以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(ライン型インクジェット記録装置と周辺機器の電気的構成)
図1は本発明の一実施形態に係るライン型インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のライン型インクジェット記録装置(以下、「インクジェット記録装置」と略記する。)1は、原稿上の原稿画像を読み取って画像信号を出力するスキャナ部101と、スキャナ部101から出力された画像信号に基づいて印刷用紙(片面又は両面)に原稿画像を印刷(記録)するプリンタ部102と、各種表示入力用のディスプレイ103と、全体制御用の制御ユニット10とを備えている。
制御ユニット10には、外部インタフェース部11を介して、後述するクライアント端末14の外部インタフェース部15が接続されている。制御ユニット10は、原稿画像の印刷ジョブをクライアント端末14から受け取り、受け取った印刷ジョブによる原稿画像の画像データを印刷用階調データに変換し、これに基づいて、原稿画像の印刷用紙に対する印刷をプリンタ部102において実行する。
また、制御ユニット10のCPU90には、ディスプレイ103が接続されている。このディスプレイ103は、タッチパネルと複数のキーボタンとを有しており、ディスプレイ103に表示されたキーにタッチパネル上でタッチしたり、キーボタンを押圧操作することによって、各種の入力を行うことができる。
このディスプレイ103は、スキャナ部101によって印刷用紙から読み取った画像を電子データ化するモードや、読み取った画像のデータを利用する自己診断等のモードを、ユーザが選択入力する入力操作部として利用することもできる。
上述したプリンタ部102に印刷動作を行わせるインクジェット記録装置1の制御ユニット10は、CPU90を備える。このCPU90は、ROM91に格納されているプログラム及び設定情報に基づいて、ディスプレイ103から入力設定される内容に応じたスキャナ部101やプリンタ部102の動作を制御する。
なお、制御ユニット10には、CPU90のワーキングエリアとして機能するRAM92と、各種ファームウェアやデータの格納に用いられるフラッシュメモリ93とが設けられている。
クライアント端末14は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成されるものであり、ROM17に格納された制御プログラムに基づいて各種の処理を実行するCPU16と、CPU16のワーキングエリアとして機能するRAM18と、キーボードやマウス等から構成される入力部19と、液晶ディスプレイ等から構成される出力部20とを備えている。
CPU16には、上述した外部インタフェース部15の他に、各種アプリケーションプログラムやデータ等が格納される外部記憶装置21と、ディスク状記録媒体50から各種プログラムやデータを読み取るディスクドライブ22とが接続されている。
CPU16は、アプリケーションプログラムの起動中に入力部19から印刷指令が入力された場合に、印刷対象の原稿画像のデータを外部記憶装置21から読み出す等して印刷ジョブを生成し、制御ユニット10に出力する。この印刷ジョブは、外部記憶装置21に格納されたプリンタドライバプログラムを実行したCPU16がプリンタドライバとして機能することによって、制御ユニット10に出力することができる。
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1のプリンタ部102において、画像形成が行われる画像形成経路CR1を側方から示す説明図であり、図3は、画像形成経路CR1の上方に配置される図2のヘッドホルダ500を下方から示す説明図である。
図2に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1のプリンタ部102は、画像形成経路CR1と、画像形成部であるラインヘッド110を有している。
画像形成経路CR1は、無端状の搬送ベルトであるプラテンベルト160、プラテンベルト160の駆動機構である駆動ローラ161及び従動ローラ162等から構成される。画像形成経路CR1では、プラテンベルト160によって、印刷条件により定められる速度で印刷用紙が搬送される。プラテンベルト160の上方にはラインヘッド110が対向配置されている。
(ラインヘッドの構成と配置)
ラインヘッド110は、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色別に設けられている。各色のラインヘッド110は、印刷用紙の搬送方向である副走査方向と直交する主走査方向に、複数のヘッドモジュール110aを並べて構成されている。
各ヘッドモジュール110aは、図3中のK(ブラック)のヘッドモジュール110aの一つに代表して模式的に示すように、ノズル列110bをそれぞれ有している。各ノズル列110bは、主走査方向に並んだ複数のノズル110cで構成されている。各ノズル110cは、プラテンベルト160上の印刷用紙に対し、ライン単位で各色のインクを吐出し、複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
各色のラインヘッド110のヘッドモジュール110aは、図2に示すように、プラテンベルト160の上方に配置したヘッドホルダ500に保持されている。ヘッドホルダ500は、図3に示すように、ヘッドホルダ面500aを底面に有する函体であり、ヘッドホルダ面500aには、ヘッドモジュール110aを挿通する複数の取付開口部500bが、各ラインヘッド110単位で複数列形成されている。
各ラインヘッド110に対応する複数の取付開口部500bは千鳥状に配列されており、各取付開口部500bは、ヘッドモジュール110aの水平断面と同形状に形成されている。各ラインヘッド110のヘッドモジュール110aは、対応する列の各取付開口部500bにそれぞれ挿通されて、ノズル列110b側を図2に示すようにヘッドホルダ面500aから突出させている。
ヘッドホルダ500に保持された各色のラインヘッド110のヘッドモジュール110aは、図3に示すように、主走査方向に並べて配置されており、かつ、1つおきに副走査方向の位置をずらして配置されている。これにより、隣り合う2つのヘッドモジュール110aの最端部のノズル(図示せず)どうしの間隔が、各ヘッドモジュール110aの隣り合うノズルの間隔と一致するようにしている。
各ヘッドモジュール110aの内部には、各ノズル110cにそれぞれ連通する複数のインク室(図示せず)が形成されている。各インク室にはインクが供給され、例えばピエゾ素子を用いて各インク室の容積を変化させることで、各インク室内のインクが各ノズル110cから吐出される。
