ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)スキャナーの構成:
(2)出力の合成:
(3)ラインセンサーの構成:
(4)スキャン処理:
(5)ラインセンサーの数:
(6)他の実施形態:
(1)スキャナーの構成:
図1は、本発明の一実施例にかかるスキャナー1のブロック図である。スキャナー1は、コントローラー10と搬送装置40と通信部70と操作部80とコンピューター90と2系統の読取部(光源、センサー、光学部等)を備える。コントローラー10は、図示しない記録媒体と、当該記録媒体からプログラムを読み出して実行するプロセッサー(特定の処理を実行するように回路が構成されたASIC等の専用回路であってもよいし、ASIC等とCPUとが協働していてもよい)を備える。
コントローラー10は生成部11と制御部13とを備えており、制御部13によってスキャナー1の各部を制御し、生成部11の処理によって画像データを生成する。操作部80は、利用者に対して種々の情報を提供する出力部と、利用者による入力操作を受け付ける入力部とを備えている。コントローラー10は、制御部13の機能により、読取条件の選択肢やスキャン指示等を行うための情報を出力部に表示させる。利用者は、当該出力部の出力に基づいて読取条件の選択や読取開始指示等を入力することができる。
読取開始指示が入力されると、制御部13は、スキャナー1の各部を制御し、原稿を読み取るための動作(例えば、原稿の搬送等)を行わせる。この動作により、ラインセンサーから画像データが出力されると、生成部11が画像データを生成する。通信部70は、外部の装置(本実施形態においては、外部のコンピューター90)と通信を行うための装置であり、コントローラー10の制御部13は、任意の情報をコンピューター90に送信し、コンピューター90から各種の指示等を受け取ることができる。
本実施形態において、コントローラー10の生成部11が画像データを生成すると、制御部13が通信部70を介して画像データをコンピューター90に送信する。むろん、画像データは、種々の態様で利用されてよく、スキャナー1が備える図示しない記録媒体に保存されてもよいし、可搬型の記録媒体に保存されてもよいし、通信部70を介してコンピューター90以外の装置に提供されてもよい。
本実施形態にかかるスキャナー1は、図示しないADF(オートドキュメントフィーダー)と原稿台との双方を備えており、いずれかの方式から選択された方式によって原稿が読取位置で読み取られる。本実施形態にかかるスキャナー1は、第1の読取部と第2の読取部とを備えており、第1の読取部はADFで搬送される搬送原稿(のおもて面)と、原稿台に載置される載置原稿とのいずれも読み取ることができる。第2の読取部は、搬送原稿の裏面を読み取ることができ、載置原稿を読み取ることはできない。
第1の読取部は、図1に示す第1センサー21,第1光源31,副走査装置41,第1切替部51,第1光学部61を備えている。副走査装置41は、第1センサー21、第1光源、第1光学部61を副走査方向に往復移動させることが可能な装置である。第2の読取部は、図1に示す第2センサー22,第2光源32,第2切替部52,第2光学部62を備えており、副走査装置41に類する装置は備えられていない。すなわち、第2センサー22,第2光源32,第2切替部52,第2光学部62は、スキャナー1内に固定的に配置される。そして、第2光源32からの光が搬送原稿の搬送経路内の所定位置に照射され、搬送原稿からの光が第2光学部62を経て第2センサー22に検知されることで読み取りが行われる。
第1センサー21および第2センサー22は、複数個のラインセンサーを備えている。各ラインセンサーは、1方向に延びるセンサーであり当該1方向に複数の光電変換素子が並べられたセンサーである。本実施形態においては、当該ラインセンサーが延びる方向が副走査方向(搬送原稿の搬送方向)に垂直になるように配置される(当該ラインセンサーが延びる方向を主走査方向と呼ぶ)。光電変換素子は、受光した光の強さに応じた信号を出力する素子であり、本実施形態においては、解像度がA(単位は例えば、dpi)である。
第1光源31および第2光源32は、搬送原稿の搬送経路に設けられた読取領域(照射位置)に照明光を照射するランプを備えている。なお、原稿が載置原稿として読み取られる場合、照射位置は副走査方向に移動し得る。照射位置に存在する物体(原稿や白基準板等)にて反射した光は第1センサー21や第2センサー22が備える各ラインセンサーで受光され、各ラインセンサーは各光電変換素子での光の受光量に応じた信号を生成する。
第1センサー21および第2センサー22は、図示しないアナログフロントエンドを備えている。アナログフロントエンドは、光の受光量に応じて光電変換素子が出力した信号にゲインを作用させて出力する回路やA/D変換する回路を含む。本実施形態においてアナログフロントエンドは、当該ゲインを示す情報を記録する記録媒体を備えており、アナログフロントエンドにおいては、当該ゲインを示す情報に基づいて、第1センサー21および第2センサー22の黒レベルを最小の出力値、白レベルを最大の出力値にするゲイン調整を行う。
搬送装置40は、原稿を搬送する機構である。搬送装置40は、搬送原稿を第1光源31からの光の照射位置および第2光源32からの光の照射位置に搬送し、さらに、搬送原稿をスキャナー1の外部へ搬送する機構である。
図2は、搬送装置40の搬送経路を模式的に示す図である。搬送経路は、図示しない樹脂製の部材によって搬送原稿の経路が形成されることによって構成され、経路の複数の位置で搬送原稿が搬送ローラー40a,40bで挟まれることによって搬送原稿が当該経路を搬送される。図2においては、太い実線の曲線によって搬送経路を示している。搬送経路内の照射位置は破線で示されており、当該照射位置内において主走査方向(X軸,Z軸に垂直な方向)の1ライン分が第1センサー21および第2センサー22によって読み取られる。
照射位置を挟んだ両側には光学系と切替部が配置されている。すなわち、第1読取部を構成する第1センサー21,第1光源31,第1光学部61は、図2に示す第1ユニットU1内に形成されており、原稿台T上の照射位置を挟んで反対側には第1切替部51が配置されている。第1切替部51は、主走査方向に延びる部材であり、主走査方向に延びる回転軸とX−Z平面による断面が扇形の部材とによって構成される。扇形の部材においては、扇形の円弧型の外周部分に、白基準板W,黒基準板B,合成マーク板Mが取り付けられている。白基準板W,黒基準板B,合成マーク板Mは、主走査方向に長い直方体の部材であり、主走査方向に長い長方形の面が扇形の外周に露出し、当該面が扇形の半径に垂直になるように配置されている。
合成マーク板Mにおいて扇形の外周に露出する面は、原稿の同一位置を特定することで画像合成の基準になる合成マークが形成された合成マーク面である。白基準板Wは白色の基準となる白色の部材であり、扇形の外周に露出する面は白基準になる白基準面である。黒基準板Bは、黒色の基準となる黒色の部材であり、扇形の外周に露出する面は黒基準になる黒基準面である。第1切替部51には、モーター等の駆動源が接続されており、回転軸を回転させることができる。従って、回転軸を回転させることにより、白基準板W,黒基準板B,合成マーク板Mを照射位置に配置することができる。
図2において、副走査装置41は、副走査方向(X軸方向)に第1ユニットU1を往復動作させることが可能な装置である。搬送原稿を読み取る際には、副走査装置41は、第1ユニットU1を図2に示す既定の位置に配置する。そして、当該既定の位置に第1ユニットU1が配置された状態で読取が行われる。原稿台Tに載置された載置原稿を読み取る場合、副走査装置41は、第1センサー21、第1光源、第1光学部61を副走査方向に移動させて載置原稿を読み取る。従って、載置原稿においては、図2に示す破線の直線と当該直線に接続された一点鎖線の直線の部分が照射位置(原稿の読取領域)となる。
第2読取部を構成する第2センサー22,第2光源32,第2光学部62は、図2に示す第2ユニットU2内に形成されており、搬送経路の照射位置を挟んで反対側には第2切替部52が配置されている。第2切替部52は、第1切替部51と同様の構成を備えており、回転軸を回転させることにより、白基準板W,黒基準板B,合成マーク板Mを照射位置に配置することができる。搬送原稿を読み取る際には、第1ユニットU1によって一方の面(おもて面)の読取が行われる。裏面の読取を行う必要がある場合には第2ユニットU2によって裏面の読取が行われる。
第1光学部61は、第1センサー21に原稿の画像を縮小しつつ結像させる光学部材を備えている。すなわち、第1光学部61は、第1光源31の光が原稿に照射されることで生じる原稿からの光をラインセンサーに導く光路を形成する光学部材を備える。光路は種々の構造によって提供されて良く、光学部材も種々の部材、例えば、絞りやレンズ、反射鏡等のいずれかまたは組み合わせによって構成可能である。
図3は、光路の一例を示す図であり、視線を主走査方向と平行にした状態で示している。図3においては、原稿Pに光を照射する第1光源31と第1光学部61(61a,61b)と第1センサー21とを示している。第1光学部61は2個の反射鏡61a,61bを備えており、例えば、反射鏡61aを平面鏡、反射鏡61bを凹面鏡とすることにより、原稿Pの主走査方向(X軸、Z軸に垂直な方向)の1ライン分の光を主走査方向で分割し、縮小することによってラインセンサー21aに導く構成等が採用可能である。
図4は、視線を副走査方向と平行にした状態で光学部による作用を模式的に示している。図4においては、原稿Pからの光が第1光学部61を経てラインセンサー21aに導かれる様子が示されており、原稿Pからの光の光路を破線および一点鎖線で模式的に示している。すなわち、ラインセンサー21aは、主走査方向(Y軸方向)に並んでおり、原稿Pにおいて主走査方向において一部重複しながら隣接する部分毎の像は、原稿Pの各部分に対応した第1光学部61の各部分で縮小される。そして、原稿Pの各部分の像は、各部分に対応した各ラインセンサー21aに結像する。
