JP6925169B2 - 有機酸産出促進剤、有機酸の製造方法及び培養方法 - Google Patents

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本発明は、有機酸産出促進剤、有機酸の製造方法及び培養方法に関する。
生物が生体内で作る有機酸は様々であるが、その中でもコハク酸、乳酸はバイオプラスチックの原料や、食品、医薬品などの幅広い分野において合成原料として用いられている。コハク酸や乳酸は、主に石油を原料として化学的に合成されているが、化石資源の枯渇や地球温暖化の防止といった観点から、生物を利用した有機酸生産が注目を集めている。
また、L-グルタミン酸や、L-リジン等のL-アミノ酸は、これらのアミノ酸を生産するアミノ酸生産菌を用いて発酵法により工業的に生産されている。発酵法によるL-アミノ酸の工業的生産において、グルコース、フルクトース、スクロース等の糖類が炭素源として用いられている。炭素源としての糖類は、サトウキビなどの植物に由来するものが用いられている。
細菌や藻類などの微生物を利用して、コハク酸、乳酸、アミノ酸などの有機酸を安定的に供給可能な生産系を確立できれば、培養時に二酸化炭素を吸収することで温室効果ガスの削減に寄与できるとともに、石油の消費量や、植物の使用量の削減が期待できる。
一方で、食糧、飼料、燃料等としての利用が有望視されている生物資源として、ユーグレナ(属名:Euglena、和名:ミドリムシ)が注目されている。
ユーグレナは、ビタミン,ミネラル,アミノ酸,不飽和脂肪酸など、人間が生きていくために必要な栄養素の大半に該当する59種類もの栄養素を備え、多種類の栄養素をバランスよく摂取するためのサプリメントとしての利用や、必要な栄養素を摂取できない貧困地域での食糧供給源としての利用の可能性が提案されている。
ユーグレナは、食物連鎖の第一次生産者に位置し、捕食者により捕食されることや、光、温度条件、撹拌速度などの培養条件が他の微生物に比べて難しいなどの理由から、大量培養が難しいとされてきたが、近年、大量培養技術が確立され、ユーグレナ及びユーグレナから抽出されるパラミロン等、ユーグレナ由来物質の大量供給の途が開かれた。そのため、大量供給可能となったユーグレナ及びユーグレナ由来物質の利用法の開発が望まれている。
ユーグレナを他の微生物と組み合わせて培養する技術の例として、ユーグレナ及びその培養抽出物が乳酸菌の生育を促進すること(特許文献1)や、ユーグレナとコバラミンを生産する乳酸菌の共培養により、両者の増殖が増加すること(非特許文献1)が知られているが、有用物質生産への応用など、様々な観点において検討の余地がある。
特開平7−99967号公報
向田志保ら,「微細藻類Euglena gracilisとコバラミンを生産する乳酸菌との共培養」,微細藻類バイオマス利用シンポジウム,P.2(2015年9月3日、中央大学後楽園キャンパス)
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、コリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌が産出する有機酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、コリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌が産出する有機酸の産出が促進される培地を用いて、これらの細菌を培養する工程を含む有機酸の製造方法及び細菌の培養方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究した結果、ユーグレナの培養上清又はユーグレナの細胞を含む培地を用いて、コリネ型細菌や藍藻を培養すると、細菌が産出する有機酸の産出が促進されることを見出した。
従って、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナの培養上清を有効成分として含有し、グルコース無添加条件下で使用され、コリネ型細菌が産出するグルタミン酸、コハク酸及び乳酸からなる群より選択される一種以上の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナの培養上清を有効成分として含有し、グルコース添加条件下で使用され、コリネ型細菌が産出するコハク酸又は乳酸の少なくとも一方の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナの細胞を有効成分として含有し、グルコース無添加条件下で使用され、コリネ型細菌が産出するコハク酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナの細胞を有効成分として含有し、グルコース添加条件下で使用され、コリネ型細菌が産出するグルタミン酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナの培養上清を有効成分として含有し、藍藻が産出する乳酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナの細胞を有効成分として含有し、藍藻が産出する乳酸又は酢酸の少なくとも一方の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤により解決される。
本発明によれば、コリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌が産出する有機酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤を提供することができる。
本発明の有機酸産出促進剤は、ユーグレナの培養上清を有効成分とする場合には、通常であれば廃液として処理されてしまう培養上清の有効利用が可能である。
