以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1(a)〜(c)は、第1実施形態に係る可燃性ガスを発生する被保持物の保持構造が適用された防火設備としての自動ドア10を概略的に示している。この自動ドア10は、防火区画の一部を構成する特定防火設備であり、火災発生時に火炎が火災側から非火災側(延焼を防止する側)に侵入しない構造となっている。なお、図1(b)における図面上側を火災側とし、図1(b)の図面下側を非火災側として以下説明する。
自動ドア10は、左右一対の縦枠12,12と、縦枠12,12間に架け渡された無目14と、一対の縦枠12,12間で立てられた一対の中方立16,16と、縦枠12,12、中方立16,16間及び無目14に固定された固定壁18と、一対の中方立16,16間の通行開口を開閉する扉体20,20と、を備えている。無目14には、扉体20を開閉駆動するための駆動機構(図示省略)、駆動機構を駆動制御するコントローラ(図示省略)等が収納されている。また、無目14の正面(外面)には、通行開口(ドアウェイ)近傍の通行人を検知するための無目付きセンサ22が設けられている。
本実施形態では、一対の扉体20,20が設けられた引分けの引き戸である自動ドア10を例示しているが、これに限られるものではない。例えば、片引の引き戸として自動ドア10が構成されていてもよい。
扉体20は、鋼板等の金属からなる金属製の枠体20aと、枠体20aに嵌め込まれたガラス板等の透明板20bとを備えている。なお、扉体20は、鋼板製であって、透明板20bを備えない構成であってもよい。
扉体20の枠体20aには、タッチスイッチ24が保持されている。タッチスイッチ24は、通行人による操作により、信号を出力するように構成されている。コントローラは、タッチスイッチ24から出力された信号を受信すると、扉体20を開放動作するように駆動機構を制御する。また、コントローラは、扉体20を閉じる動作中において無目付きセンサ22によって通行人が検知されると、扉体20を開放動作するように駆動機構を制御する。なお、タッチスイッチ24は、接触式のタッチスイッチ24であってもよく、非接触式のタッチスイッチ24であってもよい。扉体20が鋼板製であれば、タッチスイッチ24は、鋼板製のパネルに取り付けられることになる。
タッチスイッチ24は、扉体20の火災側及び非火災側の所定面にそれぞれ配置されている。非火災側のタッチスイッチ24は、火災発生時に高温となり得る所定面の所定の高さ(初期位置)に保持されている被保持物であり、図2に示すように、扉体20との間に熱膨張材26を挟んだ状態で扉体20の正面に対して保持されている。
熱膨張材26は、火災発生時に高温になった扉体20(枠体20a)から伝わる熱により、膨張するように構成された部材である。熱膨張材26としては、例えば、ゴムや樹脂等の基材に熱膨張剤(例えば炭素を主成分としたもの)を配合したものを例示することができる。なお、ここでいう、熱膨張材26は、気温の変化に基づく体積変化がほとんどないか、あるとしてもそれに止まらず、ある特定の温度以上に加熱されると内部反応により急激に膨張する(例えば通常時の2倍以上の体積に膨張する)ものである。したがって、火災時においては、熱膨張材26が膨張するため、扉体20の正面とタッチスイッチ24との間の距離が増加する。すなわち、熱膨張材26は、非火災側となる扉体20の所定面が高温になることによってタッチスイッチ24と所定面との間の距離を増加させる距離増加手段30として機能する。なお、熱膨張材26は、前記特定の温度以上にあれば、膨張し続けるものであってもよい。
タッチスイッチ24は、保持手段32によって扉体20の正面(保持体の側面)に、落下しないように保持されている。保持手段32は、扉体20の所定位置に熱膨張材26を保持させる第1保持部32aと、熱膨張材26にタッチスイッチ24を保持させる第2保持部32bとを有する。第1保持部32aは、扉体20の正面と熱膨張材26との間に配置された第1両面テープによって構成されている。第2保持部32bは、熱膨張材26とタッチスイッチ24との間に配置された第2両面テープによって構成されている。第1両面テープ及び第2両面テープは、火災時のように熱膨張材26が内部反応を生じて膨張する温度に達したとしても、必要最低限の粘着力を維持する。したがって、熱膨張材26が扉体20の正面とタッチスイッチ24との間の距離を増加させるときにおいても、タッチスイッチ24が扉体20の正面から剥がれ落ちないようにタッチスイッチ24を扉体20の正面に所定の高さを保持した状態で維持される。ただし、さらに高温になれば、両面テープは溶融する等して粘着力を失うことはある。両面テープが粘着力を失えば、タッチスイッチ24は落下するが、その時点では、熱膨張材26が既に膨張しているため、扉体20の正面(枠体20aの正面)から離れたところを落下することになる。