ヘッドモジュール110aの各ノズル110cは、図1に示す制御ユニット10のCPU90がプリンタ部102のヘッドモジュール110aに供給する駆動信号の波形(パルス幅、正負のパルスの組み合わせパターン、予備パルスの有無等)を変えることで、同一画素に吐出するインクのドロップ数や各ドロップのインク量を変えることができる。
本実施形態では、各ノズル110cが一つの画素に吐出するインクのドロップ数を0〜6ドロップの範囲で変えて、ゼロ階調を含む7段階の階調で印刷することができるものとする。
(ノズル間のインク吐出特性のばらつきと濃度変化)
ところで、図2を参照して説明したように、各色のラインヘッド110のヘッドモジュール110aには、複数のノズル110cが形成されている。これらのノズル110cには、許容された範囲内であっても、インクの吐出特性にばらつきがある場合がある。この吐出特性のばらつきは、例えば、インク室のピエゾ素子の特性や、公差内のノズル110cの製造誤差等によって生じる。
図4は、1つのヘッドモジュール110aの各ノズル110cによる吐出インクで印刷用紙上に形成される画像の各画素の濃度分布の例を示すグラフである。このグラフに示す濃度分布は、図1のプリンタ部102により単色で印刷した濃度分布測定用のテストパターンの印刷画像からスキャナ部101で読み取ったテストパターンの画像信号から得たものである。
なお、濃度分布測定用のテストパターンは、各ノズル110cに対応する各画素の濃度階調値を同一にした画像(テストパターン)である。この画像を、1つのヘッドモジュール110aの各ノズル110cからの吐出インクにより印刷する印刷ジョブを、CPU90が生成して実行することで、テストパターンの印刷画像を得ることができる。
そして、各画素の濃度に図4に示す分布のようなばらつきがあると、印刷用紙の同じ濃度階調値の画素に対して対応する各ノズル110cがそれぞれインクを吐出しても、印刷用紙に印刷される画像(印刷画像)上では両画素間に濃度差が生じてしまう。
このため、図4に示す濃度分布のばらつきをなくすために、各ヘッドモジュール110a単位で、各画素に対応する各ノズル110cがそれぞれ吐出するインクの吐出量を、各画素の濃度に応じて補正する必要がある。
(濃度調整プロファイルによる画像濃度の調整内容)
図5(a)は、図4の濃度分布を有するヘッドモジュール110aの各ノズル110cを用いて印刷したテストパターンの印刷画像を示す説明図、(b)は(a)のテストパターンの画像から決定した濃度調整プロファイルにより吐出ドロップ数を補正した後の同じヘッドモジュール110aの各ノズル110cを用いて印刷したテストパターンの印刷画像を示す説明図である。
なお、テストパターンは均一濃度のベタ画像である。したがって、テストパターンの画像は、全ヘッドモジュール110aの全ノズル110cから同一ドロップ数のインクをそれぞれ吐出して印刷する。このテストパターンは、各ノズル110cから吐出するインクのドロップ数を増減させることで、濃度を変えて印刷することができる。
さて、図4の濃度分布を有するヘッドモジュール110aの各ノズル110cを用いて、テストパターンの画像を印刷用紙に印刷すると、テストパターンの印刷画像は、図5(a)の説明図に示すような濃度に濃淡のばらつきがある画像となる。
即ち、テストパターンの印刷画像には、図4の濃度分布における画像濃度が薄いノズル110cや濃いノズル110cの吐出インクでそれぞれ印刷される部分A,Bに、その他のノズル110cの吐出インクでそれぞれ印刷される部分Cよりも濃度が薄い部分や濃い部分が、印刷用紙の搬送方向に沿って帯状に現れる。
そこで、テストパターンの印刷画像の濃度を全体的に均一にするために、テストパターンの印刷画像中の濃度が他の部分とは異なる部分の濃度を変更する濃度調整を行う。画像の濃度は、ノズル110cのインク吐出量を変えることで調整することができる。
ここで、ノズル110cのインク吐出量は、ノズル110cの駆動信号の波形を変えることで変えることができる。但し、特定のノズル110cのインク吐出量を変えるには、特定のノズル110cの駆動信号の波形だけを変える必要があるので、現実的ではない。
そこで、濃度を変更する部分の画素にインクを吐出するノズル110cの中から、変更する濃度の大きさに応じた割合のノズル110cを誤差拡散処理等によって選び出し、そのノズル110cが吐出するインクのドロップ数を変える。
これにより、濃度を変更する部分の画素にノズル110cが吐出するインクの平均値を変化させて、濃度を変更する部分の濃度を変え、テストパターンの印刷画像の濃度を全体的に均一にすることができる。
例えば、図5(a)のテストパターンの印刷画像を均一な濃度とする濃度調整は、図5(b)の説明図に示すように、濃度が濃い部分Bや中間の濃度の部分Cの濃度を減らして濃度が薄い部分Aと同じ濃度とし、画像全体の濃度を薄い画素の濃度に合わせる濃度調整内容とすることができる。
その場合は、テストパターンの印刷画像の濃度が濃い部分Bや中間の濃度の部分Cと濃度が薄い部分Aとの濃度差に応じて、吐出するインクのドロップ数を1ドロップ減らすノズル110cを、図4の濃度分布における画像濃度が濃いノズル110cや中間の濃度のノズル110cの中から誤差拡散処理等によって選び出す。
そして、選び出したノズル110cが吐出するインクのドロップ数を1ドロップ減らす濃度調整プロファイルを、汎用の濃度調整プロファイルとして生成し、そのデータを図1の制御ユニット10のフラッシュメモリ93に記憶させる。
汎用の濃度調整プロファイルは、印刷データ中の最小階調以外の階調(本実施形態では、ノズル110cが一つの画素に吐出するインクを2〜6ドロップとしたときの階調)で画像が印刷される画素の濃度調整に共通して適用できる汎用のプロファイルである。また、汎用の濃度調整プロファイルは、条件が整えば、印刷データ中の最小階調で画像が印刷される画素の濃度調整にも適用することができる。この条件については後述する。
なお、フラッシュメモリ93には、汎用の濃度調整プロファイルに加えて、最小階調(本実施形態では、ノズル110cが一つの画素に吐出するインクを1ドロップとしたときの階調)で印刷した濃度調整前のテストパターンの画像における濃度ムラ分布データが記憶される。濃度ムラ分布データは、テストパターンの印刷画像における濃度が濃い部分Bや中間の濃度の部分Cの画素の分布を示すデータである。
この濃度ムラ分布データは、印刷データ中の最小階調で画像が印刷される画素の濃度調整が必要であるか否かを判定する際に利用される。濃度ムラ分布データの詳しい利用法については後述する。
特に、図5(a)のテストパターンの印刷画像が最大階調(本実施形態では、ノズル110cが一つの画素に吐出するインクを6ドロップとしたときの階調)で印刷されたものである場合は、濃度が薄い部分Aや中間の濃度の部分Cの濃度を増やして濃度が濃い部分Bと同じ濃度とする濃度調整を行うことができない。その理由は、濃度を増やす画素のノズル110cが吐出するインクのドロップ数をさらに1ドロップ増やすことができないからである。
