以下、本発明の好ましい実施態様につき、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の好ましい実施態様に係る気体濃度測定装置におけるセンサボックスの外観を示す斜視図であり、図1(b)は、センサボックスの内部構造を示す縦断面図である。以下の説明では、図1(a)におけるセンサボックスの図面右側に位置する側面を正面と呼び、図面左側に位置する側面を左面、左面と対向する面を右面と呼ぶ。
図1(a)に示されるように、センサボックス10は、直方体状の筐体であり、内部にセンサ等の小型の電子機器類を収容することができる空間を有し、センサボックス10の上部に取り付けられた紐状の吊下部材18によって、例えば、作物の栽培施設内に配設されたパイプ等に吊下げて設置可能に構成されている。また、後述のように、センサボックス10の内部には校正用気体供給管(図示せず)が配設されている。
校正用気体供給管はセンサボックス10の内部と外部とを連通するものであり、センサボックス10の正面には、校正用気体供給管の接続部15が取り付けられ、さらに、LEDを備えた発光部30が設けられている。センサボックス10の左面及び右面には、貫通孔である複数の通気孔19が設けられている。
また、センサボックス10の左面の上部には、測定値表示部50が設けられており、測定値表示部50は、数値等が表示可能な液晶パネル51を備えている。また、液晶パネル51の下方に操作部として、校正ボタン52と、操作ボタン53とを有している。後述のように、センサボックス10内には、気体濃度を測定する気体濃度測定センサが設けられており、液晶パネル51は、気体濃度測定センサが測定した気体濃度を所定時間間隔で表示させるように構成されている。センサボックス10に測定値表示部50が設けられているため、利用者が目視により容易に気体濃度測定装置1が設置されている位置の気体濃度を確認することができる。
校正用気体供給管の接続部15は、後述する校正用機具に設けられた接続端子と接続可能に構成されており、接続時に、校正用機具に設けられた校正用気体カートリッジから、その内部に充填された校正用気体の供給を受けるように構成されている。
通気孔19は、センサボックス10の壁面に設けられた貫通孔である。多数の通気孔19が設けられているため、センサボックス10の筐体内外の通気性を確保することができ、したがって、筐体内に気体濃度測定用のセンサを収容した場合にも、筐体外の気体濃度をより正確に測定することができる。
図1(b)に示されるように、センサボックス10の内部には、小型の電子機器類を取り付けるための基板16が設けられている。基板16には、制御部14と、気体の濃度を測定するための気体濃度測定センサ11と、通信部17とが取り付けられている。制御部14には、配線用ケーブル13aを介して接続検出部13が、配線用ケーブル30aを介して発光部30が、配線用ケーブル54を介して測定値表示部50(図示せず)が、それぞれ電気的に接続されている。
また、図1(b)に示されるように、センサボックス10の内部には、校正用気体を気体濃度測定センサ11へ供給するための校正用気体供給管12が配設されている。
校正用気体供給管12は、その内部を気体が流れることができるように管状に形成されている。また、校正用気体供給管12は、校正用気体の入口となる始端部に接続部15が設けられており、終端部に校正用気体の出口となる噴出口12cが設けられている。校正用気体供給管12はさらに、接続部15と噴出口12cの間の校正用気体供給管12には、略90度折り曲げられた屈曲部12aを有し、噴出口12cは、気体濃度測定センサ11に対向するように設けられている。
校正用気体供給管12に、校正用機具に設けられた接続端子と接続可能な接続部15が設けられているので、校正用機具に設けられた校正用気体カートリッジから、校正用気体供給管12の内部に、校正用気体を供給させることができ、さらに、校正用気体供給管12によって校正用気体供給管12の内部に流入した校正用気体を気体濃度測定センサ11に向けて導くことができる。
