JP6904050B2 - 衛生用品の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
このような衛生用紙を製造する方法の一つとして、下記の工程1〜3を実施することが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
工程1:スラリーから帯状の原紙を抄造する
工程2:帯状の原紙を重ね合わせて薬剤を塗布した後に所定の幅方向寸法に裁断する
工程3:裁断された原紙を折り畳んで所定の搬送方向寸法に分断して包装する
上記の工程2では、二つの第一原反が設置され、第一原反のそれぞれから繰り出された原紙が重ね合わせられる。その後、重ね合わせられた原紙に薬剤が塗布され、所定の幅方向寸法に裁断される。そして、巻取ロールに巻き取られて第二原反が製造される。
上記の工程3では、第二原反から繰り出された原紙が折り畳まれる。そして、所定の搬送方向寸法に分断され、ティシュ箱に包装される。
このように、薬剤が塗布された抄造体から製造される衛生用品は、品質を高めるうえで改善の余地がある。
[I.一実施形態]
抄造体とは、繊維を用いて抄造された物である。この抄造体としては、パルプ繊維から抄造される紙や樹脂繊維から抄造される不織布が挙げられる。たとえば、抄造体には、ティシュペーパやペーパタオルなどの衛生用紙のほか衛生用不織布といった衛生用品が含まれる。
なお、下記の実施形態では、原紙が搬送される方向(以下「搬送方向」と略称する)を基準に上流および下流を定める。また、原紙について、長手方向,幅方向,厚み方向の三方向を定める。長手方向は、原紙の延在面において帯状に延びる方向である。この長手方向は、搬送方向に沿う。幅方向は、原紙の延在面において長手方向に直交する方向である。厚み方向は、長手方向および幅方向の何れにも直交する方向である。
ティシュペーパを製造する装置の構成を概説する。
図1に示すように、ティシュペーパの製造装置は、三つのパートP1,P2,P3に大別される。
第一パートP1では、図2に示す抄紙機1によって、帯状の原紙W(抄造体,シート)が抄造(抄紙)される。
なお、重ね合わせられた後の原紙Wについては、二層構造(いわゆる2プライ)であり、重ね合わせられる前の一層構造(いわゆる1プライ)の原紙Wとは構造が異なるものの、可読性に配慮して単に「原紙W」と称する。
そして、所定の搬送方向寸法に原紙Wが分断される。このように分断されるまでの原紙Wは、張架された状態で搬送される。ここでいう「張架された状態」とは、搬送方向に沿う張力(テンション)が印加された状態かつロール間に架け渡された状態を意味する。原紙Wは、搬送時に印加された張力が保持された状態で保管もされる。これらより、抄造されてから分断されるまでの原紙Wは、張力が印加された状態が保持される。
以下、抄紙機1,積層機3および折畳機5の各構成を述べる。
図2を参照して、抄紙機1の構成を詳述する。
抄紙機1は、原料から帯状の原紙Wを抄造するティシュマシンである。
抄紙機1には、原紙Wを抄造する抄紙パート10(抄造部)が設けられている。そのほか、抄紙パート10で抄造された原紙Wを巻き取る第一巻取パート15(第一巻取部)も設けられている。
以下、抄紙機1の各パート11,12,13,14,15を製造工程順に説明する。
ワイヤパート11には、原紙Wの原料であるスラリーを射出するヘッドボックスHが設けられている。スラリーには、パルプ繊維の懸濁した原料液が用いられる。
ワイヤパート11には、フォーミングロールRTの外周に一部が巻き掛けられた二種のワイヤベルトBT,BCが設けられている。
フォーミングロールRTの外周においてワイヤベルトBT,BCどうしの間に射出されたスラリーが脱水されることにより、湿った状態の原紙Wが抄造される。
原紙Wは、搬送ワイヤベルトBCによって、次のプレスパート12へ搬送される。
プレスパート12には、ベルト搬送ロールに巻き掛けられた吸水性の搬送ベルトBAが設けられている。搬送ベルトBAには、吸水性をもつ材料(たとえばフェルト)の無端ベルトが用いられる。