さらに、本発明の有機酸の製造方法及び細菌の培養方法によれば、コリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌が産出する有機酸の産出が促進される培地を用いているため、有機酸を効率よく得ることができる。
試験1において検証を行った、グルコース無添加条件下で、ユーグレナの培養上清または緩衝液を用いてコリネバクテリアを培養した際のグルタミン酸産出の結果を示すグラフである。 試験1において検証を行った、グルコース添加条件下で、ユーグレナの培養上清または緩衝液を用いてコリネバクテリアを培養した際のグルタミン酸産出の結果を示すグラフである。 試験1において検証を行った、ユーグレナの培養上清または緩衝液を用いてコリネバクテリアを培養した際のコハク酸産出の結果を示すグラフである。 試験1において検証を行った、ユーグレナの培養上清または緩衝液を用いてコリネバクテリアを培養した際の乳酸産出の結果を示すグラフである。 試験2において検証を行った、ユーグレナの培養上清または緩衝液を用いて藍藻を培養した際の乳酸産出の結果を示すグラフである。 試験3において検証を行った、コリネバクテリアとユーグレナを、単独培養又は共培養した際のコハク酸産出の結果を示すグラフである。 試験3において検証を行った、コリネバクテリアとユーグレナを、単独培養又は共培養した際の乳酸産出の結果を示すグラフである。 試験3において検証を行った、コリネバクテリアとユーグレナを、単独培養又は共培養した際のグルタミン酸産出の結果を示すグラフである。 試験4において検証を行った、藍藻とユーグレナを、単独培養又は共培養した際のコハク酸産出の結果を示すグラフである。 試験4において検証を行った、藍藻とユーグレナを、単独培養又は共培養した際の乳酸産出の結果を示すグラフである。 試験4において検証を行った、藍藻とユーグレナを、単独培養又は共培養した際の酢酸産出の結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図11を参照しながら説明する。
本実施形態は、コリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌が産出する有機酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤、ユーグレナの培養上清又はユーグレナの細胞を含む培地を用いてコリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌を培養する工程を行う有機酸の製造方法、及びコリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌をユーグレナの培養上清を含む培地を用いて培養する工程を行う培養方法に関するものである。
<ユーグレナ>
本実施形態において、「ユーグレナ」とは、分類学上、ユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種及びユーグレナ科(Euglenaceae)の近縁種を含む。
ここで、ユーグレナ属(Euglena)とは、真核生物のうち、エクスカバータ、ユーグレノゾア門、ユーグレナ藻綱、ユーグレナ目、ユーグレナ科に属する生物の一群である。
ユーグレナ属に含まれる種として、具体的には、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena mutabilis、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridisなどが挙げられる。
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のE. gracilis var. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株、Astasia longa等のその他のユーグレナ類、及びそれらに由来するβ−1,3−グルカナーゼ等の物質であってもよい。
ユーグレナ類は、池や沼などの淡水及び汽水、海水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ類を使用してもよい。
ユーグレナ類は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え,形質導入,形質転換等により得られたものも含有される。
<細菌>
本実施形態において、ユーグレナの培養上清又はユーグレナの細胞を含む培地を用いて培養する細菌は、有機酸を産出する細菌、具体的には、コハク酸、乳酸、酢酸、アミノ酸(グルタミン酸、リジンなど)、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸を産出する細菌であり、好ましくはコリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌である。
(コリネ型細菌)
本実施形態において、コリネ型細菌とは、好気性のグラム陽性かん菌であり、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属の微生物をいう(Bergeys Manual of Determinative Bacteriology,8th Ed.,pp.599(1974))。
また、コリネ型細菌には、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、後にコリネバクテリウム属に統合された微生物(Int.J.Syst.Bacteriol.,vol.41,pp.255(1991))が含まれ、コリネバクテリウム属細菌の類縁菌であるブレビバクテリウム(Brevibacterium)属及びミクロバクテリウム(Microbacterium)属の微生物も含まれる。