さらに、校正用気体供給管12の気体濃度測定センサ11に対向する端部には、噴出口12cが気体濃度測定センサ11に対向するように設けられているので、校正用気体カートリッジから接続部15に供給され、噴出口12cより噴出される校正用気体を、その濃度が低下する前に、気体濃度測定センサ11へ集中的に供給することが可能になる。これによって、気体濃度測定センサ11は、校正の際に、校正用気体カートリッジに充填されている所定濃度に設定された標準ガスの濃度を精度よく測定することが可能になるとともに、標準ガスの濃度の環境下での校正を簡便に行うことができる。
また、噴出口12cが気体濃度測定センサ11に対向するように設けられており、かつ、校正用気体供給管12によって、センサボックス10の外部と内部とが連通しているため、接続部15に校正用気体カートリッジが接続されていない状態では、校正用気体供給管12から外部の空気がセンサボックス10内に流れ込み、噴出口12cから気体濃度測定センサ11に外気が供給される。
そのため、通常の気体濃度測定時において、気体濃度測定センサ11は、センサボックス10外で測定した場合と比べ測定精度を損なうことなく、良好に測定することができる。
図1(b)に示されるように、接続部15との位置から、屈曲部12aの間の校正用気体供給管12の内壁には、凸状部材12bが取り付けられている。凸状部材12bは、環状の弾性部材によって構成され、取付位置において、校正用気体供給管12の内径を所定幅だけ狭めるように構成されている。
このように、校正用気体供給管12の内壁に凸状部材12bが取り付けられているため、校正用機具に設けられた接続端子の先端部に爪を設け、その接続端子を接続部15から校正用気体供給管12に挿し込むことによって、接続端子の爪を凸状部材12bの凸部に引っかけて、接続端子を校正用気体供給管12に挿し込まれた状態で掛止することができる。
気体濃度測定センサ11は、気体濃度測定センサ11の周囲に存在する二酸化炭素などの特定の気体の濃度を測定することができるセンサであり、測定した気体の濃度を制御部14に送信するように構成されている。
接続検出部13は、校正用気体供給管12に設けられた接触センサであり、接続部15から所定の接続端子が挿入され、校正用気体供給管12内の所定の位置に達したことを検出することができるように構成されている。
図2は、本発明の実施態様に係る気体濃度測定装置1における制御部14の電気系統を示すブロックダイアグラムである。
図2に示されるように、気体濃度測定センサ11、接続検出部13、通信部17および発光部30は、それぞれ制御部14に電気的に接続されている。
制御部14は、CPU、記憶装置、記録装置、プログラム(いずれも図示せず)等を有する電子制御機構であり、気体濃度測定センサ11を制御することができ、発光部30の発光を制御し、また、接続検出部13からの接続情報を取得することができるように構成されている。制御部14の記録装置には、あらかじめ設定された標準ガスの濃度がデータとして記録されている。
気体濃度測定センサ11は、測定した気体の濃度を制御部14に送信するように構成されている。
接続検出部13は、接続部15から校正用気体供給管12内に校正用機具に設けられた接続端子が挿入され、凸状部材12bの凸部に掛止されているか否かを検出するものである。
通信部17は、無線通信を可能とする無線通信媒体(図示せず)を有しており、無線通信は、例えば、IEEE802.11規格の無線LANの方式で行われる。これにより、制御部14は、気体濃度測定センサ11が測定した測定値に関する情報を、通信部17を介して、受信手段を備えた外部の装置に送信可能であり、かつ、送信手段を備えた外部の装置から指令を、通信部17を介して、受信可能に構成されている。
気体濃度測定装置1が設置されている施設内には、利用者が操作可能な電子演算装置である制御盤40が設けられている。制御盤40は、送受信手段を備えており、通信部17を介して制御部14と情報の送受信が可能に構成されている。制御部14と制御盤40とが、互いに情報の送受信を可能としていることによって、利用者が、制御盤40から制御部14に遠隔的に指令を発して、気体濃度測定装置1の制御をしたり、気体濃度測定装置1の情報を取得したりすることができる。
