JP6916073B2 - 光デバイス - Google Patents

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本発明は、光デバイスに関する。
近年、省エネルギー化および長寿命化のニーズにより、固体光源を用いた光学デバイスが注目されている。レーザダイオード(Laser Diode(LD))および発光ダイオード(Light Emitting Diode(LED))などの固体光源と蛍光体とを組み合わせた高効率な蛍光体デバイスの開発が行なわれている。
従来、蛍光体デバイスを高効率化する方法として、励起光源と蛍光体層とを空間的に離して配置し、蛍光体層の温度上昇を抑制する反射方式の装置が提案されている。例えば、特許文献1は、そのような反射方式の装置を開示している。反射方式の蛍光体デバイスは、蛍光体層と基板との間に反射層を備える。励起光より励起された蛍光体層から発せられた光は、反射層で反射されて利用される。特許文献1の構成では、基板としてアルミニウム製の平板が用いられ、反射層として銀が用いられている。特許文献2は、反射層として、銀およびアルミニウムなどの金属膜が用いられた構成を開示している。
特開2012−64484号公報 特開2016−058378号公報
本開示は、蛍光体層から発せられた光を効率よく反射させることによって、光デバイスの効率を上げる新規な技術を提供する。
本開示の一態様に係る光デバイスは、金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する蛍光体層と、を備える。前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長よりも長く、前記誘電体層は、2以上6以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる。
本開示の他の態様に係る光デバイスは、金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する蛍光体層と、を備える。前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、前記光源の発光スペクトルと、前記蛍光体層の発光スペクトルとを合わせた光スペクトルの重心波長よりも長く、前記誘電体層は、2以上6以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる。
上記の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または記録媒体で実現されてもよい。あるいは、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示の技術によれば、蛍光体層から発せられた光を効率よく反射させることによって、光デバイスの効率を上げることができる。
図1は、本実施形態における、光デバイス50の構成例を示す図である。 図2は、蛍光体層20から発せられた光が、誘電体層42に入射し、透過または反射されることを模式的に示す図である。 図3は、蛍光体層20から光反射膜40に入射する光量の入射角度依存性を説明するための図である。 図4Aは、波長λと波長λとの差(λ−λ)が、波長シフト量Δλより小さい場合における、入射角度90°での光反射膜40の反射スペクトルと、蛍光体層20の発光スペクトルとを示す図である。 図4Bは、波長λと波長λとの差(λ−λ)が、波長シフト量Δλに一致する場合における、入射角度90°での光反射膜40の反射スペクトルと、蛍光体層20の発光スペクトルとを示す図である。 図4Cは、波長λと波長λとの差(λ−λ)が、波長シフト量Δλよりも大きい場合における、入射角度90°での光反射膜40の反射スペクトルと、蛍光体層20の発光スペクトルとを示す図である。 図5は、波長λおよびλが等しい場合における、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルと、入射角度90°での光反射膜40の反射スペクトルとを示す図である。 図6は、波長λと波長λが一致する場合から(図5参照)、Δλだけ長波長側にシフトさせたときの、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルと、入射角度90°での光反射膜40の反射スペクトルとを示す図である。 図7は、金属層41上に4層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40(実線)と、金属層41上に10層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40(破線)とにおける、ある入射角度での光反射膜40の反射率のシミュレーション結果を示す図である。 図8は、金属層41上に60層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40の反射率のシミュレーション結果を示す図である。 図9Aは、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルおよび蛍光体層20の発光スペクトルの例を模式的に示す図である。 図9Bは、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルおよび蛍光体層20の発光スペクトルの他の例を模式的に示す図である。 図10は、光反射膜40の反射スペクトルを示す図である。 図11は、YAG:Ce蛍光体の発光スペクトルを示す図である。 図12は、式(9)によって計算された光デバイスの性能指標Zを、様々なλを様々に変えてプロットした結果を示す図である。 図13は、CaAlSiN:Eu蛍光体の発光スペクトルを示す図である。 図14は、式(9)によって計算された光デバイスの性能指標Zを、λを様々に変えてプロットした結果を示す図である。 図15は、SCA:Eu蛍光体およびYAG:Ce蛍光体を混ぜ合わせた蛍光体の発光スペクトルを示す図である。 図16は、式(9)によって計算された光デバイスの性能指標Zを、λを様々に変えてプロットした結果を示す図である。 図17は、光反射膜の構成の一実施例を示す図である。 図18は、表1の条件で作製した光反射膜の反射スペクトルを示す図である。
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
本明細書において、「光」とは、可視光に加えて、紫外線および赤外線の範囲にある電磁波を意味する。より具体的には、波長がおよそ10nm以上1mm以下の範囲にある電磁波を「光」と称する。
