JP6901714B2 - 脂質膜含有物を固定化するための化合物、当該化合物で修飾された基材、当該基材上に脂質膜含有物をパターニングする方法及び脂質膜含有物を当該基材上で単離する方法 - Google Patents

脂質膜含有物を固定化するための化合物、当該化合物で修飾された基材、当該基材上に脂質膜含有物をパターニングする方法及び脂質膜含有物を当該基材上で単離する方法 Download PDF

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Description

本発明は、脂質膜含有物を固定化するための化合物、当該化合物で修飾された基材、当該基材上に脂質膜含有物をパターニングする方法及び当該基材上で脂質膜含有物を単離する方法に関する。
生体内の組織では、複数種類の細胞が特定の位置に配置され、組織化することにより、正常な機能を発現している。このような生体内の組織に近い機能を発現する移植用組織や組織モデルの構築を可能とする、複数種類の細胞をそれぞれ任意の位置に配置する技術の開発が求められている。
また、多種類の細胞を配置した基材を用いることで、多種類の細胞サンプルに対する薬剤スクリーニングが一度に可能となる。したがって、複数種類の細胞をそれぞれ任意の位置に配置する技術により、アッセイのハイスループット化や試薬の節約が可能となる。
複数種類の細胞からなるパターンを作製可能とする技術として、複数種類の細胞特異性の高い抗体を用いる方法が知られている(非特許文献1)。
また、光照射によって細胞を自発的に接着可能とする機能性ポリマーを用いる方法が知られている(非特許文献2及び3)。
さらに、相補的なDNAを細胞及び基材上に修飾し、それらの相補性を利用して複数種類の細胞からなるパターンを作製する技術が知られている(非特許文献4)。
また、細胞に障害を与えることなく、当該細胞表面を修飾することができる生体適合性アンカーとして、BAM(Biocompatible Anchor for cell Membrane)が知られている(非特許文献5)。BAMは疎水性の脂肪族炭化水素基であるオレイル基と親水性基であるPEG基を有する両親媒性化合物である。BAMの疎水性部位が、脂質膜である細胞膜と非共有結合することで、当該細胞膜を修飾することが可能である。また、疎水性鎖と親水性鎖を持つ担体(BAMを含む)を基材に結合させて、細胞やリポソームを固定化できることが報告されている(特許文献1)。
また、癌は遠隔転移を起こすことが知られている。原発巣の一部の癌細胞が血管内に侵入し、血中循環癌細胞(CTC)として血液内を循環し、原発癌から離れた部位に転移巣を形成する。癌患者の死亡する原因の多くは遠隔転移である。したがって、癌患者の血液検体からCTCを早期に検出することによって、遠隔転移の有無や、原発癌に対する外科手術、放射線治療、分子標的薬剤療法、または化学療法の効果を判断することができ、ひいては癌患者の生存率の向上の延長に寄与することが可能となる。さらに、CTCを生きたまま単離し、培養を行うことで、CTCの解析が可能になると期待されている。
CTCの数は、血液に含まれる白血球細胞数と比較して非常に少なく、血液1mLあたり赤血球細胞50億個、白血球細胞300万〜1000万個に対し、CTCの数は10個程度である。そのため、CTCを検出するためには、大量の血球細胞と少数の癌細胞とが混合された状態の細胞群の中から、少数の癌細胞のみを何らかの方法を利用して濃縮し、さらに血球細胞と癌細胞とを何らかの方法を利用して識別しなければならない。
国際公開第2003/074691号
Lab Chip, 2010, 10, 3413-3421, 3413 Langmuir 2008, 24, 13084-13095 Biotechnology and Bioengineering, Vol. 103, No. 3, June 15, 2009, 552-561 Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 7378 -7380 Bio Techniques, 2003, Vol. 35, No. 5, 1014-1021
非特許文献1のように複数種類の細胞特異性の高い抗体を用いる方法は、高価な抗体を用いなければならない。また、抗体により特定の細胞のみを結合させるため、抗体と細胞の組み合わせを考慮する必要があり、煩雑な組み合わせの探索が必要となる。また、特異的な抗体が得られていない細胞もあるため、汎用性に欠ける。さらに、プロテアーゼ等の酵素や変性剤の混入等で容易に分解・変性するため、厳重な品質管理が必要となるなどの問題点がある。
また、非特許文献2及び3のように光照射によって細胞を自発的に接着可能とする機能性ポリマーを用いる方法では、細胞の接着性を利用するため、非接着性細胞や弱接着性細胞に適用することができない。また、一種類の細胞をパターン化するために数時間から一日以上必要であり、スループット性が低いという問題点がある。
また、非特許文献4のようにDNAの相補性を利用する方法では、事前に細胞表面にDNAを修飾する必要があるために、作業が煩雑になる。また、DNAはmgスケール以上の大量合成が難しいため、産業化が困難である。さらに、DNase等の酵素の混入で容易に分解するため、厳重な品質管理が必要となるなどの問題点がある。
また、血中に極めて少量しか含まれていないCTCを特異的に単離できる技術が求められている。また、多数の夾雑物を含む混合物の中から特定の脂質膜含有物を単離し得る技術が求められている。
従って本発明は、複数種類の細胞を基材上に迅速かつ簡便にパターニングする方法の提供を課題とする。さらに本発明は、細胞のみならず、その他の脂質膜含有物(例えば細胞小器官、小胞、ウイルス、リポソーム、ミセル及び脂質で被覆された量子ドット)のパターニングにも適用可能である方法の提供を課題とする。また本発明は、特定の脂質膜含有物を単離する方法を提供することも課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、光照射により、細胞をはじめとした脂質膜含有物を固定化する機能を有する新規化合物を開発した。当該化合物を表面に修飾した基材は、光照射を行うことにより、細胞の自発的な接着性を必要とせずに、任意の細胞を迅速に固定化できることが明らかとなった。一方、光照射を行っていない基材表面には細胞が固定化されない。また本発明者らは、当該基材表面に光照射と細胞播種とを繰り返すことにより、複数種類の細胞を迅速かつ簡便にパターニングできることを見出した。さらに本発明者らは、当該基材を使用することで特定の脂質膜含有物を選択的に単離し得ることを見出した。本発明は上記知見に基づく。
すなわち本発明は、以下の態様を有する。
[1]
以下の式(I)
Figure 0006901714
[式中、
1は、脂質膜含有物中の脂質膜と結合する脂質膜結合基であり、
2は、前記脂質膜結合基の脂質膜への結合を阻害する脂質膜結合阻害基であり、
3は、光反応基であり、
4は、親水性基であり、
5は、修飾対象基材への反応基であり、
6は、少なくとも3本の結合手を有する足場部位であり、
1及びL2は、リンカーであり、
1及びk2は、それぞれ独立して0又は1である]
で表される化合物であって、光反応により、脂質膜結合阻害基による結合阻害が解消されて、前記脂質膜結合基が脂質膜に結合可能となる、前記化合物。
[2]
前記脂質膜含有物が、細胞、細胞小器官、小胞、ウイルス、リポソーム、ミセル及び脂質で被覆された量子ドットからなる群から選択される、上記[1]に記載の化合物。
[3]
前記修飾対象基材が、ウシ血清アルブミン(BSA)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1つで被覆された基材である、上記[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]
1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよい、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の化合物。
[5]
3が、2−ニトロベンジル骨格、クマリン−4−イルメチル骨格、フェニルカルボニルメチル骨格、7−ニトロインドリノカルボニル骨格、アゾベンゼン骨格、フルギド骨格、スピロピラン骨格、スピロオキサジン骨格及びジアリールエテン骨格からなる群から選択される骨格を有する二価の基である、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の化合物。
[6]
4が、以下:
Figure 0006901714
[式中、
Zは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、かつ2≦n≦500であり、
左側の矢印は、A6への連結を示し、右側の矢印は、k2が0の場合にはA5への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示す]
で表される、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物。
[7]
5が、以下の置換基:
Figure 0006901714
[式中、
矢印は、k2が0の場合にはA4への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される]
からなる群から選択される、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の化合物。
[8]
1及びL2が、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよい、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の化合物。
[9]
6が、以下:
Figure 0006901714
[式中、
3、L4及びL5は、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよく、
3、k4及びk5は、それぞれ独立して0又は1であり、
(A1)、(A3)及び(A4)への矢印はそれぞれ、A1、A3及びA4への連結を示す]
で表される、上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の化合物。
[10]
以下の式(I−a):
Figure 0006901714
[式中、
1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
1〜L5が、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよく、
3が、ニトロベンゼン骨格、クマリン骨格、ヒドロキシフェナンシル骨格、ニトロインドリン骨格、アゾベンゼン骨格、フルギド骨格、スピロピラン骨格、スピロオキサジン骨格及びジアリールエテン骨格からなる群から選択される骨格を有する二価の基であり、
5が、以下の置換基:
Figure 0006901714
(式中、
矢印は、L2への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される)
からなる群から選択される]
で表される、上記[1]〜[9]のいずれか1つに記載の化合物。
[11]
以下の式(I−b):
Figure 0006901714
[式中、
1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500であり、
pは0〜8であり、
q及びsは、それぞれ独立して0〜7であり、
rは0〜10であり、
5が、以下の置換基:
Figure 0006901714
(式中、
矢印は、化合物の残りの部分への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される)
からなる群から選択される]
で表される、上記[1]〜[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[12]
以下の式(I−c)
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
で表される、上記[1]〜[11]のいずれか1つに記載の化合物。
[13]
以下の式(II−a)
Figure 0006901714
[式中、
1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群からから選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500であり、
pは0〜8であり、
qは、それぞれ独立して0〜7であり、
rは0〜10であり、
5が、以下の置換基:
Figure 0006901714
(式中、
矢印は、化合物の残りの部分への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される)
からなる群から選択される]
で表される、[1]〜[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[14]
以下の式(II−b)
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
で表される、[13]に記載の化合物。
[15]
以下の式(I−d)
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
または、以下の式(II−c)
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
で表される、[1]〜[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[16]
上記[1]〜[15]のいずれか1つに記載の化合物とその修飾対象基材とを反応させて得られた、脂質膜含有物を固定化するための基材。
[17]
以下の式(III)の基:
Figure 0006901714
[式中、
1〜A4、A6、L1、L2、k1及びk2は、[1]〜[15]のいずれか1項に定義された通りであり、
7は、式(III)のその他の部分と修飾対象基材とを連結する二価の基であるか、又は基材と非共有結合で連結可能な反応基であり、
矢印は、基材への共有結合又は非共有結合による連結を示す]
を有する、脂質膜含有物を固定化するための基材。
[18]
基材上に脂質膜含有物をパターニングする方法であって、以下のステップ:
(1)上記[16]又は[17]に記載の脂質膜含有物を固定化するための基材上において脂質膜含有物のパターンを形成する部分に光を照射して、当該部分の脂質膜結合基を脂質膜と結合可能な状態とし;
(2)前記脂質膜含有物を前記脂質膜結合基と反応させて前記脂質膜含有物のパターンを形成すること
を含む、前記方法。
[19]
以下のステップ:
(3)ステップ(2)で得られた基材を洗浄して、未反応の脂質膜含有物を基材から除去し;
(4)以前のステップで使用した脂質膜含有物とは異なる脂質膜含有物を使用して、ステップ(1)〜(3)を繰り返すことで、複数の異なる脂質膜含有物のパターンを形成すること
をさらに含む、[18]に記載の方法。
[20]
脂質膜含有物を単離する方法であって、以下のステップ:
(1)上記[16]又は[17]に記載の脂質膜含有物を固定化するための基材上に、脂質膜含有物を含む試料を適用し;
(2)基材上の前記脂質膜含有物の位置を顕微鏡観察に基づいて検出し;
(3)前記位置に光を照射して、前記位置の脂質膜結合基を脂質膜と結合可能な状態とし、基材上に前記脂質膜含有物を固定化し;
(4)ステップ(3)で得られた基材を洗浄して、基材に固定化されていない物質を基材から除去すること
を含む、前記方法。
本発明によれば、単一種類の細胞のみならず、複数種類の細胞も迅速かつ簡便にパターニングすることが可能である。また、本発明は細胞のみならず、その他の脂質膜含有物(例えば細胞小器官、小胞、ウイルス、リポソーム、ミセル及び脂質で被覆された量子ドット)のパターニングにも適用可能である。さらに、特定の脂質膜含有物を選択的に単離することも可能である。
