図9は、従来のコモンレール噴射システムの一例を示す構成図である。
従来、ディーゼルエンジンに用いられる燃料噴射システムとして、図9に示すコモンレール噴射システム100が知られている。このコモンレール噴射システム100は、高圧ポンプ102、コモンレール210、及び複数のインジェクター105(燃料噴射弁)を備えている。
高圧ポンプ102は、燃料タンク101に貯留されている燃料を加圧して高圧燃料とし、コモンレール210に供給(圧送)するものである。詳しくは、高圧ポンプ102の吐出口は、配管103を介してコモンレール210の吸入口213に接続されている。すなわち、高圧ポンプ102は、燃料タンク101内の燃料を加圧して高圧燃料とし、配管103を通して高圧燃料をコモンレール210に供給する。
コモンレール210は、高圧ポンプ102から供給された高圧燃料を、コモンレール本体211の内部空間(後述する図2,3の内部空間212参照)に貯留するものである。また、コモンレール210は、コモンレール本体211に貯留された高圧燃料を、各インジェクター105に分配して供給するものである。詳しくは、コモンレール本体211の外周部には、インジェクター105の数に応じた複数の分配ボア部215が設けられている。分配ボア部215のそれぞれには、コモンレール本体211の内部空間と連通する分配流路(後述する図2,3の分配流路216参照)が形成されている。また、分配ボア部215のそれぞれは、供給配管104によってインジェクター105と接続されている。これにより、コモンレール本体211に貯留された高圧燃料は、分配ボア部215の分配流路及び供給配管104を介して、各インジェクター105に供給される。
インジェクター105のそれぞれは、エンジンの気筒毎に設けられている。インジェクター105のそれぞれは、分配ボア部215の分配流路及び供給配管104を介してコモンレール本体211から供給された高圧燃料を、各気筒の燃焼室に噴射するものである。また、各インジェクター105は、戻り配管106によって、燃料タンク101と接続されている。インジェクター105に供給された燃料のうち、燃焼室に噴射されなかった燃料は、戻り配管106を介して燃料タンク101に戻される。
このように構成されたコモンレール噴射システム100においては、供給配管104が破損した場合等に備え、コモンレール210の各分配ボア部215にフローリミッター230が取り付けられることがある。つまり、フローリミッター230を介して、分配ボア部215と供給配管104とが接続されることがある。これらフローリミッター230は、分配ボア部215の分配流路からコモンレール210の外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合に、分配ボア部215の分配流路からコモンレール210の外部への燃料の流出を停止するものである。これにより、供給配管104が破損した場合等でも、燃料がコモンレール噴射システム100の外部に漏れ出すことを抑制できる。
フローリミッター230を備えたコモンレール噴射システム100を製造する場合、まず、コモンレール210の各分配ボア部215にフローリミッター230を取り付け、コモンレール組立体201を完成させる。そして、このコモンレール組立体201を車体のエンジンルームに取り付ける。その後、コモンレール組立体201、高圧ポンプ102、複数のインジェクター105及び燃料タンク101を配管接続し、コモンレール噴射システム100を完成させる。
図10は、従来のコモンレール組立体を示す全体図である。また、図11は、従来のコモンレール組立体のフローリミッター周辺を断面で示した要部拡大図である。なお、図10は、一部の範囲を断面で示している。また、図10の当該断面では、分配ボア部215の構成が見やすくなるように、フローリミッター230が取り付けられていない状態の分配ボア部215を示している。
コモンレール組立体201は、コモンレール210及び複数のフローリミッター230を備える。また、コモンレール210は、コモンレール本体211と、該コモンレール本体211の外周部に設けられた複数の分配ボア部215を備える。コモンレール本体211には、燃料を貯留する内部空間212が形成されている。また、コモンレール本体211には、内部空間212と連通する吸入口213も形成されている。この吸入口213は、図9で示した様に、配管103を介して高圧ポンプ102と接続される。すなわち、高圧ポンプ102から供給された高圧燃料は、吸入口213を介して内部空間212に流入し、該内部空間212に貯留される。分配ボア部215のそれぞれには、コモンレール本体211の内部空間212と連通する分配流路216が形成されている。また、分配ボア部215のそれぞれは、分配流路216の端部に、フローリミッター230を取り付ける為の雌ネジ217が形成されている。