図3(a)は、本発明の好ましい実施態様に係る気体濃度測定装置1に設けられた校正用機具の側面図であり、図3(b)は、その要部断面図(b)である。
図3(a)に示されるように、校正用機具20は、校正用気体カートリッジ25と、校正用気体カートリッジ25の先に取り付けられた減圧弁26と、減圧弁26が連結され、流量計23aを有するレギュレータ23と、レギュレータ23から接続部15(図示せず)に延びる接続用チューブ22と、接続用チューブ22の先に設けられ、接続部15(図示せず)に接続挿入することができる接続端子22aを備えている。
接続用チューブ22は、可撓性を有する中空のチューブであり、その内部に気体を流すことができ、レギュレータ23と接続端子22aとを連通させるように構成されている。したがって、レギュレータ23から接続端子22aへ気体を送ることができ、また、接続端子22aを、接続用チューブ22の長さの範囲内で自由に位置させることができる。
接続端子22aは、所定の径を有する硬質樹脂製の管状体であり、接続用チューブ22が接続されている一端部に、管の径が太くなっている把持部22bを有し、他の一端部に管の径が細くなっている先端部22cを有している。さらに、先端部22cの端部には、管の外面が山型に盛り上がっている爪部22dが設けられている。また、接続端子22aは、管状体であるため、接続用チューブ22から送られる気体を、先端部22cから噴出することができる。
先端部22cは、その端部から管の軸方向に沿って、所定の長さの複数の切れ込みが形成されており、先端部22cの端部に力をかけることで、わずかに撓ませることができるように構成されている。先端部22cの端部がこのように構成されていることにより、先端部22cが管の中心に向けて押圧されると、先端部22cの端部は、管の径が細くなるように変形し、押圧力がなくなった状態では、元の形状に戻ることができる。
図3(b)に示されるように、校正用気体カートリッジ25には、校正用気体21が所定の圧力(例えば、5MPa)で封入されており、校正用気体カートリッジ25とレギュレータ23とが減圧弁26によって連通されているため、レギュレータ23を介して接続用チューブ22内に校正用気体21を送ることができるように構成されている。
レギュレータ23は、気体の圧力及び流出量を調節可能な調節弁である。レギュレータ23が閉じている状態では、校正用気体21は校正用気体カートリッジ25から接続用チューブ22内へ流出することがなく、レギュレータ23の弁が開かれている状態では、校正用気体21は校正用気体カートリッジ25から接続用チューブ22内へと流出可能である。
減圧弁26は、流入する校正用気体21の圧力を低減可能な弁である。減圧弁26が校正用気体カートリッジ25とレギュレータ23との間に設けられていることによって、校正用気体カートリッジ25に封入されている校正用気体21が、極めて高圧であっても、校正用気体21の圧力をレギュレータ23の耐圧性能を超えない圧力(例えば、0.01MPa)に低減させて、レギュレータ23に供給することができるため、レギュレータ23の破損を確実に防止することができる。
また、レギュレータ23及び減圧弁26が設けられているため、校正用気体カートリッジ25から流出する校正用気体21を、減圧して接続用チューブ22に供給することができ、したがって、接続用チューブ22として、耐圧性が高いチューブを用いる必要がなく、廉価なチューブを用いることができ、経済的である。さらに、レギュレータ23及び減圧弁26を設けることによって、校正用気体21が先端部22cから勢いよく噴出し、それに伴って、急激な断熱膨張が発生し、校正用気体カートリッジ25が低温化して、利用者が校正用気体カートリッジ25を素手で把持することが困難になるという事態が発生することを防止することができる。
流量計23aは、レギュレータ23を通過する校正用気体21の流量を測定するもので、レギュレータ23を通過する校正用気体21の圧力を目視により確認可能な圧力計23bを備えている。流量計23a及び圧力計23bを設けることによって、利用者が校正用気体21の供給状況を目視により把握することができ、校正用気体21の流量および圧力が適切な範囲内にあるかどうかを判断することができる。
