JP6905945B2 - 三次元実体モデルおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、三次元実体モデル、特に手術シミュレーションに有用な三次元実体モデル、およびその製造方法に関する。
三次元実体モデルは、乳房および臓器などのヒトの身体部位の形状が付与された医療用造形物であり、手術シミュレーションに有用である。手術シミュレーションとは、医師の手術練習、手術計画の立案、および患者への手術説明などを目的として行われる模擬手術のことである。
従来の三次元実体モデルは1種類の材料のみから製造されるため、その弾性率は全体として一様であった。また当該三次元実体モデルの弾性率はヒトの実際の身体部位よりも比較的高かった。
しかしながら、従来の三次元実体モデルを用いても、十分な手術シミュレーションを行うことはできなかった。詳しくは、以下に示す問題が生じた。
(1)従来の三次元実体モデルは、メスで切開するときの感触も、切開部を縫合するときの感触も、ヒトの実際の身体部位とは全く異なっていた。このため、当該三次元実体モデルを用いた手術シミュレーションは、医師の手術熟練度の向上に十分に貢献しなかった。特に三次元実体モデルにおいて切開部を縫合するとき、ヒトの実際の身体部位を縫合するときと比較して、縫合糸により縫合部が容易に切れた。
(2)弾力性および軟質性のあるヒトの身体部位は、手術時において重力方向に下垂した形状を有するものであるが、従来の三次元実体モデルは下垂し難いため、ヒトの実際の身体部位とは手術時の形状が全く異なっていた。詳しくは、手術時においてヒトがベッドの上に横たえられたとき、例えば実際の乳房は脇側から重力方向に下垂するが、乳房形状を付与された従来の三次元実体モデルは重力方向にあまり下垂しなかった。このため、従来の三次元実体モデルを用いた手術シミュレーションはやはり、医師の手術熟練度の向上に十分に貢献しなかった。
(3)臓器(特に乳房)において手術により病巣を除去するときの適切な除去体積および除去された部位にシリコーンまたは自家組織などの材料を充填するときの適切な充填体積が、従来の三次元実体モデルと、ヒトの実際の身体部位とで大きく異なっていた。このため、実際の手術は必ずしも、三次元実体モデルを用いて立案した手術計画に沿って進めることはできなかった。
本発明は、ヒトの実際の身体部位における手術によく近似した手術シミュレーションを行うことができる三次元実体モデルを提供することを目的とする。
本発明は詳しくは、感触がヒトの実際の身体部位とよく近似した三次元実体モデルを提供することを目的とする。
本発明はまた、医師の手術練習に十分に貢献することができる三次元実体モデルを提供することを目的とする。
本発明はまた、実際の手術によく適合する手術計画を立てることができる三次元実体モデルを提供することを目的とする。
本明細書中、「感触」とは、主として、表面から内部に向かって手(指)で押圧したときに感じる弾力性および軟質性に基づく触感のことを意味するものとする。
本発明は、
弾性材料からなる表面層;および
該表面層と隣接して配置され、前記表面層を構成する弾性材料の弾性率と異なる弾性率を有する弾性材料からなる下層;
を含む、三次元実体モデルに関する。
本発明の三次元実体モデルを用いると、ヒトの実際の身体部位における手術によく近似した手術シミュレーションを行うことができる。
詳しくは、本発明の三次元実体モデルは、感触がヒトの実際の身体部位とよく近似しており、医師の手術練習に十分に貢献することができる。また本発明の三次元実体モデルを用いると、実際の手術によく適合する手術計画を立案することができる。さらに本発明の三次元実体モデルを用いて模擬手術を行うことにより、手術後の変形の程度を知ることができる。
(A)は本発明の実体モデルの一例(左乳房モデル)の全体形状を示す概略図であり、(B)は(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図の一例であり、(C)は(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図の別の一例である。 (A)は本発明の実体モデルの一例(肝臓モデル)の全体形状を示す概略図であり、(B)は(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図である。 (A)は本発明の実体モデルの一例(口唇モデル)の全体形状を示す概略図であり、(B)は(A)の下口唇のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図である。 本発明の実体モデルの一例(皮膚構造体モデル)の概略断面図である。 (A)は本発明の実体モデルの一例(外鼻モデル)の全体形状を示す概略図であり、(B)は(A)の鼻翼部のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図である。 (A)は本発明の実体モデルの一例(眼瞼モデル)を含む顔面モデルの全体形状を示す概略図であり、(B)は(A)の眼瞼部のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図である。 本発明の実体モデルの一例(脳モデル)の概略冠状断面図である。 (A)は本発明の実体モデルの一例(耳介モデル)の全体形状を示す概略図であり、(B)は(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図である。 本発明の実体モデルの一例(乳房モデル)の概略断面図である。 本発明の実体モデルの一例(顔面モデル)の全体形状を示す概略図であって、皮膚腫瘍を有するときの概略図である。 本発明の実体モデルの一例(左乳房モデル)の概略断面図であって、腫瘍を有するときの概略断面図である。 本発明の実体モデルの一例(皮膚構造体モデル)の概略断面図であって、皮膚腫瘍を有するときの概略断面図である。 本発明の実体モデルの製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明の実体モデルの製造方法の別の一例において使用される塩型の概略見取り図である。
[実体モデル]
本発明の三次元実体モデル(以下、単に「実体モデル」という)は手術シミュレーションに使用される医療用造形物である。手術シミュレーションとは、医師の手術熟練度の向上のための手術練習、手術を円滑に進めるための手術計画の立案、および患者への手術説明などを目的として行われる模擬手術のことである。
本発明の実体モデルには、ヒトの身体部位と同等の形状が付与されている。ヒトの身体部位と同等の形状とは、第三者が当該実体モデルの外観をみたとき、当該ヒトの身体部位であることを認識できる形状のことである。本発明の実体モデルが有する形状は、弾力性および軟質性を有する、あらゆるヒトの身体部位の形状であってよい。具体的な形状として、例えば、乳房、臓器(特に内蔵)、口唇、外鼻、眼瞼、耳介、顔面、およびその他の皮膚構造体における全体形状またはその一部の形状などが挙げられる。臓器(特に内蔵)としては、例えば、心臓、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓および脳などが挙げられる。本発明の実体モデルは全体として、このようなヒトの身体部位が有する程度の弾力性および軟質性を有するという意味で、「実体ソフトモデル」と呼ぶこともできる。
本発明の実体モデルは表面層および当該表面層と隣接して配置される下層を含むものである。表面層と下層とは不可分に一体化して弾性体を構成していてもよいし、または相互に離接可能に隣接して弾性体を構成していてもよい。本発明の実体モデルは通常、表面層および下層のみからなる二層性モデルであってもよいし、または表面層、下層および当該下層の表面層側とは反対側に配置される深層を含む三層性モデルであってもよい。
表面層は弾性材料から構成されており、例えば、有機系弾性材料から構成されている。表面層を構成する有機系弾性材料としてポリマーが挙げられる。ポリマーの具体例として、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン(ブチルゴム)、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ゼラチン等が挙げられる。本発明の実体モデルとヒトの実際の身体部位との感触のより一層の近似の観点から好ましい表面層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成される。本明細書中、弾性材料とは、ヒトの身体部位が有し得る弾性を有する材料のことである。
シリコーンゴムは、実体モデルの分野および型取り母型用材料の分野で従来から使用されているあらゆるシリコーンゴムが使用可能である。型取り母型用材料とは、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ワックス、石こう、低融点合金などで複製をつくるときの型取り母型のための材料のことである。シリコーンゴムは、シロキサン結合の繰り返しを主鎖とし、側基として水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、塩素原子からなる群から選択される有機基を有するポリマーであり、通常は架橋(硬化)されている。
シリコーンゴムは市販品として入手可能である。シリコーンゴムの市販品として、例えば、KE−1308(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
ウレタンゴムは、実体モデルの分野で従来から使用されているあらゆるウレタンゴムが使用可能である。ウレタンゴムは、例えば、ポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオールとジイソシアネートとの重付加反応により得られたプレポリマーであり、通常はポリイソシアネート化合物、ポリアミンおよび/またはポリオールなどで架橋(硬化)されている。
ウレタンゴムは市販品として入手可能である。ウレタンゴムの市販品として、例えば、タケフレックスBRUSH(竹林化学工業株式会社製)が挙げられる。
ゼラチンは、脊椎動物の白色結合組織中に存在するコラーゲンを加水分解して得られる誘導蛋白質である。ゼラチンは食品工業および写真工業、特に食品工業、において広く用いられているあらゆるゼラチンが使用可能であり、分子量15000〜250000のものからなる不均一物質であってもよい。
ゼラチンは市販の食用製品として入手可能なあらゆるものが使用可能である。
表面層を構成するポリマーは、後述する所定の弾性率を達成できる限り特に限定されない。
表面層は弾性材料の他に硬化剤(架橋剤)、着色剤および溶媒等の添加剤を含有してもよい。詳しくは表面層が上記ポリマーのうち、特にゼラチン以外のポリマーから構成される場合、表面層は通常、当該ゼラチン以外のポリマーおよび硬化剤を含み、さらに着色剤を含んでもよい。表面層がゼラチンから構成される場合、表面層は通常、当該ゼラチンおよび溶媒を含み、さらに着色剤を含んでもよい。
硬化剤は、弾性材料の架橋のための添加剤であり、含有される層がゼラチン以外のポリマーから構成される場合に含有される。硬化剤は弾性材料の種類に応じてあらゆる硬化剤が使用可能である。例えば弾性材料としてポリマー(例えばシリコーンゴム)が使用される場合、硬化剤としては、ポリマー(例えばシリコーンゴム)の分野で公知のあらゆる硬化剤が使用可能である。シリコーンゴムの硬化剤の具体例として、例えば、CAT−1300L−4(信越化学工業株式会社製)が使用可能である。ウレタンゴムの硬化剤の具体例として、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリアミンおよび/またはポリオールが使用可能である。
表面層の硬化剤の含有量は、本発明の実体モデルの感触とヒトの実際の身体部位の感触とがよく近似するような量であればよく、通常は弾性材料に対して40重量%以下または300重量%以下である。
表面層が弾性材料として、上記ポリマーのうち、特にウレタンゴムおよびゼラチン以外のポリマーから構成される場合、表面層の硬化剤の含有量の下限値は弾性材料に対して例えば、0.1重量%であってもよいし、1重量%であってもよいし、または2重量%であってもよい。同様の場合、当該含有量の上限値は弾性材料に対して例えば、40重量%であってもよいし、30重量%であってもよいし、20重量%であってもよいし、15重量%であってもよいし、または10重量%であってもよい。
表面層が例えばウレタンゴムから構成される場合、表面層の硬化剤の含有量の下限値は弾性材料に対して例えば、0.1重量%であってもよいし、1重量%であってもよいし、10量%であってもよいし、または20重量%であってもよい。同様の場合、当該含有量の上限値は弾性材料に対して例えば、300重量%であってもよいし、200重量%であってもよいし、100重量%であってもよいし、または50重量%であってもよい。
