JP6926513B2 - 樹脂組成物、および樹脂組成物からなるフィルム - Google Patents
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Description
しかしながら、上記メタクリル系樹脂からなるフィルムは、硬く脆いため表層に脆弱な層を形成しやすい。このためフィルムを引き取り、スリットや貼合等の後工程を経る中で、傷付きや裂け等が起こりやすい欠点があり、薄肉化するほどそれが顕著になる。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
[3] 前記ポリカーボネート樹脂(A)に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位のうち、構造単位(a−1)が占める割合が、40モル%以上、90モル%以下である[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 樹脂(B)がメタクリル酸メチル-無水マレイン酸-スチレン共重合体である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[5] 前記組成物(X)が樹脂(B)以外のアクリル樹脂を含む[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[6] 前記組成物(X)中の無水マレイン酸に由来する構造単位(b−1)の含有量は5質量%以上50質量%以下である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[7] 前記組成物(X)中のスチレンに由来する構造単位(b−2)の含有量は1質量%以上30質量%以下である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[8] [1]乃至[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
本発明の樹脂組成物は、以下に詳述するポリカーボネート樹脂(A)と組成物(X)を含む。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化
合物(以下、「ジヒドロキシ化合物(1)」と称す場合がある。)に由来する構造単位(a−1)と、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a−2)を有するポリカーボネート樹脂(以下、「本発明のポリカーボネート樹脂(A)」又は「ポリカーボネート樹脂(A)」と称す場合がある。)を含有する。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a−1)を含むものである。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位のうち、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a−1)が占める割合は、特に限定されないが、下限値としては好ましくは40モル%以上、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上である。前記下限値より少ないと樹脂組成物をフィルムとした際の耐熱性が不足する傾向にある。上限値としては好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。前記上限値より多い場合、樹脂組成物とした際の脆さがとりわけ際立ち、溶融製膜法によるシート化や、そのシートを用いた組立工程において、工程内破損が頻発しやすくなる。この比率は、要求される各種特性によって適宜選択することができる。
ジヒドロキシ化合物(1)としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。
尚、イソソルビド等の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物(1)は、酸素によって徐々に酸化されやすい。このため、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱ったりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生し、例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネート樹脂(A)を製造すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともあり、好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は前記構造単位(a−1)以外に、ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a−2)を含有する。
ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a−2)を含有するポリカーボネート樹脂(A)は、例えば、後述のポリカーボネート樹脂(A)の
製造方法に従って、ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上を用いて製造される。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等が挙げられる。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素数が過度に大きいと、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になる傾向がある。炭素数が小さいほど、精製しやすく、入手しやすい傾向があるが、小さすぎると環構造が不安定であり合成が困難となる。
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のシクロへキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、2,2−アダマンタンジオール、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。
中でも1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂環式ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
