JP6917218B2 - 海島型複合繊維およびそれからなる布帛 - Google Patents
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Description
特許文献4は、結晶性α−ポリオレフィンをポリオレフィンへ分散させた樹脂を芯部ポリマーとし、ポリアミドやポリエステルを鞘部ポリマーとした摩擦防融性を有する芯鞘型複合繊維が提案されている。
特許文献4は、摩擦防融性能を有する繊維が記載されているが、温調性能に言及されていない。また特許文献4の複合繊維は、結晶性α−ポリオレフィンを最大でも30質量%しかポリオレフィンへ分散させることができず、複合繊維中に、結晶性α−ポリオレフィンを大量に含ませることができない。このため、温調性能を有する繊維として用いたとしても、相転移熱量が小さくなり温度調節効果も限定的なものとなる。更に染色性に乏しいポリオレフィンを多量に用いざるを得ず、衣料用途で用いる場合、着色可能な色は限定的となり、特に黒や濃紺、濃い赤等の濃色の染色はできない。
したがって、本発明は上記の問題を解決し、結晶性α−ポリオレフィンを含む繊維において、良好な紡糸性と温調機能を有し、結晶性α-オレフィンを高濃度に繊維中に含有することができる繊維を得ることを目的とする。
上記温調性能を有する海島型複合繊維において、結晶性α−ポリオレフィンの融点が20℃以上、45℃以下であることを特徴とする海島型複合繊維を第二の要旨とする。
上記温調性能を有する海島型複合繊維において、繊維形成性樹脂が、ポリアミド樹脂もまたはポリエステル樹脂である海島型複合繊維を第三の要旨とする。
また、本発明は、上記海島型複合繊維を25質量%以上含有する布帛を第四の要旨とする。
本発明は、海成分と島成分からなる海島型複合繊維である。
温調樹脂を得る好適な方法として、例えば、所定量の結晶性α−ポリオレフィン、ポリプロピレンおよび有機過酸化物を予備混合した後、180〜210℃の温度で通常の方法で溶融混練することで、結晶性α−ポリオレフィンとポリプロピレンとが部分架橋した温調樹脂を得ることが挙げられる。
島成分となる温調樹脂と海成分となる繊維形成樹脂を夫々の押出機で溶融し、溶融樹脂を個別のギアポンプで計量吐出し、目標とする繊維断面形状を形成可能な口金を用い紡出し、冷却後、巻き取るという一般的な溶融紡糸法により、本発明の海島型複合繊維を得ることができる。巻き取り方法としては、(1)400〜1,000m/分で未延伸糸(UDY)として巻取り、別工程で延伸する方法、(2)3,000〜5,000m/分で部分延伸糸(POY)で巻き取る方法(3)800〜1,200m/分の第一ローラ(GR1)と3,000〜3,800m/分程度の第二ローラー(GR2)を用い、GR1とGR2の間で延伸を行う紡糸直延伸法(SPD)等が好適に採用できる。
また、海島型繊維の単繊維中の島数は、特に限定されるものではなく、繊維長方向に連続した1島から61島程度とすることが、ノズル作製の上から好ましい。また繊維長方向に連続した海島型複合繊維とする以外に、多数の島を繊維軸方向に断続的に配置された構造とする海島型複合繊維としてもよい。
布帛とするときに用いる海島型複合繊維の形態は、特に限定するものではなく、生糸、仮撚加工糸等の加工糸、他の糸との混繊糸等として用いることができる。
製編方法としては、通常の丸編み機等をそのまま用いて製編することができる。
高い温調性能を発揮するためには、布帛中の本発明の海島型複合繊維比率を25質量%以上にすることが好ましく、より好ましくは、33質量%以上であり、本発明の海島型複合繊維のみで布帛としてもよい。
示差走査熱量測定装置(DSC8500:パーキンエルマージャパン社製)を用いて、以下の条件で測定した。
サンプル容器:Alパン
測定雰囲気:N2
加熱冷却温度範囲:0℃〜60℃
加熱冷却速度:10℃/min
試料糸および対照糸を各々24ゲージの丸編み機を用いて目付け200g/m2のスムース編地を作製し精練した後、各々の編地でボタン電池型温湿度データロガーを包み、低温側所定温湿度の恒温恒湿器の中に1時間以上置いた後、高温側所定温湿度の恒温恒湿器に移動し、試料糸で作製された編地(試験試料)内の温度変化と対照糸で作製された編地(対照試料)内の温度の変化を記録した。試験試料と対照試料との温度差(ΔT℃)を測定し、昇温時最大温度差とし、その差ΔTが2℃以上の場合を、十分効果があるとして「◎」、ΔTが1℃以上で2℃未満の場合を、効果ありとして「○」、ΔTが1℃未満の場合を、効果不十分として「×」と評価した。