表面層における硬化剤の含有量を調整することにより、表面層の弾性率を制御することができる。硬化剤の含有量が多いほど、弾性率は一般に高くなり、当該含有量が少ないほど弾性率は一般に低くなる。表面層は塩(NaCl)を含有してもよく、塩の含有により、弾性率を増大させることができる。表面層がゼラチンから構成される場合、表面層の硬化剤の含有量は通常、0重量%である。
表面層に含有される着色剤は、実体モデルがヒトの身体部位と同等の色彩を有するように、または縫合糸がよく見えるように、実体モデルを着色する目的で添加される添加剤であってよく、例えば、公知の顔料および染料等が使用される。着色剤の含有量は、上記目的が達成されるような量であればよい。
溶媒は、含有される層がゼラチンから構成される場合に含有される。溶媒としてはゼラチンが可溶な液体であれば特に限定されず、例えば、水;および酢酸、トリフルオロエタノール、ホルムアミド、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が挙げられる。好ましくは水である。表面層の溶媒の含有量は、本発明の実体モデルの感触とヒトの実際の身体部位の感触とがよく近似するような量であればよく、通常はゼラチンに対して40重量%以下である。表面層が弾性材料としてゼラチンから構成される場合、表面層の溶媒の含有量の下限値はゼラチンに対して例えば、2重量%であってもよいし、3重量%であってもよいし、または8重量%であってもよい。同様の場合、当該含有量の上限値は弾性材料に対して例えば、30重量%であってもよいし、20重量%であってもよいし、または15重量%であってもよい。表面層がゼラチンから構成される場合、表面層における溶媒(例えば水)の含有量を調整することにより、表面層の弾性率を制御することができる。溶媒の含有量が多いほど、弾性率は一般に低くなり、当該含有量が少ないほど弾性率は一般に高くなる。表面層が弾性材料として、上記ポリマーのうち、特にゼラチン以外のポリマーから構成される場合、表面層の溶媒の含有量は通常、0重量%である。
表面層の厚みは、本発明の実体モデルが感触を模倣するヒトの身体部位の種類に応じて適宜、選択されればよく、例えば、0.1〜30mm、特に0.3〜15mmであってよい。
下層は、本発明の実体モデルをヒトの身体部位として見たとき、表面層に対して相対的に深層側に位置する層である。
下層は、表面層を構成する弾性材料の弾性率と異なる弾性率を有する弾性材料から構成されており、例えば、有機系弾性材料から構成されている。下層を構成する有機系弾性材料の具体例としては、表面層を構成する有機系弾性材料として例示した同様の有機系弾性材料(特にポリマー)およびシリコーンゲルが挙げられる。本発明の実体モデルとヒトの実際の身体部位との感触のより一層の近似の観点から好ましい下層は、表面層を構成する有機系弾性材料と同じ種類の有機系弾性材料から構成されてもよいし、もしくはウレタンゴム、シリコーンゴム、シリコーンゲルまたはゼラチンから構成されてもよい。同様の観点からより好ましい下層はシリコーンゴム、シリコーンゲルまたはゼラチンから構成される。具体的には、例えば、表面層がシリコーンゴムから構成される場合、下層はシリコーンゴム、シリコーンゲルまたはゼラチンから構成されることが好ましい。また例えば、表面層がウレタンゴムから構成される場合、下層はシリコーンゴム、シリコーンゲルまたはゼラチンから構成されることが好ましい。
下層と表面層との密着の程度はこれらの層を構成する材料の親和性に依存する。
例えば、下層が表面層を構成する有機系弾性材料と同じ種類の有機系弾性材料から構成される場合、当該同じ種類の材料は相互に親和性が高いため、表面層は通常、下層と不可分に一体化されている。表面層が下層と不可分に一体化されているとは、表面層を人力で下層から引き剥がそうとしても、それらの間の界面での剥離は困難な状態をいう。
また例えば、下層の構成材料と表面層の構成材料との組み合わせが、シリコーンゴムとウレタンゴムとの組み合わせである場合など、相互に親和性が低い組み合わせの場合、表面層は下層から離接可能に一体化されている。表面層が下層から離接可能に一体化されているとは、手術シミュレーション前、表面層は下層の表面の少なくとも一部を包囲して、両者は一体化されているが、手術シミュレーションにより表面層を切開すると、当該切れ目から表面層が下層から容易に剥離できる状態をいう。このような場合、表面層を何回も容易に取り換えることができるので、本発明の実体モデルは経済的である。
下層を構成するシリコーンゴムとしては、表面層を構成するシリコーンゴムの市販品として例示した同様の市販品が使用可能である。
下層を構成するウレタンゴムとしては、表面層を構成するウレタンゴムの市販品として例示した同様の市販品が使用可能である。
下層を構成するゼラチンとしては、表面層を構成するゼラチンと同様の市販品が使用可能である。
下層を構成するシリコーンゲルは市販品として入手可能である。シリコーンゲルの市販品として、例えば、ワッカー・シリゲル(Wacker SilGel)612A(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)およびワッカー・シリゲル612B(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)が挙げられる。
下層もまた、表面層と同様に、弾性材料の他に硬化剤、着色剤、塩および溶媒等の添加剤を含有してもよい。下層においても、塩の含有により、弾性率を増大させることができる。
詳しくは下層が上記ポリマーのうち、特にゼラチン以外のポリマーから構成される場合、下層は通常、当該ゼラチン以外のポリマーおよび硬化剤を含み、さらに着色剤を含んでもよい。下層がゼラチンから構成される場合、下層は通常、当該ゼラチンおよび溶媒を含み、さらに着色剤を含んでもよい。下層がシリコーンゲルから構成される場合、下層は通常、当該シリコーンゲルおよび溶媒を含み、さらに着色剤および/または硬化剤を含んでもよいが、通常は硬化剤を含まない。
下層に含有される硬化剤および溶媒の種類はそれぞれ、表面層に含有される硬化剤および溶媒の種類と同様の範囲内から選択されてもよい。
下層がシリコーンゲルおよびゼラチン以外のポリマーから構成される場合、下層の硬化剤の含有量は、本発明の実体モデルの感触とヒトの実際の身体部位の感触とが近似するような量である。
例えば、下層および表層がシリコーンゲルおよびゼラチン以外の同じ種類の材料から構成される場合、下層の硬化剤の含有量は、通常は、表面層の硬化剤の含有量と異なる量である。当該場合、詳しくは、下層の硬化剤の含有量は通常、表面層の説明で上記した硬化剤の含有量範囲と同様の範囲内であって、表面層の硬化剤の含有量と異なる量である。
また例えば、下層および表層がシリコーンゲルおよびゼラチン以外の材料であって、相互に種類の異なる材料から構成される場合、下層の硬化剤の含有量は通常、下層を構成する材料の弾性率が表面層を構成する材料の弾性率と異なるような量であればよい。
下層がシリコーンゲルおよびゼラチン以外のポリマーから構成される場合、表面層においてと同様に、下層における硬化剤の含有量を調整することにより、下層の弾性率を制御することができる。
下層がシリコーンゲルおよび/またはゼラチンから構成される場合、下層の硬化剤の含有量は、通常、0重量%である。
下層がシリコーンゲルおよび/またはゼラチンから構成される場合、下層の溶媒の含有量は、本発明の実体モデルの感触とヒトの実際の身体部位の感触とが近似するような量である。
下層がゼラチンから構成される場合、下層の溶媒の含有量は、通常は、表面層の溶媒の含有量と異なる量である。当該場合、詳しくは、下層の溶媒の含有量は通常、ゼラチンから構成される表面層の説明で上記した溶媒の含有量範囲と同様の範囲内であって、表面層の溶媒の含有量と異なる量である。
下層がシリコーンゲルから構成される場合、下層の溶媒の含有量は通常、下層を構成する材料の弾性率が表面層を構成する材料の弾性率と異なるような量であればよい。
下層がシリコーンゲルおよび/またはゼラチンから構成される場合、表面層においてと同様に、下層における溶媒の含有量を調整することにより、下層の弾性率を制御することができる。下層がシリコーンゲルおよびゼラチン以外のポリマーから構成される場合、下層の溶媒の含有量は、通常、0重量%である。
下層に含有される着色剤の種類および含有量はそれぞれ、表面層に含有される着色剤の種類および含有量と同様の範囲内から選択されてもよい。
下層の厚みは、本発明の実体モデルが感触を模倣するヒトの身体部位の種類に応じて適宜、選択されればよい。
表面層を構成する弾性材料の弾性率(以下、単に「表面層の弾性率」ということがある)および下層を構成する弾性材料の弾性率(以下、単に「下層の弾性率」ということがある)は、表面層の表面から下層に向かって押圧したときの感触がヒトの実際の身体部位の表面から内部に向かって押圧したときの感触と近似するように、調整されている。表面層および下層の弾性率は、例えば、表面層の表面から下層に向かって押圧したときの弾性率(以下、「弾性率A」ということがある)がヒトの実際の身体部位の表面から内部に向かって押圧したときの弾性率(以下、「弾性率B」ということがある)と近似するように、調整されている。弾性率Aが弾性率Bと近似するとは、弾性率Aが弾性率Bの−10〜+10%、好ましくは−5〜+5%の範囲内であることを意味する。
表面層の弾性率と下層の弾性率との大小関係は、実体モデルが有する形状の種類に応じて異なり、例えば、下層の弾性率は表面層の弾性率よりも、低くてもよいし、または高くてもよい。
本明細書中、弾性率は例えばヤング率であってもよい。本明細書中、弾性率は複素弾性率の値を用いるものとする。複素弾性率は、JIS K6394:2007「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−動的性質の求め方−一般指針」に従う動的粘弾性試験(周波数分散)に基づく値である。詳しくは、以下の条件で測定することができる。試験片は直径3〜6mmおよび高さ3〜5mmの円柱状試験片を用いる。
測定モード:圧縮モード
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
静的ひずみ:5%
動的ひずみ:1%
使用試験機:TA INSTRUMENTS製 粘弾性測定装置 RSA−3
後述する損失正接もまた、上記複素弾性率と同様の方法により測定することができる。
本発明は、以下の実施態様X、YおよびZを包含する。以下の実施態様X、YおよびXの表面層および下層はそれぞれ、上記した表面層および下層に対応するものである。
<実施態様X>
本実施態様Xにおいては、下層の弾性率は表面層の弾性率よりも低い。
例えば、実体モデルが乳房、臓器(特に内蔵)、口唇、外鼻、眼瞼、顔面、およびその他の皮膚構造体からなる群(以下、単に「群X」ということがある)から選択されるヒトの身体部位における全体形状またはその一部の形状と同等の形状を有している場合、下層の弾性率は表面層の弾性率よりも低い。この場合の下層および表面層の弾性率は、本実施態様の実体モデルの感触とヒトの実際の身体部位の感触とがよく近似するように調整されればよく、例えば、下層の弾性率は表面層の弾性率に対して、通常、1〜99.9%、特に1〜99%の範囲内であり、好ましくは1〜80%、より好ましくは1〜70%である。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は通常、1:1.2〜1:100であり、好ましくは1:1.5〜1:100であり、より好ましくは1:2〜1:100であり、さらに好ましくは1:2〜1:80、最も好ましくは1:2〜1:50である。
実体モデルが上記した群Xから選択されるヒトの身体部位と同等の形状を有している場合、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1×10〜5.0×10Pa、好ましくは1.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは1.2×10〜4.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本発明の実体モデルとヒトの実際の身体部位との感触のより一層の近似の観点から、1.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、5.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
実体モデルが上記した群Xから選択されるヒトの身体部位と同等の形状を有している場合、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.9、好ましくは0.15〜0.85;
