JP6924342B2 - 燃料電池のアノード用触媒、アノード及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池のアノード用触媒、アノード及び燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池のアノード用触媒、アノード及び燃料電池に関するものである。
燃料電池自動車(FCV)や(水素ステーション等の)定置用に用いられる固体高分子形燃料電池(PEFC)の作動温度は、一般的に室温から約100℃であり、燃料極(アノード)では水素酸化反応(HOR)「H→2H+2e」が進行する。そして、室温から約100℃の温度域でのHOR活性(比活性:触媒の実作動面積当たりの電流密度)が最も高く、強酸性の高分子電解質膜に対する耐蝕性を有する触媒材料として、純白金(Pt)が広く知られている。
例えば、高純度の水素を燃料とするFCVの燃料電池のアノード用触媒としては、粒径約2〜4nmの白金微粒子を炭素担体に高分散したPt/C触媒が広く用いられている。しかし、白金は不純物に対する被毒耐性が低いため、燃料ガス中の水素純度に対する基準が厳しくなっている。例えば、一酸化炭素(CO)は0.2ppm以下まで精製する必要があり、これにより燃料水素ガスの価格が高くなっている。また、このような高純度の水素を燃料として用いる場合の白金使用量は電極幾何面積当たり0.01〜0.05mg/cm程度を要している。
他方、定置用では、都市ガスやプロパンガス等の炭化水素ガスを改質した燃料ガス中にFCVの燃料ガスよりも多くのCOが含まれるため、アノード用触媒としてCO耐性の低い純白金は使用できない。そこで、多くの場合、比較的高いCO耐性を有するPt−Ru(白金とルテニウムの合金)、具体的には、粒径約2〜5nmのPt−Ru金属微粒子を炭素担体に高分散したPt−Ru/C触媒が用いられている。しかし、純水素中でのHOR活性は、純白金の約70〜80%まで低下する。そして、燃料ガス中に含まれる水素の純度がFCVと比べて低いので、Pt−Ruの使用量は電極幾何面積当たり0.4〜0.5mg/cm程度となる。また、白金は値段が高く資源量が限られているので、なるべく白金の使用量を低減させることが望まれている。
そこで、白金の使用量を低減させつつCO耐性を向上させるべく、白金と他の金属の合金をアノード用触媒として利用する技術が知られている。
例えば、特許文献1では、炭素材料からなる担体と、これに担持された白金及びルテニウムとを含有し、優れた一酸化炭素耐性を有するPt−Ru/C触媒及びその製造方法が開示されている。
特開2011−72934
しかし、かかる技術では、CO耐性は向上できても、HOR活性が低下してしまい、性能を維持するためには高価な白金とルテニウムを多量に必要となる。さらに、Ruは酸化雰囲気で溶出しやすいため(酸化耐性が低い)、アノード触媒が空気と接触しないようにシステムにより保護している。現状では、長期間の触媒の耐久性を確保するため、PtRuのようにRuを多く含有する合金触媒を使用している。このように、かかる技術では、CO耐性を向上させることができる反面、Ruの溶出を防ぐためのシステムが必要になるなど、別の問題が生じている。それにも拘わらず、他に触媒の候補が存在しないため、アノード用触媒としてFCV用には純白金を、定置用にはPt−Ruを用いることが長い間常識とされてきた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、白金の使用量を低減しつつ、高いHOR活性、CO耐性及び酸化耐性を同時に実現する燃料電池のアノード用触媒を提供するものである。
本発明によれば、白金及び遷移金属の合金からなる合金粒子の表面に1から2原子層の白金スキン層を備える燃料電池のアノード用触媒が提供される。
本発明によれば、白金スキン層により合金粒子が被覆されているので、高いHOR活性、CO耐性及び酸化耐性を実現することができる。また、白金の使用量を低減することができる。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記白金スキン層が2原子層である。
好ましくは、前記遷移金属は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、ニオブ、モリブデン、鉛、タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む。
好ましくは、前記遷移金属は、鉄又はコバルトである。
好ましくは、前記遷移金属は、鉄又はコバルトであり、前記遷移金属の前記合金粒子における原子組成百分率が10%〜80%である。
好ましくは、前記原子組成百分率が25%〜60%である。
好ましくは、前記原子組成百分率が50%である。
好ましくは、前記燃料電池のアノード用触媒は、担体に担持された担持触媒である。
好ましくは、前記担体は、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、酸化錫、酸化チタンから選ばれる少なくとも1種を含む。
好ましくは、燃料電池のアノード用触媒を備えるアノードが提供される。
好ましくは、アノードを備える燃料電池が提供される。
好ましくは、白金及び遷移金属の合金からなる合金粒子の表面に1から2原子層の白金スキン層を有する触媒がアノード側に備えられたことを特徴とする燃料電池が提供される。
好ましくは、前記白金スキン層が2原子層である。
好ましくは、前記遷移金属は、鉄又はコバルトである。
