JP6914274B2 - Crisprcpf1の結晶構造 - Google Patents

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Description

関連出願及び参照による援用
本願は、2016年1月22日に出願された米国仮特許出願第62/281,947号明細書及び2016年3月31日に出願された米国仮特許出願第62/316,240号明細書の利益及びそれらに対する優先権を主張する。
その中に引用されるか又はその審査手続中に引用される全ての文献(「出願引用文献」)及び本明細書に引用される文献中で引用又は参照される全ての文献は、本明細書で言及されるか又は本明細書に参照によって援用される任意の文献中にある任意の製品に関する任意の製造者の指示書、説明書、製品仕様書、及びプロダクトシートと共に、本明細書によって参照により本明細書に援用され、且つ本発明の実施に用いられ得る。より具体的には、参照される全ての文献は、各個別の文献について参照によって援用されることが具体的且つ個別に指示されたものとするのと同程度に参照によって援用される。
連邦政府支援研究に関する記載事項
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から付与された助成金第MH100706号、MH110049及びDK097768に基づく連邦政府の支援を受けて行われた。連邦政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明は、JST(日本科学技術振興機構)から交付されたPRESTO(Precursory Research for Embryonic Science and Technology:若手個人研究推進事業)15H01463の助成を受けて行われた。JSTは本発明に一定の権利を有する。本研究はJSPS科研費26291010の助成を受けたものである。
本発明は、概して、遺伝子転写物の摂動又は核酸編集など、クラスター化した規則的な間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)及びその構成成分に関するベクター系を使用し得る配列ターゲティングを含む遺伝子発現の制御に用いられる系、方法及び組成物に関する。
ゲノムシーケンシング技法及び解析方法の最近の進歩により、様々な生物学的機能及び疾患に関連する遺伝因子をカタログ化し及びマッピングする能力は急速に向上している。個々の遺伝エレメントを選択的に摂動させることによる原因遺伝的変異の体系的なリバースエンジニアリングを可能にするとともに合成生物学、バイオテクノロジー的、及び医学的応用を進歩させるには、正確なゲノムターゲティング技術が必要である。標的化したゲノム摂動を生じさせるためにデザイナージンクフィンガー、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)、又はホーミングメガヌクレアーゼなどのゲノム編集技法が利用可能であるものの、新規戦略及び分子機構を利用した、且つ安価で、セットアップし易く、スケーリングが可能で、及び真核生物ゲノム内の複数の位置を標的化するのに適した新規のゲノムエンジニアリング技術が依然として必要とされている。それは、ゲノムエンジニアリング及びバイオテクノロジーにおける新規適用の主要なリソースとなるであろう。
細菌及び古細菌適応免疫のCRISPR−Cas系は、タンパク質組成及びゲノム遺伝子座構成に関して極めて高度な多様性を示す。CRISPR−Cas系遺伝子座は50を超える遺伝子ファミリーを有し、厳密な意味で普遍的な遺伝子はないことから、急速な進化及び遺伝子座構成の極めて高度な多様性が示唆される。これまでのところ、多方向からの手法をとることにより、93個のCasタンパク質について約395個のプロファイルのcas遺伝子が包括的に同定されている。分類に含まれるのは、シグネチャ遺伝子プロファイル+遺伝子座構成のシグネチャである。CRISPR−Cas系の新規分類が提案されており、ここではこれらの系が大まかに2つのクラス、マルチサブユニットエフェクター複合体を有するクラス1と、Cas9タンパク質に例示される単一サブユニットエフェクターモジュールを有するクラス2とに分けられる。クラス2 CRISPR−Cas系に関連する新規エフェクタータンパク質は、強力なゲノムエンジニアリングツールとして開発することができ、推定上の新規エフェクタータンパク質の予測並びにそれらのエンジニアリング及び最適化が重要である。
本願におけるいかなる文献の引用又は特定も、かかる文献が本発明の先行技術として利用可能であると認めるものではない。
幅広い適用で核酸又はポリヌクレオチド(例えばDNA又はRNA又はこれらの任意のハイブリッド又は誘導体)を標的化する代替的且つロバストなシステム及び技法が喫緊に必要とされている。本発明はこの必要性に応え、関連する利点を提供する。本願の新規DNA又はRNAターゲティング系がゲノム及びエピゲノムターゲティング技術のレパートリーに加わることにより、直接的な検出、分析及び操作を通じて特定の標的部位の研究及び摂動又は編集が変わり得る。本願のDNA又はRNAターゲティング系を有害作用なしにゲノム又はエピゲノムターゲティングに有効に利用するためには、これらのDNA又はRNAターゲティングツールのエンジニアリング及び最適化の側面を理解することが決定的に重要である。
本発明は、目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列を改変する方法を提供し、この方法は、Cpf1エフェクタータンパク質と1つ以上の核酸成分とを含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を前記遺伝子座に送達するステップを含み、ここでエフェクタータンパク質は1つ以上の核酸成分と複合体を形成し、及び前記複合体が目的の遺伝子座に結合すると、エフェクタータンパク質が目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列の改変を誘導する。好ましい実施形態において、改変は鎖切断の導入である。
用語のCas酵素、CRISPR酵素、CRISPRタンパク質、Casタンパク質及びCRISPR Casは概して同義的に用いられ、Cas9に具体的に言及することによるなど、特に明らかでない限り、本明細書で言及する際は常に類推から本願に更に記載される新規CRISPRエフェクタータンパク質を指すことが理解されるであろう。本明細書に記載されるCRISPRエフェクタータンパク質は、好ましくはCpf1エフェクタータンパク質である。
本発明は、目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列を改変する方法を提供し、この方法は、Cpf1遺伝子座エフェクタータンパク質と1つ以上の核酸成分とを含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を、遺伝子座に関連する又はそこにある前記配列に送達するステップを含み、ここでCpf1エフェクタータンパク質は1つ以上の核酸成分と複合体を形成し、及び前記複合体が目的の遺伝子座に結合すると、エフェクタータンパク質が目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列の改変を誘導する。好ましい実施形態において、改変は鎖切断の導入である。好ましい実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質は1つの核酸成分;有利にはエンジニアリングされた又は天然に存在しない核酸成分と複合体を形成する。目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列の改変の誘導は、Cpf1エフェクタータンパク質−核酸ガイド下であり得る。好ましい実施形態において、1つの核酸成分はCRISPR RNA(crRNA)である。好ましい実施形態において、1つの核酸成分は成熟crRNA又はガイドRNAであり、ここで成熟crRNA又はガイドRNAはスペーサー配列(又はガイド配列)及びダイレクトリピート配列又はこれらの誘導体を含む。好ましい実施形態において、スペーサー配列又はその誘導体はシード配列を含み、ここでシード配列は、標的遺伝子座における配列の認識及び/又はそれとのハイブリダイゼーションに決定的に重要である。好ましい実施形態において、Cpf1ガイドRNAのシード配列は、スペーサー配列(又はガイド配列)の5’末端上の最初の約5nt以内にある。好ましい実施形態において、鎖切断は5’オーバーハングを伴う付着末端型切断である。好ましい実施形態において、目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列は、線状DNA又はスーパーコイルDNAを含む。
本発明の態様は、Cpf1遺伝子座エフェクタータンパク質と1つ以上の核酸成分とを含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物に関し、ここでCpf1エフェクタータンパク質は、1つ以上の核酸成分、有利にはエンジニアリングされた又は天然に存在しない核酸成分と複合体を形成可能である。好ましい実施形態において1つの核酸成分は成熟crRNA又はガイドRNAであり、ここで成熟crRNA又はガイドRNAはスペーサー配列(又はガイド配列)及びダイレクトリピート配列又はそれらの誘導体を含む。好ましい実施形態においてスペーサー配列又はその誘導体はシード配列を含み、ここでシード配列は、標的DNA内の配列にハイブリダイズ可能である。詳細な実施形態において、このDNA分子は、細胞において遺伝子産物をコードするDNA分子である。ガイドRNAが標的配列にハイブリダイズすることにより複合体が標的DNAに標的化され、標的配列の改変が確実となる。
好ましい実施形態において、改変は鎖切断の導入である。好ましい実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質は1つの核酸成分と複合体を形成する;
目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列の改変の誘導は、Cpf1エフェクタータンパク質−核酸ガイド下であり得る。好ましい実施形態において、前記の1つの核酸成分は、CRISPR RNA (crRNA)である。本発明の態様は、1つ以上の天然に存在しない又はエンジニアリングされた又は改変された又は最適化された核酸成分を有するCpf1エフェクタータンパク質複合体に関する。好ましい実施形態において、この複合体の核酸成分は、ダイレクトリピート配列に連結されたガイド配列を含むことができ、ここでダイレクトリピート配列は1つ以上のステムループ又は最適化された二次構造を含む。好ましい実施形態において、ダイレクトリピートは16ntの最小長さ及び単一のステムループを有する。更なる実施形態において、ダイレクトリピートは長さが16ntより長く、好ましくは17ntより長く、且つ2つ以上のステムループ又は最適化された二次構造を有する。好ましい実施形態において、ダイレクトリピートは1つ以上のタンパク質結合RNAアプタマーを含むように改変されてもよい。好ましい実施形態において、1つ以上のアプタマーは、最適化された二次構造の一部として含まれてもよい。かかるアプタマーはバクテリオファージコートタンパク質との結合能を有し得る。バクテリオファージコートタンパク質は、Qβ、F2、GA、fr、JP501、MS2、M12、R17、BZ13、JP34、JP500、KU1、M11、MX1、TW18、VK、SP、FI、ID2、NL95、TW19、AP205、φCb5、φCb8r、φCb12r、φCb23r、7s及びPRR1を含む群から選択され得る。好ましい実施形態において、バクテリオファージコートタンパク質はMS2である。本発明はまた、30以上、40以上又は50以上のヌクレオチド長である複合体の核酸成分も提供する。
本発明はゲノム編集方法を提供し、この方法は、2ラウンド以上のCpf1エフェクタータンパク質ターゲティング及び切断を含む。特定の実施形態において、第1のラウンドは、Cpf1エフェクタータンパク質がシード配列から遠く離れた標的遺伝子座に関連する配列を切断することを含み、及び第2のラウンドは、Cpf1エフェクタータンパク質が標的遺伝子座にある配列を切断することを含む。本発明の好ましい実施形態では、Cpf1エフェクタータンパク質による第1のターゲティングラウンドによってインデルが生じ、及びCpf1エフェクタータンパク質による第2のターゲティングラウンドが相同依存性修復(HDR)によって修復され得る。本発明の最も好ましい実施形態では、Cpf1エフェクタータンパク質による1つ以上のターゲティングラウンドにより、修復鋳型の挿入によって修復され得る付着末端型切断が生じる。
本発明は、目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列のゲノム編集又は改変方法を提供し、この方法は、任意の所望の細胞型、原核細胞又は真核細胞にCpf1エフェクタータンパク質複合体を導入するステップを含み、それによってCpf1エフェクタータンパク質複合体が、真核生物又は原核細胞のゲノムにDNAインサートを組み込むように有効に機能する。好ましい実施形態において、細胞は真核細胞であり、及びゲノムは哺乳類ゲノムである。好ましい実施形態において、DNAインサートの組込みは、非相同末端結合(NHEJ)ベースの遺伝子挿入機構によって促進される。好ましい実施形態において、DNAインサートは、外因的に導入されたDNA鋳型又は修復鋳型である。好ましい一実施形態において、外因的に導入されたDNA鋳型又は修復鋳型は、Cpf1エフェクタータンパク質複合体又は1つの構成成分又は複合体の構成成分の発現用ポリヌクレオチドベクターと共に送達される。より好ましい実施形態において、真核細胞は非分裂細胞(例えば、HDRによるゲノム編集が特に難題となる非分裂細胞)である。ヒト細胞における好ましいゲノム編集方法において、Cpf1エフェクタータンパク質には、限定はされないが、FnCpf1、AsCpf1及びLbCpf1エフェクタータンパク質が含まれ得る。
本発明はまた、目的の標的遺伝子座を改変する方法も提供し、この方法は、Cpf1エフェクタータンパク質と1つ以上の核酸成分とを含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を前記遺伝子座に送達するステップを含み、ここでCpf1エフェクタータンパク質は1つ以上の核酸成分と複合体を形成し、及び前記複合体が目的の遺伝子座に結合すると、エフェクタータンパク質が目的の標的遺伝子座の改変を誘導する。好ましい実施形態において、改変は鎖切断の導入である。
かかる方法において、目的の標的遺伝子座はインビトロでDNA分子に含まれ得る。好ましい実施形態において、そのDNA分子はプラスミドである。かかる方法において、目的の標的遺伝子座は細胞内のDNA分子に含まれ得る。細胞は原核細胞又は真核細胞であってもよい。細胞は哺乳類細胞であってもよい。
哺乳類細胞は、非ヒト哺乳動物、例えば、霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、げっ歯類、ウサギ科(Leporidae)、例えば、サル、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ウサギ、ラット又はマウス細胞であってもよい。細胞は、非哺乳類真核細胞、例えば、家禽類のトリ(例えば、ニワトリ)、脊椎動物魚類(例えば、サケ)又は甲殻類(例えば、カキ、ハマグリ(claim)、ロブスター、エビ)細胞であってもよい。細胞はまた、植物細胞であってもよい。植物細胞は、単子葉植物又は双子葉植物のもの又は作物又は穀物植物のもの、例えば、キャッサバ、トウモロコシ、モロコシ、ダイズ、コムギ、オートムギ又はコメであってもよい。植物細胞はまた、藻類、樹木又は生産植物、果実又は野菜のもの(例えば、柑橘類の木、例えば、オレンジ、グレープフルーツ又はレモンの木などの木;モモ又はネクタリンの木;リンゴ又はセイヨウナシの木;アーモンド又はクルミ又はピスタチオの木などの堅果類の木;ナス科植物;アブラナ属(Brassica)の植物;アキノノゲシ属(Lactuca)の植物;ホウレンソウ属(Spinacia)の植物;トウガラシ属(Capsicum)の植物;綿、タバコ、アスパラガス、ニンジン、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、トマト、ナス、コショウ、レタス、ホウレンソウ、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ブドウ、コーヒー、ココア等)であってもよい。
本発明によって細胞に導入される改変は、抗体、デンプン、アルコール又は他の所望の細胞産出物などの生物学的産物の産生向上のため細胞及び細胞の子孫を変化させるようなものであり得る。本発明によって細胞に導入される改変は、産生される生物学的産物を変える変化が細胞及び細胞の子孫に含まれるようなものであり得る。
記載される方法の任意のものにおいて、目的の標的遺伝子座は目的のゲノム又はエピゲノム遺伝子座であってもよい。記載される方法の任意のものにおいて、複合体は、多重化した使用向けに複数のガイドと共に送達されてもよい。記載される方法の任意のものにおいて、2つ以上のタンパク質が用いられてもよい。
本発明の好ましい実施形態において、目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列の生化学的な又はインビトロ若しくはインビボでの切断、例えばAsCpf1エフェクタータンパク質による切断は、推定トランス活性化crRNA(tracr RNA)配列なしに生じる。本発明の他の実施形態において、切断、例えば他のCRISPRファミリーエフェクタータンパク質による切断は、推定トランス活性化crRNA(tracr RNA)配列を伴い生じ得る。しかしながら、Cpf1エフェクタータンパク質複合体による標的DNA切断にtracrRNAは必要ないこと、より具体的には、Cpf1エフェクタータンパク質及びcrRNA(ダイレクトリピート配列とガイド配列とを含むガイドRNA)のみを含むCpf1エフェクタータンパク質複合体が標的DNAの切断に十分であったことが見い出された(Zetsche et al, 2015, Cell 163, 759−771)。
記載される方法の任意のものにおいて、エフェクタータンパク質(例えばCpf1)及び核酸成分は、そのタンパク質及び/又は1つ又は複数の核酸成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド分子によって提供されてもよく、及びここで1つ以上のポリヌクレオチド分子は、タンパク質及び/又は1つ又は複数の核酸成分を発現するように作動可能に構成されている。1つ以上のポリヌクレオチド分子は、タンパク質及び/又は1つ又は複数の核酸成分を発現するように作動可能に構成された1つ以上の調節エレメントを含み得る。1つ以上のポリヌクレオチド分子は1つ以上のベクター内に含まれ得る。本発明は、かかる1つ又は複数のポリヌクレオチド分子、例えばタンパク質及び/又は1つ又は複数の核酸成分を発現するように作動可能に構成されたかかるポリヌクレオチド分子、並びにかかる1つ又は複数のベクターを包含する。
記載される方法の任意のものにおいて、鎖切断は一本鎖切断又は二本鎖切断であってもよい。
調節エレメントは誘導性プロモーターを含み得る。ポリヌクレオチド及び/又はベクター系は誘導性系を含み得る。
記載される方法の任意のものにおいて、1つ以上のポリヌクレオチド分子は送達系に含まれてもよく、又は1つ以上のベクターが送達系に含まれてもよい。
記載される方法の任意のものにおいて、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物は、リポソーム、粒子(例えばナノ粒子)、エキソソーム、微小胞、遺伝子銃又は1つ以上のベクター、例えば核酸分子又はウイルスベクターによって送達されてもよい。
本発明はまた、本明細書で考察するとおりの特徴を有するか又は本明細書に記載される方法のいずれかに定義される組成物である天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物も提供する。
本発明はまた、1つ以上のベクターを含むベクター系も提供し、この1つ以上のベクターは、本明細書で考察するとおりの特徴を有するか又は本明細書に記載される方法のいずれかに定義される組成物である天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド分子を含む。
本発明はまた、1つ以上のベクター又は1つ以上のポリヌクレオチド分子を含む送達系も提供し、この1つ以上のベクター又はポリヌクレオチド分子は、本明細書で考察するとおりの特徴を有するか又は本明細書に記載される方法のいずれかに定義される組成物である天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド分子を含む。
本発明はまた、療法的治療方法に用いられる、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物、又は前記組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド、又は前記組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクター又は送達系も提供する。療法的治療方法には、遺伝子若しくはゲノム編集、又は遺伝子療法が含まれ得る。
本発明はまた、エフェクタータンパク質の1つ以上のアミノ酸残基が改変されていてもよい方法及び組成物、例えば、エンジニアリングされた又は天然に存在しないエフェクタータンパク質又はCpf1も提供する。ある実施形態において、改変は、エフェクタータンパク質の1つ以上のアミノ酸残基の突然変異を含み得る。1つ以上の突然変異は、エフェクタータンパク質の1つ以上の触媒活性ドメインにあってもよい。このエフェクタータンパク質は、前記1つ以上の突然変異を欠くエフェクタータンパク質と比較してヌクレアーゼ活性が低下し又は消失していてもよい。このエフェクタータンパク質は、目的の標的遺伝子座におけるいずれか一方のDNA又はRNA鎖の切断を誘導しないことがあり得る。エフェクタータンパク質は目的の標的遺伝子座におけるいずれのDNA又はRNA鎖の切断も誘導しないことがあり得る。好ましい実施形態において、1つ以上の突然変異は2つの突然変異を含み得る。好ましい実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質、例えば、エンジニアリングされた又は天然に存在しないエフェクタータンパク質又はCpf1において1つ以上のアミノ酸残基が改変される。好ましい実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質はAsCpf1エフェクタータンパク質である。好ましい実施形態において、1つ以上の改変された又は突然変異したアミノ酸残基は、AsCpf1エフェクタータンパク質のアミノ酸位置付番を基準にしてD908、E993、D1263である。更に好ましい実施形態において、1つ以上の突然変異したアミノ酸残基は、AsCpf1におけるアミノ酸位置を基準としてD908A、E993A、D1263Aである。
好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6のアミノ酸位置付番を基準として、D861、R862、R863、W382、E993、D1263、D908、W958、K968、R951、R1226、S1228、D1235、K548、M604、K607、T167、N631、N630、K547、K163、Q571、K1017、R955、K1009、R909、R912、R1072、E372、K15、K810、H755、K557、E857、K943、K1022、K1029、K942、K949、R84、K87、K200、H206、R210、R301、R699、K705、K887、R891、K1086、K1089、R1094、R1127、R1220、Q1224、N178、N197、N204、N259、N278、N282、N519、N747、N759、N878、N889、及び/又は、1189〜1197、1200〜1208、398〜400、380〜383、362〜420、1163〜1173、1230〜1233、1152〜1148、1076〜1249の領域にあるいずれか1つのアミノ酸から選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、R862A、E993A、D1263A、D908A、W958A、R951A、R1226A、S1228A、D1235A、K548A、M604A、K607A、K607R、T167S、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aからなるリストから選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、R862A、E993A、D1263A、D908A、W958A、R951A、K548A、M604A、K607A、K607R、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aからなるリストから選択される;好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、N178、N197、N204、N259、N278、N282、N519、N747、N759、N878、N889から選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、R862A、W958A、R951A、R1226A、S1228A、D1235A、K548A、M604A、K607A、K607R、T167S、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aからなるリストから選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、D861、W958、S1228、D1235、T167、N631、N630、K547、K163、Q571、R1226、E372、K15、K810、H755、K557、E857、K943、K1022、K1029、K942、K949、R84、K87、K200、H206、R210、R301、R699、K705、K887、R891、K1086、K1089、R1094、R1127、R1220、Q1224、N178、N197、N204、N259、N278、N282、N519、N747、D749、N759、H761、H872、N878、N889、及び/又は、1189〜1197、1200〜1208、398〜400、380〜383、362〜420、1163〜1173、1230〜1233、1152〜1148、1076〜1249の領域にあるいずれか1つのアミノ酸から選択される。特定の実施態様では、突然変異はR862Aであり、前記Cpf1酵素は、もはやRNAに結合しない。特定の実施態様では、前記の1つ以上の突然変異は、K15A、D749A、H761A、H872A、K810A、H755A、K557A、E857A、R862A、K943A、K1022A及びK1029Aから選択されて、ここで、前記Cpf1酵素は、もはやRNA結合及び/又はプロセッシングが可能でない。特定の実施態様では、前記の1つ以上の突然変異は、K547A、K607A、M604A、及びT176Sから選択されて、ここで、TTT特異性は、低減または除去される。特定の実施態様では、前記の1つ以上の突然変異は、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R及びK607Rから選択されて、ここで、前記Cpf1酵素の非特異的なDNA相互作用は増大される。特定の実施態様では、前記の1つ以上の突然変異は、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aから選択されて、それにより、前記酵素の前記特異性は、増大または低減される。特定の実施態様では、D861、R862、R863及びW382のうちの1つ以上は突然変異されていて、前記Cpf1のRNA結合は破壊されている。特定の実施態様では、アミノ酸W958、K968、R951、R1226、D1253及びT167のうちの1つ以上及びCpf1の安定性が影響を受けている。特定の実施態様では、K968及びR951のうちの1つ以上は突然変異されていて、前記Cpf1のDNA結合は破壊されている。特定の実施態様では、N631及びN630のうちの1つ以上は突然変異されていて、DNA主鎖内のリン酸との相互作用は増大されている。特定の実施態様では、以下のアミノ酸:AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)のアミノ酸位置付番を基準として、L117、T118、D119、T150、T151、T152、R341、N342、E343、T398、G399、K400、D451、Q452、P453、L454、P455、T456、T457、L458、K459、V486、D487、E488、S489、N490、E491、V492、D493、P494、E506、M507、E508、Q571、K572、G573、R574、Y575、T621、E649、K650、E651、D665、T737、D749、F750、K815、N848、V1108、K1109、T1110、G1111、S1124、A1195、A1196、A1197、N1198、L1244、N1245及び/又はG1246のうちの1つ以上は突然変異しており、それにより、Cpf1酵素の安定性及び/又は活性は、実質的に影響を受けていない。
本発明はまた、RuvCドメインを含むエフェクタータンパク質の触媒活性ドメインにあるべき1つ以上の突然変異又は2つ以上の突然変異も提供する。本発明の一部の実施形態において、RuvCドメインは、RuvCI、RuvCII若しくはRuvCIIIドメイン、又はRuvCI、RuvCII若しくはRuvCIIIドメイン等と同種であるか又は本明細書に記載される方法のいずれかに記載されるとおりの任意の関連性のあるドメインと同種である触媒活性ドメインを含み得る。エフェクタータンパク質は1つ以上の異種機能ドメインを含み得る。1つ以上の異種機能ドメインは1つ以上の核局在化シグナル(NLS)ドメインを含み得る。1つ以上の異種機能ドメインは少なくとも2つ又はそれ以上のNLSドメインを含み得る。1つ以上のNLSドメインはエフェクタータンパク質(例えばCpf1)の末端に又はその近傍に又はそれに近接して位置してもよく、及びNLSが2つ以上の場合には、それらの2つの各々がエフェクタータンパク質(例えばCpf1)の末端に又はその近傍に又はそれに近接して位置してもよい。1つ以上の異種機能ドメインは1つ以上の転写活性化ドメインを含み得る。好ましい実施形態において、転写活性化ドメインはVP64を含み得る。1つ以上の異種機能ドメインは1つ以上の転写抑制ドメインを含み得る。好ましい実施形態において、転写抑制ドメインはKRABドメイン又はSIDドメイン(例えばSID4X)を含む。1つ以上の異種機能ドメインは1つ以上のヌクレアーゼドメインを含み得る。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼドメインはFok1を含む。
本発明はまた、以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写解除因子活性、ヒストン修飾活性、ヌクレアーゼ活性、一本鎖RNA切断活性、二本鎖RNA切断活性、一本鎖DNA切断活性、二本鎖DNA切断活性及び核酸結合活性のうちの1つ以上を有するように1つ以上の異種機能ドメインも提供する。少なくとも1つ以上の異種機能ドメインはエフェクタータンパク質のアミノ末端にあるか又はその近傍にあってもよく、及び/又はここで少なくとも1つ以上の異種機能ドメインはエフェクタータンパク質のカルボキシ末端にあるか又はその近傍にある。1つ以上の異種機能ドメインはエフェクタータンパク質に融合されてもよい。1つ以上の異種機能ドメインはエフェクタータンパク質に繋留されてもよい。1つ以上の異種機能ドメインはリンカー部分を介してエフェクタータンパク質に連結されてもよい。
本発明はまた、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ニトラチフラクター属(Nitratifractor)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、パルビバクラム属(Parvibaculum)、ロゼブリア属(Roseburia)、ナイセリア属(Neisseria)、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、スフェロヘータ属(Sphaerochaeta)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、コリネバクター属(Corynebacter)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、ロドバクター属(Rhodobacter)、リステリア属(Listeria)、パルディバクター属(Paludibacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジアリジウム属(Clostridiaridium)、レプトトリキア属(Leptotrichia)、フランシセラ属(Francisella)、レジオネラ属(Legionella)、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、メタノメチオフィラス属(Methanomethyophilus)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)、ヘルココッカス属(Helcococcus)、レプトスピラ属(Letospira)、デスルホビブリオ属(Desulfovibrio)、デスルホナトロヌム属(Desulfonatronum)、オピツツス科(Opitutaceae)、ツベリバチルス属(Tuberibacillus)、バチルス属(Bacillus)、ブレビバチルス属(Brevibacilus)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)又はアシダミノコッカス属(Acidaminococcus)を含む属の生物由来のエフェクタータンパク質(例えばCpf1)を含むエフェクタータンパク質(例えばCpf1)も提供する。
本発明はまた、S.ミュータンス(S.mutans)、S.アガラクティエ(S.agalactiae)、S.エクイシミリス(S.equisimilis)、S.サングイニス(S.sanguinis)、肺炎連鎖球菌(S.pneumonia);C.ジェジュニ(C.jejuni)、C.コリ(C.coli);N.サルスギニス(N.salsuginis)、N.テルガルカス(N.tergarcus);S.アウリクラリス(S.auricularis)、S.カルノスス(S.carnosus);N.メニンギティディス(N.meningitides)、淋菌(N.gonorrhoeae);リステリア菌(L.monocytogenes)、L.イバノビイ(L.ivanovii);ボツリヌス菌(C.botulinum)、C.ディフィシル(C.difficile)、破傷風菌(C.tetani)、C.ソルデリイ(C.sordellii)由来の生物のエフェクタータンパク質(例えばCpf1)を含むエフェクタータンパク質(例えばCpf1)も提供する。
エフェクタータンパク質は、第1のエフェクタータンパク質(例えばCpf1)オルソログ由来の第1の断片と第2のエフェクター(例えばCpf1)タンパク質オルソログ由来の第2の断片とを含むキメラエフェクタータンパク質を含むことができ、ここで第1及び第2のエフェクタータンパク質オルソログは異なる。第1及び第2のエフェクタータンパク質(例えばCpf1)オルソログのうちの少なくとも一方は、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ニトラチフラクター属(Nitratifractor)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、パルビバクラム属(Parvibaculum)、ロゼブリア属(Roseburia)、ナイセリア属(Neisseria)、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、スフェロヘータ属(Sphaerochaeta)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、コリネバクター属(Corynebacter)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、ロドバクター属(Rhodobacter)、リステリア属(Listeria)、パルディバクター属(Paludibacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジアリジウム属(Clostridiaridium)、レプトトリキア属(Leptotrichia)、フランシセラ属(Francisella)、レジオネラ属(Legionella)、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、メタノメチオフィラス属(Methanomethyophilus)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)、ヘルココッカス属(Helcococcus)、レプトスピラ属(Letospira)、デスルホビブリオ属(Desulfovibrio)、デスルホナトロヌム属(Desulfonatronum)、オピツツス科(Opitutaceae)、ツベリバチルス属(Tuberibacillus)、バチルス属(Bacillus)、ブレビバチルス属(Brevibacilus)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)又はアシダミノコッカス属(Acidaminococcus)を含む生物由来のエフェクタータンパク質(例えばCpf1)を含むことができ;例えば、第1の断片と第2の断片とを含むキメラエフェクタータンパク質であって、ここで第1及び第2の断片の各々は、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ニトラチフラクター属(Nitratifractor)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、パルビバクラム属(Parvibaculum)、ロゼブリア属(Roseburia)、ナイセリア属(Neisseria)、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、スフェロヘータ属(Sphaerochaeta)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、コリネバクター属(Corynebacter)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、ロドバクター属(Rhodobacter)、リステリア属(Listeria)、パルディバクター属(Paludibacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジアリジウム属(Clostridiaridium)、レプトトリキア属(Leptotrichia)、フランシセラ属(Francisella)、レジオネラ属(Legionella)、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、メタノメチオフィラス属(Methanomethyophilus)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)、ヘルココッカス属(Helcococcus)、レプトスピラ属(Letospira)、デスルホビブリオ属(Desulfovibrio)、デスルホナトロヌム属(Desulfonatronum)、オピツツス科(Opitutaceae)、ツベリバチルス属(Tuberibacillus)、バチルス属(Bacillus)、ブレビバチルス属(Brevibacilus)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)又はアシダミノコッカス属(Acidaminococcus)を含む生物のCpf1から選択され、ここで第1及び第2の断片は同じ細菌由来でなく;例えば、第1の断片と第2の断片とを含むキメラエフェクタータンパク質であって、ここで第1及び第2の断片の各々は、S.ミュータンス(S.mutans)、S.アガラクティエ(S.agalactiae)、S.エクイシミリス(S.equisimilis)、S.サングイニス(S.sanguinis)、肺炎連鎖球菌(S.pneumonia);C.ジェジュニ(C.jejuni)、C.コリ(C.coli);N.サルスギニス(N.salsuginis)、N.テルガルカス(N.tergarcus);S.アウリクラリス(S.auricularis)、S.カルノスス(S.carnosus);N.メニンギティディス(N.meningitides)、淋菌(N.gonorrhoeae);リステリア菌(L.monocytogenes)、L.イバノビイ(L.ivanovii);ボツリヌス菌(C.botulinum)、C.ディフィシル(C.difficile)、破傷風菌(C.tetani)、C.ソルデリイ(C.sordellii);野兎病菌(Francisella tularensis)1、プレボテラ・アルベンシス(Prevotella albensis)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MC2017 1、ブチリビブリオ・プロテオクラスチカス(Butyrivibrio proteoclasticus)、ペレグリニバクテリア細菌(Peregrinibacteria bacterium)GW2011_GWA2_33_10、パルクバクテリア細菌(Parcubacteria bacterium)GW2011_GWC2_44_17、スミセラ属種(Smithella sp.)SCADC、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MA2020、カンディダタス・メタノプラズマ・テルミツム(Candidatus Methanoplasma termitum)、ユーバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、モラクセラ・ボボクリ(Moraxella bovoculi)237、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006、ポルフィロモナス・クレビオリカニス(Porphyromonas crevioricanis)3、プレボテラ・ディシエンス(Prevotella disiens)及びポルフィロモナス・マカカエ(Porphyromonas macacae)のCpf1から選択され、ここで第1及び第2の断片は同じ細菌由来でない。
本発明の好ましい実施形態において、エフェクタータンパク質はCpf1遺伝子座に由来し(本明細書では、かかるエフェクタータンパク質は「Cpf1p」とも称される)、例えばCpf1タンパク質である(及びかかるエフェクタータンパク質又はCpf1タンパク質又はCpf1遺伝子座に由来するタンパク質は「CRISPR酵素」とも称される)。Cpf1遺伝子座には、限定はされないが、図64に列挙される細菌種のCpf1遺伝子座が含まれる。より好ましい実施形態において、Cpf1pは、野兎病菌(Francisella tularensis)1、プレボテラ・アルベンシス(Prevotella albensis)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MC2017 1、ブチリビブリオ・プロテオクラスチカス(Butyrivibrio proteoclasticus)、ペレグリニバクテリア細菌(Peregrinibacteria bacterium)GW2011_GWA2_33_10、パルクバクテリア細菌(Parcubacteria bacterium)GW2011_GWC2_44_17、スミセラ属種(Smithella sp.)SCADC、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MA2020、カンディダタス・メタノプラズマ・テルミツム(Candidatus Methanoplasma termitum)、ユーバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、モラクセラ・ボボクリ(Moraxella bovoculi)237、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006、ポルフィロモナス・クレビオリカニス(Porphyromonas crevioricanis)3、プレボテラ・ディシエンス(Prevotella disiens)及びポルフィロモナス・マカカエ(Porphyromonas macacae)から選択される細菌種に由来する。特定の実施形態において、Cpf1pは、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6から選択される細菌種に由来する。
本発明の更なる実施形態において、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)又はPAM様モチーフが目的の標的遺伝子座へのエフェクタータンパク質複合体の結合を導く。本発明の好ましい実施形態において、PAMは5’NTTTであり[式中、NはA/C又はGである]、及びエフェクタータンパク質はAsCpf1pである。本発明の別の好ましい実施形態において、PAMは5’TTTVであり[式中、VはA/C又はGである]、及びエフェクタータンパク質はPaCpf1pである。特定の実施形態において、PAMは5’TTNであり[式中、NはA/C/G又はTである]、エフェクタータンパク質はFnCpf1pであり、及びPAMはプロトスペーサーの5’末端の上流に位置する。本発明の特定の実施形態において、PAMは5’CTAであり、ここでエフェクタータンパク質はFnCpf1pであり、及びPAMはプロトスペーサー又は標的遺伝子座の5’末端の上流に位置する。好ましい実施形態において、本発明は、Cpf1ファミリーのTリッチなPAMによってATリッチゲノムのターゲティング及び編集が可能となるRNAガイド下ゲノム編集ヌクレアーゼのターゲティング範囲の拡張をもたらす。特定の実施形態において、CRISPR酵素はエンジニアリングされ、ヌクレアーゼ活性を低下又は消失させる1つ以上の突然変異を含むことができる。
AsCpf1p RuvCドメインにおけるアミノ酸位置としては、限定はされないが、908、993、及び1263が挙げられる。好ましい実施形態において、AsCpf1p RuvCドメインの突然変異は、D908A、E993A、及びD1263Aであり、ここでD908A、E993A、及びD1263A突然変異はAsCpf1エフェクタータンパク質のDNA切断活性を完全に不活性化する。。
突然変異はまた、隣接残基、例えば、ヌクレアーゼ活性(acrivity)に関与する上記に指示したものの近傍にあるアミノ酸にも作成することができる。一部の実施形態では、RuvCドメインのみが不活性化され、及び他の実施形態では、別の推定ヌクレアーゼドメインが不活性化され、ここでエフェクタータンパク質複合体はニッカーゼとして機能して、一方のDNA鎖のみを切断する。好ましい実施形態において、他方の推定ヌクレアーゼドメインはHincII様エンドヌクレアーゼドメインである。一部の実施形態では、2つのAsCpf1変異体(各々異なるニッカーゼ)を用いて特異性を増加させ、2つのニッカーゼ変異体を用いて標的にあるDNAを切断する(ここで両方のニッカーゼが、オフターゲット改変を最小限に抑え又はなくしつつDNA鎖を切断し、ここでは一方のDNA鎖のみが切断され、続いて修復される)。好ましい実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質は、2つのCpf1エフェクタータンパク質分子を含むホモ二量体として目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列を切断する。好ましい実施形態において、ホモ二量体は、そのそれぞれのRuvCドメインに異なる突然変異を含む2つのCpf1エフェクタータンパク質分子を含み得る。
特定の実施態様では、CRISPR酵素は操作されて、その活性、特異性及び/又は安定性を改変する1つ以上の突然変異を含み得る。AsCpf1p酵素におけるアミノ酸位置は、限定されないが:AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)のアミノ酸位置付番を基準として、D861、R862、R863、W382、E993、D1263、D908、W958、K968、R951、R1226、S1228、D1235、K548、M604、K607、T167、N631、N630、K547、K163、Q571、K1017、R955、K1009、R909、R912、R1072、E372、K15、K810、H755、K557、E857、K943、K1022、K1029、K942、K949、R84、K87、K200、H206、R210、R301、R699、K705、K887、R891、K1086、K1089、R1094、R1127、R1220、Q1224、N178、N197、N204、N259、N278、N282、N519、N747、N759、N878、N889、及び/又は、1189〜1197、1200〜1208、398〜400、380〜383、362〜420、1163〜1173、1230〜1233、1152〜1148、1076〜1249の領域にあるいずれか1つのアミノ酸を含む。好ましい実施態様では、これらの1つ以上の突然変異は、限定されないが、R862A、E993A、D1263A、D908A、W958A、R951A、R1226A、S1228A、D1235A、K548A、M604A、K607A、K607R、T167S、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aから選択される。
他の好ましい実施態様では、前記の1つ以上の突然変異は、R862A、E993A、D1263A、D908A、W958A、R951A、K548A、M604A、K607A、K607R、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aから選択される。
特定の実施態様では、前記の1つ以上のCpf1突然変異は、ニッカ〜ゼ活性をもたらす。特定の実施態様では、突然変異は、第2のヌクレア〜ゼドメインの位置にあり、より具体的には、突然変異は、AsCpf1のR1226に対応する。特定の実施態様では、前記の1つ以上の突然変異は、非標的鎖のみの切断及び標的鎖の非切断をもたらす。特定の実施態様では、突然変異はR1226Aである。
本発明は、2つ以上のニッカーゼを使用する方法、詳細にはデュアル又はダブルニッカーゼ手法を企図する。一部の態様及び実施形態において、シングルタイプのAsCpf1ニッカーゼ、例えば、本明細書に記載されるとおりの改変AsCpf1又は改変AsCpf1ニッカーゼが送達されてもよい。これにより、標的DNAに2つのAsCpf1ニッカーゼが結合することになる。加えて、異なるオルソログ、例えば、DNAの一方の鎖(例えばコード鎖)に対するAsCpf1ニッカーゼと非コード鎖又は反対側のDNA鎖に対するオルソログとを使用し得ることもまた想定される。異なるPAMを必要とし、また異なるガイド要件も有し得る、従って使用者のより高度な制御が可能となる2つの異なるオルソログを使用することが有利であり得る。特定の実施形態において、DNA切断には、各タイプが標的DNAの異なる配列にガイドされる少なくとも4タイプのニッカーゼが関わることになり、ここでは各ペアが一方のDNA鎖に第1のニックを導入し、及び第2のペアが第2のDNA鎖にニックを導入する。かかる方法では、標的DNAに少なくとも2つの一本鎖切断ペアが導入され、ここで第1及び第2の一本鎖切断ペアが導入されると、第1及び第2の一本鎖切断ペアの間にある標的配列が切り出される。特定の実施形態において、オルソログの一方又は両方は制御可能、即ち誘導性である。
詳細な実施形態において、本発明は、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を送達することを含む、細胞の目的のゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1及び第2の標的配列の操作によってオフターゲット改変を最小限に抑えることによって生物又は非ヒト生物を改変する方法を提供し、この組成物は:
−ダイレクトリピート配列に連結した第1のガイド配列であって、前記第1の標的配列とハイブリダイズ可能なガイド配列を含むガイドRNAを含む第1のV型CRISPR−Casポリヌクレオチド配列をコードするポリヌクレオチド配列;
−ダイレクトリピート配列に連結したガイド配列であって、前記第2の標的配列とハイブリダイズ可能なガイド配列を含む第2のガイドRNAを含む第2のV型CRISPR−Casポリヌクレオチド配列をコードするポリヌクレオチド配列、
及び
−少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み、且つ1つ以上の突然変異を含むCpf1エフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、を含み、
転写されると、第1及び第2のガイドRNAが第1及び第2のCRISPR複合体のそれぞれ第1及び第2の標的配列への配列特異的結合を導き、第1のCRISPR複合体は、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列を含む第1のガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、第2のCRISPR複合体は、第2の標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列を含む第2のガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列はDNA又はRNAであり、及び第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導いて二本鎖切断を誘導し、それによりオフターゲット改変を最小限に抑えることによって生物又は非ヒト生物を改変する。詳細な実施形態において、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導くと、5’オーバーハングが生じる。詳細な実施形態において、5’オーバーハングは高々200塩基対である。詳細な実施形態において、5’オーバーハングは高々100塩基対、又は高々50塩基対である。詳細な実施形態において、5’オーバーハングは少なくとも26又は少なくとも30塩基対である。詳細な実施形態において、5’オーバーハングは1〜100、1〜34塩基対又は34〜50塩基対である。詳細な実施形態において、5’オーバーハングは少なくとも1、少なくとも10、又は少なくとも15塩基対である。詳細な実施形態において、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導くと、平滑末端切断が生じる。詳細な実施形態において、Cpf1突然変異はR1226Aである。詳細な実施形態において、本発明は、1つ以上のベクターを含むベクター系を含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を送達することを含む、細胞の目的のゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1及び第2の標的配列の操作によってオフターゲット改変を最小限に抑えることによって生物又は非ヒト生物を改変する方法を提供し、このベクターは、I.第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列を含む第1のガイドRNAに作動可能に連結された第1の調節エレメント;II.第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列を含む第2のガイドRNAに作動可能に連結された第2の調節エレメント;及びIII.Cpf1酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に連結された第3の調節エレメント、を含み、ここで成分I、II、及びIIIは系の同じ又は異なるベクターに位置し、転写されると、第1及び第2のガイド配列が第1及び第2のCRISPR複合体のそれぞれ第1及び第2の標的配列への配列特異的結合を導き、第1のCRISPR複合体は、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列を含む第1のガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、第2のCRISPR複合体は、第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列を含む第2のガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、Cpf1酵素をコードするポリヌクレオチド配列はDNA又はRNAであり、及び第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導いて二本鎖切断を誘導し、それによりオフターゲット改変を最小限に抑えることによって生物又は非ヒト生物を改変する。詳細な実施形態において、本発明は、遺伝子産物をコードする二本鎖DNA分子を含有してそれを発現する細胞に、1つ以上の突然変異を有するCpf1エフェクタータンパク質と、DNA分子のそれぞれ第1の鎖及び第2の鎖を標的とする2つのガイドRNAとを含む、それによってガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的化し、且つCpf1エフェクタータンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子の第1の鎖及び第2の鎖の各々にニックを入れ、それによって遺伝子産物の発現が変化する;及び、ここでCpf1エフェクタータンパク質と2つのガイドRNAとは天然では一緒に存在しない、エンジニアリングされた、天然に存在しないCRISPR−Cas系を導入することによってオフターゲット改変を最小限に抑えることによって目的のゲノム遺伝子座を改変する方法を提供する。
本発明は更に、1つ以上の突然変異を有するCpf1タンパク質と、細胞の遺伝子産物をコードする二本鎖DNA分子のそれぞれ第1の鎖及び第2の鎖を標的とする2つのガイドRNAとを含む、それによってガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的化し、且つCpf1タンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子の第1の鎖及び第2の鎖の各々にニックを入れ、それによって遺伝子産物の発現が変化する;及び、ここでCpf1タンパク質及び2つのガイドRNAは天然では一緒に存在しない、エンジニアリングされた、天然に存在しないCRISPR−Cpf1系を提供する。詳細な実施形態において、Cpf1突然変異はR1226Aである。本発明は更に、a)遺伝子産物をコードする二本鎖DNA分子のそれぞれ第1の鎖及び第2の鎖を標的とする2つのCRISPR−Cpf1系ガイドRNAの各々に作動可能に連結された第1の調節エレメント、b)Cpf1タンパク質に作動可能に連結された第2の調節エレメント、を含む1つ以上のベクターを含む、ここで成分(a)及び(b)は系の同じ又は異なるベクターに位置する、エンジニアリングされた、天然に存在しないベクター系であって、それによってガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的化し、且つCpf1タンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子の第1の鎖及び第2の鎖の各々にニックを入れ、それによって遺伝子産物の発現が変化する;及び、ここでCpf1タンパク質及び2つのガイドRNAは天然では一緒に存在しない、ベクター系を提供する。
本発明は更に、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を送達することを含む、相同組換え修復の促進によって細胞の目的のゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1及び第2の標的配列を含む生物を改変する方法を提供し、この組成物は、I.第1のCRISPR−Cpf1系ガイドRNAポリヌクレオチド配列であって、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列とダイレクトリピート配列とを含む第1のポリヌクレオチド配列;II.第2のCRISPR−Cpf1系RNAポリヌクレオチド配列であって、第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列とダイレクトリピート配列とを含む第2のポリヌクレオチド配列;III.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み、且つ1つ以上の突然変異を含むCpf1酵素をコードするポリヌクレオチド配列;及びIV.合成又はエンジニアリングされた一本鎖オリゴヌクレオチドを含む修復鋳型、を含み、転写されると、第1及び第2のCpf1ガイドRNAが第1及び第2のCRISPR複合体のそれぞれ第1及び第2の標的配列への配列特異的結合を導き、第1のCRISPR複合体は、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列を含む第1のCpf1ガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、第2のCRISPR複合体は、第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列を含む第2のCpf1ガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、Cpf1酵素をコードするポリヌクレオチド配列はDNA又はRNAであり、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導いて二本鎖切断を誘導し、及び相同組換えによって修復鋳型がDNA二重鎖に導入され、それによって生物が改変される。
本発明は更に、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を送達することを含む、非相同末端結合(NHEJ)媒介ライゲーションの促進によって細胞の目的のゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1及び第2の標的配列を含む生物を改変する方法を提供し、この組成物は、
I.第1のCpf1ガイドRNAポリヌクレオチド配列であって、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列とダイレクトリピート配列とを含む第1のポリヌクレオチド配列;II.第2のCpf1ガイドRNAポリヌクレオチド配列であって、第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列とダイレクトリピート配列とを含む第2のポリヌクレオチド配列;III.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み、且つ1つ以上の突然変異を含むCpf1酵素をコードするポリヌクレオチド配列;及びIV.第1のオーバーハングセットを含む修復鋳型、を含み、転写されると、第1及び第2のガイド配列が第1及び第2のCRISPR複合体のそれぞれ第1及び第2の標的配列への配列特異的結合を導き、第1のCRISPR複合体は、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列を含む第1のガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、第2のCRISPR複合体は、第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列を含む第2のガイドRNAと複合体を形成したCpf1酵素を含み、Cpf1酵素をコードするポリヌクレオチド配列はDNA又はRNAであり、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導いて、第2のオーバーハングセットを有する二本鎖切断を誘導し、第1のオーバーハングセットは第2のオーバーハングセットと適合性を有してマッチし、及びライゲーションによって修復鋳型がDNA二重鎖に導入され、それによって生物が改変される。
本発明は更に、
I.第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列とダイレクトリピート配列とを含む第1のポリヌクレオチド;II.第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列とダイレクトリピート配列とを含む第2のポリヌクレオチド;及びIII.Cpf1酵素をコードする配列と1つ以上の核局在化配列とを含む第3のポリヌクレオチド、を含むキット又は組成物であって、第1の標的配列がDNA二重鎖の第1の鎖上にあり、且つ第2の標的配列がDNA二重鎖の逆鎖上にあり、第1及び第2のガイド配列が二重鎖の前記標的配列にハイブリダイズしたとき、第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドの5’末端が二重鎖の少なくとも1塩基対だけ互いにオフセットし、及び任意選択で、I、II及びIIIの各々が同じ又は異なるベクターに提供される、キット又は組成物を提供する。本発明は更に、本明細書に記載される方法における本明細書に記載されるとおりのキットの使用に関する。本発明は更に、薬剤として用いられる、より詳細には、標的配列に対応する遺伝子座の欠陥によって引き起こされる疾患の治療又は予防に用いられる本明細書に記載されるとおりの組成物を提供する。
本明細書に定義するとおりのCpf1酵素は、活性を失うことなく2つ以上のRNAガイドを利用することができる。これにより、本明細書に定義するとおりの単一の酵素、系又は複合体による複数のDNA標的、遺伝子又は遺伝子座のターゲティングに、本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、系又は複合体を使用することが可能になる。ガイドRNAはタンデムに配置されてもよく、任意選択でヌクレオチド配列によって分離されてもよいが、好ましくはガイドRNAは直接連結され、即ち2つ以上のガイドRNAが互いに直接連結され、それによって各ガイドRNAにおいてダイレクトリピートがガイド配列の5’側にあり、それによって各ガイド配列が隣のガイドRNAのダイレクトリピートに隣接する。使用されるCpf1酵素がAsCpf1のR1226Aである場合、非標的鎖が切断されることになり、標的鎖の切断はない。この情報はガイドの設計に関連性がある。これらの異なるガイドRNAの位置はタンデムであり、活性に影響を及ぼさない。更なる手引きとして、以下の特定の態様及び実施形態を提供する。
一態様において、本発明は、複数の遺伝子座のターゲティングへの本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、複合体又は系の使用を提供する。一実施形態において、これは、複数の(タンデム又は多重)ガイドRNA(gRNA)配列を用いることによって実現し得る。本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、系又は複合体は、複数の標的ポリヌクレオチドを改変する有効な手段を提供する。本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、系又は複合体は、多数の細胞型で1つ以上の標的ポリヌクレオチドを改変する(例えば、欠失させる、挿入する、転座させる、逆位にする、活性化させる)ことを含め、幅広い有用性がある。従って本発明の本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、系又は複合体は、単一のCRISPR系内における複数の遺伝子座のターゲティングを含め、例えば、遺伝子療法、薬物スクリーニング、疾患診断、及び予後判定に広範囲の適用性を有する。
本発明は、タンデムに配置されたガイド配列を含むガイドRNAを包含する。本発明は更に、真核細胞における発現にコドン最適化されたCpf1タンパク質コード配列を包含する。好ましい実施形態において真核細胞は哺乳類細胞、植物細胞又は酵母細胞であり、及びより好ましい実施形態において哺乳類細胞はヒト細胞である。遺伝子産物の発現は低下し得る。Cpf1酵素はCRISPR系又は複合体の一部を形成してもよく、CRISPR系又は複合体は、各々が細胞の目的のゲノム遺伝子座にある標的配列に特異的にハイブリダイズ可能な一連の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、25、25、30個、又は30個超のガイド配列を含むタンデムに配置されたガイドRNA(gRNA)を更に含む。一部の実施形態において、機能性Cpf1 CRISPR系又は複合体は複数の標的配列に結合する。一部の実施形態において、機能性CRISPR系又は複合体は複数の標的配列を編集することができ、例えば、それらの標的配列はゲノム遺伝子座を含んでもよく、及び一部の実施形態では遺伝子発現の変化があり得る。一部の実施形態において、機能性CRISPR系又は複合体は更なる機能性ドメインを含み得る。一部の実施形態において、本発明は、複数の遺伝子産物の発現を変化させる又は改変する方法を提供する。本方法は、前記標的核酸、例えばDNA分子を含有する、又は標的核酸、例えばDNA分子を含有してそれを発現する細胞に導入することを含み得る;例えば、標的核酸は遺伝子産物をコードし得るか、又は遺伝子産物の発現をもたらし得る(例えば調節配列)。
好ましい実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCRISPR酵素はAsCpf1であり、又は多重ターゲティングに用いられるCRISPR系又は複合体はAsCpf1を含む。一部の実施形態において、CRISPR酵素はLbCpf1であり、又はCRISPR系又は複合体はLbCpf1を含む。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCpf1酵素はDNAの両方の鎖を切断して二本鎖切断(DSB)を作り出す。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCRISPR酵素はニッカーゼである。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCpf1酵素はデュアルニッカーゼである。
本発明の特定の実施形態において、ガイドRNA又は成熟crRNAは、ダイレクトリピート配列及びガイド配列又はスペーサー配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。特定の実施形態において、ガイドRNA又は成熟crRNAは、ガイド配列又はスペーサー配列に連結したダイレクトリピート配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。特定の実施形態において、ガイドRNA又は成熟crRNAは19ntの部分的ダイレクトリピートと、続く20〜30nt、有利には約20nt、23〜25nt又は24ntのガイド配列又はスペーサー配列を含む。特定の実施形態において、エフェクタータンパク質はAsCpf1エフェクタータンパク質であり、検出可能なDNA切断を達成するのに少なくとも16ntのガイド配列を必要とし、及びインビトロで効率的なDNA切断を達成するのに最低でも17ntのガイド配列を必要とする。特定の実施形態において、ダイレクトリピート配列はガイド配列又はスペーサー配列の上流(即ち5’側)に位置する。好ましい実施形態において、AsCpf1ガイドRNAのシード配列(即ち、標的遺伝子座の配列の認識及び/又はそれとのハイブリダイゼーションに必須の重要な配列)は、ガイド配列又はスペーサー配列の5’末端上の最初の約5nt以内にある。
本発明の好ましい実施形態において、成熟crRNAはステムループ又は最適化ステムループ構造又は最適化二次構造を含む。好ましい実施形態において、成熟crRNAはダイレクトリピート配列中にステムループ又は最適化ステムループ構造を含み、ここでステムループ又は最適化ステムループ構造は切断活性に重要である。特定の実施形態において、成熟crRNAは好ましくは単一のステムループを含む。特定の実施形態において、ダイレクトリピート配列は好ましくは単一のステムループを含む。特定の実施形態において、エフェクタータンパク質複合体の切断活性は、ステムループRNA二重鎖構造に影響を及ぼす突然変異を導入することによって改変される。好ましい実施形態において、ステムループのRNA二重鎖を維持する突然変異が導入されてもよく、それによってエフェクタータンパク質複合体の切断活性が維持される。他の好ましい実施形態において、ステムループのRNA二重鎖構造を破壊する突然変異が導入されてもよく、それによってエフェクタータンパク質複合体の切断活性が完全に無効にされる。
本発明はまた、本明細書に記載される方法又は組成物のいずれかにおける真核生物又は真核細胞での発現にコドン最適化されたエフェクタータンパク質をコードするヌクレオチド配列も提供する。本発明のある実施形態において、コドン最適化エフェクタータンパク質はAsCpf1pであり、真核細胞又は生物、例えば、本明細書の他の部分で挙げるような細胞又は生物、例えば、限定なしに、酵母細胞、又は哺乳類細胞又は生物、例えば、マウス細胞、ラット細胞、及びヒト細胞又は非ヒト真核生物、例えば植物における作動性に関してコドン最適化される。
本発明の特定の実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質をコードする核酸配列に少なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)が付加される。好ましい実施形態において、少なくとも1つ以上のC末端又はN末端NLSが付加される(従ってCpf1エフェクタータンパク質をコードする1つ又は複数の核酸分子が1つ又は複数のNLSのコーディングを含むことができ、そのため発現した産物には1つ又は複数のNLSが付加又は接続されていることになる)。好ましい実施形態において、真核細胞、好ましくはヒト細胞における最適な発現及び核ターゲティングのため、C末端NLSが付加される。好ましい実施形態において、コドン最適化エフェクタータンパク質はAsCpf1pであり、且つガイドRNAのスペーサー長さは15〜35ntである。特定の実施形態において、ガイドRNAのスペーサー長さは、少なくとも16ヌクレオチド、例えば少なくとも17ヌクレオチドである。特定の実施形態において、スペーサー長さは15〜17nt、17〜20nt、20〜24nt、例えば、20、21、22、23、又は24nt、23〜25nt、例えば、23、24、又は25nt、24〜27nt、27〜30nt、30〜35nt、又は35nt又はそれ以上である。本発明の特定の実施形態において、コドン最適化エフェクタータンパク質はAsCpf1pであり、且つガイドRNAのダイレクトリピート長さは少なくとも16ヌクレオチドである。特定の実施形態において、コドン最適化エフェクタータンパク質はAsCpf1pであり、且つガイドRNAのダイレクトリピート長さは16〜20nt、例えば、16、17、18、19、又は20ヌクレオチドである。特定の好ましい実施形態において、ガイドRNAのダイレクトリピート長さは19ヌクレオチドである。
本発明はまた、複数の核酸成分を送達する方法も包含し、ここで各核酸成分は異なる目的の標的遺伝子座に特異的であり、それにより複数の目的の標的遺伝子座を改変する。複合体の核酸成分は1つ以上のタンパク質結合RNAアプタマーを含み得る。1つ以上のアプタマーはバクテリオファージコートタンパク質との結合能を有し得る。バクテリオファージコートタンパク質は、Qβ、F2、GA、fr、JP501、MS2、M12、R17、BZ13、JP34、JP500、KU1、M11、MX1、TW18、VK、SP、FI、ID2、NL95、TW19、AP205、φCb5、φCb8r、φCb12r、φCb23r、7s及びPRR1を含む群から選択され得る。好ましい実施形態において、バクテリオファージコートタンパク質はMS2である。本発明はまた、30以上、40以上又は50以上のヌクレオチド長である複合体の核酸成分も提供する。
本発明はまた、細胞、構成成分及び/又は系に微量のカチオンが存在する本発明の細胞、構成成分及び/又は系も包含する。有利には、カチオンはマグネシウム、例えばMg2+である。カチオンは微量で存在し得る。好ましい範囲は約1mM〜約15mMのカチオンであることができ、これは有利にはMg2+である。好ましい濃度は、ヒトベースの細胞、構成成分及び/又は系について約1mM、及び細菌ベースの細胞、構成成分及び/又は系について約10mM〜約15mMであり得る。例えば、Gasiunas et al.,PNAS,published online September 4,2012,www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1208507109を参照のこと。
従って、本発明の目的は、本出願人らが権利を留保し、且つ任意の以前に公知の製品、プロセス、又は方法のディスクレーマー(disclaimer)を本明細書によって開示するような以前に公知のいかなる製品、製品の作製プロセス、又は製品の使用方法も本発明の範囲内に包含しないことである。更に、本発明は、本出願人らが権利を留保し、且つ任意の以前に記載された製品、製品の作製プロセス、又は製品の使用方法のディスクレーマー(disclaimer)を本明細書によって開示するような、米国特許商標庁(USPTO)(米国特許法第112条第一段落)又は欧州特許庁(EPO)(EPC第83条)の明細書の記載及び実施可能要件を満たさないいかなる製品、製品の作製プロセス、又は製品の使用方法も本発明の範囲内に包含しないよう意図されることが注記される。本発明の実施においては、第53条(c)EPC及び規則28(b)及び(c)EPCに準拠することが有利であり得る。本明細書におけるいかなる事項も、見込み(promise)であると解釈されてはならない。
この開示及び特に特許請求の範囲及び/又は段落において、「〜を含む(comprises)」、「〜を含んだ(comprised)」、「〜を含んでいる(comprising)」などの用語は、米国特許法にあるそれに帰される意味を有し得る;例えば、これらは「〜を含む(includes)」、「〜を含んだ(included)」、「〜を含んでいる(including)」などを意味し得ること;及び「〜から本質的になっている(consisting essentially of)」及び「〜から本質的になる(consists essentially of)」などの用語が米国特許法にあるそれらに帰される意味を有することが注記される。
上記及び他の実施形態が開示され、又は以下の詳細な説明から明らかで、それに包含される。
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に示される。本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明、及びその添付の図面を参照することにより、本発明の特徴及び利点の更なる理解が得られるであろう。
標的DNA及びcrRNAと複合体化したアシダミノコッカス属(Acidaminococcus)Cpf1タンパク質のトポロジーを示すリボンダイヤグラムを提供する。CRISPR−Cpf1複合体結晶構造の様々な図から、ヘリックスをチューブとして図示し、βストランドを矢印として図示する。Cpf1の幾つかの構造及び/又は機能性ドメインを左側の凡例に表示する。 Cpf1タンパク質のトポロジーを示すリボンダイヤグラムを示す。 Cpf1のRNA結合活性を低下させるための潜在的な突然変異誘発部位を示す。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1の構造(静電表面)を示す。表面の青色部分は相対的に正の電荷を表し、赤色部分は相対的に負の電荷を表す。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1(リボン)の構造の部分的拡大図を示す。W382の側鎖は球体表現で図示し、DNA:RNA複合体の塩基(同様に球体として図示する)とファンデルワールス相互作用をなしている。 複合体、crRNA、cDNA及びncDNAのゲル電気泳動を示す。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1(リボン)の構造の部分的拡大図を示す。残基D1263、E993及びD908(A)の側鎖はボール・アンド・スティック表現で示す。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1(リボン)の構造を示す。 この構造の部分的拡大図を示し、ここでW958の側鎖は球体として表現して、AsCpf1のBH様ヘリックスを安定化させる他の残基の近傍側鎖との疎水性相互作用を示す。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1(リボン)の構造の拡大図を示し、ここでK968及びR951の側鎖はボール・アンド・スティックとして図示している。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1(リボン)の構造の部分的拡大図を示し、ここでR1226、D1235及びS1228の側鎖はボール・アンド・スティックとして図示している。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1(リボン)の構造の部分的拡大図を示し、ここでR1226、D1235及びS1228の側鎖はボール・アンド・スティックとして図示している。 これらの残基の保存を示す種々のCpf1オルソログの配列アラインメントを示す。 PAM二重鎖近傍の標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1の構造(静電表面)の部分的拡大図を示す。表面の青色部分は相対的に正の電荷を表し、赤色部分は相対的に負の電荷を表す。 標的DNA及びcrRNA(リボン・アンド・スティック)と複合体化したAsCpf1(リボン)の構造の部分的拡大図を示し、ここでPAM部位のT2、T3及びT4残基には表示を付している。 PAM部位の2番目のT:A DNA塩基対(即ちT2及びA−2)と相互作用するAsCpf1構造中のT167、K548、M604及びK607の側鎖の球体表現を示す。 同じAsCpf1残基とPAM部位の3番目のT:A DNA塩基対(即ちT3及びA−3)との相互作用を示す。Cpf1とPAM部位の4番目のT:Aとの間に直接的な相互作用はない。 本明細書における結晶構造からのDNA:crRNA複合体をリボン・アンド・スティック表現で示し、及びK1017、K968、R951及びR955の側鎖をボール・アンド・スティック表現で示す。 本明細書における結晶構造からのDNA:crRNA複合体をリボン・アンド・スティック表現で示し、及びK1009、K909、R912、R1072及びR1226の側鎖をボール・アンド・スティック表現で示す。AsCpf1のリボン表現は透明な白色で図示する。 AsCpf1−crRNA−標的DNA複合体の全体構造の図を提供する。図15AはAsCpf1のドメイン構成を示す。BH、ブリッジヘリックス。図15BはcrRNA及び標的DNAの概略図を提供する。TS、標的DNA鎖;NTS、非標的DNA鎖。図15C及び図15Dは、それぞれ、AsCpf1−crRNA−DNA複合体の略画及び表面表現を提供する。分子のグラフィック画像はCueMol(www.cuemol.org)を用いて作成した。図22〜図24及び表2も参照のこと。 crRNA及び標的DNAの構造的特徴を示す。図16Aは、AsCpf1 crRNA及び標的DNAの概略図を提供する。crRNAのディスオーダー領域を破線で囲む。図16Bは、AsCpf1 crRNA及び標的DNAの構造を示す。図16Cは、crRNA 5’−ハンドルの構造を示す立体図である。図16D〜図16Fは、U(−1)・U(−16)塩基対(D)、逆フーグスティーン型U(−10)・A(−18)塩基対(E)、及びU(−13)−U(−17)−U(−12)塩基トリプル(F)の拡大図を提供する。水素結合は破線として示す。図16Gは、WEDドメインとRuvCドメインとの間の溝へのcrRNA 5’−ハンドルの結合を表す。図16H及び図16Iは、crRNA 5’−ハンドルの3’末端(H)及び5’末端(I)の認識を表す。水素結合は破線として示す。 Cpf1による核酸認識の模式図を示す。crRNA及び標的DNAとそれらの主鎖を介して相互作用するAsCpf1残基は括弧内に示す。明確にするため、水の媒介による水素結合相互作用は省略している。図25も参照のこと。 crRNA−標的DNAヘテロ二重鎖の認識を示す。図18Aは、REC1及びREC2ドメインによるcrRNA−標的DNAヘテロ二重鎖の認識を示す。図18Bは、ブリッジヘリックス及びRuvCドメインによる標的DNA鎖の認識を示す。水素結合は破線として示す。図18Cは、crRNAシード領域及び+1リン酸基(+1P)の認識を示す立体図を提供する。水素結合は破線として示す。図18Dは、Cpf1核酸結合残基の突然変異解析を提供する。2つのDNMT1標的にインデルを誘導する能力に及ぼす突然変異の効果を調べた(n=3、エラーバーは平均値±SEMを示す)。図18Eは、ヘテロ二重鎖の20番目の塩基対とREC2ドメインのTrp382との間のスタッキング相互作用を示す。 5’−TTTN−3’PAMの認識を示す。図19Aは、WED、REC1及びPIドメイン間の溝へのPAM二重鎖の結合を示す。図19Bは、5’−TTTN−3’PAMの認識を示す立体図である。水素結合は破線として示す。図19C〜図19Eは、dA(−2):dT(−2*)(C)、dA(−3):dT(−3*)(D)、及びdA(−4):dT(−4*)(E)塩基対の認識を示す。図19Fは、PAM相互作用残基の突然変異解析を提供する。2つのDNMT1標的にインデルを誘導する能力に及ぼす突然変異の効果を調べた(n=3、エラーバーは平均値±SEMを示す)。図26もまた参照のこと。 RuvC及びNucヌクレアーゼドメインの特徴を表す。図20Aは、RuvC及びNucドメインの全体構造を示す。RuvCドメイン及びNucドメインのRNアーゼHフォールドをとるαヘリックス(赤色)及びβストランド(青色)を付番する。ディスオーダー領域は破線として示す。図20Bは、RuvCドメインの活性部位を表す。図20Cは、RuvC及びNucドメインにおける重要な残基の突然変異解析を提供する。2つのDNMT1標的にインデルを誘導する能力に及ぼす突然変異の効果を調べた(n=3、エラーバーは平均値±SEMを示す)。図20Dは、標的DNAの潜在的切断部位に対するヌクレアーゼドメインの空間的配置を表す。RuvCドメインの触媒中心は赤色の丸で囲んで示す。明確にするため、REC1及びPIドメインは省略している。構造の上にcrRNA及び標的DNAの模式図を示す。結晶構造に含まれないDNA鎖は薄い灰色で表現する。図20Eは、Trp958とREC2ドメインの疎水性ポケットとの間の相互作用を表す。図20Fは、AsCpf1 R1226A突然変異体が、非標的DNA鎖のみを切断するニッカーゼであることを示す。crRNA及び標的配列(target sequene)を含むdsDNA(両方の鎖の5’末端(DNA1)又は非標的鎖(DNA2)若しくは標的鎖(DNA3)のいずれか一方の5’末端で標識した)と共に、野生型又はR1226突然変異体のAsCpf1をインキュベートした。切断産物は10%ポリアクリルアミドTBE−尿素ゲル電気泳動によって分析した。SpCas9 D10A突然変異体は標的鎖を切断するニッカーゼであり、対照として使用した。図27もまた参照のこと。 Cas9とCpf1との比較を提供する。図21A及び図21Bは、Cas9(PDB ID 4UN3)(A)とAsCpf1(B)とのドメイン構成及び全体構造の比較を提供する。RuvCドメインの触媒中心は赤色の丸で囲んで示す。図21C及び図21Dは、Cas9(C)及びCpf1(D)によるRNAガイド下DNA切断モデルを提供する。図21E及び図21Fは、Cas9(PDB ID 4UN3)(E)とAsCpf1(F)とのRuvCドメインの比較を提供する。保存されたRNアーゼHフォールドの二次構造を付番する。図28もまた参照のこと。 青色のメッシュとして示される結合した核酸の2mF−DF電子密度マップ(2.0σでカウント)を提供する。+1P、+1リン酸。 ドメイン(図23A)及び静電ポテンシャル(図23B)に基づき陰影を付けたAsCpf1−crRNA−標的DNA複合体の分子表面表現を提供する。明確にするため、上及び中央のパネルにおいてそれぞれREC1及びREC2ドメインは省略している。BH、ブリッジヘリックス。 AsCpf1 REC1、REC2、WED及びPIドメインを図解する。図24Aは、REC1、REC2、WED及びPIのドメイン構成を示す。WEDドメインのあまり保存されていない領域に淡い青色を塗る。図24BはREC1及びREC2ドメインの構造を示し、図24CはWED及びPIドメインの構造を示す。ディスオーダー領域は破線として示す。 Cpf1タンパク質の多重配列アラインメントを提供し、ここで配列の上に二次構造を表示し、及び重要な残基を三角形で示す。アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6;Lb、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006;Fn、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)U112。本図はClustal Omega(www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo)及びESPript(espript.ibcp.fr)を使用して作成した。 PAM二重鎖の構造的特徴を示す。図26Aは、PAM二重鎖をB型DNA二重鎖に重ね合わせて表す立体図である。5’−TTTN−3’PAMを淡い紫色で強調表示し、B型DNA二重鎖に黄色を付ける。図26Bは、dA(−2):dT(−2*)塩基対の特異的認識を表す。モデル化したdG(−2):dC(−2*)塩基対はPIドメインのLys607と立体衝突を形成し得る。図26Cは、dA(−3):dT(−3*)塩基対の特異的認識を表す。モデル化したdG(−3):dC(−3*)塩基対はPIドメインのLys607と立体衝突を形成し得る。図26Dは、dA(−4):dT(−4*)塩基対の特異的認識を表す。モデル化した塩基対、dT(−4):dA(−4*)、dG(−4):dC(−4*)及びdC(−4):dG(−4*)は標的DNA鎖のdA(−3)と立体衝突を形成し得る。図26B及び図26Cでは、潜在的に有利な及び不利な相互作用をそれぞれ緑色及び赤色の破線として表す。 RuvC触媒残基の突然変異解析を提供する。野生型又は突然変異型AsCpf1−crRNA複合体を二本鎖DNA標的とインキュベートし、非変性TBE及び変性TBE−尿素ポリアクリルアミドゲル上で反応産物を分離させた。ゲルはSYBR Gold(Invitrogen)で染色した。RuvC触媒残基の突然変異(D908A、E993A及びD1263A)により、標的DNA鎖及び非標的DNA鎖の両方の切断が消失した。 Cas9(図28A)及びCpf1(図28B)のRNAガイド下DNAターゲティング機構を表す。重要なタンパク質残基、並びにシード領域及びPAM二重鎖のヌクレオチドをスティックモデルとして示す。水素結合は破線として示す。PLL、リン酸ロックループ。 AsCpf1突然変異酵素のヌクレアーゼ活性を示す。標的DNA:FnCpf1スペーサーを有するpUC19断片を含むPCR産物;crRNAはAsCpf1及びCas9 DRであった。切断産物は変性(図29A)及び非変性(図29B)条件下で分離した。
本明細書の図は例示目的に過ぎず、必ずしも一定の尺度で描かれているとは限らない。
本願は、Cpf1エフェクタータンパク質の結晶構造を記載する。Cpf1エフェクタータンパク質は、これまでに記載されているCRISPR−Cas9系と機能上異なり、、従ってこれらの新規エンドヌクレアーゼ(endonulcease)に関連するエレメントの用語は、本明細書ではそれに伴い修正される。本明細書に記載されるCpf1関連CRISPRアレイは、追加的なtracrRNAを必要とすることなく成熟crRNAにプロセシングされる。本明細書に記載されるcrRNAはスペーサー配列(又はガイド配列)とダイレクトリピート配列とを含み、標的DNAの効率的な切断には、Cpf1p−crRNA複合それだけで十分である。本明細書に記載されるシード配列、例えばAsCpf1ガイドRNAのシード配列は、スペーサー配列(又はガイド配列)の5’末端上の最初の約5nt以内にあり、シード配列内の突然変異はCpf1エフェクタータンパク質複合体の切断活性に悪影響を及ぼす。
一般に、CRISPR系は、標的配列(内因性CRISPR系の文脈ではプロトスペーサーとも称される)の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進するエレメントによって特徴付けられる。CRISPR複合体の形成の文脈では、「標的配列」は、ガイド配列がそれを標的化する、例えばそれと相補性を有するように設計される配列を指し、ここでは標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションが、CRISPR複合体の形成を促進する。標的配列との相補性が切断活性(acitivity)に重要となるガイド配列のセクションは、本明細書ではシード配列と称される。標的配列はDNA又はRNAポリヌクレオチドなどの任意のポリヌクレオチドを含むことができ、目的の標的遺伝子座内に含まれる。一部の実施形態において、標的配列は細胞の核又は細胞質に位置する。
核酸がDNA又はRNAであり、及び一部の態様においてDNA−RNAハイブリッド(hybird)又はその誘導体もまた指し得る用語「核酸ターゲティング系」は、まとめて、DNA又はRNAターゲティングCRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するか又はその活性を誘導する転写物及び他のエレメントを指し、この遺伝子は、DNA又はRNAターゲティングCasタンパク質をコードする配列及びCRISPR RNA(crRNA)配列と(全ての系ではないが、CRISPR−Cas9系において)トランス活性化CRISPR−Cas系RNA(tracrRNA)配列とを含むDNA又はRNAターゲティングガイドRNA、又はDNA又はRNAターゲティングCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物を含み得る。本明細書に記載されるCpf1 DNAターゲティングRNAガイド下エンドヌクレアーゼ系では、tracrRNA配列は不要である。一般に、RNAターゲティング系は、標的RNA配列の部位におけるRNAターゲティング複合体の形成を促進するエレメントによって特徴付けられる。DNA又はRNAターゲティング複合体の形成の文脈では、「標的配列」は、DNA又はRNAターゲティングガイドRNAがそれと相補性を有するように設計されるDNA又はRNA配列を指し、ここで標的配列とRNAターゲティングガイドRNAとの間のハイブリダイゼーションが、RNAターゲティング複合体の形成を促進する。一部の実施形態において、標的配列は細胞の核又は細胞質に位置する。一部の実施形態において、標的配列は真核細胞の細胞小器官内、例えばミトコンドリア内又は葉緑体内にあり得る。標的配列を含む標的遺伝子座への組換えに用いられ得る配列又は鋳型は、「編集鋳型」又は「編集RNA」又は「編集配列」と称される。本発明の態様において、外因性鋳型RNAは編集鋳型と称され得る。本発明のある態様において、組換えは相同組換えである。
本明細書に記載される核酸ターゲティング系、ベクター系、ベクター及び組成物は、様々な核酸ターゲティング適用、タンパク質などの遺伝子産物の合成の変化又は改変、核酸切断、核酸編集、核酸のスプライシング;標的核酸の輸送、標的核酸の追跡、標的核酸の単離、標的核酸の可視化等において用いられ得る。
本明細書で使用されるとき、Casタンパク質又はCRISPR酵素は、CRISPR−Cas系の新規分類に提示されるタンパク質のいずれかを指す。有利な実施形態において、本発明は、V型CRISPR−Cas遺伝子座、例えばサブタイプV−Aと称されるCpf1コード遺伝子座に同定されるエフェクタータンパク質を包含する。現在、サブタイプV−A遺伝子座は、cas1、cas2、cpf1と称される異なる遺伝子及びCRISPRアレイを包含する。Cpf1(CRISPR関連タンパク質Cpf1、サブタイプPREFRAN)は、Cas9の特徴的アルギニンリッチクラスターに対応するものと共にCas9の対応するドメインと相同なRuvC様ヌクレアーゼドメインを含む大型タンパク質(約1300アミノ酸)である。しかしながら、Cpf1は、全てのCas9タンパク質に存在するHNHヌクレアーゼドメインを欠いており、及びHNHドメインを含む長いインサートを含有するCas9と対照的に、RuvC様ドメインはCpf1配列において連続的である。従って、詳細な実施形態では、CRISPR−Cas酵素はRuvC様ヌクレアーゼドメインのみを含む。
Cpf1遺伝子は、幾つかの多様な細菌ゲノムに見られ、典型的にはcas1、cas2、及びcas4遺伝子及びCRISPRカセット(例えば、フランシセラ属参照ノビシダ(Francisella cf.novicida)Fx1のFNFX1_1431−FNFX1_1428)で同じ遺伝子座にある。従って、この推定新規CRISPR−Cas系のレイアウトはII−B型と類似しているものと思われる。更に、Cas9と同様に、Cpf1タンパク質は、トランスポゾンORF−Bと相同の容易に同定可能なC末端領域を含有し、活性RuvC様ヌクレアーゼ、アルギニンリッチ領域、及びZnフィンガー(Cas9にはない)を含む。しかしながら、Cas9と異なり、Cpf1はまた、CRISPR−Casコンテクストのない幾つかのゲノムにも存在し、ORF−Bとのその比較的高い類似性から、これがトランスポゾン構成成分である可能性が示唆される。これが真正のCRISPR−Cas系であったならば、Cpf1はCas9の機能性の類似体であり、新規CRISPR−Casタイプ、即ちV型であろうことが示唆された(Annotation and Classification of CRISPR−Cas Systems.Makarova KS,Koonin EV.Methods Mol Biol.2015;1311:47−75を参照)。
本発明の態様はまた、原核細胞又は真核細胞におけるインビトロ、インビボ又はエキソビボでのゲノムエンジニアリングにおける、例えば1つ以上の遺伝子又は1つ以上の遺伝子産物の発現を変化させる又は操作するための、本明細書に記載される組成物及び系の方法及び使用も包含する。
