JP6920142B2 - 吸収性物品用シート及び吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品の構成部材として好適な吸収性物品用シートに関する。
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の部材として、不織布やパルプからなるシートを用いることが知られている。例えば、特許文献1には、スパンボンド不織布と薄葉紙とが積層されてなり、該スパンボンド不織布面側が肌に接するように配設されている使い捨ておむつ等の衛生材料の表面材が記載されている。特許文献1によれば、薄葉紙を構成するパルプ繊維による吸液力によって、体液が良好に表面材を透過するとされている。
また特許文献2には、芯鞘構造を有しその鞘部が芯部より低融点の熱融着性樹脂の繊維を含有するスパンボンド不織布と、該不織布面に湿式抄紙によって連続又は不連続に積層形成される抄紙層とからなる複合紙が記載されており、該不織布と該抄紙層とは、該スパンボンド不織布の鞘部の低融点熱溶融性樹脂を介して接合している。
特開平05−176954号公報 特開平05−279997号公報
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品には、尿、経血、汗等の体液の吸収性に優れ、排泄された体液を速やかに内部に引き込んで吸収体で保持することが要望される。斯かる要望に応え得る吸収性物品を得るためには、吸収性物品の各種構成部材の役割を考慮し、その役割を十分に果たし得るシート素材を選択することが重要である。例えば、吸収性物品の構成部材の1つである表面シートは、吸収体よりも着用者の肌に近い位置に配され、排泄された体液を最初に受け、着用者の肌と接触する機会が他の構成部材よりも多い。このような表面シートには、吸収性物品の体液吸収性の向上の観点から、体液の引き込み性に優れることが要望されると共に、濡れた状態で肌に触れたときに着用者に不快感を与えないことが要望される。後者の不快感を与えないという特性に関しては特に、表面シートが着用者の肌に触れたときに、着用者に冷たい感触を与えると不快感に繋がる。体液の引き込み性に優れ、且つ濡れた状態で肌と触れても不快感を与え難い吸収性物品用シートが求められている。
従って本発明の課題は、体液の引き込み性に優れ、且つ濡れた状態で肌と触れても不快感を与え難い吸収性物品用シート及びそれを用いた吸収性物品を提供することに関する。
本発明は、第1面及びそれとは反対側に位置する第2面を有し、疎水性繊維及びセルロース系繊維を含む吸収性物品用シートであって、前記セルロース系繊維が、前記第1面側に偏在していると共に、該第1面に露出しており、含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが、前記第1面及び前記第2面共に2.5kW/m以下である吸収性物品用シートである。
また本発明は、前記の本発明の吸収性物品用シートを有する吸収性物品である。
本発明の吸収性物品用シートは、体液の引き込み性に優れ、且つ濡れた状態で肌と触れても不快感を与え難い。
本発明の吸収性物品は、斯かる特性を有する吸収性物品用シートを有するため、体液吸収性及び着用感に優れる。
図1は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向に沿う模式的な断面図である。 図2は、本発明の吸収性物品用シートの製造方法の実施に使用可能な装置(湿式抄紙機)を示す模式図である。 図3は、液透過時間の測定方法の説明図である。
本発明の吸収性物品用シートは、疎水性繊維及びセルロース系繊維を含む。疎水性繊維は相対的に親水性が低く(疎水性が高く)、セルロース系繊維は相対的に親水性が高い(疎水性が低い)。繊維が親水性であるか疎水性であるかは、下記方法で測定される水との接触角に基づいて判断され、該接触角が90度未満であれば親水性、90度以上の場合であれば疎水性である。下記方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。本発明の吸収性物品用シートを構成する疎水性繊維は、水との接触角が好ましくは90度以上であり、セルロース系繊維は、水との接触角が好ましくは90度未満であり親水性繊維である。
<接触角の測定方法>
測定対象(吸収性物品用シート)から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象物から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。斯かる接触角の値が小さいほど、親水性が高いことを意味する。
尚、吸収性物品用シートが吸収性物品の構成部材として用いられており、該吸収性物品用シートを取り出して評価測定する場合において、その構成部材が、接着剤、融着などによって他の構成部材に固定されている場合には、その固定部分を、繊維の接触角に影響を与えない範囲で、コールドスプレーの冷風を吹き付ける等の方法で接着力を除去してから取り出す。この手順は、本願明細書中の全ての測定において共通である。
本発明の吸収性物品用シートは、疎水性繊維とそれよりも親水性が高いセルロース系繊
維(親水性繊維)とを含んで構成されているところ、これらの繊維はシート全体に均一に分布しておらず、具体的には、セルロース系繊維が第1面側に偏在していると共に、該第1面に露出している。即ち、本発明の吸収性物品用シートの第2面側には疎水性繊維が偏在している。
図1には、本発明の吸収性物品用シートの一実施形態である吸収性物品用シート1が示されている。吸収性物品用シート1は、第1面1S1及びそれとは反対側に位置する第2面1S2を有し、疎水性繊維2F及びセルロース系繊維3Fを含んで構成され、且つセルロース系繊維3Fが第1面1S1側に偏在していると共に、第1面1S1に露出している。より具体的には、吸収性物品用シート1は、疎水性繊維2Fを主体とする疎水性繊維層2の片面に、セルロース系繊維3Fを主体とするセルロース系繊維層3が形成された構成を有し、セルロース系繊維層3が第1面1S1を形成している。疎水性繊維層2の一方の面は、その全域が、第1面1S1を形成するセルロース系繊維層3によって被覆されているのに対し、疎水性繊維層2の他方の面は、セルロース系繊維層3が形成されておらず、実質的に疎水性繊維2Fのみが露出しており、吸収性物品用シート1の第2面1S2は、このセルロース系繊維3Fが露出していない疎水性繊維層2の他方の面からなる。但し、本発明においては、他方の面1S2にセルロース系繊維3Fが存在することを除外するものではなく、セルロース系繊維3Fが層を構成しない程度に他方の面1S2に存在していてもよい。
疎水性繊維層2は、好ましくは疎水性繊維2Fを主体として構成される。疎水性繊維層2における疎水性繊維2Fの含有量は、少なくとも50質量%以上であることが好ましく、該含有量は100質量%でもよい。一方、セルロース系繊維層3は、疎水性繊維2Fよりも親水性が高く、好ましくは水との接触角が好ましくは90度未満の親水性繊維であるセルロース系繊維3Fを主体として構成され、吸収性物品用シート1において疎水性繊維層2よりも親水性が高い親水性繊維層として機能する。セルロース系繊維層3におけるセルロース系繊維3Fの含有量は、少なくとも50質量%以上であることが好ましく、該含有量は100質量%でもよい。従って、吸収性物品用シート1の好ましい実施形態は、疎水性繊維層2の片面に親水性繊維層たるセルロース系繊維層3が全体的に積層された積層構造を有する。