このため、テストパターンの印刷画像の濃度が濃い部分Bや中間の濃度の部分Cを濃度が薄い部分Aと同じ濃度に変更し、画像全体の濃度を薄い画素の濃度に合わせる内容の濃度調整は、最大階調の印刷画像を均一な濃度とするための濃度調整として特に有効である。
ところで、図4の濃度分布を有するヘッドモジュール110aの各ノズル110cを用いて、図6(a)の説明図に示すように、最小階調でテストパターンの画像を印刷する場合に、濃度が濃い部分Bや中間の濃度の部分Cを濃度が薄い部分Aと同じ濃度とし、画像全体の濃度を薄い画素の濃度に合わせる濃度調整を行うのは、以下に説明する理由により好ましくない。
即ち、最小階調のテストパターンの印刷画像における、濃度が濃い部分Bや中間の濃度の部分Cの画素にインクを吐出するノズル110cの中から、吐出するインクのドロップ数を1ドロップ減らすノズル110cを誤差拡散処理等によって選び出すと、選び出したノズル110cが吐出するインクのドロップ数は「0」となる。
すると、選び出したノズル110cに対応する画素にはインクが吐出されないので、その画素に対応する印刷画像中の箇所に、図6(b)の説明図に示すように、インクドットの欠損が発生する。
なお、図6(a)と図6(b)とでは、濃度が薄い部分Aや濃度が濃い部分Bのテストパターンの印刷画像における位置が、図中の左右方向にずれている。しかし、このずれは意図的なものではなく、単に図面としての誤差によるものである。テストパターンの印刷画像における濃度が薄い部分Aや濃度が濃い部分Bの位置は、濃度調整の前後で変わることはない。
インクドットが欠損する画素Dは、テストパターンの印刷画像の濃度が薄い部分Aとの濃度差が大きい濃度が濃い部分Bにおいて特に多くなる。このようなインクドットの欠損画素Dが存在すると、周辺画素との間に、吐出されたインクの有無の違いによるコントラスト差が生じ、その部分の印刷画像の見た目がざらついた感じになってしまう。このようなざらつきの存在は、画像の印刷品質を低下させる可能性がある。
そこで、最小階調で画像を印刷する場合は、最小階調の印刷画像を均一な濃度とするための濃度調整を、例えば、濃度が薄い部分Aや中間の濃度の部分Cの濃度を増やして濃度が濃い部分Bと同じ濃度とし、画像全体の濃度を濃い画素の濃度に合わせる濃度調整内容としてもよい。
画像全体の濃度を濃い画素の濃度に合わせる濃度調整内容とすれば、最小階調の画像を印刷する場合にも、ノズル110cが吐出するインクのドロップ数を減らさずに濃度調整を行うことができるので、図6(c)の説明図に示すように、濃度調整後の印刷画像中にインクドットが欠損する画素Dが発生しないようにすることができる。
なお、最小階調で画像を印刷するときの濃度調整を、画像全体の濃度を濃い画素の濃度に合わせる濃度調整内容とする場合は、テストパターンの印刷画像の濃度が薄い部分Aや中間の濃度の部分Cと濃度が濃い部分Bとの濃度差に応じて、吐出するインクのドロップ数を1ドロップ増やすノズル110cを、図4の濃度分布における画像濃度が薄いノズル110cや中間の濃度のノズル110cの中から誤差拡散処理等によって選び出す。
そして、選び出したノズル110cが吐出するインクのドロップ数を1ドロップ増やす濃度調整プロファイルを、最小階調用の濃度調整プロファイルとして生成し、そのデータを図1の制御ユニット10のフラッシュメモリ93に記憶させる。
なお、図4のグラフに示す印刷画像の各画素の濃度分布を得るための、濃度分布測定用のテストパターンは、各ノズル110cが一つの画素に吐出するインクのドロップ数を1〜6の各ドロップとした6段階の階調でそれぞれ印刷することができる。よって、図5(a)に示すテストパターンの印刷画像は6段階の階調で得ることができる。
そこで、例えば、各階調のテストパターンの印刷画像を用いて、各階調用の濃度調整プロファイルをそれぞれ生成してもよい。また、各階調のテストパターンの印刷画像のうち、各画素の濃度分布のばらつきに対する感度が最も高い階調で印刷した画像を用いて、全ての階調に共通して適用される1つの濃度調整プロファイルを生成してもよい。
あるいは、各画素の濃度分布のばらつきに対する感度が最も高い階調で印刷した画像を用い、感度が高い階調のノズル110cが吐出するインク量と、その他の各階調のノズル110cが吐出するインク量との比率から、各階調の濃度分布のばらつきをそれぞれなくす内容の濃度調整プロファイルを、各階調用に個別に生成してもよい。
以上に説明したフラッシュメモリ93の濃度調整プロファイルは、ラインヘッド110の各ヘッドモジュール110a別に生成されて、フラッシュメモリ93に記憶されている。したがって、各ノズル110cの画像濃度の調整には、各ヘッドモジュール110aに対応してフラッシュメモリ93に記憶された濃度調整プロファイルが用いられる。
そして、フラッシュメモリ93の濃度調整プロファイルは、制御ユニット10のCPU90がクライアント端末14から入力された印刷ジョブを実行する際に、CPU90が印刷ジョブの多値データ(画素値)から変換して階調化した印刷データ(マルチドロップ動作用のドットデータ)における、各ノズル110cの吐出インクのドロップ数を、濃度調整のために補正する場合に利用される。ドロップ数を補正した印刷データは、プリンタ部102に出力される。
なお、画像全体の濃度を薄い画素の濃度に合わせる汎用の濃度調整プロファイルは、印刷データ中の最大階調で画像が印刷される画素の濃度調整に適用できる他、印刷データ中の最大階調及び最小階調を除く中間階調(ノズル110cが一つの画素に吐出するインクを2〜5ドロップとしたときの階調)で画像が印刷される画素の濃度調整にも適用できる。また、場合によっては、印刷データ中の最小階調で画像が印刷される画素の濃度調整にも、汎用の濃度調整プロファイルを適用することができる。
ここで、最小階調で画像が印刷される画素の濃度調整に汎用の濃度調整プロファイルを適用できる場合とは、例えば、印刷する画像中に、欠損画素Dの存在が印刷品質に影響する線画や写真が含まれていない場合である。
印刷する画像中に線画や写真が含まれているかどうかは、クライアント端末14から入力された印刷ジョブの属性データに規定された画像中のオブジェクトの種類を確認することで判定することができる。
即ち、印刷ジョブの実行により印刷する画像中に、欠損画素Dの存在が印刷品質に影響する線画や写真が含まれていなければ、欠損画素Dによって途切れ途切れになった線画が印刷されたり画素抜けした写真が印刷されて印刷品質が低下することがない。
そこで、印刷ジョブの実行により印刷する画像中に、欠損画素Dの存在が印刷品質に影響する線画や写真が含まれていない場合は、欠損画素Dが発生しても目立たないので、最小階調で画像が印刷される画素の濃度調整に汎用の濃度調整プロファイルを適用することができる。
