実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
以下、実施の形態を詳細に説明する。
図1は、一実施の形態による遠心分離装置における構成の一例を示す説明図である。図2は、図1の遠心分離装置における概観の一例を示す斜視図である。
遠心分離装置10は、図1に示すように、本体11、ドア12、収納容器13、ロータ14、電動モータ15、ドアロック機構16を有し、遠心分離の用途によっては、冷却装置17、または真空ポンプ18の一方、又はその両方をさらに有する。なお、図1の遠心分離装置10の構成からロータ14を除いた本体部分の構成を遠心分離機と称している。
本体11は、例えば金属や合成樹脂などの材料により箱形に形成されている。ドア12は、本体11にヒンジ20を介して取り付けられており、該ドア12は、ヒンジ20を支点として所定角度の範囲内で動作可能である。ドア12は、ユーザが手動で動作させる構造、または、アクチュエータにより動作させる構造の何れでもよい。アクチュエータは、電動モータ、ソレノイドを含む。
収納容器13は、本体11の内部F1に設けられている。この収納容器13は、例えば金属製であり、筒部21および底部22を有する。収納容器13の内部には、ロータ室23が形成されている。
収納容器13は、ロータ室23の開口部24が鉛直方向で上に向くように配置されている。軸孔25が底部22を貫通して設けられている。ドア12がヒンジ20を支点として動作されると、ドア12は開口部24を開閉する。
開口部24には、該開口部24を囲むように図示しないシール部材が設けられている。シール部材は、本体11または収納容器13の何れに設けられていてもよい。ドア12が実線にて示すように開口部24を閉じると、シール部材がドア12の表面に接触してシール面を形成する。つまり、ロータ室23は密封される。ドア12が二点鎖線に示すように開口部24を開くと、シール部材がドア12の表面から離れる。つまり、ロータ室23は開かれ、ユーザはロータ14をロータ室23に出し入れする作業を行える。
ロータ14は、試料を支持、具体的には収容する。ロータ14は、金属製、合成樹脂製、ガラス製、あるいはこれらの複合材料などの何れでもよい。ロータ14は、遠心処理の種類、試料の種類などに応じて複数種類が用意されており、それぞれのロータ14には、該ロータ14の種類を示す情報、すなわち形名などの情報が設けられている。
試料は、液体と固体との混合物、または液体同士の混合物を含む。電動モータ15は本体11の内部F1に設けられ、電動モータ15の回転軸26は、軸孔25を介してロータ室23に配置されている。回転軸26は、ロータ14に接続されており、回転軸26およびロータ14は一体回転する。
冷却装置17は、本体11の内部F1に設けられている。冷却装置17は、冷却配管27、第1配管28、第2配管29、第3配管30、凝縮器31、および圧縮機32を有する。
冷却配管27は、収納容器13の筒部21の外周に巻き付けられている。第1配管28は、冷却配管27と凝縮器31とを接続する。第3配管30は、冷却配管27と圧縮機32とを接続する。第2配管29は、圧縮機32と凝縮器31とを接続する。
圧縮機32は、気体の状態で冷媒を圧縮する。圧縮機32で圧縮された冷媒は第2配管29を介して凝縮器31に送られる。凝縮器31は、冷媒を冷却して液化する熱交換器である。凝縮器31から出た液状の冷媒は、第1配管28を介して冷却配管27に送られ、ロータ室23の熱が収納容器13および冷却配管27を介して冷媒に伝達され、冷却配管27内の冷媒の温度が上昇して気化する。気化した冷媒は、第3配管30を経由して圧縮機32に送られる。
このように、冷却装置17は、冷媒が循環する冷凍サイクルを形成し、ロータ室23の温度を設定値に維持する。冷却装置17は、インバータ回路または流量調整弁のいずれか一方、または両方と、電動モータと、を有する。インバータ回路を制御して電動モータの回転速度を制御、または、流量調整弁を制御することで、冷媒の圧縮圧力や供給量を制御し、ロータ室23の温度を調整可能である。
