JP6926787B2 - 鉄心構造体、トランス、及び鉄損抑制方法 - Google Patents

鉄心構造体、トランス、及び鉄損抑制方法 Download PDF

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Description

本開示は、鉄心構造体、トランス、及び鉄損抑制方法に関する。
変圧器鉄心でよく用いられる構造は、一方向性電磁鋼板を一定の幅と長さに切断し、それらを積層して作られる複数の部分を継ぎ合わせて閉磁路を構成するもので、積鉄心と呼ばれる。この内、三相交流用に用いられる鉄心には、3本の脚部と2本のヨーク部を組み合わせた構造、あるいは5本の脚部と2本のヨーク部を組み合わせた構造がとられている。前者は三相三脚積鉄心、後者は三相五脚積鉄心と呼ばれる。
三相三脚積鉄心では、コイルは3本の脚に巻かれ、三相五脚積鉄心ではコイルは外側の脚を除いた3本の脚に巻かれる。
そして、トランス(変圧器)においては、従来から、鉄損を低減することが一つの技術的課題である。
また、鉄心材料である電磁鋼板の鉄損値とトランスに組み上げて測定した鉄損値に乖離があることは従来から指摘されている。
組上げた鉄損と素材鉄損の比をビルディングファクターと称し、素材の鉄損が同じでも、組上げた鉄損が高く、換言すればビルディングファクターが高い場合、設計した性能より損失の高い製品ができるため、これを下げることが一つの課題であり、種々の検討がなされている。
例えば特許文献1には、鋼板板面に、圧延方向とは異なる角度で傾斜して延びる線分を少なくとも2本交差させた形状になる低透磁率域を複数個形成してなることを特徴とする異方性電磁鋼板が開示されている。特許文献1によれば、材料の異方性を利用した分割型モータや積み鉄心トランスの効率を格段に向上させることができるとされている。
特許文献2には、実機鉄損特性の極めて優れた一方向性電磁鋼板に関し、とくに電磁鋼板の2次再結晶粒の結晶方位を規制して圧延方向のみならず幅方向の鉄損値を低減させることにより、実機鉄損特性の向上を図る方法が開示されている。
また特許文献3には、仕上焼鈍された方向性電磁鋼板に該鋼板の鋼成分あるいは鋼組織と異なった侵入体を、単位断面積あたり0.041以上の面積をもり、間隔をおいて形成させる方法が開示されている。特許文献3によれば、上記方向性電磁鋼板を用いた積鉄心は、接合部における騒音が低減できるとされている。
特許文献4には、還流磁区領域を、電子ビームを鋼板圧延方向に偏向せずに照射される位置と重ならない位置に、鋼板の圧延方向を横切る方向に対して形成し、この還流磁区領域を、長さ:200mm以上で連続とし、かつ該還流磁区領域の幅:d(μm)を、0.8d≦d≦1.2d、d(μm):還流磁区領域の幅の、前記圧延方向を横切る方向での平均値とする方法が開示されている。
特開2004−103965号公報 特公平2−20693号公報 特開昭61−177364号公報 特開2015−52144号公報
上述のようにビルディングファクターを改善する従来の手法は、鉄心材料の特性を向上させるものであり、鉄心の構造を改善するものではなかった。
一方、本研究者らは、ビルディングファクターを悪化させる原因の一つとして、磁束の流れに着目し、トランスの積鉄心のT接合部に磁束の閉磁路を構成し、積鉄心のヨーク部の板幅方向の透磁率を高めることで、ビルディングファクターが低く、鉄損の低いトランスを実現可能な点に着目した。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、積鉄心のT接合部における磁束の流れを制御可能な鉄心構造体、当該鉄心構造体を備えた低鉄損化が可能なトランス、及び、トランスの鉄損抑制方法を提供することを目的とする。
本開示の鉄心構造体は、少なくとも3つの脚部と2つのヨーク部とを有する積鉄心と、
前記ヨーク部の側面を周回するように配置される少なくとも1つの磁場発生部と、を備え、