その場合は、最小階調で画像が印刷される画素から最大階調で画像が印刷される画素までの全てについて、画素の濃度調整に適用する濃度調整プロファイルを汎用の濃度調整プロファイルに統一することができる。
一方、画像全体の濃度を濃い画素の濃度に合わせる最小階調用の濃度調整プロファイルは、印刷データ中の最小階調で画像が印刷される画素の濃度調整に適用できる他、中間階調で画像が印刷される画素の濃度調整にも適用できる。
(濃度調整処理)
このように、中間階調で画像が印刷される画素の濃度調整には、画像全体の濃度を薄い画素の濃度に合わせる汎用の濃度調整プロファイルと、画像全体の濃度を薄くする内容の最小階調用の濃度調整プロファイルとどちらを用いることもできる。
そこで、本実施形態の制御ユニット10のCPU90は、中間階調で画像を印刷する際にノズル110cが一つの画素に吐出するインクのドロップ数である2〜5ドロップのうちのいずれかのドロップ数をしきい値とする。
そして、CPU90は、しきい値以上のドロップ数の階調で画像を印刷する画素の濃度調整に、画像全体の濃度を薄くする汎用の濃度調整プロファイルを適用する。また、CPU90は、しきい値未満のドロップ数の階調で画像を印刷する画素(但し、最小階調で画像を印刷する画素を除く)の濃度調整に、画像全体の濃度を濃い画素の濃度に合わせる最小階調用の濃度調整プロファイルを適用する。
なお、濃度調整に適用する濃度調整プロファイルを決めるのに用いるしきい値は、例えば、中間階調で画像を印刷する際にノズル110cが一つの画素に吐出するインクのドロップ数である2〜5ドロップのうちのいずれかのドロップ数に設定される。
このしきい値は、例えば、画素の濃度調整に汎用の濃度調整プロファイルを適用した方が、最小階調用の濃度調整プロファイルを適用するよりも、濃度調整後における印刷画像の濃度ムラの解消が良好である階調を、印刷に使用するインクの種類や印刷用紙の種類を変えた複数パターンについて評価した結果に基づいて、実験的に決めてもよい。
そして、CPU90は、クライアント端末14から印刷ジョブが入力されると、その印刷ジョブの内容に基づいて、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整を実行するか否かを判定する。また、実行する濃度調整に適用する濃度調整プロファイルを決定する。
以下、CPU90がROM91に格納されたプログラムを実行することで最小階調で画像を印刷する画素の濃度調整を行う際の手順を、図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、CPU90は、まず、クライアント端末14から印刷ジョブが入力されたか否かを確認する(ステップS1)。入力されていない場合は(ステップS1でNO)、入力されるまで待機し、入力された場合は(ステップS1でYES)、入力された印刷ジョブの内容に基づいて、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整を実行するか否かを判定する(ステップS3)。
この判定は、フラッシュメモリ93に記憶された、最小階調で印刷した濃度調整前のテストパターンの画像における濃度ムラ分布データを参照して行われる。
そして、CPU90は、濃度ムラ分布データを参照した結果、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素中に、画像を印刷した場合に濃度のばらつきが発生する画素が一定以上の度合いで存在すれば、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整が必要であると判定する。
その結果、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整を実行しないと判定した場合は(ステップS3でNO)、CPU90は、後述するステップS11に処理を移行し、実行すると判定した場合は(ステップS3でYES)、CPU90は、濃度調整に適用する濃度調整プロファイルを最小階調用の濃度調整プロファイルとするか否かを確認する(ステップS5)。
この判定は、印刷ジョブの内容に基づいて行われる。印刷ジョブの内容には、例えば、属性データに規定された画像中のオブジェクトの種類が含まれる。オブジェクトの種類は、例えば、欠損画素Dの存在が印刷品質に影響する線画や写真が印刷画像に含まれているか否かを判断するのに利用できる。
そして、CPU90は、画素の連続性や階調の連続性が欠損画素Dの存在により損なわれると印刷品質に影響する線画や写真が印刷画像に含まれていれば、濃度調整に適用する濃度調整プロファイルを最小階調用の濃度調整プロファイルとすると判定する。
その結果、濃度調整に適用する濃度調整プロファイルを最小階調用の濃度調整プロファイルとすると判定した場合は(ステップS5でYES)、CPU90は、印刷ジョブの多値データから変換した印刷データ中の最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整に、最小階調用の濃度調整プロファイルを適用し、その画素にインクを吐出するノズル110cの中から選び出されたノズル110cが吐出するインクのドロップ数を1ドロップ増やす補正を行う(ステップS7)。そして、ステップS11に処理を移行する。
一方、濃度調整に適用する濃度調整プロファイルを最小階調用の濃度調整プロファイルとしないと判定した場合は(ステップS5でNO)、CPU90は、印刷ジョブの多値データから変換した印刷データ中の最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整に、汎用の濃度調整プロファイルを適用し、その画素にインクを吐出するノズル110cの中から選び出されたノズル110cが吐出するインクのドロップ数を1ドロップ減らす補正を行う(ステップS9)。そして、ステップS11に処理を移行する。
そして、ステップS11では、CPU90は、印刷ジョブの多値データから変換した印刷データ中の中間階調及び最大階調で画像を印刷する画素の濃度調整に、濃度調整プロファイルを適用して、その画素にノズル110cが吐出するインクのドロップ数を補正する。
詳しくは、しきい値以上のドロップ数が吐出インクのドロップ数の階調で画像を印刷する画素の濃度調整に汎用の濃度調整プロファイルを適用し、その画素にインクを吐出するノズル110cの中から選び出されたノズル110cが吐出するインクのドロップ数を1ドロップ減らす補正を行う。また、しきい値未満のドロップ数の階調で画像を印刷する画素の濃度調整に最小階調用の濃度調整プロファイルを適用し、その画素にインクを吐出するノズル110cの中から選び出されたノズル110cが吐出するインクのドロップ数を1ドロップ減らす補正を行う。
