JP6911601B2 - 摩耗試験装置 - Google Patents
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Description
このような加工においては、金型が直接金属材料に接触するとともに大きな加圧力によって、金型と金属材料との間には繰り返しのすべり変形が生じる。
このとき、金型と加熱された金属材料との間には摩耗が生じるため、当該摩耗による金型の損傷が大きいと、金型の割れ等が発生して金型の寿命が短くなってしまう。
また、実際の鍛造加工状態を模擬した試験装置を用いて、金型形状を変更することにより鍛造加工時の応力負荷量を変化させた繰り返しの摩耗試験を実施し、金型の摩耗等による損傷を予測及び評価する方法が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、いずれの文献の評価方法においても、ワークの実際の形状に応じた金型の局部的な摩耗状態を評価することとなるため、鍛造されるワークの材料や形状等の仕様が変更されると、これに伴って鍛造加工のための金型の材質や形状との組合せが膨大となり、その試験のための金型を準備することは、金型の加工のための多大な費用や時間を要してしまうという問題があった。
また、特許文献1や2に記載された方法では、高温・高圧の環境下での凝着や焼き付きといった摩耗形態の評価を行うことができない。
しかし、これらのいずれの特許文献にも、常温を超える所定温度での摩擦試験を可能とする方法に関しては、示唆も開示も無い。また仮に、試験環境全体を加熱した際には、多量の加熱エネルギーが必要となるとともに、摩擦試験装置全体が高熱化してしまい、試験装置の安定稼働が維持出来ないという新たな課題が生じてしまう。
このとき、接触治具の端部を間欠的に加熱することで、ワークに熱を実際に伝える接触治具の端部のみを加熱でき、必要な加熱エネルギーの削減と、摩擦試験装置への伝熱量低下により該摩擦試験装置の安定稼働を実現する。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
図1は、本発明の実施例1による摩耗試験装置の概要を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施例1による摩耗試験装置100は、ワークWを取り付けて保持するワーク保持機構110と、上記ワークWに対して接触及び非接触を繰り返す接触治具120と、当該接触治具120を回転自在に保持する回転機構130と、上記ワーク保持機構110に接続線142を介して接続されたデータ解析機構140と、試験中に接触治具120を加熱する加熱機構250と、を備えている。
接触治具120は、図示しない回転駆動部を内蔵した回転機構130に回転自在に保持されており、当該回転駆動部によって回転力を付与されることにより、ワークWとの接触動作が行われる。
図1に示すように、回転機構130は、例えば旋盤等の工作機械の回転機構にそのまま適用することが可能であり、その場合、接触治具120の一端を支持する芯押し部132を流用することができる。
図2に示すように、ワーク保持機構110は、本体部112と、当該本体部112の側面に設けられたアーム部114と、を含む。
本体部112の側面の1つには、上記アーム部114を進退自在に収納保持する収納穴112aが形成されている。
図2に示す一例において、ワークWはワーク取付部114aに埋め込まれる態様で取り付けられており、その露出面が後述する接触治具との接触面となる。
ここで、ワークWを直方体の部材として形成しているが、接触治具120との接触面を確保できる形状であれば、円筒状や半球状としてもよい。
そして、上記センサで検出された垂直抗力及び摩擦力のデータは、図1に示す接続線142を介してデータ解析機構140に転送されるようになっている。
弾発部は、無負荷の状態では所定の長さを有するが、ワークWが垂直抗力を受けてアーム部114が収納穴112aに押し込まれる方向に移動しようとすると、当該垂直抗力に反発して押し返す反力を生じるように構成されている。
このような弾発部としては、例えばバネ体や空圧式のピストン等が例示できる。
例えば、本体部112とアーム部114とを一体に形成し、本体部112を接触治具120の方向に常に付勢するスライド機構を設けたり、あるいは接触治具120の接近離間動作に連動する往復運動機構を設けるようにしてもよい。