図1は、高密度な一細胞アレイを作製するためのフォトマスクを示す。 図2は、基板上にBa/F3細胞が高密度に配置されたアレイの顕微鏡写真(蛍光、明視野、x4対物レンズ)である。 図3は、複数細胞集団の一細胞アレイ作製法の手順を示す。 図4は、EGFP及びCytoredで蛍光標識された複数細胞集団の一細胞アレイの顕微鏡写真である。 図5は、実施例5で使用された流路装置である。 図6は、複数細胞集団ラインパターニングを示す。 図7は、複数細胞集団の人型パターニングを示す。 図8は、化合物(I−c)で修飾された基板表面上での細胞培養における細胞増殖及び細胞生存率の評価結果を示す。 図9は、接着性細胞(HepG2細胞)の一細胞アレイパターニングの顕微鏡写真である。 図10は、初代培養細胞(NHDF細胞)の一細胞アレイパターニングの顕微鏡写真である。 図11は、ローダミンで標識されたリポソームのアレイパターニングの顕微鏡写真である。 図12は、ビオチンが修飾された脂質被覆量子ドットのヒト型パターニングを示す。 図13は、カルボン酸が修飾された脂質被覆量子ドットのヒト型パターニングを示す。 図14は、非接着性細胞(Ba/F3(KO))と接着性細胞(HEK293T(EGFP))との共ラインパターニングを示す。 図15は、ローダミンで標識されたリポソームと接着性細胞(HEK293T(EGFP))との共ラインパターニングを示す。 図16は、化合物(I−c)をコートしたマイクロ流路において、血中循環細胞(CTC)が捕捉及び単離されたことを示す。 図17は、化合物(II−b)で修飾された基板に、光照射によりBa/F3細胞を固定化できることを示す顕微鏡写真である。 図18は、脂質膜結合阻害基として機能し得る置換基の評価結果を示す。
本明細書において、「C7-22アルキル基」とは、炭素数7〜22の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基である。C7-22アルキル基の例としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、ノナデシル基、イコシル基、ヘニコサニル基、ドコサニル基及びそれらの異性体が挙げられる。
本明細書において、「C1-10アルキル基」とは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基である。C1-10アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基及びそれらの異性体が挙げられる。
本明細書において、「C1-10アルコキシ基」とは、酸素原子に上記C1-10アルキル基が置換された基である。C1-10アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基及びそれらの異性体が挙げられる。
本明細書において「ハロゲン」とは、ハロゲン原子の1価基であり、具体的には例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
本明細書において、C7-22アルキル基中において「隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよい」とは、炭素数7〜22の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基中に1〜3個の不飽和結合が含まれてもよいことを示す。ここで不飽和結合は二重結合又は三重結合のいずれかである。隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されたC7-22アルキル基の例としては、例えば、シス−9−ヘキサデセン−1−イル(パルミトレイル)基、トランス−9−オクタデセニル(エライジル)基、シス−9−オクタデセニル(オレイル)基、シス,シス−9,12−オクタデカジエニル(リノレニル)基、(9E,12E,15E)−オクタデカ−9,12,15−トリエニル(エライドリノレニル)基などが挙げられる。
本明細書において、「C6-14アリール基」とは、炭素数6〜14の芳香族環式基をいい、具体的には例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられる。
本明細書において、「C6-14アリールC7-22アルキル基」とは、上記「C6-14アリール基」の置換可能な部分が上記「C6-14アリール基」で置換された基である。C6-14アリールC7-22アルキル基の例としては、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、フェニルデシル基、フェニルウンデシル基、フェニルドデシル基、フェニルトリデシル基、フェニルテトラデシル基、フェニルペンタデシル基、フェニルヘキサデシル基、フェニルヘプタデシル基、フェニルオクタデシル基、フェニルノナデシル基、フェニルイコシル基、フェニルヘニコサニル基、フェニルドコサニル基、ナフチルヘプチル基、ナフチルオクチル基、ナフチルノニル基、ナフチルデシル基、ナフチルウンデシル基、ナフチルドデシル基、ナフチルトリデシル基、ナフチルテトラデシル基、ナフチルペンタデシル基、ナフチルヘキサデシル基、ナフチルヘプタデシル基、ナフチルオクタデシル基、ナフチルノナデシル基、ナフチルイコシル基、ナフチルヘニコサニル基、ナフチルドコサニル基、アントラセニルヘプチル基、アントラセニルオクチル基、アントラセニルノニル基、アントラセニルデシル基、アントラセニルウンデシル基、アントラセニルドデシル基、アントラセニルトリデシル基、アントラセニルテトラデシル基、アントラセニルペンタデシル基、アントラセニルヘキサデシル基、アントラセニルヘプタデシル基、アントラセニルオクタデシル基、アントラセニルノナデシル基、アントラセニルイコシル基、アントラセニルヘニコサニル基、アントラセニルドコサニル基などが挙げられる。
本明細書において、「C7-22アルキルC6-14アリール基」とは、上記「C6-14アリール基」の置換可能な部分が上記「C7-22アルキル基」で置換された基である。C7-22アルキルC6-14アリール基の例としては、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、トリデシルフェニル基、テトラデシルフェニル基、ペンタデシルフェニル基、ヘキサデシルフェニル基、ヘプタデシルフェニル基、オクタデシルフェニル基、ノナデシルフェニル基、イコシルフェニル基、ヘニコサニルフェニル基、ドコサニルフェニル基、ヘプチルナフチル基、オクチルナフチル基、ノニルナフチル基、デシルナフチル基、ウンデシルナフチル基、ドデシルナフチル基、トリデシルナフチル基、テトラデシルナフチル基、ペンタデシルナフチル基、ヘキサデシルナフチル基、ヘプタデシルナフチル基、オクタデシルナフチル基、ノナデシルナフチル基、イコシルナフチル基、ヘニコサニルナフチル基、ドコサニルナフチル基、ヘプチルアントラセニル基、オクチルアントラセニル基、ノニルアントラセニル基、デシルアントラセニル基、ウンデシルアントラセニル基、ドデシルアントラセニル基、トリデシルアントラセニル基、テトラデシルアントラセニル基、ペンタデシルアントラセニル基、ヘキサデシルアントラセニル基、ヘプタデシルアントラセニル基、オクタデシルアントラセニル基、ノナデシルアントラセニル基、イコシルアントラセニル基、ヘニコサニルアントラセニル基、ドコサニルアントラセニル基などが挙げられる。
本明細書において、「オキソ基」とは、それが結合する炭素原子と一緒になってカルボニル基を形成する基のことである。
本明細書において、「炭素数2〜4のオキシアルキレン基」としては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。
本明細書において、「C6-14アリーレン基」とは、炭素数6〜14のアリーレン基のことである。具体的には例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基などが挙げられる。
本明細書において、「C1-10アルキレン基」とは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキレン基のことである。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカレン基及びそれらの異性体が挙げられる。
本明細書において、C1-10アルキレン基について「前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよい」とは、例えば、以下のような構造をとり得ることを示す。
Figure 0006901714
[式中、
m1は0〜6であり、m2は0〜7であり、m3は0〜8であり、m4は0〜9であり、m5は0〜10であり、NHは、任意にN(C1-10アルキル)で置き換えられてもよい。]
本発明は、以下の式(I)
Figure 0006901714
[式中、
1は、脂質膜含有物中の脂質膜と結合する脂質膜結合基であり、
2は、前記脂質膜結合基の脂質膜への結合を阻害する脂質膜結合阻害基であり、
3は、光反応基であり、
4は、親水性基であり、
5は、修飾対象基材への反応基であり、
6は、少なくとも3本の結合手を有する足場部位であり、
1及びL2は、リンカーであり、
1及びk2は、それぞれ独立して0又は1である]
で表される化合物であって、光反応により、脂質膜結合阻害基による結合阻害が解消されて、前記脂質膜結合基が脂質膜に結合可能となる、前記化合物(以下、「本発明の化合物」とも呼ぶ)に関する。
本明細書中、「脂質膜含有物」とは、任意の脂質膜を含む物質のことである。ここで「脂質膜」とは膜状の脂質のことである。本明細書中、「脂質」とは、水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい物質群をいう。通常、脂質には、長鎖脂肪酸及びその誘導体、または類似体が含まれるが、本明細書においては、ステロイド、カロテノイド、テルペノイド、イソプレノイド、脂溶性ビタミンなどの有機化合物群もまた包含される。脂質としては、例えば、1)単純脂質(脂肪酸とアルコールとのエステルで中性脂質ともいう。例えば、油脂(トリアシルグリセロール)、蝋(ワックス、高級アルコールの脂肪酸エステル)、ステロールエステル、ビタミンの脂肪酸エステルなどが挙げられる);2)複合脂質(エステル結合あるいはアミド結合を有し、脂肪酸とアルコールのほかにリン酸、糖、硫酸、アミンなど極性基をもつ化合物のことである。例えばリン脂質(グリセロリン脂質及びスフィンゴリン脂質など)、糖脂質(グリセロ糖脂質及びスフィンゴ糖脂質など)、リポタンパク質、スルホ脂質などが含まれる);3)誘導脂質(単純脂質および複合脂質の加水分解によって生成する化合物のうち脂溶性のものをいい、脂肪酸、高級アルコール、脂溶性ビタミン、ステロイド、炭化水素などが含まれる)が挙げられるが、それらに限定されない。
脂質膜含有物としては特に限定されないが、脂質膜で被覆された構造体(例えば、細胞、細胞小器官、小胞、ウイルス、リポソーム、ミセル及び脂質で被覆された量子ドット)が挙げられる。細胞としては、例えば、動物細胞、プロトプラスト化された植物細胞、及び微生物などが挙げられる。細胞は、接着性細胞であっても非接着性細胞であってもよい。
本明細書中、「脂質膜結合基」とは、脂質膜含有物の脂質膜に対して非共有結合的に結合する基のことである。脂質膜結合基としては特に限定されないが、例えば、C7-30アルキル基(好ましくはC7-22アルキル基)、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-30アルキル基(好ましくはC6-14アリールC7-22アルキル基)、及びC7-30アルキルC6-14アリール基(好ましくはC6-14アリールC7-22アルキル基)などの疎水性基が挙げられる。ここで前記C7-30アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよい。脂質膜結合基としては、疎水性基が好ましい。また脂質膜結合基としては、隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC7-30アルキル基、隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC7-22アルキル基、又は隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC11-22アルキル基、又は隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC16-18アルキル基がより好ましい。また脂質膜結合基としては、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、シス−9−ヘキサデセニル(パルミトレイル)基、シス−8−ヘプタデセニル基、トランス−8−ヘプタデセニル基、トランス−9−オクタデセニル(エライジル)基、シス−9−オクタデセニル(オレイル)基、シス,シス−9,12−オクタデカジエニル(リノレニル)基、(9E,12E,15E)−オクタデカ−9,12,15−トリエニル(エライドリノレニル)基がさらに好ましく、シス−8−ヘプタデセニル基、オレイル基が特に好ましい。
本明細書中、「脂質膜結合阻害基」とは、脂質膜結合基の脂質膜への結合を物理的に又は化学的に阻害する基のことである。脂質膜結合阻害基の構造は、脂質膜結合基の構造と同一であっても異なってもよい。脂質膜結合阻害基としては、特に限定されないが、例えばC7-30アルキル基(好ましくはC7-22アルキル基)、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-30アルキル基(好ましくはC6-14アリールC7-22アルキル基)、及びC7-30アルキルC6-14アリール基(好ましくはC7-22アルキルC6-14アリール基)、コレステリル基などの疎水性基が挙げられる。ここで前記C7-30アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよい。脂質膜結合阻害基としては、疎水性基が好ましい。また脂質膜結合阻害基としては、隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC7-30アルキル基、隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC7-22アルキル基、又は隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC11-22アルキル基、又は隣接する炭素原子が1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよいC16-18アルキル基がより好ましい。また脂質膜結合阻害基としては、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、シス−9−ヘキサデセニル(パルミトレイル)基、シス−8−ヘプタデセニル基、トランス−8−ヘプタデセニル基、トランス−9−オクタデセニル(エライジル)基、シス−9−オクタデセニル(オレイル)基、シス,シス−9,12−オクタデカジエニル(リノレニル)基、(9E,12E,15E)−オクタデカ−9,12,15−トリエニル(エライドリノレニル)基がさらに好ましく、シス−8−ヘプタデセニル基、オレイル基が特に好ましい。
本明細書中、「光反応基」とは、光反応によって当該光反応基中の結合が切断されるか、又はその構造が変化する基のことである。
光反応によって脂質膜結合阻害基による物理的又は化学的結合阻害が解消されて、本発明の化合物中の脂質膜結合基は、脂質膜に結合可能となる。一の実施形態において、光反応基は、光反応によって、脂質膜結合阻害基と連結されたまま足場部位から切り出される。これにより、脂質膜結合阻害基による結合阻害が解消される。本実施形態において使用され得る光反応基は、足場部位から切り出される限り特に限定されないが、例えば、2−ニトロベンジル骨格、クマリン−4−イルメチル骨格、フェニルカルボニルメチル骨格又は7−ニトロインドリノカルボニル骨格を有する二価の基である。
