JP6902398B2 - 導体形成用Sb系ガラス組成物及びその製造方法 - Google Patents
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1. 導体を形成するために用いるガラス組成物であって、モル%で、(1)a)Sb2O3:45〜90%及びb)B2O3:10〜55%を含み、(2)Sb2O3及びB2O3の合計量が80%以上であることを特徴とする導体形成用Sb系ガラス組成物。
2. モル%で、(1)c)SiO2及びZnOの少なくとも1種:合計0.1〜15%をさらに含み、(2)Sb2O3、B2O3ならびにSiO2及びZnOの少なくとも1種の合計量が90%以上である、前記項1に記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
3. カチオンの全量中におけるホウ素カチオンの含有率が40モル%以下である、前記項1又は2に記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
4. ガラス転移点が300℃以下である、前記項1〜3のいずれかに記載のSb系ガラス組成物。
5. シリコン太陽電池の導体を形成するために用いる、前記項1〜4のいずれかに記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
6. シリコン太陽電池がPERC型シリコン太陽電池であって、シリコン基板及びパッシベーション膜の双方に接触した電極を形成するために用いる、前記項5に記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
7. 前記項1〜6のいずれかに記載の導体形成用Sb系ガラス組成物を製造する方法であって、Sb(III)及びBを含む出発材料を850℃以下で溶融する工程を含む、導体形成用Sb系ガラスの製造方法。
12 パッシベーション層
13 貫通孔
14 アルミニウム電極
15 合金層
16 P+電界層
Sb2O3は、本発明ガラス組成物のガラスを構成する主成分である。Sb2O3は、B2O3とともにガラスを構成することによって、より低温での溶融が可能であり、密着性等にも優れたガラス組成物を提供することが可能となる。
B2O3は、ガラス形成酸化物であり、Sb2O3を主成分とする組成物をガラス化する役割を果たす成分である。
SiO2及びZnOは、Sb2O3を主成分とする組成物のガラス化を促進する任意成分である。
Al2O3は、本発明ガラス組成物においては悪影響を及ぼすおそれがある消極的な成分である。
本発明ガラス組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の成分が含有されていても良い。例えば、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、PbO、P2O5、GeO2、TiO2、ZrO2等の各種の酸化物が挙げられる。これらの酸化物(特にPbO)は、合計で0〜15モル%であることが好ましく、特に0〜1モル%であることがより好ましく、さらには0モル%であることが最も好ましい。
本発明ガラス組成物におけるガラス転移点(Tg)は、特に制限されないが、特に850℃以下での焼成を可能にするという点で通常は300℃以下であることが好ましく、特に250〜290℃であることがより好ましく、さらには260〜285℃であることが最も好ましい。
本発明ガラス組成物は、公知のガラス組成物の製造方法と同様の方法で製造することができる。材料としては、本発明におけるガラスの各成分の供給源となる化合物を出発材料として使用すれば良い。例えばB2O3のためにH3BO3、B2O3等を用いることができる。他の成分についても、各種酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等のように、ガラスの製造で通常に用いられる出発材料を採用することができる。また、例えばホウ酸亜鉛(2ZnO・3B2O3)等のように、1つの化合物で本発明ガラス組成物の構成成分の2成分以上の供給源となる化合物を使用することもできる。なお、Sb2O3については、3価のSbが好ましいので、出発材料として三酸化アンチモン(Sb2O3)を用いることが好ましい。
そして、これらを所定の割合で含有する混合物を出発材料として用いて混合物の溶融を行う。