真空ポンプ18は、油回転式ポンプやダイヤフラムポンプ等が用いられ、高真空が必要な場合は、これらに加えて直列に油拡散ポンプやターボ分子ポンプ等を接続した構成で用いられ、本体11の内部F1に設けられている。真空ポンプ18の吸入口は、吸気管33を介してロータ室23に接続されている。真空ポンプ18が駆動すると、ロータ室23内が減圧される。
ドアロック機構16は、ドア12に取り付けられた係合部34および本体11の内部F1に設けられたソレノイド35を有する。係合部34は、突起、フックを含む。突起は、孔または凹部を有する。
ソレノイド35は、本体11に固定されており、ソレノイド35はプランジャ36を有する。プランジャ36は、軸方向に動作可能である。ソレノイド35への通電と非通電とを切り替えると、プランジャ36が軸方向に動作する。
プランジャ36が軸方向に動作すると、プランジャ36が係合部34に係合または解放される。ドアロック機構16は、プランジャ36が係合部34に係合してロック状態になると、ドア12が開くことを禁止する。ドアロック機構16は、プランジャ36が係合部34から解放されてアンロック状態になると、ドア12が開くことを許容する。
本体11には、図2に示すように、操作表示部37が設けられている。操作表示部37は、例えばタッチパネルなどからなり、ユーザが操作可能であり、かつ、ユーザが目視可能である。
さらに、遠心分離装置10には、図1に示すように、温度センサ43、ロータ判別センサ44、ドアセンサ45、および回転速度センサ46が設けられている。温度センサ43は、ロータ室23内の温度を検出して信号を出力する。
ロータ判別センサ44は、ロータ室23にセットされたロータ14の種類を示す形名を検出して出力する。ドアセンサ45は、ドア12が閉じられているか開いているかを検出して信号を出力する。回転速度センサ46は、回転軸26の回転速度、つまり、ロータ14の回転速度を検出して信号を出力する。
本体11の内部F1には、本体制御部47が設けられている。本体制御部47は、遠心分離装置10における制御を司る。
図3は、図1の遠心分離装置が有する本体制御部における構成の一例を示す説明図である。
本体制御部47は、制御部50、ロータ管理情報格納部51、および運転履歴情報格納部52を有する。制御部50は、例えば入力インタフェース、出力インタフェース、演算処理部、および記憶部などを有するマイクロコンピュータである。
ロータ管理情報格納部51および運転履歴情報格納部52は、フラッシュメモリなどに例示される不揮発性メモリ、磁気や光等によって読み書きが行われる記憶媒体を備えた記憶装置、あるいは、バックアップ電源(電池)などを具備した揮発性メモリなどからなり、制御部50に接続されている。これらロータ管理情報格納部51および運転履歴情報格納部52により、ロータ情報記憶部が構成されている。制御部50は、ロータ管理情報格納部51、および運転履歴情報格納部52にアクセスしてデータの読み出し/書き込みを制御する。
ロータ管理情報格納部51は、個々のロータ14の管理情報からなる後述する図4に示すロータ管理データベースDB1を格納する。運転履歴情報格納部52は、個々のロータ14の運転履歴の情報からなる後述する図5に示す運転履歴データベースDB2を格納する。
なお、図3では、ロータ管理情報格納部51および運転履歴情報格納部52をそれぞれ個別に設けた構成としたが、1つの半導体メモリにより構成するようにしてもよい。その際、運転履歴データベースDB2およびロータ管理データベースDB1を1つの半導体メモリなどに格納する。あるいは、制御部50が有する図示しないメモリ部に運転履歴データベースDB2およびロータ管理データベースDB1を格納する構成であってもよい。また、ロータ管理情報格納部51あるいは運転履歴情報格納部52の少なくとも一方は、データ入出力のインターフェースのみが本体制御部47に備えられ、実際の情報が格納される媒体は、本体11の外部と接続される外部機器であってもよく、例えば、USB等で接続されたフラッシュメモリ装置やハードディスクドライブ、有線あるいは無線の通信にてインターネットやLANを介して接続されたコンピュータ、サーバ、携帯型端末あるいは他の遠心分離機等の理化学機器に具備される記憶装置であってもよい。
