JP4344965B2 - 伸縮性膜とその制御方法、伸縮性膜を用いた触覚呈示装置、人工皮膚装置、マニピュレータ並びにこれらの制御方法 - Google Patents

伸縮性膜とその制御方法、伸縮性膜を用いた触覚呈示装置、人工皮膚装置、マニピュレータ並びにこれらの制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に凹凸を形成したり、あるいは所望の表面圧を発生させるための伸縮性膜とこれを用いた触覚呈示装置、人工皮膚装置、マニピュレータ並びにこれらの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
触覚情報を伝達するための装置として、触覚ディスプレイと称するものが知られており、例えば、上下方向の移動が可能な状態で支持された多数のピン(可動ピン)を2次元的に配列し、各ピンの突出量を制御することによってピン先端の触知で情報を読み取ることができる構成を有している。
【0003】
また、ロボットハンドやマニピュレータ等では、圧力検出によって把持力を調整することができるようにしたものが知られている。
【0004】
そして、バーチャルリアリティ(仮想現実)やテレリアリティ(遠隔現実)等の分野では、視覚認識によって表示されるオブジェクト(対象物)を実際に触っているかの如き感触を、対象者に力覚や触覚を与えることで呈示する力触覚呈示装置が知られており、例えば、平面や曲面、凹凸形状を予め形成した触覚呈示用ツールを、対象者の手や指に触れさせて遭遇させるタイプの装置(特開平8−257947号公報等)がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した装置にあっては、下記に示す問題がある。
【0006】
(1)可動ピンを使った従来の触覚ディスプレイ装置では、上下動する複数のピンがまとまって動作するため、滑らかな曲面を表現する際に触覚を伝えにくい。また、仮に触覚ディスプレイ装置の呈示面(可動ピンが設けられた面)の表面にラバー膜等を貼り付けたとしても可動ピンの移動方向(高さ方向)における位置変動によって厚みが変化するため、手触りが変化してしまうといった不都合が残る。
【0007】
(2)圧力検出信号によるフィードバック制御で把持力を調整することのできるロボットハンド等では、モータやアクチュエータ等の駆動力を制御するだけであり、対象物を把持している面の弾性を変化させることで把持力を調整することができない。
【0008】
(3)平面や曲面、凹凸形状を予め形成した触覚呈示用ツールでは、呈示部分の形状が固定している、つまり、形状が変化しないので少数の形状の組み合せによって呈示できる感触しか対象者に伝えられず、表現の幅に制約がある。
【0009】
そこで、本発明は、面に凹凸を形成したり、所望の表面圧を発生させるための伸縮性膜と、伸縮性膜を用いた触覚呈示装置、人工皮膚装置、マニピュレータを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る伸縮性膜は上記した課題を解決するために、内部に流体が封入された多数の袋体と、上記袋体の間に介在されて隣り合う袋体の間隔を電磁的な引力又は斥力によって変化させる多数の電磁石とを備えており、隣り合う電磁石の間に働く引力によって上記袋体の間隔が狭くなることで袋体が圧縮され、また、隣り合う電磁石の間に働く斥力によって上記袋体の間隔が拡がることで袋体が伸張され、上記袋体が三角柱状をなしており、伸縮性膜の表面に直交する方向から見た場合に、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域を構成するように各袋体が配列され、上記袋体の間であって上記六角形状領域の頂点位置に電磁石が配置され、上記電磁石が、上記袋体の間に配置された収容部内に封入された磁性流体と該収容部の周囲に配置されたコイル部とによって構成され、多数の行電極からなる行電極群と、多数の列電極からなる列電極群とによって配線パターンをマトリックス状に配置し、上記各電磁石を構成するコイルの端子を行電極と列電極にそれぞれ各別に接続することによって、各コイルの励磁を独立に制御するようにしたものである。
【0011】
従って、本発明によれば、電磁石間の相互作用によって袋体の伸縮状態を制御することで膜の状態を変化させることができ、これによって表面に凹凸を形成したり表面圧を自在に操ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る伸縮性膜(あるいは伸縮性皮膜)の原理的な構成を示す断面図である。
【0013】
伸縮性膜1は、表面に凹凸を形成したり、所望の表面圧を発生させるものであり、後述するように触覚呈示装置、ロボットハンドやマニピュレータ、義手等における人工皮膚としての適用が可能である。
【0014】
伸縮性膜1は、内部に流体(気体又は液体)が封入された多数の袋体(あるいはバルーン)2、2、・・・(図にはその1つだけを示す。)を有している。尚、袋体2を形成する材料には、ゴム材料、シリコーンやポリマー等、弾性に富む材料が使用される。
【0015】
これらの袋体2はその周囲に配置された複数の電磁石(あるいは微小電磁石)3、3、・・・によって伸縮される。つまり、隣り合う袋体の間には複数の電磁石が設けられており、袋体の間隔がこれらの電磁石間に作用する引力又は斥力によって変化する構成となっている。尚、電磁石の構成としては、コア材に巻線コイルを付設したものや、後述するように磁性流体とコイルを組み合わせたもの等が挙げられるが、要は電磁的な引力又は斥力を発生させるための構成であれば良い。
【0016】
図1(A)では、袋体2の両脇に電磁石3、3が設けられており、この隣り合う電磁石の間には、矢印「α」で示すように、引力が働くように各電磁石の磁極が規定されているため、袋体2が圧縮された状態を示している。また、図1(B)では、隣り合う電磁石3、3の間には、矢印「β」で示すように、斥力が働くように各電磁石の磁極が規定されているため、袋体2が横方向に引き伸ばされた状態を示している。
【0017】
このように、電磁石の制御によって各袋体の伸縮状態を変化させることにより、伸縮性膜1のうち、ある場所では袋体が圧縮される結果、袋体同士の間隔が狭まり、また、別の場所では袋体が表面にほぼ沿う方向に伸張される結果、袋体同士の間隔が拡がった状態となるという具合に伸縮性膜の状態を制御することができる。
【0018】
上記の袋体を平面あるいは曲面内に多数配置させるには、図2に示すように、平面形状が正三角形状をした袋体2、2、・・・を6つ1組にして六角形状領域をなす配置を採用する。尚、六角形の頂点位置を示す「○」印の部分には電磁石3がそれぞれ配置されている。
【0019】
図3は、ある1つの六角形状領域4を構成する6つの袋体2、2、・・・を取り出して平面で示したものであり(同図の(A)を参照。)、隣り合う袋体には間隙が形成されるとともに、六角形状領域4の中心位置には電磁石3を配置するための配置用孔5が形成されている。尚、(B)に示す図は断面構造を示し、(C)に示す図は電磁石の作用によって収縮状態を概念的に示した図である。
【0020】
図4は袋体2の成形方法について説明するための図であり、(A)に示す加硫前の状態では、ゴム材料等で形成された2枚の平板6、6′を貼り合わせるとともに、両者の間に発泡剤7を部分的に封じ込めることで作成した基礎材が、2つの凹型(成形型)8aと8bの間に位置されている。尚、加硫前に基礎材に入れる発泡剤7としては、例えば、分解ガスとして窒素を発生する有機発泡剤(ジニトロソペンタメチレンテトラミン等)や、発泡剤7の分解温度を低下させる発泡助剤(クエン酸等)、水等を混在したさせたものが使用される。