第1工程では、意図するガラスの組成・比率となるように前記出発材料を秤量し、混合することにより混合物を調製する。この場合、各成分の原料の混合順序等は特に制限されず、同時に配合しても良く、特定の化合物順に配合しても良い。原料は、通常は粉末の形態でガラス溶融炉に供給される。そのための原料粉末は、各成分を含む原料を公知の方法で粉砕、混合等することにより得ることができる。
第2工程では、上記の混合物を溶融することにより溶融物を得る。溶融に際しては、原料の組成に応じてガラス溶融温度を設定すれば良い。本発明では、通常は900℃以下の範囲内で適宜設定すれば良いが、特に850℃以下とすることがより好ましく、またさらには600〜800℃とすることが最も好ましい。このように、本発明ガラス組成物の製造に際し、比較的低温で溶融することができるので、揮発等による組成のズレが生じにくくなり、設計通りのガラス組成を効率良く得ることができる。得られた溶融物は、必要に応じて、溶融物からそのまま粉末を製造する工程に供しても良い。例えば、溶融物を冷却ロールにて冷却しながらフレーク状粉末を得ることができる。また、溶融物をいったん冷却した後、必要に応じて粉砕、分級等の処理をすることにより粉末を得ることもできる。このように本発明のガラス組成物は、粉末状として好適に提供することができる。
本発明ガラス組成物を用いて導体を形成する場合、公知又は市販のガラス組成物と同様の方法で用いることができる。例えば、粉末状の本発明ガラス組成物(以下「本発明ガラス粉末」ともいう。)及び導電性粒子(導電性粉末)を含む導体形成用組成物に好適に使用することができる。このような導体形成用組成物も本発明に包含される。
導体(導電体)の形成に際しては、導体形成用組成物(好ましくは本発明液状組成物)による塗膜で導体パターンを基板(特にシリコン基板)上に形成する工程及び前記パターンを焼成する工程を含む製造方法によって導体を製造することができる。導体パターンを形成する方法は、公知の方法に従えば良く、例えば印刷法(スクリーン印刷等)をはじめとする公知のプロセスを採用することができる。
表1示す組成となるように出発材料を用いて秤量し、これらを均一に混合した後、白金質のルツボを用いて表1に示す温度で30分〜1時間溶融した。得られた融液をステンレス鋼製の冷却ロールにて急冷し、厚さ0.5〜1.0mmのガラスフレークを作製した。次いで、このガラスフレークを粉砕し、気流分級により、平均粒径(D50)1〜4μm、最大粒径10μm以下の粉末ガラスを得た。なお、粉末ガラスの粒径はレーザー散乱式粒度分布測定機を用いて測定し、それにより気流分級条件を求めた。
実施例及び比較例で調製されたガラス組成物について、(1)ガラス転移点(Tg)及び結晶化ピーク温度(Tp)、(2)吸湿性(耐湿性)、(3)低温溶融性、(4)密着性及び(5)塗膜の外観を下記の方法によって調べた。その結果を表1及び表2に示す。
各ガラスの粉末状試料の約50mgを白金セルに入れ、アルミナ粉末を標準試料として、大気雰囲気下に、示差熱分析装置(型名「TG−8120」、(株)リガク製)を用いて室温から20K/分の昇温速度で昇温することによりDTA曲線を得た。最初の吸熱ピークの開始点(外挿点)をガラス転移点(Tg)とした。また、前記DTA曲線を用い、そのTgより高温側に発現する一つ目の発熱ピークの傾きがゼロになる点(頂点)を結晶化ピーク温度(Tp)とし、Tp−Tgを算出した。なお、ガラス化しなかった場合は、この試験は中止した。
各ガラスの粉末状試料を大気中25℃で2時間放置した後、上記(1)と同じ装置にてTG−DTA測定し、DTA曲線上で90℃〜120℃に現れる吸熱ピークの有無で判断した。吸熱ピークが認められない場合を「○」、わずかに吸熱ピークが認められるものを「△」とし、明らかに大きな吸熱ピークとそれに伴うTG曲線状の重量減少が認められるものを「×」とした。
各ガラスの粉末状試料を蓋付きのるつぼに入れ、るつぼと蓋との隙間からヒュームが漏れ出さないように大気中で加熱したとき、溶融温度850℃以下で融液になるものを「○」とし、溶融温度850℃以下で融液にならないもの、一部融液になっても溶け残りの発生するのものを「×」とした。溶け残りの有無は目視にて評価した。850℃以下で融液になった場合でもるつぼと蓋との隙間からヒュームが漏れ出すものを「△」とした。なお、低温溶融性の評価が「×」である場合は、組成制御が困難になるので、それ以外の試験は中止した。