制御部50には、図1の温度センサ43、ロータ判別センサ44、ドアセンサ45、および回転速度センサ46から出力される信号がそれぞれ入力されており、これらの信号に基づいて、電動モータ15の回転または停止、電動モータ15の回転速度の制御、ソレノイド35の動作制御、および圧縮機32の動作制御などを実行する。
また、制御部50は、操作表示部37に接続されており、該操作表示部37の表示処理や該操作表示部37から入力される情報の処理などを行う。制御部50は、ロータ判別センサ44から出力された信号に基づいて、ロータ14の形名を検出する。
さらに、制御部50は、第1の設定モードであるオートモードと第2の設定モードであるマニュアルモードとを有する。オートモードは、セットされたロータ14の種類を検出して運転条件を自動的に決定する設定モードである。マニュアルモードは、使用するロータ14の設定や該ロータ14の運転条件などを手動にて設定する設定モードである。
これらのモードは、ユーザが例えば操作表示部37から設定可能である。また、制御部50は、セットされたロータ14の個体情報であるシリアル番号を管理することによって、該ロータ14の管理を行う。
図4は、図3の本体制御部が有するロータ管理情報格納部に格納されるロータ管理データベースにおけるデータ構成の一例を示す説明図である。
ロータ管理データベースDB1は、図4に示すように、ロータ形名、シリアル番号、Runs、Hours、LastRun、およびAuto/Manualなどの項目を有する。
ロータ形名は、ロータの形名であり、製品名などの製品情報を表す。シリアル番号は、各々のロータに予め付与されている固有の番号などの識別子である。Runsは、ロータの運転回数の積算値である。
Hoursは、ロータの運転の積算時間である。LastRunは、ロータの最終運転日時である。Auto/Manualは、予め設定されるロータの運転形式、すなわち運転モードであり、運転モードとしては、上述したようにオートモードまたはマニュアルモードがある。
図5は、図3の本体制御部が有する運転履歴情報格納部に格納される運転履歴データベースにおけるデータ構成の一例を示す説明図である。
運転履歴データベースDB2は、図5に示すように、運転開始時刻、運転終了時刻、ロータ形名、シリアル番号、使用者名、運転条件、および運転結果などの項目を有する。運転開始時刻は、ロータの運転開始の時刻である。運転終了時刻は、ロータの運転終了の時刻である。ロータ形名は、ロータの形名である。シリアル番号は、各々のロータに予め付与されている固有の番号などの識別子である。使用者名は、ロータの使用者名である。
運転条件は、設定されたロータの運転条件を示す。この運転条件は、例えばSPEED、TIME、TEMP、ACCELコード、およびDECELコードなどからなる。SPEEDは、ロータの回転数である。TIMEは、ロータの運転時間である。TEMPは、収納容器13の設定温度である。ACCELコードは、ロータの加速の速さである。DECELコードは、ロータの減速の速さである。
運転結果は、実際に運転されたロータの運転結果を示す。この場合、運転結果は、例えばSPEED、TIME、およびTEMPなどを有する。SPEEDは、実際に運転されたロータの回転数であり、TIMEは、実際に運転されたロータの時間である。TEMPは、収納容器13の実際の温度である。
続いて、本体制御部47によるロータ14のセットから運転開始までの動作処理について説明する。
図6は、図1の本体制御部による動作処理の一例を示すフローチャートである。
この図6は、ロータ室23にロータ14がセットされてから運転開始するまでの動作処理を示したものである。
以下に示す処理を行う各種機能は、たとえば、制御部50などに設けられた図示しないプログラム格納メモリなどに記憶されているプログラム形式のソフトウェアを、該制御部50がそれぞれ実行することにより実現する。
まず、ユーザがロータ14をロータ室23にセットすると(ステップS101)、ロータ判別センサ44がロータ14に設けられた形名を検出して制御部50に出力する(ステップS102)。