表面層:0.1〜0.9、好ましくは0.1〜0.5、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様Xにおいては、表面層および下層を構成する弾性材料はそれぞれ独立して上記した範囲内から選択されてよい。本実施態様Xにおいては、本発明の実体モデルとヒトの実際の身体部位との感触のより一層の近似の観点から、表面層を構成する弾性材料はシリコーンゴムまたはポリウレタンゴムであり、下層を構成する弾性材料がシリコーンゴム、シリコーンゲルまたはゼラチンである。
本実施態様Xにおいて、表面層および下層における硬化剤および/または溶媒の含有量は、表面層および下層が上記した弾性率の関係を有するように、適宜、設定および選択されればよい。
本実施態様Xにおいて、表面層および下層の厚みはそれぞれ上記した通りであってよい。
本実施態様Xは以下の実施態様x1〜x7を包含する。以下の実施態様x1〜x7の表面層および下層はそれぞれ、上記した表面層および下層に対応するものとする。
(実施態様x1)
実施態様x1に係る実体モデルは、上記した群Xのうち、乳房(特に左乳房)と同等の形状を有する。本実施態様において、左乳房の形状を有する実体モデル10Aは図1(A)に示すような全体形状を有し、図1(B)または図1(C))に示すような断面構造を有する。図1(A)は実体モデル10Aの全体形状を示す概略図であり、図1(B)は図1(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図の一例を示し、図1(C)は図1(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図の別の一例を示す。図1(B)において表面層1Aは下層2Aの片側の全面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Aの一部の表面を覆っていてもよい。図1(C)において表面層1Aは下層2Aのほぼ全面を覆っている。本実施態様において、表面層1Aは乳房の皮膚(表皮および真皮を含む)に対応し、下層2Aは乳房の皮下組織(乳腺組織および脂肪を含む)に対応する。
本実施態様においては、実体モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、下層2Aの弾性率は表面層1Aの弾性率に対して1〜99%の範囲内であることが好ましく、1〜80%がより好ましく、1〜70%がさらに好ましく、1〜50%が最も好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は通常、1:1.2〜1:100であり、好ましくは1:1.5〜1:100であり、より好ましくは1:1.5〜1:80であり、さらに好ましくは1:2〜1:50である。
本実施態様においては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1×10〜5.0×10Pa、好ましくは1.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは2.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは2.5×10〜4.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の乳房モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、5.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.9、好ましくは0.15〜0.85;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様に係る乳房モデルは、実体モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、非下垂型(若年型)および下垂型(老年型)を包含する。
非下垂型乳房モデルにおいては、実体モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、下層2Aの弾性率は表面層1Aの弾性率に対して10〜99%が好ましく、20〜99%がより好ましく、20〜80%がさらに好ましく、20〜50%の範囲内であることが最も好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:1.2〜1:50であり、より好ましくは1:1.5〜1:20であり、さらに好ましくは1:2〜10である。
非下垂型乳房モデルにおいては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:1.0×10〜5.0×10Pa、好ましくは1.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.5×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは2.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは2.5×10〜4.0×10Pa。
非下垂型乳房モデルにおいては、下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本発明の乳房モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、5.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
非下垂型乳房モデルにおいては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
下垂型乳房モデルにおいては、実体モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、下層2Aの弾性率は表面層1Aの弾性率に対して1〜50%が好ましく、1〜19%がより好ましく、1〜10%がさらに好ましく、1〜5%の範囲内であることが最も好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:5〜1:100であり、より好ましくは1:10〜1:100であり、さらに好ましくは1:10〜1:80であり、最も好ましくは1:15〜1:50である。
下垂型乳房モデルにおいては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1×10〜1.0×10Pa、好ましくは1.0×10〜5.0×10Pa、より好ましくは5.0×10〜5.0×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは2.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは2.5×10〜4.0×10Pa。
下垂型乳房モデルにおいては、下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本発明の乳房モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、5.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
下垂型乳房モデルにおいては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.9、好ましくは0.5〜0.9、より好ましくは0.6〜0.9;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様の実体モデルにおいては、表面層1Aと下層2Aとの体積比は通常、0.1:99.9〜50:50、特に1:99〜50:50であり、実体モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、好ましくは1:99〜30:70であり、より好ましくは1:99〜20:80であり、さらに好ましくは1:99〜10:90である。
本実施態様においては、下層2Aおよび表面層1Aの厚みはそれぞれ通常、以下の範囲内である:
下層2Aの厚みt2A:10〜150mm;
表面層1Aの厚みt1A:0.3〜10mm、好ましくは0.3〜5mm、より好ましくは0.3〜2mm。
本明細書中、厚みについての数値範囲は、当該厚みが当該数値範囲内で変化していてもよい、という意味である。
本実施態様の乳房モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成され、下層はゼラチン、シリコーンゲルまたはシリコーンゴムから構成される。より好ましくは表面層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成され、下層はゼラチンまたはシリコーンゲルから構成される。
本実施態様において下層2Aは、図1(B)に示すように、湾曲状支持体3Aによって支持されていることが好ましい。湾曲状支持体3Aは、実際の乳房と肺との間に位置する胸壁に対応する。胸壁は肋骨と肋間筋とからなり、湾曲状支持体3Aは当該胸壁と同等の湾曲形状を有する。図1(B)においては、左乳房を示すため、左脇側に対応する図面上の右側に向かって湾曲下降している。本実施態様の乳房モデル10Aは、下層2Aの下部に湾曲状支持体3Aを有することにより、実際の乳房と同程度に重量方向への下垂形状を有し易くなるため、実際の乳房の手術により一層、近似した手術シミュレーションを行うことができる。湾曲状支持体3Aは、その上に配置される下層2Aおよび表面層1Aを支持できる程度の硬さおよび強度を有する限り、いかなる材料から構成されていてもよい。湾曲状支持体3Aの構成材料として、例えば、シリコーンゴム、石こう、プラスチック、金属等が挙げられる。
図1(B)において、湾曲状支持体3Aと型枠5Aの底部との間に空洞が形成されているが、当該空洞はシリコーンゴム、石こう、プラスチック等の充填材により充填されていてもよいし、または型枠5Aの底部を用いることなく、湾曲状支持体3Aを型枠の底部として用いてもよい。
乳房モデル10Aは、保形性の観点から、図1(B)に示すように型枠5Aを有することが好ましいが、必ずしも有さなければならないというわけではない。
乳房モデル10Aは、実際の乳房の重力方向への下垂性の観点から、図1(C)に示すように、表面層1Aが下層2Aのほぼ全面を覆っていることが好ましい。
(実施態様x2)
実施態様x2に係る実体モデルは、上記した群Xのうち、臓器、特に肝臓、と同等の形状を有する。本実施態様において、肝臓の形状を有する実体モデル10Bは図2(A)に示すような全体形状を有し、図2(B)に示すような断面構造を有する。図2(A)は実体モデル10Bの全体形状を示す概略図であり、図2(B)は図2(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図を示す。図2(A)および図2(B)において、表面層1Bは下層2Bの全表面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Bの一部の表面を覆っていてもよい。本実施態様において、表面層1Bは肝臓の被膜に対応し、下層2Bは肝臓の実質に対応する。
本実施態様においては、実体モデルとヒトの実際の臓器(特に肝臓)との感触のより一層の近似の観点から、下層2Bの弾性率は表面層1Bの弾性率に対して1〜99%、特に20〜99%の範囲内であることが好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:5〜1:100であり、より好ましくは1:10〜1:100である。
本実施態様においては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1×10〜5.0×10Pa、好ましくは1.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは2.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは2.5×10〜4.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の臓器モデルとヒトの実際の臓器との感触のより一層の近似の観点から、5.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.9、好ましくは0.15〜0.85;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様においては、表面層1Bの厚みは通常、以下の範囲内である:
表面層1Bの厚みt1B:0.3〜2mm。
