本発明の化粧シートにおいては、最表層にトップコート層を備え、当該トップコート層の下層に透明オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層を備えた化粧シートであって、当該トップコート層および/または透明樹脂層を、有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤を添加して形成し、前記有機系紫外線吸収剤および前記無機系紫外線吸収剤が、単層膜の外膜を具備するベシクルにそれぞれ別々に内包された有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルであることが重要である。
そして、本発明の化粧シートの製造方法においては、前記トップコート層および/または前記透明樹脂層を構成する樹脂に対して、単層膜の外膜を具備するベシクルに有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤をそれぞれ別々に内包した有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルとして添加していることが重要である。これにより、吸収波長や寿命が異なる有機系紫外線吸収剤ベシクルと無機系紫外線吸収剤ベシクルとの添加量を、化粧シートの用途に応じて細かく設定することができるので、用途に最適な化粧シートを提供することを可能とする。
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系のうち少なくとも1種類から選択して用いることができる。特に、ベンゾトリアゾール系またはトリアジン系の有機系紫外線吸収剤は、紫外線吸収能が高く、耐熱性、耐揮発性および樹脂相溶性に優れるため、少なくとも一方から選択して用いることが好ましい。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’.5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノールなどが挙げられる。トリアジン系の紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などが挙げられる。ベンゾエート系の紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。シアノアクリレート系の紫外線吸収剤としては、エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
また、無機系紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリアなどを用いることができる。なかでも、酸化亜鉛は、透明オレフィン系樹脂およびトップコート層樹脂と屈折率が近く、当該酸化亜鉛を添加しても高い透明性を維持することができるため好適である。なお、無機系紫外線吸収剤の粒径は1nm〜200nmの範囲内のものを用いることが好ましい。
本発明の有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルは、超臨界逆相蒸発法により調製されていることが重要である。ここで、超臨界逆相蒸発法について詳しく説明する。超臨界逆相蒸発法は、超臨界状態または超臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素に対してベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させて混合物とし、当該混合物中に水溶性または親水性の封入物質としての有機系紫外線吸収剤または無機系紫外線吸収剤を含む水相を加えて、一層の膜(単層膜)で封入物質としての有機系紫外線吸収剤または無機系紫外線吸収剤を包含したカプセル状の有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルをそれぞれ調製するようにされている。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味するものである。この方法により、直径50〜800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。
ベシクルの外膜を形成するリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ベシクルの外膜を形成する物質としては、上記リン脂質の他にもノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤を採用することができる。
より具体的には、ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種または2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウムまたはコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、ベシクルの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本発明の化粧シートの製造方法においては、外膜をリン脂質から形成したベシクルとすることが重要であり、トップコート層および透明樹脂層の主成分である樹脂組成物との相溶性を良好なものとすることができる。