なお、図4において、破線および一点鎖線は光路の範囲を模式的に示しており、第1光学部61によって像はY方向に逆転し得る。また、第2光学部62も第1光学部61と同様に、第2センサー22に原稿の画像を縮小しつつ結像させる光学部材を備えている。以上のように、本実施形態において第1センサー21、第2センサー22が備える各ラインセンサーにおいて、隣接する各ラインセンサーは、原稿Pにおいて主走査方向に隣接する各部分を読み取り、隣接するラインセンサーは、原稿Pにおける同一位置の像を共通して読み取るように構成されている。
(2)出力の合成:
各ラインセンサーにおいては、原稿Pの同一位置を重複して読み取るため、コントローラー10の生成部11が、隣接するラインセンサーが出力した画像データを一部が重複する位置で合成して画像データを生成する。具体的には、生成部11は、合成マーク板Mの合成マーク面に形成された合成マークに基づいて、ラインセンサーの出力を重ねる。すなわち、ラインセンサーは、図4に示すように、複数個のラインセンサーによって構成されており、各ラインセンサーは異なる位置に配置される。
各ラインセンサーの位置は、製造誤差等によって設計上の位置からずれた位置となり得るため、各ラインセンサーの相対位置に設計からのずれが生じ得る。そこで、ラインセンサーの設計上の位置からのずれを解消した状態で合成が行われるように、合成マークに基づいて合成位置が予め特定される。すなわち、原稿Pの読み取りが行われる前に、生成部11は、第1切替部51(両面読み取りの場合には第2切替部52等も利用される:以下同様)を制御し、合成マークを照射位置に配置する。
この状態で制御部13は、第1光源31を点灯させる。この結果、第1センサー21が備える各ラインセンサー21aは、合成マークを読み取った画像を出力する。図5は、ラインセンサー21aが備える光電変換素子を示す模式図であり、光電変換素子を丸で示している。図5においては、合成マークは副走査方向に延びる線であり、合成マーク面において合成マーク以外の部分は白色である。
当該合成マークは、隣接するラインセンサー21aの双方で読み取られる。図5においては、合成マーク板Mの同一位置に形成された合成マークを読み取ったラインセンサー21aの光電変換素子を黒に着色して模式的に示しており、合成マークをハッチングによって模式的に示し、合成マークを読み取った光電変換素子に重ねて示している。また、隣接するラインセンサー21aの一方を上部左側に配置し、他方を下部右側に配置し、合成マークを読み取った光電変換素子が縦方向に並ぶようにラインセンサー21aの模式図を配置している。ここでは、隣接するラインセンサー21aの一方を第1ラインセンサー21a1、他方を第2ラインセンサー21a2と呼ぶ。
第1ラインセンサー21a1、第2ラインセンサー21a2は、主走査方向にならぶ各光電変換素子の受光量に対応した出力をシリアルデータとして出力する。そこで、生成部11は、第1ラインセンサー21a1の出力を解析し、端部から5個目および6個目の光電変換素子E5,E6で合成マークを検出したことを特定する。また、生成部11は、第2ラインセンサー21a2の出力を解析し、端部から4個目および5個目の光電変換素子E4,E5で合成マークを検出したことを特定する。この場合、生成部11は、第1ラインセンサー21a1の5個目および6個目の光電変換素子E5,E6と、第2ラインセンサー21a2の4個目および5個目の光電変換素子E4,E5とが同一位置を読み取ったとみなし、各ラインセンサーに対応づけて各素子の位置を図示しないメモリに記録する。
そして、生成部11は、以上の処理を主走査方向の端に位置するラインセンサーから順に実施し、各ラインセンサーで同一位置を読み取った素子の位置を特定する。なお、ラインセンサー21aを構成する複数のラインセンサーにおいて、端に位置するラインセンサー以外は第1ラインセンサー、第2ラインセンサーのいずれにもなり得る。例えば、あるラインセンサーが第1ラインセンサー21a1となり、隣接する第2ラインセンサー21a2となった場合において、当該第2ラインセンサー21a2を第1ラインセンサーと見なすと、逆側に隣接する他のラインセンサーが第2ラインセンサーとなる。
以上のようにして同一位置を読み取る光電変換素子の位置が特定されると、原稿Pが読み取られた際に、生成部11は、当該位置に基づいて各ラインセンサーが出力を合成することにより、1ライン分の画像データを生成する。合成の手法は、様々な手法を採用可能である。例えば、当該位置を特定した結果として第1ラインセンサー21a1の位置i(iは1からnまでの自然数)の光電変換素子の出力(シェーディング補正等の処理後の出力である。本段落において以下同じ)aiと、第2ラインセンサー21a2の位置iの光電変換素子の出力biが同じ位置の光電変換素子からの出力だとすると、位置iの合成後の画素値giは、gi=jiai+kibiとすることが可能である。このjiやkiは0以上1以下の係数であり、合計は1である。またこの係数は例えば常に0.5のように位置iによらず一定であってもよいし、ラインセンサーの中心に近い側の係数が遠い側の係数よりも大きいなど、位置iによって異なっていてもよい。
以上の例において、生成部11は、光電変換素子の1個単位で第1ラインセンサー21a1が出力する第1画像データと第2ラインセンサー21a2が出力する第2画像データの合成位置を調整することが可能である。従って、原稿の読取解像度が光電変換素子の解像度Aに対応した読取解像度(例えば、光学部による縮小倍率が1/2であれば読取解像度は2A)であれば、光電変換素子で読み取った合成マークの位置に応じて光電変換素子の1個単位で調整可能であり、正確に合成位置を調整することができる。
しかし、Aよりも低い解像度であるA/n(nは2以上の整数)に対応した読取解像度で原稿が読み取られる場合、単純な合成では正確に合成が行われない場合がある。図6は、図5に示す例と同じ光電変換素子によって合成マークが読み取られた場合の例を示す図である。この例において、A/2に対応した読取解像度で原稿が読み取られる場合に、第1ラインセンサー21a1と第2ラインセンサー21a2のそれぞれにおいて端から2個ずつの出力を合成すると、正確に合成位置を調整することができない。
具体的には、図6においては、合成される2個の光電変換素子を矩形で囲むことによって示しており、当該矩形で示すように、第1ラインセンサー21a1の端から5個目および6個目の光電変換素子E5,E6の出力が合成される。一方、第2ラインセンサー21a2においては、光電変換素子E4,E5の出力は合成されず、互いに別の画素の出力となる。従って、このような場合に、合成位置の調整を行うならば、第1ラインセンサー21a1の画素Px1の位置が、第2ラインセンサー21a2の画素Px2またはPx3の位置と見なすほか無く、正確に合成を行うことができない。すなわち、第2ラインセンサー21a2において合成されるn個の光電変換素子の位置が固定されている(選択できない)と、第1ラインセンサー21a1においてn個の光電変換素子で読み取られた部分と同一の部分を第2ラインセンサー21a2におけるn個の光電変換素子で読み取ることができるとは限らない(ほとんどの場合ずれてしまう)。
(3)ラインセンサーの構成:
そこで、本実施形態においては、A/n(nは正の整数)の解像度で原稿を読み取る場合に、第1ラインセンサー21a1と第2ラインセンサー21a2との相対位置に応じた位置のn個の光電変換素子の出力を合成できるようにラインセンサーが構成されている。すなわち、第2ラインセンサー21a2においては、周期的に合成されるn個の光電変換素子の位置をラインセンサーの1素子の精度で調整することができる。
隣接するn個の光電変換素子の合成を周期的に実行する場合、n個の光電変換素子の選び方は、n通りである。すなわち、光電変換素子の1素子目からn個を合成するパターン1、光電変換素子の2素子目からn個を合成するパターン2のように見なすと、光電変換素子のn素子目からn個を合成するパターンnまでのn通りの合成パターンが選択し得る。そして、これらのパターンは、互いに1素子分ずつずれているため、これらのパターンのいずれかを選択すれば、光電変換素子の1素子の精度で、合成されるn個の素子の位置を調整することができる。
図7はラインセンサーの要部における回路構成を示す図である。ラインセンサーは、光電変換素子PD1を備える光電変換回路CPDと、光電変換回路CPDに接続されたノイズ除去回路CNCと、ノイズ除去回路CNCに接続された走査回路CSCとを備えている。光電変換回路CPDとノイズ除去回路CNCとは、複数の光電変換素子のそれぞれについて設けられている。図7においては、1個の光電変換素子PD1に対応する光電変換回路CPDとノイズ除去回路CNCとについて説明するが、他の光電変換素子PD1に対応する光電変換回路CPDおよびノイズ除去回路CNCにおいても構成および動作は共通である。なお、紙面の都合上、図7では光電変換回路CPDとノイズ除去回路CNCとは、5個ずつしか記載していないが、実際には図7の右側に光電変換回路CPDとノイズ除去回路CNCやスイッチがラインセンサーの光電変換素子数に達するまで繰返し続き、走査回路も伸びている。
光電変換回路CPDは、光電変換素子PD1と反転増幅器A1とコンデンサーCdとリセットスイッチRS1とを備えている。本実施形態において光電変換素子PD1はフォトダイオードであり、アノードは接地され、カソードは反転増幅器A1の入力端子に接続されている。反転増幅器A1は、光電変換素子PD1の出力を−G倍に反転増幅して出力する。当該出力は、光電変換素子PD1の受光量に応じた電圧であり、以後、出力電圧Vsと表記する。
コンデンサーCdは、反転増幅器A1の出力端子および入力端子に接続されている。すなわち、コンデンサーCdは、反転増幅器A1の出力端子から入力端子への信号帰還経路に設けられた帰還容量として機能する。また、リセットスイッチRS1は、反転増幅器A1の出力端子および入力端子に接続されている。従って、リセットスイッチRS1をオンにしてコンデンサーCdをショートさせることにより、反転増幅器A1からの出力をリセットすることができる。本実施形態においては、読み取りが行われる前に制御部13の制御によって図示しない駆動回路からリセット信号が出力され、当該リセット信号によってリセットスイッチRS1が、オンになることによって読み取りの準備が行われる。