また、校正用気体カートリッジ25は交換可能に構成されており、校正用気体カートリッジ25に封入されている校正用気体21を放出し、使い切った場合には、減圧弁26から校正用気体カートリッジ25を取り外し、減圧弁26に新たな校正用気体カートリッジ25を取り付けることができる。したがって、校正用機具20を再使用することによって、コストを低減させることができ、経済的である。
図4は、図1に示された本発明の好ましい実施態様に係る気体濃度測定装置1のセンサボックス10内に配設された校正用気体供給管12に、接続部15を介して図3に示された校正用機具20の接続端子22aが挿し込まれている状態を示す要部拡大断面図である。
図4に示されるように、接続端子22aは、把持部22bより先の部分が、接続部15から校正用気体供給管12に差し込むことができ、先端部22cが校正用気体供給管12の凸状部材12bに嵌まり込むように構成されている。ここに、接続端子22aの爪部22dは、山型に盛り上がっている部分の径が、校正用気体供給管12の凸状部材12bが設けられた部分の内径よりも太くなるように設定されている。
爪部22dおよび凸状部材12bが設けられているため、接続端子22aを校正用気体供給管12に挿し込んだ際に、爪部22dが凸状部材12bに当接する。このとき、接続端子22aを所定以上の力で、校正用気体供給管12内に押し込むことにより、爪部22dが凸状部材12bから管の中心に向けて押圧されるので、複数の切れ込みが設けられた先端部22cが撓むことで先端部22cの径が細くなり、接続端子22aを奥まで挿し込むことができる。
さらに、爪部22dが設けられているため、校正用気体供給管12の奥まで挿し込まれた接続端子22aを、校正用気体供給管12から引き抜くには、所定以上の力で引き抜くが必要で、所定未満の力では接続端子22aを引き抜くことができないため、校正用気体供給管12内に挿し込まれた接続端子22aが、利用者の意図せぬタイミングで引き抜かれることを防止することができる。
さらに、図4に示されるように、接続検出部13が、接続端子22aが校正用気体供給管12に挿入されたことを検出可能に構成されているため、校正用気体供給管12に接続端子22aが挿し込まれると、接続検出部13が接続端子22aの挿入を検出して、その旨の情報を、配線ケーブル13aを通じて制御部14(図示せず)に送信する。このように、接続検出部13が制御部14に、接続端子22aが校正用気体供給管12に挿入された旨の情報を送信することによって、制御部14は、接続端子22aが校正用気体供給管12に挿入された場合に必要な指令を、気体濃度測定センサ11及び発光部30(いずれも図示せず)に出力することができる。
また、校正用気体供給管12に挿し込まれた接続端子22aが引き抜かれると、接続検出部13が、接続端子22aが引き抜かれたことを検出して、その旨の情報を、配線ケーブル13aを通じて制御部14(図示せず)に送信する。このように、接続検出部13が制御部14に、接続端子22aが校正用気体供給管12から引き抜かれた旨の情報を送信することによって、制御部14は、接続端子22aが校正用気体供給管12から引き抜かれた場合に必要な指令を、気体濃度測定センサ11及び発光部30(いずれも図示せず)に出力することができる。
図5(a)は、図1に示された本発明の好ましい実施態様に係る気体濃度測定装置1のセンサボックス10と校正用機具20とが接続された状態を示す斜視図であり、図5(b)は、そのときの内部構造を示す縦断面図である。
図5(a)に示されるように、気体濃度測定装置1において、測定基準値の校正を行うときは、校正用機具20の接続端子22aが、センサボックス10の正面に取り付けられている接続部15から校正用気体供給管12(図示せず)内に挿し込まれ、センサボックス10と校正用機具20とが接続される。
図5(b)に示されるように、センサボックス10と校正用機具20とが接続された状態で、レギュレータ23が開かれると、校正用気体カートリッジ25内の校正用気体21が、接続用チューブ22を通って接続端子22aに送られ、接続端子22aからセンサボックス10の校正用気体供給管12内に送り込まれる。接続端子22aからセンサボックス10の校正用気体供給管12内に送り込まれた校正用気体21は、屈曲部12aを通過した後、噴出口12cから校正用気体供給管12の外に噴出される。噴出口12cは気体濃度測定センサ11に対向して設けられているため、噴出口12cから噴出された校正用気体21は、気体濃度測定センサ11へ集中的に供給される。
