JP6914703B2 - 1−ケストースを含んでなる食品の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、砂糖と同様の甘味質を備え(非特許文献1)、齲蝕性が低い糖として1−ケストースが知られている(特許文献1)。
そこで、1−ケストースを砂糖の代わりに酸味のある食品にも用いたいが、酸性条件下で加熱すると1−ケストースは分解することが知られている(非特許文献1)。分解すると果糖、ショ糖やブドウ糖が遊離されるので齲蝕性が高まってしまう。
したがって、加熱を要する酸味のある食品に1−ケストースを用いても分解が進むので、期待する難齲蝕性効果が十分に得られないという問題があった。
本発明は、以下を包含する。
(1)1−ケストースを油脂性生地と混合した後、50〜100℃で加熱処理を行うことを特徴とする1−ケストースを含んでなる食品の製造方法。
(2)油脂性生地のpHが4.5以下である前記(1)に記載の1−ケストースを含んでなる食品の製造方法。
(3)1−ケストースを含んでなる油脂性生地を他の食材と組み合わせ、油脂性生地部分を50〜100℃に加熱処理する複合油脂性食品の製造方法。
(4)1−ケストースを含んでなる油脂性生地が50〜100℃に加熱処理された油脂性食品。
(5)油脂性生地のpHが4.5以下である前記(4)に記載の油脂性食品。
(6)1−ケストースを含んでなる油脂性生地が他の食材と組み合わされてなり、油脂性生地部分が50〜100℃に加熱処理された複合油脂性食品。
(7)加熱処理の前に、1−ケストースと油脂性生地とを混合することを特徴とする、食品中の1−ケストースの安定化方法。
定義
1−ケストースはショ糖分子のフルクトース1位にさらにフルクトースがβ−2,1結合した3糖類である。そして1−ケストースはフラクトオリゴ糖の一成分である。
また、フラクトオリゴ糖は難齲蝕性であり生体内の消化酵素では消化されず、さらには腸内におけるビフィズス菌の特異的生育促進効果を有することが明らかにされており、1−ケストースはフラクトオリゴ糖としての生理活性機能を有する。
本願において油脂性生地とは、油脂を連続層とする食品生地をいう。油脂性生地は油脂のみからなる場合も含む。1−ケストースを含んでなる油脂性生地の水分は5重量%以下であり、好ましくは3重量%未満であり、より好ましくは1.5重量%以下である。また、1−ケストースを含んでなる油脂性生地の粘度は100000mPa・s以下である(粘度測定条件は40℃、B型粘度計、ローターNo.6、ローター回転数4r.p.m.)。さらに、1−ケストースを含んでなる油脂性生地に含まれる最大粒子径は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
本発明においては油脂性生地のpHは限定されない。しかしながら、油脂性生地のpHが4.5以下である場合に課題解決効果が顕著となり、pH3以下である場合に課題解決効果がさらに顕著となる。
そして、油脂性食品とは、油脂性生地を成形等加工してできあがった食品をいう。
本願において油脂性菓子生地とは油脂性生地の一種である。油脂性菓子生地を成形等加工してできあがった菓子を「油脂性菓子」という。油脂性菓子は、油脂性原料によってその物性特性が支配されている菓子であり、代表的にはチョコレートであるが、規格上のチョコレートに限定されるものではなく、チョコレート類の表示に関する公正競争規約に定めるチョコレート、準チョコレートや、それに該当しないファットクリームなどを含む。
油脂性菓子生地の基本的な原料は、カカオマス、ココアバター、ココアパウダー、乳製品、糖質、油脂類、乳化剤、酸、香料等である。
乳製品としては、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、乾燥乳清などが使用できる。
本願において他の食材とは、1−ケストースを含んでなる油脂性生地と物理的に接して配置できて、さらに加熱できる食材であれば特に限定されず、小麦粉を主成分とするビスケット等の焼菓子生地やパン生地であってもよいし、ナッツ類であってもよいし、組成の異なる油脂性生地そのものであってもよい。