好ましくは、前記遷移金属の前記合金粒子における原子組成百分率が10%〜80%である。
好ましくは、前記原子組成百分率が25%〜60%である。
好ましくは、前記原子組成百分率が50%である。
好ましくは、前記燃料電池は、前記燃料電池の停止中に、前記アノードに空気が流入可能な態様で構成される。
好ましくは、前記燃料電池は、燃料電池自動車(FCV)に搭載されるものであり、前記触媒は、CO濃度が0.2ppm以上の燃料ガスを許容可能に構成される
また、前記燃料ガスのCO濃度が0.2ppm以上、10ppm以下である燃料ガスも許容することができる。
好ましくは、燃料電池自動車(FCV)用の燃料電池であって、白金及び遷移金属の合金からなる合金粒子の表面に1から2原子層の白金スキン層を有する触媒を備え、前記遷移金属は、鉄又はコバルトであり、前記触媒は、CO濃度が0.2ppm以上の燃料ガスを許容可能に構成される燃料電池が提供される。
また、前記燃料ガスのCO濃度が0.2ppm以上10ppm以下である燃料ガスも許容できる。
本実施形態に係る触媒の構成を示す概念図である。 燃料電池の構成及び原理を説明する概念図である。 n−PtCo/GCB合金微粒子に白金スキン層を形成した結果を表す図であり、(a)はTEM画像、(b)は粒度分布である。 STEM−EDXによる触媒のライン解析を行った結果を示すグラフである。 HOR活性の測定について説明する図であり、(a)はHOR活性測定装置を、(b)はHOR活性測定フローを示す図である。 種々の触媒のCO被毒時間とHOR比活性の関係を示すグラフであり、(a)は70℃のとき、(b)は90℃のときの測定結果である。 種々の触媒のCO被覆率とHOR比活性の関係を示すグラフであり、(a)は70℃のとき、(b)は90℃のときの測定結果である。 種々の触媒のHOR質量活性を示すグラフである。 種々の触媒の酸化耐性試験前後のHOR質量活性を示すグラフである。 Pt2AL−PtFe/C触媒のHOR質量活性を示すグラフである。 Pt2AL−Pt100−xFe/C触媒におけるFeの原子割合(x)を変化させたときの、HOR質量活性を示すグラフである。 (a)はPtFe/C触媒及びPt2AL−PtFe/C触媒のTEM画像、(b)は粒度分布であり、(c)はPtFe/C触媒及びPt2AL−PtFe/C触媒のTEM画像、(d)は粒度分布である。 (a)はPtFe/C触媒及びPt2AL−PtFe/C触媒のTEM画像、(b)は粒度分布であり、(c)はPtFe/C触媒及びPt2AL−PtFe/C触媒のTEM画像、(d)は粒度分布である。 Feを含有させることによる性能向上が生じるメカニズムを説明するためのグラフである。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
1.触媒の構成
図1は、本実施形態に係る触媒の構成を示す概念図である。白金及び遷移金属の合金からなる合金微粒子が、白金原子からなる1から2原子層の白金スキン層で被覆されている。遷移金属は、白金との合金粒子の状態において、その表面上に白金原子からなる1から2原子層の白金スキン層を備えることが可能なものであれば、その種類は特に限定されない。遷移金属としては、4周期〜6周期の元素を用いることができ、特に、4周期の元素が好ましい。遷移金属は、具体的には、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、ニオブ、モリブデン、鉛、タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む。遷移金属は、好ましくは4周期の元素である鉄、コバルト、ニッケルであり、より好ましくは鉄又はコバルトである。これらの金属を含有することで、HOR活性及びCO耐性が向上する。
ここで、HOR活性及びCO耐性の観点からみると、遷移金属の合金粒子における原子組成百分率は、10%〜80%である。好ましくは、25%〜60%である。さらに好ましくは、50%である。特に、50%の場合、市販のPtRu/C触媒と比べ、約3.5倍のHOR活性を示す。
合金微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、1〜8nmである。平均粒径が小さすぎる合金微粒子は、安定に製造することが容易ではなく、平均粒径が大きすぎると、得られる触媒微粒子の平均粒径もその分大きくなり、質量活性(単位質量当たりの触媒活性)が低下しやすいからである。合金微粒子の平均粒径は、具体的には例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0nmであり、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。なお、本明細書において、「平均粒径」とは、TEM像において、各微粒子の外接円の直径を測定して算術平均したものを意味する。測定サンプル数は、例えば500個以上である。また、合金微粒子の粒径は、できるだけ揃っていることが好ましく、合金微粒子の70%以上が平均粒径の±30%以内の粒径を有することが好ましく、±25、20、又は15%以内の粒径を有することがさらに好ましい。
白金スキン層の厚さは、特に限定されないが、1〜2原子層が好ましく、2原子層がさらに好ましい。これは、白金スキン層が薄すぎると合金微粒子の被覆が不十分になる場合があり、例えば、1原子層では高温下において白金スキン層が溶出してしまい、単なる合金を担持した触媒の特性に近づいてしまう可能性がある。一方、白金スキン層が厚すぎると、合金微粒子の電子的効果が白金スキン層によって遮蔽されてしまう場合があり、例えば、3原子層では、厚い白金スキン層が純白金と同じように振る舞い、従来の純白金触媒の特性に近づいてしまう可能性があるためである。白金スキン層の厚さは、具体的には例えば、1、1.5、2原子層であり、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。なお、図1では一例として2原子層(X=2)の場合を示した。