更に、高温側所定温湿度の恒温恒湿器中にそのまま30分以上置いた後、低温側所定温湿度の恒温恒湿器の中に移動し、同様に試験試料と対照試料との温度差(ΔT℃)を測定し降温時最大温度差とし、その差ΔTが2℃以上の場合を、十分効果があるとして「◎」、ΔT1℃以上で2℃未満を効果ありとして「○」、ΔTが1℃未満の場合を効果不十分「×」と評価した。
紡糸性評価として連続紡糸24時間以上糸切れが無かった場合を「◎」、紡糸24時間で3時間未満の時間での糸切れが無くかつ24時間で糸切れが3回以内の場合を「○」、紡糸時の糸切れにより3時間以上の連続紡糸ができなかった場合または24時間で糸切れが3回を超える場合を「×」と評価した。
試料糸および対照糸を各々24ゲージの丸編み機を用いて目付け200g/m2のスムース編地を作製した。作製した編地をDystar Japan製黒色酸性染料「Isolan Black 2S−LD」(商品名)を用い、4%o.w.f.の濃度で98℃、60分間の条件で染色し乾燥、セットした、染色後の編地は、日本電飾工業製測色色差計を用いL*値を測定記録した。
加熱乾燥した10リットルオートクレーブに、重合原料として1−ヘキサデセン(C16)1リットル、および1−オクタデセン(C18)1リットル、反応溶媒としてn−ヘプタン2リットルを加え、温度60℃にした後、触媒としてトリイソブチルアルミニウム40ミリモル、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを40マイクロモル、およびメチルアルミノキサン40ミリモルを加え、水素雰囲気下0.05MPaで2時間共重合反応させた。
共重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、結晶性α−ポリオレフィン樹脂を920g得た。
得られた共重合体のDSCによる分析結果では、融点Tm=32℃、融解熱量ΔH=67J/g、凝固点Tc’=25℃、凝固熱量66J/gであった。得られた結晶性α−ポリオレフィン樹脂をCPAO32とした。
加熱乾燥した10リットルオートクレーブに、1−ヘキサデセン(C16)2リットル、メチルアルミノキサン100ミリモルを加え、攪拌しながら温度を60℃にした後、触媒として(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを100マイクロモル加え、更に0.2MPa水素雰囲気下で2時間重合した。
重合反応終了後、反応物を加熱、減圧下、乾燥することにより、結晶性α−ポリオレフィン樹脂を500g得た。
得られた共重合体のDSCによる分析結果では、融点Tm=28℃、融解熱量ΔH=78J/g、凝固点Tc’=20℃、凝固熱量70J/gであった。得られた結晶性α−ポリオレフィン樹脂をCPAO28とした。
結晶性α−ポリオレフィンとしてCPAO32を70質量%、ポリプロピレンとして日本ポリプロピレン製ノバテック(登録商標)PPのSA01A(グレード名)30質量%、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドであるアルケマ吉富製ルベロックス(登録商標)DCP(グレード名)を結晶性α−ポリオレフィンとポリプロピレンとの合計100部に対して1部をタンブラーで予備混合した後、東芝機械製二軸押出混練機TEM−26SSにて220℃の設定温度でスクリュー回転を250rpmとして、樹脂供給速度を10kg/時間にて溶融混練し、水槽へ吐出し索化してペレタイザーにてペレット化して温調樹脂Iを得た。
温調樹脂IをDSC分析したところ、融点31.5℃、融解熱量37J/gであった。
結晶性α−ポリオレフィンとしてCPAO28を80質量%とし、ポリプロピレンを20質量%とし、有機過酸化物としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートである日本油脂製パーブチル(登録商標)Eを樹脂成分100部に対し1.5部を用いる以外は、温調樹脂Iの製造例と同様にして温調樹脂IIを得た。得られた温調樹脂IIをDSC分析したところ、融点28.3℃、融解熱量42J/gであった。
温調樹脂Iの製造において、有機過酸化物を添加しない以外は、温調樹脂Iの製造例と同様に行ったところ、二軸押出混練機の吐出口から時々結晶性α−ポリオレフィンとしてCPAO32だけが噴出し、均一な温調樹脂組成物を得ることができなかった。