吸収性物品用シート1の好ましい一実施形態の吸収性物品用シート1は、前述したように、疎水性繊維層2に親水性繊維層3が積層された積層構造を有しているところ、このような積層構造の有無を判断するには、先ず、当該積層構造を構成する各層の「境界」の有無を判別する必要がある。吸収性物品用シートの各層の境界は、その上下厚み方向(面方向と直交する方向)に沿うシート断面の顕微鏡観察により目視で判別する。前記シート断面における繊維の形状や繊維間の空隙、色、厚み、繊維以外の混合物等の存在等から、吸収性物品用シート上下厚み方向でその状態が明らかに異なることで同方向に境界が目視で認められた場合、あるいは同方向で状態に違いが認められなくても同方向を分ける隙間や境界線が認められた場合に、そこを各層の境界と定め、当該吸収性物品用シートは積層構造を有すると判断する。
こうして吸収性物品用シートが積層構造を有すると判断された場合、その積層構造が疎水性繊維層及び親水性繊維層を具備しているか否かは、各層に含まれるセルロース系繊維(親水性繊維)と他の繊維種との判別、その判別に基づく各繊維種の含有比率などに基づいて判断することができる。各層に含まれるセルロース系繊維とその他の多くの繊維種との識別、また識別された繊維の重量や含有比率の分析には、JISL 1030−1(第
1部 繊維鑑別)、JISL 1030−2(第2部 繊維製品の混用率試験方法)の規格を適宜用いることができる。セルロース系繊維以外のその他の繊維種において前記測定方法によって接触角を測定し、接触角が90度以上のものを疎水性繊維とする。各層におけるセルロース系繊維と疎水性繊維との含有比率は前述のJIS方法により求められる。
そして、セルロース系繊維の含有比率がセルロース系繊維以外の繊維の2倍以上である層を「親水性繊維層」とし、疎水性繊維の含有比率がセルロース系繊維その他の親水性繊維の2倍以上である層を「疎水性繊維層」とする。
吸収性物品用シートにおける親水性繊維層(セルロース系繊維層)と疎水性繊維層の坪量は、粘着テープ等により層間剥離させて各層を単離できる場合、それぞれの単位面積あたりの重量を測定し求める。単離できない場合は、吸収性物品用シートの断面積の写真から各層の厚さを測定し、その比率を吸収性物品用シート全体の坪量に掛けて各層の坪量を求める。
また、積層構造を有する吸収性物品用シートにおいて、親水性繊維層、疎水性繊維層のそれぞれの層に含まれるセルロース系繊維、疎水性繊維の坪量は、前述のJIS方法で求めた各繊維の含有比率に各層の坪量を掛けて算出される。
尚、吸収性物品用シートが、その厚み方向(面方向と直交する方向)に沿うシート断面において前記境界が認められない構造である場合、即ち単層構造である場合において、その単層構造におけるセルロース系繊維、疎水性繊維の坪量は、該シート全体の坪量に、前述のJIS方法で求めた各繊維の含有比率を掛けて算出される。
このように、吸収性物品用シート1においては、第1面1S1側が、相対的に親水性が高い(疎水性が低い)セルロース系繊維層3によって形成され、第1面1S1にセルロース系繊維3Fが露出していると共に、第2面1S2側が、相対的に親水性が低い(疎水性が高い)疎水性繊維層2によって形成されており、第2面1S2に疎水性繊維2Fが露出しており、「第1面1S1側が第2面1S2側よりも相対的に親水度が高い」という親水度勾配が厚み方向に付与されている。そのため吸収性物品用シート1は、第2面1S2から第1面1S1への液の引き込み性に優れ強い毛管力を有する。従って、吸収性物品用シート1を吸収性物品の構成部材(例えば表面シート)として使用する場合に、第2面1S2即ち疎水性繊維2Fが偏在している面を着用者の肌側に、第1面1S1即ちセルロース系繊維3Fが偏在している面を非肌側に向けて配置することで、着用者の身体から排泄された尿、経血、汗などの体液は、第2面1S2と接触後に速やかに第1面1S1側に引き込まれるようになり、結果として、第2面1S2に液残りが生じ難く、第2面1S2が濡れた状態で肌に触れることに起因する不快感を着用者に与え難い。
吸収性物品用シート1の特徴の1つとして、疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3とが繊維の絡み合いによって密着している点が挙げられる。即ち、疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3との積層密着形態は、接着剤無しで、主に疎水性繊維層2の疎水性繊維2Fとセルロース系繊維層3のセルロース系繊維3Fとが絡み合うことによってなされている。但し、両者の積層密着形態には、疎水性繊維層2及び/又はセルロース系繊維層3の構成繊維が接着性を帯びている結果として、それら繊維の絡み合いに加えて繊維どうしが互いに接着している形態が包含される。前記の「接着剤無し」の「接着剤」とは、繊維形状をなしていない不定形の一般的な接着剤を意味する。このような、接着剤無しでの疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3との積層密着形態は、後述するように湿式抄紙法を利用することで得られ、具体的には、疎水性繊維層2にセルロース系繊維3Fを含むスラリーを供給してセルロース系繊維層3を形成することで得られる。疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3とが繊維の絡み合いによる密着状態にあるか否かは下記の確認試験により判断される。
<密着状態の確認試験>
まず試料シート(吸収性物品用シート1)の両層の界面において、接着剤が存在しないことを顕微鏡観察によって確認する。
試料シートを5cm四方に裁断し、2つ折りにする。10cm四方のプレート間に折り曲げたシートを挟み、錘を載せ3kPaに加圧し、10秒間静置し、折りを開く。折り方
向は同じ、折り目も同じ位置になるようにこの操作を計3回繰り返す。この折り目がついた5cm四方のシートをもう一枚準備し、これらシートを液体窒素に10秒間浸漬した後、鋭利な剃刀を用いて、折り目に該折り目と直交する方向に切れ目を各シート3カ所入れる(折り曲げ試験)。
次に、前記切れ目の切り込み断面をSEMあるいは光学顕微鏡を用いて観察し、疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3との間の隙間の有無、即ち密着状態を確認する。隙間がある場合、その隙間部分の厚さ方向の隙間距離を測定する。そして、全ての切り込み断面における隙間距離の平均が吸収性物品用シート1の平均厚さの1/2より小さければ、本発明の両層は「密着した状態にある」とし、平均厚さの1/2より大きければ「密着した状態にない」とする。即ち、本発明の両層が密着した状態にあれば、前記折り曲げ試験のような過酷試験においても密着した状態を維持することができるが、密着状態になければ前記折り曲げ試験により隙間距離が大きくなる。また、各層の繊維間距離よりもはるかに大きい吸収性物品用シート1の平均厚みの1/2よりも、隙間距離の平均が大きければ、隙間ができたと容易に判定できる。例えば、各層の中で繊維どうしが強く絡み合って結着する一方で、両層の間での疎水性繊維2Fとセルロース系繊維3Fとの接触や絡み合いが少ない場合などは、両層は密着した状態にないと言える。このような吸収性物品用シート(積層シート)では、局所的には隙間が多く存在し、さらには積層シートにかかる力(吸収性物品の装着状態など)により容易に隙間を形成してしまうと考えられる。
尚、試料シート(吸収性物品用シート1)の面積が10cm四方に満たない場合は、同じ3kPaの加圧条件となるよう、前述した折り曲げを行い、切り込み断面を観察するための切り目の数も同じにして、前記密着状態の確認試験を行う。