下層2Bの厚みは、全体厚みTがヒトの実際の肝臓と同程度である限り、特に限定されない。
本実施態様の臓器モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成され、下層はゼラチン、シリコーンゲル、ウレタンゴムまたはシリコーンゴムから構成される。より好ましくは表面層はシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンから構成される。
(実施態様x3)
実施態様x3に係る実体モデルは、上記した群Xのうち、口唇、特に下口唇、と同等の形状を有する。本実施態様の実体モデル10Cは、図3(A)に示すような口唇の全体形状を有し、その下口唇は図3(B)に示すような断面構造を有する。図3(A)は口唇の全体形状を有する本実施態様の実体モデルの一例の概略図であり、図3(B)は図3(A)の口唇のうち下口唇におけるPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図を示す。図3(A)および図3(B)において表面層1Cは下層2Cの全表面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Cの一部の表面を覆っていてもよい。本実施態様において、表面層1Cは口唇の皮膚(表皮および真皮を含む)に対応し、下層2Cは口唇の皮下組織(筋層および脂肪を含む)に対応する。
本実施態様においては、実体モデルとヒトの実際の口唇との感触のより一層の近似の観点から、下層2Cの弾性率は表面層1Cの弾性率に対して10〜80%の範囲内であることが好ましく、10〜70%がより好ましく、10〜50%がさらに好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:1.5〜1:10であり、より好ましくは1:2〜1:10であり、さらに好ましくは1:2〜1:5である。
本実施態様においては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:1.0×10〜5.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは1.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは2.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは2.0×10〜4.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の口唇モデルとヒトの実際の口唇との感触のより一層の近似の観点から、5.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様においては、表面層1Cの厚みは通常、以下の範囲内である:
表面層1Cの厚みt1C:0.3〜3mm。
下層2Cの厚みは、全体厚みTがヒトの実際の下口唇の全体厚みと同程度である限り、特に限定されない。
本実施態様の口唇モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成され、下層はゼラチンまたはシリコーンゴムから構成される。より好ましくは表面層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成され、下層はシリコーンゴムから構成される。
本実施態様においては、表面層および下層に口唇裂部位の形状を付与することができる。
(実施態様x4)
実施態様x4に係る実体モデルは、上記した群Xのうち、皮膚および皮下組織からなる皮膚構造体と同等の形状を有する。本実施態様の実体モデル10Dは皮膚構造体形状を有し、図4に示すような断面構造を有する。図4の実体モデル10Dにおいて表面層1Dは下層2Dの片側の全面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Dの一部の表面を覆っていてもよい。本実施態様において、表面層1Dは皮膚構造体の皮膚(表皮および真皮を含む)に対応し、下層2Dは皮膚構造体の皮下組織(筋層および脂肪を含む)に対応する。
本実施態様においては、実体モデルとヒトの実際の皮膚構造体との感触のより一層の近似の観点から、下層2Dの弾性率は表面層1Dの弾性率に対して10〜80%、特に10〜70%の範囲内であることが好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:2〜1:10であり、より好ましくは1:3〜1:5である。
本実施態様においては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:1.0×10〜2.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは1.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは2.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは2.0×10〜4.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の皮膚構造体モデルとヒトの実際の皮膚構造体との感触のより一層の近似の観点から、5.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様においては、下層2Dおよび表面層1Dの厚みはそれぞれ通常、以下の範囲内である:
下層2Dの厚みt2D:2〜60mm;
表面層1Dの厚みt1D:0.3〜3mm。
本実施態様の皮膚構造体モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンまたはシリコーンゴムから構成される。より好ましくは表面層はシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンから構成される。
(実施態様x5)
実施態様x5に係る実体モデルは、上記した群Xのうち、外鼻と同等の形状を有する。本実施態様の実体モデル10Eは、図5(A)に示すような外鼻の全体形状を有し、その鼻翼は図5(B)に示すような断面構造を有する。図5(A)は外鼻の全体形状を有する本実施態様の実体モデルの一例の概略図であり、図5(B)は図5(A)の外鼻のうち鼻翼におけるPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図を示す。図5(A)および図5(B)において表面層1Eは下層2Eの全表面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Eの一部の表面を覆っていてもよい。本実施態様において、表面層1Eは外鼻の皮膚(表皮および真皮を含む)に対応し、下層2Eは外鼻の皮下組織(筋層、軟骨および脂肪を含む)に対応する。
本実施態様においては、実体モデルとヒトの実際の外鼻との感触のより一層の近似の観点から、下層2Eの弾性率は表面層1Eの弾性率に対して10〜80%の範囲内であることが好ましく、10〜70%がより好ましく、30〜60%がさらに好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:1.5〜1:10であり、より好ましくは)1:1.5〜1:10であり、さらに好ましくは1:2〜1:5である。
本実施態様においては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:1.0×10〜2.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:0.5×10〜0.5×10Pa、好ましくは1.0×10〜5.0×10Pa、より好ましくは1.0×10〜3.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の外鼻モデルとヒトの実際の外鼻との感触のより一層の近似の観点から、1.0×10〜5.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜3.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10〜2.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様においては、表面層1Eの厚みは通常、以下の範囲内である:
表面層1Eの厚みt1E:0.3〜2mm。
下層2Eの厚みは、全体厚みTがヒトの実際の外鼻の肉厚と同程度である限り、特に限定されない。
本実施態様の外鼻モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンまたはシリコーンゴムから構成される。より好ましくは表面層はシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンから構成される。
(実施態様x6)
実施態様x6に係る実体モデルは、上記した群Xのうち、眼瞼と同等の形状を有する。本実施態様の実体モデル10Fは、図6(A)に示す顔面のうち、眼瞼の外観形状を有し、図6(B)に示すような断面構造を有する。図6(A)は本実施態様の眼瞼モデルの一例を含む顔面モデルの全体形状を示す概略図であり、図6(B)は図6(A)の眼瞼部におけるPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図を示す。図6(A)および図6(B)において表面層1Fは下層2Fの全表面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Fの一部の表面を覆っていてもよい。本実施態様において、表面層1Fは眼瞼の皮膚(表皮および真皮を含む)に対応し、下層2Fは眼瞼の皮下組織(筋層、瞼板および脂肪を含む)に対応する。
本実施態様においては、実体モデルとヒトの実際の眼瞼との感触のより一層の近似の観点から、下層2Fの弾性率は表面層1Fの弾性率に対して10〜80%の範囲内であることが好ましく、10〜70%がより好ましく、30〜60%がさらに好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:1.5〜1:10であり、より好ましくは1:1.5〜1:10であり、さらに好ましくは1:2〜1:5である。
本実施態様においては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:1.0×10〜2.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:0.5×10〜0.5×10Pa、好ましくは1.0×10〜5.0×10Pa、より好ましくは1.0×10〜3.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の眼瞼モデルとヒトの実際の眼瞼との感触のより一層の近似の観点から、1.0×10〜5.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜3.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10〜2.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様においては、表面層1Fの厚みは通常、以下の範囲内である:
表面層1Fの厚みt1F:0.3〜2mm。
下層2Fの厚みは、全体厚みTがヒトの実際の眼瞼の肉厚と同程度である限り、特に限定されない。
本実施態様の眼瞼モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はウレタンゴムまたはシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンまたはシリコーンゴムから構成される。より好ましくは表面層はウレタンゴムまたは)から構成され、下層はシリコーンゴムから構成される。
(実施態様x7)
実施態様x7に係る実体モデルは、上記した群Xのうち、脳(大脳)、と同等の形状を有する。本実施態様において、脳の形状を有する実体モデルは図7に示すような冠状断面を有する。図7は実体モデル10Gの概略冠状断面図を示す。図7において、表面層1Gは下層2Gの全表面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Gの一部の表面を覆っていてもよい。本実施態様において、表面層1Gは大脳皮質に対応し、下層2Gは髄質に対応する。
本実施態様においては、実体モデルとヒトの実際の大脳との感触のより一層の近似の観点から、下層2Gの弾性率は表面層1Gの弾性率に対して10〜80%の範囲内であることが好ましく、10〜70%がより好ましく、30〜60%がさらに好ましい。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1:1.5〜1:10であり、より好ましくは1:1.5〜1:10であり、より好ましくは1:2〜1:10である。