ここで、合金粒子が白金スキン層で被覆された状態は、触媒である合金粒子「PtM(M:遷移金属原子)」が、1から2原子層の白金スキン層で被覆された「PtXAL−PtM(X:白金スキン層の数(1〜2))」であるので、かかる触媒を白金スキン触媒と表現する。そして、好ましくは、合金粒子が担体に担持されている。かかる状態を、白金スキン触媒が担体に担持された担持触媒「PtXAL−PtM/CR(担体:Carrier)」と表現する。担体は特に限定されず、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、酸化錫、酸化チタンなどのナノ粒子等が例示される。
ここで、PtXAL−PtM/CR触媒に鉄、コバルト、ニッケルを含有することで、HOR活性及びCO耐性が向上する想定メカニズムについて、図14を用いて説明する。図14には、Pt2AL−PtFe/Cに加え、Feに代えてCo又はNiを含有した触媒及びPt単体が示される。図14において、4つの触媒における3つのバーのうち、左バーがCO吸着エネルギー、中央バーが水素原子(H)吸着エネルギーを示しており、それぞれバーの長さが長いほど、CO又はHが吸着しやすいことを示している。なお、右バーについては、かかるメカニズムの説明には特に不要であるので、その説明を省略する。
Pt、Pt−Fe、Pt−Co、Pt−NiについてCO吸着エネルギー(左バー)を比べると、「Pt3Fe<Pt−Co<Pt−Ni<Pt」となっている。このことから、Pt−FeはPtと比べてCO吸着エネルギーが小さく、その表面にCOが吸着されにくい。このため、水素(H)の吸着がブロックされにくく、FeはPtと比べ、周りにCOが存在しても、吸着Hを酸化しやすい。一方、PtはPt−Feと比べ、CO吸着エネルギーが大きく、その表面にCOが吸着されやすい。このため、Hがブロックされやすく、Ptの周りにCOが存在すると、Hを酸化しにくくなる。
一方、Pt、Pt−Fe、Pt−Co、Pt−NiについてH吸着エネルギー(中央バー)を比べると、「Fe≦Co≦Ni<Pt」となっている。このように、いずれの原子もある程度Hを吸着するものの、PtはPt−Fe(Co,Ni)と比べてHを強く吸着する。一方、Pt−FeはPtと比べてHの吸着が弱い。このため、FeはPtと比べ、Hとの反応が早く進む。
このように、CO吸着エネルギー及びH吸着エネルギーの観点から、Feを含有させることによる性能向上が説明できる。
また、Feほどではないが、Co、Niを含有させることにより、Feと同様の理由で性能が向上する。
2.アノード/カソードの構成及び機能
本実施形態に係る白金スキン層又は担持触媒を備えるアノード及びカソードについて説明する。アノードは、燃料電池の燃料極のことであり、ガス拡散基材または高分子電解質膜に直接、白金スキン触媒又は担持触媒が塗布されたものである。一般的に、ガス拡散基材としては多孔質の炭素が用いられる。そして、アノード側に燃料ガスとして水素が導入されると、塗布された触媒により水素が分解され、プロトンH及び電子eが生成される。カソードは、燃料電池の空気極のことであり、ガス拡散基材または高分子電解質膜に直接、白金スキン触媒又は担持触媒が塗布されたものである。一般的に、ガス拡散基材としては多孔質の炭素が用いられる。そして、カソード側に酸化剤として空気が導入されると、塗布された触媒により酸素とプロトンが反応し、水を生成する。
3.燃料電池の構成及び原理
次に、燃料電池について説明する。図2は燃料電池の構成及び原理を説明する概念図である。燃料電池は、アノード及びカソードにより高分子電解質膜が挟持されたものである。燃料室からアノードに水素が導入される。アノードに水素が導入されると、アノードで、「H→2H+2e」の反応が生じ、プロトンH及び電子eが生成される。このプロトンHが高分子電解質膜を通ってカソードへ移動する。また、電子eが配線を通ってカソードへ移動する。そして、カソードで、アノードから移動してきたプロトンH及び電子eと、注入されたOと、により、「O+4H+4e→2HO」の反応が生じ、水が生成される。このようにして電子eが流れることにより、エネルギーを生成することができる。
かかる燃料電池は、燃料電池自動車(FCV)に搭載されてもよい。このとき、例えば、燃料ガスCO濃度が0.2ppm以上の燃料ガスで運転するように構成されてもよい。また、燃料ガスのCO濃度が10ppm以下の環境で利用されてもよい。また、かかる触媒は、燃料電池の停止中に、燃料極に空気を流入可能に構成される。
ここで、Feを含有したの触媒であるPt2AL−PtFe/C触媒では、Pt2ALの効果によりFeがイオン化しないため、酸素及び水素から触媒作用で生成されたHと反応してOHラジカルを生成することがない。したがって、OHラジカルによる高分子電解質膜の破壊が低減される。さらに、HOR質量活性が極めて高くなる。
4.白金の使用量を低減しつつ、高いHOR活性、CO耐性及び酸化耐性を実現する燃料電池の電極用触媒について
