JP6917621B2 - 物体保持構造体及び物体保持方法 - Google Patents

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Description

本発明は、この上に物体を保持させる物体保持面を有する物体保持構造体及びその保持方法に関し、特に、保持される物体との間の接触状態を変化させ得る物体保持面を有する物体保持構造体及びその保持方法に関する。
物体を保持した物体保持面の表面形状を変化させることで互いの接触状態を変化させ、物体保持面上で摩擦により静止していた物体を滑らせたり、物体保持面に吸着させて把持していた物体を滑落させたりすることができる。かかる摩擦や吸着を制御する動作は、例えば、物体を移動させるベルトコンベヤや、物体を把持及び脱離させるロボットハンドなど、多岐の分野での応用が期待されている。
ところで、従来から部材の表面形状(性状)と摩擦力には関連性のあることが知られており、表面形状を変化させて摩擦係数を可変的にスイッチングしようとする摩擦係数可変構造体が提案されている。
例えば、特許文献1では、かかる摩擦係数可変構造体の1つの例として、OA機器等の紙やフィルムなどのシート媒体を送るためのゴムローラなどに用いられ、シート媒体の種類に対応させて摩擦力を変化させ得る摩擦力可変構造体を開示している。詳細には、摩擦係数及び硬度の異なる弾性体を交互に積層し積層方向の面を物体保持面とし、該積層体を積層方向に圧縮や伸張させると物体保持面に凹凸が生じる。これにより、物体保持面には、摩擦係数の大きな部分と小さな部分が交互に凹凸変化してその摩擦係数を連続的に変化させ得るのである。
更に、摩擦は物体同士の凝着状態と密接な関係を有するとされる。例えば、人間の指は柔軟で且つ指紋を有しており、物体への押圧でその粘着状態を大きく変化させ、物体を把持及び脱離させ得る。
例えば、非特許文献1では、人間の指と類似した摩擦特性を有するロボットハンドの開発が重要であることを述べた上で、人間の指の摩擦モデルは硬い平板の上を粘弾性体の球を滑らせる場合と近似して弾性接触であり、いわゆるAmontonsの第2法則が成立しないことを述べている。つまり、接触面積の変化が単純に荷重に比例せず、接触状態の変化の制御が必要となるのである。
特開平7−60889号公報
「人間の手指の摩擦特性の解析」;嶋田明広、韓鉱庸、川村貞夫著;計測自動制御学会論文集Vol.32,No.12,1581−1587(1996)
上記したように、保持される物体との間の接触状態を変化させ得る物体保持面を有する物体保持構造体は、物体の取り扱い、特に、物体の移動などを取り扱う上で有用である、例えば、物体を把持するロボットハンド、各種機械の操作用のグリップ、移動を伴う重量物の固定具や、重さによって物体の搬送路を切り替えるベルトコンベヤなど、非常に多くの分野での適用が期待される。
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、保持される物体との間の接触状態を変化させ得る物体保持面を有する物体部材及びその保持方法を提供することにある。
本発明による物体保持構造体は、保持される物体との間の接触状態を変化させ得る物体保持面を有する物体保持構造体であって、前記物体保持面を有し弾性変形する本体部材と、前記本体部材の前記物体保持面の仮想格子点の下部に埋め込まれた突出片と、を含み、前記物体保持面に沿って一方向に伸張させ前記本体部材の厚さを減じるように変形させたときに、前記突出片が仮想格子点部分を前記物体保持面から突出させるように変形させることを特徴とする。
かかる発明によれば、突出片が仮想格子点部分を物体保持面から突出させその上の物体との接触状態を変化させ、該物体保持面の摩擦係数や付着力などの接触状態を簡便に変化させ得るのである。
上記した物体保持構造体の発明において、前記物体保持面は付着性を有し前記物体保持面の変形により付着力を低下させることを特徴としてもよい。また、前記物体保持面はゴムからなる球体の少なくとも一部の外表面であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、物体保持面に付着し把持された物体を容易に脱離出来るのである。
