以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る電動弁の第1実施形態の全閉状態を示す全体縦断面図、図2は、図1に示される電動弁の要部拡大縦断面図である。また、図3〜図8は、図1及び図2に示される電動弁の構成並びに動作説明に供される要部拡大縦断面図である。
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にシステムに組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
図示実施形態の電動弁1は、例えばヒートポンプ式冷暖房システムにおいて膨張弁として使用するのに好適なもので、流体(冷媒)が双方向(横から下への第1流れ方向と下から横への第2流れ方向)に流されるようになっている。また、本実施形態の電動弁1は、後述するように、ロータとねじ送り機構との間に遊星歯車式減速機構を介装し、主弁体の軸力を高めてシール性を向上させるようになっている。
電動弁1は、板金製の有底の筒状基体10Aを有する弁本体10と、この弁本体10内に上下動可能に配在された主弁体20と、この主弁体20を上下動させるべく、弁本体10の上側に取り付けられたステッピングモータ50とを備える。
弁本体10の筒状基体10Aには、弁室7が形成されるとともに、その側部に、弁室7に開口する横向きの第1入出口(導管継手)11が取り付けられ、その底部に、下側から弁室7に開口する縦向きの弁口9、該弁口9の上端内周角部からなる主弁シート8a、該弁口9の上部外周円錐台面からなる副弁シート8bが形成された段付きの弁座部材8が固着され、この弁座部材8に、前記弁口9に連なる第2入出口(導管継手)12が取り付けられている。
筒状基体10Aの上面開口部には、段付きの筒状基台13が取着され、この筒状基台13の上端部には、ステッピングモータ50の一部を構成する天井部付き円筒状のキャン58の下端部が溶接等により密封接合されている。筒状基台13の内周側には隔壁14c付き筒状保持部材14が圧入等により固定され、この筒状保持部材14の上部には、下部内周にめねじ15iが設けられた軸受部材15がかしめ係止固定されている。筒状保持部材14の隔壁14cの直上は、圧縮コイルばねからなる開弁ばね25が収納されるばね室14aとされている。
また、前記主弁体20は、段付き円筒状を有し、主弁シート8aに対して垂直方向に上下動して弁口9を開閉するポペット弁とされている。この主弁体20は、図2を参照すればよくわかるように、前記弁座部材8の主弁シート8aに接離して弁口9を開閉する若干大径の主弁体部20Aと、この主弁体部20Aより上側の胴部20Bとを有し、胴部20Bの上部が筒状保持部材14における隔壁14cより下側の弁体ガイド穴14bに摺動自在に嵌挿されている。主弁体部20Aの下面外周部には、所要のシール性が得られるように、前記主弁シート8aに対して実質的に線接触する逆円錐台状のシール面20aが設けられている。
そして、本実施形態では、前記主弁体20の下部外周側に、弁口9を開閉するための副弁体30が上下方向に摺動可能に配設されている。すなわち、上記した如くに、弁本体10における弁座部材8(弁口9)の上部内周側(角部)に、主弁体部20A(のシール面20a)が接離する主弁シート8aが設けられ、この主弁シート8aとは別個に、弁座部材8の上部外周側に、副弁体30のシール面(下端内周側角部)30aが接離する円錐台状の副弁シート8bが設けられている。この副弁体30は、主弁体20の下部外周に摺動自在に外挿された円筒状部30Aを有し、当該円筒状部30A(のシール面(下端内周側角部)30a)が前記副弁シート8bに対して垂直方向に上下動して弁口9を開閉するようにされている。
より詳細には、主弁体部20Aに、抜止係止部とばね受け部とを兼ねる(詳しくは、上面が抜止係止部とされ、下面がばね受け部とされる)上側鍔状部20Cが設けられるとともに、この上側鍔状部20Cより下側に、下側鍔状部30B付き円筒状の(言い換えれば、下側鍔状部30B付きの円筒状部30Aを持つ)副弁体30が摺動自在に外挿されている。この副弁体30の外周側には、上側鍔状部20Cに係止される内鍔状引っ掛け部32Bがその上端部に設けられるとともに、前記下側鍔状部30Bの上面外周部にその下端部が溶接等で固着された円筒状抜止部材32が配設され、前記上側鍔状部20C(の下面)と前記下側鍔状部30B(の上面)との間に前記副弁体30を常時下方(閉弁方向)に付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね33が縮装されている。
また、円筒状抜止部材32の円筒部32Aと上側鍔状部20Cとの間(詳細には、上側鍔状部20Cの外周に形成された環状溝)には、シール部材としてのOリング34が介装されている。
前記副弁体30は、主弁体20が開弁状態から閉弁せしめられる際、弁口9を主弁体20より先に閉弁するように、各部の寸法形状が設定されている(後で詳述)。
一方、弁本体10(の筒状基体10A)の上側に配置されたステッピングモータ50は、ヨーク51、ボビン52、コイル53、樹脂モールド54等からなる2相のコイル部を有し、キャン58に外嵌固定されたステータ55と、キャン58内に回転自在に配在され、ロータ支持部材56がその上部内側に固着されたロータ57とを有している。また、ロータ57の内周側には、ロータ支持部材56に一体的に設けられた太陽歯車41、筒状保持部材14の上端部に固着された筒状体14dの先端に固定された固定リング歯車47、前記太陽歯車41及び固定リング歯車47に歯合する遊星歯車42、該遊星歯車42を回転自在に支持するキャリア44、前記遊星歯車42に歯合するリング状の出力歯車45、該出力歯車45に固着された出力軸46等からなる不思議遊星歯車式減速機構40が付設されている。前記固定リング歯車47の歯数は、前記出力歯車45の歯数とは異なるようにされている。
前記出力軸46の上部に設けられた穴に支持軸49の下部が挿通されており、該支持軸49に前記キャリア44、太陽歯車41(ロータ支持部材56)が挿通されている。
キャン58内部において、該キャン58の天井部とロータ支持部材56との間には、該キャン58の内径とほぼ同一径を有する支持部材48が配置され、前記支持軸49の上部は、支持部材48の中心部に設けられた穴に挿通されている。
前記不思議遊星歯車式減速機構40の出力軸46は、軸受部材15の上部に回転自在に嵌挿され、この出力軸46の回転が、前記軸受部材15に設けられためねじ15iに螺合するおねじ17eが設けられた回転上下動軸17に伝達される。出力軸46の下部にはスリット状嵌合部46aが設けられ、回転上下動軸17の上部には前記スリット状嵌合部46aに摺動自在に嵌合する板状部17aが突設されており、出力軸46が回転すると、前記めねじ15iとおねじ17eによるねじ送りにより回転上下動軸17が回転しながら上下動せしめられる。