本発明者らは、白金と遷移金属M(M:鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、ニオブ、モリブデン、鉛、タングステンから選ばれる少なくとも1種)のナノメートルサイズの合金を、1から2原子層の白金スキン層で被覆した「PtXAL−PtM」を炭素やセラミック等の担体に高分散に担持した触媒「PtXAL−PtM/CR」について、少なくとも90℃までの上限作動温度域で純白金及びPt−Ruよりも高いHOR活性、CO耐性及び耐酸化性を備えることを証明した。かかる触媒をFCVのアノード用触媒として用いる場合には、高いCO耐性を備えるために、純白金を触媒として用いる従来技術のようにCOを0.2ppm以下まで精製する必要がなくなる。これにより、燃料ガスのコストを低減することが可能となる。また、かかる触媒を定置用のアノード用触媒として用いる場合には、Pt−Ruを触媒として用いる従来技術と比較して極めて高いHOR活性のために燃料電池の効率を高めることができる。さらに、かかる触媒は、高いCO耐性のために触媒の劣化を低減することができる。一方、かかる触媒は、高い酸化耐性を備えるため、現状の定置用システムでの燃料極への空気流入防止装置が不要になって、コストを削減できる。かかる耐酸化性触媒は、FCV、定置用を問わず燃料電池のカソード用触媒としても用いることが可能である。これにより、アノード用触媒及びカソード用触媒の両方に本触媒を用いることができるので、製造コストを低減することができる。さらに、白金と比べてHOR活性と酸素還元活性が高いため、白金の使用量を低減させることができるので、材料コストを低減することができる。
5.白金スキン触媒の製造方法
白金スキン触媒の製造方法は特に限定されないが、例えば特許文献「WO2014/178283」に開示されているような方法により、合金微粒子を白金スキン層で被覆する。具体的には、含水溶媒(例:水)中に分散状態の合金微粒子及び水溶性の白金前駆体を共存させた状態で水素ガスを含む反応ガスのバブリング(以下、「水素バブリング」とも称する。)を行うことにより、白金前駆体を合金属微粒子の表面上で還元させて、合金微粒子を白金の原子層で被覆する。なお、合金微粒子は、水素バブリングによってその表面上で金属前駆体の還元反応が起こるものであれば、その種類は特に限定されない。ここで、水素バブリングの前に、合金微粒子を担体に担持させておくことが好ましい。合金微粒子を担体に担持させる方法は任意であり、例えば、逆ミセル法や含浸法で合成した合金微粒子を有機溶媒に分散させた状態で、担体粉体を添加する。そして、合金微粒子を担体粒子表面に吸着させ、ろ過と乾燥を経て、加熱処理することで、合金粒子を担体に担持させる。
このようにして製造された白金スキン触媒又は担持触媒を用いて、アノードを製造する。アノードの製造方法は任意であり、例えば触媒粒子と溶媒を混合したペーストを作成し、これをガス拡散基材または高分子電解質膜に直接塗布する方法により製造することができる。
<実施例1>
次に、遷移金属MとしてコバルトCoを、担体として炭素Cを用い、2原子層の白金スキン層で被覆した「Pt2AL−PtCo/C」について説明する。
1.Pt2AL−PtCo/C触媒の製造
1−1.n−PtCo/GCBの作製
Pt(acac)を0.125mmol(49mg)、Co(acac)を0.125mmol(44mg)、1,2−ヘキサデカンジオール1mmol(260mg)、ジフェニルエーテル12.5ml(13.5g,79.3mmol)をビーカーに加え、スターラーを用いて100℃に昇温して10分間攪拌混合した。これにオレイン酸0.25mmol(85μl)およびオレイルアミン0.25mmol(80μl)を加えた後、攪拌しながら200℃まで昇温し、そのまま20分間攪拌して、ナノカプセル溶液を得た。得られたナノカプセル溶液に1M(mol/L) LiB(CH・THF溶液1.0ml(1mmol)を2分間かけて徐々に滴下し、5分間攪拌した後260℃に昇温し、この温度にて20分間還流加熱して還元反応させ、ナノカプセル内にてPtCo粒子を含む溶液Aを得た。その後、溶液Aを100℃付近まで降温し、PtCoの担持量がカーボンブラックに対し27.2wt%となるように黒鉛化カーボンブラック(GCB、150m/g)を混合攪拌し、有機保護基がついたままの状態でPtCo微粒子をGCBに担持させた。そして、濾過した後60℃で真空乾燥後、残存した有機溶媒の除去とPtCo微粒子の表面へのPt析出を同時に行うため4%水素ガス雰囲気下で400℃で4時間の加熱処理を行い、Pt1AL−PtCo/GCBを得た。
1−2.Ptスキン前駆体溶液を作製
Ptスキン前駆体として、Pt1原子層分のヘキサクロロ白金(IV)酸(HPtCl・6HO)を純水10mLに溶解させて、Ptスキン前駆体溶液を作製した。
1−3.水素バブリング
1−2の方法で反応溶液を作製し、n−PtCo/GCBに濡れ性を高めるために、反応溶液を煮沸した。煮沸当初は、n−PtCo/GCBが部分的に反応溶液中または表面に浮遊していたが、煮沸を10分ほど継続するとn−PtCo/GCBの全量が容器の底に沈んだので、その時点で煮沸を終了した。その後、反応溶液が60℃になるのを待って、水素ガス濃度5%、温度60℃、時間1Hの条件で、水素バブリングを行った。その結果、図3(a)、(b)に示すように、各PtCo微粒子の表面にPtスキン層が均一に形成された。
1−4.STEM−EDXによるライン解析
