JP6915568B2 - 難燃性樹脂組成物及びその製造方法、難燃性樹脂組成物ペレット、並びに、成形品及び中空成形品 - Google Patents
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Description
しかしながら、製品に求められる要求性能は日々高まっており、上記従来技術の問題点において更なる性能改善が求められている。
すなわち、上記のような従来技術では、中空成形性が良好でありながら、ペレットを分解や発泡等の現象を生じさせることなく成形することができ、難燃性に優れ、耐衝撃性にも優れた、難燃性樹脂組成物を未だ得ることはできておらず、待望されている。
特性(i)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下である。
特性(ii)密度が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下である。
特性(1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下である。
特性(2)JIS K6922−2:2010に準拠して測定される引張破壊強さが10MPa以上30MPa以下である。
特性(3)JIS K7111:2004に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が2.0kJ/m2以上10kJ/m2以下である。
特性(4)190℃で測定される溶融張力(MT)が、40mN以上である。
特性(i)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下である。
特性(ii)密度が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下である。
特性(1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下である。
特性(2)JIS K6922−2:2010に準拠して測定される引張破壊強さが10MPa以上30MPa以下である。
特性(3)JIS K7111:2004に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が2.0kJ/m2以上10kJ/m2以下である。
以下、本発明を、項目毎に、詳細に説明する。
本発明に用いられるエチレン系重合体は、エチレン単独重合体及びエチレン−αオレフィン共重合体の少なくとも1種であって下記の特性(i)〜(ii)を満足する。
本発明に用いられるエチレン系重合体は、更に下記の特性(iii)〜(iv)を満足することが好ましい。
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体は、本発明の効果を奏する点から、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下であるものを選択する。
このMFRが上記下限値より小さいと、樹脂圧力や樹脂温度が上昇し易く、樹脂組成物の混練時や成形時において発熱し易くなるおそれがある。樹脂組成物の混練時に発熱すると、ペレット製造時に分解や発泡等の現象を生じさせるおそれがある。(A)エチレン系重合体のMFRは、0.1g/10分以上が好ましく、0.2g/10分以上が更に好ましい。
一方、このMFRが上記上限値より大きいと、ドローダウンしやすくなり中空成形する際の成形加工性が悪化したり、加工した中空成形品の衝撃強度が十分発現し難くなるおそれがある。(A)エチレン系重合体のMFRは、0.9g/10分以下が好ましく、0.8g/10分以下が更に好ましい。
MFRは、JIS K6922−2:1997に準拠して測定することができる。
MFRは、主に(A)エチレン系重合体の重合時の水素量、重合温度、連鎖移動剤の使用等により調整することができる。
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体は、本発明の効果を奏する点から、密度が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下であるものを選択する。
密度が上記下限値より小さいと、中空成形性が低下したり、剛性が不足するおそれがある。(A)エチレン系重合体の密度は、0.942g/cm3以上が好ましく、0.945g/cm3以上が更に好ましい。
一方、密度が上記上限値より大きいと、最終樹脂組成物において耐衝撃性能が低下するおそれがある。エチレン系重合体の密度は、0.965g/cm3以下が好ましく、0.960g/cm3以下が更に好ましい。
密度は、JIS K7112:1999に準拠し、D法で測定することができる。
密度は、主に(A)エチレン系重合体の重合時のα−オレフィンの量により調整することができる。
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体は、更に下記の特性(iii)を満足することが好ましい。
特性(iii):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が6以上20以下である。
GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)は、重合体の各種物性、成形性の改良に関わり、成形品の外観等の改良にも関係する。
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内にあると、より優れた中空成形性を発揮することができる。また、前記分子量分布(Mw/Mn)が6以上であると、成形時の樹脂圧力が適切になって、流動不安定現象を生じ難くなり、外観不良を抑制しやすい点から好ましい。前記分子量分布(Mw/Mn)は更に好ましくは8以上である。一方、前記分子量分布(Mw/Mn)が20以下であると、中空成形品としての衝撃強度を良好にしやすい。前記分子量分布(Mw/Mn)は更に好ましくは15以下である。
分子量分布を所定の範囲とするには、分子量分布を制御できる触媒や適当な重合条件を採用することにより達成することができる。また、バイモーダル又はマルチモーダルの重合体の場合は、各成分の分子量を調整することにより制御することができる。