搬送ベルトBAのうち上流側の部位は、上記した搬送ワイヤベルトBCで搬送される原紙Wに対して付勢された状態に設けられる。
原紙Wに対する搬送ワイヤベルトBCの付勢箇所において、原紙Wから水分が圧搾される。このようにして脱水された原紙Wは、搬送ベルトBAによって、次のドライヤパート13へ搬送される。
ドライヤパート13には、原紙Wを乾燥させる乾燥ロールRD(「ヤンキーロール」とも称される)が設けられている。
乾燥ロールRDには、搬送ベルトBAのうち下流側の部位が原紙Wを介して付勢されている。搬送ベルトBAで搬送された原紙Wは、回転する乾燥ロールRDの外周面上へ張り付くように移行する。乾燥ロールRDは、たとえば筒内に導入された蒸気によって筒面が加熱され、その筒面上の原紙Wを乾燥させる。
ドクターブレードDDは、乾燥ロールRDの筒面に対して刃先が突き当てられた姿勢で配置される。ドクターブレードDDは、乾燥ロールRDから剥離する原紙Wにクレープ(縮緬状の皺)を付与する。原紙Wには、密に皺寄せられた箇所や疎に皺寄せられた箇所の混在したクレープが付与される。
このようにして乾燥ロールRDから剥離された原紙Wは、次のカレンダパート14へ搬送される。
カレンダパート14には、一対のカレンダロールRLが設けられている。カレンダロールRLは、原紙Wの搬送速度に応じた速度で回転し、搬送される原紙Wを挟み込んだ状態で互いに対向して配置される。カレンダロールRLどうしの間で原紙Wが厚み方向に圧縮される。
このようにしてカレンダ処理された原紙Wは、次の第一巻取パート15へ搬送される。
第一巻取パート15には、原紙Wを巻き取る第一巻取ロールRW1が設けられている。第一巻取ロールRW1に帯状の原紙Wが巻き取られて第一原反ロールWR1が製造される。第一巻取パート15は、原紙Wが引っ張られて巻き取られることから、第一テンションパート(第一テンション部)や第一張力印加パート(第一張力印加部)とも言える。
以下の説明では、半製品(中間体)の第一原反ロールWR1について、装置構造をなすロールとの混同を防ぐため、「第一原反ロールWR1」を「第一原反WR1」と略称する。
図3を参照して、積層機3の構成を詳述する。
積層機3は、原紙Wどうしを重ね合わせるプライマシンである。積層機3では、二つの第一原反WR1,WR1が設置され、第一原反WR1,WR1から繰り出された原紙Wどうしが積層される。すなわち、原紙Wが二層構造となる。
以下、積層機3の各パート30,32,33,35,36,38を製造工程順に説明する。
第一繰出パート30では、それぞれに第一原反WR1の設置された二つの第一繰出ロールRU1,RU1が設けられ、第一繰出ロールRU1の第一原反WR1から各原紙Wが繰り出される。
このように繰り出された原紙Wは、次の積層パート32へ搬送される。
積層パート32には、外周の一部に二つの原紙Wが重畳して巻き回される積層ロールRPが設けられている。積層ロールRPで二つの原紙Wが重ね合わせられる。
このように重ね合わせられた原紙Wについては、外側を向く二面のうち一方を第一面F1(一方の原紙Wの表面FF)とし、他方を第二面F2(他方の原紙Wの表面FF)とする。
上記のように積層された原紙Wは、次のカレンダパート33へ搬送される。
カレンダパート33には、カレンダパート14と同様のカレンダロールRL1,RL2が二組設けられ、原紙Wに対して二段階にカレンダ処理を施す。
このようにカレンダ処理された原紙Wは、次の係合パート35へ搬送される。
係合パート35には、原紙Wの一部を厚み方向に係合させる係合ロールRCが設けられている。係合ロールRCには、凸ロールRC1および受ロールRC2が設けられている。凸ロールRC1および受ロールRC2は、原紙Wの搬送速度に応じた速度で回転し、原紙Wを挟んで互いに対向して配置される。凸ロールRC1には、原紙Wのうち端縁に沿う箇所に対応して外周に凸部が設けられている。この凸部は、受ロールRC2の外周に突き当てられ、受け止められる。