第1保持部32aを構成する第1両面テープと、第2保持部32bを構成する第2両面テープとでは、第1両面テープの方が加熱されやすい。このため、第2両面テープよりも第1両面テープの方が先に粘着力を失うことになる。このため、タッチスイッチ24が落下する際には、第2両面テープによってタッチスイッチ24に熱膨張材26が保持された状態で落下する。
熱膨張材26は、火災時等のように枠体20aが高温になるまでは膨張しない。しかも、第1保持部32aと第2保持部32bは互いに別体に構成されている。このため、第2保持部32bには、熱膨張材26からタッチスイッチ24を引き離す力は作用しない。また、第1保持部32aには、扉体20から熱膨張材26を引き離す力は作用しない。したがって、仮に第1保持部32a及び第2保持部32bの粘着力を強力なものにしておかなくても、熱膨張材26が膨張しようとする力によってタッチスイッチ24を離脱させるようなことはない。
なお、図2では、熱膨張材26をタッチスイッチ24及び扉体20間に保持する保持手段32として両面テープが用いられる例を示しているが、これに限られない。図3に示すように、保持手段32の第1保持部32a及び第2保持部32bとして、それぞれ接着剤が用いられていてもよい。この場合、扉体20の正面に熱膨張材26を保持させる第1保持部32aが、接着剤又は両面テープによって構成されていてもよい。また、熱膨張材26にタッチスイッチ24を保持させる第2保持部32bが、接着剤又は両面テープによって構成されていてもよい。すなわち、第1保持部32a及び第2保持部32bの双方が接着剤によって構成されていてもよく、一方のみが接着剤によって構成されていてもよい。
タッチスイッチ24は、少なくとも筐体部分が樹脂製となっている。筐体部分は、例えば通行者によって押圧操作される部分である。火災時のように高温に曝されると、タッチスイッチ24は、可燃性ガスを発生する。従来技術のように積極的に落下させる場合、落下位置でタッチスイッチ24と扉体20の下端部とが接触あるいは当接すると、床面36、タッチスイッチ24、扉体20とで形成される空間(図5参照)に可燃性ガスが蓄積することになる。そして、その濃度がしだいに上昇していき、ついには引火又は発火に至る虞がある。また可燃性ガスの燃焼熱によってタッチスイッチ24が高温に曝され、可燃性ガスが更に発生して燃え広がる虞がある。しかしながら、本実施例においては、熱膨張材26が膨張するまでは、タッチスイッチ24は保持手段32によって保持されるため、タッチスイッチ24が落下することがあるとしても、熱膨張材26が膨張した後であり、タッチスイッチ24は扉体20から離れたところに落ちる。このため、タッチスイッチ24は高温に曝されにくいため、可燃性ガスの発生が抑制され、可燃性ガスへ引火等する虞はほとんど無い。すなわち、熱膨張材26、第1両面テープ(第1保持部32a)及び第2両面テープ(第2保持部32b)は、高温となったタッチスイッチ24から発生した可燃性ガスが蓄積可能な場所にタッチスイッチ24が移動することを規制する規制手段38として機能する。
図4(a)〜(d)は、熱膨張材26の配置位置を説明するための図である。図4(a)に示すように、熱膨張材26は、タッチスイッチ24の裏面における4つの角部を含む一部のみに固定されていてもよい。また、図4(b)に示すように、熱膨張材26は、タッチスイッチ24の裏面の全面に固定されていてもよい。また、図4(c)に示すように、熱膨張材26は、タッチスイッチ24の裏面の長手方向における両端部及び中間部に固定されていてもよい。この場合、中間部の熱膨張材26を省略することができる。また、図4(d)に示すように、熱膨張材26は、タッチスイッチ24の裏面における長手方向の端部以外の場所にのみ配置されていてもよい。図4(d)では、熱膨張材26は、長手方向の中央部に1つ設けられる構成を示しているが、長手方向に離間した複数の熱膨張材26が設けられる構成であってもよい。
扉体20とタッチスイッチ24とは、距離増加手段30を介して保持されているため、距離増加手段30の分だけ、扉体20とタッチスイッチ24とは離間しており、扉体20からタッチスイッチ24への熱伝達が低減し、可燃性ガスの発生が抑えられている。また仮にタッチスイッチ24が落下した場合でも、落下位置において扉体20に接触あるいは当接する可能性を低減させることができる。しかしながら、タッチスイッチ24がその落下位置において扉体20に接触あるいは当接する可能性が極めて低くなったとはいえ、ゼロになるわけではない。