コリネ型細菌として、以下に示す例が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
例えば、コリネ型細菌として、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)、コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)、コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)、ブレビバクテリウム・ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・インマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)、ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・アルバム(Brevibacterium album)、ブレビバクテリウム・セリヌム(Brevibacterium cerinum)、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)等が挙げられる。
コリネ型細菌として、以下の菌株が例として挙げられるがこれらに限定されるものではない。
例えば、コリネ型細菌として、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806、コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511、コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020、13032、13060、13869、コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990、コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP−1539)、コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868、ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020、ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826、ATCC14067、AJ12418(FERM BP−2205)、ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869、ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066、ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871、ATCC6872、ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111、ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112及びミクロバクテリウム・アンモニアフィラム ATCC15354などの株が挙げられる。
本実施形態におけるコリネ型細菌は、野生のコリネ型細菌を用いることができるが、これに限定されるものではなく、有機酸を効率よく産出するように改変されたコリネ型細菌を用いてもよい。改変は公知の方法で行うことができ、例えば、遺伝子組換えにより改変することができる。そのようなコリネ型細菌として、例えば、有機酸を産出する酵素を過剰発現したものが挙げられる。
(藍藻)
本実施形態において、藍藻とは、藍色細菌(シアノバクテリア)とも呼ばれる真正細菌の1群であり、光合成によって酸素を生み出すという特徴を有する。単細胞で浮遊するもの、少数細胞の集団を作るもの、糸状に細胞が並んだ構造を持つものなどがあり、特に制限されないが、単細胞のものが好ましい。
藍藻として、以下に示す例が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
例えば、藍藻として、シネコシスティス(Synechocystis)属、ミクロシスティス(Microcystis)属、アルスロスピラ(Arthrospira)属、シアノテセ(Cyanothece)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アナベナ(Anabaena)属、シネココッカス(Synechococcus)属、サーモシネココッカス(Thermosynechococcus)属、グロイオバクター(Gloeobacter)属、アカリオクロリス(Acaryochloris)属、ノストック(Nostoc)属、トリコデスミウム(Trichodesmium)属、プロクロロン(Prochloron)属、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)属等が挙げられる。
藍藻として、以下の菌株が例として挙げられるがこれらに限定されるものではない。
シネコシスティス・エスピー PCC6803、シネコシスティス・エスピー PCC7509、シネコシスティス・エスピー PCC6714、シネココッカス・エスピー PCC7942、サーモシネココッカス・エロンガタス BP−1、トリコデスミウム・エリスラエウム IMS101、アカリオクロリス・マリアナ MBIC11017、クロコスファエラ・ワトソニー WH8501、及びアナベナ・エスピー PCC7120等などの株が挙げられる。