特許文献2は、反射層として金属材料を含み、さらに、分布ブラッグ反射器(DBR)または全方向性反射器(ODR)を備えた構成を開示している。しかし、金属層上にDBRを形成した場合、反射スペクトルに干渉の効果が現れ、ある波長において反射率が大きく低下する。そのため、400−700nmの全波長領域にて反射率を約100%にすることが困難であり、光デバイスの効率を高くすることが出来ない。
また、反射層に誘電体多層膜を適用する場合、入射角度によって反射スペクトルが短波長側にシフトし、反射率が徐々に低下する。そのため、後述する蛍光体層の直下に反射層を設ける本開示の光デバイスにおいては、反射層として誘電体多層膜は適さない。
蛍光体デバイスを作製する際に、蛍光体の発光スペクトルの重心波長と、反射層に垂直に入射した光の反射スペクトルが最大になる波長とが一致するように設計することが一般的である。重心波長とは、発光スペクトルを重みとする波長の加重平均である。言い換えれば、重心波長は、蛍光体から発せられる光の波長と当該波長の光の強度との積を発光波長の全域にわたって積分した値を、光の強度を発光波長の全域にわたって積分した値で割った値を意味する。重心波長を「平均波長」と称することもある。蛍光体が発する光に加えて、励起光源からの光(以下、「励起光」とも称する。)も利用する場合には、当該励起光も含めた重心波長と、垂直入射した光の反射スペクトルが最大になる波長とが一致するように設計することが一般的である。重心波長の代わりに、ピーク波長を用いてもよい。
金属は、反射特性に角度依存性を殆ど有しない。したがって、反射層として金属層を用いる場合には、上記の設計によって蛍光体デバイスの効率は最大になる。
一方、誘電体層は反射特性に角度依存性を有する。よって、増反射膜が誘電体層を含む場合、増反射膜は反射特性に角度依存性を有する。本発明者らの検討によれば、蛍光体から反射層に入射する光の量は、入射角度が大きくなるにつれて増加する。このため、大きい角度で反射層に入射する光の反射特性は、蛍光体デバイスの効率に大きく寄与する。しかし、従来の蛍光体デバイスでは、誘電体層の反射特性の角度依存性を考慮した設計はなされていなかった。本発明者らは、蛍光体デバイスの効率を上げるためには、反射特性の角度依存性を考慮して、光反射膜を設計することが望ましいことを見出した。
本発明者は、以上の知見に基づき、以下に説明する本開示の各態様に想到した。
本開示の一態様に係る光デバイスは、金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する蛍光体層と、を備える。前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長よりも長く、前記誘電体層は、2以上6以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる。
本開示の他の態様に係る光デバイスは、金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する蛍光体層と、を備える。前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直入射する光の反射率が最大になる波長は、前記光源の発光スペクトルと、前記蛍光体層の発光スペクトルとを合わせた光スペクトルの重心波長よりも長く、前記誘電体層は、2以上6以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる。
上記構成により、後述するように、光デバイスの効率を上げることができる。
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する機能を有する構成要素については、同じ参照符号を付している。
(実施形態)
本実施形態における光デバイスは、金属膜および誘電体層を含む光反射膜と、蛍光体層とを備える。誘電体層は、金属膜の上に配置される。蛍光体層は、誘電体層の上に配置される。蛍光体層は、光源からの光によって励起されることで発光する。蛍光体層の側から光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、蛍光体層の発光スペクトルの重心波長よりも長い。あるいは、誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、光源の発光スペクトルと、蛍光体層の発光スペクトルとの両方を含む光スペクトルの重心波長よりも長い。前記誘電体層は、2以上6以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる。
上記の構成により、蛍光体層から発せられた光を効率よく反射させることができ、光デバイスの効率を上げることができる。
図1は、本実施形態における光デバイス50の構成例を示す図である。光デバイス50は、基板30と、基板30上の光反射膜40と、蛍光体層20とを備える。光反射膜40は、金属層41と、誘電体層42とを含む。基板30、金属層41、誘電体層42、および蛍光体層20は、この順に積層されている。基板30は、金属層41を支持する。誘電体層42は、金属層41の上に配置される。蛍光体層20は、誘電体層42の上に配置される。蛍光体層20は、光源10からの光によって励起されることで発光する。
<光反射膜の基本構成>
上記の金属層41および誘電体層42を含む光反射膜40の基本構成を説明する。誘電体層42は、2以上6以下の層の積層構造体である。誘電体層42における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる。なお、当該積層構造体が有する各層の厚みは、少なくとも3nm以上である。当該積層構造体は、厚み3nm未満の層を有してもよいが、その場合、当該層は、当該積層構造体の層数としてはカウントしない。従来のDBRまたは誘電体多層膜と異なり、誘電体層42は周期構造を有しない。したがって、誘電体層42では、周期構造に起因するブラッグ反射は生じず、後述する薄膜干渉に起因する反射が生じる。誘電体材料による積層構造体は、一般に、当該積層構造体と同じ厚さおよび同じ平均屈折率を有する一様媒質よりも高い反射率を有する。そのため、本実施形態では、誘電体層42として、誘電体材料による積層構造体を用いる。しかし、以下の説明では、定式化を容易にするために、積層構造体である誘電体層42を、一様な媒質として近似する。
誘電体層42の全体層数をN、各層の膜厚及び屈折率をd、n(i=1、2、・・・、N)とするとき、全体膜厚dおよび平均屈折率nは、式(1)および式(2)によって表される。
Figure 0006916073
Figure 0006916073
光反射膜40の反射特性は、誘電体層42で生じる薄膜干渉の繰り返しを考慮することで計算できる。