Ptスキン層で被覆されたPtCo微粒子(Pt2AL−PtCo/GCB)について、走査透過型電子顕微鏡エネルギー分散X線分光(STEM−EDS)によるライン解析を行った。その結果を図4に示す。図4から分かるように、中央にはPtとCoが共存しているのに対し、両端の約0.5nmの領域にはPtのみが存在していた。この結果は、Ptスキン層が約0.5nmの厚さ(2原子層の厚さ)で形成されたことを示している。またこのようにして作成されたPt2AL−PtCo/GCBは、2原子層の厚さのPtスキン層を有するが、この2原子層の内側の1原子層は、PtCo微粒子の表面層が4%の水素ガス雰囲気下で400℃4時間の加熱処理による相変化によって被膜されたものであり、さらにその外側にPtスキン前駆体溶液中のPtにより1原子相分被膜されてできたものである。したがって本実施例1における2原子層の白金スキン層で被覆したPt2AL−PtCo粒子の粒径は元のPtCo粒子の粒径よりもPtの1原子層のスキン層分(すなわちPt2原子分)だけ大きくなる。
2.実験結果
次に、上記方法で製造したPt2AL−PtCo/C触媒につき、種々の実験結果について説明する。
図5はHOR活性の測定について説明する図であり、図5(a)はHOR活性測定装置を、図5(b)はHOR活性測定フローを示す図である。HOR活性及びCO耐性を求めるため、図5(a)に示されるHOR活性測定装置を用いた。かかる装置は、Pt2AL−PtCo/C触媒が設けられたチャンネルフローセル(CEFセル)を利用してHOR活性を測定するものである。まず、測定に先立ち、3つの異なる電解液タンクに0.1M(mol/l) HClO電解液を溜め、それぞれの電解液タンクにN、H及びCO/H(0.1%又は0.3%)を少なくとも1時間吹き込み、飽和させた。このとき、各電解液タンク内の気相の圧力は大気圧(1atm)よりもわずかに大きくなるように維持した。
そして、S1においてNを飽和させた0.1M HClO電解液を装置の流路に通し、0.1M HClO電解液中におけるPt2AL−PtCo/C触媒への水素吸着により生じる電流値を参照電極(可逆水素電極:RHE)を用いて電位走査法にて測定した。測定条件は、正方向への走査速度が0.1V/s、電位幅が0.05V〜1.00V(Pt−Ruの場合は上限が0.8Vまで)、温度が30℃である。そして、電流−電圧ボルタモグラムの0.05V〜0.40Vの電流値を積分して水素吸着電気量ΔQ を求め、Pt2AL−PtCo/C触媒の活性面積SPtを測定した。
次に、CO被毒していない状態でのHOR活性を測定するため、S2においてHを飽和させた0.1M HClO電解液に切り替え、S1にて測定した活性面積SPtを用いてHOR活性を測定した。測定条件は、0.1M HClO電解液の平均流量が10〜50cm/s、正方向への走査速度が0.05mV/s、電位幅が0V〜0.1Vである。
次に、CO被毒後のHOR活性を測定するため、S3においてCO/Hを飽和させた0.1M HClO電解液に切り替え、Pt2AL−PtCo/C触媒にCOを吸着(被毒)させた。測定条件は、CO/HにおけるCOの濃度が500ppm又は1,000ppm、0.1M HClO電解液の平均流量が50cm/s、Pt2AL−PtCo/C触媒電極の電圧を一定時間0.05Vに保持した。
次に、S4において、Pt2AL−PtCo/C触媒がCOを吸着した状態で再びHを飽和させた0.1M HClO電解液に切り替え、S2と同じ測定条件下にてHOR活性を測定した。
次に、S5において、再びNを飽和させた0.1M HClO電解液に切り替え、COストリッピングモルタグラムを測定し、「1−ΔQ/ΔQ (ΔQ:CO吸着時における水素吸着電気量、ΔQ :CO非吸着時における水素吸着電気量)」で定義されるCO被覆率を測定した。
そして、S6において温度を徐々に変化させ、再びS1〜S5を実施した。これを温度が90℃になるまで繰り返した。
図6は、種々の触媒のHOR比活性のCO吸着(被毒)時間変化を示す図であり、図6(a)は温度が70℃のとき、図6(b)は温度が90℃のときの測定結果を示す図である。ここで、CO吸着(被毒)は、1,000ppmのCOを含むCO/Hを飽和させた0.1M HClO電解液中で、Pt2AL−PtCo/C触媒電極の電圧を一定時間0.05Vに維持することにより行った。グラフの縦軸はHOR比活性Jであり、Pt2AL−PtCo/C触媒の単位活性面積当たりに流れる電流の値を表す。Jが高いほど触媒材料固有のHOR活性が高いといえる。また、比較対象の触媒としては、市販の「PtCo/C」、「PtRu/C」及び「Pt/C」を採用した。
図6(a)に示されるように、70℃では「Pt/C」が最も急速に被毒して、HOR比活性が低下した。従来から知られている通り、「PtCo/C」及び「PtRu/C」の初期HOR比活性(CO被毒していない時点におけるHOR比活性)は「Pt/C」よりも低いが、CO耐性が「Pt/C」よりも高いため、HOR比活性の低下が緩やかであった。中でも、「PtRu/C」はCO被毒開始から約20分以降はHOR比活性がほとんど低下しなくなった。
これに対し、「Pt2AL−PtCo/C」の初期HOR比活性は「Pt/C」のHOR比活性よりも約1.6倍高く、CO被毒開始から約30分以降はHOR比活性がほとんど低下せず、同時間帯において「PtCo/C」及び「PtRu/C」よりも約2倍高いHOR比活性を維持している。これは、「Pt2AL−PtCo/C」のCO耐性が70℃において極めて高いことを意味する。
図6(b)に示されるように、90℃では「PtCo/C」のHOR比活性が時間経過とともに急激に低下し、被毒開始から被毒終了までの全ての時間帯においてHOR比活性が「Pt/C」のHOR比活性を下回った。これは、温度が高いためにPtCo合金中のCoが溶出し、これにより「Pt/C」と近い特性を示すようになったためと考えられる。一方、「PtRu/C」については70℃の場合と似た特性を示し、CO被毒開始から約40分以降はHOR比活性がほとんど低下しなくなった。これは、RuはCoと異なり、90℃でも溶出しないためであると考えられる。