光電変換回路CPDは、ノイズ除去回路CNCに接続されている。ノイズ除去回路CNCは、コンデンサーCiと反転増幅器A2とコンデンサーCfと2個のリセットスイッチRS2と反転スイッチXRS2とを備えている。第1スイッチSW11は、反転増幅器A2の入力端子およびコンデンサーCiに接続されている。反転増幅器A2は、光電変換素子PD1の出力を−G倍に反転増幅して出力する。
コンデンサーCfおよび反転スイッチXRS2は直列に接続され、コンデンサーCfの一方の端子が反転増幅器A2の入力端子に接続され、反転スイッチXRS2の一方の端子が反転増幅器A2の出力端子に接続されている。また、コンデンサーCfと反転スイッチXRS2との間には1個のリセットスイッチRS2が接続され、当該リセットスイッチRS2の他方には基準電圧VREFが印加される。もう1個のリセットスイッチRS2は、反転増幅器A2の出力端子および入力端子に接続される。
本実施形態において、反転スイッチXRS2のオン/オフを制御する信号は、リセットスイッチRS2のオン/オフを制御する信号が反転された信号である。従って、リセットスイッチRS2がオンになっている場合には、反転スイッチXRS2がオフになり、リセットスイッチRS2がオフになっている場合には、反転スイッチXRS2がオンになる。
リセットスイッチRS2がオフ、反転スイッチXRS2がオンの場合、コンデンサーCfは、反転増幅器A2の出力端子から入力端子への信号帰還経路に設けられた帰還容量として機能する。一方、リセットスイッチRS2がオン、反転スイッチXRS2がオフの場合、反転増幅器A2の入出力間がショートされる。この場合、コンデンサーCfは電圧Vtの端子と基準電圧VREFの間に位置する。従って、この場合における反転増幅器A2の入力端子が電圧Vtであれば、コンデンサーCfの両端にVt−VREFの電位差が生じ、この電位差に応じた電荷が蓄積される(リセットされる)。
このような回路により、光電変換回路CPDの出力電圧VsのノイズをコンデンサーCiでキャンセルし、さらに、反転増幅器A2で反転増幅して出力することになり、ノイズ除去回路CNCはCDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)回路として機能する。なお、第1スイッチSW11がオンであり、後述する第2スイッチSW21がオフである場合、反転増幅器A2の出力電圧VCDSは
VCDS=VREF−(CI/CF)・ΔVs
となる。なお、ここで、CIはコンデンサーCiの容量、CFはコンデンサーCfの容量であり、ΔVsは、反転増幅器A1の出力電圧Vsが光電変換素子PD1の露光時間の経過に伴って変化する電圧である。
反転増幅器A2の出力端子は、リードスイッチRDに接続されており、リードスイッチRDの他方の端子はコンデンサーCmemおよびセレクトスイッチSELに接続されている。コンデンサーCmemの他方の端子は接地され、セレクトスイッチSELはラインセンサーの出力端子に接続されている。
リードスイッチRDは、光電変換素子PD1の出力を読み出すタイミングでオンにされ、リードスイッチRDがオンになると、反転増幅器A2の出力電圧に応じた電荷がコンデンサーCmemに蓄積される。この状態において、リードスイッチRDがオフにされ、セレクトスイッチSELが走査回路CSCによってオンにされると、コンデンサーCmemの電荷はラインセンサーの出力端子から読み出される。
上述のように、光電変換回路CPDとノイズ除去回路CNCは、ラインセンサーが備える各光電変換素子PD1について設けられている。また、光電変換素子PD1が並ぶ順にノイズ除去回路CNCも並んでいる。走査回路CSCは各ノイズ除去回路CNCにおけるセレクトスイッチSELをオン/オフする信号線を備えており、制御部13の制御によってリードスイッチRDがオンにされて各光電変換素子PD1に対応するコンデンサーCmemに電荷が蓄積し得る状況とされ、リードスイッチRDがオフにされると、走査回路CSCは制御部13の制御に応じて光電変換素子PD1が並ぶ順に1個ずつセレクトスイッチSELをオンにし、一定時間後にオフにしていく。この結果、ラインセンサーの各光電変換素子PD1の受光量に応じた画像データがシリアルデータとして出力され、当該出力は生成部11に取得される。
本実施形態においては、光電変換素子PD1と第1スイッチSW11との間に第2スイッチSW21が接続されている。なお、図7に示す回路においては、コンデンサーCiと第1スイッチSW11との間に第2スイッチSW21が接続されているが、コンデンサーや増幅回路など、波形整形を行う回路を除外して考えれば光電変換素子PD1と第1スイッチSW11との間に第2スイッチW21が接続されていると考えることができる(以下同様)。
以上のように、本実施形態において光電変換素子PD1と第2スイッチSW21とはコンデンサーCiを介して接続され、第1スイッチSW11と第2スイッチSW21とはコンデンサーCiを介さず接続されている。そして、この関係は、複数の光電変換素子に対応する第1スイッチおよび第2スイッチのそれぞれについて充足されている。この構成によれば、コンデンサーCiの電荷が流れ得る配線を第1スイッチおよび第2スイッチによって制御することが可能である。
本実施形態においては、1個の光電変換素子PD1に対して1個の第1スイッチSW11が対応しているため、光電変換素子PD1と第1スイッチSW11とは組であると考えることができる。例えば、図7に示す光電変換素子PD1と第1スイッチSW11は組であり、隣接する光電変換素子PD2に着目すれば、光電変換素子PD2と第1スイッチSW12とで同様の組が形成されている。そして、第2スイッチSW21は、隣接する組の間に存在し、各組における光電変換素子PDと第1スイッチSWとの間に接続されている。従って、第2スイッチSW21は、光電変換素子と第1スイッチとの組同士を接続し、全ての第2スイッチSW21は直列に配列されている。
以上の構成により、ラインセンサーは、隣接する任意の位置の光電変換素子の出力を合成することができる。すなわち、制御部13は、図示しない駆動回路を制御してラインセンサーが備える各スイッチを制御することで、合成対象の光電変換素子を選択し、合成された出力の出力先となるコンデンサーCmemを選択することができる。具体的には、第2スイッチがオフである場合、光電変換素子と第1スイッチとの組同士は互いに独立しているため、光電変換素子の出力は互いに独立になる。さらに、本実施形態においては、第1スイッチを介して光電変換素子が走査回路CSCに接続されているため、第1スイッチのオン、オフを制御すれば、光電変換素子の出力が走査回路CSCに達し得るか否かを制御することが可能である。
そこで、制御部13は、解像度A/nの読み取りを行う場合、合成対象の光電変換素子の中の1個に対応する第1スイッチのみオンとし、他の光電変換素子に対応する第1スイッチをオフにする。例えば、図7に示す例において、n=2、すなわち、隣接する2個の光電変換素子の出力を合成する場合、第1スイッチSW11をオン、第1スイッチSW12をオフにすれば、光電変換素子PD1に対応するノイズ除去回路CNCに電圧が入力され、光電変換素子PD2に対応するノイズ除去回路CNCに電圧が入力されない状態となる。従って、光電変換素子PD1に対応するノイズ除去回路CNCが機能し、光電変換素子PD2に対応するノイズ除去回路CNCは機能しない状態となる。
第2スイッチは、光電変換素子と第1スイッチとの組同士を接続するため、第2スイッチがオンにされると、隣接する組の光電変換回路CPDの出力端子が導通する状態となる。そこで、制御部13は、合成対象の光電変換素子の出力同士を結ぶ第2スイッチをオン、合成対象ではない光電変換素子の出力同士を結ぶ第2スイッチをオブにする。そして、合成対象の光電変換素子と組になっている第1スイッチの中で、特定の第1スイッチのみをオンにすれば、合成対象の光電変換素子に対応する光電変換回路CPDの出力を合成して特定のノイズ除去回路CNCで処理する(ノイズ除去およびコンデンサーCmemを利用した出力を行う)ことができる。
例えば、第1スイッチSW11がオン、第1スイッチSW12がオフの状態で、第2スイッチSW21がオンにされると、光電変換素子PD1、PD2の出力が合成され、1個のノイズ除去回路CNCで処理される。この場合、1個のノイズ除去回路CNCの出力は以下の式のようになる。
VCDS=VREF−(CI/CF)・(ΔVs1+ΔVs2)
ここで、CIはコンデンサーCiの容量、CFはコンデンサーCfの容量であり、ΔVs1は、反転増幅器A1の出力電圧Vsが光電変換素子PD1の露光時間の経過に伴って変化する電圧であり、ΔVs2は、反転増幅器A12の出力電圧が光電変換素子PD2の露光時間の経過に伴って変化する電圧である。なお、隣接する光電変換素子に対応したコンデンサーCiの容量は全コンデンサーCiにおいて同一であり、コンデンサーCfの容量も全コンデンサーCfにおいて同一である。
制御部13は、図示しない駆動回路を利用して合成対象の隣接するn個の組を結ぶ第2スイッチをオン、他の第2スイッチをオフにし、合成対象の隣接するn個に対応する第1スイッチの1個をオン、他の第1スイッチをオフにする制御を、主走査方向に並ぶ各光電変換素子に対応した各回路のスイッチにおいてn個の周期で繰り返す。この結果、A/nの解像度での出力が得られる。
このような制御において、合成対象のn個の光電変換素子の1個目は任意の位置から選択することができる。すなわち、本実施形態にかかるラインセンサーは光電変換素子のm個目(mは1〜nのいずれか)からn個の周期で出力を合成して出力できるように構成されている。図8は、図7に示す回路図を単純化し、回路と第1スイッチ、第2スイッチとの関係に着目して示すとともに、解像度毎のスイッチの動作を表にして示す図である。図8の表においては、主走査方向におけるオン/オフの周期を太い直線の枠で示している。