図2は、蛍光体層20から発せられた光が、誘電体層42に入射し、透過または反射されることを模式的に示す図である。蛍光体層20(媒質1)の屈折率をnとし、誘電体層42(媒質2)の平均屈折率をnとし、金属層41(媒質3)の屈折率をnとする。誘電体層42の膜厚をdとする。蛍光体層20から発せられた光が誘電体層42に入射する場合の入射角をθとし、屈折角をθとする。媒質iから媒質jに光が入射する場合の振幅反射率および振幅透過率をrij(i、j=1、2、3(i≠j))とする。反射率Rは、フレネルの公式を用いて、式(3)によって表される。
Figure 0006916073
Δは、誘電体層42の中を光が1往復したときに生じる位相差である。Δは、光の波長λを用いて、式(4)によって表される。
Figure 0006916073
光反射膜40の反射率が最大値をとる波長をλとすると、波長λは、干渉の条件(Δ=π)から、式(5)によって表される。
Figure 0006916073
式(5)は、入射角度θが大きくなるにつれて波長λが短波長側にシフトすることを示している。
光の入射角度が0°のとき、すなわち光が垂直入射するときに、光反射膜40の反射率が最大値をとる波長をλとする。光の入射角度が90°のとき、すなわち光が水平入射するときに光反射膜40の反射率が最大値をとる波長をλ90とする。式(5)より、式(6)および式(7)が導出される。
Figure 0006916073
Figure 0006916073
<入射光量の入射角度依存性>
図3は、蛍光体層20から光反射膜40に入射する光量の入射角度依存性を説明するための図である。図3に示す半球の半径は1である。蛍光体層20は、全方向に光を発する。したがって、蛍光体層20から発せられた光は、光反射膜40にあらゆる入射角度(0°≦θ≦90°)で入射する。蛍光体層20からの光が、光反射膜40に入射角度θで入射する場合を想定する。蛍光体層20からのこの光は、2πsinθの周長およびdθの幅をもつ微小表面を通過する。その微小表面の面積は2πsinθdθである。光反射膜40の反射率をR(λ、θ)とすると、上記の微小表面を通過した光が光反射膜40に反射される際の反射強度は、R(λ、θ)×2πsinθdθに比例する。R(λ、θ)×2πsinθdθを、0°≦θ≦90°(0≦θ≦π/2)の範囲で積分すれば、角度依存性を考慮した光反射膜40の反射強度Y(λ)が得られる。Y(λ)は、式(8)によって表される。
Figure 0006916073
式(8)は、入射角度が大きくなるにつれて、光反射膜40に入射する光量が増えることを反映している。すわなち、式(8)は、小さい入射角度での光の反射特性よりも、大きい入射角度での光の反射特性の方が、光デバイス50の効率に大きく寄与することを反映している。
<蛍光体デバイスの性能指標>
蛍光体層20の発光スペクトルをI(λ)とし、光デバイス50の性能指標をZとする。光デバイス50の性能指標Zは、角度依存性が考慮された光反射膜40の反射強度Y(λ)と、蛍光体層20の発光スペクトルI(λ)との積の積分で計算できる。光デバイス50の性能指標Zは、式(9)によって表される。
Figure 0006916073
λ、λ(λ<λ)は、蛍光体層20の発光スペクトルの両端の波長を示している。
<光デバイスのエネルギー変換効率向上の原理>
光デバイス50のエネルギー変換効率には、大きい入射角度での光反射膜40の反射率の寄与が大きい。蛍光体層20の発光スペクトルの重心波長をλとし、入射角度90°で入射する波長λの光についての光反射膜40の反射率をR90(λ)とする。反射率R90(λ)が高いほど、光デバイス50の効率は高くなる。
図4Aから4Cは、入射角度90°で入射する光についての光反射膜40の反射スペクトルおよび蛍光体層20の発光スペクトルの例を示す図である。図4Aは、波長λと波長λとの差(λ−λ)が、波長シフト量Δλ(=λ−λ90)よりも小さい場合の例を示している。図4Bは、波長λと波長λとの差(λ−λ)が、波長シフト量Δλに一致する場合の例を示している。図4Cは、波長λと波長λとの差(λ−λ)が、波長シフト量Δλよりも大きい場合の例を示している。
図4Bの例では、波長λ90およびλは一致する(λ90=λ)。したがって、R90(λ)=R90(λ90)である。一方、図4Aの例では、波長λ90は、波長λよりも短波長側にずれ、R90(λ)<R90(λ90)になる。その結果、図4Aに示す特性を有する光デバイス50の効率は、図4Bに示す特性を有する光デバイス50の効率よりも小さい。同様に、図4Cの例では、波長λ90は、波長λよりも長波長側にずれ、R90(λ)<R90(λ90)になる。その結果、図4Cに示す特性を有する光デバイス50の効率は、図4Bに示す特性を有する光デバイス50の効率よりも小さい。
<発光効率の向上のための条件>
図5は、波長λおよびλが等しい場合における、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルの例と、入射角度90°での光反射膜40の反射スペクトルの例とを示す図である。この例では、従来の設計思想に従い、入射角度0°での光反射膜40の反射率が最大になる波長λが、蛍光体層20の発光スペクトルの重心波長λに一致するように誘電体層42が設計されている。波長λの光が入射角度90°で光反射膜40に入射するときの反射率R90(λ)は、当該反射率のピーク値よりも低い。
ここで、反射率がR90(λ)と等しくなる他の波長をλ(λ<λ)とし、波長λと波長λとの差をΔλ(=λ−λ)とする。仮に、光反射膜40の反射スペクトルが全体的にΔλよりも小さい波長だけ長波長側にずれたと仮定すると、入射角度90°で光反射膜40に入射する重心波長λの光の反射率が向上する。このため、全体的な発光効率が向上することが期待できる。以下、この点についてより詳細に説明する。
波長λおよびλにおける反射率R90が等しいことから、式(3)より、式(10)が導出される。
Figure 0006916073
ΔおよびΔは、それぞれ波長λおよびλにおける位相差を示している。式(10)より、式(11)が導出される。
Figure 0006916073
λ=λおよび入射角度θ=90°から、Δは、式(4)および(6)より、式(12)によって表される。
Figure 0006916073
式(4)、(6)、(11)および(12)より、λは、式(13)によって表される。
Figure 0006916073
波長λは、式(13)において取り得る値の中で最大になる値である。したがって、λは、式(14)によって表される。
Figure 0006916073
波長λと波長λとの差をΔλ(=λ−λ)とすると、Δλは、式(15)によって表される。
Figure 0006916073
λ90とλとの差をΔλ(=λ90−λ)とすると、Δλは、式(7)および(14)より、式(16)によって表される。
Figure 0006916073