図5は、タッチスイッチ24が仮に落下した場合おいて、床面36でバウンドしたことによって、熱膨張材26が扉体20の正面に接触した位置で止まってしまった場合を想定したものである。この場合、高温になっている扉体20側の熱膨張材26の端部が特に高温となり、熱膨張材26は、この部分での膨張率が大きくなる。したがって、この場合、図中の丸印で囲まれた部分が大きく膨張することにより、タッチスイッチ24を扉体20から離れる方向に移動させることができる。したがって、タッチスイッチ24が昇温し難くなって可燃性ガスが発生しにくくなる。したがって、扉体20の下端部の領域に一定以上の可燃性ガスが蓄積されるのを抑制することができる。
図6は、タッチスイッチ24が仮に落下した場合において、床面36でバウンドしたことによって、熱膨張材26が下向きとなって床面36に着地した場合を想定したものである。この場合、高温になっている扉体20側の熱膨張材26の端部が特に高温となり、熱膨張材26は、扉体20側の部分での膨張率が大きくなる。したがって、熱膨張材26は、やはり、タッチスイッチ24を扉体20の枠体20aから離れる方向に移動させることができる。したがって、タッチスイッチ24から可燃性ガスが発生しにくくなり、扉体20の下端部の領域に一定以上の可燃性ガスが蓄積されるのを抑制することができる。
図7は、タッチスイッチ24が仮に落下した場合において、床面36でバウンドしたことによって、タッチスイッチ24が下向きとなって着地した場合を想定したものである。この場合、上側に位置する熱膨張材26は、高温になっている扉体20側の端部が特に高温となり、扉体20側の部分(図中の丸印で示す部分)での膨張率が大きくなる。したがって、熱膨張材26は、やはり、タッチスイッチ24を扉体20の枠体20aから離れる方向に移動させることができる。しかも、この場合は、タッチスイッチ24が熱膨張材26で覆われるため、タッチスイッチ24の加熱が抑制され、可燃性ガスを発生しにくい。また、扉体20とタッチスイッチ24との間の隙間を熱膨張材26が埋めることにより、可燃性ガスが溜まる空間を埋めることができ、所定濃度以上の可燃性ガスが局所的に蓄積されるのを抑制することができる。
図8は、扉体20の両側に配置されたタッチスイッチ24の関係を説明するものである。扉体20の両側に配置されたタッチスイッチ24は、親機と子機の関係であって、配線40によって互いに接続される。このとき、扉体20の枠体20aにおける一方側の金属パネル20cに形成された挿通孔20dと、扉体20の枠体20aにおける他方側の金属パネル20eに形成された挿通孔20fとを、互いに位置ずれした関係にしてもよい。こうすれば、火災側の火炎が直接非火災側に出てくることを防止することができる。
以上説明したように、本第1実施形態では、火災発生時にタッチスイッチ24から可燃性ガスが発生することがあったとしても、当該タッチスイッチ24から発生した可燃性ガスが蓄積可能な場所にタッチスイッチ24が移動することが規制される。このため、非火災側においてタッチスイッチ24が燃焼することを防止することができる。
つまり、火災時に非火災側の所定面である扉体20の正面が高温になると、距離増加手段30は、タッチスイッチ24と扉体20の正面との間の距離を増加させる。このとき、タッチスイッチ24が保持手段32によって扉体20の所定位置に保持された状態に維持される。このため、仮に、保持手段32による扉体20へのタッチスイッチ24の保持が解除されて、タッチスイッチ24が脱落することがあったとしても、タッチスイッチ24を扉体20の正面から離れたところに止まらせることができる。したがって、タッチスイッチ24が扉体20の正面からの熱によって加熱されることによる可燃ガスの発生を抑制できる。しかも、タッチスイッチ24が扉体20の正面から離れることにより、可燃性ガスが一定以上の濃度で局所的に蓄積されることを抑制することができる。したがって、タッチスイッチ24が継続して燃焼する虞が無い。また、距離増加手段30は、扉体20の正面が高温になることによってタッチスイッチ24と扉体20の正面との間の距離を増加させる。言い換えると、扉体20の正面が高温になる前の通常時においては、タッチスイッチ24を扉体20の正面に近づけた状態でタッチスイッチ24を保持しておくことができる。したがって、距離増加手段30を設けることによるタッチスイッチ24の保持構造の外観の悪化を防止することができる。
