以下、本開示の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。
なお、以下の説明および参照される図面は、当業者が本開示を理解するために提供されるものであって、本開示の請求の範囲を限定するためのものではない。
<方向の定義>
まず、以下の実施の形態における方向について定義する。飲料製造装置1の前面とユーザとが正対した時の左から右、あるいは右から左に向かう軸に沿った方向を左右方向と定義する。また、飲料製造装置1の前面とユーザとが正対した時の飲料製造装置1の前面から背面、あるいは背面から前面に向かう方向を前後方向と定義する。また、飲料製造装置1の前面とユーザとが正対した時の飲料製造装置1の底面から上面、あるいは上面から底面に向かう方向を上下方向と定義する。以下では、左右方向、前後方向および上下方向に沿った軸を、それぞれx軸、y軸、z軸と称する場合がある。
<1−1.飲料製造装置1の概略構成>
図1は、飲料製造装置1の斜視図である。飲料製造装置1は、例えば業務用であって店舗等に設置される。飲料製造装置1は、本体2と、ドア3と、ボタン群4(点線で囲まれた部分を参照)と、キャニスタ5と、ミルク保冷庫6と、ノズルユニット7と、ドリップトレイ8と、を備えている。
ドア3は、本体2の前面に、開閉自在に取り付けられる。ボタン群4は、ドア3の前面に配置される。ボタン群4に含まれる複数のボタンには、飲料製造装置1が提供可能な飲料の種類(エスプレッソコーヒー、ドリップコーヒー(ホット・アイス)、カフェラテ(ホット・アイス)、カプチーノ(ホット・アイス)等)がそれぞれ割り当てられている。所望の飲料が割り当てられたボタンがユーザにより操作されると、飲料製造装置1は、操作されたボタンに割り当てられた飲料を製造して提供する。なお、本実施の形態における飲料製造装置1は、コーヒーとミルクとを用いた飲料を製造するものとする。
キャニスタ5は、本体2の上面に取り付けられ、コーヒー豆を保存する。ミルク保冷庫6は、少なくとも一個のミルクパック9(後述の図3を参照)を収容して低温で保存する。
ノズルユニット7は、本体2の前面に設けられ、本体2の内部で製造された飲料を下方に向けて吐出する。また、ノズルユニット7は、ミルクパック9から供給されたミルクを用いてフォームドミルク(ホット・コールド)、スチームミルク(ホット)、コールドミルク等を生成して下方に向けて吐出する。これらのミルクと本体2の内部で製造された飲料とがノズルユニット7からそれぞれ別々に吐出され、容器10内で混ぜ合わせられることにより多様な飲料が生成される。
ドリップトレイ8は、本体2の下端部から前方に突出している。ノズルユニット7から吐出される飲料は、ドリップトレイ8に載置された飲料の容器10に提供される。また、
ドリップトレイ8は、ノズルユニット7から垂れたり、容器10からこぼれたりした飲料を収集し貯留する。
後述する図2に示すように、本体2の内部には、キャニスタ5に保存されたコーヒー豆を使ってコーヒーを生成するコーヒー抽出部21が設けられている。また、後述する図3に示すように、本体2の内部には、蒸気供給部22と、空気供給部24と、がさらに設けられている。また、本体2の外部にはミルク供給部23が設けられている。なお、本件出願人は、コーヒー抽出部と、蒸気供給部、ミルク供給部および空気供給部に関しては、特開2013−165814号公報等に開示している。よって、本実施形態において、特開2013−165814号公報等の開示内容に相当する部分に関しては、簡単に説明する。
図2は、コーヒー抽出部21の構成を示す図である。コーヒー抽出部21は、図2に示すように、湯タンク211と、湯ポンプ212と、フィルタ213と、給湯弁214と、コーヒー側給湯配管215と、昇降装置216と、シリンダユニット217と、キャップ218と、コーヒー液配管2212と、ミル2213と、を有する。
湯タンク211は、大気開放型のタンクであって、所定量の飲料水を、内蔵のヒータ(図示せず)により所定温度に加熱した状態で貯留する。
湯ポンプ212は、湯タンク211内の湯を加圧して排出させるポンプである。湯ポンプ212の排出口にはコーヒー側給湯配管215の上流端が接続される。コーヒー側給湯配管215には、フィルタ213と、電磁弁等からなる給湯弁214とが、上流側からこの順番で設けられる。コーヒー側給湯配管215の下流端は、後述のシリンダ219の給湯口に挿抜可能に接続される。
シリンダユニット217は、上下方向に移動可能に構成され、シリンダ219と、ピストン2210と、を有する。シリンダ219の上面は開口し、シリンダ219の下端部近傍の側面には給湯口が形成される。ピストン2210は、通水性を有しており、シリンダ219の内部空間を移動可能である。
キャップ218は、シリンダユニット217の上方に設けられ、上昇してきたシリンダ219に填め込まれてその開口を塞ぐ。シリンダ219を塞いだキャップ218の下面、シリンダ219の内周面およびピストン2210の上面で囲まれた空間がコーヒー液の抽出室を形成する。
キャップ218には、キャップ218の下面から上面まで貫通する抽出孔2211が形成される。この抽出孔2211を、抽出室内で得られたコーヒー液が通過する。この抽出孔2211の上端は、コーヒー液配管2212を介してコーヒー用ノズル72に流体連通するように接続される。
本体2内部の上方にはミル2213が設けられる。ミル2213は、キャニスタ5に収容されたコーヒー豆を粉砕して挽き豆を生成する。
次に、コーヒー抽出部21の動作を説明する。ボタン群4(図1を参照)のうちの特定のボタンが操作されると、ミル2213は挽き豆を生成する。生成された挽き豆は上述の抽出室に投入される。
次に、昇降装置216によりシリンダユニット217が上昇させられ、シリンダ219の開口内にキャップ218が押し込まれる。これにより、抽出室内の挽き豆は、ピストン2210とキャップ218との間で圧縮される。
次に、湯ポンプ212が運転され、かつ、給湯弁214が開いて、湯タンク211から、所定量の湯がシリンダ219内に加圧供給される。その結果、高濃度のコーヒー液が得られる。ここで、フィルタ213と給湯弁214の間には、図示しない流量計が設けられており、この流量計が、シリンダ219への湯の供給量を測定している。得られたコーヒー液は、キャップ218から送り出され、コーヒー液配管2212を介してコーヒー用ノズル72から排出される。その後、ドリップトレイ8(図1を参照)に載置された容器10に注がれる。
次に、本体2の内部および外部に設けられた蒸気供給部22、ミルク供給部23、空気供給部24の構成について説明する。図3は、蒸気供給部22、ミルク供給部23、空気供給部24の構成を示す図である。
図3に示すように、蒸気供給部22は、電磁ポンプ221と、ミルク側給湯配管222と、ボイラ223と、蒸気用配管224と、三方弁225と、を有する。なお、湯タンク211は、コーヒー抽出部21と共用されればよい。