本明細書中、「2−ニトロベンジル骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示し、L6はエチニレン基であるか、又は存在しない。]
2−ニトロベンジル骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「クマリン−4−イルメチル骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示し、L7は、C1-10アルキレン基であるか又は存在せず、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよい。]
クマリン−4−イルメチル骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「フェニルカルボニルメチル骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
フェニルカルボニルメチル骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「7−ニトロインドリノカルボニル骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
7−ニトロインドリノカルボニル骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
また別の実施形態において、光反応によって、光反応基の構造が変化し、それに伴って光反応基に連結した脂質膜結合阻害基と脂質膜結合基との間の距離が離れる。これにより、脂質膜結合阻害基による結合阻害が解消される。本実施形態において使用され得る光反応基は、光反応によって脂質膜結合阻害基による結合阻害を解消するものであれば特に限定されないが、例えば、アゾベンゼン骨格、フルギド骨格、スピロピラン骨格、スピロオキサジン骨格又はジアリールエテン骨格を有する二価の基である。
本明細書中、「アゾベンゼン骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示し、L8は、C1-10アルキレン基であるか、又は存在せず、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよい。]
アゾベンゼン骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「フルギド骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
フルギド骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「スピロピラン骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
スピロピラン骨格を有する二価の基としては、以下の骨格が好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「スピロオキサジン骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
スピロオキサジン骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「ジアリールエテン骨格を有する二価の基」とは、以下の構造又はその誘導体構造を有する二価の基である。
Figure 0006901714
[式中、XはS、NH、N(C1-10アルキル)又はOであり、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示し、k6は1〜6を示す。]
ジアリールエテン骨格を有する二価の基としては、以下のものが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k1が0の場合にはA2への連結を示し、k1が1の場合にはL1への連結を示す。]
本明細書中、「親水性基」とは、水溶性の化合物残基を含む二価の基であり、好ましくは水溶性の高分子化合物残基を含む二価の基である。そのような残基を与える化合物は特に限定されないが、例えばポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、ポリアクリル酸及びポリアクリルアミドなどが挙げられる。
本発明の化合物の「親水性基」は、好ましくは以下の構造を有する:
Figure 0006901714
[式中、
Zは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、かつ2≦n≦500であり、
左側の矢印は、A6への連結を示し、右側の矢印は、k2が0の場合にはA5への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示す。]
上記式において、Zはオキシエチレン基が好ましい。すなわち、親水性基は以下の2つの構造のいずれかであることが好ましい。
Figure 0006901714
[式中、
Zは、nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、かつ2≦n≦500であり、
左側の矢印は、A6への連結を示し、右側の矢印は、k2が0の場合にはA5への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示す。]
上記式において、nの数だけオキシアルキレン基が存在するが、このオキシアルキレン基は1種単独であってもよく、あるいは2種以上が組み合わされていてもよい。2種以上が組み合わされる場合には、その組み合わせ方に制限はない。またオキシアルキレン基はブロック状であってもランダム状であってもよい。全オキシアルキレン基に対するオキシエチレン基の比率は50〜100モル%である場合、良好な水溶性が得られる点で好ましい。
上記式において、nは45≦n≦500が好ましく、45≦n≦200がより好ましい。
本明細書中、「修飾対象基材への反応基」(以下、単に「反応基」とも呼ぶ)とは、修飾対象基材と共有結合的に又は非共有結合的に反応して、本発明の化合物を当該修飾対象基材上に固定化するための基である。反応基と修飾対象基材との反応が共有結合である場合、修飾対象基材は反応基と共有結合可能な官能基を少なくとも一つ有する。そのような共有結合可能な官能基としては、例えば以下のものが挙げられる。
Figure 0006901714
[式中、矢印は修飾対象基材との連結を示す。]
共有結合性の「修飾対象基材への反応基」としては、修飾対象基材に含まれる官能基と反応して共有結合を形成できる限り特に限定されないが、例えば、以下の置換基が挙げられる:
Figure 0006901714
[式中、
矢印は、k2が0の場合にはA4への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル、ハロゲン、C1-10アルコキシからなる群から選択される。]
この中でも、カルボキシル基及び以下の置換基が好ましい。
Figure 0006901714
本発明の化合物の「修飾対象基材への反応基」(以下、単に「反応基」とも呼ぶ。)を、修飾対象基材と非共有結合的に反応させて固定化する例として、例えば以下が挙げられる。
(i)本願発明の化合物の反応基として疎水性置換基を採用し、疎水性置換基を含む修飾対象基材との疎水性相互作用により固定化する場合。
(ii)本願発明の化合物の反応基としてポリペプチドや核酸を採用し、それらと結合可能な物質を含む修飾対象基材と反応させて固定化する場合(例えば、相補的なDNA鎖の組み合わせ;ビオチンとアビジンとの組み合わせなど)。
(iii)本願発明の化合物の反応基として超分子(例えばシクロデキストリン)を認識可能な小分子(例えばフェロセン)を採用し、超分子を含む修飾対象基材と反応させて固定化する場合。
本明細書中、本発明の化合物の「修飾対象基材」としては、特に限定されないが、例えば、基板(本発明の化合物が修飾されるべき部位がプレート状又はフィルム状のもの、例えばスライドガラス、ディッシュ、マイクロプレート、マイクロアレイ用基板)、担体(例えばビーズ)、繊維状構造物、管、容器(例えば試験管及びバイアル)などが挙げられる。修飾対象基材の原料としては、ガラス;セメント;陶磁器等のセラミックスもしくはファインセラミックス;ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートなどのポリマー樹脂;ポリペプチド及びタンパク質などの生体材料;シリコン;活性炭;多孔質ガラス;多孔質セラミックス;多孔質シリコン;多孔質活性炭;不織布;濾紙;メンブレンフィルター;金などの導電性材料、などが挙げられる。修飾対象基材の表面は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基などを導入するため、ポリ陽イオンなどのポリマーによる被覆処理、あるいは基材表面への導入置換基を有するシランカップリング剤による処理が施されていてもよい。あるいはプラズマ処理により反応性官能基が導入されていてもよい。本発明の化合物の「修飾対象基材」として、ウシ血清アルブミン(BSA)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1つで被覆された基材が好ましい。
本発明の化合物は、A2とA3との間にリンカーL1が存在してもよく、そしてA4とA5との間に、リンカーL2が存在してもよい。本明細書において「リンカー」とは、二つの官能基を連結するための二価の基である。リンカーとしては特に限定されないが、例えば、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基である。ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよい。
本発明の化合物中、L1とA2との間及びL1とA3の間、ならびにL2とA4の間及びL2とA5の間は、それぞれ独立して、アルキレン構造、アミド構造、エステル構造、アミノ構造、及びエーテル構造からなる群から選択される構造を有することが好ましい。
「リンカー」であるL1及びL2としては、例えば、以下の式:
Figure 0006901714
[式中、
m1は0〜6であり、m2は0〜7であり、m3は0〜8であり、m4は0〜9であり、m5は0〜10であり、NHは、任意にN(C1-10アルキル)で置き換えられてもよい]
で表される構造を有することが好ましい。
本明細書中、「足場部位」とは、少なくとも3本の結合手を有する化学構造のことである。当該足場部位が、脂質膜結合基、光反応基及び親水性基と連結することにより、本発明の化合物が形成される。足場部位としては特に限定されないが、例えば以下の構造を有する:
Figure 0006901714
[式中、
3、L4及びL5は、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよく、
3、k4及びk5は、それぞれ独立して0又は1であり、
(A1)、(A3)及び(A4)への矢印はそれぞれ、A1、A3及びA4への連結を示す。]
上記式において、L3とA1との間、及びL4とA4の間は、それぞれ独立して、アルキレン構造、アミド構造、エステル構造、アミノ構造、及びエーテル構造からなる群から選択される構造を有することが好ましい。
上記式において、L3、L4及びL5はとしては、例えば、以下の式:
Figure 0006901714
[式中、
m1は0〜6であり、m2は0〜7であり、m3は0〜8であり、m4は0〜9であり、m5は0〜10であり、NHは、任意にN(C1-10アルキル)で置き換えられてもよい]
で表される構造を有することが好ましい。
足場部位として、好ましくは、
Figure 0006901714
[式中、
3
Figure 0006901714
(式中、
m3は0〜8であり、
左側の矢印は脂質膜結合基への連結を示し、右側の矢印は足場部位の中心炭素への連結を示す)
であり、
4は、
Figure 0006901714
(式中、
m2は0〜7であり、
左側の矢印は足場部位の中心炭素への連結を示し、右側の矢印は親水性基への連結を示す)
であり、
5は、NHである]
である。
式(I)の好ましい化合物として、以下の式(I−a):
Figure 0006901714
[式中、
1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
1〜L5が、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよく、
3が、ニトロベンゼン骨格、クマリン骨格、ヒドロキシフェナンシル骨格、ニトロインドリン骨格、アゾベンゼン骨格、フルギド骨格、スピロピラン骨格、スピロオキサジン骨格及びジアリールエテン骨格からなる群から選択される骨格を有する二価の基であり、
5が、以下の置換基:
Figure 0006901714
[式中、
矢印は、L2への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル、ハロゲン、C1-10アルコキシからなる群から選択される)
からなる群から選択される]
で表される化合物が挙げられる。
式(I)のより好ましい化合物として、以下の式(I−b):
Figure 0006901714
[式中、
1及びA2は、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500であり、
pは0〜8であり、
q及びsは、それぞれ独立して0〜7であり、
rは0〜10であり、
5は、以下の置換基:
Figure 0006901714
(式中、
矢印は、化合物の残りの部分への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル、ハロゲン、C1-10アルコキシからなる群から選択される)
からなる群から選択される]
で表される化合物が挙げられる。
式(I)のさらに好ましい化合物として、以下の式(I−c):
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
で表される化合物が挙げられる。
また、式(I)の好ましい化合物として、以下の式(II−a):
Figure 0006901714
[式中、
1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群からから選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500であり、
pは0〜8であり、
qは、それぞれ独立して0〜7であり、
rは0〜10であり、
5が、以下の置換基:
Figure 0006901714
(式中、
矢印は、化合物の残りの部分への連結を示し、
Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される)
からなる群から選択される]
で表される化合物が挙げられる。
式(II-a)の好ましい化合物として、以下の式(II−b):
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
で表される化合物が挙げられる。
また、式(I)の好ましい化合物として、以下の式(I−d)の化合物及び式(II−c)の化合物が挙げられる。
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である。]
Figure 0006901714
[式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である。]
一般的製造法
