するにあたり、ロールの表面に電解液用の有機溶媒を塗布し圧延する方法が提案されている。特許文献1には、当該有機溶媒が潤滑剤として機能する旨が開示され、リチウム原箔とロールとの間に潤滑剤を介在させることで、上記した製品リチウム箔の破損等を抑制できる旨が記載されている。
特許文献2には、直接的ドープ法に用いる製品リチウム箔を製造するにあたり、リチウム片に樹脂フィルムを重ねた状態で圧延する方法が提案されている。そして、特許文献2には、当該リチウム片とフィルムとの間に有機溶媒を介在させることも提案されている。
特開平10−58008号公報 特開2016−103503号公報
既述したように、特許文献1及び特許文献2においては、潤滑剤として有機溶媒が用いられている。しかし、本発明の発明者が実際に試験した結果、ロールとリチウム原箔との間に単に潤滑剤として有機溶媒を介在させるだけでは、変形や破損のない薄い製品リチウム箔を得ることは依然として困難であった。つまり、この場合にも、破損等のない薄い製品リチウム箔を得るためには、リチウム原箔に作用する荷重を小さくして幾度も圧延するほかなく、薄い製品リチウム箔を少ない工数で製造し難い問題があった。
また、本発明の発明者は、上記の特許文献1及び特許文献2に開示される方法を組み合わせ、リチウム原箔とロールとの間に樹脂フィルムと潤滑剤とを介在させる方法で製品リチウム箔を製造した。しかし当該方法によっても、充分に薄いリチウム箔を得るのは困難であることが判明した。したがって、本発明の発明者は、直接的ドープ法に用いる薄い製品リチウム箔を製造するためには、従来の方法とは異なる新規なリチウム箔の圧延方法が必要だと考えた。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、薄いリチウム箔を製造できる新規なリチウム箔の圧延方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者は、リチウム箔の圧延方法において、充分に薄いリチウム箔を製造するためには、潤滑剤として単に有機溶媒のみを用いる態様では、不十分であると考えた。そして、リチウム箔とロールとの圧着を防止し得る、当該潤滑剤にかわる新たな材料及びその好適な使用状態を探求し、本発明を完成した。
すなわち、上記課題を解決する本発明のリチウム箔の圧延方法は、
2つのロールの間でリチウム箔を圧延するリチウム箔の圧延方法であって、
前記ロールと前記リチウム箔との間にシリコーン層を介在させるリチウム箔の圧延方法である。
本発明のリチウム箔の圧延方法は、薄いリチウム箔を製造できる新規なリチウム箔の圧延方法である。
実施例1のリチウム箔の圧延装置を模式的に表す説明図である。 実施例1のリチウム箔の圧延装置の要部拡大図である。 実施例2のリチウム箔の圧延装置の要部拡大図である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることができる。
本発明のリチウム箔の圧延方法は、2つのロールの間でリチウム箔を圧延するリチウム箔の圧延方法であって、前記ロールと前記リチウム箔との間にシリコーン層を介在させる
方法である。
本発明のリチウム箔の圧延方法は、2つのロールの間でリチウム原箔を圧延する点においては従来の圧延方法と同様であるが、シリコーン層をロールとリチウム原箔との間に介在させるという点において、従来の圧延方法と大きく異なる。
シリコーン層を構成するシリコーンは、シロキサン結合による主骨格を持つ化合物であり、主として当該シロキサン結合に由来する各種の特性を有する。シリコーンの特性のうち、特に、相手材と固着し難い性質は、ロールとリチウム箔とを圧着させることなくリチウム箔を圧延することに大きく寄与すると考えられる。本発明の発明者が、実際に、ロールとリチウム原箔との間にシリコーン層を介在させた状態で圧延を行ったところ、潤滑剤として有機溶媒のみを使用した場合に比べて、一工程で遙かに薄い製品リチウム箔を得ることが可能であった。
本発明のリチウム箔の圧延方法におけるシリコーン層の使用状態については特に限定されないが、例えばリチウム原箔をそのままロールで圧延する場合には、シリコーン層をロールに一体に設けるのが効率的である。また、例えば樹脂フィルムを重ねたリチウム原箔をロールで圧延する場合には、シリコーン層を樹脂フィルムに一体に設けるのが効率的である。以下、必要に応じて、樹脂フィルムを重ねたリチウム原箔をロールで圧延する態様をフィルム圧延といい、樹脂フィルムを重ねないリチウム原箔をそのままロールで圧延する態様を直接圧延という。また、必要に応じて、直接圧延においてロールに一体に設けるシリコーン層をロール用シリコーン層といい、フィルム圧延において樹脂フィルムに一体に設けるシリコーン層をフィルム用シリコーン層という。
以下、本発明のリチウム箔の圧延方法を直接圧延とフィルム圧延とに場合分けして説明する。
直接圧延に用いるロール用シリコーン層は、比較的変形し難く粘着性の低いシリコーン材料で構成するのが好ましい。具体的には、ロール用シリコーン層は、下記一般式(1)で表される2官能性のシロキサン単位、下記一般式(2)で表される3官能性のシロキサン単位、又は、下記一般式(3)で表される4官能性のシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン材料を含むのが好ましい。
SiO(0.5×2) (1)
SiO(0.5×3) (2)
SiO(0.5×4) (3)
(式中R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、ビニル基、及び、アミノ基の何れかである。R、Rは同一であっても良いし異なっていても良い。)
上記一般式(1)〜(3)のシロキサン単位の何れかを含むポリオルガノシロキサン材料は、シリコーンレジンとも呼ばれ、三次元網目構造の比較的硬いシリコーン層を構成し得る。
上記一般式(1)〜(3)のシロキサン単位の何れかを含むポリオルガノシロキサン材料の原料としては、それぞれ、下記一般式(1−1)〜(3−1)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR (1−1)
Si(OR (2−1)
Si(OR (3−1)
(式中R、Rは、それぞれ独立に、H、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、ビニル基、及び、アミノ基の何れかである。Rは炭素数1〜3のアルキル基である。R〜Rはそれぞれ同一であっても良いし異なっていても良い。)
当該ポリオルガノシロキサン材料の原料としては、上記一般式(1−1)で表される2官能性の化合物、上記一般式(2−1)で表される3官能性の化合物、又は、上記一般式(3−1)で表される4官能性の化合物の何れを用いても良く、当該原料において2官能性の化合物、3官能性の化合物及び4官能性の化合物の占める割合は特に問わない。当該原料に含まれるこれらの化合物のうち、2官能性の化合物の占める割合が多いとシリコーン層の可撓性が高まり、3官能性の化合物の占める割合が多いとシリコーン層が硬くなり、4官能性の化合物の占める割合が多いとシリコーン層がより硬くなるとされている。