ロータ14には、予め設定された間隔にてマグネットが設けられている。ロータ判別センサ44は、ロータ14がセットされた際に該ロータ14に設けられたマグネットの磁力を検出することによってロータ室23にセットされたロータ14の形名を検出する。
続いて、制御部50は、ロータ管理情報格納部51に格納されているロータ管理データベースDB1から、ステップS102の処理にて検出したロータ14の形名の登録状況を検索して、登録状況を判定する(ステップS103)。
このステップS103の処理では、以下に示す(A)〜(D)のいずれの登録状況であるかを判定する。
登録状況の判定結果としては、
(A)セットされたロータ14の形名がロータ管理データベースDB1に登録されていない場合(ステップS104)、
(B)ロータ管理データベースDB1にセットされたロータ14の形名が1つだけ登録されている場合(ステップS105)、
(C)ロータ管理データベースDB1にセットされたロータ14の形名が2以上登録されており、登録されている中にオートモードに設定されたロータがある場合(ステップS106)、
(D)ロータ管理データベースDB1にセットされたロータ14の形名が2以上登録されているが、登録されている中にオートモードに設定されたロータがない場合(ステップS107)、
がある。
続いて、判定結果が上記(A)〜(D)の場合における処理についてそれぞれ説明する。
始めにステップS104の処理の判定結果が(A)、すなわちセットされたロータ14の形名がロータ管理データベースDB1に登録されていない場合の処理について、図7および図10を用いて説明する。
図7は、図6のステップS103の処理に続くロータ管理データベースの登録処理の一例を示すフローチャートである。図10は、図7または図8に続くフローチャートである。
図7は、図6のステップS103の処理にてロータの形名がロータ管理データベースDB1に登録されていないと判定した際、該ロータをロータ管理データベースDB1に登録する際の処理例を示したものである。
まず、図6のステップS103の処理にて、ロータの形名がロータ管理データベースに登録されていないと判定すると、図7の処理10に遷移し、ユーザは、セットしたロータ14のシリアル番号を入力する(ステップS201)。
このステップS201の処理において、制御部50は、操作表示部37に図11に示すシリアル番号登録画面80を表示させる。このシリアル番号登録画面80は、ロータのシリアル番号を入力する画面である。
シリアル番号登録画面80には、シリアル番号を入力するシリアル番号入力表示部81が設けられている。ユーザは、シリアル番号入力表示部81からロータ14に割り付けられているシリアル番号を入力する。
入力したシリアル番号は、シリアル番号入力表示部81に表示され、該シリアル番号が正しい場合には、設定キー81aの「Close」をタッチすることにより、シリアル番号の入力が完了となる。
制御部50は、シリアル番号登録画面80において入力されたロータ14のシリアル番号と図6のステップS102の処理にて検出されたロータ14の形名とを紐付けてロータ管理情報格納部51のロータ管理データベースDB1に登録する(ステップS202)。
この際、後述するロータの寿命管理に用いるしきい値を入力してロータ管理データベースDB1に登録するようにしてもよい。また、運転モードについては、オートモードとして自動的にロータ管理データベースDB1に登録される。
ステップS202の処理が終了すると、図10に示す処理50を行う。この図10の処理において、制御部50は、操作表示部37に図12に示すロータ運転画面82を表示させる。これにより、運転準備が完了となる(ステップS301)。
ユーザは、図12に示すロータ運転画面82が有する速度入力部83、時間入力部84、および温度入力部85に運転条件をそれぞれ入力する。速度入力部83は、ロータ14の回転数を設定する。時間入力部84は、ロータの運転時間を入力する。温度入力部85は、収納容器13の温度を設定する。
以上により、セットされたロータ14のロータの形名がロータ管理データベースに登録されていない場合の処理が終了となる。