式(I)で示される化合物は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適応して合成することができる。以下に代表的な製造法を例示するが、以下に記載の方法のみに限定されるものではない。なお、官能基の種類によっては、当該官能基を原料もしくは中間体の段階で適当な保護基、すなわち容易に当該官能基に転化可能な基に変えておくことが製造技術上効果的な場合があり、必要に応じて保護基を除去し、所望の化合物を得ることができる。このような官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等を挙げることができ、それら保護基としては例えば、グリーン(Greene)及びウッツ(Wutt)著プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス 第3版「Protective Groups in Organic Synthesis (third edition)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。出発原料及び反応試薬は、公知の化合物であるか、又は公知化合物から有機化学の分野で周知の方法に従って容易に製造することができる。
式(I)に含まれる、式(I−b)で示される化合物は、以下のスキーム1で概説されるように調製され得る。なお以下のスキーム中の記号は、上記のものと同一である。
Figure 0006901714
工程1
化合物1のアミノ基をN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである化合物2と反応させて、化合物3を製造することができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリルである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1時間〜7日間、好ましくは1時間〜72時間である。
本工程は、A1−C(O)OHのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの代わりに、別の活性化剤を用いて得られた活性化エステルを用いて行うこともできる。そのような活性化剤は特に限定されないが、例えば、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド、クロロぎ酸4−ニトロフェニル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールが挙げられる。
工程2
化合物3のカルボキシル基をN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させて、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルである化合物4を製造することができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくはジクロロメタンである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1時間〜3日間、好ましくは1時間〜24時間である。
なお、工程2において化合物3のカルボキシル基をN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの代わりに、別の活性化剤を用いて得られた活性化エステルを用いて、その後の工程3に付すこともできる。行うこともできる。そのような活性化エステルは特に限定されないが、例えば、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド、クロロぎ酸4−ニトロフェニル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールや1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールが挙げられる。
工程3
N−ヒドロキシスクシンイミドエステルである化合物4を化合物5のアミノ基と反応させて、化合物6を製造することができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくはジクロロメタンである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1時間〜3日間、好ましくは1時間〜24時間である。
工程4
化合物6のアミノ基の保護基であるBoc基を、酸性条件下で脱保護して、化合物7を得ることができる。本工程で用いる酸としては、特に制限はないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸が挙げられる。好ましくは、トリフルオロ酢酸もしくは塩酸である。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくはジクロロメタン、もしくはメタノールである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1時間〜3日間、好ましくは1時間〜24時間である。
工程5
化合物7と8とを塩基存在下で縮合して、化合物9を製造することができる。本工程で用いる塩基としては、特に制限はないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンが挙げられる。好ましくは、トリメチルアミン又はトリエチルアミンである。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくはジクロロメタンである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1時間〜7日間、好ましくは12時間〜72時間である。
工程6
化合物9のカルボキシル基を活性化剤により活性化して、修飾対象基材への反応基A5を有する式(I−b)の化合物を製造することができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくはジクロロメタンである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1時間〜3日間、好ましくは1時間〜24時間である。例えば、A5がN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである場合、上記工程2と同様に製造することができる。
上記スキーム1中の化合物8は、例えば以下のスキーム2に従って製造され得る。
Figure 0006901714
工程7
化合物10のカルボキシル基を化合物11のアミノ基を、縮合剤存在下で反応させて、化合物12を製造することができる。本工程で用いる縮合剤としては、特に制限はないが、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスジメチルアミノホスホニウム塩、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。好ましくは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩である。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくはテトラヒドロフラン、もしくはジクロロメタンである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、1時間〜3日間、好ましくは1時間〜24時間である。
工程8
化合物12のヒドロキシル基を、塩基存在下、クロロギ酸4−ニトロフェノールと反応させて式8の化合物を製造することができる。本工程で用いる塩基としては、特に制限はないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンが挙げられる。好ましくは、トリエチルアミンである。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、又は、それらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくはテトラヒドロフランである。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、−78〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は、通常、5分〜3日間、好ましくは15分〜24時間である。
また、式(II−b)の化合物は、上記スキーム1中の化合物8を以下のスキーム3に従って製造され得る化合物16と置き換えることで製造され得る。
Figure 0006901714
上記スキーム3の工程9は、上記スキーム1の工程1と同様に行うことができる。また、上記工程10は上記スキーム2の工程8と同様に行うことができる。化合物13は、例えば本願実施例に記載の方法で製造することができる。
本明細書中の各反応において、加熱を伴う反応は、当業者にとって明らかなように、水浴、油浴、砂浴又はマイクロウェーブを用いて行なうことができる。
本明細書中の各反応において、適宜、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール等)に担持させた固相担持試薬を用いてもよい。
以上のようにして得られた式(I)の化合物及び各中間体は、抽出、結晶化、再結晶、透析、各種クロマトグラフィーなどの通常の有機合成操作により単離精製される。
本発明の一態様は、本発明の化合物とその修飾対象基材とを反応させて得られた、脂質膜含有物を固定化するための基材である(以下、「本発明の基材」とも呼ぶ)。本発明の基材の形態は特に限定されないが、例えば、基板(本発明の化合物が修飾されるべき部位がプレート状又はフィルム状のもの、例えばスライドガラス、ディッシュ、マイクロプレート、マイクロアレイ用基板)、担体(例えばビーズ)、繊維状構造物、管、容器(例えば試験管及びバイアル)などが挙げられる。修飾対象基材の原料としては、ガラス;セメント;陶磁器等のセラミックスもしくはファインセラミックス;ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートなどのポリマー樹脂;ポリペプチド及びタンパク質などの生体材料;シリコン;活性炭;多孔質ガラス;多孔質セラミックス;多孔質シリコン;多孔質活性炭;不織布;濾紙;メンブレンフィルター;金などの導電性材料、などが挙げられる。修飾対象基材の表面は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基などを導入するため、ポリ陽イオンなどのポリマーによる被覆処理、あるいは基材表面への導入置換基を有するシランカップリング剤による処理が施されていてもよい。あるいはプラズマ処理により反応性官能基が導入されていてもよい。
一の実施形態において、本発明の化合物とその修飾対象基材との反応は、修飾対象基材表面を本発明の化合物と接触させることによって行われる。当該接触により、本発明の化合物の「修飾対象基材への反応基」が修飾対象基材と非共有結合的に反応して固定化され、脂質膜含有物を固定化するための基材が調製される。当該反応において、本発明の化合物とその修飾対象基材との反応で用いる溶媒の種類は、反応に関与しない溶媒であれば特に制限されないが、例えばリン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、グッドの緩衝液等の緩衝液もしくはその等張液;又はアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒;又は前記緩衝液若しくは等張液と前記有機溶媒との混合液を用いることができる。修飾対象基材を損傷・変性させないために、本発明の化合物を溶解しやすい有機溶媒(例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド)に溶解した後に、前記緩衝液若しくは等張液で充分に希釈した溶液を使用することが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、例えば、−78〜200℃、さらに0〜100℃が好ましい。反応時間は通常は1分〜72時間程度であり、30分〜24時間が好ましい。反応後、基材を水で洗浄することが好ましい。
他の実施形態において、本発明の化合物とその修飾対象基材との反応は、修飾対象基材と本発明の化合物とを混合することによって行われる。当該混合は、例えば基材原料を本発明の化合物と混合し、当該混合物を用いて基材を製造する場合も含む。この場合、基材原料と本発明の化合物との混合工程時に両者が反応してもよいし、混合工程後、基材の製造工程時に両者が反応してもよい。混合工程は、基材原料と本発明の化合物とを固体状態で混合することにより行われてもよいし、本発明の化合物を溶媒(例えば上記の水性溶媒及び/又は有機溶媒)に溶解後、得られた溶液と基材原料とを混合することにより行われてもよい。基材の製造工程は、その基材の製造業者にとって周知の一般的な方法により行われ得る。
本発明の一態様は、以下の式(III)の基:
Figure 0006901714
[式中、
1〜A4、A6、L1、L2、k1及びk2は、上の本発明の化合物で定義された通りであり、
7は、式(III)のその他の部分と基材とを連結する二価の基であるか、又は基材と非共有結合で連結可能な反応基であり、
矢印は、基材への共有結合又は非共有結合による連結を示す]
を有する、脂質膜含有物を固定化するための基材に関する。以下で「本発明の式(III)の基を有する基材」とも呼ぶ。
本発明の式(III)の基を有する基材の形態及び原料は、「本発明の基材」の形態及び原料として上で例示したものであってもよい。
本発明の式(III)の基を有する基材において、式(III)のその他の部分と基材とを連結する二価の基とは、特に限定されないが、例えば本発明の化合物中の共有結合性の「修飾対象基材への反応基」と修飾対象基材に含まれる官能基との反応により形成された二価の基が挙げられる。共有結合性の「修飾対象基材への反応基」としては、本発明の化合物に関して上で例示したものであってもよい。
本発明の式(III)の基を有する基材において、基材と非共有結合で連結可能な反応基とは、特に限定されないが、例えば上記の、本発明の化合物中の「修飾対象基材への反応基」を修飾対象基材と非共有結合的に反応させて固定化する例において挙げられたものであってもよい。
本発明の式(III)の基を有する基材は、例えば、本発明の化合物とその修飾対象基材とを反応させて得ることができる。その反応条件は、例えば上記した「本発明の基材」の調製方法が適用され得る。
本発明の一態様は、基材上に脂質膜含有物をパターニングする方法であって、以下のステップ:(1)本発明の基材上において脂質膜含有物のパターンを形成する部分に光を照射して、当該部分の脂質膜結合基を脂質膜と結合可能な状態とし;(2)前記脂質膜含有物を前記脂質膜結合基と反応させて前記脂質膜含有物のパターンを形成すること、を含む、前記方法に関する(以下、「本発明のパターニング方法」とも呼ぶ)。
本明細書中「パターニング」とは、基材上を局所的に改質し、脂質膜含有物を当該基材上の所望の位置に配置し、固定化することをいう。パターニングにおいて、基材上に単一種類の脂質膜含有物を特定のパターンで配置してもよく、複数種類の脂質膜含有物を特定のパターンで配置してもよい。パターンの形状は、特に限定されないが、例えば脂質膜含有物を一定の間隔を空けて配置してもよい。この場合、脂質膜含有物を配置する場所の個数に制限はなく、たとえ一点であっても「パターニング」に含まれる。また、パターンの形状は、脂質膜含有物を連続的に配置してもよい。