フローリミッター230は、バルブハウジング240、ブッシュ260、バルブピストン231、及びバネ250を備える。バルブハウジング240には、第1端部241に開口する例えば円筒状の凹部246が形成されている。また、バルブハウジング240には、凹部246の底部と第2端部242とを連通する出口流路245が形成されている。そして、バルブハウジング240は、凹部246と出口流路245との連通箇所に、後述するバルブピストン231の凸部233の先端部が着座するシート部243を有する。また、バルブハウジング240は、第1端部241の外周部に雄ネジ247が形成され、第2端部242の外周部に雄ネジ248が形成されている。雄ネジ247は、コモンレール210の分配ボア部215にフローリミッター230を取り付ける際に用いられる。雄ネジ248は、フローリミッター230に供給配管104を接続する際に用いられる。
ブッシュ260は、バルブハウジング240の凹部246の開口部に設けられている。ブッシュ260は、例えば凹部246に圧入することにより、固定されている。このブッシュ260には、分配ボア部215の分配流路とバルブハウジング240の凹部246とを連通する入口流路261が形成されている。
バルブピストン231は、バルブハウジング240の凹部246に往復動自在に収容されている。このバルブピストン231は、外周面が凹部246の内周面と摺動する、例えば円筒状の摺動部232を備えている。また、バルブピストン231は、摺動部232からシート部243側に突出する凸部233を備えている。すなわち、バルブピストン231が凹部246内をシート部243側へ移動した際、凸部233の先端部がシート部243に着座したとことで、バルブピストン231は停止する。また、バルブピストン231が凹部246内をブッシュ260側へ移動した際、摺動部232の端部がブッシュ260に接触したとことで、バルブピストン231は停止する。
このバルブピストン231には、連通流路235が形成されている。連通流路235は、凹部246内において、摺動部232よりもブッシュ260側の空間と、摺動部232よりもシート部243側の空間とを連通するものである。連通流路235は、例えば、凹部236とオリフィス237とで構成されている。凹部236は、摺動部232におけるブッシュ260側の端部に開口し、凸部233の先端近傍まで延びている。オリフィス237は、凸部233の外周側空間と凹部236とを連通するものである。
バネ250は、バルブピストン231をシート部243から離れる方向に押圧するものである。バネ250は、自然長よりも縮められた状態で、凹部246の底部とバルブピストン231の摺動部232との間に配置されている。
このように構成されたフローリミッター230は、コモンレール210の各分配ボア部215に取り付けられる。詳しくは、フローリミッター230のバルブハウジング240の第1端部241に形成された雄ネジ247を分配ボア部215の雌ネジ217にねじ込むことにより、フローリミッター230が分配ボア部215に取り付けられる。
続いて、コモンレール噴射システムに組み込まれた従来のコモンレール組立体201の動作について説明する。
図12及び図13は、従来のコモンレール組立体のフローリミッター周辺を示す断面図であり、コモンレール組立体の動作を説明するための図である。
高圧ポンプ102からコモンレール本体211の内部空間212に供給された高圧燃料は、分配流路216、入口流路261及び連通流路235を通って、凹部246内における摺動部232よりもシート部243側の空間に流入する。以下、凹部246内における摺動部232よりもシート部243側の空間を、凹部246の出口側空間246aと称する。
インジェクター105から燃料が噴射されていない状態においては、凹部246の出口側空間246aは、高圧燃料に満たされて、該出口側空間246aよりも燃料の流れ方向において上流側となる空間と同等の圧力となる。換言すると、凹部246の出口側空間246aは、内部空間212、分配流路216、入口流路261及び連通流路235に存在する高圧燃料と同等の圧力になる。このため、図11に示すように、バルブピストン231は、バネ250に押圧されて、ブッシュ260と接触した状態となる。
インジェクター105から燃料が噴射されると、インジェクター105に接続された供給配管104内の高圧燃料は、インジェクター105の方へ流れ出す。供給配管104は凹部246の出口側空間246a連通しているため、凹部246の出口側空間246aに存在する高圧燃料もまた、出口流路245を通って供給配管104へ流れ出す。凹部246の出口側空間246aから高圧燃料が流れ出すことにより、当該出口側空間246aの圧力は、コモンレール本体211の内部空間212の圧力よりも低くなる。このため、高圧ポンプ102からコモンレール本体211の内部空間212に供給された高圧燃料は、分配流路216、入口流路261及び連通流路235を通って、凹部246の出口側空間246aに流入する。