回転上下動軸17の下方には、該回転上下動軸17の下方への推力がボール18、ボール受座19を介して伝達される段付き筒状の推力伝達部材23が配在されている。なお、ボール18を介在させていることにより、回転上下動軸17が回転しながら下降しても、回転上下動軸17から推力伝達部材23へは下方への推力のみが伝達され、回転力は伝達されない。
推力伝達部材23は、上から順に、内周に前記ボール受座19が嵌め込まれた大径上部23a、前記筒状保持部材14の隔壁14cに摺動自在に挿通せしめられる中間胴部23b、該中間胴部23bより小径の小径下部23cからなっており、その内部に、後述する均圧通路26の上部を構成する貫通孔26d及び後述する背圧室27に開口する複数個の横孔26eが設けられている。なお、貫通孔26dの上端開口はボール受座19により閉塞されている。
推力伝達部材23の小径下部23cは、段付き円筒状の主弁体20の上部嵌合穴20dに圧入等により嵌合固定され、主弁体20と推力伝達部材23とは一体に上下動せしめられる。主弁体20の上端面と推力伝達部材23の中間胴部23bの下端段差部との間には、前記小径下部23cの圧入時において押さえ部材24が挟み込まれて固定されており、この押さえ部材24と主弁体20の上端部に設けられた環状溝と前記筒状保持部材14の弁体ガイド穴14bとの間には、Oリング、リング状パッキンからなるシール部材29が装着されている。
また、筒状保持部材14の隔壁14cより上側のばね室14aには、圧縮コイルばねからなる開弁ばね25がその下端を隔壁14cに当接させた状態で縮装されるとともに、この開弁ばね25の付勢力(引き上げ力)を推力伝達部材23を介して主弁体20に伝達すべく、上下に鍔状引っ掛け部(上引っ掛け部28a、下引っ掛け部28b)を有する引き上げばね受け体28が配在されている。引き上げばね受け体28の上引っ掛け部28aは、開弁ばね25の上に乗せられ、下引っ掛け部28bは推力伝達部材23の大径上部23aの下端段差部を掛止するようになっている。
したがって、本実施形態では、めねじ15iが設けられた軸受部材15とおねじ17eが設けられた回転上下動軸17等でねじ送り機構が構成され、ステッピングモータ50(ロータ57)が一方向に回転せしめられるとき、前記めねじ15iとおねじ17eによるねじ送りにより回転上下動軸17が回転しながら例えば下動せしめられ、回転上下動軸17の推力により、推力伝達部材23及び主弁体20が開弁ばね25の付勢力に抗して押し下げられ、最終的には主弁体部20Aのシール面20aが主弁シート8aに押し付けられて弁口9が閉じられる。
それに対し、ステッピングモータ50(ロータ57)が他方向に回転せしめられるときには、前記めねじ15iとおねじ17eによるねじ送りにより回転上下動軸17が回転しながら例えば上動せしめられ、それに伴い推力伝達部材23及び主弁体20が開弁ばね25の付勢力によって引き上げられ、主弁体部20Aのシール面20aが主弁シート8aからリフト(上昇)して弁口9を開くようにされている。
なお、副弁体30を含めた詳細な動作説明は後述する。
本実施形態では、前記主弁体20の上方で押さえ部材24と筒状保持部材14の隔壁14cとの間に、背圧室27が画成されている。また、主弁体20内には、該主弁体20の先端部(下端部)と背圧室27とを連通させる段付きの均圧通路26が設けられている。この均圧通路26は、前記した推力伝達部材23の縦穴26d及び横孔26eとともに背圧室27に連通している。ここでは、閉弁状態において主弁体20に作用する押し下げ力(閉弁方向に働く力)と主弁体20に作用する押し上げ力(開弁方向に働く力)とをバランス(差圧をキャンセル)させるべく、背圧室27の室径Daと弁口9の口径Dcとは略同一に設定されている。
次に、上記した如くの構成を有する電動弁1における副弁体30を含めた開閉動作を図2〜図8を参照しながら説明する。
まず、図2及び図5に示される如くに、閉弁動作が完了して主弁体20及び副弁体30が最も下方に位置する状態、すなわち、主弁体20が主弁シート8aに着座して押し付けられ、副弁体30が副弁シート8bに着座して押し付けられ、共に閉弁しているとき(全閉時)には、圧縮コイルばね33が上側鍔状部20Cに押し下げられて該上側鍔状部20Cの下面と副弁体30の円筒状部30Aの上端との間には間隙Laが空けられるとともに、上側鍔状部20Cの上面と円筒状抜止部材32の内鍔状引っ掛け部32Bの下面との間に間隙Lbが空けられる。
一方、図3に示される如くに、横から下への第1流れ時において、ステッピングモータ50(ロータ57)が一方向に回転せしめられて、主弁体20が副弁体30を伴って下動しているとき、すなわち、主弁体20及び副弁体30が共に開状態の閉弁動作中(1)においては、圧縮コイルばね33の付勢力により副弁体30が押し下げられて、上側鍔状部20C(の上面)に円筒状抜止部材32の内鍔状引っ掛け部32B(の下面)が当接係止され、上側鍔状部20Cの下面と副弁体30の円筒状部30Aの上端との間には間隙La+Lbが空けられている。
この閉弁動作中(1)において、本例では、主弁体20の下端より副弁体30の下端の方が下側に位置し、冷媒及びその中に含まれる異物(金属粉、削りカス、研磨材、スラッジ等)は、副弁体30と副弁シート8bとの間、及び、主弁体20と主弁シート8aとの間を通って流される。
続いて、図3に示される、主弁体20が小開、副弁体30が微開している状態から、図4に示される如くに、主弁体20がさらに下動せしめられて、副弁体30が副弁シート8bに着座して閉弁するまでの閉弁動作中(2)、すなわち、副弁体30と副弁シート8bとの間に形成される隙間が次第に小さくなって最終的に0になるときには、冷媒中に含まれる異物が副弁体30と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間に堰き止められ、図4においてE1矢印で示される部位、すなわち、副弁体30と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間の上流側(外周側)に溜まって詰まり気味となる。副弁体30が副弁シート8bに着座して閉弁したときには、異物は副弁体30によりブロックされて下流側(ここでは、内周側の主弁体20及び主弁シート8a側)には流れなくなる。