上記ステップ(1)において、照射する光の波長は、本発明の化合物中の光反応基の種類に応じて決めればよく、通常、157〜600nmの範囲の波長、好ましくは250〜450nm付近の波長の光を照射する。しかし、多光子吸収により光反応を行う場合は、上記よりも長波長の光を用いることも可能である。光源は太陽光、水銀灯などの電灯光、レーザー光(半導体レーザー、固体レーザー、ガスレーザー)、発光ダイオードの発光、エレクトロルミネッセント素子の発光などが利用できる。光照射の方法は、光源からの光を必要に応じて適当なフィルターを介して基材表面に均一に照射することもできるし、いわゆるマスクを用いて所望の形状のパターン露光をしてもよい。あるいは、光をレンズや鏡を用いて集光し、微細な形状に照射してもよい。あるいは、集光した光線を走査露光してもよい。パターン露光の場合、マスク(レチクル)とワーク(試料)を接触させて露光する露光形式であるコンタクト露光で行われてもよい。また、マスク(レチクル)とワーク(試料)の隙間を数μmから数十μm程度に設定して露光する非接触の露光方式であるプロキシミティ露光で行われてもよい。さらには、液晶やデジタルミラーデバイスで作製した像をワーク表面に投影する投影露光法(マスクレス露光法)を用いてもよい。反応温度は、特に限定されないが、通常−78〜200℃であり、0〜100℃が好ましく、細胞等の生物試料を含む水性媒体がワーク上に存在する場合は、4〜50℃がより好ましい。光照射エネルギーは、本化合物で修飾された基材表面が脂質膜含有物を固定化する機能を発揮できる程度であればよく、通常は0.001〜1000J/cm2であり、0.01〜100J/cm2が好ましい。
上記ステップ(2)における反応は、通常は−78〜200℃で、好ましくは0〜100℃で行い、細胞等の生物試料を含む水性媒体がワーク上に存在する場合は、4〜50℃がより好ましい。通常は1秒間〜120分間で、好ましくは15秒間〜30分間行う。
上記ステップ(1)及び(2)を繰り返すことで、基材上に複数の異なる脂質膜含有物を、迅速かつ簡便にパターニングすることが可能である。ステップ(2)の終了後、ステップ(1)を再度行う前に、未反応の脂質膜含有物を基材から除去するための洗浄ステップが行われてもよい。
一の実施形態において、本発明のパターニング方法は、以下のステップ:(3)ステップ(2)で得られた基材を洗浄して、未反応の脂質膜含有物を基材から除去し;(4)以前のステップで使用した脂質膜含有物とは異なる脂質膜含有物を使用して、ステップ(1)〜(3)を繰り返すことで、複数の異なる脂質膜含有物のパターンを形成すること、をさらに含んでもよい。
本発明の一態様は、脂質膜含有物を単離する方法であって、以下のステップ:(1)「本発明の基材」又は「本発明の式(III)の基を有する基材」に、脂質膜含有物を含む試料を適用し;(2)基材上の前記脂質膜含有物の位置を顕微鏡観察に基づいて検出し;(3)前記位置に光を照射して、前記位置の脂質膜結合基を脂質膜と結合可能な状態とし、基材上に前記脂質膜含有物を固定化し;(4)ステップ(3)で得られた基材を洗浄して、基材に固定化されていない物質を基材から除去することを含む、前記方法に関する。(以下、「本発明の単離方法」とも呼ぶ)。
本発明の単離方法で単離されるべき脂質膜含有物は、特に限定されないが、例えば血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells: CTC)が挙げられる。
本発明の単離方法で単離されるべき脂質膜含有物の顕微鏡観察に基づく検出は、脂質膜含有物を標識することなく、単離されるべき脂質膜含有物の特有の形態や特性などに基づいて行われても良い。また、単離されるべき脂質膜含有物を標識して当該標識に基づいて行われても良い。
本発明の単離方法におけるステップ(2)の光照射条件、及び脂質膜含有物の固定化条件は、本発明のパターニング方法のステップ(1)及び(2)と同様の条件で行い得る。
以下に示す実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
なお、下記実施例中で用いられている略号は下記の意味を示す。
1H-NMR: プロトン核磁気共鳴スペクトル
APTES: 3-アミノプロピルトリエトキシシラン
BOC: N-tert-ブトキシカルボニル
BSA: ウシ血清アルブミン
CDCl3: 重水素化クロロホルム
CHCl3: クロロホルム
DCC: N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM: ジクロロメタン
DMEM: ダルベッコ改変イーグル培地
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO: ジメチルスルホキシド
eq: 化学当量
Et3N: トリエチルアミン
FBS: ウシ胎児血清
MeOH: メタノール
MW: 分子量
NHS: N-ヒドロキシスクシンイミド
PBS: リン酸緩衝生理食塩水
PEG: ポリエチレングリコール
Ph: 位相差顕微鏡
PL: 光切断性リンカー (Photo cleavable linker), 4-[4-(1-ヒドロキシ-エチル)-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ] 酪酸
Rf: 保持因子
rpm: 回毎分
TFA: トリフルオロ酢酸
THF: テトラヒドロフラン
TLC: 薄層クロマトグラフィー
WSC: 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
実施例1
式(I−c)の化合物の製造
Figure 0006901714
[式中、nは72である。]
(1)化合物1cの製造
Figure 0006901714
50mLナスフラスコ中にオレイルアミン(MW: 267.5, 264.0 mg, 987.0 μmol, 2.01 eq)と、4-[4-(1-ヒドロキシ-エチル)-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ] 酪酸 (以下、「Photo cleavable linker」又は「PL」とも呼ぶ) (MW: 299.28, 143.8 mg, 480.5 μmol, 1.0 eq)を入れ、乾燥THF 5 mLを入れ撹拌した。WSC (MW: 191.7, 268.7 mg, 1401.6 μmol, 2.92 eq)、NHS (MW: 115.1, 97.3 mg, 1.76 eq)、乾燥Et3N 3滴を入れ、17時間反応させた。TLC(CHCl3:MeOH=6:1)により、PL (Rf: 0.4)のスポットの消失により反応の完了を確認した。減圧乾燥したのち、直径3.0 cmのカラム管に高さ10 cmまでシリカゲルを詰め、反応物をCHCl3 3 mLでロードし、カラム精製した。減圧乾燥により、オイル状の黄色固体を得た。1H-NMRにより解析を行った。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.40 (br m, CH3CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2, 22H); 1.47 (tt, CH2CH2NH, 2H); 1.56 (d, CH(OH)CH3, 3H); 1.93-2.08 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.20 (tt, OCH2CH2, 2H); 2.40 (t, C(=O)CH2, 2H); 3.23 (dt, NHCH2, 2H); 3.98 (s, OCH3, 3H); 4.12 (t, OCH2, 2H); 5.29-5.43 (br m, CH=CH, 2H); 5.58 (m, CHOH, 1H); 7.30 (s, aromatic CH-m-NO2, 1H); 7.58 (s, aromatic CH-O-NO2, 1H).
(2)化合物2cの製造
Figure 0006901714
50mL ナスフラスコ中に化合物1 (MW: 548.77, 261.0 mg, 475.6 μmol, 1 eq)を入れ、減圧乾燥した。乾燥DCM 2 mLを入れ撹拌した。乾燥Et3N (MW: 101.19, d=0.726, 200 μL, 145.2 mg, 1.435 mmol, 3.0 eq), クロロギ酸4-ニトロフェノール(MW: 201.56, 115.0 mg, 570.7 μmol, 1.2 eq)を入れて30分後、TLC(CHCl3:MeOH=24:1)によって確認したところ、化合物1のスポット(Rf: 0.33)はほぼ消失しており、反応の完了を確認した。直径3.0 cmのカラム管に高さ15 cmまでシリカゲルを詰め、反応物をCHCl3 2.5 mLでロードし、カラム精製した。減圧乾燥し酢酸エチルによる共沸により、固体-ロウ状の黄色物質を得た。1H-NMRにより解析を行った。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.40 (br m, CH3CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2, 22H); 1.48 (tt, CH2CH2NH, 2H); 1.78 (d, CH(O)CH3, 3H); 1.93-2.08 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.21 (tt, OCH2CH2, 2H); 2.39 (t, C(=O)CH2, 2H); 3.25 (dt, NHCH2, 2H); 4.00 (s, OCH3,3H); 4.14 (t, OCH2, 2H); 5.30-5.42 (br m, CH=CH, 2H); 6.54 (q, CH3CHO, 1H); 7.11 (s, aromatic CH-m-NO2, 1H); 7.35 (d, aromatic CH-o-NO2, 2H); 7.62 (s, aromatic CH-o-NO2, 1H); 8.26 (d, aromatic CH-m-NO2, 2H).
(3)化合物3cの製造
Figure 0006901714
50mL ナスフラスコ中にオレイン酸NHS (MW: 379.53, 104.0 mg, 274.0 μmol, 1.5eq)、モノBoc-Lys-OH (MW: 246.3, 45.0 mg, 182.7 μmol, 1.0eq)、を入れ、減圧乾燥後、乾燥DMF 2 mLを入れた。30.5時間反応し、TLC(CHCl3:MeOH=3:1)で確認したところ、ニンヒドリンによりモノBoc-Lys-OH (Rf: 0.0)が検出されなかったため、反応を終えた。真空減圧により溶媒を除去した後、ナスフラスコをドライアイス/MeOHで冷凍下、MeOHで共沸した。ヘキサン4 mL+酢酸エチル4 mLに溶解後、MilliQ水 8 mLで分液ロートを用いて2回洗浄した。有機層を減圧乾燥し、直径1.5 cmカラム管を使い、CHCl3:MeOH= 12:1を展開溶媒として、フラッシュカラムを行った。TLC(CHCl3:MeOH= 6:1)において、ニンヒドリンによる染色とライターによる加熱で出現するRf: 0.4のスポットの化合物を回収し、減圧乾燥した。液状透明の化合物が得られ、CDCl3溶媒で1H-NMRを測定した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.40 (br m, CH3CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2, 22H); 1.42 (m, NHCH2CH2CH2, 2H); 1.45 (s, C(CH3)3, 9H); 1.54 (m, NHCH2CH2, 2H); 1.71 (m, NHCHCH2, 2H); 1.87 (m, CH2CH2C(=O), 2H); 1.93-2.08 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.17 (t, CH2C(=O), 2H); 3.25 (dt, NHCH2, 2H); 3.73 (dt, NHCHC(=O), 1H); 5.20-5.40 (br m, CH=CH, 2H).
(4)化合物4cの製造
Figure 0006901714
50mLナスフラスコ中に化合物3c(MW: 510.75, 95.5 mg, 187.8 μmol, 1.0 eq)、NHS (MW: 115.1, 34.6 mg, 300.6 μmol, 1.6 eq)を入れ、減圧乾燥後、乾燥DCM 2 mLを入れた。WSC (MW: 191.7, 68.5 mg, 357.3 μmol, 1.9eq)を入れ、1時間反応させた。TLC(CHCl3:MeOH=12:1)で確認したところ、ニンヒドリンによる染色とライターによる加熱により化合物3(Rf: 0.25)の消失と目的物(Rf: 0.45)の出現が確認されたため、反応を終えた。反応液を分液ロートに入れ、8 mLのDCMで洗い込み、10 mLのMilliQ水で一回洗浄した。DCM層を減圧乾燥したところ、透明粘性液体を得た。CDCl3溶媒で1H-NMRを測定した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.40 (br m, CH3CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, 20H); 1.46 (s, C(CH3)3, 9H); 1.52-1.72 (br m, NHCH2CH2CH2CH2, 6H); 1.91 (m, CH2CH2C(=O), 2H); 2.01 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.19-3.35 (m, NHCH2, 2H); 3.72 (m, NHCHC(=O), 1H); 5.34 (m, CH=CH, 2H).
(5)化合物5cの製造
Figure 0006901714
50mL ナスフラスコ中に化合物4c(MW: 607.82, 40.0 mg, 65.8 μmol, 1.2eq)、Cl-NH3 +-PEG-COOH (MW: 3400, 186.2 mg, 54.8 μmol, 1.0eq)を入れ、減圧乾燥後、乾燥DCM 2 mLを入れた。乾燥Et3N (MW: 101.19, d=0.726, 40μL, 29.0 mg, 287.0 μmol, 5.2 eq)を入れ、反応を開始した。17時間後、TLC(CHCl3:MeOH=3:1)とニンヒドリンにより、Cl-NH3 +-PEG-COOHのスポット(Rf: 0.34 ブロード)の消失を確認し、減圧乾燥した。撹拌中のジエチルエーテル40 mLに2.0 mLのDCMに反応物を溶解して滴下した。10000 rpm, 15分 遠心し、デカンテーションにより上清を除去したのち、減圧乾燥したところ薄黄色固体を得た。1H-NMRにより解析を行った。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.35 (br m, CH3CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, 20H); 1.38-1.40 (br m, CH2CH2C(=O), NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.44 (s, C(CH3)3, 9H); 1.57-1.69 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, 4H); 1.73-1.86 (br m, CH2C(=O)NHCH2CH2, 4H); 2.01 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.15 (t, CH2CHC(=O)NH, 2H); 2.32 (t, CH2C(=O)OH, 2H); 3.23 (m, CH2C(=O)NHCH2, 2H); 3.33 (s, CHC(=O)NHCH2, 2H); 3.47 (t, CHC(=O)NH, 1H); 3.50-3.80 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 5.34 (m, CH=CH, 2H).