校正用気体21が気体濃度測定センサ11へ集中的に供給されることによって、気体濃度測定センサ11は、校正用気体21の気体濃度を正確に測定することができ、測定した校正用気体21の気体濃度を基準として気体濃度測定センサ11の校正をすることが可能になる。
また、屈曲部12aが略90度折り曲げられているため、校正用気体供給管12を通過する校正用気体21は屈曲部12aで進行方向が略90度曲げられ、校正用気体21の流速が低くなるので、噴出口12cから噴出された校正用気体21が噴出口12cから気体濃度測定センサ11に、高流速で噴出されることが防止され、校正用気体21の風圧によって気体濃度測定センサ11に故障を生じることを防ぐことができる。
なお、噴出口12cから噴出された校正用気体21は、通気孔19からセンサボックス10の外へ拡散するので、測定基準値の校正が終了して、校正用気体21の供給が止まると、所定時間経過後に、気体濃度測定センサ11の周囲の気体濃度は大気の気体濃度と平衡な状態に復帰するから、校正終了から所定時間経過した後は、校正用気体21が気体濃度測定センサ11の測定に影響を及ぼすことがない。
また、校正を行っていないときに、農薬が施設内に散布されて校正用気体供給管12に流入しても、屈曲部12aが略90度折り曲げられていることにより、農薬を含む外部の空気が噴出口12cから噴出する前に、農薬が校正用気体供給管12内部に付着して飛散しにくくなり、気体濃度測定センサに直接農薬が付着して故障や劣化を生じることを防ぐことができる。
図6は、図1に示された本発明の好ましい実施態様に係る気体濃度測定装置1における気体濃度測定センサ11の校正の制御を示すフローチャートである。
本実施態様にかかる気体濃度測定装置1においては、接続端子22aが校正用気体供給管12に挿入された場合、制御部14により通常の気体濃度の測定が中断されて、センサの校正が所定時間にわたって行なわれ、その後、接続端子22aが校正用気体供給管12から引き抜かれた場合、制御部14により通常の気体濃度の測定が再開されるように制御される。
まず、制御部14により、気体濃度の測定が開始され、気体濃度測定センサ11によって、所定の時間間隔で、気体濃度が測定され、測定信号が制御部14に送られ、記憶部に格納される(ステップS1)。
気体濃度測定センサ11による気体濃度の測定が行われている間に、接続端子22aが校正用気体供給管12に挿し込まれると、接続検出部13が接続端子22aの挿入を検出し、その旨の情報が制御部14に出力される。接続端子22aの挿入が検出されなければ、気体濃度測定センサ11による気体濃度の測定が継続される(ステップS2)。
制御部14は、接続検出部13から接続端子22aの挿入を検出した旨の情報を受け取ると、利用者に校正の開始が可能なタイミングであることを報知するため、発光部30のLEDを青色に点滅させる(ステップS3)。
このとき、利用者によって校正ボタン52が押されると、制御部14に、校正開始の信号が出力される。制御部14は、校正開始の信号を受け取ると、気体濃度測定センサ11による気体濃度の測定を中止させた(ステップS4)上で、記録部からあらかじめ設定された標準ガスの濃度を取得して気体濃度測定センサ11に送り、気体濃度測定センサ11に校正を開始するよう指令を出す(ステップS5)。
気体濃度測定センサ11は、校正開始の指令を受け取ると、所定時間の間、気体濃度の測定を行うと共に、所定の時間間隔で、現在の測定値が標準ガスの濃度と一致するように測定基準値の書き換えを行い、さらに、気体濃度の測定値を制御部14に出力する。
このとき、制御部14は、気体濃度の測定値を受け取とるたびに、その値を測定値表示部50に表示する。測定値表示部50に気体濃度の測定値が表示され、所定の時間間隔で更新されることにより、利用者が校正の様子を目視で確認することができる。