平面視した際に、前記磁場発生部は、前記脚部と前記ヨーク部の接合部であるT接合部の少なくとも一部を覆い、前記ヨーク部の板幅方向に対して傾斜して、前記ヨーク部の板幅方向の磁場を当該T接合部に発生可能に配置されていることを特徴とする。
本開示の鉄心構造体においては、前記磁場発生部が、前記ヨーク部の側面を周回するように配置される磁場コアと、当該磁場コアの外側面と内側面とを交互に通過するように巻回する磁場コイルを備え、
平面視した際に、前記磁場コイルは前記ヨーク部の外側面と、内側面に少なくとも1つずつ備えていてもよい。
本開示の鉄心構造体においては、平面視において、前記磁場発生部は、2つの前記ヨーク部に、前記脚部の圧延方向を軸として左右対称となる位置に1組ずつ配置されていてもよい。
本開示のトランスは、前記鉄心構造体と、当該鉄心構造体の脚部に巻回する巻線とを備えることを特徴とする。
本開示のトランスにおいては、前記積鉄心の磁束密度を検出する磁束密度検出部と、
前記磁場発生部から発生する磁場を調節する磁場調節部と、を更に備えてもよい。
本開示の鉄損抑制方法は、少なくとも3つの脚部と2つのヨーク部とを有する積鉄心と、当該脚部に巻回する巻線とを備えるトランスの、当該積鉄心の鉄損を抑制する方法であって、
前記トランスは、前記ヨーク部の側面を周回するように配置される少なくとも1つの磁場発生部を備え、
平面視した際に、前記磁場発生部は、前記脚部と前記ヨーク部の接合部であるT接合部の少なくとも一部を覆うように配置され、
前記磁場発生部により、前記ヨーク部の板幅方向に予め所定の磁場を発生させておき、
前記積鉄心の磁束密度を検出し、
検出された前記磁束密度の変化に応じて、前記磁場発生部により、前記T接合部における前記ヨーク部の板幅方向の磁場の強さを変化させることを特徴とする。
本開示によれば、積鉄心のT接合部における磁束の流れを制御可能な鉄心構造体、当該鉄心構造体を備えた低鉄損化が可能なトランス、及び、トランスの鉄損抑制方法を提供することができる。
従来の積鉄心におけるT接合部での、横軸を磁場の強さH(A/m)、縦軸を磁束密度B(T)とし、方向性電磁鋼板の圧延方向から90°傾けて励磁した場合の、B−H曲線を示す図である。 本開示に係る鉄心構造体の一実施形態を示す模式図である。 図2の実施形態における、ヨーク部を構成する電磁鋼板の積層構造を説明するための模式図である。 図2の実施形態におけるA−A’断面の一例を示す模式図である。 本開示に係るトランスの一例を示すブロック図である。 本開示に係る鉄損抑制方法の一例を示すフロー図である。
以下、本開示に係る鉄心構造体、トランス、及び鉄損抑制方法について、順に詳細に説明する。
なお、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
1.鉄心構造体
本開示の鉄心構造体は、少なくとも3つの脚部と2つのヨーク部とを有する積鉄心と、
前記ヨーク部の側面を周回するように配置される少なくとも1つの磁場発生部と、を備え、
平面視した際に、前記磁場発生部は、前記脚部と前記ヨーク部の接合部であるT接合部の少なくとも一部を覆い、前記ヨーク部の板幅方向に対して傾斜して、前記ヨーク部の板幅方向の磁場を当該T接合部に発生可能に配置されていることを特徴とする。
(1)鉄損抑制メカニズム
ビルディングファクター(BF)とは、組上げた鉄心の鉄損と素材の電磁鋼板の鉄損の比である。
積鉄心の場合、ビルディングファクターを制御し良好な特性を得るためには、積鉄心の鉄損を低減させ、特に鉄損の増加が大きいT接合部での鉄損を低減することが重要である。
一般的な三相三脚積鉄心において、三相交流はそれぞれ位相が120°ずつシフトした3成分からなるが、これらによって発生する磁束は鉄心のT接合部を通過する。また、ヨーク(継鉄)部の圧延方向での鉄損を100%とすると、コーナー部では110〜120%、T接合部では150〜190%程度の鉄損が発生することが知られている。