本発明のリチウム箔の圧延方法におけるロール用シリコーン層の用途を鑑みると、シリコーンレジンは3官能性のシロキサン単位を含むのが好ましく、3官能性のシロキサン単位及び2官能性のシロキサン単位を含むのがより好ましい。R、R及びRとしては、それぞれ、メチル基、プロピル基又はフェニル基を挙げることができる。また、シリコーンレジンの質量平均分子量としては300以上30000以下の範囲を挙げることができ、シリコーンレジン中の残存アルコキシ量としては2質量%以上50質量%以下の範囲を挙げることができる。
上記一般式(1)のシロキサン単位を含むシリコーンレジンの原料としては、メチルハイドロジェンジメトキシシラン、メチルハイドロジェンジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等を例示できる。これらは2官能性のアルコキシシランである。
上記一般式(2)のシロキサン単位を含むシリコーンレジンの原料としては、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KC89、KR500、KR212、KR213、KR9218、KR251、KR400、KR255、KR216、KR152(以上、信越化学工業株式会社製)、804RESIN、805RESIN、806ARESIN、840RESIN、SR2400、3037INTERMEDIATE、3074INTERMEDIATE、Z−6018、217FLAKE、220FLAKE、233FLAKE、249FLAKE、QP8−5314、SR2402、AY42−161、AY42−162、AY42−163(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、SY231、SY550、SY300、SY409、SY430、IC836(以上、旭化成ワッカー株式会社製)を例示できる。これらは3官能性のアルコキシシラン及び/又はその誘導体を含有する。
上記一般式(3)のシロキサン単位を含むシリコーンレジンの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランを例示できる。その他、Mシリケート51、シリケート35、シリケート45、FR−3(以上、多摩化学工業株式会社製)、MSI51、ESI40、ESI48、EMSi48(以上、コルコート社製)、MS51、MS56(以上、三菱化学株式会社製)を例示できる。これらは4官能性のアルコキシシラン及び/又はその誘導体を含有する。
ロール用シリコーン層を構成するシリコーンレジンは、シリコーンレジンの原料つまりアルコキシシラン及び/又はその誘導体が脱水縮合反応することで生成する。シリコーンレジンの原料としては、上記のアルコキシシラン及び/又はその誘導体を1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
ロールにシリコーン層を設ける方法は特に限定されず、既知のコート方法を用いれば良い。また、シリコーン層の厚さは、圧延時にリチウム箔に作用する応力に応じて適宜設定すれば良い。
フィルム圧延に用いるフィルム用シリコーン層は、比較的変形し易く、相手材に対する一定程度の粘着性を示し、かつ、相手材に強固に固着し難いシリコーン材料で構成するのが好ましい。具体的には、フィルム用シリコーン層のシリコーン材料は、上記したシリコーンレジンでも良いが、付加硬化型又は過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤であるのが好ましい。この種のシリコーン粘着剤は、優れた感圧粘着作用を示すことから、ラベル及びマスキングテープに代表される粘着テープ用の粘着剤として用いられている。
付加硬化型のシリコーン粘着剤は、下記一般式(4)で表されるシロキサン単位を繰り返し単位とするものが好ましく、当該繰り返し単位を主鎖とする直鎖構造を有しても良い。
SiO(4−x)×0.5 (4)
(式中Rは、それぞれ独立に、置換されていても良い炭素数1〜20の一価又は二価の炭化水素基であり、xは1.0〜3.0である。)
上式(4)におけるxとしては1.5〜2.05が挙げられる。
上式(4)においてRで表される一価又は二価の炭化水素基の炭素数として、1〜14、1〜12の範囲を挙げることができる。当該炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキレン基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。Rの2以上はアルケニル基であっても良い。当該アルキル基の具体例としてはメチル基が挙げられる。当該アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基又はヘプテニル基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。当該アリール基の具体例としてはフェニル基が挙げられる。
付加硬化型のシリコーン粘着剤としては、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含むシリコーン粘着剤原料が付加反応により硬化したものが挙げられる。当該付加反応の速度を高めるため、付加反応触媒を用いても良い。
付加硬化型のシリコーン粘着剤が上式(4)で表されるシロキサン単位を繰り返し単位とする場合、オルガノポリシロキサンとしては下記一般式(4−1)で表されるシロキサン単位を含む化合物が挙げられる。
SiO(4−x)×0.5 (4−1)
(式中Rはそれぞれ独立にアルケニル基でありxは1.0〜3.0である。)
オルガノポリシロキサンとしては、上記一般式(4−1)で表されるシロキサン単位を繰り返し単位とするものが好ましく、当該繰り返し単位を主鎖とする直鎖構造を有しても良い。オルガノポリシロキサンは直鎖状であっても良いし、直鎖状の部分構造とともに分岐状及び/又は環状の部分構造を有しても良い。オルガノポリシロキサンの分子量は特に問わない。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中にSiH基を有するものであり、その有機基については特に限定されない。オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中のSiH基の数は特に限定せず、2〜300、3〜200、4〜150の範囲を挙げることができる。当該SiH基はオルガノポリシロキサンにおけるRのアルケニル基と反応し、付加硬化型のシリコーン粘着剤の硬化に寄与する。このため、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中におけるSiH基の数は2以上であるのが好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは直鎖状であっても良いし分岐状であっても良い。
