JP6905612B1 - 摩擦材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ディスクブレーキパッドに使用されるNAO(Non-Asbestos-Organic)材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制した摩擦材の提供。【解決手段】ディスクブレーキパッドに使用される、結合材、繊維基材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、潤滑材を含み、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物は、潤滑材として平均粒子径が10〜1000μmのフッ素系ポリマー粒子を摩擦材組成物全量に対し0.5〜5重量%と、無機摩擦調整材として平均粒子径が1〜8μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜35重量%含む摩擦材。【選択図】 なし

Description

本発明は、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO(Non-Asbestos-Organic)材の摩擦材組成物を成型した摩擦材に関する。
従来、乗用車の制動装置としてディスクブレーキが使用されており、その摩擦部材として金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッドが使用されている。
近年においてはブレーキの静寂性が求められており、繊維基材としてスチール繊維やステンレス繊維等のスチール系繊維を含まず、ブレーキノイズの発生が少ないNAO材の摩擦材を使用したディスクブレーキパッドが広く使用されるようになってきている。
従来のNAO材の摩擦材には、要求される性能を確保するため、銅や銅合金の繊維又は粒子等が含まれ、銅成分が必須成分として摩擦材組成物全量に対し、5〜20重量%程度添加されている。
しかし近年、このような摩擦材は制動時に摩耗粉として銅を排出し、この排出された銅が河川、湖、海洋に流入することにより水域を汚染する可能性があることが示唆されており、銅成分を削減したNAO材の摩擦材が求められている。
特許文献1には繊維基材、結合材及び摩擦調整材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中の銅の含有量が0.5質量%以下であり、フッ素系ポリマー粒子を含有する摩擦材組成物および、該摩擦材組成物を成形して得られる摩擦材が記載されている。
特許文献1の発明によれば、制動時に生成する摩耗粉中に銅が殆どないため環境への負荷が少なく、かつ安定した摩擦係数、耐ノイズ性、及び耐摩耗性の発現が可能であり、特に冷間放置後の鳴きが抑えられた摩擦材を提供することができる。
一方近年では、軽負荷の制動を繰り返し、摩擦材と相手材の摺動面に水が浸入した後の車両が停止する間際に発生する異音(以下、「停止際異音」)の問題が顕在化してきている。
特許文献2には、ディスクブレーキパッドに使用される、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物は、鉄成分を実質的に含まず、チタン酸塩として、非ウィスカー状のチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%と、無機摩擦調整材として、平均粒子径が1.0〜4.0μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%と、無機摩擦調整材として劈開性鉱物粒子を摩擦材組成物全量に対し4〜6重量%含む摩擦材が記載されている。
特許文献2の発明によれば、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制した摩擦材を提供することができる。
特許文献1の発明は撥水作用のあるフッ素系ポリマー粉末を摩擦材組成物に配合することにより、摩擦材の気孔内に水分が吸湿されるのを防ぎ、冷間放置後の鳴きを防止する効果はあるが、停止際異音については検討はなされていない。
また、特許文献2の発明は停止際異音の発生を抑制できるが、鉄成分を含まないことを必須要件とするため、組成設計の自由度が制限されるという問題がある。
特開2015−093936号公報 特開2016−035005号公報
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制した摩擦材を提供することを課題とする。
停止際異音は次のようなメカニズムで発生するものと推定されている。
(a)摩擦材に含まれる硬質の無機摩擦調整材によるアブレシブ摩耗により、相手材であるディスクロータが摩耗し、ディスクロータの摩耗粉が発生する。そして、その摩耗粉が摩擦材の表面を摩耗するため、摩擦材の摩耗粉の発生が促進される。
(b)軽負荷の制動を繰り返すことにより、摩擦材と相手材の摺動面に存在する摩耗粉がせん断力を受けて微細化する。
(c)このような状態で摩擦材と相手材の摺動面に水分が入り込み、さらに軽負荷制動が繰り返されると、微細化した摩耗粉が水で練られ、摩耗粉凝集体が生成される。
(d)この摩耗粉凝集体中に存在するディスクロータの摩耗粉などの鉄成分を起点として錆が発生し、摩耗粉凝集体の凝集力が強固となる。