このような、有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルは、トップコート層に対して添加する場合には、トップコート層の主成分である樹脂組成物100重量部に対して、有機系紫外線吸収剤ベシクルを0.5〜20重量部、無機系紫外線吸収剤ベシクルを0.5〜20重量部添加することが好ましい。このとき、両紫外線吸収剤の添加量が、0.5重量部よりも少ないと紫外線吸収能の効果が低く、20重量部よりも多いとブロッキングが生じる可能性が高くなる。より好ましくは、有機系紫外線吸収剤ベシクルを1〜10重量部、無機系紫外線吸収剤ベシクルを1〜10重量部添加することであり、さらに好ましくは、有機系紫外線吸収剤ベシクルを3〜5重量部、無機系紫外線吸収剤ベシクルを3〜5重量部添加することである。
また、透明樹脂層に対して添加する場合には、透明樹脂層の主成分である樹脂組成物100重量部に対して、有機系紫外線吸収剤ベシクルを0.1〜5重量部、無機系紫外線吸収剤ベシクルを0.1〜5重量部添加することが好ましい。このとき、両紫外線吸収剤の添加量が、0.1重量部よりも少ないと紫外線吸収能の効果が低く、5重量部よりも多いとブリードアウトが生じる可能性が高くなる。より好ましくは、有機系紫外線吸収剤ベシクルを0.2〜3重量部、無機系紫外線吸収剤ベシクルを0.2〜3重量部添加することである。
本発明の化粧シートにおいては、透明樹脂層にエンボス模様が形成されており、少なくとも当該エンボス模様の凹部にトップコート層が埋め込まれて設けられていることが重要である。より好ましくは、ワイピングによって凹部にトップコート層を埋め込むように形成することが好ましい。
また、透明樹脂層の下層には、少なくとも光安定化剤を添加したインキによって形成されたインキ層が設けられていることが重要である。光安定化剤としては、ヒンダードアミン系の材料を用いることが好ましい。インキ層に光安定化剤を添加することにより、インキ層バインダー樹脂自体や他層の樹脂劣化により発生したラジカルがインキ内の顔料の化学成分を還元することによる顔料の退色を抑制することができる。
以下に、本発明の化粧シートおよび化粧シートの製造方法の具体的な実施例を図1を用いて説明する。
図1は本発明の化粧シート1の具体的な構成を示したものであり、複数の樹脂層から構成されている。本発明の化粧シート1においては、表層側から、トップコート層5、透明樹脂層4、接着剤層7(感熱接着剤、アンカーコート、ドライラミ接着剤などからなる)、インキ層3、原反層2、隠蔽層8およびプライマー層6が積層された構成とされており、基材Bに対して接着するなどして用いられる。また、意匠性を向上させるために透明樹脂層4のトップコート層5側の面には、エンボス模様4aが形成されており、当該エンボス模様4aの凹部には、ワイピングによってトップコート層5を形成する樹脂組成物の一部が埋め込まれるように形成されている。
トップコート層5としては、表面の保護や艶の調整としての役割を果たす樹脂組成物に対して、有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルを添加して形成されている。
また、トップコート層5の主成分である樹脂組成物としては、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などから適宜選択して用いることができる。樹脂組成物の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても、一液タイプ、二液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して用いることができる。特に、樹脂組成物としてイソシアネートを用いたウレタン系のものが、作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などの硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤を使用することが好ましい。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制および透明樹脂層との密着性の向上を図ることができる。
この他にも、トップコート層5に対して各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行うことができる。さらに、表面の意匠性を向上させるために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等を添加して艶の調整を行うようにしてもよい。また、トップコート層5にアルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズなどを添加すると表面の耐磨耗性の向上を図ることもできる。
透明樹脂層4としては、主成分としてオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
また、本発明の化粧シート1においては、透明樹脂層4に対して、有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルをそれぞれ添加して形成されていることがさらに好ましい。これにより、透明樹脂層4においても耐候性を備えることが可能となり、透明樹脂層4の主成分であるオレフィン系樹脂組成物が劣化することを抑制したり、下層に位置するインキ層3の絵柄印刷が紫外線によって退色することを防いで長期に渡って優れた意匠性を維持することができる。