[測定条件]
使用機種:日本ウォーターズ社製Alliance GPCV2000型
測定温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製Shodex HT−806M×2本+同 HT−G
流速:1.0mL/分
注入量:0.3mL
4mLバイアル瓶に試料3mg及びオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学社製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行う。溶解終了後、不溶成分がないことを目視で確認する。
[較正曲線の作成]
4mLガラス瓶を4本用意し、それぞれに下記(1)〜(4)の組み合わせの単分散ポリスチレン標準試料又はn−アルカンを0.2mgずつ秤り採り、続いてオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学社製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行う。
(1)Shodex S−1460,同S−66.0,n−エイコサン
(2)Shodex S−1950,同S−152,n−テトラコンタン
(3)Shodex S−3900,同S−565,同S−5.05
(4)Shodex S−7500,同S−1010,同S−28.5
試料溶液が入ったバイアル瓶を装置にセットし、前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1秒でクロマトグラム(保持時間と示差屈折計検出器の応答のデータセット)を記録する。得られたクロマトグラムから各ポリスチレン標準試料の保持時間(ピーク頂点)を読み取り、分子量の対数値に対してプロットする。ここで、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの分子量は、それぞれ600及び1200とする。このプロットに非線形最小自乗法を適用し、得られた4次曲線を較正曲線とする。
前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1秒でクロマトグラムを記録する。
このクロマトグラムから、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)第4章p.51〜60に記載の方法で微分分子量分布曲線及び平均分子量値(Mn、Mw及びMz)を算出する。但し、dn/dcの分子量依存性を補正するため、クロマトグラムにおけるベースラインからの高さHを下記の式にて補正する。クロマトグラムの記録(データ取り込み)及び平均分子量計算は、Microsoft社製OS Windows(登録商標)XPをインストールしたPC上で自社製プログラム(Microsoft製Visual Basic6.0で作成)を用いて行う。
H’=H/[1.032+189.2/M(PE)]
なお、ポリスチレンからポリエチレンへの分子量変換は、下記の式を用いる。
M(PE)=0.468×M(PS)
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体は、更に下記の特性(iv)を満足することが好ましい。
特性(iv):190℃で測定される溶融張力(MT)が、40mN以上300mN以下である。
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体の溶融張力(MT)が前記範囲内にあると、ドローダウンし難くなり、より優れた中空成形性を発揮することができる。
溶融張力は、更に好ましくは60mN以上であり、より更に好ましくは80mN以上である。
[測定条件]
使用機種:東洋精機製作所社製、キャピログラフ1B
ノズル径:2.095mm
ノズル長さ:8.0mm
流入角度:180°(flat)
押出速度:15mm/分
引き取り速度:6.5m/分
測定温度:190℃
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体は、更に下記の特性(v)を満足することが好ましい。
特性(v):ガラス転移温度(Tg)が、25℃以下である。
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内にあると、成形体の破壊時の安全性に寄与することができる。
ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下であり、更に好ましくは−30℃以下であり、より更に好ましくは−50℃以下である。
ガラス転移温度(Tg)は、成形体の破壊様式に関わり、成形体の使用環境よりも高い場合、ガラスの様に破壊し鋭利な破断面を形成しやすく、容器や建築部材などへの適用した場合、怪我につながる恐れがあり好ましくない。
ガラス転移温度(Tg)は、主に高分子のモノマーおよびコモノマーの種類と構成比率より調整することができ、エチレン系重合体のガラス転移点温度(Tg)は低いことが知られており好ましい。
[測定条件]
約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持。さらに降温速度10℃/分で−75℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温。ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めることができる。
なお、本発明に用いられる(A)エチレン系重合体に使用されるエチレンは、通常の化石原料由来の原油から製造されるエチレンであってもよいし、植物由来のエチレンであってもよい。植物由来のエチレン及びポリエチレンとしては、例えば、特表2010−511634号公報に記載のエチレンやそのポリマーが挙げられる。植物由来のエチレンやそのポリマーは、カーボンニュートラル(化石原料を使わず大気中の二酸化炭素の増加につながらない)の性質を持ち、環境に配慮した製品の提供が可能である。