(e)そのような摩耗粉凝集体が摩擦材とディスクロータの摺動面に存在している状態で制動すると、せん断力により摩耗粉凝集体が崩れ、摩擦材と相手材の滑りが起こり、その振動により低周波異音が発生する。
本発明者らは上記メカニズムに基づき、鋭意検討を行ったところ、摩擦材組成物に潤滑材として特定の粒子径のフッ素系ポリマー粒子を特定量と、無機摩擦調整材として特定の粒子径の酸化ジルコニウムを特定量添加することにより、摩耗粉凝集体の生成が抑制され、その結果停止際異音を防止できることを知見し、発明を完成させた。
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、結合材、繊維基材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、潤滑材を含み、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材であって、以下の技術を基礎とするものである。
(1)ディスクブレーキパッドに使用される、結合材、繊維基材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、潤滑材を含み、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物は、潤滑材として平均粒子径が10〜1000μmのフッ素系ポリマー粒子を摩擦材組成物全量に対し0.5〜5重量%と、無機摩擦調整材として平均粒子径が1〜8μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜35重量%含む摩擦材。
(2)前記フッ素系ポリマー粒子がポリテトラフルオロエチレンである(1)の摩擦材。
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制できる摩擦材を提供することができる。
本発明では摩擦材組成物に、平均粒子径が10〜1000μmと比較的大きなフッ素系ポリマー粒子を摩擦材組成物全量に対し0.5〜5重量%と、平均粒子径が1〜8μmと比較的小さな酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜35重量%とを組み合わせて添加する。
平均粒子径が10〜1000μmのフッ素系ポリマー粒子を摩擦材組成物全量に対し0.5〜5重量%添加するとともに、上記フッ素系ポリマー粒子よりも平均粒子径が小さい平均粒子径が1〜8μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜35重量%添加すると、フッ素系ポリマー粒子が酸化ジルコニウムの研削作用により微細化され、フッ素系ポリマー粒子の微細紛が摩擦材の摩耗紛に均一に分散される。
その結果、摩耗粉が水分と馴染みにくくなり、摩耗粉凝集体の生成が抑制され、停止際異音の発生を防止することができる。
フッ素系ポリマー粒子の好ましい平均粒子径は20〜100μm、好ましい含有量は摩擦材組成物全量に対し0.8〜3重量%であり、酸化ジルコニウムの好ましい平均粒子径は2〜5μm、好ましい含有量は摩擦材組成物全量に対し20〜30重量%である。
本発明で使用するフッ素系ポリマー粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
中でも、耐熱性の観点からポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉末を単独で用いることが好ましい。
なお、本発明において平均粒子径は、レーザー回折粒度分布法により測定した50%粒径の数値を用いた。
本発明の摩擦材は、上記の平均粒子径が10〜1000μmのフッ素系ポリマー粒子、平均粒子径が1〜8μmの酸化ジルコニウムの他に、通常摩擦材に使用される結合材、繊維基材、潤滑材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等を含む摩擦材組成物から成る。
結合材としては、ストレートフェノール樹脂、カシューオイル変性フェノール樹脂、アクリルゴム変性フェノール樹脂、シリコーンゴム変性フェノール樹脂、ニトリルゴム(NBR)変性フェノール樹脂、フェノール・アラルキル樹脂(アラルキル変性フェノール樹脂)、フルオロポリマー分散フェノール樹脂、シリコーンゴム分散フェノール樹脂等の摩擦材に通常用いられる結合材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
結合材の含有量は摩擦材組成物全量に対して5〜10重量%とするのが好ましく、6〜8重量%とするのがより好ましい。
繊維基材としては、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アクリル繊維等の摩擦材に通常使用される有機繊維が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
繊維基材の含有量は摩擦材組成物全量に対して1〜10重量%とするのが好ましく、2〜4重量%とするのがより好ましい。
潤滑材としては、上記の平均粒子径が10〜1000μmのフッ素系ポリマー粒子の他に、石油コークス、弾性黒鉛化カーボン、人造黒鉛粒子、天然黒鉛粒子等の炭素質系潤滑材や、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化鉄、硫化スズ、複合金属硫化物等の金属硫化物系潤滑材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