ラインセンサーが備える光電変換素子は解像度Aで配置しており、ラインセンサーにおいて1個目の光電変換素子から1個の周期で原稿を読み取る場合、図8の表に示すように、制御部13は駆動回路を介して第1スイッチSW11,第2スイッチSW21のそれぞれをオン、オフとし、このスイッチの設定状態を主走査方向に繰り返す。この結果、光電変換回路CPDが備える各光電変換素子の出力が合成されずに(1個目から1個の周期で合成されると解釈することもできる)出力され、解像度Aでの読み取りが行われる。
ラインセンサーにおいて1個目の光電変換素子から2個の周期で読み取る場合、図8の表の2番目に示すように、制御部13は駆動回路を介して第1スイッチSW11,第2スイッチSW21,第1スイッチSW12,第2スイッチSW22のそれぞれをオン、オン、オフ、オフとし、このスイッチの設定状態を主走査方向に繰り返す。この結果、光電変換回路CPDが備える各光電変換素子の1個目から2個の周期で合成されて出力され、解像度A/2での読み取りが行われる。
ラインセンサーにおいて1個目の光電変換素子から3個の周期で原稿を読み取る場合、図8の表の3番目に示すように、制御部13は駆動回路を介して第1スイッチSW11,第2スイッチSW21,第1スイッチSW12,第2スイッチSW22,第1スイッチSW13,第2スイッチSW23のそれぞれをオン、オン、オフ、オン、オフ、オフとし、このスイッチの設定状態を主走査方向に繰り返す。この結果、光電変換回路CPDが備える各光電変換素子の1個目から3個の周期で合成されて出力され、解像度A/3での読み取りが行われる。
ラインセンサーにおいて1個目の光電変換素子から4個の周期で原稿を読み取る場合、図8の表の4番目に示すように、制御部13は駆動回路を介して第1スイッチSW11,第2スイッチSW21,第1スイッチSW12,第2スイッチSW22,第1スイッチSW13,第2スイッチSW23,第1スイッチSW14,第2スイッチSW24のそれぞれをオン、オン、オフ、オン、オフ、オン、オフ、オフとし、このスイッチの設定状態を主走査方向に繰り返す。この結果、光電変換回路CPDが備える各光電変換素子の1個目から4個の周期で合成されて出力され、解像度A/4での読み取りが行われる。
さらに、本実施形態においては、任意のn個の光電変換素子の出力を合成する際に、n個の周期の合成を開始する光電変換素子を任意の位置から選択することができる。例えば、図8の表の5番目に示すように、制御部13が駆動回路を介して第1スイッチSW11,第2スイッチSW21,第1スイッチSW12,第2スイッチSW22,第1スイッチSW13,第2スイッチSW23のそれぞれをオフ、オフ、オン、オン、オフ、オフとし、1個目の光電変換素子に対応するスイッチ(第1スイッチSW11,第2スイッチSW21)を除き、第1スイッチSW12,第2スイッチSW22,第1スイッチSW13,第2スイッチSW23の設定状態を主走査方向に繰り返す。この結果、光電変換回路CPDが備える各光電変換素子の2個目から2個の周期で合成されて出力され、解像度A/2での読み取りが行われる。
同様の処理を行えば、制御部13は、光電変換素子の中の任意のm番目からn個の周期で出力を合成し、合成した結果をラインセンサーから出力させることができる。従って、制御部13は、ラインセンサーの1素子の精度で、合成されるn個の素子の位置を調整することができる。
この結果、原稿の同一位置を異なるラインセンサーで読み取ったデータが、ラインセンサーの1素子の精度で重なるように調整することが可能になる。図9は、図5に示す例と同じ光電変換素子によって合成マークが読み取られた場合の例を示す図である。この例において、光電変換素子の解像度をA/2として原稿が読み取られる場合に、第1ラインセンサー21a1においては、端から2個ずつの光電変換素子を組にして合成を行えば、合成後の1個(Px1)の画素が合成マークを示し、他の画素には合成マークが含まれない状況となる。
一方、図6に示すように、第2ラインセンサー21a2の端から2個ずつの出力を合成すると、画素Px2およびPx3に合成マークが含まれ、第1ラインセンサー21a1の出力と、第2ラインセンサー21a2の出力とを正確に合成することができない。すなわち、図6に示す状況では、第1ラインセンサー21a1と第2ラインセンサー21a2との相対位置に応じた位置のn個の光電変換素子の出力を合成することができない。
しかし、本実施形態においては、合成対象のn個の光電変換素子の位置を任意の位置から選択することができる。そこで、制御部13は、図9に示す例であれば、第2ラインセンサー21a2の端から4個目の光電変換素子E4から2個の周期で出力を合成するように第1スイッチおよび第2スイッチを制御する。この結果、第2ラインセンサー21a2においては、図9に示す実線の枠毎に光電変換素子の出力を合成することが可能になり、1個の画素Px4のみに合成マークの読み取り結果が含まれる状態の合成結果を出力する。
以上のように、制御部13が、第1ラインセンサーと第2ラインセンサーとの相対位置に応じた位置のn個の光電変換素子の出力が合成して出力されるように第2ラインセンサーのスイッチを制御すると、ずれが生じることなく合成可能なn個の光電変換素子の合成結果がラインセンサーから出力される。そこで、生成部11は、照射位置に合成マーク面が配置されている状態でのラインセンサーの出力に基づいて画像を合成する。すなわち、光電変換素子の解像度をA/nとして原稿が読み取られる場合、原稿の読み取りが行われる前に、制御部13の制御により、第1切替部51が制御され、合成マークが照射位置に配置された状態で、解像度Aでの第1センサー21の出力が取得される。生成部は、当該出力に基づいて、各ラインセンサーで同一の合成マークを読み取った画素を特定する。
そして、生成部11は、原稿が読み取られた場合に第1センサーから出力された画像データを、同一の合成マークを読み取った画素同士が重なるように重ねることで合成する。例えば、図9に示す例であれば、画素Px1と画素Px4が重複するように第1ラインセンサー21a1の出力と第2ラインセンサー21a2の出力を重ねる処理を各ラインセンサーについて行う。この処理を、複数のラインセンサーのそれぞれについて実施することで、生成部11は1ライン分の画像データを生成する。
なお、以上の実施形態は、複数の光電変換素子と、任意の光電変換素子と当該光電変換素子に隣接する光電変換素子との出力を合成する図7に示すような合成回路と、を備えるラインセンサーにおいて、合成回路が外部(制御部13)から受信した制御信号に基づいた位置の連続するn個の光電変換素子の出力を合成して出力する構成と見なすこともできる。
以上の構成によれば、第1ラインセンサーと第2ラインセンサーとが設計上の位置からずれて基板に実装されていたとしても、そのずれを解消して正確に合成を行うことができる。従って、複数のラインセンサーの出力を合成した画像データの画質を向上させることができる。
なお、本実施形態において生成部11は、光電変換素子における解像度をA/nとして原稿を読み取る場合に、ラインセンサーの相対位置に応じた位置のn個の光電変換素子と、当該位置に近い第2ラインセンサーの端部との間に存在する光電変換素子の出力は画像データの生成に使用しない。例えば、図9に示す例において、第2ラインセンサー21a2の光電変換素子E4,E5は第1ラインセンサー21a1と第2ラインセンサー21a2との相対位置に応じた位置のn個(2個)の光電変換素子である。従って、生成部11は、第2ラインセンサー21a2におけるn個の光電変換素子E4,E5と、当該光電変換素子E4,E5の位置に近い第2ラインセンサー21a2の端部Fとの間に存在する3個の光電変換素子(破線の枠で囲まれた光電変換素子)は画像データの生成に使用しない。
すなわち、第1ラインセンサー21a1と第2ラインセンサー21a2との相対位置に応じた位置のn個の光電変換素子の出力を合成する場合(画素Px1と画素Px4を合成する場合)、当該相対位置に応じた位置のn個よりも第2ラインセンサーの端部側(近い方の端部側)に存在する破線枠内の光電変換素子は、利用する必要がない。そこで、本実施形態においては、第1ラインセンサー21a1が出力する第1画像データと第2ラインセンサー21a2が出力する第2画像データとを合成する際に、生成部11は、図9に示す破線の枠で囲まれた光電変換素子の出力は使用しない。この構成によれば、不要な出力を利用することなく合成を行うことができる。なお、この出力は使用しない光電変換素子は、相対位置が同じであってもn次第で変化しうる。そのため、相対位置とnとに応じて、どの光電変換素子を使用しないか決めるようにする必要がある。
なお、破線枠内の光電変換素子においては、出力が利用されないため、読み取りの過程においてコンデンサーに不要な電荷の蓄積を防止するなどのため、リセットが行われることが好ましい。むろん、読み取りの過程でコンデンサーに不要な電荷を蓄積しないため、コンデンサーの電極の一方が設置される等の構成が採用されてもよい。また、光電変換素子の出力は使用しないということは、光電変換素子の出力を走査回路CSCに出力させないようにしてもよいし、光電変換素子の出力を走査回路CSCに出力させて生成部11で読み捨てるようにしてもよい。
(4)スキャン処理:
次に、スキャン処理の手順を図10に示すフローチャートに沿って説明する。利用者が操作部80によって原稿の読取解像度や給紙方法(ADF、原稿台のいずれか)を直接的または間接的に指定してスキャン指示を行うと、コントローラー10は、制御部13の機能によって当該スキャン指示を受け付け、図4に示すスキャン処理を開始する。スキャン処理が開始されると、制御部13は、原稿の読取解像度、給紙方法を含むスキャン設定を取得する(ステップS100)。なお、ここで利用者は、搬送原稿からの光を読み取る場合に設定可能な複数の原稿の読取解像度からいずれかを選択して解像度を設定することができる。
次に、制御部13は、シェーディング測定を行う。すなわち、ラインセンサーにおいて検知可能な光量の下限は黒レベル、検知可能な光量の上限は白レベルであるが、黒レベルと白レベルはセンサーや光源等の特性に依存して変動し得る。例えば、暗電流等のノイズやセンサー毎の製造誤差、経時変化等によってセンサーの特性が変動し、この変動に応じて黒レベルと白レベルとが変動し得る。そこで、高品質のスキャンを行うためには、原稿の読み取りの前にシェーディング測定が行われ、黒レベルと白レベルの少なくとも一方が特定されていることが好ましい。