これに対し、「Pt2AL−PtCo/C」は90℃の場合でも70℃の場合と似た特性を示し、CO被毒開始から約30分以降はHOR比活性がほとんど低下せず、同時間帯において「PtCo/C」及び「PtRu/C」よりも約2.2倍高いHOR比活性を維持している。これは、「Pt2AL−PtCo/C」のCO耐性が90℃においても極めて高いことを意味する。
図7は、図6のデータを基に、種々の触媒のCO被覆率とHOR比活性Jの関係を示す図であり、図7(a)は温度が70℃のとき、図7(b)は温度が90℃のときの測定結果を示す図である。比較対象の触媒は図2と同じである。
図7(a)及び図7(b)に示されるように、「Pt/C」は、70℃、90℃のいずれの場合においても、CO被覆率の増加とともに、HOR比活性が低下している。これは、COがPtに強く吸着し、HOR反応が阻害されためである。これに対し、「PtRu/C」は70℃、90℃のいずれの場合においても、CO被覆率の増加に伴うHOR比活性の低下が抑制されている。これは、Ruの電子効果によりCO吸着が弱められて、HOR反応活性サイトが維持されるためである。そして、「PtCo/C」は、70℃の場合においては「PtRu/C」と同様にCO被覆率の増加に伴うHOR比活性の低下が抑制されているが、90℃の場合においては、図6(b)と同様に「Pt/C」と近い特性を示している。これは、上述のように、脱合金化が原因であると考えられる。
これに対し、「Pt2AL−PtCo/C」は、70℃、90℃のいずれの場合においても、CO被覆率が増加しても高いHOR比活性を維持している。これは、2原子層の白金スキン層によりCO吸着が弱められ、HOR反応活性サイトが維持されていると考えられる。
なお、本実施例において白金スキン層を2原子層としたのは、1原子層では70℃までは問題ないが、例えば90℃まで温度が上がると白金スキン層が合金を完全には被覆していないため脱合金化が起こり、図6及び図7で示した「PtCo/C」の特性に近づいてしまうためである。また、3原子層では、厚い白金スキン層が純白金と同じように振る舞い、図6及び図7で示した「Pt/C」の特性に近づいてしまうためである。
図8は、CO被毒前及びCO被毒後における、種々の触媒の触媒金属の単位質量当たりのHOR活性(質量活性:純Hを飽和した電解液中、20mVで測定)を示す図である。ここで、CO被毒は、70℃で0.1M HClO電解液中においてPt2AL−PtCo/C触媒電極の電圧を90分間50 mVに維持することにより行った。比較対象の触媒は図6及び図7と同じである。グラフの縦軸はHOR質量活性であり、これは1gのPtから取り出せる電流を意味する。4つの触媒について、0.1M HClO電解液中で、それぞれ左から純H(CO被毒していない状態)、500ppm CO/H及び1,000ppm CO/HでCO被毒した結果を示す。
純H下において、「Pt2AL−PtCo/C」のHOR質量活性は、「Pt/C」と比べて約1.1倍、「PtRu/C」と比べて約1.5倍の値を示した。そして、500ppm、1,000ppm下においてもHOR質量活性は純H下における値の86%を維持している。そして、1,000ppm下におけるHOR質量活性は、「PtRu/C」と比べて約2.2倍の値を示した。また、特徴的な点として、「Pt2AL−PtCo/C」以外の3つの触媒では、CO濃度が高くなるにつれてCO被毒の度合いが高まり、急激にHOR質量活性が低下しているのに対し、「Pt2AL−PtCo/C」ではCO濃度への依存性が小さいことが確認された。
このように、Pt2AL−PtCo/C触媒はアノード用触媒として一般的に用いられているPt/C触媒及びPt−Ru/C触媒と比較して極めて大きなHOR活性及びCO耐性を有する。したがって、アノード用触媒として要求される条件を満たし、従来の触媒と比べて、燃料ガス中のCOに対する耐性が高く、極めて高いHOR活性を示す燃料電池のアノード用触媒として利用することができる。
次に、Pt2AL−PtCo/C触媒の酸化耐性を示し、カソード用触媒としても用いることが可能な点について説明する。
図9は酸化耐性の度合いを表すものであり、「Pt2AL−PtCo/C」、「Pt/C」及び「PtRu/C」の酸化に対する加速劣化試験結果を示すグラフである。HOR質量活性の単位は「A/gPt」であり、右がNを飽和させた0.1M(mol/l) HClO電解液中において、温度が70℃、電位幅が0.02V〜0.95V、走査速度が20mV/sで2,500回電位サイクルさせた後に、純Hを飽和した電解液に切り替えて20mVで測定した値を、左がサイクル前の値を示す。サイクル前における「Pt2AL−PtCo/C」のHOR質量活性は「Pt/C」及び「PtRu/C」の値よりも大きく、「Pt/C」の値の約1.5倍、「PtRu/C」の値の約2.3倍を示した。Pt/CのHOR質量活性が電位サイクルにより劣化するのは、Pt粒子同士の凝集が起こり、活性面積が減少するためである。Pt/Cに比べてPtRu/Cの活性維持率が低くなるのは、粒子の凝集に加えてRuの溶出が起こるためと考えられる。これに対して、サイクル後における「Pt2AL−PtCo/C」のHOR質量活性は「Pt/C」の値の約2倍、「PtRu/C」の値の約3.9倍を示しており、活性維持率も最も高かった。これは、2原子層のPtスキン層により、脱合金化のみならず、粒子の凝集も抑制されたことを示している。