受ロールRC2の外周が金属製であり、凸ロールRC1の凸部が原紙Wに対して受ロールRC2側に突出しにくい構造が採用されている。そのため、係合パート35で係合処理された原紙Wは、凸ロールRC1側の一部(たとえば搬送方向に沿う線状の部位)が凹設され、受ロールRC2側はほぼ平坦状をなす。このような係合構造は、「クリンパ」や「コンタクタエンボス」とも称され、両面に凹凸をもつエンボスとは構造的に相異する。
上記のように係合処理された原紙Wは、次の裁断パート36へ搬送される。
裁断パート36には、長手方向に沿って原紙Wを裁断するスリッタSが設けられている。スリッタSは、裁断箇所の幅方向位置に応じたさまざまな幅方向寸法に原紙Wを断裁することができる。たとえば、原紙Wに対して幅方向位置が調節可能に設けられた刃(カッタ)および刃受けロールがスリッタSに設けられる。
「所定の幅方向寸法」とは、折畳機5(図4参照)に設置される原紙Wの幅方向寸法を意味する。この幅方向寸法としては、完成したティシュペーパのうち端辺(長辺または短辺)の寸法(すなわち製品幅)やこの整数倍の寸法などが挙げられる。
このような幅方向寸法に裁断された各原紙Wは、次の第二巻取パート38へ搬送される。
第二巻取パート38には、第一巻取パート15と同様に、原紙Wを巻き取る第二巻取ロールRW2が設けられている。第二巻取ロールRW2に帯状の原紙Wが巻き取られて第二原反ロールWR2が製造される。第二巻取パート38では、第一巻取パート15と同様に、原紙Wが引っ張られつつ巻き取られることから、第二テンションパート(第二テンション部)や第二張力印加パート(第二張力印加部)とも言える。なお、第二原反ロールWR2についても、装置構造をなすロールとの混同を防ぐため、「第二原反WR2」と略称する。
図4を参照して、折畳機5の構成を詳述する。
折畳機5は、原紙Wを折り畳むインターフォルダである。折畳機5には、いわゆるマルチスタンド方式のインターフォルダ(「多連機」とも称される)が採用されており、製品状態で包装される枚数(ティシュ箱に収容される枚数)に応じた多数の第二原反WR2が設置される。
塗布パート52および折畳パート54は、第二繰出パート50と同様に、多数の箇所に設けられる。一方、分断パート56および包装パート58は、折畳機5の下流において一箇所に設けられる。
上流側のパート50,52,54については図4(A)を参照し、下流側のパート56,58については図4(B)を参照して詳述する。
第二繰出パート50では、第二原反WR2が設置された第二繰出ロールRU2が設けられ、第二繰出ロールRU2の第二原反WR2から原紙Wが繰り出される。
このように繰り出された原紙Wは、次の塗布パート52へ搬送(導出)される。
塗布パート52では、原紙Wに薬剤が塗布される。
この薬剤としては、保湿剤や芳香剤をはじめ、医療成分,清涼剤,顔料といったさまざまな液剤が挙げられる。たとえば、原紙Wの保湿機能を高める機能性の薬剤として、グリセリンやソルビトールが水溶した保湿液(薬液)が用いられる。
塗布パート52A,52Bでは、原紙Wに対する薬剤の塗布方向が同方向に設定される。言い換えれば、塗布パート52A,52Bは、所定方向から薬剤を原紙Wに塗布する。ここでは、薬剤塗布に関する所定方向として鉛直方向下側からとしたもの(すなわち下方からの薬剤の塗工)を例示する。
表裏反転ローラRR1は第二繰出パート50と第一塗布パート52Aとの間に配置され、裏表反転ローラRR2は第一塗布パート52Aと第二塗布パート52Bとの間に配置される。
図4(A)には、二つの表裏反転ローラRR1および二つの裏表反転ローラRR2を例示する。ただし、反転ローラRR1,RR2の設置数は、原紙Wの搬送経路や周囲の構成,要求仕様などに応じて設定すればよく、単数であっても三つ以上の複数であってもよい。