しかも、本実施形態では、扉体20の正面が高温にならない通常時において、扉体20の正面とタッチスイッチ24との間の距離を増加させる方向の力が、両面テープ(又は接着剤)によるタッチスイッチ24の保持状態に作用しない。すなわち、通常時には、熱膨張材26による前記距離を増加させる方向の力の負荷が両面テープ(又は接着剤)にかからない。このため、両面テープ(又は接着剤)による保持力を強力なものにすることなく、タッチスイッチ24の保持構造を実現することができる。また、通常においては、熱膨張材26による力がかからないため、経年変化その他の理由によって両面テープ(又は接着剤)による保持力に変化が生じた場合であっても、両面テープ(又は接着剤)による保持力が残っていれば、タッチスイッチ24が扉体20の正面から脱落し難くすることができる。
距離増加手段30が熱膨張材26によって構成されているため、簡素かつコンパクトな構成でありながら、火災発生時に確実にタッチスイッチ24を移動させることができる。更に、仮にタッチスイッチ24が扉体20の正面の近くに落下することがあったとしても、その場合には熱膨張材26が更に膨張する。これにより、タッチスイッチ24を扉体20の正面から遠ざける(扉体20の正面から移動させるか、タッチスイッチ24を覆うように膨張して、タッチスイッチ24への熱伝達を抑える)ことになるので、扉体20からの熱でタッチスイッチ24が高温になりにくく、また扉体20とタッチスイッチ24との間に可燃性ガスが蓄積される空間ができにくい。このため、可燃性ガスが一定以上の濃度で蓄積されるのを防止できるので、タッチスイッチ24が継続して燃焼するのを防止することができる。
また、熱膨張材26がタッチスイッチ24の少なくとも端部又は角部に配置されている場合には、タッチスイッチ24をバランスよく防火構造物から離すことができる。この態様において、仮にタッチスイッチ24が扉体20の正面の近くに落下した場合、熱膨張材26が扉体20の正面に直接接触することになる。しかしながら、熱膨張材26のうち、扉体20の正面によって加熱された部位が更に膨張するため、より確実にタッチスイッチ24を扉体20正面から遠ざけることができる。
距離増加手段30が第1両面テープ(第1保持部32a)と第2両面テープ(第2保持部32b)とを有し、これら第1両面テープと第2両面テープとが別体に構成されている。このため、タッチスイッチ24が距離増加手段30を介してのみ、非火災側の所定面(扉体20の正面)に対して拘束されることになる。したがって、距離増加手段30がタッチスイッチ24を移動させるときに、所定面によって拘束されることなくスムーズにタッチスイッチ24を移動させることができる。特に、距離増加手段30が熱膨張材26によって構成されているので、熱膨張材26が膨張するときに、第1保持部32aがタッチスイッチ24の移動の障害になることを回避でき、しかも、第2保持部32bによる熱膨張材26に対するタッチスイッチ24の保持を維持することができる。したがって、熱膨張材26をスムーズに膨張させることができる。
また、保持手段32が両面テープ又は接着剤によって構成されているため、タッチスイッチ24に熱膨張材26を容易に取り付けることができるだけでなく、通常時において、タッチスイッチ24が扉体20の正面から突出する量を最小限に抑えることができる。このため見栄えが悪化するのを防止することができる。
本第1実施形態では、扉体20とタッチスイッチ24との間に距離増加手段30として機能する熱膨張材26が挟まれているが、これに限られない。例えば、図9に示すように、熱膨張材26に代えて、ばね部材42及び止め部材44が設けられていてもよい。この場合、タッチスイッチ24を扉体20の正面に保持した状態に維持する保持手段32の第1保持部32a及び第2保持部32bとして、第1両面テープと第2両面テープが用いられていてもよく、接着剤が設けられていてもよい。あるいは、扉体20の正面及びタッチスイッチ24の裏面に形成され、ばね部材42の端部を係止させる凹部又は穴部(図示省略)によって、保持手段32が構成されていてもよい。
ばね部材42及び止め部材44は、扉体20の正面が高温になることによってタッチスイッチ24と扉体20の正面との間の距離を増加させる距離増加手段30として機能する。すなわち、ばね部材42は、タッチスイッチ24が扉体20から遠ざかる方向及び扉体20に近づく方向に伸縮可能に構成されている。ばね部材42は、圧縮コイルばねであってもよく、板ばねであってもよい。