湯タンク211内の湯は、電磁ポンプ221の運転により、ミルク側給湯配管222を介してボイラ223に供給される。ボイラ223は、内蔵の電気ヒータ(図示せず)により常時一定の温度になるよう制御されており、電磁ポンプ221の運転により供給された湯を用いて蒸気を生成する。生成された蒸気は、蒸気用配管224および三方弁225を介して、ホットミルク用ノズル710に供給される。
また、図3に示すように、ミルク供給部23は、上述のミルク保冷庫6に加え、ミルク供給配管231を有する。
ミルク供給配管231の上流端は、ミルク保冷庫6に収納されたミルクパック9の内部に挿入される。また、ミルク供給配管231の下流端は、後述するギヤポンプ74(図5等参照)のミルク用入口746に流体連通するように接続される。
また、図3に示すように、空気供給部24は、エアポンプ241と、空気供給配管242と、空気弁243と、を有する。
エアポンプ241は、図示しないモータにより駆動され、外部の空気を吸入して、空気供給配管242に送り出す。空気供給配管242の下流端は、ギヤポンプ74の空気用入口747に流体連通するように接続される。また、空気供給配管242の途中には、電磁弁等からなる空気弁243が設けられる。空気弁243が開放されると、エアポンプ241から送り出された空気が空気供給配管242を介して空気用入口747に供給される。
<1−2.ノズルユニットおよびこれに関連する構成>
次に、ノズルユニット7の詳細な構成について説明する。ノズルユニット7は、図1および図4に示すように、本体2の前面側に設けられる。図4に示すように、ノズルユニット7は、カバー71と、コーヒー用ノズル72と、ミルクフォーマ73と、を含む。図4は、ノズルユニット7の拡大斜視図である。なお、図4にはカバー71は示されていない。
ミルクフォーマ73は、図4から図7に示すように、ギヤポンプ74と、分岐部75と、バルブ76と、コールドミルク用ノズル77と、調質器78と、ミルクフォーマ内のミルク用流路79と、ホットミルク用ノズル710と、を有する。図5は、ノズルユニット7の分解斜視図である。
ギヤポンプ74は、ミルクを移送する移送ポンプであって、図6および図7に示すように、ケース741と、大径ギヤ742と、小径ギヤ743と、蓋744と、を有する。図6は、ミルクフォーマ73の縦断面を前方から見た時の図である。また、図7は、ギヤポンプ74およびその周辺構成の分解図である。
大径ギヤ742および小径ギヤ743は、第1ギヤおよび第2ギヤの一例である。大径ギヤ742および小径ギヤ743は、互いに噛み合った状態でケース741内に収容される。また、大径ギヤ742には、ポンプ側磁石745が内蔵される。ポンプ側磁石745の詳細については後述する。
図8は、大径ギヤ742および小径ギヤ743の寸法と、ケース741の内部空間の寸法とを示す図である。本実施の形態では、図8に示すように、大径ギヤ742および小径ギヤ743の歯先円直径をOD1、OD2とし、両ギヤ742、743の歯底円直径をRD1、RD2とする。また、両ギヤ742、743の歯幅(y軸方向幅)は互いに実質同じであり、W(図示せず)とする。また、大径ギヤ742は、本飲料製造装置1の正面から見て時計回りに回転し(矢印aを参照)、小径ギヤ743は、同方向から見て反時計回りに回転する(矢印bを参照)。なお、本実施の形態では、小径ギヤ743は大径ギヤ742に従動回転する。
図8に示すように、ギヤポンプ74のケース741内において、大径ギヤ742と小径ギヤ743の歯先とケース741の内壁面とのクリアランスはほぼ0になるように形成されている。
ケース741は、例えば樹脂等のような非磁性材料で作製される。このケース741には、両ギヤ742、743を収容する内部空間IS1が形成される。この内部空間IS1は、図8に示すように、大径側円弧面S1と、小径側円弧面S2と、底面S3と、上面S4と、前面S5とで定義される。
円弧面S1、S2は、y軸方向から正面視した場合に、半径が概ねOD1/2、OD2/2の円弧をなす辺を含む円弧状の面である。
底面S3は、正面視した場合に、両円弧面S1、S2の歯先円に接する下方側の2つの接線(図8における紙面に垂直な2つの線分)を含む面である。それに対し、上面S4は、上方側の2つの接線(図8における紙面に垂直な2つの線分)を含む面である。前面S5は、面S1〜S4で囲まれた空間IS1を本体2の前面側(図8における手前側)で閉止する面である。
なお、内部空間IS1は、上記寸法に対して公差程度の差を有していてもよい。また、ギヤポンプ74の設計段階で、上記寸法に対して若干余裕を持つように設計されてもよい。
また、ケース741は、図6および図7に示すように、ミルク用入口746と、空気用入口747と、ミルク用出口748と、を有する。ミルク用入口746は、ケース741の上面S4に形成された貫通孔を介してギヤポンプ74の内部空間IS1と流体連通可能な円筒または管状の部材である。ミルク用入口746には、上述のミルク供給配管231の下流端が流体連通可能に接続される。
空気用入口747は、ケース741に形成された貫通孔を介してギヤポンプ74の内部空間IS1と流体連通可能な円筒または管状の部材である。空気用入口747には、上述の空気供給配管242の下流端が流体連通可能に接続される。
ミルク用入口746および空気用入口747は、上面S4の中央またはその近傍に近接して形成されることが好ましい。
ミルク用出口748は、出口の一例であって、ケース741の底面S3に形成された貫通孔である。このミルク用出口748は、分岐部75と流体連通可能である。ミルク用出口748は、底面S3の中央またはその近傍に形成されることが好ましい。
以上のケース741は、図6等に示すように、内部空間IS1の底面S3がxy平面と平行になるよう本体2の前面に取り付けられる。そして、蓋744は、両ギヤ742、743が収容されたケース741の開口部分を閉止する。
大径ギヤ742を回転させるために、本体2には、図5から図7に示すように、ギヤポンプ用モータ25が内蔵される。ギヤポンプ用モータ25は、出力軸251と、モータ側磁石252と、を有する。モータ側磁石252は、大径ギヤ742に内蔵されたポンプ側磁石745(図6を参照)とマグネットカップリングして、ギヤポンプ用モータ25で生成された駆動トルクをポンプ側磁石745に伝達する。ギヤポンプ用モータ25の動作は、後述する制御部300によって制御される。制御部300によるギヤポンプ用モータ25の動作の詳細については後述する。
分岐部75は、図9に示すように、前後方向に延在する円筒または管状の部材である。図9は、ミルクフォーマ73の左側面図であり、その内部を部分的に透視した図である。図9に示すように、この分岐部75には円柱形状の内部空間IS2が形成される。そして、分岐部75の上部前寄りには、ギヤポンプ74のケースに設けられたミルクの出口(後述するミルク用出口748)と流体連通する入口751が形成される。分岐部75の下部後端側には、コールドミルク用ノズル77と流体連通する第1出口752が形成される。分岐部75の前端には、後述のミルク用流路79と流体連通するように第2出口753が形成される。分岐部75の後端は、後述のバルブ76が挿入される開口754が形成されている。