これは鉄心を製作する上で、所定の形状寸法に切断した鉄心用鉄板をその切断面を当接させて組立てるため、T接合部において複雑な磁気回路が構成され、さらに回転磁界が生じるため、鉄損が多く発生することが原因として考えられる。
図1は、従来の積鉄心におけるT接合部でのヨーク部の板幅方向の、B−H曲線を示す図である。図1において、横軸は磁場の強さH(A/m)、縦軸は磁束密度B(T)である。
T接合部では、脚部の圧延方向から傾いた方向に磁化されるため、図1に示す磁化曲線のように、磁場の強さH=0付近の低磁場では透磁率が低下し、200A/m程度の中磁場では透磁率が高くなる。これによって描かれるBHループは、磁場の低い部分で励磁しにくく、磁束密度B=0の点での保持力Hcが高いループになるため、鉄損が大きい。一方で中磁場では透磁率が高いため鉄損は低くなる。
上記から、本研究者らは、T接合部での磁場が常に透磁率の高い中磁場以上となるように設定すると、鉄損の小さなトランスが得られることを見出した。すなわち、図1に示す磁化曲線において、ヨーク部の板幅方向の透磁率が高い領域を使用するために、T接合部での磁場が常に中磁場以上となるように設定することが本開示の技術の特徴である。
本開示においては、トランスの積鉄心に対して、ヨーク部の板幅方向に磁場を加えるコイル(巻線)を、平面視においてT接合部の少なくとも一部を覆うように配置し、鉄損を低減させることができる積鉄心の位相にあわせて磁場を加えるように制御する。これにより、T接合部における磁束の流れを変化させ、T接合部におけるヨーク部の板幅方向の透磁率を高めることができ、ビルディングファクターが低く、鉄損の低いトランスが得られる。
具体的には、図2に示す矢印12と矢印13の方向に磁束が流れる位相のタイミングで、磁場発生部6を用いてT接合部8におけるヨーク部3の板幅方向の磁場の強さH(磁束)を0より大きく200A/m以下程度の強さで流すことにより、T接合部8におけるヨーク部3の板幅方向の磁気特性を、図1の矢印で示す高透磁率領域にもっていくことができる。
これにより、通常のトランスよりもT接合部の鉄損が低くなる。結果として、トランスの全体的な鉄損が低減し、ビルディングファクターが低減する。
換言すれば、強制的に磁気モーメントを励磁方向へ向けることが本開示の技術の特徴である。
(2)鉄心構造体
図2は、本開示に係る鉄心構造体の一実施形態を示す模式図である。本明細書においては、図2に示すY軸方向から見ることを平面視と表記する。
図2の例に示される鉄心構造体100は、脚部2とヨーク部3とを有する積鉄心1と、ヨーク部3の側面を周回するように配置される磁場発生部6とを備えている。
図2において、積鉄心1の3つの脚部2にそれぞれ左からU、V、W相の巻線を巻回したときに、矢印11は、U相とW相を通る磁束の流れであり、矢印12は、U相とV相を通る磁束の流れであり、矢印13は、V相とW相を通る磁束の流れを示している。
なお、図2の実施形態においては3脚の積鉄心を例示しているが、本開示に係る積鉄心は、5脚のものであってもよく、一般的にトランス用の積鉄心として用いられる公知の構成とすることができる。
図3は、図2の実施形態における、ヨーク部3を構成する電磁鋼板の積層構造を説明するための模式図である。
図3の例に示されるように、ヨーク部3は、階段状にブロック化した電磁鋼板7を積層して形成された積層構造を有している。本開示においては、脚部2もヨーク部3と同様に階段状にブロック化した電磁鋼板7を積層して形成された積層構造を有している。
電磁鋼板7の積層方向は特に限定されないが、図3の例に示されるように、図2におけるY軸方向に積層されていることが一般的であり、本開示においても好ましい。
電磁鋼板7は、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよく、例えばケイ素を0.1質量%以上4.5質量%以下含有するものなどが挙げられる。
本開示において電磁鋼板7は、無方向性電磁鋼板であっても、方向性電磁鋼板であってもよいが、一般的なトランスにおいて好ましく用いられる方向性電磁鋼板を用いることが好ましい。