この他にも、透明樹脂層4に対して必要に応じて熱安定剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。
接着剤層7としては、特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択して用いることができる。塗工方法は接着剤の粘度などに応じて適宜選択することができるが、一般的には、グラビアコートが用いられ、インキ層3の上面に対してグラビアコートによって塗布された後、透明樹脂層4とラミネートするようにされている。なお、接着剤層7は、透明樹脂層4とインキ層3との接着強度が十分に得られる場合には、省略することができる。
インキ層3としては、インキを用いて原反層2に形成された絵柄印刷であり、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。さらに、紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。これらのバインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
また、本発明の化粧シート1においては、インキ層3に対して光安定化剤が添加されていることが好ましく、インキが光劣化して意匠性が損なわれることを防止し、長期間において化粧シート1の優れた意匠性を維持することができる。
原反層2としては、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等の紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔等から任意に選定可能である。
化粧シート1に隠蔽性を付与したい場合には、原反層2を着色シートとすることで隠蔽性を付与したり、原反層2は透明シートのままで、別途、不透明な隠蔽層8を設けて隠蔽性を付与することができる。
隠蔽層8としては、基本的にはインキ層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性をもたせることを目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を向上させるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。
また、原反層2としてオレフィン系の樹脂を用いる場合には、表面が不活性な状態とされていることが多いので、原反層2と基材Bとの間に、プライマー層6を設けることが好ましい。この他にも、オレフィン系材料からなる原反層2と基材Bとの接着性を向上させるために、原反層2に対してコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。
プライマー層6としては、基本的には前述のインキ層3と同じ材料を用いることができるが、化粧シート1の裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
本発明の化粧シート1を形成するに当たり、積層方法は特に限定するものではなく、熱圧を応用した方法、押し出しラミネート方法およびドライラミネート方法などの一般的に用いられる方法から適宜選択して形成することができる。エンボス模様4aを形成する場合には、一旦、前記積層方法によってラミネートした後に熱圧によってエンボス模様4aを入れる方法または冷却ロールに凹凸模様を設けて押し出しラミネートと同時にエンボス模様4aを形成する方法を用いることができる。
本実施例の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μm、接着剤層7は1μm〜20μm、透明樹脂層4は20μm〜200μm、トップコート層5は3μm〜20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm〜250μmの範囲内とすることが好適である。
このような、本実施形態の化粧シート1においては、有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルをトップコート層5および/または透明樹脂層4に対して添加して形成されているので、高い透明性を維持して優れた意匠性を有するとともに、長期間に渡って優れた耐候性を実現することができる。さらに、当該樹脂組成物中において凝集した添加剤に起因するブリードアウトや樹脂組成物の白濁化が発生することがないので、シート表面にベタつきが生じることがなく密着性および意匠性を実現することができる。
また、本実施形態の化粧シート1の製造方法においては、有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルとして添加しているので、主成分としての樹脂組成物に対する高い分散性を実現し、紫外線吸収剤の添加量を増加させることなく高い紫外線吸収性能を発現して優れた耐候性を実現した化粧シート1を得ることができる。特に、当該両ベシクルをリン脂質からなる外膜を具備するベシクルとすることにより、トップコート層5および透明樹脂層4の主成分である樹脂組成物との相溶性を極めて良好なものとすることができる。
この他にも、本実施形態の化粧シート1においては、エンボス模様4aの凹部にトップコート層5を埋め込んで設けるようにしているので、層厚が薄くなっている凹部においても高い耐候性を維持することができる。