ここで、連通流路235のオリフィス237は、凹部246の出口側空間246aへ流入する燃料の流量よりも、当該出口側空間246aから流出する燃料の流量の方が多くなるように設定されている。このため、インジェクター105から燃料が噴射されている間、凹部246の出口側空間246aの圧力は、徐々に低下していく。したがって、凹部246の出口側空間246aと、該出口側空間246aよりも燃料の流れ方向上流側となる空間(凹部236等)との間に、圧力差が発生する。そして、この圧力差に応じた力がバルブピストン231に作用する。このため、図12に示すように、インジェクター105から燃料が噴射されている間、この圧力差に応じてバルブピストン231に作用する力がバネ250の押圧力と釣り合う位置まで、バルブピストン231は、シート部243側へ移動する。以下、凹部246の出口側空間246aと、該出口側空間246aよりも燃料の流れ方向上流側となる空間(凹部236等)との間の圧力差を、圧力差Aと称する。
インジェクター105からの燃料噴射が終了すると、凹部246の出口側空間246aからの燃料の流出も終了する。このため、コモンレール本体211の内部空間212の高圧燃料が凹部246の出口側空間246aに流入することにより、圧力差Aが小さくなっていく。また、圧力差Aの減少に伴って、バルブピストン231がバネ250によってブッシュ260側へ押されていく。そして、最終的には、図11に示すように、バルブピストン231は、ブッシュ260に接触した状態で停止する。
供給配管104が破損した場合等には、凹部246の出口側空間246aから流出する燃料の流量が、インジェクター105の燃料噴射時よりも大きくなる。このため、供給配管104が破損した場合等には、インジェクター105の燃料噴射時よりも、圧力差Aが大きくなる。このため、図13に示すように、バルブピストン231がシート部243側の移動端まで移動し、バルブピストン231の凸部233の先端部がシート部243に着座する。これにより、出口流路245が閉塞され、フローリミッター230から燃料が流出しなくなる。すなわち、フローリミッター230は、閉弁状態となる。なお、本明細書では、バルブピストンがシート部に着座している状態においてバルブピストンにかかるバネの押圧力を、閉弁時荷重と称することとする。換言すると、本明細書では、閉弁状態においてバルブピストンにかかるバネの押圧力を、閉弁時荷重と称することとする。
実施の形態.
以下、本発明に係るコモンレール組立体に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、この実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
図1は、本発明の実施の形態に係るコモンレール組立体を示す全体図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係るコモンレール組立体のフローリミッター周辺を断面で示した要部拡大図である。なお、図1は、一部の範囲を断面で示している。また、図1の当該断面では、分配ボア部15の構成が見やすくなるように、フローリミッター30が取り付けられていない状態の分配ボア部15を示している。
コモンレール組立体1は、コモンレール10及び複数のフローリミッター30を備える。また、コモンレール10は、コモンレール本体11と、該コモンレール本体11の外周部に設けられた複数の分配ボア部15を備える。コモンレール本体11には、燃料を貯留する内部空間12が形成されている。また、コモンレール本体11には、内部空間12と連通する吸入口13も形成されている。この吸入口13は、高圧ポンプに接続された配管の一端が接続される。例えば、図9で示したコモンレール噴射システム100において、従来のコモンレール組立体201に換えて本実施の形態に係るコモンレール組立体1を用いる場合、吸入口13は、配管103と接続される。すなわち、高圧ポンプから供給された高圧燃料は、吸入口13を介して内部空間12に流入し、該内部空間12に貯留される。
分配ボア部15のそれぞれには、コモンレール本体11の内部空間12と連通する分配流路16が形成されている。また、分配ボア部15のそれぞれには、底部18が分配流路16と連通する凹部17が形成されている。なお、分配ボア部15の先端部の外周部に形成された雄ネジ19は、インジェクターに接続された配管と分配ボア部15とを接続する際に用いられるものである。例えば、図9で示したコモンレール噴射システム100において、従来のコモンレール組立体201に換えて本実施の形態に係るコモンレール組立体1を用いる場合、雄ネジ19は、供給配管104と分配ボア部15とを接続する際に用いられる。
フローリミッター30は、分配ボア部15に取り付けられるものである。また、フローリミッター30は、分配ボア部15の分配流路16からコモンレール10の外部へ流出する燃料の流量が規定流量Q以上となった場合に、分配ボア部15の分配流路16からコモンレール10の外部への燃料の流出を停止するものである。本実施の形態においては、フローリミッター30は、分配ボア部15の凹部17に収容されている。すなわち、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、分配ボア部15に、従来のフローリミッター230のバルブハウジング240の一部の機能を持たせている。