また、電磁鋼板7の厚みは特に限定されないが、例えば、通常0.1mm以上1mm以下のものが好適に用いられ、中でも、0.15mm以上0.8mm以下のものが好ましい。
また、電磁鋼板7の積層体は、公知のバンドやプレート等を用いて固定されていることが好ましい。
脚部2は、通常、トランスの巻線が巻回される部材であり、ヨーク部3とT接合部8を形成する中脚2aと、ヨーク部3とコーナー部9を形成する外脚2bで構成される。
本開示において、T接合部8は、中脚2aとヨーク部3とが交差する領域8’(図2において、点線で囲まれた範囲)から脚部2の板幅L分の長さ範囲を含む部分と定義する。なお、図2において、T接合部8は、鎖線で囲まれた範囲である。
また、図2において、コーナー部9は、外脚2bとヨーク部3とが交差する領域であり、一点鎖線で囲まれた範囲を示す。
図2において、中脚2aは、圧延方向の両端に90°の角度の先端部を有する六角形の電磁鋼板の積層体である。中脚2aの先端部の角度は、例えば、60〜120°であってもよい。
図2において、外脚2bは、圧延方向の両端に中脚2aに平行に対向する内側に向けて先端から45°の角度の先端部を有する台形の電磁鋼板の積層体である。外脚2bの先端部の角度は、例えば30〜60°であってもよい。
ヨーク部3は、複数ある脚部2を並列して固定する部材である。
図2において、ヨーク部3は、圧延方向の両端に外脚2bの先端部と接合する内側に向けて先端から45°の角度の先端部を有し、且つ、中脚2aの先端部と接合する90°の角度のV字形切り欠き部を有する電磁鋼板7の積層体である。ヨーク部3の先端部の角度は、例えば、30〜60°であってもよい。また、ヨーク部3のV字形切り欠き部の角度は、例えば、60〜120°であってもよい。
脚部2とヨーク部3との接合方式は特に限定されず、バットラップ接合、ステップラップ接合など、公知の方法とすることができる。
図2において、磁場発生部6は、ヨーク部3を横切るように、T接合部8にヨーク部3の板幅方向の磁場を加えられるように配置されている。
また、磁場発生部6は、一例として、磁場コア4と、磁場コイル5とを有している。
さらに、磁場コイル5は、図2に示すように、平面視した際に、ヨーク部3の外側面と、内側面に1つずつ備えられている。
また、磁場発生部6は、図2に示すように、平面視において、2つのヨーク部3に、脚部2である中脚2aの圧延方向を軸として左右対称となる位置に1組ずつ計4つ配置されている。
図4は、図2の実施形態におけるA−A’断面の一例を示す模式図である。
図4に示すように、T接合部8を励磁するために用いる磁場コイル5は、磁場コア4に巻きつけて配置し、鉄心1のヨーク部3を横切る方向、且つ、ヨーク部の板幅方向に対して傾斜させた方向、いわゆる斜め方向に磁場を加えられるように配置されている。
磁場発生部6の磁束の流れの一例として、図4に矢印14として示すように、磁場コイル5で発生した磁束は、ヨーク部3の外側面側の磁場コア4の磁路を通り、ヨーク部3の当該磁場コア4と接触している部分からヨーク部3に入り、ヨーク部3の内側面側の磁場コア4の磁路を通り、磁場コイル5に戻る。
磁場発生部6は、平面視した際に、T接合部8の少なくとも一部を覆い、ヨーク部3の板幅方向に対して傾斜して、ヨーク部3の板幅方向の磁場を当該T接合部8に発生可能に配置されていればよい。
ヨーク部3の板幅方向に対する傾斜角度は、特に限定されないが、平面視した際に、T接合部8を覆う面積が大きくなるような角度であってもよい。
本開示においては、磁場発生部6の磁場の制御の容易性や、ヨーク部3の側面に保持しやすい点から、磁場発生部6が、ヨーク部3の側面を周回するように配置される環状の磁場コア4と、当該磁場コア4の外側面と内側面とを交互に通過するように巻回された少なくとも一つの磁場コイル5とを備えることが好ましい。
また、平面視において、磁場発生部6は、ヨーク部3の板幅方向の磁場をT接合部8に発生可能であれば、積鉄心1のT接合部8以外の場所(例えば脚部2の一部であって、T接合部8の領域以外の場所)を覆っていてもよい。