本実施態様においては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:1.0×10〜2.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜1.5×10Pa、より好ましくは5.0×10〜1.2×10Pa;
表面層:0.5×10〜0.5×10Pa、好ましくは1.0×10〜5.0×10Pa、より好ましくは1.0×10〜3.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の脳モデルとヒトの実際の脳との感触のより一層の近似の観点から、1.0×10〜5.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜3.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10〜2.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様においては、表面層1Gの厚みは通常、以下の範囲内である:
表面層1Gの厚みt1G:1〜15mm。
下層2Gの厚み(寸法)は、大脳の全体寸法Tがヒトの実際の大脳と同程度である限り、特に限定されない。
本実施態様の大脳モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンまたはシリコーンゴムから構成される。より好ましくは表面層はシリコーンゴムから構成され、下層はゼラチンから構成される。
<実施態様Y>
本実施態様Yにおいては、下層の弾性率は表面層の弾性率よりも高い。
例えば、実体モデルが耳介と同等の形状を有している場合、下層の弾性率は表面層の弾性率よりも高い。この場合の下層および表面層の弾性率は、本実施態様の実体モデルの感触とヒトの実際の身体部位の感触とがよく近似するように調整されればよく、例えば、下層の弾性率は表面層の弾性率に対して、通常、100.1〜500%の範囲内であり、好ましくは101〜500%であり、より好ましくは110〜300、さらに好ましくは120〜200%である。下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は好ましくは1.2:1〜6:1であり、より好ましくは1.3:1〜5:1であり、さらに好ましくは1.4:1〜4:1であり、より好ましくは1.4:1〜3:1である。
本実施態様Yにおいては、下層および表面層の弾性率は通常、以下の範囲内である:
下層:5.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜1.0×10Pa、より好ましくは1.0×10〜1.0×10Pa;
表面層:1.0×10〜1.0×10Pa、好ましくは5.0×10〜7.0×10Pa、より好ましくは1.2×10〜4.0×10Pa。
下層を構成する弾性材料の弾性率と、表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値は、本実施態様の口唇モデルとヒトの実際の口唇との感触のより一層の近似の観点から、1.0×10〜1.0×10Paであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
本実施態様においては、下層および表面層の損失正接は通常、以下の範囲内である:
下層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3;
表面層:0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.3。
本実施態様Yにおいては、表面層および下層を構成する弾性材料はそれぞれ独立して上記した範囲内から選択されてよい。本実施態様Yにおいては、本発明の実体モデルとヒトの実際の身体部位との感触のより一層の近似の観点から、表面層を構成する弾性材料はシリコーンゴムまたはポリウレタンゴムであり、下層を構成する弾性材料はシリコーンゴムまたはポリウレタンゴムであることが好ましい。
本実施態様Yにおいて、表面層および下層における硬化剤および/または溶媒の含有量は、表面層および下層が上記した弾性率の関係を有するように、適宜、設定および選択されればよい。
本実施態様Yとして実施態様y1を具体的に説明する。
(実施態様y1)
実施態様y1に係る実体モデルは、耳介と同等の形状を有する。本実施態様において、耳介の形状を有する実体モデル10Hは図8(A)に示すような耳介の全体形状を有し、図8(B)に示すような断面構造を有する。図8(A)は実体モデル10Hの全体形状を示す概略図であり、図8(B)は図8(A)のPP断面を矢印方向で見たときの概略断面図を示す。図8(B)において表面層1Hは下層2Hの全表面を覆っているが、所望の手術部位に応じて下層2Hの一部の表面を覆っていてもよい。本実施態様において、表面層1Hは耳介の皮膚(表皮および真皮を含む)に対応し、下層2Hは耳介の軟骨に対応する。
本実施態様y1においては、実体モデルとヒトの実際の耳介との感触のより一層の近似の観点から、下層2Hの弾性率の表面層1Hの弾性率に対する割合および下層の弾性率と表面層の弾性率との比率は、上記した実施態様Yにおいてと同様である。
本実施態様y1においては、下層および表面層の弾性率、下層を構成する弾性材料の弾性率と表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値、ならびに下層および表面層の損失正接は通常、上記した実施態様Yにおいてと同様である。
本実施態様においては、下層2Hおよび表面層1Hの厚みはそれぞれ通常、以下の範囲内である:
下層2Hの厚みt2H:1〜3mm;
表面層1Hの厚みt1H:0.3〜5mm。
以上、実体モデルが表面層および下層のみからなる二層性モデルである場合について説明したが、本発明は表面層および下層以外の層をさらに含むことを妨げるものではなく、三層構造以上の多層構造を有していてもよい。
実体モデルを構成する表面層および下層がいずれも単層である場合について説明したが、本発明においては、表面層および下層はそれぞれ独立して単層であってもよいし、または複数の層であってもよい。
実体モデルがヒトの身体部位と同等の形状を有する場合について説明したが、ヒト以外の動物の身体部位と同等の形状を有していてもよい。
<実施態様Z>
本実施態様Zは、前記した実施態様XおよびYの実体モデルが下層の表面層側とは反対側に配置される深層をさらに含む実施態様である。すなわち、本実施態様Zは、実体モデルが下層の表面層側とは反対側に配置される深層をさらに含むこと以外、実施態様XおよびYと同様である。これにより、本発明の実体モデルの感触がヒトの実際の身体部位の感触とより一層近似する。
本実施態様Zは、下層を構成する弾性材料がシリコーンゲル以外の上記した弾性材料であること、および実体モデルが下層の表面層側とは反対側に配置される後述の深層をさらに含むこと以外、実施態様X、特に実施態様x1と同様であることが好ましい。
本実施態様Zは以下の実施態様z1を包含する。
(実施態様z1)
本実施態様z1は、下層の厚みが表面層の厚みと同様の範囲内であること、および実体モデルが下層の表面層側とは反対側に配置される後述の深層をさらに含むこと以外、前記実施態様x1と同様である。
詳しくは、実施態様z1に係る実体モデルは乳房と同等の形状を有する。本実施態様において、乳房の形状を有する実体モデル10A’は図9に示すような断面構造を有する。すなわち、実体モデル10A’は、表面層1A’および下層2A’を含み、下層2A’の表面層側とは反対側に配置される深層6A’をさらに含む。本実施態様において、表面層1A’は乳房の表皮に対応し、下層2A’は真皮に対応し、深層6A’は乳房の皮下組織(乳腺組織および脂肪を含む)に対応する。
表面層1A’は実施態様x1における表面層1Aと同様であり、上記表面層1Aから選択されてもよい。
下層2A’は、当該下層の厚みが表面層の厚みと同様の範囲内であること、および当該下層を構成する弾性材料がシリコーンゲル以外の上記した弾性材料であること以外、実施態様x1における下層2Aと同様である。
深層6A’は液体であり、25℃で液体状態の物質から構成されている。深層6A’を構成する物質は、25℃で液体状態にあり、かつ下層を溶解させない限り、あらゆる液体であってよく、例えば、水、生理食塩水、シリコーンオイル等であってもよい。好ましい深層は水または生理食塩水である。
本実施態様z1において、詳しくは、下層の弾性率の表面層の弾性率に対する割合、下層の弾性率と表面層の弾性率との比率、下層および表面層の弾性率、下層を構成する弾性材料の弾性率と表面層を構成する弾性材料の弾性率との差の絶対値、ならびに下層および表面層の損失正接(以下、単に「弾性特性値」という)は、特記しない限り、上記した実施態様x1の弾性特性値と同様である。
本実施態様z1においては、上記弾性特性値は特に、上記した実施態様x1における非下垂型乳房モデルの弾性特性値と同様であることが好ましい。このとき、本実施態様z1の乳房モデルは、特に中年型として有用である。中年型とは、乳房が重力に従って下垂する程度が、総じて、非下垂型乳房モデル(若年型)と下垂型乳房モデル(老年型)との間に位置付けられる中間型という意味である。
本実施態様の実体モデルにおいては、表面層1A’および下層2A’の合計体積と、深層6A’の体積との体積比は通常、0.1:99.9〜50:50、特に1:99〜50:50であり、実体モデルとヒトの実際の乳房との感触のより一層の近似の観点から、好ましくは1:99〜30:70であり、より好ましくは1:99〜20:80であり、さらに好ましくは1:99〜10:90である。
本実施態様においては、下層2A’、表面層1A’および深層6A’の厚みはそれぞれ通常、以下の範囲内である:
下層2A’の厚みt2A’:0.3〜10mm、好ましくは0.3〜5mm、より好ましくは0.3〜2mm、さらに好ましくは0.5〜1mm;
表面層1A’の厚みt1A’:0.3〜10mm、好ましくは0.3〜5mm、より好ましくは0.3〜2mm、さらに好ましくは0.5〜1mm:
深層6A’の厚みt6A’:10〜150mm。
本明細書中、厚みについての数値範囲は、当該厚みが当該数値範囲内で変化していてもよい、という意味である。
本実施態様の乳房モデルにおいて表面層および下層はそれぞれ、前記した弾性材料から構成されていてよいが、好ましくは表面層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成され、下層はシリコーンゴムまたはウレタンゴムから構成される。より好ましくは表面層はウレタンゴムから構成され、下層はシリコーンゴムから構成される。
本実施態様の乳房モデルは、表面層、下層またはこれらの間の部位に病巣(例えば、腫瘍)があると仮定した手術シミュレーションをすることもできるし、または注射器で水を抜いて、実際の手術前に、手術後の変形の程度および手術後の下垂形状を知るための手術シミュレーションをすることもできる。
[実体モデルの使用]
本発明の実体モデルは、特定の同じ形状のものを大量生産することにより、医師育成のための教材として有用である。
詳しくは、本発明の実体モデルは、感触がヒトの実際の身体部位とよく近似しているため、メスで切開するときの感触も、切開部を縫合するときの感触も、ヒトの実際の身体部位とよく近似している。
また本発明の実体モデルは、感触がヒトの実際の身体部位とよく近似しているため、手術時の下垂形状も、手術により病巣を除去するときの適切な除去体積も、除去された部位にシリコーンまたは自家組織などの材料を充填するときの適切な充填体積も、ヒトの実際の身体部位とよく近似している。
さらに本発明の三次元実体モデルを用いて模擬手術を行うことにより、手術後の変形の程度を知ることができる。
このため、本発明の実体モデルは、医師の手術熟練度の向上にも、実際の手術によく適合する手術計画の立案にも、および患者へのわかり易い手術の説明にも、十分に貢献することができる。
本発明の実体モデルはまた、注文生産により、患者ごとに異なる先天的または後天的な障害部位(例えば、口唇裂部位)の形状を容易に付与することができるため、細部まで個々の患者に応じた手術計画を立案することができる。例えば、口唇裂部位を有する口唇モデルは、後述する注型−積層法において、下層の形成時に成形面に口唇裂部位に対応する形状を付与された型を使用すればよい。
本発明の実体モデルはまた、予め腫瘍を付与されることにより、実際の手術により一層、近似した手術シミュレーションを行うことができる。
本発明の腫瘍を有する実体モデルの具体例を実施態様p1〜p3に示す。
(実施態様p1)