詳しくは、フローリミッター30は、シートブロック40、バルブピストン31、及びバネ50を備えている。シートブロック40は、分配ボア部15の凹部17において、バルブピストン31よりも該凹部17の開口部側となる箇所に取り付けられている。このシートブロック40には、バルブピストン31と対向する側の面である第1面41の側から該第1面41の反対側の面である第2面42の側に貫通する出口流路45が形成されている。また、シートブロック40は、バルブピストン31の後述する角部34が着座するシート部43を有している。バルブピストン31の後述する角部34は、シート部43のシート位置44に着座する。シート位置44は、出口流路45の開口部を囲う直径Dの円形状となっている。
なお、本実施の形態では、シートブロック40は、凹部17に圧入されて、該凹部17に固定されている。圧入によってシートブロック40を凹部17に取り付けることにより、シートブロック40と凹部17との間で燃料リークが発生することを確実に防止できる。すなわち、バルブピストン31がシート部43に着座している状態において、分配流路16からコモンレール10の外部への燃料の流出をより確実に停止することができる。ここで、シートブロック40の圧入時にシートブロック40とバルブピストン31とが干渉することと等を防止するため、圧入時にシートブロック40を位置決めできる図示せぬ治具等を用いて、シートブロック40を凹部17に圧入することが好ましい。
また、本実施の形態では、シート部43は、第1面41側から第2面42側に向かって直径が小さくなるテーパ形状となっている。このようなシート部43の形状は、高圧燃料が通る流路を開閉するシート部形状として実績が高い形状である。したがって、シート部43をテーパ形状とすることにより、シート部43にバルブピストン31が着座した際、シート部43とバルブピストン31との間で燃料リークが発生することを確実に防止できる。すなわち、バルブピストン31がシート部43に着座している状態において、分配流路16からコモンレール10の外部への燃料の流出をより確実に停止することができる。
バルブピストン31は、分配ボア部15の凹部17に往復動自在に収容されている。このバルブピストン31は、外周面が凹部17の内周面と摺動する、例えば円筒状の摺動部32を備えている。また、バルブピストン31は、摺動部32からシート部43側に突出する凸部33を備えている。すなわち、バルブピストン31が凹部17内をシート部43側へ移動した際、凸部33の先端に形成された角部34がシート部43のシート位置44に着座したとことで、バルブピストン31は停止する。また、バルブピストン31が凹部17内を底部18側へ移動した際、摺動部32の端部が底部18に接触したとことで、バルブピストン31は停止する。
なお、本実施の形態では底部18をテーパ形状としているが、底部18の形状はこの形状に限定されるものではない。例えば底部18を平坦形状に形成してもよい。また、シート部43のシート位置44に着座する角部34の位置も、凸部33の先端に限定されるものではない。例えば、凸部33の先端部の外周面を、傾斜角度が異なる2つの傾斜面で構成したとする。この場合、2つの傾斜面の境界に段部が形成されることとなる。この段部をシート部43のシート位置44に着座させる構成としてもよい。
このバルブピストン31には、連通流路35が形成されている。連通流路35は、凹部17内において、摺動部32よりも底部18側の空間と、摺動部32よりもシート部43側の空間とを連通するものである。換言すると、連通流路35は、凹部17内において、摺動部32よりも底部18側の空間と、摺動部32よりも該凹部17の開口部側の空間とを連通するものである。連通流路35は、例えば、凹部36とオリフィス37とで構成されている。凹部36は、摺動部32における底部18側の端部に開口し、凸部33の先端近傍まで延びている。オリフィス37は、凸部33の外周側空間と凹部36とを連通するものである。
バネ50は、バルブピストン31をシート部43から離れる方向に押圧するものである。バネ50は、自然長よりも縮められた状態で、バルブピストン31の摺動部32とシートブロック40の第1面41との間に配置されている。
続いて、コモンレール噴射システムに組み込まれた本実施の形態に係るコモンレール組立体1の動作について説明する。なお、以下では、図9で示したコモンレール噴射システム100において、従来のコモンレール組立体201に換えて本実施の形態に係るコモンレール組立体1を用いた場合を例に、コモンレール組立体1の動作を説明する。
図3及び図4は、本発明の実施の形態に係るコモンレール組立体のフローリミッター周辺を示す断面図であり、コモンレール組立体の動作を説明するための図である。
高圧ポンプ102からコモンレール本体11の内部空間12に供給された高圧燃料は、分配流路16及び連通流路35を通って、凹部17内における摺動部32よりもシート部43側の空間に流入する。以下、凹部17内における摺動部32よりもシート部43側の空間を、凹部17の出口側空間17aと称する。
インジェクター105から燃料が噴射されていない状態においては、凹部17の出口側空間17aは、高圧燃料に満たされて、該出口側空間17aよりも燃料の流れ方向において上流側となる空間と同等の圧力となる。換言すると、凹部17の出口側空間17aは、内部空間12、分配流路16及び連通流路35に存在する高圧燃料と同等の圧力になる。このため、図2に示すように、バルブピストン31は、バネ50に押圧されて、凹部17の底部18と接触した状態となる。