付加硬化型のシリコーン粘着剤の原料としては、KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KR3700、KR3701、X−40−3237−1、X−40−3240、X−40−3291−1、X−40−3229、X−40−3270、X−40−3306(以上、信越化学工業株式会社製)、SD4584、SD4585、SD4560、SD4570、SD4600PFC、SD4593、(以上、東レ・ダウコ−ニング株式会社製)、TSR1512、TSR1516、XR37−B9204(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。付加硬化型のシリコーン粘着剤としては、これらを単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。2種以上のシリコーン粘着剤を併用する場合の具体的な組み合わせとして、信越化学工業株式会社製のKS−847Hと、東レ・ダウコ−ニング株式会社製のSD4584と、の組み合わせを挙げることができるが、これに限定されない。
また、上記のロール用シリコーン層に用いたシリコーンレジンの原料をシリコーン粘着剤の原料と組み合わせてフィルム用シリコーン層を形成しても良い。なお、東レ・ダウコ−ニング株式会社製のSD4584は3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むものであり、当該原料を用いて得られたシリコーン粘着剤は、上記のシリコーンレジンと共通する特性を発揮し、粘着性と剥離性とのバランスの良いフィルム用シリコーン層を形成し得ると考えられる。
付加反応触媒としては、上記の付加反応の触媒として機能し得るものを使用すれば良く、例えば、白金や白金化合物、白金の各種錯体等の各種白金系触媒、塩化ロジウム等のロジウム系触媒、パラジウム、塩化パラジウム等のパラジウム系触媒等を例示できる。
過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤は、上記した付加硬化型のシリコーン粘着剤と異なり、有機過酸化物の存在下でオルガノポリシロキサンの硬化反応を行うものである。過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤の材料となるオルガノポリシロキサンは、上記した付加硬化型のシリコーン粘着剤で説明したオルガノポリシロキサンと同様のものを用いても良いが、Rがアルキル基のものが好ましい。
有機過酸化物としては、分解して遊離酸素ラジカルを発生するものを用いれば良く、特に限定はない。過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤の原料として使用可能な有機過酸化物の一例を挙げると、ジベンゾイルパーオキサイド、4,4’−ジメチルベンゾイルパーオキサイド、3,3’−ジメチルベンゾイルパーオキサイド、2,2’−ジメチルベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
上記の各シリコーン粘着剤により、フィルム用シリコーン層を形成するためには、上記の各原料を必要に応じて有機溶媒等の溶剤とともに混合し、樹脂フィルムに塗布して硬化反応を行えば良い。硬化反応と前後して、樹脂フィルム上のシリコーン粘着剤又はシリコーン粘着剤の原料を加熱しても良い。加熱により、溶剤の除去や、硬化反応の促進が可能である。
シリコーン粘着剤を塗布する樹脂フィルムは特に限定しないが、フィルム圧延時にリチウム箔を補強するという目的では、強度及び剛性に比較的優れる材料を選択するのが好ましい。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル等は、比較的安価であり、かつリチウム箔の補強用樹脂フィルムとして充分に機能し得るため、好ましく使用できる。
直接圧延において、シリコーン層は、一方のロールにのみ設けても良いし両方のロールに設けても良いが、変形等を抑制しつつ薄い製品リチウム箔を製造するためにはシリコーン層を両方のロールに設けるのが好ましい。
フィルム圧延において、リチウム箔の一方の面だけに樹脂フィルムを重ねても良いし、リチウム箔の両面に各々樹脂フィルムを重ねてリチウム箔を2枚の樹脂フィルムで挟んでも良い。
ところで、二つのロールの間で圧延されるリチウム原箔は、二つのロールによって圧縮されるだけでなく、二つのロールの回転に伴って搬送される。つまり、このときリチウム原箔には、厚さ方向の圧縮力だけでなく、搬送方向の張力が作用するといえる。
既述したように、リチウム箔は非常に柔らかく延び変形し易いため、直接圧延において非常に薄いリチウム原箔を用いる場合には、圧延時の張力に当該リチウム原箔が抗し得ず、破損するおそれがある。
更に、取り扱い性を考慮すると、直接圧延において圧延後の製品リチウム箔は巻き取りロールに巻き取るのが良いと考えられる。しかし、非常に薄い製品リチウム箔を巻き取りロールに巻き取る際や、当該巻き取った製品リチウム箔を巻き出して使用する際には、巻き取り時又は巻き出し時の張力に当該製品リチウム箔が抗し得ず、破損するおそれがある。
これに対して、フィルム圧延を行う場合には、樹脂フィルムによってリチウム原箔が裏打ちされるため、上述したリチウム原箔や製品リチウム箔の張力による破損を抑制できる利点がある。
なお、ここでいう非常に薄いリチウム原箔の厚さ及び非常に薄い製品リチウム箔の厚さとしては、厚さ20μm以下、厚さ10μm以下が例示される。つまり、フィルム圧延による本発明のリチウム箔の圧延方法は、厚さ20μm以下又は厚さ10μm以下等のリチウム原箔を圧延する方法、及び、当該厚さの製品リチウム箔を製造する方法として有用であるといえる。さらに、フィルム圧延による本発明のリチウム箔の圧延方法は、当該厚さの製品リチウム箔を樹脂フィルムとともに巻き取る工程を備え得る。
何れの場合にも、本発明のリチウム箔の圧延方法においては、樹脂フィルムのうちリチウム箔側の面に、シリコーン層を設ければ良い。
本発明のリチウム箔の圧延方法において、シリコーン層はロールと樹脂フィルムとの両方に設けても良い。つまり、フィルム圧延を行うためのロールとして、シリコーン層を有するロールを用いても良い。特に、フィルム圧延においてシリコーン層を設けた樹脂フィルムをリチウム箔の一方の面にのみ重ねる場合には、リチウム箔の他方の面、すなわち、2表面のうち樹脂フィルムが重ねられていない側の表面に、シリコーン層を有するロールが面すると良い。