図6は、図5に示す例から、光反射膜40の各反射スペクトルをΔλだけ長波長側にシフトさせた場合の、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルと、入射角度90°での光反射膜40の反射スペクトルとを示す図である。図6には、比較のために、図5における光反射膜40の2つの反射スペクトルも示されている。この場合における入射角度0°での反射スペクトルのピーク波長をλ0m(=λ+Δλ)とする。実際のデバイスにおいて、0°で入射する光の反射率がピークになる波長λが、λよりも大きく、波長λ0mよりも小さければ、図5に示す例よりも発光効率が向上することが期待できる。よって、その波長λ0mを、波長λの上限値にすることができる。λ0m=Δλ+Δλ+λであることから、波長λ0mは、式(7)および(16)を用いて、式(17)によって表される。
Figure 0006916073
以上より、λ0mを波長λの上限値とする場合、λのとり得る範囲は、式(18)によって表される。
Figure 0006916073
波長λが式(18)で表される波長範囲にある場合、光デバイス50のエネルギー変換効率は、λ=λのときと同じか、λ=λのときよりも高くなる。
さらに、光デバイス50のエネルギー変換効率が最大になる場合、すなわちλ=λ90を満たす場合の波長λの値を、波長λの上限値としてもよい。その場合、λのとり得る範囲は、式(19)によって表される。
Figure 0006916073
式(19)のλの波長範囲は、式(18)のλの波長範囲よりも狭い。
波長λの下限値をλよりも大きくしてもよい。
例えば、波長λ=λの場合にθ=10°での反射率がピークになる波長をλ10として、λとλ10との差(λ−λ10)を波長λに加えた値(2λ−λ10)を、波長λの下限値としてもよい。その場合、λのとり得る範囲は、式(20)によって表される。
Figure 0006916073
同様に、波長λ=λの場合にθ=30°での反射率がピークになる波長をλ30として、λとλ30との差(λ−λ30)を波長λに加えた値(2λ−λ30)を、波長λの下限値としてもよい。その場合、λのとり得る範囲は、式(21)によって表される。
Figure 0006916073
式(18)または(19)において、下限値λの代わりに、式(20)または(21)の下限値を用いてもよい。本実施形態における光デバイス50においては、例えば式(18)または(19)を満たすように、誘電体層42が設計され得る。ただしこの条件に限定されない。本開示においては、誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長λが、蛍光体層20の発光スペクトルの重心波長λよりも長ければよい。
次に、金属層41上に、周期構造を有する従来の誘電体多層膜を形成する場合を説明する。誘電体多層膜は、例えば屈折率が異なる2層を交互に積層することによって形成される。その場合、周期数Mの誘電体多層膜の層数は2Mである。以下では、少ない周期数のために層数が少ない構造も「誘電体多層膜」と称する。誘電体多層膜では、周期構造に起因するブラッグ反射によって、ある特定の波長領域において高反射率が得られる。それ以外の波長領域では、誘電体多層膜全体を薄膜とした場合の薄膜干渉(例えば図2参照)による反射ピークが生じる。
図7は、金属層41上に4層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40(実線)と、金属層41上に10層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40(破線)における、入射角度0°での光反射膜40の反射率のシミュレーション結果を示す図である。4層は2周期に相当し、10層は5周期に相当する。金属層41上に4層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40は周期数が少なく、ブラッグ反射の効果は小さい。
金属層41上に4層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40(実線)では、反射率は、400nm〜700nmの波長領域において90%以上である。一方、金属層41上に10層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40(破線)では、反射率は、薄膜干渉によって波長600nm付近において大きく低下する。したがって、薄膜干渉による反射率の低下を抑制するためには金属層41上の積層の数は少ない方が望ましく、特に6層以下であればよい。これは、周期構造を有しない誘電体層42についても同様である。本明細書では、2周期のように極端に周期数が少ない構造も、周期構造を有しない誘電体層42とする。
光デバイス50の効率を向上させるためには、すべての入射角度に対して400−700nmの波長領域において反射率を高めることが望ましい。そこで、誘電体多層膜の入射角度の依存性に注目する。
図8は、金属層41上に60層の誘電体多層膜を形成した光反射膜40の反射率のシミュレーション結果を示す図である。実線は、入射角度0°での反射率を表し、破線は、入射角度80°での反射率を表す。60層は30周期に相当する。60層の誘電体多層膜では、顕著なブラッグ反射が生じる。
入射角度が0°の場合、反射率は、およそ400nm〜550nmの波長領域において約100%である。この特定の波長領域における約100%の反射率は、周期構造に起因するブラッグ反射によって得られる。それ以外の周波数領域における複数の反射ピークは、薄膜干渉によって得られる。一方、入射角度が80°の場合、反射率が約100%になる波長領域は、短波長側にシフトし、当該波長領域の幅は縮小する。
そのため、すべての入射角度に対して400−700nmの波長領域において高反射率を得るためには、入射角度0°での高反射率の波長領域の幅は、400−700nmの波長領域の幅よりも、反射率のシフト量と、シフトに伴い高反射率の波長領域の幅が縮小する量との合計の分だけ大きくなければならない。入射角度0°での高反射率の波長領域の幅は、例えば、500nm以上であればよい。高反射率は、約100%でなくてもよく、80%以上であればよい。
光デバイス50の効率には、大きい入射角度での光反射膜40の反射スペクトルが大きく寄与する。そのため、効率を高くするためには、大きい入射角度(例えば80°)での反射スペクトルのピーク波長が、蛍光体層20の発光スペクトルの重心波長と一致するようにすればよい。また、光デバイス50の効率には、入射角度の増加による反射スペクトルのピーク波長のシフト量も寄与する。