磁場発生部6は、環状の磁場コア4を、電磁鋼板7の積層構造を有するヨーク部3に嵌めた状態で、当該ヨーク部3の側面に保持されている構成とすることができる。
磁場コイル5を、環状の磁場コア4を介してヨーク部3の側面に保持することにより、ヨーク部3に積層される電磁鋼板7の圧延方向に対し、当該磁場コイル5のコイル軸の方向を平行乃至略平行に合わせた状態で、磁場コイル5をヨーク部3の側面に配置することができる。
磁場発生部6は、少なくとも磁場コイル5を一つ有すればよいものであるが、ヨーク部3の側面に保持しやすく、磁場が安定する点から、磁場コア4を有するものが好ましい。
磁場コア4は、ヨーク部3の板幅方向の磁場を発生させるための磁場コイル5をヨーク部3の周囲又は近傍に固定する支持体としても機能する。
磁場コア4は、ヨーク部3の周囲を取り囲み周回する断面が環状の部材とすることができる。
また、磁場発生部6は、ヨーク部3の板幅方向の磁場をT接合部8に発生しやすくする観点から、磁場コイル5を2個以上有することが好ましく、磁場コイル5を4個有することがより好ましい。
さらに、磁場コイル5は、図2に示すように、平面視した際に、ヨーク部3の外側面と、内側面に少なくとも1つずつ備えてもよく、図4に示すようにヨーク部3の外側面と、内側面に2つずつ備えていてもよい。
なお、ヨーク部3の板幅方向の磁場とは、電磁鋼板7の板面に対して厳密に板幅方向に生じる磁場のみでなく、電磁鋼板7の板面に対して板幅方向以外の成分を含むものであってもよい。
本開示において、磁場発生部6は、T接合部8における磁束の流れを制御可能とする観点から、ヨーク部3の側面を周回するように配置され、平面視において、T接合部8の少なくとも一部を覆う位置に少なくとも1個有していればよく、T接合部8の全てを覆う位置に有していてもよい。
また、磁場発生部6は各ヨーク部3に2個以上有していてもよく、図2に示すように、平面視において、2つのヨーク部3に、脚部2である中脚2aの圧延方向を軸として左右対称となる位置に1組ずつ配置されていてもよい。
また、図示しないが、平面視において、各ヨーク部3に2つの磁場発生部6がT接合部8の少なくとも一部を覆うように交差して配置されていてもよい。
また、本開示において、磁場発生部6の大きさについては特に限定されないが、T接合部8における磁束の流れを制御しやすい点から、平面視において面積基準でT接合部8の1/10以上の範囲を被覆してもよく、T接合部8の2/10以上の範囲を被覆してもよく、T接合部8の全ての範囲を被覆してもよい。
各ヨーク部3に磁場発生部6が複数ある場合には、複数ある磁場発生部6の合計の面積が上記範囲を満たしていることが好ましい。
本開示の鉄心構造体100において積鉄心1の大きさは特に限定されず、用途に応じて所望の大きさとすることができる。
例えば、積鉄心1の長さ(図2におけるZ軸方向の全長)は、100mm以上2000mm以下とすることができ、500mm以上1500mm以下とすることが好ましい。
積鉄心1の幅(図2におけるX軸方向の全長)は、100mm以上2000mm以下とすることができ、500mm以上1500mm以下とすることが好ましい。
また、積鉄心1の厚み(図2におけるY軸方向の長さ)は、10mm以上800mm以下とすることができ、50mm以上500mm以下とすることが好ましい。
また、脚部2の長さは、50mm以上1800mm以下とすることができ、300mm以上1200mm以下とすることが好ましい。
脚部2の幅は、50mm以上1800mm以下とすることができ、300mm以上1200mm以下とすることが好ましい。
また、積鉄心1のその他の構成としては、一般的にトランス用積鉄心として用いられる公知の構成とすることができる。
2.トランス
本開示に係るトランスは、前記鉄心構造体と、当該鉄心構造体に巻回された巻線とを備える。
本開示に係るトランスは、前記鉄心構造体を備えているため、低鉄損化が可能である。