ところで、上記したように、直接圧延に用いるロール用シリコーン層としては、シリコーンレジンを用いるのが好ましく、フィルム圧延に用いるフィルム用シリコーン層としては、シリコーン粘着剤を用いるのが好ましい。ロール用シリコーン層と、フィルム用シリコーン層とでは、リチウム箔から剥がされるタイミングが異なるためである。
リチウム箔を2つのロールにより圧延する際に、2つのロールからリチウム箔に作用する圧縮応力は、2つのロールの距離が最も近くなる位置(以下、必要に応じて近接位置と呼ぶ)で最大となると考えられる。直接圧延の場合、リチウム箔が近接位置に到達する際に、上記の圧縮応力によりリチウム箔とロールとが密着する。そして、リチウム箔が近接位置を通過すると、リチウム箔に密着していたロールがリチウム箔から剥がれ、リチウム箔にはその際の応力が作用すると考えられる。
リチウム箔の任意の点を基準に考えると、直接圧延の場合、ロールに設けられているロール用シリコーン層にリチウム箔が接する時間は非常に短く、かつ、圧縮応力と、ロールが剥がれる際の応力と、は比較的短い間隔でリチウム箔に作用する。このため直接圧延に用いるロール用シリコーン層は、リチウム箔の変形や破損を抑制すべく、リチウム箔に対する粘着力が小さくかつリチウム箔から容易に剥離するシリコーン材料、つまり、シリコーンレジンで構成するのが好ましい。
他方、フィルム圧延の場合には、直接圧延の場合同様に、ロールからリチウム箔に作用する圧縮応力は上記の近接位置において最大となるものの、その直後にリチウム箔に作用する応力は、直接圧延の場合に比べて小さい。つまり、フィルム圧延の場合には、少なくとも一方のロールとリチウム箔との間にフィルム用シリコーン層を有する樹脂フィルムが介在し、樹脂フィルムは圧延後にリチウム箔から剥がせば良い。したがってこの場合には、直接圧延の場合のように、圧縮応力が作用した直後に、樹脂フィルムがリチウム箔から剥がれる応力がリチウム箔に作用することはない。このため、フィルム圧延に用いるフィルム用シリコーン層には、ロール用シリコーン層ほどに、粘着力の小ささやリチウム箔からの剥離し易さは要求されない。寧ろフィルム用シリコーン層には、圧延時から樹脂フィルムを剥がすに至るまで、樹脂フィルムとリチウム箔との間に留まり得る程度の粘着力が望まれる。その点、シリコーン粘着剤は、上記したシリコーンレジンに比べて大きな粘着力を有するために、フィルム用シリコーン層用のシリコーン材料として好適だと考えられ
る。
ところで、リチウム箔等の相手材に粘着したシリコーン粘着剤は、高速で相手材から剥がす場合には粘着力が比較的大きく、低速で相手材から剥がす場合には粘着力が比較的小さくなる性質を有する。このため、圧延後に、樹脂フィルムを低速でリチウム箔から剥がす場合には、リチウム箔に作用する応力すなわち樹脂フィルムがリチウム箔から剥がれる応力は過大にならず、リチウム箔の変形や破損は充分に抑制されると考えられる。このことによっても、シリコーン粘着剤は、フィルム用シリコーン層用のシリコーン材料として好適だと考えられる。
本発明のリチウム箔の圧延方法によって製造された製品リチウム箔の用途は特に限定されないが、本発明のリチウム箔の圧延方法によると薄い製品リチウム箔を製造でき、当該製品リチウム箔は上述した直接的ドープ法に用いるリチウム箔として好適である。なお、製品リチウム箔を直接的ドープ法用のリチウム箔として使用する場合、本発明のリチウム箔の圧延方法をリチウムイオン二次電池用負極の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法又はリチウムイオン二次電池の製造方法の一工程とみなし得る。
本発明のリチウム箔の圧延方法において、リチウム原箔の厚さ及び製品リチウム箔の厚さは特に問わない。ただし製品リチウム箔を直接的ドープ法用のリチウム箔として用いる場合、製品リチウム箔の厚さは1μm〜25μmであるのが好ましく、3〜20μmであるのがより好ましく、5〜15μmであるのが更に好ましい。
リチウム原箔の厚さは、圧延により製造する製品リチウム箔の厚さ、2つのロールの形状および配置に応じて適宜設定できる。リチウム原箔としては、厚さ150μm以下のものを用いるのが好ましく、厚さ100μm以下のものを用いるのがより好ましい。
圧延時にロールからリチウム原箔に作用する荷重は0.1kN〜3.0kNであるのが好ましい。当該荷重がこの範囲を超えると、既述したように圧延時にリチウム原箔がロールに圧着してしまい、製品リチウム箔に変形又は破損が生じるおそれがある。また、当該荷重がこの範囲を下回る場合には、何度もロールプレスを行う必要があり、製品リチウム箔の製造コストが高くなる可能性がある。なお、圧延時にロールからリチウム原箔に作用する荷重は0.5kN〜2.0kNであるのがより好ましく、1.0kN〜1.5kNであるのが更に好ましい。
また、圧延時にロールからリチウム原箔に作用する荷重は1.0N/mm〜30N/mmであるのが好ましく、0.5N/mm〜20N/mmであるのが更に好ましい。
ところで、本発明のリチウム箔の圧延方法において上記の直接圧延を採用する場合には、2つのロールの少なくとも一方を、ロール基材と、当該ロール基材の表面を覆うシリコーン層と、で構成できる。ここでいうロール基材は、本発明のリチウム箔の圧延方法において上記のフィルム圧延を採用する場合のロールに相当する。
当該ロール基材又はロールの材料は特に限定されないが、リチウム原箔に充分な荷重を作用させるためには、硬い材料を用いるのが好ましい。2つのロールの各々は、異なる材料で構成されても良いし異なる大きさであっても良いが、荷重やロールの回転速度等の設定を容易に行うためには同じ材料で構成され同じ大きさであるのが好ましい。
具体的にはロール基材又はロールの材料は、ビッカース硬さ50HV以上であるのが好ましく、70HV以上であるのがより好ましく、100HV以上であるのが更に好ましく、150HV以上であるのがなお好ましい。ビッカース硬さ50HV以上の材料を例示すると、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル鋼、ニッケルモリブデンクロム系合金、ニッケルクロム鉄系合金、タングステン、タングステン鋼、モリブデン、チタン、チタン合金、アルミニウム青銅、真鍮、銅合金、炭素鋼等の金属材料が挙げられる。価格、加工性等を勘案すると、このうちステンレス鋼を用いるのが特に好ましい。
ところで、リチウム箔を圧延するためのロールとして、上記したような金属製のロールの他にも、樹脂製のロールが挙げられる。樹脂製のロールは金属製のロールに比べてリチウム箔とのなじみ性が低いために、樹脂製のロールを用いることでロールへのリチウム箔の圧着を抑制し得る。
その一方で、樹脂製のロールは、金属製のロールに比べて成形精度が低いために、偏心した形状となり易い。ロールが偏心していれば、当該ロールによってリチウム箔を寸法精度高く圧延することは困難である。