本発明の実施形態において、用語の成熟crRNA及びガイドRNA及びシングルガイドRNAは、国際公開第2014/093622号パンフレット(PCT/US2013/074667号明細書)などの前述の引用文献にあるとおり同義的に使用される。一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズして標的配列に対するCRISPR複合体の配列特異的結合を導くのに十分な標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態において、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアラインメントアルゴリズムを用いて最適にアラインメントしたとき、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%以上であるか、又はそれより高い。最適アラインメントは、配列のアラインメントに好適な任意のアルゴリズムを用いて決定することができ、その非限定的な例としては、スミス−ウォーターマンアルゴリズム、ニードルマン−ブンシュアルゴリズム、バローズ・ホイーラー変換に基づくアルゴリズム(例えば、バローズ・ホイーラーアライナー)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies;www.novocraft.comにおいて利用可能)、ELAND(Illumina、San Diego,CA)、SOAP(soap.genomics.org.cnにおいて利用可能)、及びMaq(maq.sourceforge.netにおいて利用可能)が挙げられる。一部の実施形態において、ガイド配列は、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75ヌクレオチド長以上であるか、又はそれより長い。一部の実施形態において、ガイド配列は、約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12ヌクレオチド長未満か、又はそれより短い。好ましくはガイド配列は10〜30ヌクレオチド長である。ガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を導く能力は、任意の好適なアッセイによって評価し得る。例えば、CRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPR系の構成成分が、試験しようとするガイド配列を含め、CRISPR配列の構成成分をコードするベクターのトランスフェクションによるなどして対応する標的配列を有する宿主細胞に提供されてもよく、続いて本明細書に記載されるとおりのSurveyorアッセイなどにより、標的配列内における優先的な切断を評価し得る。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、標的配列、試験しようとするガイド配列を含めたCRISPR複合体の構成成分、及び供試ガイド配列と異なる対照ガイド配列を提供して、それらの供試ガイド配列と対照ガイド配列との反応間の標的配列における結合又は切断速度を比較することにより、試験管内で判定することができる。他のアッセイも可能であり、当業者には想起されるであろう。ガイド配列は、任意の標的配列を標的化するように選択することができる。一部の実施形態において、標的配列は細胞のゲノム内の配列である。例示的標的配列には、標的ゲノムにおいてユニークなものが含まれる。
一般に、及び本明細書全体を通じて、用語「ベクター」は、それに連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターとしては、限定はされないが、一本鎖、二本鎖、又は部分的二本鎖の核酸分子;1つ以上の遊離末端を含む、遊離末端のない(例えば環状の)核酸分子;DNA、RNA、又は両方を含む核酸分子;及び当該技術分野において公知の他の種類のポリヌクレオチドが挙げられる。ある種のベクターは「プラスミド」であり、これは、標準的な分子クローニング技術によるなどして追加のDNAセグメントを挿入することのできる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここでベクターには、ウイルス(例えば、レトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)へのパッケージングのためのウイルス由来DNA又はRNA配列が存在する。ウイルスベクターはまた、宿主細胞へのトランスフェクションのためのウイルスによって担持されるポリヌクレオチドも含む。特定のベクターは、それが導入される宿主細胞での自己複製能を有する(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。更に、特定のベクターは、それが作動可能に連結された遺伝子の発現を導くことが可能である。かかるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。真核細胞における発現用の、及びそこでの発現をもたらすベクターは、本明細書では、「真核細胞発現ベクター」と称することができる。組換えDNA技法において有用な一般的な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。
組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態の本発明の核酸を含むことができ、これはつまり、組換え発現ベクターが、発現させる核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の調節エレメント(これは、発現に用いられる宿主細胞に基づき選択されてもよい)を含むことを意味する。組換え発現ベクターの範囲内において、「作動可能に連結された」は、ヌクレオチド配列の(例えば、インビトロ転写/翻訳系における、又はベクターが宿主細胞に導入される場合に宿主細胞における)発現が可能となる形で目的のヌクレオチド配列が1つ又は複数の調節エレメントに連結されていることを意味するように意図される。
用語「調節エレメント」には、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム侵入部位(IRES)、及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル及びポリU配列などの転写終結シグナル)が含まれることが意図される。かかる調節エレメントについては、例えば、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。調節エレメントには、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの及び特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。組織特異的プロモーターは、主として、所望の目的組織、例えば、筋肉、ニューロン、骨、皮膚、血液、特定の臓器(例えば、肝臓、膵臓)、又は特定の細胞型(例えば、リンパ球)において発現を導き得る。調節エレメントはまた、細胞周期依存的又は発生段階依存的様式など、時間依存的様式で発現を導いてもよく、この発現もまた組織又は細胞型特異的であることも又はそうでないこともある。一部の実施形態において、ベクターは、1つ以上のpol IIIプロモーター(例えば、1、2、3、4、5個、又はそれより多いpol IIIプロモーター)、1つ以上のpol IIプロモーター(例えば、1、2、3、4、5個、又はそれより多いpol IIプロモーター)、1つ以上のpol Iプロモーター(例えば、1、2、3、4、5個、又はそれより多いpol Iプロモーター)、又はこれらの組み合わせを含む。pol IIIプロモーターの例としては、限定はされないが、U6及びH1プロモーターが挙げられる。pol IIプロモーターの例としては、限定はされないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択でRSVエンハンサーと共に)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択でCMVエンハンサーと共に)[例えば、Boshart et al,Cell,41:521−530(1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1αプロモーターが挙げられる。また、用語「調節エレメント」には、WPREなどのエンハンサーエレメント;CMVエンハンサー;HTLV−IのLTRにおけるR−U5’セグメント(Mol.Cell.Biol.,Vol.8(1),p.466−472,1988);SV40エンハンサー;及びウサギβ−グロビンのエクソン2と3との間のイントロン配列(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.78(3),p.1527−31,1981)も包含される。当業者によれば、発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞の選択、所望の発現レベルなどの要因に依存し得ることが理解されるであろう。ベクターは宿主細胞に導入することができ、それにより、本明細書に記載されるとおりの核酸によってコードされる転写物、タンパク質、又はペプチドが、融合タンパク質又はペプチド(例えば、クラスター化した規則的な間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)転写物、タンパク質、酵素、それらの突然変異型、それらの融合タンパク質等)を含め、産生され得る。
有利なベクターとしては、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルスが挙げられ、かかるベクターのタイプもまた、特定のタイプの細胞を標的化するように選択することができる。
本明細書で使用されるとき、V型又はVI型CRISPR−Cas遺伝子座エフェクタータンパク質の「crRNA」又は「ガイドRNA」又は「シングルガイドRNA」又は「sgRNA」又は「1つ以上の核酸成分」という用語には、標的核酸配列とハイブリダイズして標的核酸配列への核酸ターゲティング複合体の配列特異的結合を導くのに十分な標的核酸配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列が含まれる。一部の実施形態において、相補性の程度は、好適なアラインメントアルゴリズムを用いて最適にアラインメントしたとき、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%以上であるか、又はそれより高い。最適アラインメントは、配列のアラインメントに好適な任意のアルゴリズムを用いて決定することができ、その非限定的な例としては、スミス−ウォーターマンアルゴリズム、ニードルマン−ブンシュアルゴリズム、バローズ−ホイーラー変換に基づくアルゴリズム(例えば、バローズ・ホイーラーアライナー)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies;www.novocraft.comにおいて利用可能)、ELAND(Illumina、San Diego,CA)、SOAP(soap.genomics.org.cnにおいて利用可能)、及びMaq(maq.sourceforge.netにおいて利用可能)が挙げられる。ガイド配列(核酸ターゲティングガイドRNA内にある)が標的核酸配列への核酸ターゲティング複合体の配列特異的結合を導く能力は、任意の好適なアッセイによって評価し得る。例えば、核酸ターゲティング複合体を形成するのに十分な核酸ターゲティングCRISPR系の構成成分が、試験しようとするガイド配列を含め、対応する標的核酸配列を有する宿主細胞へと、核酸ターゲティング複合体の構成成分をコードするベクターのトランスフェクションによるなどして提供されてもよく、続いて本明細書に記載されるとおりのSurveyorアッセイなどにより、標的核酸配列内における優先的なターゲティング(例えば切断)を評価し得る。同様に、標的核酸配列の切断は、標的核酸配列、試験しようとするガイド配列を含めた核酸ターゲティング複合体の構成成分、及び供試ガイド配列と異なる対照ガイド配列を提供して、それらの供試ガイド配列と対照ガイド配列との反応間で標的配列における結合又は切断速度を比較することにより、試験管内で判定することができる。他のアッセイも可能であり、当業者には想起されるであろう。ガイド配列、ひいては核酸ターゲティングガイドRNAは、任意の標的核酸配列を標的化するように選択し得る。標的配列はDNAであってもよい。標的配列は任意のRNA配列であってもよい。一部の実施形態において、標的配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)、プレmRNA、リボソームRNA(ribosomaal RNA)(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、非コードRNA(ncRNA)、長い非コードRNA(lncRNA)、及び小さい細胞質RNA(scRNA)からなる群から選択されるRNA分子内の配列であってもよい。一部の好ましい実施形態において、標的配列は、mRNA、プレmRNA、及びrRNAからなる群から選択されるRNA分子内の配列であってもよい。一部の好ましい実施形態において、標的配列は、ncRNA、及びlncRNAからなる群から選択されるRNA分子内の配列であってもよい。一部のより好ましい実施形態において、標的配列はmRNA分子又はプレmRNA分子内の配列であってもよい。
一部の実施形態において、核酸ターゲティングガイドRNAは、RNAターゲティングガイドRNA内の二次構造度が低下するように選択される。一部の実施形態において、核酸ターゲティングガイドRNAのヌクレオチドのうち最適に折り畳まれたとき自己相補性塩基対合に関与するのは約75%、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%以下であるか、又はそれより少ない。最適な折り畳みは、任意の好適なポリヌクレオチド折り畳みアルゴリズムによって決定し得る。一部のプログラムは最小ギブズ自由エネルギーの計算に基づく。かかる一つのアルゴリズムの例は、Zuker and Stiegler(Nucleic Acids Res.9(1981),133−148)により記載されるとおりのmFoldである。別の例示的な折り畳みアルゴリズムは、ウィーン大学(University of Vienna)のInstitute for Theoretical Chemistryにおいて開発された、セントロイド構造予測アルゴリズムを用いるオンラインウェブサーバーRNAfoldである(例えば、A.R.Gruber et al.,2008,Cell 106(1):23−24;及びPA Carr and GM Church,2009,Nature Biotechnology 27(12):1151−62を参照)。
「tracrRNA」配列又は類似の用語は、crRNA配列とハイブリダイズするのに十分な相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列を含む。本明細書において上記に指摘するとおり、本発明の実施形態において、tracrRNAはCpf1エフェクタータンパク質複合体の切断活性に必要ない。
毒性及びオフターゲット効果を最小限に抑えるため、送達される核酸ターゲティングガイドRNAの濃度を制御することが重要となり得る。核酸ターゲティングガイドRNAの最適濃度は、細胞モデル又は非ヒト真核生物動物モデルにおける種々の濃度の試験、及びディープシーケンシングを用いた潜在的なオフターゲットゲノム遺伝子座における改変の程度の分析によって決定することができる。最も高いレベルのオンターゲット改変をもたらす一方でオフターゲット改変レベルを最小限に抑える濃度が、インビボ送達に選択されるべきである。核酸ターゲティング系は、有利にはV型/VI型CRISPR系に由来する。一部の実施形態において、核酸ターゲティング系の1つ以上のエレメントが、内因性RNAターゲティング系を含む特定の生物に由来する。本発明の好ましい実施形態において、RNAターゲティング系はV型/VI型CRISPR系である。ホモログ及びオルソログは相同性モデリングによって同定し得る(例えば、Greer,Science vol.228(1985)1055、及びBlundell et al.Eur J Biochem vol 172(1988),513)又は「構造的BLAST(structural BLAST)」(Dey F,Cliff Zhang Q,Petrey D,Honig B.「“構造的BLAST”に向けて:構造的関係を用いて機能を推測する(Toward a“structural BLAST”:using structural relationships to infer function)」.Protein Sci.2013 Apr;22(4):359−66.doi:10.1002/pro.2225を参照のこと)。また、CRISPR−Cas遺伝子座の分野における適用に関して、Shmakov et al.(2015)も参照のこと。しかしホモログタンパク質は構造上関係がなくてもよく、又は構造上部分的にのみ関係している。詳細な実施形態では、本明細書において言及されるとおりのCpf1のホモログ又はオルソログは、Cpf1と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%などの配列相同性又は同一性を有する。更なる実施形態において、本明細書において言及されるとおりのCpf1のホモログ又はオルソログは、野生型Cpf1と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%などの配列同一性を有する。Cpf1が1つ以上の突然変異を有する場合(突然変異型)、本明細書において言及されるとおりの前記Cpf1のホモログ又はオルソログは、突然変異型Cpf1と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%などの配列同一性を有する。
詳細な実施形態では、本明細書において言及されるとおりのCpf1のようなV型/VI型タンパク質のホモログ又はオルソログは、AsCpf1と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%などの配列相同性又は同一性を有する。更なる実施形態において、本明細書において言及されるとおりのAsCpf1のようなV型/VI型タンパク質のホモログ又はオルソログは、AsCpf1と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%などの配列同一性を有する。
ある実施形態において、V型/VI型RNAターゲティングCasタンパク質は、限定はされないが、コリネバクター(Corynebacter)、ステレラ属(Sutterella)、レジオネラ属(Legionella)、トレポネーマ属(Treponema)、フィリファクター属(Filifactor)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、バクテロイデス属(Bacteroides)、フラビイボラ(Flaviivola)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、スフェロヘータ属(Sphaerochaeta)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、ナイセリア属(Neisseria)、ロゼブリア属(Roseburia)、パルビバクラム属(Parvibaculum)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ニトラチフラクター属(Nitratifractor)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)及びカンピロバクター属(Campylobacter)を含む属の生物のCpf1オルソログであってもよい。かかる属の生物種は、他に本明細書で考察するとおりであり得る。
本明細書に記載される機能のいずれも、複数のオルソログ由来の断片を含むキメラ酵素を含め、他のオルソログ由来のCRISPR酵素にエンジニアリングし得ることが理解されるであろう。かかるオルソログの例は、本明細書の他の部分に記載される。従って、キメラ酵素は、限定はされないが、コリネバクター属(Corynebacter)、ステレラ属(Sutterella)、レジオネラ属(Legionella)、トレポネーマ属(Treponema)、フィリファクター属(Filifactor)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、バクテロイデス属(Bacteroides)、フラビイボラ属(Flaviivola)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、スフェロヘータ属(Sphaerochaeta)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、ナイセリア属(Neisseria)、ロゼブリア属(Roseburia)、パルビバクラム属(Parvibaculum)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ニトラチフラクター属(Nitratifractor)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)及びカンピロバクター属(Campylobacter)を含む属の生物のCRISPR酵素オルソログの断片を含み得る。キメラ酵素は第1の断片と第2の断片とを含むことができ、これらの断片(fragrment)は、本明細書に挙げられる属又は本明細書に挙げられる種の生物のCRISPR酵素オルソログのものであり得る;有利には断片は、異なる種のCRISPR酵素オルソログ由来である。
実施形態において、本明細書において言及されるとおりのCpf1タンパク質にはまた、AsCpf1又はそのホモログ若しくはオルソログの機能変異体も包含される。タンパク質の「機能変異体」は、本明細書で使用されるとき、当該のタンパク質の活性を少なくとも部分的に保持しているかかるタンパク質の変異体を指す。機能変異体には、多型等を含め、突然変異体(これは挿入、欠失、又は置換突然変異体であり得る)が含まれ得る。また、機能変異体の範囲内には、かかるタンパク質と、別の、通常は無関係の核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドとの融合産物も含まれる。機能変異体は天然に存在するものであってもよく、又は人工のものであってもよい。有利な実施形態は、エンジニアリングされた又は天然に存在しないAsCpf1又はそのオルソログ若しくはホモログを含み得る。
ある実施形態において、ASCpf1又はそのオルソログ若しくはホモログをコードする1つ又は複数の核酸分子は、真核細胞での発現にコドン最適化され得る。真核生物は、本明細書に考察されるとおりのものであってもよい。1つ又は複数の核酸分子は、エンジニアリングされたもの又は天然に存在しないものであってもよい。
ある実施形態において、AsCpf1又はそのオルソログ若しくはホモログは1つ以上の突然変異を含み得る(ひいてはそれをコードする1つ又は複数の核酸分子が1つ又は複数の突然変異を有し得る)。突然変異は人工的に導入された突然変異であってもよく、限定はされないが、触媒ドメインにおける1つ以上の突然変異が含まれ得る。Cas9酵素に関連する触媒ドメインの例としては、限定はされないが、RuvC I、RuvC II、RuvC III及びHNHドメインを挙げることができる。
ある実施形態において、Cpf1又はそのオルソログ若しくはホモログは、機能ドメインと融合した又はそれに作動可能に連結された汎用核酸結合タンパク質として用いられ得る。例示的機能ドメインとしては、限定はされないが、翻訳開始因子、翻訳活性化因子、翻訳抑制因子、ヌクレアーゼ、詳細にはリボヌクレアーゼ、スプライソソーム、ビーズ、光誘導性/制御性ドメイン又は化学物質誘導性/制御性ドメインを挙げることができる。
一部の実施形態において、非改変核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は切断活性を有し得る。一部の実施形態において、RNAターゲティングエフェクタータンパク質は、標的配列内及び/又は標的配列の相補体内又は標的配列と会合した配列においてなど、標的配列の位置又はその近傍における一方又は両方の核酸(DNA又はRNA)鎖の切断を導き得る。一部の実施形態において、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は、標的配列の最初又は最後のヌクレオチドから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500、又はそれを超える塩基対以内にある一方又は両方のDNA鎖又はRNA鎖の切断を導き得る。一部の実施形態において、切断は、付着末端型であり、即ち付着末端を生じ得る。一部の実施形態において、切断は、5’オーバーハングを伴う付着末端型切断である。一部の実施形態において、切断は、1〜5ヌクレオチド、好ましくは4又は5ヌクレオチドの5’オーバーハングを伴う付着末端型切断である。一部の実施形態において、切断部位はPAMから離れており、例えば、切断は非標的鎖上の18番目のヌクレオチドの後及び標的鎖上の23番目のヌクレオチドの後で起こる(Zetsche et al.,2015)。一部の実施形態において、切断部位は非標的鎖上の(PAMから数えて)18番目のヌクレオチドの後及び標的鎖上の(PAMから数えて)23番目のヌクレオチドの後に起こる。一部の実施形態において、ベクターは、対応する野生型酵素と比べて突然変異していてもよい核酸ターゲティングエフェクタータンパク質をコードし、そのため突然変異型核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方又は両方のDNA鎖又はRNA鎖を切断する能力を欠くことになる。更なる例として、Casタンパク質の2つ以上の触媒ドメイン(例えばRuvC 、及び、任意選択で本明細書において特定される第2のヌクレアーゼドメイン)を突然変異させることにより、実質的に全てのDNA切断活性を欠く突然変異型Casタンパク質が作製されてもよい。本明細書に記載されるとおり、Cpf1エフェクタータンパク質の対応する触媒ドメインもまた、突然変異させることにより、全てのDNA切断活性を欠いているか又はDNA切断活性が実質的に低下した突然変異型Cpf1エフェクタータンパク質を作製し得る。一部の実施形態において、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は、突然変異酵素のRNA切断活性が非突然変異型の酵素の核酸切断活性の約25%、10%、5%、1%、0.1%、0.01%以下、又はそれ未満であるとき、実質的に全てのRNA切断活性を欠いていると見なされ得る;一例は、突然変異型の核酸切断活性が非突然変異型と比較したときゼロ又は無視できる程度のときであり得る。エフェクタータンパク質は、V型/VI型CRISPR系からの複数のヌクレアーゼドメインを有する最も大型のヌクレアーゼと相同性を共有する一般的な酵素クラスを参照して同定し得る。最も好ましくは、エフェクタータンパク質は、Cpf1などのV型/VI型タンパク質である。更なる実施形態において、エフェクタータンパク質はV型タンパク質である。由来するとは、本出願人らは、由来酵素が野生型酵素と高度な配列相同性を有するという意味で概して野生型酵素をベースとするが、しかしそれは当該技術分野において公知のとおりの又は本明細書に記載されるとおりの何らかの方法で突然変異している(改変されている)ことを意味する。
この場合もまた、用語のCas及びCRISPR酵素及びCRISPRタンパク質及びCasタンパク質は、概して同義的に用いられ、Cas9に具体的に言及することによるなど、特に明らかでない限り、本明細書で言及する際は常に類推から、本願に更に記載される新規CRISPRエフェクタータンパク質を指すことが理解されるであろう。上述のとおり、本明細書において用いられる残基付番の多くは、V型/VI型CRISPR遺伝子座からのエフェクタータンパク質を参照する。しかしながら、本発明には、他の微生物種由来の更に多くのエフェクタータンパク質が含まれることが理解されるであろう。特定の実施形態において、エフェクタータンパク質は構成的に存在しても、又は誘導可能に存在しても、又は条件的に存在しても、又は投与されても、又は送達されてもよい。エフェクタータンパク質最適化を用いて機能を増強し、又は新規機能を開発してもよく、キメラエフェクタータンパク質を作成することができる。及び本明細書に記載されるとおり、エフェクタータンパク質を汎用核酸結合タンパク質として用いられるように改変してもよい。
典型的には、核酸ターゲティング系のコンテクストでは、核酸ターゲティング複合体の形成(標的配列にハイブリダイズし、且つ1つ以上の核酸ターゲティングエフェクタータンパク質と複合体を形成したガイドRNAを含む)は、標的配列内に又はその近傍に(例えば、それから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対、又はそれ以上の範囲内に)一方又は両方のDNA鎖又はRNA鎖の切断をもたらす。本明細書で使用されるとき、用語「目的の標的遺伝子座と会合した1つ又は複数の配列」は、標的配列付近の近傍(例えば標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対、又はそれ以上の範囲内、ここで標的配列は目的の標的遺伝子座内に含まれる)にある配列を指す。
コドン最適化された配列の例は、この場合、真核生物、例えばヒトでの発現に最適化されるか(即ちヒトでの発現に最適化されている)、又は別の本明細書で考察されるとおりの真核生物、動物又は哺乳動物に最適化された配列である;例えば、コドン最適化配列の例として国際公開第2014/093622号パンフレット(PCT/US2013/074667号明細書)のSaCas9ヒトコドン最適化配列を参照のこと(当該技術分野及び本開示における知識から、特にエフェクタータンパク質(例えばCpf1)に関して、1つ又は複数のコード核酸分子のコドン最適化は当業者の範囲内にある)。これが好ましいが、他の例が可能であることが理解され、ヒト以外の宿主種に対するコドン最適化、又は特定の器官に対するコドン最適化が公知である。一部の実施形態において、DNA/RNAターゲティングCasタンパク質をコードする酵素コード配列が、特定の細胞、例えば真核細胞での発現にコドン最適化される。真核細胞は、特定の生物、例えば植物又は限定はされないがヒトを含めた哺乳動物、又は本明細書で考察されるとおりの非ヒト真核生物又は動物又は哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、家畜、又は非ヒト哺乳動物又は霊長類のものであるか、又はそれに由来し得る。一部の実施形態において、ヒト又は動物に対するいかなる実質的な医学的利益もなくそれらに苦痛を生じさせる可能性のあるヒトの生殖細胞系列遺伝子アイデンティティの改変方法及び/又は動物の遺伝子アイデンティティの改変方法、更にかかる方法から得られる動物は除外され得る。一般に、コドン最適化とは、天然配列の少なくとも1つのコドン(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、50個以上、又はそれより多いコドン)を、天然のアミノ酸配列を維持しつつ、当該の宿主細胞の遺伝子においてより高頻度で又は最も高頻度で使用されるコドンに置き換えることにより、目的の宿主細胞における発現を増強するための核酸配列の改変方法を指す。様々な種が、特定のアミノ酸のあるコドンについて特定のバイアスを呈する。コドンバイアス(生物間でのコドン使用の違い)は、多くの場合にメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関し、次にはそれが、数ある中でも特に、翻訳されるコドンの特性及び特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられている。細胞において選択のtRNAが優勢であることは、概して、ペプチド合成で最も高頻度に使用されるコドンを反映するものである。従って、コドン最適化に基づき所与の生物における最適な遺伝子発現に合わせて遺伝子を調整することができる。コドン使用表が、例えば、www.kazusa.orjp/codon/で利用可能な「コドン使用データベース(Codon Usage Database)」で容易に利用可能であり、これらの表を幾つもの方法で適合させることができる。Nakamura,Y.,et al.「国際的DNA配列データベースから表にしたコドン使用:2000年の状況(Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases:status for the year 2000)」Nucl.Acids Res.28:292(2000)を参照のこと。特定の配列を特定の宿主細胞における発現にコドン最適化するためのコンピュータアルゴリズムもまた利用可能であり、Gene Forge(Aptagen;Jacobus,PA)などもまた利用可能である。一部の実施形態において、DNA/RNAターゲティングCasタンパク質をコードする配列中の1つ以上のコドン(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50以上、又は全てのコドン)が、特定のアミノ酸について最も高頻度に使用されるコドンに対応する。酵母におけるコドン使用に関しては、http://www.yeastgenome.org/community/codon_usage.shtmlで利用可能なオンライン酵母ゲノムデータベース、又は「酵母におけるコドン選択(Codon selection in yeast)」,Bennetzen and Hall,J Biol Chem.1982 Mar 25;257(6):3026−31が参照される。藻類を含めた植物におけるコドン使用に関しては、「高等植物、緑藻類、及びシアノバクテリアにおけるコドン使用(Codon usage in higher plants,green algae,and cyanobacteria)」,Campbell and Gowri,Plant Physiol.1990 Jan;92(1):1−11;並びに「植物遺伝子におけるコドン使用(Codon usage in plant genes)」,Murray et al,Nucleic Acids Res.1989 Jan 25;17(2):477−98;又は「種々の植物及び藻類系統における葉緑体及びチアネレ遺伝子のコドンバイアスに関する選択(Selection on the codon bias of chloroplast and cyanelle genes in different plant and algal lineages)」,Morton BR,J Mol Evol.1998 Apr;46(4):449−59が参照される。
一部の実施形態において、ベクターは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多いNLSなど、1個以上の核局在化配列(NLS)を含む核酸ターゲティングエフェクタータンパク質、例えばAsCpf1又はそのオルソログ若しくはホモログをコードする。一部の実施形態において、RNAターゲティングエフェクタータンパク質は、アミノ末端又はその近傍に約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多いNLSを含むか、カルボキシ末端又はその近傍に約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多いNLSを含むか、又はこれらの組み合わせ(例えば、アミノ末端にゼロ個又は少なくとも1個以上のNLS及びカルボキシ末端にゼロ個又は1個以上のNLS)である。2個以上のNLSが存在する場合、各々を他と独立して選択してもよく、従って単一のNLSが2つ以上のコピーで存在してもよく、及び/又は1つ以上のコピーで存在する1つ以上の他のNLSとの組み合わせで存在してもよい。一部の実施形態において、NLSは、NLSの最も近いアミノ酸がN末端又はC末端からポリペプチド鎖に沿って約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、50、又はそれより多いアミノ酸の範囲内にあるとき、N末端又はC末端の近傍にあると見なされる。NLSの非限定的な例としては、アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号2)を有するSV40ウイルスラージT抗原のNLS;ヌクレオプラスミンのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号3)を有するヌクレオプラスミンビパルタイトNLS);アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号4)又はRQRRNELKRSP(配列番号5)を有するc−myc NLS;配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号6)を有するhRNPA1 M9 NLS;インポーチン−αのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号7);筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRP(配列番号8)及びPPKKARED(配列番号9);ヒトp53の配列PQPKKKPL(配列番号10);マウスc−abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号11);インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR(配列番号12)及びPKQKKRK(配列番号13);肝炎ウイルスデルタ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号14);マウスMx1タンパク質の配列REKKKFLKRR(配列番号15);ヒトポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号16);及びステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号17)に由来するNLS配列が挙げられる。一般に、1つ以上のNLSは、真核細胞の核における検出可能な量のDNA/RNAターゲティングCasタンパク質の蓄積をドライブするのに十分な強度である。一般に、核局在化活性の強度は、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質内のNLSの数、用いられる詳細なNLS、又はこれらの組み合わせ要因から導き出すことができる。核内での蓄積の検出は任意の好適な技法によって実施し得る。例えば、検出可能なマーカーを核酸ターゲティングタンパク質に融合してもよく、それにより、核の位置を検出する手段(例えば、DAPIなど、核に特異的な染色)と組み合わせるなどして細胞内での位置を可視化してもよい。細胞核はまた、細胞から単離してもよく、次にその内容物を、免疫組織化学、ウエスタンブロット、又は酵素活性アッセイなど、任意の好適なタンパク質検出方法によって分析してもよい。核内における蓄積はまた、核酸ターゲティング複合体形成の効果に関するアッセイ(例えば、標的配列におけるDNA又はRNA切断又は突然変異に関するアッセイ、又はDNA又はRNAターゲティング複合体形成及び/又はDNA又はRNAターゲティングCasタンパク質活性の影響を受けて変化した遺伝子発現活性に関するアッセイ)によるなどして、核酸ターゲティングCasタンパク質又は核酸ターゲティング複合体に曝露されていない対照、又は1つ以上のNLSを欠く核酸ターゲティングCasタンパク質に曝露された対照と比較して間接的に決定してもよい。本明細書に記載されるCpf1エフェクタータンパク質複合体及び系の好ましい実施形態において、コドン最適化Cpf1エフェクタータンパク質は、タンパク質のC末端に付加されたNLSを含む。
一部の実施形態において、核酸ターゲティング系の1つ以上のエレメントの発現をドライブする1つ以上のベクターが宿主細胞に導入され、核酸ターゲティング系のエレメントが発現すると、1つ以上の標的部位において核酸ターゲティング複合体の形成が導かれる。例えば、核酸ターゲティングエフェクター酵素及び核酸ターゲティングガイドRNAが、各々別個のベクター上で別個の調節エレメントに作動可能に連結されてもよい。核酸ターゲティング系の1つ又は複数のRNAは、トランスジェニック核酸ターゲティングエフェクタータンパク質動物又は哺乳動物、例えば、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を構成的に又は誘導性に又は条件的に発現する動物又は哺乳動物;又は本来核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を発現しているか又は核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含有する細胞を有する動物又は哺乳動物へと、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質をインビボでコードし及び発現する1つ又は複数のベクターをそれに事前投与するなどして送達することができる。或いは、同じ又は異なる調節エレメントから発現するエレメントのうちの2つ以上が単一のベクターに組み合わされてもよく、1つ以上の追加のベクターが、第1のベクターに含まれない核酸ターゲティング系の任意の構成成分を提供する。単一のベクターに組み合わされる核酸ターゲティング系エレメントは、あるエレメントが第2のエレメントに対して5’側(その「上流」)に位置し、又はそれに対して3’側(その「下流」)に位置するなど、任意の好適な向きで配置されてもよい。あるエレメントのコード配列は第2のエレメントのコード配列と同じ鎖上又は逆鎖上に位置してもよく、同じ又は逆の方向に向いていてもよい。一部の実施形態において、単一のプロモーターが、1つ以上のイントロン配列内に組み込まれた(例えば、各々が異なるイントロンにあるか、2つ以上が少なくとも1つのイントロンにあるか、又は全てが単一のイントロンにある)、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質及び核酸ターゲティングガイドRNAをコードする転写物の発現をドライブする。一部の実施形態において、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質と核酸ターゲティングガイドRNAとは同じプロモーターに作動可能に連結されていて、そこから発現してもよい。核酸ターゲティング系の1つ以上のエレメントを発現させるための送達媒体、ベクター、粒子、ナノ粒子、製剤及びその構成成分については、国際公開第2014/093622号パンフレット(PCT/US2013/074667号明細書)など、前述の文献で使用されているとおりである。一部の実施形態において、ベクターは制限エンドヌクレアーゼ認識配列などの1つ以上の挿入部位(「クローニング部位」とも称される)を含む。一部の実施形態において、1つ以上の挿入部位(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多い挿入部位)は、1つ以上のベクターの1つ以上の配列エレメントの上流及び/又は下流に位置する。複数の異なるガイド配列を使用すると、単一の発現構築物を用いて細胞内の複数の異なる対応する標的配列へと核酸ターゲティング活性を標的化させることができる。例えば、単一のベクターが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20個以上、又はそれより多いガイド配列を含み得る。一部の実施形態において、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多いかかるガイド配列含有ベクターが提供され、及び任意選択で細胞に送達されてもよい。複数のsgRNAはまた、RNAポリメラーゼIII型プロモーター(例えばU6又はH1 RNA)を用いてアレイフォーマットで発現させることもできる。上記に記載する非コードRNA CRISPR−Cas9成分は、AAVシャトルベクターにクローニングしても、標準方法を用いてAAVシャトルプラスミドにクローニングされる他のエレメント、例えば、レポーター遺伝子、抗生物質耐性遺伝子又は他の配列を含むのに十分なスペースが残る。特定の実施形態において、ガイドRNAは、内因性機構によってプロセシングされ得る(例えば、アレイから切断又は分離され得る)ガイドRNAを含むアレイとして提供される。例えば、Port et al.(http://dx.doi.org/10.1101/046417)は、細胞tRNAプロセシングを利用して複数のガイドRNAを発現させるシステムについて記載している。より詳細には、特定の実施形態において、tRNA配列によるか、又は細胞の内因性tRNAプロセシング系によってプロセシングされ得る(切断され得る)ヌクレオチド配列によって各々が隣と分離されるガイドRNA配列のアレイが提供されてもよい。転写されると、このアレイがプロセシングされて複数のガイドRNAが放出され、それらが例えば1つ以上の標的配列への複数の変化の導入に用いられ得る。アレイから発現するガイドRNAは、任意の所望の組み合わせで提供されてもよい。例えば、同じgRNAの複数のコピー、互いに排他的な複数のgRNA、又は両方の組み合わせがあり得る。これらのガイドを用いて、DNAを切断する活性Cpf1酵素、又はニッカーゼなどの改変Cpf1酵素、又は他の変異Cpf1酵素若しくはタンパク質の発現を導くことができる。特定の実施形態において、複数のガイドRNAを使用して同じ遺伝子又は他の標的DNAに複数の突然変異が導入される。別の実施形態において、複数のガイドRNAを使用して2つ以上の遺伝子又は標的DNAに変化が導入される。
一部の実施形態において、ベクターは、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質をコードする酵素コード配列に作動可能に連結された調節エレメントを含む。核酸ターゲティングエフェクタータンパク質又は1つ又は複数の核酸ターゲティングガイドRNAは別個に送達してもよく;及び有利には、これらのうちの少なくとも1つが粒子複合体によって送達される。核酸ターゲティングエフェクタータンパク質に発現する時間を与えるため、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質mRNAを核酸ターゲティングガイドRNAより先に送達してもよい。核酸ターゲティングエフェクタータンパク質mRNAは核酸ターゲティングガイドRNAの投与の1〜12時間前(好ましくは約2〜6時間前)に投与されてもよい。或いは、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質mRNA及び核酸ターゲティングガイドRNAは一緒に投与されてもよい。有利には、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質mRNA+ガイドRNAの初回投与から1〜12時間後(好ましくは約2〜6時間後)にガイドRNAの第2のブースター用量が投与されてもよい。核酸ターゲティングエフェクタータンパク質mRNA及び/又はガイドRNAの追加の投与は、最も効率的なゲノム改変レベルを達成するのに有用であり得る。
一態様において、本発明は、核酸ターゲティング系の1つ以上のエレメントの使用方法を提供する。本発明の核酸ターゲティング複合体は、標的DNA又はRNA(一本鎖又は二本鎖、線状又はスーパーコイル状)を改変する有効な手段を提供する。本発明の核酸ターゲティング複合体は、非常に多数の細胞型における標的DNA又はRNAの改変(例えば、欠失、挿入、転位、不活性化、活性化)を含め、多岐にわたる有用性を有する。このように本発明の核酸ターゲティング複合体は、例えば、遺伝子療法、薬物スクリーニング、疾患診断、及び予後判定において、広範な適用性を有する。例示的核酸ターゲティング複合体は、目的の標的遺伝子座内の標的配列にハイブリダイズするガイドRNAと複合体を形成したDNA又はRNAターゲティングエフェクタータンパク質を含む。
一実施形態において、本発明は、標的RNAを切断する方法を提供する。本方法は、標的RNAに結合して前記標的DNAの切断を生じさせる核酸ターゲティング複合体を用いて標的RNAを改変するステップを含み得る。ある実施形態において、本発明の核酸ターゲティング複合体は、細胞に導入されると、RNA配列に切断(例えば一本鎖又は二本鎖切断)を作り出し得る。例えば、本方法を用いて細胞内の疾患RNAを切断することができる。例えば、組み込もうとする配列に上流配列及び下流配列が隣接した外因性RNA鋳型が細胞に導入されてもよい。これらの上流及び下流配列は、RNAにおける組込み部位の両側と配列類似性を共有している。必要に応じて、ドナーRNAはmRNAであってもよい。外因性RNA鋳型は、組み込もうとする配列(例えば、突然変異型RNA)を含む。組込み配列は、細胞にとって内因性又は外因性の配列であってもよい。組み込もうとする配列の例としては、タンパク質をコードするRNA又は非コードRNA(例えば、マイクロRNA)が挙げられる。従って、組込み配列は、1つ又は複数の適切な制御配列に作動可能に連結され得る。或いは、組込み配列が調節機能を提供し得る。外因性RNA鋳型中の上流及び下流配列は、目的のRNA配列とドナーRNAとの間の組換えを促進するように選択される。上流配列は、標的組込み部位の上流のRNA配列と配列類似性を共有するRNA配列である。同様に、下流配列は、標的組込み部位の下流のRNA配列と配列類似性を共有するRNA配列である。外因性RNA鋳型中の上流及び下流配列は、標的RNA配列と75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性を有し得る。好ましくは、外因性RNA鋳型中の上流及び下流配列は、標的RNA配列と約95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。一部の方法において、外因性RNA鋳型中の上流及び下流配列は、標的RNA配列と約99%又は100%の配列同一性を有する。上流又は下流配列は、約20bp〜約2500bp、例えば、約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、又は2500bpを含み得る。一部の方法において、例示的上流又は下流配列は、約200bp〜約2000bp、約600bp〜約1000bp、又はより詳細には約700bp〜約1000bpを有する。一部の方法において、外因性RNA鋳型はマーカーを更に含み得る。かかるマーカーは標的組込みのスクリーニングを容易にし得る。好適なマーカーの例としては、制限部位、蛍光タンパク質、又は選択可能マーカーが挙げられる。本発明の外因性RNA鋳型は組換え技術を用いて構築することができる(例えば、Sambrook et al.,2001及びAusubel et al.,1996を参照)。外因性RNA鋳型を組み込むことによる標的RNAの改変方法では、核酸ターゲティング複合体によってDNA又はRNA配列に切断(例えば、二本鎖又は一本鎖DNA又はRNAにおける二本鎖又は一本鎖切断)が導入され、外因性RNA鋳型との相同組換えによってこの切断が修復されると、鋳型がRNA標的に組み込まれる。二本鎖切断の存在が鋳型の組込みを促進する。他の実施形態において、本発明は、真核細胞におけるRNAの発現を改変する方法を提供する。本方法は、DNA又はRNA(例えば、mRNA又はプレmRNA)に結合する核酸ターゲティング複合体を用いて標的ポリヌクレオチドの発現を増加又は減少させるステップを含む。一部の方法では、標的RNAを不活性化させて細胞の発現の改変を生じさせることができる。例えば、RNAターゲティング複合体が細胞内の標的配列に結合すると、標的RNAが不活性化され、そのためその配列は翻訳されないか、コードされたタンパク質が産生されないか、又は配列が野生型配列のようには機能しなくなる。例えば、タンパク質又はマイクロRNAをコードする配列を不活性化して、タンパク質又はマイクロRNA又はプレマイクロRNA転写物が産生されないようにし得る。RNAターゲティング複合体の標的RNAは、真核細胞にとって内因性又は外因性の任意のRNAであってもよい。例えば、標的RNAは、真核細胞の核に存在するRNAであってもよい。標的RNAは、遺伝子産物(例えばタンパク質)をコードする配列(例えば、mRNA又はプレmRNA)又は非コード配列(例えば、ncRNA、lncRNA、tRNA、又はrRNA)であってもよい。標的RNAの例としては、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列、例えば、生化学的シグナル伝達経路関連RNAが挙げられる。標的RNAの例としては、疾患関連RNAが挙げられる。「疾患関連」RNAは、非疾患対照の組織又は細胞と比較して罹患組織に由来する細胞において翻訳産物を異常なレベルで、又は異常な形態で産生している任意のRNAを指す。それは異常に高いレベルで発現するようになる遺伝子から転写されるRNAであってもよく;それは異常に低いレベルで発現するようになる遺伝子から転写されるRNAであってもよく、ここで発現の変化は疾患の発生率及び/又は進行と相関する。疾患関連RNAはまた、疾患の病因に直接関与するか、又はそれに関与する1つ又は複数の遺伝子との連鎖不平衡がある1つ又は複数の突然変異又は遺伝的変異を有する遺伝子から転写されるRNAも指す。翻訳産物は既知であっても又は未知であってもよく、及び正常レベルであっても又は異常レベルであってもよい。RNAターゲティング複合体の標的RNAは、真核細胞にとって内因性又は外因性の任意のRNAであってもよい。例えば、標的RNAは、真核細胞の核に存在するRNAであってもよい。標的RNAは、遺伝子産物(例えばタンパク質)をコードする配列(例えば、mRNA又はプレmRNA)又は非コード配列(例えば、ncRNA、lncRNA、tRNA、又はrRNA)であってもよい。
一部の実施形態において、本方法は、核酸ターゲティング複合体を標的DNA又はRNAに結合させて前記標的DNA又はRNAの切断を生じさせ、それにより標的DNA又はRNAを改変するステップを含むことができ、ここで核酸ターゲティング複合体は、前記標的DNA又はRNA内の標的配列にハイブリダイズするガイドRNAと複合体を形成した核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含む。一態様において、本発明は、真核細胞におけるDNA又はRNAの発現を改変する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、核酸ターゲティング複合体をDNA又はRNAに結合させて、前記結合により前記DNA又はRNAの発現の増加又は減少を生じさせるステップを含み;ここで核酸ターゲティング複合体は、ガイドRNAと複合体を形成した核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含む。同様の考察及び条件が、標的DNA又はRNAを改変する方法にも上記のとおり適用される。実際上、これらの試料採取、培養及び再導入の選択肢は本発明の全態様に適用される。一態様において、本発明は、真核細胞の標的DNA又はRNAを改変する方法を提供し、これはインビボ、エキソビボ又はインビトロであってもよい。一部の実施形態において、本方法は、ヒト又は非ヒト動物から細胞又は細胞集団を試料採取するステップ、及び1つ又は複数の細胞を改変するステップを含む。培養は任意の段階でエキソビボで行われ得る。この1つ又は複数の細胞が、更には非ヒト動物又は植物に再導入されてもよい。再導入される細胞について、細胞は幹細胞であることが特に好ましい。
実際、本発明の任意の態様において、核酸ターゲティング複合体は、標的配列にハイブリダイズするガイドRNAと複合体を形成した核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含み得る。
本発明は、核酸ターゲティング系及びその構成成分に関係した、DNA又はRNA配列ターゲティングが関わる遺伝子発現の制御に用いられる系、方法及び組成物のエンジニアリング及び最適化に関する。有利な実施形態において、エフェクター酵素は、Cpf1、より具体的にはAsCpf1である。本方法の利点は、CRISPR系がオフターゲット結合及びその結果として生じる副作用を最小限に抑え、又はそれを回避することである。これは、標的DNA又はRNAに対して高度な配列特異性を有するように構成された系を用いて達成される。
核酸ターゲティング複合体又は系に関して、好ましくは、crRNA配列は1つ以上のステムループ又はヘアピンを有し、30ヌクレオチド長以上、40ヌクレオチド長以上、又は50ヌクレオチド長以上であり;crRNA配列は10〜30ヌクレオチド長であり、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質はCpf1酵素である。特定の実施形態において、crRNA配列は42〜44ヌクレオチド長であり、及び核酸ターゲティングCasタンパク質は野兎病菌亜種ノビシダ(Francisella tularensis subsp.novocida)U112のCpf1である。特定の実施形態において、crRNAは、19ヌクレオチドのダイレクトリピート及び23〜25ヌクレオチドのスペーサー配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、及び核酸ターゲティングCasタンパク質は野兎病菌亜種ノビシダ(Francisella tularensis subsp.novocida)U112のCpf1である。
CRISPR−Cpf1の結晶化及び構造
CRISPR−Cpf1の結晶化及び結晶構造の特徴付け:本発明の結晶は、バッチ法、液体架橋法、透析法、蒸気拡散法、及びハンギングドロップ法を含むタンパク質結晶学技術によって得ることができる。一般に、本発明の結晶は、実質的に純粋なCRISPRCpf1及びそれが結合する核酸分子を、沈殿に必要な濃度よりも僅かに低い濃度の沈殿剤を含有する水性緩衝液中に溶解することによって成長させる。沈殿条件が生じるよう制御された蒸発によって水を除去し、結晶の成長が止まるまでこの条件が維持される。
結晶、結晶構造、及び原子構造座標の使用:本発明の結晶、特にそれから得られる原子構造座標には、広範な用途がある。結晶及び構造座標は、CRJSPR−Cpf1に結合する化合物(核酸分子)、及び特定の化合物(核酸分子)に結合し得るCRISPR−Cpf1を同定するのに特に有用である。従って、本明細書に記載される構造座標は、追加の合成又は突然変異CRISPR−Cpf1、Cpf1、ニッカーゼ、結合ドメインの結晶構造を決定する際に位相モデルとして使用することができる。本明細書の結晶構造表及び/又は図中にあるとおりの核酸分子と複合体を形成したCRISPR−Cpf1の結晶構造の提供により、当業者にCRISPR−Cpf1の作用機構についての詳細な洞察がもたらされる。この洞察から、リプレッサー又はアクチベーターなどの機能性基を付加することによるなどの、改変CRISPR−Cpf1を設計する手段が得られる。リプレッサー又はアクチベーターなどの機能性基はCRISPR−Cpf1のN末端又はC末端に付加することができるが、結晶構造が示すところによれば、N末端は覆われている又は隠れているように見え、一方でC末端の方がリプレッサー又はアクチベーターなどの機能性基に利用し易い。更に、結晶構造が示すところによれば、CRISPR−Cpf1(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))残基約534〜676の間に、アクチベーター又はリプレッサーなどの機能性基を付加するのに適した可動性ループが存在する。付加は、リンカー、例えば、可動性グリシン−セリン(GlyGlyGlySer)若しくは(GGGS)3又は強固なαヘリカルリンカー、例えば(Ala(GluAlaAlaAlaLys)Ala)を介することができる。可動性ループに加えて、ヌクレアーゼ又はH3領域、H2領域、及びヘリカル領域も存在する。「へリックス」又は「ヘリカル」は、限定されないがαへリックスを含め、当該技術分野において公知のへリックスを意味する。加えて、へリックス又はヘリカルという用語は、N末端ターンを有するc末端ヘリカルエレメントを指して用いられることもある。
核酸分子と複合体を形成したCRISPR−Cpf1の結晶構造の提供により、CRISPR−Cpf1に結合し得る化合物に関する新規の薬物又は化合物創薬、同定、及び設計手法が可能となり、従って本発明は、多細胞生物、例えば、藻類、植物、無脊椎動物、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類;例えば、栽培植物、家畜(例えば、ブタ、ウシ、ニワトリなどの生産動物;ネコ、イヌ、齧歯類(ウサギ、スナネズミ、ハムスター)などのペット動物;マウス、ラットなどの実験動物)、及びヒトの病態又は疾患の診断、治療、又は予防に有用なツールを提供する。従って、本明細書には、CRISPR−Cpf1複合体を合理的に設計するコンピュータベースの方法が提供される。この合理的設計は:本明細書の結晶構造表及び/又は図中の一部又は全ての(例えば、構造の少なくとも2個以上、例えば、少なくとも5個、有利には少なくとも10個、より有利には少なくとも50個、更により有利には少なくとも100個の原子)座標によって定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の構造を提供すること;それに関してCRISPR−Cpf1複合体が所望される所望核酸分子の構造を提供すること;及び本明細書の結晶構造表及び/又は図中の一部又は全ての座標によって定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の構造を所望核酸分子にフィッティングすること(前記フィッティングには、所望核酸分子が関わる1つ又は複数のCRISPR−Cpf1複合体について前記所望核酸分子が結合するように本明細書の結晶構造表及び/又は図中の一部又は全ての座標によって定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の推定上の1つ又は複数の改変を達成することが含まれる)を含み得る。この方法又はこの方法のフィッティングは、活性部位又は結合領域の近傍をモデル化するため、活性部位又は結合領域の近傍にある本明細書の結晶構造表及び/又は図中の一部又は全ての座標(例えば、構造の少なくとも2個以上、例えば、少なくとも5個、有利には少なくとも10個、より有利には少なくとも50個、更により有利には少なくとも100個の原子)によって定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の目的の原子座標を使用することができる。これらの座標を用いて空間を定義することができ、次にその空間が所望又は候補核酸分子に対して「インシリコ」でスクリーニングされる。従って、本発明は、CRISPR−Cpf1複合体を合理的に設計するコンピュータベースの方法を提供する。この方法は:本明細書の結晶構造表の少なくとも2つの原子の座標(「選択された座標」)を提供すること;候補又は所望核酸分子の構造を提供すること;及び候補の構造を選択された座標に対してフィッティングすることを含み得る。このようにして、当業者は機能性基及び候補又は所望核酸分子をフィッティングすることもできる。例えば、本明細書の結晶構造表及び/又は図中の一部又は全ての(例えば、構造の少なくとも2個以上、例えば、少なくとも5個、有利には少なくとも10個、より有利には少なくとも50個、更により有利には少なくとも100個の原子)座標によって定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の構造を提供すること;それに関してCRISPR−Cpf1複合体が所望される所望核酸分子の構造を提供すること;本明細書の結晶構造表及び/又は図中の一部又は全ての座標によって定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の構造を所望核酸分子にフィッティングすること(前記フィッティングには、所望核酸分子が関わる1つ又は複数のCRISPR−Cpf1複合体について前記所望核酸分子が結合するように本明細書の結晶構造表及び/又は図中の一部又は全ての座標によって定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の推定上の1つ又は複数の改変を達成することが含まれる);1つ又は複数の推定フィットCRISPR−Cpf1−所望核酸分子複合体を選択すること、かかる1つ又は複数の推定フィットCRISPR−Cpf1−所望核酸分子複合体を機能性基に対して、例えば、機能性基(例えば、アクチベーター、リプレッサー)を位置させる場所(例えば、可動ループ内の位置)及び/又は機能性基を位置させる場所を作るための1つ又は複数の推定フィットCRISPR−Cpf1−所望核酸分子複合体の推定上の改変に関してフィッティングすること。示唆したとおり、本発明は、活性部位又は結合領域の近傍にある本明細書の結晶構造表及び/又は図中の座標を用いて実施することができ;従って、本発明の方法は、CRISPR−Cpf1複合体の目的のサブドメインを利用することができる。本明細書に開示される方法は、ドメイン又はサブドメインの座標を用いて実施することができる。本方法は、任意選択で、「インシリコ」出力から候補又は所望核酸分子及び/又はCRISPR−Cpf1系を合成すること、及び「ウェットな」又は実際の候補又は所望核酸分子に結合した「ウェットな」又は実際のCRISPR−Cpf1系に連結された「ウェットな」又は実際の機能性基の結合及び/又は活性を試験することを含み得る。本方法は、「インシリコ」出力からCRISPR−Cpf1系(機能性基を含む)を合成すること、及びインビボで「ウェットな」又は実際の候補又は所望核酸分子に結合した「ウェットな」又は実際のCRISPR−Cpf1系に連結された「ウェットな」又は実際の機能性基の結合及び/又は活性を試験すること、例えば、「インシリコ」出力からの、機能性基を含む「ウェットな」又は実際のCRISPR−Cpf1系を、所望又は候補核酸分子を含む細胞と接触させること含み得る。これらの方法は、所望の反応、例えば、症状又は病態又は疾患の軽減について、細胞又は細胞を含む生物を観察することを含み得る。候補核酸分子の構造を提供するステップは、核酸分子データ、例えば、病態又は疾患に関するこのようなデータを含むデータベースをコンピュータでスクリーニングすることにより化合物を選択することを含み得る。候補核酸分子の結合に関する3D記述子は、本明細書の結晶構造からのCRISPR−Cpf1複合体又はそのドメイン若しくは領域の構造及び化学的性質から導き出される幾何学的及び機能的制約から導き出され得る。事実上、この記述子は、CRISPR−Cpf1を候補又は所望核酸分子に結合するための本明細書のCRISPR−Cpf1複合体結晶構造の1つ又は複数の仮想改変のタイプであり得る。次にこの記述子を使用して核酸分子データベースに問い合わせて、記述子に対して良好な結合性を有すると推定されるデータベースの核酸分子を確認し得る。次に記述子及び良好な結合性を有すると推定される核酸分子を用いて本明細書の「ウェットな」ステップを実施することができる。
「フィッティング」は、候補の少なくとも1つの原子とCRISPR−Cpf1複合体の少なくとも1つの原子との間の相互作用を自動的又は半自動的手段によって決定すること、及びかかる相互作用がどの程度安定しているかを計算することを意味し得る。相互作用には、電荷及び立体的要因などによって生じる引力、斥力が含まれ得る。「サブドメイン」は、少なくとも1つ、例えば、1、2、3、又は4つの完全な二次構造要素を意味し得る。CRISPR−Cpf1の特定の領域又はドメインは、本明細書の結晶構造表及び図中に同定されるものを含む。
いずれにしろ、CRISPR−Cpf1(AsCpf1)複合体の三次元構造の決定により、様々な核酸分子に結合するCRISPR−Cpf1系の改変、互いに相互作用し得る、CRISPR−Cpf1と相互作用し得る(例えば、機能の自己活性化及び/又は自己終結をもたらす誘導系)、核酸分子と相互作用し得る様々な機能性基の任意の1つ以上に連結されるようなCRISPR−Cpf1系の改変(例えば、機能性基は、転写リプレッサー、転写アクチベーター、ヌクレアーゼドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼ、タンパク質トランスフェラーゼ、タンパク質デアセチラーゼ、タンパク質メチルトランスフェラーゼ、タンパク質デアミナーゼ、タンパク質キナーゼ、及びタンパク質ホスファターゼからなる群から選択され得る調節性又は機能性ドメインであってもよく;及び、一部の態様において、機能性ドメインは後成的調節因子である;例えば、Zhang et al.、米国特許第8,507,272号明細書を参照されたく、この場合もまた、それ及び本明細書の全ての引用文献及び全ての出願引用文献が、本明細書によって参照により本明細書に援用されることが言及される)、Cpf1の改変、新規ニッカーゼによるなどの、CRISPR−Cpf1(例えば、AsCpf1)に結合する新規の且つ特異的な核酸分子の設計並びに新規のCRISPR−Cpf1系の設計の基礎が提供される)。実際、本明細書によるCRISPR−Cpf1(AsCpf1)結晶構造には多様な用途がある。例えば、CRISPR−Cpf1(AsCpf1)結晶構造の三次元構造の情報から、コンピュータモデリングプログラムを使用して、結合部位など、可能性のある又は確認された部位と相互作用することが予想される種々の分子又はCRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)の他の構造的若しくは機能的特徴を設計又は同定し得る。潜在的に結合する化合物(「結合体」)は、ドッキングプログラムを使用したコンピュータモデリングを用いて調べることができる。ドッキングプログラムは公知である;例えばGRAM、DOCK又はAUTODOCK(Walters et al.Drug Discovery Today,vol.3,no.4(1998),160−178、及びDunbrack et al.Folding and Design 2(1997),27−42を参照)。この手順には、潜在的な結合体のコンピュータフィッティングにより、その潜在的な結合体の形状及び化学構造がCRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)にいかに良好に結合するかを確かめることが含まれ得る。CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)の活性部位又は結合部位をコンピュータ支援下で手動で調べることが行われてもよい。GRID(P.Goodford,J.Med.Chem,1985,28,849−57)−様々な機能性基を有する分子間の可能性の高い相互作用部位を決定するプログラム−などのプログラムもまた、結合する化合物の部分的構造を予測するための活性部位又は結合部位の分析に用いられ得る。コンピュータプログラムを用いると、2つの結合パートナー、例えばCRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)と候補核酸分子又は核酸分子と候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)の引力、斥力又は立体障害を推定することができ;及び本明細書によるCRISPR−Cpf1結晶構造(AsCpf1)によれば、かかる方法が可能となる。概して、フィットが緊密であるほど立体障害が減り、及び引力が大きくなるためより強力な潜在的結合体となり、なぜならこれらの特性はより緊密な結合定数と一致するからである。更に、候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)の設計において特異性が高いほど、オフターゲット分子ともまた相互作用する可能性が低くなる。また、「ウェットな」方法も本願によって可能となる。例えば、ある態様において、本明細書には、候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)に結合した候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)の結合体(例えば標的核酸分子)の構造を決定する方法が提供され、前記方法は、(a)本明細書に記載されるとおりの候補CRISPR−Cpf1系(AsCpf1)の第1の結晶又は候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)の第2の結晶を提供すること、(b)複合体が形成され得る条件下で第1の結晶又は第2の結晶を前記結合体と接触させること;及び(c)前記候補(例えば、CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)又はCRISPR−Cpf1系(AsCpf1)複合体)の構造を決定することを含む。第2の結晶は本質的に本明細書で考察される同じ座標を有し得るが、CRISPR−Cpf1系における僅かな変化により、この結晶は異なる空間群で形成され得る。
更に本明細書には、「インシリコ」方法に代えて又は加えて、結合活性を有する化合物を選択するための結合体(例えば標的核酸分子)と候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)、又は候補結合体(例えば標的核酸分子)とCRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)、又は候補結合体(例えば標的核酸分子)と候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)(上述の1つ又は複数のCRISPR−Cpf1系は1つ以上の機能性基を含む又は含まない)のハイスループットスクリーニングを含め、他の「ウェットな」方法が提供される。結合活性を示す結合体とCRISPR−Cpf1系との対を選択し、X線解析のため、例えば共結晶化によるか又は浸漬によって、本明細書の構造を有するCRISPR−Cpf1結晶で更に結晶化することができる。得られたX線構造は、種々の目的で、例えばオーバーラップ範囲に関して本明細書の結晶構造表のもの及び図中の情報と比較し得る。結合体と本明細書のCRISPR−Cpf1結晶構造データの対に基づき好ましいフィッティング特性、例えば強い予想引力を有するものを決定することにより結合体とCRISPR−Cpf1系の可能性のある対を設計、同定、又は選択したところで、次にこれらの可能性のある対を活性に関して「ウェットな」方法によりスクリーニングすることができる。結果として、ある態様では、本方法は:可能性のある対を入手する又は合成すること;及び結合体(例えば標的核酸分子)と候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)、又は候補結合体(例えば標的核酸分子)とCRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)、又は候補結合体(例えば標的核酸分子)と候補CRISPR−Cpf1系(例えばAsCpf1)(上述の1つ又は複数のCRISPR−Cpf1系は1つ以上の機能性基を含む又は含まない)を接触させて結合能力を決定することを含み得る。後者のステップでは、接触は有利には、機能を決定する条件下である。かかるアッセイの実施に代えて、又は加えて、本方法は:前記接触から1つ又は複数の複合体を入手する又は合成すること、及びこの1つ又は複数の複合体を例えばX線回折又はNMR又は他の手段によって分析して結合又は相互作用能力を決定することを含み得る。次に結合に関して詳細な構造情報を入手してもよく、その情報に照らして候補CRISPR−Cpf1系又はその構成成分の構造又は機能を調整することができる。これらのステップは必要に応じて反復及び再反復され得る。それに代えて又は加えて、上述の方法からの又は上述の方法における潜在的なCRISPR−Cpf1系は、それにより所望の結果(例えば症状の軽減、治療)が得られるかどうかを含め、機能を確認又は立証するため、限定されるものではないが、生物(非ヒト動物及びヒトを含む)への投与によることを含め、インビボで核酸分子と一緒にし得る。
更に本明細書には、本明細書の結晶構造表の構造座標及び図中の情報を用いることにより、未知の構造の1つ又は複数のCRISPR−Cpf1系又は複合体の三次元構造を決定する方法が提供される。例えば、未知の結晶構造のCRISPR系又は複合体についてX線結晶学的データ又はNMR分光分析データが提供される場合、本明細書の結晶構造表及び図中に定義されるとおりのCRISPR−Cpf1複合体の構造を用いて当該のデータを解釈することにより、X線結晶学の場合における位相モデリングのような技術によって未知の系又は複合体の見込まれる構造を提供し得る。従って、方法は:未知の結晶構造を有するCRISPR−cas系又は複合体の表現を本明細書の結晶構造のCRISPR−Cpf1系及び複合体の類似の表現と相同又は類似領域(例えば相同又は類似配列)が一致するようにアラインメントすること;対応する領域(例えば配列)の本明細書の結晶構造表及び/又は図中に定義されるとおりの構造に基づき未知の結晶構造のCRISPR−cas系又は複合体の一致した相同又は類似領域(例えば配列)の構造をモデル化すること;及び、未知の結晶構造について前記一致した相同領域の構造を実質的に維持するコンホメーションを(例えば、低エネルギーのコンホメーションが形成されるように有利な相互作用が形成されなければならないことを考慮して)決定することを含み得る。「相同領域」は、例えばアミノ酸に関しては、同一又は同様の例えば脂肪族、芳香族、極性、負電荷、又は正電荷の側鎖化学基を有する2つの配列中のアミノ酸残基を表す。核酸分子に関する相同領域は、少なくとも85%、又は86%、又は87%、又は88%、又は89%、又は90%、又は91%、又は92%、又は93%、又は94%、又は95%)、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%の相同性又は同一性を含み得る。同一領域及び類似領域は、時に当業者によってそれぞれ「不変異の」及び「保存された」と記載されることもある。有利には、第1及び第3のステップはコンピュータモデリングによって実施される。ホモロジーモデリングは当業者に周知の技術である(例えば、Greer,Science vol.228(1985)1055、及びBlundell et al.Eur J Biochem vol 172(1988),513を参照)。本明細書におけるCRISPR−Cpf1結晶構造の保存領域のコンピュータ表現及び未知の結晶構造のCRISPR−cas系のコンピュータ表現は、未知の結晶構造のCRISPR−cas系の結晶構造の予測及び決定に役立つ。更にまた、インシリコでCRISPR−Cpf1結晶構造を利用する本明細書に記載される態様は、本明細書のCRISPR−Cpf1結晶構造を用いることにより推測される新規CRISPR−cas結晶構造にも等しく適用し得る。このように、CRISPR−cas結晶構造のライブラリを得ることができる。従って、本明細書には、合理的CRISPR−cas系設計が提供される。例えば、CRISPR−cas系又は複合体のコンホメーション又は結晶構造が本明細書に記載の方法によって決定されると、かかるコンホメーションを本明細書におけるコンピュータベースの方法で用いて、結晶構造がなお未知である他のCRISPR−cas系又は複合体のコンホメーション又は結晶構造を決定し得る。これら全ての結晶構造からのデータがデータベースにあってもよく、本明細書の方法が、ライブラリ中の1つ以上の結晶構造と比べた本明細書の結晶構造又はその一部が関わる本明細書の比較を有することによってよりロバストなものとなり得る。本発明は、CRISPR−cas系又は複合体の構造生成及び/又は合理的設計の実施を意図したコンピュータシステムなどのシステムを更に含む。このシステムは:本明細書の結晶構造表及び図に係る又はそれから例えばモデリングによって導出される原子座標データであって、CRISPR−cas系若しくは複合体又はその少なくとも1つのドメイン若しくはサブドメインの三次元構造を定義付けるデータ、又はその構造因子データであって、本明細書の結晶構造表及び図の原子座標データから導出することが可能な構造因子データを含み得る。本明細書にはまた、本明細書の結晶構造表及び/又は図に係る又はそれから例えばホモロジーモデリングによって導出される原子座標データであって、CRISPR−cas系若しくは複合体又はその少なくとも1つのドメイン若しくはサブドメインの三次元構造を定義付けるデータ、又はその構造因子データであって、本明細書の結晶構造表及び/又は図の原子座標データから導出することが可能な構造因子データを含むコンピュータ可読媒体も提供される。「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータによって直接読み出してアクセスすることのできる任意の媒体を指し、限定されないが:磁気記憶媒体;光学記憶媒体;電気記憶媒体;クラウドストレージ及びこれらのカテゴリのハイブリッドが含まれる。かかるコンピュータ可読媒体を提供することにより、モデリング又は他の「インシリコ」方法のため原子座標データにルーチン的にアクセスすることができる。更に本明細書には、インターネット又はグローバル通信/コンピュータネットワーク経由で例えば会員登録方式でかかるコンピュータ可読媒体へのアクセスを提供することにより事業を行う方法が包含され;又はコンピュータシステムは、会員登録方式でユーザーに利用可能であってもよい。「コンピュータシステム」は、本発明の原子座標データの解析に用いられるハードウェア手段、ソフトウェア手段、及びデータ記憶手段を指す。本発明のコンピュータベースのシステムの最小限のハードウェア手段は、中央演算処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータ記憶手段を含み得る。望ましくは、構造データを可視化するためディスプレイ又はモニタが提供される。更に本明細書には、本明細書に記載される任意の方法又はそのステップで得られた情報又は本明細書に記載される任意の情報を、例えば、遠隔通信、電話、マスコミュニケーション、マスメディア、プレゼンテーション、インターネット、電子メールなどによって伝達する方法が包含される。本明細書に記載される結晶構造を分析して、CRISPR−cas系又は複合体の1つ又は複数のフーリエ電子密度図を作成することができる;有利には、三次元構造は、本明細書の結晶構造表及び/又は図に係る原子座標データによって定義されるとおりである。フーリエ電子密度図はX線回折パターンに基づき計算することができる。次にこれらの密度図を用いて結合又は他の相互作用の諸側面を決定することができる。電子密度図は、CCP4コンピュータパッケージ(Collaborative Computing Project,No.4.The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography,Acta Crystallographica,D50,1994,760−763)のプログラムなど、公知のプログラムを用いて計算することができる。密度図の可視化及びモデル構築には、「QUANTA」(1994,San Diego,Calif.:Molecular Simulations,Jones et al.,Acta Crystallography A47(1991),110−119)などのプログラムを使用することができる。
本明細書の結晶構造表はCRISPR−Cpf1(アシダミノコッカス属(Acidaminococcus))の原子座標データを提供し、各原子を固有番号によって列挙する;各アミノ酸残基の化学元素及びその位置(電子密度図及び抗体配列比較によって決定されるとおり)、元素が位置するアミノ酸残基、鎖の識別名、残基の数、それぞれの原子の原子位置(オングストローム単位)を結晶軸に対して定義する座標(例えば、X,Y,Z)、それぞれの位置における原子の占有率、「B」、原子中心の周りの原子の動きを説明する等方性変位パラメータ(オングストローム単位)、及び原子番号。本明細書の本文及び図もまた参照のこと。
更なる態様において、本発明は、i)CRISPR−Cpf1系又はその一部の範囲内にフィットする又はそれに結合する潜在的化合物を同定又は設計する、コンピュータ支援下であってよい方法を提供し、この方法は:a)結晶構造表のCRISPR−Cpf1系の少なくとも2つの原子の座標を提供するステップ、b)i)CRISPR−Cas9系に対して又はその範囲内に結合するための、又はii)CRISPR−Cas9系の一部分を操作するための候補分子の構造を提供するステップ、c)候補分子の構造をCRISPR−Cas9系の少なくとも2つの原子にフィッティングするステップであって、フィッティングが、候補分子の1つ以上の原子とCRISPR−SpCas9系の原子との間の相互作用を決定することを含むステップ、及びd)候補分子がCRISPR−Cas9系に対して又はその範囲内に結合すると予想される場合、その候補分子を選択するステップを含む。本方法の特定の実施形態において、結晶構造表のCpf1は908位にアスパラギン酸のアミノ酸置換を更に含む。特定の実施形態において、候補分子は結晶構造表のCRISPR−Cpf1系の原子を含む。ある実施形態において、候補分子はcrRNA:DNAヘテロ二重鎖の原子を含み、これはcrRNA:DNAヘテロ二重鎖の原子をCpf1の原子と比較することを含む。ある実施形態において、Cpf1の原子はRECローブの原子及び/又はNUCローブの原子を含む。ある実施形態において、Cpf1の原子は、REC1ドメインの原子、REC2ドメインの原子、及び/又はRuvCドメインの原子を含む。ある実施形態において、候補分子はcrRNA:DNAヘテロ二重鎖のPAM遠位領域の原子を含み、これはcrRNA:DNAヘテロ二重鎖のPAM遠位領域の原子をREC1−REC2ドメインの原子と比較することを含む。ある実施形態において、候補分子はcrRNA:DNAヘテロ二重鎖のPAM近位領域の原子を含み、これはcrRNA:DNAヘテロ二重鎖のPAM近位領域の原子をWED−REC1−RuvCドメインの原子と比較することを含む。特定の非限定的な実施形態において、Cpf1の原子は、R176、R192、G783、及び/又はR951の原子を含む。
ある実施形態において、候補分子はPAM二重鎖の原子を含み、これはWED−REC及びPIドメインによって形成される溝の原子と比較される。特定の非限定的な実施形態において、候補分子はPAMの原子を含み、これはCpf1のThr167、Lys607、Lys548、Pro599、及び/又はMet604の原子と比較される。
特定の実施形態において、候補分子は標的DNA鎖及び/又は非標的DNA鎖の原子を含み、これは標的DNA鎖及び/又は非標的DNA鎖の原子をCpf1の原子と比較することを含む。候補分子が標的DNA鎖の原子を含む特定の実施形態において、標的DNA鎖の原子はCpf1 Nucドメインの原子と比較される。候補分子が標的DNA鎖の原子を含む特定の実施形態において、標的DNA鎖の原子はCpf1のArg1226、Ser1228、及び/又はAsp1235の原子と比較される。候補分子が非標的DNA鎖の原子を含む特定の実施形態において、非標的DNA鎖の原子はCpf1 RuvCドメインの原子と比較される。候補分子が非標的DNA鎖の原子を含む特定の実施形態において、非標的DNA鎖の原子はCpf1のAsp908、Trp958、Glu993、及び/又はAsp1263の原子と比較される。特定のかかる実施形態において、Leu467、Leu471、Tyr514、Arg518、Ala521及び/又はThr522の原子もまた比較される。
ある実施形態において、候補分子はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の原子を含み、この原子はCpf1のPAM相互作用(PI)ドメインの原子と比較される。
ある実施形態において、候補分子はcrRNAの5’−ハンドルの原子を含み、この原子はWEDドメインの原子及び/又はRuvCドメインの原子と比較される。
本発明の特定の実施形態において、候補分子は合成され、結合又は活性に関して試験される。
特定の実施形態において、候補分子は細胞におけるDNA分子の発現の変化に関してCRISPR−Cpf1系で試験される。
特定の実施形態において、候補分子の構造の比較又はフィッティングには、CRISPR−Cpf1複合体の少なくとも2個の原子、又は少なくとも5個の原子、又は少なくとも10個の原子、又は少なくとも50個の原子、又は少なくとも100個の原子を含む原子座標が関わる。
本発明の特定の実施形態において、候補分子は、Cpf1と、転写リプレッサー、転写活性化因子、ヌクレアーゼドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼ、タンパク質アセチルトランスフェラーゼ、タンパク質デアセチラーゼ、タンパク質メチルトランスフェラーゼ、タンパク質デアミナーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質ホスファターゼ、又は後成的調節因子との原子を含む。
更なる態様において、本発明は、CRISPR−Cpf1系又はその機能性の一部分にフィットする又はそれに結合するように潜在的化合物を同定又は設計するためのコンピュータ支援方法又はその逆(所望の化合物に結合するように潜在的CRISPR−Cpf1系又はその機能性の一部分を同定又は設計するためのコンピュータ支援方法)又は潜在的CRISPR−Cpf1系を(例えば、CRISPR−Cpf1系のうち操作可能な範囲の予想−例えば、結晶構造データに基づくか又はCpf1オルソログのデータに基づく−に関連して、又はアクチベーター又はリプレッサーなどの機能性基をCRISPR−Cpf1系のどこに付加し得るかに関連して、又はCpf1トランケーションに関して又はニッカーゼ設計に関して)同定又は設計するためのコンピュータ支援方法を含み、前記方法は、
プロセッサとデータ記憶システムと入力装置と出力装置とを含むコンピュータシステム、例えばプログラミングされたコンピュータを使用した、以下のステップ:
(a)例えば、CRISPR−Cpf1系結合ドメインにおける、又はそれに代えて又は加えて、Cpf1オルソログ間の差異に基づき異なるドメインにおける、実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、CRISPR−Cpf1結晶構造からの又はそれに関連する原子のサブセットの三次元座標を含むデータを、又はCpf1に関して又はニッカーゼに関して又は機能性基に関して、任意選択で1つ又は複数のCRISPR−Cpf1系複合体からの構造情報と共に、プログラミングされたコンピュータに前記入力装置を用いて入力し、それによりデータセットを作成するステップ;
(b)前記プロセッサを使用して、前記コンピュータデータ記憶システムに記憶された構造、例えば、CRISPR−Cpf1系に結合するか若しくは推定上結合する又はそれに結合することが所望される化合物の構造のコンピュータデータベースと、又はCpf1オルソログに関して(例えば、Cpf1として又はCpf1オルソログ間で異なるドメイン又は領域に関して)又は実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、CRISPR−Cpf1結晶構造に関して又はニッカーゼに関して又は機能性基に関して、前記データセットを比較するステップ;
(c)コンピュータ方法を用いて、1つ又は複数の構造−例えば、所望の構造に結合し得るCRISPR−Cpf1構造、特定のCRISPR−Cpf1構造に結合し得る所望の構造、CRISPR−Cpf1結晶構造の他の部分からのデータ及び/又はCpf1オルソログからのデータに例えば基づき操作され得るCRISPR−Cpf1系の一部分、トランケート型Cpf1、新規ニッカーゼ又は特定の機能性基、又は機能性基を付加する位置又は機能性基−CRISPR−Cpf1系を前記データベースから選択するステップ;
(d)コンピュータ方法を用いて、選択された1つ又は複数の構造のモデルを構築するステップ;及び
(e)選択された1つ又は複数の構造を前記出力装置に出力するステップ;
及び任意選択で、選択された構造のうちの1つ以上を合成するステップ;
及び更に任意選択で、前記合成された選択の1つ又は複数の構造をCRISPR−Cpf1系として又はそれにおいて試験するステップを含み;又は、前記方法は、実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、CRISPR−Cpf1結晶構造の少なくとも2つの原子、例えば、CRISPR−Cpf1結晶構造の結晶構造表の少なくとも2つの原子の座標又はCRISPR−Cpf1結晶構造の少なくともサブドメインの座標(「選択の座標」)を提供するステップ、結合分子を含む候補の構造又は例えば、CRISPR−Cpf1結晶構造の他の部分からのデータ及び/又はCpf1オルソログからのデータに基づき操作され得るCRISPR−Cpf1系の一部分の構造、又は機能性基の構造を提供するステップ、及び候補の構造を選択の座標にフィッティングし、それにより所望の構造に結合し得るCRISPR−Cpf1構造、特定のCRISPR−Cpf1構造に結合し得る所望の構造、操作され得るCRISPR−Cpf1系の一部分、トランケート型Cpf1、新規ニッカーゼ、又は特定の機能性基、又は機能性基を付加する位置又は機能性基−CRISPR−Cpf1系を含む生成物データを、その出力と共に入手するステップ;及び任意選択で、前記生成物データから1つ又は複数の化合物を合成するステップを含み、及び更に任意選択で、前記合成された1つ又は複数の化合物をCRISPR−Cpf1系として又はそれにおいて試験するステップを含む。
試験するステップは、前記合成された選択の1つ又は複数の構造から得られたCRISPR−Cpf1系を、例えば、結合に関して、又は所望の機能を果たすかに関して分析することを含み得る。
前述の方法の出力には、データ伝達、例えば、遠隔通信、電話、テレビ会議、マスコミュニケーション、例えば、コンピュータプレゼンテーション(例えばPOWERPOINT)などのプレゼンテーション、インターネット、電子メール、コンピュータプログラム(例えばWORD)文書などの文書による通信等による情報の伝達が含まれ得る。従って、本発明はまた、実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、本明細書において参照される結晶構造に係る原子座標データであって、CRISPR−Cpf1又はその少なくとも1つのサブドメインの三次元構造を定義付けるデータ、又はCRISPR−Cpf1の構造因子データであって、実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、本明細書において参照される結晶構造の原子座標データから導出することが可能な構造因子データを含むコンピュータ可読媒体も包含する。コンピュータ可読媒体はまた、前述の方法の任意のデータも含み得る。本発明は更に、実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、本明細書において参照される結晶構造に係る原子座標データであって、CRISPR−Cpf1又はその少なくとも1つのサブドメインの三次元構造を定義付けるデータ、又はCRISPR−Cpf1の構造因子データであって、実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、本明細書において参照される結晶構造の原子座標データから導出することが可能な構造因子データのいずれかを含む、前述の方法にあるとおりの合理的設計を生成又は実施するための方法、コンピュータシステムを包含する。本発明は更に、事業を行う方法であって、コンピュータシステム又は媒体又はCRISPR−Cpf1若しくはその少なくとも1つのサブドメインの三次元構造、又はCRISPR−Cpf1の構造因子データであって、実施例3(「結晶構造表」)のCRISPR−Cpf1結晶構造など、本明細書において参照される結晶構造の原子座標データに示される構造及びそれから導出することが可能な構造因子データ、又は本明細書におけるコンピュータ媒体又は本明細書におけるデータ伝達を使用者に提供するステップを含む方法を包含する。更なる態様は、実施例3(「結晶構造表」)の結晶構造を有する及び/又は前述の一部又は全てに対応する又はそれから得られるX線回折パターンを有するCRISPR−Cpf1系及び/又は以下の結晶構造表の少なくとも2、少なくとも50、少なくとも100又は全ての座標によって定義付けられる構造を有する結晶を提供する。
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改変Cpf1酵素
Zetsche et al.(2015)が、Cpf1の個別的な領域について記載している。第一にC末端RuvC様ドメイン、これは唯一機能的に特徴付けられたドメインである。第二にN末端α−ヘリックス領域、及び第三に、RuvC様ドメインとα−ヘリックス領域との間に位置する混合α及びβ領域。
ここに提供されるCpf1の結晶構造は、DNA相互作用アミノ酸に関する更なる情報を提供する(実施例を参照)。この情報に基づき、酵素の不活性化につながる又は二本鎖ヌクレアーゼをニッカーゼ活性に改変する突然変異体を作成することができる。代替的実施形態では、この情報を用いてオフターゲット効果が低下した酵素(本明細書の他の部分に記載される)が開発される。