止め部材44は、ばね部材42が縮んだ状態にばね部材42を拘束するように構成されている。止め部材44は、タッチスイッチ24を介してばね部材42を押し縮める構成ではなく、ばね部材42自体に固定された状態で、ばね部材42を縮んだ状態に維持する構成となっている。
この構成では、通常時にばね部材42が押し縮められた状態となっているが、このとき、ばね部材42の弾性力は止め部材44によって受け止められていて、タッチスイッチ24には作用していない。このため、ばね力が、タッチスイッチ24をばね部材42から引き離す力として保持手段32(両面テープ又は接着剤)に作用しない。このため、保持手段32による保持力を強力なものにする必要はない。
また、止め部材44は、例えば、融点の低い接着剤、金属又は樹脂によって構成することができる。したがって、止め部材44は、火災時に扉体20が高温になった場合に、溶融する等して、ばね部材42の拘束を解除する。扉体20が高温になった場合にその熱が止め部材44にも伝わり止め部材44が溶融することにより、ばね部材42は元の長さに復元する。これにより、タッチスイッチ24が扉体20から離れる方向に移動する。つまり、タッチスイッチ24は、保持手段32によってばね部材42を介して扉体20の正面に保持された状態で移動する。なお、ばね部材42が伸びるときにおいても、ばね部材42のばね力は、タッチスイッチ24がばね部材42から引き離されるように保持手段32に作用しない。
距離増加手段30は、ばね部材42に代えて、図10に示すように、バイメタル又は形状記憶合金によって構成された変形可能な部材46によって構成されていてもよい。変形可能な部材46は、火災時のように高温になると、タッチスイッチ24を扉体20から離すように変形する。このときにおいても、変形可能な部材46が変形しようとする力は、タッチスイッチ24を該変形可能な部材46から引き離すように保持手段32に作用しない。
図11に示すように、熱膨張材26は、水等の液体が封入された袋状の部材やガス発生剤が内包された袋状の部材によって構成されていてもよい。この場合の熱膨張材26は、高温に曝されると封入された液体が気化したり、封入されたガス発生剤がガス化することによって膨張する。これにより、タッチスイッチ24が扉体20から離れる方向に移動する。
第1保持部32aは、扉体20と熱膨張材26(距離増加手段30)との間に配置される構成に限られない。例えば、図12に示すように、第1保持部32aは、扉体20からタッチスイッチ24に亘って設けられたビス等の係止部材によって構成されていてもよい。すなわち、第1保持部32aは、扉体20の正面に熱膨張材26及びタッチスイッチ24を保持させる構成となっている。この場合、第2保持部32bは、熱膨張材26にタッチスイッチ24を保持させる構成となる。
第1保持部32aは、火災時等に高温になるとタッチスイッチ24に係合している部分が、熱膨張材26が膨張し始める温度よりも低温で溶融するように構成されている。これにより、熱膨張材26が膨張し始めるまでに(あるいは同時に)タッチスイッチ24と第1保持部32aとの係合が外れ、タッチスイッチ24は、第2保持部32bによって熱膨張材26に保持された状態で、扉体20から離れる方向に移動することができる。言い換えると、第1保持部32aは、熱膨張材26がタッチスイッチ24を移動させるときに、非火災側の所定面(扉体20の正面)に対するタッチスイッチ24の移動を許容するように構成されている。なお、第1保持部32aにおいて、タッチスイッチ24に係合している部分が溶融する構成に限られるものではなく、タッチスイッチ24において第1保持部32aに係合している部分が溶融することにより、タッチスイッチ24と第1保持部32aとの係合が外れる構成であってもよい。
(第2実施形態)
図13(a)(b)は本発明の第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第1実施形態では、タッチスイッチ24の保持構造について説明したが、第2実施形態では、被保持物としての無目下センサ50の保持構造について説明する。無目下センサ50も、タッチスイッチ24と同様、少なくとも筐体部分が樹脂製となっている。このため、火災時のように高温に曝されると、無目下センサ50は、可燃性ガスを発生する。
無目下センサ50は、図14に示すように、無目14の下面に固定されたステイ52に保持されている。より具体的には、無目14の下面には、非火災側において扉体20の正面から少し離れた位置に、例えば平板状のステイ52が固定されている。無目下センサ50は、ステイ52との間に距離増加手段30としての熱膨張材26を挟んだ状態でステイ52に対して保持されている。すなわち、無目下センサ50は、非火災側の面である所定面に対する所定の位置に保持されている。無目下センサ50は、熱膨張材26に対してステイ52とは反対側に配置されている。このため、無目下センサ50は、熱膨張材26よりも扉体20から離れた側に位置している。火災時に扉体20が高温になった場合にはステイ52も高温になる。これにより、熱膨張材26が膨張し、無目下センサ50は、扉体20から離れる方向に移動する。