例えば、目標とする製品リチウム箔の厚さが20μmである場合、金属製のロールによると厚さ20μm±1〜2μm程度の製品リチウム箔を得ることができるが、樹脂製のロールにより得られる製品リチウム箔の厚さは20μm±5μm程度に留まる。
このため従来は、ロールへのリチウム箔の圧着を考慮すると樹脂製のロールを用いるのが好ましい反面、製品リチウム箔の寸法精度を考慮すると金属製のロールを用いるのが良いという背反した事情があった。
本発明のリチウム箔の圧延方法によると、ロールとリチウム箔との間にシリコーン層を介在させることでロールへのリチウム箔の圧着を抑制できるため、金属製のロールを使用でき、寸法精度の高い製品リチウム箔を製造し得る利点がある。なお、ここでいう金属製のロールとは、フィルム圧延に用いるロールであっても良いし、直接圧延に用いるロール基材であっても良い。つまり、本発明の圧延方法がフィルム圧延の場合にも、直接圧延の場合にも、金属製のロールまたは金属製のロール基材を用いることで、寸法精度高く製品リチウム箔を製造できる利点がある。
本発明のリチウム箔の圧延方法は、上述したシリコーン層に加えて潤滑剤を用いるのが良い。潤滑剤は、ロールとリチウム原箔との間、又は、樹脂フィルムとリチウム原箔との間に介在するのが良く、何れの場合にも、シリコーン層とリチウム原箔との間に介在するのが好ましい。シリコーン層と潤滑剤とを併用することで、ロールや樹脂フィルムへのリチウム箔の圧着を抑制でき、圧延によるリチウム箔の変形や破損をさらに抑制できると考えられる。潤滑剤としては、シリコーン層となじみが良く、かつ、リチウムに対する反応性の低いものを用いるのが好ましい。下記の潤滑剤を併用することで、圧延時におけるリチウムの破損等を抑制するというシリコーン層に由来する効果を、より高め得る。
潤滑剤には、シリコーン層、ロール及びフィルムへのリチウム原箔の圧着を抑制できるものが用いられる。また潤滑剤は、圧延時にはシリコーン層、ロール又はフィルムとリチウム原箔との間に留まる程度に揮発性が低く、かつ、製品リチウム箔から容易に除去できる程度に揮発性の高い性質を有するのが好ましい。これらを満たす潤滑剤としては、非プロトン性有機溶媒が挙げられる。具体的には、20℃における蒸気圧が0.3〜65.0kPaの範囲にあるか、又は、25℃における蒸気圧が0.5〜100kPaの範囲にあるものを用いるのが好ましい。
潤滑剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、N,N−ジメチルアセトアミド、イソプロピルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、クロロメチルイソシアネート、ジメチルアセタール、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメチルエーテル、エポキシブタン、2−エチルオキシラン、オキサゾール、2−エチルオキサゾール、オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、アセトン、メチルエチルケトン、無水酢酸、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、フラン、γ−ブチロラクトン、チオフェン、ピリジン、1−メチルピロリジン、N−メチルモルフォリン等が挙げられる。本発明のリチウム箔の圧延方法においては、これらの非プロトン性有機溶媒を1種又は2種以上組み合わせて、潤滑剤として用いれば良い。
潤滑剤としては、上記の非プロトン性有機溶媒のうち、20℃における蒸気圧が0.5〜10kPaの範囲にあるか、又は、25℃における蒸気圧が1.0〜20kPaの範囲にあるものを用いるのが特に好ましい。また、潤滑剤としては、炭素数7以下の飽和炭化水素を用いるのが特に好ましい。
具体的には、潤滑剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、メチルイソブチルケトン、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種を用いるのが特に好ましい。なお、これらの非プロトン性有機溶媒は、上記の条件を満たすだけでなく、リチウムイオン二次電池の電解液に用いられているものであるか、或いは、充分に揮発せずリチウムイオン二次電池に持ち込まれたとしてもリチウムイオン二次電池の性能を悪化させ難い利点がある。
また、潤滑剤には、上記した2つのロールの近接箇所においてロールとリチウム原箔との間に一様に広がることができる程度の流動性を示すことが期待される。本明細書においては、当該潤滑剤の流動性を潤滑剤の粘度によって規定する。潤滑剤は、20℃における粘度が2.00パスカル秒以下であるのが好ましく、1.00パスカル秒以下であるのがより好ましい。なお、20℃におけるヘキサンの粘度は0.0003パスカル秒程度、20℃におけるエチルメチルカーボネートの粘度は0.0007パスカル秒程度とされている。
ところで、一般的なリチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液及び必要に応じてセパレータを具備する。正極は、正極用集電体と、当該正極用集電体上に設けられた正極活物質層と、を有する。負極は、負極用集電体と、当該負極用集電体上に設けられた負極活物質層と、を有する。
本発明のリチウム箔の圧延方法で製造された製品リチウム箔を用いる直接的ドープ法としては、当該製品リチウム箔を、正極活物質層及び/又は負極活物質層の表面に載置、積層、貼付等することで、製品リチウム箔と正極活物質層及び/又は負極活物質層と一体化すれば良い。そして、製品リチウム箔と正極及び/又は負極との一体品を、電解液及び必要に応じて他の電極及びセパレータとともに電池用ケースに収容してリチウムイオン二次電池とすれば、何れかの段階において製品リチウム箔のリチウムが隣接する正極活物質層及び/又は負極活物質層に移動し、リチウムイオン二次電池へのリチウムのドープが為される。
リチウムイオン二次電池用の一般的な正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。
リチウムイオン二次電池用の一般的な負極活物質としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素の少なくとも1種を単体、化合物または合金で用いるのが一般的である。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質として、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらの一種以上を使用することができる。更には、ケイ素系材料として、国際公開第2014/080608号に開示されるシリコン材料を用いることも好ましい。国際公開第2014/080608号には、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料が開示されている。そして当該特許文献1には、CaSiと酸とを反応させてCaを除去したポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成し、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させたシリコン材料を製造したこと、及び、当該シリコン材料を活物質として具備するリチウムイオン二次電池が記載されている。