これらのクロム系触媒に適する担体の製法、物理的性質及び特徴は、C.E.Marsden著,Preparation of Catalysts,Volume V,215頁,1991年,Elsevier Science Publishers、C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年等の文献に記載されている。
また、無機酸化物担体の平均粒径としては、一般的なクロム系触媒に用いられる担体と同様10〜200μm、好ましくは20〜150μm、更に好ましくは30〜100μmの範囲のものが用いられる。
このようにして得られた、クロム系触媒を使用することにより、(A)エチレン系重合体に好適なエチレン系重合体を製造することができる。
マグネシウム・チタニウム複合型チーグラーナッタ触媒は、更に有機アルミニウム化合物により改質されたものであることが好ましい。このような改質されたチーグラーナッタ触媒を用いることにより、短鎖分岐が少ないポリエチレンを製造することができる。有機アルミニウム化合物により改質されたマグネシウム・チタニウム複合型チーグラーナッタ触媒は、特開2012−72229号公報を参考に製造することができる。
液相重合法における重合温度は、一般的には0〜300℃であり、実用的には20〜200℃、好ましくは40〜180℃、さらに好ましくは50〜150℃、特に好ましくは70〜110℃である。反応器中の触媒濃度およびエチレン濃度は重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。例えば、触媒濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約0.0001〜約5重量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約1%〜約10%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1〜10MPaの範囲とすることができる。また、水素を共存させて重合を行うことも可能であり、耐久性、耐衝撃性、剛性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造するためには、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させるのがよい。水素は、一般的には分子量を調節するためのいわゆる連鎖移動剤としての働きを有する。
二段重合の場合、第一段反応器および第二段反応器で同一の重合条件で製造してもよいし、あるいは第一段反応器および第二段反応器で同一のMFR、密度のエチレン系重合体を製造してもよいが、分子量分布を広げる場合には、両反応器で製造するエチレン系重合体の分子量に差をつけるのが好ましい。第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を、または第一段反応器で低分子量成分、第二段反応器で高分子量成分をそれぞれ製造するいずれの製造方法でもよいが、第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を製造する方法の方が、第一段から第二段への移行にあたり中間の水素のフラッシュタンクを必要としないため生産性の面でより好ましい。
第二段においては、第一段から流れ込む反応混合物中の水素および同じく流れ込むエチレンがあるが、必要に応じてそれぞれ新たな水素、エチレンを加えることができる。従って、第二段においても、水素濃度のエチレン濃度に対する比、重合温度または両者により分子量を調節しながら、またコモノマー濃度のエチレン濃度に対する比により密度を調節しながら重合反応を行うことができる。触媒や有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物についても、第一段から流れ込む触媒により二段目で引き続き重合反応を行うだけでなく、第二段で新たに触媒、有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物またはその両者を供給してもよい。
本発明に用いられる(A)エチレン系重合体は、本発明で規定の範囲を満たし易い点から、例えば、クロム触媒由来のエチレン系重合体とチーグラーナッタ触媒由来のエチレン系重合体の混合物も好適に用いられる。
本発明に用いられる(B)難燃剤は、ハロゲンを含まない非ハロゲン系難燃剤であって、有機系難燃剤を含む。
本発明に用いられる有機系難燃剤はハロゲンを含まない有機系難燃剤であり、例えば、リン系、グアニジン系、メラミンシアヌル酸誘導体などの種々の有機系難燃剤をいずれも用いることができる。
有機系難燃剤としては、難燃性の発現効果が高いことから、有機リン酸エステル化合物やリン酸塩化合物及びこれらの混合物からなるリン系難燃剤が好ましく、特にリン酸塩化合物を含むことが好ましい。
リン酸塩化合物として、炭化を促進するリン成分と、消火・発泡を促進する窒素成分を含有する化合物又は混合物は、イントメッセント系難燃剤として機能し、難燃性が高い点から好適に用いられる。一方で、このようなイントメッセント系難燃剤は加熱等により発泡し易いことから、前記(A)特定の特性(i)〜(ii)を満足するエチレン系重合体と混合することが特に困難であった。
上記リン酸化合物はポリリン酸を含むことが好ましい。即ち、リン酸塩化合物はポリリン酸塩を含むことが好ましい。この場合、リン酸塩化合物がポリリン酸を含まない場合に比べて、より高い難燃性が得られる。
中でも、本発明の難燃剤で用いられるリン酸塩化合物は、オルトリン酸メラミン塩、ピロリン酸メラミン塩、及びポリリン酸メラミン塩からなる群から選択されるメラミン塩(b−1)と、オルトリン酸ピペラジン塩、ピロリン酸ピペラジン塩、及びポリリン酸ピペラジン塩からなる群から選択されるピペラジン塩(b−2)との混合物であることが好ましい。
また、上記(b−1)と上記(b−2)との含有比率(質量基準)は、(b−1)/(b−2)=20/80〜50/50であることが好ましく、(b−1)/(b−2)=30/70〜50/50であることが更に好ましい。
これらリン酸とメラミンとの塩はそれぞれ対応するリン酸又はリン酸塩とメラミンを反応させることによって得ることもできるが、本発明で用いられるメラミン塩は、オルトリン酸1メラミンを加熱縮合させて得られたピロリン酸メラミン又はポリリン酸メラミンが好ましく、特にピロリン酸メラミンが好ましい。
