(第1の実施の形態)
本発明における電子デバイスの1の実施の形態である電気化学セルについて図面に基づいて説明する。第1の実施の形態の電気化学セル1は、主にパーソナルコンピューターや小型の携帯機器内部の基板に実装されて用いられる。
(電気化学セル)
図1(a)は、本実施の形態の電気化学セル1の外観図である。一例として直方体の形状で示されているが、トラック形状や円筒形状であっても良い。本実施の形態の電気化学セル1は、発電要素であるセル6を収納して容器として機能するベース容器2と、その開口部を気密に塞ぐための封口板として機能するリッド10を外装部品として備えている。本実施の形態の電気化学セル1の外装容器は、このベース容器2とベース容器2の開口部を封止するリッド10とから構成されている。
図1(b)は、(a)のAA断面を示す図である。凹状のベース容器2の中にセル6が収納され、さらに電解質7が充填され、凹状のベース容器2の上面に一周して設けられたシールリング9に押し当てられたリッド10によって気密に封止されている。凹状のベース容器2のベース底面2cには、一対の集電体金属膜であるパッド膜5が並置して配置されている。また、パッド膜5の底面であって、ベース底面2cからベース下面2dにかけて複数のビア配線3が形成されている。このビア配線3は、パッド膜5とベース下面2dに形成された接続端子4とを電気的に接続している。
一方、外装容器内にはセル6が収納されている。このセル6は、活物質と活物質を担持する金属からなる集電体からなる一組の電極シートが絶縁性のセパレータを挿んで巻回法や積層法などで構成されたものである。正極及び負極の集電体の端部には、セルリード8が形成されている。正極、負極のそれぞれのセルリード8は、一対のパッド膜5それぞれに対して、溶接により固定されている。セル6の正極、負極は接続端子4によって、実装される基板の実装用パターンに電気的に接続されることになる。
(ベース容器)
ベース容器2は上方を開放した箱体状のセラミックスからなる容器であって、長方形状のベース底部2aと、ベース底部2aの外縁に立設した長方形枠状のベース壁部2bを有している。このベース容器2の大きさは、一辺が5〜20mm程度、高さは1〜3mm程度とすることができる。図2(a)、(b)は、それぞれベース容器2のベース底面2cとベース下面2dを示す図である。図2(a)に示すベース底面2cには、導電性材料からなる一対のパッド膜5が配置されている。パッド膜5の下面には、破線で示されるビア配線3がそれぞれ6個設けられ、ベース下面2dに配置された接続端子4(同じく破線で示す)に垂直に接続されている。
なお、ベース容器2の材料としては、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化アルミ、ムライト及びこれらの複合材料からなる群から選ばれた少なくとも1種類を含むセラミックスが挙げられるが、これに限らない。ソーダライムガラスや耐熱ガラスなども使用可能である。ガラスは素材として長尺のものが利用できるので、小型のパッケージの場合は、1枚のガラスに多くの取り個数を設定でき、ベース部材の低コスト化が期待できる。
本実施の形態のベース容器2は、長方形状に打ち抜かれたベース底部2aに対応するセラミックグリーンシートに、長方形枠状に打ち抜かれたベース壁部2bに対応するセラミックグリーンシートを貼り合せた後、焼成することにより形成される。なお、ベース底部2aに対応するセラミックグリーンシートにパンチングによりあらかじめ孔を開けることにより貫通孔を形成することができる。
(ビア配線)
ビア配線3は、ベース容器2のベース底面2cからベース下面2dにかけて形成された配線である。このビア配線3は、まず、ベース底部2aに、ベース底面2cとベース下面2dとを略垂直に貫通して接続する貫通孔が設けられ、そして貫通孔にはタングステンのペーストを充填することにより形成される。また、ビア配線3により、貫通孔の気密が満たされている。
なお、ビア配線3に使用するペーストとしては、炭素と樹脂を混合したペーストや、タングステン、モリブデン、ニッケル、金、又はこれらの複合材料と樹脂を混合したペーストを用いることができる。
貫通孔に充填されたペーストは、ベース容器2となるセラミックグリーンシートと共に焼成することによりビア配線3となる。
なお、前述のとおり、ベース容器2をソーダライムガラスや耐熱ガラスなどのガラス素材で形成する場合、これらのガラスに凹部や貫通孔を形成する手段としては、化学的なエッチング法、サンドブラストのような物理的方法、あるいは高温雰囲気において型を用いて凹部と貫通孔を同時に形成することができる。そして、貫通孔の内面にアルミニウム膜を形成した後、熱膨張係数をマッチングさせたガラスペーストを貫通孔に充填し、脱バインダ及び焼成を実施することにより、気密で導電性を有するビア配線3を形成することができる。このような場合は、ビア配線3が電解質7により溶解するという懸念はない。また、ビア配線3の内面を形成する膜はアルミニウムに限定されることなく、チタンなどのその他の弁金属を含む膜であってよい。
(接続端子)
図2(b)に示すベース下面2dには、パッド膜5に対向するように一対の接続端子4が設けられている。接続端子4は、リフロー処理などにより、実装基板のパターンに設けられたクリームハンダなどで基板に固着される。
本実施の形態では、ベース容器2となるセラミックグリーンシートにあらかじめタングステンによる電極のパターンを印刷し、当該セラミックグリーンシートを焼成することにより、接続端子4を形成することができる。また、接続端子4は、印刷法により形成したタングステンのパターンに、ニッケルと金とからなるメッキ膜が施されている。さらに、ベース側面2eの凹部にもタングステンやこれらメッキ材料がパターニングされ接続端子の一部として機能する。
(パッド膜)
パッド膜5は、ベース底面2cの2箇所に配置される導電性材料からなる略矩形状の膜である。このパッド膜5は、ビア配線3の上端部と電解質7との直接の接触を防止すると共に、セルリード8を溶接により接続するための部分として設けられている。なお、本実施の形態のパッド膜5は、図2(a)に示されるようにベース容器2の長手方向に並置されているが、短辺方向に並置することや、長手方向の対角線方向に並べることも可能である。
パッド膜5は、アルミニウムやチタン等の化学的に安定な弁金属からなる膜であり、電解質7に溶解しにくい材料からなる。これらの膜は、例えば、蒸着、イオンプレーティングやスパッタリングなどの周知の膜形成方法によって設けることができる。これらの方法による場合は、まず、タングステンなどの金属が貫通孔に印刷法等により充填・焼成されて気密なビア配線3が仕上がった後に形成する。真空中で成膜する場合は、例えば、正負のパッド膜5をそれぞれ構成するように、互いに空間的に分離した2つの開口を持つようにパターニングした金属製等のマスクを準備して、成膜のチャンバーの中に収納し、真空排気系で所定の真空度に排気した後、弁金属材料と蒸発させたり、弁金属材料からなるターゲットを物理的にイオンで叩いて材料を飛ばすなどして、ベース底面2cに成膜する。これらの成膜法では、成膜の条件が制御し易いので、形成した膜の抵抗率が低く、かつ液体が浸透しにくい高密度な膜が形成できる。