バルブ76は、分岐部75の内部空間IS2の開口754に挿入され、ほぼ円柱形状の回転体761を有する。図10は、分岐部75およびバルブ76を左側方から見た一部断面図である。この回転体761の外周面(換言すると、側面)には、第1リング溝762と、第2リング溝763とが形成される。第1リング溝762の軸芯はy軸と平行であるが、第2リング溝763の軸芯は、y軸と非平行で、x軸方向からの平面視でy軸に対し斜めになっている。以上の第1リング溝762および第2リング溝763には、図10に示すように、第1Oリング764および第2Oリング765が取り付けられる。なお、図9には、図示の都合上、Oリング764、765は示されておらず、図10には、図示の都合上、リング溝762、763は示されていない。
ここで、両Oリング764、765の間のy軸方向における空間距離(以下、リング間距離という)dは、図10に示すように、バルブ76の周面上の位置(換言すると、バルブ76の中心軸からの方位)により異なる。従って、回転体761の回転により、図10上段に示すように、リング間距離dの最短の部分が上方を向いた時、入口751と第2出口753とが流体連通し(一点鎖線の矢印を参照)、図10下段に示すように、この最短部分が下方を向いた時、入口751と第1出口752とが流体連通する(一点鎖線の矢印を参照)。
また、バルブ76を回転させるために、図10に示すように、バルブ76(回転体761)の後端には、バルブ側ギヤ766が取り付けられる。より具体的には、バルブ側ギヤ766は、自身の出力軸と、バルブ76の中心軸とが軸合わせされた状態で取り付けられる。ここで、本体2に対してミルクフォーマ73の取り付けおよび取り外しが可能となるように、バルブ側ギヤ766がバルブ76に対し挿抜可能になっていることが好ましい。
バルブ76を回転させるために、図4、図5および図11に示すように、バルブ用モータ26が本体2に固定される。図11は、ミルクフォーマ73およびバルブ用モータ26の底面図である。バルブ用モータ26は、図11に示すように、出力軸261と、モータ側ギヤ262と、を有する。モータ側ギヤ262は、図11に示すように、出力軸261の先端に固定され、バルブ側ギヤ766と噛み合う。
コールドミルク用ノズル77は、分岐部75を介してケース741に一体的に取り付けられている。このコールドミルク用ノズル77は、図9に示すように、上下方向に延在する円筒または管状の部材である。このコールドミルク用ノズル77には円柱形状の内部空間IS3が形成される。コールドミルク用ノズル77の上端には、第1出口752と内部空間IS3とを流体連通させる入口が形成される。また、コールドミルク用ノズル77の下端は内部空間IS3と流体連通するように開口し、この開口から内部空間IS3に調質器78が挿入される。
ミルク用流路79の上流端は第2出口753と流体連通可能に接続され、その下流端はホットミルク用ノズル710と流体連通可能に接続される。ホットミルク用ノズル710は、図5に示すように、蒸気用配管224の下流端と流体連通可能に接続される。
<1−3.飲料製造時の動作>
以下では、本開示の実施の形態に係る飲料製造装置1において、上記構成を用いて飲料を製造する際の動作について説明する。まず、図12は、飲料製造装置1の制御系について説明するためのブロック図である。
図12に示すように、飲料製造装置1において、制御部300は、ボタン群4の操作に基づいて、三方弁225、エアポンプ241(のモータ)、空気弁243、ギヤポンプ用モータ25、バルブ用モータ26を制御する。
[バルブ用モータの制御]
まず、制御部300によるバルブ用モータ26の制御について説明する。制御部300によるバルブ用モータ26の制御は、ボタン群4により飲料製造装置1のユーザに要求された飲料が、ホットのミルクを使用する飲料であるか、コールドのミルクを使用する飲料であるか、によって変化する。以下では、それぞれの場合における制御部300によるバルブ用モータ26の制御について詳細に説明する。
(1)ホットのミルクを使用する飲料が要求された場合
ユーザがホットのミルクを用いた飲料を要求した場合、制御部300は、バルブ用モータ26を駆動させることにより、出力軸261(図11参照)を回転させる。出力軸261に生じた力は、先端のモータ側ギヤ262およびバルブ側ギヤ766を介して、バルブ76に伝達される。制御部300は、図10に示すように、リング間距離dの最短部分が上方を向くようにバルブ76を回転させて停止させる。これにより、分岐部75の内部空間IS2には、入口751から第2出口753への向かう流路(図10上段の一点鎖線の矢印を参照)が形成される。入口751から第2出口753への向かう流路を通って、ギヤポンプ74を通って分岐部75に供給されたミルクは、ホットミルク用ノズル710に流入する。
そして、制御部300は、三方弁225に通電する。これにより、ボイラ223により生成された蒸気が蒸気用配管224を介してホットミルク用ノズル710に供給される(図3参照)。ホットミルク用ノズル710に流入したミルクは、蒸気によって加熱され、ホットミルク用ノズル710の下端からホットのミルクが吐出される。
(2)コールドのミルクを使用する飲料が要求された場合
ユーザがコールドのミルクを使用する飲料が要求した場合、制御部300は、バルブ用モータ26を制御して、リング間距離dの最短部分が下方を向くようにバルブ76を回転させ停止させる。これにより、分岐部75の内部空間IS2には、入口751から第1出口752への流路(図10下段の一点鎖線の矢印を参照)が形成される。入口751から第1出口752への流路を通って、ギヤポンプ74を通って分岐部75に供給されたミルクは、コールドミルク用ノズル77に流入する。
コールドミルク用ノズル77に流入したコールドのミルクは、調質器78によって特性が均質化され、コールドミルク用ノズル77の下端から吐出される。
[エアポンプおよびギヤポンプ用モータの制御]
次に、制御部300によるエアポンプ241およびギヤポンプ用モータ25の制御について説明する。図13は、飲料製造装置1における、ミルクおよび空気の流路を簡略的に示した図である。以下の説明において、ミルクパック9からミルク供給配管231を経てギヤポンプ74へ至るミルクの供給経路をミルク供給経路と称する。また、エアポンプ241から空気弁243および空気供給配管242を経てギヤポンプ74へ至る空気の供給経路を空気供給経路と称する。そして、分岐部75からバルブ76を介してコールドミルク用ノズル77かホットミルク用ノズル710へ至る経路を排出経路と称する。
また、図13に示すように、ギヤポンプ74の内部空間には、ギヤによって吸込側と吐出側とが形成されている。なお、吸込側とは、図6に示す、ケース741の上面S4と大径ギヤ742および小径ギヤ743に囲まれた空間であって、ミルク用入口746および空気用入口747の貫通孔付近の空間を意味する。また、吐出側とは、図6に示す、ケース741の底面S3と大径ギヤ742および小径ギヤ743に囲まれた空間であって、ミルク用出口748の貫通孔付近の空間を意味する。