これらリン酸とピペラジンの塩は、それぞれ対応するリン酸又はリン酸塩とピペラジンを反応させることで得られることもできるが、本発明で用いられるピペラジン塩は、2オルトリン酸1ピペラジンを加熱縮合させて得られたピロリン酸ピペラジン又はポリリン酸ピペラジンが好ましく、特にピロリン酸ピペラジンが好ましい。
本発明の効果が損なわれない限り、例えば、特開2015−218302号公報に記載されているような有機第4級アンモニウムカチオンが導入された層状ケイ酸塩、酸化亜鉛等の難燃助剤、シリコンゴム類、層状ケイ酸塩等のドリップ防止剤が更に含まれていても良い。
本発明の難燃性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、更にその他の成分を含んでいても良い。
その他の成分としては、例えば、分散剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、老化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核剤、防曇剤、有機或いは無機顔料などの公知の添加剤や、エチレン系共重合体に該当しない他のポリオレフィン、熱可塑性樹脂等の公知の樹脂、合成樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状の強化材を添加することが出来る。強化材としては、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維状強化材、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機繊維状強化材、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト等の板状や粒状の強化材が挙げられる。
分散剤としては、親水基と疎水基を有する界面活性剤が用いられ、分子量やイオン性により分類され、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等が挙げられ、より具体的には、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、分岐アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(AES)、アルコールエトキシレート(AE)等の低分子量のものや、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミドなどの官能基を有するモノマーの重合体等の高分子を主成分とするもの等が挙げられる。
分散剤としては、難燃剤の種類にも依るが、エチレン系重合体との親和性の観点から、ノニオン系界面活性剤や、分子構造中にメチレン連鎖を含むエチレン・無水マレイン酸共重合体等を主成分とするものが好ましい。
滑剤としては、例えば、炭化水素系ワックス、脂肪族アマイド系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、金属石鹸、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂に代表される高分子系滑剤などがあげられる。メヤニ低減効果が高く、またペレット製造時に熱劣化し難く、熱劣化した滑剤が製品に混入することも抑制し易い点から、金属石鹸が特に好ましい。
また、滑剤は、予めエチレン共重合体等に混合して添加されても良い。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられ、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス1010、BASF製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)メシチレン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2’−チオジエチルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1−ジメチル−2−[(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロピオン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。その他ヒンダードフェノール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
本発明の難燃性樹脂組成物は、前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤の合計100質量部に対して、前記(B)難燃剤が5質量部以上44質量部以下で含有する組成物である。本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性と耐衝撃性の点から、前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤の合計100質量部に対して、前記(B)難燃剤が12質量部以上40質量部以下で含有する組成物であることが更に好ましい。
更に、本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性及び中空成形性に優れる点から、難燃性樹脂組成物中の前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤の合計含有量は、95質量%以上であることが好ましく、更に98質量%以上であることが好ましい。
特性(1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下である。
特性(2)JIS K6922−2:2010に準拠して測定される引張破壊強さが10MPa以上30MPa以下である。
特性(3)JIS K7111:2004に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が2.0kJ/m2以上10kJ/m2以下である。
本発明の難燃性樹脂組成物は、MFRが0.05g/10分以上、1.0g/10分以下である。
