JP5418311B2 - ギャップ付き単相リアクトル鉄心 - Google Patents
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Description
しかし欠点として、鉄心に用いる磁性材料の飽和磁化特性のために、一定電流以上ではインダクタンスが急減し、また磁化特性の非線形性によって電圧や電流波形が歪む問題が発生する。
このギャップ付き鉄心では前述のメリットが得られるが、一方で様々な問題点も発生する。その一つが図1に示す上下ヨーク5での損失増大である。巻線電流によって鉄心脚2に発生する磁束の一部を図1では破線6で示すが、これはヨーク5に流入する。この磁束のヨーク内の状態は図1に示す様に、最初はほぼ垂直となっていたものが次第に磁気回路の方向である水平方向へ流れていく。
その結果、上下ヨーク5ではほぼ全長に亘って幅方向に磁束の偏りが発生し、鉄心の内周部で磁束密度が高くなるため、その部分での鉄損が高くなる。このような局部的に高い鉄損は鉄心を部分的に熱膨張させるが、これが鉄心内に応力を発生させ、鉄心が発生する騒音と関係のある磁歪を増加させることになり、鉄心の騒音特性も劣化させることになる。
特許文献1では、ヨーク内の鉄心脚に対向する部分のみ、電磁鋼板の方向性が垂直方向になるように配置する方法が示されている。これによってその部分の発生損失と温度上昇を低減できるとしている。また特許文献2では、ヨーク内の鉄心脚に対向する部分に三角形状の抜き板をはめ込み、その部分の圧延方向を上下方向とすることで、ヨーク幅方向の磁束分布を均一化できることが開示されている。
ギャップ付きリアクトル鉄心では特許文献3で示されている様に、鉄心脚中心とヨークを貫通するボルトで鉄心を外側から締付け、鉄心脚のギャップの存在によって発生する振動を抑制し、騒音を低減している。
(1)複数のブロック鉄心をギャップを介しながら積層して鉄心脚とし、その周りに巻線を巻き回し、鉄心脚の上下にヨークを配置したギャップ付き鉄心形単相リアクトルにおいて、ヨーク内の鉄心脚の幅の部分を2分割し、それらの部分に用いる方向性電磁鋼板の圧延方向が鉄心脚の側から見て外側に広がる様な向きに配置し、かつその圧延方向をヨーク長手方向に対し45°になる様に配置し、さらに分割した部材とヨークの相対面がヨーク長手方向と直角になる様に配置することを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
(2)上記(1)に記載の鉄心において、前記方向性電磁鋼板はヨーク内において鉄心脚と相対する位置に配設されていて、ヨーク長手方向の幅が鉄心脚と同幅に形成され、且つ他のヨーク部分から独立させたものであることを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
(3)複数のブロック鉄心をギャップを介しながら積層して鉄心脚とし、その周りに巻線を巻き回し、鉄心脚の上下にヨークを配置したギャップ付き鉄心形単相リアクトルにおいて、上下ヨークの長手方向での中心部分に用いる二方向性電磁鋼板を、その一つの磁化容易方向がヨークの辺と平行になる様に配置し、上記二方向性電磁鋼板とヨークの相対面がヨーク長手方向と直角になる様に配置することを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
(4)上記(3)に記載の鉄心において、上下ヨークに用いる二方向性電磁鋼板の使用範囲を、上下ヨークの中心部からヨーク長手方向の一定距離(c)までとし、その距離の鉄心脚幅(d)に対する比率(c/d)を0.4から1.0とすることを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
(5)上記(4)に記載の鉄心において、鉄心脚と上下ヨークの中心部に締付スタッドを貫通させる穴がある場合の、上下ヨークでの二方向性電磁鋼板の使用範囲は、鉄心脚幅及び二方向性電磁鋼板の使用範囲に、前記穴の幅を含めないで算出することを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
即ち、上下のヨーク間に鉄心脚を配設し、該鉄心脚は複数のブロック鉄心をギャップを介しながら積層し、その周りに巻線を巻回してなるものであり、ヨーク内において相対する鉄心脚の幅に相当する部分、即ちヨーク中央部分を2分割し、それらの部分に用いる方向性電磁鋼板の圧延方向が、鉄心脚側から見て外側に広がるような向きに配置され、かつその圧延方向をヨーク長手方向に対して45°になるように設置するものである。
上記ヨーク内のヨーク中央部分で用いる方向性電磁鋼板は、ヨーク内の他の部分から独立した部分にあって、相対する鉄心脚の幅の部分に相当し、ヨーク長手方向での幅を鉄心脚の幅と同等にしている。
さらに、上記鉄心で鉄心脚と上下ヨークの中心部に締付スタッドを貫通させる穴がある場合の、上下ヨークでの二方向性電磁鋼板の使用範囲を算出する際は、鉄心脚幅及び二方向性電磁鋼板使用範囲に穴の幅を含めないことが推奨される。
図4において、矢印10は各部分の圧延方向を示す。ヨーク中央部8は圧延方向が45°に、その外側となるヨーク部分9は圧延方向10が水平方向となるように鋼板が配置されている。磁束線6を破線で示す様に、鉄心脚中心部から出る磁束はヨーク中央部8で透磁率の最も高い圧延方向に沿って流れ、ヨーク部分9の外寄りに達する。