(6)化合物6cの製造
Figure 0006901714
50mL ナスフラスコ中に化合物5c (MW: 3856.27, 163.2 mg, 42.3 μmol, 1.0 eq)を入れ、減圧乾燥後、乾燥DCM 4.9 mLを入れた。TFAを0.1 mL入れ、1時間反応、0.4 mLのTFAを加えて1時間反応させ、さらに50℃で15分反応させた。減圧乾燥し、乾燥DCM 4mLに溶解し、TFA 2 mLを入れ、さらに2時間反応させた。一晩減圧乾燥を行い、撹拌中のジエチルエーテル40 mLに、1.5 mLのDCMに溶解して滴下した。12000 rpm, 15分で遠心後、上清をデカンテーションにより除去し、減圧乾燥を行ったところ薄黄色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.38 (br m, CH3CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, 20H); 1.38-1.48 (br m, CH2CH2C(=O), NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.53-1.72 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.73-1.86 (br m, CH2C(=O)NHCH2CH2, 4H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.29 (t, CH2CHC(=O)NH, 2H); 2.34 (t, CH2C(=O)OH, 2H); 3.27 (m, CH2C(=O)NHCH2, 2H); 3.33 (s, CHC(=O)NHCH2, 2H); 3.48 (m, CHC(=O)NH, 1H); 3.50-3.80 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 5.34 (m, CH=CH, 2H).
(7)化合物7cの製造
Figure 0006901714
50mL ナスフラスコ中に化合物6c (MW: 3870.18, 87.1 mg, 22.5 μmol, 1.0 eq)、化合物2c(MW: 713.39, 35.2 mg, 49.3 μmol, 2.19 eq)を入れ、減圧乾燥後、乾燥DCM 2 mLを入れた。乾燥Et3N (MW: 101.19, d=0.726, 10 μL, 29.1 mg, 287.6 μmol, 12.8 eq)を入れ、41時間反応させた。TLC(CHCl3:MeOH=6:1)とニンヒドリンで確認したところ、呈色は起きなかったため、反応を完了した。撹拌中のジエチルエーテル40 mLに、1.5 mLのDCMに溶解して滴下した。12000 rpm, 15分で遠心後、上清をデカンテーションにより除去し、減圧乾燥を行ったところ薄黄色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, 42H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 4H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 8H); 2.08-2.24 (br m, CH2CHC(=O)NH, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 4H); 2.32 (t, CH2C(=O)OH, 2H); 2.39 (m, CH2CH2NHC(=O)CH2, 4H); 3.24 (m, CH2C(=O)NHCH2, 2H); 3.33 (m, CHC(=O)NHCH2, 2H); 3.48 (m, CHC(=O)NH, 1H); 3.50-3.80 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 3.97 (d, OCH3, 3H); 4.10 (t, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 5.34 (m, CH=CH, 2H); 5.62 (m, CHC(=O)NH, 1H); 6.32 (m, CHO, 1H); 7.08 (s, aromatic CH-m-NO2, 1H); 7.55 (s, aromatic CH-o-NO2, 1H).
(8)式(I−c)の化合物の製造
Figure 0006901714
50mL ナスフラスコ中に化合物7c(MW: 4331.35, 86.5 mg, 20.0 μmol, 1.0 eq)、NHS (MW: 115.1, 4.6 mg, 40.0 μmol, 2.0 eq)、DCC (MW: 206.33, 8.5 mg, 41.2 μmol, 2.1 eq)を入れ、減圧乾燥後、乾燥DCM 2 mLを入れた。3時間反応させ、減圧乾燥を行った。撹拌中のジエチルエーテル40 mLに、1.3 mLのDCMに溶解して滴下した。12000 rpm、15分遠心後、上清をデカンテーションにより除去し、減圧乾燥を行ったところ、薄黄色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, 42H); 1.41-1.54 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.53-1.69 (br m, CH2CH2CH2C(=O)O, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.83 (m, CH2C(=O)NH, 4H); 2.01 (m, CH2CH=CH, 8H); 2.08-2.24 (br m, CH2CHC(=O)NH, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 4H); 2.38 (m, CH2CH2NHC(=O)CH2, 4H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24 (m, CH2C(=O)NHCH2, 2H); 3.34 (m, CHC(=O)NHCH2, 2H); 3.47 (m, CHC(=O)NH, 1H); 3.50-3.80 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 3.96 (d, OCH3, 3H); 4.10 (m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 5.34 (m, CH=CH, 2H); 5.62 (m, CHC(=O)NH, 1H); 6.35 (m, CHO, 1H); 7.03 (s, aromatic CH-m-NO2, 1H); 7.57 (s, aromatic CH-o-NO2, 1H).
実施例2:細胞を固定化するための基板の製造方法
(1)コラーゲンコート基板の調製
スライドガラスを4 well plateに入れ、0.3 mg/mLコラーゲン/pH 3.0 HCl 溶液を4 mL入れた。室温で一晩静置し、MilliQ水で3回洗浄して乾燥させた。
(2)脂質膜含有物を固定化するための基板の製造
実施例1で製造された式(I−c)の化合物のDMSO溶液(1mM)をPBS溶液で100倍希釈した溶液を、上記(1)で調製したコラーゲンコート基板と直径3.5cmのディッシュ中で、4時間、37℃で反応させた。実施例1で製造された式(I-c)の化合物のPBS溶液を除去し、1mLのMilliQ水による洗浄を6回行った後、乾燥させて、細胞を固定化するための基板を製造した。
実施例3:高密度一細胞アレイの作製
実施例2で調製した基板の表面に対して、図1に示すフォトマスクを用いてコンタクト露光(0.6 mW/cm2, 3000 秒, 1.8 J/cm2)し、3.5 cm ディッシュ底面に設置した。ここに2 mLのPBS溶液を入れ、5×106 cells/mL Ba/F3細胞/PBS懸濁液1 mLを播種し、15分静置し、固定されなかった細胞をPBS溶液により洗浄除去した。Ba/F3細胞を、0.25 μg/mL カルセイン-AM/PBS 1 mLで15分染色したのち、顕微鏡観察(蛍光, 明視野, ×4対物レンズ)した。結果を図2に示す。
非常に高密度な一細胞アレイを作製することができた。14μm四方に一細胞が固定化され、細胞の密度は5.1x105細胞/cm2であった。
実施例4:一細胞単位の複数種細胞パターニング
底面が食品用ラップ(膜厚約10 μm, ポリ塩化ビニリデン)で作製された、直径25 mmのディッシュを作製した。このディッシュに1 mLの0.3 mg/mL TypeIコラーゲン/pH 3.0 HClを入れ、一晩コラーゲンを被覆した。MilliQ水で3回洗浄し、乾燥させた。実施例1で製造された式(I−c)の化合物のDMSO溶液(1mM)をPBS溶液で100倍希釈した溶液(1 mL)で4時間、37℃で反応させた。MilliQ水で6回洗浄し、乾燥させた。微量のMilliQ水でこのディッシュ底面の裏にフォトマスクを張り付け、1.8 J/cm2 (365 nm, 1.0 mW/cm2, 1800秒)のプロミキシティ露光を行った。ここに1 mLのPBS溶液を入れ、5×106 cells/mLのBa/F3(EGFP)細胞/PBS 1 mLを播種した。15分の静置の後、1 mLのPBS溶液で6回洗浄した。ディッシュ底面の裏にフォトマスクを張り付け、顕微鏡で観察しながら作製された細胞パターンとフォトマスクのアライメントを行い、ふたたび1.8 J/cm2(365 nm, 1.0 mW/cm2, 1800秒)でプロミキシティ露光を行った。ここに、CytoRedで染色したBa/F3細胞(Ba/F3(CytoRed))のPBS懸濁液(5×106 cells/mL)を1 mL播種した。15分の静置の後、1 mLのPBSで6回洗浄した。本実験の手順の模式図を図3に示す。作製された複数細胞集団の細胞パターンを共焦点顕微鏡で観察した。結果を図4に示す。
実施例5:共焦点顕微鏡を用いたレーザー描画による複数細胞集団のパターニング
マイクロ流路(μ-Slide VI 0.1, 流路幅1 mm x 全長17 mm x 高さ0.1 mm, ibidi社製)に1 w/v%BSA/PBS溶液を導入し、一晩、室温で静置した。その後、流路の両出口にあるチャンバーにそれぞれ100 μLのMilliQ水を入れ、除去する洗浄を3回行った。100 μLのMilliQ水を片方のチャンバーにのみ入れ、大気圧でもう一方のチャンバーに流路を通って流れ込ませることにより、流路内を洗浄した。両チャンバーに溜まっている洗浄液を除去し、片方のチャンバーにのみ、実施例1で製造された式(I−c)の化合物のDMSO溶液(10 mM)をPBS溶液で100倍希釈した溶液を100 μL入れることにより、大気圧により式(I−c)の化合物の溶液を流路内に流れ込ませた。37℃で4時間反応させることにより、式(I−c)の化合物を基板に結合させた。流路の両出口にあるチャンバーにそれぞれ100 μLのMilliQ水を入れ、除去する洗浄を6回行った。100 μLのMilliQ水を片方のチャンバーにのみ入れ、大気圧でもう一方のチャンバーに流路を通って流れ込ませることにより、流路内を洗浄した。この流路の入り口に5 mLシリンジを加工した大型チャンバーを増設し、出口にシリンジポンプに接続したチューブを取り付けた(図5)。
パターニングする細胞として、5色の異なる蛍光を示すBa/F3細胞を調製した。緑色の細胞として高感度緑色蛍光タンパク質 (Enhanced Green Fluorescent Protein) (EGFP) を発現させたBa/F3(EGFP)細胞を用いた。赤色の細胞として、Kusabira Orangeを発現させたBa/F3(KO)細胞を用いた。青色の細胞として、Hoechst33342で染色したBa/F3(Hoechst)細胞を用いた。黄色の細胞として、Ba/F3(KO)細胞をCalcein-AM (Dojindo Laboratories, Kumamoto, Japan)で染色したBa/F3(KO+Calcein)を用いた。水色の細胞としてHoechst33342とCalcein-AMで染色したBa/F3(Hoschst+Calcein)を用いた。それぞれの細胞は、1 x 108 cells/mLの濃度でPBSに懸濁し、パターニング用細胞溶液を調製した。
レーザー光による図形の描画、細胞の播種、洗浄を繰り返すことにより、5種類の細胞それぞれを任意の形にパターニングした。詳細な方法は以下の通りとなる。
(1)共焦点顕微鏡を用いて、式(I−c)化合物修飾表面を作製した流路底面に405 nmレーザーを任意の形に照射した。
(2)50 μLの各種細胞溶液を流路入口に設置した大型チャンバーに入れ、その溶液をシリンジポンプで20 μL引き入れることにより、流路内に細胞を導入した。
(3)20分静置後、固定化されていない細胞の洗浄溶液としてPBSを大型チャンバーに入れた。シリンジポンプを用いて30 mL/hの流速で1分間、続いて60 mL/hの流速で2分間、流路内をPBS溶液で洗浄した。
この(1)レーザー描画、(2)細胞播種、(3)洗浄を緑、黄色、水色、青、赤の細胞の順に行い、複数細胞集団のパターニングを行った。
結果、式(I−c)の化合物修飾表面を用いることにより、複数種類の細胞サンプルを、それぞれ任意の形にパターニングすることが可能であった。(図6及び7)。この実験では、5種の細胞を3時間程度でパターニングすることができた。
実施例6:化合物(I−c)で修飾された基板表面上での細胞培養