制御部300がギヤポンプ用モータ25を駆動させることによって、出力軸251に生じた回転力は、モータ側磁石252とポンプ側磁石745との間のマグネットカップリングにより、大径ギヤ742に伝達される(図5参照)。これにより、制御部300はギヤポンプ74を回転させることができる。
ギヤポンプ74の回転方向について、大径ギヤ742が図8に示すaの方向に、小径ギヤ743が図8に示すbの方向に、それぞれ回転する回転方向を、以下では正転と称する。その反対側への反対方向を、以下では逆転と称する。ギヤポンプ74が正転すると、ギヤポンプ74の吸込側にある流体(ミルクおよび/または空気)が、ケース741の内壁面と大径ギヤ742および小径ギヤ743の歯底との間を通って吐出側に送られる(図6等参照)。反対に、ギヤポンプ74が逆転すると、ギヤポンプ74の吐出側にある流体がケース741の内壁面と大径ギヤ742および小径ギヤ743の歯底との間を通って吸込側に送られる。
また、制御部300は、ギヤポンプ74を回転させることによって、ギヤポンプ74の吸込側、吐出側と外部とに圧力差を発生させ、ミルクおよび/または空気を外部から吸い込んだり、排出したりする。正圧、負圧の発生箇所や移送方向は、ギヤポンプ74の回転方向によって制御される。また正圧と負圧の差分量、移送の流量はギヤポンプ74の回転速度を変化させることで制御される。なお、制御部300は上記したようにギヤポンプ用モータ25を回転させることでギヤポンプ74を回転させているが、以下の説明においては、簡単のため、「制御部300がギヤポンプ用モータ25を回転させてギヤポンプ74を回転させる」ことを単に「制御部300がギヤポンプ74を回転させる」等と記載することがある。
また、制御部300は、エアポンプ241を駆動させることによって、空気供給経路の圧力を継続的に加圧することができる。加圧する強さはエアポンプ241の駆動速度によって制御することができる。なお、制御部300は、実際にはエアポンプ241の図示しないモータを回転させることでエアポンプ241を駆動させているが、以下の説明においては、簡単のため、「エアポンプ241のモータを回転させてエアポンプ241を駆動させる」ことを、「エアポンプ241を駆動させる」等と記載することがある。
ここで、ミルク供給経路に生じる圧力は、ギヤポンプ74の吸込側の圧力とエアポンプ241の駆動により生じる空気供給経路の圧力の加算値となる。この加算値が大気圧より低い場合に、ギヤポンプ74に負圧が生じ、ミルクパック9からミルクが吸引される。
上記したように、飲料製造装置1では、コーヒーとミルクとを用いた飲料を提供することができる。飲料製造装置1は、ミルクをホットのフォームドミルク、スチームドミルク、コールドのフォームドミルク、コールドの泡立てないミルク、の4つの形態に変化させて使用することができる。これら複数の形態のミルクは、エアポンプ241およびギヤポンプ74が駆動されることによって生成される。制御部300は、エアポンプ241およびギヤポンプ用モータ25に対して、複数の動作を組み合わせて実行させることにより、上記複数の形態のミルクを生成させる。以下では、この複数の動作について詳細に説明する。
以下では、制御部300の制御による、各構成の動作について詳細に説明する。なお、下記説明においては、簡単のため、ギヤポンプ74が回転していない状態では吸込側と吐出側とが互いに独立しており、吸込側に吐出側に圧力差があったとしても、ギヤポンプ74が回転しない限りミルクまたは空気の行き来がないとする。
(1)動作1
動作1は、制御部300が、エアポンプ241を停止させ、空気弁243を閉じた状態で、ギヤポンプ74を高速で正転させる動作であって、本開示の第1動作の一例である。なお、以下の説明において、モータを高速、中速、あるいは低速で回転させる、という記載があるが、この高速・中速・低速というモータの回転速度は相対的なものであり、具体的なモータの回転速度については本開示では限定しない。すなわち、高速は中速より速く、中速は低速より速い回転速度である。「高速」は本発明の第1速度の一例であり、「中速」は本発明の第2速度の一例であり、「低速」は本発明の第3速度の一例である。
動作1における、飲料製造装置1の各位置における圧力変化を下記表1に示す。下記の各表の説明においては、簡単のため、各位置における圧力について、大気圧を0として正圧をプラス(+)、負圧をマイナス(−)として記載する。
表1において、横の行は、制御部300の制御によって発生した動作と、その結果生じる圧力変化を示している。また、縦の列は、エアポンプ241の駆動および/またはギヤポンプ74の回転によって生じる、各位置における圧力変化を示している。これは、表1だけでなく、以下の各表においても同様である。
表1に示すように、制御部300はエアポンプ241を停止させるため、ミルク供給経路および空気供給経路にはエアポンプ241の駆動による圧力が生じない。また、表1に示すように、制御部300がギヤポンプ74を高速で正転させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側には圧力レベル[3]の負圧が生じ、反対にギヤポンプ74の吐出側および排出経路には圧力レベル[3]の正圧が生じる。
なお、表1内の数字の大きさは、各位置における圧力レベルを意味する。圧力レベルとは、飲料製造装置1内の各位置の圧力の大きさを相対的な数字で示したものである。本実施の形態では、ギヤポンプ74が高速で正転することにより、飲料製造装置1の各位置に圧力レベル[3]の圧力が生じるとする。
動作1では表1に示すように、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側に生じる負圧のため、ミルクパック9内のミルクがギヤポンプ74の吸込側まで吸引される。
ギヤポンプ74の吸込側に吸引されたミルクは、ギヤポンプ74の正転によって、吐出側に移送される。
ギヤポンプ74の吐出側および排出経路は、ギヤポンプ74の高速正転により圧力レベル[3]の正圧となるので、ギヤポンプ74の吐出側に移送されたミルクが、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77かホットミルク用ノズル710から外部へ排出される。
以上のことから、制御部300が動作1を実行すると、ミルクパック9からギヤポンプ74内に吸引されたミルクが、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77またはホットミルク用ノズル710から外部へ排出されることになる。
(2)動作2
動作2は、制御部300が、エアポンプ241を低速で駆動させ、空気弁243を開いた状態で、ギヤポンプ74を中速で正転させる動作であって、本開示の第2動作の一例である。なお、エアポンプ241の駆動速度と、ギヤポンプ74の回転速度とは関連しない。
動作2における、飲料製造装置1の各部での圧力変化を下記表2に示す。