また、鉄心脚周縁部から出る磁束もヨーク中央部8で透磁率の最も高い圧延方向に沿って流れ、ヨーク部分9の内寄りに達する。ヨーク中央部8ではほとんどの磁束が圧延方向に流れるため、図2から明らかなように最も低鉄損となることがわかる。いずれの部分でも磁束は圧延方向に流れるため、ヨーク部分9の幅方向での磁束密度は均一となり、局部的に高い鉄損が発生することはなく、鉄心の部分的熱膨張を回避することができる。
aを鉄心脚の幅bよりも狭くすると、鉄心脚中心部から出た磁束はヨーク部分9の外寄りまで到達せず、ヨーク部分9で幅方向に磁束密度不均一が発生してしまう。また、鉄心脚周縁部から出た磁束は直接、ヨーク部分9に進入するため、圧延方向から外れた方向に磁束が流れることになる。
次にaをbよりも広くすると、鉄心脚中心部から出た磁束はヨーク中央部8で外寄りまで到達した後、ヨーク中央部8をヨーク長手方向すなわち圧延方向から45°の方向に流れることになる。また、鉄心脚周縁部から出た磁束も、ヨーク中央部8に入った後、圧延方向から45°の方向に流れることになる。
ヨーク中央部8の形状は矩形であるため、角がヨーク外側に突出することはなく、鉄心をこの部分で締め付けても問題は生じない。
ヨーク中央部8は左右2部分からなるため、それらの間には変圧器鉄心で用いられるラップ接合法を用いても良いが、磁気的な結合は不要なので積層端面が平面となるようにして突き合わせても良い。また、ヨーク中央部8とその両側の部分9の間には磁気結合が必要なのでラップ接合法を用いるが、鉄心脚と同様にギャップを設けても良い。
ギャップ付きリアクトル鉄心では鉄心脚の振動抑制のため、鉄心脚中心とヨークの双方を縦方向に貫通するボルトで鉄心を外側から締付ける場合が多い。その場合でも、図5で示す様にヨーク中央部8の中央部に間隙14を設けるだけで良い。
一方、図9で示す様に二方向性電磁鋼板を用いると、磁化容易方向は水平、垂直の二方向なので、鉄心脚周縁部からの磁束はヨーク内ですぐに横方向に流れ、鉄心脚中心部からの磁束はヨークの外側付近まで流れてから横方向に流れる。このため、磁束密度は均一化する。
ヨーク中央部8の材料の圧延方向が水平方向(θ=0°)あるいは垂直方向(θ=90°)となる構成とした鉄心を従来技術として、本発明の適用例となるθ=45°の場合と比較した。表1に単位重量あたりに換算した、本鉄心の鉄損値を示す。
この結果から本発明の適用例が最も低鉄損となることがわかる。
この結果から、本発明に適合するa/b=1が最も低鉄損となることがわかる。
以上の方法を用いた時の、単位重量当りの鉄損値と、図12で示す鉄心内側12と外側13の位置の交流励磁中の最大磁束密度を表3に示す。
また、鉄心内外の磁束密度差については、従来法とc/dが0.25の例で0.24Tであるのに対して、c/dが0.5と1.625の例では0.05Tから0.06Tとなっており、磁束密度均一化が得られていることがわかる。なお、c/dが1.625の例で磁束密度が均一化されているにもかかわらず鉄損が高いのは、高鉄損の二方向性電磁鋼板の使用範囲が過大であるためと考えられる。
2:鉄心脚
3:ギャップ
4:横ヨーク
5:上下ヨーク
6:磁束線
7:巻線
8:上下ヨーク中央部
9:上下ヨークの側部分
10:方向性電磁鋼板の圧延方向を示す矢印
11:二方向性電磁鋼板の磁化容易方向
12:鉄心内側の磁束密度算出点
13:鉄心外側の磁束密度算出点
14:間隙
15:締付スタッド貫通穴
Claims (5)
- 複数のブロック鉄心をギャップを介しながら積層して鉄心脚とし、その周りに巻線を巻き回し、鉄心脚の上下にヨークを配置したギャップ付き鉄心形単相リアクトルにおいて、ヨーク内の鉄心脚の幅の部分を2分割し、それらの部分に用いる方向性電磁鋼板の圧延方向が鉄心脚の側から見て外側に広がる様な向きに配置し、かつその圧延方向をヨーク長手方向に対し45°になる様に配置し、さらに分割した部材とヨークの相対面がヨーク長手方向と直角になる様に配置することを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
- 請求項1に記載の鉄心において、前記方向性電磁鋼板はヨーク内において鉄心脚と相対する位置に配設されていて、ヨーク長手方向の幅が鉄心脚と同幅に形成され、且つ他のヨーク部分から独立させたものであることを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
- 複数のブロック鉄心をギャップを介しながら積層して鉄心脚とし、その周りに巻線を巻き回し、鉄心脚の上下にヨークを配置したギャップ付き鉄心形単相リアクトルにおいて、上下ヨークの長手方向での中心部分に用いる二方向性電磁鋼板を、その一つの磁化容易方向がヨークの辺と平行になる様に配置し、上記二方向性電磁鋼板とヨークの相対面がヨーク長手方向と直角になる様に配置することを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
- 請求項3に記載の鉄心において、上下ヨークに用いる二方向性電磁鋼板の使用範囲を、上下ヨークの中心部からヨーク長手方向の一定距離(c)までとし、その距離の鉄心脚幅(d)に対する比率(c/d)を0.4から1.0とすることを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
- 請求項4に記載の鉄心において、鉄心脚と上下ヨークの中心部に締付スタッドを貫通させる穴がある場合の、上下ヨークでの二方向性電磁鋼板の使用範囲は、鉄心脚幅及び二方向性電磁鋼板の使用範囲に、前記穴の幅を含めないで算出することを特徴とするギャップ付き単相リアクトル鉄心。
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