このようにして副弁体30が微開状態から閉弁するまでの閉弁動作中(2)においては、主弁体20は小開状態から微開状態へと下動し、主弁体20を通過する冷媒流量が次第に小量となり、副弁体30が閉弁すると、冷媒は流れなくなり、流量が実質的に0となる。
続いて、主弁体20が図4に示される微開状態からさらに下動せしめられると、図5に示される如くに、主弁体20のシール面20aが主弁シート8aに着座して閉弁する。この場合、主弁体20は、不思議遊星歯車式減速機構40による高い軸力で主弁シート8aに強く押し付けられる。このとき、前述したように、圧縮コイルばね33が上側鍔状部20Cにより間隙Lb分だけ押し下げられて該上側鍔状部20Cの下面と副弁体30の円筒状部30Aの上端との間に形成される間隙がLa+LbからLaのみになるとともに、上側鍔状部20Cの上面と円筒状抜止部材32の内鍔状引っ掛け部32Bの下面との間に間隙Lbが空けられ、副弁体30が圧縮コイルばね33の付勢力により副弁シート8bに押し付けられる。
ここで、副弁体30が副弁シート8bに着座して閉弁した際(図4に示される状態)、異物が副弁体30と副弁シート8bとの間に噛み込まれている場合には、Lb分圧縮される圧縮コイルばね33の付勢力により異物が副弁体30と副弁シート8bとに押し付けられるが、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体30と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、このときは、主弁体20が微開状態から閉弁しても、異物は副弁体30でブロックされていて、冷媒は実質的に流れなくなっているので、主弁体20と主弁シート8aとの間に異物を噛み込むことはなく、したがって、主弁体20が主弁シート8aに不思議遊星歯車式減速機構40による高い軸力で強く押し付けられても、主弁体20や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
図5に示される全閉状態から開弁するにあたっては、ステッピングモータ50(ロータ57)が他方向に回転せしめられ、これによって、図6に示される如くに、主弁体20が引き上げられる。この場合、主弁体20が間隙Lb分引き上げられると、主弁体20が閉弁状態から微開し、これによって、圧縮コイルばね33の付勢力により上側鍔状部20Cの上面に円筒状抜止部材32の内鍔状引っ掛け部32Bの下面が当接係止されるとともに、上側鍔状部20Cの下面と副弁体30の円筒状部30Aの上端との間に形成される間隙がLaからLa+Lbになり、副弁体30は閉弁したままであるが、圧縮コイルばね33による押し付け力は小さくなる。
この状態からさらに主弁体20が引き上げられると、副弁体30のシール面30aが副弁シート8bから離れ、図3に示される如くの、主弁体20が小開、副弁体30が微開している状態となる。
以上は、横から下への第1流れ時についての説明であるが、下から横への第2流れ時においても、図7、図8(図3、図4に対応する状態)に示される如くに、主弁体20が小開、副弁体30が微開している状態から、主弁体20が下動せしめられて、副弁体30と副弁シート8bとの間に形成される隙間が次第に小さくなって最終的に0になるときには、冷媒中に含まれる異物が副弁体30と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間に堰き止められ、図8においてE2矢印で示される部位、すなわち、主弁体20と主弁シート8aとの間に形成される隙間より下流側(外周側)で、副弁体30と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間の上流側(内周側)に溜まって詰まり気味となる。
かかる副弁体30が微開状態から閉弁するまでの閉弁動作中(2)においては、主弁体20は小開状態から微開状態へと下動し、主弁体20を通過する冷媒流量が次第に小量となり、副弁体30が閉弁すると、冷媒は流れなくなるので、異物が主弁体20と主弁シート8aとの間の隙間に詰まることはない。
続いて、主弁体20が図8に示される微開状態からさらに下動せしめられると、主弁体20が主弁シート8aに着座して閉弁する。このとき、前述したように、圧縮コイルばね33が上側鍔状部20Cにより間隙Lb分だけ押し下げられて該上側鍔状部20Cの下面と副弁体30の円筒状部30Aの上端との間に形成される間隙がLa+LbからLaのみになるとともに、上側鍔状部20Cの上面と円筒状抜止部材32の内鍔状引っ掛け部32Bの下面との間に間隙Lbが空けられ、副弁体30が圧縮コイルばね33の付勢力により副弁シート8bに押し付けられる。
ここで、本第2流れ時においても、副弁体30が副弁シート8bに着座して閉弁した際(図8に示される状態)、異物が副弁体30と副弁シート8bとの間に噛み込まれている場合には、Lb分圧縮される圧縮コイルばね33により異物が副弁体30と副弁シート8bとに押し付けられるが、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体30と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、このときは、主弁体20が微開状態から閉弁しても、冷媒は実質的に流れなくなっているので、主弁体20と主弁シート8aとの間に異物を噛み込むことはほとんどなく、したがって、主弁体20が主弁シート8aに強く押し付けられても、主弁体20や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
このように、本実施形態の電動弁1においては、主弁体20の外周に、弁口9を主弁体20より先に閉弁する副弁体30が設けられているので、副弁体30が微開状態にあるとき、流体(冷媒)中に含まれる異物が副弁体30により堰き止められ、そこから副弁体30が閉弁すると流体(冷媒)が実質的に流れなくなるため、異物が主弁体20と主弁シート8aとの間に噛み込まれることはなく、したがって、主弁体20が閉弁して主弁シート8aに強く押し付けられても、主弁体20や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
また、異物は副弁体30と副弁シート8bとの間に噛み込まれるおそれがあるが、副弁体30は圧縮コイルばね33により付勢されているだけであるので、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体30と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、異物が副弁体30と副弁シート8bとの間に噛み込まれて、それらの間に隙間が生じても、主弁体20は閉弁しているので、弁漏れは生じない。