表2に示すように、動作2では、制御部300がエアポンプ241を低速で駆動させることによって、ミルク供給経路および空気供給経路およびギヤポンプ74の吸込側にそれぞれ圧力レベル[1]の正圧が生じる。なお、本実施の形態では、エアポンプ241が低速で駆動することにより、飲料製造装置1の各位置に圧力レベル[1]の圧力が生じるとする。
また、動作2では、制御部300がギヤポンプ74を中速で正転させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側に圧力レベル[2]の負圧が生じ、反対にギヤポンプ74の吐出側および排出経路には圧力レベル[2]の正圧が生じる。なお、本実施の形態では、ギヤポンプ74が中速で正転することにより、飲料製造装置1の各位置に圧力レベル[2]の圧力が生じるとする。
上記したように、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側に生じる圧力は、ギヤポンプ74の回転により生じる圧力と、エアポンプ241の駆動により生じる圧力との加算値となるため、動作2では、表2に示すように、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側では圧力レベル[1]の負圧が生じる。すなわち、動作2においても、ミルクパック9内のミルクがミルク供給経路を通じてギヤポンプ74の吸込側に供給されるが、その圧力(吸引力)は動作1と比較して弱い。
ギヤポンプ74の吸込側には、ミルクとともに空気も供給されるので、ギヤポンプ74の回転によってミルクと空気が撹拌され、泡立てられたミルク(フォームドミルク)が生成され、ギヤポンプ74の吐出側に送られる。
ギヤポンプ74の吐出側および排出経路は、ギヤポンプ74の中速正転により圧力レベル[2]の正圧となるので、ギヤポンプ74の吐出側に移送されたミルクが、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77かホットミルク用ノズル710から外部へ排出される。
以上のことから、制御部300が動作2を実行すると、ミルクパック9からギヤポンプ74内に吸引されたミルクが泡立てられ、フォームドミルクとなってコールドミルク用ノズル77またはホットミルク用ノズル710から外部へ排出されることになる。
(3)動作3
動作3は、制御部300が、エアポンプ241を停止させ、空気弁243を閉じた状態で、ギヤポンプ用モータ25を低速で正転させる動作であって、本開示の第3動作の一例である。動作3における、飲料製造装置1の各部での圧力変化を下記表3に示す。
表3に示すように、制御部300はエアポンプ241を停止させるため、ミルク供給経路および空気供給経路にはエアポンプ241の駆動による圧力が生じない。また、表3に示すように、制御部300がギヤポンプ74を低速で正転させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側には圧力レベル[1]の負圧が生じ、反対にギヤポンプ74の吐出側および排出経路には圧力レベル[1]の正圧が生じる。なお、本実施の形態では、ギヤポンプ74が低速で正転することにより、飲料製造装置1の各位置に圧力レベル[1]の圧力が生じるとする。
動作3では表3に示すように、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側に生じる負圧のため、ミルクパック9内のミルクが吸引されてギヤポンプ74の吸込側に供給される。
ギヤポンプ74の吸込側に吸引されたミルクは、ギヤポンプ74の正転によって、吐出側に移送される。
ギヤポンプ74の吐出側および排出経路は、ギヤポンプ74の高速正転により圧力レベル[1]の正圧となるので、ギヤポンプ74の吐出側に移送されたミルクが、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77かホットミルク用ノズル710から外部へ排出される。
以上のことから、制御部300が動作3を実行すると、動作1と同様に、ミルクパック9からギヤポンプ74内に吸引されたミルクが、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77かホットミルク用ノズル710へ排出されることになる。
ここで、動作3では、ギヤポンプ74の回転速度が動作1および動作2と比較して遅いため、ミルクの排出速度が動作1および動作2と比較して遅くなる。このため、ホットミルクを生成する場合に、ホットミルク用ノズル710に供給される蒸気と、排出されるミルクとの接触時間を長く確保することができるので、ミルクを十分に温めることができるようになる。
(4)動作4
動作4は、制御部300が、エアポンプ241を低速で駆動させ、空気弁243を開いた状態で、ギヤポンプ用モータ25を低速で正転させる動作であって、本開示の第4動作の一例である。動作4における、飲料製造装置1の各部での圧力変化を下記表4に示す。
表4に示すように、動作4では、制御部300がエアポンプ241を低速で駆動させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側にそれぞれ圧力レベル[1]の正圧が生じる。
また、動作4では、制御部300がギヤポンプ74を低速で正転させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側に圧力レベル[1]の負圧が生じ、反対にギヤポンプ74の吐出側および排出経路には圧力レベル[1]の正圧が生じる。
その結果、動作4では、表4に示すように、ミルク供給経路とギヤポンプ74の吸込側においてギヤポンプ74による負圧とエアポンプ241による正圧が相殺し、圧力0(大気圧)となる。すなわち、動作4においては、ミルク供給経路側とミルクパック9側との圧力が同じ大気圧となるため、ミルクパック9内のミルクがギヤポンプ74に吸引されない。
従って、ギヤポンプ74の吸込側には、空気のみが供給される。ギヤポンプ74の吐出側および排出経路は、ギヤポンプ74の低速正転により圧力レベル[1]の正圧となるので、ギヤポンプ74の正転により吸込側から吐出側へ移送された空気が、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77かホットミルク用ノズル710から外部へ排出される。
以上のことから、制御部300が動作4を実行すると、空気のみがコールドミルク用ノズル77またはホットミルク用ノズル710へ排出されることになる。
(5)動作5
動作5は、制御部300が、エアポンプ241を高速で駆動させ、空気弁243を開いた状態で、ギヤポンプ用モータ25を低速で正転させる動作であって、本開示の第5動作の一例である。動作5における、飲料製造装置1の各部での圧力変化を下記表5に示す。