本実施形態において制御部13は、まず、白レベルを測定する(ステップS105)。すなわち、原稿の読み取りを行う前に、制御部13は、第1切替部51(両面スキャンの場合は第2切替部52も対象となる)を制御し、白基準板Wを照射位置に配置させる。図11は、第1切替部51とその周辺に配置されたストッパー51a(図2においては省略)を示す図である。図11に示すように、第1切替部51(第2切替部52も同様)の回転範囲内には、扇形の半径部分が接触して第1切替部51の回転を制限するストッパー51aが配置されている。ストッパー51aは、スキャナー1内の筐体内に固定されている。
当該ストッパー51aは、図11に示すように白基準板Wが照射位置Rに配置された場合と、図11の反対側に第1切替部51が回転して黒基準板Bが照射位置Rに配置された場合に第1切替部51の回転を制限するように構成されている。そこで、制御部13は、ストッパー51aに第1切替部51が接触するまで第1切替部51を図11に示す時計回りに回転させる。白基準板Wが照射位置Rに配置されると、制御部13は、第1光源31を制御して白基準板Wに光を照射させる。この結果、第1センサー21からは白基準板Wの測定結果を示す出力が取得されるため、制御部13は、当該出力を白レベルとして取得する。
次に、制御部13は、黒レベルを測定する(ステップS110)。すなわち、原稿の読み取りを行う前に、制御部13は、第1切替部51(両面スキャンの場合は第2切替部52も対象となる)を制御し、黒基準板Bを照射位置に配置させる。具体的には、制御部13は、ストッパー51aに第1切替部51が接触するまで第1切替部51を図11に示す反時計回りに回転させる。黒基準板Bが照射位置Rに配置されると、制御部13は、第1光源31を制御して黒基準板Bに光を照射させる。この結果、第1センサー21からは黒基準板Bの測定結果を示す出力が取得されるため、制御部13は、当該出力を黒レベルとして取得する。
次に、制御部13は、給紙方法がADFであるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部13は、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、原稿面に垂直な方向への原稿のずれによる影響が少ない方法で読取が行えるように、ステップS100で取得されたスキャン設定を参照し、給紙方法がADF、原稿台のいずれであるのかを判定する。本実施形態における搬送装置40においては、搬送可能な原稿の態様が限定されており、1枚のシート状の原稿のみが読み取り対象となる。一方、原稿台においては、読み取りのたびに利用者によって原稿を原稿台に置く作業と原稿を原稿台から取り除く作業とが行われるため、原稿の態様に任意性がある。例えば、原稿台に載置されれば、1枚のシート状の原稿であっても製本された本の見開きの原稿であっても読み取りを行うことが可能である。
しかし、原稿台で読み取り可能な載置原稿においては原稿に任意性があるため、載置原稿の種類によっては、載置原稿の少なくとも一部が原稿台から浮いている場合もあり得る。従って、光源からの光が照射される照射位置に搬送原稿が配置される際における原稿面に垂直な方向へのずれは、搬送装置で搬送される搬送原稿よりも、原稿台に載置される載置原稿の方が大きくなり得る。そこで、本実施形態においては、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、原稿面に垂直な方向への原稿のずれによる影響が少ない方法で読取が行われる。
載置原稿からの光を読み取る方法は、搬送原稿からの光を読み取る方法よりも、原稿面に垂直な方向への原稿のずれによる影響が少ない方法であれば良い。例えば、原稿面に垂直な方向への原稿のずれによる影響が少ない方法は、原稿面に垂直な方向のずれ(浮き等)が発生した場合における画質の低下度合いが小さい方法であり、当該ずれによる画質の低下を抑制することができればよい。
ステップS120において、給紙方法がADFであると判定されない場合、すなわち原稿台で読み取りを行う場合、制御部13は、原稿の読取解像度が閾値より高いか否かを判定する(ステップS125)。本実施形態においては、選択可能なk個(kは2以上の整数)の解像度が予め設定してある。すなわち、第1センサー21、第2センサー22が備える各ラインセンサーの光電変換素子の解像度はAであり、隣接するn個の光電変換素子の出力を合成することでA/nの解像度での読み取りが可能である。
そこで、本実施形態においては、nに1〜整数k(例えば4等)を代入して得られる解像度の値A,A/2,,,A/kに対して、第1光学部61(および第2光学部62)での縮小倍率fを乗じて得られる解像度が原稿の読取解像度として選択可能である。例えば、光電変換素子の解像度Aが1200dpiであり、kが4である場合、ラインセンサーにおける解像度としては、1200dpi,600dpi,400dpi,300dpiが選択可能である。この場合において縮小倍率fが1/2倍である場合、原稿の読取解像度の選択肢は、600dpi,300dpi,200dpi,150dpiとなる。
さらに、本実施形態においては、原稿の読取解像度として選択可能な解像度が、給紙方法毎に異なる。具体的には、原稿台に載置された載置原稿からの光を読み取る場合において利用者の指示を受け付ける解像度の最大値は、搬送原稿からの光を読み取る場合において利用者の指示を受け付ける解像度の最大値よりも小さい。例えば、搬送原稿からの光を読み取る場合はラインセンサーが読取を行うことができる上限である600dpi以下の解像度を受け付けるが、原稿台に載置された載置原稿からの光を読み取る場合は、300dpi以下の解像度を受け付けるというようにする。
そして、載置原稿において選択可能な原稿の読取解像度の最大値は閾値として予め登録されている。そこで、制御部13は、ステップS100で取得されたスキャン設定を参照し、利用者が指示した原稿の読取解像度が閾値より高い解像度であるか否かを判定する。ステップS125において、利用者が指示した原稿の読取解像度が閾値より高い解像度であると判定された場合、制御部13は、原稿の読取解像度の変更を要求する(ステップS130)。すなわち、制御部13は、操作部80に原稿の読取解像度を閾値以下にするように促すメッセージを表示させ、操作部80による新たな原稿の読取解像度の入力を受け付けてステップS100以降の処理を繰り返す。なお、このメッセージは原稿をADFにセットするように促すものであってもよい。
ステップS125において、利用者が指示した原稿の読取解像度が閾値より高い解像度であると判定されない場合、制御部13は、ステップS170以降の処理(載置原稿を読み取る場合に実行される第2処理)を行って原稿の読み取りを行う。一方、ステップS120において、給紙方法がADFであると判定された場合、そもそも利用者は搬送原稿からの光を読み取ることが可能な読取解像度で指示を行っているので、ステップS125のような原稿の読取解像度が閾値より高いか否かの判定は行われずに、読み取りのための処理が行われる。従って、本実施形態において、載置原稿の読み取りにおける原稿の読取解像度の最大値は、搬送原稿の読み取りにおける原稿の読取解像度の最大値よりも小さい。従って、載置原稿を読み取る場合は、搬送原稿を読み取る場合よりも、原稿面に垂直な方向への原稿のずれによる影響が少ない方法で読取が行われることになる。このため、搬送装置と原稿台との双方を備えるスキャナーで使用して好適な技術を提供することができる。
すなわち、載置原稿が基準の位置から原稿面に垂直な方向にずれている場合、原稿から原稿台に対し斜めに進む光を読み取るために、原稿面に垂直な方向のずれの分原稿面に水平な方向へずれて読み取られることになる。しかし、読取解像度が低いのであれば、原稿面に水平な方向へのずれが1画素の範囲内に収まることで画像としては、ずれがほぼ現れないようにすることができる。また、後述するように本実施例では、載置原稿が基準の位置から原稿面に垂直な方向にずれている場合、当該原稿面に垂直な方向へのずれが生じていない場合と比較して合成処理の難度が高い。このため、高解像度で読み取られた詳細な画像において原稿面に垂直な方向へのずれを修正した状態で合成するのは、低解像度で読み取られた画像と比較して難度が高い。そこで、載置原稿からの光を読み取る場合において利用者の指示を受け付ける解像度の最大値を、搬送原稿からの光を読み取る場合において利用者の指示を受け付ける解像度の最大値よりも小さくすれば、難度の高い処理が行われることを避けることができる。この結果、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、原稿面に垂直な方向への原稿のずれによる影響が少ない方法で読み取りを行うことができる。
ステップS120において、給紙方法がADFであると判定された場合、制御部13は、ステップS135以降において、搬送原稿を読み取る場合の処理である第1処理を実行する。具体的には、制御部13は、光電変換素子における解像度を最高解像度Aとして合成マークを測定する(ステップS135)。すなわち、原稿の読み取りを行う前に、制御部13は、第1切替部51(両面スキャンの場合は第2切替部52も対象となる)を制御し、合成マーク板Mを照射位置に配置させる。具体的には、制御部13は、第1切替部51に制御信号を出力し、合成マーク板Mが照射位置に存在し、合成マーク板Mの合成マーク面がZ軸に垂直に向くように第1切替部51を回転させる。合成マーク板Mが照射位置Rに配置されると、制御部13は、第1光源31を制御して合成マーク板Mに光を照射させる。制御部13は、第1スイッチSW11,第2スイッチSW21のそれぞれがオン、オフとなり、このスイッチの設定が光電変換素子1個の周期で繰り返されるように各スイッチを制御する。この結果、第1センサー21が備える複数のラインセンサーから解像度Aで合成マーク板Mを読み取った結果が出力される。