また、アルミニウムの膜はスクリーン印刷法によっても形成可能である。高温では酸化しやすいアルミニウムにおいても、150℃以下の温度で配線パターンを形成可能な技術が開発されている。印刷法であるので、蒸着法などの薄膜形成技術に比較して厚く、数十ミクロンの厚膜も容易である。
さらに、アルミニウム膜は電気メッキ法により作製することも可能である。ジメチルスルホンと塩化アルミニウムからなるメッキ液を用いて、約40μmの膜厚で形成した膜が、表面が平滑で、膜の内部も均一な膜であることが知られている。
続いて、パッド膜5の厚みについて述べる。膜厚は5μm以上でかつ100μm以下が望ましい。好ましくは、10μm以上で30μmの範囲がよい。膜厚が薄いと膜内部に存在する微細なポーラスが繋がって電解質7がパッド膜の下にあるタングステンに浸透してタングステンの電解腐食を引き起こしやすいこと、及び、後述の様に、溶接でセルリード8と接続されるときに、溶接の条件が極めて限定されて信頼性ある接合の実現が難しくなることによる。
ここで、厚さ約1.3mmのソーダライムガラス板に、パッド膜5の厚みが5μmのアルミニウム膜をイオンプレーティング法により形成したのち、厚みが80μmのアルミニウムの薄板を超音波溶接で溶接させる実験を実施した。セルリード5個中1個のサンプルはガラス板に微小なクラックの発生が認められた。従って、5μmは膜厚としては実用上の下限値である。実用的には、膜厚は10μm以上あることが望ましい。
一方、蒸着法やイオンプレーティング法によるアルミニウムの蒸着レートは、1時間当たり3μm〜10μmである。蒸着時間を考慮すると30μm以下の厚みが好ましく、この場合の成膜時間は長くても4〜5時間程度である。100μm程度まで厚く形成した場合は、溶接でセルリード8に接続するときの溶接条件を広くとることができ、下地となるセラミックスにクラックが誘発される可能性を極めて低くすることができるが、成膜時間が長時間に及ぶ。
(セル)
続いて、電子素子であるセル6に関して説明する。セル6は、厚みが5μm〜100μmのアルミニウム箔や銅箔を集電体とし、その表面に活物質を塗工や接着法により担持した正負の一対の電極シートを、絶縁物からなるセパレータを挟んで巻回、積層、折畳みなどの手法で一体化した発電要素である。
電気二重層キャパシタの場合、活物質の代表的な材料として、活性炭ないし炭素が挙げられる。リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等の化合物が用いられ、負極活物質としては、例えば黒鉛やコークスのほかシリコン酸化物等が用いられる。活物質ペーストは、上記の活物質に、導電補助剤、バインダ、分散剤等を混合して適当な粘度に調節したものであり、これをローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード法などの方法により、集電体の両面または片面に塗工する。塗工後に、乾燥、プレス工程を得て電極シートが形成される。
セパレータは、正極及び負極の直接的な接触を規制するものであり、大きなイオン透過度を有し、所定の機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。例えば、耐熱性が求められる環境においては、ガラス繊維の他、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド等の樹脂を用いることができる。また、セパレータの孔径、厚みに関しては、特に限定されるものではないが、使用機器の電流値や、電気化学セル1の内部抵抗に基づいて決定される。また、セラミックスの多孔質体をセパレータとして用いることも可能である。
(電解質)
電解質7は、公知の電気二重層キャパシタや非水電解質二次電池に用いられる液体状、ゲル状のものが好ましい。
液体状及びゲル状の電解質7に用いられる有機溶媒には、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボーネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(γBL)、スルホラン、プロピオン酸エステル、鎖状スルホンなどがあり、これらを単一または混合して用いことができる。
特に、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(γBL)、スルホランなどの高沸点の主溶媒に対し、プロピオン酸エステルや鎖状スルホンを副溶媒として含有させたものが適しているが、これらに限定されるものではない。
液体状及びゲル状の電解質7に含まれる材料には、(C2H5)4PBF4、(C3H7)4PBF4、(CH3)(C2H5)3NBF4、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4PPF6、(C2H5)4PCF3SO4、(C2H5)4NPF6、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]、チオシアン塩、アルミニウムフッ化塩、リチウム塩などを用いることができる。液体状の電解質7の支持塩としては、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩などが挙げられる。この4級アンモニウム塩としては、脂肪鎖のみを有する化合物、脂肪鎖と脂肪環を有する脂環式化合物、もしくは脂肪環のみを有するスピロ化合物が挙げられる。特に、スピロ化合物である5−アゾニアスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレート(スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム:SBP−BF4)は電気伝導率が高いため使用に適しているが、これに限定するものではない。
また、ゲル状の電解質7は、液体状の電解質をポリマーゲルに含浸させたものである。ポリマーゲルとしては、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデンが適しているが、これらに限定するものではない。
更に、ピリジン系や脂環式アミン系、脂肪族アミン系やイミダゾリウム系のイオン性液体やアミジン系等の常温溶融塩を用いても構わない。
(セルリード)
セルリード8は、セル6から電力を取り出すための端子である。このセルリード8は、集電体そのものを細く延長させた延長部や、別の細く薄い板やワイヤ状のリードを機械的に接続して延長部を形成したものが用いられる。本実施の形態のセルリード8は、集電体そのものを延長させたものであり、このセルリード8がパッド膜5と接触する接続部8aにおいて、セルリード8とパッド膜5との界面に形成された溶接部5aにより固定されている。