表5に示すように、動作5では、制御部300がエアポンプ241を高速で駆動させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側にそれぞれ圧力レベル[3]の正圧が生じる。なお、本実施の形態では、エアポンプ241が高速で駆動することにより、飲料製造装置1の各位置に圧力レベル[3]の圧力が生じるとする。
また、動作5では、制御部300がギヤポンプ74を低速で正転させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側に圧力レベル[1]の負圧が生じ、反対にギヤポンプ74の吐出側および排出経路には圧力レベル[1]の正圧が生じる。
その結果、動作5では、表5に示すように、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側において圧力レベル[2]の正圧が生じる。すなわち、動作5においては、ギヤポンプ74の吸込側およびミルク供給経路にミルクが残っていた場合、当該ミルクと、空気供給経路を通って供給される空気とが、ミルクパック9側へと戻されることになる。
また、ギヤポンプ74は正転しているため、ギヤポンプ74の吸込側に残っていたミルクと、空気供給経路を通って供給される空気との一部は、ギヤポンプの吐出側へ移送される。そして、ギヤポンプ74の吐出側および排出経路は、ギヤポンプ74の低速正転により圧力レベル[1]の正圧となるので、ギヤポンプ74の吐出側に送られたミルクおよび空気は、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77かホットミルク用ノズル710から外部へ排出される。
以上のことから、制御部300が動作5を実行すると、ギヤポンプ74の吸込側およびミルク供給経路に残っていたミルクと、空気供給経路を通って供給される空気とが、ミルク供給経路を通ってミルクパック9側へ戻されることになる。また、ギヤポンプ74内のミルクおよび空気の一部は、排出経路を通ってコールドミルク用ノズル77またはホットミルク用ノズル710から容器10へ排出されることになる。
(6)動作6
動作6は、制御部300が、エアポンプ241を高速で駆動させ、空気弁243を開いた状態で、ギヤポンプ用モータ25を中速で逆転させる動作であって、本開示の第6動作の一例である。動作6における、飲料製造装置1の各部での圧力変化を下記表6に示す。
表6に示すように、動作6では、制御部300がエアポンプ241を高速で駆動させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側にそれぞれ圧力レベル[3]の正圧が生じる。
また、動作6では、制御部300がギヤポンプ74を中速で逆転させることによって、ミルク供給経路、空気供給経路、およびギヤポンプ74の吸込側に圧力レベル[2]の正圧が生じ、反対にギヤポンプ74の吐出側および排出経路には圧力レベル[2]の負圧が生じる。
その結果、動作6では、ギヤポンプ74の排出経路にミルクが残っていた場合、そのミルクはギヤポンプ74の吐出側に吸い戻されることになる。また、ギヤポンプ74は逆転しているため、吐出側に吸い戻されたミルクは、大径ギヤ742および小径ギヤ743によって吸込側に移送される。
さらに、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側においては、圧力レベル[5]の正圧が生じる。このため、ギヤポンプ74の吸込側に移送されたミルクと、空気供給経路を通って供給される空気とが、非常に強い力でミルクパック9側へと戻されることになる。
以上のことから、制御部300が動作6を実行すると、排出経路に残っていたミルクが、ギヤポンプ74の吐出側に吸い戻されるとともに、ギヤポンプ74の逆転によって当該ミルクはギヤポンプの吸込側に移送されることになる。そして、ギヤポンプ74の吸込側に移送されたミルクと、空気供給経路を通って供給される空気とが、非常に強い力でミルクパック9へと戻されることになる。
なお、ホットのミルクを用いた飲料を製造した直後に上記動作6が行われると、温かいミルクがミルクパック9に戻されることになり、ミルクパック9内全体の温度が上昇してしまう。このような事態によってミルクの品質低下を招かないように、制御部300は、必ず上記した動作5の後に動作6を行うようにする。これにより、動作5によって温かいミルクがホットミルク用ノズル710から外部へ排出された後に動作6による排出経路のミルクを吸い戻す動作が行われるので、温かいミルクがミルクパック9に戻される事態を防止することができる。
以上説明したように、制御部300は、ギヤポンプ74の回転方向や回転速度、エアポンプ241の駆動速度の組み合わせによって、複数の動作1〜6を実行することができる。
次に、以下では、飲料製造装置1における実際の飲料製造時における動作について説明する。
飲料製造装置1は、上記説明した構成を用いて、(1)コールドの泡立てないミルクを用いた飲料(アイスカフェオレ等)、(2)コールドのフォームドミルクを用いた飲料(アイスカプチーノ等)、(3)コールドの泡立てないミルクとコールドのフォームドミルクの両方を用いた飲料(アイスカフェラテ等)、(4)スチームドミルクを用いた飲料(ホットのカフェオレ等)、(5)ホットのフォームドミルクを用いた飲料(ホットのカプチーノ等)、(6)スチームドミルクとホットのフォームドミルクの両方を用いた飲料(ホットのカフェラテ等)を製造することができる。これらのうちのどの飲料を製造するかによって、実行される動作の種類や順番が変化する。以下では、最も実行される動作が多い、(6)スチームドミルクとホットのフォームドミルクの両方を用いた飲料を製造する場合について説明する。
図14は、スチームドミルクとホットのフォームドミルクの両方を用いた飲料を製造する場合の、制御部300による各部の制御について説明するためのタイムチャートである。
ユーザによってスチームドミルクとホットのフォームドミルクの両方を用いた飲料の製造が要求されると、制御部300は、図14に示す一連の動作を開始する。まず、時刻T1において、制御部300は三方弁225を開状態とする。これにより、ボイラ223で生成された蒸気がホットミルク用ノズル710に供給され始める(図3参照)。
次に、制御部300は、時刻T2から時刻T3まで、上記説明した動作1を実行する。上記したように、動作1では、制御部300はエアポンプ241を停止させ、空気弁243を閉じて、ギヤポンプ74を高速で正転させる。これによって、ミルクパック9内のミルクがギヤポンプ74の吸込側へと吸引される(図13参照)。この動作1によって、ミルクパック9内のミルクが、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側に十分に供給される。なお、動作1の実行時間(時刻T2から時刻T3まで:本発明の所定時間に対応)は、ミルクパック9内のミルクが、ミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側に十分に供給されるだけの時間であることが望ましい。このため、図14における動作1では、ミルクパック9からギヤポンプ74に吸引されたミルクが、排出経路から排出される量は少量である。