表裏反転ローラRR1に進入する直前の原紙Wは、第一面F1が上方を向き、第二面F2が下方を向いている。つづいて、表裏反転ローラRR1によって両面F1,F2の向きが反転し、第一面F1が下方を向くとともに第二面F2が上方を向き、第一塗布パート52Aで下方から第一面F1に薬剤が塗布される。その後、裏表反転ローラRR2によって再び両面F1,F2の向きが反転し、第一面F1が上方を向くとともに第二面F2が下方を向き、第二塗布パート52Bで下方から第二面F2に薬剤が塗布される。
第一塗布パート52Aにはオフセットグラビア方式の第一塗布機構M1Aが採用され、第二塗布パート52Bにはダイレクトグラビア方式の第二塗布機構M2Aが採用されている。
第一塗布機構M1Aには、オフセットロールRO1(「転写ロール」とも称される)およびグラビアロールRG1に加えて、貯留された薬剤をグラビアロールRG1に供給する供給ロールRF1が設けられている。グラビアロールRG1に供給された薬剤のうち余剰分を掻き落とすドクターブレードDG1と原紙Wを介してグラビアロールRG1に対向して配置されたバックアップロールRB1(「圧着ロール」とも称される)とが設けられている。
第二塗布機構M2Aには、オフセットロールRO1が設けられていない点を除いて第一塗布機構M1Aと同様に、グラビアロールRG2のほか、供給ロールRF2,ドクターブレードDG2,バックアップロールRB2が設けられている。
上記したように薬剤が塗布された原紙Wは、次の折畳パート54へ搬送される。
折畳パート54には、折畳機構として折板Pを用いて原紙Wを折り畳む機構(折板式,原紙Wの折畳形態はポップアップ方式)が採用されている。
折畳パート54には、原紙Wを折り畳む折板Pのほか、原紙Wの幅方向に交差して配置された傾斜ロールCRI1,CRI2や一組の原紙W,Wどうしを離間させる離間ロールCRS1,CRS2といった種々の搬送ロールが設けられている。
上記したように折り畳まれた原紙Wは、並設された他の第二繰出パート50,塗布パート52および折畳パート54を経て折り畳まれた原紙Wと積み重ねられ、搬送ベルトBIによって、次の分断パート56へ搬送される。
分断パート56には、幅方向に沿って原紙Wを裁断するカッタCが設けられている。このように裁断された原紙Wは、長手方向に亘る連続が分断される。このように分断されることで、原紙Wに対して印加されていた搬送方向に沿う張力が解除される。このことから、薬剤が塗布された原紙Wは、巻き取られずに、積層され、折り畳まれるものと言える。第一パートP1の第一巻取パート15,第二パートP2(パート30,32,33,35,36,38)第二運搬パートP23,第三パートP3の第二繰出パート50などの分断パート56よりも上流側は、原紙Wに印加された張力が保持されることから、張力保持パート(張力保持部)とも言える。
分断パート56は、上述した裁断パート36の下流で原紙Wを裁断することから、第二裁断パートとも言える。逆に、裁断パート36は、第一裁断パートとも言える。
「所定の搬送方向寸法」とは、完成したティシュペーパのうち、上述した所定の幅方向寸法に裁断された端辺に対して直交する端辺の寸法を意味する。具体的に言えば、ティシュペーパのうち、ティシュ箱の長手方向に沿う端辺の長さとして設定された寸法が、所定の搬送方向寸法に設定される。
以下、「所定期間」の設定に関し、原紙Wが湿潤した際の物性を述べる。
原紙Wが湿潤すると、クレープをなす縮緬状の皺が解され、水素結合力(分子間力)に低下によって繊維の交絡が弱まる。すなわち、原紙Wは、水分が浸透するにつれて徐々に伸びやすくなる物性をもつ。このような水分の浸透は、原紙Wの強度低下も招く。
原紙Wは、搬送方向に沿う張力が印加されていることから、この張力で搬送方向に伸張しやすい。薬剤が原紙Wに塗布されてから時間が経過するほど、原紙Wの伸張が増大し、厚みが減少する傾向にある。
そのため、「所定期間」は、原紙Wの伸張による厚みの減少が抑えられる期間として、予め実験的または経験的に設定されている。
なお、原紙Wの厚み減少を抑える観点からは、「所定期間」を可能な限り短期間に設定することが好ましい。ただし、搬送駆動源の出力速度にかかる定格やレイアウト上の制約を勘案して、「所定期間」を設定することが好ましい。