このMFRが上記下限値より小さいと、流動性が低下することにより、成形時における押出機モーター負荷やせん断による樹脂発熱量が増大するおそれや、流動不安定現象が発生しやすくなるため成形品の外観を損なうおそれがある。難燃性樹脂組成物のMFRは、0.08g/10分以上が好ましく、0.1g/10分以上が更に好ましい。
一方、このMFRが上記上限値より大きいと、ドローダウンしやすくなり中空成形する際の成形加工性が悪化したり、耐衝撃性が達成できず、長期耐久性が低下するおそれがある。難燃性樹脂組成物のMFRは、0.7g/10分以下が好ましく、0.5g/10分以下が更に好ましい。
難燃性樹脂組成物のMFRは、(A)エチレン系重合体の水素量及び温度、並びに(A)エチレン系重合体と(B)難燃剤の配合量や混合方法等により調整することができる。
前記特性(1)は、前記(A)エチレン系重合体の特性(i)と同様にして測定することができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、JIS K6922−2:2010に準拠して測定される引張破壊強さが10MPa以上30MPa以下である。
前記引張破壊強さが上記下限値未満であると、成形体としての十分な強度を保つことが困難になったり、強度維持のために成形品の肉厚を厚くする必要が生じてしまう。難燃性樹脂組成物の前記引張破壊強さは、12MPa以上が好ましく、15MPa以上が更に好ましい。
一方、前記引張破壊強さが上記上限値以下であると、エチレン系重合体の融点が成形に適した温度範囲に収まり、剛性と成形性のバランスを維持しやすくなる。難燃性樹脂組成物の前記引張破壊強さは、25MPa以下であってもよく、22MPa以下であってもよい。
難燃性樹脂組成物の引張破壊強さは、(A)エチレン系重合体の密度、並びに(A)エチレン系重合体と(B)難燃剤の配合量や混合方法等により調整することができる。また、(A)エチレン系重合体と(B)難燃剤の配合量が同じであっても、難燃剤が均一に分散されていなかったり、発泡することにより当該引張破壊強さが低くなってしまうことから、難燃剤の分散や発泡の度合いを示す指標にもなる。
なお、前記引張破壊強さは、JIS K6922−2に準拠して試験片を作製し、測定することが出来る。
本発明の難燃性樹脂組成物は、JIS K7111:2004に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が2.0kJ/m2以上10kJ/m2以下である
前記シャルピー衝撃強度が上記下限値より小さいと、成形品の耐衝撃性が不足するおそれがある。難燃性樹脂組成物の前記シャルピー衝撃強度は、2.3kJ/m2以上が好ましく、3.0kJ/m2以上が更に好ましい。
一方、前記シャルピー衝撃強度が上記上限値以下であると、エチレン系重合体のメルトフローレートが成形に適した流動性の範囲に収まり、耐衝撃性と成形性のバランスを維持しやすくなる。
シャルピー衝撃強度は、(A)エチレン系重合体の分子量と分子量分布、並びに(A)エチレン系重合体と(B)難燃剤の配合量や混合方法等により調整することができる。
なお、前記シャルピー衝撃強度は、JIS K7111:2004に準拠し、タイプ1の試験片を作製し、打撃方向はエッジワイズ、ノッチのタイプはタイプA(0.25mm)として、23℃・50%RHで測定することができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、更に、下記の特性(4)を満足することが、耐ドローダウン性などの中空成形性の点から好ましい。
特性(4)密度が0.97g/cm3以上1.20g/cm3以下である。
本発明の難燃性樹脂組成物の密度が上記下限値より小さいと、難燃剤の配合量が少ないことを意味し、難燃性が不足するおそれがある。難燃性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm3以上が好ましく、0.99g/cm3以上が更に好ましい。
一方、難燃性樹脂組成物の密度が上記上限値より大きいと、難燃性が過剰に配合されていることを意味し、耐衝撃性能が低下するおそれがある。難燃性樹脂組成物の密度は、1.19g/cm3以下が好ましく、1.18g/cm3以下が更に好ましい。
難燃性樹脂組成物の密度は、(A)エチレン系重合体の密度、(B)難燃剤の密度、並びに(A)エチレン系重合体と(B)難燃剤の配合量や混合方法等により調整することができる。
難燃性樹脂組成物の密度は、前記(A)エチレン系重合体の特性(ii)の密度と同様に測定することが出来る。
本発明の難燃性樹脂組成物は、更に、下記の特性(5)を満足することが、耐ドローダウン性などの中空成形性の点から好ましい。
特性(5):190℃で測定される溶融張力(MT)が、40mN以上である。前記溶融張力は、更に好ましくは50mN以上であり、より更に好ましくは60mN以上である。
難燃性樹脂組成物の溶融張力は、(A)エチレン系重合体の溶融張力、並びに(A)エチレン系重合体と(B)難燃剤の配合量や混合方法等により調整することができる。
難燃性樹脂組成物の溶融張力は、前記(A)エチレン系重合体の特性(iv)の溶融張力と同様に測定することが出来る。
本発明の難燃性樹脂組成物は、更に、下記の特性(6)を満足することが、成形品の剛性と成形時における適切な成形温度のバランス維持の点から好ましい。
特性(6):融点(Tm)が、120℃以上である。前記融点(Tm)は、更に好ましくは125℃以上であり、より更に好ましくは130℃以上である。
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)にて測定することができ、0.2mmの厚さのプレスシートを円形に切り出した試料約5mgをアルミパンに詰め、窒素雰囲気下、200℃まで昇温後、5分間同温度で保持し、10℃/分で30℃まで冷却し、その後同温度で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温し、融解に伴う熱量の変化が極大となる温度を融点(Tm)として求めることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、更に、下記の特性(7)を満足することが、中空成形性の点から好ましい。