芳香族系ジヒドロキシ化合物としては、置換若しくは無置換のビスフェノール化合物が挙げられ、具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基を有しないビスフェノール化合物;ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族環上に置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−(sec−ブチル)フェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基としてアルキル基を有するビスフェノール化合物;ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン等の芳香族環を連結する2価基が置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等の芳香族環をエーテル結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族環をスルホン結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族環をスルフィド結合で連結したビスフェノール化合物等、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−
1,1’−スピロビインダンが挙げられるが、好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略記することがある。)、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンが挙げられる。
上述のその他のジヒドロキシ化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(6)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述のようにジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と前記式(6)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造することができる。より詳細には、エステル交換反応させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により溶融重合を行う。
また、1族金属化合物および/または2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、または炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもセシウム化合物、リチウム化合物が好ましい。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホス
フィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
また、上記ポリカーボネート樹脂(A)の透明性、色相、耐光性を特に優れたものとするために、触媒が、マグネシウム化合物およびカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であるのが好ましい。
上記の中でもリチウムおよび2族金属化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物および/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属換算量として、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、好ましくは0.1μモル以上、さらに好ましくは0.5μモル以上、特に好ましくは0.7μモル以上とする。また、上限としては、好ましくは20μモル、さらに好ましくは10μモル、特に好ましくは3μモル、最も好ましくは2.0μモルである。
触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート樹脂(A)を製造するのに必要な重合活性が得られず、充分な破壊エネルギーが得られない可能性がある。一方、触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相が悪化するだけでなく、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、脆性破壊の起因となる場合があり、目標とする品質のポリカーボネート樹脂(A)の製造が困難になる可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により溶融重合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度
が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相が悪化し、耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを混合する操作は、酸素濃度10体積%以下、さらには0.0001体積%〜10体積%、中でも0.0001体積%〜5体積%、特には0.0001体積%〜1体積%の雰囲気下で行うことが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相悪化防止の観点から好ましい。
さらには、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。還流冷却器に導入される冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造にあたっては、前記反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、さらに条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていく、などしてもよい。
重合条件としては、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂(A)の分解や着色を助長する可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造において、ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを触媒の存在下、エステル交換反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目のエステル交換反応温度(以下、「内温」と称する場合がある)は好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、さらにより好ましくは200℃以上であることがよい。また、第1段目のエステル交換反応温度は、好ましくは270℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらにより好ましくは220℃以下であることがよい。第1段目のエステル交換反応における滞留時間は通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間であり、第1段目のエステル交換反応は、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。第2段目以降はエステル交換反応温度を上げていき、通常、210〜270℃、好ましくは220〜250℃の温度でエステル交換反応を行い、同時に発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら最終的には反応系の圧力が2kPa以下となるように、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜6時間、特に好ましくは1〜3時間重縮合反応が行われる。