ステップS11に続くステップS13では、CPU90は、ノズル110cが吐出するインクのドロップ数を画素の濃度調整により一部補正した補正後の印刷データをプリンタ部102に出力して印刷ジョブを実行する。そして、一連の処理を終了する。
なお、画素の濃度調整に最小階調用の濃度調整プロファイルを適用すると、濃度調整する画素に画像を印刷するノズル110cの中から選び出されたノズル110cの吐出インクのドロップ数が1ドロップ増やされて、濃度調整後の画像の濃度が濃度調整前よりも濃くなる。一方、画素の濃度調整に汎用の濃度調整プロファイルを適用すると、選び出されたノズル110cの吐出インクのドロップ数が1ドロップ減らされて、濃度調整後の画像の濃度が濃度調整前よりも薄くなる。
このため、ある階調で画像を印刷するノズル110cの濃度調整に最小階調用の濃度調整プロファイルを適用し、それよりも1つ高い階調で画像を印刷するノズル110cの濃度調整に汎用の濃度調整プロファイルを適用すると、濃度調整前よりも濃度調整後の方が、両階調の画像同士の濃度差が小さくなる。
図8のグラフでは、1つのヘッドモジュール110aの複数のノズル110cが吐出するインクの量の平均値を、一つの画素に吐出するインクのドロップ数別に示している。なお、図中の「●」印でプロットしたのが濃度調整前の値、「○」印でプロットしたのが濃度調整後の値である。
なお、図8のグラフでは、しきい値を2ドロップとし、しきい値未満のドロップ数の階調である最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷するノズル110cの濃度調整には、最小階調用の濃度調整プロファイルを適用し、しきい値以上のドロップ数の階調である最大階調(6ドロップの吐出インク)及び中間階調(2〜5ドロップの吐出インク)で画像をそれぞれ印刷するノズル110cの濃度調整には、汎用の濃度調整プロファイルを適用した場合の例を示している。
図8のグラフに示す例では、最小階調用の濃度調整プロファイルを適用した濃度調整を行う最小階調で画像を印刷するノズル110cの平均インク吐出量と、汎用の濃度調整プロファイルを適用した濃度調整を行う最小階調よりも1つ高い階調(2ドロップの吐出インク)で画像を印刷するノズル110cの平均インク吐出量との差が、濃度調整前よりも濃度調整後において小さくなっている。このままでは、最小階調の画像と1つ上の階調の画像との階調差がつきにくくなる。
そこで、例えば、CPU90が、図7のステップS9において、しきい値以上の2〜6ドロップのうち最も少ない2ドロップの吐出インクで画像を印刷する階調、つまり、最小階調よりも1つ高い階調で画像を印刷するノズル110cの濃度調整に、汎用の濃度調整プロファイルを適用して、そのノズル110cの中から選び出されたノズル110cが吐出するインクのドロップ数を減らす補正を行った後に、次の補正をさらに行うようにしてもよい。
詳しくは、最小階調(1ドロップの吐出インク)よりも1つ高い階調(2ドロップの吐出インク)で画像を印刷する全てのノズル110cについて、1ドロップ当たりのインク吐出量を増やす補正をさらに行う。そうすることで、汎用の濃度調整プロファイルを適用した濃度調整により薄くなった最小階調よりも1つ高い階調の画像全体の濃度を、薄くなった分だけインク吐出量の増加により濃くして、濃度調整後の最小階調の画像と最小階調よりも1つ高い階調の画像との階調差を、正規の階調差に近付けることができる。これにより、各ドロップ数に応じた適切な階調性を保たせることができる。
あるいは、CPU90が、図7のステップS7において、しきい値未満のドロップ数のうち最もドロップ数が多い1ドロップの吐出インクで画像を印刷する階調、つまり、最小階調で画像を印刷するノズル110cの濃度調整に、最小階調用の濃度調整プロファイルを適用して、そのノズル110cの中から選び出されたノズル110cが吐出するインクのドロップ数を増やす補正を行った後に、次の補正をさらに行うようにしてもよい。
詳しくは、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する全てのノズル110cについて、1ドロップ当たりのインク吐出量を減らす補正をさらに行う。そうすることで、最小階調用の濃度調整プロファイルを適用した濃度調整により濃くなった最小階調の画像全体の濃度を、濃くなった分だけインク吐出量の増加により薄くして、濃度調整後の最小階調の画像と最小階調よりも1つ高い階調の画像との階調差を、正規の階調差に近付けることができる。これによっても、各ドロップ数に応じた適切な階調性を保たせることができる。
(ヘッドモジュール間の濃度調整)
図7の手順による濃度調整を実行すると、各ヘッドモジュール110a毎に、ノズル110cの画像濃度が均一となるように補正される。但し、各ヘッドモジュール110aにおいて画像濃度を均一とする補正の基準となる濃度は、ヘッドモジュール110a毎にそれぞれ異なる。
図9(a)は図7の手順による濃度調整を実行する前の各ヘッドモジュール110aの各ノズル110cを用いて印刷したテストパターンの印刷画像の例を示す説明図、(b)は濃度調整を実行した後の各ヘッドモジュール110aの各ノズル110cを用いて印刷したテストパターンの印刷画像の例を示す説明図、(c)はヘッドモジュール110a間の濃度調整をさらに実行した後の各ヘッドモジュール110aの各ノズル110cを用いて印刷したテストパターンの印刷画像の例を示す説明図である。
図9(a)に示す例では、3つのヘッドモジュール110aの各ノズル110cがそれぞれ吐出したインクにより印刷されたテストパターンの画像を、左から順に3つの画像で示している。1つ目の画像には濃度が薄い部分A、濃度が濃い部分B、中間の濃度の部分Cが存在し、2つ目の画像には濃度が濃い部分B、中間の濃度の部分Cが存在し、3つ目の画像には濃度が薄い部分A、中間の濃度の部分Cが存在している。
そして、ヘッドモジュール110a単位で、画像全体の濃度を濃い画素の濃度に合わせる濃度調整を実行すると、3つのうち2つのヘッドモジュール110aの各ノズル110cの画像濃度は、図9(b)に示す左から1つ目の画像と2つ目の画像のように、濃度が濃い部分Bの濃度に均一化される。一方、もう1つのヘッドモジュール110aの各ノズル110cの画像濃度は、図9(b)に示す左から3つ目の画像のように、中間の濃度の部分Cの濃度に均一化される。つまり、各ノズル110cの画像濃度が、3つのヘッドモジュール110aとも同じ画像濃度に統一されていない。
そこで、CPU90は、図7の手順による濃度調整を実行した後に、ノズル110cの画像濃度を各ヘッドモジュール110a間で一致させるための補正をさらに行うようにしてもよい。