【0021】
(B)の図は、加硫後に型取りをしてできた袋体2を示しており、基礎材のうち発泡剤7を事前に封入した部分が、加硫時に発生した気体の圧力によって膨張して凹型8a、8bの凹部に密着されることで成形され、冷却後の脱型により袋体2ができ上がる。尚、電磁石の配置用孔5については、袋体の型成形後に形成する。
【0022】
図5は袋体2、2、・・・及び配置用孔5、5、・・・を部分的に示す要部の斜視図である。各袋体2は三角柱状をしており、その内部には加硫時の分解ガスが封入されている。そして、これらの袋体2を、伸縮性膜の表面に直交する方向から見た場合には、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域を構成する配列が実現される。そして、袋体の間であってこれらの六角形状領域の頂点位置に形成された配置用孔5に電磁石3がそれぞれ位置されることになる。
【0023】
ところで、電磁石として磁性流体及びコイルを用いると、膜の変形に対して柔軟性に富む構成を得ることができる。そのためには、袋体の間に配置された収容部内に磁性流体を封入する技術が必要になる。尚、「磁性流体」とは、流体中に強磁性微粒子を安定に分散させたものであり、例えば、媒体である液体(水、炭化水素系オイル、フッ素系オイル等。)と、磁性微粒子(マグネタイト、複合フェライト等が用いられ、粒径は100オングストローム程度とされる。)と、界面活性剤とから成る材料が知られている。
【0024】
図6は磁性流体を基材に封入する工程について説明するためのものであり、(A)に示すように、可撓性を有する基材(高分子膜等の膜材料)9を、凹型10aと凸型10bを使って成形することにより、磁性流体を収容するための凹部11を形成する。
【0025】
そして、(B)に示すように凹部11内に磁性流体12を入れた後で、基材9と同じ材料を使って型10c(平型又は微小な凹部が形成された凹型)で凹部11に蓋をし(基材9′を参照)、磁性流体12を封じ込める。
【0026】
図7及び図8は、伸縮性膜の断面構造例を示したものである。
【0027】
図7では、伸縮性膜1を形成する可撓性の基材13(上記基材9、9′参照)において、その一部分が突出されて形成された収容部(あるいは突出部)13a、13a、・・・内に磁性流体12、12、・・・を封じ込めた構成を示しており、該収容部13aが配置用孔5に挿通された状態で伸縮性膜に取り付けられている。
【0028】
尚、図中に示す四角枠の内部に「×」印で示す部分は、収容部13aの周囲に配置されたコイル部14を示している。つまり、収容部13aと袋体2との間に形成される空間にコイル部14が配置されており、各収容部13aを周囲を取り囲むようにしてコイル部14が取り付けられる(図では、収容部13aのうち配置用孔5に挿通された後に当該孔から出た部分と、配置用孔5に挿通されていない部分に対してそれぞれコイル部14が設けられている。)。そして、このコイル部14については、図9(A)に示すように、収容部13aの側面に線材15を巻き付けて形成される巻き線型や、図9(B)に示すように、1枚の基板(絶縁性シリコン等。)16上に導電層のパターン17を渦巻状に印刷形成したものを積層した積層型等が挙げられる。
【0029】
図7に示した例では、収容部13aを伸縮性膜1の配置用孔5に挿通した構造を示したが、これに限らず伸縮性膜に配置用孔5を形成することなく磁性流体12やコイル部14を配置しても良く、例えば、図8に示す構成が挙げられる。
【0030】
この例では、袋体2、2、・・・を上下から挟持した状態で2つの膜13A、13Bが設けられており、これらの膜の一部として形成された収容部13Aaや13Baの内部に磁性流体12がそれぞれ封じ込められている。そして、一方の膜13Aに形成された収容部13Aaと、他方の膜13Bに形成された収容部13Baとは、伸縮性膜において袋体2が形成されていない部分18を挟んで当該部分に当接した状態で互いに対向した位置関係となっており、これらの収容部の周囲を取り巻くようにしてコイル部14がそれぞれ配置されている。
【0031】
コイル部14の配線処理については、例えば、磁性流体12の収容部内への封入後にコイルとの接触面に対して導電性シリコーン等の材料を用いてシルクスクリーン印刷で行われる。その際、各コイル部をシリーズに配線接続する方法と、マトリックス配線を用いる方法とが挙げられるが、コイル位置の指定を自在に行うには後者の方法が好ましい。つまり、図10に示すように、配線パターンを、多数の行電極LL、LL、・・・からなる行電極群と、多数の列電極RL、RL、・・・からなる列電極群とによってマトリックス状に配置するとともに、各電磁石3を構成するコイル部の端子を行電極と列電極にそれぞれ各別に接続する。これによって、整数変数「i」、「j」を導入したときに、第i番目の行電極と第j番目の列電極に接続されたコイルを指定してその励磁状態(励磁の有無及び磁界の強さ)を独立に制御することができる。
【0032】
尚、コイルや、コイルに接続される行電極及び列電極については金属材料を使用しても良いが、これらを導電性ポリマーで形成すると、膜の形状変形に伴うストレスが少なく、変形に対する柔軟性を増すことができる。
【0033】
また、伸縮性膜の支持については、例えば、図2に示すように、多数の袋体2、2、・・・のうち最も周縁に位置されたものを枠体19に固定するとともに、該枠体19を平面板20に固定する(図11参照)ようにした構成が挙げられる。その際、平面板20と伸縮性膜との間には両者間の摩擦低減のために液体状シリコーン等の潤滑材21を設けることが好ましい。
【0034】
しかして、上記した伸縮性膜1の制御方法については、内部に流体が封入された多数の袋体の間に介在された電磁石同士の電磁的な引力又は斥力によって袋体の間隔を変化させることで行うことになるが、その際、隣り合う電磁石間に斥力を発生させることで伸縮性膜に凹部を形成したり、又は隣り合う電磁石間に引力を発生させることで伸縮性膜に凸部を形成することができる。これによって、例えば、膜の凹凸や波面の移動等を実現できる。
【0035】
そして、各電磁石に係る励磁制御については、励磁又は非励磁をオン/オフ制御として行う方法と、各電磁石の励磁状態を段階的又は連続的に制御する方法とがある。つまり、前者の方法によれば、膜の伸縮状態を瞬間的に変化させることができ、また、後者の方法によれば、膜の伸縮状態を段階的又は連続的に変化させることで膜形状を自在に操ることができる。勿論、両者を組み合せた方法も可能であるし、また、オン/オフ制御を所望の周波数で行うことにより膜を振動させることもできる。
【0036】
尚、伸縮性膜との接触点(例えば、伸縮性膜の一部を指等で押圧した時の接触点)に対してこれを平面内で移動させる際には、その進行方向の側に位置する袋体については電磁石同士の吸引により圧縮状態とし、さらには進行方向の線上にある袋体ほど圧縮度を高めることで分布を密にする。そして、当該進行方向とは反対側に位置する袋体については電磁石同士の反発により伸張状態とすることが好ましい。これは接触点の高さ(面の法線方向における位置)をほぼ一定に保つためである。但し、接触点ではなく一定の拡がりを有する面を対象とする場合にはこのような制御は行わない。
【0037】
図12は伸縮性膜の一部分を概略的に示すもので、(A)が概略平面図、(B)が要部の概略断面図である。
【0038】
図12(A)において、「○」印で示す箇所が接触点「P」を表しており、矢印「F」がその進行方向を示している。尚、同図における三次元座標系については、X軸が接触点の進行方向に沿う軸に設定され、これに直交する平面内の軸がY軸に設定されており、X軸及びY軸に直交して面の法線方向に延びる軸(紙面に垂直な方向に延びる軸)がZ軸とされている。