図3Aに示すように、本発明の実施例1による摩耗試験装置において、接触治具120は、その側面の少なくとも一部がワークWに接触する断面円形の板状部122を挟んで、当該板状部122よりも小さい断面積を有する軸部124が、互いに偏心する態様で取り付けられた構成となっている。
このとき、板状部122の中心軸(重心軸)Cdは、軸部124の回転軸Caに対して偏心するように取り付けられる。
例えば、ワークWにプレス加工や鍛造加工で使用される金型を構成する金属材料を選択した場合、接触治具120の板状部122には、上記プレス加工や鍛造加工における被加工材の材料(金属材料等)を採用する。
また、図3Aに示すように、板状部122のY方向の幅は、ワーク保持機構110に取り付けられたワークWの接触面の幅よりも小さく設定されるのが好ましい。
本実施例1において、加熱パッド部256は、例えば電熱線を用いたヒーターを内蔵しており、加熱本体部252から加熱アーム部254を介して電力を供給することにより通電発熱する構成を採用している。
そして、図3A〜図3Cにおいて、断面略U字形の加熱パッド部256は、板状部122の接触領域での重畳面積(すなわち板状部122が加熱される面積)が、非接触領域での重畳面積よりも大きくなるように配置される。
このような形状により、回動する接触治具120の少なくとも板状部122の外周近傍が、加熱パッド部256の対向する2面の内側を通過する際に、当該2面からの輻射熱によって間欠的に加熱されるため、板状部122を常温より加熱した状態でワークWに接触させる試験を行うことができる。
本概念によれば、接触治具全体を加熱するような構成に比べて加熱機構を簡略化でき、また加熱部を局在化できるので加熱に要するエネルギーの削減が出来るとともに、省電力で過熱状態での摩擦試験が実現できる。さらに、接触治具から回転機構130に伝わる熱量を低減できるため、回転機構130の高熱化による故障の回避も可能となる。
このとき、温度を適正に制御するには、板状部122に温度センサ(図示せず)を取り付けたり、放射温度計(図示せず)を用いることで、試験中の板状部122の温度を測定することにより、試験中の板状部122の温度のフィードバック制御を行うように構成してもよい(例えば、後述する実施例4参照)。
そして、図3Cに示すように、板状部122が軸部124の回転軸Caを中心に時計回りに回動し、板状部122の外周面がワークWと接触すると、加熱された板状部122からワークWに垂直抗力及び摩擦力が負荷された状態となる。
図4Aに示す第1段階では、板状部122の中心軸Cdは、軸部124の回転軸Caを基準とすると、ワークWとは反対側に位置するため、結果的に中心軸CdとワークWとが最も離間する位置関係となり、板状部122はワークWと非接触の状態となる。
これにより、板状部122とワークWとの距離が縮まることとなり、板状部122の外周面122aがワークWの対向する面と接触する。
このとき、ワークWには、図中−X方向の垂直抗力Nと板状部122の回動方向(図中−Z方向)の摩擦力Fとの合力Pが板状部122から負荷される。
これにより、中心軸CdとワークWとが最も近接する位置関係となり、ワークWは板状部122から受ける垂直抗力Nにより、最も押し退けられた状態となる。
これにより、第3段階に比べて板状部122とワークWとの距離が広がる方向に変化することとなり、回動が進むと、板状部122の外周面122aがワークWの対向する面から離間して、図4Aに示す第1段階に戻る。
このとき、ワーク保持機構110のアーム部114に内蔵されたセンサにより、図4A〜図4Dに示される第1段階〜第4段階におけるリアルタイムの垂直抗力N及び摩擦力Fが測定される。
また、上記した垂直抗力N及び摩擦力Fに加えて、例えば試験前後におけるワークWの表面変位をレーザー計測器などで測定することで、ワークWと接触治具120の板状部122との接触回数に対するワークWの摩耗量の相関を評価することも可能となる。
また、ワークWに対して接触治具120を回動させて接触させることにより、ワークWに対する垂直抗力Nだけでなく摩擦力Fのリアルタイムの測定できるため、ワークWの動摩擦係数を得ることも可能となる。
なお、上記実施例1では、加熱機構250の加熱パッド部256として電熱線を用いたヒーターを内蔵した場合を例示したが、接触治具120の板状部122を少なくとも加熱できる構造であれば、バーナーやレーザー等による加熱や、あるいは高周波誘導加熱等の構成を適用してもよい。