図9Aは、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルおよび蛍光体層20の発光スペクトルの例を模式的に示す図である。図9Bは、入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルおよび蛍光体層20の発光スペクトルの他の例を模式的に示す図である。図9Aおよび9Bには示されていないが、入射角度80°での光反射膜40の反射スペクトルのピーク波長は、蛍光体層20の発光スペクトルの重心波長と一致するように設計されている。したがって、入射角度0°での反射率が最大になるピーク波長は、入射角度80°での反射率が最大なるピーク波長よりも長い。
図9Aに示す例では、入射角度の増加による光反射膜40の反射スペクトルのピーク波長のシフト量が大きく、蛍光体層20の発光スペクトルと光反射膜40の反射スペクトルとの重なり積分は小さい。一方、図9Bに示す例では、入射角度の増加による光反射膜40の反射スペクトルのピーク波長のシフト量が小さく、蛍光体層20の発光スペクトルと光反射膜40の反射スペクトルとの重なり積分は大きい。
光デバイスの効率を向上させるためには、入射角度が0°から90°に向かって増加する際の、反射スペクトルのピーク波長のシフト量は小さくすればよい。例えば、入射角度0°および45°におけるピーク波長の差は、例えば70nm以下であり、ある例では40nm以下であり得る。
また、反射スペクトルのピーク波長のシフト量は、金属層41上に形成される誘電体層42の膜厚が大きいほど、大きい傾向がある。そのため、誘電体層42の膜厚は小さい値に設定され得る。誘電体層42の膜厚は、例えば、400nm以下であってもよく、200nm以下であってもよい。
本実施形態における光デバイス50の効率は、入射角度0°での光反射膜40の反射率が80%以上になる波長領域の幅が広く、入射角度の変化による反射スペクトルのピーク波長のシフト量が小さく、誘電体層42の層数が少なく、誘電体層42の膜厚が小さい場合に向上する。
<光デバイスの構成要素>
以下に、図1における光デバイス50の構成要素をより詳細に説明する。
光源10は、例えば波長450nm以下の光を発する固体光源であり得る。光源10として、例えば、紫外光から青色光の領域に発光波長を持つLDまたはLEDなどの光源を用いることができる。光源10は、蛍光体層20に向けて励起光を出射する。図1に示す例では、光源10からの励起光は、蛍光体層20の、誘電体層42とは反対側の面(以下、「上面」と呼ぶ。)から入射する。光源10は、蛍光体層20、光反射膜40、および基板30から離れて配置されている。これは、光源10が発する熱によって蛍光体層20が加熱されて発光効率が低下することを防ぐためである。光源10は、LDまたはLEDなどの発光素子に加えて、出射光を集束する1つ以上のレンズを備えていてもよい。
光源10からの励起光を、蛍光体層20の、誘電体層42と同じ側の面から入射させる構成も可能である。あるいは、励起光を、蛍光体層20の側面から入射させる構成も可能である。これに対して、励起光を蛍光体層20の上面から入射させる構成では、光源10と蛍光体層20との距離を確保し易い。このため、光源10が発する熱によって蛍光体層20の蛍光特性が低下することを抑制し易い。
光源10は、固体レーザを含む光源であってもよい。固体レーザには、遷移金属イオンまたは希土類イオンなどがドープされた、結晶またはガラスなどの固体材料が用いられる。LEDと比較して、固体レーザは、高い集光性を有する。したがって、固体レーザを用いて蛍光体層20を励起すれば、蛍光体層20の発光点を小さくすることができる。発熱の影響を避ける場合には、固体レーザ光源は、蛍光体層20からできるだけ離れて配置される。
蛍光体層20は、光源10が発する励起光を受け、励起光の波長よりも長波長の蛍光を発する。蛍光体層20から発せられた光は、例えば400nm〜800nmの波長域に少なくとも一つのピークを有する。蛍光体層20は、青色光、緑色光、黄色光、赤色光を発する複数の蛍光体材料を含んでいてもよい。青色の光を発する蛍光体材料として、例えば、Sr(PO4)3Cl:Eu2+(SCA)またはBaMgAl10O17:Eu2+(BAM)等を用いることができる。緑色の光を発する蛍光体材料として、例えば、LuAl12:Ce3+(LuAG)等を用いることができる。黄色の光を発する蛍光体材料として、例えばYAG:Ce(セリウムがドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネット)を含む材料を用いることができる。具体的には、例えばYAl12:Ce3+(YAG)等を用いることができる。赤色の光を発する蛍光体材料として、例えば、CaAlSiN:Eu2+(CASN)、LaSi11:Ce3+(LSN)等を用いることができる。
蛍光体層20が発する光と、光源10が発する励起光とを組み合わせて所望のスペクトルの発光を実現してもよい。例えば、青色の励起光を発する光源10と、励起光を受けて黄色の光を発する蛍光体層20とを組み合わせて、白色の発光を実現してもよい。
蛍光体層20は、例えば、蛍光体粉末をガラスまたは樹脂に分散させた形態、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、または蛍光体セラミックスなどを用いることができる。
蛍光体層20の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1μm以上100μm以下に設計され得る。このような範囲に設定することにより、蛍光体層20に熱が蓄積されることを抑制することができる。これにより、輝度低下を抑えることができる。
蛍光体層20の光出射面、すなわち光源10からの励起光が入射する面には、必要に応じて、励起光の反射を防止するための処理が施されていてもよい。光出射面には、反射防止膜が設けられていてもよい。
基板30は、蛍光体層20から発せられる熱を外部に逃がす放熱基板としても機能し得る。このため、基板30は、例えば高い熱伝導特性を持つ材料で構成され得る。
金属層41には、例えば可視光領域において高い反射率を有する金属材料が用いられ得る。例えば、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、またはAu(金)などの金属、あるいはこれらの金属の合金(アルミニウム合金、銀合金または金合金など)が用いられ得る。つまり、金属層41は、銀、銀合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金の少なくとも1つを含み得る。特に、反射率を高くするためには、例えばAgまたはAg合金が用いられる。