このように、本第1実施形態の歯車減速式の電動弁1では、シール性を高めて弁漏れを確実に防ぐべく、ロータ57とねじ送り機構(めねじ15iが設けられた軸受部材15、おねじ17eが設けられた回転上下動軸17)との間に不思議遊星歯車式減速機構40を介装し、主弁体20の軸力、すなわち、主弁体20の主弁シート8aへの押し付け力を増大するようにしたものにおいて、流体(冷媒)中に含まれる異物が主弁体20と主弁シート8aとの間に噛み込まれてそれらに強く押し付けられるような事態を生じ難くでき、そのため、主弁シート8a、副弁シート8bや主弁体20、副弁体30に傷、打痕等がつかないようにでき、その結果、弁漏れを効果的に防止して、閉弁の信頼性を向上させることができる。
[第2実施形態]
図9は、本発明に係る電動弁の第2実施形態の全閉状態を示す全体縦断面図である。また、図10〜図13は、図9に示される電動弁の構成並びに動作説明に供される要部拡大縦断面図である。
図示第2実施形態の電動弁2は、図1〜図8に示される第1実施形態の電動弁1と、主弁体及び副弁体周り以外は略同様な構成である。そのため、第1実施形態の電動弁1の各部に対応する部分並びに同様の機能を有する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては、主弁体及び副弁体周りを中心に説明する。
図示実施形態の電動弁2において、弁本体10を構成する筒状基体10Bは、底部付き大径の下部円筒部10a、中間厚肉部10b、及びキャン58に挿入された上部円筒部10cを有する。筒状基体10Bの下部円筒部10aには、弁室7が形成されるとともに、その側部に、弁室7に開口する横向きの第1入出口(導管継手)11が取り付けられ、その底部に、下側から弁室7に開口する縦向きの弁口9、該弁口9の上端内周角部からなる主弁シート8a、及び該弁口9の上部外周円錐台面からなる副弁シート8bが形成された弁座部8が一体に設けられ(図10〜図13参照)、この弁座部8に、前記弁口9に連なる第2入出口(導管継手)12が取り付けられている。
筒状基体10Bの中間厚肉部10bの外周段差部には、リング状基台13が取着され、このリング状基台13の上端外周部には、天井部付き円筒状のキャン58の下端部が溶接等により密封接合されている。リング状基台13の内周側には筒状基体10Bの上部円筒部10cの基部が圧入等により固定され、この筒状基体10Bの上部円筒部10cに、下部内周にめねじ15iが設けられた軸受部材15がかしめ係止固定されている。
この軸受部材15の下面と筒状基体10Bの中間厚肉部10bの内周段差部との間には、ばね受け部と主弁体案内部とを兼ねる板金製の段付き円筒体65の上端鍔状部65Dが挟持されている。段付き円筒体65は、間に円環状の段差(段丘)部65Cを介して、主弁体70(の胴部70B)が摺動自在に嵌挿された下部小径案内部65Aと、前記上端鍔状部65Dが設けられた上部大径部65Bとを有し、該段差部65Cと推力伝達部材23の大径上部23aとの間に、圧縮コイルばねからなる開弁ばね25が縮装されている。
また、前記主弁体70は、主弁シート8aに対して垂直方向に上下動して弁口9を開閉するポペット弁とされている。この主弁体70は、前記弁座部8の主弁シート8aに接離して弁口9を開閉する大径の主弁体部70Aと、この主弁体部70Aより上側の小径の胴部70Bと、前記推力伝達部材23の小径下部23cに圧入等で固着された上凸部70Cとを有し、胴部70Bが段付き円筒体65の下部小径案内部65Aに摺動自在に嵌挿されている。主弁体部70Aの下面外周部には、所要のシール性が得られるように、前記主弁シート8aに対して実質的に線接触する逆円錐台状のシール面70aが設けられている(図10〜図13参照)。
そして、本実施形態では、前記主弁体70の下部外周側に、弁口9を開閉するための副弁体80が上下方向に摺動可能に配設されている。すなわち、上記した如くに、弁本体10における弁座部8(弁口9)の上部内周側(角部)に、主弁体部70Aのシール面70aが接離する主弁シート8aが設けられ、この主弁シート8aとは別個に、弁座部8の上部外周側に、副弁体80のシール面(下端内周側角部)80aが接離する円錐台状の副弁シート8bが設けられている。
副弁体80は、主弁体70の主弁体部70Aの外周に摺動自在に外挿される大径外挿部80Aと、主弁体70の胴部70Bに摺動自在に外挿される小径外挿部80Bと、大径外挿部80Aと小径外挿部80Bとの間の、抜止係止部とばね受け部とを兼ねる(詳しくは、下面が抜止係止部とされ、上面がばね受け部とされる)円環状の段差(段丘)部80Cと、からなる段付き円筒状とされ、段差部80Cと弁本体10に設けられた該段差部80Cより上側の不動部分である段付き円筒体65の段差部65Cとの間に副弁体80を常時下方(閉弁方向)に付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね73が縮装されている。ここでは、大径外挿部80A(のシール面(下端内周側角部)80a)が前記副弁シート8bに対して垂直方向に上下動して弁口9を開閉するようにされている。
なお、副弁体84の小径外挿部80Bと主弁体70の胴部70Bとの摺動面間にOリング等のシール部材を介装してもよい。
次に、上記した如くの構成を有する電動弁2における副弁体80を含めた開閉動作を図10〜図13を参照しながら説明する。
まず、図12に示される如くに、閉弁動作が完了した状態、すなわち、主弁体70が主弁シート8aに着座して押し付けられ、副弁体80が副弁シート8bに着座して押し付けられ、共に閉弁しているとき(全閉時)には、主弁体部70Aの上面と副弁体80の段差部80Cの下面との間には間隙Lcが空けられる。
一方、図10に示される如くに、横から下への第1流れ時において、ステッピングモータ50(ロータ57)が一方向に回転せしめられて、主弁体70が副弁体80を伴って下動している閉弁動作中(1)においては、圧縮コイルばね73の付勢力により副弁体80が押し下げられて、主弁体部70Aの上面に副弁体80の段差部80Cが当接係止され、本例では、主弁体70の下端より副弁体80の下端の方が下側に位置し、冷媒及びその中に含まれる異物(金属粉、削りカス、研磨材、スラッジ等)は、副弁体80と副弁シート8bとの間、及び、主弁体70と主弁シート8aとの間を通って流される。