図5A〜図5Bは、本発明の実施例2による摩耗試験装置の概要を示す図であって、図5Aは斜視図であり、図5Bは図5Aにおけるワーク保持機構及び接触治具と潤滑機構との位置関係を示す側面図である。
なお、実施例2による摩耗試験装置において、実施例1と共通の構造及び動作を行う構成要素については、同一の符号を付すことにより、ここでの再度の説明は省略する。
図5Aに示すように、本発明の実施例2による摩耗試験装置200は、ワーク保持機構110、接触治具120、回転機構130、データ解析機構140、加熱機構250に加えて、試験中に接触治具120とワークWとの間に潤滑剤を供給する潤滑機構360をさらに備えている。
そして、供給管364の先端には、図5Bに示すように、接触治具120の板状部122の外周面122a近傍であって、接触治具120の回動方向の上流側にノズルが配置される。
このような配置により、ワーク保持機構110に保持されたワークWに接触する直前に、接触治具120の板状部122の外周面122aに潤滑剤Lが供給され、潤滑剤Lが外周面122aに保持された状態の板状部122とワークWとの接触状態と非接触状態とが繰り返される。
なお、上記実施例2では、供給管364の先端にノズルを設けて潤滑剤Lを噴射あるいは供給する場合を例示したが、使用する潤滑剤の種類に応じて、上記ノズルに代えて例えば刷毛状の塗布部材を取り付けて、潤滑剤Lを板状部122の外周面122aに直接塗布するように構成してもよい。
図6〜図9を用いて、本発明の実施例3による摩耗試験装置の概要及びその変形例を説明する。
なお、実施例3による摩耗試験装置において、実施例1と共通の構造及び動作を行う構成要素については、同一の符号を付すことにより、ここでの再度の説明は省略する。
図6に示すように、実施例3による摩耗試験装置において、接触治具420は、その側面(外周面)422aの少なくとも一部がワークWに接触する断面楕円形の板状部422と、当該板状部422よりも小さい断面積を有する軸部424が取り付けられた構成となっている。
このとき、板状部422の中心を通る中心軸Cdは、軸部424の回転軸Caと一致するように取り付けられる。
したがって、ワーク保持機構110のアーム部114に取り付けたワークWの接触面の位置を、接触治具420の回転軸Caからほぼ長径の1/2の距離となる位置に設定すれば、ワークWと板状部422の外周面422aとは、板状部422の長軸と交差する2か所の位置のみで接触しこれ以外の位置では非接触となる。
これにより、接触治具420が回転軸Caを中心に時計回りに回動すると、板状部422とワークWとの間の接触状態と非接触状態とが繰り返される。
図7に示すように、実施例3の第1の変形例による摩耗試験装置において、接触治具520は、その側面(外周面)522aの少なくとも一部がワークWに接触する断面四角形の板状部522と、当該板状部522よりも小さい断面積を有する軸部524が取り付けられた構成となっている。
このとき、板状部522の中心(重心)を通る中心軸Cdは、軸部524の回転軸Caと一致するように取り付けられる。
したがって、ワーク保持機構110のアーム部114に取り付けたワークWの接触面の位置を、接触治具520の回転軸Caからほぼ対角線の1/2の距離となる位置に設定すれば、ワークWと板状部522の外周面522aとは、板状部522の四隅における4か所の位置のみで接触しこれ以外の位置では非接触となる。
これにより、接触治具520が回転軸Caを中心に時計回りに回動すると、板状部522とワークWとの間の接触状態と非接触状態とが繰り返される。
また、断面多角形の板状部522を用いる際に、図7に示すように、板状部522のワークWと接触する角部の近傍にR形状522bを加工しておいてもよい。
このようなR形状により、ワークWから受ける反力が局部的になるのを抑制するとともに、接触治具520の回動に応じてワークWと滑らかな接触を行うことができるため、接触治具520の寿命を延ばすことができる。
図8に示すように、実施例3の第2の変形例による摩耗試験装置において、接触治具620は、その側面(外周面)622aの少なくとも一部がワークWに接触する略歯車形状の外周部を有する板状部622と、当該板状部622よりも小さい断面積を有する軸部624が取り付けられた構成となっている。