上述のCpf1酵素の特定の実施態様では、1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6のアミノ酸位置付番を基準として、D861、R862、R863、W382、E993、D1263、D908、W958、K968、R951、R1226、S1228、D1235、K548、M604、K607、T167、N631、N630、K547、K163、Q571、K1017、R955、K1009、R909、R912、R1072、E372、K15、K810、H755、K557、E857、K943、K1022、K1029、K942、K949、R84、K87、K200、H206、R210、R301、R699、K705、K887、R891、K1086、K1089、R1094、R1127、R1220、Q1224、N178、N197、N204、N259、N278、N282、N519、N747、N759、N878、N889、及び/又は、1189〜1197、1200〜1208、398〜400、380〜383、362〜420、1163〜1173、1230〜1233、1152〜1148、1076〜1249の領域にあるいずれか1つのアミノ酸から選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、R862A、E993A、D1263A、D908A、W958A、R951A、R1226A、S1228A、D1235A、K548A、M604A、K607A、K607R、T167S、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aからなるリストから選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、R862A、E993A、D1263A、D908A、W958A、R951A、K548A、M604A、K607A、K607R、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aからなるリストから選択される;好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、N178、N197、N204、N259、N278、N282、N519、N747、N759、N878、N889から選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、R862A、W958A、R951A、R1226A、S1228A、D1235A、K548A、M604A、K607A、K607R、T167S、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R、K1009A、R909A、R1072A、E327A、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、K943A、K1022A、K1029A、K942A、K949A、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aからなるリストから選択される。好ましい実施態様では、前記の1つ以上の改変または突然変異されたアミノ酸残基は、D861、W958、S1228、D1235、T167、N631、N630、K547、K163、Q571、R1226、E372、K15、K810、H755、K557、E857、K943、K1022、K1029、K942、K949、R84、K87、K200、H206、R210、R301、R699、K705、K887、R891、K1086、K1089、R1094、R1127、R1220、Q1224、N178、N197、N204、N259、N278、N282、N519、N747、N759、N878、N889、及び/又は、1189〜1197、1200〜1208、398〜400、380〜383、362〜420、1163〜1173、1230〜1233、1152〜1148、1076〜1249の領域にあるいずれか1つのアミノ酸から選択される。詳細な実施形態において、突然変異はR862Aであり、前記Cpf1酵素はもはやRNAに結合しない。詳細な実施形態において、1つ以上の突然変異は、K15A、K810A、H755A、K557A、E857A、R862A、K943A、K1022A及びK1029Aから選択され、前記Cpf1酵素はもはやRNA結合能及び/又はプロセシング能を有しない。詳細な実施形態において、前記1つ以上の突然変異は、K5478A、K607A及びM604Aから選択され、TTT特異性が低下し、又は除去される。詳細な実施形態において、前記1つ以上の突然変異は、N631K、N613R、N630K、N630R、K547R、K163R、Q571K、Q571R及びK607Rから選択され、前記Cpf1酵素の非特異的DNA相互作用が増加する。詳細な実施形態において、前記1つ以上の突然変異は、R84A、K87A、K200A、H206A、R210A、R301A、R699A、K705A、K887A、R891A、K1086A、K1089A、R1094A、R1127A、R1220A及びQ1224Aから選択され、それによって前記酵素の前記特異性が増加又は減少する。詳細な実施形態において、D861、R862、R863及びW382のうちの1つ以上が突然変異しており、前記Cpf1のRNA結合性が乱れている。詳細な実施形態において、アミノ酸W958、K968、R951、R1226、D1253及びT167のうちの1つ以上及びCpf1の安定性が影響を受けている。詳細な実施形態において、K968及びR951のうちの1つ以上が突然変異しており、前記Cpf1のDNA結合性が乱れている。詳細な実施形態において、N631及びN630のうちの1つ以上が突然変異しており、DNA骨格のリン酸との相互作用が増加している。詳細な実施形態において、以下のアミノ酸:AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)のアミノ酸位置付番を基準として、L117、T118、D119、T150、T151、T152、R341、N342、E343、T398、G399、K400、D451、Q452、P453、L454、P455、T456、T457、L458、K459、V486、D487、E488、S489、N490、E491、V492、D493、P494、E506、M507、E508、Q571、K572、G573、R574、Y575、T621、E649、K650、E651、D665、T737、D749、F750、K815、N848、V1108、K1109、T1110、G1111、S1124、A1195、A1196、A1197、N1198、L1244、N1245及び/又はG1246のうちの1つ以上が突然変異しており、それによってCpf1酵素の安定性及び/又は活性が実質的に影響を受けていない。
上述のCpf1酵素の特定のものにおいて、酵素は、限定はされないが、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)のアミノ酸位置付番を基準として884〜1307位、例えば、993、1263及び/又は980位を含めた1つ以上の残基(RuvCドメイン内)の突然変異によって改変される。
平均より高いB因子を持つ領域における改変
高分子結晶構造における秩序が低い領域(限定はされないが、ディスオーダー領域又は非構造化領域を含む)、特にタンパク質の溶媒露出領域内にある秩序が低い領域(限定はされないがループを含む)は、構造又は機能を容認し難いほど不安定化させることなく改変し得る領域を示す。B因子、温度因子、熱因子、デバイ・ワラー因子、原子変位パラメータ及び類似の用語は、結晶構造における(例えば、温度依存性原子振動又は結晶格子における静的ディスオーダーの結果としての)その平均位置からの原子の変位の指標となる値に関する。従ってタンパク質の溶媒露出領域の骨格原子の平均より高いB因子は、局所移動度が比較的高い領域又はタンパク質構造若しくは機能を容認し難いほど不安定化させることなく改変し得る領域の指標となる。従って、本明細書に記載されるCpf1酵素の特定のものにおいて、Cpf1酵素は、全タンパク質又は溶媒露出領域を含むタンパク質ドメインと比較して平均より高いB因子を持つ1つ以上の骨格原子を有する溶媒露出領域で1つ以上の置換、挿入、欠失又は他の改変によって改変される。Cpf1酵素の特定のものにおいて、酵素は、1つ以上の残基を含むタンパク質の平均B因子と比べて50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、又は200%超高いB因子を持つCα原子を有する前記1つ以上の残基で改変される。Cpf1酵素の特定のものにおいて、酵素は、1つ以上の残基を含むタンパク質ドメイン(例えばC末端RuvC様ドメイン、N末端αヘリックス領域、又は前記N末端ドメインとC末端ドメインとの間のα及びβ混合領域)の平均B因子と比べて50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%又は200%超高いB因子を持つCα原子を有する前記残基で改変される。Cpf1酵素の特定のものにおいて、酵素は、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)のアミノ酸位置付番を基準として、L117、T118、D119、T150、T151、T152、R341、N342、E343、T398、G399、K400、D451、Q452、P453、L454、P455、T456、T457、L458、K459、V486、D487、E488、S489、N490、E491、V492、D493、P494、E506、M507、E508、Q571、K572、G573、R574、Y575、T621、E649、K650、E651、D665、T737、D749、F750、K815、N848、V1108、K1109、T1110、G1111、S1124、A1195、A1196、A1197、N1198、L1244、N1245及び/又はG1246において1つ以上の置換、挿入、欠失又は他の改変によって改変される。
非活性化/不活性化Cpf1タンパク質
Cpf1タンパク質がヌクレアーゼ活性を有する場合、Cpf1タンパク質は、低下したヌクレアーゼ活性、例えば、野生型酵素と比較したとき少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は100%のヌクレアーゼ不活性化を有するように改変することができ;又は別の言い方をすれば、Cpf1酵素は有利には、非突然変異型又は野生型Cpf1酵素又はCRISPR酵素の約0%のヌクレアーゼ活性、又は非突然変異型又は野生型Cpf1酵素、例えば非突然変異型又は野生型アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6(AsCpf1)Cpf1酵素又はCRISPR酵素の約3%又は約5%又は約10%以下のヌクレアーゼ活性を有する。これは、Cpf1及びそのオルソログのヌクレアーゼドメインに突然変異を導入することによって可能である。
より詳細には、不活性化Cpf1酵素は、AsCpf1においてAsCpf1のヌクレアーゼ活性に直接又は間接的に寄与すると同定されたアミノ酸位置又はCpf1オルソログにおける対応する位置において突然変異した酵素を含む。
不活性化Cpf1 CRISPR酵素には、例えば、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写解除因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、DNA切断活性、核酸結合活性、及び分子スイッチ(例えば、光誘導性)を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる群からの1つ以上のドメインを含め、1つ以上の機能性ドメインが(例えば融合タンパク質を介して)会合していてもよい。好ましいドメインは、Fok1、VP64、P65、HSF1、MyoD1である。Fok1が提供される場合、機能性二量体を実現するため複数のFok1機能性ドメインが提供され、且つgRNAが、Tsai et al.Nature Biotechnology,Vol.32,Number 6,June 2014)に具体的に記載されるとおり機能的使用(Fok1)に適切な間隔を提供するように設計されることが有利である。アダプタータンパク質は、公知のリンカーを利用してかかる機能性ドメインを結合し得る。場合によっては、更に少なくとも1つのNLSが提供されることが有利である。場合によっては、NLSをN末端に配置することが有利である。2つ以上の機能性ドメインが含まれる場合、それらの機能性ドメインは同じであっても、又は異なってもよい。
一般に、不活性化Cpf1酵素上の1つ以上の機能性ドメインの位置は、機能性ドメインがその備えている機能的効果を標的に及ぼすのに正しい空間的配置を可能にするものである。例えば、機能性ドメインが転写アクチベーター(例えば、VP64又はp65)である場合、転写アクチベーターは、それが標的の転写に影響を及ぼすことが可能な空間的配置で置かれる。同様に、転写リプレッサーは、有利には標的の転写に影響を及ぼすように配置されることになり、及びヌクレアーゼ(例えばFok1)は、有利には標的を切断又は部分的に切断するように配置されることになる。これには、CRISPR酵素のN末端/C末端以外の位置が含まれ得る。
本発明に係る酵素は、機能スクリーニングに有益な最適化された機能性CRISPR−Cas系において適用することができる
従って、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質−ガイドRNA複合体が全体として2つ以上の機能性ドメインと会合し得ることもまた想定される。例えば、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質と会合した2つ以上の機能性ドメインがあってもよく、又はガイドRNAと(1つ以上のアダプタータンパク質を介して)会合した2つ以上の機能性ドメインがあってもよく、又は核酸ターゲティングエフェクタータンパク質と会合した1つ以上の機能性ドメイン及びガイドRNAと(1つ以上のアダプタータンパク質を介して)会合した1つ以上の機能性ドメインがあってもよい。
2つの異なるアプタマー(各々個別の核酸ターゲティングガイドRNAと会合している)を用いると、アクチベーター−アダプタータンパク質融合物及びリプレッサー−アダプタータンパク質融合物を異なる核酸ターゲティングガイドRNAと共に使用して、1つのDNA又はRNAの発現を活性化する一方で別のDNA又はRNAの発現を抑制することが可能になる。これらは、それらの異なるガイドRNAと共に、多重化手法で一緒に、又は実質的に一緒に投与することができる。比較的少数のエフェクタータンパク質分子を多数の改変ガイドと共に使用することができるため、例えば10又は20又は30個など、多数のかかる改変された核酸ターゲティングガイドRNAを全て同時に使用する一方で、1つのみの(又は少なくとも最小数の)エフェクタータンパク質分子を送達するだけでよい。アダプタータンパク質は1つ以上のアクチベーター又は1つ以上のリプレッサーと会合(好ましくは連結又は融合)してもよい。例えば、アダプタータンパク質は第1のアクチベーター及び第2のアクチベーターと会合してもよい。第1及び第2のアクチベーターは同じであってもよいが、これらは好ましくは異なるアクチベーターである。3つ以上又は更には4つ以上のアクチベーター(又はリプレッサー)を使用してもよく、しかしパッケージサイズにより、個数が5を超える異なる機能性ドメインとなることは制限され得る。2つ以上の機能性ドメインがアダプタータンパク質と会合するアダプタータンパク質との直接的な融合と比べて、好ましくはリンカーが用いられる。好適なリンカーとしてはGlySerリンカーを挙げることができる。
アダプタータンパク質とアクチベーター又はリプレッサーとの間の融合は、リンカーを含み得る。例えば、GlySerリンカーGGGS(配列番号18)を使用することができる。これらを3個((GGGGS)(配列番号19))又は6個(配列番号20)、9個(配列番号21)又は更には12個(配列番号22)又はそれ以上の反復で使用することにより、必要に応じて好適な長さを提供することができる。リンカーは、ガイドRNAと機能ドメイン(アクチベーター又はリプレッサー)との間、又は核酸ターゲティングCasタンパク質(Cas)と機能ドメイン(アクチベーター又はリプレッサー)との間に使用することができる。リンカー、使用者は適切な量の「機械的柔軟性」を操作する。
本発明は、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質とガイドRNAとを含む核酸ターゲティング複合体を包含し、ここで核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は少なくとも1つの突然変異[そのため核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は、その少なくとも1つの突然変異を有しない核酸ターゲティングエフェクタータンパク質の5%以下の活性を有する]、及び任意選択で少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み;ガイドRNAは、細胞内の目的のRNAにおける標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列を含み;及びここで:核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は2つ以上の機能ドメインと会合し;又はガイドRNAの少なくとも1つのループが、1つ以上のアダプタータンパク質に結合する1つ又は複数の個別的なRNA配列の挿入によって改変され、及びここでアダプタータンパク質は2つ以上の機能ドメインと会合し;又は核酸ターゲティングCasタンパク質は1つ以上の機能ドメインと会合し、及びガイドRNAの少なくとも1つのループが、1つ以上のアダプタータンパク質に結合する1つ又は複数の個別のRNA配列の挿入によって改変され、及びここでアダプタータンパク質は1つ以上の機能ドメインと会合する。
ある態様において、本発明は、細胞の目的のゲノム遺伝子座にある標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列を含むV型、より詳細にはCpf1 CRISPRガイドRNAを含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を提供し、ここでガイドRNAは、2つ以上のアダプタータンパク質(例えばアプタマー)に結合する1つ又は複数の個別のRNA配列の挿入によって改変され、及び各アダプタータンパク質は1つ以上の機能性ドメインと会合しているか;又は、ここでガイドRNAは少なくとも1つの非コード機能性ループを有するように改変される。詳細な実施形態では、ガイドRNAは、ダイレクトリピートの5’側、ダイレクトリピート内、又はガイド配列の3’側への1つ又は複数の個別のRNA配列の挿入によって改変される。2つ以上の機能性ドメインがあるとき、それらの機能性ドメインは同じであっても又は異なってもよく、例えば、同じ2つの又は2つの異なるアクチベーター又はリプレッサーであり得る。ある態様において、本発明は、本明細書において考察するとおりのガイドRNAと、Cpf1酵素であるCRISPR酵素[任意選択でCpf1酵素は少なくとも1つの突然変異を含み、そのためCpf1酵素は、その少なくとも1つの突然変異を有しないCpf1酵素の5%以下のヌクレアーゼ活性を有し、及び任意選択で、少なくとも1つ以上の核局在化配列を含む1つ以上を含む]とを含む天然に存在しない又はエンジニアリングされたCRISPR−Cas複合体組成物を提供する。ある態様において、本発明は、本明細書において考察されるCpf1 CRISPRガイドRNA又はCpf1 CRISPR−Cas複合体であって、2つ以上のアダプタータンパク質を含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を含む複合体を提供し、ここで各タンパク質は1つ以上の機能性ドメインと会合し、及びアダプタータンパク質は、ガイドRNAに挿入された1つ又は複数の個別のRNA配列に結合する。詳細な実施形態では、ガイドRNAは、それに加えて又は代えて、Cpf1 CRISPR複合体の結合をなおも確保するが、しかしCpf1酵素による切断は防ぐように改変される。
オフターゲット効果を低下させる酵素突然変異
一態様において、本発明は、オフターゲット効果の低下をもたらす1つ以上の突然変異を有する本明細書に記載されるとおりの天然に存在しない又はエンジニアリングされたCRISPR酵素、好ましくはクラス2 CRISPR酵素、好ましくはV型又はVI型CRISPR酵素、例えば好ましくは、限定はされないが、本明細書の他の部分に記載されるとおりのCpf1、即ち、標的遺伝子座に改変を生じさせるのに用いられるが、しかしガイドRNAと複合体化したときなどの、オフターゲットに向けた活性は低下又は消失させる改良されたCRISPR酵素、並びにガイドRNAと複合体を形成したときなどの、CRISPR酵素の活性を増加させるための改良されたCRISPR酵素を提供する。本明細書において以下に記載するとおりの突然変異酵素は、本明細書の他の部分に記載されるとおりの本発明に係る方法のいずれにおいても用いられ得ることが理解されるべきである。本明細書の他の部分に記載されるとおりの方法、産物、組成物及び使用のいずれも、同様に以下に更に詳述するとおりの突然変異CRISPR酵素に適用可能である。本明細書に記載されるとおりの態様及び実施形態において、Cpf1をCRISPR酵素として参照するとき又は読めるとき、機能性CRISPR−Cas系の再構成は、好ましくはtracr配列を必要とせず又はそれに依存せず、及び/又はダイレクトリピートはガイド(標的又はスペーサー)配列の5’(上流)側にあることが理解されるべきである。
Slaymaker et al.は、近年、特異性が増強されたCas9オルソログの作成方法を記載した(Slaymaker et al.2015「特異性が改善された合理的にエンジニアリングされたCas9ヌクレアーゼ(Rationally engineered Cas9 nucleases with improved specificity)」)。このストラテジーを用いると、Cpf1酵素の特異性を増強することができる。突然変異誘発用の主な残基は好ましくは、全てがRuvCドメイン内の正電荷残基である。更なる残基は、異なるオルソログ間で保存されている正電荷残基である。
特定の実施形態において、酵素は、限定はされないが、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)のアミノ酸位置付番を基準として位置R909、R912、R930、R947、K949、R951、R955、K965、K968、K1000、K1002、R1003、K1009、K1017、K1022、K1029、K1035、K1054、K1072、K1086、R1094、K1095、K1109、K1118、K1142、K1150、K1158、K1159、R1220、R1226、R1242、及び/又はR1252を含めた、(RuvCドメイン内の)1つ以上の残基の突然変異によって改変される。上述の天然に存在しないCRISPR酵素の特定のものにおいて、酵素は、限定はされないが、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)のアミノ酸位置付番を基準として位置K324、K335、K337、R331、K369、K370、R386、R392、R393、K400、K404、K406、K408、K414、K429、K436、K438、K459、K460、K464、R670、K675、R681、K686、K689、R699、K705、R725、K729、K739、K748、及び/又はK752を含めた、(RAD50ドメイン内の)1つ以上の残基の突然変異によって改変される。
特定の実施形態において、Cpf1の特異性は、非標的DNA鎖を安定させる残基を突然変異させることにより改善し得る。
ある態様において、本発明はまた、Cas(例えば、Cpf1)結合活性及び/又は結合特異性を調節する方法及び突然変異も提供する。特定の実施形態において、ヌクレアーゼ活性を欠くCas(例えば、Cpf1)タンパク質が用いられる。特定の実施形態において、Cas(例えば、Cpf1)ヌクレアーゼの結合を促進するがヌクレアーゼ活性は促進しない、改変されたガイドRNAが利用される。かかる実施形態では、オンターゲット結合を増加又は減少させることができる。また、かかる実施形態では、オフターゲット結合を増加又は減少させることもできる。更に、オンターゲット結合対オフターゲット結合に関して特異性の増加又は減少があり得る。
オンターゲット対オフターゲット活性の活性及び/又は特異性を増加又は減少させるため、又はオンターゲット対オフターゲット結合の結合及び/又は特異性を増加又は減少させるため様々な組み合わせで利用し得る方法及び突然変異を用いて、他の効果が促進されるように加えられる突然変異又は改変を補償し又は増強することができる。他の効果が促進されるように加えられるかかる突然変異又は改変には、Cas(例えば、Cpf1)に対する突然変異又は改変及び/又はガイドRNAに加えられる突然変異又は改変が含まれる。特定の実施形態において、本方法及び突然変異は、化学的に改変されたガイドRNAと共に用いられる。ガイドRNAの化学的改変の例としては、限定なしに、1つ以上の末端ヌクレオチドにおける2’−O−メチル(M)、2’−O−メチル3’ホスホロチオエート(MS)、又は2’−O−メチル3’チオPACE(MSP)の取込みが挙げられる。かかる化学的に改変されたガイドRNAは、改変されていないガイドRNAと比較したとき高い安定性及び高い活性を含むことができ、しかしながらオンターゲット対オフターゲット特異性は予測不可能である(Hendel,2015,Nat Biotechnol.33(9):985−9,doi:10.1038/nbt.3290,オンライン発行 29 June 2015を参照)。化学的に改変されたガイドRNAには、限定なしに、ホスホロチオエート結合を有するRNA及びリボース環の2’及び4’炭素間にメチレン架橋を含むロックド核酸(LNA)ヌクレオチドが更に含まれる。本発明の方法及び突然変異は、化学的に改変されたガイドRNAによるCas(例えば、Cpf1)ヌクレアーゼ活性及び/又は結合の調節に用いられる。
ある態様において、本発明は、ヌクレアーゼ、転写アクチベーター、転写リプレッサーなどの機能ドメインを含む本明細書に定義するとおりの本発明に係るCas(例えばCpf1)タンパク質の結合及び/又は結合特異性を改変するための方法及び突然変異を提供する。例えば、Cas(例えばCpf1)タンパク質は、例えば本明細書の他の部分に記載されるCpf1突然変異などの突然変異を導入することによってヌクレアーゼヌルにする、又はヌクレアーゼ活性が変化した又は低下したものにすることができ、例えば、AsCpf1タンパク質によるD908A、E993A、D1263A又はオルソログにおける対応する位置を含む。ヌクレアーゼ欠損Cas(例えば、Cpf1)タンパク質は、機能ドメインのRNAガイド下標的配列依存性送達に有用である。本発明は、Cas(例えば、Cpf1)タンパク質の結合を調節する方法及び突然変異を提供する。一実施形態において、機能ドメインは、RNAガイド下転写因子を提供するVP64を含む。別の実施形態において、機能ドメインは、RNAガイド下ヌクレアーゼ活性を提供するFok Iを含む。米国特許出願公開第2014/0356959号明細書、米国特許出願公開第2014/0342456号明細書、米国特許出願公開第2015/0031132号明細書、及びMali,P.et al.,2013,Science 339(6121):823−6,doi:10.1126/science.1232033,オンライン発行 3 January 2013が挙げられ、及び本明細書の教示を通じて、本発明は、本明細書の教示と関連して適用されるこれらの文献の方法及び材料を包含する。特定の実施形態において、オンターゲット結合が増加する。特定の実施形態において、オフターゲット結合が減少する。特定の実施形態において、オンターゲット結合が減少する。特定の実施形態において、オフターゲット結合が増加する。従って、本発明はまた、機能性Cas(例えば、Cpf1)結合タンパク質のオンターゲット結合対オフターゲット結合の特異性を増加又は減少させることも提供する。
RNAガイド下結合タンパク質としてのCas(例えば、Cpf1)の使用はヌクレアーゼヌルCas(例えば、Cpf1)に限定されない。ヌクレアーゼ活性を含むCas(例えば、Cpf1)酵素もまた、特定のガイドRNAと共に用いられるとき、RNAガイド下結合タンパク質として機能し得る。例えば低分子ガイドRNA及び標的とミスマッチのヌクレオチドを含むガイドRNAが、標的切断はほとんど又は全くなしに、標的配列へのRNAによって導かれるCas9結合を促進することができる(例えば、Dahlman,2015,Nat Biotechnol.33(11):1159−1161,doi:10.1038/nbt.3390,オンライン発行 05 October 2015を参照)。ある態様において、本発明は、ヌクレアーゼ活性を含むCas(例えば、Cpf1)タンパク質の結合を調節する方法及び突然変異を提供する。特定の実施形態において、オンターゲット結合が増加する。特定の実施形態において、オフターゲット結合が減少する。特定の実施形態において、オンターゲット結合が減少する。特定の実施形態において、オフターゲット結合が増加する。特定の実施形態において、オンターゲット結合対オフターゲット結合の特異性の増加又は減少がある。特定の実施形態において、ガイドRNA−Cas(例えば、Cpf1)酵素のヌクレアーゼ活性もまた調節される。
RNA−DNAヘテロ二重鎖形成が、PAMに最も近いシード領域配列のみならず、標的領域全体にわたる切断活性及び特異性に重要である。従って、トランケート型ガイドRNAは切断活性及び特異性の低下を示す。ある態様において、本発明は、変化したガイドRNAを用いて切断の活性及び特異性を増加させる方法及び突然変異を提供する。
天然に存在しないCRISPR酵素の任意のものにおいて、CRISPR酵素は1つ以上の異種機能ドメインを含み得る。
1つ以上の異種機能ドメインには1つ以上の核局在化シグナル(NLS)ドメインが含まれ得る。1つ以上の異種機能ドメインには少なくとも2つ以上のNLSが含まれ得る。
1つ以上の異種機能ドメインには1つ以上の転写活性化ドメインが含まれる。転写活性化ドメインにはVP64が含まれ得る。
1つ以上の異種機能ドメインには1つ以上の転写抑制ドメインが含まれる。転写抑制ドメインにはKRABドメイン又はSIDドメインが含まれ得る。
1つ以上の異種機能ドメインには1つ以上のヌクレアーゼドメインが含まれ得る。1つ以上のヌクレアーゼドメインにはFok1が含まれ得る。
1つ以上の異種機能ドメインは以下の活性の1つ以上を有し得る:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写解除因子活性、ヒストン修飾活性、ヌクレアーゼ活性、一本鎖RNA切断活性、二本鎖RNA切断活性、一本鎖DNA切断活性、二本鎖DNA切断活性及び核酸結合活性。
少なくとも1つ以上の異種機能ドメインは、酵素のアミノ末端又はその近傍及び/又は酵素のカルボキシ末端又はその近傍にあり得る。
1つ以上の異種機能ドメインはCRISPR酵素と融合しているか、又はCRISPR酵素に係留されているか、又はリンカー部分によってCRISPR酵素に連結されていてもよい。
天然に存在しないCRISPR酵素の任意のものにおいて、CRISPR酵素は、野兎病菌(Francisella tularensis)1、野兎病菌亜種ノビシダ(Francisella tularensis subsp.novicida)、プレボテラ・アルベンシス(Prevotella albensis)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MC2017 1、ブチリビブリオ・プロテオクラスチカス(Butyrivibrio proteoclasticus)、ペレグリニバクテリア細菌(Peregrinibacteria bacterium)GW2011_GWA2_33_10、パルクバクテリア細菌(Parcubacteria bacterium)GW2011_GWC2_44_17、スミセラ属種(Smithella sp.)SCADC、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MA2020、カンディダタス・メタノプラズマ・テルミツム(Candidatus Methanoplasma termitum)、ユーバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、モラクセラ・ボボクリ(Moraxella bovoculi)237、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006、ポルフィロモナス・クレビオリカニス(Porphyromonas crevioricanis)3、プレボテラ・ディシエンス(Prevotella disiens)、又はポルフィロモナス・マカカエ(Porphyromonas macacae)(例えば、本明細書に記載されるとおり改変されたこれらの生物のうちの1つのCpf1)を含む属の生物由来のCRISPR酵素を含むことができ、及び更なる突然変異若しくは変化を含み得るか、又はキメラCas(例えばCpf1)であり得る。
天然に存在しないCRISPR酵素の任意のものにおいて、CRISPR酵素は、第1のCas(例えばCpf1)オルソログ由来の第1の断片と第2のCas(例えばCpf1)オルソログ由来の第2の断片とを含むキメラCas(例えばCpf1)酵素を含むことができ、第1及び第2のCas(例えばCpf1)オルソログは異なる。第1及び第2のCas(例えばCpf1)オルソログのうちの少なくとも一方は、野兎病菌(Francisella tularensis)1、野兎病菌亜種ノビシダ(Francisella tularensis subsp.novicida)、プレボテラ・アルベンシス(Prevotella albensis)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MC2017 1、ブチリビブリオ・プロテオクラスチカス(Butyrivibrio proteoclasticus)、ペレグリニバクテリア細菌(Peregrinibacteria bacterium)GW2011_GWA2_33_10、パルクバクテリア細菌(Parcubacteria bacterium)GW2011_GWC2_44_17、スミセラ属種(Smithella sp.)SCADC、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MA2020、カンディダタス・メタノプラズマ・テルミツム(Candidatus Methanoplasma termitum)、ユーバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、モラクセラ・ボボクリ(Moraxella bovoculi)237、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006、ポルフィロモナス・クレビオリカニス(Porphyromonas crevioricanis)3、プレボテラ・ディシエンス(Prevotella disiens)、又はポルフィロモナス・マカカエ(Porphyromonas macacae)を含む生物由来のCas(例えばCpf1)を含み得る。
天然に存在しないCRISPR酵素の任意のものにおいて、CRISPR酵素をコードするヌクレオチド配列は真核生物での発現にコドンが最適化されていてもよい。
天然に存在しないCRISPR酵素の任意のものにおいて、細胞は真核細胞又は原核細胞であってもよい;ここでCRISPR複合体は細胞において作動可能であり、それによってCRISPR複合体の酵素は非改変酵素と比較したとき細胞の1つ以上のオフターゲット遺伝子座を改変する能力が低下し、及び/又はそれによってCRISPR複合体内の酵素は非改変酵素と比較したとき1つ以上の標的遺伝子座を改変する能力が増加する。
従って、ある態様において、本発明は、本明細書に定義するとおりのエンジニアリングされたCRISPRタンパク質又は系を含む真核細胞を提供する。
特定の実施形態において、本明細書に記載されるとおりの方法は、1つ以上の目的の遺伝子のプロモーターを含む調節エレメントと細胞内で作動可能に接続した1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の核酸が提供又は導入されるCpf1トランスジェニック細胞を提供するステップを含み得る。本明細書で使用されるとき、用語「Cpf1トランスジェニック細胞」は、Cpf1遺伝子がゲノム的に組み込まれている真核細胞などの細胞を指す。細胞の性質、タイプ、又は起源は、本発明によれば特に限定されない。また、Cpf1トランス遺伝子を細胞に導入する方法も様々であってよく、当該技術分野において公知のとおりの任意の方法であり得る。特定の実施形態において、Cpf1トランスジェニック細胞は、単離細胞にCpf1トランス遺伝子を導入することによって得られる。特定の他の実施形態において、Cpf1トランスジェニック細胞は、Cpf1トランスジェニック生物から細胞を単離することによって得られる。例として、及び限定なしに、本明細書において言及されるとおりのCpf1トランスジェニック細胞は、Cpf1ノックイン真核生物など、Cpf1トランスジェニック真核生物に由来してもよい。国際公開第2014/093622号パンフレット(PCT/US13/74667号明細書)(参照により本明細書に援用される)が参照される。Rosa遺伝子座の標的化に関するSangamo BioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20120017290号明細書及び同第20110265198号明細書の方法を、本発明のCRISPR Cpf1系を利用するように改変し得る。Rosa遺伝子座の標的化に関するCellectisに譲渡された米国特許出願公開第20130236946号明細書の方法もまた、本発明のCRISPR Cpf1系を利用するように改変し得る。更なる例として、Cas9ノックインマウスについて記載しているPlatt et.al.(Cell;159(2):440−455(2014))(参照により本明細書に援用される)が参照され、及びこれは本明細書に定義するとおりの本発明のCRISPR酵素に当てはめることができる。Cpf1トランス遺伝子はLox−Stop−ポリA−Lox(LSL)カセットを更に含んでもよく、それによりCpf1発現をCreリコンビナーゼによって誘導可能なものにすることができる。或いは、Cpf1トランスジェニック細胞は、単離細胞にCpf1トランス遺伝子を導入することによって得てもよい。トランス遺伝子の送達系は当該技術分野において周知である。例として、Cpf1トランス遺伝子は、同様に本明細書の他の部分に記載されるとおり、例えば真核細胞においてベクター(例えば、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス)及び/又は粒子及び/又はナノ粒子送達を用いて送達し得る。
当業者は、本明細書において参照されるとおりのCpf1トランスジェニック細胞などの細胞が、例えば、及び限定なしに、Platt et al.(2014),Chen et al.,(2014)又はKumar et al..(2009)に記載されるとおり、組み込まれたCpf1遺伝子を有することに加えて更なるゲノム変化を含み、又はCpf1を標的遺伝子座にガイドすることが可能なRNAと複合体を形成したときCpf1の配列特異的作用によって生じる突然変異、例えば1つ以上の発癌突然変異などを含み得ることを理解するであろう。
本発明はまた、本節に記載されるなどの、本明細書に記載されるとおりのエンジニアリングされたCRISPRタンパク質を含む組成物も提供する。
本発明はまた、上記に記載される任意の天然に存在しないCRISPR酵素を含むCRISPR−Cas複合体を含む天然に存在しないエンジニアリングされた組成物も提供する。
ある態様において、本発明は、1つ以上のベクターを含むベクター系を提供し、ここで1つ以上のベクターは、
a)本明細書に定義するとおりのエンジニアリングされたCRISPRタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された第1の調節エレメント;及び任意選択で、
b)ガイド配列、ダイレクトリピート配列を含むガイドRNAを含む1つ以上の核酸分子をコードする1つ以上のヌクレオチド配列に作動可能に連結された第2の調節エレメントを含み、任意選択で構成成分(a)及び(b)は同じ又は異なるベクターに位置する。
本発明はまた、
CRISPR−Cas複合体構成成分又は前記構成成分を含むか若しくはそれをコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を細胞に送達するように作動可能に構成された送達系であって、前記CRISPR−Cas複合体は細胞において作動可能である、送達系
を含む天然に存在しないエンジニアリングされた組成物も提供し、
CRISPR−Cas複合体構成成分又は細胞における転写及び/又は翻訳のためCRISPR−Cas複合体構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列は、
(I)本明細書に記載の天然に存在しないCRISPR酵素(例えば、エンジニアリングされたCpf1);
(II)以下を含むCRISPR−CasガイドRNA:
ガイド配列、
ダイレクトリピート配列、
を含み、ここで:
CRISPR複合体内の酵素は非改変酵素と比較したとき1つ以上のオフターゲット遺伝子座を改変する能力が低下し、及び/又はそれによってCRISPR複合体内の酵素は非改変酵素と比較したとき1つ以上の標的遺伝子座を改変する能力が増加する。
ある態様において、本発明はまた、本節に記載されるなどの、本明細書に記載されるとおりのエンジニアリングされたCRISPRタンパク質を含む系も提供する。
任意のかかる組成物において、本明細書のいずれかで記載されるとおり、送達系には、酵母系、リポフェクション系、マイクロインジェクション系、微粒子銃系、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、脂質:核酸コンジュゲート又は人工ビリオンが含まれ得る。
任意のかかる組成物において、送達系には、1つ以上のベクターを含むベクター系が含まれてもよく、ここでは構成成分(II)が、ガイド配列とダイレクトリピート配列と任意選択的に含むポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第1の調節エレメントを含み、及び構成成分(I)が、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第2の調節エレメントを含む。
任意のかかる組成物において、送達系には、1つ以上のベクターを含むベクター系が含まれてもよく、ここでは構成成分(II)が、ガイド配列及びダイレクトリピート配列に作動可能に連結された第1の調節エレメントとを含み、及び構成成分(I)が、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第2の調節エレメントを含む。
任意のかかる組成物において、組成物は2つ以上のガイドRNAを含むことができ、各ガイドRNAが異なる標的を有し、それによって多重化がある。
任意のかかる組成物において、1つ又は複数のポリヌクレオチド配列が1つのベクター上にあってもよい。
本発明はまた、
a)本明細書における本発明の構築物のいずれか1つの天然に存在しないCRISPR酵素をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された第1の調節エレメント;及び
b)ガイドRNAの1つ以上をコードする1つ以上のヌクレオチド配列に作動可能に連結された第2の調節エレメントであって、ガイドRNAがガイド配列とダイレクトリピート配列とを含む、第2の調節エレメント、
を含む1つ以上のベクターを含む、エンジニアリングされた天然に存在しないクラスター化した規則的な間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)−CRISPR関連(Cas)(CRISPR−Cas)ベクター系も提供し、ここで:
構成成分(a)及び(b)は同じ又は異なるベクター上に位置し、
CRISPR複合体が形成され;
ガイドRNAが標的ポリヌクレオチド遺伝子座を標的化し、酵素がポリヌクレオチド遺伝子座を変化させ、及び
CRISPR複合体内の酵素は非改変酵素と比較したとき1つ以上のオフターゲット遺伝子座を改変する能力が低下し、及び/又はそれによってCRISPR複合体内の酵素は非改変酵素と比較したとき1つ以上の標的遺伝子座を改変する能力が増加する。
かかる系において、構成成分(II)は、ガイド配列とダイレクトリピート配列とを含むポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第1の調節エレメントを含むことができ、及び構成成分(II)は、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第2の調節エレメントを含むことができる。かかる系において、適用可能な場合、ガイドRNAにはキメラRNAが含まれ得る。
かかる系において、構成成分(I)は、ガイド配列及びダイレクトリピート配列に作動可能に連結された第1の調節エレメントを含むことができ、及び構成成分(II)は、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第2の調節エレメントを含むことができる。かかる系は2つ以上のガイドRNAを含むことができ、各ガイドRNAが異なる標的を有し、それによって多重化がある。構成成分(a)及び(b)は同じベクター上にあってもよい。
ベクターを含む任意のかかる系において、1つ以上のベクターには、1つ以上のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス又は単純ヘルペスウイルスなど、1つ以上のウイルスベクターが含まれ得る。
調節エレメントを含む任意のかかる系において、前記調節エレメントの少なくとも1つは組織特異的プロモーターを含むことができる。組織特異的プロモーターは、哺乳類血球細胞、哺乳類肝細胞又は哺乳類眼において発現を導き得る。
上述の組成物又は系の任意のものにおいて、ダイレクトリピート配列は1つ以上のタンパク質相互作用RNAアプタマーを含むことができる。1つ以上のアプタマーはテトラループに位置し得る。1つ以上のアプタマーは、MS2バクテリオファージコートタンパク質との結合能を有し得る。
上述の組成物又は系の任意のものにおいて、細胞は真核細胞又は原核細胞であってもよい;ここでCRISPR複合体は細胞において作動可能であり、それによってCRISPR複合体の酵素は非改変酵素と比較したとき細胞の1つ以上のオフターゲット遺伝子座を改変する能力が低下し、及び/又はそれによってCRISPR複合体内の酵素は非改変酵素と比較したとき1つ以上の標的遺伝子座を改変する能力が増加する。
本発明はまた、上記に記載される組成物のいずれかの又は上記に記載される系のいずれかからのCRISPR複合体も提供する。
本発明はまた、細胞の目的の遺伝子座を改変する方法も提供し、この方法は、本明細書に記載されるエンジニアリングされたCRISPR酵素(例えば、エンジニアリングされたCpf1)、組成物のいずれか又は本明細書に記載される系又はベクター系のいずれかに細胞を接触させるステップを含み、又はここで細胞が、細胞内に存在する本明細書に記載されるCRISPR複合体のいずれかを含む。かかる方法において、細胞は原核細胞又は真核細胞であってもよく、好ましくは真核細胞である。かかる方法において、生物が細胞を含み得る。かかる方法において、生物はヒト又は他の動物でなくてもよい。
任意のかかる方法がエキソビボ又はインビトロであってもよい。
特定の実施形態において、前記ガイドRNA又はCasタンパク質の少なくとも一方をコードするヌクレオチド配列は、目的の遺伝子のプロモーターを含む調節エレメントと細胞内で作動可能に接続されており、それによって少なくとも1つのCRISPR−Cas系構成成分の発現が目的の遺伝子のプロモーターによってドライブされる。「作動可能に接続されている」は、本明細書の他の部分においても言及されるとおり、ガイドRNA及び/又はCasをコードするヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能にする形で1つ又は複数の調節エレメントに連結されていることを意味するように意図される。用語「調節エレメント」もまた本明細書の他の部分に記載される。本発明によれば、調節エレメントは、好ましくは目的の内因性遺伝子のプロモーターなど、目的の遺伝子のプロモーターを含む。特定の実施形態において、プロモーターはその内因性ゲノム位置にある。かかる実施形態において、CRISPR及び/又はCasをコードする核酸は、その天然のゲノム位置にある目的の遺伝子のプロモーターの転写制御下にある。特定の他の実施形態において、プロモーターはベクター又はプラスミドなどの(別個の)核酸分子上に提供されるか、又は他の染色体外核酸上に提供され、即ちプロモーターはその天然のゲノム位置に提供されない。特定の実施形態において、プロモーターは非天然のゲノム位置にゲノム的に組み込まれる。
任意のかかる方法、前記改変には、遺伝子発現の改変が含まれ得る。前記遺伝子発現の改変には、遺伝子発現を活性化させること及び/又は遺伝子発現を抑制することが含まれ得る。従って、ある態様において、本発明は、遺伝子発現を調節する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載されるとおりのエンジニアリングされたCRISPRタンパク質又は系を細胞に導入することを含む。
本発明はまた、それを必要としている個体の疾患、障害又は感染を治療する方法も提供し、この方法は、本明細書に記載されるエンジニアリングされたCRISPR酵素(例えばエンジニアリングされたCpf1)、組成物、系又はCRISPR複合体のいずれかの有効量を投与するステップを含む。疾患、障害又は感染には、ウイルス感染が含まれ得る。ウイルス感染はHBVであってもよい。
本発明はまた、上記に記載されるエンジニアリングされたCRISPR酵素(例えばエンジニアリングされたCpf1)、組成物、系又はCRISPR複合体のいずれかの遺伝子又はゲノム編集への使用も提供する。
本発明はまた、哺乳類細胞における目的のゲノム遺伝子座の発現を変化させる方法も提供し、この方法は、本明細書に記載されるエンジニアリングされたCRISPR酵素(例えばエンジニアリングされたCpf1)、組成物、系又はCRISPR複合体に細胞を接触させ、それによりCRISPR−Cas(ベクター)を送達し、及びCRISPR−Cas複合体を形成させて標的と結合させ、及び発現の増加又は低下、又は遺伝子産物の改変など、ゲノム遺伝子座の発現が変化したかどうかを決定することを含む。
本発明はまた、療法薬として用いられる、上記に記載されるエンジニアリングされたCRISPR酵素(例えばエンジニアリングされたCpf1)、組成物、系又はCRISPR複合体のいずれかも提供する。療法薬は遺伝子若しくはゲノム編集、又は遺伝子療法のためのものであってもよい。
特定の実施形態において、本明細書に記載されるとおりのエンジニアリングされたCRISPR酵素(例えばエンジニアリングされたCpf1)の活性には、任意選択で遺伝子の転写の低下をもたらすゲノムDNA切断が含まれる。
ある態様において、本発明は、本明細書に記載されるとおの方法によりゲノム遺伝子座の発現が変化した単離細胞を提供し、ここで発現の変化は、ゲノム遺伝子座の発現を変化させる方法に供されていない細胞との比較である。関連する態様において、本発明は、かかる細胞から樹立された細胞株を提供する。
一態様において、本発明は、例えばHSC(造血幹細胞)の目的のゲノム遺伝子座(例えば、この目的のゲノム遺伝子座は、異常タンパク質発現又は疾患条件若しくは状態に関連する突然変異に関連する)にある標的配列の操作によって生物又は非ヒト生物を改変する方法を提供し、この方法は、
I.CRISPR−Cas系ガイドRNA(gRNA)ポリヌクレオチド配列であって、
(a)HSC内の標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列、
(b)ダイレクトリピート配列、
を含むポリヌクレオチド配列、及び
II.任意選択で少なくとも1つ以上の核局在化配列を含む、CRISPR酵素、
を含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を、例えばそれを含有する粒子にHSCを接触させることによって、HSCに送達するステップを含み、
ここで、ガイド配列は標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を導き、及び
ここでCRISPR複合体は、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含み、
及び本方法は、任意選択で、例えば、HDR鋳型を含有するHSCと接触するか、又はHDR鋳型を含有する別の粒子にHSCを接触させる粒子を介して、HDR鋳型を送達するステップもまた含み、ここでHDR鋳型は正常型又は低度異常型のタンパク質の発現をもたらし;「正常」は野生型に関するものであり、及び「異常」は病態又は疾患状態を引き起こすタンパク質発現であってもよく;任意選択で本方法は、生物又は非ヒト生物からHSCを単離又は入手するステップ、任意選択でHSC集団を拡大するステップ、1つ又は複数の粒子とHSCとの接触を実施して改変されたHSC集団を入手するステップ、任意選択で改変されたHSCの集団を拡大するステップ、及び任意選択で改変されたHSCを生物又は非ヒト生物に投与するステップを含み得る。
この送達は、例えば、1つ以上の調節エレメントに機能的に連結している1つ以上のポリヌクレオチドを含有するベクターを含有する1つ以上の粒子を介した、CRISPR複合体の任意の1つ以上又は全てをコードする1つ以上のポリヌクレオチドであって、有利にはin vivo発現のための1つ以上の調節エレメントに連結したポリヌクレオチドの送達であり得る。CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、ガイド配列、ダイレクトリピート配列の一部又は全部がRNAであってもよい。RNAであって、かかるダイレクトリピート配列の特徴を「含む」と言われるポリヌクレオチドが言及される場合、RNA配列がその特徴を備えることは理解されるであろう。ポリヌクレオチドがDNAであって、かかるダイレクトリピート配列の特徴を含むと言われる場合、DNA配列はその問題の特徴を含むRNAに転写されるか、又は転写されることができる。特徴がCRISPR酵素などのタンパク質である場合、言及されるDNA又はRNA配列は(DNAの場合には、初めに転写されてから)翻訳されるか、又は翻訳されることができる。
特定の実施形態において、本発明は、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物をHSCと例えば接触させることによって送達するステップを含む、目的のゲノム遺伝子座であって、例えば異常タンパク質発現又は疾患条件若しくは状態に関連する突然変異に関連するHSCの目的のゲノム遺伝子座における標的配列の操作によって生物、例えばヒトを含む哺乳動物又は非ヒト哺乳動物若しくは生物を改変する方法を提供し、ここで組成物は、組成物を発現させるためその組成物を機能的にコードする1つ以上のウイルス、プラスミド又は核酸分子ベクター(例えばRNA)を含む1つ以上の粒子を含み、この組成物は、(A)I.CRISPR−Cas系RNAポリヌクレオチド配列に機能的に連結している第1の調節エレメントであって、ポリヌクレオチド配列が、(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列、(b)ダイレクトリピート配列を含む、第1の調節エレメント、及びII.少なくとも1つ以上の核局在化配列(又は一部の実施形態はNLSが関与しないこともあるため任意選択で少なくとも1つ以上の核局在化配列)を含むCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に機能的に連結している第2の調節エレメント[(a)、(b)及び(c)は5’から3’への方向に並び、構成成分I及びIIは系の同じ又は異なるベクターに位置し、転写されると、且つガイド配列がCRISPR複合体と標的配列との配列特異的結合を誘導し、及びCRISPR複合体は、標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含む]、又は(B)天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物であって、I.(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列、及び(b)少なくとも1つ以上のダイレクトリピート配列に機能的に連結している第1の調節エレメント、II.CRISPR酵素をコードする酵素コード配列に機能的に連結している第2の調節エレメント、[構成成分I及びIIは系の同じ又は異なるベクターに位置し、転写されると、且つガイド配列がCRISPR複合体と標的配列との配列特異的結合を誘導し、及びCRISPR複合体は、標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含む]を含む1つ以上のベクターを含むベクター系を含む組成物を含み;この方法は、任意選択で、例えば、HDR鋳型を含有するHSCと接触する粒子を介するか、又はHDR鋳型を含有する別の粒子にHSCを接触させることにより、HDR鋳型を送達するステップもまた含むことができ、ここでHDR鋳型は正常型又は低度異常型のタンパク質の発現をもたらし;「正常」は野生型に関するものであり、及び「異常」は病態又は疾患状態を引き起こすタンパク質発現であってよく;及び任意選択でこの方法は、HSCを生物又は非ヒト生物から単離又は入手するステップ、任意選択でHSC集団を拡大するステップ、1つ以上の粒子と、HSCとの接触を実施して改変されたHSC集団を入手するステップ、任意選択で改変HSCの集団を拡大するステップ及び任意選択で改変HSCを生物又は非ヒト生物に投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、構成成分I、II及びIIIが同じベクターに位置する。他の実施形態では、構成成分I及びIIが同じベクターに位置し、一方で構成成分IIIが別のベクターに位置する。他の実施形態では、構成成分I及びIIIが同じベクターに位置し、一方で構成成分IIが別のベクターに位置する。他の実施形態では、構成成分II及びIIIが同じベクターに位置し、一方で構成成分Iが別のベクターに位置する。他の実施形態では、構成成分I、II及びIIIの各々が異なるベクターに位置する。本発明はまた、本明細書に記載されるとおりのウイルス又はプラスミドベクター系も提供する。
標的配列の操作とは、出願者らは標的配列の後成的操作も意味する。これは、標的配列のメチル化状態の改変(即ちメチル化又はメチル化パターン又はCpG島の付加又は除去)、ヒストン改変、標的配列への接触し易さの増加又は低減によるか、又は三次元折り畳みの促進によるなどの、標的配列のクロマチン状態の操作であってもよい。目的のゲノム遺伝子座における標的配列の操作によってヒトを含む生物若しくは哺乳動物又は非ヒト哺乳動物若しくは生物を改変する方法が言及される場合、これは生物(又は哺乳動物)に全体として適用されても、又は(その生物が多細胞生物である場合)当該生物の単一細胞若しくは細胞集団だけに適用されてもよいことは理解されるであろう。例えばヒトの場合、出願者らは特に単一細胞又は細胞集団を想定し、それらは好ましくはex vivoで改変されて、次に再び導入され得る。この場合、生検又は他の組織試料若しくは生体液試料が必要となり得る。これに関して幹細胞もまた特に好ましい。しかし、当然ながらin vivo実施形態もまた想定される。そして本発明は、HSCに関して特に有利である。
本発明は、一部の実施形態では、例えば、
I.第1のCRISPR−Cas(例えば、Cpf1)系RNA(RNA)ポリヌクレオチド配列であって、
(a)第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列、
(b)第1のダイレクトリピート配列、及び
を含む第1のポリヌクレオチド配列、
II.第2のCRISPR−Cas(例えば、Cpf1)系ガイドRNAポリヌクレオチド配列であって、
(a)第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列、
(b)第2のダイレクトリピート配列、及び
を含む第2のポリヌクレオチド配列、及び
III.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み、且つ1つ以上の突然変異を含むCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列[(a)、(b)及び(c)は5’から3’への方向に並ぶ];又は
IV.I.〜III.の1つ以上の1つ又は複数の発現産物、例えば第1及び第2のダイレクトリピート配列、CRISPR酵素;
[転写されると、第1及び第2のガイド配列がそれぞれ第1及び第2のCRISPR複合体と第1及び第2の標的配列との配列特異的結合を誘導し、第1のCRISPR複合体が、(1)第1の標的配列にハイブリダイズする第1のガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含み、第2のCRISPR複合体が、(1)第2の標的配列にハイブリダイズする第2のガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含み、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列がDNA又はRNAであり、及び第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の切断を誘導し、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の切断を誘導して二本鎖切断を生じさせ、それにより生物又は非ヒト生物を改変する]を含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を含む粒子をHSCに接触させることによる送達するステップを含む、HSCの目的のゲノム遺伝子座であって、例えば異常タンパク質発現又は疾患条件若しくは状態に関連する突然変異に関連する目的のゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1及び第2の標的配列の操作によって生物又は非ヒト生物を改変する方法を包含し、;及びこの方法は、任意選択で、例えば、HDR鋳型を含有するHSCと接触する粒子を介するか、又はHDR鋳型を含有する別の粒子にHSCを接触させることにより、HDR鋳型を送達するステップもまた含むことができ、ここでHDR鋳型は正常型又は低度異常型のタンパク質の発現をもたらし;「正常」は野生型に関するものであり、及び「異常」は病態又は疾患状態を引き起こすタンパク質発現であってよく;及び任意選択でこの方法は、生物又は非ヒト生物からHSCを単離又は入手するステップ、任意選択でこのHSC集団を拡大するステップ、1つ以上の粒子とHSCとの接触を実施して改変されたHSC集団を入手するステップ、任意選択で改変HSCの集団を拡大するステップを含み、及び任意選択で改変HSCを生物又は非ヒト生物に投与するステップとを含む、前記ゲノム遺伝子座のコードエレメント、非コードエレメント又は調節エレメント内の標的配列の操作を含む方法。本発明の一部の方法において、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、第1及び第2のガイド配列、第1及び第2のダイレクトリピート配列の一部又は全部がRNAである。本発明のさらなる実施形態において、CRISPR酵素をコードする配列、第1及び第2のガイド配列、第1及び第2のダイレクトリピート配列をコードするポリヌクレオチドはRNAであり、リポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、又は遺伝子銃によって送達される;しかし、送達は粒子によることが有利である。本発明の特定の実施形態において、第1及び第2のダイレクトリピートは100%の同一性を共有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上のベクターを含むベクター系内に含まれ得る。好ましい実施形態において、第1のCRISPR酵素は、その酵素が相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有し、第2のCRISPR酵素は、その酵素が非相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有する。或いは、第1の酵素が非相補鎖ニッキング酵素であってもよく、及び第2の酵素が相補鎖ニッキング酵素であってもよい。本発明の好ましい方法において、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の切断を誘導し、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の切断を誘導することにより、5’オーバーハングが生じる。本発明の実施形態において、5’オーバーハングは高々200塩基対、好ましくは高々100塩基対、又はより好ましくは高々50塩基対である。本発明の実施形態において、5’オーバーハングは少なくとも26塩基対、好ましくは少なくとも30塩基対、又はより好ましくは34〜50塩基対である。
本発明は、一部の実施形態では、例えば、
I.第1の調節エレメントであって、
(a)第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列、及び
(b)少なくとも1つ以上のダイレクトリピート配列
に機能的に連結している第1の調節エレメント、
II.第2の調節エレメントであって、
(a)第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列、及び
(b)少なくとも1つ以上のダイレクトリピート配列
に機能的に連結している第2の調節エレメント、
III.CRISPR酵素(例えば、Cpf1)をコードする酵素コード配列に機能的に連結している第3の調節エレメント、及び
V.I.〜IV.の1つ以上の1つ又は複数の発現産物、例えば第1及び第2のダイレクトリピート配列、CRISPR酵素;
[転写されると、構成成分I、II、III及びIVが系の同じ又は異なるベクターに位置し、且つ第1及び第2のガイド配列がそれぞれ第1及び第2の標的配列に対する第1及び第2のCRISPR複合体の配列特異的結合を誘導し、第1のCRISPR複合体が、(1)第1の標的配列にハイブリダイズする第1のガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含み、第2のCRISPR複合体が、(1)第2の標的配列にハイブリダイズする第2のガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含み、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列がDNA又はRNAであり、及び第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の切断を誘導し、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の切断を誘導して二本鎖切断を生じさせ、それにより生物又は非ヒト生物を改変する]を含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を含む1つ以上の粒子をHSCに接触させることにより送達するステップを含む、例えばHSCの目的のゲノム遺伝子座であって、異常タンパク質発現又は疾患条件若しくは状態に関連する突然変異に関連する目的のゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1及び第2の標的配列の操作によって生物又は非ヒト生物を改変する方法を包含し;及びこの方法は、任意選択で、例えば、HDR鋳型を含有するHSCと接触する粒子を介するか、又はHDR鋳型を含有する別の粒子にHSCを接触させることにより、HDR鋳型を送達するステップもまた含むことができ、ここでHDR鋳型は正常型又は低度異常型のタンパク質の発現をもたらし;「正常」は野生型に関するものであり、及び「異常」は病態又は疾患状態を引き起こすタンパク質発現であってよく;及び任意選択でこの方法は、生物又は非ヒト生物からHSCを単離又は入手するステップ、任意選択でこのHSC集団を拡大するステップ、1つ以上の粒子とHSCとの接触を実施して改変されたHSC集団を入手するステップ、任意選択で改変HSCの集団を拡大するステップ、及び任意選択で改変HSCを生物又は非ヒト生物に投与するステップを含み得る。
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりのベクター系も提供する。この系は、1つ、2つ、3つ又は4つの異なるベクターを含み得る。従って構成成分I、II、III及びIVは1つ、2つ、3つ又は4つの異なるベクターに位置してもよく、本明細書では、構成成分の可能な位置の全ての組み合わせが想定され、例えば:想定される全ての位置の組み合わせで、構成成分I、II、III及びIVが同じベクターに位置してもよく;構成成分I、II、III及びIVが各々異なるベクターに位置してもよく;構成成分I、II、III及びIVが合計2つ又は3つの異なるベクターに位置してもよい等である。本発明の一部の方法において、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、第1及び第2のガイド配列、第1及び第2のダイレクトリピート配列の一部又は全部がRNAである。本発明のさらなる実施形態において、第1及び第2のダイレクトリピート配列は100%の同一性を共有する。好ましい実施形態において、第1のCRISPR酵素は、その酵素が相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有し、第2のCRISPR酵素は、その酵素が非相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有する。或いは、第1の酵素が非相補鎖ニッキング酵素であってもよく、及び第2の酵素が相補鎖ニッキング酵素であってもよい。本発明のさらなる実施形態において、ウイルスベクターの1つ以上は、リポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、又は遺伝子銃によって送達される;しかし、粒子送達が有利である。
本発明の好ましい方法において、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の切断を誘導し、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の切断を誘導することにより、5’オーバーハングが生じる。本発明の実施形態において、5’オーバーハングは高々200塩基対、好ましくは高々100塩基対、又はより好ましくは高々50塩基対である。本発明の実施形態において、5’オーバーハングは少なくとも26塩基対、好ましくは少なくとも30塩基対、又はより好ましくは34〜50塩基対である。
本発明はまた、上記に記載される、又は上記に記載される方法のいずれかによる改変CRISPR酵素、組成物、系又は複合体のいずれかを含むインビトロ又はエキソビボ細胞も提供する。この細胞は真核細胞又は原核細胞であってもよい。本発明はまた、かかる細胞の子孫も提供する。本発明はまた、任意のかかる細胞又は任意のかかる子孫の産物も提供し、この産物は、CRISPR複合体の改変CRISPR酵素によって改変されたとおりの前記1つ以上の標的遺伝子座の産物である。この産物は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質であってもよい。一部のかかる産物は、CRISPR複合体の改変CRISPR酵素によって改変されていてもよい。一部のかかる改変された産物において、標的遺伝子座の産物は、前記改変CRISPR酵素によって改変されていない前記標的遺伝子座の産物と物理的に異なる。
本発明はまた、上記に記載される天然に存在しないCRISPR酵素のいずれかをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子も提供する。
任意のかかるポリヌクレオチドが、天然に存在しないCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された1つ以上の調節エレメントを更に含み得る。
1つ以上の調節エレメントを含む任意のかかるポリヌクレオチドにおいて、1つ以上の調節エレメントは、真核細胞における天然に存在しないCRISPR酵素の発現のために作動可能に構成され得る。
1つ以上の調節エレメントを含む任意のかかるポリヌクレオチドにおいて、1つ以上の調節エレメントは、原核細胞における天然に存在しないCRISPR酵素の発現のために作動可能に構成され得る。
1つ以上の調節エレメントを含む任意のかかるポリヌクレオチドにおいて、1つ以上の調節エレメントは、インビトロ系における天然に存在しないCRISPR酵素の発現のために作動可能に構成され得る。
本発明はまた、上述のポリヌクレオチド分子のいずれかを含む発現ベクターも提供する。本発明はまた、1つ又は複数のかかるポリヌクレオチド分子、例えば1つ又は複数のタンパク質及び/又は核酸構成成分を発現するように作動可能に構成されたかかるポリヌクレオチド分子、並びに1つ又は複数のかかるベクターも提供する。
本発明は更に、Cas(例えば、Cpf1)に突然変異(muation)を作成する方法又は本明細書に記載の本発明によるCRISPR酵素のオルソログである突然変異した又は改変されたCas(例えば、Cpf1)を提供し、これは、改変及び/又は突然変異のための、核酸分子、例えば、DNA、RNA、gRNA等に近接していてもよいか、又はそれに接触していてもよい当該のオルソログにおける1つ又は複数のアミノ酸、及び/又は本明細書に記載の本発明によるCRISPR酵素における本明細書に同定される1つ又は複数のアミノ酸と類似又は対応する1つ又は複数のアミノ酸を確定するステップ、及び1つ又は複数の改変及び/又は1つ又は複数の突然変異を含むか、それからなるか又はそれから本質的になるオルソログを合成し、又は調製し、又は発現させるステップ又は中性アミノ酸を荷電、例えば正電荷アミノ酸、例えばアラニンへと本明細書で考察するとおり突然変異させる、例えば改変する、例えば変更する又は突然変異させるステップを含む。このように改変されたオルソログはCRISPR−Cas系に用いることができ;及びそれを発現する1つ又は複数の核酸分子は、分子を送達する又は本明細書において考察するとおりのCRISPR−Cas系構成成分をコードするベクター又は他の送達系において使用し得る。
ある態様において、本発明は効率的なオンターゲット活性を提供し、且つオフターゲット活性を最小限に抑える。ある態様において、本発明はCRISPRタンパク質による効率的なオンターゲット切断を提供し、且つCRISPRタンパク質によるオフターゲット切断最小限に抑える。ある態様において、本発明は、DNA切断なしに遺伝子座におけるCRISPRタンパク質のガイド特異的結合を提供する。ある態様において、本発明は、遺伝子座におけるCRISPRタンパク質のガイドによって導かれる効率的なオンターゲット結合を提供し、且つCRISPRタンパク質のオフターゲット結合を最小限に抑える。従って、ある態様において、本発明は標的特異的遺伝子調節を提供する。ある態様において、本発明は、DNA切断なしに遺伝子座におけるCRISPR酵素のガイド特異的結合を提供する。従って、ある態様において、本発明は、単一のCRISPR酵素を用いてある遺伝子座で切断を提供し、且つ別の遺伝子座で遺伝子調節を提供する。ある態様において、本発明は、1つ以上のCRISPRタンパク質及び/又は酵素を用いて複数の標的の直交性の活性化及び/又は阻害及び/又は切断を提供する。
別の態様において、本発明は、エキソビボ又はインビボでの細胞プール中のゲノムにおける遺伝子の機能スクリーニング方法を提供し、この方法は、複数のCRISPR−Cas系ガイドRNA(gRNA)を含むライブラリの投与又は発現を含み、ここでスクリーニングはCRISPR酵素の使用を更に含み、CRISPR複合体は異種機能ドメインを含むように改変される。ある態様において、本発明は、ライブラリの宿主への投与又は宿主におけるインビボ発現を含むゲノムのスクリーニング方法を提供する。ある態様において、本発明は、宿主に投与されるか又は宿主において発現するアクチベーターを更に含む、本明細書に考察されるとおりの方法を提供する。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでアクチベーターはCRISPRタンパク質に付加される。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでアクチベーターはCRISPRタンパク質のN末端又はC末端に付加される。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでアクチベーターはgRNAループに付加される。ある態様において、本発明は、宿主に投与されるか又は宿主において発現するリプレッサー更に含む、本明細書に考察されるとおりの方法を提供する。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでスクリーニングは遺伝子座の遺伝子活性化、遺伝子阻害、又は切断に影響を及ぼし及びそれを検出することを含む。
ある態様において、本発明は、CRISPR−Cas複合体又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子の送達を含む本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで前記1つ又は複数の核酸分子は1つ又は複数の調節配列に作動可能に連結され、且つインビボで発現する。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでインビボ発現は、レンチウイルス、アデノウイルス、又はAAVによる。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで送達は、粒子、ナノ粒子、脂質又は細胞透過性ペプチド(CPP)による。
詳細な実施形態において、CRISPR−Cas複合体を葉緑体に標的化することが有益であり得る。多くの場合、この標的化は、葉緑体輸送ペプチド(CTP)又はプラスチド輸送ペプチドと呼ばれるN末端伸長部の存在によって実現し得る。発現ポリペプチドが植物プラスチド(例えば葉緑体)に区画化されるべきである場合、細菌供給源からの染色体トランス遺伝子が、発現ポリペプチドをコードする配列に融合した、CTP配列をコードする配列を有しなければならない。従って、外因性ポリペプチドの葉緑体への局在化は、多くの場合に、CTP配列をコードするポリヌクレオチド配列を、外因性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’領域に作動可能に連結することによって達成される。CTPは、プラスチドへの転位中のプロセシング段階で除去される。しかしながらプロセシング効率は、CTPのアミノ酸配列及びペプチドのNH2末端における近傍の配列の影響を受け得る。葉緑体を標的化するための記載されている他のオプションは、トウモロコシcab−m7シグナル配列(米国特許第7,022,896号明細書、国際公開第97/41228号パンフレット)、エンドウマメグルタチオンレダクターゼシグナル配列(国際公開第97/41228号パンフレット)及び米国特許出願公開第2009029861号明細書に記載されるCTPである。
ある態様において、本発明は、本明細書において考察するとおりのライブラリ、方法又は複合体を提供し、ここでgRNAは少なくとも1つの非コード機能性ループを有するように改変され、例えば少なくとも1つの非コード機能性ループは抑制性であり;例えば少なくとも1つの非コード機能性ループはAluを含む。
一態様において、本発明は、遺伝子産物の発現を変化させ又は改変する方法を提供する。前記方法は、遺伝子産物をコードするDNA分子を含有し及び発現する細胞に、Casタンパク質とDNA分子を標的化するガイドRNAとを含むエンジニアリングされた天然に存在しないCRISPR−Cas系を導入するステップを含むことができ、それによってガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的化し、及びCasタンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子を切断し、それによって遺伝子産物の発現が変化し;及び、Casタンパク質とガイドRNAとは天然では一緒に存在しない。本発明は更に、真核細胞での発現にコドン最適化されたCasタンパク質を包含する。好ましい実施形態において真核細胞は哺乳類細胞であり、より好ましい実施形態において哺乳類細胞はヒト細胞である。本発明の更なる実施形態において、遺伝子産物の発現は減少する。
ある態様において、本発明は、変化した細胞及びそれらの細胞の子孫、並びに当該の細胞によって作られる産物を提供する。本発明のCRISPR−Cas(例えば、Cpf1)タンパク質及び系は、改変された標的遺伝子座を含む細胞の作製に使用される。一部の実施形態において、この方法は、核酸ターゲティング複合体を標的DNA又はRNAに結合させて前記標的DNA又はRNAの切断を生じさせ、それにより標的DNA又はRNAを改変するステップを含むことができ、ここで核酸ターゲティング複合体は、前記標的DNA又はRNA内の標的配列にハイブリダイズするガイドRNAと複合体を形成した核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含む。一態様において、本発明は、細胞の遺伝子座を修復する方法を提供する。別の態様において、本発明は、真核細胞におけるDNA又はRNAの発現を改変する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、核酸ターゲティング複合体をDNA又はRNAに結合させて、前記結合により前記DNA又はRNAの発現の増加又は減少を生じさせるステップを含み;ここで核酸ターゲティング複合体は、ガイドRNAと複合体を形成した核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含む。同様の考察及び条件が、標的DNA又はRNAを改変する方法にも上記のとおり適用される。実際上、これらの試料採取、培養及び再導入の選択肢は本発明の全態様に適用される。ある態様において、本発明は、真核細胞の標的DNA又はRNAを改変する方法を提供し、これはインビボ、エキソビボ又はインビトロであってもよい。一部の実施形態において、本方法は、ヒト又は非ヒト動物から細胞又は細胞集団を試料採取するステップ、及び1つ又は複数の細胞を改変するステップを含む。培養は任意の段階でエキソビボで行われ得る。かかる細胞は、限定なしに、植物細胞、動物細胞、任意の生物の特定の細胞型、例えば、幹細胞、免疫細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、心血管細胞、上皮細胞、幹細胞などであり得る。細胞は、本発明により改変されると、遺伝子産物を例えば制御された量で産生することができ、これは用途に応じて増加又は減少させてもよく、及び/又は突然変異させてもよい。特定の実施形態において、細胞の遺伝子座が修復される。この1つ又は複数の細胞が、更には非ヒト動物又は植物に再導入されてもよい。再導入される細胞について、細胞は幹細胞であることが好ましい場合もある。
ある態様において、本発明は、CRISPR系、又は構成成分を一過性に含む細胞を提供する。例えば、CRISPRタンパク質又は酵素及び核酸が細胞に一過性に提供され、遺伝子座が変化すると、続いてCRISPR系の1つ以上の構成成分の量が減少する。続いて、CRISPRの媒介による遺伝子変化を得た細胞、その細胞の子孫、及びその細胞を含む生物は、1つ以上のCRISPR系構成成分を低下した量で含むか、又はその1つ以上のCRISPR系構成成分をもはや含有しない。一つの非限定的な例は、本明細書に更に記載するような自己不活性化CRISPR−Cas系である。従って、本発明は、CRISPR−Cas系によって変化した1つ以上の遺伝子座を含むが、1つ以上のCRISPR系構成成分を本質的に欠いている細胞、及び生物、並びに細胞及び生物の子孫を提供する。特定の実施形態において、CRISPR系構成成分は実質的に存在しない。かかる細胞、組織及び生物は、有利には、所望の又は選択された遺伝子変化を含むが、潜在的に非特異的に作用し、安全性の問題につながり、又は規制当局の承認の妨げとなる可能性のあるCRISPR−Cas構成成分又はその残遺物は失われている。更に、本発明は、当該の細胞、生物、並びに細胞及び生物の子孫によって作られる産物を提供する。
Cpf1による標的遺伝子座の遺伝子編集又は変化
二本鎖切断点又は鎖のうちの一方における一本鎖切断点は、有利には、修正が起こるように標的位置に十分に近くなければならない。ある実施形態において、その距離は50、100、200、300、350又は400ヌクレオチド以下である。理論によって拘束されることを望むものではないが、切断点が標的位置に十分に近く、末端リセクションの間にエキソヌクレアーゼの媒介による除去を受ける領域内に切断点がなければならないと考えられる。鋳型核酸配列は末端リセクション領域内の配列の修正にのみ用いられ得るため、標的位置と切断点との間の距離が大き過ぎる場合、末端リセクションに突然変異が含まれないことになり得るとともに、ひいては修正されないことになり得る。
HDR媒介修正の誘導を目的としてガイドRNA及びCpf1ヌクレアーゼが二本鎖切断を誘導する実施形態において、切断部位は0〜200bp(例えば、0〜175、0〜150、0〜125、0〜100、0〜75、0〜50、0〜25、25〜200、25〜175、25〜150、25〜125、25〜100、25〜75、25〜50、50〜200、50〜175、50〜150、50〜125、50〜100、50〜75、75〜200、75〜175、75〜150、75〜125、75〜100bp)だけ標的位置から離れている。ある実施形態において、切断部位は、0〜100bp(例えば、0〜75、0〜50、0〜25、25〜100、25〜75、25〜50、50〜100、50〜75又は75〜100bp)だけ標的位置から離れている。更なる実施形態では、HDR媒介修正を誘導するため、Cpf1又はそのオルソログ若しくはホモログと複合体を形成した2つ以上のガイドRNAを使用して多重化切断を誘導し得る。
相同性アームは、例えば、リセクトされた一本鎖オーバーハングがドナー鋳型内の相補領域を見付けることが可能になるように、少なくとも末端リセクションが起こり得る領域の範囲までは延在していなければならない。全長は、プラスミドサイズ又はウイルスパッケージング制限などのパラメータによって制限されることになり得る。ある実施形態において、相同性アームは反復エレメント内までは延在しなくてもよい。例示的相同性アーム長さとしては、少なくとも50、100、250、500、750又は1000ヌクレオチドが挙げられる。
標的位置は、本明細書で使用されるとき、Cpf1分子依存性過程によって改変される標的核酸又は標的遺伝子(例えば染色体)上にある部位を指す。例えば、標的位置は、標的核酸の改変Cpf1分子切断及び鋳型核酸の誘導による標的位置の改変、例えば修正であり得る。ある実施形態において、標的位置は、1つ以上のヌクレオチドが加えられる標的核酸上の2つのヌクレオチド間、例えば隣接するヌクレオチド間の部位であり得る。標的位置は、鋳型核酸によって変化する、例えば修正される1つ以上のヌクレオチドを含み得る。ある実施形態において、標的位置は標的配列(例えば、ガイドRNAが結合する配列)の範囲内にある。ある実施形態において、標的位置は標的配列(例えば、ガイドRNAが結合する配列)の上流又は下流にある。
鋳型核酸は、この用語が本明細書で使用されるとき、標的位置の構造を変化させるためにCpf1分子及びガイドRNA分子と併せて用いることのできる核酸配列を指す。ある実施形態において、標的核酸は、典型的には1つ又は複数の切断部位又はその近傍に鋳型核酸の配列の一部又は全てを有するように改変される。ある実施形態において、鋳型核酸は一本鎖である。代替的実施形態において、鋳型核酸(nuceic acid)は二本鎖である。ある実施形態において、鋳型核酸はDNA、例えば二本鎖DNAである。代替的実施形態において、鋳型核酸は一本鎖DNAである。
ある実施形態において、鋳型核酸は、相同組換えに関与することによって標的位置の構造を変化させる。ある実施形態において、鋳型核酸は標的位置の配列を変化させる。ある実施形態において、鋳型核酸は、標的核酸への改変された又は天然に存在しない塩基の取込みをもたらす。
鋳型配列は、切断の媒介又は触媒による標的配列との組換えを起こし得る。ある実施形態において、鋳型核酸は、Cpf1媒介性切断イベントによって切断される標的配列上の部位に対応する配列を含み得る。ある実施形態において、鋳型核酸は、第1のCpf1媒介性イベントで切断される標的配列上の第1の部位、及び第2のCpf1媒介性イベントで切断される標的配列上の第2の部位の両方に対応する配列を含み得る。
特定の実施形態において、鋳型核酸は、翻訳される配列のコード配列に変化をもたらす配列、例えば、タンパク質産物中のあるアミノ酸の別のアミノ酸との置換、例えば、野生型対立遺伝子への突然変異対立遺伝子の形質転換、突然変異対立遺伝子への野生型対立遺伝子の形質転換、及び/又は終止コドンの導入、アミノ酸残基の挿入、アミノ酸残基の欠失、又はナンセンス突然変異をもたらすものを含むことができる。特定の実施形態において、鋳型核酸は、非コード配列の変化、例えば、エクソン又は5’若しくは3’非翻訳若しくは非転写領域の変化をもたらす配列を含むことができる。かかる変化には、制御エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサーの変化、及びシス作用性又はトランス作用性制御エレメントの変化が含まれる。
標的遺伝子の標的位置と相同性を有する鋳型核酸を使用して標的配列の構造を変化させてもよい。鋳型配列は、望ましくない構造、例えば望ましくない又は突然変異のヌクレオチドを変化させるために用いられ得る。鋳型核酸は、組み込まれると、陽性対照エレメントの活性の減少;陽性対照エレメントの活性の増加;陰性対照エレメントの活性の減少;陰性対照エレメントの活性の増加;遺伝子の発現の減少;遺伝子の発現の増加;障害又は疾患に対する抵抗性の増加;ウイルス侵入に対する抵抗性の増加;突然変異の修正又は望ましくないアミノ酸残基の変化、遺伝子産物の生物学的特性の付与、増加、消失若しくは減少、例えば酵素の酵素活性の増加、又は遺伝子産物が別の分子との相互作用する能力の増加をもたらす配列を含み得る。
鋳型核酸は、標的配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヌクレオチド又はそれ以上の配列の変更をもたらす配列を含み得る。ある実施形態において、鋳型核酸は、20±10、30±10、40±10、50±10、60±10、70±10、80±10、90±10、100±10、110±10、120±10、130±10、140±10、150±10、160±10、170±10、180±10、190±10、200±10、210±10、又は220±10ヌクレオチド長であってもよい。ある実施形態において、鋳型核酸は、30±20、40±20、50±20、60±20、70±20、80±20、90±20、100±20、110±20、120±20、130±20、140±20、150±20、160±20、170±20、180±20、190±20、200±20、210±20、又は220±20ヌクレオチド長であってもよい。ある実施形態において、鋳型核酸は、10〜1,000、20〜900、30〜800、40〜700、50〜600、50〜500、50〜400、50〜300、50〜200、又は50〜100ヌクレオチド長である。
鋳型核酸は以下の構成成分を含む:[5’相同性アーム]−[置換配列]−[3’相同性アーム]。相同性アームが染色体への組換え、従って望ましくないエレメント、例えば突然変異又はシグネチャの置換配列による置換をもたらす。ある実施形態において、相同性アームは最も遠位の切断部位に隣接する。ある実施形態において、5’相同性アームの3’末端は置換配列の5’末端の隣の位置である。ある実施形態において、5’相同性アームは、置換配列の5’末端から5’側に少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000ヌクレオチド延在し得る。ある実施形態において、3’相同性アームの5’末端は置換配列の3’末端の隣の位置である。ある実施形態において、3’相同性アームは、置換配列の3’末端から3’側に少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000ヌクレオチド延在し得る。
特定の実施形態において、ある種の配列リピートエレメントが含まれること回避するため、一方又は両方の相同性アームが短くされ得る。例えば、配列リピートエレメントを回避するため5’相同性アームが短くされてもよい。他の実施形態において、配列リピートエレメントを回避するため3’相同性アームが短くされてもよい。一部の実施形態において、ある種の配列リピートエレメントが含まれることを回避するため、5’及び3’相同性アームの両方が短くされてもよい。
特定の実施形態において、突然変異を修正するための鋳型核酸は、一本鎖オリゴヌクレオチドとして用いられるように設計され得る。一本鎖オリゴヌクレオチドを用いるとき、5’及び3’相同性アームは約200塩基対(bp)長、例えば、少なくとも25、50、75、100、125、150、175、又は200bp長にまで及ぶ範囲であり得る。
Cpf1エフェクタータンパク質複合体は機能エフェクターを送達することができる
遺伝子をDNAレベルで突然変異させることにより発現を永久的に消失させるCRISPR−Cas媒介性遺伝子ノックアウトと異なり、CRISPR−Casノックダウンは人工転写因子を用いて遺伝子発現を一時的に低下させることが可能である。AsCpf1タンパク質によるD908A、E993A、D1263Aなど、Cpf1タンパク質の両方のDNA切断ドメインにある鍵となる残基を突然変異させると、触媒的に不活性なCpf1が生成される。触媒的に不活性なCpf1はガイドRNAと複合体を形成し、当該のガイドRNAのターゲティングドメインによって特定されるDNA配列に局在化するが、しかしながら、これは標的DNAを切断しない。AsCpf1タンパク質など、不活性Cpf1タンパク質をエフェクタードメイン、例えば転写抑制ドメインと融合させると、ガイドRNAによって特定される任意のDNA部位へとそのエフェクターをリクルートすることが可能になる。特定の実施形態において、Cpf1を転写抑制ドメインに融合させて遺伝子のプロモーター領域にリクルートしてもよい。特に遺伝子抑制について、本明細書では、内因性転写因子の結合部位を遮断すれば、遺伝子発現を下方制御する助けとなり得ることが企図される。別の実施形態において、不活性Cpf1をクロマチン修飾タンパク質と融合させてもよい。クロマチン状態が変化すると、標的遺伝子の発現の低下が起こり得る。
ある実施形態において、ガイドRNA分子は、既知の転写応答エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー等)、既知の上流活性化配列、及び/又は標的DNAの発現を制御可能であると疑われる未知又は既知の機能の配列を標的とすることができる。
一部の方法において、標的ポリヌクレオチドを不活性化させることにより細胞に発現の改変を生じさせ得る。例えば、CRISPR複合体が細胞内の標的配列に結合すると、標的ポリヌクレオチドが不活性化され、そのためその配列が転写されないか、コードされたタンパク質が産生されないか、又は配列が野生型配列のようには機能しなくなる。例えば、タンパク質又はマイクロRNAコード配列を不活性化してタンパク質が産生されないようにし得る。
特定の実施形態において、CRISPR酵素は、D917A、E1006A及びD1225Aからなる群から選択される1つ以上の突然変異を含み、及び/又は1つ以上の突然変異はCRISPR酵素のRuvCドメインにあるか、又は他に本明細書で考察するとおりの突然変異である。一部の実施形態において、CRISPR酵素は触媒ドメインに1つ以上の突然変異を有し、ここで転写されると、ダイレクトリピート配列が単一のステムループを形成し、及びガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を導き、及びここで酵素は機能ドメインを更に含む。一部の実施形態において、機能ドメインは転写活性化ドメイン、好ましくはVP64である。一部の実施形態において、機能ドメインは転写抑制ドメイン、好ましくはKRABである。一部の実施形態において、転写抑制ドメインはSID、又はSIDのコンカテマー(例えばSID4X)である。一部の実施形態において、機能ドメインは後成的に改変されるドメインであり、後成的に改変される酵素が提供される。一部の実施形態において、機能ドメインは活性化ドメインであり、これはP65活性化ドメインであってもよい。
Cpf1エフェクタータンパク質複合体又はその構成成分の送達
本開示及び当該技術分野における知識から、CRISPR−Cas系、特に本明細書に記載される新規CRISPR系、又はその構成成分又はその核酸分子(例えばHDR鋳型を含む)又はその構成成分をコードし又は提供する核酸分子は、本明細書に概略的にも詳細にも記載される送達系によって送達し得る。
ベクター送達、例えば、プラスミド、ウイルス送達:CRISPR酵素、例えばCpf1、及び/又は任意の本RNA、例えば、ガイドRNAは、任意の適切なベクター、例えば、プラスミド又はウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルス、又は他の種類のウイルスベクター、又はこれらの組み合わせを用いて送達することができる。Cpf1及び1つ以上のガイドRNAを1つ以上のベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクターにパッケージングすることができる。一部の実施形態において、ベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクターは、例えば筋肉注射によって目的の組織に送達されるが、一方で送達は、静脈内、経皮、鼻腔内、口腔、粘膜、又は他の送達方法によることもある。かかる送達は単回投与によっても、又は複数回投与によってもよい。当業者は、本明細書で送達される実際の投薬量が、ベクターの選択、標的細胞、生物、又は組織、治療する対象の全身状態、求められる形質転換/改変の程度、投与経路、投与様式、求められる形質転換/改変の種類など、種々の要因に応じて大きく異なり得ることを理解する。
かかる用量は、例えば、担体(水、生理食塩水、エタノール、グリセロール、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油など)、希釈剤、薬学的に許容可能な担体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は当該技術分野で公知の他の化合物を更に含み得る。投薬量は、1つ以上の薬学的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩を更に含み得る。加えて、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質、ゲル又はゲル化物質、香料、着色剤、ミクロスフェア、ポリマー、懸濁剤などの補助物質もまたこの中に存在し得る。加えて、1つ以上の他の従来の医薬成分、例えば、防腐剤、湿潤剤、懸濁剤、界面活性剤、酸化防止剤、固化防止剤、充填剤、キレート化剤、コーティング剤、化学安定剤などもまた、特に投薬形態が再構成可能な形態である場合に存在し得る。好適な例示的成分として、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、フェニルエチルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、パラクロロフェノール、ゼラチン、アルブミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。薬学的に許容可能な賦形剤の徹底的な考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.1991)(参照により本明細書に援用される)において利用可能である。
本明細書のある実施形態において、送達はアデノウイルスを介し、これは、少なくとも1×105粒子(粒子単位、puとも称される)のアデノウイルスベクターを含有する単回ブースター用量であり得る。本明細書のある実施形態において、用量は好ましくは、少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10〜1×1012粒子)、より好ましくは少なくとも約1×10粒子、より好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10〜1×1011粒子又は約1×10〜1×1012粒子)、及び最も好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10〜1×1010粒子又は約1×10〜1×1012粒子)、又は更には少なくとも約1×1010粒子(例えば、約1×1010〜1×1012粒子)のアデノウイルスベクターである。或いは、用量は、約1×1014粒子以下、好ましくは約1×1013粒子以下、更により好ましくは約1×1012粒子以下、更により好ましくは約1×1011粒子以下、及び最も好ましくは約1×1010粒子以下(例えば、約1×10粒子(articles)以下)を含む。従って、用量は、例えば、約1×10粒子単位(pu)、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×1010pu、約2×1010pu、約4×1010pu、約1×1011pu、約2×1011pu、約4×1011pu、約1×1012pu、約2×1012pu、又は約4×1012puのアデノウイルスベクターを含む単回用量のアデノウイルスベクターを含有し得る。例えば、2013年6月4日に付与されたNabel,et.al.に対する米国特許第8,454,972 B2号明細書(参照によって本明細書に援用される)のアデノウイルスベクター、及びその第29欄第36〜58行にある投薬量を参照のこと。本明細書のある実施形態において、アデノウイルスは複数回用量で送達される。