上記した各種の正極活物質にはリチウムを含有するものが多い。それに対して、上記した各種の負極活物質にはリチウムを含有しないものが多い。このため、直接的ドープ法において、製品リチウム箔は負極活物質層に載置等するのが合理的である。特に、不可逆容量の大きなケイ素系材料を負極活物質として用いる場合には、直接的ドープ法により負極活物質にリチウムイオンをドープすることで、当該不可逆容量を打ち消し得る利点がある。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。また、実施形態及び以下の実施例を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施することができる。
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1のリチウム箔の圧延方法を模式的に表す説明図を図1に示し、図1の要部拡大図を図2に示す。以下、上、下、先、後とは、図1に示す上、下、先、後を指す。
実施例1のリチウム箔の圧延方法は、図1に示す実施例1のリチウム箔の圧延装置を用いて行う。
図1に示すように、リチウム箔の圧延装置は、ロールプレス部1、搬送部2、フィルム供給部3及び潤滑剤供給部4を備える。
ロールプレス部1は、第1ロール11及び第2ロール12と、第1ロール11及び第2ロール12を回転駆動する図略のプレス駆動部とを有する。第1ロール11及び第2ロール12は、ステンレス鋼製であり、互いに平行になるよう上下に配列している。
図略のプレス駆動部は、電動モータで構成されている。当該プレス駆動部に駆動されて、第1ロール11は図1中反時計回りに回転し、第2ロール12は図1中時計回りに回転する。
搬送部2は、巻き出しロール21と、巻き取りロール22と、巻き出しロール21及び巻き取りロール22を回転駆動する図略の搬送駆動部と、で構成されている。
巻き出しロール21にはリチウム原箔91が巻かれている。巻き取りロール22は、ロールプレス部1を経て圧延された製品リチウム箔95を巻き取る。つまり、巻き出しロール21及び巻き取りロール22には、リチウム箔が架け渡されている。当該リチウム箔のうち、第1ロール11及び第2ロール12から巻き出しロール21側までの区間に位置する部分がリチウム原箔91であり、第1ロール11及び第2ロール12よりも巻き取りロール22側に位置する部分が製品リチウム箔95である。
巻き出しロール21及び巻き取りロール22に接続されている図略の搬送駆動部は、電動モータで構成されている。図略の搬送駆動部により駆動され、巻き出しロール21は図1中反時計回りに回転し、巻き取りロール22は図1中時計回りに回転する。つまり、巻き出しロール21は図1中後側から先側に向けてリチウム原箔91を巻き出し、巻き取りロール22は後側から先側に向けて製品リチウム箔95を巻き取る。
フィルム供給部3は、第1フィルム81が巻かれた第1フィルム巻き出しロール31と、第2フィルム82が巻かれた第2フィルム巻き出しロール32と、で構成されている。第1フィルム81及び第2フィルム82については後述する。第1フィルム巻き出しロール31及び第2フィルム巻き出しロール32は巻き出しロール21及び巻き取りロール22とともに搬送駆動部により駆動され、巻き出しロール21及び巻き取りロール22と同期して回転する。第1フィルム巻き出しロール31は図1中反時計回りに回転し、第2フィルム巻き出しロール32は図1中時計回りに回転する。第1フィルム巻き出しロール31に巻かれている第1フィルム81は、リチウム原箔91の上面に重ねられる。第2フィルム巻き出しロール32に巻かれている第2フィルム82は、リチウム原箔91の下面に重ねられる。
潤滑剤供給部4は、第1吹出ノズル41、第2吹出ノズル42、図略の貯液部及び図略のポンプを有し、貯液部内に収容される潤滑剤98をリチウム原箔91に供給する装置である。第1吹出ノズル41は、フィルム供給部3と巻き出しロール21との間で、リチウム原箔91の上面に対面して、当該リチウム原箔91の上面に潤滑剤98を塗布する。第2吹出ノズル42は、フィルム供給部3と巻き出しロール21との間で、リチウム原箔91の下面に対面して、当該リチウム原箔91の下面に潤滑剤98を塗布する。図略の貯液部の潤滑剤98は、図略のポンプにより第1吹出ノズル41及び第2吹出ノズル42に輸送され、第1吹出ノズル41及び第2吹出ノズル42を介して、リチウム原箔91に噴霧される。なお、潤滑剤供給部4はこれに限らず、コータ等を用いて潤滑剤98をリチウム原箔91に塗布しても良いし、或いは、潤滑剤98を第1フィルム81及び第2フィルム82に塗布しても良い。更には、後述する直接圧延によりリチウム箔を圧延する場合には、潤滑剤98を第1ロール11及び第2ロール12に塗布しても良い。
以下、実施例1のリチウム箔の圧延装置を用いた実施例1のリチウム箔の圧延方法を説明する。
(フィルム用シリコーン層)
第1フィルム巻き出しロール31に巻く第1フィルム81、及び第2フィルム巻き出しロール32に巻く第2フィルム82として、リンテック株式会社製、厚さ25μmのフィルムを用いた。当該フィルムは、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム基材上に、フィルム用シリコーン層が形成されたものである。当該フィルム用シリコーン層の原料は、付加硬化型のシリコーン粘着剤であるKS−847H(信越化学工業株式会社製)を固形分換算で30質量部、同じく付加硬化型のシリコーン粘着剤であるSD4584(東レ・ダウコ−ニング株式会社製)を固形分換算で18質量部、及び白金触媒であるPL−50T(信越化学工業株式会社製)を1.6質量部に、溶剤としてのトルエンを加えて、固形分濃度を約30質量%としたものである。当該フィルム用シリコーン層の原料を、上記したフィルム基材上に塗布し、130℃で2分間加熱し硬化させるとともに溶剤を揮発させることで、フィルム用シリコーン層を形成した。フィルム用シリコーン層の厚さは0.1〜0.5μm、フィルム基材の厚さは25μmである。このようにして得た第1フィルム81及び第2フィルム82を、第1フィルム巻き出しロール31及び第2フィルム巻き出しロール32にそれぞれ巻き、以下の工程に供した。
(リチウム箔の圧延)
実施例1のリチウム箔の圧延方法においては、リチウム原箔91として厚さ100μmのリチウム箔を用いた。