前述したように、疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3とが接着剤無しで繊維の絡み合いによって密着していることで、両層2,3の界面における液透過性が向上すると共に、接着剤の使用で懸念される不都合、例えば、吸収性物品用シート1の吸水性や柔軟性の低下などが防止される。仮に、吸収性物品用シート1において疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3とが接着剤によって互いに貼り合わされている場合、疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3との界面における液透過性の低下が懸念され、また、セルロース系繊維層3の低坪量化が困難となる。後者の低坪量化の困難性について説明すると、このような接着剤使用タイプの吸収性物品用シート1の製造方法は、乾燥状態の疎水性繊維層2に、別途製造した乾燥状態のセルロース系繊維層3を重ね合わせて接着剤で固定する工程を有するところ、斯かる工程で使用するセルロース系繊維層3には、その工程中で破断しないようなある程度の強度(紙力)が要求されるため、自ずと、セルロース系繊維層3はある程度以上の坪量を有することが必要となり、例えば坪量1〜7g/m程度の薄手のセルロース系繊維層3を採用することは困難である。即ち、このような低い坪量では、セルロース系繊維の本数が少なく繊維ネットワークの結合点を形成することができない為、ハンドリングするための十分な強度(紙力)が得られない。この点本実施形態のように、吸収性物品用シート1が、疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3とが接着剤無しで繊維の絡み合いによって密着している形態であれば、前述したように湿式抄紙法を利用することで、乾燥状態のセルロース系繊維層3の貼り合わせ工程を経ることなく吸収性物品用シート1を製造することができるため、斯かる貼り合わせ工程では取り扱いが難しい薄手のセルロース系繊維層3、即ちセルロース系繊維層3単体ではシート(紙)として成立しない程度に薄い又は坪量が少ないもの、を採用することが可能となり、結果として吸収性物品用シート1の低坪量化が図られる。
セルロース系繊維層3の坪量は、特に制限されないが、疎水性繊維層2の坪量に比してかなり少ない場合でも、前述した液の引き込み性などの作用効果は奏され得るし、また、セルロース系繊維層3の坪量を少なくすることで、吸収性物品用シート1の液透過性の向上が図られると共に、吸収性物品用シート1の低坪量化が図られ、その低坪量な吸収性物
品用シート1を例えば吸収性物品に適用した場合には、着用感の向上などに繋がり得る。以上を考慮すると、セルロース系繊維層3は、疎水性繊維層2に比して低坪量であることが好ましく、より具体的には、セルロース系繊維層3の坪量と疎水性繊維層2の坪量との比率は、前者/後者として、好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、そして、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.4以下である。
疎水性繊維層2の坪量は、好ましくは5g/m以上、さらに好ましくは8g/m以上、そして、好ましくは25g/m以下、さらに好ましくは15g/m以下である。
セルロース系繊維層3の坪量は、好ましくは0g/m超、さらに好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.5g/m以上、特に好ましくは1g/m以上、そして、好ましくは10g/m以下、さらに好ましくは8g/m以下、より好ましくは7g/m以下、特に好ましくは5g/m以下である。
疎水性繊維層2を構成する疎水性繊維2Fとしては、疎水性の熱可塑性繊維(熱融着繊維)を用いることができる。疎水性繊維層2においては、疎水性繊維2Fの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。疎水性繊維2Fの素材としては、疎水性の熱可塑性樹脂として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。疎水性繊維2Fは、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂(熱可塑性樹脂)を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。疎水性繊維2Fの水との接触角は、好ましくは90度以上、さらに好ましくは100度以上である。
疎水性繊維層2の形態は特に制限されず、例えば、不織布、織布(織物)、編物、紙であり得、また、1枚のシートからなる単層構造でもよく、複数枚のシートの積層構造でもよい。疎水性繊維層2の形態の一例として長繊維不織布を例示でき、その場合、長繊維不織布の主体をなす疎水性繊維2Fは長繊維である。ここでいう「長繊維」とは、30mm以上の繊維長を有する繊維を意味する。特に、繊維長150mm以上のいわゆる連続長繊維であると破断強度が高い長繊維不織布が得られる点で好ましい。尚、前記「長繊維」における繊維長の上限は特に限定されるものではない。また、「長繊維不織布」とは、典型的には、長繊維を熱融着部により間欠的に固定した繊維集合体を具備する不織布のことをいう。一般に、長繊維不織布は、エアスルー不織布などの、短繊維を主体とする不織布(短繊維不織布)に比して強度に優れている。このような長繊維不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの単層不織布、又は長繊維を主体とするスパンボンド層、メルトブローン層などを積層した積層不織布、カード法によるヒートロール不織布等が挙げられ、該積層不織布としては、例えば、スパンボンド−スパンボンド積層不織布(SS不織布)、スパンボンド−スパンボンド−スパンボンド積層不織布(SSS不織布)、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布(SMS不織布)、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS不織布)等が挙げられる。
疎水性繊維層2における疎水性繊維2Fの含有量は、疎水性繊維層2に十分な疎水性を付与する観点から、疎水性繊維層2の全質量に対して、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、また、例えば不織布である疎水性繊維層2の製造段階で必要な滑り性や親疎水性等の特性を付与するための油剤等の添加剤、強度を保持する
ためのバインダー等を含むようにする観点から、好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
セルロース系繊維層3を構成するセルロース系繊維3Fとしては、セルロースを主体とする繊維を用いることができ、例えば衛生品をはじめとする各種用途に用いられているものを特に制限なく用いることができ、より具体的には例えば、天然セルロース繊維、マーセル化セルロース繊維、溶解セルロース繊維及びセルロース繊維誘導体が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリント等の綿パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ、麻パルプ等の非木材パルプ;古紙パルプ等が挙げられる。マーセル化セルロース繊維は、周知の通り、濃アルカリ処理によってアルカリ変性(いわゆるマーセル化)されているセルロース繊維である。溶解セルロース繊維としては、例えば、リヨセル(登録商標)、テンセル(登録商標)、ベンベルグ(登録商標)、ビスコースレーヨン、ベンリーゼ(登録商標)等が挙げられる。セルロース繊維誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、TEMPO触媒酸化セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。セルロース系繊維3Fの水との接触角は、好ましくは70度未満、さらに好ましくは40度未満である。