インジェクター105から燃料が噴射されると、インジェクター105に接続された供給配管104内の高圧燃料は、インジェクター105の方へ流れ出す。供給配管104は凹部17の出口側空間17aと連通しているため、凹部17の出口側空間17aに存在する高圧燃料もまた、出口流路45を通って供給配管104へ流れ出す。凹部17の出口側空間17aから高圧燃料が流れ出すことにより、当該出口側空間17aの圧力は、コモンレール本体11の内部空間12の圧力よりも低くなる。このため、高圧ポンプ102からコモンレール本体11の内部空間12に供給された高圧燃料は、分配流路16及び連通流路35を通って、凹部17の出口側空間17aに流入する。
ここで、連通流路35のオリフィス37は、凹部17の出口側空間17aへ流入する燃料の流量よりも、当該出口側空間17aから流出する燃料の流量の方が多くなるように設定されている。このため、インジェクター105から燃料が噴射されている間、凹部17の出口側空間17aの圧力は、徐々に低下していく。したがって、凹部17の出口側空間17aと、該出口側空間17aよりも燃料の流れ方向上流側となる空間(凹部36等)との間に、圧力差が発生する。そして、この圧力差に応じた力がバルブピストン31に作用する。このため、図3に示すように、インジェクター105から燃料が噴射されている間、この圧力差に応じてバルブピストン31に作用する力がバネ50の押圧力と釣り合う位置まで、バルブピストン31は、シート部43側へ移動する。以下、凹部17の出口側空間17aと、該出口側空間17aよりも燃料の流れ方向上流側となる空間(凹部36等)との間の圧力差を、圧力差Bと称する。
インジェクター105からの燃料噴射が終了すると、凹部17の出口側空間17aからの燃料の流出も終了する。このため、コモンレール本体11の内部空間12の高圧燃料が凹部17の出口側空間17aに流入することにより、圧力差Bが小さくなっていく。また、圧力差Bの減少に伴って、バルブピストン31がバネ50によって凹部17の底部18側へ押されていく。そして、最終的には、図2に示すように、バルブピストン31は、凹部17の底部18に接触した状態で停止する。
供給配管104が破損した場合等には、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量が、インジェクター105の燃料噴射時よりも大きくなる。このため、供給配管104が破損した場合等には、インジェクター105の燃料噴射時よりも、圧力差Bが大きくなる。このため、図4に示すように、バルブピストン31がシート部43側の移動端まで移動し、バルブピストン31の凸部33の角部34がシート部43のシート位置44に着座する。これにより、出口流路45が閉塞され、フローリミッター30から燃料が流出しなくなる。すなわち、分配ボア部15の分配流路16からコモンレール10の外部への燃料の流出が停止される。換言すると、フローリミッター30は、閉弁状態となる。そして、図4に示す閉弁状態においてバルブピストン31にかかるバネ50の押圧力が、閉弁時荷重となる。
続いて、本実施の形態に係るコモンレール組立体1の組立方法について説明する。なお、以下では、コモンレール組立体1の組立方法のうち、閉弁時荷重の調節方法について説明する。
上述のように、フローリミッター30は、インジェクター105の燃料噴射時には出口流路45を閉塞しないように設計される。そして、フローリミッター30は、供給配管104が破損した場合等、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量がインジェクター105の燃料噴射時よりも大きい規定流量Qとなった際、出口流路45が閉塞されるように設計される。換言すると、分配ボア部15の分配流路16からコモンレール10の外部へ流出する燃料の流量が規定流量Q以上となった際、閉弁状態となってコモンレール10の外部への燃料の流出を停止するように、フローリミッター30は設計される。ここで、上述のように、バルブピストン31の位置は、圧力差Bに応じてバルブピストン31に作用する力と、バネ50の押圧力とによって定まる。すなわち、圧力差Bに応じてバルブピストン31に作用する力がバネ50の閉弁時荷重以上となると、フローリミッター30は閉弁状態となる。したがって、フローリミッター30は、バネ50の閉弁時荷重が規定荷重となるように設計される。
しかしながら、実際に製作されるフローリミッター30においては、バネ50の閉弁時荷重が設計時の規定荷重とは異なることがある。バルブピストン31及びシートブロック40の加工誤差により、フローリミッター30が閉弁状態となった際、バネ50が設けられているバルブピストン31の摺動部32とシートブロック40の第1面41との間の距離が、設計寸法と異なる場合があるからである。このため、実際に製作されるフローリミッター30においては、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量が規定流量Qよりも小さい段階で、フローリミッター30が閉弁状態となり、出口流路45が閉塞される場合がある。また例えば、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量が規定流量Q以上となっているにもかかわらず、フローリミッター30が閉弁状態とならず、出口流路45が閉塞されない場合がある。