本願において複合油脂性食品とは、油脂性生地と他の食材とを組み合わせ、必要に応じてさらに成形等加工をした結果できあがった食品である。複合油脂性食品においては、1−ケストースを含んでなる油脂性生地から他の食材に実質的に1−ケストースが移動しないよう、1−ケストースを含んでなる油脂性生地と他の食材とが接合されているのみで、実質的に成分が混合されてはいない。
油脂性生地の一種である油脂性菓子生地は、例えば次のようにして調製できる。
1−ケストースと、ショ糖、乳糖、全粉乳、脱脂粉乳、有機酸、クリームパウダー等の粉体原料と、融解させたカカオマス、ココアバター、植物油脂やレシチン等の油性液状原料とを、微粒化に適した油分(通常25〜30%)になるよう攪拌混合してペースト状の種生地を得、当該種生地をレファイナーで微粒化し、得られたフレークを撹拌混合(ドライコンチングと呼ぶ)し、再びペースト状とした後、所望の油分、粘度になるよう更にココアバター、植物油脂等の油脂原料、及びレシチン等を添加し、攪拌混合して得ることができる。更にこれに、必要に応じ香料等を添加してもよい。
油脂性生地への酸味付与は、油脂性生地に酸を添加することによって行うことができる。酸としては有機酸が好ましく、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などを使用することができる。酸の添加量は、付与対象の食品に適切な酸味が付与されれば限定されないが、例えば、油脂性生地中の酸の添加量として0〜10重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
本願におけるpHの測定は、油脂性生地をその9倍重量の脱イオン水で十分に分散し、pH測定装置を用いて25℃で測定する。
加熱処理は油脂性生地を50〜100℃に加熱することによって行う。50〜100℃に加熱するとは、油脂性生地の少なくとも一部が、上限として50〜100℃に達することをいう。加熱処理温度は、好ましくは60〜90℃であり、より好ましくは60〜75℃である。加熱方法及び加熱時間は特に限定されない。
図1によれば、5%溶液の場合、pH4かつ90℃条件下で15分間保持すると、残存率が約20%低下しており、pH3かつ90℃条件下で15分間保持すると、残存率は約90%も低下している。
(タルト生地の調製)
薄力粉50g、強力粉150g、グラニュー糖50gを混ぜ合わせ、そこに溶かしたバター100g、卵黄30g、バニラフレーバー0.1gを加えて十分に混合した。これを冷蔵庫で2時間冷却したのち、タルト焼成用の円形型へ移し、型の形状に合わせて円形凹状に成形した。次に空気穴を全体に均一に開け、重石を載せて180℃のオーブンで20分間焼成してタルト生地を調製した。
焼成後の前記タルト生地の凹部に、60℃で加熱処理した実施例1と同じチョコレート生地500gを流し込み、170℃で10分間焼成して複合油脂性食品であるチョコレートタルトを得た。得られたチョコレートタルトは、チョコレート表面が固化していたが、内部は舌触りの滑らかさを保持していた。
(焼チョコレートの製造)
90℃で加熱処理した参考例4と同じチョコレート生地を型に流し込んで1粒6gの略直方体状に成形し、次に200℃で3分間焼成して、油脂性食品である焼チョコレートを得た。得られた焼チョコレートは、チョコレート表面が固化していたが、内部は舌触りの滑らかさを保持していた。
Claims (3)
- 1−ケストースを、pHが4.5以下である油脂性生地と混合した後、50〜100℃で加熱処理を行うことを特徴とする1−ケストースを含んでなる食品の製造方法。
- 1−ケストースを含んでなり、pHが4.5以下である油脂性生地を他の食材と組み合わせ、油脂性生地部分を50〜100℃に加熱処理する複合油脂性食品の製造方法。
- 加熱処理の前に、1−ケストースと、pHが4.5以下である油脂性生地とを混合することを特徴とする、食品中の1−ケストースの安定化方法。
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