特性(7):温度170℃、伸長歪速度0.1(単位:1/秒)で測定される伸長粘度η(t)(単位:Pa・秒)と伸長時間t(単位:秒)の両対数プロットにおいて、歪硬化に起因する伸長粘度の変曲点が観測される。
本明細書において、歪硬化に起因する伸長粘度の変曲点の有無は、歪硬化度の測定において観察できるものである。
上記歪硬化度の測定方法に関しては、一軸伸長粘度を測定できれば、どのような方法でも原理的に同一の値が得られ、例えば、公知文献:Polymer 42(2001)8663に測定方法及び測定機器の詳細が記載されている。
本発明に係る樹脂組成物の測定に当り、好ましい測定方法及び測定機器として、以下を挙げることができる。
・装置:Rheometrics社製Ares
・冶具:ティーエーインスツルメント社製 Extentional Viscosity Fixture
・測定温度:170℃
・歪み速度:0.1/秒
・試験片の作成:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成する。
170℃、歪み速度0.1/秒における伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(t)(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で、歪硬化後、歪量が4.0となるまでの最大伸長粘度をηMax(t1)(t1は最大伸長粘度を示す時の時間)とし、歪硬化前の伸長粘度の近似直線をηLinear(t)としたとき、ηMax(t1)/ηLinear(t1)として算出される値を歪硬化度(λmax)と定義する。なお、歪硬化の有無は、時間の経過と共に伸長粘度が上に凸の曲線から下に凸の曲線へと変わる変曲点を有するか、否かによって、判断される。
図1、図2は典型的な伸長粘度のプロット図である。図1は伸長粘度の変曲点が観測される場合であり、図中にηMax(t1)、ηLinear(t1)を示した。図2は伸長粘度の変曲点が観測されない場合である。
更に、好ましくは、上記特性(1)〜(3)に加え、上記特性(4)〜(7)のうち一つ以上を備えた難燃性樹脂組成物は、上記効果を更に良く奏するものとなる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、前記(A)エチレン系重合体及び前記(B)難燃剤を所定の配合割合で溶融混合することにより、また必要に応じて他の成分を添加して溶融混合することにより製造することができる。
樹脂組成物の温度が上記上限値よりも高い温度で、前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤とを混合すると、難燃剤の分解や発泡等の現象が生じやすくなる傾向がある。このような難燃剤の分解や発泡等の現象が生じると、難燃性樹脂組成物は、前記特性(2)や特性(3)を満足できなくなる傾向がある。
何れの製造方法でも、上記の本発明の配合組成であれば、中空成形性に優れた成形材料が得られるが、良好な混練状態と溶融混練時の難燃剤の分解が少ない成形材料が得られるロール、バンバリー、コニーダ、二軸押出機で製造する方法が望ましい。
また、上記の方法により得られるポリエチレン樹脂組成物には、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、分散剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、強化材等の公知の添加剤を配合することができる。
いずれの場合でも、上記ポリエチレン樹脂組成物に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物ペレットは、前記本発明の難燃性樹脂組成物を溶融押出されてなる、難燃性樹脂組成物ペレットである。
本発明の難燃性樹脂組成物ペレットは、本発明の難燃性樹脂組成物の好適な一実施形態であり、前記特性(1)〜(3)を満足するものである。
製造時に分解や発泡等の現象を生じ、空隙が含まれているペレットの場合、前記特性(1)〜(3)を満足することが困難になり、良好な中空成形性を得ることが困難である。
本発明の成形品は、前記本発明に係る難燃性樹脂組成物を含む成形品である。
また、本発明の中空成形品は、前記本発明に係る難燃性樹脂組成物を含む中空成形品である。
本発明の成形品は、本発明の難燃性樹脂組成物を原料として、各種成形法により製造することができる。本発明の難燃性樹脂組成物は中空成形性が良好であることから、本発明の成形品は、主に中空成形法等により成形された中空成形品であることが好ましい。
中空成形の成形条件としては、得られる中空成形品に合わせて適宜選択されれば良いが、例えば、成形温度が160℃〜220℃の条件下で実施されることが好ましい。
従って、このような特性を必要とする、建築材料、機械部品、自動車部品、各種の樹脂トレーや容器などに好適に用いられ、より具体的には、例えば、競技場、球場、体育館等の椅子、仮設トイレ、バッテリーケース、建機、農機用のルーフ、ボンネット、自動車用バンパー、エンジンカバー、フェンダー、外装パネル、パイプ、ダクト、灯油タンク、農機具用タンク、医療用タンク、各種容器等の用途に好適に用いることができる。
実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
(1)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(2)密度:
JIS K7112:1999に準拠し、D法で測定した。
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
[測定条件]
使用機種:日本ウォーターズ社製Alliance GPCV2000型
測定温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製Shodex HT−806M×2本+同 HT−G
流速:1.0mL/分
注入量:0.3mL
[試料の調製]
4mLバイアル瓶に試料3mg及びオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行った。溶解終了後、不溶成分がないことを目視で確認した。
[較正曲線の作成]