ここで、従来のフローリミッター230においては、閉弁状態となって出口流路245を閉塞する際の燃料の流量を調整することができなかった。例えば、出口流路245を閉塞する際の燃料の流量が規定流量Qよりも大きい場合、バネ250の閉弁時荷重を小さくする必要がある。この場合、フローリミッター230が閉弁状態となったときの、凹部246の底部とバルブピストン231の摺動部232との間の距離を大きくする調整が必要となる。すなわち、フローリミッター230が閉弁状態となったときの、バネ250の軸方向長さ(図13における上下方向の長さ)を長くする必要がある。しかしながら、図13からわかるように、従来のフローリミッター230においては、凹部246の底部とバルブピストン231の摺動部232との間の距離は、バルブハウジング240及びバルブピストン231の寸法精度のみによって定まる。すなわち、従来のフローリミッター230においては、凹部246の底部とバルブピストン231の摺動部232との間の距離を組立によって調節できる箇所がない。したがって、従来のフローリミッター230においては、出口流路245を閉塞する際の燃料の流量を調整することができなかった。
一方、本実施の形態に係るフローリミッター30は、以下のように、出口流路45を閉塞する際の燃料の流量を調整することができる。
図5は、本発明の実施の形態に係るフローリミッターにおいて、出口流路を閉塞する際の燃料の流量の調節方法を説明するための図であり、シートブロックの断面図である。なお、図5に示す距離Lは、シートブロック40の第1面41と直交する方向における、シート部43のシート位置44(バルブピストン31が着座する箇所)と第1面41との間の距離である。
本実施の形態に係るフローリミッター30においては、出口流路45を閉塞する際の燃料の流量を調整する際、図5に示すように、第1面41とシート位置44との間の距離Lが異なる複数のシートブロック40を準備する。そして、これらのシートブロック40のうちの1つを凹部17に設置することにより、出口流路45を閉塞する際の燃料の流量を調整することができる。
例えば、図5(a)に示すシートブロック40を凹部17に取り付けた際、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量が規定流量Qよりも小さい段階で、フローリミッター30が閉弁状態となり、出口流路45が閉塞されたとする。この場合、図5(a)に示すシートブロック40を、該シートブロックよりも距離Lの大きい図5(c)に示すシートブロック40に取り替える。これにより、シート位置44がバルブピストン31から離れる分だけ、フローリミッター30が閉弁状態となったときの、バルブピストン31の摺動部32とシートブロック40の第1面41との間の距離を小さくすることができる。すなわち、フローリミッター30が閉弁状態となったときの、バネ50の軸方向長さ(図4における上下方向の長さ)を短くすることができる。これにより、バネ50の閉弁時荷重を大きくすることができる。したがって、図5(a)に示すシートブロック40を図5(c)に示すシートブロック40に取り替えることにより、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量が略規定流量Qとなった段階で、出口流路45を閉塞することができる。
また例えば、図5(a)に示すシートブロック40を凹部17に取り付けた際、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量が規定流量Q以上となっているにもかかわらず、フローリミッター30が閉弁状態とならず、出口流路45が閉塞されないとする。この場合、図5(a)に示すシートブロック40を、該シートブロックよりも距離Lの小さい図5(b)に示すシートブロック40に取り替える。これにより、シート位置44がバルブピストン31に近づく分だけ、フローリミッター30が閉弁状態となったときの、バルブピストン31の摺動部32とシートブロック40の第1面41との間の距離を大きくすることができる。すなわち、フローリミッター30が閉弁状態となったときの、バネ50の軸方向長さ(図4における上下方向の長さ)を長くすることができる。これにより、バネ50の閉弁時荷重を小さくすることができる。したがって、図5(a)に示すシートブロック40を図5(b)に示すシートブロック40に取り替えることにより、凹部17の出口側空間17aから流出する燃料の流量が略規定流量Qとなった段階で、出口流路45を閉塞することができる。
ここで、上述のように出口流路45を閉塞する際の燃料の流量の調整が行われたコモンレール組立体1においては、2つのフローリミッター30のシートブロック40を比較した場合、第1面41とシート位置44との間の距離Lが異なっている場合がある。