続いて、図10に示される、主弁体70が小開、副弁体80が微開している状態から、図11に示される如くに、主弁体70がさらに下動せしめられて、副弁体80が副弁シート8bに着座して閉弁するまでの閉弁動作中(2)、すなわち、副弁体80と副弁シート8bとの間に形成される隙間が次第に小さくなって最終的に0になるときには、冷媒中に含まれる異物が副弁体80と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間に堰き止められ、図11においてE1矢印で示される部位、すなわち、副弁体80と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間の上流側(外周側)に溜まって詰まり気味となる。副弁体80が副弁シート8bに着座して閉弁したときには、異物は副弁体80によりブロックされて下流側(ここでは、内周側の主弁体70及び主弁シート8a側)には流れなくなる。
このようにして副弁体80が微開状態から閉弁するまでの閉弁動作中(2)においては、主弁体70は小開状態から微開状態へと下動し、主弁体70を通過する冷媒流量が次第に小量となり、副弁体80が閉弁すると、冷媒は流れなくなり、流量が実質的に0となる。
続いて、主弁体70が図11に示される微開状態からさらに下動せしめられると、図12に示される如くに、副弁体80が圧縮コイルばね73の付勢力により副弁シート8bに押し付けられ、主弁体70が主弁シート8aに着座して不思議遊星歯車式減速機構40による高い軸力で主弁シート8aに強く押し付けられ、全閉状態となる。この全閉時には、前述したように、主弁体部70Aの上面と副弁体80の段差部80Cの下面との間には間隙Lcが空けられる。
ここで、副弁体80が副弁シート8bに着座して閉弁した際(図11に示される状態)、異物が副弁体80と副弁シート8bとの間に噛み込まれている場合には、圧縮コイルばね73の付勢力により異物が副弁体80と副弁シート8bとに押し付けられるが、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体80と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、このときは、主弁体70が微開状態から閉弁しても、異物は副弁体80でブロックされていて、冷媒は実質的に流れなくなっているので、主弁体70と主弁シート8aとの間に異物を噛み込むことはなく、したがって、主弁体70が主弁シート8aに不思議遊星歯車式減速機構40による高い軸力で強く押し付けられても、主弁体70や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
図12に示される全閉状態から開弁するにあたっては、ステッピングモータ50(ロータ57)が他方向に回転せしめられ、これによって、図13に示される如くに、主弁体70が引き上げられて開弁する。この場合、主弁体70が間隙Lc分引き上げられると、主弁体部70Aの上面が副弁体80の段差部80Cの下面に当接し、これ以上主弁体70が引き上げられると、それに伴って副弁体80が引き上げられ、副弁体80のシール面80aが副弁シート8bから離れて、副弁体80も開弁する。
以上は、横から下への第1流れ時についての説明であるが、下から横への第2流れ時においても、上記第1流れ時と同様の動作となり、図7、図8を用いて前述した第1実施形態の第2流れ時の作用効果と同様の作用効果が得られる。
このように、本第2実施形態の電動弁2においても、主弁体70の外周に、弁口9を主弁体70より先に閉弁する副弁体80が設けられているので、副弁体80が微開状態にあるとき、流体(冷媒)中に含まれる異物が副弁体80により堰き止められ、そこから副弁体80が閉弁すると流体(冷媒)が実質的に流れなくなるため、異物が主弁体70と主弁シート8aとの間に噛み込まれることはなく、したがって、主弁体70が閉弁して主弁シート8aに強く押し付けられても、主弁体70や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
また、異物は副弁体80と副弁シート8bとの間に噛み込まれるおそれがあるが、副弁体80は圧縮コイルばね73により付勢されているだけであるので、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体80と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、異物が副弁体80と副弁シート8bとの間に噛み込まれて、それらの間に隙間が生じても、主弁体70は閉弁しているので、弁漏れは生じない。
このように、本第2実施形態の歯車減速式の電動弁2においても、流体(冷媒)中に含まれる異物が主弁体70と主弁シート8aとの間に噛み込まれてそれらに強く押し付けられるような事態を生じ難くでき、そのため、主弁シート8a、副弁シート8bや主弁体70、副弁体80に傷、打痕等がつかないようにでき、その結果、弁漏れを効果的に防止して、閉弁の信頼性を向上させることができる。
[第3実施形態]
図14〜図17は、本発明に係る電動弁の第3実施形態の構成並びに動作説明に供される要部拡大縦断面図である。
図示第3実施形態の電動弁3は、図9〜図13に示される第2実施形態の電動弁2と主弁体及び副弁体周り以外は略同様な構成である。そのため、第2実施形態の電動弁2の各部に対応する部分並びに同様の機能を有する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては、主弁体及び副弁体周りを中心に説明する。
図示実施形態の電動弁3においては、上記第2実施形態の電動弁2とは逆に、弁座部8の外周側(角部)に主弁シート8aが設けられ、弁座部8の内周側(角部)に副弁シート8bが設けられている。また、主弁体72が円筒状とされ、副弁体82が逆円錐台状とされ、主弁体72(の主弁体部72Aの逆円錐台状のシール面72a)が副弁体82(の逆円錐台状のシール面82a)より外周側(換言すれば、副弁体82が主弁体72より内側)に位置している。
詳細には、主弁体72は、円筒状胴部72Bと、円筒状胴部72Bの下端から外向きに突設され、逆円錐台状のシール面72aを有する鍔状の主弁体部72Aと、円筒状胴部72Bの上端から内向きに突設され、第2実施形態における胴部70Bの下端部に圧入等により固着される上端内鍔状部72Cとを有する。
前記胴部70Bの下部中央には、副弁体82が摺動自在に外挿された副弁体支持棒75の上端部が圧入等により固着されている。この副弁体支持棒75の下端部には、副弁体82の先端面(下端面)に設けられた下端凹部83に嵌り込んで該副弁体82を抜止係止する大径の抜止係止部75aが設けられている。ここでは、副弁体82の先端面(下端面)が、主弁シート8aの内側で副弁シート8bに対して垂直方向に上下動して弁口9を開閉する逆円錐台状のシール面82aとなっている。