上記した物体保持構造体の発明において、前記物体保持面と保持される物体との間の摩擦係数が前記物体保持面の変形により変化し得ることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、物体保持面上に物体を容易に配置及び脱離出来るのである。
上記した物体保持構造体の発明において、前記突出片は球体であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、物体保持面の変形を安定的に変化させ得て、接触状態を安定的に変化させ得るのである。
上記した物体保持構造体の発明において、前記仮想格子点には前記突出片を前記物体保持面から露出させる開口部が設けられており、前記突出片は前記開口部の大きさよりも大なる球体であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、物体保持面からの突出片の露出による接触を反映した接触状態の変化を得られるのである。
上記した発明において、前記仮想格子点及び前記突出片の組は前記物体保持面に複数設けられていることを特徴としてもよい。また、前記仮想格子点は前記物体保持面に規則的に配列されて設けられていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、物体保持面の変形を安定的に変化させ得て、接触状態を安定的に変化させ得るのである。
更に、本発明による物体保持方法は、保持される物体との間の接触状態を変化させ得る物体保持面における物体保持方法であって、前記物体保持面を有し弾性変形する本体部材と、前記本体部材の前記物体保持面の仮想格子点の下部に埋め込まれた突出片と、を含む物体保持構造体において、前記物体保持面に沿って一方向に伸張させ前記本体部材の厚さを減じるように変形させ、前記突出片により仮想格子点部分を前記物体保持面から突出させるように変形させ、前記物体保持面の形状を変化させて前記物体との間の接触状態を変化させることを特徴とする。
かかる方法の発明によれば、突出片が仮想格子点部分を物体保持面から突出させその上の物体との接触状態を変化させ、該物体保持面の接触状態を簡便に変化させ得るのである。
上記した物体保持方法の発明において、前記物体保持面は付着性を有し前記物体保持面の変形により付着力を低下させることを特徴としてもよい。また、前記物体保持面はゴムからなる球体の少なくとも一部の外表面であることを特徴としてもよい。かかる方法の発明によれば、物体保持面に付着し把持された物体を容易に脱離出来るのである。
上記した物体保持方法の発明において、前記物体保持面と保持される物体との間の摩擦係数が前記物体保持面の変形により変化し得ることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、物体保持面上に物体を容易に配置及び脱離出来るのである。
上記した物体保持方法の発明において、前記突出片は球体であることを特徴としてもよい。かかる方法の発明によれば、物体保持面の変形を安定的に変化させ得て、接触状態を安定的に変化させ得るのである。
上記した物体保持方法の発明において、前記仮想格子点には前記突出片を前記物体保持面から露出させる開口部が設けられており、前記突出片は前記開口部の大きさよりも大なる球体であり、前記開口部から前記突出片が前記物体保持面を越えて突出することを特徴としてもよい。かかる方法の発明によれば、物体保持面からの突出片の露出による接触を反映した接触状態の変化を得られるのである。
上記した物体保持方法の発明において、前記仮想格子点及び前記突出片の組は前記物体保持面に複数設けられていることを特徴としてもよい。また、前記仮想格子点は前記物体保持面に規則的に配列されて設けられていることを特徴としてもよい。かかる方法の発明によれば、物体保持面の変形を安定的に変化させ得て、接触状態を安定的に変化させ得るのである。