またさらに、光安定化剤を添加したインキによってインキ層3を形成することによって、紫外線によってインキ層3の退色を抑制することができるので、長期間に渡って美しい色柄印刷を保持した意匠性に優れる化粧シート1を提供することができる。
<有機系紫外線吸収剤ベシクル・無機系紫外線吸収剤ベシクルの調製>
以下に、本発明における超臨界逆相蒸発法を用いた有機系紫外線吸収剤ベシクルまたは無機系紫外線吸収剤ベシクルの詳しい調製方法について説明する。
ベシクルの調製は、60℃に保たれた高圧ステンレス容器に対して、ヘキサン100重量部と、有機系紫外線吸収剤としてのトリアジン系紫外線吸収剤2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルを主成分とするヒドロキシフェニルトリアジン(TINUVIN 400;BASFジャパン(株)製)70重量部または無機系紫外線吸収剤としての酸化亜鉛(平均粒子径20nm)70重量部と、リン脂質としてのホスファチジルコリン5重量部とを入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながら酢酸エチルを100重量部注入し、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻してリン脂質からなる単層膜の外膜を具備する有機系紫外線吸収剤ベシクルまたは無機系紫外線吸収剤ベシクルを得た。
以下に、本発明の化粧シート1および化粧シート1の製造方法の具体的な実施例について説明する。
<実施例1〜5>
実施例1〜5においては、トップコート層5の主成分である樹脂組成物としてのウレタン系樹脂に対して、上述の方法で調製した有機系紫外線吸収剤ベシクル0.5、1.0、5.0、10.0、20.0重量部添加するとともに、上記の方法で調製した無機系紫外線吸収剤ベシクル0.5、1.0、5.0、10.0、20.0重量部を添加した化粧シート1とした。
具体的には、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.05重量部、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.2重量部添加した樹脂を押し出し機を用いて溶融押し出しして、透明樹脂層4としての厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートを製膜した。当該高結晶性ポリプロピレンシートの両面にコロナ処理を施してシート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。次に、原反層2としての隠蔽性のある70μmのポリエチレンシートの一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)を用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して3μmのインキ層3を設け、原反層2としてのポリエチレンシートの他方の面にプライマーコートを施し1μmのプライマー層6を形成した。しかる後、前記ポリエチレンシートに形成されたインキ層3の表面に、透明樹脂層4を3μmの厚さで形成された接着剤層7としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製 )を介してドライラミネート法にて貼り合わせて原反層2、インキ層3、接着剤層7、プライマー層6および透明樹脂層4からなる厚さ157μmの積層樹脂シートを得た。この積層樹脂シートの透明樹脂層4の表面にエンボス模様4aを施した後、2液型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製、塗布厚3g/m2)に対して有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルをそれぞれ表1の組み合わせにて添加したものを塗布してトップコート層5を形成し、総厚160μmの実施例1〜5の化粧シート1を得た。
<実施例6〜10>
実施例6〜10においては、透明樹脂層4の主成分である樹脂組成物としての結晶性ホモポリプロピレン樹脂に対して、上述の方法で調製した有機系紫外線吸収剤ベシクル0.1、0.5、1.0、2.5、5.0重量部を添加するとともに、上述の方法で調製した無機系紫外線吸収剤ベシクル0.1、0.5、1.0、2.5、5.0重量部を添加した化粧シート1とした。
具体的には、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.05重量部、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.2重量部、有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルをそれぞれ表2の組み合わせにて添加した樹脂を、押し出し機を用いて溶融押し出しして、透明樹脂層4としての厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートを製膜した。当該高結晶性ポリプロピレンシートの両面にコロナ処理を施してシート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。次に、原反層2としての隠蔽性のある70μmのポリエチレンシートの一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)を用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して3μmのインキ層3を設け、原反層2としてのポリエチレンシートの他方の面にプライマーコートを施し1μmのプライマー層6を形成した。