図3及び図4に示されるように、各セルリード8の接続部8aは、後述する超音波溶接機20の凸状部22bが押し付けられることにより形成された複数の凹み部8bを有している。具体的に凹み部8bは、格子状に配列されており、詳しくは、接続部8aにおいてセルリード8の幅方向に3列、長さ方向に2行の計6個形成されている。本実施の形態の凹み部8bは、平面視において正方形状(図4参照)で、かつ断面視において逆台形状(図6参照)である逆截頭四角垂状に形成されている。なお、本実施の形態の各凹み部8bは、その底面がパッド膜5の上面と略同じ(僅かに高い又は、図示されるように僅かに低い)位置となるように形成されており、凹み部8bにおいては、セルリード8が潰れきった状態とされている。
また、図4に示されるように、本実施の形態では、平面視において凹み部8bを囲むように、セルリード8とパッド膜5との境界部に略方形枠状の溶接部5aが形成されている。ここで、略方形枠状の溶接部5aの内縁と外縁との幅をBとし、セルリード8の厚さをTとした場合(図6参照)、溶接部5aの幅Bはセルリード8の厚さT以上の値とされている。
さらに、本実施の形態の溶接部5aは、配列方向において、両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離がセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。具体的には、図4に示されるように、セルリード8の幅方向において両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離D1がセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成され、セルリード8の長さ方向において両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離D2がセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
本実施の形態のセルリード8は、図3に示されるように、セル6をベース容器2の外に置くことができる程度の長さであって、パッド膜5と溶接する際に超音波溶接機20のホーン22(図5参照)の移動の妨げにならない程度の長さにすることが望ましい。過度に長くすると内部抵抗が増加するからである。
なお、セル6は、セルリード8とパッド膜5とを溶接した後、ベース容器2の中に収納されるが、この際、セルリード8はベース容器2内部で折り畳まれる。また、セルリード8を折り畳む際は、セル6のショートを回避するため、セルリード8がシールリング9に接触しないように注意する必要がある。
(セルリードの溶接方法)
次に、セルリード8とパッド膜5との具体的な溶接方法を説明する。
セルリード8とパッド膜5の溶接として、例えば、超音波溶接、ビーム溶接、抵抗溶接等の局所的な溶接方法が挙げられる。即ち、これらの溶接手段は、溶接の対象となる部分が局所的であるので熱的な影響は溶接部近傍のみに留まり、セル6自体への影響を避けることがきる。また、セルリード8の材料、厚み、パッド膜5の材料と貫通孔の配置などを変更することで、溶接の機械的あるいは熱的な衝撃による構成部材への影響を低減できる。上記構成にすることで、セラミックス等の材料からなるベース容器2に対してもクラックの発生による部材への損傷を回避することが可能である。
本実施の形態では、上述の溶接方法のうち、超音波溶接を採用している。
図3は、セル6に接続する一対のセルリード8と一対のパッド膜5とを示す図である。一対のセルリード8の先端は、パッド膜5の表面に置かれた後、超音波溶接機20により溶接され、パッド膜5とセルリード8が接合される(図5参照)。本実施の形態では、超音波溶接を用いることで、セルリード8とパッド膜5の接合界面で、それぞれの部材を構成する材料の原子的な拡散が起こり、強固な接合が可能となる。
ここで、図3及び図5に示されるように、セルリード8におけるパッド膜5との接続部分である接続部8aは、パッド膜5においてビア配線3の被覆位置を避けるように設けられている。ビア配線3の被覆位置におけるパッド膜5は、ビア配線3の凹凸の影響をうけて、平坦ではない。そこに圧力をかけ、溶接を行うと荷重が集中してベース容器2が損傷する可能性がある。また、ビア配線3付近のパッド膜5に圧力、熱、振動が加わり密着性が失われたり、パッド膜5にクラックや破れが発生したりすると、パッド膜5とビア配線3との電気的な接続が失われると共に、ビア配線3の上端面が電解質7と接触し、ビア配線が電解質7中に溶出することになる。そのため、パッド膜5においてビア配線3の被覆位置を避ける位置にセルリード8の接続部8aを設け、ビア配線3の被覆位置に圧力、熱、振動が伝わらないようにしている。
図5及び図6を用いて超音波溶接の具体的な方法について説明する。超音波溶接機20は、超音波溶接を行う対象物を載置するためのアンビル24と、対象物を振動させるためのホーン22とを有している。ホーン22の先端部22aには、平面視において正方形状で、かつ断面視において逆台形状(逆截頭四角垂状)の凸状部22bが設けられている。なお、本実施の形態の凸状部22bはホーン22の先端部22aに一体的に形成されているが、別体のチップに凸状部22bを形成し、これをホーン22の先端部22aに別途取り付けてもよい。図6に示されるように、この凸状部22bの長さLは、セルリード8の厚さT以上となるように形成されている。また凸状部22bは、先端部22aにおいて3列×2行の計6個設けられている。
超音波溶接では、まず、超音波溶接機20のアンビル24の上にベース容器2を設置すると共に、パッド膜5の上にセルリード8を位置決めして密着させる。このとき、図5に示されるように、ベース容器2は凸状部22bが長手方向に3個、短手方向に2個となる向きにアンビル24の上に設置する。また、セル6は超音波溶接機20のホーン22の移動の妨げにならないように、ベース容器2の外に置かれる。次に、ホーン22を図示しない移動機構によりアンビル24側に下降させ、凸状部22bを接続部8aにあるセルリード8の上面に押し付ける。上述のように、凸状部22bは、セルリード8の厚さT以上の長さを有しており、凸状部22bが押し付けられた接続部8aには、逆截頭四角垂状の凹み部8bが形成される。このとき、先端部22aは接続部8aの凹み部8b以外の領域とは接触しない。
凸状部22bが接続部8aにあるセルリード8を潰れきるまで押し付けた状態で、超音波溶接機20が図示しない発振機構により数十kHzからなる超音波をホーン22に加えることで、凸状部22bがセルリード8とパッド膜5との境界部を擦り合わせる。これにより、セルリード8とパッド膜5との界面は、金属材料の清浄な表面同士の密着面となり、数十ミリ秒から数百ミリ秒の僅かな時間で圧接することができる。本実施の形態では、平面視において凹み部8bを囲むように略方形枠状の溶接部5aが形成される(図4参照)。また、接続部8aにおいては溶接部5aが形成されず、凸状部22bに押し付けられなかった領域では、セルリード8とパッド膜5の間に僅かな隙間を保った状態となる(図6参照)。