実施態様p1に係る実体モデルは顔面の全体形状を有する。本実施態様において、顔面形状を有する実体モデル10Iは図10に示すような全体形状を有し、その頬部分に皮膚腫瘍5Iが付与されている。図10において、皮膚腫瘍5Iは頬部分に付与されているが、額部分、顎部分等の他の特定部分に付与されていてもよい。
実体モデル10Iは、表面層1D側に顔面形状を付与されていること、およびその頬部分に皮膚腫瘍5Iが付与されていること以外、前記実施態様x4に係る実体モデル(皮膚構造体モデル)10Dと同様である。実体モデル10I、特に頬部分、は、表面層1D側に顔面形状を付与されていること以外、前記実施態様x4に係る皮膚構造体モデルと同様の断面構造を有している。
皮膚腫瘍5Iの付与方法は特に限定されず、例えば、実体モデル10Iの表面に油性インク等で描画することにより付与することができる。
実体モデル10Iを用いて腫瘍5Iを切除するための手術シミュレーションを行うことにより、皮弁形成術などの医師のデザイン能力の向上に貢献することができる。
(実施態様p2)
実施態様p2に係る実体モデルは乳房形状を有する。本実施態様において、乳房形状を有する実体モデル10Jは図11に示すような断面形状を有し、その内部に腫瘍5Jが付与されている。図11において、腫瘍5Jは表面層1Aの表面から20mmの深さdに配置されているが、患者の画像より計測して、規定し調整してもよい。
実体モデル10Jは、下層2Aの内部に腫瘍5Jが付与されていること以外、前記実施態様x1に係る実体モデル(乳房モデル)10Aと同様である。
腫瘍5Jは、下層2Aよりも高い弾性率を有する有機系弾性材料から構成され、通常は実施態様Xにおける表面層1Aと同程度の弾性率を有する有機系弾性材料から構成される。
腫瘍5Jを構成する有機系弾性材料の具体例としては、表面層を構成する有機系弾性材料として例示した同様の有機系弾性材料(特にポリマー)が挙げられる。実際の腫瘍部との感触の近似の観点から好ましい腫瘍5Jは、表面層1Aを構成する有機系弾性材料と同じ種類の有機系弾性材料から構成され、同様の観点からより好ましい腫瘍5Jはシリコーンゴムまたはゼラチンから構成される。例えば、表面層1Aがシリコーンゴムから構成される場合、腫瘍5Jもシリコーンゴムから構成されることが好ましい。また例えば、下層2Aがゼラチンから構成される場合、腫瘍5Jは、シリコーンゴムまたはゼラチン、特にゼラチンから構成されることが好ましい。
腫瘍5Jを構成するシリコーンゴムとしては、表面層を構成するシリコーンゴムの市販品として例示した同様の市販品が使用可能である。
腫瘍5Jを構成するゼラチンとしては、表面層を構成するゼラチンと同様の市販品が使用可能である。
腫瘍5Jもまた、表面層と同様に、弾性材料の他に硬化剤、着色剤、および溶媒等の添加剤を含有してもよい。詳しくは腫瘍5Jが上記ポリマーのうち、特にゼラチン以外のポリマーから構成される場合、腫瘍5Jは通常、当該ゼラチン以外のポリマーおよび硬化剤を含み、さらに着色剤を含んでもよい。腫瘍5Jがゼラチンから構成される場合、腫瘍5Jは通常、当該ゼラチンおよび溶媒を含み、さらに着色剤を含んでもよい。
腫瘍5Jに含有される硬化剤および溶媒の種類はそれぞれ、表面層に含有される硬化剤および溶媒の種類と同様の範囲内から選択されてもよい。
腫瘍5Jがゼラチン以外のポリマーから構成される場合、腫瘍5Jの硬化剤の含有量は通常、実施態様Xにおける表面層の硬化剤の含有量範囲と同様の範囲内であってもよい。腫瘍5Jがゼラチンから構成される場合、腫瘍5Jの溶媒の含有量は通常、実施態様Xにおける表面層の溶媒の含有量範囲と同様の範囲内であってもよい。
腫瘍5Jに含有される着色剤の種類および含有量はそれぞれ、表面層に含有される着色剤の種類および含有量と同様の範囲内から選択されてもよい。
実体モデル10Iを用いて腫瘍5Jを切除するための手術シミュレーションを行うことにより、実際の手術前に、例えば以下の事項を予め知ることができる:
(i)病巣を除去するときの適切な除去体積;
(ii)除去された部位にシリコーンまたは自家組織などの材料を充填するときの適切な充填体積;
(iii)手術後の変形の程度;および
(iv)手術後の下垂形状。
(実施態様p3)
実施態様p3に係る実体モデルは皮膚構造体形状を有する。本実施態様において、皮膚構造体形状を有する実体モデル10Kは図12に示すような断面形状を有し、表面層の一部においてその上面および下面の両面に突出した皮膚腫瘍5Kが付与されている。図12において、腫瘍5Kは表面層1Dの表面方向においても略円形状を有し、例えば20mmの直径を有しているが、患者の画像より計測した値に応じて直径を調整してもよいし、または当該直径を制御して模擬手術の難易度を調整してもよい。
実体モデル10Kは、表面層1Dの一部に腫瘍5Kが付与されていること以外、前記実施態様x4に係る実体モデル(皮膚構造体モデル)10Dと同様である。
腫瘍5Kは、下層2Dよりも高い弾性率を有する有機系弾性材料から構成され、通常は実施態様Xにおける表面層1Dと同じ組成を有する。
実体モデル10Kを用いて腫瘍5Kを切除するための手術シミュレーションを行うことにより、実際の手術前に、例えば実施態様p2における事項(i)〜(iii)を予め知ることができる。
[実体モデルの製造方法]
本発明の実体モデルは、以下の工程を含む方法により製造することができる:
硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させて表面層を形成する工程;および
硬化性材料を含む下層形成用樹脂組成物を硬化させて下層を形成する形成工程。
表面層形成工程および下層形成工程の実施順序は、実体モデルの構造および各層の形成方法に応じて、適宜決定されればよい。例えば、表面層形成工程を実施した後、下層形成工程を実施してもよいし、または下層形成工程を実施した後、表面層形成工程を実施してもよい。
表面層形成工程および下層形成工程においてはそれぞれ独立して、注型法、積層法、注入法およびこれらの複合法等を採用することができる。
(注型−注型法)
例えば、図1(A)および(B)に示す乳房モデルの製造に際しては、図13に示す注型−注型法により、表面層および下層を形成することができる。
注型−注型法は以下の工程を含む。
注型法により、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させて表面層を形成する工程;および
注型法により、硬化性材料を含む下層形成用樹脂組成物を硬化させて下層を形成する工程。
表面層および下層の硬化条件を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御することができる。
具体的には、まず、図13(A)に示すように、成形面101に所望の形状を付与された下型100に、表面層形成用樹脂組成物を流し込んだ後、成形面111に所望の形状を付与された上型110を下方移動させ、硬化を行い、表面層1Aを形成する。
表面層形成用樹脂組成物は硬化性材料を含み、所望により、前記した硬化剤、着色剤、および溶媒等の各種添加剤を含んでもよい。硬化性材料は前記した弾性材料(特に有機系弾性材料)または当該弾性材料を形成し得る材料である。例えば、硬化性材料がゼラチンおよびシリコーンゲル以外のポリマーの場合、表面層形成用樹脂組成物は当該ポリマーおよび硬化剤を含み、所望により着色剤を含む。また例えば、硬化性材料がゼラチンの場合、表面層形成用樹脂組成物は当該ゼラチンおよび溶媒を含み、所望により着色剤を含む。
次いで、図13(B)に示すように、上型110を上方移動させて後退させる。
その後、図13(C)に示すように、下型100内の表面層1Aの上に、下層形成用樹脂組成物を流し込んだ後、成形面121に所望の形状を付与された上型120を下方移動させ、硬化を行い、下層2Aを形成する。
下層形成用樹脂組成物は硬化性材料を含み、所望により、前記した硬化剤、着色剤、および溶媒等の各種添加剤を含んでもよい。硬化性材料は前記した弾性材料(特に有機系弾性材料)または当該弾性材料を形成し得る材料である。例えば、硬化性材料がゼラチンおよびシリコーンゲル以外のポリマーの場合、下層形成用樹脂組成物は当該ポリマーおよび硬化剤を含み、所望により着色剤を含む。また例えば、硬化性材料がおよび/またはシリコーンゲルの場合、下層形成用樹脂組成物は当該ゼラチンおよび溶媒を含み、所望により着色剤を含む。
表面層および下層の形成のための硬化はそれぞれ独立して、硬化性材料の種類に応じて、加熱により行ってもよいし、光照射により行ってもよいし、冷却すること(室温に保持すること)により行ってもよいし、またはこれらの複合的な方法により行ってもよい。例えば、硬化性材料がゼラチン以外のポリマーの場合、当該ポリマーおよび硬化剤を含む室温(25℃)の樹脂組成物を流し込んだ後、加熱すること、光照射すること、かつ/または室温に保持することにより、硬化を行う。また例えば、硬化性材料がゼラチンの場合、当該ゼラチンおよび溶媒を含む45〜70℃の樹脂組成物を流し込んだ後、室温(25℃)またはそれ以下の温度、例えば5〜8℃に冷却することにより、硬化を行う。
表面層および下層の形成のための硬化のとき、硬化条件を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御することが好ましい。硬化条件とは、表面層形成用樹脂組成物および下層形成用樹脂組成物における硬化剤または溶媒の配合比率ならびに表面層および下層の硬化のための加熱温度、加熱時間および光照射量からなる群から選択される1以上の条件のことである。実体モデルの完成後における弾性率の経時的変化を防止する観点からは、加熱および/または光照射を十分に行う限り、硬化剤または溶媒の配合比率を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御することが好ましい。
乳房モデルが図1(B)に示すように、湾曲状支持体3Aおよび型枠5Aを有する場合は、予め湾曲状支持体3Aおよび型枠5Aを製造し、型枠5A内に湾曲状支持体3Aを収容および固定させた後、上記方法で製造された乳房モデルを収容させればよい。
このような注型−注型法により、図4に示す皮膚構造体モデル、図10に示す皮膚腫瘍を有する顔面モデル、図11に示す腫瘍を有する乳房モデル、図12に示す皮膚腫瘍を有する皮膚構造体モデルも製造することができる。
特に図11に示す腫瘍を有する乳房モデルは、下層2Aを形成した後、予め製造された腫瘍5Jを挿入すればよい。下層2Aは、腫瘍5Jを挿入できる程度の弾性率および軟質性を有している。
例えば、図12に示す皮膚腫瘍を有する皮膚構造体モデルは、表面層1Dの形成に際し、成形面に所望の形状を付与された型を使用すればよい。
(注型−積層法)
また例えば、図2に示す肝臓モデルの製造に際しては、注型法により下層2Bを形成した後、積層法により表面層1Bを形成することができる。
注型−積層法は以下の工程を含む。
注型法により、硬化性材料を含む下層形成用樹脂組成物を硬化させて下層を形成する工程;および
積層法により、下層の表面で、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させて表面層を形成する工程。
表面層および下層の硬化条件を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御すことができ。
具体的には、まず、成形面に所望の形状を付与された下型に、下層形成用樹脂組成物を流し込んだ後、成形面に所望の形状を付与された上型を下方移動させ、硬化を行い、下層2Bを形成する。このような注型法による下層の形成方法は、以下の事項以外、上記した注型−注型法による表面層の形成方法と同様である:
・下層の形状が異なること;および
・下層のみを形成すること。
下層形成用樹脂組成物は、上記した注型−注型法による下層の形成方法においてと同様である。
次いで、下層2Bの表面に表面層形成用樹脂組成物を塗布し、硬化を行う。塗布は所望の厚みが達成されるように1回または複数回行うことが好ましい。
表面層形成用樹脂組成物は、上記した注型−注型法による表面層の形成方法においてと同様である。
表面層および下層の形成のための硬化は、上記した注型−注型法による表面層および下層の形成方法においてと同様である。
このような注型−積層法により、図1(A)および(C)に示す乳房モデル、図3に示す口唇モデル、図5に示す外鼻モデル、図6に示す眼瞼モデル、図7に示す脳モデル、図8に示す耳介モデルも製造することができる。当該注型−積層法により、図1(A)および(C)に示す乳房モデルを製造する場合においては、図3(C)に示す後述の蓋部60は要さない。)
(積層−注入法)(二層性モデル)
また例えば、図1(A)および(C)に示す乳房モデルであって、下層がシリコーンゲルである乳房モデルの製造に際しては、積層法により表面層1Aを形成した後、注入法により下層2Aを形成することができる。
積層−注入法(二層性モデル)は以下の工程を含む。