その場合、例えば、濃度が濃い部分Bの濃度に各画素の濃度を均一化した2つのヘッドモジュール110aの濃度を、中間の濃度の部分Cの濃度に各画素の濃度を均一化した1つのヘッドモジュール110aの濃度に合わせて減らす補正を行ってもよい。反対に、中間の濃度の部分Cの濃度に各画素の濃度を均一化した1つのヘッドモジュール110aの濃度を、濃度が濃い部分Bの濃度に各画素の濃度を均一化した2つのヘッドモジュール110aの濃度に合わせて増やす補正を行ってもよい。
ところで、CPU90は、図7の手順による濃度調整を実行する際に、各ヘッドモジュール110aのノズル110cの画像濃度がどのような濃度に均一化されたかを、それぞれのヘッドモジュール110aの各ノズル110cのドロップ数補正内容に基づいて認識することができる。
また、CPU90は、図8のグラフを参照して説明したように、特定の階調で画像を印刷するノズル110cの1ドロップ当たりのインク吐出量を増減させた場合は、その増減量と増減対象のノズル110cとを認識することができる。
このため、CPU90は、各ヘッドモジュール110a毎に、均一化された各ノズル110cの画像濃度を認識することができる。
よって、CPU90は、自ら認識した各ヘッドモジュール110aの各ノズル110cのドロップ数補正内容に基づいて、ノズル110cの画像濃度を各ヘッドモジュール110a間で一致させるための補正の内容を決定することができる。
例えば、CPU90は、各ノズル110c間で濃度が均一化された各ヘッドモジュール110aの画像濃度のうち最も濃度が濃いヘッドモジュール110aの画像濃度に、他のヘッドモジュール110aの画像濃度を合わせる補正を行ってもよい。あるいは、CPU90は、各ヘッドモジュール110aの画像濃度のうち最も濃度が薄いヘッドモジュール110aの画像濃度に、他のヘッドモジュール110aの画像濃度を合わせる補正を行ってもよい。
さらに、CPU90は、例えば、全ヘッドモジュール110aの画像濃度の平均値に、全てのヘッドモジュール110aの画像濃度を合わせる補正を行ってもよい。
これらの補正は、最小階調用の濃度調整プロファイルや汎用の濃度調整プロファイルのように、調整目標のヘッドモジュール110aの画像濃度と濃度調整対象の各ヘッドモジュール110aの画像濃度との濃度差に応じて、濃度調整対象のヘッドモジュール110aのノズル110cから選び出したノズル110cが吐出するインクのドロップ数を1ドロップ増減させて行ってもよい。
また、吐出インクのドロップ数を増減させる代わりに、1ドロップ当たりのインク吐出量を増減させてもよい。
以上に説明した本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、画像を印刷した場合に濃度のばらつきが発生する画素が、一定以上の度合いで最小階調(1ドロップ)のインクを吐出するノズル110cに対応する画素中に存在する場合は、欠損画素Dの存在が印刷品質に影響する線画や写真が印刷画像に含まれているときに、画像を印刷した場合に濃度のばらつきが発生するのを防ぐために、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像が印刷される画素の濃度調整に最小階調用の濃度調整プロファイルを適用するようにした。
このため、印刷画像中に欠損画素Dが発生するのが好ましくない画像を印刷する場合に、最小階調(1ドロップ)のインクを吐出するノズル110cの吐出インクのドロップ数の補正に、濃度が濃い部分Bに合わせて他の部分A,Cの濃度を濃くする最小階調用の濃度調整プロファイルを適用して、欠損画素Dが発生しない調整内容でヘッドモジュール110aの各ノズル110cの画像濃度のばらつきを好適に解消することができる。
なお、図7の手順による濃度調整を実行した後に、ノズル110cの画像濃度を各ヘッドモジュール110a間で一致させるための補正をCPU90がさらに行うための構成は、省略してもよい。
また、本実施形態では、画像を印刷した場合に濃度のばらつきが発生する画素が、一定以上の度合いで最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像が印刷される画素中に存在するものの、印刷画像中に欠損画素Dが発生しても差し支えない画像を印刷する場合には、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像が印刷される画素の濃度調整に、濃度が薄い部分Aに合わせて他の部分B,Cの濃度を薄くする汎用の濃度調整プロファイルを適用するものとした。
しかし、この場合にも、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像が印刷される画素の濃度調整に、濃度が濃い部分Bに合わせて他の部分A,Cの濃度を濃くする最小階調用の濃度調整プロファイルを適用する構成としてもよい。
さらに、本実施形態では、画像を印刷した場合に濃度のばらつきが発生する画素が、一定未満の度合いでしか、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像が印刷される画素中に存在しない場合に、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像が印刷される画素の濃度調整を行わないものとした。
しかし、この場合にも、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像が印刷される画素の濃度調整に、濃度が薄い部分Aに合わせて他の部分B,Cの濃度を薄くする汎用の濃度調整プロファイルを適用する構成としてもよい。
また、本実施形態では、フラッシュメモリ93の濃度ムラ分布データを参照した結果、クライアント端末14から入力された印刷ジョブによって最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素中に、画像を印刷した場合に濃度のばらつきが発生する画素が一定以上の度合いで存在するときに限って(図7のステップS3でYES)、最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整を行うものとした。
しかし、クライアント端末14から印刷ジョブが入力されたら、その印刷ジョブによって最小階調(1ドロップの吐出インク)で画像を印刷する画素の濃度調整を無条件で行うようにしてもよい。
その場合は、図7のステップS3を省略し、図7のステップS1でクライアント端末14から印刷ジョブが入力された場合に(YES)、図7のステップS5に処理を移行する構成としてもよい。あるいは、図7のステップS5をさらに省略し、図7のステップS1でクライアント端末14から印刷ジョブが入力された場合に(YES)、図7のステップS7及びステップS9のどちらか一方に処理を移行する構成としてもよい。
そして、以上に説明した実施形態によって、以下に示す各態様の発明が開示される。
まず、第1の態様による発明として、