特にポリカーボネート樹脂(A)の着色や熱劣化あるいはヤケを抑制し、樹脂組成物とした際に耐久性の高いフィルムが得られるポリカーボネート樹脂(A)を得るには、全反応段階における反応器内温の最高温度が255℃未満、より好ましくは250℃以下、特に225〜245℃であることが好ましい。また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴によるポリカーボネート樹脂(A)の熱劣化を最小限に抑えるために、反応の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
の押出機を用いて、ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を好ましくは700重量ppm以下、さらに好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、芳香族モノヒドロキシ化合物を工業的に完全に除去することは困難であり、ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1重量ppmである。尚、これら芳香族モノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、当然置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基等を有していてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り溶融重合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150〜300℃、好ましくは200〜270℃、さらに好ましくは230〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や、着色、ガスの発生、異物の発生、さらにはヤケの発生を招く。前記異物やヤケの除去のためのフィルターは該押出機中あるいは押出機出口に設置することが好ましい。
また、溶融押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却してペレット化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用することが好ましい。空冷の際に使用する空気は、HEPAフィルター(JIS Z8112で規定されるフィルターが好ましい。)等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐことが望ましい。より好ましくはJIS B 9920(2002年)に定義されるクラス7、さらに好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルームのなかで実施することが好ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは種々あるが、10〜0.45μmのフィルターが好ましい。
酸性化合物またはその誘導体としては、例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸およびそのエステル類が挙げられる。
[樹脂(B)]
本発明の樹脂(B)は、無水マレイン酸に由来する構造単位(b−1)およびスチレンに由来する構造単位(b−2)を有する共重合体である(以下、無水マレイン酸に由来する構造単位(b−1)およびスチレンに由来する構造単位(b−2)をそれぞれ単に「(b−1)」および「(b−2)」と称す場合がある)。また、樹脂(B)は熱可塑性であることが好ましい。
本発明の樹脂(B)に含まれる無水マレイン酸に由来する構造単位(b−1)およびスチレンに由来する構造単位(b−2)が占める割合は、特に限定されるものではない。
2−エチルヘキシルアクリレ−ト、シクロヘキシルアクリレ−ト等のアルキルアクリレ−ト等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン等が挙げられる。これらは2種以上を含んでいてもよく、また(b−1)および(b−2)と共重合しても別の重合体として混合してもよい。尚、本発明では、樹脂(B)に(b−1)および(b−2)以外の他の構造単位が含まれている場合も樹脂(B)と称す。
上述の樹脂(B)は公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化または溶液重合方法により得ることができる。また、スチレン系樹脂においては、共役ジエンやスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
尚、本発明において、上記の組成物(X)中の無水マレイン酸に由来する構造単位(b−1)の含有量およびスチレンに由来する構造単位(b−2)の含有量は、実施例の項で詳述するNMR測定により算出した値のことをいう。
本発明の樹脂組成物は、前記ポリカーボネート樹脂(A)および前記組成物(X)を含む。ポリカーボネート樹脂(A)および組成物(X)の混合比については特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂(A)と組成物(X)との合計量を100質量%とした時の前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量の下限値は、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。前記ポリカーボネート樹脂(A)が前記下限値より多ければ、樹脂組成物をフィルムとした際に良好な耐久性となるので好ましい。一方で、ポリカーボネート樹脂(A)と組成物(X)との合計量を100質量%とした時の前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量の上限値は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、60質量%以下が特に好ましい。前記ポリカーボネート樹脂(A)が前記上限値より少なければ、樹脂組成物をフィルムとした際に厚み方向の位相差が小さいので好ましい。
することができる。
このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。さらに、本発明の趣旨を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料を配合してもよい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の化合物が挙げられる。
t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、本発明のポリカーボネート樹脂(A)と組成物(X)と、必要に応じて用いられるその他の添加剤等の配合成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。
[ガラス転移温度]
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることが特に好ましい。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。一方、本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は150℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の溶融成形安定性が悪くなる場合があり、またフィルムの透明性を損なう場合がある。
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の樹脂組成物をフィルムとした際のフィルム耐久性は、フィルムが破断するまでフィルムを折り曲げた回数によって評価することができる。詳しくは、フィルムをTD方向に折り曲げた際の破断するまでの折り曲げ回数が2回以上であることが好ましく、より好ましくは3回以上であり、さらに好ましくは5回以上である。1回で破断する様なフィルムではスリットや貼合の工程で裂けなどの不良が発生しやすく加工性が悪いため好まし
くない。
本発明のフィルム耐久性は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の樹脂組成物はフィルムその他の成形体とすることができる。中でもフィルムとすることで例えば大型テレビジョン、コンピュータ端末のモニタ、車載用カーナビゲーションシステムのモニタ、車載用または弱電機器等のコントロールタッチパネル、タブレット型携帯ディスプレイ、携帯型スマートフォン等の各種画像表示装置に具備される偏光板の偏光子保護フィルムとして好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物からなる偏光子保護フィルムは、従来公知のセルロース系フィルムやメタアクリル系フィルム等と比べて、薄膜加工性、耐熱性、欠点異物等の外観品質等が大幅に改善される。
本発明の樹脂組成物から得られるフィルムの厚みは、下限として、50μm以上、好ましくは53μm以上、さらに好ましくは55μm以上である。該フィルムの厚みがこの下限値より薄い場合、このフィルムを延伸する場合に薄すぎるために延伸時に破れが発生する場合がある。また、該フィルムの厚みは、上限として、120μm未満、好ましくは115μm未満、さらに好ましくは110μm未満である。該フィルムの厚みがこの上限値より大きい場合、延伸後の厚みが厚すぎて、偏光子保護フィルムとして用いた場合に、厚すぎるために画像表示装置に取り組む際に適しない。
フィルムの厚みは、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明のフィルムを偏光子保護フィルムとして用いる場合、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)が小さいほどよい。尚、以下において特に断らない場合、本発明でいう面内位相差および厚み方向位相差は波長589nmで測定したときの値をいう。面内位相差はフィルムの厚みにもよるが、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。偏光板が画像表示装置の両面に配置され、その各偏光板の画像表示装置側に配置される偏光子保護フィルムについては、特に1nm以下であることが好ましい。
位相差低減は、製膜工程で溶融樹脂フィルムに強い延伸応力や挟圧を掛けないようにして冷却固化させたり、延伸工程で過度に延伸応力を掛けないような温度や速度等の条件を調整したり、フィルムにTg近傍のアニール熱履歴を加えて配向緩和させる事でなすことができるが、製膜加工工程が煩雑となり生産性が悪化するため、位相差を発現しづらい材料を使用することが好ましい。
材料特有の位相差発現性は位相差測定装置などによって得られる面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rthをフィルムの厚みd(nm)で除することで得られる値で評価することができる。この値が小さいもの程位相差が発現しづらい材料となる。
本発明の樹脂組成物から得られるフィルムの厚み方向の位相差をフィルムの厚みで除した値(Rth/d)としては0.00001以上0.00015以下であり、より好ましくは0.00001以上0.00010以下である。Rth/dが上記範囲であると所望
の厚みのフィルムとした際に厚み方向位相差Rthが20nm以下となり好ましい。
本発明が効果を奏する理由は未だ明らかではないが、以下のとおり推察される。つまり、薄肉成形性に優れるポリカーボネート樹脂(A)は、光学等方的ではあるが、式(1)に由来する構造単位の複屈折のために位相差が発現しやすいが、組成物とすることで、樹脂(B)中の負の屈折率異方性を示すスチレン単位に由来する構造単位(b−2)によりポリカーボネート樹脂(A)の位相差が打ち消され、また樹脂(B)中の無水マレイン酸に由来する構造単位(b−1)により耐熱性が改良されるため、耐熱性に優れ、フィルムとした際の耐久性に優れ、さらに厚み方向の位相差が極めて小さい偏光子保護フィルムに用いられる光学フィルムに最適な樹脂組成物とすることができる。
以下において、樹脂組成物および該樹脂組成物から得られるフィルムの物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
樹脂組成物のガラス転移温度は、JIS K7129に準拠し、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定した。樹脂組成物のサンプル約10mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で室温から250℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、0℃まで20℃/分の速度で冷却した。0℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、補外ガラス転移開始温度を採用した。
なお、ガラス転移温度は高いほど耐熱性が高いものであり、本発明において、以下のとおりの判定基準とした。
◎:115℃以上
〇:100℃以上
×:100℃未満