セルロース系繊維層3の形態は特に制限されず、例えば、不織布、織布(織物)、編物、紙であり得る。セルロース系繊維層3は、典型的には紙であり、公知の湿式抄紙法で形成することができる。但し、セルロース系繊維層3は、吸収性物品用シート1からセルロース系繊維層3が例えば一枚の紙として分離できるほどの厚みや坪量を有している必要は無い。つまり、本発明の吸収性物品用シートにおけるセルロース系繊維層は、疎水性繊維層から引き剥がすなどして分離することが困難であるような、極薄ないし低坪量の層であり得る。
セルロース系繊維層3におけるセルロース系繊維3Fの含有量は、セルロース系繊維層3に十分な親水性を付与する観点から、セルロース系繊維層3の全質量に対して、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、また、例えば紙であるセルロース系繊維層3の製造段階でセルロース系繊維3Fを結着させるバインダー成分や湿潤紙力等の薬剤を含有させる観点から、好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下である。
セルロース系繊維層3には、セルロース系繊維3F以外の他の繊維成分を含有させることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、セルロース系繊維層3には、繊維成分以外の他の成分を含有させることができ、例えば、ポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂、ジアルデヒドデンプン、カイメン、カルボキシメチルセルロースなどの紙力増強剤;地合い向上剤、歩留り向上剤、凝集剤、pH調整剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤が挙げられる。
本発明の吸収性物品用シートは、セルロース系繊維が第1面側に偏在していると共に該第1面に露出していればよく、その層構成は、図1に示す吸収性物品用シート1の如き、疎水性繊維層2とセルロース系繊維層3(親水性繊維層)との積層構造に限定されず、厚み方向(面方向と直交する方向)に沿うシート断面から前記境界が認められない構造(単層構造)であってもよい。このような単層構造の吸収性物品用シートの一例として、第2面から第1面に向かうに従ってセルロース系繊維が漸次増加する形態、換言すれば、第2面から第1面に向かうに従って疎水性繊維が漸次減少する形態が挙げられる。斯かる単層
構造の吸収性物品用シートの一例において、セルロース系繊維の坪量が最も多い第1面には、セルロース系繊維のみが露出していてもよく、あるいは、セルロース系繊維に加えてそれよりも少量の疎水性繊維が露出していてもよく、また、セルロース系繊維の坪量が最も少ない第2面には、セルロース系繊維が存在せずに疎水性繊維のみが露出していてもよく、あるいは、疎水性繊維に加えてそれよりも少量のセルロース系繊維が露出していてもよい。
このような、厚み方向にセルロース系繊維の分布量の勾配が付与されている形態は、単層構造の吸収性物品用シートのみならず、積層構造(前記シート断面から前記境界が認められる構造)の吸収性物品用シートにおいてもあり得る。そして、斯かる形態を有する単層構造又は積層構造の吸収性物品用シートは、後述するように湿式抄紙法を利用することで得られる。具体的には例えば、構成繊維として疎水性繊維のみを含む疎水性繊維層に、セルロース系繊維を含むスラリーを供給して成形シート(湿潤シートの単層構造の吸収性物品用シート)を抄造する抄造工程において、該スラリーの供給側とは反対側にサクションボックスなどの吸引手段を配置して該スラリー中の水を吸引脱水するようにし、且つその吸引脱水の吸引力を適宜調整することで、該疎水性繊維層の厚み方向におけるセルロース系繊維の分布量を調整することができる。斯かる吸引脱水の吸引力が強いものであると、セルロース系繊維を疎水性繊維層の厚み方向に貫通させることができ、そうして得られた単層構造又は積層構造の吸収性物品用シートにおいては、その厚み方向全体にセルロース系繊維が存在する。また、このような湿式抄紙法を利用して製造される単層構造又は積層構造の吸収性物品用シートにおいては、疎水性繊維とセルロース系繊維とが絡み合って存在しており、これに起因して、シート全体として厚み方向に高い液透過性を有する。
本発明の吸収性物品用シートは、図1に示す如き積層構造であれ、あるいは前記の単層構造であれ、セルロース系繊維(親水性繊維)が第1面側に偏在している(疎水性繊維が第2面側に偏在している)ことに起因して、第2面側から第1面側への体液の引き込み性、液透過性に優れるという特長を有する。また、本発明の吸収性物品用シートは、含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが、第1面及び第2面共に2.5kW/m以下であり、これに起因して、濡れた状態で肌と触れても不快感を与え難いという特長も有する。
肌が物体に触れたときに冷たく感じる皮膚感覚は、接触冷感と呼ばれる。この接触冷感は、肌が物体に触れたときの、肌から物体への熱の移動量によって異なり、斯かる熱の移動量が多いほど、触れたときに冷たく感じる。接触冷感q−maxは、この肌から物体への熱の移動量の最大値に対応するものであり、接触冷感q−maxの値は、物体に触れたときに冷たく感じる場合ほど大きく、温かく感じる場合ほど小さくなる。本発明の吸収性物品用シートは、濡れた状態具体的には含水率50質量%の状態で、接触冷感q−maxが第1面及び第2面共に2.5kW/m以下であるため、例えば吸収性物品に適用された場合において、第1面及び第2面のうち着用者の肌側に向けられた面(好ましくは、セルロース系繊維が偏在している第1面とは反対側の第2面)が体液と接触して濡れた状態のときに着用者の肌と触れても、着用者に冷たくヒヤッとした不快な感覚を与え難い。吸収性物品用シートの含水率50質量%の状態での第1面及び第2面それぞれの接触冷感q−maxの下限については特に制限は無く、小さければ小さいほど好ましいが、一般的には1kW/m以上である。
接触冷感q−maxの測定は、市販の測定装置を用いて常法に従って測定することができる。具体的には、接触冷感q−maxの測定は、温度センサーの付いた金属板等の熱板に熱を蓄えて該熱板の温度を測定対象より高温に設定しておき、該熱板を測定対象の表面に接触させ、その接触直後に該熱板に蓄えられた熱量が低温側の測定対象に移動する際の熱流量の最大値を測定することによって実施され、該最大値が、当該測定対象の接触冷感
q−maxである。接触冷感q−maxの測定は、市販の測定装置、具体的には例えばカトーテック株式会社製の「KES−F7−II 精密迅速熱物性測定装置」を用いて、下記方法で行うことができる。
<接触冷感q−maxの測定方法>
測定対象(吸収性物品用シート)を室温23℃、相対湿度50%の環境下に2時間以上放置した後、斯かる環境下で前記カトーテック社製KES−F7−IIを用い、カトーテック社製の測定マニュアルに従って測定対象の接触冷感q−maxを測定する。具体的には例えば、測定対象と接触させる前記熱板として、面積9.0cm、質量9.8gの純銅板を用い、該銅板の初期温度を33℃(測定対象の表面温度より10℃高い温度)、該銅板の測定対象への接触圧を1kPaとして、測定対象の測定対象面(吸収性物品用シートの第1面又は第2面)に該銅版を接触させ、その接触の瞬間の前記熱流量の値をゼロとして、該熱流量の最大値を測定する。この測定を測定対象面につき5回行い、それら複数の測定値の平均値を、当該測定対象面の接触冷感q−maxとする。