超音波溶接によれば、接合界面に自然酸化膜などの汚染が存在しても、接続抵抗がmΩ台、あるいはmΩ以下の十分に低い接合が可能となる。これによって、導電性接着剤などによる接合方法に比較して、接続抵抗を10分の1から100分の1に低減させることが出来る。また、接続抵抗値のバラツキを抑え、かつ経時変化の少ない接合が可能となる。
また、溶接部5aの面積を大きくすることにより、接続抵抗値を一層低減できると共に、セルリード8とパッド膜5の間の引っ張り強度を向上させることができる。そのため、セルリード8を変形させて容器の内部にセル6を収納させる製造工程において、溶接の剥がれ等の不良の発生を抑制できるほか、完成した電気化学セル1の耐振動特性や落下衝撃特性などの機械的な信頼性を向上させることができる。
一方、超音波溶接に際し、接続部8aにあるセルリード8を押し付ける面積が大きい場合、セルリード8をずらさずに保持するための圧力を得るためには大きな荷重が必要となる。そして、セルリード8を押し付ける荷重が増加すれば、ベース容器2が破損する可能性が生ずる。本実施の形態では、接続部8aにおいてセルリード8を凸状部22bで押し付けることにより、セルリード8をずらさず保持するための圧力を変えることなく、ベース容器2に掛かる荷重を小さくしている。
なお、凸状部22bがセルリード8の表面に当接する際に、大きな衝撃とならないように注意することが好ましく、移動機構には、ダンパーなどの衝撃吸収機構を備えるのがよい。これにより、ベース容器2が破損をさらに抑制できる。
なお、超音波溶接においては、振動だけでなく、熱エネルギーと機械的な圧接力を併用することも可能である。
また、1つのパッド膜に1つのセルリード8を溶接していたがセルリード8の数は、複数であっても良い。活物質を担持する集電体の長さを長くしたい場合は、集電体に複数のセルリードを設けることができる。この場合には、これら複数のセルリード8を1つのパッド膜に接続できると抵抗分を低減することができ、好ましい。
(シールリング)
シールリング9は、図3に示されるように、ベース容器2のベース壁部2bの上端面の形状に合わせた四角枠状の断面を有しており、ベース壁部2bの上端面にロウ材を介して接合されている。このシールリング9は、熱膨張係数がセラミックスの熱膨張係数と近い材料、例えば、鉄・コバルト・ニッケル合金であるコバールなどを用いることができる。また、ロウ材は、Ag−Cu合金やAu−Cu合金などから形成されている。
(リッド)
リッド10は、図1(a)及び(b)に示されるように、シールリング9の上面に接合されており、ベース容器2を密封している。リッド10には、熱膨張係数がセラミックスの熱膨張係数と近いコバールや42alloyなどの合金にニッケルメッキを施したものが使用される。具体的には、コバールの0.1mmから0.2mm程度の厚みを有する薄板で、表面には2μmから4μm程度の厚みで電解ニッケルメッキや無電解ニッケルメッキが施されたものが用いられる。このような材料を用いたリッド10は、例えば、抵抗シーム溶接、レーザーシーム溶接などによってシールリング9に溶接させることができ、塞がれた状態のベース容器2内部の気密性を向上させる。
リッド10とシールリング9を溶接する方法として用いられる抵抗シーム溶接では、リッド10をシールリング9に当接させた後に、リッド10の長辺側の略中心の2点に、対向した台形形状のローラー電極を配置して低電圧大電流を短時間流し、リッド10の仮溶接(スポット溶接)が行われる。このようにして、リッド10は仮に固定され、溶接作業中の振動等で位置がずれことはない。
続いて、例えば、長辺の端からローラー電極で長辺がなぞられるようにベース容器2とリッド10が移動して溶接される。次に、ベース容器2とリッド10は90度回転され、同様に短辺が溶接される。このようにして、リッド10の一周に亘って溶接が行われる。前述した仮固定においても、本抵抗シーム溶接においても、リッド10とシールリング9との界面で、金とニッケルの拡散が発生し、気密で強固な拡散接合層が形成される。これにより、リッド10は、ベース容器2に気密に封止される。
リッド10とシールリング9の溶接は、レーザーの走査照射を用いても可能である。仮溶接を前述と同様に実施した後、レーザーを、リッド10を一周するように走査照射する。これにより、リッド10とシールリング9の界面で拡散接合層が形成される。この場合、リッド10の接合側の面に銀と銅からなるロウ材のシートを貼ることにより、溶融温度をロウ材の温度まで低下させることも可能である。
なお、電解質7が常温で液体状の溶媒や支持塩からなり、リッド10を封止する前に電解質7を充填する工程を採用する場合は、液体がリッド10とシールリング9の界面に存在する場所が有得る。このような場合でも、シーム溶接を用いた接合は可能である。シーム溶接は、ローラー電極を使用するものでも、レーザーの走査照射を用いるものでもかまわない。前記界面に液体が存在しても気密な溶接が可能となるのは、界面に存在する液体は、溶接時に近傍の温度が急激に上昇するので蒸発して飛散することによるものと考えられる。
なお、シールリング9を使用せず、ベース容器2の上端面とリッド10とをロウ材を介して接合させてもよい。
(製造方法)
次に、図7に示す電気化学セルの製造フローを参照しながら、本実施の形態の製造方法について説明する。まず、外装容器として、図1(a)及び(b)に示す凹状の形状をなすベース容器2と、リッド10を準備した。ベース容器2は、長辺が10mm、短辺が8mm、高さが1.66mm(最大1.8mm)であり、ベース容器2の底辺の厚みは0.4mmである。材料としては、セラミックスで電子部品のパッケージを製造する時の標準的な材料を用いた。このベース容器2は、長方形状に打ち抜かれたベース底部2aに対応するセラミックグリーンシートに、長方形枠状に打ち抜かれたベース壁部2bに対応するセラミックグリーンシートを貼り合せた後、約1500℃で焼成することにより形成される。ビア配線3は外径を0.2mmとし、ベース底面2cとベース下面2dを直接貫通するように、正極側と負極側にそれぞれ6個ずつ設けた。また、ビア配線3の表面にニッケルと金のメッキを施した。ベース下面2dには、一対の接続端子4が配置され、ビア配線3に接続している。接続端子4にはニッケルを下地とした金メッキが施されている(S10)。
次に、ベース底面2cに、アルミニウムの蒸着膜からなる一対のパッド膜5を形成した。パッド膜5の寸法は、短辺2.4mm、長辺5mmで厚みは約15μm以上である(S11)。
一方、リッド10は、長辺が9mm、短辺が7mm、厚み0.125mmのコバール板を準備し、表面に電解ニッケルメッキを施した(S20)。