【0039】
伸縮性膜上の接触点PをX−Y平面内で移動させる場合には、その進行方向ベクトル(矢印F参照)の向きについて引張力、その逆向きについては押し出し力がそれぞれ生じるように膜の伸縮制御を行う。つまり、接触点Pを含み、かつ進行方向ベクトルに直交する平面(Y−Z平面)によって伸縮性膜を2分したとき、当該平面の前方(進行方向)に位置する領域22(図12(A)において記号「+」のハッチパターンで示す領域)では袋体が電磁石の吸引によって圧縮された状態とされ、他方、当該平面の後方に位置する領域23(図12(A)において記号「−」のハッチパターンで示す領域)では袋体は電磁石の反発によって伸張した状態とされる。尚、図12(B)に示す「S」は膜の表面を示している。
【0040】
図13はそのときの様子を模式的に示すものであり、接触点Pの進行方向側に位置する袋体が圧縮状態であることを記号「>−<」(向かい合せの矢印)で示し、また、接触点Pの進行方向とは反対側に位置する袋体が伸張状態であることを記号「<−>」(両矢印)で示している。
【0041】
次に伸縮性膜を使って触覚情報を呈示する触覚呈示装置について説明する。
【0042】
この触覚呈示装置は、基本的には触覚ディスプレイ装置の表面に上記伸縮性膜を設けた構成を有しており、所謂「ダイナミック型」と「スタティック型」のものが知られている。前者は情報伝達に際して皮膚の部位に固定して使用するものであり、掌を装置上において多数の振動子の状態から受動的触知により認識することができ、また、後者は、複数の突起部やピン等によって提示された情報内容を指先や掌を自由に動かして認識すること(能動的触知)ができようにしたものである。尚、用語「ダイナミック」は、触覚伝達の情報が時間的要因を含むこと(その結果、情報内容は時間的に流れてしまう。)に由来し、用語「スタティック」は伝達情報を認知し得るまで提示情報の形態(触知ピンの配列等)が保持されることに由来している。また、触知ピンの変位レベルを2段階(突出状態と非突出状態)に規定する2値表示の方法と、当該変位レベルを多段階又は連続的に制御する方法とがあり、後者の方法によれば、2次元表示(対象物の輪郭線だけの呈示)や3次元表示(表示基準面に対してその法線方向における高さ値を段階的又は連続的に変化させることによる浮き彫りの呈示)でのレリーフ表示が可能である。
【0043】
図14に示すように、触覚呈示装置24は、触覚呈示にあたって設定される基準平面内に多数配列された可動部材25、25、・・・を有している。これらの可動部材25は、基準平面に対する法線方向に沿って各可動部材をそれぞれ突出させかつその状態を保持する機構を備えた基台部26に取り付けられている。可動部材25を移動させる(例えば、上下動等。)には各種の形態が挙げられ、例えば、下記に示す構造が知られているが、本発明に関する限りその構成の如何は問わない。
【0044】
・ピン等の可動部材を駆動するアクチュエータとしてソレノイドを使用し、可動部材の先端にかかる押圧力を導電性ゴム等を用いたセンサーで検出できるようにした構造
・ステッピングモータ等の駆動手段により回転されるシャフトと、該シャフトに形成したネジ部とこれに螺合するナット部を有する送りネジ機構とを設けることによって、シャフトの回転に伴って当該シャフトが直線的に移動してピンを動かすようにした構造
・電気粘性流体を収容する複数のチャンバーを用意し、電気粘性流体に電界を加えることでダイヤフラム膜等を変形させてピンを上下動させる構造
・マトリックス状に配置された個々のアクチュエータを駆動することによって、各アクチュエータにそれぞれ対応するピンを上下動させる構造。
【0045】
本発明に係る触覚呈示装置24がこのような既知の装置と相違する点は、基台部26のうち各可動部材25が突出される方の表面が伸縮性膜1によって覆われていることである。つまり、伸縮性膜には、その内部に流体が封入された多数の袋体と、当該袋体の間に介在されて隣り合う袋体の間隔を電磁的な引力又は斥力によって変化させる多数の電磁石が設けられているので、ラバー膜のようなもので装置表面を単に覆ったのとは全く異なった機能を発揮する。即ち、この伸縮性膜には下記に示す使用形態が挙げられる。
【0046】
(i)電磁石の励磁により膜を能動的、自発的に伸縮させる形態
(ii)電磁石を非励磁として、外部磁界に対して受動的に応答する磁気抵抗要素として使用する形態。
【0047】
先ず、(i)については、電磁石同士の吸引や反発によって膜の伸縮状態を積極的に規定するもので、隣り合う電磁石の間に働く引力によって袋体の間隔が狭くなった場合には、表面のほぼ法線方向に袋体が引き伸ばされ、また、隣り合う電磁石の間に働く斥力によって袋体の間隔が拡がった場合には、表面にほぼ沿う方向に袋体が引き伸ばされる。
【0048】
また、(ii)では電磁石を構成するコイルには電流を流すことはなく、これらが外部磁界に対して受動的抵抗としてのみ機能する。そのためには、触覚呈示装置の基台部26や可動部材25に電磁石を付設する。例えば、図14に例示した構成では、大円内に拡大して示すように、ピン等の可動部材25のうち、伸縮性膜1に接触される部分に電磁石25aが付設されている。つまり、各可動部材25の先端部に電磁石25aのコア25bを取り付け、これにコイル25cを巻回した構成において、該コイル25cに電流を流すと、当該可動部材25の移動方向に沿って磁極が配置した状態になる。
【0049】
図15乃至図17は、基台部上の伸縮性膜の状態を模式的に示した平面図であり、図中の正3角形が袋体2をそれぞれ示しており、「○」、「●」や、「○」の中に「×」を付した記号で示す位置に電磁石3が配置されている。尚、「○」印は表面側の磁極がS極であることを意味し、「●」印は表面側の磁極がN極であることを意味しており、「○」の中に「×」を付した記号は非励磁状態を意味している。尚、本例では説明の便宜上、これらの電磁石に対して可動部材の電磁石が1対1にそれぞれ対応するように配置されているとするが、これに限らず、電磁石間の対応関係において多対1の設定を採用できることは勿論である。
【0050】
図15では膜が部分的に収縮した状態になっており、複数の六角形状領域から構成される領域のうち、最外周縁の辺上に位置する電磁石についてはN極又はS極とが交互に繰り返した配置とされ、また、当該領域の内部に位置する電磁石についてはN極又は非励磁状態となっている。
【0051】
図16では膜が部分的に伸張した状態になっており、複数の六角形状領域から構成される領域内の電磁石については全てN極とされている。
【0052】
図17では、破線の六角形枠で囲んで示す領域内が収縮状態とされ、その周囲の部分が伸張状態となっている例を示したものであり、当該領域が表面の法線方向(紙面に垂直な方向)において厚みを増す部分である。例えば、この収縮状態の領域を所定の方向に沿って当該領域の一部が部分的に重複するようにして移動させると、厚み方向に突出した点状部の移動が可能になる。
【0053】
尚、図15乃至図17では作図の便宜上、電磁石間の間隔(頂点間距離)を一定としたが、現実には当該間隔が収縮部分において短くなり、伸張部分において長くなることは勿論である。また、これらの配置は上記(i)の形態についても可能であるが、表面形状を一定の形状に保つ必要がある場合には伸縮性膜の電磁石と可動部材の電磁石との電磁相互作用がないことが条件となる。
【0054】