温調樹脂IIの製造において、有機過酸化物の添加量を6部とする以外は、温調樹脂IIの製造例と同様に行ったところ、二軸押出混練機の吐出口からの出てくる索を細化させた場合明らかな粒が認められ、ゲルが発生していた。
温調樹脂IIの製造において、結晶性α−ポリオレフィンとしてCPAO28を20質量%としポリプロピレンを80質量%とし、有機過酸化物を用いない以外は温調樹脂IIの製造例と同様に行い温調樹脂II−Cを得た。得られた温調樹脂II−CをDSC分析したところ、融点28.0℃、融解熱量9J/gであった。
250℃に設定した主押出機を用い、宇部興産株式会社製ポリアミド6樹脂1011FBを溶解し、ギアポンプにて250℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し単独糸用ノズルより押出し、速度1,000m/分に設定したワインダーで巻取り、未延伸糸(234dtex/24f)を作製し、更に3倍延伸して78dtex/24fのポリアミド6単独繊維を得て対照糸1とした。
275℃に設定した主押出機を用い、KBセーレン株式会社製、繊維用セミダルPET樹脂を溶解し、ギアポンプにて280℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し単独糸用ノズルより押出し、GR1速度1,000m/分、GR2速度3,000m/分に設定したワインダーで巻取り、スピンドロー法により84dtex/24fのポリエステル単独繊維を得て対照糸2とした。
芯成分の押出機として240℃に設定した主押出機を用い、鞘成分の押出機として250℃に設定した副押出機を用い、芯成分として温調樹脂I、鞘成分の繊維形成性樹脂として宇部興産株式会社製ポリアミド6樹脂1011FB(グレード名)とをそれぞれ溶解し、それぞれの樹脂が50質量%となる様にギアポンプにて250℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し、芯鞘用ノズルより押出し、速度1,000m/分に設定したワインダーで巻取り、未延伸糸(234dtex/24f)を作製し、さらに3倍延伸して78dtex/24f、芯鞘型複合繊維(島成分1つと海成分からなる海島型複合繊維)を得た。
得られた海島型複合繊維を試料糸とし、対照糸1を対照糸とし、温調性能を評価しその結果を表1に示す。
芯成分の押出機として180℃に設定した主押出機を用い、鞘成分の押出機として250℃に設定した副押出機を用い、芯成分の結晶性α−ポリオレフィンとしてCPAO32、鞘成分の繊維形成性樹脂として宇部興産株式会社製ポリアミド6樹脂1011FB(グレード名)とをそれぞれ溶解し、それぞれの樹脂が50質量%となるようにギアポンプにて250℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し、芯鞘用ノズルより押出し、速度1,000m/分に設定したワインダーで巻取った。結晶性α−ポリオレフィンの存在しない繊維や不均一な芯鞘比率の糸しか紡出されず、更に紡糸ノズルより時々CPAO32が単体として吐出し糸切れし、温調性能評価用の編地作製ができる量の繊維を確保することができなかった。
芯成分の押出機として240℃に設定した主押出機を用い、鞘成分の押出機として250℃に設定した副押出機を用い、芯成分として温調樹脂Iの製造に用いたポリプロピレンSA01Aと、鞘成分の繊維形成性樹脂として宇部興産株式会社製ポリアミド6樹脂1011FB(グレード名)とをそれぞれ溶解し、それぞれの樹脂が50質量%となるようにギヤポンプにて250℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し、芯鞘用ノズルより押出し、速度1,000m/分に設定したワインダーで巻取り、未延伸糸(234dtex/24f)を作製し、さらに3倍延伸して78dtex/24f、芯鞘型の海島型複合繊維を得た。
得られた海島型複合繊維を試料糸とし、対象糸1を対象糸とし、温調性能を評価しその結果を表1に示す。
島成分の押出機として240℃に設定した主押出機を用い、海成分の押出機として250℃に設定した副押出機を用い、島成分として温調樹脂II、海成分の繊維形成性樹脂として宇部興産株式会社製ポリアミド6樹脂1011FB(グレード名)とをそれぞれ溶解し、島成分が40質量%、海成分が60質量%となる様にギアポンプにて250℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し19海島用ノズルより押出し、速度1,000m/分に設定したワインダーで巻取り、未延伸糸(234dtex/24f)を作製し、さらに3倍延伸して78dtex/24fの海島型複合繊維を得た。