本明細書のある実施形態において、送達はAAVを介する。ヒトに対するAAVのインビボ送達についての治療上有効な投薬量は、約1×1010〜約1×1010の機能性AAV/ml溶液を含有する約20〜約50mlの生理食塩水の範囲であると考えられる。投薬量は、治療利益と任意の副作用との均衡がとれるように調整され得る。本明細書のある実施形態において、AAV用量は、概して、約1×10〜1×1050ゲノムAAV、約1×10〜1×1020ゲノムAAV、約1×1010〜約1×1016ゲノム、又は約1×1011〜約1×1016ゲノムAAVの濃度範囲である。ヒト投薬量は約1×1013ゲノムAAVであってもよい。かかる濃度は、約0.001ml〜約100ml、約0.05〜約50ml、又は約10〜約25mlの担体溶液で送達され得る。他の効果的な投薬量が、当業者により、用量反応曲線を作成するルーチンの試験を用いて容易に確立され得る。例えば、2013年3月26日に付与されたHajjar,et al.に対する米国特許第8,404,658 B2号明細書、第27欄、第45〜60行を参照のこと。
本明細書のある実施形態において、送達はプラスミドを介する。かかるプラスミド組成物では、投薬量は、反応を誘発するのに十分な量のプラスミドでなければならない。例えば、プラスミド組成物中のプラスミドDNAの好適な分量は、個体70kg当たり約0.1〜約2mg、又は約1μg〜約10μgであり得る。本発明のプラスミドは、概して、(i)プロモーター;(ii)前記プロモーターに作動可能に連結された、CRISPR酵素をコードする配列;(iii)選択可能マーカー;(iv)複製起点;及び(v)(ii)の下流で(ii)に作動可能に連結された転写ターミネーターを含み得る。プラスミドはCRISPR複合体のRNA構成成分もコードし得るが、これらのうちの1つ以上は、代わりに異なるベクター上にコードされてもよい。
本明細書の用量は平均70kgの個体に基づく。投与頻度は医学又は獣医学の実務者(例えば、医師、獣医師)、又は当該技術分野の科学者の裁量の範囲内にある。また、実験に使用されるマウスは典型的には約20gであり、マウス実験から70kgの個体にスケールアップし得ることも注記される。
一部の実施形態では本発明のRNA分子はリポソーム製剤又はリポフェクチン製剤などで送達され、当業者に周知の方法により調製することができる。かかる方法は、例えば、米国特許第5,593,972号明細書、同第5,589,466号明細書及び同第5,580,859号明細書(これらは参照により本明細書に援用される)に記載されている。特に哺乳類細胞へのsiRNA送達の増強及び改良を目的とした送達系が開発されており(例えば、Shen et al FEBS Let.2003,539:111−114;Xia et al.,Nat.Biotech.2002,20:1006−1010;Reich et al.,Mol.Vision.2003,9:210−216;Sorensen et al.,J.Mol.Biol.2003,327:761−766;Lewis et al.,Nat.Gen.2002,32:107−108及びSimeoni et al.,NAR 2003,31,11:2717−2724を参照)、本発明に適用し得る。siRNAは近年、霊長類における遺伝子発現の抑制への使用が成功しており(例えば、Tolentino et al.,Retina 24(4):660を参照)、これは本発明にも適用し得る。
実際、RNA送達はインビボ送達の有用な方法である。リポソーム又はナノ粒子を用いてCpf1及びgRNA(及び、例えばHR修復鋳型)を細胞内に送達することが可能である。従って、Cpf1などのCRISPR酵素の送達、及び/又は本発明のRNAの送達は、RNA形態で、微小胞、リポソーム又は1つ又は複数の粒子を介することができる。例えば、Cpf1 mRNA及びgRNAをインビボ送達用にリポソーム粒子にパッケージングすることができる。リポソームトランスフェクション試薬、例えば、Life Technologiesのリポフェクタミン及び市販の他の試薬は、RNA分子を肝臓に効果的に送達することができる。
同様に好ましいRNAの送達手段としてはまた、RNAの粒子または粒子による送達(Cho,S.,Goldberg,M.,Son,S.,Xu,Q.,Yang,F.,Mei,Y.,Bogatyrev,S.,Langer,R.and Anderson,D.,「内皮細胞への低分子干渉RNA送達用の脂質様ナノ粒子(Lipid−like nanoparticles for small interfering RNA delivery to endothelial cells)」,Advanced Functional Materials,19:3112−3118,2010)又はエキソソームによる送達(Schroeder,A.,Levins,C.,Cortez,C.,Langer,R.,and Anderson,D.,「siRNA送達用の脂質ベースのナノ療法(Lipid−based nanotherapeutics for siRNA delivery)」,Journal of Internal Medicine,267:9−21,2010,PMID:20059641)も挙げられる。実際、エキソソームは、CRISPR系とある程度の類似性を有する系であるsiRNAの送達に特に有用であることが示されている。例えば、El−Andaloussi S,et al.(「インビトロ及びインビボでのsiRNAのエキソソーム媒介送達(Exosome−mediated delivery of siRNA in vitro and in vivo)」Nat Protoc.2012 Dec;7(12):2112−26.doi:10.1038/nprot.2012.131.Epub 2012 Nov 15)は、エキソソームがいかに種々の生物学的障壁を越えた薬物送達に有望なツールであるか、及びsiRNAのインビトロ及びインビボ送達に利用できるかを記載している。彼らの手法は、発現ベクターのトランスフェクションにより、ペプチドリガンドに融合したエキソソームタンパク質を含む標的エキソソームを作成するものである。次にトランスフェクト細胞上清からエキソソームが精製され、特徴付けられた後、RNAがエキソソームにロードされる。本発明に係る送達又は投与はエキソソームを用いて、詳細には、限定はされないが脳に対して行うことができる。ビタミンE(α−トコフェロール)をCRISPR Casにコンジュゲートさせて、例えばUno et al.(HUMAN GENE THERAPY 22:711−719(June 2011))によって行われた脳への低分子干渉RNA(siRNA)の送達と同じように、高密度リポタンパク質(HDL)と共に脳に送達することができる。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はフリーTocsiBACE又はToc−siBACE/HDLが充填され且つBrain Infusion Kit 3(Alzet)に接続された浸透圧ミニポンプ(モデル1007D;Alzet,Cupertino,CA)でマウスが注入された。背側第三脳室内への注入のため、正中線上でブレグマから約0.5mm後方に脳注入カニューレが留置された。Uno et al.は、HDLを含む僅か3nmolのToc−siRNAが、同じICV注入法による同程度の標的の減少を誘導可能であったことを見出した。脳を標的としてHDLと共投与される、α−トコフェロールにコンジュゲートされた同様の投薬量のCRISPR Casを本発明においてヒトで企図することができ、例えば、脳を標的とする約3nmol〜約3μmolのCRISPR Casを企図し得る。Zou et al.((HUMAN GENE THERAPY 22:465−475(April 2011))は、ラットの脊髄におけるインビボでの遺伝子サイレンシングのためのPKCγを標的とする短鎖ヘアピンRNAのレンチウイルス媒介送達方法を記載している。Zou et al.は、1×10形質導入単位(TU)/mlの力価を有する約10μlの組換えレンチウイルスをくも膜下カテーテルによって投与した。脳を標的とするレンチウイルスベクターにおいて発現する同様の投薬量のCRISPR Casを本発明においてヒトに企図することができ、例えば、1×10形質導入単位(TU)/mlの力価を有するレンチウイルスにおける脳を標的とする約10〜50mlのCRISPR Casを企図し得る。
脳への局所送達に関して、これは様々な方法で達成することができる。例えば、物質を線条体内に例えば注入によって送達することができる。注入は、開頭により定位的に行うことができる。
NHEJ又はHR効率を増強させることもまた、送達の助けとなる。NHEJ効率は、Trex2などの末端プロセシング酵素の共発現によって増強することが好ましい(Dumitrache et al.Genetics.2011 August;188(4):787−797)。HR効率は、Ku70及びKu86などのNHEJ機構を一過性に阻害して増加させることが好ましい。HR効率はまた、RecBCD、RecAなどの原核生物又は真核生物相同組換え酵素の共発現によって増加させることもできる。
パッケージング及びプロモーター
インビボでのゲノム改変を媒介するため、本発明のCpf1をコードする核酸分子、例えばDNAをベクター、例えばウイルスベクターにパッケージングする方法としては、以下が挙げられる:
・NHEJ媒介遺伝子ノックアウトを達成するため:
・シングルウイルスベクター:
・2つ以上の発現カセットを含むベクター:
・プロモーター−Cpf1コード核酸分子−ターミネーター
・プロモーター−gRNA1−ターミネーター
・プロモーター−gRNA2−ターミネーター
・プロモーター−gRNA(N)−ターミネーター(ベクターのサイズ限界まで)
・ダブルウイルスベクター:
・Cpf1の発現をドライブするための1つの発現カセットを含むベクター1
・プロモーター−Cpf1コード核酸分子−ターミネーター
・1つ以上のガイドRNAの発現をドライブするためのもう1つの発現カセットを含むベクター2
・プロモーター−gRNA1−ターミネーター
・プロモーター−gRNA(N)−ターミネーター(ベクターのサイズ限界まで)
・相同依存性修復を媒介するため。
・上記に記載されるシングル及びダブルウイルスベクター手法に加えて、相同依存性修復鋳型の送達のため更なるベクターを使用することができる。
Cpf1コード核酸分子の発現のドライブに用いられるプロモーターには、以下が含まれ得る:
−AAV ITRはプロモーターとして役立ち得る:これは、追加のプロモーターエレメント(ベクター内で場所をとり得る)の必要性がなくなる点で有利である。空いた追加の空間を使用して、追加のエレメント(gRNAなど)の発現をドライブすることができる。また、ITR活性は比較的弱いため、Cpf1の過剰発現による潜在的な毒性を軽減するために使用することができる。
−偏在発現には、使用し得るプロモーターとしては、CMV、CAG、CBh、PGK、SV40、フェリチン重鎖又は軽鎖等が挙げられる。
脳又は他のCNSでの発現には、プロモーター:全てのニューロン用のシナプシンI、興奮性ニューロン用のCaMKIIα、GABA作動性ニューロン用のGAD67又はGAD65又はVGAT等を使用することができる。
肝臓での発現には、アルブミンプロモーターを使用することができる。
肺での発現には、SP−Bを使用することができる。
内皮細胞には、ICAMを使用することができる。
造血細胞には、IFNβ又はCD45を使用することができる。
骨芽細胞には、OG−2を使用することができる。
ガイドRNAのドライブに用いられるプロモーターには、以下が含まれ得る:
−U6又はH1などのPol IIIプロモーター
−gRNAを発現させるためのPol IIプロモーター及びイントロンカセットの使用。
アデノ随伴ウイルス(AAV)
Cpf1及び1つ以上のガイドRNAは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルス又は他のプラスミド又はウイルスベクタータイプを使用して、詳細には、例えば、米国特許第8,454,972号明細書(アデノウイルス用の製剤、用量)、同第8,404,658号明細書(AAV用の製剤、用量)及び同第5,846,946号明細書(DNAプラスミド用の製剤、用量)並びにレンチウイルス、AAV及びアデノウイルスが関わる臨床試験及びそのような臨床試験に関する刊行物からの製剤及び用量を用いて送達することができる。例えば、AAVについて、投与経路、製剤及び用量は、米国特許第8,454,972号明細書及びAAVが関わる臨床試験にあるとおりであってもよい。アデノウイルスについては、投与経路、製剤及び用量は、米国特許第8,404,658号明細書及びアデノウイルスが関わる臨床試験にあるとおりであってもよい。プラスミド送達については、投与経路、製剤及び用量は、米国特許第5,846,946号明細書及びプラスミドが関わる臨床試験にあるとおりであってもよい。用量は、平均70kgの個体(例えば男性成人ヒト)に基づくか、又はそれに当てはめてもよく、異なる体重及び種の患者、対象、哺乳動物用に調整することができる。投与頻度は、患者又は対象の年齢、性別、全般的な健康、他の条件並びに対処される特定の状態又は症状を含めた通常の要因に応じて、医学又は獣医学実務者(例えば、医師、獣医師)の範囲内である。ウイルスベクターは、目的の組織に注射することができる。細胞型特異的ゲノム改変について、Cpf1の発現は細胞型特異的プロモーターによってドライブすることができる。例えば、肝臓特異的発現にはアルブミンプロモーターが用いられてもよく、及びニューロン特異的発現には(例えばCNS障害を標的化するため)シナプシンIプロモーターが用いられてもよい。
インビボ送達に関しては、他のウイルスベクターと比べて幾つかの理由でAAVが有利である:
低毒性(これは、免疫応答を活性化させ得る細胞粒子の超遠心が不要な精製方法に起因し得る)及び
宿主ゲノムに組み込まれないため、挿入突然変異誘発を引き起こす確率の低さ。
AAVは4.5又は4.75Kbのパッケージング限界を有する。これは、Cpf1並びにプロモーター及び転写ターミネーターが全て同じウイルスベクターに収まる必要があることを意味する。4.5又は4.75Kbよりも大きい構築物はウイルス産生の大幅な低下につながり得る。SpCas9はかなり大きく、遺伝子それ自体が4.1Kbを超えるため、AAVにパッケージングすることが困難である。従って本発明の実施形態は、より短いCpf1のホモログを利用することを含む。
AAVに関して、AAVは、AAV1、AAV2、AAV5又はこれらの任意の組み合わせであり得る。標的化しようとする細胞に関連するAAVのAAVを選択することができる;例えば、脳又は神経細胞の標的化にはAAV血清型1、2、5又はハイブリッドカプシドAAV1、AAV2、AAV5又はこれらの任意の組み合わせを選択することができ;及び心臓組織の標的化にはAAV4を選択することができる。AAV8は肝臓への送達に有用である。本明細書におけるプロモーター及びベクターが個々に好ましい。これらの細胞に関する特定のAAV血清型の一覧は以下のとおりである(Grimm,D.et al,J.Virol.82:5887−5911(2008)を参照)。
Figure 0006914274
レンチウイルス
レンチウイルスは、有糸分裂細胞及び分裂終了細胞の両方でその遺伝子の感染能及び発現能を有する複合的レトロウイルスである。最も一般的には、公知のレンチウイルスはヒト免疫不全ウイルス(HIV)であり、これは他のウイルスのエンベロープ糖タンパク質を用いて広範囲の細胞型を標的化する。
レンチウイルスは以下のとおり調製し得る。pCasES10(これはレンチウイルストランスファープラスミド骨格を含有する)のクローニング後、低継代(p=5)のHEK293FTをT−75フラスコに50%コンフルエンスとなるように播種し、その翌日、10%ウシ胎仔血清含有及び抗生物質不含のDMEM中でトランスフェクトした。20時間後、培地をOptiMEM(無血清)培地に交換し、4時間後にトランスフェクションを行った。細胞に10μgのレンチウイルストランスファープラスミド(pCasES10)及び以下のパッケージングプラスミド:5μgのpMD2.G(VSV−gシュードタイプ)、及び7.5ugのpsPAX2(gag/pol/rev/tat)をトランスフェクトした。トランスフェクションは、カチオン性脂質デリバリー剤(50uL Lipofectamine 2000及び100ul Plus試薬)を含む4mL OptiMEM中で行った。6時間後、培地を10%ウシ胎仔血清を含む抗生物質不含DMEMに交換した。これらの方法では細胞培養中に血清を使用するが、無血清方法が好ましい。
レンチウイルスは以下のとおり精製し得る。48時間後にウイルス上清を回収した。初めに上清から残屑を除去し、0.45um低タンパク質結合(PVDF)フィルタでろ過した。次にそれを超遠心機において24,000rpmで2時間スピンした。ウイルスペレットを50ulのDMEM中に4℃で一晩再懸濁した。次にそれをアリコートに分け、直ちに−80℃で凍結した。
別の実施形態において、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)をベースとする最小限の非霊長類レンチウイルスベクターもまた、特に眼遺伝子療法に企図される(例えば、Balagaan,J Gene Med 2006;8:275−285を参照)。別の実施形態において、滲出型(web form)の加齢黄斑変性症の治療のため網膜下注射によって送達される血管新生抑制タンパク質エンドスタチン及びアンジオスタチンを発現するウマ伝染性貧血ウイルスベースのレンチウイルス遺伝子療法ベクターであるRetinoStat(登録商標)もまた企図され(例えば、Binley et al.,HUMAN GENE THERAPY 23:980−991(September 2012)を参照のこと)、このベクターは本発明のCRISPR−Cas系向けに改変し得る。
別の実施形態において、HIV tat/revによって共有される共通のエクソンを標的化するsiRNAと、核小体局在TARデコイと、抗CCR5特異的ハンマーヘッド型リボザイムとを含む自己不活性化レンチウイルスベクター(例えば、DiGiusto et al.(2010)Sci Transl Med 2:36ra43を参照のこと)を本発明のCRISPR−Cas系に使用し及び/又は適合させてもよい。患者の体重1キログラム当たり最低2.5×10個のCD34+ 細胞を収集し、2μmol/L−グルタミン、幹細胞因子(100ng/ml)、Flt−3リガンド(Flt−3L)(100ng/ml)、及びトロンボポエチン(10ng/ml)(CellGenix)を含有するX−VIVO 15培地(Lonza)中2×10細胞/mlの密度でで16〜20時間予備刺激し得る。フィブロネクチン(25mg/cm2)(RetroNectin、Takara Bio Inc.)で被覆した75cm2組織培養フラスコにおいて、予備刺激した細胞をレンチウイルスによって感染多重度5で16〜24時間にわたって形質導入し得る。
レンチウイルスベクターについては、パーキンソン病の治療にあるとおり開示されており、例えば、米国特許出願公開第20120295960号明細書及び米国特許第7303910号明細書及び同第7351585号明細書を参照のこと。レンチウイルスベクターはまた、眼疾患の治療についても開示されており、例えば、米国特許出願公開第20060281180号明細書、20090007284号明細書、米国特許出願公開第20110117189号明細書;米国特許出願公開第20090017543号明細書;米国特許出願公開第20070054961号明細書、米国特許出願公開第20100317109号明細書を参照のこと。レンチウイルスベクターはまた、脳への送達についても開示されており、例えば、米国特許出願公開第20110293571号明細書;米国特許出願公開第20110293571号明細書、米国特許出願公開第20040013648号明細書、米国特許出願公開第20070025970号明細書、米国特許出願公開第20090111106号明細書及び米国特許第7259015号明細書を参照のこと。
RNA送達
RNA送達:CRISPR酵素、例えばCpf1、及び/又は本RNAのいずれか、例えばガイドRNAはまた、RNAの形態で送達することもできる。Cpf1 mRNAはインビトロ転写を用いて作成することができる。例えば、Cpf1 mRNAは、以下のエレメント:βグロビン−ポリAテール(120以上の一連のアデニン)由来のT7_プロモーター−コザック配列(GCCACC)−Cpf1−3’UTRを含有するPCRカセットを用いて合成することができる。このカセットは、T7ポリメラーゼによる転写に使用することができる。ガイドRNAはまた、T7_プロモーター−GG−ガイドRNA配列を含有するカセットからのインビトロ転写を用いて転写することもできる。
発現を増強し、及び可能性のある毒性を低下させるため、CRISPR酵素コード配列及び/又はガイドRNAを、例えば擬似U又は5−メチル−Cを使用して1つ以上の改変ヌクレオシドを含むように改変することができる。
mRNA送達方法は、現在、肝臓送達に特に有望である。
RNA送達に関する多くの臨床研究はRNAi又はアンチセンスに焦点が置かれているが、これらの系は、本発明を実施するためのRNAの送達に適合させることができる。以下のRNAi等の参考文献は、それに従い読まれるべきである。
粒子送達系及び/又は製剤:
幾つかのタイプの粒子送達系及び/又は製剤が、多様な生物医学的適用において有用であることが知られている。一般に、粒子は、その輸送及び特性の点で一単位として挙動する小さい物体として定義される。粒子は、更に直径に基づき分類される。粗粒子は2,500〜10,000ナノメートルの範囲を包含する。微粒子は100〜2,500ナノメートルのサイズを有する。超微粒子、又はナノ粒子は、概して1〜100ナノメートルのサイズである。100nm限度の基準は、粒子をバルク材料と区別する新規特性が典型的には100nm未満の臨界長さスケールで生じるという事実である。
本明細書で使用されるとき、粒子送達系/製剤は、本発明における粒子を含む任意の生物学的送達系/製剤として定義される。本発明における粒子は、100ミクロン(μm)未満の最大径(例えば直径)を有する任意の実体である。一部の実施形態において、本発明の粒子は10μm未満の最大径を有する。一部の実施形態において、本発明の粒子は2000ナノメートル(nm)未満の最大径を有する。一部の実施形態において、本発明の粒子は1000ナノメートル(nm)未満の最大径を有する。一部の実施形態において、本発明の粒子は900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、又は100nm未満の最大径を有する。典型的には、本発明の粒子は500nm以下の最大径(例えば直径)を有する。一部の実施形態において、本発明の粒子は250nm以下の最大径(例えば直径)を有する。一部の実施形態において、本発明の粒子は200nm以下の最大径(例えば直径)を有する。一部の実施形態において、本発明の粒子は150nm以下の最大径(例えば直径)を有する。一部の実施形態において、本発明の粒子は100nm以下の最大径(例えば直径)を有する。より小さい粒子、例えば50nm以下の最大径を有する粒子が、本発明の一部の実施形態で使用される。一部の実施形態において、本発明の粒子は25nm〜200nmの範囲の最大径を有する。
粒子の特徴付け(例えば、形態、寸法等を特徴付けることを含む)は種々の異なる技法を用いて行われる。一般的な技法は、電子顕微鏡法(TEM、SEM)、原子間力顕微鏡法(AFM)、動的光散乱(DLS)、X線光電子分光法(XPS)、粉末X線回折(XRD)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF)、紫外・可視分光法、二重偏光干渉法及び核磁気共鳴(NMR)である。特徴付け(寸法計測)は、天然粒子(即ち負荷前)に関して行われても、又はカーゴの負荷後に行われてもよく(本明細書においてカーゴとは、例えば、CRISPR−Cas系の1つ以上の構成成分、例えばCRISPR酵素又はmRNA又はガイドRNA、又はこれらの任意の組み合わせを指し、及び更なる担体及び/又は賦形剤を含み得る)、それにより本発明の任意のインビトロ、エキソビボ及び/又はインビボ適用のための送達に最適なサイズの粒子が提供される。特定の好ましい実施形態において、粒子寸法(例えば直径)の特徴付けは、動的レーザー散乱法(DLS)を用いた計測に基づく。粒子、その作製及び使用方法並びにその計測に関して、米国特許第8,709,843号明細書;米国特許第6,007,845号明細書;米国特許第5,855,913号明細書;米国特許第5,985,309号明細書;米国特許第5,543,158号明細書;及びJames E.Dahlman and Carmen Barnes et al.Nature Nanotechnology(2014)published online 11 May 2014,doi:10.1038/nnano.2014.84による発表が挙げられる。
本発明の範囲内の粒子送達系は、限定はされないが、固体、半固体、エマルション、又はコロイド粒子を含め、任意の形態で提供され得る。従って、限定はされないが、例えば、脂質ベースのシステム、リポソーム、ミセル、微小胞、エキソソーム、又は遺伝子銃を含め、本明細書に記載される送達系の任意のものが、本発明の範囲内の粒子送達系として提供され得る。
粒子
適切な場合、本明細書における粒子又はナノ粒子への言及は同義的であり得ることが理解されるであろう。CRISPR酵素mRNA及びガイドRNAは、粒子又は脂質エンベロープを使用して同時に送達し得る;例えば、本発明のCRISPR酵素及びRNA(例えば複合体としての)は、7C1など、Dahlman et al.,国際公開第2015089419 A2号パンフレット及びその引用文献にあるとおりの粒子によって送達することができ(例えば、James E.Dahlman and Carmen Barnes et al.Nature Nanotechnology(2014)published online 11 May 2014,doi:10.1038/nnano.2014.84を参照)、例えば、送達粒子は脂質又はリピドイド及び親水性ポリマー、例えばカチオン性脂質及び親水性ポリマーを含み、例えばカチオン性脂質には、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)又は1,2−ジテトラデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)が含まれ、及び/又は親水性ポリマーには、エチレングリコール又はポリエチレングリコール(PEG)が含まれ;及び/又は粒子は、コレステロール(例えば、製剤1=DOTAP 100、DMPC 0、PEG 0、コレステロール 0;製剤番号2=DOTAP 90、DMPC 0、PEG 10、コレステロール 0;製剤番号3=DOTAP 90、DMPC 0、PEG 5、コレステロール 5からの粒子)を更に含み、粒子は効率的な多段階プロセスを用いて形成され、ここでは初めに、エフェクタータンパク質及びRNAを、例えば1:1モル比で、例えば室温で、例えば30分間、例えば無菌ヌクレアーゼフリー1×PBS中において共に混合し;及びそれとは別に、製剤に適用し得るとおりDOTAP、DMPC、PEG、及びコレステロールをアルコール、例えば100%エタノール中に溶解し;及び、これらの2つの溶液を共に混合して、複合体を含有する粒子を形成する)。
核酸ターゲティングエフェクタータンパク質(Cpf1などのV型タンパク質など)mRNA及びガイドRNAは、粒子又は脂質エンベロープを使用して同時に送達し得る。
例えば、Su X,Fricke J,Kavanagh DG,Irvine DJ (「脂質被包pH応答性ポリマーナノ粒子を使用したインビトロ及びインビボmRNA送達(In vitro and in vivo mRNA delivery using lipid−enveloped pH−responsive polymer nanoparticles)」Mol Pharm.2011 Jun 6;8(3):774−87.doi:10.1021/mp100390w.Epub 2011 Apr 1)は、ポリ(β−アミノエステル)(PBAE)コアがリン脂質二重層シェルによって被包された生分解性コア−シェル構造化ナノ粒子について記載している。これらはインビボmRNA送達のために開発された。pH応答性PBAE成分はエンドソーム破壊を促進するように選ばれ、一方、脂質表面層はポリカチオンコアの毒性を最小限に抑えるように選択された。従って、これは本発明のRNAの送達に好ましい。
一実施形態において、自己集合生体付着性ポリマーをベースとする粒子/ナノ粒子が企図され、これは、ペプチドの経口送達、ペプチドの静脈内送達及びペプチドの経鼻送達、脳への全てに適用し得る。疎水性薬物の経口吸収及び眼内送達など、他の実施形態もまた企図される。分子エンベロープ技術は、保護され且つ疾患部位に送達されるエンジニアリングされたポリマーエンベロープを含む(例えば、Mazza,M.et al.ACSNano,2013.7(2):1016−1026;Siew,A.,et al.Mol Pharm,2012.9(1):14−28;Lalatsa,A.,et al.J Contr Rel,2012.161(2):523−36;Lalatsa,A.,et al.,Mol Pharm,2012.9(6):1665−80;Lalatsa,A.,et al.Mol Pharm,2012.9(6):1764−74;Garrett,N.L.,et al.J Biophotonics,2012.5(5−6):458−68;Garrett,N.L.,et al.J Raman Spect,2012.43(5):681−688;Ahmad,S.,et al.J Royal Soc Interface 2010.7:S423−33;Uchegbu,I.F.Expert Opin Drug Deliv,2006.3(5):629−40;Qu,X.,et al.Biomacromolecules,2006.7(12):3452−9及びUchegbu,I.F.,et al.Int J Pharm,2001.224:185−199を参照)。標的組織に応じて単回又は複数回用量での約5mg/kgの用量が企図される。
一実施形態において、MITのDan Anderson研究室によって開発された、腫瘍成長を止めるためRNAを癌細胞に送達することのできる粒子/ナノ粒子を、本発明のCRISPR Cas系に使用し及び/又は適合させることができる。詳細には、Anderson研究室は、新規生体材料及びナノ製剤の合成、精製、特徴付け、及び製剤化のための完全に自動化されたコンビナトリアルシステムを開発した。例えば、Alabi et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Aug 6;110(32):12881−6;Zhang et al.,Adv Mater.2013 Sep 6;25(33):4641−5;Jiang et al.,Nano Lett.2013 Mar 13;13(3):1059−64;Karagiannis et al.,ACS Nano.2012 Oct 23;6(10):8484−7;Whitehead et al.,ACS Nano.2012 Aug 28;6(8):6922−9及びLee et al.,Nat Nanotechnol.2012 Jun 3;7(6):389−93を参照のこと。
米国特許出願公開第20110293703号明細書はリピドイド化合物に関し、同様にポリヌクレオチドの投与に特に有用であり、これは、本発明のCRISPR Cas系の送達に適用し得る。一態様において、アミノアルコールリピドイド化合物が、細胞又は対象に送達される薬剤と組み合わされて、マイクロパーティクル、ナノ粒子、リポソーム、又はミセルを形成する。粒子、リポソーム、又はミセルによって送達される薬剤は、気体、液体、又は固体の形態であってもよく、及び薬剤はポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、又は小分子であってもよい。アミノアルコール(minoalcohol)リピドイド化合物は、他のアミノアルコールリピドイド化合物、ポリマー(合成又は天然)、界面活性剤、コレステロール、炭水化物、タンパク質、脂質等と組み合わされて粒子を形成し得る。次にはこれらの粒子が任意選択で医薬賦形剤と組み合わされて医薬組成物を形成し得る。
米国特許出願公開第20110293703号明細書はまた、アミノアルコールリピドイド化合物を調製する方法も提供する。アミンの1つ以上の等価物をエポキシド末端化合物の1つ以上の等価物と好適な条件下で反応させると、本発明のアミノアルコールリピドイド化合物が形成される。特定の実施形態において、アミンの全てのアミノ基がエポキシド末端化合物と完全に反応して第三級アミンを形成する。他の実施形態において、アミンの全てのアミノ基がエポキシド末端化合物と完全には反応せずに第三級アミンを形成し、それによりアミノアルコールリピドイド化合物に第一級又は第二級アミンが生じる。これらの第一級又は第二級アミンはそのままにされるか、又は異なるエポキシド末端化合物などの別の求電子剤と反応させてもよい。当業者によって理解されるであろうとおり、アミンが過剰未満のエポキシド末端化合物と反応すると、様々な数の末端部を有する複数の異なるアミノアルコールリピドイド化合物が生じることになる。ある種のアミン類は2つのエポキシド由来化合物末端部で完全に官能化されてもよく、一方、他の分子はエポキシド末端化合物末端部で完全には官能化されない。例えば、ジアミン又はポリアミンは、分子の様々なアミノ部分の1、2、3、又は4つのエポキシド由来化合物末端部を含んで第一級、第二級、及び第三級アミンを生じ得る。特定の実施形態において、全てのアミノ基が完全には官能化されない。特定の実施形態において、同じタイプのエポキシド末端化合物のうちの2つが使用される。他の実施形態において、2つ以上の異なるエポキシド末端化合物が使用される。アミノアルコールリピドイド化合物の合成は溶媒有り又は無しで実施され、及び合成は30〜100℃、好ましくは約50〜90℃の範囲の高温で実施され得る。調製されたアミノアルコールリピドイド化合物は任意選択で精製されてもよい。例えば、アミノアルコールリピドイド化合物の混合物を精製して、特定の数のエポキシド由来化合物末端部を有するアミノアルコールリピドイド化合物を得てもよい。又は混合物を精製して、特定の立体又は位置異性体を得てもよい。アミノアルコールリピドイド化合物はまた、ハロゲン化アルキル(例えばヨウ化メチル)又は他のアルキル化剤を用いてアルキル化されてもよく、及び/又はそれらはアシル化されてもよい。
米国特許出願公開第20110293703号明細書はまた、この発明の方法によって調製されたアミノアルコールリピドイド化合物のライブラリも提供する。これらのアミノアルコールリピドイド化合物は、液体ハンドラー、ロボット、マイクロタイタープレート、コンピュータ等が関わるハイスループット技法を用いて調製され及び/又はスクリーニングされ得る。特定の実施形態において、アミノアルコールリピドイド化合物は、ポリヌクレオチド又は他の薬剤(例えば、タンパク質、ペプチド、小分子)を細胞にトランスフェクトする能力に関してスクリーニングされる。
米国特許出願公開第20130302401号明細書は、コンビナトリアル重合を用いて調製されたポリ(β−アミノアルコール)(PBAA)類の一クラスに関する。この発明のPBAAは、コーティング(医療器具又はインプラントのフィルム又は多層フィルムコーティングなど)、添加剤、材料、賦形剤、生物付着防止剤、マイクロパターニング剤、及び細胞封入剤など、バイオテクノロジー及び生物医学的適用において用いられ得る。表面コーティングとして使用される場合、これらのPBAAは、インビトロ及びインビボの両方で、その化学構造に応じて様々なレベルの炎症を誘発した。この材料クラスの化学的多様性は大きいため、インビトロでマクロファージ活性化を阻害するポリマーコーティングを同定することが可能であった。更に、これらのコーティングは、カルボキシル化ポリスチレンマイクロパーティクルの皮下移植後の炎症細胞の動員を低減し、及び線維症を低減する。これらのポリマーを使用して、細胞封入用の高分子電解質複合体カプセルを形成し得る。本発明もまた、抗菌性コーティング、DNA又はsiRNA送達、及び幹細胞組織工学など、他の多くの生物学的適用を有し得る。米国特許出願公開第20130302401号明細書の教示は、本発明のCRISPR Cas系に適用し得る。一部の実施形態において、本明細書に記載されるとおり、及び特に、別段明らかでない限りあらゆる粒子への送達適用に関して国際公開第2014118272号パンフレット(参照により本明細書に援用される)及びNair,JK et al.,2014,Journal of the American Chemical Society 136(49),16958−16961)及び本明細書の教示を参照して、糖ベースの粒子、例えばGalNAcを使用してもよい。
別の実施形態において、脂質ナノ粒子(LNP)が企図される。抗トランスサイレチン低分子干渉RNAが脂質ナノ粒子に封入され、ヒトに送達されており(例えば、Coelho et al.,N Engl J Med 2013;369:819−29を参照)、及びかかるシステムを本発明のCRISPR Cas系に適合させて応用し得る。静脈内投与される約0.01〜約1mg/kg体重の用量が企図される。注入関連反応のリスクを低下させる薬物投与が企図され、デキサメタゾン、アセトアミノフェン(acetampinophen)、ジフェンヒドラミン又はセチリジン、及びラニチジンなどが企図される。4週間毎の5用量にわたる約0.3mg/キログラムの複数回用量もまた企図される。
LNPは、siRNAの肝臓への送達に極めて有効であることが示されており(例えば、Tabernero et al.,Cancer Discovery,April 2013,Vol.3,No.4,pages 363−470を参照のこと)、従ってCRISPR CasをコードするRNAの肝臓への送達に企図される。2週間毎に6mg/kgのLNPの約4用量の投薬量が企図され得る。Tabernero et al.は、0.7mg/kgで投与するLNPの最初の2サイクル後に腫瘍退縮が観察され、及び6サイクルの終わりまでに患者がリンパ節転移の完全退縮及び肝腫瘍の実質的な縮小を伴う部分奏効を達成したことを実証した。この患者においては40用量後に完全奏効が得られ、26ヵ月間にわたって投与を受けた後も患者は寛解を保ったまま治療を完了した。VEGF経路阻害薬による先行治療後に進行していた、腎臓、肺、及びリンパ節を含めた肝外疾患部位を有する2人のRCC患者は、約8〜12ヵ月間全ての部位で疾患の安定が得られ、及びPNET及び肝転移患者は18ヵ月間(36用量)にわたって延長試験を継続し、疾患は安定していた。
しかしながら、LNPの電荷が考慮されなければならない。カチオン性脂質を負電荷脂質と組み合わせると、細胞内送達を促進する非二重層構造が誘導されるためである。荷電LNPは静脈内注射後に循環から急速に除去されるため、pKa値が7未満のイオン化可能なカチオン性脂質が開発された(例えば、Rosin et al,Molecular Therapy,vol.19,no.12,pages 1286−2200,Dec.2011を参照)。RNAなどの負電荷ポリマーは低pH値(例えばpH4)でLNPに負荷することができ、ここでイオン化可能な脂質は正電荷を呈する。しかしながら、生理的pH値では、LNPは、より長い循環時間と適合する低い表面電荷を呈する。4種のイオン化可能なカチオン性脂質、即ち、1,2−ジリネオイル(dilineoyl)−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DLinDAP)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレイルオキシ−ケト−N,N−ジメチル−3−アミノプロパン(DLinKDMA)、及び1,2−ジリノレイル−4−(2−ジメチルアミノエチル)−[1,3]−ジオキソラン(DLinKC2−DMA)が着目されている。これらの脂質を含有するLNP siRNAシステムは、インビボで肝細胞において著しく異なる遺伝子サイレンシング特性を呈し、効力は、第VII因子遺伝子サイレンシングモデルを用いて系列DLinKC2−DMA>DLinKDMA>DLinDMA>>DLinDAPに従い様々であることが示されている(例えば、Rosin et al,Molecular Therapy,vol.19,no.12,pages 1286−2200,Dec.2011を参照)。LNP又はLNP中の又はそれに関連するCRISPR−Cas RNAの1μg/mlの投薬量が、特にDLinKC2−DMAを含有する製剤について企図され得る。
LNP及びCRISPR Cas封入の調製は、Rosin et al,Molecular Therapy,vol.19,no.12,pages 1286−2200,Dec.2011)を使用し及び/又は適合させ得る。カチオン性脂質1,2−ジリネオイル(dilineoyl)−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DLinDAP)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレイルオキシケト−N,N−ジメチル−3−アミノプロパン(DLinK−DMA)、1,2−ジリノレイル−4−(2−ジメチルアミノエチル)−[1,3]−ジオキソラン(DLinKC2−DMA)、(3−o−[2”−(メトキシポリエチレングリコール2000)サクシノイル]−1,2−ジミリストイル−sn−グリコール(PEG−S−DMG)、及びR−3−[(ω−メトキシ−ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]−1,2−ジミリスチルオクスルプロピル(dimyristyloxlpropyl)−3−アミン(PEG−C−DOMG)がTekmira Pharmaceuticals(Vancouver,Canada)によって供給され、又は合成されてもよい。コレステロールはSigma(St Louis,MO)から購入し得る。特定のCRISPR Cas RNAは、DLinDAP、DLinDMA、DLinK−DMA、及びDLinKC2−DMAを含有するLNPに封入してもよい(40:10:40:10モル比のカチオン性脂質:DSPC:CHOL:PEGS−DMG又はPEG−C−DOMG)。必要な場合、0.2%SP−DiOC18(Invitrogen,Burlington,Canada)を取り入れて細胞取込み、細胞内送達、及び体内分布を評価する。封入は、カチオン性脂質:DSPC:コレステロール:PEG−c−DOMG(40:10:40:10モル比)で構成される脂質混合物をエタノール中に10mmol/lの最終脂質濃度となるように溶解することにより実施し得る。このエタノール脂質溶液を50mmol/lクエン酸塩、pH4.0に滴下して加えると、多層小胞が形成され、30%エタノールvol/volの最終濃度が生じ得る。エクストルーダ(Northern Lipids,Vancouver,Canada)を使用して2つの積み重ねた80nm Nucleporeポリカーボネートフィルタで多層小胞を押し出した後、大きい単層小胞が形成され得る。封入は、30%エタノールvol/volを含有する50mmol/lクエン酸塩、pH4.0中に2mg/mlのRNAを、押し出されて予め形成された大きい単層小胞に滴下して加え、0.06/1wt/wtの最終RNA/脂質重量比となるように常に混合しながら31℃で30分間インキュベートすることにより達成し得る。Spectra/Por 2再生セルロース透析膜を使用したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4での16時間の透析によってエタノールの除去及び製剤化緩衝液の中和を実施した。ナノ粒径分布はNICOMP 370粒径測定機、小胞/強度モード、及びガウスフィッティング(Nicomp Particle Sizing,Santa Barbara,CA)を使用した動的光散乱によって決定し得る。3つ全てのLNP系の粒径が直径約70nmであり得る。RNA封入効率は、透析前及び透析後に収集した試料からVivaPureD MiniHカラム(Sartorius Stedim Biotech)を使用して遊離RNAを除去することにより決定し得る。溶出したナノ粒子から封入されたRNAを抽出し、260nmで定量化し得る。Wako Chemicals USA(Richmond,VA)からのコレステロールE酵素アッセイを用いて小胞中のコレステロール含有量を計測することにより、RNA対脂質比を決定した。本明細書におけるLNP及びPEG脂質の考察と併せて、PEG化リポソーム又はLNPも同様にCRISPR−Cas系又はその構成成分の送達に好適である。
大きいLNPの調製は、Rosin et al,Molecular Therapy,vol.19,no.12,pages 1286−2200,Dec.2011を使用し及び/又は応用し得る。エタノール中にDLinKC2−DMA、DSPC、及びコレステロールを50:10:38.5モル比で含有する脂質プレミックス溶液(20.4mg/ml総脂質濃度)を調製し得る。酢酸ナトリウムを0.75:1(酢酸ナトリウム:DLinKC2−DMA)のモル比でこの脂質プレミックスに加え得る。続いて混合物を1.85容積のクエン酸塩緩衝液(10mmol/l、pH3.0)と激しく撹拌しながら合わせることにより脂質を水和させると、35%エタノールを含有する水性緩衝液中でリポソームの自然形成が起こり得る。このリポソーム溶液を37℃でインキュベートして、粒径を時間依存的に増加させ得る。インキュベーション中様々な時点でアリコートを取り出して、動的光散乱(Zetasizer Nano ZS,Malvern Instruments,Worcestershire,UK)によってリポソームサイズの変化を調べ得る。所望の粒径に達したところで、総脂質の3.5%の最終PEGモル濃度が得られるようにリポソーム混合物にPEG脂質水溶液(ストック=35%(vol/vol)エタノール中10mg/ml PEG−DMG)を加え得る。PEG−脂質を加えると、リポソームはそのサイズで、更なる成長が事実上クエンチされるはずである。次に空のリポソームに約1:10(wt:wt)のRNA対総脂質でRNAを加え、続いて37℃で30分間インキュベートすると、負荷されたLNPが形成され得る。続いてこの混合物をPBSで一晩透析し、0.45μmシリンジフィルタでろ過し得る。
球状核酸(SNA(商標))構築物及び他のナノ粒子(特に金ナノ粒子)もまた、CRISPR−Cas系を意図した標的に送達する手段として企図される。多量のデータが、核酸機能化金ナノ粒子をベースとするAuraSense Therapeuticsの球状核酸(SNA(商標))構築物が有用であることを示している。
本明細書の教示と併せて用い得る文献としては、Cutler et al.,J.Am.Chem.Soc.2011 133:9254−9257、Hao et al.,Small.2011 7:3158−3162、Zhang et al.,ACS Nano.2011 5:6962−6970、Cutler et al.,J.Am.Chem.Soc.2012 134:1376−1391、Young et al.,Nano Lett.2012 12:3867−71、Zheng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2012 109:11975−80、Mirkin,Nanomedicine 2012 7:635−638 Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.2012 134:16488−1691、Weintraub,Nature 2013 495:S14−S16、Choi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2013 110(19):7625−7630、Jensen et al.,Sci.Transl.Med.5,209ra152(2013)及びMirkin,et al.,Small,10:186−192が挙げられる。
ポリエチレングリコール(PEG)の遠位端に結合したArg−Gly−Asp(RGD)ペプチドリガンドによってポリエチレンイミン(PEI)をPEG化して、RNAを含む自己集合性ナノ粒子を構築し得る。この系は、例えば、インテグリンを発現する腫瘍新生血管系を標的化し、且つ血管内皮成長因子受容体−2(VEGF R2)の発現を阻害して、それにより腫瘍血管新生を達成するsiRNAを送達する手段として用いられている(例えば、Schiffelers et al.,Nucleic Acids Research,2004,Vol.32,No.19を参照)。ナノプレックスは、等容積のカチオン性ポリマーと核酸との水溶液を混合して2〜6の範囲にわたって正味モル過剰のイオン化可能窒素(ポリマー)対リン酸(核酸)を得ることにより調製し得る。カチオン性ポリマーと核酸との間の静電相互作用によって平均粒径分布が約100nmのポリプレックスが形成され、従ってここではナノプレックスと称された。Schiffelers et al.の自己集合性ナノ粒子での送達には、約100〜200mgの投薬量のCRISPR Casが想定される。
Bartlett et al.(PNAS,September 25,2007,vol.104,no.39)のナノプレックスもまた、本発明に適用され得る。Bartlett et al.のナノプレックスは、等容積のカチオン性ポリマーと核酸との水溶液を混合して2〜6の範囲にわたって正味モル過剰のイオン化可能な窒素(ポリマー)対リン酸(核酸)を得ることにより調製される。カチオン性ポリマーと核酸との間の静電相互作用によって平均粒径分布が約100nmのポリプレックスが形成され、従ってここではナノプレックスと称された。Bartlett et al.のDOTA−siRNAは、以下のとおり合成された:1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)(DOTA−NHSエステル)をMacrocyclics(Dallas,TX)から注文した。カーボネート緩衝液(pH9)中100倍モル過剰のDOTA−NHS−エステルを有するアミン改変RNAセンス鎖を微量遠心管に加えた。室温で4時間撹拌することにより内容物を反応させた。DOTA−RNAセンスコンジュゲートをエタノール沈殿させて、水中に再懸濁し、及び非改変アンチセンス鎖とアニーリングさせることにより、DOTA−siRNAを得た。液体は全てChelex−100(Bio−Rad、Hercules、CA)で前処理して微量金属の汚染が除去された。シクロデキストリン含有ポリカチオンを使用することにより、Tf標的及び非標的siRNAナノ粒子を形成し得る。典型的には、3(±)の電荷比及び0.5g/リットルのsiRNA濃度で水中にナノ粒子が形成された。標的ナノ粒子の表面上にある1パーセントのアダマンタン−PEG分子をTf(アダマンタン−PEG−Tf)で改変した。注射用に5%(wt/vol)グルコース担体溶液中にナノ粒子を懸濁した。
Davis et al.(Nature,Vol 464,15 April 2010)は、標的ナノ粒子送達系を使用するRNA臨床試験を行う(臨床試験登録番号NCT00689065)。標準ケア療法に抵抗性の固形癌患者に対し21日間サイクルの1、3、8及び10日目に用量の標的ナノ粒子を30分間静脈内注入によって投与する。ナノ粒子は、(1)線状シクロデキストリン系ポリマー(CDP)、(2)癌細胞の表面上のTF受容体(TFR)に会合するようにナノ粒子の外側に提示されたヒトトランスフェリンタンパク質(TF)標的リガンド、(3)親水性ポリマー(生体液中でのナノ粒子の安定性を促進するために用いられるポリエチレングリコール(PEG))、及び(4)RRM2の発現を低下させるように設計されたsiRNA(臨床で使用された配列は、以前はsiR2B+5と称された)を含有する合成送達系からなる。TFRは悪性細胞で上方制御されることが長く知られており、及びRRM2は確立された抗癌標的である。これらのナノ粒子(臨床版はCALAA−01と称される)は、非ヒト霊長類における複数回投与試験で良好に忍容されることが示されている。1人の慢性骨髄性白血病患者にsiRNAがリポソーム送達によって投与されているが、Davis et al.の臨床試験は、siRNAを標的送達系で全身送達して固形癌患者を治療する初期ヒト試験である。標的送達系がヒト腫瘍への機能性siRNAの有効な送達を提供し得るかどうかを確かめるため、Davis et al.は、3つの異なる投与コホートからの3人の患者の生検を調べた;患者A、B及びC、全員が転移性黒色腫を有し、それぞれ18、24及び30mg・m−2 siRNAのCALAA−01の投与を受けた。同程度の用量が本発明のCRISPR Cas系にも企図され得る。本発明の送達は、線状シクロデキストリン系ポリマー(CDP)、癌細胞の表面上のTF受容体(TFR)に会合するようにナノ粒子の外側に提示されたヒトトランスフェリンタンパク質(TF)標的リガンド、及び/又は親水性ポリマー(例えば、生体液中でのナノ粒子の安定性を促進するために用いられるポリエチレングリコール(PEG))を含有するナノ粒子で達成され得る。
本発明に関しては、CRISPR複合体の1つ以上の構成成分、例えばCRISPR酵素又はmRNA又はガイドRNAをナノ粒子又は脂質エンベロープを用いて送達することが好ましい。他の送達系又はベクターを本発明のナノ粒子の態様と併せて用いてもよい。
一般に、「ナノ粒子」は、直径が1000nm未満の任意の粒子を指す。特定の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は最大径(例えば直径)が500nm以下である。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は最大径が25nm〜200nmの範囲である。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は最大径が100nm以下である。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は最大径が35nm〜60nmの範囲である。
本発明に包含されるナノ粒子(nanoarticle)は、例えば、固体ナノ粒子(例えば、銀、金、鉄、チタンなどの金属)、非金属、脂質ベースの固体、ポリマー)、ナノ粒子の懸濁液、又はこれらの組み合わせとして、種々の形態で提供され得る。金属、誘電体、及び半導体ナノ粒子、並びにハイブリッド構造(例えば、コアシェルナノ粒子)を調製してもよい。半導体材料でできているナノ粒子はまた、電子エネルギーレベルの量子化が起こるのに十分に小さい(典型的には10nm未満)ならば、標識量子ドットであってもよい。かかるナノスケール粒子は、生物医学的適用において薬物担体又は造影剤として用いられ、本発明における同様の目的に応用し得る。
半固体及び軟質ナノ粒子が製造されており、本発明の範囲内にある。半固体の性質のプロトタイプナノ粒子がリポソームである。各種のリポソームナノ粒子が現在、抗癌薬及びワクチンの送達系として臨床で用いられている。一方の親水性の半体と他方の疎水性の半体とを有するナノ粒子はヤヌス粒子と呼ばれ、特にエマルションを安定化させるのに有効である。ヤヌス粒子は水/油界面で自己集合して、固体界面活性剤として働くことができる。
米国特許第8,709,843号明細書(参照により本明細書に援用される)は、治療剤含有粒子を組織、細胞、及び細胞内区画に標的化して送達するための薬物送達システムを提供する。本発明は、界面活性剤、親水性ポリマー又は脂質にコンジュゲートしたポリマーを含む標的粒子を提供する。
米国特許第6,007,845号明細書(参照により本明細書に援用される)は、多官能化合物を1つ以上の疎水性ポリマー及び1つ以上の親水性ポリマーと共有結合的に連結することにより形成されたマルチブロック共重合体のコアを有し、且つ生物学的に活性な材料を含有する粒子を提供する。
米国特許第5,855,913号明細書(参照により本明細書に援用される)は、肺系統への薬物送達のためその表面上に界面活性剤を取り込んだ、タップ密度が0.4g/cm3未満で平均直径が5μm〜30μmの空気力学的に軽い粒子を有する粒子状組成物を提供する。
米国特許第5,985,309号明細書(参照により本明細書に援用される)は、界面活性剤及び/又は正電荷又は負電荷治療薬又は診断薬と肺系統への送達用の逆の電荷の荷電分子との親水性又は疎水性複合体を取り込んだ粒子を提供する。
米国特許第5,543,158号明細書(参照により本明細書に援用される)は、生物学的に活性な材料を含有する生分解性固体コア及び表面上のポリ(アルキレングリコール)部分を有する生分解性注射用粒子を提供する。
国際公開第2012135025号パンフレット(米国特許出願公開第20120251560号明細書としても公開されている)(参照により本明細書に援用される)は、コンジュゲート型ポリエチレンイミン(PEI)ポリマー及びコンジュゲート型アザ大環状分子(まとめて「コンジュゲート型リポマー(lipomer)」又は「リポマー」と称される)について記載している。特定の実施形態において、かかるコンジュゲート型リポマーを、インビトロ、エキソビボ及びインビボゲノム摂動を達成してタンパク質発現の改変を含めた遺伝子発現の改変を行うためCRISPR−Cas系のコンテクストで使用し得ることを想定し得る。
一実施形態において、ナノ粒子はエポキシド改変脂質ポリマー、有利には7C1であってもよい(例えば、James E.Dahlman and Carmen Barnes et al.Nature Nanotechnology(2014)published online 11 May 2014,doi:10.1038/nnano.2014.84を参照)。C71は、C15エポキシド末端脂質をPEI600と14:1のモル比で混合することにより合成され、C14PEG2000と配合されて、PBS溶液中で少なくとも40日間安定なナノ粒子が作製された(直径35〜60nm)。
エポキシド改変脂質ポリマーを利用して本発明のCRISPR−Cas系を肺細胞、心血管細胞又は腎細胞に送達し得るが、しかしながら、当業者はこの系を応用して他の標的器官に送達し得る。約0.05〜約0.6mg/kgの範囲の投薬量が想定される。数日間又は数週間にわたる、合計投薬量を約2mg/kgとする投薬もまた想定される。
エキソソーム
エキソソームは、RNA及びタンパク質を輸送する内因性のナノ小胞であり、これはRNAを脳及び他の標的器官に送達することができる。免疫原性を低下させるため、Alvarez−Erviti et al.(2011,Nat Biotechnol 29:341)はエキソソーム産生に自己由来の樹状細胞を使用した。ニューロン特異的RVGペプチドに融合したエキソソーム膜タンパク質Lamp2bを発現するように樹状細胞をエンジニアリングすることにより、脳への標的化が達成された。精製エキソソームに電気穿孔によって外因性RNAが負荷された。静脈内注射されるRVG標的化エキソソームが、GAPDH siRNAを脳内のニューロン、ミクログリア、オリゴデンドロサイトに特異的に送達し、特異的遺伝子ノックダウンが得られた。RVGエキソソームに予め曝露してもノックダウンは減弱しなかったとともに、他の組織における非特異的取込みは観察されなかった。アルツハイマー病の治療標的であるBACE1の強力なmRNA(60%)及びタンパク質(62%)ノックダウンによって、エキソソーム媒介siRNA送達の治療可能性が実証された。
免疫学的に不活性なエキソソームのプールを得るため、Alvarez−Erviti et al.は、同種主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ハプロタイプの近交系C57BL/6マウスから骨髄を採取した。未熟樹状細胞は、MHC−II及びCD86など、T細胞アクチベーターを欠くエキソソームを多量に産生するため、Alvarez−Erviti et al.は、顆粒球/マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)を有する樹状細胞を7日間選択した。翌日、十分に確立された超遠心法プロトコルを用いて培養上清からエキソソームを精製した。産生されたエキソソームは物理的に均一であり、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)及び電子顕微鏡法によって決定したとき分布サイズのピークが直径80nmであった。Alvarez−Erviti et al.は、10細胞当たり(タンパク質濃度に基づき計測して)6〜12μgのエキソソームを得た。
次に、Alvarez−Erviti et al.は、ナノスケール適用に適合させた電気穿孔プロトコルを用いて改変エキソソームに外因性カーゴを負荷する可能性を調べた。ナノメートルスケールでの膜粒子に対する電気穿孔は十分に特徴付けられていないため、非特異的Cy5標識RNAを使用して電気穿孔プロトコルを経験的に最適化した。超遠心法及びエキソソームの溶解後に、封入されるRNAの量をアッセイした。400V及び125μFでの電気穿孔が最大のRNA保持をもたらし、以降の全ての実験でこれを使用した。
Alvarez−Erviti et al.は、150μgのRVGエキソソームに封入された150μgの各BACE1 siRNAを正常C57BL/6マウスに投与し、4つの対照とノックダウン効率を比較した:未治療マウス、RVGエキソソームのみを注入したマウス、インビボカチオン性リポソーム試薬と複合体化したBACE1 siRNAを注入したマウス、及びRVG−9R(siRNAに静電的に結合する9つのD−アルギニンとコンジュゲートしたRVGペプチド)と複合体化したBACE1 siRNAを注入したマウス。投与3日後に皮質組織試料を分析し、siRNA−RVG−9R治療マウス及びsiRNARVGエキソソーム治療マウスの両方で有意なタンパク質ノックダウン(45%、P<0.05、対62%、P<0.01)が観察され、BACE1 mRNAレベルの有意な低下がもたらされた(それぞれ66%±15%、P<0.001及び61%±13%、P<0.01)。更に、この出願人らは、RVG−エキソソーム治療動物においてアルツハイマー病におけるアミロイド斑の主要な構成成分である総β−アミロイド1−42レベルの有意な低下(55%、P<0.05)を実証した。観察された低下は、正常マウスでBACE1阻害薬の脳室内注射後に実証されたβ−アミロイド1−40の低下よりも大きかった。Alvarez−Erviti et al.はBACE1切断産物でcDNA末端の5’迅速増幅(RACE)を実施し、これは、siRNAによるRNAi媒介性ノックダウンのエビデンスを提供した。
最後に、Alvarez−Erviti et al.は、IL−6、IP−10、TNFα及びIFN−α血清濃度を評価することにより、RNA−RVGエキソソームがインビボで免疫応答を誘導したかどうかを調べた。エキソソーム治療後、siRNA−RVG−9Rと対照的にsiRNA−トランスフェクション試薬治療と同様に全てのサイトカインにおける有意でない変化を記録し、これはIL−6分泌を強力に刺激したことから、エキソソーム治療の免疫学的に不活性なプロファイルが確認された。エキソソームがsiRNAの20%しか封入しないことを所与とすれば、対応するレベルの免疫刺激なしに5分の1のsiRNAで同等のmRNAノックダウン及びより大きいタンパク質ノックダウンが達成されたため、RVG−エキソソームによる送達はRVG−9R送達よりも効率的であるように見える。この実験は、RVG−エキソソーム技術の治療可能性を実証したものであり、これは潜在的に神経変性疾患に関連する遺伝子の長期サイレンシングに適している。Alvarez−Erviti et al.のエキソソーム送達系は、治療標的、特に神経変性疾患への本発明のCRISPR−Cas系の送達に適用し得る。約100〜1000mgのRVGエキソソームに封入された約100〜1000mgのCRISPR Casの投薬量が本発明に企図され得る。
El−Andaloussi et al.(Nature Protocols 7,2112−2126(2012))は、培養細胞に由来するエキソソームをどのようにインビトロ及びインビボでのRNAの送達に利用することができるかを開示している。このプロトコルは、初めに、ペプチドリガンドと融合したエキソソームタンパク質を含む、発現ベクターのトランスフェクションによる標的エキソソームの作成を記載している。次に、El−Andaloussi et al.は、トランスフェクト細胞上清からエキソソームをどのように精製し及び特徴付けるかを説明する。次に、El−Andaloussi et al.は、RNAをエキソソームに負荷するために重要なステップを詳説する。最後に、El−Andaloussi et al.は、どのようにエキソソームを使用してインビトロで及びマウス脳においてインビボでRNAを効率的に送達するかを概説する。エキソソーム媒介性RNA送達の見込まれた結果の例が機能アッセイによって評価され、イメージングもまた提供される。プロトコル全体は約3週間かかる。本発明に係る送達又は投与は、自己由来樹状細胞から産生されたエキソソームを使用して実施されてもよい。本明細書における教示から、これを本発明の実施において用いることができる。
別の実施形態において、Wahlgren et al.(Nucleic Acids Research,2012,Vol.40,No.17 e130)の血漿エキソソームが企図される。エキソソームは、樹状細胞(DC)、B細胞、T細胞、肥満細胞、上皮細胞及び腫瘍細胞を含めた多くの細胞型によって産生されるナノサイズの小胞(30〜90nmサイズ)である。これらの小胞は後期エンドソームの内向きの出芽によって形成され、次に細胞膜との融合時に細胞外環境へと放出される。エキソソームは天然で細胞間にRNAを有するため、この特性は遺伝子療法に有用であり得るとともに、この開示から、本発明の実施に用いることができる。
血漿からのエキソソームは、バフィーコートを900gで20分間遠心して血漿を単離し、続いて細胞上清を回収し、300gで10分間遠心して細胞を除去し、16 500gで30分間遠心し、続いて0.22mmフィルタでろ過することにより調製することができる。120 000gで70分間の超遠心によってエキソソームをペレット化する。エキソソームへのsiRNAの化学的トランスフェクションをRNAiヒト/マウススターターキット(Quiagen,Hilden,Germany)で製造者の指示に従い実施する。siRNAを100ml PBSに2mmol/mlの最終濃度で加える。HiPerFectトランスフェクション試薬を加えた後、混合物を室温で10分間インキュベートする。過剰なミセルを除去するため、アルデヒド/硫酸塩ラテックスビーズを使用してエキソソームを再単離する。エキソソームへのCRISPR Casの化学的トランスフェクションをsiRNAと同様に行い得る。エキソソームを健常ドナーの末梢血から単離した単球及びリンパ球と共培養し得る。従って、CRISPR Casを含有するエキソソームをヒトの単球及びリンパ球に導入し、且つヒトに自己再導入し得ることが企図され得る。従って、本発明に係る送達又は投与を血漿エキソソームを用いて実施し得る。
リポソーム
本発明に係る送達又は投与は、リポソームで実施することができる。リポソームは、内部の水性区画を取り囲む単層又は多重膜脂質二重層及び比較的不透過性の外側の親油性リン脂質二重層からなる球形の小胞構造である。リポソームは、生体適合性であり、非毒性であり、親水性及び親油性の両方の薬物分子を送達することができ、そのカーゴを血漿酵素による分解から保護し、且つ生体膜及び血液脳関門(BBB)を越えてそのロードを輸送するため、薬物送達担体として大いに注目を集めてきた(例えば、レビューについては、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
リポソームは幾つかの異なるタイプの脂質から作製することができる;しかしながら、薬物担体としてのリポソームの作成には、リン脂質が最も一般的に用いられている。脂質薄膜が水溶液と混合されたときにリポソーム形成は自然に起こるが、また、ホモジナイザー、ソニケーター、又は押出し装置を使用して振盪の形態の力を加えることによっても促進し得る(例えば、レビューについては、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
その構造及び特性を改変するため、リポソームに幾つかの他の添加剤を加えてもよい。例えば、リポソーム構造の安定化を助けるため、及びリポソームの内部カーゴの漏出を防ぐため、リポソーム混合物にコレステロール又はスフィンゴミエリンのいずれかを加えてもよい。更に、リポソームは、水素化卵ホスファチジルコリン又は卵ホスファチジルコリン、コレステロール、及びジセチルリン酸から調製され、その平均小胞サイズは約50及び100nmに調整された(例えば、レビューについては、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
リポソーム製剤は主に、1,2−ジステアロイル(distearoryl)−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DSPC)、スフィンゴミエリン、卵ホスファチジルコリン及びモノシアロガングリオシドなどの天然リン脂質及び脂質で構成され得る。この製剤はリン脂質のみでできているため、リポソーム製剤は多くの難題に直面しており、その1つが血漿中での不安定性である。これらの難題を解消しようとする幾つかの試みが、特に脂質膜の操作においてなされている。これらの試みの1つは、コレステロールの操作に着目するものであった。従来の製剤にコレステロールを加えると、封入された生物学的活性化合物が血漿又は1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)中に急速に放出されることが抑えられ、安定性が増す(例えば、レビューについては、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
特に有利な実施形態において、トロイの木馬リポソーム(分子トロイの木馬としても知られる)が望ましく、http://cshprotocols.cshlp.org/content/2010/4/pdb.prot5407.longにおいてプロトコルを参照し得る。これらの粒子は、トランス遺伝子を血管内注射後に脳全体に送達することが可能である。制約により拘束されるものではないが、特異抗体が表面にコンジュゲートした中性脂質粒子はエンドサイトーシスによって血液脳関門を通過することが可能であると考えられる。本出願人は、トロイの木馬リポソームを利用してヌクレアーゼのCRISPRファミリーを血管内注射によって脳に送達することを仮定し、これにより、胚を操作する必要なしに全脳トランスジェニック動物が実現し得る。リポソームでの生体内投与には、約1〜5gのDNA又はRNAが企図され得る。
別の実施形態において、CRISPR Cas系又はその構成成分は安定核酸脂質粒子(SNALP)などのリポソームで投与され得る(例えば、Morrissey et al.,Nature Biotechnology,Vol.23,No.8,August 2005を参照)。SNALPで標的化される特定のCRISPR Casの毎日の約1、3又は5mg/kg/日の静脈内注射が企図される。毎日の治療は約3日間にわたり、次に毎週、約5週間にわたり得る。別の実施形態において、特定のCRISPR Casが封入されたSNALPの約1又は2.5mg/kgの用量の静脈内注射による投与もまた企図される(例えば、Zimmerman et al.,Nature Letters,Vol.441,4 May 2006を参照)。SNALP製剤は、脂質3−N−[(wメトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]−1,2−ジミリスチルオキシ−プロピルアミン(PEG−C−DMA)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)及びコレステロールを2:40:10:48モルパーセント比で含有し得る(例えば、Zimmerman et al.,Nature Letters,Vol.441,4 May 2006を参照)。
別の実施形態において、安定核酸脂質粒子(SNALP)は、高度に血管新生したHepG2由来肝腫瘍への分子の送達に有効であるが、血管新生が不十分なHCT−116由来肝腫瘍においては有効でないことが分かっている(例えば、Li,Gene Therapy(2012)19,775−780を参照)。SNALPリポソームは、D−Lin−DMA及びPEG−C−DMAをジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール及びsiRNAと共に25:1脂質/siRNA比及び48/40/10/2モル比のコレステロール/D−Lin−DMA/DSPC/PEG−C−DMAを用いて製剤化することにより調製し得る。得られたSNALPリポソームは約80〜100nmサイズである。
更に別の実施形態において、SNALPは、合成コレステロール(Sigma−Aldrich,St Louis,MO,USA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(Avanti Polar Lipids,Alabaster,AL,USA)、3−N−[(w−メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]−1,2−ジミレスチルオキシプロピルアミン(dimyrestyloxypropylamine)、及びカチオン性1,2−ジリノレイルオキシ−3−N,Nジメチルアミノアミノプロパンを含み得る(例えば、Geisbert et al.,Lancet 2010;375:1896−905を参照)。例えばボーラス静脈内注入として投与される1用量当たり合計約2mg/kgのCRISPR Casの投薬量が企図され得る。
更に別の実施形態において、SNALPは、合成コレステロール(Sigma−Aldrich)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC;Avanti Polar Lipids Inc.)、PEG−cDMA、及び1,2−ジリノレイルオキシ−3−(N;N−ジメチル)アミノプロパン(DLinDMA)を含み得る(例えば、Judge,J.Clin.Invest.119:661−673(2009)を参照)。インビボ研究に用いられる製剤は、約9:1の最終脂質/RNA質量比を含み得る。
RNAiナノメディシンの安全性プロファイルが、Alnylam PharmaceuticalsのBarros and Gollobによってレビューされている(例えば、Advanced Drug Delivery Reviews 64(2012)1730−1737を参照)。安定核酸脂質粒子(SNALP)は、4つの異なる脂質−低pHでカチオン性のイオン化可能な脂質(DLinDMA)、中性ヘルパー脂質、コレステロール、及び拡散性ポリエチレングリコール(PEG)−脂質で構成される。この粒子は直径約80nmであり、生理的pHで電荷的に中性である。製剤化時、イオン化可能な脂質が粒子形成の間に脂質をアニオン性RNAと凝縮させる働きをする。漸進的に酸性になるエンドソーム条件下で正電荷のとき、イオン化可能な脂質はまた、SNALPとエンドソーム膜との融合も媒介し、細胞質中へのRNAの放出を可能にする。PEG−脂質は粒子を安定化させ、製剤化時の凝集を低減し、続いて薬物動態特性を改善する中性の親水性外部を提供する。
現在までに、RNAを有するSNALP製剤を使用して2つの臨床プログラムが開始されている。Tekmira Pharmaceuticalsは、最近、高LDLコレステロールの成人ボランティアにおけるSNALP−ApoBの第I相単回投与試験を完了した。ApoBは主に肝臓及び空腸に発現し、VLDL及びLDLのアセンブリ及び分泌に必須である。17人の対象に単一用量のSNALP−ApoBが投与された(7用量レベルにわたる用量漸増)。肝毒性(前臨床試験に基づき潜在的用量制限毒性として予想された)のエビデンスはなかった。(2人中)1人の対象が最も高い用量で免疫系刺激と一致してインフルエンザ様症状を起こし、試験終了が決定された。
Alnylam Pharmaceuticalsも同様にALN−TTR01を進めており、これは上記に記載されるSNALP技術を用い、TTRアミロイドーシス(ATTR)の治療のため突然変異体及び野生型の両方のTTRの肝細胞産生を標的化する。3つのATTR症候群が記載されている:家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)及び家族性アミロイド心筋症(FAC)−両方ともにTTRの常染色体優性突然変異によって引き起こされる;及び野生型TTRによって引き起こされる老人性全身性アミロイドーシス(SSA)。ALN−TTR01のプラセボ対照単回用量漸増第I相試験が最近、ATTR患者で完了した。ALN−TTR01が15分間の静脈内注入として31人の患者に(23人は試験薬物及び8人はプラセボ)0.01〜1.0mg/kgの用量範囲内で(siRNAに基づく)投与された。治療は良好に忍容され、肝機能検査値の重大な増加はなかった。≧0.4mg/kgで23人中3人の患者に注入関連反応が認められた;全員が注入速度の減速に応答し、全員が試験を続行した。2人の患者に1mg/kgの最も高い用量で血清サイトカインIL−6、IP−10及びIL−1raの最小限且つ一過性の上昇が認められた(前臨床及びNHP試験から予想されたとおり)。ALN−TTR01の期待された薬力学的効果である血清TTRの低下が1mg/kgで観察された。
更に別の実施形態において、SNALPは、例えばカチオン性脂質、DSPC、コレステロール及びPEG−脂質をエタノール中に、例えばそれぞれ40:10:40:10のモル比で可溶化させることにより作製し得る(Semple et al.,Nature Niotechnology,Volume 28 Number 2 February 2010,pp.172−177を参照)。水性緩衝液(50mMクエン酸塩、pH4)にそれぞれ30%(vol/vol)及び6.1mg/mlの最終エタノール及び脂質濃度となるように混合しながら脂質混合物を加え、22℃で2分間平衡化させた後、押し出した。水和した脂質を、2つの積み重ねた80nm細孔径フィルタ(Nuclepore)で22℃においてLipex Extruder(Northern Lipids)を使用して、動的光散乱分析によって決定したとき70〜90nmの小胞直径が観察されるまで押し出した。これには、概して1〜3回のパスが必要であった。siRNA(30%エタノールを含有する50mMクエン酸塩、pH4水溶液中に可溶化した)を、予め平衡化した(35℃)小胞に約5ml/分の速度で混合しながら加えた。0.06(wt/wt)の最終目標siRNA/脂質比に達した後、混合物を35℃で更に30分間インキュベートして小胞再構築及びsiRNAの封入を可能にした。次にエタノールを除去し、外部緩衝液を透析又はタンジェンシャルフローダイアフィルトレーションのいずれかによってPBS(155mM NaCl、3mM NaHPO、1mM KHPO、pH7.5)と交換した。制御された段階的希釈方法プロセスを用いてsiRNAをSNALPに封入した。KC2−SNALPの脂質構成要素は、57.1:7.1:34.3:1.4のモル比で用いられたDLin−KC2−DMA(カチオン性脂質)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC;Avanti Polar Lipids)、合成コレステロール(Sigma)及びPEG−C−DMAであった。負荷粒子が形成されたところで、SNALPをPBSで透析し、使用前に0.2μmフィルタで滅菌ろ過した。平均粒径は75〜85nmであり、siRNAの90〜95%が脂質粒子内に封入された。インビボ試験に使用した製剤中の最終的なsiRNA/脂質比は約0.15(wt/wt)であった。使用直前に、第VII因子siRNAを含有するLNP−siRNA系を滅菌PBS中に適切な濃度に希釈し、製剤を10ml/kgの合計容積で外側尾静脈から静脈内投与した。この方法及びこれらの送達系は、本発明のCRISPR Cas系に当てはめることができる。
他の脂質
アミノ脂質2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)などの他のカチオン性脂質を利用して、例えばSiRNAと同様に、CRISPR Cas又はその構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子を封入してもよく(例えば、Jayaraman,Angew.Chem.Int.Ed.2012,51,8529−8533を参照)、従って本発明の実施に用い得る。以下の脂質組成を有する予め形成された小胞が企図され得る:アミノ脂質、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール及び(R)−2,3−ビス(オクタデシルオキシ)プロピル−1−(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバメート(PEG−脂質)、それぞれモル比40/10/40/10、及び約0.05(w/w)のFVII siRNA/総脂質比。70〜90nmの範囲の狭い粒径分布及び0.11±0.04の低い多分散性指数(n=56)が確実となるように、粒子を最大3回まで80nm膜で押し出し、その後ガイドRNAに加えた。極めて強力なアミノ脂質16を含有する粒子を使用してもよく、ここで4つの脂質構成成分16、DSPC、コレステロール及びPEG−脂質のモル比(50/10/38.5/1.5)はインビボ活性を増強させるため更に最適化され得る。
Michael S D Kormann et al.(「マウスにおける化学的に改変されたmRNAの送達後の治療用タンパク質の発現(Expression of therapeutic proteins after delivery of chemically modified mRNA in mice):Nature Biotechnology,Volume:29,Pages:154−157(2011))は、脂質エンベロープを用いたRNAの送達について記載している。脂質エンベロープの使用は本発明においても好ましい。
別の実施形態では、脂質を本発明のCRISPR Cas系又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子と共に製剤化して、脂質ナノ粒子(LNP)を形成してもよい。脂質としては、限定はされないが、DLin−KC2−DMA4、C12−200及びコリピド(colipid)ジステロイルホスファチジルコリン(disteroylphosphatidyl choline)、コレステロールが挙げられ、及びPEG−DMGを小胞自然形成手順を用いてsiRNAの代わりにCRISPR Casと共に製剤化してもよい(例えば、Novobrantseva,Molecular Therapy−Nucleic Acids(2012)1,e4;doi:10.1038/mtna.2011.3を参照)。構成成分のモル比は約50/10/38.5/1.5(DLin−KC2−DMA又はC12−200/ジステロイルホスファチジルコリン(disteroylphosphatidyl choline)/コレステロール/PEG−DMG)であってもよい。最終的な脂質:siRNA重量比は、DLin−KC2−DMA及びC12−200脂質ナノ粒子(LNP)の場合、それぞれ約12:1及び9:1であり得る。製剤は、>90%の捕捉効率で約80nmの平均粒子直径を有し得る。3mg/kg用量が企図され得る。
Tekmiraは、米国及び米国外に、LNP及びLNP製剤の様々な態様に関する約95のパテントファミリーのポートフォリオを有し(例えば、米国特許第7,982,027号明細書;同第7,799,565号明細書;同第8,058,069号明細書;同第8,283,333号明細書;同第7,901,708号明細書;同第7,745,651号明細書;同第7,803,397号明細書;同第8,101,741号明細書;同第8,188,263号明細書;同第7,915,399号明細書;同第8,236,943号明細書及び同第7,838,658号明細書及び欧州特許第1766035号明細書;同第1519714号明細書;同第1781593号明細書及び同第1664316号明細書を参照)、これらは全て、本発明に使用及び/又は応用することができる。
CRISPR Cas系又はその構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子は、タンパク質、タンパク質前駆体、又は部分的又は完全にプロセシングされた形態のタンパク質又はタンパク質前駆体をコードし得る改変核酸分子を含む組成物の製剤の態様に関する米国特許出願公開第20130252281号明細書及び同第20130245107号明細書及び同第20130244279号明細書(Moderna Therapeuticsに譲渡された)に更に記載されるものなど、PLGAミクロスフェアに封入して送達し得る。製剤は、モル比50:10:38.5:1.5〜3.0(カチオン性脂質:膜融合性脂質:コレステロール:PEG脂質)を有し得る。PEG脂質は、限定はされないが、PEG−c−DOMG、PEG−DMGから選択され得る。膜融合性脂質はDSPCであり得る。また、Schrum et al.,Delivery and Formulation of Engineered Nucleic Acids、米国特許出願公開第20120251618号明細書も参照のこと。
Nanomericsの技術は、低分子量疎水性薬物、ペプチド、及び核酸ベースの治療薬(プラスミド、siRNA、miRNA)を含めた広範囲の治療薬に関するバイオアベイラビリティの難題に対処している。この技術が明らかな利点を実証している特定の投与経路には、経口経路、血液脳関門を越える輸送、固形腫瘍への送達、並びに眼への送達が含まれる。例えば、Mazza et al.,2013,ACS Nano.2013 Feb 26;7(2):1016−26;Uchegbu and Siew,2013,J Pharm Sci.102(2):305−10及びLalatsa et al.,2012,J Control Release.2012 Jul 20;161(2):523−36を参照のこと。
米国特許出願公開第20050019923号明細書は、ポリヌクレオチド分子、ペプチド及びポリペプチド及び/又は医薬品などの生理活性分子を哺乳類の体に送達するためのカチオン性デンドリマーについて記載している。デンドリマーは、生理活性分子の送達を、例えば、肝臓、脾臓、肺、腎臓又は心臓に(又は更には脳までも)標的化するのに好適である。デンドリマーは、単純な分岐単量体単位から段階的に調製される合成三次元巨大分子であり、その性質及び機能は容易に制御し、変化させることができる。デンドリマーは、構成要素を多機能コアに(ダイバージェント合成手法)、又は多機能コアに向かって(コンバージェント合成手法)反復的に加えることによって合成され、構成要素の三次元シェルを加える毎に、より高世代のデンドリマーの形成につながる。ポリプロピレンイミンデンドリマーはジアミノブタンコアから開始され、それに第一級アミンへのアクリロニトリルの二重マイケル付加によって2倍の数のアミノ基が加えられ、続いてニトリルが水素化される。この結果、アミノ基の倍増がもたらされる。ポリプロピレンイミンデンドリマーは100%プロトン化可能な窒素及び最大64個の末端アミノ基(第5世代、DAB 64)を含有する。プロトン化可能な基は、通常、中性pHでプロトンを受け取ることが可能なアミン基である。デンドリマーの遺伝子デリバリー剤としての使用は、大部分が、コンジュゲート単位としてそれぞれアミン/アミド又はN−−P(O)Sの混合物を有するポリアミドアミン及び亜リン酸含有化合物の使用に着目したものであり、それより低い世代のポリプロピレンイミンデンドリマーの遺伝子送達への使用に関しては報告がない。ポリプロピレンイミンデンドリマーもまた、周囲アミノ酸性基によって化学的に改変されたとき薬物送達及びゲスト分子のそれらの封入のためのpH感受性制御放出系として研究されている。DNAを有するポリプロピレンイミンデンドリマーの細胞傷害性及び相互作用並びにDAB 64のトランスフェクション有効性もまた研究されている。
米国特許出願公開第20050019923号明細書は、先行の報告に反して、ポリプロピレンイミンデンドリマーなどのカチオン性デンドリマーが、特異的標的化及び低毒性など、遺伝物質など、生理活性分子の標的化した送達において用いるのに好適な特性を示すという観察に基づく。加えて、カチオン性デンドリマーの誘導体もまた、生理活性分子の標的化された送達に好適な特性を示す。また、「カチオン性ポリアミンポリマー及びデンドリマーポリマーを含めた様々なポリマーは抗増殖活性を有することが示され、従って、新生物及び腫瘍、炎症性障害(自己免疫障害を含む)、乾癬及びアテローム性動脈硬化症など、望ましくない細胞増殖によって特徴付けられる障害の治療に有用であり得る。ポリマーは単独で活性薬剤として用いられてもよく、又は遺伝子療法用の薬物分子又は核酸など、他の治療剤の送達ビヒクルとして用いられてもよい。そのような場合、ポリマーそれ自体の固有の抗腫瘍活性が、送達される薬剤の活性を補完し得る」ことを開示するBioactive Polymers,米国特許出願公開第20080267903号明細書も参照のこと。これらの特許公報の開示は、1つ又は複数のCRISPR Cas系又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子の送達に関する本明細書における教示と併せて用いられ得る。
超荷電タンパク質
超荷電タンパク質は、異常に高い理論上の正味正電荷又は負電荷を有するエンジニアリングされた又は天然に存在するタンパク質の一クラスであり、1つ又は複数のCRISPR Cas系又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子の送達に用いられ得る。超負電荷及び超正電荷の両方のタンパク質とも、熱的又は化学的に誘導される凝集に耐える著しい能力を呈する。超正電荷タンパク質はまた、哺乳類細胞に侵入することも可能である。プラスミドDNA、RNA、又は他のタンパク質など、これらのタンパク質と関連付けるカーゴが、インビトロ及びインビボの両方でこれらの巨大分子を哺乳類細胞に機能的に送達することを可能にし得る。David Liuの研究室は、2007年に超荷電タンパク質の作成及び特徴付けを報告した(Lawrence et al.,2007,Journal of the American Chemical Society 129,10110−10112)。
哺乳類細胞へのRNA及びプラスミドDNAの非ウイルス性送達は、研究及び治療適用の両方に価値がある(Akinc et al.,2010,Nat.Biotech.26,561−569)。精製+36 GFPタンパク質(又は他の超正電荷タンパク質)を適切な無血清培地中でRNAと混合して複合体化させた後、細胞に加える。この段階で血清を含めると、超荷電タンパク質−RNA複合体の形成が阻害され、治療の有効性が低下する。以下のプロトコルが種々の細胞株に有効であることが分かっている(McNaughton et al.,2009,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106,6111−6116)(しかしながら、具体的な細胞株に対して手順を最適化するには、タンパク質及びRNAの用量を変化させるパイロット実験を行わなければならない)。
(1)処理前日、48ウェルプレートにウェル当たり1×10細胞をプレーティングする。
(2)処理当日、最終濃度200nMとなるように精製+36 GFPタンパク質を無血清培地中に希釈する。50nMの最終濃度となるようにRNAを加える。ボルテックスして混合し、室温で10分間インキュベートする。
(3)インキュベーション中、細胞から培地を吸引し、PBSで1回洗浄する。
(4)+36 GFP及びRNAのインキュベーション後、細胞にタンパク質−RNA複合体を加える。
(5)細胞を複合体と共に37℃で4時間インキュベートする。
(6)インキュベーション後、培地を吸引し、20U/mLヘパリンPBSで3回洗浄する。細胞を血清含有培地と共に、活性に関するアッセイに応じて更に48時間又はそれ以上インキュベートする。
(7)免疫ブロット、qPCR、表現型アッセイ、又は他の適切な方法によって細胞を分析する。
David Liuの研究室は、+36 GFPが様々な細胞で有効なプラスミド送達試薬であることを更に見出した。プラスミドDNAはsiRNAよりも大きいカーゴであるため、プラスミドを有効に複合体化するためには、比例して更なる+36 GFPタンパク質が必要になる。有効なプラスミド送達のため、本出願人らは、インフルエンザウイルスヘマグルチニンタンパク質に由来する公知のエンドソーム破壊ペプチドであるC末端HA2ペプチドタグを担持する+36 GFPの変異体を開発している。以下のプロトコルが種々の細胞において有効となっているが、上記のとおり、プラスミドDNA及び超荷電タンパク質の用量を特定の細胞株及び送達の適用に最適化することが助言される。
(1)処理前日、48ウェルプレートにウェル当たり1×10をプレーティングする。
(2)処理当日、無血清培地中の精製p36 GFPタンパク質を最終濃度2mMとなるように希釈する。1mgのプラスミドDNAを加える。ボルテックスして混合し、室温で10分間インキュベートする。
(3)インキュベーション中、細胞から培地を吸引し、PBSで1回洗浄する。
(4)p36 GFP及びプラスミドDNAのインキュベーション後、タンパク質−DNA複合体を細胞に穏やかに加える。
(5)細胞を複合体と共に37℃で4時間インキュベートする。
(6)インキュベーション後、培地を吸引し、PBSで洗浄する。血清含有培地中で細胞をインキュベートし、更に24〜48時間インキュベートする。
(7)適宜、プラスミド送達を分析する(例えば、プラスミドによってドライブされる遺伝子発現による)。
また、例えば、McNaughton et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106,6111−6116(2009);Cronican et al.,ACS Chemical Biology 5,747−752(2010);Cronican et al.,Chemistry & Biology 18,833−838(2011);Thompson et al.,Methods in Enzymology 503,293−319(2012);Thompson,D.B.,et al.,Chemistry & Biology 19(7),831−843(2012)も参照のこと。超荷電タンパク質の方法は、本発明のCRISPR Cas系の送達に使用及び/又は応用することができる。Dr.Lui及び本明細書における文献のこれらの系を本明細書における教示と併せて1つ又は複数のCRISPR Cas系又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子の送達に用いることができる。
細胞透過性ペプチド(CPP)
更に別の実施形態において、CRISPR Cas系の送達に細胞透過性ペプチド(CPP)が企図される。CPPは、(ナノサイズ粒子から化学的小分子及び大型DNA断片に至るまでの)様々な分子カーゴの細胞取込みを促進する短鎖ペプチドである。用語「カーゴ」は、本明細書で使用されるとき、限定はされないが、治療剤、診断プローブ、ペプチド、核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミド、タンパク質、ナノ粒子を含めた粒子、リポソーム、発色団、小分子及び放射性物質からなる群を含む。本発明の態様では、カーゴにはまた、CRISPR Cas系の任意の構成成分又は機能性CRISPR Cas系全体も含まれ得る。本発明の態様は、所望のカーゴを対象に送達する方法を更に提供し、この方法は、(a)本発明の細胞透過性ペプチドと所望のカーゴとを含む複合体を調製するステップ、及び(b)複合体を対象に経口的に、関節内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、動脈内に(intrarterially)、鼻腔内に、実質内に、皮下に、筋肉内に、静脈内に、経皮的に、直腸内に、又は局所的に投与するステップを含む。カーゴは、共有結合を介した化学的連結によるか、又は非共有結合性の相互作用によるかのいずれかでペプチドと会合している。
CPPの機能は、カーゴを細胞内に送達することであり、これは一般的にはエンドサイトーシスを通じて起こるプロセスであって、カーゴは哺乳類生細胞のエンドソームに送達される。細胞透過性ペプチドのサイズ、アミノ酸配列、及び電荷は様々であるが、全てのCPPが、細胞膜を移行し且つ細胞質又は細胞小器官への様々な分子カーゴの送達を促進する能力である1つの個別的な特徴を有する。CPPの移行は3つの主な侵入機構に分類し得る:膜における直接の透過、エンドサイトーシスを介する侵入、及び一過性構造の形成を通じた移行。CPPは、癌及びウイルス阻害薬、並びに細胞標識用の造影剤を含め、種々の疾患の治療におけるドラッグデリバリー剤として医薬において数多くの適用が見出されている。後者の例としては、GFP、MRI造影剤、又は量子ドットの担体としての働きが挙げられる。CPPには、研究及び医薬に用いられるインビトロ及びインビボ送達ベクターとして大きな可能性がある。CPPのアミノ酸組成は、典型的には、リジン又はアルギニンなど正電荷アミノ酸の高い相対存在量を含むか、又は極性/荷電アミノ酸と非極性疎水性アミノ酸との交互のパターンを含む配列を有するかのいずれかである。これらの2つの構造タイプは、それぞれポリカチオン性又は両親媒性と称される。第3のCPPクラスは、非極性残基のみを含む疎水性ペプチドであり、これは正味電荷が低いか又は細胞取込みに重要な疎水性アミノ酸基を有する。発見当初のCPPの一つはヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)由来のトランス活性化転写アクチベーター(Tat)であり、これは多数の培養下細胞型によって周囲の培地から効率的に取り込まれることが見出された。それ以降、既知のCPPの数は大幅に増え続け、より有効なタンパク質形質導入特性を有する小分子合成類似体が作成されている。CPPとしては、限定はされないが、ペネトラチン、Tat(48−60)、トランスポータン、及び(R−AhX−R4)(Ahx=アミノヘキサノイル)が挙げられる。
米国特許第8,372,951号明細書は、高い細胞透過性効率及び低毒性を呈する好酸球カチオン性タンパク質(ECP)から送達されるCPPを提供する。CPPをそのカーゴで脊椎動物対象に送達する態様もまた提供されている。CPP及びそれらの送達の更なる態様は、米国特許第8,575,305号明細書;8;同第614,194号明細書及び同第8,044,019号明細書に記載されている。CPPはCRISPR−Cas系又はその構成成分の送達に使用することができる。CPPを用いてCRISPR−Cas系又はその構成成分を送達できることはまた、論稿「Cas9タンパク質及びガイドRNAの細胞透過性ペプチド媒介送達による遺伝子破壊(Gene disruption by cell−penetrating peptide−mediated delivery of Cas9 protein and guide RNA)」,Suresh Ramakrishna,Abu−Bonsrah Kwaku Dad,Jagadish Beloor,et al.Genome Res.2014 Apr 2.[Epub ahead of print](全体として参照により援用される)にも提供されており、ここでは、CPPコンジュゲート組換えCas9タンパク質及びCPP複合体化ガイドRNAによる処理が、ヒト細胞株における内因性遺伝子破壊につながることが実証されている。この論文では、Cas9タンパク質はチオエーテル結合によってCPPにコンジュゲートされた一方、ガイドRNAはCPPと複合体化され、縮合した正電荷粒子を形成した。胚性幹細胞、皮膚線維芽細胞、HEK293T細胞、HeLa細胞、及び胚性癌腫細胞を含めたヒト細胞を改変Cas9及びガイドRNAで同時に及び逐次的に処理すると、プラスミドトランスフェクションと比べてオフターゲット突然変異が低下した効率的な遺伝子破壊につながったことが示された。
植込み型デバイス
別の実施形態において、植込み型デバイスもまた、CRISPR Cas系又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子の送達に企図される。例えば、米国特許出願公開第20110195123号明細書は、薬物を局所的に長時間溶出する植込み型医療器具を、幾つかのタイプのかかるデバイス、治療の実施態様及び植え込み方法を含めて開示しており、それが提供される。デバイスは、例えばデバイス本体として用いられるマトリックスなどのポリマー基質、及び薬物、及び場合によっては金属又は更なるポリマーなどの追加的な足場材料、及び可視性及びイメージングを増強する材料を含む。植込み型送達デバイスは局所的な長期間にわたる放出を提供するのに有利であってよく、ここで薬物は、腫瘍、炎症、変性などの罹患範囲の細胞外マトリックス(ECM)に直接又は症候性の対象のため、又は損傷した平滑筋細胞に、又は予防のため放出される。薬物の一種は上記に開示されるとおりRNAであり、このシステムは本発明のCRISPR Cas系に使用及び/又は応用することができる。一部の実施形態において植え込み方法は、小線源照射療法及び針生検を含め、現在他の治療向けに開発及び使用されている既存の植え込み手技である。そのような場合、この発明に記載される新規インプラントの寸法は、元のインプラントと同様である。典型的には、同じ治療手技中に数個のデバイスが植え込まれる。