また、主弁体72の上端内鍔状部72Cと副弁体82との間には、副弁体82を常時下方(閉弁方向)に付勢する圧縮コイルばね77が縮装されている。
次に、上記した如くの構成を有する電動弁3における副弁体82を含めた開閉動作を図14〜図17を参照しながら説明する。
まず、図16に示される如くに、閉弁動作が完了した状態、すなわち、主弁体72が主弁シート8aに着座して押し付けられ、副弁体82が副弁シート8bに着座して押し付けられ、共に閉弁しているとき(全閉時)には、副弁体82の下端凹部83の上面と副弁体支持棒75の抜止係止部75aの上面との間には間隙Ldが空けられる。
一方、図14に示される如くに、横から下への第1流れ時において、ステッピングモータ50(ロータ57)が一方向に回転せしめられて、主弁体72が副弁体82を伴って下動している閉弁動作中(1)においては、圧縮コイルばね77の付勢力により副弁体82が押し下げられて、副弁体82が副弁体支持棒75の抜止係止部75aに当接係止され、本例では、主弁体72の下端より副弁体82の下端の方が下側に位置し、冷媒及びその中に含まれる異物(金属粉、削りカス、研磨材、スラッジ等)は、副弁体82と副弁シート8bとの間、及び、主弁体72と主弁シート8aとの間を通って流される。
続いて、図14に示される、主弁体72が小開、副弁体82が微開している状態から、図15に示される如くに、主弁体72がさらに下動せしめられて、副弁体82が副弁シート8bに着座して閉弁するまでの閉弁動作中(2)、すなわち、副弁体82と副弁シート8bとの間に形成される隙間が次第に小さくなって最終的に0になるときには、冷媒中に含まれる異物が副弁体82と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間に堰き止められ、副弁体82と副弁シート8bとの間に形成される微小隙間の上流側(外周側)に溜まって詰まり気味となる。副弁体82が副弁シート8bに着座して閉弁したときには、異物は副弁体82によりブロックされて下流側(ここでは、内周側の弁口9側)には流れなくなる。
このようにして副弁体82が微開状態から閉弁するまでの閉弁動作中(2)においては、主弁体72は小開状態から微開状態へと下動し、主弁体72を通過する冷媒流量が次第に小量となり、副弁体82が閉弁すると、冷媒は流れなくなり、流量が実質的に0となる。
続いて、主弁体72が図15に示される微開状態からさらに下動せしめられると、図16に示される如くに、副弁体82が圧縮コイルばね77の付勢力により副弁シート8bに押し付けられ、主弁体72が主弁シート8aに着座して不思議遊星歯車式減速機構40による高い軸力で主弁シート8aに強く押し付けられ、全閉状態となる。この全閉時には、前述したように、副弁体82の下端凹部83の上面と副弁体支持棒75の抜止係止部75aの上面との間には間隙Ldが空けられる。
ここで、副弁体82が副弁シート8bに着座して閉弁した際(図15に示される状態)、異物が副弁体82と副弁シート8bとの間に噛み込まれている場合には、圧縮コイルばね77の付勢力により異物が副弁体82と副弁シート8bとに押し付けられるが、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体82と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、このときは、主弁体72が微開状態から閉弁しても、異物は副弁体82でブロックされるとともに、冷媒は実質的に流れなくなっているので、主弁体72と主弁シート8aとの間に異物を噛み込むことはほとんどなく、したがって、主弁体72が主弁シート8aに不思議遊星歯車式減速機構40による高い軸力で強く押し付けられても、主弁体72や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない(図7、図8を用いて前述した第1実施形態の第2流れ時の動作説明を併せて参照)。
図16に示される全閉状態から開弁するにあたっては、ステッピングモータ50(ロータ57)が他方向に回転せしめられ、これによって、図17に示される如くに、主弁体72が引き上げられて開弁する。この場合、主弁体72が間隙Ld分引き上げられると、副弁体82の下端凹部83の上面に副弁体支持棒75の抜止係止部75aの上面が当接し、これ以上主弁体72が引き上げられると、それに伴って副弁体82が引き上げられ、副弁体82のシール面82aが副弁シート8bから離れて、副弁体82も開弁する。
以上は、横から下への第1流れ時についての説明であるが、下から横への第2流れ時においても、上記第1流れ時と同様の動作となり、図7、図8を用いて前述した第1実施形態の第2流れ時や図9〜図13を用いて前述した第2実施形態の第1流れ時の作用効果と同様の作用効果が得られる。
なお、図14〜図17に示される例では、弁座部8の外周側角部に主弁シート8aが設けられ、弁座部8の内周側角部に副弁シート8bが設けられているが、例えば、図18に示されるように、弁座部8の上面を傾斜面とし、その傾斜面に主弁シート8aを設けるとともに、その傾斜面の内端(角部)に副弁シート8bを設けてもよい。また、この場合、主弁体72の円筒状胴部72Bの下端部を、シール面72aを有する主弁体部72Aとしてもよい。
このように、本第3実施形態の電動弁3においても、第1実施形態及び第2実施形態の電動弁1、2と同様に、主弁体72の内周に、弁口9を主弁体72より先に閉弁する副弁体82が設けられているので、副弁体82が微開状態にあるとき、流体(冷媒)中に含まれる異物が副弁体82により堰き止められ、そこから副弁体82が閉弁すると流体(冷媒)が実質的に流れなくなるため、異物が主弁体72と主弁シート8aとの間に噛み込まれることはなく、したがって、主弁体72が閉弁して主弁シート8aに強く押し付けられても、主弁体72や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
また、異物は副弁体82と副弁シート8bとの間に噛み込まれるおそれがあるが、副弁体82は圧縮コイルばね73により付勢されているだけであるので、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体82と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、異物が副弁体82と副弁シート8bとの間に噛み込まれて、それらの間に隙間が生じても、主弁体72は閉弁しているので、弁漏れは生じない。