しかして、上記したように、伸縮性膜を構成する各袋体が三角柱状をなし、かつ伸縮性膜の表面に直交する方向から見た場合に、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域を構成するように各袋体を配列させた場合には、各袋体の間であって六角形状領域の頂点位置に設けられた電磁石同士が能動的又は受動的に吸引し又は反発することによって伸縮性膜の伸縮状態を規定することができる。
【0055】
尚、触覚情報の呈示に加えて温(度)覚の呈示を行う場合には、各可動部材のうち伸縮性膜に接触される部分(例えば、上記コア25bの端部等)に、ペルチェ素子等の温熱冷却素子をそれぞれ付設した構成を用いることが好ましい。つまり、同じ触覚情報の呈示面を触ったときでも、その感触は熱や温度の相違によって違ってくる場合があるので、触覚情報の伝達を安定化させたり、あるいは温度の違いを積極的に利用することで各種の違った感触を伝達することができる。
【0056】
上記触覚呈示装置24の制御方法については各可動部材に付設した電磁石のコイル電流をどのように規定するかが問題となるが、隣り合う可動部材について両者の突出量の差が大きい程、その場所での磁界強度が大きくなるように可動部材に付設の電磁石に流れるコイル電流値を制御することが好ましい。これは電磁石による発生磁界の強度は電磁石のコイル電流によって規定されること及び隣り合う可動部材の突出量の差が大きい程、両者を覆う伸縮性膜のセル数(六角形領域の数)が多く必要になるので電流値は大きくする必要(基本的には、基準電流を「I0」とするとき、これにセル数を掛けた電流値が必要)があることに依る。
【0057】
図18において、(A)は側面から見た非励磁状態の触覚呈示装置(この状態では伸縮性膜1が伸張した状態でその周縁部が枠体19と基台部26との間に挟まれて固定されている。)を概略的に示した図を示し、その下の(B)は励磁によって伸縮性膜1が可動部材25の外表面に密着した状態とされた触覚呈示装置を概略的に示している。そして、(C)は横軸に位置座標「X」をとり、縦軸に磁界強度「H」をとってこれを場所の関数として概略的に示したものであり、位置座標「X」における可動部材の突出量(図のZ軸方向における高さ)の差が大きい場所ほど強度が大きい。また、(D)は横軸に位置座標「X」をとり、縦軸にセル数「N」をとって、これを場所の関数として概略的に示したものであり、このセル数は突出した可動部材の外表面に沿ってこれを覆っていることから分かるように、隣り合う可動部材の突出量の差が大きいところ程多くなる。
【0058】
尚、伸縮性膜の一部を急激に突出させるには、伸縮性膜の伸縮状態を事前に規定しておいてから、可動部材に付設された電磁石の励磁制御を行うことが好ましい。
【0059】
例えば、図19に示すように、伸縮性膜1の一部が平面で見て円環状をなし、その断面形状がほぼ三角形状をした状態で隆起した形状を実現するためには、下記に示す手順を踏む。
【0060】
(1)形状入力
(2)伸縮性膜の伸縮状態を設定
(3)触覚呈示装置及び伸縮性膜に係る磁極配置及び触覚呈示装置の可動部材の制御。
【0061】
先ず、(1)ではこれから伸縮性膜上に現出させたい形状についてのデータ入力を行う。
【0062】
そして、(2)では、図20に示すように、伸縮性膜を平面で見たときに突出させたい部分27(斜線を付して示す。)だけを収縮状態(N極、S極、非励磁状態が入り混じった状態であり、図15を参照。)とし、それ以外の部分については伸張状態(表面がN極のみの状態であり、図16を参照。)とする。但し、部分27における高低差(図のZ軸座標値の差)を考慮して高い場所から低い場所へと順番に袋体の収縮を行う。また、触覚呈示装置の可動部材25、25、・・・のうち、部分27に対向した場所28に位置するものについてはこれらの可動部材25に付設された電磁石を全て非励磁状態とし、それ以外の場所にある可動部材については、これらに付設された電磁石を励磁して表面側がN極となるように規定する(図には基台部26の表面側の磁極「N」だけを示しており、このとき伸縮性膜において当該磁極に対向する部分がS極となる。)。これによって、触覚呈示装置における隣り合う可動部材について両者の突出量の差が大きいと予定される場所について、当該場所に対応するセル(六角形状領域)の数が多くなるように伸縮性膜を予め伸縮させた状態にすることができる。
【0063】
(3)では触覚呈示装置や伸縮性膜の磁極を規定することで、触覚呈示装置と伸縮性膜との電磁的な関係を規定するとともに、各可動部材の突出量を(1)での入力データに応じて算定した上で可動部材を駆動させる。つまり、図21に示すように、触覚呈示装置についてはそれまで表面側がN極であった場所をS極に反転させ、非励磁状態とされていた部分(28)については表面側がS極となるように各可動部材の電磁石を規定する。そして、伸縮性膜の電磁石については部分27(の触覚呈示装置側表面)をS極とし、それ以外の部分(の触覚呈示装置側表面)をN極とする。つまり、部分27については触覚呈示装置の基台部(部分28)から反発力を受け、その他の部分については触覚呈示装置の基台部から吸着力を受けるようにし、この状態で部分27に対応する可動部材をZ軸方向にそれぞれの突出量(断面形状に応じた量)をもって移動させると、図22に示すように伸縮性膜1の一部分だけが隆起した状態となり、所期の形状(図19参照)が得られる。このように、可動部材に付設された電磁石に電流を供給してその電流値を制御することにより、当該電磁石と伸縮性膜の電磁石との間に吸引力又は反発力を発生させて伸縮性膜の一部を突出させることができる。尚、その際、伸縮性膜についての摩擦抵抗を変化させるには、伸縮性膜や触覚呈示装置における電磁石の磁極設定や強度設定により行えば良い。
【0064】
但し、各可動部材により伸縮性膜を通して形成される凹凸状態を急激に変化させたいような場合には、これを電磁的相互作用で行ったのでタイムラグや形状の確定に要する時間が問題となるので、可動部材に付設された電磁石への電流供給を遮断することが好ましい。例えば、図18(B)に示す状態において電磁石を非励磁状態とすると、伸縮性膜を図18(A)に示す状態へと瞬時に変化させることができる。
【0065】
次に、上記した伸縮性膜を用いて表面形状を変化させる人工皮膚装置について説明する。尚、人工皮膚装置の適用範囲としては、ロボットハンドやアーム、マニピュレータ、義手、人形等の皮膚が挙げられる。
【0066】
図23は人間の手腕部を模倣した自由度を有するマニピュレータ(ハンド部を部分的に切り欠いて示す。)29を概略的に示したものであり、円で示す部分30、30、・・・が関節部をそれぞれ示している。つまり、各関節部は、モータ等の駆動源を含む駆動部31によって対偶の駆動制御を行うことで屈曲角度がそれぞれ変更できるように構成されており、また、図示しないセンサーやエンコーダ等によって検出される関節の姿勢状態信号が状態検出部(あるいは力覚検出部)32によって収集されて、これが制御部33(ロボットコントローラ等。)に送出される。尚、制御部33(後述する位置・姿勢制御部等を参照。)は、状態検出部32からの検出信号をフィードバック信号として受け取り、これと関節駆動の指令値との差(エラー)がゼロになるように制御を行う。
【0067】
伸縮性膜を用いた人工皮膚34は、マニピュレータ29(アーム部やハンド部)のうち、関節部を含む骨格部の外表面を被覆しており、外皮としての保護機能と、把持力や表面弾性の調整機能とを備えている。
【0068】
図24はマニピュレータ29のハンド部35を示したものであり、円で示す部分30、30、・・・が関節部(MP関節やCM関節等に相当する関節部等。)をそれぞれ示している。
【0069】