誘電体層42は、例えば、屈折率が互いに異なる誘電体材料を含む高屈折率材料と低屈折率材料とを有する。高屈折率材料および低屈折率材料は、交互に複数回積層され得る。誘電体層42を構成する誘電体薄膜の各層の厚さは、例えば約1nm〜約100nmであり得る。誘電体層42の全体の厚さは、例えば約50nm〜400nmであり得る。低屈折率材料としては、例えば、MgF(n=1.38)、SiO(n=1.46)、またはAl(n=1.77)などが用いられ得る。高屈折率材料としては、例えば、Ta(n=2.20)、TiO(n=2.50)またはNb(n=2.35)などが用いられ得る。
光反射膜40は、金属層41と、金属層41の上に配置された誘電体層42とを有する。光反射膜40は、蛍光体層20から発せられた光、および蛍光体層20を透過した励起光を、蛍光体層20の光出射面に向けて反射する。光反射膜40は、蛍光体層20および基板30の間に配置される。入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルは、例えば、400nm〜800nmの波長域に少なくとも一つのピークを有し得る。当該反射スペクトルは、他の波長域にピークを有していてもよい。
図10は、光反射膜40の反射スペクトルの一例を示す図である。図10に示すように、光反射膜40は、反射特性に角度依存性を有する。入射角度が大きくなると、反射スペクトルの反射率のピークは短波長側にシフトする。光反射膜40の反射スペクトルは、0°から90°までの入射角度の変化によって反射スペクトルのピーク値をとる波長のシフト量が、例えば約10nm以上変化し得る。そのような波長シフトを示す光反射膜40において、本開示の実施形態の効果を特に顕著に得ることができる。
<シミュレーション結果との比較>
本発明者らは、本実施形態の光反射膜40を設けることにより、光デバイス50の効率が向上することをシミュレーションによって確認した。本シミュレーションにおいては、式(9)で表される光デバイスの性能指標Zの計算を行なった。
以下、その結果を説明する。計算する上で、以下のパラメータを設定した。金属層41には、Ag合金(Ag−Pd−Cu)を用いた。誘電体層42はTiO−SiO−Alの3層で構成した(図17参照)。光反射膜40の反射スペクトルは、Rigorous Coupled−Wave Analysis(RCWA)法による回折光学素子設計・解析ソフトウェアであるDiffractMODを用いた光学シミュレーションによって計算した。以下の式(18)および式(19)の計算では、n=1.0およびn=2.05を用いた。
まず、蛍光体材料にYAG:Ce蛍光体を用いた場合の結果を説明する。
図11は、YAG:Ce蛍光体の発光スペクトルの例を示す図である。このYAG:Ce蛍光体の発光スペクトルの重心波長は、λ=565nmである。
図12は、式(9)によって計算された光デバイスの性能指標Zを、λを様々に変えてプロットした結果を示す図である。図12に示すように、波長λがYAG:Ce蛍光体の発光スペクトルの重心波長よりも長波長側にある場合、光デバイスの効率は高くなる。
蛍光体材料にYAG:Ce蛍光体を用いた場合、式(18)における波長λの波長範囲は、565<λ≦717nmになる。また、式(19)における波長λの波長範囲は、565<λ≦653nmになる。さらに、式(20)および(21)における波長λの波長範囲は、それぞれλ≧567nmおよびλ≧582nmになる。
図12に示す光学シミュレーションの結果から、光デバイス50の効率が改善するλの波長範囲は、565nm〜677nm(図12における横方向の両矢印の範囲)である。光デバイスの効率が最高になるのは、λ=628nm(図12における上向きの矢印)の場合である。したがって、式(18)および式(19)の範囲を満たす。
次に、蛍光体材料にCaAlSiN:Eu蛍光体を用いた場合の結果を示す。
図13は、CaAlSiN:Eu蛍光体の発光スペクトルを示す図である。CaAlSiN:Eu蛍光体の発光スペクトルの重心波長は、λ=654nmである。
図14は、式(9)によって計算された光デバイスの性能指標Zを、λを様々に変えてプロットした結果を示す図である。図14に示すように、波長λがCaAlSiN:Eu蛍光体の発光スペクトルの重心波長よりも長波長側にある場合、光デバイスの効率は高くなる。
蛍光体材料にCaAlSiN3:Eu蛍光体を用いた場合、式(18)における波長λの波長範囲は、654<λ≦823nmになる。また、式(19)における波長λの波長範囲は、654<λ≦749nmになる。さらに、式(20)および(21)における波長λの波長範囲は、それぞれλ≧656nmおよびλ≧674nmになる。
図14に示す光学シミュレーションの結果から、光デバイスの効率が改善するλの波長範囲は、654nm〜757nm(図14における横方向の両矢印の範囲)である。光デバイスの効率が最高となるのは、λ=697nm(図14における上向きの矢印)の場合である。したがって、式(18)および式(19)の範囲を満たす。
蛍光体層20は、複数の蛍光体材料を含んでいてもよい。以下、蛍光体材料として、SCA:Eu蛍光体およびYAG:Ce蛍光体を混ぜ合わせた蛍光体を用いた場合の結果を示す。
図15は、SCA:Eu蛍光体およびYAG:Ce蛍光体を混ぜ合わせた蛍光体の発光スペクトルを示す図である。SCA:Eu蛍光体およびYAG:Ce蛍光体を混ぜ合わせた蛍光体の発光スペクトルの重心波長は、λ=544nmである。
図16は、式(9)によって計算された光デバイスの性能指標Zを、λを様々に変えてプロットした結果を示す図である。図16に示すように、波長λの波長がSCA:Eu蛍光体およびYAG:Ce蛍光体を混ぜ合わせた蛍光体の発光スペクトルの重心波長よりも長波長側にある場合、光デバイスの効率は高くなる。
蛍光体材料として、SCA:Eu蛍光体およびYAG:Ce蛍光体を混ぜ合わせた場合、式(18)における波長λの波長範囲は、544<λ≦684nmになる。また、式(19)における波長λの波長範囲は、544<λ≦623nmになる。さらに、式(20)および(21)における波長λの波長範囲は、それぞれλ≧546nmおよびλ≧560nmになる。
図16に示す光学シミュレーションの結果から、光デバイスの効率が改善するλの波長範囲は、544nm〜611nm(図16における横方向の両矢印の範囲)である。光デバイスの効率が最高となるのは、λ=584nm(図16における上向きの矢印)の場合である。したがって、式(18)および式(19)の範囲を満たす。
以上のシミュレーションの結果から、式(18)および式(19)に示す範囲の妥当性が確認された。
上記の例では、蛍光体層の発光スペクトルのみを考慮した。本実施形態は、光源の発光スペクトルと、蛍光体層の発光スペクトルとの両方を含む光スペクトルを用いる場合にも有効である。その場合は、光源の発光スペクトルと、蛍光体層の発光スペクトルとの両方を合わせた光スペクトルの重心波長をλとして用いればよい。
次に、光学シミュレーションの結果と、式(18)および式(19)の計算結果とが一致しない理由を検討する。