米国特許出願公開第20110195123号明細書は、例えば任意選択でマトリックスであってもよい生体安定性及び/又は分解性及び/又は生体吸収性ポリマー基質を含む、腹腔などの体腔及び/又は薬物送達システムが繋留されたり又は付着したりしない任意の他のタイプの投与に適用可能なシステムを含め、薬物送達植込み型又は挿入型システムを提供する。用語「挿入」にはまた、植込みも含まれることに留意しなければならない。薬物送達システムは、好ましくは米国特許出願公開第20110195123号明細書に記載されるとおりの「Loder」として植え込まれる。
ポリマー又は複数のポリマーが生体適合性であり、薬剤及び/又は複数の薬剤を取り入れ、及び制御された速度での薬剤の放出を可能にし、ここでマトリックスなどのポリマー基質の総容積は、例えば、一部の実施形態では、任意選択で及び好ましくは、治療レベルの薬剤の放出を可能にする最大容積以下である。非限定的な例として、かかる容積は、薬剤負荷容積による必要に応じて好ましくは0.1 m〜1000mmの範囲内である。Loderは、任意選択で、例えば及び限定なしに膝関節、子宮内又は子宮頸部リングなど、そのサイズが機能によって決まるデバイスで例えば取り込まれるとき、より大きくてもよい。
薬物送達システム(組成物を送達するための)は、一部の実施形態において、好ましくは分解性ポリマーを用いるように設計され、ここで主な放出機構はバルク侵食である;又は一部の実施形態において、非分解性の、又は徐々に分解されるポリマーが使用され、ここで主な放出機構はバルク侵食よりむしろ拡散であり、従って外側部分が膜として機能し、及びその内側部分が、実質的に長期間にわたって(例えば約1週間〜約数ヵ月)周囲からの影響を受けない薬物リザーバとして機能する。異なる放出機構を有する異なるポリマーの組み合わせもまた、任意選択で用いられ得る。表面の濃度勾配は、好ましくは相当な期間の全薬物放出期間にわたって事実上一定に維持され、従って拡散速度は事実上一定である(「ゼロモード」拡散と呼ばれる)。用語「一定」とは、好ましくは治療有効性の下限閾値より高く維持されるが、しかしなおも任意選択で初期バーストを特徴とし得るか、及び/又は変動し得る、例えば一定限度増加及び減少し得る拡散速度が意味される。拡散速度は、好ましくは長期間そのように維持され、及び治療上有効な期間、例えば有効なサイレンシング期間を最適化するのに特定のレベルで一定であると見なすことができる。
薬物送達システムは、本質的に化学的であるか、それとも酵素及び対象の体内にある他の因子からの攻撃に起因するかに関わらず、任意選択で及び好ましくは分解からヌクレオチドベースの治療剤を遮蔽するように設計される。
米国特許出願公開第20110195123号明細書の薬物送達システムは、例えば任意選択で、限定はされないが、熱的加熱及び冷却、レーザービーム、及び集束超音波を含めた超音波及び/又はRF(高周波)による方法又はデバイスを含め、非侵襲性及び/又は最小侵襲性の起動及び/又は加速/速度方法によって任意選択でデバイスの植込み時及び/又は植込み後に動作させる検知及び/又は起動器具と関連付けられる。
米国特許出願公開第20110195123号明細書の一部の実施形態によれば、局所送達部位には、任意選択で、腫瘍、自己免疫疾患状態を含めた活性化及び/又は慢性的炎症及び感染、筋肉及び神経組織を含めた変性組織、慢性痛、変性部位、及び骨折箇所及び組織の再生強化のための他の創傷箇所、及び傷害された心筋、平滑筋及び横紋筋を含め、細胞の高度な異常増殖、及び抑制されたアポトーシスによって特徴付けられる標的部位が含まれ得る。
組成物の植込み部位、又は標的部位は、好ましくは標的局所送達に十分に小さい半径、面積及び/又は容積を特徴とする。例えば、標的部位は任意選択で約0.1mm〜約5cmの範囲の直径を有する。
標的部位の位置は、好ましくは治療有効性を最大化するように選択される。例えば、薬物送達システム(任意選択で上記に記載したとおりの植込み用デバイスを伴う)の組成物は、任意選択で及び好ましくは、腫瘍環境、又はそれに関連する血液供給の範囲内又はその近くに植え込まれる。
例えば組成物(任意選択でデバイスを伴う)は、任意選択で、脈管系の範囲内などでニップルを用いて膵臓、前立腺、乳房、肝臓の範囲内又はその近くに植え込まれる。
標的の位置は、任意選択で、(任意選択で体内の任意の部位がLoderの植込みに好適であり得るように、あくまでも非限定的な例として):1.基底核、白質及び灰白質におけるパーキンソン病又はアルツハイマー病のような変性部位の脳;2.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の場合のような脊椎;3.HPV感染症予防のための子宮頸部;4.活性化及び慢性的炎症関節;5.乾癬の場合のような真皮;6.鎮痛効果のための交感神経及び感覚神経部位;7.骨内植え込み;8.急性及び慢性感染部位;9.腟内;10.内耳−聴覚系、内耳の迷路、前庭系;11.気管内;12.心内;冠動脈、心外膜;13.膀胱;14.胆管系;15.限定されないが、腎臓、肝臓、脾臓を含む実質組織;16.リンパ節;17.唾液腺;18.歯肉;19.関節内(関節の中);20.眼内;21.脳組織;22.脳室;23.腹腔を含む腔(例えば、限定されないが、卵巣癌について);24.食道内及び25.直腸内を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる群から選択される。
任意選択でシステム(例えば組成物を含有するデバイス)の挿入は、標的部位及び当該部位の近傍におけるECMへの材料の注射によって、標的部位及びかかる部位の近傍の局所pH及び/又は温度及び/又はECMにおける薬物の拡散及び/又は薬物動態に影響を及ぼす他の生物学的因子に影響を及ぼすことを伴う。
任意選択で、一部の実施形態によれば、前記薬剤の放出は、挿入前及び/又は挿入時及び/又は挿入後に、非侵襲性及び/又は最小侵襲性及び/又は他の起動及び/又は加速/減速方法、例えば、レーザービーム、放射線照射、熱的加熱及び冷却、及び集束超音波を含めた超音波及び/又はRF(高周波)方法又はデバイス、及び化学的アクチベーターによって動作させるアプライアンスを検知及び/又は起動することを伴い得る。
米国特許出願公開第20110195123号明細書の他の実施形態によれば、薬物は好ましくは、例えば以下に記載するとおり乳房、膵臓、脳、腎臓、膀胱、肺、及び前立腺における限局性の癌の場合に、RNAを含む。RNAiで例示されるが、多くの薬物がLoderへの封入に適用可能であり、かかる薬物を、例えばマトリックスなど、Loder基質で封入することができる限り、この発明に関連して使用することができ、このシステムは本発明のCRISPR Cas系の送達に使用及び/又は応用することができる。
特定の適用の別の例として、異常な遺伝子発現に起因して神経及び筋肉変性疾患が発生する。RNAの局所送達は、かかる異常な遺伝子発現に干渉する治療特性を有し得る。小薬物及び巨大分子を含めた抗アポトーシス、抗炎症性及び抗変性薬物の局所送達もまた、場合により治療効果があり得る。そのような場合、Loderは、一定の速度での及び/又は別途植え込まれる専用のデバイスを介した長期放出に適用される。これは全て、本発明のCRISPR Cas系に使用及び/又は応用することができる。
特定の適用の更に別の例として、精神障害及び認知障害が遺伝子修飾薬で治療される。遺伝子ノックダウンは治療の選択肢である。薬剤を中枢神経系部位に局所的に送達するLoderは、限定はされないが、精神病、双極性疾患、神経症性障害及び行動疾患を含めた精神障害及び認知障害に対する治療選択肢である。Loderはまた、特定の脳部位における植込み時に小薬物及び巨大分子を含めた薬物を局所的に送達することもできる。これは全て、本発明のCRISPR Cas系に使用及び/又は応用することができる。
特定の適用の別の例として、局所部位における自然及び/又は適応免疫メディエーターのサイレンシングにより、移植臓器拒絶反応の予防が可能となる。移植臓器及び/又は移植部位に植え込まれたLoderによるRNA及び免疫調節試薬の局所送達が、移植臓器に対して活性化したCD8などの免疫細胞を撃退することにより局所免疫抑制を与える。これは全て、本発明のCRISPR Cas系に使用及び/又は応用することができる。
特定の適用の別の例として、VEGF及びアンジオゲニンなどを含む血管成長因子は、血管新生に不可欠である。因子、ペプチド、ペプチド模倣体の局所送達、又はそれらのリプレッサーの抑制は、重要な治療モダリティである;Loderによるリプレッサーのサイレンシング並びに血管新生を刺激する因子、ペプチド、巨大分子及び小薬物の局所送達は、末梢、全身及び心血管疾患に治療効果がある。
植込みなどの挿入方法は、任意選択で、かかる方法において任意選択で改変なしに、或いは任意選択で重要でない改変のみを伴い、他のタイプの組織移植及び/又は挿入及び/又は組織試料採取に既に用いられているものであってもよい。かかる方法としては、任意選択で、限定はされないが、小線源照射療法、生検、ERCPなどの、超音波を伴う及び/又は伴わない内視鏡検査、脳組織への定位的方法、関節、腹部器官、膀胱壁及び体腔への腹腔鏡の植え込みを含む腹腔鏡検査が挙げられる。
本明細書において考察される植込み型デバイス技術は、本明細書における教示と共に用いることができ、従ってこの開示及び当該技術分野における知識により、CRISPR−Cas系又はその構成成分又は構成成分をコードするか又はそれを提供するその核酸分子を植込み型デバイスによって送達し得る。
患者特異的スクリーニング方法
DNA、例えばトリヌクレオチドリピートを標的とする核酸ターゲティング系を使用して、かかるリピートの存在に関して患者又は患者の試料をスクリーニングすることができる。このリピートは核酸ターゲティング系のRNAの標的であることができ、その核酸ターゲティング系によるこのリピートへの結合がある場合、当該の結合を検出して、それによりかかるリピートの存在を示すことができる。従って、核酸ターゲティング系を使用して、リピートの存在に関して患者又は患者試料をスクリーニングすることができる。次に、患者に好適な1つ又は複数の化合物を投与して状態に対応し得る;又は、核酸ターゲティング系を投与して結合させ、挿入、欠失、又は突然変異を生じさせて、状態を緩和し得る。
本発明は核酸を使用して標的DNA配列を結合する。
CRISPRエフェクタータンパク質mRNA及びガイドRNA
CRISPR酵素mRNA及びガイドRNAはまた、別々に送達されてもよい。CRISPR酵素に発現する時間を与えるため、CRISPR酵素mRNAをガイドRNAより先に送達してもよい。CRISPR酵素mRNAはガイドRNA投与の1〜12時間前(好ましくは約2〜6時間前)に投与されてもよい。
或いは、CRISPR酵素mRNA及びガイドRNAは一緒に投与されてもよい。有利には、CRISPR酵素mRNA+ガイドRNAの初回投与から1〜12時間後(好ましくは約2〜6時間後)にガイドRNAの第2のブースター用量が投与されてもよい。
本発明のCRISPRエフェクタータンパク質、即ちCpf1エフェクタータンパク質は、時に本明細書においてCRISPR酵素と称される。エフェクタータンパク質は酵素をベースとし又はそれに由来し、従って一部の実施形態において用語「エフェクタータンパク質」は必ず「酵素」を含むことが理解されるであろう。しかしながら、また、エフェクタータンパク質は一部の実施形態において必要に応じてDNA又はRNA結合を有し得るが、デッドCasエフェクタータンパク質機能を含め、必ずしも切断又はニッキング活性を有するとは限らないことも理解されるであろう。
CRISPR酵素mRNA及び/又はガイドRNAの追加の投与は、最も効率的なゲノム改変レベルを達成するのに有用であり得る。一部の実施形態において、特に治療方法の中で遺伝性疾患が標的化されるとき、好ましくは表現型の変化がゲノム改変の結果であり、好ましくはここで表現型を修正し又は変化させるため修復鋳型が提供される。
一部の実施形態において、標的となり得る疾患としては、疾患を引き起こすスプライス欠損に関係しているものが挙げられる。
一部の実施形態において、細胞標的としては、造血幹/前駆細胞(CD34+);ヒトT細胞;及び眼(網膜細胞)−例えば光受容前駆細胞が挙げられる。
一部の実施形態において、遺伝子標的としては、ヒトβグロビン−HBB(鎌状赤血球貧血の治療用、遺伝子変換の(内因性鋳型として近縁のHBD遺伝子を使用した)刺激によることを含む);CD3(T細胞);及びCEP920−網膜(眼)が挙げられる。
一部の実施形態において、疾患標的としてはまた、癌;鎌状赤血球貧血(点突然変異に基づく);HIV;β−サラセミア;及び眼科的疾患又は眼疾患−例えばレーベル先天黒内障(LCA)を引き起こすスプライス欠損も挙げられる。
一部の実施形態において、送達方法には、酵素−ガイド複合体(リボ核タンパク質)のカチオン性脂質媒介性「直接」送達及びプラスミドDNAの電気穿孔が含まれる。
本発明の方法は、dsODN又はssODN(以下参照)であってもよい修復鋳型などの鋳型の送達を更に含むことができる。鋳型の送達は、CRISPR酵素又はガイドの一部又は全部の送達と同時であっても又は別個であってもよく、且つ同じ又は異なる送達機構によってもよい。一部の実施形態において、鋳型はガイドと共に、好ましくはCRISPR酵素もまた共に送達されることが好ましい;一例はAAVベクターであってもよい。
本発明の方法は、(a)前記二本鎖切断によって生じたオーバーハングに相補的なオーバーハングを含む二本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(dsODN)を細胞に送達するステップであって、前記dsODNが目的の遺伝子座に組み込まれるステップ;又は−(b)一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)を細胞に送達するステップであって、前記ssODNが前記二本鎖切断の相同依存性修復の鋳型として働くステップを更に含むことができる。本発明の方法は個体の疾患の予防又は治療方法であってもよく、任意選択で前記疾患は前記目的の遺伝子座の欠陥によって引き起こされる。本発明の方法は個体においてインビボで行うか又は個体から採取した細胞上でエキソビボで行うことができ、任意選択で前記細胞は個体に戻される。
毒性及びオフターゲット効果を最小限に抑えるため、送達されるCRISPR酵素mRNA及びガイドRNAの濃度を制御することが重要となり得る。CRISPR酵素mRNA及びガイドRNAの最適濃度は、細胞モデル又は動物モデルにおける種々の濃度の試験、及びディープシーケンシングを用いた潜在的なオフターゲットゲノム遺伝子座における改変の程度の分析によって決定することができる。例えば、ヒトゲノムのEMX1遺伝子の5’−GAGTCCGAGCAGAAGAAGAA−3’(配列番号23)を標的化するガイド配列について、ディープシーケンシングを用いて以下の2つのオフターゲット遺伝子座における改変レベルを評価することができる、1:5’−GAGTCCTAGCAGGAGAAGAA−3’(配列番号24)及び2:5’−GAGTCTAAGCAGAAGAAGAA−3’(配列番号25)。最も高いレベルのオンターゲット改変をもたらす一方でオフターゲット改変レベルを最小限に抑える濃度が、インビボ送達に選択されるべきである。
誘導性系
一部の実施形態では、CRISPR酵素は誘導性系の一成分を形成し得る。この系の誘導可能な性質により、エネルギーの形態を用いた遺伝子編集又は遺伝子発現の時空間的制御が可能となり得る。エネルギーの形態としては、限定はされないが、電磁放射線、音響エネルギー、化学エネルギー及び熱エネルギーを挙げることができる。誘導性系の例には、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Tet−On又はTet−Off)、小分子2ハイブリッド転写活性化システム(FKBP、ABA等)、又は光誘導性系(フィトクロム、LOVドメイン、又はクリプトクロム)が含まれる。一実施形態において、CRISPR酵素は、配列特異的に転写活性の変化を導く光誘導性転写エフェクター(LITE)の一部であり得る。光の構成成分には、CRISPR酵素、光応答性シトクロムヘテロ二量体(例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来)、及び転写活性化/抑制ドメインが含まれ得る。誘導性DNA結合タンパク質及びその使用方法の更なる例は、米国仮特許出願第61/736,465号明細書及び米国仮特許出願第61/721,283号明細書、及び国際公開第2014/018423 A2号パンフレット及びUS8889418、US8895308、US20140186919、US20140242700、US20140273234、US20140335620、WO2014093635(本明細書によって全体として参照により援用される)に提供される。
本発明は、条件的又は誘導性CRISPRトランスジェニック細胞/動物を樹立し及び利用するための本発明の組成物の使用を包含する;例えば、Platt et al.,Cell(2014),159(2):440−455、又は国際公開第2014/093622号パンフレット(PCT/US2013/074667号明細書)などの本明細書に引用されるPCT特許公報を参照のこと。例えば、細胞又は動物、例えば非ヒト動物、例えば脊椎動物又は哺乳動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、ラット、又は他の実験動物若しくは野外動物、例えば、ネコ、イヌ、ヒツジなどが「ノックイン」されてもよく、それによって動物がPlatt et alと同様にCpf1(本明細書に記載されるとおりの改変Cpf1のいずれかを含む)を条件的に又は誘導性に発現する。従って標的細胞又は動物はCRISRP酵素(例えば、Cpf1)を条件的に又は誘導性に(例えばCre依存性構築物の形態で)含み、及び/又はアダプタータンパク質を条件的に又は誘導性に含み、及び標的細胞に導入されたベクターの発現時、ベクターが、標的細胞におけるCRISPR酵素(例えば、Cpf1)発現及び/又はアダプター発現を誘導し、又はその条件を生じるそれを発現する。CRISPR複合体を作成する公知の方法と共に本発明の教示及び組成物を適用することにより、誘導性ゲノムイベントもまた本発明の態様である。これの単に一例が、CRISPRノックイン/条件的トランスジェニック動物(例えば、Lox−終止−ポリA−Lox(LSL)カセットを例えば含むマウス)の作出、及び続く、1つ以上の(改変)gRNA(例えば、遺伝子活性化のための目的の標的遺伝子の−200ヌクレオチドからTSSまで、例えば、コートタンパク質、例えばMS2によって認識される1つ以上のアプタマーを有する改変gRNA)、本明細書に記載されるとおりの1つ以上のアダプタータンパク質(1つ以上のVP64に連結したMS2結合タンパク質)及び条件的動物を誘導する手段(例えば、Cpf1発現を誘導性にするためのCreリコンビナーゼ)を提供する1つ以上の組成物の送達である。或いは、アダプタータンパク質が、条件的又は誘導性CRISPR酵素と共に条件的又は誘導性エレメントとして提供されることにより、スクリーニング目的に有効なモデルが提供されてもよく、これは有利には、多種多様な適用に対して、特異的gRNAの最小限の設計及び投与しか必要としないものである。
不安定化ドメインを有する又はそれと会合した本発明に係る酵素
一態様において、本発明は、少なくとも1つの不安定化ドメイン(DD)と会合した、本明細書の他の部分に記載されるとおりのCpf1を提供し;及び、簡略にするため、少なくとも1つの不安定化ドメイン(DD)と会合したかかるCRISPR酵素は、本明細書では「DD−CRISPR酵素」と称する。本明細書の他の部分に記載されるとおりの本発明に係るCRISPR酵素のいずれも、本明細書において以下に記載するとおりの不安定化ドメインを有する又はそれと会合したものとして使用し得ることが理解されるべきである。本明細書の他の部分に記載されるとおりの方法、生成物、組成物及び使用のいずれも、以下に更に詳述するとおりの不安定化ドメインと会合したCRISPR酵素に等しく適用可能である。本明細書に記載されるとおりの態様及び実施形態において、Cpf1をCRISPR酵素と称する又はそのように読む場合、機能性CRISPR−Cas系の再構成は好ましくは不要であり、又はtracr配列に依存せず、及び/又はダイレクトリピートはガイド(標的又はスペーサー)配列の5’側(上流側)にあることが理解されるべきである。
更なる手引きとして、以下の特定の態様及び実施形態を提供する。
本節に記載されるとおりの態様及び実施形態がDD−CRISPR酵素、DD−Cas、DD−Cpf1、DD−CRISPR−Cas又はDD−CRISPR−Cpf1系又は複合体に関するとき、接頭語「DD」のない用語「CRISPR」、「Cas」、「Cpf1」、「CRISPR系」、「CRISPR複合体」、「CRISPR−Cas」、「CRISPR−Cpf1」などは、特に本開示がDDの実施形態に読めると文脈上認められるとき、接頭語DDを有するものと見なし得る。一態様において、本発明は、DD−CRISPR酵素、例えば、CRISPR酵素がCasタンパク質であるようなDD−CRISPR酵素(本明細書では「DD−Casタンパク質」と称され、即ち、「DD−CRISPR−Cpf1複合体」などの用語の前にある「DD」は、少なくとも1つの不安定化ドメインが会合したCpf1タンパク質を有するCRISPR−Cpf1複合体を意味する)、有利にはDD−Casタンパク質、例えば少なくとも1つの不安定化ドメインと会合したCpf1タンパク質(本明細書では「DD−Cpf1タンパク質」と称される)と、ガイドRNAとを含む、エンジニアリングされた天然に存在しないDD−CRISPR−Cas系を提供する。核酸分子、例えばDNA分子は、遺伝子産物をコードすることができる。一部の実施形態において、DD−Casタンパク質は、遺伝子産物をコードするDNA分子を切断し得る。一部の実施形態において、遺伝子産物の発現が変化する。Casタンパク質とガイドRNAとは天然では一緒に存在しない。本発明は、ガイド配列を含むガイドRNAを包含する。一部の実施形態において、機能性CRISPR−Cas系は更なる機能性ドメインを含み得る。一部の実施形態において、本発明は、遺伝子産物の発現を変化させ又は改変する方法を提供する。本方法は、標的核酸、例えばDNA分子を含有する細胞、又は標的核酸、例えばDNA分子を含有してそれを発現する細胞に導入するステップを含み得る;例えば、標的核酸は遺伝子産物をコードし、又は遺伝子産物の発現をもたらし得る(例えば調節配列)。
一部の一般的な実施形態において、DD−CRISPR酵素は1つ以上の機能性ドメインと会合している。一部のより具体的な実施形態において、DD−CRISPR酵素はデッドCpf1であり、及び/又は1つ以上の機能性ドメインと会合している。一部の実施形態において、DD−CRISPR酵素は、例えばα−ヘリックス又はα/β混合二次構造のトランケーションを含む。一部の実施形態において、トランケーションには、除去又はリンカーによる置換が含まれる。一部の実施形態において、リンカーは分枝状であるか、又は他の形でDD及び/又は機能性ドメインの繋留を可能にする。一部の実施形態において、CRISPR酵素は融合タンパク質を介してDDと会合している。一部の実施形態において、CRISPR酵素はDDに融合している。換言すれば、DDは前記CRISPR酵素との融合によってCRISPR酵素と会合していてもよい。一部の実施形態において、酵素は改変CRISPR酵素であるとみなされてもよく、ここでCRISPR酵素は少なくとも1つの不安定化ドメイン(DD)に融合している。一部の実施形態において、DDは、コネクタータンパク質を介して、例えばストレプトアビジン−ビオチン系などのマーカー系などのシステムを用いてCRISPR酵素と会合していてもよい。このように、当該のコネクターに対する高親和性リガンドに特異的なコネクタータンパク質とCRISPR酵素との融合物が提供され、ここではDDが前記高親和性リガンドに結合される。例えば、ストレプトアビジン(strepavidin)が、CRISPR酵素に融合したコネクターであってもよく、一方、ビオチンがDDに結合されてもよい。共存するとき、ストレプトアビジンがビオチンに結合し、ひいてはCRISPR酵素がDDに結び付けられる。簡単にするため、CRISPR酵素とDDとの融合が、一部の実施形態では好ましい。一部の実施形態において、この融合は、DDとCRISPR酵素との間にリンカーを含む。一部の実施形態では、CRISPR酵素のN端側末端への融合であってもよい。一部の実施形態において、少なくとも1つのDDがCRISPR酵素のN末端に融合する。一部の実施形態では、CRISPR酵素のC端側末端への融合であってもよい。一部の実施形態において、少なくとも1つのDDがCRISPR酵素のC末端に融合する。一部の実施形態において、1つのDDがCRISPR酵素のN端側末端に融合し、もう1つのDDがCRISPR酵素のC端側に融合してもよい。一部の実施形態において、CRISPR酵素は少なくとも2つのDDと会合し、ここでは第1のDDがCRISPR酵素のN末端に融合し、且つ第2のDDがCRISPR酵素のC末端に融合し、第1及び第2のDDは同じであるか又は異なる。一部の実施形態では、DDのN端側末端への融合であってもよい。一部の実施形態では、DDのC端側末端への融合であってもよい。一部の実施形態において、融合はCRISPR酵素のC端側末端とDDのN端側末端との間であってもよい。一部の実施形態において、融合はDDのC端側末端とCRISPR酵素のN端側末端との間であってもよい。少なくとも1つのN端側融合を含むDDでは、少なくとも1つのC端側融合を含むDDと比べてバックグラウンドが低いことが観察された。N端側融合及びC端側融合を組み合わせるとバックグラウンドは最小になったが、全体的な活性が最も低かった。有利にはDDは、少なくとも1つのN端側融合又は少なくとも1つのN端側融合+少なくとも1つのC端側融合で提供される。及び当然ながら、DDは少なくとも1つのC端側融合によって提供されてもよい。
特定の実施形態において、誘導性調節などのためのタンパク質不安定化ドメインは、例えばCpf1のN端及び/又はC端に融合させることができる。加えて、不安定化ドメインは、例えばCpf1の溶媒露出ループにある一次配列に導入することができる。Cpf1ヌクレアーゼの一次構造のコンピュータ分析から、3つの個別的な領域が明らかになる。第一にC末端RuvC様ドメイン、これは唯一機能的に特徴付けられたドメインである。第二にN末端α−ヘリックス領域、及び第三に、RuvC様ドメインとα−ヘリックス領域との間に位置する混合α及びβ領域、非構造化領域の幾つかの小さいストレッチが予想される。溶媒に露出していて、且つ異なるCpf1オルソログ間で保存されていない非構造化領域は、スプリット及び小さいタンパク質配列の挿入に好ましいサイドである。加えて、これらのサイドを用いてCpf1オルソログ間のキメラタンパク質を生成することができる。
一部の実施形態において、DDはER50である。このDDの対応する安定化リガンドは、一部の実施形態において4HTである。そのため、一部の実施形態では、少なくとも1つのDDのうちの1つがER50であり、従って安定化リガンドが4HT又はCMP8である。一部の実施形態において、DDはDHFR50である。このDDの対応する安定化リガンドは、一部の実施形態においてTMPである。そのため、一部の実施形態では、少なくとも1つのDDのうち1つがDHFR50であり、従って安定化リガンドがTMPである。一部の実施形態において、DDはER50である。このDDの対応する安定化リガンドは、一部の実施形態においてCMP8である。従ってCMP8は、ER50系における4HTの代替となる安定化リガンドであり得る。CMP8及び4HTを競合的に使用し得る/使用するべきである可能性があり得るが、一部の細胞型はこれらの2つのリガンドのうちのいずれか一方の影響を受け易いこともあり、及び本開示及び当該技術分野における知識から、当業者はCMP8及び/又は4HTを使用することができる。
一部の実施形態において、1つ又は2つのDDがCRISPR酵素のN端側末端に融合され、1つ又は2つのDDがCRISPR酵素のC端側に融合されてもよい。一部の実施形態では、少なくとも2つのDDがCRISPR酵素と会合し、及びそれらのDDは同じDDであり、即ちDDは同種である。従って、DDの両方(又は2つ以上)がER50 DDであり得る。一部の実施形態ではこれが好ましい。或いは、DDの両方(又は2つ以上)がDHFR50 DDであり得る。これもまた、一部の実施形態では好ましい。一部の実施形態において、少なくとも2つのDDがCRISPR酵素と会合し、及びそれらのDDは異なるDDであり、即ちDDは異種である。従って、DDのうちの1つがER50であり得る一方、DDのうちの1つ以上又は任意の他のDDがDHFR50であり得る。異種である2つ以上のDDを有することは、より高い分解制御レベルをもたらし得るため有利であり得る。N端又はC端における2つ以上のDDのタンデム融合が分解を増強し得る;及びかかるタンデム融合は、例えばER50−ER50−Cpf1又はDHFR−DHFR−Cpf1であり得る。いずれの安定化リガンドも存在しないならば高レベルの分解が起こり、一方の安定化リガンドが存在せず、他方の(又は別の)安定化リガンドが存在するならば中間レベルの分解が起こり得る一方、安定化リガンドの両方(又は2つ以上)が存在するならば低レベルの分解が起こり得ることが想定される。制御はまた、N端側ER50 DD及びC端側DHFR50 DDを有することによってももたらされ得る。
一部の実施形態において、CRISPR酵素とDDの融合は、DDとCRISPR酵素との間にリンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーはGlySerリンカーである。一部の実施形態において、DD−CRISPR酵素は少なくとも1つの核外移行シグナル(NES)を更に含む。一部の実施形態において、DD−CRISPR酵素は2つ以上のNESを含む。一部の実施形態において、DD−CRISPR酵素は少なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)を含む。これは、NESに加えて含むのであってもよい。一部の実施形態において、CRISPR酵素は、CRISPR酵素とDDとの間のリンカーとして、又はその一部として、局在化(核内移行又は核外移行)シグナルを含むか、又はそれから本質的になるか、又はそれからなる。HA又はFlagタグもまた、リンカーとしての本発明の範囲内にある。本出願人らはNLS及び/又はNESをリンカーとして使用し、また、GSほどの短さのものから最大(GGGGS)に至るまでのグリシンセリンリンカーも使用する。
ある態様において、本発明は、CRISPR酵素及び関連DDをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態において、コードされるCRISPR酵素及び関連DDは、第1の調節エレメントに作動可能に連結される。一部の実施形態において、DDが同様にコードされ、且つ第2の調節エレメントに作動可能に連結される。有利には、ここでのDDは安定化リガンドを「モップアップ(mop up)」するものであり、そのため有利には、これは、例えば本明細書に考察されるとおり、酵素に会合したものと同じDD(即ち同じタイプのドメイン)である(用語「モップアップ」は本明細書で考察するとおりの意味であり、活性に寄与し又はそれを完了させるため実施することも伝え得ると理解されるものとする)。CRISPR酵素に会合しない過剰なDDで安定化リガンドをモップアップすることにより、CRISPR酵素のより高い分解が見られることになる。理論によって拘束されないが、追加の又は過剰な非会合DDが加えられることに伴い、CRISPR酵素と会合したDDと複合体を形成し又はそれに結合する安定化リガンドから離れる方に平衡がシフトし、代わりに遊離DD(即ちCRISPR酵素と会合していないもの)と複合体を形成し又はそれに結合する安定化リガンドの方に一層多く移るであろうことが想定される。従って、CRISPR酵素の分解は増加してもCRISPR酵素活性は低下することが所望される場合、過剰な又は追加の非会合(又は遊離)DDを供給することが好ましい。過剰の遊離DDは残りのリガンドに結合し、またDD−Cas融合物から結合したリガンドも取り上げる。従ってこれはDD−Cas分解を加速させ、Cas活性の時間的制御を増強する。一部の実施形態において、第1の調節エレメントはプロモーターであり、任意選択でエンハンサーを含み得る。一部の実施形態において、第2の調節エレメントはプロモーターであり、任意選択でエンハンサーを含み得る。一部の実施形態において、第1の調節エレメントは初期プロモーターである。一部の実施形態において、第2の調節エレメントは後期プロモーターである。一部の実施形態において、第2の調節エレメントは誘導性制御エレメント、任意選択でtet系、又は抑制性制御エレメント、任意選択でtetr系であるか、又はそれを含むか、又はそれから本質的になる。ドキシサイクリンの存在下におけるtetの誘導には、誘導性プロモーター、例えばrTTAが有利であり得る。
結合又は会合は、本明細書の他の部分に記載されるとおりのリンカーを介することができる。代替的なリンカーが利用可能であり、しかしCasの2つのパートが一緒になり、ひいてはCas活性を再構成する機会を最大限にするには、高度に可動性のリンカーが最も良好に働くと考えられる。一つの代替例は、ヌクレオプラスミンのNLSをリンカーとして使用し得るものである。例えば、Casと任意の機能性ドメインとの間にもリンカーを使用することができる。この場合もまた、ここに(GGGGS)リンカー(又はその6、9、又は12リピートバージョン)を使用してもよく、又はCasと機能性ドメインとの間にヌクレオプラスミンのNLSをリンカーとして使用することができる。
機能性ドメインなどが酵素のいずれか一方のパートと「会合」している場合、それらは典型的には融合物である。用語「〜と会合している」は、本明細書では、例えばCRISPR酵素のパートと機能性ドメインとの間で、一つの分子がどのように別の分子と「会合」しているかに関して用いられる。これらの2つは互いに繋留されていると見なし得る。かかるタンパク質間相互作用の場合、この会合は、抗体がエピトープを認識する方法における認識の観点で考えられてもよい。或いは、一つのタンパク質がもう一つのタンパク質と、それら2つの融合物を介して会合していてもよく、例えば一つのサブユニットがもう一つのサブユニットに融合していてもよい。融合は典型的には、例えば、各タンパク質又はサブユニットをコードするヌクレオチド配列を併せてスプライシングすることにより、一方のアミノ酸配列を他方のアミノ酸配列に付加することによって起こる。或いは、これは、本質的に、融合タンパク質など、2つの分子間の結合又は直接的な連結と考えられてもよい。
いずれにしろ、融合タンパク質は2つの目的のサブユニット間(例えば酵素と機能性ドメインとの間又はアダプタータンパク質と機能性ドメインとの間)にリンカーを含み得る。従って、一部の実施形態において、CRISPR酵素のパートは機能性ドメインと、それに結合することによって会合している。他の実施形態において、CRISPR酵素は機能性ドメインと、それらの2つが任意選択で中間リンカーを介して一体に融合されているため、会合している。リンカーの例としては、本明細書で考察されるGlySerリンカーが挙げられる。非共有結合性に結合したDDは会合したCas(例えばCpf1)の分解を惹起することが可能であり得るが、プロテアソーム分解はタンパク質鎖の巻き戻しが関わり;及び、分解時にDDがCasに結び付いたまま留まることをもたらし得るため、融合が好ましい。しかしながら、DDに特異的な安定化リガンドの存在下ではCRISPR酵素とDDとが一体になり、安定化複合体が形成される。この複合体は、DDに結合した安定化リガンドを含む。この複合体はまた、CRISPR酵素と会合したDDも含む。前記安定化リガンドが存在しない場合、DD及びその関連するCRISPR酵素の分解が促進される。
不安定化ドメインには、広範囲のタンパク質に不安定性を付与する一般的な有用性がある;例えば、Miyazaki,J Am Chem Soc.Mar 7,2012;134(9):3942−3945(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。CMP8又は4−ヒドロキシタモキシフェンは不安定化ドメインであり得る。より一般的には、N末端規則による不安定化残基である哺乳類DHFRの温度感受性突然変異体(DHFRts)が、許容温度で安定であるが、37℃で不安定であることが分かった。DHFRtsを発現する細胞に哺乳類DHFRの高親和性リガンドであるメトトレキサートを加えると、タンパク質の分解が部分的に阻害された。これは、細胞において本来分解の標的となるタンパク質を小分子リガンドが安定化させ得るという重要な実証であった。ラパマイシン誘導体を使用すると、mTORのFRBドメイン(FRB*)の不安定突然変異体が安定化し、融合したキナーゼGSK−3βの機能が回復した6,7。この系は、リガンド依存的な安定性が、複雑な生物学的環境において特異的タンパク質の機能を調節する魅力的な戦略に相当することを実証した。タンパク質活性を制御する系には、ラパマイシンによって誘導されたFK506結合タンパク質とFKBP12との二量体化によってユビキチン相補性が生じると機能性になるDDが関与し得る。ヒトFKBP12又はecDHFRタンパク質の突然変異体は、その高親和性リガンド、それぞれShield−1又はトリメトプリム(TMP)が存在しない場合には代謝的に不安定であるようにエンジニアリングすることができる。これらの突然変異体は、本発明の実施において有用な可能な不安定化ドメイン(DD)の一部であり、及びCRISPR酵素との融合物としてのDDの不安定性が、プロテアソームによる融合タンパク質全体のCRISPRタンパク質分解をもたらす。Shield−1及びTMPは用量依存的にDDに結合してそれを安定化させる。エストロゲン受容体リガンド結合ドメイン(ERLBD、ERS1の残基305〜549)もまた、不安定化ドメインとしてエンジニアリングすることができる。エストロゲン受容体シグナル伝達経路は乳癌などの種々の疾患に関与するため、この経路は広く研究されており、数多くのエストロゲン受容体作動薬及び拮抗薬が開発されている。従って、ERLBDと薬物との適合性のあるペアが公知である。突然変異体ERLBDに結合するが、野生型のERLBDには結合しないリガンドがある。3つの突然変異(L384M、M421G、G521R)12をコードするこれらの突然変異ドメインのうちの1つを使用することにより、内因性エストロゲン感受性ネットワークを乱すことのないリガンドを用いてERLBD由来のDDの安定性を調節することが可能である。追加の突然変異(Y537S)を導入してERLBDを更に不安定化させ、それを潜在的なDD候補として構成することができる。この四重突然変異体は、有利なDD展開である。この突然変異ERLBDをCRISPR酵素に融合させることができ、且つリガンドを用いてその安定性を調節し又は撹乱させることができ、それによってCRISPR酵素がDDを有することになる。別のDDは、Shield1リガンドによって安定化した、突然変異FKBPタンパク質をベースとする12kDa(107アミノ酸)タグであり得る;例えば、Nature Methods 5,(2008)を参照のこと。例えばDDは、合成の生物学的に不活性な小分子、Shield−1に結合し、且つそれによって可逆的に安定化される、改変されたFK506結合タンパク質12(FKBP12)であってもよく;例えば、Banaszynski LA,Chen LC,Maynard−Smith LA,Ooi AG,Wandless TJ.「合成小分子を使用して生細胞のタンパク質機能を調節するための迅速で可逆的且つ調整可能な方法(A rapid,reversible,and tunable method to regulate protein function in living cells using synthetic small molecules)」.Cell.2006;126:995−1004;Banaszynski LA,Sellmyer MA,Contag CH,Wandless TJ,Thorne SH.「生存マウスにおけるタンパク質安定性及び機能の化学的制御(Chemical control of protein stability and function in living mice)」.Nat Med.2008;14:1123−1127;Maynard−Smith LA,Chen LC,Banaszynski LA,Ooi AG,Wandless TJ.「生物学的にサイレントな小分子を用いて条件的タンパク質安定性をエンジニアリングする指向的手法(A directed approach for engineering conditional protein stability using biologically silent small molecules)」.The Journal of biological chemistry.2007;282:24866−24872;及びRodriguez,Chem Biol.Mar 23,2012;19(3):391−398(これらは全て、参照により本明細書に援用される)を参照されたく、及び本発明の実施においてCRISPR酵素と会合させるDDの選択において本発明の実施で用いられ得る。理解し得るとおり、当該技術分野における知識には幾つものDDが含まれ、及びDDはCRISPR酵素と、有利にはリンカーを伴い会合させる、例えば融合することができ、それによってDDをリガンドの存在下で安定化させることができ、及びそれが存在しないときDDを不安定化させることができ、それによってCRISPR酵素が全体として不安定化し、又はDDはリガンドが存在しない場合に安定化させることができ、リガンドが存在するときにDDを不安定化させることができ;DDによってCRISPR酵素及びひいてはCRISPR−Cas複合体又は系を調節又は制御する−いわばオン・オフを切り替えることが可能となり、それにより系を例えばインビボ又はインビトロ環境で調節又は制御する手段が提供される。例えば、目的のタンパク質をDDタグとの融合物として発現させると、それは細胞内で不安定化し、例えばプロテアソームによって急速に分解される。従って、安定化リガンドが存在しないと、Dが会合したCasの分解につながる。新規DDを目的のタンパク質に融合させると、その不安定性が目的のタンパク質に付与され、融合タンパク質全体の急速な分解が生じる。Casのピーク活性は、時にオフターゲット効果の低減に有益である。従って、高い活性の短いバーストが好ましい。本発明はかかるピークを提供することが可能である。ある意味では、本系は誘導性である。別の意味では、本系は安定化リガンドの非存在下で抑制され、安定化リガンドの存在下で抑制が解除される。いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、及びいかなる約束もすることなく、本発明の他の有益としては、以下を挙げることができる:
・用量調整可能であること(例えばオン・オフを切り替える系と対照的、可変的なCRISPR−Cas系又は複合体活性を実現することができる)。
・直交性であること、例えば、リガンドがそのコグネイトDDにのみ影響を及ぼすため、2つ以上の系を独立に操作することができ、及び/又はCRISPR酵素が1つ以上のオルソログに由来することができる。
・輸送可能であること、例えば、種々の細胞型又は細胞株で機能し得る。
・高速であること。
・時間的制御性があること。
・Casの分解が可能であることにより、バックグラウンド又はオフターゲットCas又はCas毒性又は過剰なCas蓄積を低減可能であること。
DDは、スプリット(本明細書の他の部分に定義するとおり)の1つ以上のサイドにあるDDを含め、CRISPR酵素のN末端及び/又はC末端にあってもよいが、例えばCpf1(N)−リンカー−DD−リンカー−Cpf1(C)もまた、DDの一つの導入方法である。一部の実施形態において、CRISPR酵素へのDDの一方のみの末端会合の使用を用いる場合、DDとしてER50を使用することが好ましい。一部の実施形態において、N末端及びC末端の両方を用いる場合、ER50及び/又はDHFR50のいずれかの使用が好ましい。N末端融合で特に良好な結果が見られたが、これは意外である。N末端融合及びC末端融合の両方を有すると、相乗的になり得る。不安定化ドメインのサイズは様々であるが、典型的には約100〜300アミノ酸のサイズである。DDは、好ましくはエンジニアリングされた不安定化タンパク質ドメインである。DD、及び例えば高親和性リガンド及びそのリガンド結合ドメインからのDDの作製方法。本発明は、特異的リガンドのみがそのそれぞれの(コグネイト)DDを安定化させ、非コグネイトDDの安定性には何ら効果を及ぼさないため、「直交性」と見なし得る。市販のDD系は、CloneTech、ProteoTuner(商標)系である;安定化リガンドはShield1である。
一部の実施形態において、安定化リガンドは「小分子」である。一部の実施形態において、安定化リガンドは細胞透過性である。これは、その対応するDDに対して高親和性を有する。好適なDD−安定化リガンドペアは当該技術分野において公知である。一般に、安定化リガンドは、
− 例えばインビボでの、自然のプロセシング(例えばプロテアソーム分解);
− 例えばエキソビボ/細胞培養下、以下によるモップアップ:
− 好ましい結合パートナーの提供;又は
− XS基質(Casを伴わないDD)の提供
によって除去し得る。
更なる態様において、本発明は、DD−CRISPR−Cpf1系又はその機能性の一部分の範囲内にフィットする又はそれに結合するように潜在的化合物を同定又は設計するためのコンピュータ支援方法又はその逆に関する(本明細書において他の部分に記載されるとおり、例えば「保護型ガイド」を参照のこと)。
多重(タンデム)ターゲティング手法に用いられる本発明に係る酵素
本発明者らは、本明細書に定義するとおりのCRISPR酵素が活性を失うことなく2つ以上のRNAガイドを利用し得ることを明らかにしている。これにより、本明細書に定義するとおりのCRISPR酵素、系又は複合体を使用した複数のDNA標的、遺伝子又は遺伝子座のターゲティングが、本明細書に定義するとおりの単一の酵素、系又は複合体によって可能となる。ガイドRNAはタンデムに配置されてもよく、任意選択で本明細書に定義するとおりのダイレクトリピートなどのヌクレオチド配列によって分離されていてもよい。これらの異なるガイドRNAの位置はタンデムであり、活性に影響を及ぼさない。
一態様において、本発明は、タンデム又は多重ターゲティングに使用される、本明細書に記載されるとおりの本発明に係るCpf1を提供する。本明細書の他の部分に記載されるとおりの本発明に係るCRISPR(又はCRISPR−Cas又はCas)酵素、複合体、又は系のいずれも、かかる手法に使用し得ることが理解されるべきである。本明細書の他の部分に記載されるとおりの方法、生成物、組成物及び使用のいずれも、以下に更に詳述する多重又はタンデムターゲティング手法で等しく適用可能である。更なる手引きとして、以下の詳細な態様及び実施形態を提供する。
一態様において、本発明は、複数の遺伝子座のターゲティングへの本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、複合体又は系の使用を提供する。一実施形態において、これは、複数の(タンデム又は多重)ガイドRNA(gRNA)配列を用いることによって実現し得る。
一態様において、本発明は、タンデム又は多重ターゲティングへの本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、複合体又は系の1つ以上のエレメントの使用方法を提供し、ここで前記CRISP系は複数のガイドRNA配列を含む。好ましくは、前記gRNA配列は、本明細書の他の部分に定義するとおりのダイレクトリピートなど、ヌクレオチド配列によって分離されている。
一態様において、本発明は、本明細書に定義するとおりのCpf1酵素、系又は複合体、即ち、Cpf1タンパク質と、DNA分子など、複数の核酸分子を標的化する複数のガイドRNAであって、それによって各々がその対応する核酸分子、例えばDNA分子を特異的に標的化する複数のガイドRNAとを有するCpf1 CRISPR−Cas複合体を提供する。各核酸分子標的、例えばDNA分子は遺伝子産物をコードし得るか、又は遺伝子座を包含し得る。ひいては複数のガイドRNAを使用することにより、複数の遺伝子座又は複数の遺伝子のターゲティングが可能になる。一部の実施形態において、Cpf1酵素は、遺伝子産物をコードするDNA分子を切断し得る。一部の実施形態において、遺伝子産物の発現が変化する。Cpf1タンパク質及びガイドRNAは天然では一緒に存在しない。本発明は、タンデムに配置されたガイド配列を含むガイドRNAを包含する。Cpf1酵素はCRISPR系又は複合体の一部を形成してもよく、CRISPR系又は複合体は更に、各々が細胞の目的のゲノム遺伝子座にある標的配列に特異的にハイブリダイズ可能な一連の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、25、25、30個、又は30個超のガイド配列を含むタンデムに配置されたガイドRNA(gRNA)を含む。一部の実施形態において、機能性Cpf1 CRISPR系又は複合体は複数の標的配列に結合する。一部の実施形態において、機能性CRISPR系又は複合体は複数の標的配列を編集することができ、例えば、それらの標的配列はゲノム遺伝子座を含んでもよく、及び一部の実施形態では遺伝子発現の変化があり得る。一部の実施形態において、機能性CRISPR系又は複合体は更なる機能性ドメインを含み得る。一部の実施形態において、本発明は、複数の遺伝子産物の発現を変化させる又は改変する方法を提供する。本方法は、前記標的核酸、例えばDNA分子を含有する、又は標的核酸、例えばDNA分子を含有してそれを発現する細胞に導入することを含み得る;例えば、標的核酸は遺伝子産物をコードし得るか、又は遺伝子産物の発現をもたらし得る(例えば調節配列)。
好ましい実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCRISPR酵素はCpf1であり、又はCRISPR系又は複合体はCpf1を含む。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCRISPR酵素はAsCpf1であり、又は多重ターゲティングに用いられるCRISPR系又は複合体はAsCpf1を含む。一部の実施形態において、CRISPR酵素はLbCpf1であり、又はCRISPR系又は複合体はLbCpf1を含む。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCpf1酵素はDNAの両方の鎖を切断して二本鎖切断(DSB)を作り出す。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCRISPR酵素はニッカーゼである。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCpf1酵素はデュアルニッカーゼである。一部の実施形態において、多重ターゲティングに用いられるCpf1酵素は、本明細書の他の部分に定義するとおりのDD Cpf1酵素などのCpf1酵素である。
一態様において、本発明は、真核細胞などの宿主細胞における複数の標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、Cpf1CRISPR複合体を複数の標的ポリヌクレオチドに結合させて、例えば前記複数の標的ポリヌクレオチドの切断を生じさせ、それにより複数の標的ポリヌクレオチドを改変するステップを含み、ここでCpf1CRISPR複合体は、前記標的ポリヌクレオチド内の特定の標的配列に各々ハイブリダイズする複数のガイド配列と複合体を形成したCpf1酵素を含み、前記複数のガイド配列はダイレクトリピート配列に連結されている。一部の実施形態において、前記切断は、前記Cpf1酵素によって標的配列の各々の位置にある1本又は2本の鎖を切断することを含む。一部の実施形態において、前記切断により、複数の標的遺伝子の転写の減少が生じる。一部の実施形態において、本方法は、前記切断された標的ポリヌクレオチドの1つ以上を外因性鋳型ポリヌクレオチドによる相同組換えによって修復するステップを更に含み、前記修復により、前記標的ポリヌクレオチドの1つ以上の1ヌクレオチド以上の挿入、欠失、又は置換を含む突然変異が生じる。一部の実施形態において、前記突然変異により、標的配列の1つ以上を含む遺伝子から発現したタンパク質に1つ以上のアミノ酸変化が生じる。一部の実施形態において、本方法は、前記真核細胞に1つ以上のベクターを送達するステップを更に含み、ここで1つ以上のベクターは、Cpf1酵素及びダイレクトリピート配列に連結された複数のガイドRNA配列のうちの1つ以上の発現をドライブする。一部の実施形態において、前記ベクターは対象の真核細胞に送達される。一部の実施形態において、前記改変は細胞培養物中の前記真核細胞で起こる。一部の実施形態において、本方法は、前記改変の前に対象から前記真核細胞を単離するステップを更に含む。一部の実施形態において、本方法は、前記真核細胞及び/又はそれに由来する細胞を前記対象に戻すステップを更に含む。
本発明のある態様は、上記のエレメントが単一の組成物に含まれるもの、又は個々の組成物に含まれるものである。これらの組成物は、有利には宿主に適用されて、ゲノムレベルで機能的効果を生じ得る。
各gRNAは、同じ又は異なるアダプタータンパク質に特異的な複数の結合認識部位(例えばアプタマー)を含むように設計され得る。各gRNAは、転写開始部位(即ちTSS)の−1000〜+1核酸、好ましくは−200核酸上流のプロモーター領域に結合するように設計され得る。このように位置させると、遺伝子活性化(activiation)(例えば転写アクチベーター)又は遺伝子阻害(例えば転写リプレッサー)に影響を及ぼす機能性ドメインが向上する。改変されたgRNAは、組成物に含まれる1つ以上の標的遺伝子座を標的化する1つ以上の改変されたgRNA(例えば、少なくとも1個のgRNA、少なくとも2個のgRNA、少なくとも5個のgRNA、少なくとも10個のgRNA、少なくとも20個のgRNA、少なくとも30個のgRNA、少なくとも50個のgRNA)であってもよい。前記複数のgRNA配列はタンデムに配置され、好ましくはダイレクトリピートによって分離されている。
ある態様において、
I.2つ以上のCRISPR−Cas系ポリヌクレオチド配列であって、
(a)ポリヌクレオチド遺伝子座における第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列、
(b)ポリヌクレオチド遺伝子座における第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列、
(c)ダイレクトリピート配列、を含むポリヌクレオチド配列、
及び
II.Cpf1酵素又はそれをコードする第2のポリヌクレオチド配列
を含む、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物であって、
転写されると、第1及び第2のガイド配列が第1及び第2のCpf1 CRISPR複合体のそれぞれ第1及び第2の標的配列への配列特異的結合を導き、
第1のCRISPR複合体が、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列と複合体を形成したCpf1酵素を含み、
第2のCRISPR複合体が、第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列と複合体を形成したCpf1酵素を含み、及び
第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導いて二本鎖切断を誘導し、それにより生物又は非ヒト又は非動物生物が改変される、組成物が提供される。同様に、例えば各1つの標的に特異的な、且つ本明細書に記載されるとおりの組成物又はCRISPR系若しくは複合体中でタンデムに配置された、3つ以上のガイドRNAを含む組成物を想定することができる。
自己不活性化システム
細胞内のゲノムにおける遺伝子の全てのコピーが編集された後は、それ以上当該細胞においてCRISRP/Cpf1p発現が続行する必要はない。実際、発現が持続すれば、意図しないゲノム部位でオフターゲット効果が起こる場合等、望ましくないこともある。従って時限的発現が有用となり得る。誘導性発現は一つの手法を提供するが、更に本出願人らは、CRISPRベクターそれ自体の中の非コードガイド標的配列の使用に頼る自己不活性化CRISPR系をエンジニアリングしている。従って、発現開始後、CRISPR−Cas系はそれ自体の破壊をもたらし得るが、しかし破壊が完了する前に、標的遺伝子のゲノムコピーを編集する時間があり得る(二倍体細胞における通常の点突然変異では、これに必要となるのは高々2つの編集である)。単純に、自己不活性化CRISPR−Cas系は、CRISPR酵素それ自体のコード配列を標的化するか、又は以下の1つ以上に存在するユニーク配列に相補的な1つ以上の非コードガイド標的配列を標的化する追加的なRNA(即ち、ガイドRNA)を含む:
(a)非コードRNAエレメントの発現を駆動するプロモーター内、
(b)Cpf1エフェクタータンパク質遺伝子の発現を駆動するプロモーター内、
(c)Cpf1エフェクタータンパク質コード配列におけるATG翻訳開始コドンから100bp以内、
(d)例えばAAVゲノムにおける、ウイルス送達ベクターの逆方向末端反復配列(iTR)内。
更に、当該のRNAは、CRISPR複合体をコードするベクター、例えば別個のベクター又は同じベクターで送達することができる。別個のベクターにより提供される場合、Cas発現を標的化するCRISPR RNAは、逐次的に又は同時に投与することができる。逐次的に投与される場合、Cas発現を標的とするCRISPRRNAは、例えば遺伝子編集又は遺伝子エンジニアリングが意図されるCRISPR RNAの後に送達されるべきである。この期間は数分の期間であってもよい(例えば、5分、10分、20分、30分、45分、60分)。この期間は数時間の期間であってもよい(例えば、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間)。この期間は数日の期間であってもよい(例えば、2日、3日、4日、7日)。この期間は数週の期間であってもよい(例えば、2週間、3週間、4週間)。この期間は数ヵ月の期間であってもよい(例えば、2ヵ月、4ヵ月、8ヵ月、12ヵ月)。この期間は数年の期間であってもよい(2年、3年、4年)。このようにして、Cas酵素は、1つ又は複数の目的のゲノム遺伝子座などの第1の標的にハイブリダイズ可能な第1のgRNAと会合し、CRISPR−Cas系の所望の1つ又は複数の機能(例えば遺伝子エンジニアリング)を受け持ち;及び続いてCas酵素は、次にCas又はCRISPRカセットの少なくとも一部を含む配列にハイブリダイズ可能な第2のgRNAと会合し得る。Casタンパク質の発現をコードする配列がガイドRNAの標的である場合、酵素は妨げられ、系が自己不活性化する。同じように、本明細書に説明されるとおり、例えばリポソーム、リポフェクション、粒子、微小胞を介して適用されるCas発現を標的とするCRISPR RNAが、逐次的又は同時に投与されてもよい。同様に、1つ以上の標的を標的化するために用いられる1つ以上のガイドRNAの不活性化に自己不活性化が用いられ得る。
一部の態様において、CRISPR酵素開始コドンの下流の配列にハイブリダイゼーション可能なシングルgRNAが提供され、それによって幾らかの時間の後、CRISPR酵素発現が失われる。一部の態様において、CRISPR−Cas系をコードするポリヌクレオチドの1つ以上のコード又は非コード領域にハイブリダイゼーション可能な1つ以上のgRNAが提供され、それによって幾らかの時間の後、CRISPR−Cas系の1つ以上、又は場合によっては全てが不活性化する。この系の一部の態様において、及び理論によって制限されることなく、細胞は複数のCRISPR−Cas複合体を含むことができ、ここでCRISPR複合体の第1のサブセットが、編集しようとする1つ又は複数のゲノム遺伝子座を標的化可能な第1のガイドRNAを含み、及びCRISPR複合体の第2のサブセットが、CRISPR−Cas系をコードするポリヌクレオチドを標的化可能な少なくとも1つの第2のガイドRNAを含み、ここでCRISPR−Cas複合体の第1のサブセットが1つ又は複数の標的ゲノム遺伝子座の編集を媒介し、及びCRISPR複合体の第2のサブセットが最終的にCRISPR−Cas系を不活性化し、それにより細胞における更なるCRISPR−Cas発現が不活性化される。
従って本発明は、真核細胞に送達するための1つ以上のベクターを含むCRISPR−Cas系を提供し、ここで1つ又は複数のベクターは、(i)CRISPR酵素;(ii)細胞内の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイドRNA;(iii)CRISPR酵素をコードするベクター内の1つ以上の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイドRNAコードし、細胞内で発現すると:第1のガイドRNAが、細胞内の標的配列への第1のCRISPR複合体の配列特異的結合を導き;第2のガイドRNAが、CRISPR酵素をコードするベクター内の標的配列への第2のCRISPR複合体の配列特異的結合を導き;CRISPR複合体は、ガイドRNAに結合したCRISPR酵素を含み、そのためガイドRNAはその標的配列にハイブリダイズすることができ;及び第2のCRISPR複合体はCRISPR−Cas系を不活性化して、細胞によるCRISPR酵素の発現の継続を妨げる。
様々なコード配列(CRISPR酵素及びガイドRNA)が単一のベクターに含まれてもよく、又は複数のベクターに含まれてもよい。例えば、あるベクター上の酵素及び別のベクター上の様々なRNA配列をコードすること、又はあるベクター上の酵素及び1つのガイドRNA、及び別のベクター上の残りのガイドRNAをコードすること、又は任意の他の並べ替えが可能である。一般に、合計1つ又は2つの異なるベクターを使用する系が好ましい。
複数のベクターを使用する場合、それらを不均衡な数で、及び理想的には、第2のガイドRNAと比べて第1のガイドRNAをコードするベクターを過剰として送達することが可能であり、それによりゲノム編集が起こる機会が得られるまでCRISPR系の最終的な不活性化を遅らせる助けとなる。
第1のガイドRNAは、本明細書の他の部分に記載されるとおり、ゲノム内の任意の目的の標的配列を標的化することができる。第2のガイドRNAは、CRISPR Cpf1酵素をコードするベクター内の配列を標的化し、それにより当該のベクターからの酵素の発現を不活性化する。従ってベクター内の標的配列は発現を不活性化可能でなければならない。好適な標的配列は、例えば、Cpf1pコード配列の翻訳開始コドンの近傍又はその範囲内、非コード配列内、非コードRNAエレメントの発現をドライブするプロモーター内、Cpf1p遺伝子の発現をドライブするプロモーターの範囲内、Casコード配列におけるATG翻訳開始コドンから100bp以内、及び/又は例えばAAVゲノムにおける、ウイルス送達ベクターの逆方向末端反復配列(iTR)の範囲内にあり得る。この領域近傍での二本鎖切断はCasコード配列のフレームシフトを引き起こし得るため、タンパク質発現の喪失が生じ得る。「自己不活性化」ガイドRNAの代替的な標的配列は、CRISPR−Cpf1系の発現又はベクターの安定性に必要な調節領域/配列を編集し/不活性化することを目的としたものであり得る。例えば、Casコード配列のプロモーターが破壊された場合、転写が阻害又は防止され得る。同様に、ベクターが複製、維持又は安定性用の配列を含む場合、それらを標的化することが可能である。例えば、AAVベクターにおいて有用な標的配列はiTR内にある。標的化に有用な他の配列は、プロモーター配列、ポリアデニル化部位(polyadenlyation site)等であり得る。
更に、ガイドRNAがアレイフォーマットで発現する場合、両方のプロモーターを同時に標的化する「自己不活性化」ガイドRNAにより、CRISPR−Cas発現構築物内から介在するヌクレオチドが切り出されることになり、事実上その完全な不活性化につながる。同様に、ガイドRNAが両方のITRを標的化する場合に、又は2つ以上の他のCRISPR−Cas構成成分を同時に標的化する場合に、介在ヌクレオチドが切り出され得る。本明細書に説明されるとおりの自己不活性化は、一般に、CRISPR−Casの調節をもたらすためCRISPR−Cas系と共に適用可能である。例えば、本明細書に説明されるとおりの自己不活性化を、本明細書に説明されるとおりの突然変異、例えば増大障害のCRISPR修復に適用してもよい。この自己不活性化の結果として、CRISPR修復の活性はあくまでも一過性である。
CRISPR−Casが停止する前に標的ゲノム遺伝子座が編集されることを確実にする手段として、「自己不活性化」ガイドRNAの5’末端(例えば1〜10ヌクレオチド、好ましくは1〜5ヌクレオチド)への非ターゲティングヌクレオチドの付加を用いてそのプロセシングを遅らせ、及び/又はその効率を改変することができる。
自己不活性化AAV−CRISPR−Cas系の一態様において、1つ以上の目的のガイドRNAターゲティングゲノム配列(例えば1〜2、1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、1〜30個)を共発現するプラスミドが、エンジニアリングされたATG開始部位又はその近傍(例えば5ヌクレオチド以内、15ヌクレオチド以内、30ヌクレオチド以内、50ヌクレオチド以内、100ヌクレオチド以内)でSpCas9配列を標的化する「自己不活性化」ガイドRNAを含んで作製され得る。U6プロモーター領域における調節配列もまた、ガイドRNAで標的化することができる。U6ドライブ型ガイドRNAは、複数のガイドRNA配列を同時にリリースすることができるようなアレイフォーマットで設計し得る。初めに標的組織/細胞へと送達されると(細胞を離れた)ガイドRNAが蓄積し始める一方、核内のCasレベルが上昇する。Casは全てのガイドRNAと複合体を形成してCRISPR−Casプラスミドのゲノム編集及び自己不活性化を媒介する。
自己不活性化CRISPR−Cas系の一態様は、単独での、又は1〜4個まで又はそれより多い異なるガイド配列;例えば約20又は約30個までのガイド配列のタンデム(tandam)アレイフォーマットでの発現である。個別の自己不活性化ガイド配列毎に異なる標的を標的化し得る。これは、例えば1つのキメラpol3転写物からプロセシングされ得る。U6又はH1プロモーターなどのPol3プロモーターが用いられ得る。本明細書において全体を通して言及されるものなどのPol2プロモーター。逆方向末端反復(iTR)配列がPol3プロモーター−1つ又は複数のガイドRNA−Pol2プロモーター−Casに隣接し得る。
タンデムアレイ転写物の一態様は、1つ以上のガイドが1つ以上の標的を編集する一方で1つ以上の自己不活性化ガイドがCRISPR−Cas系を不活性化するというものである。従って、例えば、増大障害を修復するための記載されるCRISPR−Cas系を本明細書に記載される自己不活性化CRISPR−Cas系と直接組み合わせてもよい。かかる系は、例えば、修復のための標的領域に向けられた2つのガイド並びにCRISPR−Casの自己不活性化に向けられた少なくとも第3のガイドを有し得る。国際公開第2015/089351号パンフレットとして2014年12月12日に公開された「ヌクレオチドリピート障害におけるCrispr−Cas系の組成物及び使用方法(Compositions And Methods Of Use Of Crispr−Cas Systems In Nucleotide Repeat Disorders)」と題される出願PCT/US2014/069897号明細書が参照される。
ガイドRNAは制御ガイドであり得る。例えばそれは、米国特許出願公開第2015232881号明細書A1(その開示は本明細書によって参照により援用される)に記載されるとおり、CRISPR酵素それ自体をコードする核酸配列を標的化するようにエンジニアリングされ得る。一部の実施形態において、本系又は組成物には、CRISPR酵素をコードする核酸配列を標的化するようにエンジニアリングされたガイドRNAだけが提供され得る。加えて、本系又は組成物には、CRISPR酵素をコードする核酸配列を標的化するようにエンジニアリングされたガイドRNA、並びにCRISPR酵素をコードする核酸配列、及び任意選択で第2のガイドRNA、及び更に任意選択で修復鋳型が提供され得る。第2のガイドRNAは、CRISPR系又は組成物の一次標的であり得る(本明細書に定義するとおり、治療用、診断用、ノックアウト等)。このように、本系又は組成物は自己不活性化する。これは、本明細書の他の部分で参照される米国特許出願公開第2015232881号明細書A1(国際公開第2015070083号パンフレット(A1)としても公開されている)にCas9に関連して例示され、Cpf1に当てはめることができる。
一般に、及び本明細書全体を通じて、用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターには、限定はされないが、一本鎖、二本鎖、又は部分的二本鎖の核酸分子;1つ以上の遊離末端を含む、遊離末端のない(例えば環状の)核酸分子;DNA、RNA、又は両方を含む核酸分子;及び当該技術分野において公知の他の種類のポリヌクレオチドが含まれる。ある種のベクターは「プラスミド」であり、これは、標準的な分子クローニング技術によるなどして追加のDNAセグメントを挿入することのできる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここでベクターには、ウイルス(例えば、レトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)へのパッケージングのためのウイルス由来DNA又はRNA配列が存在する。ウイルスベクターはまた、宿主細胞へのトランスフェクションのためのウイルスが保有するポリヌクレオチドも含む。特定のベクターは、それが導入される宿主細胞での自己複製能を有する(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。更に、特定のベクターは、それが作動可能に連結された遺伝子の発現を導くことが可能である。かかるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。組換えDNA技法において有用な一般的な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。
組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態の(これはつまり、組換え発現ベクターが、発現させる核酸配列に作動可能に連結された、発現に使用する宿主細胞に基づき選択され得る1つ以上の調節エレメントを含むことを意味する)本発明の核酸を含むことができる。組換え発現ベクターの範囲内で、「作動可能に連結された」は、ヌクレオチド配列の(例えば、インビトロ転写/翻訳系における、又はベクターが宿主細胞に導入される場合に宿主細胞における)発現が可能となる形で目的のヌクレオチド配列が1つ又は複数の調節エレメントに連結されていることを意味するように意図される。
一部の実施態様では、宿主細胞は、本明細書に記載の1つ以上のベクターによって一時的または非一時的にトランスフェクトされる。一部の実施態様では、細胞は、対象において天然に生じるようにトランスフェクトされる。一部の実施態様では、トランスフェクトされる細胞は、対象から取られる。一部の実施態様では、細胞は、対象から取られた細胞、例えば細胞株から採取される。組織培養のための幅広い種類の細胞株が、当技術分野で知られている。細胞株の例は、限定されないが、C8161、CCRF−CEM、MOLT、mIMCD−3、NHDF、HeLa−S3、Huh1、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPaCell、Panc1、PC−3、TF1、CTLL−2、C1R、Rat6、CV1、RPTE、A10、T24、J82、A375、ARH−77、Calu1、SW480、SW620、SKOV3、SK−UT、CaCo2、P388D1、SEM−K2、WEHI−231、HB56、TIB55、Jurkat、J45.01、LRMB、Bcl−1、BC−3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK−52E、MRC5、MEF、Hep G2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS−1、COS−6、COS−M6A、BS−C−1サル腎臓上皮、BALB/3T3マウス胚線維芽細胞、3T3 Swiss、3T3−L1、132−d5ヒト胎児線維芽細胞;10.1マウス線維芽細胞、293−T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A−549、ALC、B16、B35、BCP−1細胞、BEAS−2B、bEnd.3、BHK−21、BR 293、BxPC3、C3H−10T1/2、C6/36、Cal−27、CHO、CHO−7、CHO−IR、CHO−K1、CHO−K2、CHO−T、CHO Dhfr−/−、COR−L23、COR−L23/CPR、COR−L23/5010、COR−L23/R23、COS−7、COV−434、CML T1、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK−293、HeLa、Hepa1c1c7、HL−60、HMEC、HT−29、Jurkat、JY細胞、K562 細胞、Ku812、KCL22、KG1、KYO1、LNCap、Ma−Mel 1−48、MC−38、MCF−7、MCF−10A、MDA−MB−231、MDA−MB−468、MDA−MB−435、MDCK II、MDCK II、MOR/0.2R、MONO−MAC 6、MTD−1A、MyEnd、NCI−H69/CPR、NCI−H69/LX10、NCI−H69/LX20、NCI−H69/LX4、NIH−3T3、NALM−1、NW−145、OPCN/OPCT細胞株、Peer、PNT−1A/PNT 2、RenCa、RIN−5F、RMA/RMAS、Saos−2細胞、Sf−9、SkBr3、T2、T−47D、T84、THP1細胞株、U373、U87、U937、VCaP、Vero細胞、WM39、WT−49、X63、YAC−1、YAR、及びそれらのトランスジェニック変種を含む。細胞株は、当業者に公知の様々な供給源から利用可能である(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)(Manassus,Va.)を参照)。一部の実施態様では、本明細書に記載の1つ以上のベクターによってトランスフェクトされた細胞は、1つ以上のベクター由来配列を含む新規の細胞株を確立するために用いられる。一部の実施態様では、本明細書に記載のCRISPR系の構成要素によって一時的にトランスフェクトされて(例えば、1つ以上のベクターの一時的なトランスフェクション、又はRNAを用いたトランスフェクションによる)、CRISPR複合体の活性によって改変された細胞は、改変を含むが任意の他の外来性の配列を欠く細胞を含む新規の細胞株を確立するために用いられる。一部の実施態様では、本明細書に記載の1つ以上のベクターによって一時的または非一時的にトランスフェクトされた細胞、またはそのような細胞から採取された細胞株は、1つ以上の試験化合物を評価するのに用いられる。
概してCRISPR−Cas系の使用に関しては、本開示全体を通じて引用される特許出願、特許、及び特許公報を含めた文献が、本発明の実施形態をそれらの文献にあるとおり用い得ることに伴い挙げられる。1つ又は複数のCRISPR−Cas系(例えば単一の又は多重化した)は、作物ゲノミクスにおける最近の進歩と併せて用いることができる。かかる1つ又は複数のCRISPR−Cas系を使用して、効率的な且つ対費用効果の高い植物遺伝子又はゲノムの探索又は編集又は操作を−例えば、植物遺伝子又はゲノムの高速での調査及び/又は選択及び/又は探索及び/又は比較及び/又は操作及び/又は形質転換のため実施することができ;例えば、1つ又は複数の形質又は1つ又は複数の特徴を作出し、同定し、開発し、最適化し、又は1つ又は複数の植物に付与し、又は植物ゲノムを形質転換することができる。従って、植物の生産向上、新規組み合わせの形質又は特徴を有する新規植物、又は形質が増強された新規植物があり得る。かかる1つ又は複数のCRISPR−Cas系は、植物に関して、部位特異的組込み(SDI)又は遺伝子編集(GE)又は任意の準逆育種(NRB)又は逆育種(RB)技術において使用することができる。植物におけるCRISPR−Cas系の使用に関しては、アリゾナ大学(University of Arizona)ウェブサイト「CRISPR−PLANT」(http://www.genome.arizona.edu/crispr/)(後援Penn State及びAGI)が挙げられる。本発明の実施形態は、植物におけるゲノム編集又はこれまでRNAi若しくは同様のゲノム編集技術が用いられてきたところに使用することができる;例えば、Nekrasov,「簡単な植物ゲノム編集:CRISPR/Cas系を使用したモデル及び作物植物における標的突然変異誘発(Plant genome editing made easy:targeted mutagenesis in model and crop plants using the CRISPR/Cas system)」,Plant Methods 2013,9:39(doi:10.1186/1746−4811−9−39);Brooks,「CRISPR/Cas9系を使用した初代のトマトにおける効率的遺伝子編集(Efficient gene editing in tomato in the first generation using the CRISPR/Cas9 system)」,Plant Physiology September 2014 pp 114.247577;Shan,「CRISPR−Cas系を使用した作物植物の標的ゲノム改変(Targeted genome modification of crop plants using a CRISPR−Cas system)」,Nature Biotechnology 31,686−688(2013);Feng,「CRISPR/Cas系を使用した植物における効率的ゲノム編集(Efficient genome editing in plants using a CRISPR/Cas system)」,Cell Research(2013)23:1229−1232.doi:10.1038/cr.2013.114;published online 20 August 2013;Xie,「CRISPR−Cas系を使用した植物におけるRNAガイド下ゲノム編集(RNA−guided genome editing in plants using a CRISPR−Cas system)」,Mol Plant.2013 Nov;6(6):1975−83.doi:10.1093/mp/sst119.Epub 2013 Aug 17;Xu,「コメにおけるアグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介CRISPR−Cas系を使用した遺伝子ターゲティング(Gene targeting using the Agrobacterium tumefaciens−mediated CRISPR−Cas system in rice)」,Rice 2014,7:5(2014)、Zhou et al.,「木本多年生植物ポプラ属の外交配における両アレルCRISPR突然変異へのSNPの利用により4−クマル酸:CoAリガーゼ特異性及び冗長性が明らかになる(Exploiting SNPs for biallelic CRISPR mutations in the outcrossing woody perennial Populus reveals 4−coumarate:CoA ligase specificity and Redundancy)」,New Phytologist(2015)(Forum)1−4(www.newphytologist.comにおいてのみオンライン利用が可能);Caliando et al,「宿主ゲノムに安定に担持されるCRISPR装置を使用した標的DNA分解(Targeted DNA degradation using a CRISPR device stably carried in the host genome)」,NATURE COMMUNICATIONS 6:6989,DOI:10.1038/ncomms7989,www.nature.com/naturecommunications DOI:10.1038/ncomms7989;米国特許第6,603,061号明細書−アグロバクテリウム属媒介植物形質転換方法(Agrobacterium−Mediated Plant Transformation Method);米国特許第7,868,149号明細書−植物ゲノム配列及びその使用(Plant Genome Sequences and Uses Thereof)及び米国特許出願公開第2009/0100536号明細書−農業形質が増強されたトランスジェニック植物(Transgenic Plants with Enhanced Agronomic Traits)(これらの各々の内容及び開示は全て、本明細書において全体として参照により援用される)を参照のこと。本発明の実施では、Morrell et al 「作物ゲノミクス:進展と応用(Crop genomics:advances and applications)」,Nat Rev Genet.2011 Dec 29;13(2):85−96の内容及び開示;その各々が、本明細書における実施形態が植物に関してどのように用いられ得るかに関してを含め、参照により本明細書に援用される。従って、本明細書における動物細胞への言及はまた、特に明らかでない限り、適宜修正して植物細胞にも適用し得る。
本発明の態様は、細胞の目的のゲノム遺伝子座にある標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列を含むガイドRNA(gRNA)と、少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み得る本明細書に定義するとおりのCpf1酵素とを含み得る天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物を包含する。
本発明のある態様は、本明細書に記載される組成物のいずれかを細胞に導入することにより、目的のゲノム遺伝子座を改変して細胞における遺伝子発現を変化させる方法を包含する。
本発明のある態様は、上記のエレメントが単一の組成物に含まれるか、又は個別の組成物に含まれることである。これらの組成物は、有利には、宿主に適用されるとゲノムレベルで機能的効果を誘発し得る。
本明細書で使用されるとき、用語「ガイドRNA」又は「gRNA」は本明細書の他の部分で使用されるとおりの意味を有し、標的核酸配列とハイブリダイズして標的核酸配列への核酸ターゲティング複合体の配列特異的結合を導くのに十分な標的核酸配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列を含む。各gRNAは、同じ又は異なるアダプタータンパク質に特異的な複数の結合認識部位(例えばアプタマー)を含むように設計され得る。各gRNAは、転写開始部位(即ちTSS)の−1000〜+1核酸、好ましくは−200核酸上流のプロモーター領域に結合するように設計され得る。このように位置させると、遺伝子活性化(例えば転写アクチベーター)又は遺伝子阻害(例えば転写リプレッサー)に影響を及ぼす機能ドメインが改善される。改変されたgRNAは、組成物に含まれる1つ以上の標的遺伝子座を標的化する1つ以上の改変されたgRNA(例えば、少なくとも1個のgRNA、少なくとも2個のgRNA、少なくとも5個のgRNA、少なくとも10個のgRNA、少なくとも20個のgRNA、少なくとも30個のgRNA、少なくとも50個のgRNA)であってもよい。前記複数のgRNA配列はタンデムに配置され、好ましくはダイレクトリピートによって分離されている。
従って、本明細書に定義するとおりのgRNA、CRISPR酵素は各々が個別に組成物中に含まれ、個別に又はまとめて宿主に投与され得る。或いは、これらの構成成分は、宿主への投与用の単一の組成物中に提供されてもよい。宿主への投与は、宿主への送達用の当業者に公知の又は本明細書に記載されるウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター)を介して実施され得る。本明細書に説明されるとおり、異なる選択マーカー(例えば、レンチウイルスgRNA選択用)及びgRNA濃度(例えば、複数のgRNAが使用されるかどうかに依存する)を使用することが、効果の向上を生じさせるのに有利であり得る。この概念に基づけば、DNA切断、遺伝子活性化、又は遺伝子失活を含めたゲノム遺伝子座イベントを誘発するのに幾つかのバリエーションが適切である。当業者は、提供される本組成物を用いて、同じ又は異なる機能ドメインを有する単一又は複数の遺伝子座を有利に且つ特異的に標的化して、1つ以上のゲノム遺伝子座イベントを誘発することができる。本組成物は、細胞のライブラリにおけるスクリーニング及びインビボでの機能モデリング(例えば、lincRNAの遺伝子活性化及び機能の同定;機能獲得モデリング;機能喪失モデリング;最適化及びスクリーニング目的の細胞株及びトランスジェニック動物を樹立するための本発明の組成物の使用)のための多種多様な方法に適用され得る。
本発明は、条件的又は誘導性CRISPRトランスジェニック細胞/動物を樹立し及び利用するための本発明の組成物の使用を包含する;例えば、Platt et al.,Cell(2014),159(2):440−455、又は国際公開第2014/093622号パンフレット(PCT/US2013/074667号明細書)などの本明細書に引用されるPCT特許公報を参照のこと。例えば、細胞又は動物、例えば非ヒト動物、例えば脊椎動物又は哺乳類、例えばげっ歯類、例えばマウス、ラット、又は他の実験動物若しくは野外動物、例えば、ネコ、イヌ、ヒツジなどが「ノックイン」されてもよく、それによって動物が、Platt et alのようにCpf1を条件的に又は誘導性に発現する。従って標的細胞又は動物はCRISPR酵素(例えばCpf1)を条件的に又は誘導性に(例えばCre依存性構築物の形態で)含み、標的細胞に導入されたベクターの発現時、ベクターは、標的細胞におけるCRISPR酵素(例えば、Cpf1)発現を誘導し、又はその条件を生じるように発現する。CRISPR複合体を作成する公知の方法と共に本明細書に定義するとおりの教示及び組成物を適用することにより、誘導性ゲノムイベントもまた本発明の態様である。かかる誘導性イベントの例は、本明細書の他の部分に記載されている。
一部の実施形態において、特に治療方法の中で遺伝性疾患が標的化されるとき、好ましくは表現型の変化がゲノム改変の結果であり、好ましくはここで表現型を修正し又は変化させるため修復鋳型が提供される。
一部の実施形態において、標的となり得る疾患としては、疾患を引き起こすスプライス欠損に関係しているものが挙げられる。
一部の実施形態において、細胞標的としては、造血幹/前駆細胞(CD34+);ヒトT細胞;及び眼(網膜細胞)−例えば光受容前駆細胞が挙げられる。
一部の実施形態において、遺伝子標的としては、ヒトβグロビン−HBB(鎌状赤血球貧血の治療用、遺伝子変換の(内因性鋳型として近縁のHBD遺伝子を使用した)刺激によることを含む);CD3(T細胞);及びCEP920−網膜(眼)が挙げられる。
一部の実施形態において、疾患標的としてはまた、スプライス欠損を引き起こす癌;鎌状赤血球貧血(点突然変異に基づく);HBV、HIV;β−サラセミア;及び眼科的疾患又は眼疾患−例えばレーベル先天黒内障(LCA)−も挙げられる。一部の実施形態において、送達方法には、酵素−ガイド複合体(リボ核タンパク質)のカチオン性脂質媒介性「直接」送達及びプラスミドDNAの電気穿孔が含まれる。
本明細書に記載される方法、生成物及び使用は、非治療目的に用いられ得る。更に、本明細書に記載される方法のいずれもインビトロ及びエキソビボで適用し得る。
ある態様において、
I.2つ以上のCRISPR−Cas系ポリヌクレオチド配列であって、
(a)ポリヌクレオチド遺伝子座の第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列、
(b)ポリヌクレオチド遺伝子座の第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列、
(c)ダイレクトリピート配列、
を含むポリヌクレオチド配列、及び
II.Cpf1酵素又はそれをコードする第2のポリヌクレオチド配列
を含む天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物が提供され、
第1及び第2のガイド配列は、転写されると、それぞれ第1及び第2の標的配列への第1及び第2のCpf1 CRISPR複合体の配列特異的結合を導き、
第1のCRISPR複合体は、第1の標的配列にハイブリダイズ可能な第1のガイド配列と複合体を形成したCpf1酵素を含み、
第2のCRISPR複合体は、第2の標的配列にハイブリダイズ可能な第2のガイド配列と複合体を形成したCpf1酵素を含み、
第1のガイド配列が第1の標的配列近傍におけるDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ第2のガイド配列が第2の標的配列近傍における他方の鎖の切断を導いて二本鎖切断が誘導され、それにより生物又は非ヒト若しくは非動物生物が改変される。同様に、例えば各々が1つの標的に特異的な、且つ本明細書に記載されるとおりの組成物又はCRISPR系又は複合体においてタンデムに配置された2つより多いガイドRNAを含む組成物を想定することができる。
別の実施形態において、Cpf1はタンパク質として細胞に送達される。別の特に好ましい実施形態において、Cpf1はタンパク質として、又はそれをコードするヌクレオチド配列として細胞に送達される。タンパク質としての細胞への送達には、リボ核タンパク質(RNP)複合体の送達が含まれてもよく、ここでタンパク質は複数のガイドと複合体を形成している。
ある態様において、幹細胞、及びその子孫を含め、本発明の組成物、系又は改変酵素によって改変されているか又はそれを含む宿主細胞及び細胞株が提供される。
ある態様において、細胞治療方法が提供され、ここでは、例えば、単一細胞又は細胞集団が試料採取又は培養され、ここで当該の1つ又は複数の細胞は本明細書に記載されるとおりエキソビボで改変されるか又は改変されており、次に生物に再導入(試料採取した細胞)又は導入(培養細胞)される。幹細胞もまた、胚性幹細胞であれ、又は人工多能性若しくは全能性幹細胞であれ、この点で特に好ましい。しかし、当然ながら、インビボ実施形態もまた想定される。
本発明の方法は、dsODN又はssODN(以下参照)であってもよい修復鋳型などの鋳型の送達を更に含むことができる。鋳型の送達は、CRISPR酵素又はガイドRNAの一部又は全部の送達と同時であっても又は別個であってもよく、且つ同じ又は異なる送達機構によってもよい。一部の実施形態において、鋳型はガイドRNAと共に、好ましくはCRISPR酵素もまた共に送達されることが好ましい。一例はAAVベクターであってもよく、ここでCRISPR酵素はAsCpf1又はLbCpf1である。
本発明の方法は、(a)前記二本鎖切断によって生じたオーバーハングに相補的なオーバーハングを含む二本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(dsODN)を細胞に送達するステップであって、前記dsODNが目的の遺伝子座に組み込まれるステップ;又は−(b)一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)を細胞に送達するステップであって、前記ssODNが前記二本鎖切断の相同依存性修復の鋳型として働くステップを更に含むことができる。本発明の方法は個体の疾患の予防又は治療方法であってもよく、任意選択で前記疾患は前記目的の遺伝子座の欠陥によって引き起こされる。本発明の方法は個体においてインビボで行うか又は個体から採取した細胞上でエキソビボで行うことができ、任意選択で前記細胞は個体に戻される。
本発明はまた、本明細書に定義するとおりのタンデム又はマルチターゲティングに用いられる、CRISPR酵素又はCas酵素又はCpf1酵素又はCRISPR−CRISPR酵素又はCRISPR−Cas系又はCRISPR−Cpf1系を使用して得られる産物も包含する。
キット
一態様において、本発明は、上記の方法及び組成物に開示されるエレメントの任意の1つ以上を含むキットを提供する。一部の実施形態において、本キットは、本明細書に教示されるとおりのベクター系とキットの使用説明書とを含む。要素は個々に又は組み合わせで提供されてもよく、及び任意の好適な容器、例えば、バイアル、ボトル、又はチューブに提供されてもよい。本キットは、本明細書に記載されるとおりのgRNA及び未結合の保護鎖を含み得る。本キットは、保護鎖がガイド配列に少なくとも部分的に結合したgRNA(即ちpgRNA)を含み得る。従って本キットは、本明細書に記載されるとおりの部分的に二本鎖ヌクレオチド配列の形態のpgRNAを含み得る。一部の実施形態において、本キットは1つ以上の言語、例えば2つ以上の言語による説明書を含む。取扱説明書は本明細書に記載される適用及び方法に特異的であってもよい。
一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載されるエレメントの1つ以上を利用する方法に用いられる1つ以上の試薬を含む。試薬は任意の好適な容器に入れて提供され得る。例えば、キットは1つ以上の反応緩衝液又は保存緩衝液を提供し得る。試薬は、特定のアッセイにおいて利用可能な形態で提供されても、又は使用前に1つ以上の他の構成成分の添加を必要とする形態(例えば、濃縮形態又は凍結乾燥形態)で提供されてもよい。緩衝液は、限定はされないが、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、トリス緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、及びこれらの組み合わせを含めた任意の緩衝液であってよい。一部の実施形態において、緩衝液はアルカリ性である。一部の実施形態において、緩衝液は約7〜約10のpHを有する。一部の実施形態において、本キットは、ガイド配列及び調節エレメントを作動可能に連結するためベクターに挿入されるガイド配列に対応する1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、本キットは相同組換え鋳型ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、本キットは、本明細書に記載されるベクターの1つ以上及び/又はポリヌクレオチドの1つ以上を含む。本キットは、有利には本発明のシステムの全てのエレメントを提供することが可能である。
一態様において、本発明は、CRISPR系の1つ以上のエレメントの使用方法を提供する。本発明のCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチドを改変する有効な手段を提供する。本発明のCRISPR複合体は、多種多様な細胞型の標的ポリヌクレオチドを改変(例えば、欠失、挿入、転位、不活性化、活性化)することを含め、幅広い有用性を有する。そのため本発明のCRISPR複合体は、例えば、遺伝子療法、薬物スクリーニング、疾患診断、及び予後判定において、広範な適用性を有する。例示的CRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体を形成したCRISPRエフェクタータンパク質を含む。特定の実施形態において、ガイド配列にダイレクトリピート配列が連結されている。
一実施形態において、本発明は、標的ポリヌクレオチドを切断する方法を提供する。本方法は、標的ポリヌクレオチドに結合して前記標的ポリヌクレオチドの切断を生じさせるCRISPR複合体を使用して標的ポリヌクレオチドを改変することを含む。典型的には、本発明のCRISPR複合体は、細胞に導入されると、ゲノム配列に切断(例えば、一本鎖又は二本鎖切断)を作り出す。例えば、本方法を用いて細胞内の疾患遺伝子を切断することができる。
CRISPR複合体によって作り出された切断は、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)経路又は高フィデリティ相同性組換え修復(HDR)などの修復プロセスによって修復され得る。これらの修復過程でゲノム配列に外因性ポリヌクレオチド鋳型を導入することができる。一部の方法において、HDRプロセスを用いてゲノム配列が改変される。例えば、上流配列及び下流配列が隣接する組み込もうとする配列を含む外因性ポリヌクレオチド鋳型が細胞に導入される。上流及び下流配列は、染色体における組込み部位の両側と配列類似性を共有する。
望ましい場合、ドナーポリヌクレオチドは、DNA、例えばDNAプラスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、ウイルスベクター、線状DNA片、PCR断片、ネイキッド核酸、又はリポソーム又はポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体化した核酸であってもよい。
外因性ポリヌクレオチド鋳型は、組み込まれる組み込もうとする配列(例えば変異遺伝子)を含む。組込み配列は、細胞にとって内因性又は外因性の配列であってもよい。組み込もうとする組込み配列の例としては、タンパク質をコードするポリヌクレオチド又は非コードRNA(例えばマイクロRNA)が挙げられる。従って、組込み配列は、1つ又は複数の適切な制御配列に作動可能に結合連結され得る。或いは、組み込もうとする組込み配列が調節機能を提供し得る。
外因性ポリヌクレオチド鋳型中の上流及び下流配列は、目的の染色体配列とドナーポリヌクレオチドとの間の組換えを促進するように選択される。上流配列は、標的組込み部位の上流のゲノム配列と配列類似性を共有する核酸配列である。同様に、下流配列は、標的組込み部位の下流の染色体配列と配列類似性を共有する核酸配列である。外因性ポリヌクレオチド鋳型中の上流及び下流配列は、標的ゲノム配列と75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性を有し得る。好ましくは、外因性ポリヌクレオチド鋳型中の上流及び下流配列は、標的ゲノム配列と約95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。一部の方法において、外因性ポリヌクレオチド鋳型中の上流及び下流配列は、標的ゲノム配列と約99%又は100%の配列同一性を有する。
上流又は下流配列は、約20bp〜約2500bp、例えば、約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、又は2500bpを含み得る。一部の方法において、例示的上流又は下流配列は、約200bp〜約2000bp、約600bp〜約1000bp、又はより詳細には約700bp〜約1000bpを有する。
一部の方法において、外因性ポリヌクレオチド鋳型はマーカーを更に含み得る。かかるマーカーは標的組込みのスクリーニングを容易にし得る。好適なマーカーの例としては、制限部位、蛍光タンパク質、又は選択可能マーカーが挙げられる。本発明の外因性ポリヌクレオチド鋳型は組換え技術を用いて構築することができる(例えば、Sambrook et al.,2001及びAusubel et al.,1996を参照)。