制御部14は、校正開始から所定時間が経過すると(ステップS6)、気体濃度測定センサ11に校正を終了するよう指令を出す(ステップS7)。気体濃度測定センサ11は、校正終了の指令を受け取ると、気体濃度の測定、測定基準値の書き換え、および制御部14への測定値の出力を中止し、校正が完了した旨の信号を制御部14に出力する。
制御部14は、気体濃度測定センサ11から校正が完了した旨の信号を受け取ると、点滅している発光部30のLEDを消灯させる(ステップS8)。これにより、利用者が校正の完了を視認することができる。
その後、校正用気体供給管12から接続端子22aが引き抜かれると、接続検出部13が接続端子22aの引き抜きを検出し、その旨の情報が制御部14に出力される(ステップS9)。制御部14は、その旨の情報を受け取ると、気体濃度測定センサ11に測定を再開するよう指令を出し、気体濃度の測定が再び開始される(ステップS10)。
図7は、図1に示された本発明の好ましい実施態様に係る気体濃度測定装置1における気体濃度測定センサ11のマニュアル校正の制御を示すフローチャートである。
マニュアル校正とは、利用者が目標測定値として設定した任意の数値を制御部14に送り、気体濃度測定センサ11が測定した気体濃度の測定値とその数値との差分に基づいて、測定基準値を校正できるようにするものである。例えば、利用者が予め目標測定値を400Pppmと設定しており、気体濃度測定センサ11が測定した気体濃度の測定値が390ppmであった場合、気体濃度測定センサ11の測定値が390ppmから400ppmとなるように測定基準値が校正される。
本実施態様にかかる気体濃度測定装置1においては、制御部14は、利用者が手動で数値入力することにより校正を行うことができるようにするマニュアル校正プログラムを有している。
以下、マニュアル校正プログラムの制御の流れを説明する。
利用者が、校正ボタン52を長押しする(例えば3秒間押し続ける)と、手動での数値入力が開始される旨の信号が制御部14に送られる(ステップS11)。制御部14は、この信号を受け取ると、測定値表示部50の液晶パネル51に、マニュアル校正プログラムの実行または中止が選択可能なメニュー画面を表示させる(ステップS12)。
液晶パネル51にメニュー画面が表示されている状態で、利用者により、メニュー画面からマニュアル校正プログラムの実行の項目が選択され、校正ボタン52が押されると、制御部14にマニュアル校正プログラムの実行が選択された旨の信号が送られる。制御部14は、その旨の信号を受け取ると、マニュアル校正プログラムを呼び出し実行する。一方、マニュアル校正プログラムの中止の項目が選択され、校正ボタン52が押されると、制御部14にマニュアル校正プログラムの中止が選択された旨の信号が送られ、制御部14は、その旨の信号を受け取ると、マニュアル校正プログラムを終了させる(ステップS13)。
マニュアル校正プログラムが実行されると、制御部14は、測定値表示部50の液晶パネル51に表示されている数字を点滅させ、操作ボタン53により液晶パネル51の数字を操作可能にする。このとき、利用者は、液晶パネル51の数字を操作することにより任意の目標測定値を入力することができる。この状態で、校正ボタン52が押されると、目標測定値を設定する旨の信号およびこの時点で液晶パネル51に表示されている数値が制御部14に送られる(ステップS14)。
制御部14が、この目標測定値を設定する旨の信号およびこの時点で液晶パネル51に表示されている数値を受け取ると、その液晶パネル51に表示されている数値と直前の気体濃度の測定値との差分を取り、その値の分だけ測定基準値をずらすように気体濃度測定センサ11に指令を出す。気体濃度測定センサ11は、この指令を受け取ると、測定基準値を変更し、変更が完了したらその旨の信号を制御部14に出力する(ステップS15)。制御部14は、気体濃度測定センサ11から、気体濃度測定センサ11の測定基準値が変更された旨の信号を受け取ると、マニュアル校正プログラムを終了させる(ステップS16)。