なお、図14において、ギヤポンプ74の回転開始時に、回転量が徐々に増大している(時刻T2の直前)のは、ギヤポンプ用モータ25のモータ側磁石252とギヤポンプ74の大径ギヤ742内のポンプ側磁石745とのマグネットカップリング(図5等参照)による回転を安定させる時間を確保し、空回りを防止するためである。これは後述する動作4および動作6の開始時においても同様である。
次に、制御部300は、時刻T3から時刻T4まで、上記説明した動作2を実行する。上記したように、動作2では、制御部300はエアポンプ241を低速で駆動させ、空気弁243を開状態として、ギヤポンプ74を中速で正転させる。これによって、ミルクパック9内のミルクがギヤポンプ74の吸込側へと吸引されるとともに、ギヤポンプ74内でミルクと空気が混合されてフォームドミルクが生成される。
ここで、動作2においてはギヤポンプ74の吸込側およびミルク供給経路は圧力レベル[1]の負圧である(表2参照)ため、動作1(圧力レベル[2]の負圧)と比較して、ミルクパック9内のミルクを吸引する力は弱くなっている。しかしながら、上記したように、動作2の前に動作1を行い、ギヤポンプ74の吸込側およびミルク供給経路に十分にミルクを吸引しているので、動作2においてミルクを十分に吸引できないという事態を回避することができる。
そして、動作2において、ギヤポンプ74内で生成されたフォームドミルクは、ギヤポンプ74の吐出側から排出経路を通ってホットミルク用ノズル710から排出される。この際、ホットミルク用ノズル710には蒸気が供給されているので、蒸気で温められたホットのフォームドミルクがホットミルク用ノズル710から容器10へ排出される。
制御部300は、時刻T4から時刻T5まで、上記説明した動作3を実行する。上記したように、動作3では、制御部300はエアポンプ241を停止させ、空気弁243を閉じて、ギヤポンプ74を低速で正転させる。これによって、ミルクパック9内のミルクがギヤポンプ74の吸込側へと吸引され、ギヤポンプ74の正転によって吐出側へ移送される。
空気が供給されないため、ミルクはギヤポンプ74の正転によってギヤポンプ74の吸込側から吐出側へ移送され、排出経路を通ってホットミルク用ノズル710から容器10へ排出される。この際、ホットミルク用ノズル710には蒸気が供給されているので、排出されるミルクは蒸気で温められ、スチームドミルクとなってホットミルク用ノズル710から容器10へ排出される。
なお、動作3においては、制御部300はギヤポンプ74を低速で正転させるため、ギヤポンプ74の吐出側および排出経路には圧力レベル[1]の正圧が生じる(表3参照)。このため、ミルクの排出速度は、上記動作2における排出速度より遅くなる。これにより、蒸気とミルクとの接触時間が動作2と比較して長くなるため、ホットミルク用ノズル710においてミルクを十分に温めることができるようになる。
以上説明した動作1から動作3によって、飲料が製造され提供される。なお、図14において、動作1から動作3までの動作と同時に、コーヒー抽出部21においてはコーヒーの抽出が行われており(図示および説明は省略)、ドリップトレイ8に載置された容器10内においてコーヒーとミルクとが混合され、飲料が生成される。
図14において、時刻T6以降の動作4から動作6は、飲料製造装置1の飲料提供後の後処理動作である。すなわち、制御部300は、時刻T6において、三方弁225を閉じてホットミルク用ノズル710への蒸気の供給を停止する。
制御部300は、時刻T6から時刻T7まで、上記説明した動作4を実行する。上記したように、動作4では、制御部300はエアポンプ241を低速で駆動させ、空気弁243を開状態として、ギヤポンプ74を低速で正転させる。これによって、ギヤポンプ74の吸込側にミルクが吸引されることなく、空気供給経路を通ってギヤポンプ74の吸込側に供給された空気が吐出側へ送られ、吐出側から排出経路を通ってホットミルク用ノズル710から排出される。このため、動作3までの動作においてギヤポンプ74および排出経路内にミルクが残っていたとしても、空気によって残っていたミルクを押し流して排出することができる。従って、飲料製造後にギヤポンプ74および排出経路内にミルクが長時間残ることによる衛生状態の悪化を防止することができる。
続いて、制御部300は、時刻T7から時刻T8まで、上記説明した動作5を実行する。上記したように、動作5では、制御部300はエアポンプ241を高速で駆動させ、空気弁243を開状態として、ギヤポンプ74を低速で正転させる。これによって、ギヤポンプ74の吸込側およびミルク供給経路に圧力レベル[2]の正圧が生じ、ミルク供給経路にミルクが残っていたとしても、この正圧によって残っていたミルクがミルク供給経路を通ってミルクパック9側へ押し戻すことができる。これにより、飲料製造後にギヤポンプ74およびミルク供給経路内にミルクが長時間残ることによる衛生状態の悪化を防止することができる。
さらに、制御部300は、時刻T8から時刻T9まで、上記説明した動作6を実行する。上記したように、動作6では、制御部300はエアポンプ241を高速で駆動させ、空気弁243を開状態として、ギヤポンプ74を中速で逆転させる。これによって、排出経路およびギヤポンプ74の吐出側に圧力レベル[2]の負圧が生じ、ギヤポンプ74の吸込側およびミルク供給経路に圧力レベル[5]の正圧が生じる(表6参照)。従って、まだ排出経路にミルクが残っていたとしても、ギヤポンプ74を通ってミルクパック9へ残っていたミルクが強く押し戻される。飲料製造後にギヤポンプ74およびミルク供給経路内にミルクが長時間残ることによる衛生状態の悪化を防止することができる。
なお、図14では、動作2においてホットのフォームドミルクが、動作3において十分に温められたスチームドミルクが、それぞれホットミルク用ノズル710から容器10へ排出されることで、ホットのフォームドミルクとスチームドミルクの両方を用いた飲料が容器10内で生成される。従って、ホットのフォームドミルクのみ、あるいはスチームドミルクのみを用いた飲料を製造する場合には、制御部300は、動作1の後に動作2のみ、あるいは動作3のみを実行してから、動作4以降の後処理動作へと移行するようにすればよい。また、コールドの飲料を製造する場合には、制御部300は、三方弁225を開かないようにすればよい。
<作用・効果>
以上説明したように、本開示の実施の形態の飲料製造装置1は、エアポンプ241と、ミルクを貯蔵したミルクパック9(ミルク貯蔵部)およびエアポンプ241が吸込側に接続され、ポンプ側磁石745が内蔵された大径ギヤ742と磁石が内蔵されない小径ギヤ743(ギヤ)との回転によって吸込側のミルクおよび/または空気を吐出側へ移送するギヤポンプ74と、ポンプ側磁石745とマグネットカップリングするモータ側磁石252を回転させるギヤポンプ用モータ25と、エアポンプ241の駆動およびギヤポンプ用モータ25の回転を制御する制御部300と、を有し、制御部300は、ギヤポンプ74にミルクと空気とを供給して泡立てたミルクを生成する場合に、エアポンプ241を停止させた状態でギヤポンプ用モータ25を高速(第1速度)で所定時間正転させる第1動作の後、エアポンプ241を駆動させるとともにギヤポンプ用モータ25を中速(第1速度より遅い第2速度)で正転させる第2動作を行う。