続いてセル6の準備をする。20μmの厚みを持つアルミニウムからなる集電体に活性炭、導電補助材、バインダ及び増粘材からなる活物質を塗工法によりコーティングしてシート電極とした(S30)。適当な長さに切断した後、集電体の一端に、厚みが80μmで幅が1.5mm、長さ4mmのアルミニウムの薄板を超音波溶接で取り付けてセルリード8とした(S31)。セルリード8が溶接された正負一対のシート状の電極に、ポリテトラフルオロエチレンからなるセパレータを挟持させた後、巻芯を入れて、トラック状に巻回した。その後、巻芯を取り出し、隙間を軽くつぶして巻回電極とした(S32)。
続いて、超音波溶接を行う。先に準備したベース容器2のパッド膜5の表面に、セルリード8を密着させて位置決めした。超音波溶接は、セルリード8を片方ずつ行った(S33)。超音波溶接機20の発振周波数は40kHzとした。ホーン22は鉄製であり、先端部22aにおいては2.0×1.5mmの領域に3列×2行の計6個の凸状部22bが形成されている。この凸状部22bの長さLは0.2mmである。溶接のモードは、溶接中にセルリード8に供給するエネルギーを制御するモードとし、溶接エネルギーの設定値を50〜100Jの範囲とし、溶接時間を50〜2000msecの範囲とした。ホーン22が、エアー機構によりアルミニムからなるセルリード8の表面に降下した後、凸状部22bがセルリード8の表面に食い込んで、セルリード8とパッド膜5の界面の間で振動することにより溶接が行われる。
なお、本実施の形態では、両電極のセルリード8に対して片方ずつ超音波溶接を行ったが、これに限らず、2つの接続部8aを覆うことが可能な幅広のホーン22を用意し、両電極のセルリード8を同時に溶接してもよい。例えば、先端部22aにおいて5.6×2.1mmの領域に8列×3行の計24個の凸状部22bが形成されているホーン22を使用して、両電極のセルリード8に対して同時に超音波溶接を行うことができる。この場合、片側のセルリード8におけるパッド膜5との接続部8aでは、3列×3行の計9個の凹み部8bが形成される。すなわち、パッド膜5の存在しない2列の凸状部22bはセルリード8とは接触せず、両側3列の凸状部22bにより凹み部8bが形成される。
溶接終了後、セルリード8を折り畳むようにしてセル6をベース容器2の中に収納した。この時に、セルリード8がシールリング9に接触しないように注意した(S34)。セルのショートを回避するためである。
次に、セル6が収納されたベース容器2を、液体の電解質7の中に浸漬させ、1時間真空脱泡した。ここで、電解質7の支持塩はスピロビピロリジニウムテトラフルオロボレートであり、非水溶媒としてポリカーボネートとエチレンカーボネートの混合液を用いた(S35)。続いて、大気圧に戻して、電解質7中からセル6が収納されたベース容器2を取り出した後に、窒素雰囲気下でリッド10をシールリング9に当接し、長辺側の2点の仮溶接を行い、続いて長辺側と短辺側をこの順に連続して抵抗シーム溶接を行い気密に封止した(S36)。このようにして本実施の形態の電気化学セル1を作製した。なお、最後に作製した電気化学セル1の電気特性検査を行う(S37)。項目としては等価直列抵抗及び容量の測定であるがこれに限らない。
(第1の実施の形態のまとめ)
本実施の形態の電気化学セル1は、凹状のベース容器2の中に発電素子であるセル6が収納される共に、セル6から延出されるセルリード8がベース容器2のベース底面2cに形成されたパッド膜5に溶接されている。ここで、本実施の形態は、セルリード8におけるパッド膜5との接続部8aにおいて、超音波溶接機20のホーン22の先端部22aに設けられた凸状部22bが押し付けられることにより形成される複数の凹み部8bを有している。
超音波溶接を行う場合は、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきる程度に凸状部22bが押し付けられると共に、ホーン22に振動を加えることにより、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において凹み部8bを囲むように溶接部5aが形成される。
このように、本実施の形態では、超音波溶接機20のホーン22(凸状部22b)をセルリード8におけるパッド膜5との接続部8aの全面ではなく、凹み部8bが形成される一部の面に対して押し付けることで、セルリード8とパッド膜5との溶接が行われる。
ここで、従来技術である比較例との対比により本実施の形態の効果を説明する。図16及び図17に比較例を示す。なお、本実施の形態と同じ構成には同じ符号を付している。図16に示されるように比較例のベース容器2においてもベース底面2cにパッド膜5が形成されている。ここで、セルリード8におけるパッド膜5との接続部8aに対して、超音波溶接機20のホーン22の先端部22aが押し付けられると共に振動が加えられることにより、図17に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部の全面に溶接部5aが形成される。
ここで、セラミックス製のベース容器2のベース底部2aにはパッド膜5やビア配線3の形成及びベース壁部2bの張り合わせのため、これらパッド膜5やビア配線3及びベース壁部2bに起因して生ずる応力により、ベース容器2は下面が湾曲している場合がある(図16参照)。このようなベース容器2において、超音波溶接を行う際、ベース容器2をアンビル24の上に設置し、ホーン20をセルリード8のパッド膜5との接続部8a全面に押し付けると、押し付ける際の荷重によりベース容器2が破損することがある。また、ベース容器2の下面が湾曲していない場合であってもホーン20を押し付ける荷重が大きいとベース容器2が破損することがある。
これに対し、本実施の形態の電気化学セル1によれば、超音波溶接の際、ホーン22(凸状部22b)をセルリード8におけるパッド膜5との接続部8aの全面ではなく一部の面に対して押し付ける。これにより、セルリード8を保持するのに必要な圧力を変えることなく、ベース容器2に掛かる荷重を小さくすることができ、ベース容器2の破損が抑制される。
また、本実施の形態では凹み部8bが形成されることでセルリード8が潰れきった場合でも凹み部8bの周囲に形成される略方形枠状の溶接部5aにより良好な接続を得ることができる。ここで、本実施の形態では、略方形枠状の溶接部5aの内縁と外縁との幅Bはセルリード8の厚さT以上の値となるように形成されている(図6参照)。すなわち、本実施の形態では、セルリード8の厚さT以上の幅の溶接部5aが形成される。そのため、本実施の形態の電気化学セル1によれば、厚さの薄いセルリード8を溶接する場合でも溶接部5aにおける破断を抑制することができる。