先ず、巻き出しロール21に巻かれたリチウム原箔91を、第1ロール11及び第2ロール12の間を通した。このとき、第1フィルム巻き出しロール31に巻かれた第1フィルム81を、フィルム用シリコーン層61を下方に向けつつリチウム原箔91の上面に重ねた。また、第2フィルム巻き出しロール32に巻かれた第2フィルム82を、フィルム用シリコーン層62を上方に向けつつリチウム原箔91の下面に重ねた。このようにして、第1ロール11及び第2ロール12の間には、第1フィルム81、リチウム原箔91、第2フィルム82の順に重ねられた積層体99が通された。当該積層体99を巻き取りロール22に巻き付けた。
ところで、既述したように、リチウム原箔91の上面及び下面には、各々、潤滑剤供給部4によって潤滑剤98が供給される。図2に示すように上記の積層体99は、具体的には、上から下に向けて第1フィルム81のフィルム基材71、第1フィルム81のフィルム用シリコーン層61、潤滑剤98、リチウム原箔91、潤滑剤98、第2フィルム82のフィルム用シリコーン層62、第2フィルム82のフィルム基材72、の順に配列した各層で構成された。
実施例1のリチウム箔の圧延方法においては、潤滑剤98としてヘキサンを用いた。
この状態で、第1ロール11及び第2ロール12によって積層体99を所定の荷重で挟み込み、図略の搬送駆動部及びプレス駆動部を起動し、第1ロール11及び第2ロール12によってリチウム原箔91を圧延して製品リチウム箔95とした。
なお、リチウム箔の圧延に際して、第1ロール11及び第2ロール12の隙間は、変形や破損のない製品リチウム箔95が得られる最小の距離とした。実施例1のリチウム箔の圧延方法で圧延した、変形や破損のない製品リチウム箔95の厚さは、10μmであった。実施例1の結果を、後述する実施例2及び比較例1〜比較例8の結果とともに、表1に示す。
(比較例1)
比較例1のリチウム箔の圧延方法では、第1フィルム及び第2フィルムとしてフィルム用シリコーン層を有さずフィルム基材のみで構成されたものを用い、第1フィルムとリチウム原箔との間にだけ潤滑剤を存在させ、第2フィルムはリチウム原箔に直接接触させた。それ以外は、比較例1のリチウム箔の圧延方法は、実施例1と同じ装置を用い実施例1と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
比較例1のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例1の製品リチウム箔の厚さは、80μmであった。
(比較例2)
比較例2のリチウム箔の圧延方法は、フィルム基材のみで構成された第1フィルム及び第2フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同じ装置を用い実施例1と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
比較例2のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例2の製品リチウム箔の厚さは、30μmであった。
(実施例2)
実施例2のリチウム箔の圧延方法を模式的に表す要部拡大図を図3に示す。実施例2のリチウム箔の圧延方法は、図3に示す実施例2のリチウム箔の圧延装置を用いて行った。
実施例2のリチウム箔の圧延装置は、フィルム供給部3を有さず、代わりに、第1ロール11及び第2ロール12の表面に各々シリコーン層が一体に設けられていること、及び、当該シリコーン層の組成以外は、実施例1のリチウム箔の圧延装置と概略同じである。
実施例2のリチウム箔の圧延装置において、第1ロール11はロール基材15とロール用シリコーン層65とで構成され、第2ロール12はロール基材16とロール用シリコーン層66とで構成される。第1ロール11のロール基材15及び第2ロール12のロール基材16は、各々、実施例1のリチウム箔の圧延装置における第1ロール11及び第2ロール12と同じステンレス鋼製である。また、実施例2のリチウム箔の圧延装置におけるロール基材15、16の形状は、実施例1のリチウム箔の圧延装置における第1ロール11及び第2ロール12の形状と同じである。実施例2のリチウム箔の圧延装置において、第1ロール11及び第2ロール12に設けたロール用シリコーン層65、66は、以下の通りである。
(ロール用シリコーン層)
ロール用シリコーン層65、66の原料としては、シリコーンレジンであるKR216(信越化学工業株式会社製)を用いた。当該原料をスプレーガンにてロール基材15、16上にそれぞれ塗布し、室温で24時間保持して、ロール用シリコーン層65、66を硬化させた。その後、ロール用シリコーン層65、66の表面粗さを測定し、必要に応じて、表面粗さRaが1.0μm程度となるようにサンドペーパによりロール用シリコーン層65、66の表面を研磨した。
以上のようにして厚さ0.1〜0.5μmのロール用シリコーン層65、66を得た。実施例2のリチウム箔の圧延方法では、当該ロール用シリコーン層65を有する第1ロール11及び当該ロール用シリコーン層66を有する第2ロール12を用いたこと、及び、第1フィルム81及び第2フィルム82を用いないこと、以外は実施例1のリチウム箔の圧延方法と同様にリチウム箔を圧延した。
実施例2のリチウム箔の圧延方法で圧延した実施例2の製品リチウム箔の厚さは、10μmであった。
(比較例3)
比較例3のリチウム箔の圧延方法は、ロール用シリコーン層を有さない高密度ポリエチレン製のロール基材を第1ロール及び第2ロールとして用いたこと以外は、実施例2と同じ装置を用い実施例2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
比較例3のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例3の製品リチウム箔の厚さは、50μmであった。
(比較例4)
比較例4のリチウム箔の圧延方法は、ロール用シリコーン層を有さないポリアセタール製のロール基材を第1ロール及び第2ロールとして用いたこと以外は、実施例2と同じ装置を用い実施例2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
比較例4のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例4の製品リチウム箔の厚さは、30μmであった。
(比較例5)
比較例5のリチウム箔の圧延方法は、ロール用シリコーン層を有さない、エポキシ樹脂とガラス繊維とで構成されるFRP(繊維強化プラスチック)製のロール基材を第1ロール及び第2ロールとして用いたこと以外は、実施例2と同じ装置を用い実施例2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