本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、ギヤポンプ74の吸込側にミルク供給経路と空気供給経路とを接続したことにより、エアポンプ241を駆動させた際にミルク供給経路の負圧が低下し、ミルクパック9からギヤポンプ74へのミルクの吸引力が低下してしまう事態が生じうる(上記表2参照)。しかしながら、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、上記したように制御部300が第1動作の後に第2動作を行う制御を行うことにより、第1動作でミルクパック9からミルク供給経路およびギヤポンプ74の吸込側にミルクを十分に供給させてから、第2動作でエアポンプ241を駆動させてミルクを泡立てるので、第2動作においてもミルクパック9からギヤポンプ74の吸込側へのミルクの供給を安定させることができる。
また、本開示の実施の形態の飲料製造装置1は、ギヤポンプ74の吐出側から吐出されたミルクを温めるための蒸気を供給する三方弁225(蒸気弁)をさらに有し、制御部300は、泡立てた温かいミルクと泡立てない温かいミルクとを用いた飲料を製造する場合に、三方弁225を開いた状態で第1動作および第2動作を行った後に、エアポンプ241を停止させた状態でギヤポンプ用モータ25を低速(第2速度よりさらに遅い第3速度)で正転させる第3動作を行う。
上記した第2動作においては、ギヤポンプ用モータ25を中速で回転させるので、ギヤポンプ74からミルクが排出される速度が比較的速く、ホットミルク用ノズル710において蒸気とミルクが接触する時間が短くなってしまうため、ミルクを十分に温めることが困難な場合がある。しかしながら、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、上記したように制御部300が、泡立てた温かいミルクと泡立てない温かいミルクとを用いた飲料を製造する場合には、第2動作によって泡立てたミルクを排出した後に、第2動作より低い回転速度でギヤポンプ74を回転させる第3動作を行うので、ホットミルク用ノズル710において蒸気とミルクが接触する時間を十分に確保することができ、十分に温めた泡立てないミルクを排出することができる。これにより、泡立てた温かいミルクと泡立てない温かいミルクとを用いた飲料を製造する場合に、ミルクを十分に温めることができる。
また、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、制御部300は、飲料の製造動作終了後に、エアポンプ241の駆動によりギヤポンプ74の吸込側に生じる正圧と、ギヤポンプ用モータ25の正転によりギヤポンプ74の吸込側に生じる負圧と、が互いに相殺するようにエアポンプ241の駆動速度とギヤポンプ用モータ25の回転速度を制御する第4動作を行う。
このような構成により、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、動作1から動作3の飲料製造動作後に、第4動作において、ミルクパック9からミルクを吸引することなく、エアポンプ241が供給した空気のみをギヤポンプ74の吸込側から吐出側に移送し、排出経路から排出させることができる。これにより、飲料製造動作後にギヤポンプ74内や排出経路内にミルクが残っていたとしても、空気によって押し流すことができ、ギヤポンプ74内や排出経路内に長時間ミルクが残ることによる衛生状態の悪化を防止することができる。
また、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、制御部300は、飲料の製造動作終了後に、エアポンプ241の駆動によりギヤポンプ74の吸込側に生じる正圧の方が、ギヤポンプ用モータ25の正転によりギヤポンプ74の吸込側に生じる負圧より大きくなるように、エアポンプ241の駆動速度とギヤポンプ用モータ25の回転速度を制御する第5動作を行う。
このような構成により、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、動作1から動作3の飲料製造動作後に、第5動作において、ギヤポンプ74の吸込側に正圧が生じるので、ギヤポンプ74の吸込側に残っていたミルクおよび/または空気を、ミルク供給経路を通ってミルクパック側に戻すことができるとともに、ギヤポンプ74の吐出側にも正圧が生じるので、ギヤポンプ74の吐出側および排出経路に残っていたミルクおよび/または空気を排出することができる。すなわち、ギヤポンプ74内(吸込側および吐出側)、および排出経路にミルクが残っていたとしても、ミルクパック9側に戻す、あるいは排出経路を通って排出させることができるので、ギヤポンプ74内や排出経路内に長時間ミルクが残ることによる衛生状態の悪化を防止することができる。
さらに、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、制御部300は、第5動作の後に、エアポンプ241を駆動させるとともにギヤポンプ用モータを25逆転させる第6動作を行う。
このような構成により、本開示の実施の形態の飲料製造装置1では、動作5の後に、第6動作において、ギヤポンプ74の吐出側および排出経路に負圧を生じさせるとともに、ギヤポンプ74の吸込側およびミルク供給経路に強い正圧を生じるので、排出経路に残っていたミルクをギヤポンプ74の吐出側に吸い戻し、ギヤポンプ74の吐出側にあるミルクをギヤポンプ74の逆転によって吸込側に移送させ、吸込側にあるミルクをミルクパック9側に押し戻すことができる。これにより、ギヤポンプ74内や排出経路内に長時間ミルクが残ることによる衛生状態の悪化を防止することができる。
なお、ホットのミルクを用いた飲料を製造した直後に上記動作6が行われると、温かいミルクがミルクパック9に戻されることになり、ミルクパック9内全体の温度が上昇してしまうが、制御部300は、上記した動作5の後に動作6を行うため、動作5によって温かいミルクがホットミルク用ノズル710から外部へ排出された後に動作6による排出経路のミルクを吸い戻す動作が行われる。このため、温かいミルクがミルクパック9に戻される事態を防止することができる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素は任意に組み合わせてられてもよい。
図14において、飲料製造後の後処理動作として、動作4から動作6を連続して行っていたが、本開示はこれに限定されない。動作4から動作6の各動作は、それぞれ単体でも飲料製造装置1内に残るミルクを排出またはミルクパック9に戻すことができる動作であるため、いずれか1つのみの動作を飲料製造後の後処理動作として行うようにしてもよい。