かかる測定結果より、現状のPtRu/Cアノード触媒を用いた定置用システムでのアノードへの空気流入防止装置が不要になって、コストを削減できる。さらに、酸化ガスに常に晒されるカソード用触媒としてもPt2AL−PtCo/C触媒を用いることが可能であることが判明した。これにより、単一の製造プロセスでアノード用触媒及びカソード用触媒を製造することができるので、製造コストを低減することが可能となる。
以上説明したように、Pt2AL−PtCo/C触媒は高いHOR活性、CO耐性及び酸化耐性を有するので、従来の触媒と比較して高性能かつ高耐久性のアノード用触媒を実現することができる。また、Pt2AL−PtCo/C触媒は高い酸化耐性を有するので、カソード用触媒としても用いることができる。
<実施例2>
次に、遷移金属Mとして鉄Feを、担体として炭素Cを用い、2原子層の白金スキン層で被覆した「Pt2AL−PtFe/C」について説明する。なお、かかる触媒の製造方法については、実施例1におけるCoをFeに変えた点以外は同じであるので、その説明を省略する。
以下、図10〜図13を用いて、実験結果について説明する。
図10は、3種類のPt2AL−PtFe/C触媒(Pt2AL−PtFe/C、Pt2AL−PtFe/C、Pt2AL−Fe/C)、Pt2AL−PtFe/C及び市販の触媒(Pt−Ru/C)の触媒金属の単位質量当たりのHOR活性(質量活性:純Hを飽和した電解液中、50mVで測定)を示す図である。ここで、CO被毒は、70℃で0.1M HClO電解液中においてPt2AL−PtFe/C触媒電極の電圧を90分間50 mVに維持することにより行った。グラフの縦軸はHOR質量活性であり、これは1gのPtから取り出せる電流を意味する。5つの触媒について、0.1M HClO電解液中で、それぞれ左側が純H(CO被毒していない状態)、右側が1,000ppm CO/HでCO被毒した結果を示す。
CO被毒後におけるHOR質量活性の、CO被毒前におけるHOR質量活性に対する割合(維持率 %)は、グラフの左から順に、94%,100%,90%,94%,78%となった。特に、Pt2AL−PtFe/Cにおいては、CO被毒の前後においてHOR質量活性が全く低下しないという驚異的な結果となった。一方、市販の触媒(Pt−Ru/C)では、他の4つの触媒と比べて、CO被毒の前後においてHOR質量活性が低い。さらに、CO被毒の前後においてHOR質量活性が最も大きく低下していることがわかる。
図11は、Pt2AL−Pt100−xFe/C触媒におけるFeの割合(x:原子組成百分率(atom %))を変化させたときの、HOR質量活性を示すグラフである。図11より、Feの割合(x)に関わらず、Feを含有することにより、HOR質量活性が市販の触媒(Pt−Ru/C)に比べ約2倍改善されていることが読み取れる。特に、xが10%〜80%のとき、HOR質量活性が良好な結果を示した。また、xが25%〜60%のとき、HOR質量活性がさらに良好な結果を示した。また、xが50%のとき、HOR質量活性が最も良好な結果を示した。
図12及び図13は、実際に測定されたこれら4つの触媒のTEM画像及び粒度分布である。図12(a)は、PtFe/C(左)及びPtFe/Cを2原子の白金スキン層で被覆したPt2AL−PtFe/C(右)のTEM画像である。図12(b)は、これら2つの触媒の粒度分布を示すグラフであり、斜線が付されているグラフがPtFe/Cを、黒色のグラフがPt2AL−PtFe/Cの粒度分布を表す。図12(b)より、2原子の白金スキン層で被覆する(内側の1原子層はPtFeの表面の相変化/外側の1原子層はPtスキン前駆体溶液中のPtによる被膜)ことにより、平均粒経が0.5nm増加していることがわかる。ここで、0.5nmは、1原子の白金スキン層分の厚さの増分(すなわちPt2原子分)に相当すると考えられる。
図12(c)は、PtFe/C(左)及びPtFe/Cを2原子の白金スキン層で被覆したPt2AL−PtFe/C(右)のTEM画像である。図12(d)は、これら2つの触媒の粒度分布を示すグラフであり、斜線が付されているグラフがPtFe/Cを、黒色のグラフがPt2AL−PtFe/Cの粒度分布を表す。図12(d)より、2原子の白金スキン層で被覆することにより、平均粒経が0.5nm増加していることがわかる。ここで、0.5nmは、PtFeの例と同様1原子の白金スキン層の厚さの増分に相当すると考えられる。
図13(a)は、PtFe/C(左)及びPtFe/Cを2原子の白金スキン層で被覆したPt2AL−PtFe/C(右)のTEM画像である。図13(b)は、これら2つの触媒の粒度分布を示すグラフであり、斜線が付されているグラフがPtFe/Cを、黒色のグラフがPt2AL−PtFe/Cの粒度分布を表す。図13(b)より、2原子の白金スキン層で被覆することにより、平均粒経が0.5nm増加していることがわかる。ここで、0.5nmは、PtFeの例と同様1原子の白金スキン層の厚さの増分に相当すると考えられる。
図13(c)は、PtFe/C(左)及びPtFe/Cを2原子の白金スキン層で被覆したPt2AL−PtFe/C(右)のTEM画像である。図13(d)は、これら2つの触媒の粒度分布を示すグラフであり、斜線が付されているグラフがPtFe/Cを、黒色のグラフがPt2AL−PtFe/Cの粒度分布を表す。図13(d)より、2原子の白金スキン層で被覆することにより、平均粒経が0.4nm増加していることがわかる。ここで、0.4nmは、PtFeの例と同様1原子の白金スキン層の厚さの増分に相当すると考えられる。