得られた海島型複合繊維を試料糸とし、対照糸1を対照糸とし、温調性能を評価しその結果を表1に示す。
島成分の押出機として240℃に設定した主押出機を用い、島成分として、温調樹脂IIの製造例で用いた結晶性α−ポリオレフィンのCPAO28とポリプロピレンSA01Aを温調樹脂IIの製造例での比率で混合したものを用いる以外は、実施例2と同様の方法で紡糸したが、糸切れが多発した。少量取れた未延伸糸を延伸し海島型複合繊維を得たが、島数が19より少ない繊維となったり、島が融着して大きな島が生じている繊維となり、安定した海島型複合繊維を得ることができなかった。
島成分の押出機として240℃に設定した主押出機を用い、海成分の押出機として250℃に設定した副押出機を用い、島成分として温調樹脂II−C、海成分の繊維形成性樹脂として宇部興産株式会社製ポリアミド6樹脂1011FB(グレード名)とをそれぞれ溶解し、島成分が40質量%、海成分が60質量%となる様にギアポンプにて250℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し19海島用ノズルより押出し、速度1,000m/分に設定したワインダーで巻取り、未延伸糸(234dtex/24f)を作製し、さらに3倍延伸して78dtex/24fの海島型複合繊維を得た。
得られた海島型複合繊維を試料糸とし、対照糸1を対照糸とし、温調性能を評価しその結果を表1に示す。
島成分比率を80質量%、海成分比率を20質量%とする以外は、比較例4と同様にして海島型複合繊維を得た。
得られた海島型複合繊維を試料糸とし、対照糸1を対照糸とし、温調性能を評価しその結果を表1に示す。
芯成分の押出機として240℃に設定した主押出機を用い、鞘成分の押出機として270℃に設定した副押出機を用い、芯成分として温調樹脂II、鞘成分としてKBセーレン株式会社製、繊維用セミダルPET樹脂とをそれぞれ溶解し、芯成分が70質量%、鞘成分が30質量%となる様にギアポンプにて270℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し芯鞘用ノズルより押出し、GR1速度1,000m/分、GR2速度3,000m/分に設定したワインダーで巻取り、スピンドロー法により84dtex/24fの温調性能を有する海島型複合繊維を得た。
得られた海島型複合繊維を試料糸とし、対照糸2を対照糸とし、温調性能を評価しその結果を表1に示す。
島成分の押出機として240℃に設定した主押出機を用い、海成分の押出機として265℃に設定した副押出機を用い、島成分として温調樹脂II、海成分としてKBセーレン株式会社製のスルホイソフタル酸が共重合されている繊維用カチオン易染PET樹脂とをそれぞれ溶解し、芯成分が40質量%、鞘成分60質量%となる様にギアポンプにて265℃に設定した紡糸ヘッド内へ計量し、19海島用ノズルより押出し、GR1速度1,000m/分、GR2速度3,000m/分に設定したワインダーで巻取り、スピンドロー法により84dtex/24fの海島型複合繊維を得た。
得られた海島型複合繊維を試料糸とし、対照糸2を対照糸とし、温調性能を評価しその結果を表1に示す。
2 温調樹脂
Claims (4)
- 結晶性α−ポリオレフィンとポリプロピレンとを、有機過酸化物にて架橋した温調樹脂を島成分とし、繊維形成性樹脂を海成分とし、前記結晶性α−ポリオレフィンが、末端に二重結合を有する炭素数12、16、18、20、22および24の高級α−オレフィンの群より選ばれる少なくとも1種類以上を重合した重合体である海島型複合繊維。
- 結晶性α−ポリオレフィンの融点が20℃以上、45℃以下であることを特徴とする請求項1記載の海島型複合繊維。
- 繊維形成性樹脂が、ポリアミド樹脂もしくはポリエステル樹脂である請求項1または2記載の海島型複合繊維。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の海島型複合繊維を25質量%以上含有する布帛。
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