本発明による物体保持構造体の(a)平面図、(b)断面図である。なお、(b)は、(a)のA−A線における断面である。 本発明による物体保持構造体の動作を示す(a)断面図、(b)断面図、(c)グラフである。 本発明による他の物体保持構造体の(a)平面図、(b)断面図、(c)拡大平面図、(d)拡大断面図である。 本発明による他の物体保持構造体の動作を示す(a)断面図、(b)断面図、(c)グラフである。 本発明による物体保持構造体の1つの利用例を示す(a)断面図、(b)写真である。 本発明による物体保持構造体の1つの利用例を示す図である。
本発明者らは、弾性変形する部材表面に沿って延伸ひずみを付加させると、その表面に凹凸構造を発生させこの現れた凹凸構造の形状を該ひずみ量に依存させて変化させ得ることに想到した。これにより、該表面に接触させる相手部材との接触面の組成を大きく変化させ得ることから、接触状態の変化、例えば、部材表面での摩擦力や付着力を変化させるための構成について鋭意研究を重ね、本発明に至った。以下に、本発明による物体保持構造体及びその物体の保持方法について図を用いて詳細を説明する。
図1に示すように、物体保持構造体10は、弾性率の大きく異なる2つの材料からなる複合部材であり、弾性変形する本体部材1の表層付近に硬質の突出部材(突出片)2を埋め込んだ構造を有する。突出部材2は、本体部材1の主面である物体保持面1aの上に仮想的に設定される仮想格子点12の下部に埋め込まれている。なお、仮想格子点12は、規則的に等間隔に並んだ仮想点の集合であるが、必ずしも規則的に並んでいる必要は無く、後述するように、物体保持面1aの上に置かれる物体に対する保持力との関係で適宜設計され得る。
本体部材1は、主面に沿って延伸可能であって、可逆的に弾性変形する弾性体である。例えば、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム等からなる。かかるゴムは、この上に配置される平面と密着して一定の付着力を有し、後述するような付着力を制御する用途において好ましい。
突出部材2は、各種形状であり得るが、後述するように、物体保持面1aにおける仮想格子点12の周囲を変形させるには物体保持面1aに向けて曲面を有する形状であることが好ましく、典型的には、球体である。例えば、ガラス、アルミナ等のセラミクスや、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、PEEK、テフロン(登録商標)、PDVF,ポリプロピレン等の樹脂や、金属等からなる。かかる突出部材2が球体である場合には、その直径が本体部材1の厚さよりも小さいことが好ましい。
図2に示すように、物体保持構造体10は、本体部材1を物体保持面1aに沿った方向の力Pで伸張させることで、本体部材1の厚さが減じられるように変形する(図2(b)参照)。このとき、突出部材2は変形しないから仮想格子点12の周囲を物体保持面1aから突出させるように変形させ得るのである。つまり、ポアソン比を0.5とするゴムでは、力Pで本体部材1は全体的に変形して厚さを減じるが、突出部材2は追従して変形することは出来ないから、本体部材1の厚さの減少とともに仮想格子点12の周囲を物体保持面1aから突出させることになるのである。
これにより、物体保持面1aの上に物体が載置されていれば、本体部材1との接触面積が変化し、摩擦力が変化する。また、本体部材1と物体とが付着していれば、その付着力は接触面積の減少とともに低下することになる。
例えば、図2(c)には、本体部材1としてのシリコーンゴムに突出部材2としての直径1mmのガラスビーズを埋め込んで10%の一軸延伸を行ったときの仮想格子点12周辺の高さ変化を示した。
詳細には、鋳型であるポリスチレンの平板上に面密度を60−70個/cmとなるように直径1mmのガラスビーズを配置し、シリコーンゴムであるポリジメチルシロキサンエラストマー(東レダウコーニング社製、品名:sylgard184)を未硬化のまま、厚みを2mmとするように注入した。これを24時間室温で静置して硬化させ、ポリスチレン平板より剥離することで、表層にガラスビーズが包埋された物体保持構造体10を得ることができる。この物体保持構造体10の本体部材1の物体保持面1aの形状、及び、本体部材1の物体保持面1aに沿って一軸延伸で10%のひずみ量を与えたときの物体保持面1aの形状のそれぞれについて、反射型共焦点顕微鏡(キーエンス社製、品名:VK9700)で測定した。