なお、出口流路45を閉塞する際の燃料の流量の調整は、コモンレール組立体1の出荷後に行われてもよい。この場合、第1面41とシート位置44との間の距離Lが異なる複数のシートブロック40を準備し、これらのシートブロック40をコモンレール組立体1と共に出荷すればよい。この場合、出荷されるコモンレール組立体1は、1つのフローリミッター30に対して、第1面41とシート位置44との間の距離Lが異なる複数のシートブロック40を有することとなる。このようにコモンレール組立体1を構成することにより、コモンレール組立体1の購入者が、該コモンレール組立体1の購入後に、出口流路45を閉塞する際の燃料の流量を調節することができる。
以上、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、コモンレール本体11及び複数の分配ボア部15を有するコモンレール10と、分配ボア部15のそれぞれに取り付けられたフローリミッター30と、を備えたコモンレール組立体である。フローリミッター30は、分配ボア部15の分配流路16からコモンレール10の外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合に、分配流路16からコモンレール10の外部への燃料の流出を停止する。本実施の形態に係るコモンレール組立体1のコモンレール10の分配ボア部15には、底部18が分配流路16と連通する凹部17が形成されている。また、本実施の形態に係るコモンレール組立体1のフローリミッター30は、バルブピストン31と、シートブロック40と、バネ50とを備えている。バルブピストン31は、凹部17に往復動自在に収容され、外周面が凹部17の内周面と摺動する摺動部32を有する。また、バルブピストン31には、凹部17内において摺動部32よりも底部18側の空間と摺動部32よりも凹部17の開口部側の空間とを連通する連通流路35が形成されている。シートブロック40は、凹部17におけるバルブピストン31も開口部側となる箇所に取り付けられている。また、シートブロック40は、バルブピストン31が着座するシート部43を有している。また、また、シートブロック40には、バルブピストン31と対向する側の面である第1面41の側から該第1面41の反対側の面である第2面42の側に貫通する出口流路45が形成されている。バネ50は、バルブピストン31をシートブロック40から離れる方向に押圧する。そして、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、バルブピストン31がシート部43に着座することにより、出口流路45を閉塞し、分配流路16からコモンレール10の外部への燃料の流出を停止する。
このように、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、コモンレール10の分配ボア部15に従来のフローリミッター230のバルブハウジング240の一部の機能を持たせ、分配ボア部15の凹部17にフローリミッター30を収容している。このため、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、コモンレール10からフローリミッター30が突出しないので、小型化することができる。したがって、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、エンジンレイアウトの自由度を向上させることができる。
また、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、従来のコモンレール組立体201と比べ、部品数を削減することができる。このため、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、従来のコモンレール組立体201と比べ、製造コストを削減することもできる。
また、コモンレール組立体のフローリミッターには、インジェクター105及び供給配管104を介して、エンジンの振動が伝わる(図9参照)。この際、従来のコモンレール組立体201は、フローリミッター230の大部分がコモンレール210から突出しているため、フローリミッター230に作用するモーメントが大きくなる。このため、従来のコモンレール組立体201は、このモーメントにより、フローリミッター230が破損する、フローリミッター230と分配ボア部215との接続箇所から燃料リークする等の課題があった。一方、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、フローリミッター30がコモンレール10から突出しない。このため、エンジンの振動がコモンレール組立体1に伝わっても、フローリミッター30が破損する、フローリミッター30と分配ボア部15との接続箇所から燃料リークする等の課題を解決することもできる。