骨格部のうち関節部を除いた部分には、上記した触覚呈示装置24の基台部26に相当するアクチュエータ36、36、・・・(図に斜線を付して示す。)が取り付けられており、それらの可動部が突出されて人工皮膚34の伸縮性膜(の内面)に当接されるようになっている。つまり、アクチュエータ36と、その可動部に接触した伸縮性膜の部分が前記触覚呈示装置と同等の機能を発揮する。尚、アクチュエータ36の可動部とは、伸縮性膜を押圧する方向及びその逆方向に移動できるように配列された多数の可動部材(25)のことであり、前記したように、各可動部材をそれぞれ突出させかつその状態を保持する機構が基台部26に設けられている。
【0070】
各可動部材の端部には図示しない圧力検出手段(圧力センサー)が設けられており、これによって取得される圧力検出信号が圧力検出部39(あるいは触覚検出部)に送出されることによりハンド部35で対象物を掴んだ時の圧力変化を把握することができるようになっている。尚、圧力検出手段には、例えば、対をなす電極と、両電極間に介在された感圧層(圧力に反応して電気抵抗値や静電容量値等が変化する材料で形成した層)を積層形成した構成が挙げられるが、可動部材の先端部で受ける圧力を検出できれば如何なる構造のセンサーでも構わない。また、圧力の他、温度の検出手段を付設するとハンド部35が掴んだ対象物の温度あるいは周囲温度の情報を取得できる。
【0071】
図25はマニピュレータ29の制御例を示すブロック図であり、骨格部分を構成するアーム部やハンド部の関節部30については、位置・姿勢制御部37から駆動部31に制御信号が送出されることで、駆動部31のサーボ制御により関節の状態(屈曲角度等)が規定される。その際、状態検出部32から位置・姿勢制御部37に送出される検出信号によって関節部30に係る現在の位置や姿勢が認識される。
【0072】
皮膚部分については、下記の2つの制御が行われる。
【0073】
(i)触覚呈示装置における可動部材の駆動制御
(ii)伸縮性膜の伸縮制御。
【0074】
先ず、(i)の触覚呈示装置については、微小位置制御部38から送出されて来る制御信号によって各アクチュエータ36における可動部材の突出量がそれぞれ制御される。尚、各可動部材の突出量を各別に検出するための検出手段(エンコーダ等)が当該可動部材に付設されており、検出信号がフィードバック信号として微小位置制御部38に送出され、突出量に対する指令値と検出値との差がゼロとなるように各可動部材が制御される。尚、圧力検出部39によって検出される情報は微小位置制御部38に送られて、ここで位置情報とともに圧力分布を構成するマトリックスデータとして処理された後、位置・姿勢制御部37に送出されるようになっている。尚、各可動部材にペルチェ素子が付設されている場合には、当該素子の温度制御も必要である。
【0075】
(ii)については、伸縮性膜において、内部に流体が封入された多数の袋体の間には、隣り合う袋体の間隔を電磁的な引力又は斥力によって変化させる多数の電磁石が介在されているので、隣り合う電磁石の間に働く引力又は斥力によって袋体の間隔を制御する。つまり、当該間隔を狭めた場合には、表面のほぼ法線方向に袋体が引き伸ばされ、また、袋体の間隔を拡げた場合には、表面にほぼ沿う方向に袋体が引き伸ばされる。
【0076】
この制御を司っているのが伸縮状態制御部40であり、位置・姿勢制御部37からの制御信号を受けて伸縮性膜の伸縮状態を規定する。尚、皮膚部分の制御は微小位置制御部38によるアクチュエータ(触覚呈示装置)の制御と、伸縮状態制御部40による伸縮性膜の制御とを組み合わせて行われるが、関節部30の駆動状態を把握しているのは位置・姿勢制御部37である。従って、例えば、ハンド部35の把持力を伸縮性膜の伸縮制御によって調整するためには、関節部の屈曲角度が大きくなるほど伸縮性膜を収縮させていけば良い。但し、関節部の屈曲によって伸縮性膜の一部が巻き込まれる部分(関節部の表面を覆っている部分)が生じると膜の制御に支障を来す虞があるので当該部分については各袋体が伸張状態となるように規定する。つまり、関節構造を有する骨格部の外表面を伸縮性膜で覆った場合には、膜の伸縮状態を下記のように制御することが好ましい(図24参照)。
【0077】
・伸縮性膜のうち関節部に周囲を被覆する部分については、隣り合う電磁石の間に斥力を発生させて袋体の間隔を拡げることで袋体が引き伸ばされた状態にする(図24に「<−>」の記号で示す。)
・関節部を被覆する部分以外の部分については、隣り合う電磁石の間に引力を発生させて袋体の間隔を狭めることで袋体が圧縮された状態にする(図24に「>−<」の記号で示す。)。
【0078】
尚、図25に示す構成では、各関節部30を駆動部31によって駆動させるようになっているが、関節部を覆う伸縮性膜の伸縮制御によって当該関節部を屈曲させるに足るだけの駆動力を得ることができる場合には、駆動部は不要である。つまり、伸縮性膜を関節駆動用のアクチュエータとして利用できる場合には、これをモータ等の駆動源の代替として使用することができる(但し、発生する駆動力に見合うだけの膜強度が必要である。)。
【0079】
また、伸縮性膜についてはこれを1層として表面膜に使用する方法の他、伸縮性膜の上にさらに表面皮膜を形成することで複合膜を構成して使用する方法が挙げられる。
【0080】
図26はそのような膜の断面構造の一例について説明するための図であり、(A)に示す非励磁状態において、多数の袋体2、2、・・・が横並びに配置され、それらの間には電磁石3、3、・・・がそれぞれ設けられている。そして、各袋体2の表面には接着等で固定された表面皮膜41が設けられており、該表面皮膜内には空隙42、42、・・・が形成されている。尚、表面皮膜自体は袋体の構成材料と同じか又は同様の弾性を有する材料で形成されており、空隙42内には空気やヒアルロン酸、あるいは非圧縮性流体が充填されていて、外部からの圧力を受けたときに容易に潰れない程度の弾性が付与されている。
【0081】
この膜において、例えば、(B)に模式的に示すように隣り合う電磁石同士が電磁的な引力によって吸引された状態になると、袋体が横方向に圧縮されて縦方向(表面の法線方向)に引き伸ばされる。そして、これに伴って表面皮膜41の膜厚が増して横方向には縮んだ状態になる。また、隣り合う電磁石同士が電磁的な斥力によって反発した状態になった場合には、袋体が横方向に伸張されるので、これに伴って表面皮膜41の膜厚が薄くなって横方向に伸びた状態になる。
【0082】
このように、電磁石同士の吸引又は反発によって互いの間隔が制御される袋体に対して、その表層に別の袋体(液胞又は気胞)を設けることで表面皮膜41を形成した構造を採用すると、皮膚としての強度を増すことができ、表皮に微小な凹凸が生じることなく面圧力を制御することができる。
【0083】
図25の位置・姿勢制御部37、微小位置制御部38、伸縮状態制御部40については、コンピュータ等の計算機を用いて構成することができ、その場合の制御例を図27、図28のフローチャート図に示す。
【0084】
図27のステップS1では、先ず、温度や弾性抵抗、皮膚表面の形状等について初期設定を行う。尚、このときの設定状態は時間に依らない静的な状態としても良いし、また時間軸に沿って変化する動的な状態であっても良い。
【0085】
次ステップS2では各アクチュエータ36(触覚呈示装置)においてそれぞれの可動部材が一定の弾性係数(あるいはバネ定数)でもって動作できるようにセットする。尚、この場合の「弾性係数」とは人工皮膚の表面における法線方向の弾性を表す係数を意味する。
【0086】