その中でも、シネコシスティス・エスピー PCC6803、シネコシスティス・エスピー PCC6714、及びシネコシスティス・エスピー PCC7509を用いることが好ましく、シネコシスティス・エスピー PCC6803を用いることが特に好ましい。
本実施形態における藍藻は、野生の藍藻を用いることができるが、これに限定されるものではなく、有機酸を効率よく産出するように改変された藍藻を用いてもよい。改変は公知の方法で行うことができ、例えば、遺伝子組換えにより改変することができる。そのような藍藻として、例えば、有機酸を産出する酵素を過剰発現したものが挙げられる。
<ユーグレナの培養上清・ユーグレナ細胞>
本実施形態では、コリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌を培養する際に、細菌が産出する有機酸の産出を促進するためにユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を用いる。
ここで、「ユーグレナの培養上清」とは、ユーグレナを培養した後の培養液の上清をいい、遠心分離等の公知の分離手段によってユーグレナ細胞を除去した培養液の上清を意味する。
「ユーグレナ細胞」とは、ユーグレナの細胞をいい、ユーグレナの生細胞及びユーグレナの死細胞の両方が含まれる。なお、「ユーグレナ細胞」には、ユーグレナ細胞の破砕物や、ユーグレナ細胞の抽出物などは含まれない。
本実施形態のユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を調製する際のユーグレナの培養は、以下に示す培養条件で行うことが出来るが、以下の条件に限定されるものではない。
・培地の種類
ユーグレナ細胞の培養は、培養液を用いて行うことができる。培養液には栄養源として炭素源が添加されるが、炭素源には無機炭素源(CO、NaHCO、NaCO等)と有機炭素源(グルコース等)がある。本実施形態において用いられる培養液としては、栄養源としてグルコースなどの有機炭素源を含まない独立栄養培地を用いることが好ましいがこれに限定されるものではない。例えば、窒素源、リン源、ミネラルなどの栄養塩類を添加した培養液、例えば、Cramer−Myers培地や、改変Cramer−Myers培地((NHHPO 1.0g/L,KHPO 1.0g/L,MgSO・7HO 0.2g/l,CaCl・2HO 0.02g/l,Fe(SO・7HO 3mg/l,MnCl・4HO 1.8mg/l,CoSO・7HO 1.5mg/l,ZnSO・7HO 0.4mg/l,NaMoO・2HO 0.2mg/l,CuSO・5HO 0.02g/l,チアミン塩酸塩(ビタミンB1) 0.1mg/l,シアノコバラミン(ビタミンB12)、(pH3.5))を用いることができる。なお、(NHHPOは、(NHSOやNHaqに変換することも可能である。
・培地のpH
培養液のpHは好ましくは2以上、また、その上限は、好ましくは6以下、より好ましくは4.5以下である。pHを酸性側にすることにより、光合成微生物は他の微生物よりも優勢に生育することができるため、コンタミネーションを抑制することができる。
培養中にpH調整を行うことも可能である。pH調整には、適当な無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を使用することができる。
・培養温度
培養温度は、通常15〜40℃であり、20〜34℃であることが好ましく、特に23〜28℃であることが好適である。
・培養期間
培養条件にもよるが、ユーグレナは通常、培養開始後2〜14日で対数増殖期となり、15〜21日程度で定常期に到達する。本実施形態において、培養期間は、4〜30日であることが好ましく、4〜14日であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。
・暗・嫌気培養
本実施形態のユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を調製する際には、暗・嫌気条件で培養を行うこと、つまり暗・嫌気培養を行うことが好ましい。
暗条件とは、光照射を行うことなく、光を遮った条件のことをいう。
嫌気培養とは、培養液中の溶存酸素濃度を低くした状態で培養を行うことをいう。嫌気条件とするために、窒素ガス等の不活性ガスを供給して培養を行う、またはCOなどの不活性ガスを通気しながら培養を行う等の方法を用いることができる。なお、嫌気条件とするために用いる窒素ガスは、培養系から酸素を除くために用いられるものであり、ユーグレナや細菌が窒素源として資化するために用いられるものではない。
・ユーグレナの培養上清の回収
上記の培養条件でユーグレナを培養した後、遠心分離等の公知の分離手段を用いて、培養液上清の回収を行うが、ユーグレナの培養上清を適切に回収できる方法であれば特に限定されるものではない。
・ユーグレナ細胞の回収
上記の培養条件でユーグレナを培養した後、ユーグレナ細胞の回収を行う。ユーグレナ細胞の回収は、培養後の培養液を含む状態で回収する方法や、公知の分離手段を用いる方法が例として挙げられる。培養後の培養液を含む状態でユーグレナ細胞を生細胞の状態で回収することが好ましいが、これに限定されるものではない。
<有機酸産出促進剤>
本実施形態に係る有機酸産出促進剤は、ユーグレナの培養上清又はユーグレナの細胞を有効成分として含有する。
本実施形態に係る有機酸産出促進剤は、コリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌が産出する有機酸の産出を促進するために用いられるものであり、これらの細菌を培養する培地に添加されるものである。
ここで、「有機酸の産出を促進する」とは、本実施形態に係る有機酸産出促進剤を用いて前記細菌を培養した場合に細菌が産出する有機酸の量が、本実施形態に係る有機酸産出促進剤を用いずに前記細菌を培養した場合に細菌が産出する有機酸と比較して増えることをいう。