次に、生成部11は、同一位置を読み取る光電変換素子を特定する(ステップS140)。例えば、図5に示す例であれば、生成部11は、第1ラインセンサー21a1の光電変換素子E5,E6と、第2ラインセンサー21a2の光電変換素子E4,E5とが同一位置を読み取る光電変換素子であると特定する。生成部11は、同様の処理を各ラインセンサーについて実施し、同一位置を読み取る光電変換素子を各ラインセンサーについて特定する。
次に、制御部13は、相対位置に応じたn個の光電変換素子によってn個の周期で読み取りを行うように設定する(ステップS145)。すなわち、制御部13は、ステップS140において特定されたn個の光電変換素子が1画素の出力となるように合成を行い、当該位置のn個を含めてn個の周期で合成を行うように第1スイッチおよび第2スイッチを設定する。例えば、図9に示す例において制御部13は、第2ラインセンサー21a2の光電変換素子E4,E5が合成されるように、スイッチを設定する。なお、nが1の場合、ステップS145は実質的にスキップされる。
次に、制御部13は、白レベルおよび黒レベルを設定する(ステップS150)。すなわち、制御部13は、ステップS105において測定された白レベルとステップS110において測定された黒レベルとに基づいて、各光電変換素子の白レベルおよび黒レベルを設定する。具体的には、制御部13は、ステップS105において測定された白レベルとステップS110において測定された黒レベルから、実効検出領域における白レベルと黒レベルの間の強度を測定できるようにゲインを設定する。
図12は、ステップS105において測定された白レベルとステップS110において測定された黒レベルを模式的に示す図であり、測定された白レベルを実線、測定された黒レベルを一点鎖線によって示している。また、この例においてはラインセンサーの一方の端部から数えて1個目の光電変換素子をE1,他方の端部に存在する光電変換素子をEmaxとして示している。本実施形態においては、隣接するラインセンサーにおいて同一の合成マークを読み取った光電変換素子の出力が重ねられ、ラインセンサーの端部に存在する凹伝変換素子の出力は画像データの生成に利用されない。
ここで、画像データの生成に利用される光電変換素子を実効検出領域に存在する光電変換素子と呼ぶ。図12に示す例においては光電変換素子Ea,Eb間の素子が実効検出領域に存在する光電変換素子である。白レベルおよび黒レベルの設定は光電変換素子Ea,Eb間の素子のそれぞれについて行われ、実効検出領域外の光電変換素子については設定が行われない。従って、図12に示す例のようにラインセンサーの端部においてダイナミックレンジが低下する特性を有するラインセンサーにおいて、ダイナミックレンジが低下している端部を除外して読み取ることができる。
次に、制御部13は、原稿を読み取る(ステップS155)。すなわち、制御部13は、第1切替部51(両面スキャンの場合は第2切替部52も対象となる)を制御し、白基準板Wを照射位置に配置させ、第1光源31を制御して光源を点灯させる。また、制御部13は、搬送装置40に対して制御信号を出力し、搬送原稿を搬送経路に沿って搬送する。搬送経路において搬送原稿が照射領域に達すると、制御部13は第1センサー21を制御してリセット等の所定手順を実行して読み取りを行わせる。この結果、第1センサー21から各ラインセンサーでの読み取り結果が順次出力される。なお、原稿の種類によっては、白基準板Wではなく黒基準板Bを照射位置に配置させてもよい。
次に、生成部11は、ステップS155で読み取られた出力を合成する(ステップS160)。すなわち、生成部11は、ステップS140で特定された位置に基づいて光電変換素子のシェーディング補正等の処理後の出力から1ライン分の画像データを生成する処理を各ラインについて実施し、画像データの生成を既定ライン分繰り返すことにより、搬送原稿の読み取り結果を示す画像データを生成する。次に、制御部13は、画像データを出力する(ステップS165)。すなわち、制御部13は、通信部70を介して画像データをコンピューター90に対して出力する。
一方、載置原稿の読み取りが行われる場合も、制御部13はステップS170において白レベルおよび黒レベルを設定するが、ここでの設定において実効検出領域は考慮されない。すなわち、載置原稿の読み取りが行われる場合、合成マークを利用した合成は行われないため、載置原稿の読み取りの場合には実効検出領域が定義されず、制御部13は、ステップS105において測定された白レベルとステップS110において測定された黒レベルとに基づいて、全光電変換素子についての白レベルおよび黒レベルを設定する。
次に、制御部13は、原稿を読み取る(ステップS175)。すなわち、制御部13は、第1光源31を制御して光源を点灯させる。また、制御部13は、副走査装置41に対して制御信号を出力し、第1センサー21、第1光源31、第1光学部61を副走査方向に移動させながら第1センサー21を制御してリセット等の所定手順を実行して読み取りを行わせる。この結果、第1センサー21から各ラインセンサーでの読み取り結果が順次出力される。
次に、生成部11は、ステップS175で読み取られた出力を合成する(ステップS180)。すなわち、生成部11は、各ラインセンサーのシェーディング補正等の処理後の出力を副走査方向に並べてエリア検出画像を取得する。この結果、各ラインセンサーの出力がラインセンサー毎のエリア検出画像として取得された状態になる。そこで、生成部11は、隣接するラインセンサーの各エリア検出画像に基づいて特徴量を特定するなど画像解析をして原稿における同一位置の像を特定する。そして、同一位置の像が重なるように各ラインセンサーのエリア検出画像を合成する。次に、制御部13は、画像データを出力する(ステップS185)。すなわち、制御部13は、通信部70を介して画像データをコンピューター90に対して出力する。
原稿の原稿面に垂直な方向へのずれによる影響は、異なる合成方法を採用することによって異なってくる場合があり、合成マークを利用する合成法は、原稿のずれによる影響が多い方法であると見なすことができる。具体的には、原稿が読み取られる際に原稿が原稿面に垂直な方向にずれる可能性があり、しかもそのずれの量が変動し得る場合、合成マークに基づいて合成を行うことは困難である。原稿が原稿面に垂直な方向にずれており、ずれ量が徐々に変動する部分に合成マークが存在すると、合成マークのみから適正な合成位置を特定するには情報量が不足する可能性が高いからである。そこで、本実施形態においては、搬送原稿を読み取る場合に合成マークを利用して合成し(ステップS135,S160)、載置原稿を読み取る場合に合成マークを利用せずに合成する(ステップS180)構成が採用されている。従って、本実施形態において載置原稿を読み取る場合は、搬送原稿を読み取る場合よりも、原稿面に垂直な方向への原稿のずれによる影響が少ない方法で読取が行われることになる。
さらに、本実施形態は、載置原稿からの光を読み取る場合に、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、長い時間をかける処理を行って画像データを生成させる構成であると見なすこともできる。すなわち、載置原稿からの光を読み取る場合は、載置原稿が基準の位置から原稿面に垂直な方向にずれていることが想定されるため、当該ずれが生じていても適正に合成が行われるように処理を行う必要がある。一方、搬送原稿からの光を読み取る場合、基準の位置から原稿面に垂直な方向へのずれは考慮する必要がないため、単純な手法によって合成を行うことが可能である。
本実施形態であれば、載置原稿の読み取りを行う場合、複数ライン分の出力を蓄積し、エリア検出画像の特徴量に基づいてエリア検出画像が重なる位置を特定する画像処理を行っている。一方、搬送原稿の読み取りを行う場合、合成マークに基づいて同一位置を読み取る光電変換素子が特定されているため、当該光電変換素子同士を重ねることによって合成を行うことができる。従って、各ラインセンサーから出力が得られるとすぐに1ライン分の画像データが生成される。従って、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、長い時間をかける処理を行っているといえる。
さらに、本実施形態においては、第1切替部51(および第2切替部52)により、合成マーク面と、白基準面と、黒基準面とを切り替えて照射位置に配置することができる。この構成によれば、第1切替部51(および第2切替部52)以外の部分、例えば、第1光学部61等を移動させる必要はなく、切替部による切替のみで合成マーク面と、白基準面と、黒基準面とを読み取ることが可能になる。
さらに、本実施形態において、合成マーク板Mは、副走査方向において白基準板Wと黒基準板Bとの間に存在する。すなわち、第1切替部51(第2切替部52も同様)は、図11に示すように、主走査方向に延びる回転軸で回転可能であり、X−Z平面に平行な断面が扇形である。そして、扇形の外周において白基準面、合成マーク面、黒基準面の順(または黒基準面、合成マーク面、白基準面の順)に各面が並んでいる。従って、図11に示す副走査方向(X軸方向)に平行な照射位置Rから見ると、第1切替部51の回転に伴って、照射位置Rに対向する部材が白基準板W,合成マーク板M,黒基準板Bの順(またはこれと逆の順)に切り替わる。
ここで、合成マーク板Mに形成された合成マークは、異なるラインセンサーで共通して読み取られる位置に配置され、ラインセンサーの端部で読み取られるようにラインセンサーのライン方向(主走査方向)に並べられる。また、合成マークは、各光電変換素子で読み取られ、合成マークと合成マークでない部分が区別される必要があるため、上述の線等図形で表現される。このような合成マークにおいては、合成マークの位置が重要であり、合成マーク面が原稿台Tと非平行になるなどして合成マークの位置が設計された位置から主走査方向、副走査方向、Z軸方向のいずれかにずれていると正確に合成を行うことが困難になる場合がある。例えば、Z軸方向にずれていると第1光学部61(および第2光学部62)における被写界深度内で合成マークを読み取ることができない状況が発生し得る。