しかる後、前記ポリエチレンシートに形成されたインキ層3の表面に、透明樹脂層4を3μmの厚さで形成された接着剤層7としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製 )を介してドライラミネート法にて貼り合わせて原反層2、インキ層3、接着剤層7、プライマー層6および透明樹脂層4からなる厚さ157μmの積層樹脂シートを得た。この積層樹脂シートの透明樹脂層4の表面にエンボス模様4aを施した後、2液型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製、塗布厚3g/m2)を塗布してトップコート層5を形成し、総厚160μmの実施例6〜10の化粧シート1を得た。
<実施例11>
実施例11においては、トップコート層5の主成分である樹脂組成物としてのウレタン系樹脂に対して、上述の方法で調製した有機系紫外線吸収剤ベシクルを1.25重量部、上記の方法で調製した無機系紫外線吸収剤ベシクル1.25重量部を添加するとともに、透明樹脂層4の主成分である樹脂組成物としての結晶性ホモポリプロピレン樹脂に対して、上述の方法で調製した有機系紫外線吸収剤ベシクルを1.25重量部、上述の方法で調整した無機系紫外線吸収剤ベシクルを1.25重量部添加した化粧シート1とした。
具体的には、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.05重量部、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.2重量部、有機系紫外線吸収剤ベシクル1.25重量部および無機系紫外線吸収剤ベシクル1.25重量部を添加した樹脂を押し出し機を用いて溶融押し出しして、透明樹脂層4としての厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートを製膜した。当該高結晶性ポリプロピレンシートの両面にコロナ処理を施してシート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。次に、原反層2としての隠蔽性のある70μmのポリエチレンシートの一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)を用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して3μmのインキ層3を設け、原反層2としてのポリエチレンシートの他方の面にプライマーコートを施し1μmのプライマー層6を形成した。しかる後、前記ポリエチレンシートに形成されたインキ層3の表面に、透明樹脂層4を3μmの厚さで形成された接着剤層7としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製)を介してドライラミネート法にて貼り合わせて原反層2、インキ層3、プライマー層6、接着剤層7および透明樹脂層4からなる厚さ157μmの積層樹脂シートを得た。この積層樹脂シートの透明樹脂層4の表面にエンボス模様4aを施した後、2液型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製、塗布厚3g/m2)に対して有機系紫外線吸収剤ベシクル1.25重量部および無機系紫外線吸収剤ベシクル1.25重量部を添加したものを塗布してトップコート層5を形成し、総厚160μmの実施例11の化粧シート1を得た。
<比較例1,2>
比較例1,2においては、トップコート層5の主成分である樹脂組成物としてのウレタン系樹脂に対して、ベシクル化していない有機系紫外線吸収剤0.5または50.0重量部を添加するとともに、ベシクル化していない無機系紫外線吸収剤0.5または50.0重量部を添加した化粧シート1とした。その他の構成は、実施例1〜5の化粧シート1と同じである。
<比較例3,4>
比較例3,4においては、透明樹脂層4の主成分である樹脂組成物としての結晶性ホモポリプロピレン樹脂に対して、ベシクル化していない有機系紫外線吸収剤0.5または50.0重量部を添加するとともに、ベシクル化していない無機系紫外線吸収剤0.5または50.0重量部を添加した化粧シート1とした。その他の構成は、実施例6〜10の化粧シート1と同じである。
<比較例5>
比較例5においては、トップコート層5の主成分である樹脂組成物としてのウレタン系樹脂に対して、ベシクル化していない有機系紫外線吸収剤を0.5重量部、ベシクル化していない無機系紫外線吸収剤0.5重量部を添加するとともに、透明樹脂層4の主成分である樹脂組成物としての結晶性ホモポリプロピレン樹脂に対して、ベシクル化していない有機系紫外線吸収剤を0.5重量部、ベシクル化していない無機系紫外線吸収剤を0.5重量部添加した化粧シート1とした。その他の構成は、実施例11の化粧シート1と同じである。
<比較例6>
比較例6においては、紫外線吸収剤をいずれの樹脂層に対しても添加しない化粧シート1とした。その他の構成は、実施例1の化粧シート1と同じである。