4mLガラス瓶を4本用意し、それぞれに下記(1)〜(4)の組み合わせの単分散ポリスチレン標準試料又はn−アルカンを0.2mgずつ秤り採り、続いてオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行った。
(1)Shodex S−1460,同S−66.0,n−エイコサン
(2)Shodex S−1950,同S−152,n−テトラコンタン
(3)Shodex S−3900,同S−565,同S−5.05
(4)Shodex S−7500,同S−1010,同S−28.5
試料溶液が入ったバイアル瓶を装置にセットし、前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1sでクロマトグラム(保持時間と示差屈折計検出器の応答のデータセット)を記録した。得られたクロマトグラムから各ポリスチレン標準試料の保持時間(ピーク頂点)を読み取り、分子量の対数値に対してプロットした。ここで、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの分子量は、それぞれ600及び1200とした。このプロットに非線形最小自乗法を適用し、得られた4次曲線を較正曲線とした。
[分子量の計算]
前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1sでクロマトグラムを記録した。この
クロマトグラム森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)第4章p.51〜60に記載の方法で微分分子量分布曲線及び平均分子量値(Mn、Mw及びMz)を算出した。ただし、dn/dcの分子量依存性を補正するため、クロマトグラムにおけるベースラインからの高さHを下記の式にて補正した。クロマトグラムの記録(データ取り込み)及び平均分子量計算は、Microsoft社製OS Windows(登録商標)XPをインストールしたPC上で自社製プログラム(Microsoft製Visual Basic6.0で作成)を用いて行った。
H′=H/[1.032+189.2/M(PE)]
なお、ポリスチレンからポリエチレンへの分子量変換は、下記の式を用いた。
M(PE)=0.468×M(PS)
溶融張力(MT)は、溶融させたエチレン系重合体又は樹脂組成物を一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定され、下記条件により測定した。
[測定条件]
使用機種:東洋精機製作所社製、キャピログラフ1B
ノズル径:2.095mm
ノズル長さ:8.0mm
流入角度:180°(flat)
押出速度:15mm/分
引き取り速度:6.5m/分
測定温度:190℃
融点は、示差走査熱量計(DSC)にて測定した。0.2mmの厚さのプレスシートを円形に切り出した試料約5mgをアルミパンに詰め、窒素雰囲気下、200℃まで昇温後、5分間同温度で保持し、10℃/分で30℃まで冷却し、その後同温度で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温し、融解に伴う熱量の変化が極大となる温度を融点(Tm)として求めた。
プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成した試験片を用い、レオメータ(Rheometrics社製Ares)を用い、170℃、歪み速度0.1/秒における伸長粘度の測定を行い、歪硬化に起因する伸長粘度の変曲点の有無により、長鎖分岐構造の有無の確認を行った。
[測定条件]
装置:Rheometrics社製Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製 Extentional Viscosity Fixture
[算出方法]
170℃、歪み速度0.1/秒における伸長粘度を、横軸に時間t(単位:秒)、縦軸に伸長粘度η(t)(単位:Pa・秒)を両対数グラフでプロットした。その両対数グラフ上で、歪硬化後、歪量が4.0となるまでの最大伸長粘度をηMax(t1)(t1は最大伸長粘度を示す時の時間)とし、歪硬化前の伸長粘度の近似直線をηLinear(t)としたとき、ηMax(t1)/ηLinear(t1)として算出される値を歪硬化度(λmax)と定義した。なお、歪硬化の有無は、時間の経過と共に伸長粘度が上に凸の曲線から下に凸の曲線へと変わる変曲点を有するか、否かによって、判断し、変曲点を有する場合を○、有しない場合を×とした。
JIS K6922−2:2010に準拠して、圧縮成形により厚さ4mmのシートを作成し、多目的試験片1Bを作成し、23℃、50%RHの条件で引張スピード50mm/minにて測定を実施した。
JIS K7111:2004に準拠し、タイプ1の試験片を作製し、打撃方向はエッジワイズ、ノッチのタイプはタイプA(0.25mm)として、23℃、50%RHの条件で測定することができる。
JIS K6922−2:2010に準拠して、圧縮成形により難燃性評価用試験片を成形し、UL94−V規格に従って難燃性を評価した(厚み3mmt)。
UL94−V規格に従って、燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV−0が最高のものであり、V−1、V−2となるに従って難燃性は低下する。
目視により、ペレットに含まれる気泡量を評価した。
○:目視で発砲が確認されない。
×:目視で発砲が確認される。
[樹脂組成物の製造]
[実施例1]
二軸押出機を使用し、エチレン系重合体(A−1)51kg/h、難燃剤(B−1)12kg/h、前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤の合計100質量部に対して、酸化防止剤(C−1)を0.1質量部添加混合した状態でフィードし、さらに、溶融後のセグメントに難燃剤(B−1)12kg/hをサイドフィーダーを用いてフィードし、樹脂温度191℃にて混練し、難燃性樹脂組成物を得た。難燃性樹脂組成物の各特性の評価結果を表1に示した。
なお、エチレン系重合体(A−1)としては、日本ポリエチレン社製、ノバテックHB235Rを使用した。エチレン系重合体(A−1)の特性については、表1に示す。