しかし、本実施形態においては、合成マーク板Mが白基準板Wと黒基準板Bの間に存在している。従って、当該合成マーク板Mが照射位置R付近で副走査方向に移動されることによって白基準板Wおよび黒基準板Bと切り替えられる場合、第1光学部61による切り替えの過程で、合成マーク板Mの合成マーク面が照射位置Rの直線(原稿台の平面)に平行になり得る。従って、合成マーク板Mの第1切替部51への取り付け位置精度が低くても第1切替部51の回転量を調整することにより、合成マークを正確に読み取る位置となるように調整することができる。
一方、第1切替部51を可動範囲の一方の限界まで動作させる(ストッパー51aに接触するまで回転させる)ことによって白基準板Wの白基準面が照射位置に配置され、第1切替部51を可動範囲の他方の限界まで動作させる(ストッパー51aに接触するまで回転させる)ことによって黒基準板Bの黒基準面が照射位置に配置される構成であると、可動範囲の限界まで動作させた状態における切替部の位置、角度、姿勢等が設計的に予定された状態と異なっていたとしても、影響を受けることなくシェーディング測定を行うことができる。また、第1切替部51を可動範囲の一方の限界まで動作させている(ストッパー51aに接触するまで回転させ続けている)ことによって、白基準面や黒基準面の内の読取が行われる位置を固定することができる。すなわち、合成マークと異なり、白基準面および黒基準面は単色の面であるため、位置や角度、姿勢等に影響を受けることなくシェーディング測定や原稿の読み取りを行うことが可能である。
(5)ラインセンサーの数:
本実施形態に係るスキャナー1は、原稿の1ライン分の像を第1光学部61(および第2光学部62)によって分割し、縮小して複数のラインセンサーで検知し、合成することによって1ライン分の画像データを取得している。この構成において、ラインセンサーの数は限定されないが、例えば、原稿の大きさ等の諸々の条件に応じてラインセンサーの数を調整しても良い。
ここでは、1例として原稿がA4サイズである構成を想定する。この構成は、搬送装置40において少なくともA4原稿を搬送可能に構成し、原稿台Tに少なくともA4原稿を載置できるように構成することで実現される。後述するようなA4サイズに応じたラインセンサーの数は、スキャナー1で読み取り可能な最大サイズがA4となる構成におけるラインセンサーの数であっても良いし、A4より大きいサイズを読み取り可能な構成においてA4原稿を読み取る際に利用されるラインセンサーの数であっても良い。
原稿からの光を複数個に分解して光学部を介してラインセンサーに導く構成において、原稿の読取解像度をS、ラインセンサーが備える光電変換素子の解像度をAとすると、第1光学部61(および第2光学部62)における縮小倍率はS/Aが最小である。S/Aよりも小さい縮小倍率になるまで縮小すると、読取解像度Sにおける1画素をラインセンサーの光電変換素子1個でスキャンすることができなくなり、原稿の読取解像度が事実上意味をなさないからである。
従って、光電変換素子の解像度がAであるラインセンサーにおいて、原稿の読取解像度Sを実現するためには、最大限縮小して縮小倍率はS/Aとなり、実際の縮小倍率fはS/A以上である(絶対値が大きい)必要がある。ここで、原稿のライン方向(主走査方向)のサイズをLインチ、1個のラインセンサーにおいて光電変換素子が配置されている部分のライン方向のサイズをdインチと仮定する(図4参照)。また、1個のラインセンサーのライン方向のサイズdインチの中の比率α(<1)に相当する実効検出領域(図12に示す光電変換素子Ea〜Eb)で読取が行われる状態を想定すると、Lインチのサイズの原稿をスキャンするために必要とされるラインセンサーの数はLf/dαである。
第1光学部61において縮小が行われる場合、縮小倍率fの上限は1である。ここで、ラインセンサーの数Lf/dαに対して、ライン方向のサイズLにA4の横サイズである8.3インチ(縦サイズは11.7インチ)を代入し、上限である縮小倍率f=1を代入し、ラインセンサーとして典型的なサイズd=0.72を代入し、比率αとして値α=2/3を代入すると、ラインセンサーの個数が約17個となる。従って、当該17個よりも少ない16個以下のラインセンサーでスキャナーを構成すれば、過度に多数のラインセンサーを使用せずに複数のラインセンサーでA4原稿を読み取るスキャナーを構成することができる。
さらに、個数Lf/dαに対して、ライン方向のサイズLにA3の横サイズである11.7インチ(縦サイズは16.5インチ)を代入し、上限である縮小倍率f=1を代入し、ラインセンサーとして典型的なサイズd=0.72を代入し、比率αとして余裕を持たせた値α=2/3を代入する。さらにA4原稿よりもA3原稿の方が原稿サイズが大きい分、傾きに対する余裕を大きくとるため、A3原稿の場合は余裕を持たせるようにすると、ラインセンサーの個数が約25個となる。従って、当該25個よりも少ない24個以下のラインセンサーでスキャナーを構成すれば、過度に多数のラインセンサーを使用せずに複数のラインセンサーでA3原稿を読み取るスキャナーを構成することができる。
表1および表2は、縮小倍率f、縮小倍率fの最小値fmin、読取解像度S、光電変換素子の解像度A、センサーのサイズd、比率α、実効検出領域dα、原稿横サイズLに具体的な数値を代入し、各数値におけるセンサーの数Lf/dαを示している。表1において原稿横サイズLは8.3(すなわちA4)であり、表2において原稿横サイズLは11.6(すなわちA3)である。なお、表2におけるLf/dα+2/3は、主走査方向の両端(図4に示す矢印Se)に位置するラインセンサーに原稿が傾いていても読み取れるようにするために1/3ずつの余裕を持たせた場合のラインセンサーの個数である。
表1および表2において、数値例1は、上述のようにラインセンサーが約17個になる例である。数値例2〜8は、センサーのサイズd、比率αを固定し、読取解像度Sを固定、光電変換素子の解像度Aを1200dpiまたは2400dpiに固定して縮小倍率を最小値fminから1に変化させた場合のラインセンサーの個数を示している。この例に示すように、縮小倍率fを小さくすれば、ラインセンサーの数を少なくすることができる。
数値例9〜12は、縮小倍率f、読取解像度S、光電変換素子の解像度A、を固定し、センサーのサイズdと比率αを変化させた場合のラインセンサーの個数を示している。数値例13〜15は、読取解像度S、光電変換素子の解像度A、比率αを固定し、センサーのサイズdと縮小倍率fを変化させた場合のラインセンサーの個数を示している。数値例16〜19は、縮小倍率f、読取解像度S、光電変換素子の解像度A、センサーのサイズdを固定し、比率αを変化させた場合のラインセンサーの個数を示している。これらの例に示すように、比率αが大きくなるほどラインセンサーの数を少なくすることができる。また、センサーのサイズdを長くするほどラインセンサーの数を少なくすることができる。
さらに、ラインセンサーのライン方向におけるラインセンサー1個あたりの実効検出領域dαの長さは、0.54インチ以上である構成であっても良い。すなわち、ラインセンサーのライン方向のサイズをdインチ、ラインセンサー中の比率α(<1)に相当する領域で読取が行われる場合、実効検出領域はdαとなる。ラインセンサーの数の式Lf/dαにおいて縮小倍率を上限の1とし、実効検出領域dαを0.54とした場合、LにA4原稿の横サイズを代入すると、ラインセンサーの数が約15個となる。
そして、ラインセンサーで不足無く1ライン分の画像を読取できるようにA4原稿の横の端部を読み取るラインセンサーに余裕を持たせると、ラインセンサーの数が16個となる(表1の数値例9参照)。従って、実効検出領域dαが0.54であれば、ラインセンサーの数が上限数の16個となるため、実効検出領域dαを0.54インチ以上にすれば、16個以下のラインセンサーで1ライン分の画像を不足無く読み取ることが可能になる。なお、以上の関係はA3原稿の横サイズをLとしても同等であり、23個以下のラインセンサーで読み取りが行われる場合、実効検出領域dαが0.54以上であることが好ましい(表2の数値例9参照)。
さらに、ラインセンサーの数は、スキャナー1の小型化に寄与するように決められていても良い。原稿からの光を複数個に分解して第1光学部61(および第2光学部62)を介してラインセンサーに導く構成においては、原稿からの光を縮小してラインセンサーに導くことで1ライン分の読み取りが行われる。なお、上述の第1光学部61(および第2光学部62)は、原稿からの光を縮小してラインセンサーに導く構成であったが、原稿からの光を拡大してラインセンサーに導く構成であっても良い。
そして、光学部における拡大または縮小の倍率をf、原稿のライン方向(主走査方向)のサイズをLインチ、主走査方向のセンサーのサイズをdインチ、各センサーが担当する比率をα(<1)とすると、Lインチのサイズの原稿をスキャンするために必要とされるラインセンサーの数は上述のようにLf/dαである。光学部によって原稿からラインセンサーに達するまでに像が変化する倍率が1であれば縮小、拡大なしで読み取りが行われるが、この場合、複数のラインセンサーを利用する意味も薄れるため、複数のラインセンサーを利用する場合、通常、倍率fは1ではない。
倍率fが1より小さければ原稿の像が縮小され、倍率fが1より大きければ原稿の像が拡大されて読み取りが行われる。一般に倍率1の光路長は短く、拡大または縮小をするならば倍率1の光路よりも光路長が長くなる。従って、小型化を図るためにはできるだけ光路長を短くし、倍率を1に近づけるとよい。しかし、短い光路長で固定されると縮小率や拡大率は1に近い値で固定され、ラインセンサーのライン方向において検出に必要な実効検出領域の長さは固定される。
そして、特定の長さdのラインセンサーを利用することを想定すると、実効検出領域dαの長さが固定された場合、比率αを変化させるとラインセンサーの数が変化する。ラインセンサーの数はLf/dαであるため、比率αが可変の状況においては、ラインセンサーの数が少ないほど比率αが大きくなる。比率αが大きくなると(例えば、αが1に近くなると)、ラインセンサーの設置に際して誤差に対する許容度が低下し、製造難度が高くなり、歩留まりも下降してしまう。しかし、ラインセンサーの数を増やせば比率αを小さくすることができ組み付け自由度に余裕が生じる。