〈包装パート〉
包装パート58では、分断パート56で分断された原紙Wを包装用のカートン59(ティシュ箱)に収容する。
このように包装が完了すると、箱入りのティシュペーパが完成する。
上述した製造装置を用いてティシュペーパを製造する方法を述べる。
本方法では、図5に示すように、はじめに、抄紙機1の製法に対応する第一工程(ステップS10およびS15)が実施される。それから、抄紙機1で巻き取られた第一原反WR1を積層機3へ運搬する第一運搬工程(ステップS20)が実施される。
その後、積層機3の製法に対応する第二工程(ステップS30〜S38)が実施される。それから、積層機3で巻き取られた第二原反WR2を折畳機5へ運搬する第二運搬工程(ステップS40)が実施される。
このように、第一工程,第二工程および第三工程の工程間には、原反WR1,WR2を移動させる運搬工程が実施される。
そして、折畳機5の製法に対応する第三工程(ステップS50〜S58)が実施される。
そして、第一巻取パート15で原紙Wを巻き取る第一巻取工程(ステップS15)が実施される。この第一巻取工程は、第一巻取パート15の別称に倣って、第一テンション工程や第一張力印加工程とも言える。
それから、カレンダパート33で原紙Wをカレンダ処理した後に、係合パート35で原紙Wどうしを係合する係合工程(ステップS35)が実施される。その後、裁断パート36で原紙Wを所定の幅方向寸法に裁断する裁断工程(ステップS36)が実施される。
そして、第二巻取パート20で二層構造の原紙Wを巻き取る第二巻取工程(ステップS38)が実施される。この第二巻取工程は、第二巻取パート38の別称に倣って、第二テンション工程や第二張力印加工程とも言える。
このマルチ塗布工程では、まず、表裏反転ローラRR1で原紙Wの向き反転させる第一面返し工程(ステップS522)が実施される。それから、第一塗布パート52Aで原紙Wの第一面F1に薬剤を塗布する第一塗布工程(ステップS524)が実施される。
第一塗布工程は、オフセットグラビア方式で薬剤を原紙Wに塗布することから、間接塗布工程とも言える。また、第二塗布工程は、ダイレクトグラビア方式で薬剤を原紙Wに塗布することから、直接塗布工程とも言える。これらの面返し工程は、薬剤を塗布する面を変更することから、面変更工程とも言える。
その後、分断パート56で折り畳まれた原紙Wを所定の搬送方向寸法に分断する分断工程(ステップS56)が実施される。この分断工程は、塗布工程から所定期間内に実施される。具体的には、第一塗布工程から所定期間が経過する前に分断工程が実施される。
このようにして、薬剤が塗布された原紙Wを巻き取ることなく、原紙Wの折り畳みや積層を実施する。
このような手順でティシュペーパが製造される。
なお、抄造工程で原紙Wが抄造されてから分断工程で原紙Wが分断されるまでの工程は、原紙Wに張力が印加された状態が保持されることから、張力保持工程とも言える。
本実施形態で開示するティシュペーパの製造方法および製造装置は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
(1)積層機において原紙に薬剤を塗布する従来製法では、薬剤塗布から原紙の分断や包装までに巻取工程や繰出工程をはじめとした多数の工程が実施される。これらの多工程で搬送あるいは保管される原紙には、張力が印加された状態が継続する。すなわち、原紙に張力が印加された状態を保持する多数の張力保持工程が設定される。
これに対し、本製法では、積層機3よりも下流の折畳機5で原紙Wに薬剤を塗布する。そのため、原紙Wに薬剤が塗布されてから包装されるまでの工程数は、巻取工程や運搬工程,繰出工程が設定されていないことから、上記した従来製法の工程数よりも抑えられる。
さらに、本製法では、原紙Wの経時的な伸びの進行に着目し、塗布工程から所定期間内に分断工程が実施されることから、原紙Wの伸びの進行を確実に抑えることができ、ティシュペーパの厚みを確実に確保して品質を向上させることができる。