さらに、本実施の形態の溶接部5aは、配列方向(セルリード8の幅方向又は長さ方向)において、両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている(図4参照)。ここで、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がセルリード8の幅Wの半分を下回ると、配列方向に対して斜め方向に力が集中しやすく、溶接部5aの角部から破断しやすい。これに対して、本実施の形態では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aによる固定部分の距離はセルリード8の幅Wの半分以上の距離を確保している。すなわち、本実施の形態の電気化学セル1によれば、セル6をベース容器2内に収納する際、セルリード8が引っ張られたり、折り曲げられたりした場合における溶接部5aの破断を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、3列×2行の計6個の凸状部22bが形成されているホーン22を使用して、各電極のセルリード8に対して3列×2行の計6個の凹み部8bを形成したが、凸状部22b及び凹み部8bの配列(列方向及び行方向の数)や大きさ(幅)はこの限りではない。ベース容器2、セルリード8、及びパッド膜5などの材質、形状、大きさなどによって選択することができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、各セルリード8におけるパッド膜5との接続部分である接続部8aにおいて複数の凹み部8bが形成され、それぞれの凹み部8bを囲むように略方形枠状の溶接部5aが形成されていた。これに対し第2の実施の形態では、接続部8aにおいて複数の凹み部8bが形成されているものの、溶接部5aは平面視において凹み部8bと対応する位置に形成されている。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
具体的には、各セルリード8の接続部8aは、超音波溶接機20の凸状部22bが押し付けられることにより格子状に配列された6個の凹み部8bを有している。本実施の形態の凹み部8bは、平面視において正方形状(図8参照)で、かつ断面視において逆台形状(図9参照)である逆截頭四角垂状に形成されている。なお、本実施の形態の各凹み部8bは、図9に示されるように、その底面がパッド膜5の上面よりも高い位置となるように形成されており、凹み部8bにおいては、セルリード8が潰れた状態とされている。補足すると、本実施の形態では、第1の実施の形態の凹み部8bのようにセルリード8は潰れきってはいない。つまり、本実施の形態の凹み部8bは、超音波溶接機20の凸状部22bがセルリード8を押し付ける際の圧力を第1の実施の形態よりも低く設定して形成されたものである。
また、図8及び図9に示されるように、本実施の形態では、平面視における凹み部8bに対応する位置であって、セルリード8とパッド膜5との境界部に略正方形状の溶接部5aが形成されている。ここで、略正方形状の溶接部5aの幅をBとし、セルリード8の厚さをT、凹み部8bの幅をCとすると、溶接部5aの幅Bはセルリード8の厚さT以上凹み部8bの幅C以下の値とされている。
さらに、本実施の形態の溶接部5aは、配列方向において、両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離がセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。具体的には、図8に示されるように、セルリード8の幅方向において両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離D1がセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成され、セルリード8の長さ方向において両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離D2がセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
ここで、セルリード8のパッド膜5への溶接方法については、第1の実施の形態と同じである。すなわち、超音波溶接に際し、ホーン22を図示しない移動機構によりアンビル24側に下降させ、凸状部22bを接続部8aにあるセルリード8の上面に押し付ける。このときの圧力は、セルリード8が潰れきらない程度であって、超音波溶接における振動時にセルリード8を保持する凸状部22bがずれない程度とする。
そして、本実施の形態では、平面視において凹み部8bに対応する位置に溶接部5aが形成される。接続部8aにおいて溶接部5aが形成されず、凸状部22bに押し付けられなかった領域では、セルリード8とパッド膜5の間に僅かな隙間を保った状態となる(図9参照)。
(第2の実施の形態のまとめ)
以上のように構成された第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、本実施の形態の電気化学セル1によれば、超音波溶接の際、ホーン22(凸状部22b)をセルリード8におけるパッド膜5との接続部8aの全面ではなく一部の面に対して押し付ける。これにより、セルリード8を保持するのに必要な圧力を変えることなく、ベース容器2に掛かる荷重を小さくすることができ、ベース容器2の破損が抑制される。
また、本実施の形態では凹み部8bに対応する位置に形成される溶接部5aにより良好な接続を得ることができる。特に、本実施の形態の溶接部5aは、図8に示されるように、その幅Bがセルリード8の厚さT以上凹み部8bの幅C以下の値となるように形成されている。すなわち、本実施の形態では、凹み部8bの領域内にセルリード8の厚さT以上の幅の溶接部5aが形成される。そのため、本実施の形態の電気化学セル1によれば、厚さの薄いセルリード8を溶接する場合でも溶接部5aにおける破断を抑制することができる。
さらに、本実施の形態の溶接部5aは、配列方向(セルリード8の幅方向又は長さ方向)において、両端部にある溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている(図8参照)。上述のように、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がセルリード8の幅Wの半分を下回ると、配列方向に対して斜め方向に力が掛かりやすく、溶接部5aの角部から破断しやすい。これに対して、本実施の形態では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aによる固定部分の距離はセルリード8の幅Wの半分以上の距離を確保している。すなわち、本実施の形態の電気化学セル1によれば、セル6をベース容器2内に収納する際、セルリード8が引っ張られたり、折り曲げられたりした場合における溶接部5aの破断を抑制することができる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第2の実施の形態の特徴に加えて、次の特徴を有している。すなわち、図10に示されるように、超音波溶接機20のホーン22における複数の凸状部22bの先端には、セルリード8の厚さに満たない深さの溝部22cが形成されている。本実施の形態の溝部22cは、ホーン22の先端部22aにナール加工を施すことで形成された微細な溝である。上述のとおり、溝部22cの深さはセルリード8の厚さに満たない深さであって、超音波溶接の際、凸状部22bがセルリード8を押し付けた場合にセルリード8の表面に適切に食い込みが生ずるように形成されている。