図2(c)から判るように、ガラスビーズを埋め込んだ中心点、つまり、仮想格子点12では、延伸を与えるとほぼ平坦な状態から45μm程度まで突出するのである(矢印L1を参照)。また、延伸を解除すると、この突出は平坦な状態に戻った。
次に、上記した物体保持構造体10について、物体保持面1aを20mm角となるように切り出し、直径18mmの平板ガラスとの付着力について計測した。
詳細には、物体保持構造体10を所定量だけ延伸した状態で固定し、この上に平板ガラスを重ね、荷重100gを与えて5s間静置させる。この後、速度0.25mm/sで平板ガラスを引き離していくにあたって、完全に両者が分離する直前に生じる最大付着力を荷重測定器で計測した。なお、計測は、5回の平均値で評価した。
これによれば、物体保持構造体10を延伸していない状態において、75gの付着力であった。一方、上記同様、10%の一軸延伸を与えた状態では、付着力は17gと大幅に低下していた。つまり、物体保持面1aに凹凸形状が生成し、平板ガラスとの接触面積が低下したためと考えることが出来る。
次に、上記した物体保持構造体10について、半径25mmのガラス球との静摩擦力について計測した。
詳細には、物体保持構造体10を所定量だけ延伸した状態で固定し、この上を横方向に垂直荷重50gを与えたガラス球を速度1mm/sで移動させ、移動中の横方向の力を荷重測定器で計測し摩擦力を計算した。なお、計測は、5回の平均値で評価した。
これによれば、物体保持構造体10を延伸していない状態において、摩擦係数は1.12であった。一方、上記同様、10%の一軸延伸を与えた状態では、摩擦係数は0.81と大幅に低下していた。これについても、物体保持面1aに凹凸形状が生成し、接触面積が低下したためと考えることが出来る。
なお、図3に示すように、物体保持構造体10は、本体部材1の表層付近に突出部材2よりも小さな穴4が設けられており、この穴4から突出部材2が露出するようにした構造であってもよい。なお、物体保持面1aの上に極度に突出部材2が突出していないことが好ましい。突出部材2は、本体部材1の主面である物体保持面1aの上に仮想的に設定される仮想格子点12に設けられた穴4の下部に埋め込まれている。穴4の形状は円形であることが好ましく、この穴4を塞ぐように突出部材2の上面は曲面であること、好ましくは、突出部材2は球体であることが好ましい。
このときも、図4に示すように、物体保持構造体10は、本体部材1を物体保持面1aに沿った方向の力Pで伸張させることで、本体部材1の厚さが減じられるように変形し(図5(b)参照)、仮想格子点12の周囲を物体保持面1aから突出させるように変形させるとともに、突出部材2が穴4からわずかに突出するのである。
これにより、物体保持面1aの上に物体が載置されていれば、本体部材1との接触面積が変化するとともに、突出部材2とも直接に接触し、摩擦力が変化するのである。例えば、本体部材1と物体とが付着していれば、その付着力は接触面積の減少とともに低下するとともに、結果としては、突出部材2だけに接触することになると、大きく摩擦力が変化することになる。
上記同様、図5(c)には、本体部材1としてのシリコーンゴムに突出部材2としての直径1mmのガラスビーズを埋め込んで10%の一軸延伸を行ったときの仮想格子点12周辺の高さ変化を示した。
詳細には、鋳型であるウレタンエラストマ(コクヨ社製、商品名:「ひっつきシート」)の平板上に面密度を60−70個/cmとなるように直径1mmのガラスビーズを配置し、ガラスビーズをウレタンエラストマに密着させる。そして、シリコーンゴムであるポリジメチルシロキサンエラストマー(東レダウコーニング社製、品名:sylgard184)を未硬化のまま、厚みを2mmとするように注入する。なお、ウレタンエラストマとガラスビーズとは密着しているからこの間にはシリコーンゴムが入らない。これを24時間室温で静置して硬化させ、ポリスチレン平板より剥離することで、ウレタンエラストマとガラスビーズとが密着して形成される表層の穴からガラスビーズが露出した物体保持構造体10を得ることができる。この物体保持構造体10の本体部材1の物体保持面1aの形状、及び、本体部材1の物体保持面1aに沿って一軸延伸で10%のひずみ量を与えたときの物体保持面1aの形状のそれぞれについて、反射型共焦点顕微鏡(キーエンス社製、品名:VK9700)で測定した。