式(18)および式(19)の計算では、光デバイスの効率は、光デバイスの効率に最も大きく寄与するθ=90°での反射率R(λ、θ)のみに依存すると仮定している(式(8)参照)。しかし、光学シミュレーションでは、光デバイスの効率は、式(8)に示すように、θ=90°での反射率だけでなくθ=90°以外での反射率にも依存する。
すなわち、式(18)および式(19)の計算における上記の仮定により、光学シミュレーションの結果と、式(18)および式(19)の計算結果とに差が生じる。それでもなお、式(18)および式(19)は、光デバイスの効率が高くなる波長範囲の簡単な見積もりとして有効である。
<光反射膜の成膜>
光反射膜の製造方法の一実施例を説明する。本発明者らは、以下の方法により、光反射膜を試作した。
まず、鏡面加工された基板に、金属層をスパッタ法により成膜した。金属層の材料は、Ag合金(Ag−Pd−Cu)である。金属層の厚さを150nmとした。さらに、Al、SiO、TiOを順次スパッタ法により成膜し、金属層上に誘電体層を形成した。誘電体層の厚さは100nm〜150nmとした。なお、成膜はスパッタ法に限られず、蒸着等の方法でもよい。
<光反射膜の反射スペクトル>
光反射膜の構成の一実施例を図17に示す。図17に示すように、金属層41としてAg合金(Ag−Pd−Cu)を用い、膜の厚さを150nmとした。金属層41上に形成する誘電体層42は、Al、SiOおよびTiOの積層構造によって構成した。
表1は、各誘電体薄膜の屈折率および厚さを示している。
Figure 0006916073
図17の例では、金属層41上にAl、SiOおよびTiOの誘電体薄膜がこの順番で積層されている。3層構造の誘電体層42において、空気層に接する上の層の屈折率が最も高く、真中の層の屈折率が最も低い。これは、誘電体層42の反射率を高くするためである。一般に、隣り合う2つの層の屈折率差が大きいほど、積層構造体の反射率が高くなる傾向にある。表1におけるAl、SiOおよびTiOの組み合わせの中で、金属層41上にAl、SiOおよびTiOの誘電体薄膜をこの順番で積層したとき、誘電体層42は、最も高い反射率を有する。
上記の例では、3層構造の誘電体層42を用いたが、例えば、5層構造の誘電体層42を用いても同様の効果を得ることができる。
3層構造の誘電体層42の平均屈折率nおよび全体膜厚dは、それぞれn=2.05、d=125nmである。
図18は、表1の条件で作製した光反射膜の反射スペクトルを示す図である。光反射膜40の反射スペクトルは、入射角度が大きくなるにつれて短波長側にシフトする。入射角度0°での光反射膜40の反射スペクトルが最大になるときの波長はλ=620nmである。
蛍光体層の蛍光体として、YAG:Ceを用いた場合について検討する。YAG:Ce蛍光体の発光スペクトルの重心波長はλ=565nmである。したがって、式(18)における波長λの波長範囲は、565<λ≦711nmとなる。また、式(18)における波長λの波長範囲は、565<λ≦647nmとなる。
上記の光反射膜40では、波長λ=628nmであり、565≦λ≦647nmの波長範囲にある。
以上のように、本開示は、以下の項目に記載のデバイスを含む。
[項目1]
金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、
前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する蛍光体層と、
を備え、
前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長よりも長く、
前記誘電体層は、2以上6以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる、
光デバイス。
[項目2]
前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が80%以上になる波長域の幅は、500nm以上である、
項目1に記載の光デバイス。
[項目3]
前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる第1の波長は、前記蛍光体層の側から前記光反射膜に入射角45°で入射する光の反射率が最大になる第2の波長よりも長く、前記第1の波長と前記第2の波長との差は、70nm以下である、
項目1または2に記載の光デバイス。
[項目4]
前記第1の波長と前記第2の波長との差は、40nm以下である、
項目1または2に記載の光デバイス。
[項目5]
前記誘電体層の膜厚は、400nm以下である、
項目1から4のいずれかに記載の光デバイス。
[項目6]
前記誘電体層の膜厚は、200nm以下である、
項目1から4のいずれかに記載の光デバイス。
[項目7]
前記蛍光体層の屈折率をnとし、
前記誘電体層の平均屈折率をnとし、
前記誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長をλとし、
前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長をλとするとき、
Figure 0006916073
を満たす、
項目1から6のいずれかに記載の光デバイス。
[項目8]
前記蛍光体層の屈折率をnとし、
前記誘電体層の平均屈折率をnとし、
前記誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長をλとし、
前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長をλとするとき、
Figure 0006916073
を満たす、
項目1から6のいずれかに記載の光デバイス。
[項目9]
Figure 0006916073
を満たす、
項目8に記載の光デバイス。
[項目10]
前記蛍光体層の屈折率をnとし、
前記誘電体層の平均屈折率をnとし、
前記誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長をλとし、
前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長をλとするとき、
Figure 0006916073
を満たす、
項目1から6のいずれかに記載の光デバイス。
[項目11]
前記蛍光体層の発光スペクトルは、400nm〜800nmの範囲に、少なくとも1つのピークを有する、
項目1から10のいずれかに記載の光デバイス。
[項目12]
前記金属層を支持する基板をさらに有する、
項目1から11のいずれかに記載の光デバイス。
[項目13]
前記金属層は、銀、銀合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金の少なくとも1つを含む、