(第3の実施の形態のまとめ)
第3の実施の形態によれば、超音波溶接の際、凸状部22bの数が少なく凸状部22bとセルリード8との接触面積が小さくなる場合であっても、振動時にずれを生じることなくセルリード8は保持される。
なお、本実施の形態では、凸状部22bの先端にセルリード8の厚さに満たない深さの溝部22cを形成したが、この限りではない。例えば、溝部22cに代えてセルリード8の厚さに満たない突起部を形成してもよいし、この突起部と溝部22cとを両方形成してもよい。いずれの場合であっても、凸状部22bがセルリード8を押し付けた場合にセルリード8の表面に適切に食い込みが発生すればよい。
(変形例)
以上、第1から第3の実施の形態について説明したが、各実施の形態に対しては以下の変形例を適用することが可能である。
(変形例1及び変形例2)
図11(a)に変形例1、及び図11(b)に変形例2を示す。変形例1及び変形例2は、超音波溶接機20のホーン22の先端の形状を変更して溶接部5aを製造した例である。具体的には、変形例1及び変形例2を製造する際に使用する超音波溶接機20のホーン22は、先端部22aに矩形枠状の凸状部を備えている。
ここで、第1の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきる程度に凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図11(a)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において矩形枠状の凹み部8bと、凹み部8bの内側と外側にそれぞれ略矩形枠状の溶接部5aとを備えた変形例1が形成される。
変形例1では、内側の溶接部5aにおける内縁と外縁との幅Bは、セルリード8の厚さT以上の値となるように形成されている。また、外側の溶接部5aにおける内縁と外縁との幅Bについても、セルリード8の厚さT以上の値となるように形成されている。さらに、変形例1では、外側の溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
また、第2の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきらない程度に凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図11(b)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において矩形枠状の凹み部8bと、この凹み部8bに対応する位置に略矩形枠状の溶接部5aとを備えた変形例2が形成される。
変形例2では、溶接部5aの幅Bは、セルリード8の厚さT以上凹み部8bの幅C以下の値となるように形成されている。さらに、変形例2では、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
以上のように形成された変形例1は第1の実施の形態と同様の効果を奏し、変形例2は第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
(変形例3及び変形例4)
図12(a)に変形例3、及び図12(b)に変形例4を示す。変形例3及び変形例4は、超音波溶接機20のホーン22の先端の形状を変更して溶接部5aを製造した例である。具体的には、変形例3及び変形例4を製造する際に使用する超音波溶接機20のホーン22は、先端部22aに円柱状の複数の凸状部を備えている。
ここで、第1の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきる程度に複数の凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図12(a)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において円形状の凹み部8bと、凹み部8bを囲むように円環状の溶接部5aとを備えた変形例3が形成される。
変形例3では、溶接部5aにおける内縁と外縁との幅Bは、セルリード8の厚さT以上の値となるように形成されている。また、変形例3では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
また、第2の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきらない程度に複数の凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図12(b)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において円形状の凹み部8bと、この凹み部8bに対応する位置に円形状の溶接部5aを備えた変形例4が形成される。
変形例4では、溶接部5aの幅Bは、セルリード8の厚さT以上凹み部8bの幅C以下の値となるように形成されている。また、変形例4では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
以上のように形成された変形例3は第1の実施の形態と同様の効果を奏し、変形例4は第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
(変形例5及び変形例6)
図13(a)に変形例5、及び図13(b)に変形例6を示す。変形例5及び変形例6は、超音波溶接機20のホーン22の先端の形状を変更して溶接部5aを製造した例である。具体的には、変形例5及び変形例6を製造する際に使用する超音波溶接機20のホーン22は、先端部22aに六角柱状の複数の凸状部を備えている。
ここで、第1の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきる程度に複数の凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図13(a)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において六角形状の凹み部8bと、凹み部8bを囲むように略六角枠状の溶接部5aとを備えた変形例5が形成される。
変形例5では、溶接部5aにおける内縁と外縁との幅Bは、セルリード8の厚さT以上の値となるように形成されている。また、変形例5では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