このとき、板状部622の中心(重心)を通る中心軸Cdは、軸部624の回転軸Caと一致するように取り付けられる。
したがって、ワーク保持機構110のアーム部114に取り付けたワークWの接触面の位置を、接触治具620の回転軸Caからほぼ上記歯車形状の「山」の部分の径と同一の距離となる位置に設定すれば、ワークWと板状部622の外周面622aとは、板状部622の「山」の位置のみで接触しこれ以外の位置では非接触となる。
これにより、接触治具620が回転軸Caを中心に時計回りに回動すると、板状部622とワークWとの間の接触状態と非接触状態とが繰り返される。
このようなR形状により、第1の変形例と同様に、ワークWから受ける反力が局部的になるのを抑制するとともに、接触治具620の回動に応じてワークWと滑らかな接触を行うことができるため、接触治具620の寿命を延ばすことができる。
そして、板状部422〜622の形状を適宜変更することにより、接触治具420〜620の回転数を変更することなく、1回転における接触回数や接触と非接触とのインターバル時間等を適宜調整することも可能となる。
また、板状部422〜622とワークWとの接触部が複数存在するため、板状部422〜622の摩耗が均等となり、結果として接触治具420〜620の寿命を延ばすことができる。
図9Aに示すように、実施例3の第3の変形例による摩耗試験装置において、接触治具720は、その側面(外周面)の一部が連続してワークWに接触する大径部726及びワークWには接触しない小径部728を少なくとも1か所以上含む板状部722と、当該板状部722よりも小さい断面積を有する軸部724が取り付けられた構成となっている。
このとき、板状部722の大径部726又は小径部728の中心はそれぞれ同一点にあって、その中心を通る中心軸Cdは、軸部724の回転軸Caと一致するように取り付けられる。
したがって、ワーク保持機構110のアーム部114に取り付けたワークWの接触面の位置を、接触治具720の大径部726の外周面726aとほぼ同一の距離となる位置に設定すれば、ワークWと板状部722の外周面726aとは、大径部726の領域で連続的に接触し小径部728の領域では非接触となる。
これにより、接触治具720が回転軸Caを中心に時計回りに回動すると、板状部722とワークWとの間の接触状態と非接触状態とが繰り返される。
図9Aに示す第1段階では、板状部722の大径部726は、軸部724の回転軸Caを基準とすると、ワークWとは反対側に位置するため、板状部722はワークWと非接触の状態となる。
このとき、ワークWには、図4の場合と同様に、垂直抗力Nと板状部722の回動方向の摩擦力Fとの合力Pが板状部722から負荷される。
このとき、大径部726は連続的にワークWに接触するため、ワークWには上記垂直抗力Nと摩擦力Fとの合力Pが連続的に作用することとなる。
この状態からさらに板状部722が回転すると、板状部722のワークWと対向する面が小径部728の領域に移行するため、図9Aに示す第1段階に戻る。
このとき、実施例1の場合と同様に、ワーク保持機構110のアーム部114に内蔵されたセンサにより、上記第1段階〜第4段階におけるリアルタイムの垂直抗力N及び摩擦力Fが測定される。
また、連続した大径部726によってワークWに接触荷重を負荷するため、板状部722の摩耗が局所に集中せず、結果として接触治具720の寿命を延ばすことができる。
また、大径部726の外径が連続して一定の形状の場合を例示したが、大径部726の外径を連続的に増加あるいは減少させて、ワークWへの接触荷重を適宜調整できる形状を用いてもよい。
図10は、本発明の実施例4による摩耗試験装置の概要を示す斜視図である。
図10に示す実施例4は実施例1の文中で例示したように、板状部122の温度を適正に制御するため、表面の温度を非接触で測定する放射温度計を用いて板状部122の温度をフィードバック制御した例である。なお、実施例4による摩耗試験装置において、実施例1と共通の構造及び動作を行う構成要素については、同一の符号を付すことにより、ここでの再度の説明は省略する。
図11A〜図11Bに示すように、放射温度計810は、その一例として、板状部122の外周面122aにおけるワークWの上流側近傍の温度を測定する。すなわち、放射温度計810は、板状部122の突出部とワークWとが接触する直前の最外周温度を測定するよう配置する。逆に、板状部122とワークWとが接触した直後の最外周温度を制御する場合は、放射温度計810は、板状部122の外周面122aにおけるワークWの下流側近傍に配置される。