外因性ポリヌクレオチド鋳型を組み込むことによる標的ポリヌクレオチドを改変する例示的方法では、CRISPR複合体によってゲノム配列に二本鎖切断が導入され、外因性ポリヌクレオチド鋳型との相同組換えによってこの切断が修復されると、鋳型がゲノムに組み込まれる。二本鎖切断の存在が鋳型の組込みを促進する。
他の実施形態では、この発明は、真核細胞におけるポリヌクレオチドの発現を改変する方法を提供する。本方法は、ポリヌクレオチドに結合するCRISPR複合体を使用して標的ポリヌクレオチドの発現を増加又は低下させることを含む。
一部の方法において、標的ポリヌクレオチドを不活性化させることにより細胞に発現の改変を生じさせ得る。例えば、CRISPR複合体が細胞内の標的配列に結合すると、標的ポリヌクレオチドが不活性化され、そのためその配列が転写されないか、コードされたタンパク質が産生されないか、又は配列が野生型配列のようには機能しなくなる。例えば、タンパク質又はマイクロRNAをコードする配列を不活性化してタンパク質が産生されないようにし得る。
一部の方法において、制御配列を不活性化して、それがもはや制御配列として機能しないようにし得る。本明細書で使用されるとき、「制御配列」は、核酸配列の転写、翻訳、又は接触可能性を実現する任意の核酸配列を指す。制御配列の例としては、プロモーター、転写ターミネーターが挙げられ、及びエンハンサーが制御配列である。不活性化された標的配列は、欠失突然変異(即ち、1つ以上のヌクレオチドの欠失)、挿入突然変異(即ち、1つ以上のヌクレオチドの挿入)、又はナンセンス突然変異(即ち、終止コドンが導入されるような単一のヌクレオチドの別のヌクレオチドとの置換)を含み得る。一部の方法において、標的配列を不活性化すると、標的配列の「ノックアウト」がもたらされる。
CRISPR Cpf1系の例示的使用方法
本発明は、標的細胞をインビボ、エキソビボ又はインビトロで改変するのに用いられる、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物、又は前記組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド、又は前記組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクター又は送達系を提供し、及び、改変後はCRISPRにより改変された細胞の子孫又は細胞株が変化した表現型を保持するように細胞を変化させる方法で行われ得る。改変された細胞及び子孫は、CRISPR系が所望の細胞型にエキソビボ又はインビボ適用された植物又は動物などの多細胞生物の一部であり得る。本CRISPR発明は、療法的治療方法であり得る。療法的治療方法には、遺伝子又はゲノム編集、又は遺伝子療法が含まれ得る。
FISHなどの検出方法への不活性化されたCRISPR Cpf1酵素の使用
一態様において、本発明は、本明細書に記載される触媒的に不活性なCasタンパク質、好ましくは不活性Cpf1(dCpf1)を含むエンジニアリングされた天然に存在しないCRISPR−Cas系、及び蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)などの検出方法におけるこの系の使用を提供する。DNA二本鎖切断を生じさせる能力を欠くdCpf1を高感度緑色蛍光タンパク質(eEGFP)などの蛍光タンパク質などのマーカーと融合させて、小さいガイドRNAと共発現させることにより、インビボで挟動原体、動原体及びテロメアリピートを標的化し得る。dCpf1系を使用してヒトゲノムの反復配列及び個々の遺伝子の両方を可視化することができる。標識されたdCpf1 CRISPR−cas系のかかる新規適用は、細胞のイメージング及び機能的核構造の研究において、特に核内低分子容積又は複合体三次元構造を含む場合に重要であり得る(Chen B,Gilbert LA,Cimini BA,Schnitzbauer J,Zhang W,Li GW,Park J,Blackburn EH,Weissman JS,Qi LS,Huang B.2013.「最適化CRISPR/Cas系によるヒト生細胞のゲノム遺伝子座の動的イメージング(Dynamic imaging of genomic loci in living human cells by an optimized CRISPR/Cas system)」.Cell 155(7):1479−91.doi:10.1016/j.cell.2013.12.001)。
DNAの改変/検出へのCRISPR Cpf1の使用
CRISPR Cpf1系及びその使用方法は、DNAのターゲティング及び任意選択で遺伝子改変に有益であり、これはDNAの由来に関わらない。従ってDNAは、原核生物DNA、真核生物DNA又はウイルスDNAであり得る。細胞内又は細胞外での真核生物DNAのターゲティングに関する種々の適用について、本明細書の他の部分に詳述される。詳細な実施形態では、Cpf1系を使用して原核生物DNAなどの微生物DNAが標的化される。これは、酵母又は真菌などの生物における目的の分子の組換え産生のコンテクストにおいて有益であり得る。これに関連して、本発明は、宿主細胞における目的の化合物の組換え産生方法を想定し、この方法は、前記化合物の産生を確実にするための酵母、真菌又は細菌などの宿主細胞の遺伝子改変へのCpf1系の使用を含む。本願は更に、これらの方法によって得られる化合物を想定する。それに加えて又は代えて、これは、細菌DNA又はウイルスDNAの検出及び/又は改変のコンテクストにおいて有益であり得る。詳細な実施形態において、本方法は、細菌DNA又はウイルスDNAの特異的検出及び/又は改変が関わる。
夾雑DNAの分解へのCRISPR Cpf1の使用
詳細な実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質は夾雑DNAのターゲティング及び切断に使用される。例えば、詳細な実施形態において、真核生物DNAは試料中の夾雑物であり、例えばここで真核生物の組織又は体液試料中にあるウイルスDNA又は細菌DNAなどの非真核生物DNAの検出が有益である。真核生物DNAのターゲティングは、真核生物(例えばヒト)特異的ガイド配列を使用することにより確実となる。このような方法には、真核生物DNAのターゲティング前に試料中に存在する細胞の溶解が関わることも又は関わらないこともある。真核生物DNAを選択的に切断した後、当該技術分野において公知の方法によってそれを試料中に存在するインタクトなDNAと分離し得る。従って、本発明は、真核生物(例えばヒト)DNAを試料から選択的に除去する方法を提供し、本方法は、本明細書に記載されるCRISPR−Cpf1系で真核生物DNAを選択的に切断することを含む。また、本明細書には、真核生物DNAの選択的なターゲティングを可能にする本明細書に記載されるCRISPR−Cpf1系の1つ以上の成分を含む、本方法を実施するためのキットも提供される。同様に、夾雑DNAの種特異的除去を確実にし得ることが想定される。
CRISPR−Cpf1系又は複合体による標的の改変(例えば、Cpf1−RNA複合体)
一態様において、本発明は、真核細胞内の標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供し、これはインビボ、エキソビボ又はインビトロであってもよい。一部の実施形態において、本方法は、ヒト又は非ヒト動物から細胞又は細胞集団を試料採取するステップ、及び1つ又は複数の細胞を改変するステップを含む。培養は任意の段階でエキソビボで行われ得る。この1つ又は複数の細胞が、更には非ヒト動物又は植物に再導入されてもよい。再導入される細胞について、細胞は幹細胞であることが特に好ましい。
一部の実施形態において、本方法は、CRISPR複合体を標的ポリヌクレオチドに結合させて前記標的ポリヌクレオチドの切断を生じさせ、それにより標的ポリヌクレオチドを改変するステップを含み、ここでCRISPR複合体は、前記標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズする又はそれにハイブリダイズ可能なガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含む。
一態様において、本発明は、真核細胞内のポリヌクレオチドの発現を改変する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、CRISPR複合体をポリヌクレオチドに結合させて、前記結合により前記ポリヌクレオチドの発現の増加又は減少を生じさせるステップを含み;ここでCRISPR複合体は、前記ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズする又はそれにハイブリダイズ可能なガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含む。同様の考察及び条件が、標的ポリヌクレオチドを改変する方法にも上記のとおり適用される。実際上、これらの試料採取、培養及び再導入の選択肢は本発明の全態様に適用される。
実際、本発明の任意の態様において、CRISPR複合体は、標的配列にハイブリダイズする又はそれにハイブリダイズ可能なガイド配列と複合体を形成したCRISPR酵素を含むことができる。同様の考察及び条件が、標的ポリヌクレオチドを改変する方法にも上記のとおり適用される。
従って本明細書に記載される天然に存在しないCRISPR酵素の任意のものにおいて少なくとも1つの改変を含み、それによって酵素は、ある種の向上した能力を有する。詳細には、これらの酵素のいずれも、ガイドRNAとCRISPR複合体を形成可能である。かかる複合体の形成時、ガイドRNAは標的ポリヌクレオチド配列に結合可能であり、酵素は標的遺伝子座を改変可能である。加えて、CRISPR複合体中の酵素は、非改変酵素と比較したとき1つ以上のオフターゲット遺伝子座を改変する能力が低下している。
加えて、本明細書に記載される改変CRISPR酵素(emzyme)には、CRISPR複合体において非改変酵素と比較したとき1つ以上の標的遺伝子座を改変する能力が増加した酵素が包含される。かかる機能は、1つ以上のオフターゲット遺伝子座を改変する能力の低下の上述の機能と別個に提供されてもよく、又はそれと組み合わせて提供されてもよい。任意のかかる酵素が、1つ以上の会合した異種機能ドメインによって提供される任意の活性との組み合わせ、ヌクレアーゼ活性を低下させる任意の更なる突然変異など、本明細書に記載されるとおりのCRISPR酵素に対する更なる改変のいずれかと共に提供されてもよい。
本発明の有利な実施形態において、非改変酵素と比較したとき1つ以上のオフターゲット遺伝子座を改変する能力の低下及び非改変酵素と比較したとき1つ以上の標的遺伝子座を改変する能力の増加を伴う改変CRISPR酵素(emzyme)が提供される。酵素に対する更なる改変との組み合わせで、特異性の大幅な増強が実現し得る。例えば、かかる有利な実施形態と1つ以上の追加の突然変異の組み合わせが提供され、ここで1つ以上の追加の突然変異は1つ以上の触媒活性ドメインにある。かかる更なる触媒的突然変異は、本明細書の他の部分で詳細に記載されるとおりのニッカーゼ機能を付与し得る。かかる酵素では、酵素活性の点で特異性が改善されるため、特異性の増強が実現し得る。
上記に記載したとおりのオフターゲット効果を低下させ、及び/又はオンターゲット効果を増強する改変は、RuvC−IIIドメインとHNHドメインとの間にある正電荷領域/溝に位置するアミノ酸残基に行われ得る。上記に記載される機能的効果のいずれも、前述の溝内のアミノ酸の改変によって実現し得るが、当該の溝に隣接するか又は溝外にあるアミノ酸の改変によってもまた実現し得ることは理解されるであろう。
本明細書に記載されるとおりの改変CRISPR酵素となるようにエンジニアリングし得る更なる機能としては、以下が挙げられる。1.タンパク質三次又は二次構造に影響を及ぼすことなくDNA:タンパク質相互作用を破壊する改変CRISPR酵素。これには、RNA:DNA二重鎖の任意の部分と接触する残基が含まれる。2.Cpf1がDNA結合(オン又はオフターゲット)に応答したヌクレアーゼ切断に必須のコンホメーションをとるよう担持するタンパク質間相互作用を弱める改変CRISPR酵素。例えば:HNHドメイン(切れ易いリン酸に位置する)のヌクレアーゼコンホメーションを少し阻害するものの、なおも許容する改変。3.Cpf1がDNA結合(オン又はオフターゲット)に応答したヌクレアーゼ活性を阻害するコンホメーションをとるよう保持するタンパク質間相互作用を強める改変CRISPR酵素。例えば:HNHドメインを切れ易いリン酸から遠ざけるコンホメーションで安定化させる改変。任意のかかる追加的な機能増強が、本明細書の他の部分で詳細に記載されるとおりのCRISPR酵素に対する任意の他の改変と組み合わせて提供されてもよい。
本明細書に記載される向上した機能のいずれも、Cpf1酵素など、任意のCRISPR酵素に加えることができる。しかしながら、本明細書に記載される機能のいずれも、複数のオルソログからの断片を含むキメラ酵素を含め、他のオルソログからのCpf1酵素にエンジニアリングし得ることが理解されるであろう。
核酸、アミノ酸及びタンパク質、調節配列、ベクター等
本発明は核酸を使用して標的DNA配列を結合する。核酸はタンパク質と比べて作製するのがはるかに容易で安価であり、且つ相同性が求められるストレッチの長さに応じて特異性を変化させることができるため、これは有利である。例えば、複数のフィンガーを複雑に三次元配置させる必要はない。用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」は同義的に使用される。これらの用語は、デオキシリボヌクレオチドであれ又はリボヌクレオチドであれ、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチド、又はその類似体を指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有することができ、既知又は未知の任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片のコード領域又は非コード領域、連鎖解析によって定義される複数の遺伝子座(1つの遺伝子座)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマー。この用語はまた、合成骨格を有する核酸様構造も包含し、例えば、Eckstein,1991;Baserga et al.,1992;Milligan,1993;国際公開第97/03211号パンフレット;国際公開第96/39154号パンフレット;Mata,1997;Strauss−Soukup,1997;及びSamstag,1996を参照のこと。ポリヌクレオチドは、1つ以上の改変ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体を含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造の改変はポリマーをアセンブルする前又はその後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド構成成分で中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に、標識構成成分とのコンジュゲーションによるなどして更に改変されてもよい。本明細書で使用されるとき、用語「野生型」は、当業者によって理解される当該技術分野の用語であり、突然変異体又は変異体形態とは区別されるものとして天然に存在するとおりの、典型的な形態の生物、菌株、遺伝子、又は特徴を意味する。「野生型」はベースラインであり得る。本明細書で使用されるとき、用語「変異体」は、天然に存在するものから逸脱したパターンを有する質の呈示を意味するものと解釈されなければならない。用語「天然に存在しない」又は「エンジニアリングされた」は同義的に使用され、人間の手が加えられていることを示す。この用語は、核酸分子又はポリペプチドに言及するとき、核酸分子又はポリペプチドが、自然中ではそれと天然に結び付いている、且つ自然中に見られるとおりの少なくとも1つの他の構成成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する「相補性」は、従来のワトソン・クリック塩基対合又は他の非従来型の対合のいずれかによって核酸が別の核酸配列と1つ又は複数の水素結合を形成する能力を指す。「相補性」は、従来のワトソン・クリック塩基対合又は他の非従来型のいずれかによって核酸が別の核酸配列と1つ又は複数の水素結合を形成する能力を指す。パーセント相補性は、核酸分子中で第2の核酸配列と水素結合を形成(例えばワトソン・クリック塩基対合)することのできる残基のパーセンテージを示す(例えば、10個のうち5、6、7、8、9、10個は、それぞれ、50%、60%、70%、80%、90%、100%の相補性である)。「完全に相補的」とは、核酸配列の全ての連続する残基が第2の核酸配列中の同じ数の連続する残基と水素結合することを意味する。「実質的に相補的」は、本明細書で使用されるとき、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド、又はそれ以上の領域にわたって少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%である相補性の程度を指し、又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。本明細書で使用されるとき、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな条件」とは、標的配列と相補性を有する核酸が標的配列に優先的にハイブリダイズし、且つ非標的配列とは実質的にハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は概して配列依存性であり、幾つもの要因に応じて異なる。一般に、配列が長いほど、配列がその標的配列に特異的にハイブリダイズする温度が高くなる。ストリンジェントな条件の非限定的な例が、Tijssen(1993),Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology−Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I,Second Chapter “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay”,Elsevier,N.Y.に詳述されている。ポリヌクレオチド配列に言及する場合、相補配列又は部分的相補配列も想定される。これらは、好ましくは、高度にストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズ可能なものである。概して、ハイブリダイゼーション速度を最大にするには、比較的低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件(熱融点(T)より約20〜25℃低い)が選択される。Tは、特定の標的配列の50%が規定のイオン強度及びpHの溶液中で完全に相補的なプローブにハイブリダイズする温度である。概して、ハイブリダイズした配列の少なくとも約85%のヌクレオチド相補性を要求する場合、Tより約5〜15℃低くなるよう高度にストリンジェントな洗浄条件が選択される。ハイブリダイズした配列の少なくとも約70%のヌクレオチド相補性を要求する場合、Tより約15〜30℃低くなるよう中程度にストリンジェントな洗浄条件が選択される。高度に許容的な(極めて低いストリンジェンシーの)洗浄条件はTより50℃も低いものであってよく、ハイブリダイズした配列間に高レベルのミスマッチが許容される。当業者は、ハイブリダイゼーション段階及び洗浄段階における他の物理的及び化学的パラメーターもまた、標的配列とプローブ配列との間の特定の相同性レベルからの検出可能なハイブリダイゼーションシグナルの結果に影響を与えるよう変更し得ることを認識するであろう。好ましい高度にストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1% SDS中42℃でのインキュベーション、又は5×SSC及び1% SDS中65℃でのインキュベーションと、0.2×SSC及び0.1% SDS中65℃での洗浄を含む。「ハイブリダイゼーション」とは、1つ以上のポリヌクレオチドが反応することによりヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定した複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対合、フーグステイン(Hoogstein)結合によるか、又は任意の他の配列特異的様式で起こり得る。複合体には、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、又はこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始、又は酵素によるポリヌクレオチドの切断など、より大規模なプロセスで一ステップを構成し得る。所与の配列とハイブリダイズ可能な配列は、その所与の配列の「相補体」と称される。本明細書で使用されるとき、用語「ゲノム遺伝子座(genomic locus)」又は「遺伝子座(locus)」(複数形loci)は、染色体上の遺伝子又はDNA配列の特定の位置である。「遺伝子」は、ポリペプチドをコードする一続きのDNA若しくはRNA、又は生物において機能的役割を果たし、従って生体における分子的遺伝単位であるRNA鎖を指す。本発明の目的上、遺伝子は、遺伝子産物の産生を調節する領域を含むと(かかる調節配列がコード配列及び/又は転写配列に隣接しているか否かに関わらず)見なし得る。従って、遺伝子には、必ずしも限定されないが、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位及び配列内リボソーム進入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位及び遺伝子座制御領域が含まれる。本明細書で使用されるとき、「ゲノム遺伝子座の発現」又は「遺伝子発現」は、機能的遺伝子産物の合成に遺伝子からの情報が用いられる過程である。遺伝子発現の産物は、多くの場合にタンパク質であるが、rRNA遺伝子又はtRNA遺伝子などの非タンパク質コード遺伝子では、産物は機能性RNAである。遺伝子発現の過程は、あらゆる既知の生命−真核生物(多細胞生物を含む)、原核生物(細菌及び古細菌)、及びウイルスによって生存のための機能性産物の産生に用いられている。本明細書で使用されるとき、遺伝子又は核酸の「発現」には、細胞遺伝子発現のみならず、クローニング系及び任意の他のコンテクストにおける1つ又は複数の核酸の転写及び翻訳もまた包含される。本明細書で使用されるとき、「発現」はまた、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(mRNA又は他のRNA転写物などに)転写される過程及び/又は転写されたmRNAが続いてペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳される過程も指す。転写物及びコードされたポリペプチドは、まとめて「遺伝子産物」と称される。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には真核細胞におけるmRNAのスプライシングが含まれ得る。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して同義的に使用される。ポリマーは線状又は分枝状であってよく、それは修飾アミノ酸を含んでもよく、及びそれは非アミノ酸が割り込んでいてもよい。これらの用語はまた、改変されているアミノ酸ポリマー(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又はその他任意の、標識成分とのコンジュゲーションなどの操作)も包含する。本明細書で使用されるとき、用語「アミノ酸」には、グリシン及びD又はLの両方の光学異性体、及びアミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含め、天然及び/又は非天然又は合成のアミノ酸が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「ドメイン」又は「タンパク質ドメイン」は、タンパク質配列のうち残りのタンパク質鎖と独立に存在し及び機能し得る一部分を指す。本発明の態様に記載されるとおり、配列同一性は配列相同性と関係する。相同性比較は目測で行われてもよく、又はより通例では、容易に利用可能な配列比較プログラムの助けを借りて行われてもよい。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間のパーセント(%)相同性を計算することができ、また2つ以上のアミノ酸配列又は核酸配列が共有する配列同一性も計算することができる。
本発明の態様において用語「ガイドRNA」は、推定上の又は同定されたcrRNA配列又はガイド配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「野生型」は、当業者によって理解される当該技術分野の用語であり、突然変異体又は変異体の形態とは区別されるものとして天然に存在するとおりの、典型的な形態の生物、菌株、遺伝子、又は特徴を意味する。「野生型」はベースラインであり得る。
本明細書で使用されるとき、用語「変異体」は、天然に存在するものから逸脱したパターンを有する質の呈示を意味するものと解釈されなければならない。
用語「天然に存在しない」又は「エンジニアリングされた」は同義的に使用され、人間の手が加えられていることを示す。この用語は、核酸分子又はポリペプチドに言及しているとき、核酸分子又はポリペプチドが、自然中ではそれと天然に結び付いている、且つ自然中に見られるとおりの少なくとも1つの他の構成成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。これらの用語を含むか否かに関わらず、あらゆる態様及び実施形態において、好ましくはtheは任意選択であってよく、従って好ましくは含まれ、又は含まれないことは好ましくないことは理解されるであろう。更に、用語「天然に存在しない」及び「エンジニアリングされた」は同義的に用いられてもよく、そのため、従って単独で又は組み合わせで用いることができ、いずれか一方を両方とも併せた記述に置き換えてもよい。詳細には、「天然に存在しない」又は「天然に存在しない及び/又はエンジニアリングされた」の代わりに「エンジニアリングされた」が好ましい。
配列相同性は、当該技術分野において公知の幾つものコンピュータプログラムのいずれか、例えばBLAST又はFASTAなどによって求めることができる。かかるアラインメントの実施に好適なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A;Devereux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12:387)である。配列の比較を行うことができる他のソフトウェアの例としては、限定はされないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,1999 前掲−Chapter 18を参照)、FASTA(Atschul et al.,1990,J.Mol.Biol.,403−410)、及び比較ツールのGENEWORKSスイートが挙げられる。BLAST及びFASTAは、いずれもオフライン及びオンライン検索が利用可能である(Ausubel et al.,1999 前掲,7−58〜7−60頁を参照)。しかしながら、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。パーセンテージ(%)配列相同性は連続配列に関して計算されてもよく、即ち、一方の配列を他方の配列とアラインメントして、一方の配列の各アミノ酸又はヌクレオチドが他方の配列の対応するアミノ酸又はヌクレオチドと1残基ずつ直接比較される。これは「ギャップなし」アラインメントと呼ばれる。かかるギャップなしアラインメントは比較的少数の残基にのみ行われる。これは極めて単純で一貫した方法であるが、例えば、本来は同一の配列ペアにおいて、一つの挿入又は欠失があるために以降のアミノ酸残基がアラインメントから外れる点を考慮に入れることができず、従って大域的アラインメントを行うと潜在的に%相同性が大きく低下し得る。結果的に、ほとんどの配列比較法は、全体的な相同性又は同一性スコアに過度のペナルティーを与えることなく、可能性のある挿入又は欠失を考慮に入れる最適アラインメントを生成するように設計される。これは、局所的な相同性又は同一性を最大化しようと配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することによって達成される。しかしながら、これらの複雑性の高い方法は、アラインメント内に出現する各ギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てるため、同数の同一アミノ酸について、ギャップが可能な限り少ない配列アラインメント(2つの比較される配列間の高い関連性を反映する)の方が、ギャップの多い配列よりも高いスコアを達成し得る。典型的には、あるギャップの存在に比較的高いコストを課し、且つそのギャップにおけるそれぞれの後続残基のペナルティーを小さくする「アフィニティギャップコスト(Affinity gap costs)」が用いられる。これが、最も一般的に用いられているギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、当然ながらギャップがより少ない最適化されたアラインメントを生成し得る。多くのアラインメントプログラムで、ギャップペナルティーを変更することが可能である。しかしながら、配列比較にかかるソフトウェアを使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトのギャップペナルティーは、ギャップが−12で各伸長が−4である。従って、最大%相同性の計算には、初めにギャップペナルティーを考慮して最適アラインメントを生成する必要がある。かかるアラインメントの実行に好適なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(Devereux et al.,1984 Nuc.Acids Research 12 p387)である。配列の比較を行うことができる他のソフトウェアの例としては、限定はされないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,1999 Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.−Chapter 18を参照)、FASTA(Altschul et al.,1990 J.Mol.Biol.403−410)、及び比較ツールのGENEWORKSスイートが挙げられる。BLAST及びFASTAは、いずれもオフライン及びオンライン検索が利用可能である(Ausubel et al.,1999,Short Protocols in Molecular Biology,7−58〜7−60頁を参照)。しかしながら、一部の適用には、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新規ツールもまた、タンパク質及びヌクレオチド配列の比較に利用可能である(FEMS Microbiol Lett.1999 174(2):247−50;FEMS Microbiol Lett.1999 177(1):187−8及び米国国立衛生研究所(National Institutes for Health)のウェブサイトにある国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology information)のウェブサイトを参照)。最終的な%相同性は同一性の点で計測され得るが、アラインメント過程それ自体は、典型的にはオール・オア・ナッシングのペア比較に基づくわけではない。代わりに、化学的類似性又は進化距離に基づき各ペアワイズ比較にスコアを割り当てるスケーリング型類似性スコア行列が概して用いられる。一般的に用いられるかかる行列の例は、BLOSUM62行列−BLASTプログラムスイートのデフォルト行列−である。GCG Wisconsinプログラムは、概して公式のデフォルト値か、又は供給がある場合にはカスタムの記号比較テーブルかのいずれかを使用する(更なる詳細についてはユーザマニュアルを参照)。適用によっては、GCGパッケージについて公式のデフォルト値を使用し、又は他のソフトウェアの場合、BLOSUM62などのデフォルト行列を使用することが好ましい。或いは、パーセンテージ相同性は、CLUSTAL(Higgins DG & Sharp PM(1988),Gene 73(1),237−244)と同様のアルゴリズムに基づくDNASIS(商標)(Hitachi Software)の多重アラインメント機能を用いて計算してもよい。ソフトウェアが最適アラインメントを生成すると、%相同性、好ましくは%配列同一性を計算することが可能になる。ソフトウェアは、典型的には配列比較の一部としてこれを行い、数値的な結果を出す。配列はまた、サイレントな変化を生じて機能的に等価な物質をもたらすようなアミノ酸残基の欠失、挿入又は置換も有し得る。アミノ酸特性(残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質など)の類似性に基づき計画的なアミノ酸置換が作製されてもよく、従ってアミノ酸を機能的なグループにまとめることが有用である。アミノ酸は、その側鎖の特性のみに基づきまとめてもよい。しかしながら、突然変異データも同様に含めることが更に有用である。このように得られた一組のアミノ酸は、構造上の理由から保存されているものと思われる。これらの組はベン図の形式で記述することができる(Livingstone C.D.and Barton G.J.(1993)「タンパク質配列アラインメント:残基保存の階層分析戦略(Protein sequence alignments:a strategy for the hierarchical analysis of residue conservation)」Comput.Appl.Biosci.9:745−756)(Taylor W.R.(1986)「アミノ酸保存の分類(The classification of amino acid conservation)」J.Theor.Biol.119;205−218)。保存的置換は、例えば、一般に認められているベン図によるアミノ酸分類を記載する下記の表に従い作製し得る。
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用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、本明細書では、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを指して同義的に使用される。哺乳類としては、限定はされないが、ネズミ科動物、サル類、ヒト、農業動物、競技動物、及びペットが挙げられる。インビボで得られたか又はインビトロで培養された生物学的実体の組織、細胞及びそれらの子孫もまた包含される。
用語「療法薬剤」、「療法的能力のある薬剤」又は「治療薬剤」は同義的に使用され、対象への投与時に何らかの有益な効果を付与する分子又は化合物を指す。有益な効果には、診断上の判断の実施可能性;疾患、症状、障害、又は病的状態の改善;疾患、症状、障害又は病態の発症の低減又は予防;及び疾患、症状、障害又は病的状態への一般的な対抗が含まれる。
本明細書で使用されるとき、「治療」又は「治療する」、又は「緩和する」又は「改善する」は同義的に使用される。これらの用語は、限定はされないが治療利益及び/又は予防利益を含めた有益な又は所望の結果を達成するための手法を指す。治療利益とは、治療下の1つ以上の疾患、病態、又は症状における任意の治療的に関連性のある向上又はそれに対する効果を意味する。予防的利益については、組成物は、特定の疾患、病態、又は症状を発症するリスクのある対象、又は疾患、病態、又は症状がまだ現れていないことがあり得るにしろ、疾患の生理学的症状の1つ以上を訴えている対象に投与され得る。
用語「有効量」又は「治療有効量」は、有益な又は所望の結果を生じさせるのに十分な薬剤の量を指す。治療有効量は、治療下の対象及び疾患状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与方法などのうちの1つ以上に応じて異なり得るが、当業者はこれを容易に判断することができる。この用語はまた、本明細書に記載されるイメージング方法のいずれか1つによる検出用の画像を提供し得る用量にも適用される。具体的な用量は、詳細な選択の薬剤、従うべき投与レジメン、他の化合物と併用して投与されるかどうか、投与タイミング、イメージングする組織、及びそれが担持される物理的送達系のうちの1つ以上に応じて異なり得る。
本発明の幾つかの態様は、1つ以上のベクターを含むベクター系、又はベクターそれ自体に関する。ベクターは、原核細胞又は真核細胞でのCRISPR転写物(例えば、核酸転写物、タンパク質、又は酵素)の発現用に設計することができる。例えば、CRISPR転写物は、細菌細胞、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞、又は哺乳類細胞で発現させることができる。好適な宿主細胞については、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に詳述されている。或いは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを用いてインビトロで転写及び翻訳されてもよい。
本発明の実施形態は、起こり得る相同置換(置換(substitution)及び置換(replacement)は両方ともに、本明細書では既存のアミノ酸残基又はヌクレオチドと代替の残基又はヌクレオチドとの相互交換を意味して用いられる)、即ち、アミノ酸の場合に塩基性同士、酸性同士、極性同士等、同種のもの同士の置換を含み得る配列(ポリヌクレオチド又はポリペプチドの両方)を含む。非相同置換、即ち、あるクラスから別のクラスの残基への置換、或いは、オルニチン(以下、Zと称する)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下、Bと称する)、ノルロイシンオルニチン(以下、Oと称する)、ピリイルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニン及びフェニルグリシンなどの非天然アミノ酸の取り込みが関わる置換もまた起こり得る。変異体アミノ酸配列は、グリシン又はβ−アラニン残基などのアミノ酸スペーサーに加え、メチル基、エチル基又はプロピル基などのアルキル基を含む配列の任意の2つのアミノ酸残基の間に挿入され得る好適なスペーサー基を含み得る。更に別の形態(これにはペプトイド形態の1つ以上のアミノ酸残基の存在が関わる)については、当業者は十分に理解し得る。誤解を避けるため、「ペプトイド形態」は、α−炭素置換基がα−炭素上ではなく、むしろ残基の窒素原子上にある変異体アミノ酸残基を指して使用される。ペプトイド形態のペプチドの調製方法は当該技術分野において公知である(例えばSimon RJ et al.,PNAS(1992)89(20),9367−9371及びHorwell DC,Trends Biotechnol.(1995)13(4),132−134)。
相同性モデリング:他のCpf1オルソログにおける対応する残基は、Zhang et al.,2012(Nature;490(7421):556−60)及びChen et al.,2015(PLoS Comput Biol;11(5):e1004248)の方法−ドメイン−モチーフ界面によって媒介される相互作用を予測する計算的タンパク質間相互作用(PPI)方法によって同定することができる。構造に基づくPPI予測方法であるPrePPI(予測PPI)は、ベイズ統計学の枠組みを用いて構造的エビデンスを非構造的エビデンスと組み合わせる。この方法は、クエリタンパク質のペアをとり、構造アラインメントを用いることにより、それらの実験的に決定された構造又は相同性モデルのいずれかに対応する構造表現を同定することを含む。構造アラインメントは、更に、大域的及び局所的幾何学関係を考慮することによって近く及び遠くの両方の隣接構造を同定するのに用いられる。構造表現の2つの隣接構造がタンパク質データバンクに報告されている複合体を形成する場合は常に、これが、これらの2つのクエリタンパク質間の相互作用をモデル化するための鋳型を定義付ける。複合体のモデルは、鋳型内の対応する隣接構造上の代表的な構造を重ね合わせることにより作成される。この手法は、Dey et al.,2013(Prot Sci;22:359−66)に更に記載される。
本発明の目的上、増幅は、妥当なフィデリティで標的配列を複製する能力を有するプライマー及びポリメラーゼを用いる任意の方法を意味する。増幅は、天然又は組換えDNAポリメラーゼ、例えば、TaqGold(商標)、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼのクレノウ断片、及び逆転写酵素によって行われ得る。好ましい増幅方法はPCRである。
特定の態様において、本発明はベクターに関する。本明細書で使用されるとき、「ベクター」は、ある実体を一つの環境から別の環境に移すことを可能にする又は促進するツールである。これは、別のDNAセグメントが挿入されて挿入セグメントの複製をもたらし得るレプリコン、例えば、プラスミド、ファージ、又はコスミドである。概して、ベクターは適切な制御エレメントと会合しているとき複製能を有する。一般に、用語「ベクター」は、それに連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターとしては、限定はされないが、一本鎖、二本鎖、又は部分的二本鎖の核酸分子;1つ以上の遊離末端を含む、遊離末端のない(例えば環状の)核酸分子;DNA、RNA、又は両方を含む核酸分子;及び当該技術分野において公知の他の種類のポリヌクレオチドが挙げられる。ある種のベクターは「プラスミド」であり、これは、標準的な分子クローニング技術によるなどして追加のDNAセグメントを挿入することのできる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここでベクターには、ウイルス(例えば、レトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV))へのパッケージングのためのウイルス由来DNA又はRNA配列が存在する。ウイルスベクターはまた、宿主細胞へのトランスフェクションのためのウイルスによって担持されるポリヌクレオチドも含む。特定のベクターは、それが導入される宿主細胞での自己複製能を有する(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。更に、特定のベクターは、それが作動可能に連結された遺伝子の発現を導くことが可能である。かかるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。組換えDNA技法において有用な一般的な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。
組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態の本発明の核酸を含むことができ、これはつまり、組換え発現ベクターが、発現させる核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の調節エレメント(これは、発現に用いられる宿主細胞に基づき選択されてもよい)を含むことを意味する。組換え発現ベクターの範囲内において、「作動可能に連結された」は、ヌクレオチド配列の(例えば、インビトロ転写/翻訳系における、又はベクターが宿主細胞に導入される場合に宿主細胞における)発現が可能となる形で目的のヌクレオチド配列が1つ又は複数の調節エレメントに連結されていることを意味するように意図される。組換え及びクローニング方法に関しては、2004年9月2日に米国特許出願公開第2004−0171156 A1号明細書として公開された米国特許出願第10/815,730号明細書(この内容は、本明細書において全体として参照により援用される)が挙げられる。
1つ又は複数のベクターは、1つ又は複数の調節エレメント、例えば1つ又は複数のプロモーターを含み得る。1つ又は複数のベクターはCpf1コード配列、及び/又は単一の、しかし少なくとも3又は8又は16又は32又は48又は50個を含み得る可能性もあるガイドRNA(例えばsgRNA)コード配列、例えば、1〜2、1〜3、1〜4 1〜5、3〜6、3〜7、3〜8、3〜9、3〜10、3〜8、3〜16、3〜30、3〜32、3〜48、3〜50個のRNA(例えばsgRNA)を含み得る。単一のベクターでは、有利には最大約16個のRNA(例えばsgRNA)がある場合、各RNA(例えばsgRNA)にプロモーターがあってもよく;及び、単一のベクターが16個より多いRNA(例えばsgRNA)を提供する場合、1つ以上のプロモーターが2個以上のRNA(例えばsgRNA)の発現をドライブしてもよく、例えば、32個のRNA(例えばsgRNA)がある場合、各プロモーターが2個のRNA(例えばsgRNA)の発現をドライブしてもよく、及び48個のRNA(例えばsgRNA)がある場合、各プロモーターが3個のRNA(例えばsgRNA)の発現をドライブしてもよい。単純な算術の十分に確立されたクローニングプロトコル及び本開示の教示により、当業者は、AAVなどの好適な例示的ベクター、及びU6プロモーターなどの好適なプロモーターに対する1つ又は複数のRNA(例えばsgRNA)、例えばU6−sgRNAに関して本発明を容易に実施することができる。例えば、AAVのパッケージング限界は約4.7kbである。単一のU6−sgRNA(+クローニング用の制限部位)の長さは361bpである。従って、当業者は、単一のベクターに約12〜16、例えば13個のU6−sgRNAカセットを容易に収めることができる。これは、TALEアセンブリに用いられるゴールデンゲート戦略(http://www.genome−engineering.org/taleffectors/)など、任意の好適な手段によってアセンブルすることができる。当業者はまた、U6−sgRNAの数を約1.5倍増加させるため、例えば、12〜16、例えば13個から約18〜24、例えば約19個のU6−sgRNAに増加させるため、タンデムガイド戦略も用いることができる。従って、当業者は、単一のベクター、例えばAAVベクター中に約18〜24、例えば約19個のプロモーター−RNA、例えばU6−sgRNAに容易に至ることができる。ベクター中のプロモーター及びRNA、例えば1つ又は複数のsgRNAの数を増加させる更なる手段は、単一のプロモーター(例えばU6)を使用して、切断可能な配列によって分離されたRNA、例えばsgRNAのアレイを発現させることである。及びベクター中のプロモーター−RNA、例えばsgRNAの数を増加させる更に別の手段は、コード配列又は遺伝子のイントロンにおいて切断可能な配列によって分離されたプロモーター−RNA、例えばsgRNAのアレイを発現させることである;及び、この場合、ポリメラーゼIIプロモーターを使用することが有利であり、それにより発現が増加し、長いRNAの組織特異的転写が可能となり得る(例えば、http://nar.oxfordjournals.org/content/34/7/e53.short、http://www.nature.com/mt/journal/v16/n9/abs/mt2008144a.htmlを参照)。有利な実施形態において、AAVは、最大約50遺伝子を標的とするU6タンデムsgRNAをパッケージングし得る。従って、当該技術分野における知識及び本開示の教示から、当業者は、1つ以上のプロモーターの制御下にあるか、又はそれに作動可能に若しくは機能的に連結された複数のRNA又はガイド又はsgRNAを発現する1つ又は複数のベクター、例えばシングルベクターを−特に本明細書で考察されるRNA又はガイド又はsgRNAの数に関して、いかなる過度の実験もなしに容易に作製及び使用することができる。
本発明の態様は、ガイドRNA及び(任意選択で改変若しくは突然変異)CRISPR酵素(例えばCpf1)用のバイシストロニックベクターに関する。ガイドRNA及び(任意選択で改変若しくは突然変異)CRISPR酵素用のバイシストロニック発現ベクターが好ましい。概して、及び特に、この実施形態において(任意選択で改変又は突然変異)CRISPR酵素は好ましくはCBhプロモーターによってドライブされる。RNAは、好ましくはU6プロモーターなどのPol IIIプロモーターによってドライブされ得る。理想的にはこの2つが組み合わされる。
一部の実施形態において、ガイドRNA中のループが提供される。これは、ステムループ又はテトラループであり得る。ループは好ましくはGAAAであるが、この配列に限定されるものではなく、又は実際には、4bp長であることのみに限定されるものではない。実際には、ヘアピン構造における使用に好ましいループ形成配列は4ヌクレオチド長であり、最も好ましくは配列GAAAを有する。しかしながら、代替的な配列であってよいとおり、より長い又は短いループ配列が使用され得る。配列は好ましくはヌクレオチドトリプレット(例えばAAA)、及び更なるヌクレオチド(例えばC又はG)を含む。ループ形成配列の例にはCAAA及びAAAGが含まれる。本明細書に開示される任意の方法の実施においては、限定なしに、マイクロインジェクション、電気穿孔、ソノポレーション、微粒子銃、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション、カチオン性トランスフェクション、リポソームトランスフェクション、デンドリマートランスフェクション、熱ショックトランスフェクション、ヌクレオフェクショントランスフェクション、マグネトフェクション、リポフェクション、インペイルフェクション(impalefection)、光学的トランスフェクション、専売薬剤により増強される核酸取り込み、及びリポソーム、免疫リポソーム、ビロソーム、又は人工ビリオンを介した送達を含めた当該技術分野で公知の1つ以上の方法によって細胞又は胚に好適なベクターを導入することができる。一部の方法において、ベクターはマイクロインジェクションによって胚に導入される。1つ又は複数のベクターが胚の核又は細胞質に微量注入され得る。一部の方法において、1つ又は複数のベクターはヌクレオフェクションによって細胞に導入され得る。
用語「調節エレメント」には、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム侵入部位(IRES)、及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル及びポリU配列などの転写終結シグナル)が含まれることが意図される。かかる調節エレメントについては、例えば、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載される。調節エレメントには、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの及び特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。組織特異的プロモーターは、主として、所望の目的組織、例えば、筋肉、ニューロン、骨、皮膚、血液、特定の臓器(例えば、肝臓、膵臓)、又は特定の細胞型(例えば、リンパ球)において発現を導き得る。調節エレメントはまた、細胞周期依存的又は発生段階依存的様式など、時間依存的様式で発現を導いてもよく、この発現もまた組織又は細胞型特異的であることも又はそうでないこともある。一部の実施形態において、ベクターは、1つ以上のpol IIIプロモーター(例えば、1、2、3、4、5個、又はそれより多いpol IIIプロモーター)、1つ以上のpol IIプロモーター(例えば、1、2、3、4、5個、又はそれより多いpol IIプロモーター)、1つ以上のpol Iプロモーター(例えば、1、2、3、4、5個、又はそれより多いpol Iプロモーター)、又はこれらの組み合わせを含む。pol IIIプロモーターの例としては、限定はされないが、U6及びH1プロモーターが挙げられる。pol IIプロモーターの例としては、限定はされないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択でRSVエンハンサーと共に)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択でCMVエンハンサーと共に)[例えば、Boshart et al,Cell,41:521−530(1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1αプロモーターが挙げられる。また、用語「調節エレメント」には、WPREなどのエンハンサーエレメント;CMVエンハンサー;HTLV−IのLTRにおけるR−U5’セグメント(Mol.Cell.Biol.,Vol.8(1),p.466−472,1988);SV40エンハンサー;及びウサギβ−グロビンのエクソン2と3との間のイントロン配列(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.78(3),p.1527−31,1981)も包含される。複数の異なるガイド配列を使用すると、単一の発現構築物を用いて細胞内の複数の異なる対応する標的配列へとCRISPR活性を標的化させることができる。例えば、シングルベクターが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20個以上、又はそれより多いガイド配列を含み得る。一部の実施形態では、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多いかかるガイド配列含有ベクターが提供され、及び任意選択で細胞に送達され得る。一部の実施形態において、ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に連結された調節エレメントを含む。CRISPR酵素又はCRISPR酵素mRNA又はCRISPRガイドRNA又は1つ又は複数のRNAは別個に送達してもよく;及び有利には、これらのうちの少なくとも1つがナノ粒子複合体によって送達される。CRISPR酵素に発現する時間を与えるため、CRISPR酵素mRNAをガイドRNAより先に送達してもよい。CRISPR酵素mRNAはガイドRNAの投与の1〜12時間前(好ましくは約2〜6時間前)に投与されてもよい。或いは、CRISPR酵素mRNA及びガイドRNAは一緒に投与されてもよい。有利には、CRISPR酵素mRNA+ガイドRNAの初回投与から1〜12時間後(好ましくは約2〜6時間後)にガイドRNAの第2のブースター用量が投与されてもよい。CRISPR酵素mRNA及び/又はガイドRNAの追加の投与は、最も効率的なゲノム改変レベルを達成するのに有用であり得る。当業者によれば、発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞の選択、所望の発現レベルなどの要因に依存し得ることが理解されるであろう。ベクターは宿主細胞に導入することができ、それにより、本明細書に記載されるとおりの核酸によってコードされる転写物、タンパク質、又はペプチドが、融合タンパク質又はペプチド(例えば、クラスター化した規則的な間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)転写物、タンパク質、酵素、それらの突然変異型、それらの融合タンパク質等)を含め、産生され得る。調節配列に関しては、米国特許出願第10/491,026号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に援用される)が挙げられる。プロモーターに関しては、国際公開第2011/028929号パンフレット及び米国特許出願第12/511,940号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に援用される)が挙げられる。
ベクターは、原核細胞又は真核細胞でのCRISPR転写物(例えば、核酸転写物、タンパク質、又は酵素)の発現用に設計することができる。例えば、CRISPR転写物は、細菌細胞、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞、又は哺乳類細胞で発現させることができる。好適な宿主細胞については、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に詳しく考察されている。或いは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを用いてインビトロで転写及び翻訳されてもよい。
ベクターは、原核生物又は原核細胞に導入して増殖させてもよい。一部の実施形態において、真核細胞に導入するベクターのコピーを増幅させるため、又は真核細胞に導入するベクターの産生における中間ベクターとして(例えば、ウイルスベクターパッケージング系の一部としてプラスミドを増幅する)、原核生物が使用される。一部の実施形態において、原核生物を用いてベクターのコピーを増幅し、1つ以上の核酸を発現させて、それにより例えば宿主細胞又は宿主生物に送達するための1つ以上のタンパク質の供給源を提供する。原核生物でのタンパク質の発現は、多くの場合に、融合タンパク質又は非融合タンパク質のいずれかの発現を導く構成的プロモーター又は誘導プロモーターを含むベクターを用いて大腸菌(Escherichia coli)で行われる。融合ベクターが、そこでコードされるタンパク質、例えば組換えタンパク質のアミノ末端に幾つものアミノ酸を付加する。かかる融合ベクターは、(i)組換えタンパク質の発現の増加;(ii)組換えタンパク質の溶解度の増加;及び(iii)アフィニティー精製でリガンドとして作用することによる組換えタンパク質の精製の促進など、1つ以上の目的を果たし得る。多くの場合に、融合発現ベクターでは、融合タンパク質の精製後に組換えタンパク質を融合部分と分離することができるように、融合部分と組換えタンパク質との接合部にタンパク質分解切断部位が導入される。かかる酵素及びそのコグネイト認識配列には、第Xa因子、トロンビン、及びエンテロキナーゼが含まれる。融合発現ベクターの例としては、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith and Johnson,1988.Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)、及びpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が挙げられ、これらはそれぞれ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、又はプロテインAを標的組換えタンパク質に融合させる。好適な誘導性非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの例としては、pTrc(Amrann et al.,(1988)Gene 69:301−315)及びpET 11d(Studier et al.,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)60−89)が挙げられる。一部の実施形態において、ベクターは酵母発現ベクターである。酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerivisae)における発現用のベクターの例としては、pYepSec1(Baldari,et al.,1987.EMBO J.6:229−234)、pMFa(Kuijan and Herskowitz,1982.Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultz et al.,1987.Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)、及びpicZ(InVitrogen Corp,San Diego,Calif.)が挙げられる。一部の実施形態において、ベクターは、バキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞でのタンパク質発現をドライブする。培養昆虫細胞(例えば、SF9細胞)でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smith,et al.,1983.Mol.Cell.Biol.3:2156−2165)及びpVLシリーズ(Lucklow and Summers,1989.Virology 170:31−39)が挙げられる。
一部の実施形態において、ベクターは、哺乳類発現ベクターを用いて哺乳類細胞での1つ以上の配列の発現をドライブする能力を有する。哺乳類発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed,1987.Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufman,et al.,1987.EMBO J.6:187−195)が挙げられる。哺乳類細胞で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、典型的には1つ以上の調節エレメントによって提供される。例えば、一般的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、シミアンウイルス40、及び本明細書に開示される及び当該技術分野において公知の他のウイルスに由来する。原核細胞及び真核細胞の両方に好適な他の発現系については、例えば、Sambrook,et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL.2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989のChapters 16及び17を参照のこと。
一部の実施形態において、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞型で優先的に核酸の発現を導くことが可能である(例えば、組織特異的調節エレメントが核酸の発現に使用される)。組織特異的調節エレメントは当該技術分野において公知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert,et al.,1987.Genes Dev.1:268−277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame and Eaton,1988.Adv.Immunol.43:235−275)、詳細にはT細胞受容体(Winoto and Baltimore,1989.EMBO J.8:729−733)及び免疫グロブリン(Baneiji,et al.,1983.Cell 33:729−740;Queen and Baltimore,1983.Cell 33:741−748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle,1989.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund,et al.,1985.Science 230:912−916)、及び乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号明細書、及び欧州特許出願公開第264,166号明細書)が挙げられる。発生的に調節されるプロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss,1990.Science 249:374−379)及びαフェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman,1989.Genes Dev.3:537−546)もまた包含される。これらの原核生物及び真核生物ベクターに関しては、米国特許第6,750,059号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に援用される)が挙げられる。本発明の他の実施形態はウイルスベクターの使用に関してもよく、それについては米国特許出願第13/092,085号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に援用される)が挙げられる。組織特異的調節エレメントは当該技術分野において公知であり、この点で、米国特許第7,776,321号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に援用される)が挙げられる。一部の実施形態において、CRISPR系の1つ以上のエレメントの発現をドライブするため、CRISPR系の1つ以上のエレメントに調節エレメントが作動可能に連結される。一般に、SPIDR(SPacer Interspersed Direct Repeat、スペーサー散在型ダイレクトリピート)としても知られるCRISPR(クラスター化した規則的な間隔の短いパリンドローム反復)は、通常特定の細菌種に特異的なDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPR遺伝子座は、大腸菌(E.coli)(Ishino et al.,J.Bacteriol.,169:5429−5433[1987];及びNakata et al.,J.Bacteriol.,171:3553−3556 [1989])に認められた特徴的なクラスの散在型短鎖配列リピート(SSR)、及び関連遺伝子を含む。同様の散在型SSRが、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、アナベナ属(Anabaena)、及び結核菌(Mycobacterium tuberculosis)において同定されている(Groenen et al.,Mol.Microbiol.,10:1057−1065[1993];Hoe et al.,Emerg.Infect.Dis.,5:254−263[1999];Masepohl et al.,Biochim.Biophys.Acta 1307:26−30[1996];及びMojica et al.,Mol.Microbiol.,17:85−93[1995]を参照)。CRISPR遺伝子座は、典型的にはリピートの構造が他のSSRと異なり、短い規則的な間隔のリピート(SRSR)と呼ばれている(Janssen et al.,OMICS J.Integ.Biol.,6:23−33[2002];及びMojica et al.,Mol.Microbiol.,36:244−246[2000])。一般に、このリピートは、実質的に一定長さのユニークな介在配列によって規則的な間隔が置かれたクラスター内に存在する短いエレメントである(Mojica et al.,[2000]、前掲)。リピート配列は株間で高度に保存されているが、散在するリピートの数及びスペーサー領域の配列は、典型的には株毎に異なる(van Embden et al.,J.Bacteriol.,182:2393−2401[2000])。CRISPR遺伝子座は、限定はされないが、アエロピルム属(Aeropyrum)、ピロバキュラム属(Pyrobaculum)、スルホロブス属(Sulfolobus)、アーケオグロブス属(Archaeoglobus)、ハロアーキュラ属(Halocarcula)、メタノバクテリウム属(Methanobacterium)、メタノコッカス属(Methanococcus)、メタノサルシナ属(Methanosarcina)、メタノピュルス属(Methanoナシ属(Pyrus))、パイロコッカス属(Pyrococcus)、ピクロフィルス属(Picrophilus)、サーモプラズマ属(Thermoplasma)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、アクウィフェクス属(Aquifex)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、クロロビウム属(Chlorobium)、サーマス属(Thermus)、バチルス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、アゾアルカス属(Azarcus)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、デスルホビブリオ属(Desulfovibrio)、ジオバクター属(Geobacter)、ミキソコッカス属(Myxococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、アシネトバクター(Acinetobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、大腸菌属(Escherichia)、レジオネラ属(Legionella)、メチロコッカス属(Methylococcus)、パスツレラ属(Pasteurella)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、サルモネラ属(Salmonella)、ザントモナス属(Xanthomonas)、エルシニア属(Yersinia)、トレポネーマ属(Treponema)、及びサーモトガ属(Thermotoga)を含め、40を超える原核生物において同定されている(例えば、Jansen et al.,Mol.Microbiol.,43:1565−1575 [2002];及びMojica et al.,[2005]を参照)。
典型的には、内因性核酸ターゲティング系のコンテクストでは、核酸ターゲティング複合体(標的配列にハイブリダイズし、且つ1つ以上の核酸ターゲティングエフェクタータンパク質と複合体を形成したガイドRNAを含む)が形成されると、標的配列にあるか又はその近傍(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対、又はそれ以上の範囲内)にある一方又は両方のRNA鎖の切断が生じる。一部の実施形態において、核酸ターゲティング系の1つ以上のエレメントの発現をドライブする1つ以上のベクターが宿主細胞に導入され、核酸ターゲティング系のエレメントが発現すると、1つ以上の標的部位において核酸ターゲティング複合体の形成が導かれる。例えば、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質及びガイドRNAが、各々別個のベクター上で別個の調節エレメントに作動可能に連結されてもよい。或いは、同じ又は異なる調節エレメントから発現するエレメントのうちの2つ以上が単一のベクターに組み合わされてもよく、1つ以上の追加のベクターが、第1のベクターに含まれない核酸ターゲティング系の任意の構成成分を提供する。単一のベクターに組み合わされる核酸ターゲティング系エレメントは、あるエレメントが第2のエレメントに対して5’側(その「上流」)に位置し、又はそれに対して3’側(その「下流」)に位置するなど、任意の好適な向きで配置されてもよい。あるエレメントのコード配列は第2のエレメントのコード配列と同じ鎖上又は逆鎖上に位置してもよく、同じ又は逆の方向に向いていてもよい。一部の実施形態において、単一のプロモーターが、1つ以上のイントロン配列内に組み込まれた(例えば、各々が異なるイントロンにあるか、2つ以上が少なくとも1つのイントロンにあるか、又は全てが単一のイントロンにある)核酸ターゲティングエフェクタータンパク質及びガイドRNAをコードする転写物の発現をドライブする。一部の実施形態において、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質とガイドRNAとは同じプロモーターに作動可能に連結され、それから発現する。
一部の実施形態において、組換え鋳型もまた提供される。組換え鋳型は、別個のベクターに含まれるか、又は別個のポリヌクレオチドとして提供される、本明細書に記載されるとおりの別のベクターの構成成分であり得る。一部の実施形態において、組換え鋳型は、核酸ターゲティング複合体の一部としての核酸ターゲティングエフェクタータンパク質によってニッキング又は切断される標的配列内又はその近傍などで、相同組換えにおける鋳型として働くように設計される。鋳型ポリヌクレオチドは、約10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000ヌクレオチド長以上、又はそれより長いなど、任意の好適な長さであってもよい。一部の実施形態において、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列を含むポリヌクレオチドの一部分に相補的である。最適にアラインメントしたとき、鋳型ポリヌクレオチドは標的配列の1つ以上のヌクレオチド(例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド以上又はそれより長い)と重複し得る。一部の実施形態において、鋳型配列と標的配列を含むポリヌクレオチドとが最適にアラインメントされたとき、鋳型ポリヌクレオチドのうち最も近いヌクレオチドは、標的配列から約1、5、10、15、20、25、50、75、100、200、300、400、500、1000、5000、10000ヌクレオチド以内、又はそれを超える範囲内にある。
一部の実施形態において、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質は、1つ以上の異種タンパク質ドメイン(例えば、核酸ターゲティングエフェクタータンパク質に加えて約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多いドメイン)を含む融合タンパク質の一部である。一部の実施形態において、CRISPRエフェクタータンパク質は、1つ以上の異種タンパク質ドメイン(例えばCRISPR酵素に加えて約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、又はそれより多いドメイン)を含む融合タンパク質の一部である。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意の追加的なタンパク質配列、及び任意選択で任意の2つのドメイン間のリンカー配列を含み得る。CRISPR酵素に融合させ得るタンパク質ドメインの例としては、限定なしに、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、及び以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写解除因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性及び核酸結合活性のうちの1つ以上を有するタンパク質ドメインが挙げられる。エピトープタグの非限定的な例としては、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV−Gタグ、及びチオレドキシン(Trx)タグが挙げられる。レポーター遺伝子の例としては、限定はされないが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT) β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、及び青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質が挙げられる。CRISPR酵素は、DNA分子に結合するか、又は限定はされないが、マルトース結合タンパク質(MBP)、Sタグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4 DNA結合ドメイン融合物、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物を含めた他の細胞分子に結合するタンパク質又はタンパク質の断片をコードする遺伝子配列に融合させてもよい。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成し得る追加的なドメインは、米国特許出願公開第20110059502号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載される。一部の実施形態では、タグ付加CRISPR酵素を用いて標的配列の位置が同定される。
一部の実施形態では、CRISPR酵素は誘導性系の一成分を形成し得る。この系の誘導可能な性質により、エネルギーの形態を用いた遺伝子編集又は遺伝子発現の時空間的制御が可能となり得る。エネルギーの形態としては、限定はされないが、電磁放射線、音響エネルギー、化学エネルギー及び熱エネルギーを挙げることができる。誘導性系の例には、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Tet−On又はTet−Off)、小分子2ハイブリッド転写活性化システム(FKBP、ABA等)、又は光誘導性系(フィトクロム、LOVドメイン、又はクリプトクロム)が含まれる。一実施形態において、CRISPR酵素は、配列特異的に転写活性の変化を導く光誘導性転写エフェクター(LITE)の一部であり得る。光の構成成分には、CRISPR酵素、光応答性シトクロムヘテロ二量体(例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来)、及び転写活性化/抑制ドメインが含まれ得る。誘導性DNA結合タンパク質及びその使用方法の更なる例は、米国仮特許出願第61/736465号明細書及び米国仮特許出願第61/721,283号明細書及び国際公開第2014/018423号パンフレット及び米国特許第8889418号明細書、米国特許第8895308号明細書、米国特許出願公開第20140186919号明細書、米国特許出願公開第20140242700号明細書、米国特許出願公開第20140273234号明細書、米国特許出願公開第20140335620号明細書、国際公開第2014093635号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)に提供される。
遺伝的及び後成的状態のモデル
本発明の方法を用いることにより、目的の突然変異のモデル又は疾患モデルによるなどの、目的の遺伝的又は後成的条件のモデル化及び/又は研究に使用し得る植物、動物又は細胞を作り出すことができる。本明細書で使用されるとき、「疾患」は、対象における疾患、障害、又は徴候を指す。例えば、本発明の方法を用いて、疾患に関連する1つ以上の核酸配列に改変を含む動物若しくは細胞、又は疾患に関連する1つ以上の核酸配列の発現が変化している植物、動物若しくは細胞を作り出すことができる。かかる核酸配列は疾患関連タンパク質配列をコードしてもよく、又は疾患関連制御配列であってもよい。従って、本発明の実施形態において植物、対象、患者、生物又は細胞は、非ヒトの対象、患者、生物又は細胞であり得ることが理解される。従って、本発明は、本方法により作製された植物、動物若しくは細胞、又はその子孫を提供する。子孫は、作製された植物又は動物のクローンであってもよく、又は更に望ましい形質をその子孫に遺伝子移入させるため同じ種の他の個体と交配させることによる有性生殖から生じてもよい。細胞は、多細胞生物、特に動物又は植物の場合にインビボ又はエキソビボであってよい。細胞が培養下にある例では、適切な培養条件が満たされる場合、且つ好ましくは細胞がこの目的に好適に適合する場合(例えば幹細胞)、細胞系が樹立され得る。本発明によって作製される細菌細胞系もまた想定される。ひいては細胞系もまた想定される。
一部の方法において、疾患モデルを使用することにより、疾患の研究で一般的に用いられる手段を用いて突然変異が動物又は細胞及び疾患の発症及び/又は進行に及ぼす効果を研究することができる。或いは、かかる疾患モデルは、薬学的に活性な化合物が疾患に及ぼす効果の研究に有用である。
一部の方法において、疾患モデルを使用して、見込みのある遺伝子治療戦略の有効性を評価することができる。即ち、疾患の発症及び/又は進行が阻害又は軽減されるように疾患関連遺伝子又はポリヌクレオチドを改変することができる。詳細には、本方法は、変化したタンパク質が産生され、結果として動物又は細胞が変化した反応を有するように疾患関連遺伝子又はポリヌクレオチドを改変することを含む。従って、一部の方法において、遺伝子治療イベントの効果を評価し得るように、遺伝子改変を受けた動物が、疾患を発症する素因のある動物と比較され得る。
別の実施形態において、本発明は、疾患遺伝子に関連する細胞シグナル伝達イベントを調節する生物学的に活性な薬剤を開発する方法を提供する。本方法は、CRISPR酵素、及びダイレクトリピート配列に結合したガイド配列の1つ以上の発現をドライブする1つ以上のベクターを含む細胞に試験化合物を接触させるステップ;及び例えば細胞に含まれる疾患遺伝子の突然変異に関連する細胞シグナル伝達イベントの減少又は増加を示す読み取り値の変化を検出するステップを含む。
細胞機能の変化をスクリーニングするため本発明の方法と組み合わせて細胞モデル又は動物モデルを構築することができる。かかるモデルを使用して、本発明のCRISPR複合体により改変されたゲノム配列が目的の細胞機能に及ぼす効果を研究し得る。例えば、細胞機能モデルを使用して、改変ゲノム配列が細胞内シグナル伝達又は細胞外シグナル伝達に及ぼす効果を研究することができる。或いは、細胞機能モデルを使用して、改変ゲノム配列が感覚認知に及ぼす効果を研究することができる。一部のかかるモデルにおいては、モデルにおける生化学的シグナル伝達経路に関連する1つ以上のゲノム配列が改変される。
いくつかの疾患モデルが特に研究されている。それらには、デノボ自閉症リスク遺伝子CHD8、KATNAL2、及びSCN2A;並びに症候性自閉症(アンジェルマン症候群)遺伝子UBE3Aが含まれる。これらの遺伝子及び得られる自閉症モデルは当然ながら好ましいが、遺伝子及び対応するモデル全体にわたる本発明の広範な適用性を明らかにすることに役立つ。生化学的シグナル伝達経路に関連する1つ以上のゲノム配列の発現の変化は、候補薬剤に接触させたときの試験モデル細胞と対照細胞との間における対応する遺伝子のmRNAレベルの差をアッセイすることにより決定され得る。或いは、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列の発現の差は、コードされたポリペプチド又は遺伝子産物のレベルの差を検出することにより決定される。
mRNA転写物又は対応するポリヌクレオチドのレベルの薬剤により引き起こされた変化をアッセイするため、初めに試料中に含まれる核酸が当該技術分野の標準方法に従い抽出される。例えば、Sambrook et al.(1989)に示される手順に従い種々の溶菌酵素又は化学溶液を使用してmRNAを単離することができ、又は製造者により提供される付属の説明書に従い核酸結合樹脂で抽出することができる。抽出した核酸試料に含まれるmRNAは、次に当該技術分野において広く知られている方法に従うか又は本明細書に例示する方法に基づき、増幅手順又は従来のハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンブロット解析)により検出される。
本発明の目的上、増幅は、妥当なフィデリティで標的配列を複製する能力を有するプライマー及びポリメラーゼを用いる任意の方法を意味する。増幅は、天然又は組換えDNAポリメラーゼ、例えば、TaqGold(商標)、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼのクレノウ断片、及び逆転写酵素によって行われ得る。好ましい増幅方法はPCRである。詳細には、単離されたRNAが、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列の発現レベルを定量化するため定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)と組み合わされた逆転写アッセイに供され得る。
遺伝子発現レベルの検出は、増幅アッセイ中にリアルタイムで行うことができる。一態様では、増幅産物が、蛍光DNA結合剤、例えば限定はされないがDNAインターカレート剤及びDNA溝結合剤で直接可視化され得る。二本鎖DNA分子に組み込まれるインターカレート剤の量は、典型的には増幅されたDNA産物の量に比例するため、好都合には、当該技術分野における従来の光学的システムを使用してインターカレート色素の蛍光を定量化することにより、増幅産物の量を決定することができる。この適用に好適なDNA結合色素としては、SYBRグリーン、SYBRブルー、DAPI、プロピジウムヨウ素、Hoeste、SYBRゴールド、臭化エチジウム、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、蛍光クマリン(fluorcoumanin)、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミトラマイシン、ルテニウムポリピリジル、アントラマイシンなどが挙げられる。
別の態様では、配列特異的プローブなどの他の蛍光標識を増幅反応に用いて増幅産物の検出及び定量化を促進し得る。プローブベースの定量的増幅は、所望の増幅産物の配列特異的検出に頼る。この増幅は、特異性及び感度の増加をもたらす蛍光性の標的特異的プローブ(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ)を利用する。プローブベースの定量的増幅を実施する方法は当該技術分野で十分に確立されており、米国特許第5,210,015号明細書に教示される。
更に別の態様では、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列と配列相同性を共有するハイブリダイゼーションプローブを使用して従来のハイブリダイゼーションアッセイを実施し得る。典型的には、プローブは、被験対象から得られた生体試料内に含まれる生化学的シグナル伝達経路に関連する配列と安定した複合体をハイブリダイゼーション反応で形成することが可能である。アンチセンスがプローブ核酸として使用される場合、試料中に提供される標的ポリヌクレオチドがアンチセンス核酸の配列と相補的であるように選択されることは、当業者に理解されるであろう。逆に、ヌクレオチドプローブがセンス核酸である場合、標的ポリヌクレオチドはセンス核酸の配列と相補的であるように選択される。
ハイブリダイゼーションは、種々のストリンジェンシーの条件下で実施することができる。本発明の実施に好適なハイブリダイゼーション条件は、プローブと生化学的シグナル伝達経路に関連する配列との間の認識相互作用が十分に特異的であるとともに十分に安定しているものである。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーが増加する条件は当該技術分野で広く知られており、発表されている。例えば、(Sambrook,et al.,(1989);Nonradioactive In Situ Hybridization Application Manual,Boehringer Mannheim,second edition)を参照のこと。ハイブリダイゼーションアッセイは、限定はされないが、ニトロセルロース、ガラス、ケイ素、及び種々の遺伝子アレイを含めた任意の固体支持体上に固定化されたプローブを使用して形成され得る。好ましいハイブリダイゼーションアッセイは、米国特許第5,445,934号明細書に記載されるとおりの高密度遺伝子チップで実施される。
ハイブリダイゼーションアッセイ中に形成されるプローブ−標的複合体を好都合に検出するため、ヌクレオチドプローブが検出可能標識にコンジュゲートされる。本発明における使用に好適な検出可能標識には、光化学的、生化学的、分光学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段で検出可能な任意の組成物が含まれる。幅広い種類の適切な検出可能標識が当該技術分野において公知であり、それには、蛍光又は化学発光標識、放射性同位元素標識、酵素又は他のリガンドが含まれる。好ましい実施形態では、ジゴキシゲニン、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼ、アビジン/ビオチン複合体など、蛍光標識又は酵素タグを用いることが所望されるものと思われる。
ハイブリダイゼーション強度の検出又は定量化に用いられる検出方法は、典型的には上記で選択される標識に依存することになる。例えば、放射標識は、写真フィルム又はホスフォイメージャー(phosphoimager)を使用して検出し得る。蛍光マーカーは、放出される光を検出するため光検出器を使用して検出及び定量化し得る。酵素標識は、典型的には酵素に基質を提供し、基質に対する酵素の作用によって産生された反応産物を計測することにより検出される;及び最後に、比色標識は、単純に、着色した標識を可視化することにより検出される。
薬剤により引き起こされる、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列の発現の変化はまた、対応する遺伝子産物を調べることによっても決定し得る。タンパク質レベルの決定には、典型的には、a)生体試料中に含まれるタンパク質を、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質に特異的に結合する薬剤と接触させるステップ;及び(b)そのようにして形成された任意の薬剤:タンパク質複合体を同定するステップが関わる。この実施形態の一態様において、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質に特異的に結合する薬剤は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体である。
反応は、薬剤と生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質との間で複合体が形成されることを可能にする条件下で、被験試料から得られた生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質の試料に薬剤を接触させることにより実施される。複合体の形成は、当該技術分野の標準的手順に従い直接的又は間接的に検出することができる。直接的な検出方法では、薬剤に検出可能標識が提供され、複合体から未反応薬剤が除去され得る;従って残る標識の量が、形成された複合体の量を示す。かかる方法には、ストリンジェントな洗浄条件の中にあっても薬剤に結合したまま留まる標識を選択することが好ましい。標識は結合反応を妨げないことが好ましい。代替として、間接的な検出手順では、化学的に、或いは酵素的に導入された標識を含む薬剤を使用し得る。望ましい標識は、概して得られる薬剤:ポリペプチド複合体の結合又は安定性を妨げない。しかしながら、標識は典型的には、有効な結合、ひいては検出可能なシグナルの生成のため抗体に接触可能であるように設計される。
タンパク質レベルの検出に好適な幅広い種類の標識が当該技術分野において公知である。非限定的な例としては、放射性同位元素、酵素、コロイド金属、蛍光化合物、生物発光化合物、及び化学発光化合物が挙げられる。
結合反応中に形成された薬剤:ポリペプチド複合体の量は、標準的な定量アッセイにより定量化することができる。上記に説明したとおり、薬剤:ポリペプチド複合体の形成は、結合部位に残る標識の量によって直接計測することができる。代替例では、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質が、特定の薬剤上の結合部位に関して標識類似体と競合するその能力に関して試験される。この競合アッセイでは、捕捉される標識の量は、被験試料中に存在する生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質配列の量に反比例する。
上記に概説した一般的原理に基づく多くのタンパク質分析技術は、当該技術分野において利用可能である。これには、限定はされないが、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノラジオメトリックアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、インサイチュイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素又は放射性同位元素標識を使用する)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降アッセイ、免疫蛍光アッセイ、及びSDS−PAGEが含まれる。
前述のタンパク質分析の実施には、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質を特異的に認識し又は結合する抗体が好ましい。望ましい場合、特定のタイプの翻訳後改変(例えば、生化学的シグナル伝達経路誘導性改変)を認識する抗体を使用することができる。翻訳後改変としては、限定はされないが、グリコシル化、脂質化、アセチル化、及びリン酸化が挙げられる。これらの抗体は、商業的な供給業者から購入してもよい。例えば、チロシンリン酸化タンパク質を特異的に認識する抗ホスホチロシン抗体が、Invitrogen及びPerkin Elmerを含む多くの供給業者から入手可能である。抗ホスホチロシン抗体は、ERストレスに応答してそのチロシン残基で別様にリン酸化されるタンパク質の検出において特に有用である。かかるタンパク質としては、限定はされないが、真核生物翻訳開始因子2α(eIF−2α)が挙げられる。或いは、これらの抗体は、従来のポリクローナル又はモノクローナル抗体技術を用いて、所望の翻訳後改変を呈する標的タンパク質で宿主動物又は抗体産生細胞を免疫することにより作成し得る。
主題の方法を実施するにおいて、異なる体組織、異なる細胞型、及び/又は異なる細胞内構造における生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質の発現パターンを識別することが望ましいこともある。こうした試験は、特定の組織、細胞型、又は細胞内構造で優先的に発現するタンパク質マーカーと結合する能力を有する組織特異的、細胞特異的又は細胞内構造特異抗体を使用して実施することができる。
生化学的シグナル伝達経路に関連する遺伝子の発現の変化はまた、対照細胞と比べた遺伝子産物の活性の変化を調べることにより決定し得る。薬剤により引き起こされる、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質の活性の変化に関するアッセイは、調べている生物学的活性及び/又はシグナル伝達経路に依存し得る。例えば、タンパク質がキナーゼである場合、下流の1つ又は複数の基質をリン酸化するその能力の変化を当該技術分野において公知の種々のアッセイにより決定することができる。代表的なアッセイとしては、限定はされないが、リン酸化タンパク質を認識する抗ホスホチロシン抗体などの抗体による免疫ブロット及び免疫沈降が挙げられる。加えて、キナーゼ活性は、AlphaScreen(商標)(Perkin Elmerから入手可能)及びeTag(商標)アッセイ(Chan−Hui,et al.(2003)Clinical Immunology 111:162−174)などのハイスループット化学発光アッセイにより検出することができる。
生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質が細胞内pH条件の変動をもたらすシグナル伝達カスケードの一部である場合、蛍光pH色素などのpH感受性分子をレポーター分子として使用することができる。生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質がイオンチャネルである別の例では、膜電位及び/又は細胞内イオン濃度の変動をモニタすることができる。多くの市販キット及びハイスループット装置が、イオンチャネルの調節因子に関する迅速且つロバストなスクリーニングに特に適している。代表的な機器としては、FLIPR(商標)(Molecular Devices,Inc.)及びVIPR(Aurora Biosciences)が挙げられる。これらの機器は、マイクロプレートの1000個を超えるサンプルウェルで同時に反応を検出し、且つ1秒又は更には1ミリ秒(minisecond)以内にリアルタイムの計測値及び機能データを提供する能力を有する。
本明細書に開示される任意の方法の実施においては、限定なしに、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、ソノポレーション、微粒子銃、リン酸カルシウム媒介性形質移入、カチオン性形質移入、リポソーム形質移入、デンドリマー形質移入、熱ショック形質移入、ヌクレオフェクション形質移入、マグネトフェクション、リポフェクション、インペイルフェクション(impalefection)、光学的トランスフェクション、専売薬剤により増強される核酸取り込み、及びリポソーム、免疫リポソーム、ビロソーム、又は人工ビリオンを介した送達を含めた当該技術分野で公知の1つ以上の方法によって細胞又は胚に好適なベクターを導入することができる。一部の方法において、ベクターはマイクロインジェクションにより胚に導入される。1つ又は複数のベクターが胚の核又は細胞質に微量注入され得る。一部の方法において、1つ又は複数のベクターはヌクレオフェクションにより細胞に導入され得る。
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは、真核細胞にとって内因性又は外因性の任意のポリヌクレオチドであってもよい。例えば、標的ポリヌクレオチドは、真核細胞の核内に存在するポリヌクレオチドであってもよい。標的ポリヌクレオチドは、遺伝子産物(例えばタンパク質)をコードする配列、又は非コード配列(例えば調節ポリヌクレオチド又はジャンクDNA)であってもよい。
標的ポリヌクレオチドの例としては、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列、例えば、生化学的シグナル伝達経路関連遺伝子又はポリヌクレオチドが挙げられる。標的ポリヌクレオチドの例としては、疾患関連遺伝子又はポリヌクレオチドが挙げられる。「疾患関連」遺伝子又はポリヌクレオチドとは、非疾患対照の組織又は細胞と比較して罹患組織に由来する細胞において異常なレベルで又は異常な形態で転写又は翻訳産物を産生している任意の遺伝子又はポリヌクレオチドを指す。それは異常に高いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく;異常に低いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく、ここで発現の変化は疾患の発生及び/又は進行と相関する。疾患関連遺伝子はまた、疾患の原因に直接関与するか又はそれに関与する1つ又は複数の遺伝子との連鎖不平衡がある1つ又は複数の突然変異又は遺伝的変異を有する遺伝子も指す。転写又は翻訳された産物は既知であっても又は未知であってもよく、及び正常レベルであっても又は異常レベルであってもよい。