上記の方法によって得られた実施例1〜11および比較例1〜6の各化粧シート1に対して、耐候性試験機(サンシャインウエザーメーター:スガ試験機(株)製)を用いて、JIS B 7753に準じたカーボンアーク耐候性試験を行い紫外線吸収能を算出した。なお、試験条件は耐候経時4000時間として行った。紫外線吸収能については、各化粧シート1のトップコート層5と透明樹脂層4からなる透明層について紫外線吸収率の測定を行い、340nmと500nmとの紫外線吸収率の比(340nm/500nm)の耐候性試験前後における差を算出したものである。ヘイズ値については、耐候性試験後の値を測定した。色差(ΔE)については、耐候性試験前後における各化粧シート1の色差(ΔE)を算出した。さらに、耐候性試験後の外観変化を目視にて評価した結果を下記の記号にてそれぞれ示した。得られた評価結果を実施例1〜5および比較例1,2については表1、実施例6〜10および比較例3,4については表2、実施例11および比較例5,6については表3にそれぞれ示す。
<外観変化の記号>
◎:全く変化なし
○:わずかな変化あり
△:若干の白化や亀裂あり
×:激しい白化および一部が破壊・破断
まず、トップコート層5へ紫外線吸収剤を添加した場合について述べる。評価結果は、表1に示すように、トップコート層5に対して有機系紫外線吸収剤ベシクル0.5〜20.0重量部および無機系紫外線吸収剤ベシクルを0.5〜20.0重量部添加した実施例1〜5の化粧シート1については、いずれの添加量とした場合においても、紫外線吸収能の値が小さく、4000時間の耐候性試験後においても試験前と殆ど変わらない紫外線吸収性能を備えていることがわかる。また、試験後におけるヘイズ値の値が小さく、耐候性試験前後の色差(ΔE)の値も小さいので、4000時間の耐候性評価後においても高い透明性を備え、色の変化も殆ど現れていないことがわかる。目視評価においても優れた評価結果となった。これに対して、トップコート層5に対してベシクル化していない有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤をそれぞれ0.5重量部添加した比較例1の化粧シート1については、紫外線吸収能の値が1.54、ヘイズ値が17.20%、色差(ΔE)の値が7.43と、大きい値を示しており、4000時間の耐候性試験の間に紫外線吸収率が低下して透明層が劣化し透明性が損なわれていることがわかる。目視評価においても、耐候性試験後に白化や亀裂が認められた。これは、ベシクル化していない有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤を用いたために、主成分としての樹脂組成物に対する分散性に劣り二次凝集が生じて、十分な紫外線吸収性能を発揮できなかったことが原因であると考えられる。また、トップコート層5に対してベシクル化していない有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤をそれぞれ50.0重量部添加した比較例2の化粧シートについては、紫外線吸収能の値は0.01と極めて小さいものの、紫外線吸収剤を多量に添加したためにヘイズ値が21.79%と非常に大きく、目視評価においても激しい白化が認められた。これは、両紫外線吸収剤の添加量が多すぎたためにブロッキングが発生して白濁したことが原因であると考えられる。
次に、透明樹脂層4へ紫外線吸収剤を添加した場合について述べる。評価結果は、表2に示すように、透明樹脂層4に対して有機系紫外線吸収剤ベシクル0.1〜5.0重量部および無機系紫外線吸収剤ベシクル0.1〜5.0重量部添加した実施例6〜10の化粧シート1については、いずれの添加量とした場合においても、紫外線吸収能の値が極めて小さく、4000時間の耐候性試験後においても試験前と殆ど変わらない紫外線吸収率を備えていることがわかる。また、試験後におけるヘイズ値の値が小さく、耐候性試験前後の色差(ΔE)の値も小さいので、4000時間の耐候性評価後においても高い透明性を備え、色の変化も殆ど現れていないことがわかる。目視評価においても優れた評価結果となった。これに対して、透明樹脂層4に対してベシクル化していない有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤をそれぞれ0.5重量部添加した比較例3の化粧シート1については、紫外線吸収能の値が1.32、ヘイズ値が16.30%、色差(ΔE)の値が6.21と、大きい値を示しており、4000時間の耐候性試験の間に紫外線吸収率が低下して透明層が劣化し透明性が損なわれていることがわかる。目視評価においても、耐候性試験後に白化や亀裂が認められた。これは、ベシクル化していない有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤を用いたために、主成分としての樹脂組成物に対する分散性に劣り二次凝集が生じて、十分な紫外線吸収性能を発揮できなかったことが原因であると考えられる。また、透明樹脂層4に対してベシクル化していない有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤をそれぞれ50.0重量部添加した比較例4の化粧シートについては、紫外線吸収能の値は0.01と極めて小さいものの、紫外線吸収剤を多量に添加したためにヘイズ値が26.75%と非常に大きく、目視評価においても激しい白化が認められた。これは、両紫外線吸収剤の添加量が多すぎたためにブリードアウトが発生して白濁したことが原因であると考えられる。