<有機酸の製造方法>
本実施形態のユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を用いた有機酸の製造方法は、ユーグレナを培養してユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を得る工程と、前記ユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を含む培地を用いてコリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌を培養する工程と、前記培地から有機酸を回収する工程と、を行うことを特徴とする有機酸の製造方法である。
以下、各工程について詳細に説明する。
(ユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を得る工程)
ユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を得る工程では、上記ユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞の調製において示した培養条件でユーグレナを培養する(ステップS1)。
(細菌を培養する工程)
細菌を培養する工程では、前記ユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を含む培地を用いてコリネ型細菌及び藍藻を含む群より選択される一種以上の細菌を培養する(ステップS2)。
ここで、ユーグレナ細胞を含む培地を用いて細菌を培養することを「共培養」という。
細菌を培養する工程は、例えば、以下に示す培養条件で行うことが出来るが、以下の条件に限定されるものではない。
・培地の種類
有機酸を産出する細菌の培養は、ユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を含む培養液を用いて行うことができる。培養液には栄養源として炭素源が添加されるが、炭素源には無機炭素源(CO、NaHCO、NaCO等)と有機炭素源(グルコース等)がある。本実施形態において用いられる培養液としては、栄養源としてグルコースなどの有機炭素源を含まない独立栄養培地を用いることが好ましいがこれに限定されるものではない。
コリネ型細菌の培養には、LB培地を用いて好気培養を行ったのち、HEPESバッファーにユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を添加した培地を用いて暗・嫌気培養を行うことが好ましく、また、藍藻の培養には、BG-11培地を用いて好気培養を行ったのち、HEPESバッファーにユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を添加した培地を用いて暗・嫌気培養を行うことが好ましいが、用いる培地はこれらの培地に限定されるものではない。また、暗・嫌気培養時の培養は、HEPESバッファーに限定されるものではない。
・培地のpH
培養液のpHは、細菌の増殖及び有機酸の産出に適した任意のpH、例えば、pH5〜10であればよく、pH6〜9であることが好ましく、pH6〜8であることがより好ましい。pH調整には、適当な無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を使用することができる。
・培養温度
培養温度は、細菌の増殖及び有機酸の産出に適した温度、例えば、通常15〜40℃であり、20〜34℃であることが好ましく、特に28〜30℃であることが好適である。
・培養期間
培養期間は、有機酸が十分に産出される期間であれば特に限定されず、例えば、2〜30日、好ましくは3〜14日、特に好ましくは4〜5日であればよい。
・暗・嫌気培養
細菌の培養を行う際には、暗・嫌気条件で培養を行うこと、つまり暗・嫌気培養を行うことが好ましい。
暗条件とは、光照射を行うことなく、光を遮った条件のことをいう。
嫌気培養とは、培養液中の溶存酸素濃度を低くした状態で培養を行うことをいう。嫌気条件とするために、窒素ガス等の不活性ガスを供給して培養を行う、またはCOなどの不活性ガスを通気しながら培養を行う等の方法を用いることができる。なお、嫌気条件とするために用いる窒素ガスは、培養系から酸素を除くために用いられるものであり、ユーグレナや細菌が窒素源として資化するために用いられるものではない。
・培養方式及び培養装置
細菌の培養は、太陽光を直接利用するオープンポンド方式、集光装置で集光した太陽光を光ファイバー等で送り、培養槽で照射させ光合成に利用する集光方式等により行ってもよい。
また、細菌の培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行ってもよい。
培養は、オープンポンド型、レースウェイ型、チューブ型等の公知の培養装置や、坂口フラスコ、三角フラスコ、試薬ビンなどの実験用の培養容器を用いて行うことができる。
細菌の培養は、静置培養法、振盪培養法のいずれの方法によって行ってもよい。
各種培養の条件は、培養を通じて一定であってもよいが、有機酸の産出量を向上させるために、培養期間に応じて各種培養条件を変化させることも可能である。
(有機酸を回収する工程)
有機酸を回収する工程では、前記細菌を培養する工程で得られる培養物(培養系)から有機酸を回収する工程を行う(ステップS3)。
ここで、本工程における「培養物(培養系)」は、培地、ユーグレナ細胞、コリネ型細菌の細胞、藍藻の細胞、有機酸等の産出物を含む概念である。従って、「培養物(培養系)から有機酸を回収する」とは、ユーグレナ細胞や細菌細胞を除去した培地から有機酸を回収することや、ユーグレナ細胞や細菌細胞を含む培地から有機酸を回収すること、培養後のユーグレナ細胞や細菌細胞から有機酸を回収することを含む概念である。