アルミニウム粉末76重量部及びビヒクル24重量部(エチルセルロースをターピネオールに11重量%溶解させたもの)からなるアルミニウムペーストを調製した。次いで、このアルミニウムペーストの固形分100重量部に対して実施例及び比較例のガラス粉末を1.0重量部添加することにより導体形成用ペースト組成物を調製した。この導体形成用ペースト組成物を用いて156mm□のSiN膜付き多結晶シリコンウエハのSiN膜面にスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷は、152mm□及び325メッシュのスクリーンを用いて、1.1±0.05gの塗布量となるように印刷した。その後、120℃のオーブンで乾燥させた。
次に、乾燥させたサンプルを大気中で焼成を行った。焼成は、焼成ゾーンが余熱ゾーンと本焼成ゾーンとの2ゾーンで構成されたビーム搬送式赤外焼成炉を用い、余熱ゾーンを350℃×30秒、本焼成ゾーンを820℃×4秒と設定した。この際、サンプルの基板裏面に熱電対を接触させてサンプルの温度を実測し、サンプルの実際の温度が758℃〜772℃になるように焼成した。
焼成後のサンプルについて、印刷面に市販の粘着テープ(スコッチ(登録商標)メンディングテープ No.810−118)を貼り付け、約1分放置した後、手指で粘着テープを剥がした。剥離した粘着テープを市販ノートの紙面に貼り付け、画像取り込みを行い、印刷層が付着した部分(剥離部)とそれ以外の部分(残部)が白黒に分かれるよう画像処理し、面積算出ソフトで剥離部の面積割合を算出し、さらに残部の面接割合を求めた。残部の面積割合が大きいほど、印刷層が上記シリコンウエハに良好に密着していることを示す。評価方法としては、残部の面接割合が50%以上を「○」とし、50%未満を「×」とした。
さらに、前記(4)で得られた焼成後の塗膜の外観を実体顕微鏡で15mm□の視野を観察した。これらの結果も併せて表1に示す。外観の評価は、アルミ玉の発生が認められないもの「○」、アルミ玉が発生しているものを「×」とした。
実施例5のガラス粉末について、低温焼成後の密着性を調べた。焼成ゾーンが余熱ゾーンと本焼成ゾーンとの2ゾーンで構成されたビーム搬送式赤外焼成炉を用い、余熱ゾーンを350℃×30秒、本焼成ゾーンを730℃×4秒と設定したほかは、試験例1(4)と同様にして焼成を行った。この際、サンプルの基板裏面に熱電対を接触させてサンプルの温度を実測し、サンプルの実際の温度が660℃〜678℃になるように焼成し、試験例1(4)と同様にしてパッシベーション膜との密着性を確認した。その結果、残部の面接割合が50%であり、700℃以下(特に690℃以下、とりわけ650〜680℃)という比較的低い温度での焼成でも高い密着性を実現できることが確認された。
Claims (7)
- 導体を形成するために用いるガラス組成物であって、モル%で、(1)a)Sb2O3:45〜90%及びb)B2O3:10〜55%を含み、(2)Sb2O3及びB2O3の合計量が80%以上であることを特徴とする導体形成用Sb系ガラス組成物。
- モル%で、(1)c)SiO2及びZnOの少なくとも1種:合計0.1〜15%をさらに含み、(2)Sb2O3、B2O3ならびにSiO2及びZnOの少なくとも1種の合計量が90%以上である、請求項1に記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
- カチオンの全量中におけるホウ素カチオンの含有率が40モル%以下である、請求項1又は2に記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
- ガラス転移点が300℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のSb系ガラス組成物。
- シリコン太陽電池の導体を形成するために用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
- シリコン太陽電池がPERC型シリコン太陽電池であって、シリコン基板及びパッシベーション膜の双方に接触した電極を形成するために用いる、請求項5に記載の導体形成用Sb系ガラス組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の導体形成用Sb系ガラス組成物を製造する方法であって、Sb(III)及びBを含む出発材料を850℃以下で溶融する工程を含む、導体形成用Sb系ガラスの製造方法。
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