そして、ユーザがロータ運転画面82のスタートボタン89をタッチすると、制御部50は、設定された運転条件による運転を開始する。運転が終了すると、制御部50は、運転履歴データベースDB2に実際に運転されたロータの回転数、実際のロータの運転時間、および収納容器13の実際の温度などを運転結果として登録する。
続いて、ステップS105の処理の判定結果が(B)、すなわちロータ管理データベースDB1にセットされたロータ14の形名が1つだけ登録されている場合の処理について、図8および図10を用いて説明する。
図8は、図6のステップS103の処理に続く運転条件の設定処理の一例を示すフローチャートである。
この図8は、図6のステップS103の処理にてロータ管理データベースにセットされたロータ14の形名が1つだけ登録されていると判定した際の運転条件の設定処理を示したものである。
まず、図6のステップS103の処理にて、セットされたロータ14の形名が1つだけ登録されていると判定すると、制御部50は、ロータ管理データベースDB1から形名の一致するシリアル番号を取得する。
続いて、制御部50は、形名および取得したおよびシリアル番号と合致する最新の運転条件を運転履歴データベースDB2から検索して取得し、取得した検索結果を操作表示部37に図13に示すメッセージウィンドウ86として表示させた後、図8に示す処理20を実行する。
このメッセージウィンドウ86は、検索結果であるロータ14の最新の運転条件、その運転日時、シリアル番号、および型番などを示したものである。
なお、ここでは、メッセージウィンドウ86に表示する運転条件は、運転履歴のうち、最新の運転履歴の運転条件としたが、例えば最も運転頻度の高い運転条件などを検索して表示するようにしてもよい。
そして、図8の処理20において、制御部50は、図13のメッセージウィンドウ86に表示されている運転条件を使用するか否かを判定する(ステップS401)。制御部50は、メッセージウィンドウ86に表示される「OK」の選択ボタン87をユーザが選択した際、または予め設定された時間、例えば3秒程度の時間、何も操作がされなかったと判定した際にメッセージウィンドウ86に表示している運転条件を今回の運転条件として設定した後(ステップS402)、前述した図10に示す処理50を行う。
また、メッセージウィンドウ86に表示される「NO」の選択ボタン88をユーザが選択した場合、制御部50は、運転条件を変更せずに図10に示す処理50を行う(ステップS403)。すなわち、制御部50は、1つ前の運転条件を引き継ぎ、該1つ前の運転条件を今回の運転条件として設定する。
ステップS402の処理が終了すると、図10において、制御部50は、図12に示すロータ運転画面82を表示させる。この場合、ロータ運転画面82の速度入力部83、時間入力部84、および温度入力部85には、図8のステップS402の処理にて設定された運転条件、すなわちロータ14の回転数、ロータの運転時間、収納容器13の温度がそれぞれ表示されている。これにより、運転準備が完了となる(ステップS301)。
ユーザがロータ運転画面82のスタートボタン89をタッチすると、制御部50は、ステップS402の処理にて設定された運転条件による運転を開始する。運転が終了すると、制御部50は、運転履歴データベースDB2に実際に運転されたロータの回転数、実際のロータの運転時間、および収納容器13の実際の温度を運転結果として登録する。
このように、ロータ14をセットするだけで自動的に運転条件が設定されるので、ユーザによる運転条件の設定動作を不要とすることができる。それにより、作業工数を低減することができ、試料の遠心分離効率を向上させることができる。
また、ステップS105の処理は、運転モードの状態によらず実行されるが、運転モードの状態判定後にステップS105の処理を実行してもよい。運転モードがオートモードに設定されており、登録されているロータ14の形名が1つのときにステップS105の処理が実行される。
運転モードがマニュアルモードに設定されているときは、登録されているロータ14の形名が1つであったとしても、使用するロータ14の設定や該ロータ14の運転条件などをユーザに促す。