本開示において巻線は、回路に接続されて用いられるものであり、通常、電源を含む回路に接続された一次コイルと、取出し回路に接続された2次コイルとを有するものである。
巻線の材質としては特に限定されないが、銅、アルミニウム等が挙げられる。
巻線の構成は、一般的にトランスに用いられる公知の構成とすることができる。
また、トランスのその他の構成としては、一般的にトランスに用いられる公知の構成とすることができる。
本開示のトランスにおいては、前記積鉄心の磁束密度を検出する磁束密度検出部と、
前記磁場発生部から発生する磁場を調節する磁場調節部と、を更に備えてもよい。
磁場調節部は磁束密度検出部により検出された積鉄心の磁束密度の大きさ又は変化量に応じて、磁場コイルを通る電流を調節するものであってもよい。
図5は、磁束密度検出部及び磁場調節部を有する本開示のトランスの一例を示すブロック図である。
図5の例では、脚部とヨーク部を備える積鉄心及び磁場発生部、磁束密度検出部として磁束密度測定部及び磁束密度変化算出部、磁場調節部として電流制御部、巻線の主電源、並びに、磁場発生部、磁束密度検出部及び磁場調節部の制御電源が含まれている。
図5の例に示されるトランスの構成は、まず、磁束密度測定部により、脚部及びヨーク部の少なくともいずれか一方の磁束密度を連続的に、又は、一定間隔ごとに測定する。なお、磁束密度の測定は、位相が変わるタイミングで行われてもよい。
得られた測定値は、磁束密度変化算出部に送られ、前回の磁束密度の測定値からの変化を算出することにより、磁束密度の変化を検出することができる。
次いで検出された磁束密度の変化の情報が、磁場調節部の電流制御部に送られ、その情報(磁束密度の絶対値又は変化量)に基づいて、鉄損が最小になっているか否か判断し、電流制御部で磁場コイルに流すべき電流値が決定され、決定された電流が磁場コイルに流れるように制御電源に指示される。
磁場調節部の制御電源は与えられた指示に従って、電圧等を調節する。
この一連の情報処理プロセスにより、磁場コイルから発生する磁場の大きさを変化させて、積鉄心のT接合部における鉄損を抑制することができる。
具体的には、積鉄心を励磁する位相にあわせて、鉄損を低減させることができる位相のタイミング(図2に示す矢印12と矢印13の方向に磁束が流れるタイミング)で、磁場発生部を用いてT接合部を励磁するように制御する。これにより、T接合部における磁束の流れを変化させ、T接合部におけるヨーク部の板幅方向の透磁率を高める(図1の矢印で示す高透磁率領域にもっていく)ことができ、ビルディングファクターが低く、鉄損の低いトランスが得られる。
磁束密度検出部は、磁束密度測定部と磁束密度変化算出部を有していれば、特に限定されない。
磁束密度測定部は、積鉄心に対して少なくとも1つ有すればよいものであるが、磁束の流れを制御しやすい点から、各脚部及び各ヨーク部に設けられていてもよい。
磁束密度測定部は特に限定されないが、脚部及びヨーク部の少なくともいずれか一方における磁束密度を測定する手段が挙げられる。
磁束密度測定部として、脚部及びヨーク部の少なくともいずれか一方における磁束密度を測定する手段は、公知の手段を用いることができる。磁束密度の測定値から位相の変化を検知することができる。当該手段を用いる場合には、予め、位相と磁束密度との関係を測定しておいてもよい。
また、磁束密度変化算出部は、公知の手段を用いることができる。
磁場発生部による磁場を発生する手段は、特に限定されないが、トランスを大型化することなく容易に制御可能な点から、前記本開示に係る鉄心構造体が有する磁場コイルを用いることが好ましい。
磁場発生部は、当該磁場発生部が有する磁場コイルに流れる電流を手動で、又は自動制御により変化させることで、磁場を調節し、積鉄心の鉄損を抑制することができる。
磁場発生部から生じる磁場の強さは、特に限定されないが、T接合部におけるヨーク部の板幅方向の透磁率を図1の矢印で示す高透磁率領域にする観点から、0より大きく、200A/m以下の強さであってもよい。