積層法により、塩型の表面で、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させ、塩型を除去して中空状表面層を形成する工程;および
注入法により、中空状表面層の中に、下層を構成する材料(シリコーンゲル)を注入し、下層を形成する工程。
表面層の硬化条件を調整することにより、表面層の弾性率を制御することができる。
具体的には、まず、図14に示すように、成形面に所望の形状を付与された成形部210および持ち手部220を有する塩型200に、表面層形成用樹脂組成物を塗布し、乾燥させる。乾燥とともに硬化を行ってもよい。塗布は持ち手220以外の塩型200(すなわち成形部210)の表面に対して行う。塗布は所望の厚みが達成されるように1回または複数回行うことが好ましい。その結果、塩型200の成形部210の表面に表面層成形体が形成される。なお、塩型200は成形部210および持ち手部220の全てが塩(NaCl)から形成されている。表面層形成用樹脂組成物は、上記した注型−注型法による表面層の形成方法においてと同様である。
その後、塩型200を破壊し、その残骸を、成形体の裏面における持ち手部分の穴から取り除き、中空状表面層成形体を得る。中空状表面層成形体の穴から、シリコーンゲルを注入する。この後、成形体の硬化を行ってもよい。注入後、蓋部60を穴に張り付けて塞ぎ、図1(C)に示す乳房モデルが得られる。蓋部60は、表面層1Aとの接着性が良好なシート状またはフィルム状のポリマーであってよい。このようなポリマーとしては、上記穴を塞ぐことができれば特に限定されず、例えば、表面層を構成する材料と同じ種類のポリマーが好ましく使用される。当該ポリマーとして、例えば、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。蓋部60は接着剤により張り付けてもよい。
表面層の形成のための硬化は、上記した注型−注型法による表面層の形成方法においてと同様である。
(積層−注入法)(三層性モデル)
また例えば、図9に示す乳房モデルの製造に際しては、積層法により下層2A’および表面層1A’を形成した後、注入法により深層6A’を形成することができる。
積層−注入法(三層性モデル)は以下の工程を含む。
積層法により、塩型の表面で、硬化性材料を含む下層形成用樹脂組成物を硬化させて下層を形成する工程;
積層法により、下層の表面で、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させて表面層を形成し、塩型を除去して中空状積層体を得る工程;および
注入法により、中空状積層体の中に、上記した深層を構成する液体状態の物質を注入し、深層を形成する工程。
表面層および下層の硬化条件を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御することができる。
具体的には、まず、図14に示すように、成形面に所望の形状を付与された成形部210および持ち手部220を有する塩型200に、下層形成用樹脂組成物を塗布し、乾燥させる。乾燥とともに硬化を行ってもよい。塗布は持ち手220以外の塩型200(すなわち成形部210)の表面に対して行う。塗布は所望の厚みが達成されるように1回または複数回行うことが好ましい。なお、塩型200は成形部210および持ち手部220の全てが塩(NaCl)から形成されている。下層形成用樹脂組成物は、上記した注型−注型法による下層の形成方法においてと同様である。
次いで、下層の表面に、表面層形成用樹脂組成物を塗布し、乾燥させる。乾燥とともに硬化を行ってもよい。塗布は所望の厚みが達成されるように1回または複数回行うことが好ましい。その結果、塩型200の成形部210の表面に下層と表面層との積層成形体が形成される。表面層形成用樹脂組成物は、上記した注型−注型法による表面層の形成方法においてと同様である。
その後、塩型200を破壊し、その残骸を、成形体の裏面における持ち手部分の穴から取り除き、中空状積層成形体を得る。中空状積層成形体の穴から、深層を構成する液状物質を注入する。この後、成形体の硬化を行ってもよい。注入後、蓋部60を穴に張り付けて塞ぎ、図9に示す乳房モデルが得られる。蓋部60は、二層性モデルの積層−注入法における蓋部と同様であってよい。
表面層および下層の形成のための硬化は、上記した注型−注型法による表面層および下層の形成方法においてと同様である。
(実施例A1:乳房モデルの製造)
図1(A)および(B)に示す乳房モデルを図13に示す注型−注型法により製造した。
詳しくは、まず、図13(A)に示すように、成形面101に所定の形状を付与された下型100に、表面層形成用樹脂組成物を流し込んだ後、成形面111に所定の形状を付与された上型110を下方移動させ、硬化を行い、表面層1Aを形成した(注型法)。
表面層形成用樹脂組成物はシリコーンゴム(KE−1308;信越化学工業株式会社製)および硬化剤(CAT−1300L−4;信越化学工業株式会社製)を混合することにより得たものであった。シリコーンゴムと硬化剤との比率を表1に示す。表面層1Aの形成のための硬化は、24時間放置した後、オーブン中、100℃で1時間)加熱することにより行った。表面層1Aの厚みt1Aは1mmであった。
次いで、図13(B)に示すように、上型110を上方移動させて後退させた。
その後、図13(C)に示すように、下型100内の表面層1Aの上に、下層形成用樹脂組成物を流し込んだ後、成形面121に所定の形状を付与された上型120を下方移動させ、硬化を行い、下層2Aを形成した(注型法)。下層2Aの厚みt2Aは50mmであった。
下層形成用樹脂組成物はシリコーンゴム(KE−1308;信越化学工業株式会社製)および硬化剤(CAT−1300L−4;信越化学工業株式会社製)を混合することにより得た。シリコーンゴムと硬化剤との比率を表1に示す。下層の形成のための硬化は、24時間放置した後、オーブン中、100℃で1時間加熱することにより行った。
表面層と下層との体積比は2:98であった。
得られた表面層1Aおよび下層2Aからなる乳房モデル前駆体を、湾曲状支持体3Aを内部に収容および固定した型枠5A内に収容し、図1(A)および(B)に示す乳房モデルを得た。湾曲状支持体3Aおよび型枠5Aはいずれもプラスチック製のものであった。
表面層1Aの表面から下層2Aに向かって押圧したときの感触がヒトの実際の乳房の表面から内部に向かって押圧したときの感触とよく近似していた。
下層2Aの弾性率、表面層1Aの弾性率および損失正接を後述の方法により測定し、それらの値を表1に示し、これらの値から得られる弾性特性値を表2に示した。下層2Aの弾性率は表面層1Aの弾性率よりも低く、表面層1Aの表面から下層2Aに向かって押圧したときの弾性率Aはヒトの実際の乳房の表面から内部に向かって押圧したときの弾性率Bの−10〜+10%の範囲内であった。
表面層1Aおよび下層2Aにおける硬化剤の含有量は、下層2Aにおける硬化剤のシリコーンゴムに対する含有量が表面層1Aにおける硬化剤のシリコーンゴムに対する含有量よりも少なく、かつ表面層1Aの表面から下層に向かって押圧したときの感触がヒトの実際の乳房の表面から内部に向かって押圧したときの感触とよく近似するような量であった。
(実施例A2:腫瘍を有する乳房モデルの製造)
図11に示す腫瘍を有する乳房モデルを図13に示す注型−注型法により製造した。
詳しくは、まず、実施例A1と同様の方法により、シリコーンゴム製表面層1Aを形成した。
次いで、図13(B)に示すように、上型110を上方移動させて後退させた。
その後、図13(C)に示すように、下型100内の表面層1Aの上に、下層形成用樹脂組成物を流し込んだ後、成形面121に所定の形状を付与された上型120を下方移動させ、硬化を行い、下層2Aを形成した(注型法)。下層2Aの厚みt2Aは50mmであった。
下層形成用樹脂組成物は、ゼラチン(市販の食用製品)を水と混合し、55℃への加熱で溶解することにより得た。下層の形成のための硬化は、室温25℃で十分に放置することにより行った。
表面層と下層との体積比は2:98であった。
その後、下層2Aの所定の位置に、予め製造された腫瘍5Jを挿入した。腫瘍5Jは、形状を直径30mmの球形としたこと、表面層形成用樹脂組成物の硬化剤含有量を増加させたこと、および表面層形成用樹脂組成物に着色剤を含有させたこと以外、上記表面層1Aと同様の方法により製造した。
得られた表面層1A、下層2Aおよび腫瘍5Jからなる乳房モデル前駆体を、湾曲状支持体3Aを内部に収容および固定した型枠5A内に収容し、図11に示す腫瘍を有する乳房モデルを得た。湾曲状支持体3Aおよび型枠5Aはいずれもプラスチック製のものであった。
表面層1Aの表面から下層2Aに向かって押圧したときの感触がヒトの実際の乳房の表面から内部に向かって押圧したときの感触とよく近似していた。
下層2Aの弾性率、表面層1Aの弾性率および損失正接を後述の方法により測定し、それらの値を表1に示し、これらの値から得られる弾性特性値を表2に示した。下層2Aの弾性率は表面層1Aの弾性率よりも低く、表面層1Aの表面から下層2Aに向かって押圧したときの弾性率Aはヒトの実際の乳房の表面から内部に向かって押圧したときの弾性率Bの−10〜+10%の範囲内であった。
表面層1Aにおける硬化剤の含有量および下層2Aにおける水の含有量は、表面層1Aの表面から下層に向かって押圧したときの感触がヒトの実際の乳房の表面から内部に向かって押圧したときの感触とよく近似するような量であった。
(実施例A3:乳房モデルの製造)
図1(A)および(C)に示す乳房モデルを積層−注入法(二層性モデル)により製造した。
詳しくは、まず、図14に示すように、成形面に所望の形状を付与された成形部210および持ち手部220を有する塩型200に、表面層形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させ、表面層1Aを得た(積層法)。塗布は、40〜50℃の熱風環境下、樹脂組成物が垂れて偏らないように塩型を回しながら、持ち手220以外の塩型200(すなわち成形部210)の表面に対して行った。塗布は所望の厚みが達成されるように複数回行った。
表面層形成用樹脂組成物はウレタンゴム原料(タケフレックスBRUSH;竹林化学工業株式会社製)のポリウレタン(A液)および硬化剤(B液)を混合することにより得たものであった。A液とB液との比率を表1に示す。表面層1Aの形成のための硬化は、オーブン中、100℃で5分間加熱することにより行い、その後、数時間放置した。表面層1Aの厚みt1Aは1mmであった。
次いで、塩型200を破壊し、その残骸を、成形体の裏面における持ち手部分の穴から取り除いた。成形体の穴から、下層形成用樹脂組成物を注入し、下層2Aを得た(注入法)。注入後、蓋部60としてポリウレタンシートを穴に張り付けて塞ぎ、図1(C)に示す乳房モデルを得た。下層2Aの厚みt2Aは50mmであった。
下層形成用樹脂組成物はシリコーンゲル(ワッカー・シリゲル612A(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)を用いた。
表面層と下層との体積比は2:98であった。
下層2Aの弾性率、表面層1Aの弾性率および損失正接を後述の方法により測定し、それらの値を表1に示し、これらの値から得られる弾性特性値を表2に示した。
(実施例A4:乳房モデルの製造)
図1(A)および(C)に示す乳房モデルを注型−積層法(二層性モデル)により製造した。
詳しくは、まず、所定の下層形成用樹脂組成物および所定の形状を付与された型を用いたこと以外、実施例A1における表面層形成のための注型法と同様の方法により、シリコーンゴム製下層2Aを形成した。下層形成用樹脂組成物として実施例A1の下層形成用樹脂組成物と同様の組成物を用いた。下層の形成のための硬化は、実施例A1の下層の形成のための硬化と同様の方法により行った。下層2Aの厚みt2Aは50mmであった。
次いで、下層2Aの表面に、表面層形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させ、表面層1Aを得た(積層法)。表面層形成用樹脂組成物として実施例A3の表面層形成用樹脂組成物と同様の組成物を用いた。塗布および硬化はそれぞれ、実施例A3における表面層の形成のための塗布および硬化と同様の方法により行った。表面層1Aの厚みt1Aは1mmであった。
表面層と下層との体積比は2:98であった。
下層2Aの弾性率は表面層1Aの弾性率および損失正接を後述の方法により測定し、それらの値を表1に示し、これらの値から得られる弾性特性値を表2に示した。
(実施例A5〜A7およびB1)
各実施例において、所定の実体モデルを注型−積層法(二層性モデル)により製造した。
実施例A5では図3(A)および(B)に示す口唇モデルに口唇裂形状を付与したものを製造した。
実施例A6では図6(A)および(B)に示す眼瞼モデルを製造した。