このように、加熱機構制御部820は、加熱機構250の出力制御により、板状部122の温度を制御する。例えば、加熱パッド部256に電熱線を用いたヒーターを内蔵した場合は、加熱機構制御部820が加熱機構250の出力をフィードバック制御することで、ヒーターすなわち加熱パッド部256の温度が制御される。そして、ヒーターの温度を制御することにより、板状部122の最外周温度を狙いの温度に調整する。
ここで、図12において、横軸を時間t、縦軸を温度Tあるいは加熱機構の出力値として、点線は放射温度計810で得られる板状部122の最外周温度の生データを示し、実線は放射温度計810で得られた生データに所定の処理を施した温度データを示し、一点鎖線は加熱機構250の出力を示し、破線は板状部122の突出部における想定温度を示している。
したがって、図12に示すように、放射温度計810で得られる温度データは時間とともに変化する。これは、加熱機構250の加熱方法や形状、配置方法にもよるが、実施例4による摩耗試験装置800の場合には、板状部122の突出部(回転中心から最も偏心量が大きい領域)が加熱機構250と距離が最も近くなるため加熱されやすくなり、表面温度が一番高くなる。
このとき、図12に示すように、放射温度計810が測定した温度の生データは周期的に最大値をとり、その最大値が周期ごとにばらつくグラフになる。
また、dtAは板状部122の突出部の温度を測定してから加熱パッド部256によって加熱されるまでの時間、dtBは板状部122の突出部が加熱パッド部256により加熱されている間の時間、dtCはt2とt1の時間差分を、それぞれ表す。ここで、接触治具120が等速回転している場合、dtCは接触治具120が1回転する回転周期dtRとほぼ同じである。
そこで、加熱機構制御部820が参照する温度データとして、放射温度計810で得られる生データに処理したものを用いることで突出部の温度を制御する。
そこで、加熱機構制御部820が参照する温度データとして、時刻t1から時刻t1+dtA+dtBの間に突出部で測定した生データの温度を、ある時刻tに放射温度計810で取得した温度Tmが、時間t−dtKから時間tまでに取得したいずれの温度Tよりも高かった場合(温度Tmが時間経過とともに上昇を続けている場合)に、温度Tmの値を最大で時間dtKの間だけ不変とする(すなわち例えば温度Tm1に一定に維持したもの)として処理した温度データを用いる。この処理によって、突出部の温度を参照しながら加熱機構250の出力を制御し、突出部の温度をフィードバックできる。
このため、接触治具120の突出部の温度データを維持する時間をdtKとすると、dtA+dtB<dtK<dtCの範囲にすべきである。ここで、前述の通りdtCは接触治具120が1回転する時間(回転周期)dtRとほぼ同じである。
以上のことから、dtR×(Da/360)<dtK<dtR(式(1))の範囲にdtKを設定して温度データを処理することが望ましい。
つまり、上記の説明における角度Daは、実際に板状部122が加熱の影響を受ける範囲を考慮した値を意味している。例えば、電熱線を使用したヒーターや高周波誘導加熱用コイルが内蔵されている場合はヒーターやコイルがある場所までの角度Daなどが想定される。
一方、時間dtKの上限値は、回転周期dtR以下の範囲が毎周期温度をフィードバック制御する条件になる。そのため、少なくともdtKはdtK<dtRの範囲であることが望まれる。
なお、板状部122の突出部の温度を制御するためには、加熱パッド部256で突出部が加熱される際のフィードバック制御において、少なくとも参照される温度が突出部の温度であればよい。そのため,突出部の温度をフィードバック制御するための温度データの処理方法は必ずしも上記に限定するものではない。
例えばバーナーを適用した場合、加熱機構制御部820から加熱機構250に対する出力の指令地はガス温度などとなる。一方、例えば高周波誘導加熱を適用した場合、加熱機構250に対する出力の指令地は高周波誘導加熱における電源装置の電力量等となる。
なお、上記実施例4では、実施例1と同じく断面円形の板状材122を使用した例を示したが、例えば実施例3で示したように断面形状の異なる板状材においても、板状材122の突出部の温度制御は可能である。