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは、真核細胞にとって内因性又は外因性の任意のポリヌクレオチドであってもよい。例えば、標的ポリヌクレオチドは、真核細胞の核内に存在するポリヌクレオチドであってもよい。標的ポリヌクレオチドは、遺伝子産物(例えばタンパク質)をコードする配列、又は非コード配列(例えば調節ポリヌクレオチド又はジャンクDNA)であってもよい。理論によって拘束されることを望むものではないが、標的配列はPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)、即ちCRISPR複合体によって認識される短い配列を伴わなければならないと考えられる。PAMの正確な配列及び長さ要件は、用いられるCRISPR酵素に応じて異なるが、PAMは、典型的にはプロトスペーサー(即ち標的配列)に隣接する2〜5塩基対の配列である。PAM配列の例は以下の実施例の節に示され、当業者は、所与のCRISPR酵素と共に使用される更なるPAM配列を同定することができるであろう。更に、PAM相互作用(PI)ドメインをエンジニアリングすることにより、PAM特異性をプログラムし、標的部位認識の忠実度を向上させ、且つCas、例えばCas9ゲノムエンジニアリングプラットフォームの多用途性を増加させることが可能となり得る。Cas9タンパク質などのCasタンパク質は、例えば、Kleinstiver BP et al.「PAM特異性が変化したエンジニアリングされたCRISPR−Cas9ヌクレアーゼ(Engineered CRISPR−Cas9 nucleases with altered PAM specificities)」.Nature.2015 Jul 23;523(7561):481−5.doi:10.1038/nature14592に記載されるとおり、そのPAM特異性が変化するようにエンジニアリングし得る。
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドとしては、両方ともにSYSTEMS METHODS AND COMPOSITIONS FOR SEQUENCE MANIPULATIONと題される、それぞれ2012年12月12日及び2013年1月2日に出願された、それぞれBroad参照番号BI−2011/008/WSGR 代理人整理番号44063−701.101及びBI−2011/008/WSGR 代理人整理番号44063−701.102を有する米国仮特許出願第61/736,527号明細書及び同第61/748,427号明細書、及び2013年12月12日に出願されたDELIVERY,ENGINEERING AND OPTIMIZATION OF SYSTEMS,METHODS AND COMPOSITIONS FOR SEQUENCE MANIPULATION AND THERAPEUTIC APPLICATIONSと題されるPCT出願PCT/US2013/074667号明細書(これらの内容は全て、本明細書において全体として参照により援用される)に挙げられるとおりの幾つもの疾患関連遺伝子及びポリヌクレオチド並びに生化学的シグナル伝達経路関連遺伝子及びポリヌクレオチドが含まれ得る。
標的ポリヌクレオチドの例としては、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列、例えば、生化学的シグナル伝達経路関連遺伝子又はポリヌクレオチドが挙げられる。標的ポリヌクレオチドの例としては、疾患関連遺伝子又はポリヌクレオチドが挙げられる。「疾患関連」遺伝子又はポリヌクレオチドとは、非疾患対照の組織又は細胞と比較して罹患組織に由来する細胞において異常なレベルで又は異常な形態で転写又は翻訳産物を産生している任意の遺伝子又はポリヌクレオチドを指す。それは異常に高いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく;異常に低いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく、ここで発現の変化は疾患の発生及び/又は進行と相関する。疾患関連遺伝子はまた、疾患の原因に直接関与するか又はそれに関与する1つ又は複数の遺伝子との連鎖不平衡がある1つ又は複数の突然変異又は遺伝的変異を有する遺伝子も指す。転写又は翻訳された産物は既知であっても又は未知であってもよく、及び正常レベルであっても又は異常レベルであってもよい。
ゲノムワイドノックアウトスクリーニング
本明細書に記載されるCRISPRタンパク質及び系は、効率的で対費用効果の高い機能性ゲノムスクリーニングの実施に用いることができる。かかるスクリーニングは、ゲノムワイドライブラリベースのCRISPRエフェクタータンパク質を用いることができる。かかるスクリーニング及びライブラリにより、遺伝子の機能、遺伝子が関与する細胞経路、及び遺伝子発現の任意の変化が如何に特定の生物学的過程をもたらし得るかを決定することが可能となり得る。本発明の利点は、CRISPR系がオフターゲット結合及びその結果として生じる副作用を回避することである。これは、標的DNAに対して高度な配列特異性を有するように構成された系を用いて達成される。本発明の好ましい実施形態において、CRISPRエフェクタータンパク質複合体はCpf1エフェクタータンパク質複合体である。
本発明の実施形態において、ゲノムワイドライブラリは、本明細書に記載されるとおりの、真核細胞集団内の複数のゲノム遺伝子座における複数の標的配列を標的化可能なガイド配列を含む複数のCpf1系ガイドRNAを含み得る。細胞集団は胚性幹(ES)細胞集団であってもよい。ゲノム遺伝子座にある標的配列は非コード配列であってもよい。非コード配列は、イントロン、調節配列、スプライス部位、3’UTR、5’UTR、又はポリアデニル化シグナルであり得る。前記標的化により、1つ以上の遺伝子産物の遺伝子機能が変化し得る。標的化は遺伝子機能のノックアウトをもたらし得る。遺伝子産物の標的化は2つ以上のガイドRNAを含み得る。遺伝子産物は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のガイドRNA、好ましくは遺伝子当たり3〜4個によって標的化され得る。オフターゲット改変は、Cpf1エフェクタータンパク質複合体によって作成される付着末端型の二本鎖切断を利用することによるか、又はCRISPR−Cas9系で用いられるものと類似の方法を利用することにより、最小限に抑えることができる(例えば、参照により本明細書に援用される「RNAガイド下Cas9ヌクレアーゼのDNAターゲティング特異性(Off−target modifications may be minimized(See,e.g.,DNA targeting specificity of RNA−guided Cas9 nucleases)」.Hsu,P.,Scott,D.,Weinstein,J.,Ran,FA.,Konermann,S.,Agarwala,V.,Li,Y.,Fine,E.,Wu,X.,Shalem,O.,Cradick,TJ.,Marraffini,LA.,Bao,G.,& Zhang,F.Nat Biotechnol doi:10.1038/nbt.2647(2013)を参照)。約100個以上の配列の標的化であってもよい。約1000個以上の配列の標的化であってもよい。約20,000個以上の配列の標的化であってもよい。ゲノム全体の標的化であってもよい。関連性のある又は望ましい経路に焦点を置いた標的配列のパネルの標的化であってもよい。経路は免疫経路であってもよい。経路は細胞分裂経路であってもよい。
本発明の一態様は、複数のゲノム遺伝子座の複数の標的配列を標的化可能なガイド配列を含み得る複数のCpf1ガイドRNAを含み得るゲノムワイドライブラリを包含し、ここで前記標的化により遺伝子機能のノックアウトが生じる。このライブラリは、生物のゲノム内の一つ一つの遺伝子を標的化するガイドRNAを潜在的に含み得る。
本発明の一部の実施形態において、生物又は対象は真核生物(ヒトを含めた哺乳動物を含む)又は非ヒト真核生物又は非ヒト動物又は非ヒト哺乳動物である。一部の実施形態において、生物又は対象は非ヒト動物であり、節足動物、例えば昆虫であってもよく、又は線虫であってもよい。本発明の一部の方法において、生物又は対象は植物である。本発明の一部の方法において、生物又は対象は哺乳動物又は非ヒト哺乳動物である。非ヒト哺乳動物は、例えばげっ歯類(好ましくはマウス又はラット)、有蹄類、又は霊長類であってもよい。本発明の一部の方法において、生物又は対象は微細藻類を含む藻類であり、又は真菌類である。
遺伝子機能のノックアウトには、I.Cpf1エフェクタータンパク質、及びII.1つ以上のガイドRNAを含むエンジニアリングされた天然に存在しないCpf1エフェクタータンパク質系を含む1つ以上のベクターのベクター系を細胞集団における各細胞に導入するステップ[構成成分I及びIIは系の同じ又は異なるベクター上にあってもよい]、構成成分I及びIIを各細胞に組み込むステップ[ガイド配列は各細胞内のユニークな遺伝子を標的化し、Cpf1エフェクタータンパク質は調節エレメントに作動可能に連結されており、ガイド配列を含むガイドRNAは、転写されると、ユニークな遺伝子のゲノム遺伝子座における標的配列へのCpf1エフェクタータンパク質系の配列特異的結合を導く]、Cpf1エフェクタータンパク質によるゲノム遺伝子座の切断を誘導するステップ、及び細胞集団の各細胞内の複数のユニークな遺伝子における異なるノックアウト突然変異を確認するステップが含まれてもよく、それにより遺伝子ノックアウト細胞ライブラリが生成される。本発明は、細胞集団が真核細胞集団であり、及び好ましい実施形態において、細胞集団が胚性幹(ES)細胞の集団であることを包含する。
1つ以上のベクターはプラスミドベクターであってもよい。ベクターは、Cpf1エフェクタータンパク質、gRNA、及び任意選択で選択マーカーを含む標的細胞への単一のベクターであってもよい。理論によって拘束されないが、単一のベクターでCpf1エフェクタータンパク質及びgRNAを同時に送達可能であることにより、Cpf1エフェクタータンパク質を発現する細胞株を初めに作成する必要なしに、いかなる目的の細胞型にも適用することができる。調節エレメントは誘導性プロモーターであってもよい。誘導性プロモーターはドキシサイクリン誘導性プロモーターであってもよい。本発明の一部の方法において、ガイド配列の発現はT7プロモーターの制御下にあり、T7ポリメラーゼの発現によってドライブされる。種々のノックアウト突然変異の確認は全エクソームシーケンシングによることができる。ノックアウト突然変異は100個以上のユニークな遺伝子において実現し得る。ノックアウト突然変異は1000個以上のユニークな遺伝子において実現し得る。ノックアウト突然変異は20,000個以上のユニークな遺伝子において実現し得る。ノックアウト突然変異はゲノム全体で実現し得る。遺伝子機能のノックアウトは、特定の生理学的経路又は条件において機能する複数のユニークな遺伝子に実現してもよい。経路又は条件は免疫経路又は条件であってもよい。経路又は条件は細胞分裂経路又は条件であってもよい。
本発明はまた、本明細書に記載するゲノムワイドライブラリを含むキットも提供する。本キットは、本発明のライブラリを含むベクター又はプラスミドを含む単一の容器を含み得る。本キットはまた、本発明のライブラリからのガイド配列を含むユニークなCpf1エフェクタータンパク質系ガイドRNAの選択された一部を含むパネルも含むことができ、ここで選択された一部は、特定の生理的条件を示すものである。本発明は、標的化が約100配列以上、約1000配列以上又は約20,000配列以上又はゲノム全体であることを包含する。更に、標的配列のパネルは、免疫経路又は細胞分裂など、関連性のある又は望ましい経路に焦点が置かれ得る。
本発明の更なる態様において、Cpf1エフェクタータンパク質酵素は1つ以上の突然変異を含んでもよく、機能ドメインへの融合を伴う又は伴わない一般的なDNA結合タンパク質として用いられ得る。突然変異は人工的に導入された突然変異か又は機能獲得型若しくは機能喪失型突然変異であってもよい。本明細書に記載のとおり突然変異が特徴付けられている。本発明の一態様において、機能ドメインは転写活性化ドメインであってもよく、これはVP64であり得る。本発明の他の態様において、機能ドメインは転写リプレッサードメインであってもよく、これはKRAB又はSID4Xであり得る。本発明の他の態様は、限定はされないが、転写アクチベーター、リプレッサー、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、ヒストンリモデラー、デメチラーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼ、クリプトクロム、光誘導性/制御性ドメイン又は化学物質誘導性/制御性ドメインを含むドメインに融合した変異Cpf1エフェクタータンパク質酵素に関する。本発明の一部の方法は、標的遺伝子の発現を誘導するステップを含み得る。一実施形態において、真核細胞集団内の複数のゲノム遺伝子座における複数の標的配列を標的化することによる発現の誘導は、機能ドメインの使用による。
Cpf1エフェクタータンパク質複合体を利用する本発明の実施では、CRISPR−Cas9系で用いられる方法が有用であり、以下が参照される。
・「ヒト細胞におけるゲノム規模のCRISPR−Cas9ノックアウトスクリーニング(Genome−Scale CRISPR−Cas9 Knockout Screening in Human Cells)」.Shalem,O.,Sanjana,NE.,Hartenian,E.,Shi,X.,Scott,DA.,Mikkelson,T.,Heckl,D.,Ebert,BL.,Root,DE.,Doench,JG.,Zhang,F.Science Dec 12.(2013).[Epub ahead of print];最終的な改訂版が以下として発表された:Science.2014 Jan 3;343(6166):84−87。
・Shalem et al.は、ゲノムワイド規模で遺伝子機能を探索する新規方法に関する。彼らの研究は、64,751個のユニークなガイド配列で18,080個の遺伝子を標的化するゲノム規模のCRISPR−Cas9ノックアウト(GeCKO)ライブラリを送達することにより、ヒト細胞におけるネガティブ選択及びポジティブ選択の両方のスクリーニングが可能になったことを示した。第一に、この著者らは、GeCKOライブラリを用いて癌及び多能性幹細胞における細胞生存能力に必須の遺伝子を同定することを示した。次に、この著者らはメラノーマモデルにおいて、その欠損がベムラフェニブ(突然変異プロテインキナーゼBRAFを阻害する治療薬)に対する耐性に関わる遺伝子をスクリーニングした。彼らの研究は、最も上位に位置付けられる候補には、既に検証されている遺伝子NF1及びMED12並びに新規ヒットNF2、CUL3、TADA2B、及びTADA1が含まれたことを明らかにした。この著者らは、同じ遺伝子を標的化する独立したガイドRNA間における高度な一貫性及び高いヒット確認率を観察し、従ってCas9によるゲノム規模のスクリーニングの有望さを実証した。
また、米国特許出願公開第20140357530号明細書;及び国際公開第2014093701号パンフレット(本明細書によって参照により本明細書に援用される)も参照される。「研究者がCRISPR−Casゲノム編集ツールの代替となる可能性のあるものを特定する:CRISPR−Cas系の進化に光を当てる新規Cas酵素(Researchers identify potential alternative to CRISPR−Cas genome editing tools:New Cas enzymes shed light on evolution of CRISPR−Cas systems)」と題される2015年10月22日のNIHプレスリリース(参照により援用される)もまた参照される。
機能的変化及びスクリーニング
別の態様において、本発明は、遺伝子の機能的評価及びスクリーニング方法を提供する。機能ドメインを正確に送達するため、遺伝子を活性化若しくは抑制するため又は目的の特定の遺伝子座上のメチル化部位を正確に変化させることによりエピジェネティック状態を変化させるための本発明のCRISPR系の使用は、単細胞又は細胞集団に適用される1つ以上のガイドRNAを伴うか、又は複数のガイドRNA(gRNA)を含むライブラリの投与又は発現を含む、エキソビボ又はインビボで細胞のプール内のゲノムに適用されるライブラリを伴うことができ、及びここでスクリーニングはCpf1エフェクタータンパク質の使用を更に含み、ここでCpf1エフェクタータンパク質を含むCRISPR複合体は、異種機能ドメインを含むように改変される。ある態様において、本発明は、ライブラリの宿主への投与又は宿主におけるインビボ発現を含む、ゲノムのスクリーニング方法を提供する。ある態様において、本発明は、宿主に投与される又は宿主で発現するアクチベーターを更に含む、本明細書に考察されるとおりの方法を提供する。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでアクチベーターはCpf1エフェクタータンパク質に付加される。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでアクチベーターはCpf1エフェクタータンパク質のN末端又はC末端に付加される。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでアクチベーターはgRNAループに付加される。ある態様において、本発明は、宿主に投与される又は宿主で発現するリプレッサーを更に含む、本明細書に考察されるとおりの方法を提供する。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでスクリーニングは、遺伝子活性化、遺伝子阻害、又は遺伝子座における切断に影響を及ぼし、及びそれを検出することを含む。
ある態様において、本発明は、効率的なオンターゲット活性を提供し、且つオフターゲット活性を最小限に抑える。ある態様において、本発明は、Cpf1エフェクタータンパク質による効率的なオンターゲット切断を提供し、且つCpf1エフェクタータンパク質によるオフターゲット切断を最小限に抑える。ある態様において、本発明は、DNA切断のない、遺伝子座におけるCpf1エフェクタータンパク質のガイド特異的結合を提供する。従って、ある態様において、本発明は、標的特異的遺伝子調節を提供する。ある態様において、本発明は、DNA切断のない、遺伝子座におけるCpf1エフェクタータンパク質のガイド特異的結合を提供する。従って、ある態様において、本発明は、単一のCpf1エフェクタータンパク質を使用したある遺伝子座における切断及び別の遺伝子座における遺伝子調節を提供する。ある態様において、本発明は、1つ以上のCpf1エフェクタータンパク質及び/又は酵素を使用した複数の標的の直交性の活性化及び/又は阻害及び/又は切断を提供する。
ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで宿主は真核細胞である。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで宿主は哺乳類細胞である。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで宿主は非ヒト真核生物である。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで非ヒト真核生物は非ヒト哺乳類である。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで非ヒト哺乳類はマウスである。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、この方法は、Cpf1エフェクタータンパク質複合体又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子の送達を含み、ここで前記1つ又は複数の核酸分子は1つ又は複数の調節配列に作動可能に連結され、且つインビボで発現する。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここでインビボ発現は、レンチウイルス、アデノウイルス、又はAAVを介する。ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの方法を提供し、ここで送達は、粒子、ナノ粒子、脂質又は細胞透過性ペプチド(CPP)を介する。
ある態様において、本発明は、細胞の目的のゲノム遺伝子座にある標的配列にハイブリダイズ可能なガイド配列を含むガイドRNA(gRNA)を各々が含む、Cpf1エフェクタータンパク質を含むCRISPR複合体の対を提供し、ここで各gRNAの少なくとも1つのループは、1つ以上のアダプタータンパク質に結合する1つ又は複数の個別のRNA配列の挿入によって改変され、及びここでアダプタータンパク質は1つ以上の機能ドメインと会合し、ここで各Cpf1エフェクタータンパク質複合体の各gRNAは、DNA切断活性を有する機能ドメインを含む。ある態様において、本発明は、本明細書において考察するとおりの対のCpf1エフェクタータンパク質複合体を提供し、ここでDNA切断活性はFok1ヌクレアーゼに起因する。
ある態様において、本発明は、目的のゲノム遺伝子座にある標的配列の切断方法を提供し、この方法は、Cpf1エフェクタータンパク質複合体又はその1つ又は複数の構成成分又はそれをコードする1つ又は複数の核酸分子を細胞に送達することを含み、ここで前記1つ又は複数の核酸分子は1つ又は複数の調節配列に作動可能に連結され、且つインビボで発現する。ある態様において、本発明は、本明細書において考察するとおりの方法を提供し、ここで送達は、レンチウイルス、アデノウイルス、又はAAVを介する。ある態様において、本発明は、本明細書において考察するとおりの方法又は本明細書において考察するとおりの対のCpf1エフェクタータンパク質複合体を提供し、ここで対のうちの第1の複合体の標的配列は二本鎖DNAの第1の鎖上にあり、且つ対のうちの第2の複合体の標的配列は二本鎖DNAの第2の鎖上にある。ある態様において、本発明は、本明細書において考察するとおりの方法又は本明細書において考察するとおりの対のCpf1エフェクタータンパク質複合体を提供し、ここで第1及び第2の複合体の標的配列は互いに近接しているため、DNAが相同依存性修復を促進する形で切断される。ある態様において、本明細書における方法は、細胞に鋳型DNAを導入するステップを更に含むことができる。ある態様において、本明細書における方法又は本明細書における対のCpf1エフェクタータンパク質複合体は、突然変異していないCpf1エフェクター酵素のヌクレアーゼ活性の約5%以下を有するように突然変異しているCpf1エフェクター酵素を各Cpf1エフェクタータンパク質複合体が有することを含み得る。
ある態様において、本発明は、本明細書において考察するとおりのライブラリ、方法又は複合体を提供し、ここでgRNAは、少なくとも1つの非コード機能性ループを有するように改変され、例えば少なくとも1つの非コード機能性ループが抑制性であり;例えば少なくとも1つの非コード機能性ループがAluを含む。
一態様において、本発明は、遺伝子産物の発現を変化させ又は改変する方法を提供する。前記方法は、遺伝子産物をコードするDNA分子を含有し及び発現する細胞に、Cpf1エフェクタータンパク質とDNA分子を標的化するガイドRNAとを含むエンジニアリングされた天然に存在しないCRISPR系を導入するステップを含むことができ、それによってガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的化し、及びCpf1エフェクタータンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子を切断し、それによって遺伝子産物の発現が変化し;及び、ここでCpf1エフェクタータンパク質とガイドRNAとは天然では一緒に存在しない。本発明は、ダイレクトリピート配列に連結されたガイド配列を含むガイドRNAを包含する。本発明は更に、真核細胞での発現にコドン最適化されたCpf1エフェクタータンパク質を包含する。好ましい実施形態において真核細胞は哺乳類細胞であり、より好ましい実施形態において哺乳類細胞はヒト細胞である。本発明の更なる実施形態において、遺伝子産物の発現は減少する。
一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインがCpf1エフェクタータンパク質に会合する。一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインが、例えばKonnerman et al.(Nature 517,583−588,29 January 2015)の改変ガイドと共に使用されるとおり、アダプタータンパク質に会合する。一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインがデッドgRNA(dRNA)に会合する。一部の実施形態において、例えばDahlman et al.,「触媒活性Cas9ヌクレアーゼによる直交性遺伝子制御(Orthogonal gene control with a catalytically active Cas9 nuclease)」(印刷中)によるCRISPR−Cas9系に類似的に記載のとおり、活性Cpf1エフェクタータンパク質を含むdRNA複合体が、ある遺伝子座上で機能ドメインによる遺伝子調節を導く一方、gRNAが別の遺伝子座で活性Cpf1エフェクタータンパク質によるDNA切断を導く。一部の実施形態において、dRNAは、オフターゲット調節と比較して目的の遺伝子座に関する調節の選択性が最大となるように選択される。一部の実施形態において、dRNAは、標的遺伝子調節が最大となり、且つ標的切断が最小限に抑えられるように選択される。
以下の考察の目的上、機能ドメインへの言及は、Cpf1エフェクタータンパク質と会合した機能ドメイン又はアダプタータンパク質と会合した機能ドメインのことであり得る。
本発明の実施では、個別的な1つ又は複数のRNAループ又は個別的な1つ又は複数の配列に結合することのできるアダプタータンパク質をリクルートし得る個別的な1つ又は複数のRNAループ又は個別的な(disctinct)1つ又は複数の配列の挿入により、Cpf1タンパク質と衝突することなく、gRNAのループを伸長させてもよい。アダプタータンパク質には、限定はされないが、バクテリオファージコートタンパク質の多様性の範囲内にある直交性のRNA結合タンパク質/アプタマーの組み合わせが含まれ得る。かかるコートタンパク質のリストには、限定はされないが、以下が含まれる:Qβ、F2、GA、fr、JP501、M12、R17、BZ13、JP34、JP500、KU1、M11、MX1、TW18、VK、SP、FI、ID2、NL95、TW19、AP205、φCb5、φCb8r、φCb12r、φCb23r、7s及びPRR1。これらのアダプタータンパク質又は直交性RNA結合タンパク質は、1つ以上の機能ドメインを含むエフェクタータンパク質又は融合物を更にリクルートし得る。一部の実施形態において、機能ドメインは、トランスポザーゼドメイン、インテグラーゼドメイン、リコンビナーゼドメイン、リゾルバーゼドメイン、インベルターゼドメイン、プロテアーゼドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼドメイン、DNAヒドロキシルメチラーゼドメイン、DNAデメチラーゼドメイン、ヒストンアセチラーゼドメイン、ヒストンデアセチラーゼドメイン、ヌクレアーゼドメイン、リプレッサードメイン、アクチベータードメイン、転写調節タンパク質(又は転写複合体リクルート)ドメイン、細胞取込み活性関連ドメイン、核酸結合ドメイン、抗体提示ドメイン、ヒストン修飾酵素、ヒストン修飾酵素のリクルーター;ヒストン修飾酵素の阻害因子、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンデメチラーゼ、ヒストンキナーゼ、ヒストンホスファターゼ、ヒストンリボシラーゼ、ヒストンデリボシラーゼ、ヒストンユビキチナーゼ、ヒストンデユビキチナーゼ、ヒストンビオチナーゼ及びヒストンテールプロテアーゼからなる群から選択され得る。一部の好ましい実施形態では、機能ドメインは転写活性化ドメイン、例えば、限定なしに、VP64、p65、MyoD1、HSF1、RTA、SET7/9又はヒストンアセチルトランスフェラーゼである。一部の実施形態において、機能ドメインは転写抑制ドメイン、好ましくはKRABである。一部の実施形態において、転写抑制ドメインはSID、又はSIDのコンカテマー(例えばSID4X)である。一部の実施形態において、機能ドメインは後成的に改変されるドメインであり、後成的に改変される酵素が提供される。一部の実施形態において、機能ドメインは活性化ドメインであり、これはP65活性化ドメインであってもよい。
一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインはNLS(核局在化配列)又はNES(核外移行シグナル)である。一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインは転写活性化ドメインであり、VP64、p65、MyoD1、HSF1、RTA、SET7/9及びヒストンアセチルトランスフェラーゼを含む。CRISPR酵素と会合したものに関する活性化(又はアクチベーター)ドメインへの本明細書中の他の言及には、任意の公知の転写活性化ドメイン及び具体的には、VP64、p65、MyoD1、HSF1、RTA、SET7/9又はヒストンアセチルトランスフェラーゼが含まれる。
一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインは転写リプレッサードメインである。一部の実施形態において、転写リプレッサードメインはKRABドメインである。一部の実施形態において、転写リプレッサードメインは、NuEドメイン、NcoRドメイン、SIDドメイン又はSID4Xドメインである。
一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインは、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写解除因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、DNA切断活性、DNA組込み活性又は核酸結合活性を含む1つ以上の活性を有する。
ヒストン修飾ドメインもまた、一部の実施形態において好ましい。例示的ヒストン修飾ドメインは以下で考察する。トランスポザーゼドメイン、HR(相同組換え)機構ドメイン、リコンビナーゼドメイン、及び/又はインテグラーゼドメインもまた、本機能ドメインとして好ましい。一部の実施形態において、DNA組込み活性は、HR機構ドメイン、インテグラーゼドメイン、リコンビナーゼドメイン及び/又はトランスポザーゼドメインを含む。ヒストンアセチルトランスフェラーゼが一部の実施形態において好ましい。
一部の実施形態において、DNA切断活性はヌクレアーゼに起因する。一部の実施形態において、ヌクレアーゼはFok1ヌクレアーゼを含む。「高度に特異的なゲノム編集のための二量体CRISPR RNAガイド下FokIヌクレアーゼ(Dimeric CRISPR RNA−guided FokI nucleases for highly specific genome editing)」,Shengdar Q.Tsai,Nicolas Wyvekens,Cyd Khayter,Jennifer A.Foden,Vishal Thapar,Deepak Reyon,Mathew J.Goodwin,Martin J.Aryee,J.Keith Joung Nature Biotechnology 32(6):569−77(2014)を参照されたく、これは、伸長配列を認識し、且つヒト細胞において内因性遺伝子を高効率で編集することのできる二量体RNAガイド下FokIヌクレアーゼに関する。
一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインは、sgRNA及び標的への結合時に機能ドメインがその帰属機能で機能することが可能な空間的配置に機能ドメインが置かれるようにCpf1エフェクタータンパク質に付加される。
一部の実施形態において、1つ以上の機能ドメインは、Cpf1エフェクタータンパク質がgRNA及び標的に結合すると、機能ドメインがその帰属機能で機能することが可能な空間的配置に機能ドメインが置かれるようにアダプタータンパク質に付加される。
ある態様において、本発明は、本明細書に考察されるとおりの組成物を提供し、ここで1つ以上の機能ドメインは、本明細書で考察するとおりのリンカー、任意選択でGlySerリンカーを介してCpf1エフェクタータンパク質又はアダプタータンパク質に付加される。
内因性転写抑制は、多くの場合に、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)及びデアセチラーゼ(HDAC)などのクロマチン修飾酵素によって媒介される。抑制性ヒストンエフェクタードメインについては公知であり、以下に例示的一覧を提供する。この例示的な表中では、効率的なウイルスパッケージング(例えばAAVによる)を促進するため、小さいサイズのタンパク質及び機能的トランケーションを優先した。しかしながら、一般に、これらのドメインには、HDAC、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)、及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)阻害因子、並びにHDAC及びHMTリクルートタンパク質が含まれ得る。機能ドメインは、一部の実施形態において、HDACエフェクタードメイン、HDACリクルーターエフェクタードメイン、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)エフェクタードメイン、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)リクルーターエフェクタードメイン、又はヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害因子エフェクタードメインであってもよく、又はそれを含み得る。
Figure 0006914274
従って、本発明のリプレッサードメインは、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)阻害因子、並びにHDAC及びHMTリクルートタンパク質から選択され得る。
HDACドメインは、上記の表中にあるもの、即ち:HDAC8、RPD3、MesoLo4、HDAC11、HDT1、SIRT3、HST2、CobB、HST2、SIRT5、Sir2A、又はSIRT6のうちのいずれかであってもよい。
一部の実施形態では、機能ドメインはHDACリクルーターエフェクタードメインであってもよい。好ましい例としては、以下の表中にあるもの、即ち、MeCP2、MBD2b、Sin3a、NcoR、SALL1、RCOR1が挙げられる。本実施例ではNcoRが例示され、好ましいものの、このクラス内の他のものもまた有用となり得ることが想定される。
Figure 0006914274
一部の実施形態では、機能ドメインはメチルトランスフェラーゼ(HMT)エフェクタードメインであってもよい。好ましい例としては、以下の表中にあるもの、即ち、NUE、vSET、EHMT2/G9A、SUV39H1、dim−5、KYP、SUVR4、SET4、SET1、SETD8、及びTgSET8が挙げられる。本実施例ではNUEが例示され、好ましいものの、このクラス内の他のものもまた有用となり得ることが想定される。
Figure 0006914274
一部の実施形態では、機能ドメインはヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)リクルーターエフェクタードメインであってもよい。好ましい例としては、以下の表中にあるもの、即ち、Hp1a、PHF19、及びNIPP1が挙げられる。
Figure 0006914274
一部の実施形態では、機能ドメインはヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害因子エフェクタードメインであってもよい。好ましい例としては、以下の表中に掲載されるSET/TAF−1βが挙げられる。
Figure 0006914274
また、プロモーター又はプロモーター近位エレメントに加え、内因性(調節)制御エレメント(エンハンサー及びサイレンサーなど)を標的化することも好ましい。従って、本発明はまた、プロモーターの標的化に加え、内在性対照エレメント(エンハンサー及びサイレンサーを含む)の標的化にも用いることができる。これらの制御エレメントは、転写開始部位(TSS)の上流及び下流に、TSSから200bpを始端として100kb離れたところまで位置し得る。公知の制御エレメントの標的化を用いて目的の遺伝子を活性化又は抑制し得る。場合によっては、単一の制御エレメントが複数の標的遺伝子の転写に影響を及ぼし得る。従って、単一の制御エレメントの標的化を用いて、複数の遺伝子の転写を同時に制御することができる。
他方で推定制御エレメントの(例えば推定制御エレメントの領域並びにエレメントの周囲200bp〜100kBをタイリングすることによる)標的化は、かかるエレメントの確認手段(目的の遺伝子の転写を計測することによる)又は新規制御エレメントの検出手段(例えば目的の遺伝子のTSSの100kb上流及び下流をタイリングすることによる)として用いることができる。加えて、推定制御エレメントの標的化は、疾患の遺伝的原因を解明する文脈において有用であり得る。疾患表現型に関連する多くの突然変異及び共通SNP変異体が、コード領域外に位置する。本明細書に記載される活性化系又は抑制系のいずれかによるかかる領域の標的化は、その後に、a)一組の推定標的(例えば制御エレメントにごく近接して位置する一組の遺伝子)又はb)例えばRNAseq又はマイクロアレイによる全トランスクリプトーム読取りのいずれかの転写の読取りが続き得る。これにより、疾患表現型に関わると見込まれる候補遺伝子の同定が可能となり得る。かかる候補遺伝子は、新規薬物標的として有用であり得る。
ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)阻害因子が本明細書において言及される。しかしながら、一部の実施形態における代替例は、1つ以上の機能ドメインがアセチルトランスフェラーゼ、好ましくはヒストンアセチルトランスフェラーゼを含むものである。これらはエピゲノミクスの分野において、例えばエピゲノムの探索方法で有用である。エピゲノムの探索方法には、例えばエピゲノム配列の標的化が含まれ得る。エピゲノム配列の標的化には、ガイドがエピゲノム標的配列に向けられることが含まれ得る。エピゲノム標的配列には、一部の実施形態において、プロモーター、サイレンサー又はエンハンサー配列が含まれ得る。
本明細書に記載されるとおりのCpf1エフェクタータンパク質、好ましくはデッドCpf1エフェクタータンパク質、より好ましくはデッドFnCpf1エフェクタータンパク質に連結した機能ドメインを用いることによるエピゲノム配列の標的化は、プロモーター、サイレンサー又はエンハンサーを活性化し又は抑制するために用いることができる。
アセチルトランスフェラーゼの例は公知であり、しかし一部の実施形態ではヒストンアセチルトランスフェラーゼを含み得る。一部の実施形態において、ヒストンアセチルトランスフェラーゼはヒトアセチルトランスフェラーゼp300の触媒コアを含み得る(Gerbasch & Reddy,Nature Biotech 6th April 2015)。
一部の好ましい実施形態では、機能ドメインがデッドCpf1エフェクタータンパク質に連結され、プロモーター又はエンハンサーなどのエピゲノム配列を標的化及び活性化する。かかるプロモーター又はエンハンサーに向けられる1つ以上のガイドもまた提供されて、かかるプロモーター又はエンハンサーへのCRISPR酵素の結合を導き得る。
用語「〜と会合している」は、ここでは機能ドメインとCpf1エフェクタータンパク質又はアダプタータンパク質の会合に関して用いられる。これは、例えばアダプタータンパク質と機能ドメインとの間、又はCpf1エフェクタータンパク質と機能ドメインとの間で、一つの分子がどのように別の分子と「会合」しているかに関して用いられる。かかるタンパク質間相互作用の場合、この会合は、抗体がエピトープを認識する方法における認識の観点で考えられてもよい。或いは、一つのタンパク質が別のタンパク質と、それら2つの融合物を介して会合していてもよく、例えば一つのサブユニットが別のサブユニットに融合していてもよい。融合は典型的には、例えば、各タンパク質又はサブユニットをコードするヌクレオチド配列を併せてスプライシングすることにより、一方のアミノ酸配列を他方のアミノ酸配列に加えることによって起こる。或いは、これは、本質的に、融合タンパク質など、2つの分子間の結合又は直接的な連結と考えられてもよい。いずれにしろ、融合タンパク質は2つの目的のサブユニット間(即ち酵素と機能ドメインとの間又はアダプタータンパク質と機能ドメインとの間)にリンカーを含んでもよい。従って、一部の実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質又はアダプタータンパク質は機能ドメインへの結合によってそれと会合している。他の実施形態において、Cpf1エフェクタータンパク質又はアダプタータンパク質は機能ドメインと、それらの2つが任意選択で中間リンカーを介して一体に融合されているため、会合している。リンカーの例としては、本明細書で考察されるGlySerリンカーが挙げられる。
機能ドメイン又は融合タンパク質の結合は、リンカー、例えば可動性グリシン−セリン(GlyGlyGlySer)若しくは(GGGS)か、又は(Ala(GluAlaAlaAlaLys)Ala)などの強固なα−ヘリックスリンカーを介することができる。本明細書では、タンパク質又はペプチドドメインを分離するため、(GGGGS)などのリンカーが好ましくは使用される。(GGGGS)は、比較的長いリンカー(15アミノ酸)であるため好ましい。グリシン残基は最も可動性が高く、及びセリン残基はリンカーがタンパク質の外側にある可能性を高める。(GGGGS) (GGGGS)又は(GGGGS)12が、好ましくは代替として用いられ得る。他の好ましい代替例は、(GGGGS)、(GGGGS)、(GGGGS)、(GGGGS)、(GGGGS)、(GGGGS)、(GGGGS)10、又は(GGGGS)11である。代替的なリンカーが利用可能であり、しかしCpf1の2つのパートが一緒になり、ひいてはCpf1活性が元に戻る機会を最大限にするには、高度に可動性のリンカーが最も良好に働くと考えられる。一つの代替例は、ヌクレオプラスミンのNLSをリンカーとして使用し得ることである。例えば、Cpf1と任意の機能ドメインとの間にもリンカーを使用することができる。この場合もまた、ここに(GGGGS)リンカー(又はその6、9、又は12リピートバージョン)を使用してもよく、又はCpf1と機能ドメインとの間にヌクレオプラスミンのNLSをリンカーとして使用することができる。
飽和突然変異誘発
本明細書に記載される1つ又は複数のCpf1エフェクタータンパク質系は、例えば、遺伝子発現、薬剤耐性、及び疾患の好転に必要な機能性エレメントの重要な最小限の特徴及び個別的な脆弱性を決定するための、細胞表現型と併せたゲノム遺伝子座における飽和又はディープスキャニング突然変異誘発の実施に用いることができる。飽和又はディープスキャニング突然変異誘発とは、ゲノム遺伝子座内であらゆる又は本質的にあらゆるDNA塩基が切断されることを意味する。Cpf1エフェクタータンパク質ガイドRNAのライブラリが細胞集団に導入される。このライブラリは、各細胞がシングルガイドRNA(gRNA)を受け取るように導入され得る。本明細書に記載されるとおり、ライブラリがウイルスベクターの形質導入によって導入される場合、低い感染多重度(MOI)が用いられる。ライブラリは、ゲノム遺伝子座において(プロトスペーサー隣接モチーフ)(PAM)配列の上流にある全ての配列を標的化するgRNAを含み得る。ライブラリは、ゲノム遺伝子座内の1000塩基対毎にPAM配列の上流に少なくとも100個の非重複ゲノム配列を含み得る。ライブラリは、少なくとも1つの異なるPAM配列の上流の配列を標的化するgRNAを含み得る。1つ又は複数のCpf1エフェクタータンパク質系は2つ以上のCpf1タンパク質を含み得る。異なるPAM配列を認識するオルソログ又はエンジニアリングされたCpf1エフェクタータンパク質を含め、本明細書に記載されるとおりの任意のCpf1エフェクタータンパク質を用いることができる。gRNAに関するオフターゲット部位の頻度は500未満であり得る。オフターゲットスコアを作成して、最も低いオフターゲット部位のgRNAを選択し得る。単一の実験で同じ部位を標的化するgRNAを用いることにより、gRNA標的部位における切断に関連すると決定された任意の表現型を確認し得る。標的部位の検証はまた、本明細書に記載されるとおりの改変Cpf1エフェクタータンパク質、及び目的のゲノム部位を標的化する2つのgRNAを用いることにより行ってもよい。理論によって拘束されないが、標的部位は、検証実験で表現型の変化が観察された場合に真のヒットである。
ゲノム遺伝子座は少なくとも1つの連続ゲノム領域を含み得る。少なくとも1つの連続ゲノム領域とは、ゲノム全体に至るまでを含み得る。少なくとも1つの連続ゲノム領域は、ゲノムの機能性エレメントを含み得る。機能性エレメントは、非コード領域、コード遺伝子、イントロン領域、プロモーター、又はエンハンサーの範囲内にあってもよい。少なくとも1つの連続ゲノム領域は、少なくとも1kb、好ましくは少なくとも50kbのゲノムDNAを含み得る。少なくとも1つの連続ゲノム領域は転写因子結合部位を含み得る。少なくとも1つの連続ゲノム領域はDNアーゼI高感受性領域を含み得る。少なくとも1つの連続ゲノム領域は転写エンハンサー又はリプレッサーエレメントを含み得る。少なくとも1つの連続ゲノム領域は、エピジェネティックシグネチャがエンリッチされた部位を含み得る。少なくとも1つの連続ゲノムDNA領域はエピジェネティックインスレーターを含み得る。少なくとも1つの連続ゲノム領域は、物理的に相互作用する2つ以上の連続ゲノム領域を含み得る。相互作用するゲノム領域は「4C技術」によって決定し得る。4C技術によれば、Zhao et al.((2006)Nat Genet 38,1341−7)及び米国特許第8,642,295号明細書(両方ともに全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるとおり、選択のDNA断片と物理的に相互作用するDNAセグメントに関して偏りのない方法でゲノム全体をスクリーニングすることが可能である。エピジェネティックシグネチャは、ヒストンアセチル化、ヒストンメチル化、ヒストンユビキチン化、ヒストンリン酸化、DNAメチル化、又はそれらの欠如であり得る。
飽和又はディープスキャニング突然変異誘発のために1つ又は複数のCpf1エフェクタータンパク質系を細胞集団で使用することができる。1つ又は複数のCpf1エフェクタータンパク質系は、限定はされないが哺乳類細胞及び植物細胞を含め、真核細胞で使用することができる。細胞集団は原核細胞であってもよい。真核細胞集団は胚性幹(ES)細胞、神経細胞、上皮細胞、免疫細胞、内分泌細胞、筋細胞、赤血球、リンパ球、植物細胞、又は酵母細胞の集団であってもよい。
一態様において、本発明は、表現型の変化に関連する機能性エレメントのスクリーニング方法を提供する。Cpf1エフェクタータンパク質を含むように適合された細胞集団にライブラリを導入し得る。細胞を表現型に基づき少なくとも2つの群に分類し得る。表現型は、遺伝子の発現、細胞成長、又は細胞生存度であってもよい。各群に存在するガイドRNAの相対的表現を決定し、それによって表現型の変化に関連するゲノム部位を、各群に存在するガイドRNAの表現によって決定する。表現型の変化は、目的の遺伝子の発現の変化であってもよい。目的の遺伝子は上方制御され、下方制御され、又はノックアウトされ得る。細胞は高発現群と低発現群とに分類され得る。細胞集団は、表現型の決定に用いられるレポーター構築物を含み得る。レポーター構築物は検出可能なマーカーを含み得る。細胞は、検出可能なマーカーを用いることによって分類し得る。
別の態様において、本発明は、化学的化合物耐性に関連するゲノム部位のスクリーニング方法を提供する。化学的化合物は薬物又は農薬であり得る。Cpf1エフェクタータンパク質を含むように適合された細胞集団にライブラリを導入することができ、ここで集団の各細胞は1つ以下のガイドRNAを含有する;細胞集団を化学的化合物で処理する;及び化学的化合物による処理後、早い時点と比較した遅い時点におけるガイドRNAの表現を決定し、それによって化学的化合物耐性に関連するゲノム部位をガイドRNAのエンリッチメントによって決定する。gRNAの表現はディープシーケンシング方法によって決定してもよい。
Cpf1エフェクタータンパク質複合体を利用する本発明の実施では、CRISPR−Cas9系で用いられる方法が有用であり、「Cas9媒介インサイチュー飽和突然変異誘発によるBCL11Aエンハンサー分析(BCL11A enhancer dissection by Cas9−mediated in situ saturating mutagenesis)」と題される論文が参照される。Canver,M.C.,Smith,E.C.,Sher,F.,Pinello,L.,Sanjana,N.E.,Shalem,O.,Chen,D.D.,Schupp,P.G.,Vinjamur,D.S.,Garcia,S.P.,Luc,S.,Kurita,R.,Nakamura,Y.,Fujiwara,Y.,Maeda,T.,Yuan,G.,Zhang,F.,Orkin,S.H.,& Bauer,D.E.DOI:10.1038/nature15521,オンライン発行 September 16,2015が参照され、この論文は本明細書において参照により援用され、及び以下に簡単に考察する。
・Canver et al.は、胎児ヘモグロビン(HbF)レベルに関連する且つそのマウスオルソログが赤血球BCL11A発現に必要であるエンハンサーとして既に同定されたヒト及びマウスBCL11A赤血球エンハンサーのインサイチュ飽和突然変異誘発を実施するための新規プールCRISPR−Cas9ガイドRNAライブラリについて包含している。この手法から、これらのエンハンサーの重要な最小限の特徴及び個別的な脆弱性が明らかになった。この著者らは、初代ヒト前駆細胞の編集及びマウストランスジェネシスを用いて、HbF再誘導の標的としてのBCL11A赤血球エンハンサーを実証した。この著者らは、治療的ゲノム編集についての情報を与える詳細なエンハンサーマップを作成した。
Cpf1系を用いて細胞又は生物(oganism)を改変する方法
一部の実施形態における本発明は、細胞又は生物を改変する方法を包含する。細胞は原核細胞又は真核細胞であってもよい。細胞は哺乳類細胞であってもよい。哺乳類細胞は、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、げっ歯類又はマウス細胞であってもよい。細胞は、家禽、魚類又はエビなどの非哺乳類真核細胞であってもよい。細胞はまた、植物細胞であってもよい。植物細胞は、キャッサバ、トウモロコシ、モロコシ、コムギ、又はコメなどの作物植物であってもよい。植物細胞はまた、藻類、樹木又は野菜であってもよい。本発明によって細胞に導入される改変は、抗体、デンプン、アルコール又は他の所望の細胞産出物などの生物学的産物の産生向上のため細胞及び細胞の子孫を変化させるようなものであり得る。本発明によって細胞に導入される改変は、産生される生物学的産物を変える変化が細胞及び細胞の子孫に含まれるようなものであり得る。
本系は1つ以上の異なるベクターを含み得る。本発明のある態様において、Casタンパク質は、所望の細胞型、優先的に真核細胞、好ましくは哺乳類細胞又はヒト細胞での発現にコドンが最適化されている。
パッケージング細胞は、典型的には、宿主細胞への感染能を有するウイルス粒子の形成に使用される。かかる細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、及びレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞又はPA317細胞が挙げられる。遺伝子療法に使用されるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする細胞株を作製することにより作成される。ベクターは、典型的には、パッケージング及び続く宿主中への組込みに必要な最小限のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現させるポリヌクレオチド用の発現カセットに置き換えられる。欠損ウイルス機能は、典型的には、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子療法に使用されるAAVベクターは、典型的には、パッケージング及び宿主ゲノム中への組込みに必要なAAVゲノム由来のITR配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、即ちrep及びcapをコードするもののITR配列を欠くヘルパープラスミドを含有する細胞株中にパッケージングされる。この細胞株もまた、ヘルパーとしてアデノウイルスに感染させ得る。ヘルパーウイルスはAAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドはITR配列がないため、大きい量でパッケージングされることはない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも高い感受性を有する熱処理によって低減することができる。
送達
本発明は、少なくとも1つのナノ粒子複合体によって送達されるCRISPR複合体の少なくとも1つの構成成分、例えばRNAに関する。一部の態様において、本発明は、1つ以上のポリヌクレオチド、例えば、又は本明細書に記載されるとおりの1つ以上のベクター、その1つ以上の転写物、及び/又はそれから転写されるもの又はタンパク質を、宿主細胞に送達するステップを含む方法を提供する。一部の態様において、本発明は、かかる方法によって作製される細胞、及びかかる細胞を含むか、又はそれから作製される動物を更に提供する。一部の実施形態では、ガイド配列と組み合わせた(及び任意選択でそれと複合体を形成した)CRISPR酵素が細胞に送達される。哺乳類細胞又は標的組織における核酸の導入には、従来のウイルスベース及び非ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いることができる。かかる方法を用いて、CRISPR系の構成成分をコードする核酸を培養下の細胞に、又は宿主生物中の細胞に投与することができる。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、RNA(例えば本明細書に記載されるベクターの転写物)、ネイキッド核酸、及び送達ビヒクルと複合体を形成した核酸、例えばリポソームが含まれる。ウイルスベクター送達系にはDNA及びRNAウイルスが含まれ、これは細胞への送達後にエピソームゲノム又は組込みゲノムのいずれかを有する。遺伝子療法手順のレビューに関しては、Anderson,Science 256:808−813(1992);Nabel & Felgner,TIBTECH 11:211−217(1993);Mitani & Caskey,TIBTECH 11:162−166(1993);Dillon,TIBTECH 11:167−175(1993);Miller,Nature 357:455−460(1992);Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149−1154(1988);Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36(1995);Kremer & Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31−44(1995);Haddada et al.,in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Boehm(eds)(1995);及びYu et al.,Gene Therapy 1:13−26(1994)を参照のこと。
核酸の非ウイルス送達方法には、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及び薬剤で促進するDNA取込みが含まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号明細書、同第4,946,787号明細書;及び同第4,897,355号明細書に記載され)、及びリポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性及び中性脂質には、Felgner、国際公開第91/17424号パンフレット;国際公開第91/16024号パンフレットのものが含まれる。送達は、細胞に対してであってもよく(例えばインビトロ又はエキソビボ投与)、又は標的組織に対してであってもよい(例えば生体内投与)。
脂質:核酸複合体の調製は、免疫脂質複合体などの標的リポソームを含め、当業者に周知されている(例えば、Crystal,Science 270:404−410(1995);Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291−297(1995);Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382−389(1994);Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647−654(1994);Gao et al.,Gene Therapy 2:710−722(1995);Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817−4820(1992);米国特許第4,186,183号明細書、同第4,217,344号明細書、同第4,235,871号明細書、同第4,261,975号明細書、同第4,485,054号明細書、同第4,501,728号明細書、同第4,774,085号明細書、同第4,837,028号明細書、及び同第4,946,787号明細書を参照)。
RNA又はDNAウイルスベースの系を使用した核酸の送達では、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化してウイルスペイロードを核に輸送する高度に進化したプロセスが利用される。ウイルスベクターは患者に直接投与してもよく(in vivo)、又はin vitroでの細胞の処理に使用してもよく、任意選択でその改変細胞が患者に投与され得る(ex vivo)。従来のウイルスベースの系は、遺伝子導入用にレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴及び単純ヘルペスウイルスベクターを含み得る。レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルス遺伝子導入方法では宿主ゲノムにおける組込みが可能であり、多くの場合に挿入されたトランス遺伝子の長期発現がもたらされる。加えて、多くの異なる細胞型及び標的組織で高い形質導入効率が観察されている。
レトロウイルスの向性は外来性エンベロープタンパク質の取込みによって変えることができ、標的細胞の潜在的標的集団が拡大し得る。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入し、又は感染させることが可能な、且つ典型的には高いウイルス価を生じるレトロウイルスベクターである。従ってレトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存し得る。レトロウイルスベクターは、6〜10kbまでの外来配列のパッケージング能力を有するシス作用性長末端反復配列で構成される。ベクターの複製及びパッケージングには、最小のシス作用性LTRが十分であり、次にはこれを用いて治療遺伝子を標的細胞に組み込むと、永続的なトランス遺伝子発現がもたらされる。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組み合わせをベースとするものが含まれる(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731−2739(1992);Johann et al.,J.Virol.66:1635−1640(1992);Sommnerfelt et al.,Virol.176:58−59(1990);Wilson et al.,J.Virol.63:2374−2378(1989);Miller et al.,J.Virol.65:2220−2224(1991);PCT/US94/05700号明細書を参照)。
別の実施形態において、コーカル(Cocal)ベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子が企図される(例えば、フレッド・ハッチンソン癌研究センター(Fred Hutchinson Cancer Research Center)に譲渡された米国特許出願公開第20120164118号明細書を参照)。コーカルウイルスはベシクロウイルス属(Vesiculovirus)であり、哺乳動物における水疱性口内炎の原因病原体である。コーカルウイルスは、当初はトリニダードでダニから分離されたもので(Jonkers et al.,Am.J.Vet.Res.25:236−242(1964))、トリニダード、ブラジル、及びアルゼンチンで昆虫、ウシ、及びウマから感染が同定されている。哺乳動物に感染するベシクロウイルスの多くは、自然感染した節足動物から分離されており、それがベクター媒介性であることが示唆される。ベシクロウイルスに対する抗体は農村地域に住む人々によく見られ、そこではこのウイルスが地方病性であり、実験室内感染性である;ヒトにおける感染は、通常はインフルエンザ様症状をもたらす。コーカルウイルスエンベロープ糖タンパク質はアミノ酸レベルでVSV−Gインディアナと71.5%の同一性を共有し、ベシクロウイルスのエンベロープ遺伝子の系統発生学的比較では、ベシクロウイルスの中でコーカルウイルスがVSV−Gインディアナ株と血清学的には異なるものの最も近縁であることが示される。Jonkers et al.,Am.J.Vet.Res.25:236−242(1964)及びTravassos da Rosa et al.,Am.J.Tropical Med.& Hygiene 33:999−1006(1984)。コーカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子には、例えば、レトロウイルスのGag、Pol、及び/又は1つ以上のアクセサリータンパク質及びコーカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含み得るレンチウイルス、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、及びイプシロンレトロウイルスベクター粒子が含まれ得る。これらの実施形態の特定の態様の範囲内において、Gag、Pol、及びアクセサリータンパク質はレンチウイルス及び/又はガンマレトロウイルスのものである。本発明は、CRISPR系をコードする外来性核酸分子、例えば、プロモーターと、CRISPR関連(Cas)タンパク質(推定ヌクレアーゼ又はヘリカーゼタンパク質)、例えばCpf1をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含む又はそれから本質的になる第1のカセット、及びプロモーターと、ガイドRNA(gRNA)をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含む又はそれから本質的になる2つ、又はそれ以上の、有利にはベクターのパッケージングサイズ限界に至るまでの、例えば合計で(第1のカセットを含めて)5つのカセット(例えば、各カセットは概略的に、プロモーター−gRNA1−ターミネーター、プロモーター−gRNA2−ターミネーター...プロモーター−gRNA(N)−ターミネーター(式中、Nは、ベクターのパッケージングサイズ限界の上限である挿入可能な数である)と表される)を含む又はそれからなる複数のカセットを含む又はそれから本質的になるAAV、又は2つ以上の個々のrAAVであって、各々がCRISPR系の1つ又は2つ以上のカセットを含み、例えば、第1のrAAVが、プロモーターと、Cas、例えばCas(Cpf1)をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含む又はそれから本質的になる第1のカセットを含み、及び第2のrAAVが、プロモーターと、ガイドRNA(gRNA)をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含む又はそれから本質的になる複数の4つのカセット(例えば、各カセットは概略的に、プロモーター−gRNA1−ターミネーター、プロモーター−gRNA2−ターミネーター...プロモーター−gRNA(N)−ターミネーター(式中、Nは、ベクターのパッケージングサイズ限界の上限である挿入可能な数である)と表される)を含むrAAVを提供する。rAAVはDNAウイルスであるため、AAV又はrAAVに関する本明細書の考察における核酸分子は、有利にはDNAである。プロモーターは、一部の実施形態では、有利にはヒトシナプシンIプロモーター(hSyn)である。核酸を細胞に送達する更なる方法は、当業者に公知である。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20030087817号明細書を参照のこと。
一部の実施形態において、宿主細胞が本明細書に記載の1つ以上のベクターによって一過性に又は非一過性にトランスフェクトされる。一部の実施形態では、細胞は、それが対象において天然に存在するとおりにトランスフェクトされる。一部の実施形態において、トランスフェクトされる細胞は対象から採取される。一部の実施形態において、細胞は、細胞株など、対象から採取された細胞に由来する。組織培養向けの広範な細胞株が、当技術分野において公知である。細胞株の例としては、限定はされないが、C8161、CCRF−CEM、MOLT、mIMCD−3、NHDF、HeLa−S3、Huh1、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPaCell、Panc1、PC−3、TF1、CTLL−2、C1R、Rat6、CV1、RPTE、A10、T24、J82、A375、ARH−77、Calu1、SW480、SW620、SKOV3、SK−UT、CaCo2、P388D1、SEM−K2、WEHI−231、HB56、TIB55、ジャーカット、J45.01、LRMB、Bcl−1、BC−3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK−52E、MRC5、MEF、Hep G2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS−1、COS−6、COS−M6A、BS−C−1サル腎臓上皮、BALB/3T3マウス胚線維芽細胞、3T3スイス、3T3−L1、132−d5ヒト胎児線維芽細胞;10.1マウス線維芽細胞、293−T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A−549、ALC、B16、B35、BCP−1細胞、BEAS−2B、bEnd.3、BHK−21、BR293、BxPC3、C3H−10T1/2、C6/36、Cal−27、CHO、CHO−7、CHO−IR、CHO−K1、CHO−K2、CHO−T、CHO Dhfr−/−、COR−L23、COR−L23/CPR、COR−L23/5010、COR−L23/R23、COS−7、COV−434、CML T1、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK−293、HeLa、Hepa1c1c7、HL−60、HMEC、HT−29、ジャーカット、JY細胞、K562細胞、Ku812、KCL22、KG1、KYO1、LNCap、Ma−Mel1−48、MC−38、MCF−7、MCF−10A、MDA−MB−231、MDA−MB−468、MDA−MB−435、MDCK II、MDCK II、MOR/0.2R、MONO−MAC6、MTD−1A、MyEnd、NCI−H69/CPR、NCI−H69/LX10、NCI−H69/LX20、NCI−H69/LX4、NIH−3T3、NALM−1、NW−145、OPCN/OPCT細胞株、Peer、PNT−1A/PNT2、RenCa、RIN−5F、RMA/RMAS、Saos−2細胞、Sf−9、SkBr3、T2、T−47D、T84、THP1細胞株、U373、U87、U937、VCaP、ベロ細胞、WM39、WT−49、X63、YAC−1、YAR、及びそれらのトランスジェニック変種が挙げられる。細胞株は、当業者に公知の種々の供給元から入手可能である(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)(Manassus,Va.)を参照)。一部の実施形態において、本明細書に記載される1つ以上のベクターによってトランスフェクトされた細胞を使用して、1つ以上のベクター由来配列を含む新規の細胞株が樹立される。一部の実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR系の構成成分によって一過性にトランスフェクトされ(例えば、1つ以上のベクターの一過性のトランスフェクション、又はRNAによるトランスフェクションによる)、且つCRISPR複合体の活性を通して改変された細胞を使用して、改変は含むものの他のあらゆる外因性配列を欠く細胞を含む新規の細胞株が樹立される。一部の実施形態において、本明細書に記載される1つ以上のベクターによって一過性に又は非一過性にトランスフェクトされた細胞、又はかかる細胞から誘導される細胞株が、1つ以上の試験化合物の評価において使用される。
一部の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のベクターを用いて非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物が作製される。一部の実施形態において、トランスジェニック動物は、マウス、ラット、又はウサギなどの哺乳動物である。トランスジェニック動物及び植物の作製方法は当該技術分野において公知であり、一般には、本明細書に記載されるものなど、細胞トランスフェクション方法から始まる。別の実施形態において、針のアレイを備える流体送達装置(例えば、フレッド・ハッチンソン癌研究センター(Fred Hutchinson Cancer Research Center)に譲渡された米国特許出願公開第20110230839号明細書を参照)が、固形組織に対するCRISPR Casの送達に企図され得る。流体を固形組織に送達するための米国特許出願公開第20110230839号明細書の装置は、アレイ状に配置された複数の針と;各々が複数の針のそれぞれ1つと流体連通している複数のリザーバと;複数のリザーバのそれぞれ1つに動作可能に結合され且つリザーバ内の流体圧力を制御するように構成された複数のアクチュエータとを含み得る。特定の実施形態では、複数のアクチュエータの各々が複数のプランジャの1つを含むことができ、複数のプランジャの各々の第1の端部が複数のリザーバのそれぞれ1つに受け入れられ、及び特定の別の実施形態では複数のプランジャのプランジャがそれぞれの第2の端部で一体に動作可能に結合され、同時に押し下げることが可能である。特定の更に別の実施形態は、複数のプランジャの全てを選択的に変更可能な速度で押し下げるように構成されたプランジャ駆動装置を含み得る。他の実施形態では、複数のアクチュエータの各々が、第1の端部と第2の端部とを有する複数の流体送出路の1つを含むことができ、複数の流体送出路の各々の第1の端部が複数のリザーバのそれぞれ1つに結合される。他の実施形態では、この装置は流体圧力源を含むことができ、及び複数のアクチュエータの各々が流体圧力源と複数のリザーバのそれぞれ1つとの間の流体継手を含む。更なる実施形態において、流体圧力源は、圧縮機、真空アキュムレータ、蠕動ポンプ、マスターシリンダー、マイクロ流体ポンプ、及びバルブのうちの少なくとも1つを含み得る。別の実施形態において、複数の針の各々は、その長さに沿って配置された複数のポートを含み得る。
一態様において、本発明は、真核細胞内の標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、核酸ターゲティング複合体を標的ポリヌクレオチドに結合させて前記標的ポリヌクレオチドの切断を生じさせ、それにより標的ポリヌクレオチドを改変するステップを含み、ここで核酸ターゲティング複合体は、前記標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズするガイドRNAと複合体を形成した核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含む。
一態様において、本発明は、真核細胞内のポリヌクレオチドの発現を改変する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、核酸ターゲティング複合体をポリヌクレオチドに結合させて、前記結合により前記ポリヌクレオチドの発現の増加又は減少を生じさせるステップを含み;ここで核酸ターゲティング複合体は、前記ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズするガイドRNAと複合体を形成した核酸ターゲティングエフェクタータンパク質を含む。
CRISPR複合体構成成分は、輸送部分とコンジュゲートし又は会合させることにより送達し得る(例えば、米国特許第8,106,022号明細書;同第8,313,772号明細書に記載される手法を応用する)。核酸送達戦略は、例えば、ガイドRNA、又はCRISPR複合体構成成分をコードするメッセンジャーRNA又はコードDNAの送達の向上に用いられ得る。例えば、RNAに改変RNAヌクレオチドを取り込むことにより、安定性が向上し、免疫刺激が低下し、及び/又は特異性が向上し得る(Deleavey,Glen F.et al.,2012,Chemistry & Biology,Volume 19,Issue 8,937−954;Zalipsky,1995,Advanced Drug Delivery Reviews 16:157−182;Caliceti and Veronese,2003,Advanced Drug Delivery Reviews 55:1261−1277を参照)。疎水性を高め且つ非アニオン性にして、それにより細胞への侵入を改善するためのgRNAの改変に適し得る可逆的電荷中和リン酸トリエステル骨格修飾など、より効率的な送達に向けたgRNAなどの核酸の改変に使用し得る様々な構築物が記載されている(Meade BR et al.,2014,Nature Biotechnology 32,1256−1261)。更なる代替的実施形態において、選択されるRNAモチーフは、細胞トランスフェクションの媒介に有用なものであってよい(Magalhaes M.,et al.,Molecular Therapy(2012);20 3,616−624)。同様に、例えばgRNAにアプタマーを付加することにより、CRISPR複合体構成成分の送達にアプタマーを適合させ得る(Tan W.et al.,2011,Trends in Biotechnology,December 2011,Vol.29,No.12)。
一部の実施形態において、トリアンテナリーN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)とオリゴヌクレオチド構成成分のコンジュゲーションが、送達、例えば、選択の細胞型、例えば肝細胞への送達の向上に用いられ得る(国際公開第2014118272号パンフレット(参照により本明細書に援用される);Nair,JK et al.,2014,Journal of the American Chemical Society 136(49),16958−16961を参照)。これは糖ベースの粒子と見なすことができ、他の粒子送達系及び/又は製剤に関する更なる詳細は本明細書に提供される。従ってGalNAcは、本明細書に記載される他の粒子の意味における粒子と見なすことができ、一般的な使用及び他の考察、例えば前記粒子の送達が、GalNAc粒子にも同様に適用される。例えば溶相コンジュゲーション戦略を用いて、PFP(ペンタフルオロフェニル)エステルとして活性化したトリアンテナリーGalNAcクラスター(分子量約2000)を5’−ヘキシルアミノ修飾オリゴヌクレオチド(5’−HA ASO、分子量約8000Da;Φstergaard et al.,Bioconjugate Chem.,2015,26(8),pp 1451−1455)に付加し得る。同様に、インビボ核酸送達にポリ(アクリレート)ポリマーが記載されている(国際公開第2013158141号パンフレット(参照により本明細書に援用される)を参照)。更なる代替的実施形態において、CRISPRナノ粒子(又はタンパク質複合体)を天然に存在する血清タンパク質と予め混合したものが、送達の向上に用いられ得る(Akinc A et al,2010,Molecular Therapy vol.18 no.7,1357−1364)。
送達エンハンサーを例えば化学的ライブラリをスクリーニングすることによって同定するスクリーニング技法が利用可能である(Gilleron J.et al.,2015,Nucl.Acids Res.43(16):7984−8001)。脂質ナノ粒子などの送達ビヒクルの効率を評価するための手法もまた記載されており、これはCRISPR構成成分に有効な送達ビヒクルを同定するために用いられ得る(Sahay G.et al.,2013,Nature Biotechnology 31,653−658を参照)。
一部の実施形態において、例えばインビボでの機能性を向上させるため、タンパク質の疎水性を変えるペプチドなど、機能性ペプチドをタンパク質に加えることにより、タンパク質CRISPR構成成分の送達を促進し得る。CRISPR構成成分タンパク質も同様に、続く化学反応を促進するように改変し得る。例えば、クリック化学を起こす基を有するアミノ酸がタンパク質に加えられてもよい(Nikic I.et al.,2015,Nature Protocols 10,780−791)。この種の実施形態において、次にはクリック化学基を用いて、安定性のためのポリ(エチレングリコール)、細胞透過性ペプチド、RNAアプタマー、脂質、又は炭水化物、例えばGalNAcなどの多種多様な代替的構造を加え得る。更なる代替例において、CRISPR構成成分タンパク質は、細胞への侵入にタンパク質を適合させるため(Svensen et al.,2012,Trends in Pharmacological Sciences,Vol.33,No.4を参照)、例えばタンパク質に細胞透過性ペプチドを加えることにより改変し得る(Kauffman,W.Berkeley et al.,2015,Trends in Biochemical Sciences,Volume 40,Issue 12,749−764;Koren and Torchilin,2012,Trends in Molecular Medicine,Vol.18,No.7を参照)。更なる代替的実施形態において、患者又は対象は、CRISPR構成成分の後の送達を促進する化合物又は製剤で予め処理されてもよい。
Cpf1エフェクタータンパク質複合体は植物で使用することができる
Cpf1エフェクタータンパク質系(例えば単一の又は多重化した)は、作物ゲノミクスにおける近年の進歩と併せて用いることができる。本明細書に記載される系を使用して、効率的で且つ対費用効果の高い植物遺伝子又はゲノムの探索又は編集又は操作を−例えば、植物遺伝子又はゲノムの迅速な調査及び/又は選択及び/又は探索及び/又は比較及び/又は操作及び/又は形質転換のため、実施することができ;例えば、1つ又は複数の形質又は1つ又は複数の特徴を作出し、同定し、開発し、最適化し、又は1つ又は複数の植物に付与し、又は植物ゲノムを形質転換することができる。従って、植物の生産の向上、新規組み合わせの形質又は特徴を有する新規植物、又は形質が増強された新規植物があり得る。Cpf1エフェクタータンパク質系は、植物に関して、部位特異的組込み(SDI)又は遺伝子編集(GE)又は任意の準逆育種(NRB)又は逆育種(RB)技術において使用することができる。本明細書に記載されるCpf1エフェクタータンパク質系を利用する態様は、植物におけるCRISPR−Cas(例えばCRISPR−Cas9)系の使用と同様であってもよく、アリゾナ大学(University of Arizona)ウェブサイト「CRISPR−PLANT」(http://www.genome.arizona.edu/crispr/)(後援Penn State及びAGI)が挙げられる。本発明の実施形態(emodiments)は、植物におけるゲノム編集で、又はRNAi若しくは同様のゲノム編集技法が既に用いられているところで用いることができる;例えば、Nekrasov,「容易になった植物ゲノム編集:CRISPR/Cas系を使用したモデル及び作物植物における標的突然変異誘発(Plant genome editing made easy:targeted mutagenesis in model and crop plants using the CRISPR/Cas system)」,Plant Methods 2013,9:39(doi:10.1186/1746−4811−9−39);Brooks,「CRISPR/Cas9系を使用した第一世代のトマトにおける効率的遺伝子編集(Efficient gene editing in tomato in the first generation using the CRISPR/Cas9 system)」,Plant Physiology September 2014 pp 114.247577;Shan,「CRISPR−Cas系を使用した作物植物の標的ゲノム改変(Targeted genome modification of crop plants using a CRISPR−Cas system)」,Nature Biotechnology 31,686−688(2013);Feng,「CRISPR/Cas系を使用した植物における効率的なゲノム編集(Efficient genome editing in plants using a CRISPR/Cas system)」,Cell Research(2013)23:1229−1232.doi:10.1038/cr.2013.114;オンライン発行 20 August 2013;Xie,「CRISPR−Cas系を使用した植物におけるRNAガイド下ゲノム編集(RNA−guided genome editing in plants using a CRISPR−Cas system)」,Mol Plant.2013 Nov;6(6):1975−83.doi:10.1093/mp/sst119.Epub 2013 Aug 17;Xu,「コメにおけるアグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介CRISPR−Cas系を使用した遺伝子ターゲティング(Gene targeting using the Agrobacterium tumefaciens−mediated CRISPR−Cas system in rice)」,Rice 2014,7:5(2014)、Zhou et al.,「木本多年生植物ポプラ属(Populus)の外交配における両アレルCRISPR突然変異へのSNPの利用により、4−クマル酸:CoAリガーゼ特異性及び冗長性が明らかになる(Exploiting SNPs for biallelic CRISPR mutations in the outcrossing woody perennial Populus reveals 4−coumarate:CoA ligase specificity and Redundancy)」,New Phytologist(2015)(Forum)1−4(www.newphytologist.comにおいてオンラインでのみ入手可能);Caliando et al,「宿主ゲノムを安定に担持するCRISPRデバイスを使用した標的DNA分解(Targeted DNA degradation using a CRISPR device stably carried in the host genome)」,NATURE COMMUNICATIONS 6:6989,DOI:10.1038/ncomms7989,www.nature.com/naturecommunications DOI:10.1038/ncomms7989;米国特許第6,603,061号明細書−アグロバクテリウム属媒介性植物形質転換方法(Agrobacterium−Mediated Plant Transformation Method);米国特許第7,868,149号明細書−植物ゲノム配列及びその使用(Plant Genome Sequences and Uses Thereof)及び米国特許出願公開第2009/0100536号明細書−農業形質が増強されたトランスジェニック植物(Transgenic Plants with Enhanced Agronomic Traits)(これらの各々の内容及び開示は全て、本明細書において全体として参照により援用される)を参照のこと。本発明の実施では、Morrell et al「作物ゲノミクス:進展と応用(Crop genomics:advances and applications)」,Nat Rev Genet.2011 Dec 29;13(2):85−96の内容及び開示;その各々が、本明細書における実施形態が植物に関してどのように用いられ得るかに関してを含め、参照により本明細書に援用される。従って、本明細書において動物細胞への言及はまた、特に明らかでない限り、適宜修正して植物細胞にも適用し得る;及び、オフターゲット効果が低下した本明細書における酵素及びかかる酵素を利用する系は、本明細書に記載するものを含め、植物適用(applciations)に用いることができる。
Cpf1エフェクタータンパク質複合体は非ヒト生物/動物において使用することができる
ある態様において、本発明は、記載される実施形態のいずれかに係る真核生物宿主細胞を含む非ヒト真核生物;好ましくは多細胞真核生物を提供する。他の態様において、本発明は、記載される実施形態のいずれかに係る真核生物宿主細胞を含む真核生物;好ましくは多細胞真核生物を提供する。これらの態様の一部の実施形態における生物は、動物;例えば哺乳類であってもよい。また、生物は、昆虫などの節足動物であってもよい。生物はまた、植物であってもよい。更に、生物は真菌であってもよい。
本発明はまた、例えば家畜及び生産動物など、他の農業適用にも関し得る。例えば、ブタは、それを特に再生医学における生物医学モデルとして魅力的なものにする多くの特徴を備えている。詳細には、重症複合免疫不全症(SCID)のブタが、再生医学、異種移植(本明細書のいずれかにもまた記載される)、及び腫瘍発生の有用なモデルを提供し得るとともに、ヒトSCID患者に対する治療薬の開発の助けとなり得る。Lee et al.、(Proc Natl Acad Sci U S A.2014 May 20;111(20):7260−5)はレポーター−ガイド下転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)系を利用して、両方の対立遺伝子に影響を及ぼすものを含め、高効率で体細胞に組換え活性化遺伝子(RAG)2の標的改変を作成した。Cpf1エフェクタータンパク質を同様の系に適用し得る。
Lee et al.,(Proc Natl Acad Sci U S A.2014 May 20;111(20):7260−5)の方法は、以下のとおり類似的に本発明に適用し得る。胎児線維芽細胞におけるRAG2の標的改変と、それに続くSCNT及び胚移植によって突然変異ブタを作製する。CRISPR Cas及びレポーターをコードする構築物を胎児由来の線維芽細胞に電気穿孔処理する。48時間後、緑色蛍光タンパク質を発現するトランスフェクト細胞を96ウェルプレートの個々のウェル中に1ウェル当たり推定希釈の単一細胞で保存する。RAG2の標的改変は、任意のCRISPR Cas切断部位に隣接するゲノムDNA断片を増幅し、続いてPCR産物をシーケンシングすることによりスクリーニングする。スクリーニングし、オフサイト突然変異がないことを確認した後、RAG2の標的改変を有している細胞をSCNTに使用する。極体を卵母細胞の隣接細胞質の一部分(恐らく第二分裂中期の中期板を含有する)と共に除去し、及びドナー細胞を卵黄周囲に置く。次に再構成された胚を電気穿孔処理してドナー細胞を卵母細胞と融合させ、次に化学的に活性化させる。活性化した胚を0.5μMスクリプタイド(S7817;Sigma−Aldrich)含有ブタ接合子培地3(PZM3)中で14〜16時間インキュベートする。次に胚を洗浄してスクリプタイドを除去し、胚が代理母ブタの卵管に移されるまでPZM3中で培養する。
本発明はまた、雌ウシなどの他の動物のSNPの改変にも適用可能である。Tan et al.(Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Oct 8;110(41):16526−16531)は、プラスミド、rAAV、及びオリゴヌクレオチド鋳型を使用した転写アクチベーター様(TAL)エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)刺激性及びクラスター化した規則的な間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)/Cas9刺激性相同依存性修復(HDR)を含むように家畜遺伝子編集ツールボックスを展開した。遺伝子特異的gRNA配列が彼らの方法によってChurch lab gRNAベクター(Addgene ID:41824)にクローニングされた(Mali P,et al.(2013)「Cas9によるRNAガイド下ヒトゲノムエンジニアリング(RNA−Guided Human Genome Engineering via Cas9)」.Science 339(6121):823−826)。hCas9プラスミド(Addgene ID:41815)又はRCIScript−hCas9から合成されたmRNAのいずれかのコトランスフェクションによってCas9ヌクレアーゼが提供された。このRCIScript−hCas9は、hCas9プラスミド(hCas9 cDNAを包含する)からRCIScriptプラスミドにXbaI−AgeI断片をサブクローニングすることにより構築された。
Heo et al.(Stem Cells Dev.2015 Feb 1;24(3):393−402.doi:10.1089/scd.2014.0278.Epub 2014 Nov 3)は、ウシ多能性細胞及びクラスター化した規則的な間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)/Cas9ヌクレアーゼを用いたウシゲノムにおける極めて効率的な遺伝子ターゲティングを報告した。第一に、Heo et al.はウシ体細胞線維芽細胞から山中因子の異所性発現並びにGSK3β及びMEK阻害因子(2i)処理によって人工多能性幹細胞(iPSC)を作成した。Heo et al.は、これらのウシiPSCが遺伝子発現及び奇形腫発生可能性の点でナイーブ多能性幹細胞に極めて類似していることを観察した。更に、ウシNANOG遺伝子座に特異的なCRISPR−Cas9ヌクレアーゼが、ウシiPSC及び胚においてウシゲノムの極めて効率的な編集を示した。
Igenity(登録商標)は、屠体組成、屠体品質、母系及び繁殖形質並びに平均1日増体量など、経済的重要性のある経済的形質の形質を実施し及び伝達するための、雌ウシなどの動物のプロファイル解析を提供している。網羅的Igenity(登録商標)プロファイルの解析は、DNAマーカー(ほとんどの場合一塩基変異多型又はSNP)の発見から始まる。Igenity(登録商標)プロファイルの背後にあるマーカーは全て、大学、研究組織、及びUSDAなどの政府機関を含めた研究機関の独立した科学者らによって発見された。次にバリデートされた集団においてIgenity(登録商標)でマーカーが解析される。Igenity(登録商標)は、様々な作製環境及び生物学的タイプを代表する複数のリソース集団を使用し、一般に入手可能でない表現型を収集するため牛肉産業のシードストック、雌ウシ−仔ウシ、フィードロット及び/又はパッキングセグメントからの工業的パートナーと協働することも多い。ウシゲノムデータベースは広く利用可能であり、例えば、NAGRPウシゲノムコーディネーションプログラム(Cattle Genome Coordination Program)(http://www.animalgenome.org/cattle/maps/db.html)を参照のこと。従って、本発明は、ウシSNPの標的化に適用し得る。当業者は、例えば、Tan et al.又はHeo et al.によるとおり、上記のプロトコルをSNPの標的化に利用して、及びそれらをウシSNPに適用し得る。
Qingjian Zou et al.(Journal of Molecular Cell Biology Advance Access published October 12,2015)は、イヌミオスタチン(MSTN)遺伝子(骨格筋量の負の調節因子)の第1のエクソンを標的化することによりイヌにおける筋量の増加を実証した。第一に、MSTNを標的化するsgRNAをCas9ベクターと共にイヌ胚線維芽細胞(CEF)にコトランスフェクトすることを用いてsgRNAの効率が検証された。その後、正常な形態の胚にCas9 mRNAとMSTN sgRNAとの混合物をマイクロインジェクションし、及び接合子を同じ雌イヌの卵管に自家移植することにより、MSTN KOイヌが作成された。ノックアウト仔イヌはその野生型同腹姉妹と比較して大腿上に明らかな筋肉表現型を示した。これはまた、本明細書に提供されるCpf1 CRISPR系を用いて実施することもできる。
家畜−ブタ
家畜におけるウイルス標的には、一部の実施形態において、例えばブタマクロファージ上のブタCD163が含まれ得る。CD163は、PRRSv(アルテリウイルスであるブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス)による感染に関連する(ウイルスの細胞への侵入を介すると考えられている)。PRRSvが特にブタ肺胞マクロファージ(肺に見られる)に感染すると、飼育ブタの生殖障害、体重減少及び高死亡率を含めた被害をもたらす、以前は不治であったブタ症候群(「ミステリーブタ病」又は「青耳病」)が引き起こされる。マクロファージ活性が失われることによる免疫不全に起因して、流行性肺炎、髄膜炎及び耳浮腫などの日和見感染症が見られることが多い。また、抗生物質の使用増加及び金銭的損失に起因して、経済的及び環境的影響も大きい(毎年推定6億6千万ドル)。
Genus Plcと共同でミズーリ大学(University of Missouri)のKristin M Whitworth及びDr Randall Prather et al.(Nature Biotech 3434 オンライン発行 07 December 2015)によって報告されるとおり、CRISPR−Cas9を用いてCD163が標的化されており、編集されたブタの子孫はPRRSvへの曝露時に抵抗性であった。1匹のファウンダー雄及び1匹のファウンダー雌(両方ともにCD163のエクソン7に突然変異を有した)を繁殖させて子孫が作製された。ファウンダー雄は一方の対立遺伝子上のエクソン7に11bpの欠失を有したが、これはフレームシフト突然変異及びドメイン5のアミノ酸45におけるミスセンス翻訳及びアミノ酸64の続く未成熟終止コドンをもたらす。他方の対立遺伝子はエクソン7に2bpの付加及び先行するイントロンに377bpの欠失を有したが、これらはドメイン5の初めの49アミノ酸の発現と、続くアミノ酸85の未成熟終止コードをもたらすと予想された。雌ブタは一方の対立遺伝子に7bpの付加を有し、これにより翻訳時にドメイン5の初めの48アミノ酸が発現し、それにアミノ酸70の未成熟終止コドンが続くと予想された。雌ブタの他方の対立遺伝子は増幅不能であった。選択された子孫はヌル動物(CD163−/−)、即ちCD163ノックアウトであると予想された。
従って、一部の実施形態において、ブタ肺胞マクロファージがCRISPRタンパク質によって標的化され得る。一部の実施形態において、ブタCD163がCRISPRタンパク質によって標的化され得る。一部の実施形態において、ブタCD163は、DSBの誘導によるか、又は上記に記載されるものの1つ以上を含め、例えばエクソン7の欠失若しくは改変を標的化するなど、挿入若しくは欠失によるか、又は遺伝子の他の領域における、例えばエクソン5の欠失又は改変によりノックアウトされ得る。
編集されたブタ及びその子孫、例えばCD163ノックアウトブタもまた想定される。これは、家畜、育種又はモデル化目的(即ちブタモデル)であり得る。遺伝子ノックアウトを含む精液もまた提供される。
CD163は、スカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)スーパーファミリーのメンバーである。インビトロ研究に基づけば、このタンパク質のSRCRドメイン5は、ウイルスゲノムのアンパッケージング及び放出に関与するドメインである。そのため、SRCRスーパーファミリーの他のメンバーもまた、他のウイルスに対する抵抗性を評価するため標的化され得る。PRRSVはまた、哺乳類アルテリウイルス群(これにはマウス乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス、サル出血熱ウイルス及びウマ動脈炎ウイルスもまた含まれる)のメンバーである。アルテリウイルスは、マクロファージ向性及び重症疾患及び持続感染の両方を引き起こす能力を含め、重要な病因特性を共有する。従って、アルテリウイルス、及び詳細にはマウス乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス、サル出血熱ウイルス及びウマ動脈炎ウイルスが、例えばブタCD163又は他の種、及びマウス、サル及びウマモデルにおけるそのホモログを介して標的化されてもよく、及びノックアウトもまた提供される。
実際、この手法は、インフルエンザC型並びにH1N1、H1N2、H2N1、H3N1、H3N2、及びH2N3として知られるインフルエンザA型のサブタイプを含むブタインフルエンザウイルス(SIV)株など、ヒトに伝染し得る他の家畜疾患並びに上述の肺炎、髄膜炎及び浮腫を引き起こすウイルス又は細菌にまで拡張し得る。
RNAガイド下Cpf1エフェクタータンパク質複合体による治療的ターゲティング
明らかなとおり、本系を用いていかなる目的のポリヌクレオチド配列も標的化し得ることが想定される。本発明は、標的細胞をインビボ、エキソビボ又はインビトロで改変するために用いられる、天然に存在しない又はエンジニアリングされた組成物、又は前記組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド、又は前記組成物の構成成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクター若しくは送達系を提供し、及び改変後はCRISPRにより改変された細胞の子孫又は細胞株が変化した表現型を保持するように細胞を変化させる形で行われ得る。改変された細胞及び子孫は、CRISPR系が所望の細胞型にエキソビボ又はインビボ適用された植物又は動物などの多細胞生物の一部であり得る。本CRISPR発明は、療法的治療方法であり得る。療法的治療方法には、遺伝子又はゲノム編集、又は遺伝子療法が含まれ得る。
Cpf1結晶構造の応用
本出願人らの結晶構造は、Cpf1によるRNAガイド下DNAターゲティングの分子機構の理解に向けた重要なステップを提供する。この結晶構造を用いて、標的DNA上のPAM配列のCpf1媒介認識を決定することができる。従って、本発明は、1つ以上のアミノ酸残基を改変すること、及び改変されたCpf1活性を同定することを含むCpf1の改変方法を含む。本方法の詳細な実施形態では、PAM感受性(sensistivity)に影響を及ぼすことを目的として、本明細書に記載されるとおりPAM配列と相互作用すると同定された残基が改変される。或いは、Cpf1結晶構造に基づきcrRNA:DNA二重鎖間のミスマッチ耐性が調査される。本明細書において想定される方法には、合理的エンジニアリング及び/又はランダム突然変異誘発が関わり得る。詳細な実施形態では、同定されたCpf1ドメインのうちの1つ以上をエンジニアリングすることにより、PAM特異性をプログラムし、標的部位認識の忠実度を向上させ、及びCpf1ゲノムエンジニアリングプラットフォームの多用途性を高めることが可能になる。