また、難燃剤(B−1)としては、ADEKA社製、アデカスタブFP−2200(ピロリン酸ジメラミン成分/ピロリン酸ピペラジン成分=約40/60(質量比)からなるリン酸アミン塩含有;特開2016−164217を参照)を使用した。
また、酸化防止剤(C−1)としては、BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤IRGANOX1010を使用した。
表1に示す組成物となるように条件設定し、混練時の樹脂温度及び樹脂処理量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に難燃性樹脂組成物を製造した。得られた難燃性樹脂組成物の物性及び評価結果を表1に示した。
二軸押出機を使用し、エチレン系重合体(A−1)138kg/h、難燃剤(B−1)を8kg/h、更に、前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤の合計100質量部に対して、酸化防止剤(C−1)を0.1質量部添加混合した状態でフィードし、樹脂温度194℃にて混練し、難燃性樹脂組成物を得た。難燃性樹脂組成物の各特性の評価結果を表1に示した。
表1に示す組成物となるように条件設定し、混練時の樹脂温度及び樹脂処理量を表1に示すように変更した以外は、実施例6と同様に難燃性樹脂組成物を製造した。得られた難燃性樹脂組成物の物性及び評価結果を表1に示した。
なお、滑剤(C−2)としては、理研ビタミン社製、リケマスターEXR−060(金属石鹸含有)を使用した。
また、分散剤(C−3)としては、丸菱油化工業社製、デノン1147(ノニオン系界面活性剤含有)を使用した。
表1に示す組成物となるように条件設定し、混練時の樹脂温度及び樹脂処理量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に難燃性樹脂組成物を製造した。得られた難燃性樹脂組成物の物性及び評価結果を表1に示した。
表1に示す組成物となるように条件設定し、混練時の樹脂温度及び樹脂処理量を表1に示すように変更した以外は、実施例6と同様に難燃性樹脂組成物を製造した。得られた難燃性樹脂組成物の物性及び評価結果を表1に示した。
なお、エチレン系重合体(A−2)としては、日本ポリエチレン社製、ノバテックHB216Rを使用した。エチレン系重合体(A−2)の特性については、表1に示す。
比較例1及び2の難燃性樹脂組成物は、(A)エチレン系重合体と(B)難燃剤との混練時に発熱して、ペレット成形時に発泡してしまった。このように発砲したペレットを用いて成形すると、成形時気泡が取り込まれた状態のパリソンが形成され、ブローアップ時に、気泡が破裂することによる外観不良や、成形品に穴が開いてしまうため、良好な成形品を得ることができなかった。
比較例3の難燃性樹脂組成物は、エチレン系重合体(A−2)のMFRが本発明で用いられるエチレン系重合体の特定範囲よりも小さく、(B)難燃剤との混練時に発熱して、ペレット成形時に発泡してしまった。このように発砲したペレットを用いて成形したところ、成形時気泡が取り込まれた状態のパリソンが形成され、ブローアップ時に、気泡が破裂することによる外観不良や、成形品に穴が開いてしまうため、良好な成形品を得ることができなかった。
Claims (10)
- (A)エチレン単独重合体及びエチレン−αオレフィン共重合体の少なくとも1種であって下記の特性(i)〜(ii)を満足するエチレン系重合体と、(B)有機系難燃剤を含む非ハロゲン系難燃剤とを含有し、前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤の合計100質量部に対して、前記(B)難燃剤が5質量部以上44質量部以下であり、下記の特性(1)〜(3)を満足する難燃性樹脂組成物。
特性(i)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下である。
特性(ii)密度が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下である。
特性(1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下である。
特性(2)JIS K6922−2:2010に準拠して測定される引張破壊強さが10MPa以上30MPa以下である。
特性(3)JIS K7111:2004に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が2.0kJ/m2以上10kJ/m2以下である。 - 下記の特性(4)を満足する、請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
特性(4)190℃で測定される溶融張力(MT)が、40mN以上である。 - 前記有機系難燃剤が、リン酸塩化合物を含む、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記リン酸塩化合物は、オルトリン酸メラミン塩、ピロリン酸メラミン塩、ポリリン酸メラミン塩、オルトリン酸ピペラジン塩、ピロリン酸ピペラジン塩、及びポリリン酸ピペラジン塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項3に記載の難燃性樹脂組成物。
- 更に、金属石鹸を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 中空成形用である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 樹脂組成物の温度が185℃以上208℃以下で、前記(A)エチレン系重合体と前記(B)難燃剤とを混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を溶融押出されてなる、難燃性樹脂組成物ペレット。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を含む成形品。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を含む中空成形品。
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