直径34 mmのカバーグラス上に0.3 mg/mLコラーゲン/pH 3.0 HCl 溶液を500 μL塗布し、スピンコーター(20秒で3000 rpmまで加速、3000 rpmで20秒回転、20秒かけて停止)でコラーゲンのコーティングを行った。MilliQ水で3回洗浄して乾燥させた。コラーゲンコート基板を直径35 mmディッシュ中に置き、化合物(I−c)のDMSO溶液(1 mM)をPBS溶液で100倍希釈した溶液1.5 mLで、3時間、37℃で反応させた。化合物(I−c)のPBS溶液を除去し、MilliQ水による洗浄を6回行った後、乾燥させて、細胞を固定化するための基板を製造した。これを6 well plateの底面に設置し、1 mLの70%エタノールで滅菌後、2 mLのPBSで二回洗浄した。FBS不含DMEM培地に懸濁させたHEK293T細胞(接着性細胞, ヒト胎児由来腎臓上皮細胞株)を2×105 cells/wellとなるように播種した。30分静置した後、培地中に10%v/vとなるようにFBSを添加した。3日間37℃, 5% CO2環境下において培養した。トリプシン処理により細胞を回収後、トリパンブルーにより死細胞を染色し、生細胞数と細胞生存率を計測した。
光照射(365 nm、1.6 J/cm2)・非照射にかかわらず、化合物(I−c)表面上での培養における細胞数と細胞生存率は、ともにコラーゲン表面や細胞培養用ディッシュ等のポジティブコントロールと同様であった(図8)。これらの結果から、化合物(I−c)表面上では光固定化した細胞を培養することが可能であり、高い細胞適合性を持つことが示された。
実施例7:接着性細胞(HepG2細胞)、初代培養細胞(NHDF細胞)、リポソーム(ローダミン蛍光)の一細胞レベルパターニング
直径34 mmのカバーグラスを0.3 mg/mLコラーゲン/pH 3.0 HCl 溶液に浸漬した後、スピンコーティング(20秒で3000 rpmまで加速、3000 rpmで20秒回転、20秒かけて停止)を行うことにより、コラーゲンのコーティングを行った。MilliQ水で3回洗浄して乾燥させた。コラーゲンコート基板を直径35 mmディッシュ中に置き、化合物(I-c)のDMSO溶液(1 mM)をPBS溶液で100倍希釈した溶液1.5 mLで、4時間、37℃で反応させた。化合物(I-c)のPBS溶液を除去し、MilliQ水による洗浄を6回行った後、乾燥させて、細胞を固定化するための基板を製造した。これをアレイパターンが描画されたフォトマスク上に置き、波長365 nm, 1.6 J/cm2にてコンタクト露光を行った。70%エタノールで滅菌後、PBSで3回洗浄した。
この基板を直径35 mmディッシュ中に置き、2 mLのPBSを入れた後、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株, 接着性細胞)もしくはNHDF細胞(正常ヒト皮膚線維芽細胞, 初代培養細胞, 接着性細胞)のPBS懸濁液(3×106 cells/ml)を1 mL入れて5分後に非固定化細胞の洗浄除去を行った。固定化されたHepG2細胞において、培地を10%v/v FBS含有DMEM培地に交換し、37℃で2時間培養したところ、一細胞アレイ化されたHepG2細胞が伸展し基板に接着していることが確認された(図9)。固定化されたNHDF細胞においても、培地を10%v/v FBS含有DMEM培地に交換し、37℃で15分培養したところ、一細胞アレイ化されたNHDF細胞が伸展し基板に接着していることが確認された(図10)。
上記と同様の基板において、アレイパターンのコンタクト露光後に、リポソーム(F60203F-R, FormuMax Scientific社製)のPBS100倍希釈用液を1 mL入れて10分後に洗浄したところ、リポソームのアレイパターンが確認された(図11)。
実施例8:量子ドットのパターニング
実施例5と同様の方法で作製した化合物(I−c)修飾マイクロ流路表面に、405 nmレーザー光を用いてヒト型のパターンを照射した。そこへビオチン修飾脂質被覆量子ドット(biotin-labeled Qdot(登録商標) 655 nanocrystals, Thermo Fisher Scientific社製)をQdot(登録商標) incubation buffer(Thermo Fisher Scientific社製)で20 nMに希釈した溶液を導入し、5分間静置した。PBSにより固定化されなかった量子ドットを洗浄除去したところ、ヒト型に量子ドットがパターニングされていることが確認された(図12)。また、同様の方法でカルボン酸修飾脂質被覆量子ドット(CdSeS/ZnS alloyed quantum dots, COOH functionalized, fluorescence λem 525 nm, Sigma-Aldrich社製)の10 μg/mL MilliQ水溶液のパターニングを試みたところ、ヒト型に量子ドットがパターニングされていることが確認された(図13)。
実施例9:非接着性細胞と接着性細胞の共パターニング
直径34 mmのカバーグラスを0.3 mg/mLコラーゲン/pH 3.0 HCl 溶液に浸漬した後、スピンコーティング(20秒で3000 rpmまで加速、3000 rpmで20秒回転、20秒かけて停止)を行うことにより、コラーゲンのコーティングを行った。MilliQ水で3回洗浄して乾燥させた。コラーゲンコート基板を直径35 mmディッシュ中に置き、化合物(I-c)のDMSO溶液(1 mM)をPBS溶液で100倍希釈した溶液1.5 mLで、4時間、37℃で反応させた。化合物(I-c)のPBS溶液を除去し、MilliQ水による洗浄を6回行った後、乾燥させて、細胞を固定化するための基板を製造した。これをラインパターン(幅200 μm, 間隔 200 μm)が描画されたフォトマスク上に置き、波長365 nm, 1.6 J/cm2にてコンタクト露光を行った。70%エタノールで滅菌後、PBSで3回洗浄した。この基板を直径35 mmディッシュ中に置き、2 mLのPBSを入れた後に、赤色蛍光タンパク質を発現させたBa/F3(KO)細胞のPBS懸濁液(5×106 cells/ml)を1 mL入れた。10分間静置後、PBSで非固定化細胞を洗浄除去し、直径50 mm, ガラス観察窓直径40 mmのディッシュ(WillCo-Dish, WillCo Wells社製)中に置き、2 mLのPBSを入れた。これをラインパターン(幅200 μm, 間隔 200 μm)が描画されたフォトマスク上に、Ba/F3(KO)細胞のラインパターンとフォトマスクのラインパターンが直交するように置き、波長365 nm, 1.6 J/cm2にて露光を行った。細胞パターニング基板を直径35 mmディッシュ中に移し、2 mLのPBSを入れた後に、緑色蛍光タンパク質を発現させたHEK293T(EGFP)細胞のPBS懸濁液(2.5×106 cells/ml)を1 mL入れた。10分間静置後、PBSで非固定化細胞を洗浄除去したところ、それぞれBa/F3(KO)細胞とHEK293T(EGFP)細胞から構成される直交する二つのラインパターンが確認された(図14左)。また、培地を10%v/v FBS含有DMEM培地に交換し、37℃で3時間培養したところ、HEK293T(EGFP)細胞が伸展し基板に接着していることが確認された(図14右)。
また、同様の手法で、リポソーム(ローダミン蛍光)のラインパターニング、続いてHEK293T(EGFP)細胞のラインパターニングを行ったところ、それぞれリポソーム(ローダミン蛍光)とHEK293T(EGFP)細胞から構成される直交する二つのラインパターンが確認された(図15)。この時、幅100 μm, 間隔100 μmのラインパターンが描画されたフォトマスクを用いた。
実施例10:担癌マウスからのCTCのソーティング
CTC単離のモデル実験として、担癌マウス末梢血からの癌細胞の光捕捉を行った。DLD1細胞を坦癌したマウスの心臓から末梢血を採取した。末梢血を0.9%塩化アンモニウムで処理して赤血球を溶血したのち、PBSで遠心洗浄を行った。100 nMのビオチン修飾抗Epiregulin抗体を15分反応させた後、10 nMのストレプトアビジン修飾量子ドット(Qdot(登録商標) 655 Streptavidin Conjugate, Thermo Fisher Scientific)を5分反応させることにより、末梢血中の癌細胞を蛍光標識した。この細胞溶液を実施例5と同様の方法で化合物(I-c)をコートしたマイクロ流路に導入し、量子ドットの蛍光(ex/em 488/655 nm)から癌細胞を検出した。検出した癌細胞に対してのみ405 nmレーザーを照射することにより、癌細胞を流路内に固定化し、その他の細胞をPBSにより洗浄除去した。結果、末梢血中から癌細胞を選択的に流路内に単離することに成功した(図16)。
実施例11:光活性化PEG脂質誘導体である化合物(II-b)の合成
(1)化合物1dの合成
Figure 0006901714
100 mL ナスフラスコ中にエタノール 20 mLと、MilliQ水を10 mL入れ、そこへ4-(4-tert-ブトキシカルボニルピペラジニル)フェニルボロン酸ピナコールエステル (MW: 388.32, 154.0 mg, 397 μmol, 1.0 eq)、1-(5-ブロモ-2-ニトロフェニル)エタノン (MW: 244.04, 127.3 mg, 522 μmol, 1.3 eq)、炭酸カリウム (MW: 138.2, 158.3 mg, 1.15 mmol, 2.9 eq)、テトラブチルアンモニウムブロミド(MW: 322.4, 126.2 mg, 391 μmol, 1.0 eq)を入れ、酢酸パラジウム(II)を触媒量添加した。マイクロウェーブ反応装置で150℃, 10分、150 Wの出力にて還流反応を行った。放冷した後、MilliQ水を40 mL加え、酢酸エチル40 mLで二回抽出を行った。抽出用液を飽和食塩水40 mLで二回洗浄し、さらにMilliQ水40 mLで二回洗浄した。有機層を減圧乾燥した後、直径3.0 cmのカラム管に高さ5 cmまでシリカゲルを詰め、粗精製物をヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶媒 4.0 mLでロードし、ヘキサン:酢酸エチル=5:1、続いてヘキサン:酢酸エチル=3:1の展開溶媒でカラム精製した。減圧乾燥を行ったところ、109.0 mg(収率65%)の橙色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 1.49 (s, C(CH3)3, 9H); 2.58 (s, C(=O)CH3, 3H); 3.26 (br, C(=O)N(CH)2, 2H); 3.61 (br, N(CH)2, 2H); 7.00 (d, aromatic NC(CH)2, 2H); 7.51 (s, aromatic C(=O)CCH, 1H); 7.56 (d, aromatic C(CH)2, 2H); 7.71 (d, aromatic CH-m-NO2, 1H); 8.17 (d, aromatic CH-o-NO2, 1H)
(2)化合物2dの合成
Figure 0006901714
50 mL ナスフラスコ中に化合物1d(MW: 425.48, 109.0 mg, 256 μmol, 1.0 eq)、水素化ホウ素ナトリウム (MW: 37.83, 14.8 mg, 391 μmol, 1.5 eq)を入れ、減圧乾燥した。乾燥MeOH 5 mLと乾燥THF 5 mLを氷上で加え、撹拌した。2時間後、TLC(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)によって確認したところ、化合物1dのスポット(Rf: 0.17)は消失しており、反応の完了を確認した。減圧乾燥した後、酢酸エチル50 mLに溶解し、飽和食塩水50 mLで二回洗浄し、さらにMilliQ水50 mLで二回洗浄した。減圧乾燥を行ったところ、107.3 mg(収率98%)の橙色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 1.49 (s, C(CH3)3, 9H); 1.63 (s, C(=O)CH3, 3H); 3.25 (br, C(=O)N(CH)2, 2H); 3.61 (br, N(CH)2, 2H); 5.55 (m, CHOH, 1H); 7.01 (d, aromatic NC(CH)2, 2H); 7.58 (d, aromatic CH-m-NO2, 1H); 7.59 (d, aromatic C(CH)2, 2H); 8.02 (d, aromatic CH-o-NO2, 1H); 8.03 (s, aromatic C(OH)CCH, 1H)
(3)化合物3dの合成
Figure 0006901714
50 mL ナスフラスコ中に化合物2d(MW: 427.49, 107.3 mg, 251 μmol, 1.0 eq)を入れ、減圧乾燥した。10 mLの4N HCl/酢酸エチルを加え、30分の撹拌の後、減圧乾燥を行った。116.0 mg(収率>99%)の橙色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 1.60 (s, C(=O)CH3, 3H); 3.46 (br, NH(CH)2, 2H); 3.66 (br, N(CH)2, 2H); 5.52 (m, CHOH, 1H); 7.16 (d, aromatic NC(CH)2, 2H); 7.58 (d, aromatic C(CH)2, 2H); 7.79 (d, aromatic CH-m-NO2, 1H); 8.02 (d, aromatic CH-o-NO2, 1H); 8.07 (s, aromatic C(OH)CCH, 1H)
(4)化合物4dの合成
Figure 0006901714