3.鉄損抑制方法
本開示の鉄損抑制方法は、少なくとも3つの脚部と2つのヨーク部とを有する積鉄心と、当該脚部に巻回する巻線とを備えるトランスの、当該積鉄心の鉄損を抑制する方法であって、
前記トランスは、前記ヨーク部の側面を周回するように配置される少なくとも1つの磁場発生部を備え、
平面視した際に、前記磁場発生部は、前記脚部と前記ヨーク部の接合部であるT接合部の少なくとも一部を覆うように配置され、
前記磁場発生部により、前記ヨーク部の板幅方向に予め所定の磁場を発生させておき、
前記積鉄心の磁束密度を検出し、
検出された前記磁束密度の変化に応じて、前記磁場発生部により、前記T接合部における前記ヨーク部の板幅方向の磁場の強さを変化させることを特徴とする。
なお、平面視において磁場発生部は、脚部とヨーク部の接合部であるT接合部の少なくとも一部を覆い、ヨーク部の板幅方向の磁場をT接合部に発生可能に配置されていれば、ヨーク部の板幅方向に対して傾斜していても、傾斜していなくてもよいが、トランスの製造容易性の観点から傾斜していてもよい。
磁場発生部から、ヨーク部の板幅方向の磁場を発生させるタイミングは、図2に示す矢印12と矢印13の磁束が流れる間、すなわち、T接合部における鉄損が大きくなる、ヨーク部の圧延方向に対し平行に磁束が流れない時に発生させる。
一方、図2に示す矢印11の磁束が流れる際は、ヨーク部の板幅方向に磁場を発生させても、させなくてもよい。
したがって、積鉄心を励磁する位相にあわせて、鉄損を低減させることができる積鉄心の位相のタイミング(図2に示す矢印12と矢印13の方向に磁束が流れるタイミング)で、磁場発生部を用いてT接合部を励磁するように制御する。これにより、T接合部における磁束の流れを変化させ、T接合部におけるヨーク部の板幅方向の透磁率を高める(図1の矢印で示す高透磁率領域にもっていく)ことができ、ビルディングファクターが低く、鉄損の低いトランスが得られる。
前記本開示のトランスは、上記本開示に係る鉄損抑制方法を実行するのに、適した構成を有している。
以下、本開示に係る鉄損抑制方法について図を参照して説明するが、トランスの構成は前述のとおりであるため、ここでの説明は省略する。
図6は、本開示に係る鉄損抑制方法の一例を示すフロー図である。
図6の実施形態においては、まず、予め所定の磁場を発生させておく。所定の磁場としては、ヨーク部の板幅方向の磁場を発生させてもよいし、積鉄心の磁束密度を検出しやすくする観点から、主磁束の流れを妨げない、微弱な磁場を発生させてもよい。
次いで、トランスを稼働させてから、積鉄心の磁束密度を検出し、鉄損が最小か否か判断する。
鉄損が最小か否かの判断は、前述の磁束密度測定部及び磁束密度変化算出部を用いて行うことができる。
鉄損が最小でない場合には、次いで、前述の電流制御部により、積鉄心のT接合部における鉄損を抑制するために、磁束密度の測定値及び/又は変化量に基づいて、磁場コイルに流すべき電流値が決定され、決定された電流が磁場コイルに流れるように制御電源に指示される。
磁場調節部の制御電源は与えられた指示に従って、電圧等を調節する。
この一連の情報処理プロセスにより、磁場コイルから発生する磁場の大きさを変化させることにより、積鉄心のT接合部における鉄損を抑制することができる。
磁束密度測定部及び磁束密度変化算出部により行われる、磁束密度の測定及び磁束密度変化の算出と、磁場調節部により必要に応じて行われるヨーク部の板幅方向の磁場の強さを変化させることとは、通常、トランスを停止するまで、連続的に、又は、一定の間隔ごとに繰り返し行ってもよい。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下、本開示について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本開示を制限するものではない。
[実施例1]
方向性電磁鋼板を用いて、長さ:1000mm、幅:1200mm、厚み:200mm、ヨークおよび脚の幅:150mmの3相3脚積鉄心を準備した。