制御部14がマニュアル校正プログラムを有していることにより、利用者が気体濃度測定装置1が設置されている位置の気体濃度の数値を正確に把握できている場合には、その値と気体濃度測定センサ11の測定値とを比較して差分をとることで、気体濃度測定装置1の測定基準値のずれを精度よく修正することができる。
このことは、とりわけ、気体濃度測定装置1が同一施設に複数設置されている場合に利点となる。 すなわち、一つの気体濃度測定装置1を校正した後、その気体濃度測定装置1に隣接して設けられているほぼ同じ気体濃度の範囲内にあると考えられる他の気体濃度測定装置1を、既に校正されている気体濃度測定装置1による気体濃度の測定値と同じ値となるようマニュアル校正プログラムによって校正することで、校正を簡易に行うことができるとともに、校正により消費される標準ガスの量を節約することができる。
また、制御部14がマニュアル校正プログラムを有していることにより、手動により測定基準値の変更が可能になるから、利用者が、任意の数値を測定基準値として設定でき、様々な濃度の標準気体を使用しての校正が可能となるので、気体濃度測定装置1の利便性が向上する。
図8は、本発明の他の好ましい実施態様に係る気体濃度測定装置のセンサボックスの内部構造を示す縦断面図である。
図8に示されるように、本実施態様においては、校正用気体供給管12の噴出口12c近傍に気体圧力検出部13bが設けられている。気体圧力検出部13bは、校正用気体供給管12の噴出口12cの直前に、校正用気体供給管12から気体を引き込み、その圧力を検出する圧力センサを備えており、校正用気体供給管12内に流入して、噴出口12cから噴出される気体の圧力を測定することができるように構成されている。
図8に示されるように、本実施態様においては、気体圧力検出部13bは配線用ケーブル13cの一端部に接続され、配線用ケーブル13cの他端部は制御部14に電気的に接続されている。気体圧力検出部13bは、圧力センサによって測定された校正用気体供給管12内の気体の圧力が、大気圧以上であることを検出すると、気体の圧力が大気圧以上であったことを示す検出信号を、制御部14に出力するように構成されている。
気体圧力検出部13bが設けられているため、制御部14は、接続検出部13から接続端子22aの挿入を検出した旨の情報を受け取り、かつ、気体圧力検出部13bから校正用気体21の流入があった旨の情報を受け取ることによって、気体濃度測定センサ11が校正を開始するように制御することができる。そのため、校正用機具20内の校正用気体21が空であったり、接続端子22aの挿入時に不具合が発生したりして、正しく校正用気体21の濃度を測定できない状況で、校正が開始されることを防止することができる。
図9は、図8に示された気体濃度測定装置1における気体濃度測定センサ11の校正の制御を示すフローチャートである。
図9に示されるように、本実施態様においては、まず、制御部14により、気体濃度の測定が開始され、気体濃度測定センサ11によって、所定の時間間隔で、気体濃度が測定され、測定信号が制御部14に送られ、記憶部に格納される(ステップS21)。
気体濃度測定センサ11による気体濃度の測定が行われている間に、接続端子22aが校正用気体供給管12に挿し込まれると、接続検出部13が接続端子22aの挿入を検出し、その旨の情報が制御部14に出力される。接続端子22aの挿入が検出されなければ、気体濃度測定センサ11による気体濃度の測定が継続される(ステップS22)。
その後、制御部14は、所定時間、待機する。その間に、利用者によってレギュレータ23が開かれると、校正用気体カートリッジ25内の校正用気体21が、接続用チューブ22を介して、接続端子22aに送られ、さらに、校正用気体供給管12を介して、噴出口12cに達し、校正用気体21の圧力が気体圧力検出部13bによって測定される。気体圧力検出部13bが、測定した気体の圧力が大気圧以上であることを検出すると、気体圧力検出部13bから制御部14に、校正用気体21の流入があった旨の情報が出力される(ステップS22a)。
制御部14が所定時間内に校正用気体21の流入があった旨の情報を受け取ると、制御部14は、発光部30のLEDを青色に点滅させる(ステップS23)。