このように、本第3実施形態の歯車減速式の電動弁3においても、流体(冷媒)中に含まれる異物が主弁体72と主弁シート8aとの間に噛み込まれてそれらに強く押し付けられるような事態を生じ難くでき、そのため、主弁シート8a、副弁シート8bや主弁体72、副弁体82に傷、打痕等がつかないようにでき、その結果、弁漏れを効果的に防止して、閉弁の信頼性を向上させることができる。
[第4実施形態]
図19は、本発明に係る電動弁の第4実施形態の全閉状態を示す全体縦断面図である。また、図20〜図23は、図19に示される電動弁の構成並びに動作説明に供される要部拡大縦断面図である。
図示第4実施形態の電動弁4は、直動式のものであり、主に、図9〜図13に示される第2実施形態の電動弁2から不思議遊星歯車式減速機構40及びそれに関連する部分を取り除いた構成とされ、主弁体及び副弁体等は第2実施形態のものに類似した形状とされている。そのため、第2実施形態の電動弁2の各部に対応する部分並びに同様の機能を有する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては、相違点を中心に説明する。すなわち、まず、副弁体を除く基本の全体構成を説明し、その後に、副弁体を含む本発明の特徴部分を説明する。なお、本第4実施形態の電動弁4において、詳細構造及び動作の説明は、必要なら前記した特許文献1等を参照されたい。
図示実施形態の電動弁4は、基本的には、主弁体74が一体に設けられた弁軸125と、弁室7、弁口9、弁座部8等が設けられた有底の筒状基体10Bを有する弁本体10と、この弁本体10にその下端部が溶接等により密封接合された天井部付き円筒状のキャン58と、このキャン58の内周に所定の間隙をあけて配在されたロータ57、及び、このロータ57を回転駆動すべく前記キャン58に外嵌されたステータ55からなるステッピングモータ50と、前記ロータ57と前記主弁体74との間に配在され、前記ロータ57の回転を利用して主弁体74を弁座部8に形成された主弁シート8aに接離させるねじ送り機構とを備える。
前記ロータ57には、支持リング136が一体的に結合されるとともに、この支持リング136に、前記弁軸125及びガイドブッシュ126の外周に配在された下方開口で筒状の弁軸ホルダ132の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ57、支持リング136及び弁軸ホルダ132が一体的に連結されている。
前記ねじ送り機構は、弁本体10の筒状基体10Bに設けられた嵌合穴142にその下端部126aが圧入固定されるとともに、弁軸125(の下部大径部125a)が摺動自在に内挿された筒状のガイドブッシュ126の外周に形成された固定ねじ部(おねじ部)128と、前記弁軸ホルダ132の内周に形成されて前記固定ねじ部128に螺合せしめられた移動ねじ部(めねじ部)138とから構成されている。
また、前記ガイドブッシュ126の上部小径部126bが弁軸ホルダ132の上部に内挿されるとともに、弁軸ホルダ132の天井部中央(に形成された通し穴)に弁軸125の上部小径部125bが挿通せしめられている。弁軸125の上部小径部125bの上端部(弁軸ホルダ132の通し穴から上側に突出する部分)にはプッシュナット133が圧入固定されている。
また、前記弁軸125は、該弁軸125の上部小径部125bに外挿され、かつ、弁軸ホルダ132の天井部と弁軸125における下部大径部125aの上端段丘面との間に縮装された圧縮コイルばねからなる閉弁ばね134によって、常時下方(閉弁方向)に付勢されている。弁軸ホルダ132の天井部上でプッシュナット133の外周には、コイルばねからなる復帰ばね135が設けられている。
前記ガイドブッシュ126には、前記ロータ57が所定の閉弁位置まで回転下降せしめられた際、それ以上の回転下降を阻止するための回転下降ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)127が固着され、弁軸ホルダ132には前記回転下降ストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)137が外装されて固着されている。
このような構成とされた直動式の電動弁4においても、ステッピングモータ50(ロータ57)が一方向に回転せしめられるときには、固定ねじ部(おねじ部)128とこれに螺合せしめられた移動ねじ部(めねじ部)138とからなるねじ送りにより弁軸125が回転しながら例えば下動せしめられ、最終的には主弁体74のシール面74aが主弁シート8aに押し付けられて(図20〜図23参照)弁口9が閉じられる。
それに対し、ステッピングモータ50(ロータ57)が他方向に回転せしめられるときには、固定ねじ部(おねじ部)128とこれに螺合せしめられた移動ねじ部(めねじ部)138とからなるねじ送りにより弁軸125が回転しながら例えば上動せしめられ、それに伴い主弁体74のシール面74aが主弁シート8aから離れて(図20〜図23参照)弁口9を開くようにされている。
次に、上記電動弁4の主弁体74及び副弁体84周りの構成を図20〜図23を参照しながら説明する。
本実施形態の電動弁4において、主弁体74は、弁軸125の下部に連設された、該弁軸125より若干大径の係止用大径部74Cと、逆円錐台面からなるシール面74aを持つ主弁体部74Aと、該主弁体部74Aの下側に連設されて弁口9に挿通された逆円錐台状の先細り下部74Bとを有する。この弁軸125の下部及び主弁体74の外周側に、弁口9を開閉するための副弁体84が上下方向に摺動可能に配設されている。
副弁体84は、主弁体部74Aの外周側に(隙間を空けて)配在された大径弁体部(大径外挿部)84Aと、弁軸125の下部に摺動自在に外挿される小径外挿部84Bと、大径弁体部84Aと小径外挿部84Bとの間の、抜止係止部とばね受け部とを兼ねる(詳しくは、下面が抜止係止部とされ、上面がばね受け部とされる)円環状の段差(段丘)部84Cと、からなる段付き円筒状とされている。つまり、段差部84Cが主弁体74の係止用大径部74Cに抜止係止されるようになっている。ここでは、大径弁体部84A(のシール面(下端平坦面)84a)が前記弁座部8の上面に形成された平坦面からなる副弁シート8bに対して垂直方向に上下動して弁口9を開閉するようにされている。
また、副弁体84の段差部84Cと弁本体10に設けられた該段差部80Cより上側の不動部分であるガイドブッシュ126の下端部126aとの間には、副弁体84を常時下方(閉弁方向)に付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね73が縮装されている。
なお、副弁体84の小径外挿部84Bと弁軸125の下部との摺動面間にOリング等のシール部材を介装してもよい。