これに対し、本製法では、所定の幅方向寸法への裁断後に薬剤を原紙Wに塗布する。そのため、折畳機5ごとに種々の薬剤を使い分ければ、簡素な構成でティシュペーパにさまざまな機能をもたせることができる。
具体的には、第一巻取工程,第一運搬工程,第一繰出工程,第二巻取工程,第二運搬工程,第二繰出工程といった多数の工程において、原紙Wの伸張を確実に抑えることができ、原紙Wの破損を抑えることができる。
また、第二塗布工程(直接塗布工程)にはダイレクトグラビア方式が採用され、ドクターブレードDG2の付設されたグラビアロールRG2から原紙Wに薬剤が直接的に塗布される。そのため、原紙Wに薬剤を確実に塗布することができる。
このマルチ塗布工程で両面F1,F2のそれぞれを塗工する第一塗布工程および第二塗布工程の間には、第二面返し工程が設定される。そのため、原紙Wに対する薬剤の塗布方向が一方向に限定された塗工方式を採用することができる。具体的には、下方から塗工するグラビア方式を第一塗布工程および第二塗布工程の双方に適用することができる。
これに対し、本製法では、係合処理された原紙Wの両面F1,F2に薬剤が塗布されることから、皺やヨレの発生を抑えることができる。この点からも、ティシュペーパの品質を確保することができる。
(8)本製造装置によっても、上述した作用および効果を得ることができる。
最後に、その他の変形例について述べる。
グラビア方式の塗布パートには、少なくともグラビアロールが設けられていればよい。
薬剤の塗布方式には、上述したグラビア方式に限らず、キスコート方式やダイコート方式といった公知のロールコート方式を用いてもよい。更に言えば、ロールコート方式に限らず、原紙への薬剤噴霧や薬剤への原紙浸漬といった他の方式を用いてもよい。
原紙は三層(3プライ)以上に重ね合わせられてもよい。反対に、積層工程を省略して一層のティシュペーパを製造してもよい。この場合には係合工程も省略される。
図6に示すように、ロータリ式のインターフォルダを折畳機5′に用いてもよい。この折畳機5′では、一組の原紙W′,W′が折り畳まれて積み重ねられ、原紙W′の幅方向に沿う折り目が形成される。このように一組の原紙W′,W′が設置される折畳機5′によれば、上述したマルチスタンド方式の折畳機5と比べて、塗布部の設置数を抑えることができ、装置コストを低減させることができる。
3 積層機
5,5′ 折畳機
10 抄紙パート(抄造部)
15 第一巻取パート(第一巻取部)
30 第一繰出パート(第一繰出部)
32 積層パート(積層部)
35 係合パート(係合部)
36 裁断パート(裁断部)
38 第二巻取パート(第二巻取部)
50 第二繰出パート(第二繰出部)
52 塗布パート(塗布部)
52A 第一塗布パート(第一塗布部)
52B 第二塗布パート(第二塗布部)
54 折畳パート(折畳部)
56 分断パート(分断部)
C カッタ
DD ドクターブレード
DG1 ドクターブレード
DG2 ドクターブレード
FF 表面
FB 裏面
F1 第一面
F2 第二面
M1A 第一塗布機構
M2A 第二塗布機構
P1 第一パート
P2 第二パート
P3 第三パート
P12 第一運搬パート
P23 第二運搬パート
RC 係合ロール
RD 乾燥ロール
RG1,RG2 グラビアロール
RO1 オフセットロール
RP 積層ロール
RR1 表裏反転ローラ
RR2 裏表反転ローラ
RT フォーミングロール
RU1,RU2 繰出ロール
RW1,RW2 巻取ロール
S スリッタ
W,W′ 原紙(抄造体)
WR1 第一原反(ロール)
WR2 第二原反(ロール)
Claims (13)
- クレープを有するシートを抄造する抄造工程と、
前記抄造工程で作成された前記シートを巻き取る第一巻取工程と、
前記第一巻取工程で作成されたロールから繰り出された前記シートを製品幅または製品幅の整数倍に裁断する裁断工程と、
前記裁断工程により裁断された前記シートを巻き取る第二巻取工程と、