回収される有機酸は、乳酸(D型−乳酸)、コハク酸、及びアミノ酸(グルタミン酸、リジンなど)を含む群より選択される一種以上である。
有機酸を回収する工程には、適当な分離方法(例えば、遠心分離や、濾過、有機溶剤による抽出工程、高速液体クロマトグラフィーなどの組み合わせ)により有機酸を分離して得る分離工程や、適切な分離カラムや再結晶によって有機酸を精製する精製工程が含まれる。
予め用意したユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を用いて、細菌の培養を行う場合、ユーグレナの培養上清又はユーグレナ細胞を得る工程を省略することもできる。
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の試験例では、ユーグレナの培養上清(嫌気上清)(実施例1)又はユーグレナ細胞(実施例2)を添加した培地を用いて細菌の培養を行い、細菌の有機酸産出に対する影響の検討を行った。
<実施例1>
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリスZ株(NIES−48株)を用い、独立栄養培地である改変CM培地を使用し、pHを3.5に調整した。具体的には、脱イオン水(DW)を用いて、表1に示す組成の改変CM培地を作製し、硫酸を用いてpH3.5に調整してからオートクレーブで滅菌した。
Figure 0006925169
調製した培地1Lを1L容量のメジューム瓶に入れた後、初期濃度がOD730=0.1になるようにユーグレナ・グラシリスの種藻体を接種し、添加した。
1vol%濃度でCOを混合した空気を30〜50ml/分の流量で通気し、光源として白色蛍光灯(三菱電機照明株式会社製、ネオルミスーパー、FLR40SW)を用い、培養液水面に注ぐ光が50〜80μE/m・秒の強度となるように調節し、培養を行った。光の照射時間は、屋外の昼夜条件に近づけるため、12時間点灯後に12時間消灯する明暗サイクルとした。
培養温度25℃で12〜20日間培養を行った。
培養液からのユーグレナ細胞の回収は、50mLプラスチックチューブに培養液を加え、5800×gで2分間の遠心を繰り返し、上清を捨てることで行った。その後、嫌気培養を行った。ユーグレナ細胞を20mM HEPES−KOH(pH7.8)緩衝液10mlに加え、濁度がOD730=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃で4日間振盪培養した。
<実施例2>
ユーグレナの細胞として、ユーグレナ(ユーグレナ・グラシリスZ株:NIES−48株)を用いた。ユーグレナの前培養は、表1に示す組成のCM培地を用い、好気条件、25℃で7〜20日間培養した。
<比較例1>
比較例1として、20mMのHEPES−KOH(pH7.8)緩衝液を調製した。ここで、HEPESは、4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acidの略称である。
<有機酸の定量方法>
L−グルタミン酸の定量は、グルタミン酸測定キット(F−キット、L−グルタミン酸、Roche/R−Biopharm社製)を用いて行った(OD492を測定)。
コハク酸、乳酸及び酢酸の定量は、培養液を遠心分離にかけることで細胞を分離し、0.45μmフィルターで濾過をしながら上清1mlを新しいチューブに移して、凍結乾燥によって内容物を固化させた。これを過塩素酸に懸濁し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、分析した。定量は、ブロモチモールブルーを用いたポストラベル法によって行った。
<試験1 ユーグレナの培養上清を用いたコリネバクテリアの培養>
試験1では、コリネバクテリアとしてCorynebacterium glutamicum ATCC13032株(住商インターナショナルより入手)を用い、実施例1のユーグレナの培養上清を添加した培地にて培養を行った。また、比較のために、比較例1の緩衝液を用いてコリネバクテリアの培養を行った。
(コリネバクテリアの前培養)
コリネバクテリアを250mlのLB培地を用い、暗・好気条件、30℃で1日培養した。LB培地は、表2に示す組成のLB培地を作製し、これを水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、加熱滅菌して調製した。
Figure 0006925169
(ユーグレナの培養上清を用いたコリネバクテリアの本培養)
前培養したコリネバクテリアを実施例1のユーグレナの培養上清10mlに加え、濁度がOD600=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。グルコース添加条件では、グルコース濃度が10mMとなるように調整した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃で4日間振盪培養した。
(緩衝液を用いたコリネバクテリアの本培養)
前培養したコリネバクテリアを比較例1の緩衝液10mlに加え、濁度がOD600=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。グルコース添加条件では、グルコース濃度が10mMとなるように調整した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃で4日間振盪培養した。
(試験1の結果)
結果を図1乃至4に示す。
図1乃至4において、「NIES−48上清」は実施例1のユーグレナの培養上清であり、「ATCC13032」は比較例1の緩衝液を用いて培養を行った後の培養上清であり、「ATCC13032+NIES−48上清」は実施例1のユーグレナの培養上清を用いて培養を行った後の培養上清である。