このような場合、加熱パッド部で突出部を加熱する際に、参照する温度が加熱したい突出部の温度となるように温度データを処理することで、放射温度計による温度測定位置と加熱パッド部による突出部の加熱位置がずれていても、突出部の温度を狙い温度に制御することができる。
さらに、上記実施例4では、放射温度計810で取得した温度の生データの処理と加熱機構250の出力制御をどちらも加熱機構制御部820が実施する場合を例示したが、前者の操作と後者の操作を別々の機構を用いて実施してもよい。
具体的には、図10に示した加熱機構制御部820の構成に代えて、放射温度計810で取得した温度の生データを処理するデータ処理部と、当該データ処理部で処理した温度データに基づいて加熱機構250の出力を制御する出力制御部とに分けた構成としてもよい。
図13は、本発明の実施例5による摩耗試験装置の概要を示す斜視図である。
実施例5において、摩耗試験装置900は、接触治具120の板状部122およびワークWのいずれも加熱する機能を備えている。接触治具120の板状部122に加えてワークWも加熱することで、板状部122およびワークWのどちらをも所定の温度に保持することが可能となり、温間鍛造や熱間鍛造といった金型材料と成形材料のどちらも高温になる条件を再現した摩擦試験ができる。
なお、実施例5による摩耗試験装置900においても、実施例1と共通の構造及び動作を行う構成要素については、同一の符号を付すことにより、ここでの再度の説明は省略する。
また、ワーク加熱駆動部930は、後述するワーク保持機構910の加熱シート920と供給線932を介して接続されている。
図14に示すように、ワーク保持機構910は、本体部112と、当該本体部112の側面に設けられたアーム部914と、を含む。
アーム部914は、長手方向に所定の長さを有する梁状の部材であって、当該長手方向の一端にワークWを取り付けるワーク取付部914aが形成されており、当該ワーク取付部914aに対してアーム部914の長手方向の近傍に、加熱シート920を取り付ける加熱シート取付部914bが形成されている。
加熱シート920は、図13に示すように供給線932を介してワーク加熱駆動部930から送られる電力などのエネルギーによって発熱し、アーム部914を介した熱伝達によってワークWを加熱する。
また、ワークWのうち、板状部122と接触する側の表面温度を、例えば図示を省略する熱電対や放射温度計でモニタリングし、得られた温度データを元にワーク加熱駆動部930が供給線932を介して加熱シート920に送るエネルギー量を制御する機構を適用してもよい。
なお、本実施例では、例えば電熱線を用いたヒーターを内蔵した加熱シートによる加熱の例を示したが、ワークWのみを加熱できる構造であれば、バーナーやレーザー、あるいは高周波誘導加熱等の構成を適用してもよい。
さらに、加熱されたワークWおよび加熱シート920からアーム部914を介して本体部122への伝熱を防ぐため、ワークWおよび加熱シート920の伝熱面以外の面については断熱材(図示せず)を介在させるなどしたほうがよい。
図15は、本発明の実施例6による摩耗試験装置の概要を示す斜視図である。
図15に示すように、実施例6による摩耗試験装置は、上記した実施例に示した構成を1つの装置として統合したものである。なお、実施例1、2、4、5と共通の構造及び動作を行う構成要素については、同一の符号を付すことにより、ここでの再度の説明は省略する。
そして、加熱機構制御部820は、接続線822を介して前記放射温度計810に接続されるとともに、接続線832を介して上記加熱機構250と接続されている。
そして、本実施例6による摩耗試験装置1000によれば、例えば金型材料および成形材料がどちらも所定温度に加熱された状態で、潤滑剤や離型剤などを吹きつけながら成形加工を行う熱間鍛造などの状態を模擬した摩耗試験が可能となる。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
さらに、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
110、910 ワーク保持機構
112 本体部
114、914 アーム部
120、420、520、620、720 接触治具
122、422、522、622、722 板状部
124、424、524、624、724 軸部
130 回転機構
140 データ解析機構