以上説明したようなPt−Pt・遷移金属/C構成(たとえばPt−PtCo/Cなど)の触媒のCO耐性やHOR質量活性などは、この触媒をアノードにまで使用できるレベルにある。したがって、Pt−Pt・遷移金属/C構成の触媒は、燃料電池自動車(FCV)用の燃料電池用の触媒として利用が可能である。FCV用の燃料ガスはCO被毒を避けるため、燃料ガス(水素ガス)中に0.2ppmの濃度までしかCOの含有を許容していない。本発明の触媒は、本明細書にて初めて明らかにしたように0.2ppm以上のCO濃度の燃料ガスでさえ(CO濃度が10ppm以下であれば)FCVの燃料ガスとして許容が可能である。また、Pt−Pt・遷移金属/C構成の触媒は、その特性から燃料電池の燃料極に空気が流入しても、CO被毒の影響を受けることなくその性能を維持できる。

Claims (22)

  1. 白金及び遷移金属の合金からなる合金粒子の表面に1から2原子層の白金スキン層を備える燃料電池のアノード用触媒。
  2. 前記白金スキン層が2原子層である、
    請求項1に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  3. 前記遷移金属は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、ニオブ、モリブデン、鉛、タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む、
    請求項1又は請求項2に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  4. 前記遷移金属は、鉄又はコバルトである、
    請求項3に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  5. 前記遷移金属は、鉄又はコバルトであり、
    前記遷移金属の前記合金粒子における原子組成百分率が10%〜80%である、
    請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  6. 前記原子組成百分率が25%〜60%である、
    請求項4に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  7. 前記原子組成百分率が50%である、
    請求項4に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  8. 前記燃料電池のアノード用触媒は、担体に担持された担持触媒である、
    請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  9. 前記担体は、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、酸化錫、酸化チタンから選ばれる少なくとも1種を含む、
    請求項8に記載の燃料電池のアノード用触媒。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の燃料電池のアノード用触媒を備えるアノード。
  11. 請求項10のアノードを備える燃料電池。
  12. 白金及び遷移金属の合金からなる合金粒子の表面に1から2原子層の白金スキン層を有する触媒がアノード側に備えられたことを特徴とする燃料電池。
  13. 前記白金スキン層が2原子層である、
    請求項12に記載の燃料電池。
  14. 前記遷移金属は、鉄又はコバルトである、
    請求項12又は請求項13のいずれかに記載の燃料電池。
  15. 前記遷移金属の前記合金粒子における原子組成百分率が10%〜80%である、
    請求項14に記載の燃料電池。
  16. 前記原子組成百分率が25%〜60%である、
    請求項14に記載の燃料電池。
  17. 前記原子組成百分率が50%である、
    請求項14に記載の燃料電池。
  18. 前記燃料電池は、前記燃料電池の停止中に前記アノードに空気が流入可能な態様で構成される、
    請求項12〜請求項17のいずれか1項に記載の燃料電池。
  19. 前記燃料電池は、燃料電池自動車(FCV)に搭載されるものであり、
    CO濃度が0.2ppm以上の燃料ガスが前記アノード側に供給される、
    請求項12〜請求項18のいずれか1項に記載の燃料電池。
  20. 前記燃料ガスのCO濃度が0.2ppm以上、10ppm以下である、
    請求項19に記載の燃料電池。
  21. 燃料電池自動車(FCV)用の燃料電池であって、
    白金及び遷移金属の合金からなる合金粒子の表面に1から2原子層の白金スキン層を有する触媒をアノードに備え、
    前記遷移金属は、鉄又はコバルトであり、
    前記触媒は、CO被毒後におけるHOR質量活性の、CO被毒前におけるHOR質量活性に対する維持率%が86%以上であり、
    前記HOR質量活性は、純Hを飽和した0.1M HClO電解液中、20mVで測定される、前記触媒の実作動面積当たりの電流密度であり、
    前記CO被毒は、1,000ppm CO/Hを飽和した、0.1M HClO電解液中において、前記触媒からなる電極の電圧を90分間50mV、70℃に維持することにより行われる、燃料電池。
  22. CO濃度が0.2ppm以上、10ppm以下である燃料ガスで運転される、
    請求項21に記載の燃料電池。
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