熱膨張材26は、第1保持部32aによってステイ52に保持されており、無目下センサ50は、第2保持部32bによって熱膨張材26に保持されている。熱膨張材26に代えて、ばね部材42及び止め部材44が設けられていてもよい。また、距離増加手段30は、バイメタル又は形状記憶合金によって構成された変形可能な部材46によって構成されていてもよい。また、第1保持部32aは、両面テープ又は接着剤によって構成されていてもよく、扉体20からタッチスイッチ24に亘って設けられたビス等の係止部材によって構成されていてもよい。第2保持部32bは、両面テープ又は接着剤によって構成されている。
無目下センサ50は、図15に示すように、ステイ52ではなく、無目14に取り付けられていてもよい。この場合、例えば、無目下センサ50は、第2保持部32b(両面テープ又は接着剤)によって熱膨張材26に保持されている。また無目下センサ50は、第1保持部32aによって無目14及び熱膨張材26に保持されている。第1保持部32aは、無目14から無目下センサ50に亘って設けられたビス等の係止部材によって構成されている。
第1保持部32aは、火災時等に高温になるとタッチスイッチ24に係合している部分が、熱膨張材26が膨張し始める温度よりも低温で溶融するように構成されている。これにより、熱膨張材26が膨張し始めるまでに(あるいは同時に)無目下センサ50と第1保持部32aとの係合が外れる。熱膨張材26は扉体20に近い側の部位(図15中に破線で囲まれた部位)がより膨張するため、無目下センサ50は、扉体20から離れる方向に移動する。したがって、第2保持部32bによって熱膨張材26に保持された状態で熱膨張材26が膨張すると、無目下センサ50を扉体20から離れる方向に移動させることができる。
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態又はその変形例と同様である。
(第3実施形態)
図16(a)(b)は本発明の第3実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第1実施形態では、タッチスイッチ24の保持構造について説明したが、第3実施形態では、扉体20に保持された被保持物としての表示器54の保持構造となっている。表示器54は、樹脂製の部材(例えば外装)を有しているため、火災時のように高温に曝されると、表示器54は、可燃性ガスを発生する。表示器54は、例えば発光体を有していて、発光体を発光させる構成であってもよい。なお、表示器54は扉体20に固定されるのではなく、固定壁18に固定されていてもよい。
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1〜第2実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図17は本発明の第4実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
前記第1〜第3実施形態は、被保持物を所定面から離れる方向に移動させる距離増加手段30を有する構成であった。これに対し、第4実施形態は、距離増加手段30を有しておらず、所定面(扉体20の正面)が高温になった後も、被保持物が所定面に対する所定位置に保持された状態に維持される構成となっている。
具体的には、図17に示すように、第4実施形態の保持構造では、被保持物としてのタッチスイッチ24は、保持板56及び金属等の耐熱性を有するビス57によって扉体20に保持されている。ビス57は、保持板56を扉体20に固定している。保持板56は、金属製又は樹脂製であり、タッチスイッチ24の内側に設けられることにより、火災時においても加熱されにくい。タッチスイッチ24のうち、保持板56と扉体20との間に挟まれた樹脂部分は、火災時に扉体20によって加熱され、可燃性ガスが発生することになるが、この可燃性ガスは拡散され、被保持物の周囲には蓄積しない。そのため当該樹脂部分が炭化することはあっても発火することはない。また、タッチスイッチ24は、保持板56の外周の全体に亘って保持板56に固着されているため、火災時に部分的に溶けることがあったとしても、容易には落下しない。