また、第2の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきらない程度に複数の凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図13(b)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において六角形状の凹み部8bと、この凹み部8bに対応する位置に略六角形状の溶接部5aを備えた変形例6が形成される。
変形例6では、溶接部5aの幅Bは、セルリード8の厚さT以上凹み部8bの幅C以下の値となるように形成されている。また、変形例6では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
以上のように形成された変形例5は第1の実施の形態と同様の効果を奏し、変形例6は第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
(変形例7及び変形例8)
図14(a)に変形例7、及び図14(b)に変形例8を示す。変形例7及び変形例8は、超音波溶接機20のホーン22の先端の形状を変更して溶接部5aを製造した例である。具体的には、変形例7及び変形例8を製造する際に使用する超音波溶接機20のホーン22は、先端部22aに三角柱状の複数の凸状部を備えている。
ここで、第1の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきる程度に複数の凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図14(a)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において三角形状の凹み部8bと、凹み部8bを囲むように略三角枠状の溶接部5aとを備えた変形例7が形成される。
変形例7では、溶接部5aにおける内縁と外縁との幅Bは、セルリード8の厚さT以上の値となるように形成されている。また、変形例7では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
また、第2の実施の形態のように、超音波溶接の際、接続部8aにおいてセルリード8が潰れきらない程度に複数の凸状部を押し付けると共に振動を加えることにより、図14(b)に示されるように、セルリード8とパッド膜5との境界部に平面視において三角形状の凹み部8bと、この凹み部8bに対応する位置に略三角形状の溶接部5aを備えた変形例8が形成される。
変形例8では、溶接部5aの幅Bは、セルリード8の厚さT以上凹み部8bの幅C以下の値となるように形成されている。また、変形例8では、溶接部5aの配列方向において、溶接部5aの外端部同士の距離D1及びD2がそれぞれセルリード8の幅Wの半分以上となるように形成されている。
以上のように形成された変形例7は第1の実施の形態と同様の効果を奏し、変形例8は第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
(変形例9)
本実施の形態の変形例9について図15(a)に基づいて説明する。本変形例の電気化学セル1は、セラミックスの平板のみからなるベース容器2と、凹状の形状からなる金属製のキャビティ型リッド10aを外装容器としたものであり、図15(a)は、断面図を示している。外装容器の内部には、本実施の形態と同様に、セル6と、一対のセルリード8と、電解質7とが収納され、セルリード8とベース容器2に形成されたパッド膜5とは溶接により接続されている。
図15(a)に示されるように、キャビティ型リッド10aは、セル6等を覆うように、その開口部をベース容器2の周囲に設けられたシールリング9に当接させて溶接されている。この溶接には、レーザーによるシーム溶接が好ましい。また、シーム溶接を行う際は、図15(a)矢印方向から走査照射される。ローラー電極を用いた抵抗シーム溶接では、ローラー電極がキャビティ型リッド10aの段差に接触しやすく、ローラー電極を接合部に適切に当接させることが難しくなる。
キャビティ型リッド10aでは、キャビティ型リッド10aの底面部(図中では上端部)に小孔を設けている。これは、ベース容器2とキャビティ型リッド10aを溶接した後に、電解質7をこの小孔から充填し、その後に封止栓10bを用いて気密に封止できるように意図されたものである。これにより、シールリング9とキャビティ型リッド10aの接合面との間に電解質7が存在することによる、封止作業の能率低下を防ぐことができる。ベース容器2の内側面に形成されるパッド膜5の材料やその厚みの範囲、ビア配線3の構造やその個数、セルリード8とパッド膜5との接合手段は、前述と同様であるので記載を省略する。
本実施の形態の変形例10について図15(b)に基づいて説明する。本変形例の電気化学セル1は、図15(a)に示す変形例9と同様の構成であるが、平板状のベース容器2の周囲に配置されるシールリング9が、ベース容器2に設けられたステップにはめ込まれていて、シールリング9とベース内側面との高さの差が十分に小さく抑えられている。これにより、キャビティ型リッド10aを逆さまにした状態で電解質7を充填した後に、セル6をキャビティ型リッド10aの中に配置しても、キャビティ型リッド10aから溢れ出る電解質量を少なくできる。従って、図15(b)の構成にすることによって、電解質7が充填された状態でもベース容器2とキャビティ型リッド10aとの溶接を容易に行うことが出来る。そのため、変形例9におけるキャビティ型リッド10aの小孔は不要で、封止栓10bによる封止工程も省略できる。
以上、変形例9及び変形例10のセラミックスのベース容器2は平板状であるが、平板状のベース容器2に対してホーン20を押し付けて超音波溶接を行う場合についても上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、変形例9及び変形例10によれば、凸状部22bが接続部8aの一部の面を押し付けることで、セルリード8を保持するのに必要な圧力を変えることなく、ベース容器2に掛かる荷重を小さくすることができる。これにより、平板状のベース容器2においても破損が抑制される。
(補足)
以上、本発明における電子デバイスの実施の形態としてベース容器2の内部に発電素子であるセル6を収納した電気化学セル1について説明したが、本発明における電子デバイスはこれに限らない。例えば、ベース容器2の内部に電子素子として水晶振動子、水晶発振器、加速度センサ、角速度センサ、磁気センサ、圧力センサ、赤外線センサなどを収納した電子デバイスにも適用することができる。
各実施の形態は、本明細書に記述された変形例や実施例に限定されることなく、実施の形態の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を取り得ることはもちろんである。例えば、請求項で限定しない限り、複数のリードは全てパッド膜に接続されている必要はなく、一部のリードを金属製のリッドに接続してもよい。