潤滑材の含有量は、上記の平均粒子径が10〜1000μmのフッ素系ポリマー粒子と合わせて摩擦材組成物全量に対して5〜13重量%とするのが好ましく、6〜11重量%とするのがより好ましい。
無機摩擦調整材としては、上記の平均粒子径が1〜8μmの酸化ジルコニウムの他に、バーミキュライト、金雲母、白雲母、四三酸化鉄、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、γアルミナ、αアルミナ、炭化ケイ素、非ウィスカー状(板状、鱗片状、柱状、複数の凸部を持つ不定形状)のチタン酸塩(6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム)等の粒子状無機摩擦調整材や、ウォラストナイト、セピオライト、バサルト繊維、ガラス繊維、生体溶解性人造鉱物繊維、ロックウール等の繊維状無機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機摩擦調整材の含有量は、上記の平均粒子径が1〜8μmの酸化ジルコニウムと合わせて、摩擦材組成物全量に対して40〜75重量%とするのが好ましく、45〜70重量%とするのがより好ましい。
有機摩擦調整材としては、カシューダスト、タイヤトレッドゴムの粉砕粉や、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等の加硫ゴム粉末又は未加硫ゴム粉末等の摩擦材に通常使用される有機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機摩擦調整材の含有量は摩擦材組成物全量に対して4〜10重量%とするのが好ましく、6〜8重量%とするのがより好ましい。
pH調整材として水酸化カルシウム等の通常摩擦材に使用されるpH調整材を使用することができる。pH調整材の含有量は、摩擦材組成物全量に対して1〜4重量%とするのが好ましく、2〜3重量%とするのがより好ましい。
摩擦材組成物の残部としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の充填材を使用する。
本発明のディスクブレーキパッドに使用される摩擦材は、所定量配合した摩擦材組成物を、混合機を用いて均一に混合する混合工程、得られた摩擦材原料混合物と、別途、予め洗浄、表面処理し、接着材を塗布したバックプレートとを重ねて熱成型型に投入し、加熱加圧して成型する加熱加圧成型工程、得られた成型品を加熱して結合材の硬化反応を完了させる熱処理工程、塗料を塗装する塗装工程、塗料を焼き付ける塗装焼き付け工程、摩擦面を形成する研磨工程を経て製造される。
必要に応じて、加熱加圧成型工程の前に、摩擦材原料混合物を造粒する造粒工程、摩擦材原料混合物を混練する混練工程、摩擦材原料混合物又は造粒工程で得られた造粒物、混練工程で得られた混練物を予備成型型に投入し、予備成型物を成型する予備成型工程が実施され、加熱加圧成型工程の後にスコーチ工程が実施される。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜17・比較例1〜8の摩擦材の製造方法]
表1、表2、表3に示す組成の摩擦材組成物をレディゲミキサーにて5分間混合し、成型金型内で30MPaにて10秒間加圧して予備成型をした。この予備成型物を、予め洗浄、表面処理、接着材を塗布した鋼鉄製のバックプレート上に重ね、熱成型型内で成型温度150℃、成型圧力40MPaの条件下で10分間成型した後、200℃で5時間熱処理(後硬化)を行い、研磨して摩擦面を形成し、乗用車用ディスクブレーキパッドを作製した(実施例1〜17、比較例1〜8)。
Figure 0006905612
Figure 0006905612
Figure 0006905612
得られた摩擦材において、製品外観、停止際異音、ブレーキ効き、鳴きを評価した。
評価基準を表4、表5に、評価結果を表1、表2、表3に示す。
Figure 0006905612
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各表より、本発明の組成を満足する組成物は、製品外観、ブレーキ効き、鳴きの効果を損なうことなく、停止際異音発生の抑制において良好な評価結果が得られていることが見てとれる。
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制した摩擦材を提供することができ、きわめて実用的価値の高いものである。

Claims (2)

  1. ディスクブレーキパッドに使用される、結合材、繊維基材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、潤滑材を含み、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物は、潤滑材として平均粒子径が10〜1000μmのフッ素系ポリマー粒子を摩擦材組成物全量に対し0.5〜5重量%と、無機摩擦調整材として平均粒子径が1〜8μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜35重量%含むことを特徴とする摩擦材。
  2. 前記フッ素系ポリマー粒子がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
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