本発明で着目する「含水率50質量%の状態での吸収性物品用シートの接触冷感q−max」は、1つの測定対象(吸収性物品用シート)につき、含水率が50質量%を含む所定の範囲(例えば含水率が約10〜60質量%の範囲)にあって且つ含水率が互いに異なる、複数のサンプルを用意し、各サンプルについて前記方法により第1面及び第2面の接触冷感q−maxを測定して、各面についての「(含水率)−(接触冷感q−max)」のグラフを得ることで求められる。即ち、このグラフから近似曲線を引くことで、当該測定対象の当該面についての、含水率50質量%での接触冷感q−maxが求められる。より具体的には例えば、1つの測定対象(吸収性物品用シート)につき、複数枚のサンプルを用意し、それら複数のサンプルにスプレーにより水を噴霧して含水状態とする。このときのサンプルに対する水の噴霧量は、サンプルどうしで互いに異なるようにする。そして、これら複数の含水状態のサンプルそれぞれについて、その一部を乾燥して絶乾重量を測定すると共に、水噴霧後1分経過後のサンプル重量を測定し、両重量の測定値から、当該サンプルの水噴霧後1分経過時点での含水率を算出する。また、複数のサンプルそれぞれについて、水噴霧後1分経過後に、前記方法により第1面及び第2面それぞれの接触冷感q−maxを測定する。そして、複数のサンプルそれぞれの含水率並びに第1面及び第2面それぞれの接触冷感q−maxをプロットすることで、その複数のサンプルの供給元である測定対象(吸収性物品用シート)についての「(含水率)−(接触冷感q−max)」のグラフが得られる。
吸収性物品用シートの含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxを、第1面及び第2面共に2.5kW/m以下とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、一般に、木材パルプの如きセルロース系繊維(親水性繊維)の含有量が多くなると接触冷感q−maxの値が大きくなる傾向があるので、セルロース系繊維の坪量を、液の引き込み性、透過性に実質的に影響を与えない範囲で、少なくする方法が有効である。また一般に、熱可塑性繊維の如き疎水性繊維の含有量が多くなると、接触冷感q−maxの値が小さくなる傾向がある。
体液の引き込み性を確保すると共に、含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxを前記特定範囲にする観点から、本発明の吸収性物品用シートにおいて、セルロース系繊維の坪量は、好ましくは0.1g/m以上、さらに好ましくは1g/m以上、そして、好ましくは8g/m以下、さらに好ましくは5g/m以下である。
同様の観点から、本発明の吸収性物品用シートにおいて、疎水性繊維の坪量は、好ましくは5g/m以上、さらに好ましくは8g/m以上、そして、好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは15g/m以下である。
前記の各構成繊維の坪量は、吸収性物品用シートが単層構造であるか積層構造であるか
を問わず、該シート全体での当該構成繊維の坪量である。構成繊維の坪量は、前述した方法により算出される。
本発明の吸収性物品用シートにおいて、第1面と第2面とは、共に含水率50質量%の状態で接触冷感q−maxが2.5kW/m以下であることを前提として、接触冷感q−maxが同じでもよく、異なっていてもよい。尤も、本発明の吸収性物品用シートは、セルロース系繊維(親水性繊維)が第1面側に偏在(疎水性繊維が第2面側に偏在)しており、基本的に第1面と第2面とで繊維の構成が異なるので、通常は、含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxも互いに異なる。
また、本発明の吸収性物品用シートにおいては、例えば図1に示す吸収性物品用シート1のように、セルロース系繊維3Fが第1面1S1側に偏在していると共に第1面1S1に露出している(疎水性繊維2Fが第2面1S2側に偏在していると共に第2面1S2に露出している)ことに起因して、第2面1S2側から第1面1S1側への体液の引き込み性、液透過性に優れているところ、斯かる吸収性物品用シート1の特長を活かした吸収性物品における配置は、着用者の排泄した体液が第2面1S2に最初に接触するよう、第2面1S2を着用者の肌側に向けた配置とするのが好ましい。そうすると、吸収性物品用シート1の第2面1S2は、濡れた状態で着用者の肌と接する機会が多くなるから、第2面1S2には、第1面1S1以上に、濡れた状態で着用者の肌に触れても不快感を与え難い特性が要求される。以上を考慮すると、吸収性物品の構成部材として使用された場合に肌側に向けられる、吸収性物品用シートの第2面は、第1面に比して、含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが小さいことが好ましい。この点、本発明の吸収性物品用シートにおいては、接触冷感q−maxの値を大きくする傾向が比較的強いセルロース系繊維は第1面側に偏在し、基本的に第2面側には全く存在しないか、ごく少量が存在する程度であるので、第2面は第1面に比して含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが小さい、という状態になりやすい。
本発明の吸収性物品用シートは、人体から排出される尿、軟便、経血、汗等の体液の吸収に用いられる吸収性物品の構成部材として有用である。本発明の吸収性物品用シートが適用可能な吸収性物品としては、展開型又はパンツ型使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ、失禁パッド等を例示できる。
本発明には、前述した本発明の吸収性物品用シートを有する吸収性物品が包含される。この本発明の吸収性物品の基本構成は、従来のこの種の吸収性物品と同様であり、典型的には、相対的に着用者の肌から近い位置に配される液透過性の表面シート、相対的に着用者の肌から遠い位置に配される液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート、及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収性コアを具備する。斯かる構成の吸収性物品において、本発明の吸収性物品用シートの配置位置は特に制限されないが、該吸収性物品用シートの特長(体液の引き込み性に優れ、且つ濡れた状態で肌と触れても不快感を与え難い)が十分に活かされるようにする観点から、該吸収性物品用シートは、吸収性コアよりも着用者の肌に近い位置に配されるのが好ましく、具体的には例えば、表面シート、吸収性コアの外面を被覆するコアラップシート、吸収性コア(吸収性コアとコアラップシートとからなる吸収体)と表面シートとの間に介在配置されるセカンドシート(サブレイヤー)などとして好適に用いられる。
本発明の吸収性物品用シートを有する吸収性物品において、該吸収性物品用シートは、前述したように、第2面が第1面に比して含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが小さく、該第2面を着用者の肌側に向けて配されているのが好ましい。そうすることで、吸収性物品用シートの第2面が体液と接触して濡れ、その濡れた状態で吸収性物品の着用者の肌に触れても、着用者に冷たくヒヤッとした不快な感覚を与え難くなる。また前
述したように、本発明の吸収性物品用シートは、第2面側から第1面側への体液の引き込み性、液透過性に優れているので、第2面を着用者の肌側に向けて配することは、吸収性物品の液吸収性の向上の点でも有用である。
以下、本発明の吸収性物品用シートの製造方法について、図1に示す積層構造の吸収性物品用シート1の製造方法を例にとって説明する。図2には、本発明の吸収性物品用シートの製造に使用可能な湿式抄紙機30が示されている。湿式抄紙機30は、抄紙網31、スラリー供給装置32、プレスロール35及びヤンキードライヤー37を備えている。湿式抄紙機30の基本的な構成は公知の湿式抄紙機と同じである。