実施例A7では図1(A)および(C)に示す乳房モデルを製造した。
実施例B1では図8(A)および(B)に示す耳介モデルを製造した。
詳しくは、まず、所定の下層形成用樹脂組成物および所定の形状を付与された型を用いたこと以外、実施例A1における表面層形成のための注型法と同様の方法により、シリコーンゴム製下層を形成した。下層形成用樹脂組成物として、シリコーンゴムと硬化剤との比率を表1に示すように変更したこと以外、実施例A1の下層形成用樹脂組成物と同様の組成物を用いた。下層の形成のための硬化は、実施例A1の下層の形成のための硬化と同様の方法により行った。
次いで、下層の表面に、表面層形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させ、表面層を得た(積層法)。表面層形成用樹脂組成物として、ポリウレタンと硬化剤との比率を表1に示すように変更したこと以外、実施例A3の表面層形成用樹脂組成物と同様の組成物を用いた。塗布および硬化はそれぞれ、実施例A3における表面層の形成のための塗布および硬化と同様の方法により行った。
実施例A5(図3(B)):t1C 1mm:TC 12mm。
実施例A6(図6(B)):t1F 1mm:TF 5mm。
実施例A7(図1(C)):t1A 1mm:t2A50mm:表面層と下層との体積比=2:98。
実施例B1(図8(B)):t1H 1mm:t2H 2mm。
下層の弾性率、表面層の弾性率および損失正接を後述の方法により測定し、それらの値を表1に示し、これらの値から得られる弾性特性値を表2に示した。
(実施例C1:乳房モデルの製造)
図9に示す乳房モデルを積層−注入法(三層性モデル)により製造した。
詳しくは、まず、図14に示すように、成形面に所望の形状を付与された成形部210および持ち手部220を有する塩型200に、下層層形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させ、下層2A’を得た(積層法)。下層形成用樹脂組成物として、シリコーンゴムと硬化剤との比率を表1に示すように変更したこと以外、実施例A1の下層形成用樹脂組成物と同様の組成物を用いた。塗布は実施例A3における表面層の形成のための塗布と同様の方法により行った。硬化は、実施例A1の下層の形成のための硬化と同様の方法により行った。下層2A’の厚みt2A’は2mmであった。
次いで、下層2A’の表面に、表面層形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させ、表面層1A’を得た(積層法)。表面形成用樹脂組成物として、ポリウレタンと硬化剤との比率を表1に示すように変更したこと以外、実施例A3の表面層形成用樹脂組成物と同様の組成物を用いた。塗布は実施例A3における表面層の形成のための塗布と同様の方法により行った。硬化は、実施例A3の表面層の形成のための硬化と同様の方法により行った。表面層1A’の厚みt1A’は1mmであった。
その後、塩型200を破壊し、その残骸を、積層成形体の裏面における持ち手部分の穴から取り除いた。成形体の穴から、水を注入し、深層6A’を得た(注入法)。注入後、蓋部60としてポリウレタンシートを穴に張り付けて塞ぎ、図9に示す乳房モデルを得た。深層6A’の厚みt6A’は50mmであった。
表面層および下層の合計体積と深層の体積との体積比は2:98であった。
下層2A’の弾性率、表面層1A’の弾性率および損失正接を後述の方法により測定し、それらの値を表1に示し、これらの値から得られる弾性特性値を表2に示した。
(比較例A1:乳房モデルの製造)
下層の領域にも表面層形成用樹脂組成物を用いて表面層を形成したこと以外、実施例A1と同様の方法により、乳房モデル(一層性モデル)を得た。
(評価1(感触))
実体モデルを手で表面層の表面から下層に向かって押圧したときの感触Aと、当該実体モデルが模倣するヒトの実際の身体部位を手で表面から内部に向かって押圧したときの感触Bとを比較した。
◎;感触Aは感触Bと非常によく近似していた:
〇;感触Aは感触Bと近似しているものの、「◎」ほど十分に近似していなかった:
△;感触Aは感触Bと近似しているものの、「〇」ほど十分に近似していなかった:
×;感触Aは感触Bと近似していなかった。
(評価2)
実施例A1〜A6、B1およびC1で製造された実体モデルの感触は、当該実体モデルが模倣するヒトの実際の身体部位の感触と、非常によく近似しているため、メスで切開するときの感触も、切開部を縫合するときの感触も、ヒトの実際の身体部位と非常によく近似していた。
実施例A7で製造された実体モデルの感触は、当該実体モデルが模倣するヒトの実際の身体部位の感触と、十分に近似しているため、メスで切開するときの感触も、切開部を縫合するときの感触も、ヒトの実際の身体部位と十分に近似していた。しかし、実施例A7で製造された実体モデルの感触は、実施例A1〜A6、B1およびC1で製造された実体モデルの感触ほど十分には、ヒトの実際の身体部に近似していなかった。
また実施例A1〜A4およびC1の乳房モデルは、感触がヒトの実際の乳房と非常によく近似しているため、手術時の下垂形状も、手術により病巣を除去するときの適切な除去体積も、除去された部位にシリコーンまたは自家組織などの材料を充填するときの適切な充填体積も、ヒトの実際の乳房と非常によく近似していた。
実施例A7の乳房モデルは、感触がヒトの実際の乳房と十分に近似しているため、手術時の下垂形状も、手術により病巣を除去するときの適切な除去体積も、除去された部位にシリコーンまたは自家組織などの材料を充填するときの適切な充填体積も、ヒトの実際の乳房と十分に近似していた。しかし、実施例A7の乳房モデルは、実施例A1〜A4およびC1の乳房モデルほど十分には、手術時の下垂形状も、手術により病巣を除去するときの適切な除去体積も、除去された部位にシリコーンまたは自家組織などの材料を充填するときの適切な充填体積も、ヒトの実際の乳房に近似していなかった。
さらに実施例A1〜A7、B1およびC1の実体モデルを用いて模擬手術を行うことにより、手術後の変形の程度をよく知ることができた。
このため、実施例A1〜A7、B1およびC1の実体モデルは、医師の手術熟練度の向上に十分に貢献することができた。また実施例A1〜A7、B1およびC1の実体モデルは、実際の手術によく適合する手術計画の立案にも十分に貢献することもできた。
(複素弾性率および損失正接の測定方法)
各実施例または比較例における所定の組成を有する表面層形成用樹脂組成物または下層形成用樹脂組成物を各実施例または比較例で行う条件で硬化させ、シート状の硬化体を得た。硬化体から所定寸法の円柱状試験片を得た。得られた試験片を用いて、前記したJIS K6394:2007「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−動的性質の求め方−一般指針」に基づく方法および条件で複素弾性率および損失正接を測定した。
試験片の寸法は、シリコーンゴムまたはウレタンゴムを用いる場合およびシリコーンゲルまたはゼラチンを用いる場合において以下の通りであった。
シリコーンゴムまたはウレタンゴムの試験片:直径約3mm×高さ約3mm。
シリコーンゲルまたはゼラチンの試験片:直径約6mm×高さ約5mm。
Figure 0006905945

Figure 0006905945
本発明の実体モデルは、医療分野における手術シミュレーションに有用である。
1A:1A’:1B:1C:1D:1E:1F:1G:1H:表面層
2A:2A’:2B:2C:2D:2E:2F:2G:2H:下層
5I:5J:5K:腫瘍
6A’:深層
10A:10A’:10B:10C:10D:10E:10F:10G:10H:実体モデル
10I:10J:10K:腫瘍を有する実体モデル
100:下型
101:成形面
110:120:上型
111:121:成形面

Claims (12)

  1. 弾性材料を含む表面層;および
    該表面層と隣接して配置され、前記表面層を構成する弾性材料の弾性率と異なる弾性率を有する弾性材料を含む下層;
    を含み、
    前記下層を構成する弾性材料の弾性率が、前記表面層を構成する弾性材料の弾性率の1〜80%または110〜500%の範囲内であり、
    前記表面層を構成する弾性材料の弾性率が1.0×10〜7.0×10Paであり、
    前記表面層を構成する弾性材料が、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、およびウレタンゴムからなる群から選択され、
    前記下層を構成する弾性材料が、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、およびシリコーンゲルからなる群から選択される、ヒトの身体部位の皮膚構造体のための手術シミュレーション用三次元実体モデル。
  2. 前記皮膚構造体は、乳房、口唇、外鼻、眼瞼、耳介、および顔面からなる群から選択される、請求項1に記載の三次元実体モデル。
  3. 前記下層を構成する弾性材料の弾性率が、前記表面層を構成する弾性材料の弾性率の1〜70%または110〜300%の範囲内である、請求項1または2に記載の三次元実体モデル。
  4. 前記表面層の厚みは0.1〜30mmである、請求項1〜3のいずれかに記載の三次元実体モデル。
  5. 前記表面層は前記下層から離接可能に一体化されている、請求項1〜4のいずれかに記載の三次元実体モデル。
  6. 前記表面層は取り換え可能である、請求項5に記載の三次元実体モデル。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の三次元実体モデルの製造方法であって、
    注型法により、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させて表面層を形成する工程;および
    注型法により、硬化性材料を含む下層形成用樹脂組成物を硬化させて下層を形成する工程;
    を含み、
    前記表面層および前記下層の硬化条件を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御する、該方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の三次元実体モデルの製造方法であって、
    注型法により、硬化性材料を含む下層形成用樹脂組成物を硬化させて下層を形成する工程;および
    積層法により、前記下層の表面で、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させて表面層を形成する工程;
    を含み、
    前記表面層および前記下層の硬化条件を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御する、該方法。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の三次元実体モデルの製造方法であって、
    積層法により、塩型の表面で、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させ、塩型を除去して中空状表面層を形成する工程;および
    注入法により、前記中空状表面層の中に、下層を構成する材料を注入し、下層を形成する工程;
    を含み、
    前記表面層の硬化条件を調整することにより、表面層の弾性率を制御する、該方法。
  10. 前記三次元実体モデルは前記下層の表面層側とは反対側に配置される深層をさらに含み、
    該深層は25℃で液体状態の物質から構成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の三次元実体モデル。
  11. 請求項10に記載の三次元実体モデルの製造方法であって、
    積層法により、塩型の表面で、硬化性材料を含む下層形成用樹脂組成物を硬化させて下層を形成する工程;
    積層法により、前記下層の表面で、硬化性材料を含む表面層形成用樹脂組成物を硬化させて表面層を形成し、前記塩型を除去して中空状積層体を得る工程;および
    注入法により、前記中空状積層体の中に、前記液体状態の物質を注入し、深層を形成する工程;
    を含み、
    前記表面層および前記下層の硬化条件を調整することにより、表面層および下層の弾性率を制御する、該方法。
  12. 前記硬化条件が、前記表面層形成用樹脂組成物および前記下層形成用樹脂組成物における硬化剤および溶媒の配合比率、ならびに前記表面層および前記下層の硬化のための加熱温度、加熱時間および光照射量からなる群から選択される1以上の条件である、請求項7、8または11に記載の三次元実体モデルの製造方法。
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