フィルムをTD方向(流れと垂直方向)に折り曲げて、破断するまでの回数を数え、「TD耐折回数」とした。該TD耐折回数が多いほど、フィルムの耐久性に優れることを示す。尚、TD耐折回数が50回を超えた時点で、フィルムの耐久性が極めて優れるとみなし、TD耐折回数テストをやめた。その場合の結果は「>50」と記載した。
なお、TD耐折回数テストの回数が大きいほどフィルムにした際の耐久性に優れるものであり、本発明において、以下のとおりの判定基準とした。
◎:3回以上
〇:2回以上
×:1回以下
フィルムを幅4cm、長さ4cmに切り出したサンプルについて、位相差測定装置(王子計測機器社製 製品名「KOBRA WRXY2020」を用いて、589nmにおける面内位相差(Re)と厚み方向位相差(Rth)を測定した。
なお、フィルムの面内位相差(Re)は小さいほど好ましいものであり、本発明において、以下のとおりの判定基準とした。
◎:3.5以下
〇:5以下
×:5より大きい
取得したフィルムの先端からMD方向100m毎に、TD方向20mm間隔で接触厚み計((株)小野測器製 製品名「ディジタルリニアゲージ DG−933」)を用いてフィルムの厚み(d)を測定した。ここで、本発明でいう「フィルムの厚み」とは、前記の測定値の総平均を算出したものである。
また、フィルムの厚み方向位相差をフィルムの厚みで除した値(Rth/d)は小さいほど好ましいものであり、本発明において、以下のとおりの判定基準とした。
◎:0.00001以下
〇:0.00012以下
×:0.00012より大きい
樹脂ペレット約20mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解させ溶液とし、テトラメチルシランを内標準物質として既知量添加し、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子(株)製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定し、内標準物質のピークを基準として7.5〜6.8ppmのピークをスチレン単位の帰属に、3.2〜2.6ppmのピークを無水マレイン酸単位の帰属に、3.6ppmのピークの積分値をメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸メチル単位の帰属とした。それぞれの積分値から単位水素当りの積分値を算出し、それぞれの比率からスチレン単位および無水マレイン酸単位を定量した。
用いた装置や条件は、次のとおりである。
・装置:日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)
・測定温度:30℃
・緩和時間:6秒
・積算回数:128回
上記の試験の結果、総合評価としては以下のとおりとした。なお、以下の合格基準を満たすものでも、◎の数が多いものほど好ましい。
合格:〇または◎のみであるもの
不合格:×があるもの
以下の実施例および比較例で用いた化合物の略号、および製造元は次の通りである。
・イソソルビド/1,4−シクロヘキサンジメタノール=70/30mol%共重合ポリカーボネート[三菱化学社製 DURABIO D7340A]
<樹脂2>
・イソソルビド/1,4−シクロヘキサンジメタノール=50/50mol%共重合ポリカーボネート[三菱化学社製 DURABIO D5380A]
<樹脂3>
・メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル共重合体およびメタクリル酸メチル・無水マレイン酸・スチレン共重合体からなる混合物[旭化成ケミカルズ社製、デルペット981J:荷重たわみ温度 110℃](上記(5)NMR測定により、メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル共重合体およびメタクリル酸メチル・無水マレイン酸・スチレン共重合体
からなる混合物中、無水マレイン酸に由来する構造単位は13質量%、スチレンに由来する構造単位は5質量%であった。)
<樹脂4>
・メタクリル系樹脂(PMMA樹脂)[旭化成ケミカルズ社製、デルペット80N:荷重たわみ温度 100℃]
樹脂1〜樹脂4を表1に記載の質量比でブレンドさせ、ベント付きニ軸押出機((株)
日本製鋼所 製 TEX30α、シリンダー設定温度:240℃)に供給し、フィルターを
通して異物を濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転
式カッターでペレット化した。
得られた樹脂組成物ペレットをベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所 製 TEX3
0α、シリンダー設定温度:240℃)、Tダイ(幅250mm、設定温度:220℃)
、チルロール(設定温度:100〜120℃) および巻取機を備えたフィルム製膜装置
を用いて、フィルムを2時間連続で約500m製造した。フィルムを紙芯に巻く際にフィ
ルム両端20mm部分にカッター刃を接触させ、スリットを行い、160mmのフィルム
幅でフィルムを取得した。
得られたフィルムについて、表1に記載の通り評価を行った。
。
Claims (9)
- 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記組成物(X)との合計量を100質量%とした
時の前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が5質量%以上、80質量%以下である請
求項1に記載の樹脂組成物。 - 前記ポリカーボネート樹脂(A)に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位
のうち、構造単位(a−1)が占める割合が、40モル%以上、90モル%以下である請
求項1または2に記載の樹脂組成物。 - 樹脂(B)が、前記不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位とし
てアルキルメタクリレートに由来する構造単位を有する、請求項1乃至3のいずれか1項
に記載の樹脂組成物。 - 樹脂(B)がメタクリル酸メチル-無水マレイン酸-スチレン共重合体である請求項1乃
至4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 前記組成物(X)が樹脂(B)以外のアクリル樹脂を含む請求項1乃至5のいずれか1
項に記載の樹脂組成物。 - 前記組成物(X)中の無水マレイン酸に由来する構造単位(b−1)の含有量は5質量
%以上50質量%以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 前記組成物(X)中のスチレンに由来する構造単位(b−2)の含有量は1質量%以上
30質量%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
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