そして、トップコート層5および透明樹脂層4の両方へ紫外線吸収剤を添加した場合について述べる。評価結果は、表3に示すように、トップコート層5および透明樹脂層4に対して有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルを1.25重量部添加した実施例11の化粧シート1については、紫外線吸収能の値が0.09、ヘイズ値が7.22%、色差(ΔE)の値が0.25と、極めて小さい値を示しており、4000時間の耐候性試験を行っても優れた紫外線吸収性能を有しており、高い透明性を備えた意匠性に優れた化粧シート1であることがわかる。これに対して、トップコート層5および透明樹脂層4に対してベシクル化していない有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤を0.5重量部添加した比較例5の化粧シート1については、紫外線吸収能の値、ヘイズ値および色差(ΔE)の値の全てにおいて大きい値を示しており、実施例11の化粧シート1と比較して紫外線吸収性能および意匠性に劣っていることがわかる。これは、ベシクル化していない紫外線吸収剤を用いたために、主成分としての樹脂組成物に対する分散性に劣り二次凝集が生じて、十分な紫外線吸収性能を発揮できなかったことが原因であると考えられる。
また、いずれの樹脂層に対しても紫外線吸収剤を添加しなかった比較例6の化粧シート1については、紫外線吸収能の値が10.80、ヘイズ値が6.47%、色差(ΔE)の値が12.20であった。目視評価の結果からも耐候性試験後には著しい白化や亀裂が生じており、耐候性に劣っていることがわかる。
また、実施例3および実施例11の化粧シート1を以下に対比する。トップコート層5に対して5.0重量部の両紫外線吸収剤ベシクルを添加した実施例3の化粧シート1と、トップコート層5および透明樹脂層4に対してそれぞれ1.25重量部の両紫外線吸収剤ベシクルを添加した実施例11の化粧シート1とを比較すると、全ての評価結果について実施例11の化粧シート1の方が優れており、トップコート層5のみに多量の紫外線吸収剤ベシクルを添加しなくても、トップコート層5および透明樹脂層4に対して少量ずつ紫外線吸収剤ベシクルを添加することでより優れた紫外線吸収性能を有する化粧シート1が得られることがわかる。
以上の評価結果から、本発明の実施例1〜5の化粧シート1に示すように、トップコート層5に対して0.5〜20.0重量部の有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルを添加することにより、長期間に渡って耐候性および意匠性に優れた化粧シート1が得られることが明らかとなった。
また、本発明の実施例6〜10の化粧シート1に示すように、透明樹脂層4に対して、0.1〜5.0重量部の有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルを添加することにより、長期間に渡って耐候性および意匠性に優れた化粧シート1が得られることが明らかとなった。
さらに、本発明の実施例11の化粧シート1に示すように、トップコート層5および透明樹脂層4の両樹脂層に対して、有機系紫外線吸収剤ベシクルおよび無機系紫外線吸収剤ベシクルを添加することにより、トップコート層5または透明樹脂層4のいずれか一方に多量の紫外線吸収剤を添加しなくても、優れた紫外線吸収性能を備えた化粧シート1が得られることが明らかとなった。
上述の通り、本発明の化粧シート1の技術的特徴部分の一つは、「有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤を、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包した状態で樹脂材料に添加してトップコート層5および透明樹脂層4を形成する」ことにある。これは、本発明の化粧シート1の製造時において、有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤をベシクルに内包させた状態で樹脂材料に添加することで、樹脂材料への有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤の分散性を飛躍的に向上させることを可能としている。しかし、このようにして得られた本発明の化粧シート1をものの発明として特定するにあたり、この有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤の分散度を数値化することや、断面画像等からその構造を分析し特定することは、技術的に極めて困難であり、また分析などに膨大な時間を要するところから非実際的であるといえる。
この困難性についてより具体的に説明すると、ベシクルはナノオーダーで形成されており、樹脂中において極めて均一に分散していると考えられる。このため、得られた化粧シート1の断面等からこのベシクル中に内包されて添加された有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤の分散度を測定するには、ナノ〜マイクロオーダーでの分析を余儀なくされる。通例、極微細世界の分析・観察には極めて高度な技術を要し、場合によっては、分析・観察技術を創作する必要性が生じる。本発明の化粧シート1の構造・特性を特定するためには、通常、用いられないような高度な分析技術や膨大な時間を要すると考えられ、このような分析を行って本発明の化粧シート1の構造・特性を明らかとすることはコスト的にも要する時間的にも非実現的であるといえる。
本発明の化粧シート1および化粧シート1の製造方法は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。