一方、制御部14が所定時間内に校正用気体21の流入があった旨の情報を受け取らない場合、制御部14は、通信部17を介して制御盤40に、その旨の情報を受け取らなかった旨を報知する信号を出力し、かつ、発光部30のLEDを所定時間、赤色に点灯させ、その後、接続端子22aの挿入を検出した旨の情報を破棄し、気体濃度の測定を継続させる(ステップS22b)。制御部14が、制御盤40に検出信号がなかった旨を報知し、発光部30のLEDを赤色に点灯させることにより、利用者が、気体濃度測定センサ11の校正が開始されなかったことを確認することができる。
制御部14は、発光部30のLEDを青色に点滅させると、さらに、気体濃度測定センサ11による気体濃度の測定を中止させた(ステップS24)上で、記録部からあらかじめ設定された標準ガスの濃度を取得して気体濃度測定センサ11に送り、気体濃度測定センサ11に校正を開始するよう指令を出す(ステップS25)。
気体濃度測定センサ11は、校正開始の指令を受け取ると、所定時間の間、気体濃度の測定を行うと共に、所定の時間間隔で、現在の測定値が標準ガスの濃度と一致するように測定基準値の書き換えを行い、さらに、測定値を制御部14に出力する。
制御部14は、校正開始から所定時間が経過すると(ステップS26)、気体濃度測定センサ11に校正を終了するよう指令を出す(ステップS27)。気体濃度測定センサ11は、校正終了の指令を受け取ると、気体濃度の測定、測定基準値の書き換え、および制御部14への測定値の出力を中止し、校正が完了した旨の信号を制御部14に出力する。
制御部14は、気体濃度測定センサ11から校正が完了した旨の信号を受け取ると、点滅している発光部30のLEDを消灯させる(ステップS28)。これにより、利用者が校正の完了を視認することができる。
その後、校正用気体供給管12から接続端子22aが引き抜かれると、接続検出部13が接続端子22aの引き抜きを検出し、その旨の情報が制御部14に出力される(ステップS29)。制御部14は、その旨の情報を受け取ると、気体濃度測定センサ11に測定を再開するよう指令を出し、気体濃度の測定が再び開始される(ステップS30)。
本実施態様においては、気体濃度測定装置1に気体圧力検出部13bが設けられているので、気体濃度測定センサ11の校正の制御をするにあたり、校正用気体供給管12に校正用気体21が流入しているか否かを、気体濃度測定センサ11の校正開始の条件として加えることができ、かつ、校正用気体21の流入が無ければ校正を中止することができるので、気体濃度測定センサ11が校正をしている間、校正用気体21だけを測定することができ、したがって、より正確な校正が可能になる。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、図1ないし図7に示された実施態様ならびに図8および図9に示された実施態様のいずれにおいても、気体濃度測定装置1の外部装置として制御盤40を設けているが、制御盤40に加えて、通信部17と通信して情報の送受信をすることができ、液晶ディスプレイを有し、持ち運び可能に形成された小型の電子演算機器である携帯型表示機を設けてもよい。
また、前記実施態様においては、校正の制御は、制御部14が接続検出部13から接続端子22aの挿入を検出した旨の情報を受け取り、利用者に校正の開始が可能なタイミングであることを報知するため、発光部30のLEDを青色に点滅させた後、利用者によって校正ボタン52が押されると、制御部14に、校正開始の信号が出力されるように制御されているが、制御部14が接続検出部13から接続端子22aの挿入を検出した旨の情報を受け取ると、制御部14は、この信号を校正開始の信号として処理するようにしてもよい。
また、前記実施態様においては、通気孔19は円形状をなしているが、通気孔19を円形状に形成することは必ずしも必要でなく、センサボックス10の筐体内外の通気性を確保することができれば、例えば、スリット状であってもよく、通気孔19の形状は、とくに限定されない。
また、前記実施態様においては、校正用気体21が校正用気体カートリッジ25に、5MPaの圧力で封入されているが、校正用気体21の封入圧力は5MPaに限定されるものではなく、特に限定されないが、1MPaないし10MPaであることが好ましい。