吸収性物品用シート1の製造方法は、疎水性繊維層2にセルロース系繊維3Fを含むスラリーを供給し、抄造により、該疎水性繊維層2の片面にセルロース系繊維層3を部分的に形成させる抄造工程と、該抄造工程を経て得られた吸収性物品用シート1を、所定位置で切断して複数に分割する分割工程とを有する。斯かる製造方法で使用する疎水性繊維層2は、前述した通り、疎水性繊維を主体とする(例えば、構成繊維の全部が疎水性繊維である)シート状物であり、例えばスパンボンド不織布等の長繊維不織布である。より具体的には、吸収性物品用シート1の製造方法は、前記抄造工程で得られた成形シート40の脱水を行う脱水工程と、その脱水後の成形シート40を乾燥させて吸収性物品用シート1を得る乾燥工程と、得られた吸収性物品用シート1を巻き取る巻き取り工程とを具備する。前記抄造工程で得られる成形シート40は、湿潤状態の吸収性物品用シート1であり、これを脱水・乾燥して乾燥状態の成形シート40としたものが、製造目的物たる吸収性物品用シート1である。
湿式抄紙機30においては、図2に示すように、先ず、ロール状に巻回された疎水性繊維層2を連続的に巻き出し、セルロース系繊維層3の積層予定面(吸収性物品用シート1の一方の面1S1となる面)を上に向けて抄紙網31上に載せて一方向に搬送する。そして、その搬送中の抄紙網31上の疎水性繊維層2の上面即ちセルロース系繊維層3の積層予定面に対し、スラリー供給装置32からセルロース系繊維3Fを含むスラリーを供給し、該疎水性繊維層2の上面全体にセルロース系繊維層3を形成させる(抄造工程)。供給されたスラリー中の水は、疎水性繊維層2及び抄紙網31を順次透過して該抄紙網31の下方から流れ落ち、該スラリー中のセルロース系繊維3Fはじめとする繊維成分は、疎水性繊維層2の構成繊維(疎水性繊維2F)に絡まって疎水性繊維層2に留まり、これによって抄紙網31上に、疎水性繊維層2の片面にセルロース系繊維3Fを含むセルロース系繊維層3が積層された構成の成形シート40(湿潤状態の吸収性物品用シート1)が形成される。
湿式抄紙機30においては、図2に示すように、抄紙網31を挟んでスラリー供給装置32側とは反対側にサクションボックス33が配されており、前記抄造工程において該スラリーを抄造して疎水性繊維層2上にセルロース系繊維層3を形成する際に、サクションボックス33によってスラリー中の水を吸引脱水する。このサクションボックス33による吸引脱水における吸引力を高めると、スラリー中のセルロース系繊維3Fを抄紙網31側に偏在させることができ、吸引力や疎水性繊維層2の坪量などの如何によっては、セルロース系繊維3Fを疎水性繊維層2の厚み方向に貫通させることができる。従って、前述した単層構造の吸収性物品用シート、より具体的には、第2面から第1面に向かうに従ってセルロース系繊維が漸次増加する単層構造の吸収性物品用シートを製造する場合には、前記抄造工程が、疎水性繊維層2に供給されたセルロース系繊維3Fを含むスラリー中の水分を吸引脱水する工程を有することが好ましい。
前記抄造工程で得られた成形シート40は、抄紙網31からベルトコンベア34に引き渡されて搬送され、その搬送中に所定の含水率まで脱水される(脱水工程)。湿式抄紙機
30においては、図2に示すように、成形シート40を一対のプレスロール35間に加圧しながら通すことによって脱水工程を実施している。このような脱水方法の他に、吸引によって脱水する方法、加圧空気を吹き付けて脱水する方法等が挙げられる。
前記脱水工程を経た成形シート40は、ベルトコンベア36によってヤンキードライヤー37の近傍へ搬送され、ヤンキードライヤー37の表面に接触されることで乾燥される(乾燥工程)。乾燥工程における乾燥方法は、このようなヤンキードライヤーを用いた方法に制限されず、成形シート40の厚さ及び含水率、乾燥後の含水率等に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱構造体(発熱体)との接触、加熱空気や蒸気(過熱蒸気)の吹き付け、真空乾燥、電磁波加熱、通電加熱等の乾燥方法が挙げられる。また、図2に示す形態では、成形シート40の脱水と乾燥とを別々に行っているが、前述の脱水方法と乾燥方法とを適宜組み合わせて両工程を同時に実施することもできる。このように成形シート40を脱水・乾燥させることで、吸収性物品用シート1を得ることができる。
こうして得られた連続帯状の吸収性物品用シート1は、巻回ロール38によって巻き取られ、ロール状の巻回物とされる(巻き取り工程)。尚、吸収性物品用シート1をロール状に巻き取る前に、必要に応じて、吸収性物品用シート1に対して、クレープ処理などの後処理を施してもよい。
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。例えば、図1に示す吸収性物品用シート1においては、疎水性繊維層2の一方の面の全域がセルロース系繊維層3で被覆されていたが、本発明の効果が損なわれない範囲、具体的には、一定レベルの液の引き込み性、液透過性が確保され、且つ含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが前記特定範囲に収まる範囲であれば、疎水性繊維層2の一方の面の一部のみがセルロース系繊維層3で被覆されていてもよい。前述した本発明の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
<1>
第1面及びそれとは反対側に位置する第2面を有し、疎水性繊維及びセルロース系繊維を含む吸収性物品用シートであって、
前記セルロース系繊維が、前記第1面側に偏在していると共に、該第1面に露出しており、
含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが、前記第1面及び前記第2面共に2.5kW/m以下である吸収性物品用シート。
<2>
含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが、前記第1面及び前記第2面共に1kW/m以上である前記<1>に記載の吸収性物品用シート。
<3>
前記第2面が前記第1面に比して前記接触冷感q−maxが小さい前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品用シート。
<4>
前記疎水性繊維を主体とする疎水性繊維層の片面に、前記セルロース系繊維を主体とするセルロース系繊維層が形成された構成を有し、該疎水性繊維層と該セルロース系繊維層とが、繊維の絡み合いによって密着しており、該セルロース系繊維層が前記第1面を形成している前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<5>
前記疎水性繊維層と前記セルロース系繊維層との密着は、接着剤無しでなされている前記<4>に記載の吸収性物品用シート。
<6>
前記セルロース系繊維が前記第2面に露出している前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<7>
前記セルロース系繊維の坪量が、0.1g/m以上8g/m以下であり、好ましくは1g/m以上であり、そして、好ましくは5g/m以下である前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<8>
前記セルロース系繊維の坪量が、1g/m以上5g/m以下である前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<9>
前記疎水性繊維の坪量が、5g/m以上20g/m以下である前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<10>