そこで、ラインセンサーの数の増加を許容すれば、光路長が短くて小型化が可能であるとともに、ラインセンサーの組み付け自由度に余裕のあるスキャナー1を提供することができる。具体的には、ラインセンサーの数Lf/dαに対して、ライン方向のサイズLにA4の横サイズである8.3インチ(縦サイズは11.7インチ)を代入し、倍率f=1を代入し、ラインセンサーとして典型的なサイズd=0.72を代入し、比率αとして値α=2/3を代入すると、小数点以下を切り上げてラインセンサーの個数が約18個となる。従って、当該18個以上のラインセンサーでスキャナーを構成すれば、組み付け自由度に余裕がある状況で複数のラインセンサーを組み付けてスキャナーを構成することができる。また、ラインセンサーの数Lf/dαが多くなれば、倍率fを1に近づけることが容易になり、過度に長い光路長で光学部を構成する必要はなくなるため、容易にスキャナーを小型化することができる。
さらに、個数Lf/dαに対して、ライン方向のサイズLにA3の横サイズである11.7インチ(縦サイズは16.5インチ)を代入し、倍率f=1を代入し、ラインセンサーとして典型的なサイズd=0.72を代入し、比率αとして余裕を持たせた値α=2/3を代入すると、小数点以下を切り上げてラインセンサーの個数が約25個となる。従って、当該25個以上のラインセンサーでスキャナーを構成すれば、組み付け自由度に余裕がある状況で複数のラインセンサーを組み付けてスキャナーを構成することができる。また、個数Lf/dαが多くなれば、倍率fを1に近づけることが容易になり、過度に長い光路長で光学部を構成する必要はなくなるため、容易にスキャナーを小型化することができる。
さらに、ラインセンサーのライン方向におけるラインセンサー1個あたりの実効検出領域の長さは、0.48インチ以下である構成であっても良い。すなわち、ラインセンサーの数の式Lf/dαにおいて倍率を1とし、実効検出領域dαを0.48とした場合、LにA4原稿の横サイズを代入すると、ラインセンサーの数が約18個となる。従って、A4原稿の場合、実効検出領域dαを0.48以下にすれば、18個以上のラインセンサーで原稿を読み取ることが可能である。なお、以上の関係はA3原稿の横サイズをLとしても同等であり、実効検出領域dαを0.48以下にすれば、24個以上のラインセンサーで原稿を読み取ることが可能である。
表3においては、数値例2〜6としてA4原稿において実効検出領域dαが0.48以下である場合のラインセンサーの数の例を示しており、数値例7〜12としてA3原稿において実効検出領域dαが0.48以下である場合のラインセンサーの数の例を示している。また、数値例13,14はα=0.5、d=0.72とした場合の例であり、これらの例においては24個以上のラインセンサーでA4原稿を読み取ることが可能であり、33個以上のラインセンサーでA3原稿を読み取ることが可能であることが示されている。
(6)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、本発明の一実施形態にかかるスキャナーは、他の目的にも使用される電子機器である複合機等に備えられていても良い。
さらに、合成マークの態様は各種の態様を採用可能であり、2本の線や他の形状の図形であっても良い。さらに、合成の際には、副走査方向におけるラインセンサーのずれ(傾き等)を解消するように合成されても良い。さらに、原稿の同一位置を読み取った光電変換素子の出力を重ねる場合、一方の画像データと他方の画像データとの統計値(平均値等)が取得されても良いし、両画像のいずれか一方が採用されてもよい。
さらに、図7に示す回路は一例であり、例えば、ノイズ除去回路が省略されたり、ノイズ除去のための他の回路構成が追加されたりしても良い。いずれにしても、個別の光電変換素子の出力を第1スイッチおよび第2スイッチの制御によって任意に組み合わせて合成することができればよい。さらに、上述の実施形態においては、n個の光電変換素子の出力を合成する際に最も端に位置する光電変換素子に対応する回路から出力させていたが、任意の位置の回路から出力させて良い。例えば、1素子目〜3素子目の光電変換素子の出力を合成する際に、1素子目に対応した回路ではなく、2素子目や3素子目に対応したノイズ除去回路から合成結果を出力するように構成されていても良い。
さらに、以上の実施形態のように第1ラインセンサーが出力した第1画像データと第2ラインセンサーが出力した第2画像データとを合成して画像データを生成する手法は、方法の発明や画像データの生成方法の発明としても実現可能である。
また、黒基準板Bや白基準板Wは、少なくとも一方を灰色の灰基準板など他の色の板を用いてもよい。
さらに、切替部の形状は、種々の形状を採用可能である。例えば、白基準板W(あるいは灰基準板等)と合成マーク板Mとの2つのみを切り換えられるようにしてもよい。第1切替部51は搭載せず、原稿台Tに基準板や合成マーク板Mを設け第1ユニットU1が基準板や合成マーク板Mの位置に移動して読み取りを行うようにしてもよい。また、上述の図11に示すように、X−Z平面に平行な断面の形状が扇形である構成の他、X−Z平面に平行な断面の形状が多角形であっても良い。また、合成マーク板M等を切り替えるための機構は回転軸に取り付けられた部材に限定されない。図13は、ローラー510aによってベルトに取り付けられた黒基準板B、合成マーク板M, 白基準板Wを副走査方向に往復移動させる切替部を示す図である。当該切替部によれば、ローラー510aの回転制御により、照射位置Rに配置される部材を、黒基準板B、合成マーク板M, 白基準板Wから選択して切り替えることができる。この場合、ローラー510aが図13の時計回りに回りきった限界で白基準板Wが照射位置Rに配置され、ローラー510aが図13の反時計回りに回りきった限界で黒基準板Bが照射位置Rに配置されるようにすることが望ましい。
さらに、原稿のずれによる影響が少ない方法は、光源が出力する光量が相対的に多い読取方法と、光源からの光が原稿で反射する反射角度が相対的に小さい読取方法との少なくとも一方である構成であっても良い。すなわち、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、光源が出力する光量が相対的に多い読取方法で読み取りが行われてもよい。
この構成は、例えば、図1に示す構成において、制御部13の制御により第1光学部61が出力する光量を変化させることができるように構成され、載置原稿が読み取られる場合には搬送原稿が読み取られる場合よりも光量を小さくする構成等によって実現可能である。光源が出力する光量が多くなると(ただし光量が過度に多い場合は除く)、光量が少ない場合と比較してコントラストの大きい画像が読み取られ、高画質の読み取りを行うことが容易になる。従って、読み取られた画像から合成の基準となる部位を特定しやすくなる。このため、合成マークを用いることができない載置原稿の合成であっても、搬送原稿の読み取りよりも光量が多い状態で画像が読み取られたのであれば、より合成がしやすい状態で読み取りを行うことができる。
また、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、光源からの光が原稿で反射する反射角度が相対的に小さい読取方法で読み取りが行われてもよい。むろん、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、光量が相対的に多く、反射角度が相対的に小さい読取方法で読み取りが行われてもよい。
この構成は、例えば、図1に示すスキャナー1に、第1光源31の原稿Pに対する位置および反射角度β(図3参照)を変化させることが可能な機構が備えられる構成等によって実現可能である。すなわち、制御部13が当該機構を制御することにより、載置原稿からの光を読み取る場合は、搬送原稿からの光を読み取る場合よりも、反射角度が小さくなるように調整する。なお、ここで、反射角度βは、第1光源31が出力する光と、ラインセンサー21aに向けて進行する光との間の角度の1/2(すなわち、第1光源31出力する光が原稿Pで正反射されて反射光となると想定した場合の反射角度)である。
制御部13の制御によって反射角度βが小さくなると、原稿の同一位置に照射される光の向きと、当該同一位置から反射する光の向きが近くなり、被写界深度が深い光学部を容易に形成することが可能になる。従って、光源からの光が原稿で反射する反射角度を相対的に小さくすることにより、原稿のずれが発生したとしても合焦しやすい状況で光を照射することが可能になり、原稿のずれによる影響を少なくすることができる。むろん、載置原稿と搬送原稿とにおいて原稿からの光の反射角度を変化させるための構成は、他にも種々の構成が採用可能であり、載置原稿の読取部と搬送原稿の読取部が別体で構成されても良い。
また、上述の実施形態では、利用者が指定できる原稿の読取解像度は、搬送原稿からの光を読み取る場合に可能な読取解像度に限られているものとしたが、これに限られない。例えば、まず利用者にADFを使用するか原稿台を使用するかを指定させる。そして、その指定がADFであれば搬送原稿からの光を読み取る場合に可能な読取解像度で利用者から読取解像度の指定を受け付ける構成であっても良い。逆に、原稿台を使用する指定であれば、載置原稿からの光を読み取る場合に可能な読取解像度(上述のようにADFが指定されていた場合よりも最大読取解像度は低い)で利用者から読取解像度の指定を受け付ける、というようにしてもよい。このようにすれば、図10のフローチャートのうち、S125とS130を省略できる。
また、読み取りを行って生成した画像データは、コンピューター90に対して出力するほかに、自装置に装着されたUSBメモリ等の記憶媒体に出力して画像データを記憶させたり、印刷機構に出力して画像データを印刷(すなわちコピー)をさせたり、自装置のモニタに表示出力してもよい。あるいは、エリア検出画像をコンピューター90に対して出力し、コンピューター90のドライバプログラム又はアプリケーションプログラムに画像解析を行わせ、合成を行わせることで最終的な画像データを生成させてもよい。この場合、コンピューター90をスキャナの一部とみなすことができる。