図1に示すように、グルコースを添加しない場合、ユーグレナの培養上清を培養液に用いることによって、緩衝液を培養液に用いた場合と比較して、グルタミン酸が相加的以上に増加することがわかった。一方、図2に示すように、グルコースを添加した場合、ユーグレナの培養上清を培養液に用いても、グルタミン酸が相加的以上に増加することはなかった。
図3及び4に示すように、グルコースを添加した場合、及びグルコースを添加しない場合の両方で、ユーグレナの培養上清を培養液に用いることによって、コハク酸、乳酸が相加的以上に増加することがわかった。なお、図3及び4では、ユーグレナの培養上清に含まれていたコハク酸、乳酸を差し引いた値を示している。
<試験2 ユーグレナの培養上清を用いた藍藻の培養>
試験2では、藍藻としてシネコシスティスの野生株(GT株)を用い、実施例1のユーグレナの培養上清を添加した培地にて培養を行った。また、比較のために、比較例1の緩衝液を用いて藍藻の培養を行った。
(藍藻の前培養)
藍藻を70mlのBG−11培地を用い、明・好気条件、30℃で3日培養した。BG−11培地の組成を表3に示す。
Figure 0006925169
(ユーグレナの培養上清を用いた藍藻の本培養)
前培養した藍藻を実施例1のユーグレナの培養上清10mlに加え、濁度がOD730=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃で3日間振盪培養した。
(緩衝液を用いたコリネバクテリアの本培養)
前培養した藍藻を、NaHCOを添加した比較例1の緩衝液10mlに加え、濁度がOD730=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。NaHCO濃度が100mMとなるように調整した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃で4日間振盪培養した。
(試験2の結果)
結果を図5に示す。
図5において、「GT」は比較例1の緩衝液を用いて培養を行った後の培養上清であり、「GT+NIES−48上清」は実施例1のユーグレナの培養上清を用いて培養を行った後の培養上清である。
図5に示すように、ユーグレナの培養上清を培養液に用いることによって、緩衝液を培養液に用いた場合と比較して、乳酸が増加することがわかった。
この結果から、藍藻の乳酸生産も、ユーグレナの培養上清によって促進されることがわかった。なお、図5では、ユーグレナの培養上清に含まれていた乳酸を差し引いた値を示している。
<試験3 コリネバクテリアとユーグレナの共培養>
試験3では、コリネバクテリアとしてCorynebacterium glutamicum ATCC13032株(住商インターナショナルより入手)を用い、実施例2のユーグレナの細胞を添加した培地にて共培養を行った。また、比較のために、比較例1の緩衝液を用いてコリネバクテリア又はユーグレナの培養を行った。
(コリネバクテリアの前培養)
コリネバクテリアを250mlのLB培地を用い、好気条件、30℃で1日培養した。
(ユーグレナ細胞を用いたコリネリバクテリアの共培養)
前培養したコリネバクテリア及び実施例2のユーグレナ細胞を20mM HEPES−KOH(pH7.8)緩衝液20mlに加え、濁度がOD730=20、OD600=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。グルコース添加条件では、グルコース濃度が10mMとなるように調整した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃または37℃で4日間振盪培養した。
(緩衝液を用いたコリネバクテリアの単独培養)
前培養したコリネバクテリアを比較例1の緩衝液20mlに加え、濁度がOD600=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。グルコース添加条件では、グルコース濃度が10mMとなるように調整した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃または37℃で4日間振盪培養した。
(緩衝液を用いたユーグレナの単独培養)
実施例2のユーグレナ細胞を比較例1の緩衝液20mlに加え、濁度がOD730=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。グルコース添加条件では、グルコース濃度が10mMとなるように調整した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃または37℃で4日間振盪培養した。
(試験3の結果)
結果を図6乃至8に示す。
図6乃至8において、「ATCC13032」は比較例1の緩衝液を用いてコリネバクテリアの単独培養を行った後の培養上清であり、「NIES−48」は比較例1の緩衝液を用いてユーグレナの単独培養を行った後の培養上清であり、「共培養」はコリネバクテリアを実施例2のユーグレナと共培養した後の培養上清である。
図6に示すように、培養温度30℃で、グルコースを添加しない場合、コリネバクテリアをユーグレナと共培養することによって、それぞれを単独で培養した場合と比較して、コハク酸が相加的以上に増加することがわかった。一方、図6に示すように、培養温度30℃で、グルコースを添加した場合、コリネバクテリアをユーグレナと共培養しても、コハク酸が相加的以上に増加することはなかった。この結果は、培養温度が37℃でも同じであった。
図7に示すように、培養温度30℃で、グルコースを添加しない場合、コリネバクテリアをユーグレナと共培養しても、それぞれを単独で培養した場合と比較して、乳酸が相加的以上に増加することはなかった。また、図7に示すように、培養温度30℃で、グルコースを添加した場合にも、コリネバクテリアをユーグレナと共培養しても、乳酸が相加的以上に増加することはなかった。この結果は、培養温度が37℃でも同じであった。