上記した如くの構成のもとでは、図22に示される如くに、閉弁動作が完了した状態、すなわち、主弁体74が主弁シート8aに着座して押し付けられ、副弁体84が副弁シート8bに着座して押し付けられ、共に閉弁しているとき(全閉時)には、係止用大径部74Cの上面と段差部84Cの下面との間には間隙Leが空けられる。
このような構成を有する本第4実施形態の電動弁4においても、図20〜図23を参照すればよくわかるように、第2実施形態の電動弁2と同様に、主弁体74の外周に、弁口9を主弁体74より先に閉弁する副弁体84が設けられているので、副弁体84が微開状態にあるとき、流体(冷媒)中に含まれる異物が副弁体84により堰き止められ、そこから副弁体84が閉弁すると流体(冷媒)が実質的に流れなくなるため、異物が主弁体74と主弁シート8aとの間に噛み込まれることはなく、したがって、主弁体74が閉弁して主弁シート8aに強く押し付けられても、主弁体74や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
また、異物は副弁体84と副弁シート8bとの間に噛み込まれるおそれがあるが、副弁体84は圧縮コイルばね73により付勢されているだけであるので、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体84と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、異物が副弁体84と副弁シート8bとの間に噛み込まれて、それらの間に隙間が生じても、主弁体74は閉弁しているので、弁漏れは生じない。
このように、本第4実施形態の直動式の電動弁4においても、流体(冷媒)中に含まれる異物が主弁体74と主弁シート8aとの間に噛み込まれてそれらに強く押し付けられるような事態を生じ難くでき、そのため、主弁シート8a、副弁シート8bやシ弁体74、副弁体84に傷、打痕等がつかないようにでき、その結果、弁漏れを効果的に防止して、閉弁の信頼性を向上させることができる。
[第5実施形態]
図24〜図27は、本発明に係る電動弁の第5実施形態の構成並びに動作説明に供される要部拡大縦断面図である。
図示第5実施形態の電動弁5は、主弁体及び副弁体周りを除く全体構成は上記第4実施形態の電動弁4と同じ(図19参照)であり、また、主弁体及び副弁体周りは図14〜図17に示される第3実施形態の電動弁3と類似した構成である。そのため、第3及び第4実施形態の電動弁3、4の各部に対応する部分並びに同様の機能を有する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては、主弁体及び副弁体周りを簡潔に説明する。
図示実施形態の電動弁5においては、上記第4実施形態の電動弁4とは逆、かつ、上記第3実施形態の電動弁3と同様の構成とされ、弁座部8の外周側(角部)に主弁シート8aが設けられ、弁座部8の内周側(角部)に副弁シート8bが設けられている。また、主弁体76が円筒状とされ、副弁体86が段付き逆円錐台状とされ、主弁体76(の主弁体部76Aの逆円錐台状のシール面76a)が副弁体86(の副弁体部86Aの逆円錐台状のシール面86a)より外周側(換言すれば、副弁体86が主弁体76より内側)に位置している。
詳細には、主弁体76は、円筒状胴部76Bと、この円筒状胴部76Bの下端部と内周突部とからなる逆円錐台状のシール面76aを有する主弁体部76Aと、弁軸125に形成された下端鍔状部125dに圧入等により固着された上端固定部76Cとを有する。ここでは、主弁体部76Aを構成する内周突部が、円筒状胴部76Bに摺動自在に内挿された副弁体86(の上部鍔状部86C)を抜止係止する抜止係止部となっている。
前記主弁体76の内周側には、副弁体86の上部が摺動自在に内挿されている。すなわち、副弁体86は、上から順に、前記主弁体70の円筒状胴部76Bに摺動自在に内挿された、抜止係止部とばね受け部とを兼ねる(詳しくは、下面が抜止係止部とされ、上面がばね受け部とされる)上部鍔状部86Cと、主弁体部76Aの内側に(隙間を空けて)配在された、逆円錐台状シール面86aが形成された副弁体部86Aと、該副弁体部86Aの下側に連設されて弁口9に挿通された逆円錐台状の先細り状下部86Bとを有する。また、弁軸125の下端鍔状部125d(主弁体76の上端固定部76Cに連結される部分)と副弁体86の上部鍔状部86Cとの間には、副弁体86を常時下方(閉弁方向)に付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね77が縮装されている。
上記した如くの構成のもとでは、図26に示される如くに、閉弁動作が完了した状態、すなわち、主弁体76が主弁シート8aに着座して押し付けられ、副弁体86が副弁シート8bに着座して押し付けられ、共に閉弁しているとき(全閉時)には、主弁体部76Aの内周突部(抜止係止部)の上面と上部鍔状部86Cの下面との間には間隙Lfが空けられる。
このような構成を有する本第5実施形態の電動弁5においても、図24〜図27を参照すればよくわかるように、第3実施形態の電動弁3と同様に、主弁体76の内周に、弁口9を主弁体76より先に閉弁する副弁体86が設けられているので、副弁体86が微開状態にあるとき、流体(冷媒)中に含まれる異物が副弁体86により堰き止められ、そこから副弁体86が閉弁すると流体(冷媒)が実質的に流れなくなるため、異物が主弁体76と主弁シート8aとの間に噛み込まれることはなく、したがって、主弁体76が閉弁して主弁シート8aに強く押し付けられても、主弁体76や主弁シート8aに傷、打痕等はつくことはない。
また、異物は副弁体86と副弁シート8bとの間に噛み込まれるおそれがあるが、副弁体86は圧縮コイルばね77により付勢されているだけであるので、その押し付け力はさほど強くなく、したがって、副弁体86と副弁シート8bに傷、打痕等はつかない。
また、異物が副弁体86と副弁シート8bとの間に噛み込まれて、それらの間に隙間が生じても、主弁体76は閉弁しているので、弁漏れは生じない。
このように、本第5実施形態の直動式の電動弁5においても、異物が主弁体76と主弁シート8aとの間に噛み込まれてそれらに強く押し付けられるような事態を生じ難くでき、そのため、主弁シート8a、副弁シート8bや主弁体76、副弁体86に傷、打痕等がつかないようにでき、その結果、弁漏れを効果的に防止して、閉弁の信頼性を向上させることができる。
なお、本発明に係る電動弁は、上記した各実施形態の構成に限られないことは勿論であり、例えば主弁体及び副弁体周りの構成等は様々に変更可能である。