図5(c)から判るように、ガラスビーズを埋め込んだ中心点、つまり、仮想格子点12では、ガラスビーズの直径の15%程度の相当する0.15mm程度の直径の円形の穴4が観察された。なお、この穴4からのガラスビーズの凸出量は5μm以下であった。一方、延伸を与えると、ほぼ平坦な状態から30μm程度まで突出するとともに(矢印L1を参照)、穴4からのガラスビーズの凸出量は10μm程度となった。また、延伸を解除すると、この突出は平坦な状態に戻った。
次に、上記同様、付着力について計測すると、物体保持構造体10を延伸していない状態において、24.2gの付着力であった。一方、10%の一軸延伸を与えた状態では、付着力は9.9gと大幅に低下していた。つまり、物体保持面1aに凹凸形状が生成し、平板ガラスとの接触面積が低下したためと考えることが出来る。
更に、上記同様、半径25mmのガラス球との静摩擦力について計測すると、物体保持構造体10を延伸していない状態において、摩擦係数は1.07であった。一方、10%の一軸延伸を与えた状態では、摩擦係数は0.8と大幅に低下していた。これについても、物体保持面1aに凹凸形状が生成し、接触面積が低下したためと考えることが出来る。
以上において、物体保持構造体10は、その構造や製造方法において極めて簡単であり、動作においても、該構造体10に延伸ひずみを与えるだけでその物体保持面1aに凹凸構造を発生させ、物体保持面1a上に与えられる物体との間の付着力や摩擦力を変化させ得る。かかる機構は、ロボットハンドや搬送用器具等の表面材として、物体の把持制御や固定−滑り状態の制御に好適に利用できる。例えば、ロボットハンドにおいて垂直荷重の制御幅を減らすことに好適であり、また、家具等の床との接触面において、荷重下では高摩擦状態で固定され、移動させたい際には適度に抜重することで摩擦力を大きく下げる効果を持たせるために好適に利用できる。
[応用例]
以下に、ロボットハンドの如きに適用した応用例を挙げる。ここでは、伸縮可能なゴムボールの表面膜へガラスビーズを埋め込んだ物体保持構造体であって、保持する物体との摩擦力や付着力を変化させるものである。
図5に示すように、物体保持装置20は、伸縮可能なゴムボール21の表面に与えられたシリコーン膜22の表面に突出部材(ガラスビーズ)2を埋め込んだ構造を有し、シリコーン膜22(ゴムボール21)の内部の圧力Pを圧力調整ポンプ23で調整可能である。
つまり、図6に示すように、圧力調整ポンプ23によりシリコーン膜22を延伸及びその解除を繰り返し可能である。突出部材(ガラスビーズ)2により、シリコーン膜22の表面に凹凸構造を可逆的に形成せしめて、上記同様、物体の高付着・高摩擦状態と、低付着・低摩擦状態とを繰り返し行いせしめるのである。
物体保持装置20の1つの製造方法として、直径65mmのナイロン製の半球状の鋳型の底面上に面密度を60−70個/cmとなるように直径1mmのガラスビーズを配置した。そして、シリコーンゴム前駆体(信越シリコーン社製、商品名:KE45T)を未硬化のまま注入し、更に、圧力調整ポンプ23に管で接続した直径65mmの中空の天然ゴムボール(ナガセ社製、商品名:ケンコーソフトボール)を押し込み、これを24時間室温で静置して硬化させた。鋳型を剥離させると、ゴムボール21の表層にガラスビーズ2が包埋されたシリコーン膜22を有する部材を得られる(図5参照)。
なお、上記同様に、直径18mmのカバーグラスとの間の付着力の試験を行ったところ、シリコーン膜22に圧力を与えず延伸していない状態において、77.2gの付着力であった。一方、圧力調整ポンプ23でシリコーン膜22に圧力を与えて10%の延伸を与えた状態では、付着力は17gと大幅に低下していた。つまり、かかる物体保持装置20を用いることで、圧力調整ポンプ23の制御により物体を持ち上げ、又、これを離脱させることが容易にできるのである。