本データでは、ユーグレナが乳酸を産出していることが示唆されており、ユーグレナが乳酸を産出しない条件(グルコースを添加しない嫌気条件)では、コリネバクテリアをユーグレナと共培養することで、乳酸が相加的以上に増加することがわかった。
図8に示すように、培養温度30℃で、グルコースを添加した場合、コリネバクテリアをユーグレナと共培養することによって、それぞれを単独で培養した場合と比較して、グルタミン酸が相加的以上に増加することがわかった。一方、図8に示すように、培養温度30℃で、グルコースを添加しない場合、コリネバクテリアをユーグレナと共培養しても、グルタミン酸が相加的以上に増加することはなかった。この結果は、培養温度が37℃でも同じであった。
<試験4 藍藻ユーグレナの共培養>
試験4では、藍藻としてシネコシスティスの野生株(GT株)を用い、実施例2のユーグレナの細胞を添加した培地にて共培養を行った。また、比較のために、比較例1の緩衝液を用いて藍藻又はユーグレナの培養を行った。
(藍藻の前培養)
藍藻を60mlのBG−11培地を用い、好気条件、30℃で4日培養した。1vol%濃度でCOを混合した空気を30〜50ml/分の流量で通気し、光源として白色蛍光灯(三菱電機照明株式会社製、ネオルミスーパー、FLR40SW)を用い、培養液水面に注ぐ光が50〜80μE/m・秒の強度となるように調節し、培養を行った。光の照射は24時間連続光で行った。
(ユーグレナ細胞を用いた藍藻の共培養)
前培養した藍藻及び実施例2のユーグレナ細胞を20mM HEPES−KOH(pH7.8)緩衝液20mlに加え、濁度がOD730=20、OD600=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃または37℃で3日間振盪培養した。
(緩衝液を用いた藍藻の単独培養)
前培養した藍藻を、NaHCOを添加した比較例1の緩衝液20mlに加え、濁度がOD730=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。NaHCO濃度が100mMとなるように調整した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃または37℃で3日間振盪培養した。
(緩衝液を用いたユーグレナの単独培養)
実施例2のユーグレナ細胞を比較例1の緩衝液20mlに加え、濁度がOD730=20となるように、細胞を濃縮、懸濁し、ガスクロマトグラフィー用のバイアル瓶に移した。バイアル瓶にブチルゴムで蓋をした後、2本の注射針をゴム栓に刺し、一方から窒素ガスを10分間導入して酸素を除去した。その後、注射針を抜くことで、バイアル瓶中を嫌気状態にした。バイアル瓶をアルミホイルで包んで暗条件とし、30℃または37℃で3日間振盪培養した。
(試験4の結果)
結果を図9乃至11に示す。
図9乃至11において、「GT」は比較例1の緩衝液を用いて藍藻の単独培養を行った後の培養上清であり、「NIES−48」は比較例1の緩衝液を用いてユーグレナの単独培養を行った後の培養上清であり、「共培養」は藍藻を実施例2のユーグレナと共培養した後の培養上清である。
図9に示すように、培養温度30℃で藍藻をユーグレナと共培養しても、コハク酸が相加的以上に増加することはなかった。この結果は、培養温度が37℃でも同じであった。
図10に示すように、培養温度30℃で藍藻をユーグレナと共培養することによって、それぞれを単独で培養した場合と比較して、乳酸が相加的以上に増加することがわかった。この結果は、培養温度が37℃でも同じであった。いずれの温度においても、乳酸は全てD型−乳酸であり、藍藻が産出する乳酸が促進されたことがわかった。
図11に示すように、培養温度30℃で藍藻をユーグレナと共培養することによって、それぞれを単独で培養した場合と比較して、酢酸が相加的以上に増加することがわかった。この結果は、培養温度が37℃でも同じであった。

Claims (6)

  1. ユーグレナの培養上清を有効成分として含有し、
    グルコース無添加条件下で使用され、
    コリネ型細菌が産出するグルタミン酸、コハク酸及び乳酸からなる群より選択される一種以上の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤。
  2. ユーグレナの培養上清を有効成分として含有し、
    グルコース添加条件下で使用され、
    コリネ型細菌が産出するコハク酸又は乳酸の少なくとも一方の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤。
  3. ユーグレナの細胞を有効成分として含有し、
    グルコース無添加条件下で使用され、
    コリネ型細菌が産出するコハク酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤。
  4. ユーグレナの細胞を有効成分として含有し、
    グルコース添加条件下で使用され、
    コリネ型細菌が産出するグルタミン酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤。
  5. ユーグレナの培養上清を有効成分として含有し、
    藍藻が産出する乳酸の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤。
  6. ユーグレナの細胞を有効成分として含有し、
    藍藻が産出する乳酸又は酢酸の少なくとも一方の産出を促進するために用いられる有機酸産出促進剤。
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