CRISPRの開発及び使用
本発明は、いずれも本発明の実施に有用な、その成分及び複合体を含めたCRISPR系、並びに、方法、材料、送達媒体、ベクター、粒子、AAVを含めたかかる成分及び複合体の送達、並びに量及び製剤に関することを含めたその作製及び使用の態様に基づき更に例示及び展開することができ、これらに関しては以下が挙げられる:米国特許第8,999,641号明細書、同第8,993,233号明細書、同第8,945,839号明細書、同第8,932,814号明細書、同第8,906,616号明細書、同第8,895,308号明細書、同第8,889,418号明細書、同第8,889,356号明細書、同第8,871,445号明細書、同第8,865,406号明細書、同第8,795,965号明細書、同第8,771,945号明細書及び同第8,697,359号明細書;米国特許出願公開第2014−0310830号明細書(米国特許出願第14/105,031号明細書)、同第2014−0287938 A1号明細書(米国特許出願第14/213,991号明細書)、同第2014−0273234 A1号明細書(米国特許出願第14/293,674号明細書)、同第2014−0273232 A1号明細書(米国特許出願第14/290,575号明細書)、同第2014−0273231号明細書(米国特許出願第14/259,420号明細書)、同第2014−0256046 A1号明細書(米国特許出願第14/226,274号明細書)、同第2014−0248702 A1号明細書(米国特許出願第14/258,458号明細書)、同第2014−0242700 A1号明細書(米国特許出願第14/222,930号明細書)、同第2014−0242699 A1号明細書(米国特許出願第14/183,512号明細書)、同第2014−0242664 A1号明細書(米国特許出願第14/104,990号明細書)、同第2014−0234972 A1号明細書(米国特許出願第14/183,471号明細書)、同第2014−0227787 A1号明細書(米国特許出願第14/256,912号明細書)、同第2014−0189896 A1号明細書(米国特許出願第14/105,035号明細書)、同第2014−0186958号明細書(米国特許出願第14/105,017号明細書)、同第2014−0186919 A1号明細書(米国特許出願第14/104,977号明細書)、同第2014−0186843 A1号明細書(米国特許出願第14/104,900号明細書)、同第2014−0179770 A1号明細書(米国特許出願第14/104,837号明細書)及び同第2014−0179006 A1号明細書(米国特許出願第14/183,486号明細書)、同第2014−0170753号明細書(米国特許出願第14/183,429号明細書);欧州特許第2 784 162 B1号明細書及び同第2 771 468 B1号明細書;欧州特許出願第2 771 468号明細書(EP13818570.7号明細書)、同第2 764 103号明細書(EP13824232.6号明細書)、及び同第2 784 162号明細書(EP14170383.5号明細書);及び国際公開第2014/093661号パンフレット(PCT/US2013/074743号明細書)、同第2014/093694号パンフレット(PCT/US2013/074790号明細書)、同第2014/093595号パンフレット(PCT/US2013/074611号明細書)、同第2014/093718号パンフレット(PCT/US2013/074825号明細書)、同第2014/093709号パンフレット(PCT/US2013/074812号明細書)、同第2014/093622号パンフレット(PCT/US2013/074667号明細書)、同第2014/093635号パンフレット(PCT/US2013/074691号明細書)、同第2014/093655号パンフレット(PCT/US2013/074736号明細書)、同第2014/093712号パンフレット(PCT/US2013/074819号明細書)、同第2014/093701号パンフレット(PCT/US2013/074800号明細書)、同第2014/018423号パンフレット(PCT/US2013/051418号明細書)、同第2014/204723号パンフレット(PCT/US2014/041790号明細書)、同第2014/204724号パンフレット(PCT/US2014/041800号明細書)、同第2014/204725号パンフレット(PCT/US2014/041803号明細書)、同第2014/204726号パンフレット(PCT/US2014/041804号明細書)、同第2014/204727号パンフレット(PCT/US2014/041806号明細書)、同第2014/204728号パンフレット(PCT/US2014/041808号明細書)、同第2014/204729号パンフレット(PCT/US2014/041809号明細書)。また、それぞれ2013年1月30日;2013年3月15日;2013年3月28日;2013年4月20日;2013年5月6日及び2013年5月28日に出願された米国仮特許出願第61/758,468号明細書;同第61/802,174号明細書;同第61/806,375号明細書;同第61/814,263号明細書;同第61/819,803号明細書及び同第61/828,130号明細書も参照される。また、2013年6月17日に出願された米国仮特許出願第61/836,123号明細書も参照される。加えて、各々2013年6月17日に出願された米国仮特許出願第61/835,931号明細書、同第61/835,936号明細書、同第61/836,127号明細書、同第61/836,101号明細書、同第61/836,080号明細書及び同第61/835,973号明細書が参照される。更に、2013年8月5日に出願された米国仮特許出願第61/862,468号明細書及び同第61/862,355号明細書;2013年8月28日に出願された同第61/871,301号明細書;2013年9月25日に出願された同第61/960,777号明細書及び2013年10月28日に出願された同第61/961,980号明細書が参照される。更にまた、各々2014年6月10日(6/10/14)に出願されたPCT特許出願PCT/US2014/041803号明細書、PCT/US2014/041800号明細書、PCT/US2014/041809号明細書、PCT/US2014/041804号明細書及びPCT/US2014/041806号明細書;2014年6月11日に出願されたPCT/US2014/041808号明細書;及び2014年10月28日に出願されたPCT/US2014/62558号明細書、及び各々2013年12月12日に出願された米国仮特許出願第61/915,150号明細書、同第61/915,301号明細書、同第61/915,267号明細書及び同第61/915,260号明細書;2013年1月29日及び2013年2月25日に出願された同第61/757,972号明細書及び同第61/768,959号明細書;2013年6月17日に出願された同第61/835,936号明細書、同第61/836,127号明細書、同第61/836,101号明細書、同第61/836,080号明細書、同第61/835,973号明細書、及び同第61/835,931号明細書;両方ともに2014年6月11日に出願された同第62/010,888号明細書及び同第62/010,879号明細書;各々2014年6月10日に出願された同第62/010,329号明細書及び同第62/010,441号明細書;各々2014年2月12日に出願された同第61/939,228号明細書及び同第61/939,242号明細書;2014年4月15日に出願された同第61/980,012号明細書;2014年8月17日に出願された同第62/038,358号明細書;各々2014年9月25日に出願された同第62/054,490号明細書、同第62/055,484号明細書、同第62/055,460号明細書及び同第62/055,487号明細書;及び2014年10月27日に出願された同第62/069,243号明細書が参照される。また、2014年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/055,484号明細書、同第62/055,460号明細書、及び同第62/055,487号明細書;2014年4月15日に出願された同第61/980,012号明細書;及び2014年2月12日に出願された同第61/939,242号明細書も参照される。特に米国を指定するPCT出願、2014年6月10日に出願されたPCT/US14/41806号明細書が参照される。2014年1月22日に出願された米国仮特許出願第61/930,214号明細書が参照される。各々2013年12月12日に出願された米国仮特許出願第61/915,251号明細書;同第61/915,260号明細書及び同第61/915,267号明細書が参照される。2014年4月15日に出願された米国仮特許出願第61/980,012号明細書が参照される。特に米国を指定するPCT出願、2014年6月10日に出願されたPCT/US14/41806号明細書が参照される。2014年1月22日に出願された米国仮特許出願第61/930,214号明細書が参照される。各々2013年12月12日に出願された米国仮特許出願第61/915,251号明細書;同第61/915,260号明細書及び同第61/915,267号明細書が参照される。
また、米国仮特許出願第62/091,455号明細書、2014年12月12日出願、保護型ガイドRNA(PGRNA)(PROTECTED GUIDE RNAS(PGRNAS));米国仮特許出願第62/096,708号明細書、2014年12月24日、保護型ガイドRNA(PGRNA)(PROTECTED GUIDE RNAS(PGRNAS));米国仮特許出願第62/091,462号明細書、2014年12月12日、CRISPR転写因子用デッドガイド(DEAD GUIDES FOR CRISPR TRANSCRIPTION FACTORS);米国仮特許出願第62/096,324号明細書、2014年12月23日、CRISPR転写因子用デッドガイド(DEAD GUIDES FOR CRISPR TRANSCRIPTION FACTORS);米国仮特許出願第62/091,456号明細書、2014年12月12日、CRISPR−CAS系に対するエスコート下機能化ガイド(ESCORTED AND FUNCTIONALIZED GUIDES FOR CRISPR−CAS SYSTEMS);米国仮特許出願第62/091,461号明細書、2014年12月12日、造血幹細胞(HSC)に関するゲノム編集用のCRISPR−CAS系及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS FOR GENOME EDITING AS TO HEMATOPOETIC STEM CELLS(HSCs));米国仮特許出願第62/094,903号明細書、2014年12月19日、ゲノムワイズなインサートキャプチャシーケンシングによる二本鎖切断及びゲノム再編成の偏りのない同定(UNBIASED IDENTIFICATION OF DOUBLE−STRAND BREAKS AND GENOMIC REARRANGEMENT BY GENOME−WISE INSERT CAPTURE SEQUENCING);米国仮特許出願第62/096,761号明細書、2014年12月24日、配列操作のためのシステムのエンジニアリング、方法並びに最適化酵素及びガイド足場(ENGINEERING OF SYSTEMS,METHODS AND OPTIMIZED ENZYME AND GUIDE SCAFFOLDS FOR SEQUENCE MANIPULATION);米国仮特許出願第62/098,059号明細書、2014年12月30日、RNAターゲティングシステム(RNA−TARGETING SYSTEM);米国仮特許出願第62/096,656号明細書、2014年12月24日、不安定化ドメインを有する又はそれに関連するCRISPR(CRISPR HAVING OR ASSOCIATED WITH DESTABILIZATION DOMAINS);米国仮特許出願第62/096,697号明細書、2014年12月24日、AAVを有する又はそれに関連するCRISPR(CRISPR HAVING OR ASSOCIATED WITH AAV);米国仮特許出願第62/098,158号明細書、2014年12月30日、エンジニアリングされたCRISPR複合体の挿入ターゲティングシステム(ENGINEERED CRISPR COMPLEX INSERTIONAL TARGETING SYSTEMS);米国仮特許出願第62/151,052号明細書、2015年4月22日、細胞外エキソソームレポートのための細胞ターゲティング(CELLULAR TARGETING FOR EXTRACELLULAR EXOSOMAL REPORTING);米国仮特許出願第62/054,490号明細書、2014年9月24日、粒子送達成分を用いた障害及び疾患のターゲティング用CRISPR−CAS系及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS FOR TARGETING DISORDERS AND DISEASES USING PARTICLE DELIVERY COMPONENTS);米国仮特許出願第62/055,484号明細書、2014年9月25日、最適化した機能性CRISPR−CASシステムによる配列操作のためのシステム、方法及び組成物(SYSTEMS,METHODS AND COMPOSITIONS FOR SEQUENCE MANIPULATION WITH OPTIMIZED FUNCTIONAL CRISPR−CAS SYSTEMS);米国仮特許出願第62/087,537号明細書、2014年12月4日、最適化した機能性CRISPR−CASシステムによる配列操作のためのシステム、方法及び組成物(SYSTEMS,METHODS AND COMPOSITIONS FOR SEQUENCE MANIPULATION WITH OPTIMIZED FUNCTIONAL CRISPR−CAS SYSTEMS);米国仮特許出願第62/054,651号明細書、2014年9月24日、インビボでの複数の癌突然変異の競合をモデル化するためのCRISPR−CASシステム及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS FOR MODELING COMPETITION OF MULTIPLE CANCER MUTATIONS IN VIVO);米国仮特許出願第62/067,886号明細書、2014年10月23日、インビボでの複数の癌突然変異の競合をモデル化するためのCRISPR−CASシステム及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS FOR MODELING COMPETITION OF MULTIPLE CANCER MUTATIONS IN VIVO);米国仮特許出願第62/054,675号明細書、2014年9月24日、神経細胞/組織におけるCRISPR−CASシステム及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS IN NEURONAL CELLS/TISSUES);米国仮特許出願第62/054,528号明細書、2014年9月24日、免疫疾患又は障害におけるCRISPR−CAS系及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS IN IMMUNE DISEASES OR DISORDERS);米国仮特許出願第62/055,454号明細書、2014年9月25日、細胞透過性ペプチド(CPP)を用いた障害及び疾患のターゲティング用CRISPR−CAS系及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS FOR TARGETING DISORDERS AND DISEASES USING CELL PENETRATION PEPTIDES(CPP));米国仮特許出願第62/055,460号明細書、2014年9月25日、多機能性CRISPR複合体及び/又は最適化酵素連結型機能性CRISPR複合体(MULTIFUNCTIONAL−CRISPR COMPLEXES AND/OR OPTIMIZED ENZYME LINKED FUNCTIONAL−CRISPR COMPLEXES);米国仮特許出願第62/087,475号明細書、2014年12月4日、最適化した機能性CRISPR−CASシステムによる機能スクリーニング(FUNCTIONAL SCREENING WITH OPTIMIZED FUNCTIONAL CRISPR−CAS SYSTEMS);米国仮特許出願第62/055,487号明細書、2014年9月25日、最適化した機能性CRISPR−CASシステムによる機能スクリーニング(FUNCTIONAL SCREENING WITH OPTIMIZED FUNCTIONAL CRISPR−CAS SYSTEMS);米国仮特許出願第62/087,546号明細書、2014年12月4日、多機能性CRISPR複合体及び/又は最適化酵素連結型機能性CRISPR複合体(MULTIFUNCTIONAL CRISPR COMPLEXES AND/OR OPTIMIZED ENZYME LINKED FUNCTIONAL−CRISPR COMPLEXES);及び米国仮特許出願第62/098,285号明細書、2014年12月30日、腫瘍成長及び転移のCRISPR媒介性インビボモデリング及び遺伝子スクリーニング(CRISPR MEDIATED IN VIVO MODELING AND GENETIC SCREENING OF TUMOR GROWTH AND METASTASIS)も挙げられる。
各々、新規CRISPR酵素及びシステム(NOVEL CRISPR ENZYMES AND SYSTEMS)と題される、2015年6月18日に出願された米国仮特許出願第62/181,739号明細書、2015年7月16日に出願された米国仮特許出願第62/193,507号明細書、2015年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/201,542号明細書、2015年8月16日に出願された米国仮特許出願第62/205,733号明細書、2015年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/232,067号明細書、2015年12月18日に出願された米国特許出願第14/975,085号明細書、及び2016年6月17日に出願されたPCT/US2016/038181号明細書が参照される。新規CRISPR酵素及びシステム(NOVEL CRISPR ENZYMES AND SYSTEMS)と題される2016年4月19日に出願された米国仮特許出願第62/324,834号明細書が参照される。各々、新規CRISPR酵素及びシステム(NOVEL CRISPR ENZYMES AND SYSTEMS)と題される、2016年4月19日に出願された米国仮特許出願第62/324,820号明細書、2016年6月71日に出願された米国仮特許出願第62/351,558号明細書、2016年7月11日に出願された米国仮特許出願第62/360,765号明細書、及び2016年10月19日に出願された米国仮特許出願第62/410,196号明細書が参照される。各々、新規CRISPR酵素及びシステム(NOVEL CRISPR ENZYMES AND SYSTEMS)と題される、2016年4月19日に出願された米国仮特許出願第62/324,777号明細書、2016年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/376,379号明細書、及び2016年10月19日に出願された米国仮特許出願第62/410,240号明細書が参照される。
これらの特許、特許公報、及び出願の各々、並びにそれらの中に又はそれらの審査中に引用される全ての文献(「出願引用文献」)及び出願引用文献において引用又は参照される全ての文献は、それらの中で言及される又はそれらの中にある任意の文献において言及される及び参照によって本明細書に援用される任意の製品に関する任意の指示書、説明書、製品仕様書、及びプロダクトシートと共に、本明細書によって参照により本明細書に援用され、且つ本発明の実施に用いることができる。全ての文献(例えば、これらの特許、特許公報及び出願並びに出願引用文献)は、各個別の文献が参照によって援用されることが具体的且つ個別的に示されたものとみなすのと同程度に参照により本明細書に援用される。
また、CRISPR−Cas系に関する一般情報に関しては、以下を挙げることができる(同様に参照により本明細書に援用される):
・「CRISPR/Cas系を用いた多重ゲノムエンジニアリング(Multiplex genome engineering using CRISPR/Cas systems)」.Cong,L.,Ran,F.A.,Cox,D.,Lin,S.,Barretto,R.,Habib,N.,Hsu,P.D.,Wu,X.,Jiang,W.,Marraffini,L.A.,& Zhang,F.Science Feb 15;339(6121):819−23(2013);
・「CRISPR−Cas系を用いた細菌ゲノムのRNAガイド下編集(RNA−guided editing of bacterial genomes using CRISPR−Cas systems)」.Jiang W.,Bikard D.,Cox D.,Zhang F,Marraffini LA.Nat Biotechnol Mar;31(3):233−9(2013);
・「複数の遺伝子に突然変異を有するマウスのCRISPR/Cas媒介性ゲノムエンジニアリングによるワンステップ生成(One−Step Generation of Mice Carrying Mutations in Multiple Genes by CRISPR/Cas−Mediated Genome Engineering)」.Wang H.,Yang H.,Shivalila CS.,Dawlaty MM.,Cheng AW.,Zhang F.,Jaenisch R.Cell May 9;153(4):910−8(2013);
・「哺乳類内因性転写及び後成状態の光学制御(Optical control of mammalian endogenous transcription and epigenetic states)」.Konermann S,Brigham MD,Trevino AE,Hsu PD,Heidenreich M,Cong L,Platt RJ,Scott DA,Church GM,Zhang F.Nature.Aug 22;500(7463):472−6.doi:10.1038/Nature12466.Epub 2013 Aug 23(2013);
・「ゲノム編集特異性を増強するためのRNAガイド下CRISPR Cas9による二重ニッキング(Double Nicking by RNA−Guided CRISPR Cas9 for Enhanced Genome Editing Specificity)」.Ran,FA.,Hsu,PD.,Lin,CY.,Gootenberg,JS.,Konermann,S.,Trevino,AE.,Scott,DA.,Inoue,A.,Matoba,S.,Zhang,Y.,& Zhang,F.Cell Aug 28.pii:S0092−8674(13)01015−5(2013−A);
・「RNAガイド下Cas9ヌクレアーゼのDNAターゲティング特異性(DNA targeting specificity of RNA−guided Cas9 nucleases)」.Hsu,P.,Scott,D.,Weinstein,J.,Ran,FA.,Konermann,S.,Agarwala,V.,Li,Y.,Fine,E.,Wu,X.,Shalem,O.,Cradick,TJ.,Marraffini,LA.,Bao,G.,& Zhang,F.Nat Biotechnol doi:10.1038/nbt.2647(2013);
・「CRISPR−Cas9系を用いたゲノムエンジニアリング(Genome engineering using the CRISPR−Cas9 system)」.Ran,FA.,Hsu,PD.,Wright,J.,Agarwala,V.,Scott,DA.,Zhang,F.Nature Protocols Nov;8(11):2281−308(2013−B);
・「ヒト細胞におけるゲノム規模のCRISPR−Cas9ノックアウトスクリーニング(Genome−Scale CRISPR−Cas9 Knockout Screening in Human Cells)」.Shalem,O.,Sanjana,NE.,Hartenian,E.,Shi,X.,Scott,DA.,Mikkelson,T.,Heckl,D.,Ebert,BL.,Root,DE.,Doench,JG.,Zhang,F.Science Dec 12.(2013).[Epub ahead of print];
・「ガイドRNAと標的DNAとを有する複合体におけるcas9の結晶構造(Crystal structure of cas9 in complex with guide RNA and target DNA)」.Nishimasu,H.,Ran,FA.,Hsu,PD.,Konermann,S.,Shehata,SI.,Dohmae,N.,Ishitani,R.,Zhang,F.,Nureki,O.Cell Feb 27,156(5):935−49(2014);
・「哺乳類細胞におけるCRISPRエンドヌクレアーゼCas9のゲノムワイドな結合(Genome−wide binding of the CRISPR endonuclease Cas9 in mammalian cells)」.Wu X.,Scott DA.,Kriz AJ.,Chiu AC.,Hsu PD.,Dadon DB.,Cheng AW.,Trevino AE.,Konermann S.,Chen S.,Jaenisch R.,Zhang F.,Sharp PA.Nat Biotechnol.Apr 20.doi:10.1038/nbt.2889(2014);
・「ゲノム編集及び癌モデリングのためのCRISPR−Cas9ノックインマウス(CRISPR−Cas9 Knockin Mice for Genome Editing and Cancer Modeling)」.Platt RJ,Chen S,Zhou Y,Yim MJ,Swiech L,Kempton HR,Dahlman JE,Parnas O,Eisenhaure TM,Jovanovic M,Graham DB,Jhunjhunwala S,Heidenreich M,Xavier RJ,Langer R,Anderson DG,Hacohen N,Regev A,Feng G,Sharp PA,Zhang F.Cell 159(2):440−455 DOI:10.1016/j.cell.2014.09.014(2014);
・「ゲノムエンジニアリングに向けたCRISPR−Cas9の開発及び適用(Development and Applications of CRISPR−Cas9 for Genome Engineering)」,Hsu PD,Lander ES,Zhang F.,Cell.Jun 5;157(6):1262−78(2014)
・「CRISPR/Cas9系を用いたヒト細胞における遺伝子スクリーニング(Genetic screens in human cells using the CRISPR/Cas9 system)」,Wang T,Wei JJ,Sabatini DM,Lander ES.,Science.January 3;343(6166):80−84.doi:10.1126/science.1246981(2014);
・「CRISPR−Cas9媒介性遺伝子不活性化のための高活性sgRNAの合理的設計(Rational design of highly active sgRNAs for CRISPR−Cas9−mediated gene inactivation)」,Doench JG,Hartenian E,Graham DB,Tothova Z,Hegde M,Smith I,Sullender M,Ebert BL,Xavier RJ,Root DE.,(オンライン発行 3 September 2014)Nat Biotechnol.Dec;32(12):1262−7(2014);
・「CRISPR−Cas9を用いた哺乳類脳における遺伝子機能のインビボ探索(In vivo interrogation of gene function in the mammalian brain using CRISPR−Cas9)」,Swiech L,Heidenreich M,Banerjee A,Habib N,Li Y,Trombetta J,Sur M,Zhang F.,(オンライン発行 19 October 2014)Nat Biotechnol.Jan;33(1):102−6(2015);
・「エンジニアリングされたCRISPR−Cas9複合体によるゲノム規模の転写活性化(Genome−scale transcriptional activation by an engineered CRISPR−Cas9 complex)」,Konermann S,Brigham MD,Trevino AE,Joung J,Abudayyeh OO,Barcena C,Hsu PD,Habib N,Gootenberg JS,Nishimasu H,Nureki O,Zhang F.,Nature.Jan 29;517(7536):583−8(2015)
・「誘導性ゲノム編集及び転写調節のためのスプリットCas9アーキテクチャ(A split−Cas9 architecture for inducible genome editing and transcription modulation)」,Zetsche B,Volz SE,Zhang F.,(オンライン発行 02 February 2015)Nat Biotechnol.Feb;33(2):139−42(2015);
・「腫瘍成長及び転移マウスモデルにおけるゲノムワイドなCRISPRスクリーニング(Genome−wide CRISPR Screen in a Mouse Model of Tumor Growth and Metastasis)」,Chen S,Sanjana NE,Zheng K,Shalem O,Lee K,Shi X,Scott DA,Song J,Pan JQ,Weissleder R,Lee H,Zhang F,Sharp PA.Cell 160,1246−1260,March 12,2015(マウスにおける多重スクリーニング)、及び
・「黄色ブドウ球菌Cas9を用いたインビボゲノム編集(In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9)」,Ran FA,Cong L,Yan WX,Scott DA,Gootenberg JS,Kriz AJ,Zetsche B,Shalem O,Wu X,Makarova KS,Koonin EV,Sharp PA,Zhang F.,(オンライン発行 01 April 2015),Nature.Apr 9;520(7546):186−91(2015)
・Shalem et al.,「CRISPR−Cas9を用いたハイスループット機能ゲノミクス(High−throughput functional genomics using CRISPR−Cas9)」,Nature Reviews Genetics 16,299−311(May 2015)
・Xu et al.,「改良CRISPR sgRNA設計の配列決定因子(Sequence determinants of improved CRISPR sgRNA design)」,Genome Research 25,1147−1157(August 2015)
・Parnas et al.,「初代免疫細胞におけるゲノムワイドなCRISPRスクリーニングによる調節ネットワークの分析(A Genome−wide CRISPR Screen in Primary Immune Cells to Dissect Regulatory Networks)」,Cell 162,675−686(July 30,2015)
・Ramanan et al.,「ウイルスDNAのCRISPR/Cas9切断はB型肝炎ウイルスを効率的に抑制する(CRISPR/Cas9 cleavage of viral DNA efficiently suppresses hepatitis B virus)」,Scientific Reports 5:10833.doi:10.1038/srep10833(June 2,2015)
・Nishimasu et al.,「黄色ブドウ球菌Cas9の結晶構造(Crystal Structure of Staphylococcus aureus Cas9)」,Cell 162,1113−1126(Aug.27,2015)
・Zetsche et al.(2015),「Cpf1 is a single RNA−guided endonuclease of a class 2 CRISPR−Cas system」Cell 163,759−771(Oct.22,2015)doi:10.1016/j.cell.2015.09.038.Epub Sep.25,2015
・Shmakov et al.(2015),「Discovery and Functional Characterization of Diverse Class 2 CRISPR−Cas Systems」Molecular Cell 60,385−397(Nov.5,2015)doi:10.1016/j.molcel.2015.10.008.Epub Oct 22,2015
・Yamano et al.,「Crystal structure of Cpf1 in complex with guide RNA and target RNA」Cell 165,949−962(May 5,2016)doi:10.1016/j.cell.2016.04.003.Epub Apr.21,2016
・Gao et al,「Engineered Cpf1 Enzymes with Altered PAM Specificities」bioRxiv 091611;doi:http://dx.doi.org/10.1101/091611 Epub Dec.4,2016
この各々が参照により本明細書に援用され、本発明の実施において考慮されてもよく、及び以下に簡単に考察する:
・Cong et al.は、サーモフィラス菌(Streptococcus thermophilus)Cas9及びまた化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9の両方に基づき、真核細胞で使用されるII型CRISPR/Cas系をエンジニアリングし、Cas9ヌクレアーゼが低分子RNAの指図を受けてヒト及びマウス細胞で正確なDNA切断を誘導し得ることを実証した。この著者らの研究は更に、ニッキング酵素に変換されるCas9を使用して、最小限の変異原活性を有する真核細胞での相同性組換え修復を促進し得ることを示した。加えて、この著者らの研究は、複数のガイド配列を単一のCRISPR配列にコードすることによって哺乳類ゲノム内の内在性ゲノム遺伝子座部位でいくつかを同時に編集することが可能となり得ることを実証し、RNAガイドヌクレアーゼ技術の容易なプログラム可能性及び広範な適用性を実証した。このようにRNAを使用して細胞における配列特異的DNA切断をプログラムすることが可能となり、ゲノムエンジニアリングツールの新しいクラスが定義された。これらの研究は更に、他のCRISPR遺伝子座が哺乳類細胞に移植可能である可能性があり、哺乳類ゲノム切断も媒介し得ることを示した。重要なことに、CRISPR/Cas系のいくつかの側面を更に改良してその効率及び多用途性を高め得ることが想定され得る。
・Jiang et al.は、デュアルRNAと複合体を形成したクラスター化等間隔短鎖回分リピート(CRISPR)関連Cas9エンドヌクレアーゼを使用して、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)及び大腸菌(Escherichia coli)のゲノムに正確な突然変異を導入した。この手法は、標的ゲノム部位におけるデュアルRNA:Cas9誘導切断によって非突然変異細胞を死滅させることに頼ったもので、選択可能マーカー又は対抗選択系の必要性が回避される。この研究は、単一及び複数のヌクレオチド変化が生じるように短鎖CRISPR RNA(crRNA)の配列を変えることによってデュアルRNA:Cas9特異性を再プログラム化すると、鋳型の編集が行われることを報告した。この研究は、2つのcrRNAを同時に使用すると突然変異誘発の多重化が可能であることを示した。更に、この手法を組換えと組み合わせて用いたとき、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)では、記載される手法を用いて回収された細胞のほぼ100%が所望の突然変異を含み、大腸菌(E.coli)では回収された細胞の65%が突然変異を含んだ。
・Wang et al.(2013)はCRISPR/Cas系を用いることにより、胚性幹細胞における逐次的組換え及び/又は及び/又は時間のかかる単一突然変異を有するマウスの交雑による複数の段階で従来作成された複数の遺伝子に突然変異を保有するマウスを一段階で作成した。CRISPR−Cas系は機能的に重複する遺伝子及び上位遺伝子相互作用のインビボ研究を大幅に加速させ得る。
・Konermann et al.(2013)は、CRISPR Cas9酵素及びまた転写活性化因子様エフェクターに基づくDNA結合ドメインの光学的及び化学的調節を可能にする多用途の且つロバストな技術が当該技術分野で必要とされていることに対処した。
・Ran et al.(2013−A)は、Cas9ニッカーゼ突然変異体を対のガイドRNAと組み合わせて標的二本鎖切断を導入するという手法を記載した。これは、微生物CRISPR−Cas系のCas9ヌクレアーゼがガイド配列によって特異的なゲノム遺伝子座に標的化されるが、ガイド配列はDNA標的との幾らかのミスマッチに耐えることができるため、従って望ましくないオフターゲット突然変異誘発を促進し得るという問題に対処する。ゲノム中の個々のニックは高いフィデリティーで修復されるため、二本鎖切断には適切にオフセットしたガイドRNAによる同時のニッキングが必要であり、標的切断のために特異的に認識される塩基の数が大きくなる。この著者らは、対のニッキングを使用して細胞系におけるオフターゲット活性を50〜1,500分の1に減らし、オンターゲット切断効率を犠牲にすることなしにマウス接合体における遺伝子ノックアウトを促進し得ることを実証した。この多用途戦略により、高い特異性が要求される多種多様なゲノム編集適用が可能となる。
・Hsu et al.(2013)は、標的部位の選択を知らせ、且つオフターゲット効果を回避するためのヒト細胞におけるSpCas9ターゲティングの特異性を特徴付けた。この研究は、700個を超えるガイドRNA変異体並びに293T及び293FT細胞の100個を超える予測ゲノムオフターゲット遺伝子座におけるSpCas9誘導インデル突然変異レベルを評価した。この著者ら、SpCas9が、ミスマッチの数、位置及び分布に感受性を示して配列依存的に種々の位置におけるガイドRNAと標的DNAとの間のミスマッチに耐えること。この著者らは更に、SpCas9媒介性切断がDNAメチル化の影響を受けないこと、SpCas9及びgRNAの投与量を滴定してオフターゲット改変を最小限に抑え得ることを示した。加えて、哺乳類ゲノムエンジニアリング適用を促進するため、この著者らは、標的配列の選択及び検証並びにオフターゲット解析をガイドするウェブベースのソフトウェアツールの提供を報告した。
・Ran et al.(2013−B)は、哺乳類細胞における非相同末端結合(NHEJ)又は相同性組換え修復(HDR)を用いたCas9媒介性ゲノム編集用並びに下流機能研究のための改変細胞系作成用の一組のツールを記載した。オフターゲット切断を最小限に抑えるため、この著者らは更に、対のガイドRNAを含むCas9ニッカーゼ突然変異体を使用した二重ニッキング戦略を記載した。この著者らによって提供されるプロトコルから、標的部位の選択、切断効率の評価及びオフターゲット活性の分析に関する指針が実験的に導かれた。この研究は、標的設計から始めて、僅か1〜2週間以内に遺伝子改変を達成し得るとともに、2〜3週間以内に改変クローン細胞系を誘導し得ることを示した。
・Shalem et al.は、ゲノムワイドな規模で遺伝子機能を調べる新しい方法を記載した。この著者らの研究は、64,751個のユニークなガイド配列で18,080個の遺伝子を標的化するゲノム規模のCRISPR−Cas9ノックアウト(GeCKO)ライブラリの送達が、ヒト細胞におけるネガティブ選択及びポジティブ選択の両方のスクリーニングを可能にしたことを示した。第一に、この著者らは、GeCKOライブラリを使用した、癌及び多能性幹細胞における細胞生存にとって不可欠な遺伝子の同定を示した。次に、この著者らは黒色腫モデルにおいて、その欠損が突然変異体プロテインキナーゼBRAFを阻害する治療薬ベムラフェニブに対する耐性に関わる遺伝子をスクリーニングした。この著者らの研究は、最も上位にランク付けされた候補に、以前検証された遺伝子NF1及びMED12並びに新規ヒットNF2、CUL3、TADA2B、及びTADA1が含まれたことを示した。この著者らは、同じ遺伝子を標的化する独立したガイドRNA間における高度な一致及び高率のヒット確認を観察し、従ってCas9によるゲノム規模スクリーニングの有望さを実証した。
・Nishimasu et al.は、2.5Åの分解能でsgRNA及びその標的DNAと複合体形成する化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9の結晶構造を報告した。この構造から、標的認識ローブとヌクレアーゼローブとで構成された、それらの界面にある正電荷の溝にsgRNA:DNAヘテロ二本鎖を受け入れる2ローブ構成が明らかになった。認識ローブはsgRNA及びDNAの結合に決定的に重要であるのに対し、ヌクレアーゼローブはHNH及びRuvCヌクレアーゼドメインを含み、これらのドメインは標的DNAのそれぞれ相補鎖及び非相補鎖の切断に適切な位置にある。ヌクレアーゼローブはまた、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)との相互作用に関与するカルボキシル末端ドメインも含む。この高分解能構造解析及び付随する機能解析により、Cas9によるRNAガイド下DNAターゲティングの分子機構が明らかになることで、ひいては新規の多用途ゲノム編集技術の合理的な設計への道が開かれつつある。
・Wu et al.は、マウス胚性幹細胞(mESC)においてシングルガイドRNA(sgRNA)を負荷した化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来の触媒不活性Cas9(dCas9)のゲノムワイドな結合部位をマッピングした。この著者らは、試験した4つのsgRNAの各々が、多くの場合にsgRNAにおける5ヌクレオチドシード領域及びNGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)によって特徴付けられる数十個ないし数千個のゲノム部位にdCas9を標的化することを示した。クロマチンが接触不可能であることにより、一致するシード配列を含む他の部位に対するdCas9結合が減少し;従ってオフターゲット部位の70%が遺伝子と会合する。この著者らは、触媒活性Cas9を形質移入したmESCにおける295個のdCas9結合部位の標的シーケンシングから、バックグラウンドレベルを上回って突然変異した部位は1つのみ同定されたことを示した。この著者らは、Cas9結合及び切断の2状態モデルを提案しており、このモデルではシードの一致が結合を引き起こすが、切断には標的DNAとの広範な対合が必要である。
・Platt et al.はCre依存性Cas9ノックインマウスを樹立した。この著者らは、ニューロン、免疫細胞、及び内皮細胞においてガイドRNAのアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介性、レンチウイルス媒介性、又は粒子媒介性送達を用いたインビボ並びにエキソビボゲノム編集を実証した。
・Hsu et al.(2014)は、細胞の遺伝子スクリーニングを含めたヨーグルトからゲノム編集に至るまでのCRISPR−Cas9の歴史を広く考察するレビュー論文である。
・Wang et al.(2014)は、ゲノム規模のレンチウイルスシングルガイドRNA(sgRNA)ライブラリを使用するポジティブ選択及びネガティブ選択の両方に好適なプールされた機能喪失型遺伝子スクリーニング手法に関する。
・Doench et al.は、6個の内因性マウス遺伝子及び3個の内因性ヒト遺伝子のパネルの可能な全ての標的部位にわたってタイリングするsgRNAのプールを作成し、その標的遺伝子のヌル対立遺伝子を産生するそれらの能力を抗体対比染色及びフローサイトメトリーによって定量的に評価した。この著者らは、PAMの最適化により活性が向上することを示し、また、sgRNAを設計するためのオンラインツールも提供した。
・Swiech et al.は、AAV媒介性SpCas9ゲノム編集により脳における遺伝子機能の逆遺伝学研究が可能となり得ることを実証している。
・Konermann et al.(2015)は、複数のエフェクタードメイン、例えば、転写アクチベーター、機能及びエピゲノム調節因子をステム又はテトラループなどのガイド上の適切な位置にリンカーを伴い及び伴わず付加する能力を考察している。
・Zetsche et al.は、Cas9酵素が2つにスプリットされることができ、ひいては活性化のためのCas9のアセンブリを制御し得ることを実証している。
・Chen et al.は、マウスにおけるゲノムワイドなインビボCRISPR−Cas9スクリーニングによって肺転移の調節遺伝子が明らかになることを実証することによる多重スクリーニングに関する。
・Ran et al.(2015)はSaCas9及びそのゲノム編集能力に関し、生化学アッセイからは推定できないことを実証している。
・Shalem et al.(2015)は、触媒的に不活性なCas9(dCas9)の融合物を用いて発現を合成的に抑制(CRISPRi)又は活性化(CRISPRa)する方法について記載し、アレイ化及びプール化されたスクリーニングを含めたゲノム規模のスクリーニング、ゲノム遺伝子座を不活性化させるノックアウト手法及び転写活性を調節するストラテジーにCas9を用いる進歩を示している。
・Xu et al.(2015)は、CRISPRベースのスクリーニングにおけるシングルガイドRNA(sgRNA)の効率に寄与するDNA配列特徴を評価した。この著者らは、CRISPR/Cas9ノックアウトの効率及び切断部位におけるヌクレオチド優先度を調査した。この著者らはまた、CRISPRi/aの配列優先度がCRISPR/Cas9ノックアウトのものと実質的に異なることも見出した。
・Parnas et al.(2015)は、ゲノムワイドなプールCRISPR−Cas9ライブラリを樹状細胞(DC)に導入することにより、細菌リポ多糖(LPS)による腫瘍壊死因子(Tnf)の誘導を制御する遺伝子を同定した。Tlr4シグナル伝達の既知の調節因子及びこれまで知られていない候補が同定され、LPSに対するカノニカルな応答への個別的な効果を有する3つの機能モジュールに分類された。
・Ramanan et al(2015)は、感染細胞におけるウイルスエピソームDNA(cccDNA)の切断を実証した。HBVゲノムは感染ヘパトサイトの核に、共有結合閉環状DNA(cccDNA)と呼ばれる3.2kbの二本鎖エピソームDNA種として存在し、cccDNAは、現在の治療法によってはその複製が阻害されないHBVライフサイクルの主要な構成成分である。この著者らは、HBVの高度に保存された領域を特異的に標的化するsgRNAがウイルス複製をロバストに抑制し、cccDNAを枯渇させることを示した。
・Nishimasu et al.(2015)は、5’−TTGAAT−3’PAM及び5’−TTGGGT−3’PAMを含有する、シングルガイドRNA(sgRNA)及びその二本鎖DNA標的との複合体中のSaCas9の結晶構造を報告した。SaCas9とSpCas9の構造比較により、構造的保存及び多様性の両方が明らかとなり、それらの特徴的なPAM特異性及びオルソロガスsgRNA認識が説明された。
・Zetsche et al.(2015)は、推定クラス2 CRISPRエフェクターであるCpf1の特徴付けを報告した。Cpf1はCas9と異なる特徴を有してロバストなDNA干渉を媒介することが実証された。この干渉機構の同定により、CRISPR−Cas系に関する我々の理解が深まり、そのゲノム編集適用が進歩する。
・Shmakov et al.(2015)は、3つの異なるクラス2 CRISPR−Cas系の特徴付けを報告した。同定された系のうちの2つのエフェクター、C2c1及びC2c3は、Cpf1と遠縁のRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含む。第3の系、C2c2は、2つの予想HEPN RNアーゼドメインを有するエフェクターを含む。
・Gao et al.(2016)は、構造誘導型飽和突然変異誘発スクリーニングを用いてCpf1のターゲティング範囲を増加させることを報告した。AsCpf1変異体が、それぞれTYCV/CCCC及びTATV PAMを有する標的部位を切断することのできる突然変異S542R/K607R及びS542R/K548V/N552Rによってエンジニアリングされ、インビトロ及びヒト細胞における活性が増進した。
また、「高度に特異的なゲノム編集のための二量体CRISPR RNAガイド下FokIヌクレアーゼ(Dimeric CRISPR RNA−guided FokI nucleases for highly specific genome editing)」,Shengdar Q.Tsai,Nicolas Wyvekens,Cyd Khayter,Jennifer A.Foden,Vishal Thapar,Deepak Reyon,Mathew J.Goodwin,Martin J.Aryee,J.Keith Joung Nature Biotechnology 32(6):569−77(2014)は、伸長配列を認識する、且つヒト細胞において高効率で内因性遺伝子を編集することのできる二量体RNAガイド下FokIヌクレアーゼに関する。
加えて、sgRNA・Cas9タンパク質含有粒子を調製する方法であって、sgRNA及びCas9タンパク質(及び任意選択でHDR鋳型)を含む混合物を、界面活性剤、リン脂質、生分解性ポリマー、リポタンパク質及びアルコールを含むか又はそれらから本質的になるか又はそれらからなる混合物と混合するステップを含む方法;及びかかる方法からの粒子に関して、参照により本明細書に援用される「粒子送達成分を用いた障害及び疾患のターゲティング用CRISPR−CAS系及び組成物の送達、使用及び治療適用(DELIVERY,USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR−CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS FOR TARGETING DISORDERS AND DISEASES USING PARTICLE DELIVERY COMPONENTS)」と題されるPCT出願PCT/US2014/070057号明細書(国際公開第2015/089419号パンフレット)(2014年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/054,490号明細書;2014年6月10日に出願された同第62/010,441号明細書;及び各々2013年12月12日に出願された同第61/915,118号明細書、同第61/915,215号明細書及び同第61/915,148号明細書の1つ以上又は全てからの優先権を主張する)(「粒子送達PCT」)が挙げられる。例えば、Cas9タンパク質とsgRNAとが、有利には滅菌ヌクレアーゼフリー緩衝液、例えば1×PBS中に、好適な、例えば3:1〜1:3又は2:1〜1:2又は1:1のモル比で、好適な温度、例えば15〜30℃、例えば20〜25℃、例えば室温で、好適な時間、例えば15〜45、例えば30分間にわたり共に混合された。それとは別に、界面活性剤、例えばカチオン性脂質、例えば1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);リン脂質、例えばジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC);生分解性ポリマー、例えばエチレングリコールポリマー又はPEG、及びリポタンパク質、例えば低密度リポタンパク質、例えばコレステロールなどの、又はそれらを含む粒子成分が、アルコール、有利にはC1〜6アルキルアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、例えば100%エタノール中に溶解された。これらの2つの溶液を共に混合すると、Cas9−sgRNA複合体を含有する粒子が形成された。従って、複合体全体を粒子に製剤化する前に、sgRNAをCas9タンパク質と予め複合体化してもよい。製剤は、細胞への核酸の送達を促進することが知られる種々のモル比の種々の成分(例えば1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2−ジテトラデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びコレステロール)を含んで作製されてもよい。例えばDOTAP:DMPC:PEG:コレステロールのモル比はDOTAP100、DMPC0、PEG0、コレステロール0;又はDOTAP90、DMPC0、PEG10、コレステロール0;又はDOTAP90、DMPC0、PEG5、コレステロール5、DOTAP100、DMPC0、PEG0、コレステロール0であってもよい。従って当該出願は、sgRNAとCas9タンパク質と粒子を形成する成分を混合すること;並びにかかる混合からの粒子を包含する。本発明の態様は、粒子;例えば、本発明にあるとおりのsgRNA及び/又はCas9を含む混合物と、例えば粒子送達PCTにあるとおりの、粒子を形成する成分とを混合して粒子を形成することにより、例えば、粒子送達PCTと類似した方法を使用する粒子、及びかかる混合ステップからの粒子(又は、当然ながら、本発明にあるとおりのsgRNA及び/又はCas9が関わる他の粒子)を含み得る。
以下の実施例に本発明を更に説明するが、これらの実施例はあくまでも例示を目的として提供され、いかなる形であれ本発明を限定することは意図されない。
実施例1:結晶構造を得るための実験手順
タンパク質調製:完全長AsCpf1をコードする遺伝子を改変pCold−GSTベクター(TaKaRa)のNdel及びXhol部位間にクローニングした。このタンパク質を20℃で大腸菌(Escherichia coli)Rosetta2(DE3)(Novagen)において発現させて、Ni−NTA Superflow樹脂(QIAGEN)によって精製した。溶出したタンパク質をTEVプロテアーゼと共に4℃で一晩インキュベートしてGSTタグを取り除き、Ni−NTA、Mono S(GE Healthcare)及びHiLoad Superdex 200 16/60(GE Healthcare)カラムで更にクロマトグラフィー精製した。ネイティブタンパク質についても同様のプロトコルを用いてSeMet標識タンパク質を調製した。PCR増幅鋳型を使用してcrRNAをT7ポリメラーゼによってインビトロ転写し、10%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で精製した。標的DNAはSigma−Aldrichから購入した。精製したCpf1タンパク質をcrRNA及びDNAと混合し(モル比1:1.5:2)、次にこの複合体を、10m_Mトリス−HCl、pH8.0、150mM NaCl及び1mM DTTを含有する緩衝液中、Superdex 200 Increaseカラム(GE Healthcare)を使用して精製した。
結晶学:精製したCpf1−crRNA−DNA複合体を20℃でハンギングドロップ蒸気拡散法によって結晶化させた。1μlの複合体溶液(A260nm<:::>15)と1μlのリザーバ溶液(12%PEG3,350、100mMトリス−HCl、pH8.0、200mM酢酸アンモニウム、150mM NaCl及び100mM DSB−256)とを混合することにより結晶が得られた。ネイティブタンパク質と同様の条件下でSeMet標識タンパク質を結晶化させた。SPring−8(兵庫県、日本)において00下ビームラインBL32XU及びBL41XUでX線回折データを収集した。25%エチレングリコールを補足したリザーバ溶液中に結晶を凍結保護処理した。X線回折データはXDS(Kabsch,2010)を用いて処理した。構造は、SAD法により、SeMet標識結晶からの2.8A分解能データを用いて決定した。SHELXD(Sheldrick,2008)及びautoSHARP(delaFortelle and Bricogne,1997)を用いて潜在的な44個のSe原子のうち40個の位置を決定した。autoSHARPを用いて初期位相を計算し、DM(Winn et al.,2011)を用いて2回のNCS平均化によって改善した。このモデルはPHENIX AutoSol(Adams et al.,2002)を用いて自動で構築され、続いてCOOT(Emsley and Cowtan,2004)を用いて手動でモデルを構築し、PHENIX(Adams et al.,2002)を用いて精密化した。未加工の2.4A分解能データを使用して、得られたモデルを更に精密化した。
実施例2:Cpf1の結晶構造
crRNA(24nt+SL)、標的DNA(24nt+10nt)及び非標的DNAのセグメント(10nt、TTTA PAM)と複合体化した突然変異D908Aを含むAsCpf1から、CRISPR−Cpf1複合体結晶構造を得た。
P2:2.6A res(Insドメインはディスオーダー)
P42:3.2A res
アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)Cpf1の結晶構造は、AsCpf1結晶構造付属表に特徴付けられる。
実施例3:crRNA及び標的DNAと複合体化したCpf1の結晶構造
Cpf1は、crRNAによって特異的ゲノム遺伝子座に標的化され得る微生物CRISPR−Cas系由来のRNAガイド下ヌクレアーゼである。本出願人らは、2.4A分解能におけるcrRNA及びその標的DNAと複合体化したAsCpf1の結晶構造を報告する(図1〜図15)。
この例では、本出願人らは、2.4A分解能におけるcrRNA及びその標的DNAと複合体化したAsCpf1の結晶構造を報告する。この高分解能構造により、ガイドRNA、標的DNA、及びCpf1タンパク質を統合する重要な機能上の相互作用が明らかとなり、Cpf1機能の増強並びに新規適用のエンジニアリングへの道が開かれる。
Cpf1−crRNA−DNA三元複合体の全体構造:本出願人らは、24ヌクレオチド(nt)+SL crRNA及び24+10nt標的DNA、10nt非標的DNA(TTTA PAM)と複合体化した完全長AsCpf1の結晶構造を、SeMet標識タンパク質を用いたSAD(単波長異常分散)法によって2.4A分解能で解いた。
図1〜図15に示されるとおり、結晶構造から、Cpf1が2つのローブ、認識(REC)ローブとヌクレアーゼ(NUC)ローブとからなることが明らかになった。AsCpf1アミノ酸は、概して、AsCpf1のうち図に示されるとおりの部分(例えば図15を参照)及び表1に記載されるとおりの部分に割り当てられる。RECローブは、REC1ドメインとREC2ドメインとの2つのドメインに分けることができる。NUCローブは、RuvC(残基884〜939、957〜1065、及び1262〜1307)、NUC(残基1066〜1261)、PAM相互作用(PI)(残基598〜718)ドメイン、及びWED(残基1〜23、526〜597、及び719〜883)からなる。負電荷crRNA−DNAハイブリッド二重鎖は、REC及びNUCローブ間の界面にある正電荷の溝に収まる。NUCローブにおいて、RuvCドメインは3つのスプリットRuvCモチーフ(RuvC I〜III)が集まって形成され、これがPIドメインと界面を接して、crRNAの3’テールと相互作用する正電荷表面を形成する。第2のヌクレアーゼドメインがRuvC II〜IIIモチーフ間にあり、これはタンパク質の残りの部分とほんの僅か接触するに過ぎない。
結晶構造に基づき以下の目的のアミノ酸位置が同定される:
Figure 0006914274
Figure 0006914274
Figure 0006914274
Figure 0006914274
Figure 0006914274
実施例4:結晶構造を得るための実験手順
試料調製。完全長AsCpf1(残基1〜1307)をコードする遺伝子を改変pE−SUMOベクター(LifeSensors)のNdeI及びXhoI部位間にクローニングした。このAsCpf1タンパク質を20℃で大腸菌(Escherichia coli)Rosetta2(DE3)(Novagen)において発現させて、Ni−NTA Superflow樹脂(QIAGEN)及びHiTrap SP HPカラム(GE Healthcare)でクロマトグラフィー精製した。このタンパク質をTEVプロテアーゼと共に4℃で一晩インキュベートしてHis−SUMOタグを取り除き、次にNi−NTAカラムに通過させた。このタンパク質をHiLoad Superdex 200 16/60カラム(GE Healthcare)で更にクロマトグラフィー精製した。セレノメチオニン(SeMet)標識AsCpf1タンパク質を大腸菌(E.coli)B834(DE3)(Novagen)において発現させて、ネイティブタンパク質と同様のプロトコルを用いて精製した。crRNAはGene Designから購入した。標的及び非標的DNA鎖はSigma−Aldrichから購入した。精製したAsCpf1タンパク質をcrRNA、標的DNA鎖、及び非標的DNA鎖(モル比、1:1.5:2.3:3.4)と混合し、次に再構成したAsCpf1−crRNA−標的DNA複合体を、10mMトリス−HCl(pH8.0)、150mM NaCl及び1mM DTTからなる緩衝液中、Superdex 200 Increaseカラム(GE Healthcare)でゲルろ過クロマトグラフィーによって精製した。
結晶学:精製したAsCpf1−crRNA−標的DNA複合体を20℃でハンギングドロップ蒸気拡散法によって結晶化させた。1μlの複合体溶液(A280nm=10)と1μlのリザーバ溶液(8〜10%PEG3,350、100mM酢酸ナトリウム(pH4.5)、及び10〜15%1,6−ヘキサンジオール)とを混合することによって結晶化ドロップを形成し、次に0.5mlのリザーバ溶液に対してインキュベートした。1μlの複合体溶液(A280nm=10)と1μlのリザーバ溶液(27〜30%PEG400、100mM酢酸ナトリウム(pH4.0)、及び200mM硫酸リチウム)とを同様の条件下で混合することにより、SeMet標識した複合体を結晶化させた。ネイティブ結晶は、11%PEG3,350、100mM酢酸ナトリウム(pH4.5)、150mM NaCl、15%1,6−ヘキサンジオール及び30%エチレングリコールを含有する溶液中に凍結保護処理した。Se−Met標識した結晶は、35%PEG400、100mM酢酸ナトリウム(pH4.0)、200mM硫酸リチウム及び150mM NaClを含有する溶液中に凍結保護した。X線回折データを100K下SPring−8においてビームラインBL41XU及びSwiss Light SourceにおいてPXIで収集した。X線回折データはDIALS(Waterman et al.,2013)及びAIMLESS(Evans and Murshudov,2013)を用いて処理した。構造はPHENIX AutoSol(Adams et al.,2010)を用いてSe−SAD法により決定した。構造モデルはBuccaneer(Cowtan,2006)を用いて自動で構築され、続いてCOOT(Emsley and Cowtan,2004)を用いて手動でモデルを構築し、PHENIX(Adams et al.,2010)を用いて構造を精密化した。
Figure 0006914274
AsCpf1−crRNA−標的DNA複合体の全体構造。43nt crRNA、34nt標的DNA鎖、及び5’−TTTN−3’PAMを含有する10nt非標的DNA鎖と複合体化した完全長AsCpf1(残基1〜1307)の2.8Å分解能結晶構造を単波長異常分散法(SAD)法によって解いた(図15及び図22)。この構造から、AsCpf1がαヘリックス認識(REC)ローブとヌクレアーゼ(NUC)ローブとからなる2ローブ構成をとり、crRNA−標的DNAヘテロ二重鎖がこれらの2つのローブ間にある正電荷の中心チャネルに結合していることが明らかになった(図15C、図15D及び図23)。RECローブはREC1及びREC2ドメインからなり、一方でNUCローブはRuvCドメイン並びにA、B及びCと称される3つの追加ドメインからなる(図1C)。
Daliサーチ(Holm and Rosenstrom,2010)により、REC1、REC2、並びにA、B及びCドメインと、利用可能なタンパク質構造のいずれとの間にも構造的類似性がないことが分かった。またPSI−BLAST(Altschul et al.,1997)及びHHPred(Soding et al.,2005)を用いた配列データベース検索によっても、これらのドメインと現在のデータベース中にある任意のタンパク質配列との間に有意な類似性を見付けることはできなかった。従って、Cpf1のこれらのドメインはCpf1タンパク質ファミリー外に検出可能なホモログを有さず、新規の構造フォールドをとるものと思われる(図15C及び図24)。
REC1ドメインは14個のαヘリックスを含み、一方、REC2ドメインは、9個のαヘリックス及び小さい逆平行シートを形成する2個のβストランドを含む(図24A及び図24B)。ドメインA及びBは、Cas9のそれぞれWED(ウェッジ)及びPI(PAM相互作用)ドメインと同様の機能的役割を果たすように見えるが、しかしAsCpf1のこれらの2つのドメインはWED及びPIドメインと構造的に無関係である(以下に記載する)。ドメインCはDNA切断に関与するものと見られる(以下に記載する)。従って、ドメインA、B及びCは、それぞれWED、PI及びNucドメインと称される。WEDドメインはCpf1配列中の3つの別個の領域(WED−I〜III)が集まって形成される(図15A、図24A及び図24C)。WEDドメインは、9本鎖の歪んだ逆平行βシート(β1〜β8及びβ13)と、それに隣接する7個のαヘリックス(α1〜α6及びα9)を含むコアサブドメインと、4個のβストランド(β9〜β12)及び2個のαヘリックス(α7及びα8)を含むサブドメインとに分けることができる(図24A及び図24C)。
Cpf1配列アラインメントを調べると、ヘリックスα7及びα8がCpf1ホモログ間で保存されていないことが明らかになった(図25)。PIドメインは、7個のαヘリックス(α1〜α7)及びβヘアピン(β1及びβ2)を含み、WED−II及びWED−III領域間に挿入され、一方、RECローブはWED−I及びWED−II領域間に挿入される(図15A及び図24A及び図24B)。
RuvCドメインは3つのモチーフ(RuvC−I〜III)を含み、これらはエンドヌクレアーゼ活性中心を形成する。RuvC−I及びRuvC−IIモチーフ間に特徴的なヘリックス(ブリッジヘリックスと称される)が位置して、RECローブとNUCローブとを接続している(以下に記載する)(図15A、図15C及び図15D)。NucドメインはRuvC−II及びRuvC−IIIモチーフ間に挿入される。
crRNA及び標的DNAの構造。crRNAは、24ntのガイドセグメント(G1〜C24)と19ntの足場(A(−19)〜U(−1))(5’−ハンドルと称される)とからなる(図16A及び図16B)。crRNAのヌクレオチドG1〜C20と標的DNA鎖のヌクレオチドdC1〜dG20とが20bp RNA−DNAヘテロ二重鎖を形成する(図16A及び図16B)。crRNAのヌクレオチドA21はフリップアウトして一本鎖コンホメーションをとる。crRNAのヌクレオチドA22〜C24及び標的DNA鎖のヌクレオチドdT21〜dG24に電子密度は観察されなかったことから、結晶構造においてこれらの領域が可動性でディスオーダーであることが示唆される。標的DNA鎖のヌクレオチドdG(−10)〜dT(−1)と非標的DNA鎖のヌクレオチドdC(−10*)〜dA(−1*)とは二重鎖構造(PAM二重鎖と称される)を形成する(図16A及び図16B)。
結晶構造は、crRNA 5’−ハンドルが、そのヌクレオチド配列から予想される単純なステム−ループ構造よりむしろシュードノット構造をとることを明らかにしている(図16A及び図16C)。具体的には、5’−ハンドルのG(−6)〜A(−2)とU(−15)〜C(−11)とが5個のワトソン・クリック塩基対(G(−6):C(−11)〜A(−2):U(−15))を介してステム構造を形成し、一方、5’−ハンドルのC(−9)〜U(−7)がループ構造をとる。U(−1)とU(−16)とが非カノニカルなU・U塩基対を形成する(図16D)。U(−10)とA(−18)とが逆フーグスティーン型A・U塩基対を形成し、シュードノット形成に関与する。U(−10)のO4及び2’−OHがそれぞれA(−19)の2’−OH及びN1と水素結合する(図16E)。加えて、U(−17)のN3及びO4がそれぞれU(−13)のO4及びA(−12)のN6と水素結合し、それによりシュードノット構造を安定化させる(図16F)。重要なことには、crRNAのU(−1)、U(−10)、U(−16)及びA(−18)はCRISPR−Cpf1系間で保存されており、Cpf1 crRNAが同様のシュードノット構造を形成することが示唆される。
crRNAの5’−ハンドルの認識。crRNAの5’−ハンドルはWEDドメインとRuvCドメインとの間の溝に結合する(図16G)。5’−ハンドルのU(−1)・U(−16)塩基対はWEDドメインによって塩基特異的に認識される。U(−1)及びU(−16)はそれぞれHis761及びArg18/Asn759と水素結合し、一方、U(−1)はHis761にスタッキングする(図16H)。これらの相互作用は、この位置にあるU・U塩基対がCpf1媒介DNA切断に決定的に重要であるという前出の知見を説明する。A(−19)のN6がLeu807及びAsn808と水素結合し、一方、A(−18)及びA(−19)の塩基部分がそれぞれIle858及びMet806とスタッキング相互作用を形成する(図16I)。更に、5’−ハンドルのリン酸ジエステル骨格がWED及びRuvCドメインと広範な相互作用網を形成する(図17)。crRNA 5’−ハンドル認識に関与する残基は概してCpf1タンパク質ファミリー内で保存されており(図25)、AsCpf1とcrRNAとの間の観察される相互作用の機能的関連性が浮かび上がる。
crRNA−標的DNAヘテロ二重鎖の認識。crRNA−標的DNAヘテロ二重鎖は、REC1、REC2及びRuvCドメインによって形成される正電荷の中心チャネル内に収まり、タンパク質によって配列非依存的に認識される(図17、図18A、図18B及び図23)。ヘテロ二重鎖のPAM遠位領域及びPAM近位領域は、それぞれREC1−REC2ドメイン及びWED−REC1−RuvCドメインによって認識される(図17、図18A、図18B及び図18C)。標的DNA鎖のリン酸骨格と相互作用する(図18B)、ブリッジヘリックスのArg951及びArg955及びRuvCドメインのLys968は、Cpf1ファミリーメンバー間で保存されている(図25)。特に、crRNAのヌクレオチドG1〜A8の糖−リン酸骨格はWED及びREC1ドメインと複数の接触をなし(図17及び図18C)、Cpf1媒介DNA切断には、5bp PAM近位領域、「シード」領域内の塩基対合が重要である。これらの観察から、Cpf1−crRNA複合体では、Cas9−sgRNA複合体で観察されるとおり、crRNAガイドのシードがほぼA型のコンホメーションに予め整えられ、標的DNA鎖と対合するための核生成部位として働くことが示唆される。加えて、標的DNA鎖のdT(−1)とdC1との間の骨格リン酸基(+1リン酸と称される)が、Lys780の側鎖及びGly783の主鎖アミド基によって認識される(図18C)。同様にCas9−sgRNA−標的DNA複合体で観察されるとおり、この相互作用によって+1リン酸基が回転し、それにより標的DNA鎖のdC1とcrRNAのG1との間の塩基対合が促進される。ヘテロ二重鎖認識に関与するこれらの残基はCpf1ファミリーのほとんどのメンバー内で保存されており(図25)、R176A、R192A、G783P及びR951A突然変異体は活性の低下を呈した(図18D)ことから、これらの残基の機能的関連性が確認された。まとめると、これらの観察は、Cpf1のRNAガイド下DNA認識機構を明らかにしている。
予想外にも、本構造により、24nt crRNAガイドと標的DNA鎖とが24bpでなく、むしろ20bpのRNA−DNAヘテロ二重鎖を形成することが明らかになった(図18A)。REC2ドメインのTrp382の側鎖がヘテロ二重鎖のC20:dG20塩基対とスタッキング相互作用を形成し、ひいてはA21とdT21との間の塩基対合を妨げる(図18E)。実際、W382A突然変異体は活性低下を示したことから(図4D)、その機能的重要性が浮かび上がる。Trp382はCpf1ファミリーの一部のメンバー内で保存されており、一方、他のメンバーはこの位置に芳香族残基を含む(Zetsche et al.,2015)(図25)。これらの観察は、Cpf1が20bp RNA−DNAヘテロ二重鎖を認識することを示しており、20nt又は24ntのいずれかのガイドを含むcrRNAを使用して、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)Cpf1(FnCpf1)が標的DNA鎖の同じ部位(23番目のヌクレオチドと24番目のヌクレオチドとの間)を切断したという前出の知見を説明することができる。
5’−TTTN−3’PAMの認識。PAM二重鎖は、ATリッチのDNAで観察されることが多い、狭い副溝を含む歪んだコンホメーションをとり、WED、REC1及びPIドメインによって形成される溝に結合する(図19A及び図26A)。PAM二重鎖は、それぞれ主溝側及び副溝側からWED−REC1及びPIドメインによって認識される(図19B)。PAM二重鎖のdT(−1):dA(−1*)塩基対はタンパク質と塩基特異的接触を形成せず(図19B)、これは5’−TTTN−3’PAMの4番目の位置における特異性の欠如と一致する。PIドメインのLys607は狭い副溝に挿入され、PAM認識において決定的役割を果たす(図19B)。dT(−2*)のO2がLys607の側鎖と水素結合を形成し、一方、dA(−2)の核酸塩基及びデオキシリボース部分が、それぞれLys607及びPro599/Met604の側鎖とファンデルワールス相互作用を形成する(図19C)。dG(−2):dC(−2*)塩基対のモデル化により、dG(−2)のN2とLys607の側鎖との間に立体衝突があることが示され(図26B)、この位置がdA(−2):dT(−2*)は受け入れるが、dG(−2):dC(−2*)は受け入れないことが示唆された。これらの構造観察は、5’−TTTN−3’PAMの3番目のTが必須であることを説明し得る。dT(−3*)の5−メチル基がThr167の側鎖メチル基とファンデルワールス相互作用を形成し、一方、dA(−3)のN3及びN7が、それぞれLys607及びLys548と水素結合を形成する(図19D)。dG(−3):dC(−3*)塩基対のモデル化により、dG(−3)のN2とLys607の側鎖との間に立体衝突があることが示された(図26C)。これらの観察は、PAMの2番目のTが必須であることと一致する。dT(−4*)の5−メチル基はThr167及びThr539の側鎖メチル基に取り囲まれ、一方、dA(−4)のO4’はLys607の側鎖と水素結合を形成する(図19E)。特に、dT(−4*)のN3及びO4は、それぞれdA(−4)のN1及びdA(−3)のN6と水素結合を形成する(図19E)。モデル化により、dA(−3)はモデル化された塩基対、dT(−4):dA(−4*)、dG(−4):dC(−4*)及びdC(−4):dG(−4*)と立体衝突を形成し得ることが示された(図26D)。これらの構造観察は、PAMの1番目のTが必須であることと一致する。K548A及びM604A突然変異体は活性の低下を呈し(図19F)、Lys548及びMet604がPAM認識に関与していることが確認された。更に重要なことに、K607A突然変異体がほとんど活性を示さなかったことから(図19F)、Lys607がPAM認識に決定的に重要であることが示唆された。まとめると、これらの結果は、AsCpf1が塩基及び形状読取り機構の組み合わせによって5’−TTTN−3’PAMを認識することを示している。Thr167及びLys607はCpf1ファミリー全体で保存されており、Lys548、Pro599、及びMet604は部分的に保存されている(図25)。これらの観察は、多様な細菌由来のCpf1ホモログがそのTリッチPAMを同じように認識するが、相互作用の細かい点は異なり得ることを示している。
RuvC様エンドヌクレアーゼ及び推定上の第2のヌクレアーゼドメイン。RuvCドメインは、3個のαヘリックス(α1〜α3)が隣接した5本鎖混合型β−シート(β1〜β5)からなる典型的なRNアーゼHフォールド、並びに追加の2個のαヘリックス及びβストランドを含む(図20A)。保存されている負電荷残基、Asp908、Glu993及びAsp1263が、Cas9 RuvCドメインと同様の活性部位を形成する(図20B)。FnCpf1で観察されるとおり、D908A及びE993A突然変異体はほとんど活性を有さず、一方、D1263A突然変異体は著しい活性低下を呈したことから(図20C)、DNA切断におけるAsp908、Glu993及びAsp1263の役割が確認された。特に、RNアーゼHフォールドのストランドβ3とヘリックスα1との間にブリッジヘリックスが挿入され、REC2ドメインと相互作用する(図20A及び図20D)。ブリッジヘリックスのGln956の主鎖カルボニル基がREC2ドメインのLys468の側鎖と水素結合を形成する(図20E)。加えて、RuvCドメインのTrp958が、REC2ドメインのLeu467、Leu471、Tyr514、Arg518、Ala521及びThr522によって形成される疎水性ポケットに受け入れられる(図20E)。これらの残基は、Leu467及びAla521を除いて、Cpf1ファミリーメンバー間で高度に保存されており(図25)、W958A突然変異体は活性低下を呈した(図20D)。これらの観察から、REC及びNUCローブ間のブリッジヘリックス媒介相互作用の機能的重要性が浮かび上がる。
結晶構造から、RuvCドメインのRuvC−II(ストランドβ5)モチーフとRuvC−III(ヘリックスα3)モチーフとの間に挿入されるNucドメインの存在が明らかになった。Nucドメインは2つのリンカーループ(L1及びL2と称される)を介してRuvCドメインに接続される(図20A)。Nucドメインは5個のαヘリックス及び9個のβストランドを含み、いかなる公知のヌクレアーゼ又はタンパク質とも検出可能な構造上又は配列上の類似性を示さない。特に、保存されている極性残基、Arg1226及びAsp1235、及び部分的に保存されているSer1228は、RuvCドメインの活性部位に近接してクラスター化している(図20B及び図25)。S1228A突然変異体は野生型AsCpf1と同等のdsDNA切断活性を示した(図20C)。対照的に、D1235A突然変異体はdsDNA切断活性の低下を呈した(図20C)。更に重要なことに、R1226A突然変異体はdsDNA切断活性をほとんど示さず(図20C)、ニッカーゼ活性を示したことから(図29)、Arg1226がDNA切断に決定的に重要であることが示された。更に、R1226A突然変異体はニッカーゼとして働き、非標的DNA鎖を切断したが、標的DNA鎖は切断せず(図20F)、Nucドメインが標的DNA鎖の切断に関与することが示唆された。FnCpf1にあるとおり、AsCpf1 RuvCドメインの突然変異によって両方のDNA鎖の切断が消失し(図27)、標的DNA鎖及び非標的DNA鎖の両方の切断にRuvC触媒残基が必須であることが示された。まとめると、これらの結果は、Nuc及びRuvCドメインがそれぞれ標的及び非標的DNA鎖を切断すること、及びNucドメインによる恐らくは複合体のコンホメーション変化を通じた標的鎖切断にRuvCドメインが必要条件であることを示している。しかしながら、Cpf1のRNAガイド下DNA切断機構を完全に特徴付けるには、更なる機能及び構造研究が必要である。
AsCpf1−crRNA−標的DNA複合体の構造から、Cpf1によるRNAガイド下DNA切断に関する機構的洞察が得られる。現在のところクラス2(シングルタンパク質)エフェクターの唯一利用可能な構造であるCpf1とCas9との間の構造比較は、それらのタンパク質がRuvCドメイン外で配列類似性を欠いているにしても、それらの全体的な構成がある程度類似していることを明らかにする(図21A〜図21D)。両方のエフェクタータンパク質ともほぼ同じサイズで、個別的な2ローブ構造をとり、ここで2つのローブは特徴的なブリッジヘリックスによって接続されており、及びcrRNA−標的DNAヘテロ二重鎖は2つのローブ間の中心チャネルに収まる(図21A及び図21B)。しかしながら、この類似性にも関わらず、Cas9及びCpf1のRuvCヌクレアーゼドメインのみが相同であり、一方、タンパク質の残りの部分は配列も構造的類似性も共有しない。
Cas9構造の顕著な特徴の一つは、それぞれ標的及び非標的DNA鎖を切断する2つの無関係なHNH及びRuvCヌクレアーゼドメインの入れ子状の配置である(図21A及び図21C)。Cas9では、HNHドメインがRuvCドメインのRNアーゼHフォールドのストランドβ4とヘリックスα1との間に挿入される(図21E)。対照的に、Cpf1はHNHドメインを欠き、代わりに、別の位置に(同様にRuvC−IIモチーフとRuvC−IIIモチーフとの間ではあるが)、即ちRNアーゼHフォールドのストランドβ5とヘリックスα3との間に挿入される無関係な新規ドメインを含有する(図21F)。データから、Cas9のHNHドメインに類して、Cpf1のこの新規ドメインが標的DNA鎖を切断することが示された−ひいては呼称Nucドメイン。特に、Cpf1のNucドメインは、ヘテロ二重鎖外にある標的DNA鎖の一本鎖領域の切断に好適な位置にあり(図21B及び図21D)、一方、Cas9のHNHドメインはヘテロ二重鎖内の標的DNA鎖を切断する(図21C)。これらの構造の違いはまた、なぜCpf1がPAM遠位部位に付着末端型のDNA二本鎖切断を誘導する一方でCas9はPAM近位部位に平滑末端を作り出すのかについても説明し得る。加えて、このドメインの1つの保存された極性残基(AsCpf1におけるArg1226)はDNA切断に不可欠であることが示されており、活性RuvCドメインは両方のDNA鎖の切断に必須である。
Cpf1とCas9との構成比較は、Cpf1とCas9との間の見かけ上の構造的及び機能的収束の程度が顕著であることを明らかにする。興味深いことに、Cpf1とCas9とは異なる構造的特徴を用いてcrRNAのシード領域及び標的DNAの+1リン酸基を認識し、それによってRNAガイド下DNAターゲティングを達成する。Cas9では、シード領域はRuvCドメインとRECドメインとの間のブリッジヘリックスのアルギニンクラスターによってアンカリングされ、一方、+1リン酸基はRuvCドメインとWEDドメインとの間の「リン酸ロック」ループによって認識される(図28A)。対照的に、Cpf1では、シード領域はWED及びRECドメインによってアンカリングされ、一方、+1リン酸基はWEDドメインによって認識される(図28B)。
AsCpf1構造からまた、Cpf1とCas9との間の注目に値するPAM認識機構の違いも明らかになった。Cas9では、非標的DNA鎖のPAMヌクレオチドが、PIドメインの特異的残基との水素結合相互作用を通じて主に主溝側から読み取られる。化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9では、5’−NGG−3’PAMの2番目のG及び3番目のGが、二座配位水素結合を通じてPIドメインのそれぞれArg1333及びArg1335によって認識される(図28A)。対照的に、AsCpf1では、標的DNA鎖及び非標的DNA鎖の両方のPAMヌクレオチドが、副溝側及び主溝側の両方からPIドメインによって読み取られる。詳細には、他のタンパク質−DNA複合体で観察されるとおり、PIドメインにおける保存されたリジン残基(AsCpf1のLys607)がPAM二重鎖の狭い副溝に挿入され、PAM認識において決定的に重要な役割を果たす(図28B)。これらの構造観察は、Cas9がPAMを主に塩基読取り機構によって認識する一方、Cpf1は塩基及び形状読取りを組み合わせてPAMを認識することを示している。PAM認識におけるこれらの機構的違いは、なぜCas9オルソログがGリッチの多様なPAM配列を認識する一方で、Cpf1ファミリーの幅広く異なるメンバーが同様のTリッチPAMを認識するのかについて説明し得る。
実施例5:AsCpf1突然変異体の作成。ヒトコドン最適化AsCpf1突然変異体をゴールデンゲート戦略を用いてクローニングした。簡潔に言えば、野生型AsCpf1(pY010)を鋳型として使用して、BsmBI制限部位を含有するプライマーを用いて2つのPCR断片を増幅した。BsmBI消化の結果、個別的な5’オーバーハングが得られ、これらはいずれかレシピエントベクターのHindIII又はXbaIオーバーハングに適合するか、又は2つのAsCpf1 DNA断片のジャンクションに所望の点突然変異を再構成することになる。
実施例6:293FT細胞におけるAsCpf1の切断活性。野生型又は突然変異体のAsCpf1を発現するプラスミドを、N末端及びC末端核局在化タグ(400ng)及びcrRNAを発現するプラスミド(100ng)と共に、Lipofectamine 2000試薬(Life Technologies)を用いてヒト胎児腎臓293FT細胞に24ウェルプレート中75〜90%コンフルエンシーでトランスフェクトした。QuickExtract(商標)DNA抽出溶液(Epicentre)を用いてゲノムDNAを抽出した。先述のとおり、ディープシーケンシングによってインデルを分析した。
実施例7:crRNAの合成。HiScribe(商標)T7高収率RNA合成キット(NEB)を使用してインビトロ切断アッセイ用のcrRNAを合成した。標的RNA配列の逆相補体に対応するDNAオリゴをIDTから合成し、ショートT7プライミング配列にアニールした。T7転写を4時間実施し、次にAgencourt RNAClean XPビーズ(Beckman Coulter)を使用してRNAを精製した。
実施例7:AsCpf1含有細胞ライセートの調製。6ウェルプレートで成長するHEK293細胞をLipofectamine 2000試薬を使用してAsCpf1発現プラスミド(2μg)にトランスフェクトした。48時間後、DPBS(Life Technologies)で洗浄することにより細胞を回収し、250mlの溶解緩衝液(20mM HEPES(pH7.5)、100mM KCl、5mM MgCl、1mM DTT、5%グリセロール、0.1%Triton X−100及び1×完全プロテアーゼ阻害薬カクテル錠(Complete Protease Inhibitor Cocktail Tablets)(商標)(Roche))に再懸濁した。10分間の音波処理及び20分間の遠心(20,000g)の後、続いてインビトロ切断アッセイで使用するため上清を凍結した。
実施例8:インビトロ切断アッセイ。インビトロ切断アッセイは、切断緩衝液(1×CutSmart(登録商標)緩衝液(NEB)、5mM DTT)中、AsCpf1又はSpCas9のいずれかのタンパク質を含有する哺乳類細胞ライセートを用いて37℃で20分間実施した。切断反応には、500ngの合成crRNA及び200ngの標的DNAを使用した。基質DNAを調製するため、5’−TTTA−3’PAMを有する標的配列を含む611bp領域をpUC19ベクターを鋳型として使用してPCR増幅した。蛍光標識基質を作成するため、PCRプライマーを5’EndTag(商標)核酸標識システム(Vector Laboratories)によって標識した;フォワード及びリバースプライマーを標識して、それぞれ標識された非標的鎖及び標的鎖を作成した。Zymoclean(商標)ゲルDNAリカバリーキット(Zymo Research)を使用して反応物をクリーンアップし、10%ポリアクリルアミドTBE−尿素ゲルで泳動させた。Odyssey(登録商標)CLxイメージングシステム(Li−Cor)を使用してゲルを可視化した。RuvCドメイン突然変異体については、クリーンアップ反応物をTBE6%ポリアクリルアミド又はTBE−尿素6%ポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)で泳動させて、次にゲルをSYBR Gold(Invitrogen)で染色した。
受託番号。AsCpf1−crRNA−標的DNA複合体の原子座標はタンパク質データバンクにPDBコードXXXXで寄託されている。
野生型アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp)Cpf1配列を以下に再掲する。
Figure 0006914274
インビトロ切断の基質DNA
cggggctggcttaactatgcggcatcagagcagattgtactgagagtgcaccatatgcggtgtgaaataccgcacagatgcgtaaggagaaaataccgcatcaggcgccattcgccattcaggctgcgcaactgttgggaagggcgatcggtgcgggcctcttcgctattacgccagctggcgaaagggggatgtgctgcaaggcgattaagttgggtaacgccagggttttcccagtcacgacgttgtaaaacgacggccagtgaattcgagctcggtacccggggatcctttcgagctcggtacccggggatcctTTagagaagtcatttaataaggccactgttaaaaagcttggcgtaatcatggtcatagcagcttggcgtaatcatggtcatagctgtttcctgtgtgaaattgttatccgctcacaattccacacaacatacgagccggaagcataaagtgtaaagcctggggtgcctaatgagtgagctaactcacattaattgcgttgcgctcactgcccgctttccagtcgggaaacctgtcgtgccagctgcattaatgaatcggccaacgcgcggggagaggcggtttgcgtattgggc
crRNAオリゴ
GTGGCCTTATTAAATGACTTCTCATCTACAAGAGTAGAAATTACCCTATAGTGAGTCGTATTAATTTC
NGSプライマー
DNMT1−1_For GCTTAGAGCAGGCGTGCTGCA
DNMT1−1_Rev CTCAAACGGTCCCCAGAGGGTT
DNMT1−2_For TGAACGTTCCCTTAGCACTCTGCC
DNMT1−2_Rev CCTTAGCAGCTTCCTCCTCC
<<文献リスト>>
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本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明したが、当業者には、かかる実施形態が単に例として提供されることは明らかであろう。ここで当業者には、多数の変形例、変更例、及び代替例が本発明から逸脱することなく想起されるであろう。本明細書に記載される発明の実施形態の様々な代替例を本発明の実施に用い得ることが理解されなければならない。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、及び特許請求の範囲に含まれる方法及び構造並びにそれらの均等物が本発明に包含されることが意図される。

Claims (18)

  1. アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6 Cpf1のM604Aに対応する突然変異を含む、改変されたヌクレアーゼ活性を有する改変Cpf1エフェクタータンパク質
  2. アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6 Cpf1のR1226Aに対応する突然変異を含み、ニッカーゼ活性を呈する、改変されたヌクレアーゼ活性を有する改変Cpf1エフェクタータンパク質。
  3. 請求項1または2に記載の改変Cpf1エフェクタータンパク質を含むCRISPR−Cpf1系。
  4. 細胞の目的のゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1及び第2の標的配列の操作によってオフターゲット改変を最小限に抑えることによって生物を改変するのに使用するためのエンジニアリングされた組成物であって、
    前記組成物が、以下:
    −ダイレクトリピート配列に連結した第1のガイド配列であって、前記第1の標的配列とハイブリダイズ可能な第1のガイド配列を含む、第1のガイドRNA;
    −ダイレクトリピート配列に連結した第2のガイド配列であって、前記第2の標的配列とハイブリダイズ可能な第2のガイド配列を含む、第2のガイドRNA、
    及び
    −改変されたCpf1エフェクタータンパク質であって、少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み、且つ1つ以上の突然変異を含み、改変されたCpf1エフェクタータンパク質がアシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6 Cpf1のR1226Aに対応する突然変異を含み、かつ、ニッカーゼである、改変されたCpf1エフェクタータンパク質、
    をコードする1つ以上の核酸を含み、
    前記第1及び前記第2のガイドRNAが第1及び第2のCRISPR複合体のそれぞれ前記第1及び第2の標的配列への配列特異的結合を導くことが可能であり、前記第1のCRISPR複合体は、前記第1のガイドRNAと複合体を形成した前記Cpf1エフェクタータンパク質を含み、前記第2のCRISPR複合体は、前記第2のガイドRNAと複合体を形成した前記Cpf1エフェクタータンパク質を含み、Cpf1エフェクタータンパク質をコードする前記核酸はDNA又はRNAであり、及び前記第1のガイド配列が前記第1の標的配列の近傍に前記DNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ前記第2のガイド配列が前記第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導いて二本鎖切断を誘導し、それによりオフターゲット改変を最小限に抑えることによって前記生物を改変する、組成物。
  5. 前記第1のガイド配列が前記第1の標的配列の近傍に前記DNA二重鎖の一方の鎖の切断を導き、且つ前記第2のガイド配列が前記第2の標的配列の近傍に他方の鎖の切断を導くと、5’オーバーハングが生じる、請求項に記載の組成物。
  6. 前記5’オーバーハングが高々200ヌクレオチドである、請求項に記載の組成物。
  7. 前記5’オーバーハングが高々100ヌクレオチドである、請求項に記載の組成物。
  8. 前記改変されたCpf1エフェクタータンパク質が、改変されたアシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6 Cpf1、改変されたラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 Cpf1、または改変されたラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MA2020 Cpf1である、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 2つ以上のガイドRNAが提供される、請求項に記載の組成物。
  10. ガイドRNAのアレイから複数のガイドRNAが発現する、請求項に記載の組成物。
  11. 前記アレイが、前記細胞にとって内因性の系によって互いに分離されているガイドRNAを含む、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記アレイが、内因性tRNAプロセシング系による切断を含む、請求項10に記載の組成物。
  13. 前記アレイが、tRNAに隣接するガイドRNAを含む、請求項10に記載の組成物。
  14. CRISPR−Cpf1系であって、以下:
    改変されたCpf1エフェクタータンパク質、ここで、前記改変されたCpf1エフェクタータンパク質は、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6 Cpf1のR1226Aに対応する突然変異を含み、かつ、ニッカーゼである、
    第1の標的配列の近傍にDNA二重鎖の一方の鎖の切断を導くことが可能な第1のガイド配列を含む第1のガイドRNA、および
    第2の標的配列の近傍にもう一方の鎖の切断を導くことが可能な第2のガイド配列を含む第2のガイドRNA
    を含んで5’オーバーハングを生じさせるCRISPR−Cpf1系。
  15. 改変Cpf1エフェクタータンパク質であって、
    アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6 Cpf1のR1226Aに対応する突然変異を含み、
    前記改変Cpf1エフェクタータンパク質はニッカーゼである、
    改変Cpf1エフェクタータンパク質。
  16. 請求項15に記載の改変Cpf1エフェクタータンパク質であって、
    前記改変Cpf1エフェクタータンパク質は、改変されたアシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)Cpf1、改変されたラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)Cpf1、または改変されたフランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)Cpf1である、
    改変Cpf1エフェクタータンパク質。
  17. 請求項15に記載の改変Cpf1エフェクタータンパク質であって、
    前記改変Cpf1エフェクタータンパク質が、改変されたアシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6 Cpf1、改変されたラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 Cpf1、または改変されたラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)MA2020 Cpf1である、
    改変Cpf1エフェクタータンパク質。
  18. CRISPR−Cpf1複合体を含む組成物であって、
    前記CRISPR−Cpf1複合体は、ダイレクトリピート配列に連結したガイド配列を含むガイドポリヌクレオチドと複合体化した、請求項1517のいずれか1項に記載の改変Cpf1エフェクタータンパク質を含む、
    組成物。
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