前記第二巻取工程で作成されたロールから繰り出された前記シートに薬液を塗布する塗布工程と、を備え、
前記第二巻取工程と前記塗布工程との間に、前記第二巻取工程で作成された前記ロールから前記シートを繰り出し前記塗布工程へ導出する繰出工程と、前記第二巻取工程で作成された前記ロールを繰出工程へ移動させる運搬工程と、をさらに備え、
前記塗布工程で前記薬液が塗布された前記シートを巻き取らずに積層し、折り畳む、
衛生用品の製造方法。 - 前記塗布工程は、グラビアロールに供給された前記薬液を前記シートに塗布する工程である、
請求項1に記載された衛生用品の製造方法。 - 前記塗布工程は、グラビアロールに供給された前記薬液を転写ロールへ移し、前記転写ロールから前記シートへ前記薬液を塗布する工程である、
請求項1に記載された衛生用品の製造方法。 - 前記塗布工程よりも前段に前記シートを積層する積層工程をさらに備え、
前記塗布工程は、前記積層工程で積層された前記シートの両面それぞれに前記薬液を塗布する工程である、
請求項1〜3の何れか1項に記載された衛生用品の製造方法。 - 前記積層工程と前記塗布工程との間に、前記積層工程で積層された前記シートどうしを係合させる係合工程をさらに備えた、
請求項4に記載された衛生用品の製造方法。 - 前記シートの鉛直方向下側となる面を変更する面変更工程をさらに備え、
前記塗布工程は、前記面変更工程で鉛直方向下側となる面が変更される前に、前記積層工程で積層された前記シートの鉛直方向下側から前記薬液を塗布し、さらに、前記面変更工程で鉛直方向下側となる面が変更された後にも前記シートの鉛直方向下側から前記薬液を塗布する工程である、
請求項4または5に記載された衛生用品の製造方法。 - 張架された状態で搬送される帯状の抄造体から所定の幅方向寸法をなす衛生用品を製造する装置であって、
前記所定の幅方向寸法に裁断された前記抄造体に薬剤を塗布する塗布部と、
前記塗布部で前記薬剤が塗布された前記抄造体を所定の搬送方向寸法に分断する分断部と、
前記塗布部よりも前に、前記抄造体に張力が印加された状態を保持する張力保持部とを有し、
前記張力保持部は、前記抄造体を巻き取る巻取部と、前記巻取部で巻き取られた前記抄造体を運搬する運搬部と、前記運搬部で運搬された前記抄造体を繰り出す繰出部とを含む衛生用品の製造装置。 - 前記巻取部は、前記所定の幅方向寸法に裁断される前の前記抄造体を巻き取る第一巻取部と、前記所定の幅方向寸法に裁断された後の前記抄造体を巻き取る第二巻取部とを含み、
前記運搬部は、前記第一巻取部で巻き取られた前記抄造体を運搬する第一運搬部と、前記第二巻取部で巻き取られた前記抄造体を運搬する第二運搬部とを含み、
前記繰出部は、前記第一運搬部で運搬された前記抄造体を繰り出す第一繰出部と、前記第二運搬部で運搬された前記抄造体を繰り出す第二繰出部とを含む
請求項7に記載された衛生用品の製造装置。 - 前記塗布部は、前記抄造体の両面に前記薬剤を塗布し、前記両面のうち一方に所定方向から前記薬剤を塗布する第一塗布部と、前記両面のうち他方に前記所定方向から前記薬剤を塗布する第二塗布部と、前記第一塗布部と前記第二塗布部との間に設けられ、前記抄造体の向きを反転させる面返し部とを含む
請求項7または8に記載された衛生用品の製造装置。 - 前記塗布部よりも上流側に、前記抄造体どうしを積層する積層部を有する
請求項7〜9の何れか1項に記載された衛生用品の製造装置。 - 前記積層部で積層された前記抄造体どうしを係合させる係合部を有する
請求項10に記載された衛生用品の製造装置。 - 前記分断部は、前記塗布部で前記抄造体に前記薬剤が塗布されてから所定期間内に前記抄造体を前記所定の搬送方向寸法に分断する
請求項7〜11の何れか1項に記載された衛生用品の製造装置。 - 前記抄造体をクレープが付与された状態で抄造する抄造部を有する
請求項7〜12の何れか1項に記載された衛生用品の製造装置。
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