項目1から12のいずれかに記載の光デバイス。
[項目14]
前記蛍光体層は、セリウムがドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネットを含む、
項目1から13のいずれかに記載の光デバイス。
[項目15]
前記光源は、固体レーザを含む、
項目1から14のいずれかに記載の光デバイス。
[項目16]
前記光源からの光は、前記蛍光体層の、前記誘電体層とは反対側の面から入射する、
項目1から15のいずれかに記載の光デバイス。
[項目17]
金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、
前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する蛍光体層と、
を備え、
前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、前記光源の発光スペクトルと、前記蛍光体層の発光スペクトルとを合わせた光スペクトルの重心波長よりも長く、
前記誘電体層は、2以上5以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる、
光デバイス。
本開示の実施形態における光デバイスは、発光デバイスなどの用途に利用できる。
1 入射媒質
10 固体光源
20 蛍光体
30 基板
40 光反射膜
41 金属層
42 誘電体層
50 蛍光体デバイス

Claims (17)

  1. 金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、
    前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する
    蛍光体層と、
    を備え、
    前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、
    前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長よりも長く、
    前記誘電体層は、2以上6以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる、
    光デバイス。
  2. 前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が80%以上になる波長域の幅は、500nm以上である、
    請求項1に記載の光デバイス。
  3. 前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる第1の波長は、前記蛍光体層の側から前記光反射膜に入射角45°で入射する光の反射率が最大になる第2の波長よりも長く、前記第1の波長と前記第2の波長との差は、70nm以下である、
    請求項1または2に記載の光デバイス。
  4. 前記第1の波長と前記第2の波長との差は、40nm以下である、
    請求項に記載の光デバイス。
  5. 前記誘電体層の膜厚は、400nm以下である、
    請求項1から4のいずれかに記載の光デバイス。
  6. 前記誘電体層の膜厚は、200nm以下である、
    請求項1から4のいずれかに記載の光デバイス。
  7. 前記蛍光体層の屈折率をnAとし、
    前記誘電体層の平均屈折率をnBとし、
    前記誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長をλ0とし、
    前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長をλcとするとき、
    Figure 0006916073
    を満たす、
    請求項1から6のいずれかに記載の光デバイス。
  8. 前記蛍光体層の屈折率をnAとし、
    前記誘電体層の平均屈折率をnBとし、
    前記誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長をλ0とし、
    前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長をλcとするとき、
    Figure 0006916073
    を満たす、
    請求項1から6のいずれかに記載の光デバイス。
  9. Figure 0006916073
    を満たす、
    請求項8に記載の光デバイス。
  10. 前記蛍光体層の屈折率をnAとし、
    前記誘電体層の平均屈折率をnBとし、
    前記誘電体層に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長をλ0とし、
    前記蛍光体層の発光スペクトルの重心波長をλcとするとき、
    Figure 0006916073
    を満たす、
    請求項1から6のいずれかに記載の光デバイス。
  11. 前記蛍光体層の発光スペクトルは、400nm〜800nmの範囲に、少なくとも1つのピークを有する、
    請求項1から10のいずれかに記載の光デバイス。
  12. 前記金属層を支持する基板をさらに有する、
    請求項1から11のいずれかに記載の光デバイス。
  13. 前記金属層は、銀、銀合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金の少なくとも1つを含む、
    請求項1から12のいずれかに記載の光デバイス。
  14. 前記蛍光体層は、セリウムがドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネットを含む、
    請求項1から13のいずれかに記載の光デバイス。
  15. 前記光源は、固体レーザを含む、
    請求項1から14のいずれかに記載の光デバイス。
  16. 前記光源からの光は、前記蛍光体層の、前記誘電体層とは反対側の面から入射する、
    請求項1から15のいずれかに記載の光デバイス。
  17. 金属層および前記金属層上の誘電体層を含む光反射膜と、
    前記誘電体層上の蛍光体層であって、光源からの光によって励起されることで発光する蛍光体層と、
    を備え、
    前記蛍光体層の側から前記光反射膜に垂直に入射する光の反射率が最大になる波長は、前記光源の発光スペクトルと、前記蛍光体層の発光スペクトルとを合わせた光スペクトルの重心波長よりも長く、
    前記誘電体層は、2以上5以下の層の積層構造体であって、前記誘電体層における隣り合う任意の2層の屈折率は異なる、
    光デバイス。
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