前記疎水性繊維の坪量が、8g/m以上15g/m以下である前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<11>
前記疎水性繊維の水との接触角が90度以上、好ましくは100度以上である前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<12>
前記セルロース系繊維の水との接触角が90度未満、好ましくは70度未満、さらに好ましくは40度未満である前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<13>
前記疎水性繊維を主体とする疎水性繊維層の片面に、前記セルロース系繊維を主体とするセルロース系繊維層が形成された構成を有し、
前記セルロース系繊維層の坪量と前記疎水性繊維層の坪量との比率が、前者/後者として、0.05以上0.8以下であり、好ましくは0.1以上、そして、好ましくは0.4以下である前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<14>
前記疎水性繊維を主体とする疎水性繊維層の片面に、前記セルロース系繊維を主体とするセルロース系繊維層が形成された構成を有し、
前記セルロース系繊維層の坪量と前記疎水性繊維層の坪量との比率が、前者/後者として、0.1以上0.4以下である前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<15>
前記疎水性繊維を主体とする疎水性繊維層の片面に、前記セルロース系繊維を主体とするセルロース系繊維層が形成された構成を有し、
前記セルロース系繊維層の坪量が、好ましくは0g/m超、さらに好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.5g/m以上、特に好ましくは1g/m以上、そして、好ましくは10g/m以下、さらに好ましくは8g/m以下、より好ましくは7g/m以下、特に好ましくは5g/m以下である前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<16>
前記疎水性繊維を主体とする疎水性繊維層の片面に、前記セルロース系繊維を主体とするセルロース系繊維層が形成された構成を有し、
前記セルロース系繊維層の坪量が、1g/m以上5g/m以下である前記<1>〜<15>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<17>
前記セルロース系繊維層が、それ単体では紙として成立しない程度に厚みが薄いか又は
坪量が少ない前記<15>又は<16>に記載の吸収性物品用シート。
<18>
前記疎水性繊維が、疎水性の熱可塑性樹脂を含んで構成され、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンからなる群から選択される1種以上であり、
前記ポリオレフィンがポリエチレン及びポリプロピレンを含み、前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートを含み、前記ポリアミドがナイロン6及びナイロン66を含む前記<1>〜<17>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<19>
前記疎水性繊維を主体とする疎水性繊維層の片面に、前記セルロース系繊維を主体とするセルロース系繊維層が形成された構成を有し、
前記疎水性繊維層が長繊維不織布である前記<1>〜<18>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<20>
前記第2面に、前記疎水性繊維とそれよりも少量の前記セルロース系繊維とが露出している前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<21>
前記第1面に、前記セルロース系繊維のみが露出しているか、又は前記セルロース系繊維とそれよりも少量の前記疎水性繊維とが露出している前記<1>〜<20>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
<22>
前記<1>〜<21>のいずれか1項に記載の吸収性物品用シートを有する吸収性物品。
<23>
前記吸収性物品用シートは、前記第2面が前記第1面に比して前記接触冷感q−maxが小さく、該第2面を着用者の肌側に向けて配されている前記<22>に記載の吸収性物品。
<24>
相対的に着用者の肌から近い位置に配される表面シート、相対的に着用者の肌から遠い位置に配される裏面シート、及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収性コアを具備し、
前記吸収性物品用シートは、前記吸収性コアよりも着用者の肌に近い位置に配されている前記<22>又は<23>に記載の吸収性物品。
<25>
前記吸収性コアの外面(肌対向面)を被覆するコアラップシート(肌側コアラップシート)、及び該吸収性コアと前記表面シートとの間に介在配置されるセカンドシートをさらに具備し、
前記表面シート、前記コアラップシート及び前記セカンドシートのうちの少なくとも1つ以上が、前記吸収性物品用シートを含んで構成されている前記<24>に記載の吸収性物品。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1及び2〕
汎用の湿式抄紙機を用いて、吸収性物品用シートを製造した。具体的には、セルロース
系繊維(繊維濃度0.1質量%)と、湿潤紙力剤(商品名「WS−4030」、星光PMC株式会社製)0.5質量%(対セルロース系繊維)とを水中に均一に分散させて、スラリー(紙料)を調製した。前記セルロース系繊維は、叩解機によってフィブリル化され、フリーネスが650mLとなったものを用いた。次に、ワイヤー目開き径90μm(166メッシュ)の金網抄紙ワイヤー上に、幅(CDの長さ)300mmの疎水性繊維層を載せ、該疎水性繊維層の上面に前記スラリーを散布して、該疎水性繊維層の一方の面の全域に所定坪量のセルロース系繊維層を形成することで成形シートを得た。この成形シートを、サクションボックス、プレスロールを用いて脱水し、さらにヤンキードライヤー表面に圧着させて乾燥させて、幅260mmの吸収性物品用シートを得た。
実施例1及び2の吸収性物品用シートの製造において、セルロース系繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)(商品名「カリブ」、Cariboo Pulp and Paper社製)を用いた。疎水性繊維層としては、ポリプロピレン樹脂からなる疎水性繊維のみを構成繊維とする坪量9g/mのスパンボンド不織布(長繊維不織布)を用いた。湿式抄紙の際の抄紙速度は10m/minとした。
〔比較例1〕
疎水性繊維層を使用せず、前記スラリーを抄紙網の上に散布し(通常の抄紙方法)、主にセルロース系繊維を含む坪量13.5g/mの紙を使用した以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し比較例1とした。
〔比較例2〕
実施例1及び2の吸収性物品用シートの製造において疎水性繊維層として使用した、疎水性繊維のみを構成繊維とする坪量9g/mのスパンボンド不織布をそのまま比較例2とした。
〔比較例3〕
疎水性繊維層及びセルロース系繊維層の坪量を変更した以外は、実施例1及び2と同様にして吸収性物品用シートを製造し比較例3とした。
〔比較例4〕
乾燥状態の2枚のシートを積層したものを比較例4の吸収性物品用シートとした。具体的には、ポリプロピレン樹脂からなる疎水性繊維のみを構成繊維とする坪量15g/mのスパンボンド不織布(長繊維不織布)の片面に、NBKPのみを構成繊維とする坪量10g/mの紙を接着剤無しで積層したものを、比較例4の吸収性物品用シートとした。