そして、ステップS3ではマニピュレータ29を操作して対象物を人工皮膚に接触させた状態(例えば、ハンド部35の掌で対象物を撫でた状態等。)とした後、次ステップS4では、接触時の圧力検出位置及び触覚呈示装置の可動部材の位置についてデータを取得する。つまり、接触点に2次元直交座標系x−yと、可動部材の移動方向にz軸を設定した場合に、x、yの座標値として圧力検出位置及びその場所での圧力値を検出するとともに、z座標値から可動部材の突出量がどの程度変化したかを検出することができる。
【0087】
そして、微小な有限時間(これを「Δt」と記す。)の経過後に次ステップS5に進むが、接触点が別の検出ポイントに移動しているので、前ステップS4と同様に、その圧力検出位置及び圧力値並びにそのときの可動部材の突出量を検出する。尚、時間「Δt」はサンプリング時間間隔を示しており、時間の経過につれて変化することのない一定時間に規定されている(その後のデータ処理が複雑化しないようにするためである。)。
【0088】
次ステップS6に示す条件分岐処理は、図28に示すサブルーチン処理(後述する)に進むか否かを判断するものであるが、ここではステップS7に進んだとして説明を続行する。
【0089】
ステップS7では前ステップS4やS5で取得した圧力検出位置(x、y)や可動部材の突出量の変化(z)をベクトルの成分として変位量を算出する。表面圧はこの変位量と弾性係数の積によって求められる。尚、x軸やy軸方向に位置について考慮する理由は、人体の皮膚を模倣した人工皮膚を作成するためである(例えば、義手等)。つまり、人体の皮膚では、表層の下に軟部組織が存在するため、これがz方向における弾力とx方向、y方向における位置との間にずれを生じさせる。
【0090】
次ステップS8では、前ステップS7で算出したベクトルの成分に基づいて弾性の度合を変位量によって表現する(つまり、変位量と弾性係数によって反力を計算する。)。尚、アクチュエータ36の可動部材に係る突出量については許容範囲が決められているため、ある限界値を越えて可動部材を押してもそれ以上は弾性を感じない状態となる(つまり、このときz値が一定値となり、弾性係数は無限大であり、押圧力に対する反力がそのまま返される。)。
【0091】
図28は触覚に基づく感情表現処理に関するサブルーチン処理の一例を示すものである。
【0092】
図27のステップS6での条件分岐によってステップS27に到達した場合には、接触点での圧力検出位置(x,y)や方向(Δx,Δy)、検出圧力値、z値や部位、速度(Δx/Δt,Δy/Δt,Δz/Δt)等を含む触覚データを取得する。
【0093】
そして、次ステップS10では、感情の判断処理に必要な基準データを読み込む。つまり、予め記憶手段に記憶・学習させておいたパラメータ値あるいはその範囲を示すデータ(これらは快・不快等の感情表現用データに関連付けられて記憶されている。)を読み出して、次ステップS11でこれらを前ステップS9で得たデータと比較する。
【0094】
そして、上記触覚データが、例えば、ロボットの好きな感触に符合する場合には、ステップS12に進んで喜びの感情表現を行う(顔の表情や身体の動作に依る。)が、当該データがロボットの嫌いな感触に符合する場合には、ステップS13に進んで嫌悪や怒り等の感情表現を行う。
【0095】
尚、皮膚表面に体毛を付設する場合(例えば、ペット型ロボット等。)には、図29(A)に示すように、光ファイバー線材や、ナイロン、絹糸、人工毛髪の材料等で作成した体毛43を袋体の側面部に差して接着固定する(その際、袋体に孔が空かないように注意する。)。
【0096】
そして、図29(B)に示すように、電磁石3、3の吸引力によって袋体2を圧縮すると、これによって体毛43が逆立った状態になる。
【0097】
また、上記した伸縮性膜及び触覚呈示装置を、遭遇型の力触覚呈示装置において使用する触覚呈示用ツールに適用すると、多種多様な形状を操作者に呈示できるので有用である。
【0098】
尚、ここにいう「力触覚呈示装置」には、対象者に力覚や触覚を付与することが可能な一切の装置が含まれる。例えば、仮想環境あるいは仮想現実空間に存在すると仮定される(架空の)対象、又は遠隔世界若しくは微小世界に実際に存在する対象からの力学的影響を、操作者に力覚や触覚として呈示するための装置が挙げられ、これは、操作者が現実にはあり得ない世界や、距離や大きさの問題あるいは危険な環境であるがために操作者が実際にその場所に行くことのできない世界等について間接的な体感を経験できるようにしたものである。
【0099】
また、「遭遇型」とは、被験者の手や指先に、各種形状の物体あるいはツール(触覚による形状呈示用の道具)を遭遇させてその感触を伝えることにより、被験者の脳裏には、あたかも特定の物体を実際に触っているかの如き猫像を抱かせるようにした触覚情報の呈示形態をいう。
【0100】
例えば、対象物の触覚を呈示する場合には、当該対象物の形状において凹凸やエッジ、平面の曲面を触ったかの如き感触が得られるように予め決まった形状を付与したツールを用意し、当該ツールの位置や姿勢をロボットアームやマニピュレータ等で制御することで操作者の指や手に各種の触覚を呈示することができる。つまり、幾つかの平面からなる多面体状のブロック体と、凸曲面や凹曲面をもつ曲面体とを結合し又は両者を組み合わせたツールを使用して、操作者にあたかも円柱の表面を指でなぞっているかのような感触を呈示する例を想定した場合において、円柱の側面部を指で触っているという感触を与えるには、ツールの位置及び姿勢制御によって曲面体の凸曲面を選んでこの面に操作者の指を接触させてツールを所定の軸回りに回転させれば良く、また、円柱の両端面を指で触っているという感触を与えるには、ツールの位置及び姿勢制御によってブロック体上の平面を選んで当該面に操作者の指を接触させながらツールを直線的に移動させれば良い。
【0101】
尚、このような3次元的な形状に関する触覚を呈示するディスプレイ装置としては、特開平8−257947号公報に開示されたものが挙げられるが、本発明を遭遇用ツールに適用するにあたっては、当該ツールの位置や姿勢の制御手段に関してその構成の如何は問わない。
【0102】
本発明に係る伸縮性膜及び触覚呈示装置を触覚呈示用ツール(遭遇用ツール)に用いると、呈示可能な形状の種類が飛躍的に多くなるので、平面や曲面、凹凸形状等の少数の組み合せでは表現できない形状を作り出してこれを操作者に呈示できるようになる。
【0103】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、請求項1に係る発明によれば、電磁石間の相互作用によって袋体の伸縮状態を制御することで膜の状態を変化させることができ、これによって面に凹凸を形成したり表面圧を自在に操ることができる。よって、膜の伸縮によって滑らかな曲面を表現することができ、また、膜厚の変化によって手触りが変わってしまうことがないように制御できる。そして、把持力を調整できるロボットハンドやアクチュエータ等への適用において伸縮性膜の伸縮により把持面の弾性を変化させることができる。また、触覚呈示用ツールへの適用において、伸縮性膜の伸縮により多種多様な形状を作り出すことができる。
また、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域をなすように構成して各袋体を効率的に配列させることができる。また、磁性流体とコイル部からなる電磁石を用いることで、膜の変形に対して柔軟性に富む構成を得ることができる。また、行電極群や列電極群を構成する配線パターンをマトリックス状に配置し、各電磁石を構成するコイルの端子を行電極と列電極にそれぞれ各別に接続することによって、各コイルの位置指定でその励磁を独立に制御できるので、制御が容易になる。
【0104】