複数のノズル(例えば、図3のノズル110c)が吐出するインクにより形成される印刷媒体上の画像濃度(例えば、図5(a)の濃度が薄い部分A、濃度が濃い部分B、中間の濃度の部分C)を均一にするための、前記画像濃度が最も濃いノズル(例えば、図4の「濃いノズル」)に合わせて他のノズル(例えば、図4の「薄いノズル」と、「薄いノズル」及び「濃いノズル」以外のノズル)の前記画像濃度を調整する調整内容を定義した、少なくとも最小ドロップ数(例えば、図8の吐出ドロップ数1)のインクを吐出するノズルに適用する小ドロップ数用の濃度調整プロファイル(例えば、最小階調用の濃度調整プロファイル)のデータを記憶するプロファイル記憶部(例えば、図1のフラッシュメモリ93)と、
入力された印刷ジョブ(例えば、図1のクライアント端末14から入力された印刷ジョブ)に基づいて決定される吐出インクのドロップ数が少なくとも前記最小ドロップ数であるノズル(例えば、図8の吐出ドロップ数1のノズル110c)について、該ノズルが吐出するインクのドロップ数を前記小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正する吐出ドロップ数補正部(例えば、図1の制御ユニット10)と、
を備えるインクジェット記録装置(例えば、図1のインクジェット記録装置1)が開示される。
そして、第1の態様による発明のインクジェット記録装置によれば、印刷ジョブが入力されると、画像濃度が最も濃いノズルに合わせて他のノズルの吐出インクの画像濃度を調整する調整内容を定義した小ドロップ数用の濃度調整プロファイルを適用した濃度調整により、印刷ジョブに基づいて決定された吐出インクのドロップ数が少なくとも最小ドロップ数であるノズルのうち、画像濃度が最も濃いノズルとの濃度差に応じた割合で選び出されたノズルの吐出インクのドロップ数が、ドロップ数を増やすように補正される。
このため、印刷画像中に欠損画素が発生するのが好ましくない画像を印刷する場合に、印刷ジョブに基づいて決定される吐出インクのドロップ数が少なくとも最小ドロップ数であるノズルについて、ノズルの吐出インクのドロップ数を増やす補正を定義する小ドロップ数用の濃度調整プロファイルを適用して、最小ドロップ数のインクを吐出する各ノズルの画像濃度のばらつきを、欠損画素が発生しない調整内容で好適に解消することができる。
次に、第2の態様による発明として、
前記吐出ドロップ数補正部は、前記印刷ジョブが濃度調整条件(例えば、図7のステップS3)を満たす場合に、前記印刷ジョブに基づいて決定される吐出インクのドロップ数が少なくとも前記最小ドロップ数であるノズルの吐出インクのドロップ数を、前記小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するインクジェット記録装置が開示される。
第2の態様の発明によるインクジェット記録装置によれば、入力された印刷ジョブが濃度印刷条件を満たす場合に、印刷ジョブに基づいて決定される吐出インクのドロップ数が少なくとも最小ドロップ数であるノズルの吐出インクのドロップ数が、小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正される。
このため、最小ドロップ数のインクを吐出するノズルの画素濃度を濃度調整する必要がない画像を印刷する印刷ジョブが入力された場合は、小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容によるノズルの吐出インクのドロップ数の補正が無用に行われないようにすることができる。
次に、第3の態様による発明として、
前記濃度調整条件は、前記印刷ジョブの実行により前記印刷媒体上に形成される印刷画像が、前記最小ドロップ数のインクで画像が印刷される画素を一定以上の度合いで含んでいる(例えば、図7のステップS3でYES)ことで成立するインクジェット記録装置が開示される。
第3の態様による発明のインクジェット記録装置では、印刷ジョブの実行により印刷媒体上に形成される印刷画像が、最小ドロップ数のインクで画像が印刷される画素を一定以上の度合いで含んでいると、印刷ジョブにより特定された印刷画像のオブジェクト(例えば、線画や写真)が、最小ドロップ数のインクを吐出するノズルに対する吐出ドロップ数補正部の吐出インクのドロップ数の補正によって印刷品質が低下するオブジェクトを含んでいる(例えば、図7のステップS5でYES)場合に、そのオブジェクトが、印刷画像中の最小ドロップ数のインクで印刷される部分に配置される可能性が高くなる。
そして、濃度ムラをなくすために、印刷画像中の最小ドロップ数のインクで印刷される部分に、小ドロップ数用の濃度調整プロファイルを適用しない濃度調整を行って、その部分に欠損画素が発生すると、線画や写真のように画素の連続性や階調の連続性が重要視されるオブジェクトが、印刷画像中の最小ドロップ数のインクで印刷される部分に配置されている場合、それらのオブジェクト上に発生した欠損画素が、画像の印刷品質を大きく損ねることになる。
そこで、第3の態様による発明のインクジェット記録装置のように、印刷画像中の最小ドロップ数のインクで印刷される部分に、小ドロップ数用の濃度調整プロファイルを適用した濃度調整を行うと、その部分に欠損画素が発生しないので、線画や写真のようなオブジェクトが配置されていても、欠損がその存在により印刷品質が大きく損なわれることがない。
このため、濃度ムラや欠損画素の発生が印刷品質に影響する条件を印刷ジョブの印刷画像が備えているときに、画像濃度の調整に小ドロップ数用の濃度調整プロファイルを適用して、画像濃度の調整を印刷品質を損ねない内容で実行させることができる。
続いて、第4の態様による発明として、
前記プロファイル記憶部は、前記画像濃度が最も薄いノズル(例えば、図4の「薄いノズル」)に合わせて他のノズル(例えば、図4の「濃いノズル」と、「濃いノズル」及び「薄いノズル」以外のノズル)の前記画像濃度を調整する調整内容を定義した、少なくとも最大ドロップ数(例えば、図8の吐出ドロップ数6)のインクを吐出するノズルに適用する大ドロップ数用の濃度調整プロファイル(例えば、汎用の濃度調整プロファイル)のデータを記憶しており、前記吐出ドロップ数補正部は、前記印刷ジョブに基づいて決定される吐出インクのドロップ数が少なくとも前記最大ドロップ数であるノズル(例えば、図8の吐出ドロップ数6のノズル110c)について、該ノズルが吐出するインクのドロップ数を前記大ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するインクジェット記録装置が開示される。
そして、第4の態様による発明のインクジェット記録装置によれば、印刷ジョブが入力されると、画像濃度が最も薄いノズルに合わせて他のノズルの吐出インクの画像濃度を調整する調整内容を定義した大ドロップ数用の濃度調整プロファイルを適用した濃度調整により、画像濃度が最も薄いノズルとの濃度差に応じた割合で選び出された、少なくとも最大ドロップ数のインクを吐出するノズルの吐出インクのドロップ数が、ドロップ数を減らすように補正される。