〔評価試験〕
各実施例及び比較例の吸収性物品用シートについて、前記方法により含水率50質量%の状態でのシート表面(セルロース系繊維層の表面、疎水性繊維層の表面)の接触冷感q−maxを測定すると共に、下記方法により触感評価及び液透過時間の測定を行った。その結果を下記表1に示す。液透過時間は、シートの液透過性の指標となるもので、液透過時間が短いほど、当該シートは液透過性に優れ高評価となる。
<触感評価の方法>
不織布の風合いの研究に従事する専門パネル5人により、各実施例及び比較例の吸収性物品用シートの触感評価を行った。具体的には、評価対象の吸収性物品用シートを、その第1面を上にしてテーブルの上に置き、各専門パネルが手指で第1面の表面を撫でて触ることで触感を評価した。評価した試験室の雰囲気は23℃、50%RHであった。冷たさを感じずサラッと感が持続するシート(高評価基準シート)の官能値を3.0、逆に最も冷たく感じベタツキ感により不快感が持続する触感が悪いシート(低評価基準シート)の
官能値を1.0として基準を設け、他の実施例と比較例について両基準シートと相対比較しながら、下記評価基準により触感の官能値を0.5刻みで評価した。前記高評価基準シートとしては、比較例2と同じシートであって且つ水分を付与せず23℃、50%RHで2時間以上静置したドライなものを別途用意し、また、前記低評価基準シートとしては、比較例1と同じシートであって且つ水分を付与せず23℃、50%RHで2時間以上静置したドライなものを別途用意した。各吸収性物品用シートにつき3枚を評価し、全パネルの官能値の平均値を、当該評価対象の吸収性物品用シートの触感評価の官能値とした。この官能値が2.5以上であれば冷たさをほぼ感じずサラッと感により触感は快適であるとし、2.5未満であれば冷たさやベタツキ感により触感は不快であると判定した。
(触感評価の官能値の評価基準)
3:冷たさをほとんど感じずサラッと感が続き不快に感じない。
2:触った瞬間の冷たさによりやや不快感を感じるが長続きしない。
1:冷たさとベタツキを感じ不快感が続く。
<液透過時間の測定方法>
図3に示すように、上下端が開口している内径35mmの2本の円筒91,92を、両円筒91,92の軸を一致させて上下に配し、直径55mmの8cm四方の測定対象シートS(吸収性物品用シート)を上下の円筒91,92間に挟み込む。このとき、上側の円筒91の下端及び下側の円筒92の上端に設けられた環状のフランジ部にクリップ93を嵌合させ、上下の円筒91,92を連結させることが好ましい。符号94は、円筒91,92の内径と同径同形状の貫通孔を有するゴム製等のパッキンである。このように、上下の円筒91,92で測定対象シートSを挟持固定した状態で、上側の円筒91内に、図3中符合Wで示す生理食塩水(塩化ナトリウム濃度0.9質量%の水溶液)を40g±1g一度に供給する。供給された生理食塩水は、測定対象シートSを透過するか又は測定対象シートSに吸収されて上側の円筒91内からなくなる。生理食塩水の供給開始時から、生理食塩水の水面が測定対象シートSの表面(上側の円筒91側の面)と同位置になるまでの時間を測定し、その時間を液透過時間とする。測定は3回行い、その平均値を測定値とする。測定対象シートSは、測定の都度新しいものと交換する。
Figure 0006920142
表1に示す通り、各実施例の吸収性物品用シートは、液透過時間が短く、液透過性、体液の引き込み性に優れ、しかも、含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが、両面いずれも2.5kW/m以下であることに起因して、触感評価の官能値が高く、斯かる湿潤状態において実際に手指で触ったときに冷たく不快に感じなかった。
一方、疎水性繊維を含んでいない比較例1の吸収性物品用シートは、液透過時間は短いものの、前記接触冷感q−maxが2.5kW/mを超えており、湿潤状態において実際に手指で触ったときに冷たく不快に感じた。
また、セルロース系繊維(親水性繊維)を含んでいない比較例2の吸収性物品用シート
は、前記接触冷感q−maxの値が小さく、湿潤状態において実際に手指で触ったときに冷たく不快に感じなかったものの、液透過時間が長く、液透過性、体液の引き込み性に劣る結果となった。
また、比較例3及び4の吸収性物品用シートは、いずれもシート全体の坪量、特にセルロース系繊維層の坪量が大きいことに起因して、前記接触冷感q−maxが第1面及び第2面共に実施例よりも大きくなり、さらには液透過時間も長くなったと推察される。また、比較例3と比較例4との対比から、比較例3のように湿式抄紙によってセルロース系繊維と疎水性繊維との絡み合いを生じさせる方が、単なる乾燥シートの積層よりも、液透過性の向上の点で有利であることがわかる。
1 吸収性物品用シート
1S1 吸収性物品用シートの第1面
1S2 吸収性物品用シートの第2面
2 疎水性繊維層
2F 疎水性繊維
3 セルロース系繊維層
3F セルロース系繊維
30 湿式抄紙機
31 抄紙網
32 スラリー供給装置
33 サクションボックス
34,36 ベルトコンベア
35 プレスロール
37 ヤンキードライヤー
38 巻回ロール
40 成形シート

Claims (8)

  1. 第1面及びそれとは反対側に位置する第2面を有し、疎水性繊維及びセルロース系繊維を含む吸収性物品用シートであって、
    前記セルロース系繊維が、前記第1面側に偏在していると共に、該第1面に露出しており、
    前記疎水性繊維を主体とする疎水性繊維層の片面に、前記セルロース系繊維を主体とするセルロース系繊維層が形成された構成を有し、該セルロース系繊維層が前記第1面を形成しており、
    前記セルロース系繊維層は、前記疎水性繊維層に比して低坪量であり、該セルロース系繊維層の坪量と該疎水性繊維層の坪量との比率は、前者/後者として、0.05以上0.8以下であり、
    前記セルロース系繊維層の坪量は、0.1g/m 以上5g/m 以下であり、
    含水率50質量%の状態での接触冷感q−maxが、前記第1面及び前記第2面共に2.5kW/m以下である吸収性物品用シート。
  2. 前記第2面が前記第1面に比して前記接触冷感q−maxが小さい請求項1に記載の吸収性物品用シート。
  3. 前記疎水性繊維層と前記セルロース系繊維層とが、繊維の絡み合いによって密着しており、該セルロース系繊維層が前記第1面を形成している請求項1又は2に記載の吸収性物品用シート。
  4. 前記セルロース系繊維が前記第2面に露出している請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
  5. 前記セルロース系繊維層の坪量と前記疎水性繊維層の坪量との比率は、前者/後者として、0.05以上0.4以下であり、
    前記疎水性繊維層の坪量は、5g/m 以上15g/m 以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品用シート。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品用シートの製造方法であって、
    疎水性繊維層にセルロース系繊維を含むスラリーを供給し、抄造により、該疎水性繊維層の片面にセルロース系繊維層を部分的に形成させる抄造工程を有する、吸収性物品用シートの製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の吸収性物品用シートを有する吸収性物品。
  8. 前記吸収性物品用シートは、前記第2面が前記第1面に比して前記接触冷感q−maxが小さく、該第2面を着用者の肌側に向けて配されている請求項7に記載の吸収性物品。
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