請求項2や請求項16に係る発明によれば、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域をなすように構成して各袋体を効率的に配列させることができる。
【0105】
請求項3や請求項4に係る発明によれば、磁性流体とコイル部からなる電磁石を用いることで、膜の変形に対して柔軟性に富む構成を得ることができる。
【0106】
請求項5に係る発明によれば、行電極群や列電極群を構成する配線パターンをマトリックス状に配置し、各電磁石を構成するコイルの端子を行電極と列電極にそれぞれ各別に接続することによって、各コイルの位置指定でその励磁を独立に制御できるので、制御が容易になる。
【0107】
請求項2に係る発明によれば、コイルや行電極、電極を導電性ポリマーで形成することで変形し易い膜を得ることができる。
【0108】
請求項3に係る発明によれば、平面板と伸縮性膜との間に潤滑材を設けることで膜の伸縮時における摩擦抵抗を低減することができる。
【0109】
請求項4に係る発明によれば、隣り合う電磁石間に斥力又は引力を発生させるだけで、伸縮性膜に凹部や凸部を容易に形成することができる。
【0110】
請求項5に係る発明によれば、電磁石の励磁又は非励磁をオン/オフ制御で行うことによって伸縮性膜の状態を迅速に変化させることができる。
【0111】
請求項6に係る発明によれば、電磁石の励磁状態を段階的又は連続的に制御することによって伸縮性膜の状態を滑らかに変化させることができる。
【0112】
請求項7に係る発明によれば、接触点の高さを大幅に変化させることなく当該接触点を移動させることができる。
【0113】
請求項8に係る発明によれば、基台部に設けられた多数の可動部材の突出量を変化させるとともに、これらを伸縮性膜で覆った構成を用いることによって、可動部材から伸縮性膜を通して触覚情報を呈示することができる。
【0114】
請求項9に係る発明によれば、各可動部材に電磁石をそれぞれ付設することによって伸縮性膜の状態を局所的に制御することができる。
【0115】
請求項10に係る発明によれば、各可動部材に温熱冷却素子をそれぞれ付設することによって伸縮性膜や呈示面の温度を制御することができる。
【0116】
請求項11に係る発明によれば、可動部材の突出量に応じてこれを覆う伸縮性膜の伸縮状態を可動部材に付設した電磁石への電流値によって過不足なく制御することができる。
【0117】
請求項12に係る発明によれば、伸縮性膜が部分的に大きく変化した形状を得ることができる。
【0118】
請求項13に係る発明によれば、伸縮性膜に形成される凹凸状態を急激に変化させることができる。
【0119】
請求項14に係る発明によれば、電磁石間に生じる引力又は斥力によって膜の伸縮状態を制御することで皮膚表面の弾性を自在に変化させることができる。
【0120】
請求項15に係る発明によれば、関節部の駆動によってその周囲の人工皮膚部分が巻き込まれないように防止することができる。
【0121】
請求項16や請求項17に係る発明によれば、伸縮性膜の伸縮によって表面の弾性やハンド部の把持力を制御することのできるマニピュレータを実現できる。
【0122】
請求項18に係る発明によれば、可動部を有するアクチュエータと、伸縮性膜の伸縮制御によって人工皮膚の表面を詳細に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る伸縮性膜の原理説明のための概略図である。
【図2】伸縮性膜における袋体の配置について説明するための図である。
【図3】六角形状領域を構成する袋体とその断面構造を示す図である。
【図4】袋体の形成方法に関する説明図である。
【図5】袋体及び電磁石の配置用孔を示すために一部を切り欠いて示す要部の斜視図である。
【図6】磁性流体の封入方法に関する説明図である。
【図7】図8とともに伸縮性膜の断面構造例を概略的に示す図である。
【図8】図7とは異なる断面構造例を概略的に示す図である。
【図9】図7のIX−IX線で切断したコイル部の構成例を示す概略図であり、(A)は巻線型コイルを示し、(B)は積層型コイルを示す。
【図10】電磁石のコイル配線について説明するための図である。
【図11】伸縮性膜の支持について説明するための図である。
【図12】接触点の移動と伸縮性膜の伸縮状態との関係についての説明図である。
【図13】接触点の移動方向及びその逆方向における伸縮性膜の伸縮状態を模式的に示す図である。
【図14】触覚呈示装置とその可動部材の先端部を拡大して示す図である。
【図15】伸縮性膜の収縮状態における磁極配置を示す概略図である。
【図16】伸縮性膜の伸張状態における磁極配置を示す概略図である。
【図17】伸縮性膜の一部分が圧縮状態とされ、その周囲が伸張状態とされた磁極配置を示す概略図である。
【図18】触覚呈示装置における伸縮性膜の状態及び磁界強度やセル数の分布について説明するための図である。
【図19】図20乃至図22とともに伸縮性膜及び触覚呈示装置の制御方法について説明するための図であり、本図は制御目標となる伸縮性膜の突出状態を示す図である。
【図20】伸縮性膜の一部分を収縮した状態を示す図である。
【図21】伸縮性膜とこれに対する触覚呈示装置側の磁極設定についての説明図である。
【図22】触覚呈示装置の可動部材を突出させた状態を概略的に示す図である。
【図23】マニピュレータとその制御系を示す図である。
【図24】ハンド部とその制御系を示す図である。
【図25】制御系の構成例を示す図である。
【図26】表皮を含む伸縮性膜の構成例を示す図である。
【図27】制御例を示すフローチャート図である。
【図28】感情表現処理例を示すフローチャート図である。
【図29】伸縮性膜に付設した体毛の状態変化についての説明図である。
【符号の説明】
1…伸縮性膜、2…袋体、3…電磁石、4…六角形状領域、12…磁性流体、13a、13Aa、13Ba…収容部、14…コイル部、19…枠体、20…平面板、21…潤滑材、24…触覚呈示装置、25…可動部材、25a…電磁石、26…基台部、29…マニピュレータ、30…関節部、34…人工皮膚装置、36…アクチュエータ、LL…行電極、RL…列電極

Claims (18)

  1. 表面に凹凸を形成し又は所望の表面圧を発生させるための伸縮性膜であって、
    内部に流体が封入された多数の袋体と、
    上記袋体の間に介在されて隣り合う袋体の間隔を電磁的な引力又は斥力によって変化させる多数の電磁石とを備え、
    隣り合う電磁石の間に働く引力によって上記袋体の間隔が狭くなることで、袋体が圧縮され、また、隣り合う電磁石の間に働く斥力によって上記袋体の間隔が拡がることで袋体が伸張され、
    上記袋体が三角柱状をなしており、伸縮性膜の表面に直交する方向から見た場合に、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域を構成するように各袋体が配列され、
    上記袋体の間であって上記六角形状領域の頂点位置に電磁石が配置され、
    上記電磁石が、上記袋体の間に配置された収容部内に封入された磁性流体と該収容部の周囲に配置されたコイル部とによって構成され、
    多数の行電極からなる行電極群と、多数の列電極からなる列電極群とによって配線パターンをマトリックス状に配置し、上記各電磁石を構成するコイルの端子を行電極と列電極にそれぞれ各別に接続することによって、各コイルの励磁を独立に制御する
    ことを特徴とする伸縮性膜。
  2. 請求項1に記載の伸縮性膜において、コイル及び該コイルに接続される行電極及び列電極を導電性ポリマーで形成したことを特徴とする伸縮性膜。