この場合についても、運転モードがオートモードに設定されている状態にてロータ14をセットするだけで自動的に運転条件が設定されるので、ユーザによる運転条件の設定動作を不要とすることができる。
それにより、作業工数を低減することができ、試料の遠心分離効率を向上させることができる。また、運転モードをマニュアルモードに設定していれば使用者が普段とは異なる遠心分離を実施したい場合に対応可能であり、利便性が向上する。
続いて、ステップS106の処理の判定結果が(C)、すなわちセットされたロータ14の形名が2以上登録されており、登録されている中にオートモードに設定されたロータがある場合の処理について、図8および図10を用いて説明する。なお、オートモードは、2以上の同じ形名のロータ14のうち、任意の1つのみに設定されるものとする。
まず、図6のステップS103の処理にて、ロータ14の形名が2以上登録されていると判定すると、制御部50は、ロータ管理データベースDB1からオートモードに設定され、かつ形名が一致するロータのシリアル番号を抽出する。上述したように、オートモードに設定されるロータ14は、同じ形名のロータが複数あっても1つのみである。
制御部50は、検出したロータ14の形名およびシリアル番号と合致する最新の運転条件を運転履歴データベースDB2から検索し、図13に示すメッセージウィンドウ86を操作表示部37に表示させる。
このメッセージウィンドウ86は、判定結果(B)の場合と同様に、検索結果であるロータ14の最新の運転条件、その運転日時、シリアル番号、および型番などを示したものである。
制御部50は、図13に示すメッセージウィンドウ86として表示させた後、図8に示す処理20を実行する。なお、ここでも、メッセージウィンドウ86に表示する運転条件は、最新の運転履歴の運転条件としたが、例えば最も運転頻度の高い運転条件などを検索して表示するようにしてもよい。
そして、図8において、制御部50は、メッセージウィンドウ86に表示されている運転条件を使用するか否かを判定する(ステップS401)。制御部50は、メッセージウィンドウ86に表示される「OK」の選択ボタン87をユーザが選択した際、または予め設定された時間、例えば3秒程度の時間、何も操作がされなかったと判定した際にメッセージウィンドウ86に表示している運転条件を今回の運転条件として設定した後(ステップS402)、前述した図10に示す処理50を行う。
また、新たな運転条件を設定する場合あるいはセットされたロータのシリアル番号が抽出したシリアル番号と異なる場合、ユーザは、メッセージウィンドウ86に表示される「NO」の選択ボタン88を選択する。
「NO」の選択ボタン88が選択されると、制御部50は、運転条件を変更せずに図10に示す処理50を行う(ステップS403)。すなわち、制御部50は、1つ前の運転条件を引き継ぎ、該1つ前の運転条件を今回の運転条件として設定する。
ステップS402の処理が終了すると、図10において、制御部50は、図12に示すロータ運転画面82を表示させる。この場合、ロータ運転画面82の速度入力部83、時間入力部84、および温度入力部85には、図8のステップS402の処理にて設定された運転条件、すなわちロータ14の回転数、ロータの運転時間、収納容器13の温度がそれぞれ表示されている。これにより、運転準備が完了となる(ステップS301)。
ユーザがロータ運転画面82のスタートボタン89をタッチすると、制御部50は、ステップS402の処理にて設定された運転条件による運転を開始する。運転が終了すると、制御部50は、運転履歴データベースDB2に実際に運転されたロータの回転数、実際のロータの運転時間、および収納容器13の実際の温度を運転結果として登録する。
この場合においても、ロータ14をセットするだけで自動的に運転条件が設定されるので、ユーザによる運転条件の設定動作を不要とすることができる。それにより、作業工数を低減することができ、試料の遠心分離効率を向上させることができる。
続いて、ステップS107の処理の判定結果が(D)、すなわちロータ管理データベースDB1にセットされたロータ14の形名が2以上登録されているが、登録されている中にオートモードに設定されたロータがない場合の処理について、図9、および図8、図10を用いて説明する。