また、保持板56の下部に支え板58が設けられていてもよい。この支え板58は、保持板56に固定されるとともに、タッチスイッチ24を下から保持している。これにより、タッチスイッチ24がより落下しにくくなっている。
なお、保持板56は、タッチスイッチ24の全体に亘る大きさに限られるものではなく、タッチスイッチ24が溶融しても落下しないようにできるのであれば、一部だけに設けられていてもよい。
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1〜第3実施形態と同様である。
(第5実施形態)
図18は本発明の第5実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第5実施形態に係る保持構造は、第4実施形態と同様、被保持物としてのタッチスイッチ24が火災時においても落下しないようにする規制手段38が設けられたものである。具体的には、規制手段38は、断熱部材60と保持手段32とを含む。断熱部材60は、扉体20の正面(所定面)とタッチスイッチ24との間に配置されている。したがって、断熱部材60は、扉体20の正面からタッチスイッチ24への伝熱を遮断する。断熱部材60自体に、タッチスイッチ24を保持させる粘着性を持たせてもよいが、粘着性を有しないで、保持手段32によってタッチスイッチ24を保持する構成であってもよい。断熱部材60は、火災時に扉体20が高温になることによって溶けない材質で構成されているのが好ましく、例えば、ケイ酸カルシウム板や石膏ボード等で構成することができる。保持手段32は、タッチスイッチ24及び断熱部材60を扉体20に対する所定位置に保持するものであり、例えばビス、接着剤又は両面テープで構成することができる。保持手段32をビスで構成する場合、耐熱性の樹脂等の低熱伝導率の材質で構成するのが好ましい。
この形態では、非火災側が高温になったとしても、断熱部材60により、タッチスイッチ24に扉体20の正面の熱が伝わることが抑制される。このため、タッチスイッチ24から可燃性ガスが発生することを抑制することができる。しかも、タッチスイッチ24から可燃性ガスが発生する温度以上に防火区画側が高温になった場合でも、タッチスイッチ24を扉体20の正面に対する所定の位置に保持する保持手段32が、タッチスイッチ24の保持状態を維持する。つまり、タッチスイッチ24は、防火区画側が高温になった場合にも、その位置にとどまり、落下しない。
しかも、保持手段32が熱伝導率の低い材質で構成されていれば、扉体20の正面の熱が保持手段32を通してタッチスイッチ24に伝わることを防止することができる。したがって、タッチスイッチ24から可燃性ガスが発生することをより起こさせ難くすることができる。ここで、熱伝導率の低い材質は、タッチスイッチ24を構成する材質よりも熱伝導率が低い材質であるのが好ましい。
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1〜第4実施形態と同様である。
(第6実施形態)
図19は本発明の第6実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第6実施形態の保持構造は、距離増加手段30を有するのではなく、非火災側となる面である所定面から離れた位置に被保持物を保持することによって、可燃性ガスが蓄積される場所に被保持物が移動することを規制する規制手段38を備えている。
具体的には、規制手段38は、扉体20の正面とタッチスイッチ24との間に配置されたベース62と、ベース62及びタッチスイッチ24を扉体20に対する所定位置に保持する保持手段32とを含む。ベース62は、タッチスイッチ24を扉体20から離れた位置に配置できるように、例えば、タッチスイッチ24の厚みよりも厚く構成しておくのが好ましい。ベース62は、金属製であっても樹脂製であってもよい。保持手段32は、例えばビス、接着剤又は両面テープで構成することができる。
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1〜第3実施形態と同様である。
(その他の実施形態)
本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記各実施形態では、可燃性ガスを発生する被保持物の保持構造が適用された防火設備としての自動ドア10について説明したが、これに限られるものではない。防火設備としては、例えば、防火シャッター、防火窓、手動の防火扉等の建物に据え付けられる設備であってもよい。