そして、図2の例に示されるように、ヨーク部に、平面視において面積基準でT接合部の1/10を占める、ヨーク部の板幅方向の磁場を加える磁場発生部を、2つのヨーク部に、脚部の圧延方向を軸として左右対称となる位置に1組ずつ配置し、鉄心構造体を作製した。
図2に示した積鉄心にそれぞれ左からU、V、W相の巻線を巻回し、設計磁束密度が1.7Tのトランスを作製した。
ここでV相の波形の大きさに対応するよう、ヨーク部の板幅方向の磁場を4つのコイルによって加えるように制御した。
[比較例1]
磁場発生部を配置しない積鉄心を準備したこと以外は、実施例1と同様にトランスを作製した。
<ビルディングファクター評価>
実施例の各トランスに励磁磁束密度1.7Tで励磁し、その時のビルディングファクターを評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006926787
[結果のまとめ]
表1の結果に示されるように、本開示に係る鉄心構造体を用いた実施例1のトランスは、比較例1と比較してビルディングファクターが低減し、トランス鉄損を低減することができることが明らかとなった。
1 積鉄心
2 脚部
2a 中脚
2b 外脚
3 ヨーク部
4 磁場コア
5 磁場コイル
6 磁場発生部
7 電磁鋼板
8 T接合部
8’ 脚部とヨーク部が交差する領域
9 コーナー部
11 U相とW相を通る磁束の流れ
12 U相とV相を通る磁束の流れ
13 V相とW相を通る磁束の流れ
14 磁場発生部の磁束の流れ
L 脚部板幅
100 鉄心構造体

Claims (6)

  1. 少なくとも3つの脚部と2つのヨーク部とを有する積鉄心と、
    前記ヨーク部の側面を周回するように配置される少なくとも1つの磁場発生部と、を備え、
    平面視した際に、前記磁場発生部は、前記脚部と前記ヨーク部の接合部であるT接合部の少なくとも一部を覆い、前記ヨーク部の板幅方向に対して傾斜して、前記ヨーク部の板幅方向の磁場を当該T接合部に発生可能に配置されていることを特徴とする、鉄心構造体。
  2. 前記磁場発生部が、前記ヨーク部の側面を周回するように配置される磁場コアと、当該磁場コアの外側面と内側面とを交互に通過するように巻回する磁場コイルを備え、
    平面視した際に、前記磁場コイルは前記ヨーク部の外側面と、内側面に少なくとも1つずつ備える、請求項1に記載の鉄心構造体。
  3. 平面視において、前記磁場発生部は、2つの前記ヨーク部に、前記脚部の圧延方向を軸として左右対称となる位置に1組ずつ配置されている、請求項1又は2に記載の鉄心構造体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄心構造体と、当該鉄心構造体の脚部に巻回する巻線とを備える、トランス。
  5. 前記積鉄心の磁束密度を検出する磁束密度検出部と、
    前記磁場発生部から発生する磁場を調節する磁場調節部と、を更に備える、請求項4に記載のトランス。
  6. 少なくとも3つの脚部と2つのヨーク部とを有する積鉄心と、当該脚部に巻回する巻線とを備えるトランスの、当該積鉄心の鉄損を抑制する方法であって、
    前記トランスは、前記ヨーク部の側面を周回するように配置される少なくとも1つの磁場発生部を備え、
    平面視した際に、前記磁場発生部は、前記脚部と前記ヨーク部の接合部であるT接合部の少なくとも一部を覆うように配置され、
    前記磁場発生部により、前記ヨーク部の板幅方向に予め所定の磁場を発生させておき、
    前記トランスを稼働させてから、前記積鉄心の磁束密度を検出し、
    検出された前記磁束密度の変化に応じて、前記磁場発生部により、前記T接合部における前記ヨーク部の板幅方向の磁場の強さを変化させることを特徴とする、鉄損抑制方法。
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