図9は、図6に続くロータ管理データベースへのロータの登録処理の一例を示すフローチャートである。
この図9は、図6のステップS103の処理にてロータ管理データベースDB1にセットされたロータ14の形名が2以上登録されているが、その中にオートモードに設定されたロータがないと判定した際のロータ管理データベースDB1へのロータの登録処理の例を示したものである。
まず、図6のステップS103の処理にて、ロータ管理データベースDB1にセットされたロータ14の形名が2以上登録されているが、登録されている中にオートモードに設定されたロータがないと判定すると、制御部50は、ロータ管理データベースDB1からロータの形名が一致するすべてのシリアル番号を抽出する。
そして、制御部50は、図14に示すシリアル番号選択メニュー90を操作表示部37に表示させる。シリアル番号選択メニュー90は、プルダウンボタン91を有しており、ユーザがプルダウンボタン91をタッチすることによってプルダウンリスト92が表示される。
プルダウンリスト92には、抽出したシリアル番号が一覧形式によって表示されている。図9の処理30において、ユーザは、プルダウンリスト92に表示された一覧から該当するシリアル番号のリストをタッチすることによってセットしたロータ14を選択する(ステップS501)。
ステップS501の処理において、プルダウンリスト92からシリアル番号を選択した際には、図8の処理20を実行して運転条件を設定した後、図10の処理50を実行する。
また、プルダウンリスト92にセットしたロータのシリアル番号がない場合、すなわち新しいロータをセットした際には、図7の処理10を実行して新しいシリアル番号をロータ管理データベースDB1に登録した後、図10の処理50を実行する。
そして、図10に示す処理50が実行されて運転準備が完了となると、ユーザがロータ運転画面82のスタートボタン89をタッチすることにより、制御部50が設定された運転条件による運転を開始する。
運転が終了すると、制御部50は、運転履歴データベースDB2に実際に運転されたロータの回転数、実際のロータの運転時間、および収納容器13の実際の温度を運転結果として登録する。
これにより、オートモードに設定されたロータがない場合であっても、容易に短時間で運転条件を設定することができる。それにより、作業工数を低減することができ、試料の遠心分離効率を向上させることができる。
続いて、運転履歴データベースDB2に登録されているロータの運転履歴の確認処理について説明する。
図15は、図1の遠心分離装置が有する操作表示部に表示される履歴確認画面の一例を示す説明図である。
まず、図15(a)に示すように、操作表示部37に表示されるメニュー画面100から履歴確認アイコン101をタッチすると、図15(b)に示すように、運転履歴リスト画面102が表示される。
運転履歴リスト画面102は、ロータの形名、シリアル番号、および該シリアル番号に紐付けられた運転履歴が一覧表形式にて表示したものである。この場合、運転履歴は、例えば運転時の日時、ロータの回転数などである。この運転履歴リスト画面102は、制御部50が運転履歴データベースDB2に登録されている情報に基づいて生成する。
図15(b)に示す運転履歴リスト画面102から所望のロータのリスト行をタッチすることにより、図15(c)に示す運転履歴詳細画面103が表示される。
運転履歴詳細画面103は、ユーザが図15(b)に示す運転履歴リスト画面102から選択したロータにおけるより詳しい運転履歴を表示する画面であり、例えば運転履歴データベースDB2に登録されている運転開始時刻、運転終了時刻、ロータ形名、シリアル番号、使用者、運転条件、および運転結果などが表示される。運転履歴詳細画面103においても、制御部50が運転履歴データベースDB2に登録されている情報に基づいて生成する。
このようにロータの形名とシリアル番号とを紐付けて運転履歴を管理して閲覧することができるので、ロータ毎の運転履歴を短時間で容易に確認することができ、ロータの管理を効率よく行うことができる。
続いて、オートモードの設定について説明する。