このため、印刷ジョブに基づいて決定される吐出インクのドロップ数が少なくとも最大ドロップ数である、ドロップ数を増やす補正ができないノズルについてノズルの吐出インクのドロップ数を減らす補正を定義する大ドロップ数用の濃度調整プロファイルを適用して、最大ドロップ数のインクを吐出する各ノズルの画像濃度のばらつきを好適に解消することができる。
次に、第5の態様による発明として、
前記ノズルが吐出するインクのドロップ数を前記吐出ドロップ数補正部が前記大ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルのうち、最も少ないドロップ数のインクを吐出するノズル(例えば、図8の吐出ドロップ数2のノズル110c)のインク吐出量を、前記吐出ドロップ数補正部の補正内容(例えば、図5(a)の濃度が濃い部分Bや中間の濃度の部分Cの濃度を減らす補正)に対応する減少量(例えば、1ドロップ)に基づいて増やす吐出インク量増加補正部(例えば、図1の制御ユニット10)をさらに備えるインクジェット記録装置が開示される。
そして、第5の態様による発明のインクジェット記録装置によれば、ノズルが吐出するインクのドロップ数を吐出ドロップ数補正部が大ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルでは、画像濃度が最も薄いノズルとの濃度差に応じた割合で選び出されたノズルの吐出インクのドロップ数が、ドロップ数を減らすように補正される。すると、補正後の吐出インクにより形成される画像の濃度が薄くなる。
このため、ノズルが吐出するインクのドロップ数を大ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルのうち、最も少ないドロップ数のインクを吐出するノズルの吐出インクにより形成される画像は、ドロップ数を減らす補正により濃度が薄くなって、1つ低い階調の画像との階調差がつきにくくなる。
そこで、ノズルが吐出するインクのドロップ数を吐出ドロップ数補正部が大ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルのうち、最も少ないドロップ数のインクを吐出するノズルのインク吐出量を、吐出ドロップ数の補正内容に対応する減少量に基づいて増やすことで、画像の濃度をドロップ数補正後の濃度よりも濃くして、1つ低い階調の画像との階調差を付けやすくすることができる。これにより、各ドロップ数に応じた適切な階調性を保たせることができる。
続いて、第6の態様による発明として、
前記ノズルを複数有するヘッドモジュールをさらに備え、前記プロファイル記憶部は、前記ヘッドモジュールに対応する前記濃度調整プロファイルのデータをそれぞれ記憶しており、前記吐出ドロップ数補正部は、前記ヘッドモジュールの前記各ノズルが吐出するインクのドロップ数の補正に、該ヘッドモジュールに対応する前記濃度調整プロファイルに定義された調整内容を適用するインクジェット記録装置が開示される。
そして、第6の態様による発明のインクジェット記録装置によれば、複数のノズルがヘッドモジュールに設けられている場合に、ヘッドモジュールに対応する濃度調整プロファイルを適用して、そのヘッドモジュールに設けられている各ノズルが吐出するインクのドロップ数を補正するようにして、ヘッドモジュールに設けられている各ノズルの画像濃度のばらつきを好適に解消することができる。
なお、第6の態様による発明の変形例に係る発明として、
前記ヘッドモジュールを複数備え、前記吐出ドロップ数補正部による補正後の前記各ヘッドモジュール毎の前記画像濃度を均一にするための、前記画像濃度が最も濃いヘッドモジュールに合わせて他のヘッドモジュールの前記画像濃度を調整する前記ヘッドモジュール間の調整内容を、前記吐出ドロップ数補正部による前記各ヘッドモジュール毎の補正内容から決定するヘッド間濃度調整内容決定部(例えば、図1の制御ユニット10)と、該ヘッド間濃度調整内容決定部が決定した調整内容で、前記吐出ドロップ数補正部による補正後の前記各ヘッドモジュールの前記各ノズルが吐出するインクのドロップ数を補正するヘッド間吐出ドロップ数補正部(例えば、図1の制御ユニット10)とをさらに備えるインクジェット記録装置が開示される。
そして、第6の態様による発明の変形例に係るインクジェット記録装置によれば、ヘッドモジュールが複数存在する場合に、各ヘッドモジュールに対応する濃度調整プロファイルを適用して、そのヘッドモジュールに設けられている各ノズルが吐出するインクのドロップ数を補正するようにして、ヘッドモジュールに設けられている各ノズルの画像濃度のばらつきを好適に解消することができる。
続いて、第7の態様による発明として、
前記ノズルが吐出するインクのドロップ数を前記吐出ドロップ数補正部が前記小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルのうち、最も多いドロップ数のインクを吐出するノズル(例えば、図8の吐出ドロップ数1のノズル110c)のインク吐出量を、前記吐出ドロップ数補正部の補正内容(例えば、図5(a)の濃度が薄い部分Aや中間の濃度の部分Cの濃度を増やす補正)に対応する増加量(例えば、1ドロップ)に基づいて減らす吐出インク量減少補正部(例えば、図1の制御ユニット10)をさらに備えるインクジェット記録装置が開示される。
そして、第7の態様による発明のインクジェット記録装置によれば、ノズルが吐出するインクのドロップ数を吐出ドロップ数補正部が小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルでは、画像濃度が最も濃いノズルとの濃度差に応じた割合で選び出されたノズルの吐出インクのドロップ数が、ドロップ数を増やすように補正される。すると、補正後の吐出インクにより形成される画像の濃度が濃くなる。
このため、ノズルが吐出するインクのドロップ数を小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルのうち、最も多いドロップ数のインクを吐出するノズルの吐出インクにより形成される画像は、ドロップ数を増やす補正により濃度が濃くなって、1つ高い階調の画像との階調差がつきにくくなる。
そこで、ノズルが吐出するインクのドロップ数を吐出ドロップ数補正部が小ドロップ数用の濃度調整プロファイルの調整内容で補正するノズルのうち、最も多いドロップ数のインクを吐出するノズルのインク吐出量を、吐出ドロップ数の補正内容に対応する増加量に基づいて減らすことで、画像の濃度をドロップ数補正後の濃度よりも薄くして、1つ高い階調の画像との階調差を付けやすくすることができる。これにより、各ドロップ数に応じた適切な階調性を保たせることができる。