250 加熱機構
252 加熱本体部
254 加熱アーム部
256 加熱パッド部
360 潤滑機構
362 潤滑剤供給源
364 供給管
726 大径部
728 小径部
810 放射温度計
820 加熱機構制御部
920 加熱シート
930 ワーク加熱駆動部
Claims (13)
- ワークの摩耗状態を測定する摩耗試験装置であって、
前記ワークを保持するワーク保持機構と、
前記ワークに対して接触及び非接触を繰り返す接触治具と、
前記接触治具を回転自在に保持する回転機構と、
前記接触治具の端部を加熱する加熱機構と、
を備え、
前記接触治具は、当該接触治具の側面の少なくとも一部が前記ワークと接触する板状部と、前記板状部の表面に取り付けられ前記板状部よりも断面積が小さい軸部と、を含み、
前記板状部は、前記ワークに接触する接触領域と前記ワークに非接触となる非接触領域とが交互に配置される構造を有し、
前記軸部は、前記回転機構に取り付けられ、
前記接触治具が前記回転機構により回転すると、前記板状部の前記接触領域が、前記加熱機構により選択的かつ間欠的に加熱される
ことを特徴とする摩耗試験装置。 - 前記板状部は、断面円形の形状を有し、
前記接触治具は、前記板状部の中心軸と前記軸部の回転軸とを偏心させた構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記板状部は、断面楕円形の形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記板状部は、断面多角形の形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記板状部の角部の先端がR形状である
ことを特徴とする請求項4に記載の摩耗試験装置。 - 前記板状部は、当該板状部の側面に、前記接触領域に対応する凸部及び前記非接触領域に対応する凹部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記凸部は、前記軸部の回転軸から第1の等距離に位置する円弧の一部であり、
前記凹部は、前記軸部の回転軸から第2の等距離に位置する円弧の一部であり、
前記第2の等距離は、前記第1の等距離よりも短い
ことを特徴とする請求項6に記載の摩耗試験装置。 - 前記加熱機構は、対向する2面を有する部材で形成され、前記対向する2面の間に前記接触治具の前記板状部を通過させ、前記板状部の前記接触領域と前記対向する2面との重畳面積を、前記板状部の前記非接触領域と前記対向する2面の重畳面積よりも大きくして配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記ワーク保持機構は、本体部と、前記本体部の一側面に設けられたアーム部と、前記本体部と前記アーム部との間に介在する弾発部と、を含み、
前記アーム部の一端に前記ワークを取り付けるワーク取付部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記板状部の外周面近傍に位置し、前記板状部の回動方向の上流側で前記ワークに当該板状部が接触する直前の位置に潤滑剤を供給する潤滑機構をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記板状部の最外周表面温度を測定する放射温度計と、前記放射温度計から得られた温度データに基づいて前記加熱機構の出力を制御する加熱機構制御部と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。 - 前記回転機構の回転周期をdt R 、当該dt R 未満の任意の時間をdt K とし、
前記加熱機構制御部は、ある時刻tに前記放射温度計で取得した温度T m が、時間t−dt K から時間tまでに取得したいずれの温度Tよりも高い場合に、前記温度T m の値を最大で前記時間dt K の間だけ不変とする処理を施すと共に、当該処理を施した際の前記温度データに基づいて前記加熱機構の出力を制御する
ことを特徴とする請求項11に記載の摩耗試験装置。 - 前記ワークを加熱するワーク加熱機構をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の摩耗試験装置。
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