図16は、図1の遠心分離装置が有する操作表示部に表示されるオートモード設定画面の一例を示す説明図である。
ユーザが操作表示部37を操作することによって、該操作表示部37にオートモード設定画面120を表示させる。このオートモード設定画面120は、例えばロータ管理データベースDB1に同じ型番のロータが複数登録されている際に、ユーザがそれらの中から任意のロータをオートモードに設定する際の画面である。
ユーザによりオートモード設定画面120の表示の要求があると、制御部50は、ロータ管理データベースDB1から同じ形名のロータを検索して抽出する。制御部50は、抽出したロータのシリアル番号などの情報をロータ毎に表示バー121を一覧形式にて表示する。
表示バー121には、例えばロータの形名とシリアル番号、運転積算回数、運転積算時間、および最終運転日時などの情報が表示されている。表示バー121の左側には、運転モード選択ボタン122が表示されている。
ユーザは、オートモードに設定したいロータに該当する運転モード選択ボタン122をタッチするなどして選択する。選択された運転モード選択ボタン122には、「Auto」が表示される。
これによって、運転モード選択ボタン122によって選択されたロータがオートモードに設定される。この設定情報は、制御部50によってロータ管理データベースDB1に登録される。以上の処理により、オートモードの設定を容易に変更することができる。
その際、選択されていない他の運転モード選択ボタン122は、「Manual」と表示される。この「Manual」は、「Auto」の表示とは識別できるように表示する。例えば「Auto」の表示とは異なる色表示としてもよいし、あるいは「Auto」の表示よりも輝度を落として表示するようにしてもよい。これによって、オートモードの設定をどのロータに設定したかを容易に識別することができる。
続いて、図3の本体制御部47によるロータの寿命管理技術について説明する。
遠心分離装置は、遠心条件(試料に印加される遠心力や、その印加時間)を厳密に管理することが求められる。ロータは遠心加速を得る必要から高速回転され、長期の使用によりロータの摩耗や形状変化の可能性があり、遠心条件を厳密に管理する必要がある遠心分離装置においては、ロータの使用状況を把握し、ロータの寿命、すなわちメンテナンス時期やロータ交換時期を管理することが求められる。
上述したように、図5の運転履歴データベースDB2には、実際に運転されたロータの回転数、ロータの運転時間、および運転時における収納容器13の実際の温度などが運転結果として登録されている。
制御部50は、ロータの運転が終了して運転履歴データベースDB2の運転結果が更新された際に、運転結果と予め設定されているしきい値とを比較して該運転結果がしきい値を超えた際にアラートを出力する。
具体的には、制御部50は、運転履歴データベースDB2のロータの積算運転時間と予め設定されたしきい値とを比較し、該積算運転時間がしきい値、すなわち設定時間を超えた際にそのロータに寿命が近づいている、あるいはロータが寿命であると判定してアラートを出力する。
また、しきい値は、例えば運転履歴データベースDB2などに設定されるものとする。また、しきい値は、ユーザが操作表示部37によって任意に設定あるは変更する構成であってもよい。
しきい値は、積算運転時間に加えて、例えばロータの積算回転数などのしきい値を設定するようにしてもよい。この場合、積算運転時間とロータの積算回転数とがそれぞれ設定されたしきい値を超えた際にアラートを出力する構成となる。
このアラートは、例えば操作表示部37に出力される。操作表示部37は、アラートを受け取ると、寿命であることを知らせる警告画面を表示する。あるいは警報などであってもよい。
このように、制御部50がロータ14の寿命管理を形名およびシリアル番号毎に個別に行うので、ユーザの手間を取らせることなく、形名の同じ複数のロータにおける寿命管理を容易に行うことができる。
以上により、運転条件の設定を容易に短時間で行うことができるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。