また、従来のコモンレール組立体201は、フローリミッター230のバルブハウジング240とコモンレール210の分配ボア部215との接続箇所、バルブハウジング240の凹部246とブッシュ260との間、及びバルブハウジング240の凹部246とバルブピストン231の摺動部232との間で、燃料リークの可能性がある。一方、本実施の形態に係るコモンレール組立体1において燃料リークの可能性がある箇所は、分配ボア部15の凹部17とバルブピストン31の摺動部32との間、及び分配ボア部15の凹部17とシートブロック40との間となる。すなわち、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、従来のコモンレール組立体201と比べ、燃料リークが発生する可能性のある箇所を低減することができる。したがって、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、従来のコモンレール組立体201と比べ、安全性を向上させることもできる。
なお、本実施の形態に係るコモンレール組立体1は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、コモンレール10の分配ボア部15の凹部17へのシートブロック40の取り付け構成を、以下のようにしてもよい。
図6は、本発明の実施の形態に係るコモンレール組立体の別の一例のフローリミッター周辺を断面で示した要部拡大図である。
図6に示すコモンレール組立体1においては、コモンレール10の分配ボア部15の凹部17に、シートブロック40の第1面41が接触する段部20が形成されている。このように構成されたコモンレール組立体1においては、段部20にシートブロック40の第1面41を接触させることにより、凹部17内においてシートブロック40を一定の位置に固定できる。すなわち、このように構成されたコモンレール組立体1においては、シートブロック40の位置決め用の治具を用いなくとも、凹部17内においてシートブロック40を一定の位置に固定できる。したがって、このようにコモンレール組立体1を構成することにより、凹部17内でのシートブロック40の位置決めが容易となる。
図7は、本発明の実施の形態に係るコモンレール組立体の別の一例のフローリミッター周辺を断面で示した要部拡大図である。
図7に示すコモンレール組立体1においては、分配ボア部15の凹部17の内周部に、該凹部17の開口部から一定の範囲に渡って雌ネジ21が形成されている。また、シートブロック40の外周部には、雄ネジ46が形成されている。そして、シートブロック40の雄ネジ46を凹部17の雌ネジ21にねじ込むことにより、シートブロック40は、凹部17に取り付けられている。このように構成されたコモンレール組立体1は、凹部17へのシートブロック40の取り付けが容易となる。したがって、このように構成されたコモンレール組立体1は、シートブロック40の取り替えも容易となり、出口流路45を閉塞する際の燃料の流量の調整も容易となる。なお、凹部17内でのシートブロック40の位置決めは、図示せぬ治具を用いて行ってもよいし、図6で示した段部20を用いて行ってもよい。
図8は、本発明の実施の形態に係るコモンレール組立体の別の一例のフローリミッター周辺を断面で示した要部拡大図である。
図8に示すように、コモンレール10の分配ボア部15には、該分配ボア部15の雄ネジ19に、ナット60の雌ネジ62をねじ込むことにより、供給配管104が接続される。図8に示すコモンレール組立体1は、このナット60を利用して、シートブロック40を凹部17に取り付けている。
詳しくは、ナット60の内周部には、内周側へ突出する凸部61が形成されている。また、供給配管104の外周部には、外周側へ突出する鍔部104aが形成されている。また、供給配管104の端部は、シートブロック40の端部に当接している。また、シートブロック40の外周部には、分配ボア部15の先端部に接触する鍔部47が形成されている。このため、分配ボア部15の雄ネジ19にナット60の雌ネジ62をねじ込むことにより、ナット60の凸部61が供給配管104の鍔部104aを、シートブロック40側に押圧する。これにより、供給配管104は、シートブロック40を分配ボア部15側に押圧する。シートブロック40には分配ボア部15の先端部に接触する鍔部47が形成されているため、シートブロック40は、供給配管104を介してナット60と分配ボア部15とに挟み込まれることとなり、凹部17に固定される。
図8のようにコモンレール組立体1を構成しても、図7で示したコモンレール組立体1と同様に、ネジ機構を用いてシートブロック40を凹部17に取り付けることができる。このため、図8のようにコモンレール組立体1を構成しても、凹部17へのシートブロック40の取り付けが容易となる。したがって、図8のようにコモンレール組立体1を構成しても、シートブロック40の取り替えが容易となり、出口流路45を閉塞する際の燃料の流量の調整が容易となる。なお、図6で示した段部20を凹部17に形成することにより、ナット60と分配ボア部15とでシートブロック40を挟み込んでもよい。この場合、シートブロック40に鍔部47は必要ない。また、供給配管104を介さず、ナット60と分配ボア部15とで直接、シートブロック40を挟み込んでもよい。