比較例5のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例5の製品リチウム箔の厚さは、90μmであった。
(比較例6)
比較例6のリチウム箔の圧延方法は、ロール用シリコーン層を有さないポリエーテルエーテルケトン樹脂製のロール基材を第1ロール及び第2ロールとして用いたこと以外は、実施例2と同じ装置を用い実施例2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
比較例6のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例6の製品リチウム箔の厚さは、90μmであった。
(比較例7)
比較例7のリチウム箔の圧延方法は、ロール用シリコーン層を有さないステンレス鋼製のロール基材を第1ロール及び第2ロールとして用いたこと以外は、実施例2と同じ装置を用い実施例2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。
比較例7のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例7の製品リチウム箔の厚さは、90μmであった。
(比較例8)
比較例8のリチウム箔の圧延方法は、第1ロール及び第2ロールとして、ロール用シリコーン層にかえてDLC(ダイヤモンドライクカーボン)層を設けたものを用いたこと以外は、実施例2と同じ装置を用い実施例2と同じ方法でリチウム箔を圧延した。なお、比較例8のリチウム箔の圧延装置における第1ロール及び第2ロールのロール基材は、実施例2と同様にステンレス鋼製である。
比較例8のリチウム箔の圧延方法で圧延し、実施例1と同様に測定した比較例8の製品リチウム箔の厚さは、80μmであった。
Figure 0006904113
表1に示すように、ロールとリチウム箔との間にシリコーン層を介在させて圧延した実施例1のリチウム箔の圧延方法によると、ロールとリチウム箔との間にフィルム基材を介在させただけでシリコーン層を介在させなかった比較例1のリチウム箔の圧延方法に比べて、著しく薄い製品リチウム箔を得ることができた。また、ロールの表面にシリコーン層を設け、ロールとリチウム箔との間にシリコーン層を介在させて圧延した実施例2のリチ
ウム箔の圧延方法によると、シリコーン層のないロールを用い、ロールとリチウム箔との間にシリコーン層を介在させなかった比較例7のリチウム箔の圧延方法に比べて著しく薄い製品リチウム箔を得ることができた。この結果から、ロールとリチウム箔との間にシリコーン層を介在させて圧延することで、薄い製品リチウム箔を得ることができることがわかる。
また、ロール用シリコーン層を一体に設けたロールで圧延を行った実施例2のリチウム箔の圧延方法によると、各種の樹脂材料で構成したロールで圧延した比較例3〜比較例6のリチウム箔の圧延方法や、DLC層を一体に設けたロールで圧延を行った比較例8のリチウム箔の圧延方法に比べても、非常に薄い製品リチウム箔を得ることができるといえる。つまり、圧延時にロールとリチウム箔との間に介在させる層として、シリコーン層は非常に優秀である。
なお、実施例1のリチウム箔の圧延方法においてはフィルム用シリコーン層61を有する第1フィルム81及びフィルム用シリコーン層62を有する第2フィルム82を用いてフィルム圧延を行い、実施例2のリチウム箔の圧延方法においてはロール用シリコーン層65を有する第1ロール11及びロール用シリコーン層66を有する第2ロール12を用いて直接圧延を行った。つまり、実施例1においても実施例2においても、ロールまたはロール基材とリチウム原箔との間にはシリコーン層が介在した。このことにより、圧延時におけるロールまたはロール基材へのリチウム原箔の圧着が抑制されるため、ロールまたはロール基材として、成形精度の高い金属製のものを使用することが可能である。
成形精度の高い金属製のロールまたはロール基材を使用することで、寸法精度の高い製品リチウム箔を得ることが可能になるため、実施例1及び実施例2のリチウム箔の圧延方法によると、破損が抑制されかつ寸法精度の高い製品リチウム箔を製造できるといえる。
また、特に実施例1のリチウム箔の圧延方法においては、リチウム原箔91を第1フィルム81及び第2フィルム82とともに圧延し、かつ第1フィルム81及び第2フィルム82とともに製品リチウム箔95として巻き取りロール22に巻き取ることで、リチウム原箔91及び製品リチウム箔95を第1フィルム81及び第2フィルム82によって補強できる。このため、圧延時及び巻き取り時に作用する搬送方向の張力に抗し、破損の抑制された製品リチウム箔95を得ることができる。更に、当該製品リチウム箔95は、第1フィルム81及び第2フィルム82とともに巻き取りロール22に巻かれるために、使用時に巻き取りロール22から巻き出される際にも、第1フィルム81及び第2フィルム82により補強される。このため、実施例1の製造方法で得られた製品リチウム箔95は、巻き出し時の破損までもが抑制されるといえる。
1:ロールプレス部 2:搬送部
3:フィルム供給部 4:潤滑剤供給部
11:第1ロール 12:第2ロール
15:ロール基材 16:ロール基材
21、22:巻き取りロール 31:第1フィルム巻き出しロール
32:第2フィルム巻き出しロール 41:第1吹出ノズル
42:第2吹出ノズル 61、62:フィルム用シリコーン層
65、66:ロール用シリコーン層 71、72:フィルム基材
81:第1フィルム 82:第2フィルム
91:リチウム原箔(リチウム箔) 95:製品リチウム箔(リチウム箔)
98:潤滑剤

Claims (5)

  1. 2つのロールの間でリチウム箔を圧延するリチウム箔の圧延方法であって、
    前記ロールと前記リチウム箔との間にシリコーン層を介在させ
    前記2つのロールの少なくとも一方と前記リチウム箔との間にフィルムを介在させ、
    前記フィルムは、前記リチウム箔側の面に前記シリコーン層を有する、リチウム箔の圧延方法。
  2. 2つのロールの間でリチウム箔を圧延するリチウム箔の圧延方法であって、
    前記ロールと前記リチウム箔との間にシリコーン層を介在させ
    前記シリコーン層と前記リチウム箔との間に潤滑剤を介在させる、リチウム箔の圧延方法。
  3. 前記2つのロールの少なくとも一方は、ロール基材と、前記ロール基材の表面を覆う前
    記シリコーン層と、で構成される、請求項1又は請求項2に記載のリチウム箔の圧延方法。
  4. 前記ロール基材はステンレス鋼製である、請求項に記載のリチウム箔の圧延方法。
  5. 請求項1〜請求項の何れか一項に記載のリチウム箔の圧延方法によりリチウム箔を圧延する工程と、
    圧延後の前記リチウム箔を電極における活物質層に一体化する工程と、を有する、電極の製造方法。
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