  3. 請求項1に記載の伸縮性膜において、多数の袋体のうち最も周縁に位置されたものを枠体に固定するとともに、該枠体を平面板に固定し、当該平面板と伸縮性膜との間に潤滑材を設けたことを特徴とする伸縮性膜。
  4. 内部に流体が封入された多数の袋体と、該袋体の間に介在されて隣り合う袋体の間隔を電磁的な引力又は斥力によって変化させる多数の電磁石とを備えた伸縮性膜の制御方法であって、
    上記袋体が三角柱状をなしており、伸縮性膜の表面に直交する方向から見た場合に、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域を構成するように各袋体が配列され、上記袋体の間であって上記六角形状領域の頂点位置に上記電磁石が配置され、
    隣り合う上記電磁石間に斥力を発生させることで伸縮性膜に凹部を形成し、又は隣り合う上記電磁石間に引力を発生させることで伸縮性膜に凸部を形成することを特徴とする伸縮性膜の制御方法。
  5. 請求項4に記載した伸縮性膜の制御方法であって、上記各電磁石の励磁又は非励磁をオン/オフ制御することを特徴とする伸縮性膜の制御方法。
  6. 請求項4に記載した伸縮性膜の制御方法であって、上記各電磁石の励磁状態を段階的又は連続的に制御することを特徴とする伸縮性膜の制御方法。
  7. 請求項4に記載した伸縮性膜の制御方法であって、伸縮性膜との接触点に対してこれを平面内で移動させる際には、その進行方向の側に位置する袋体については上記各電磁石同士の吸引により圧縮状態とし、進行方向とは反対側に位置する袋体については電磁石同士の反発により伸張状態とすることを特徴とする伸縮性膜の制御方法。
  8. 表面に凹凸を形成することで触覚情報を呈示するために伸縮性膜を用いた触覚呈示装置において、
    触覚呈示にあたって設定される基準平面内に多数配列された可動部材と、当該基準平面に対する法線方向に沿って各可動部材をそれぞれ突出させかつその状態を保持する機構を備えた基台部が設けられ、該基台部のうち可動部材が突出される方の表面が伸縮性膜によって覆われており、
    上記伸縮性膜が、その内部に流体が封入された多数の袋体と、当該袋体の間に介在されて隣り合う袋体の間隔を電磁的な引力又は斥力によって変化させる多数の電磁石とを備えており、隣り合う電磁石の間に働く引力によって袋体の間隔が狭くなった場合に、表面のほぼ法線方向に袋体が引き伸ばされ、また、隣り合う電磁石の間に働く斥力によって袋体の間隔が拡がった場合に、表面にほぼ沿う方向に袋体が引き伸ばされており、
    上記袋体が三角柱状をなしており、伸縮性膜の表面に直交する方向から見た場合に、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域を構成するように各袋体が配列され、
    上記袋体の間であって上記六角形状領域の頂点位置に電磁石が配置され、
    上記電磁石が、上記袋体の間に配置された収容部内に封入された磁性流体と該収容部の周囲に配置されたコイル部とによって構成され、
    多数の行電極からなる行電極群と、多数の列電極からなる列電極群とによって配線パターンをマトリックス状に配置し、上記コイルの端子を行電極と列電極にそれぞれ各別に接続することによって各コイルの励磁を独立に制御する
    ことを特徴とする伸縮性膜を用いた触覚呈示装置。
  9. 請求項8に記載の伸縮性膜を用いた触覚呈示装置において、各可動部材には伸縮性膜に接触される部分に電磁石がそれぞれ付設されていることを特徴とする伸縮性膜を用いた触覚呈示装置。
  10. 請求項8に記載の伸縮性膜を用いた触覚呈示装置において、各可動部材には伸縮性膜に接触される部分に温熱冷却素子がそれぞれ付設されていることを特徴とする伸縮性膜を用いた触覚呈示装置。
  11. 請求項9に記載の伸縮性膜を用いた触覚呈示装置の制御方法であって、隣り合う可動部材について両者の突出量の差が大きい程、その場所での磁界強度が大きくなるように可動部材に付設された電磁石の電流値を制御することを特徴とする伸縮性膜を用いた触覚呈示装置の制御方法。
  12. 請求項11に記載の伸縮性膜を用いた触覚呈示装置の制御方法において、隣り合う可動部材について両者の突出量の差が大きい程、その場所に対応する六角形状領域の数が多くなるように伸縮性膜を予め伸縮させた状態とし、その後、可動部材に付設された電磁石に電流を供給してその電流値を制御することにより、当該電磁石と伸縮性膜の電磁石との間に吸引力又は反発力を発生させることを特徴とする伸縮性膜を用いた触覚呈示装置の制御方法。
  13. 請求項11に記載の伸縮性膜を用いた触覚呈示装置の制御方法において、各可動部材により伸縮性膜を通して形成される凹凸状態を急激に変化させる場合には可動部材に付設された電磁石への電流供給を遮断することを特徴とする伸縮性膜を用いた触覚呈示装置の制御方法。
  14. 伸縮性膜を用いて表面形状を変化させる人工皮膚装置において、上記伸縮性膜が、その内部に流体が封入された多数の袋体と、当該袋体の間に介在されて隣り合う袋体の間隔を電磁的な引力又は斥力によって変化させる多数の電磁石とを備えており、
    上記袋体が三角柱状をなしており、伸縮性膜の表面に直交する方向から見た場合に、隣り合う6つの袋体が1つの六角形状領域を構成するように各袋体が配列され、
    上記袋体の間であって上記六角形状領域の頂点位置に電磁石が配置され、
    上記電磁石が、上記袋体の間に配置された収容部内に封入された磁性流体と該収容部の周囲に配置されたコイル部とによって構成され、
    多数の行電極からなる行電極群と、多数の列電極からなる列電極群とによって配線パターンがマトリックス状に配置され、上記コイルの端子を行電極と列電極にそれぞれ各別に接続することによって各コイルの励磁が独立に制御され、
    隣り合う電磁石の間に働く引力によって袋体の間隔が狭くなった場合に、表面のほぼ法線方向に袋体が引き伸ばされ、また、隣り合う電磁石の間に働く斥力によって袋体の間隔が拡がった場合に、表面にほぼ沿う方向に袋体が引き伸ばされる
    ことを特徴とする人工皮膚装置。
  15. 請求項14に記載した人工皮膚装置の制御方法において、関節構造を有する骨格部の外表面を伸縮性膜で覆った場合に、当該伸縮性膜のうち関節部に周囲を被覆する部分については、隣り合う電磁石の間に働く斥力によって袋体の間隔が拡がることによって袋体が膜の表面に沿う方向に伸張された状態とし、かつ、それ以外の部分については、隣り合う電磁石の間に働く引力によって袋体の間隔が狭くなることで袋体が圧縮された状態となるように制御することを特徴とする人工皮膚装置の制御方法。
  16. 請求項14に記載した人工皮膚装置によって骨格部の外表面が被覆されたことを特徴とする伸縮性膜を用いたマニピュレータ。
  17. 請求項16に記載の伸縮性膜を用いたマニピュレータの制御方法であって、伸縮性膜の伸縮状態を電磁石間に働く引力又は斥力によって変化させて関節部の駆動角度を制御し、関節部の屈曲角度が大きいとき程、各袋体がより圧縮した状態となることを特徴とする伸縮性膜を用いたマニピュレータの制御方法。
  18. 請求項16に記載の伸縮性膜を用いたマニピュレータにおいて、
    (イ)可動部が伸縮性膜に接触した状態で設けられたアクチュエータが骨格部に取り付けられていること、
    (ロ)上記アクチュエータの可動部は、伸縮性膜を押圧する方向及びその逆方向に移動できるように配列された多数の可動部材から構成されており、各可動部材をそれぞれ突出させかつその状態を保持する機構を備えた基台部が設けられていること、を特徴とする伸縮性膜を用いたマニピュレータ。
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