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
1 本体部材
1a 物体保持面
2 突出部材
10 物体保持構造体
12 仮想格子点

Claims (16)

  1. 保持される物体との間の接触状態を変化させ得る物体保持面を有する物体保持構造体であって、
    前記物体保持面を有し弾性変形する本体部材と、
    前記本体部材の前記物体保持面の仮想格子点の下部に埋め込まれた突出片と、を含み、
    前記物体保持面に沿って一方向に伸張させ前記本体部材の厚さを減じるように変形させたときに、前記突出片が仮想格子点部分を前記物体保持面から突出させるように変形させることを特徴とする物体保持構造体。
  2. 前記物体保持面は付着性を有し前記物体保持面の変形により付着力を低下させることを特徴とする請求項1記載の物体保持構造体。
  3. 前記物体保持面はゴムからなる球体の少なくとも一部の外表面であることを特徴とする請求項2記載の物体保持構造体。
  4. 前記物体保持面と保持される物体との間の摩擦係数が前記物体保持面の変形により変化し得ることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の物体保持構造体。
  5. 前記突出片は球体であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の物体保持構造体。
  6. 前記仮想格子点には前記突出片を前記物体保持面から露出させる開口部が設けられており、前記突出片は前記開口部の大きさよりも大なる球体であることを特徴とする請求項5記載の物体保持構造体。
  7. 前記仮想格子点及び前記突出片の組は前記物体保持面に複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1つに記載の物体保持構造体。
  8. 前記仮想格子点は前記物体保持面に規則的に配列されて設けられていることを特徴とする請求項7記載の物体保持構造体。
  9. 保持される物体との間の接触状態を変化させ得る物体保持面における物体保持方法であって、
    前記物体保持面を有し弾性変形する本体部材と、前記本体部材の前記物体保持面の仮想格子点の下部に埋め込まれた突出片と、を含む物体保持構造体において、
    前記物体保持面に沿って一方向に伸張させ前記本体部材の厚さを減じるように変形させ、前記突出片により仮想格子点部分を前記物体保持面から突出させるように変形させ、前記物体保持面の形状を変化させて前記物体との間の接触状態を変化させることを特徴とする物体保持方法。
  10. 前記物体保持面は付着性を有し前記物体保持面の変形により付着力を低下させることを特徴とする請求項9記載の物体保持方法。
  11. 前記物体保持面はゴムからなる球体の少なくとも一部の外表面であることを特徴とする請求項10記載の物体保持方法。
  12. 前記物体保持面と保持される物体との間の摩擦係数は前記物体保持面の変形により変化し得ることを特徴とする請求項9乃至11のうちの1つに記載の物体保持方法。
  13. 前記突出片は球体であることを特徴とする請求項9乃至12のうちの1つに記載の物体保持方法。
  14. 前記仮想格子点には前記突出片を前記物体保持面から露出させる開口部が設けられており、前記突出片は前記開口部の大きさよりも大なる球体であり、前記開口部から前記突出片が前記物体保持面を越えて突出することを特徴とする請求項13記載の物体保持方法。
  15. 前記仮想格子点及び前記突出片の組は前記物体保持面に複数設けられていることを特徴とする請求項9乃至14のうちの1つに記載の物体保持方法。
  16. 前記仮想格子点は前記物体保持面に規則的に配列されて設けられていることを特徴とする請求項15記載の物体保持方法。
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