50 mL ナスフラスコ中に化合物3d(MW: 363.84, 91.0 mg, 250 μmol, 1.0 eq)、オレイン酸NHS (MW: 379.53, 142.0 mg, 374 μmol, 1.5eq)を入れ、減圧乾燥した。乾燥DCM 5 mLと乾燥Et3N (MW: 101.19, d=0.726, 360 μL, 261.4 mg, 2.58 mmol, 10 eq)を加えて撹拌した。1.5時間後、TLC(CHCl3:MeOH=6:1)によって確認したところ、化合物3dのスポット(Rf: 0.2)は消失しており、反応の完了を確認した。減圧乾燥した後、酢酸エチル50 mLに溶解し、飽和食塩水50 mLで二回洗浄し、さらにMilliQ水50 mLで二回洗浄した。減圧乾燥を行った後、シクロヘキサン40 mLに懸濁し、10000 Gで10℃, 3分遠心した後に上清を除去する洗浄を3回行った。減圧乾燥したところ、115.6 mg(収率78%)の橙色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, 20H); 1.60-1.72 (m, CH(OH)CH3, NC(=O)CH2CH2, 5H); 2.01 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.38 (t, C(=O)CH2, 2H); 3.22-3.32 (br, N(CH)2, 2H); 3.66,3.81 (br, C(=O)N(CH)2, 2H); 5.35 (m, CH=CH, 2H); 5.55 (m, CHOH, 1H); 7.01 (d, aromatic NC(CH)2, 2H); 7.58 (d, aromatic CH-m-NO2, 1H); 7.59 (d, aromatic C(CH)2, 2H); 8.02 (d, aromatic CH-o-NO2, 1H); 8.03 (s, aromatic C(OH)CCH, 1H)
(5)化合物5dの合成
Figure 0006901714
50 mL ナスフラスコ中に化合物4d(MW: 591.82, 115.6 mg, 195.3 μmol, 1.0 eq)、クロロギ酸4-ニトロフェノール(MW: 201.56, 68.8 mg, 341 μmol, 1.7 eq)を入れ、減圧乾燥した。乾燥DCM 5 mLと乾燥Et3N (MW: 101.19, d=0.726, 500 μL, 363 mg, 3.59 mmol, 18 eq)を加えて撹拌した。4時間後、TLC(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって確認したところ、化合物4dのスポット(Rf: 0.22)は消失しており、反応の完了を確認した。減圧乾燥した後、直径2.0 cmのカラム管に高さ15 cmまでシリカゲルを詰め、反応物をヘキサン:酢酸エチル1:1の溶媒 3.0 mLでロードし、ヘキサン:酢酸エチル=3:2の展開溶媒でカラム精製した。減圧乾燥を行ったところ、140.2 mg(収率95%)の橙色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, 20H); 1.67 (t, NC(=O)CH2, 2H); 1.84 (d, CH(OH)CH3, 3H); 2.01 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.38 (t, C(=O)CH2, 2H); 3.24-3.33 (br, N(CH)2, 2H); 3.67,3.82 (br, C(=O)N(CH)2, 2H); 5.35 (m, CH=CH, 2H); 6.52 (m, CHOH, 1H); 7.03 (d, aromatic NC(CH)2, 2H); 7.34 (d, aromatic C(=O)OC(CH)2, 2H); 7.58 (d, aromatic C(CH)2, 2H); 7.65 (d, aromatic CH-m-NO2, 1H); 7.87 (s, aromatic C(OH)CCH, 1H); 8.11 (d, aromatic CH-o-NO2, 1H); 8.25 (d, aromatic (CH)2-o-NO2, 2H)
(6)化合物6dの合成
Figure 0006901714
50 mL ナスフラスコ中に化合物6c(MW: 3870.18, 116.0 mg, 30.0 μmol, 1.0 eq) 、化合物5d(MW: 756.93, 31.2 mg, 41.2 μmol, 1.4 eq)を入れ、減圧乾燥した。乾燥DCM 3 mLと乾燥Et3N (MW: 101.19, d=0.726, 42 μL, 30.5 mg, 301 μmol, 10 eq)を加えて撹拌した。2日後、TLC(CHCl3:MeOH=6:1)とニンヒドリンで確認したところ、呈色は起きなかったため、反応を完了した。撹拌中のジエチルエーテル40 mLに、1.5 mLのDCMに溶解して滴下した。10000 gで10分遠心後、上清をデカンテーションにより除去し、減圧乾燥を行ったところ、125.6 mg(収率96%)の薄黄色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 6H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, 44H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 4H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 8H); 2.08-2.24 (br m, CH2CHC(=O)NH, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 4H); 2.32 (t, CH2C(=O)OH, 2H); 2.39 (m, CH2CH2NHC(=O)CH2, 4H); 3.24-3.40 (br m, N(CH)2, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 6H); 3.48 (m, CHC(=O)NH, 1H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2, C(=O)N(CH)2); 5.34 (m, CH=CH, 4H); 5.59 (m, CHC(=O)NH, 1H); 6.37 (m, CHO, 1H); 7.05 (d, aromatic NC(CH)2, 2H); 7.56-7.62 (m, aromatic C(CH)2, aromatic CH-m-NO2, 3H); 7.82 (s, aromatic OCH(CH3)CCH, 1H); 8.05 (t, aromatic CH-o-NO2, 1H);
(7)化合物(II-b)の合成
Figure 0006901714
10 mL ナスフラスコ中に化合物6d(MW: 4373.97, 21.9 mg, 5.01 μmol, 1.0 eq) 、NHS (MW: 115.1, 0.9 mg, 7.51 μmol, 1.5 eq)、DCC (MW: 206.33, 2.1 mg, 10.2 μmol, 2.0 eq)を入れ、減圧乾燥後、乾燥DCM 1 mLを入れた。21時間反応させ、減圧乾燥を行った。0.8 mLのDCMを加えて析出物をろ過により除去し、撹拌中のジエチルエーテル12 mLに、滴下した。10000 g、10分遠心後、上清を除去し、減圧乾燥を行ったところ、21.7 mg(収率98%)の薄黄色固体が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 6H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, 44H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 4H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 8H); 2.08-2.24 (br m, CH2CHC(=O)NH, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 4H); 2.39 (m, CH2CH2NHC(=O)CH2, 4H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, N(CH)2, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 6H); 3.48 (m, CHC(=O)NH, 1H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2, CON(CH)2); 5.34 (m, CH=CH, 4H); 5.59 (m, CHC(=O)NH, 1H); 6.37 (m, CHO, 1H); 7.05 (d, aromatic NC(CH)2, 2H); 7.56-7.62 (m, aromatic C(CH)2, aromatic CH-m-NO2, 3H); 7.82 (s, aromatic OC(CH3)CCH, 1H); 8.05 (t, aromatic CH-o-NO2, 1H)
実施例10:化合物(II-b)の細胞固定化機能の評価
実施例5と同様の方法でマイクロ流路にBSAのコート、続いて化合物(II-b)の修飾を行った。ただし、化合物(II-b)をH2O:DMSO=1:1(v/v)に溶解した溶液を基板修飾に用いた。また、化合物(II-b)修飾後の洗浄は、PBSによって行った。そのマイクロ流路に405 nmの光を照射し、45 μLのBa/F3(EGFP)細胞(2×108 cells/mL)PBS懸濁液をマイクロ流路の片方のチャンバーにのみ入れ、大気圧により流路内に細胞を流れ込ませた。30分静置後、1 mLのPBSで非固定化細胞を洗浄除去し、蛍光顕微鏡により流路内に固定化されている細胞を観察した。光を照射しなかった表面には細胞はほとんど固定化されなかったが(図17左)、光照射表面には細胞が固定化された(図17右)。したがって、化合物(II-b)も光照射による細胞固定化に利用可能であることが確認された。
参考例1
脂質膜結合阻害基の効果についての検討
以下のモデル化合物(I−e)〜(I−k)を合成し、脂質膜結合阻害基として機能する置換基を検討した。
Figure 0006901714
(1)化合物(I−e、I−f、I−g、I−h、I−i、I−j)の合成
(1−1)化合物1f、1g、1h、1jの合成
Figure 0006901714
ラウリン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、リグノセリン酸をNHSで活性化した。これらの脂肪酸NHS活性エステルは、共通して、以下に示す当該業者に既知の手法で合成した。それぞれの脂肪酸と過剰量のN−ヒドロキシスクシンイミドを、WSCを縮合剤として用いて乾燥DCM中で反応させた。減圧乾燥した後に酢酸エチルに溶解し、飽和食塩水で二回、続いて水で二回分液洗浄を行った。有機相の減圧乾燥を行い、白色の固体として各種脂質のNHS活性エステル体を得た。
(1−2)化合物(I−e)、(I−f)、(I−g)、(I−h)、(I−i)、(I−j)の合成
合成によって得た脂肪酸NHS活性エステルである化合物1f、1g、1h、1j、そして購入した化合物1e(N-アセトキシスクシンイミド)及び化合物1i(オレイン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を化合物6cのアミノ基に結合させ、続いてPEG末端カルボン酸をNHS活性エステル化した。これらのNHS活性エステルとアミノ基の反応、そしてはカルボン酸のNHS活性エステル化は、共通して、以下に示す当該業者に既知の手法で行った。化合物6cと過剰量の脂肪酸NHS活性エステルを、乾燥Et3Nの存在下で、乾燥DCM中で反応させた。ニンヒドリンを用いて反応の完了を確認した後、減圧乾燥を行った。過剰量のN−ヒドロキシスクシンイミドとDCCを加えて、乾燥DCM中で反応させた。反応溶液をろ過することにより、余剰のN−ヒドロキシスクシンイミドとDCC由来の反応副生成物を除去した。これを撹拌中のジエチルエーテルに滴下し、遠心後、上清をデカンテーションにより除去した。減圧乾燥を行ったところ、白色固体として化合物(I−e)、(I−f)、(I−g)、(I−h)、(I−i)、(I−j)を得た。
化合物(I−e)
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 3H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, 24H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 6H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 2H); 2.00-2.08 (m, CH2CH=CH, CH3C(=O)NH, 7H); 2.15 (br m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 4H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 4.34 (m, CHC(=O)NH, 1H); 5.34 (m, CH=CH, 2H)
化合物(I−f)
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 6H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, CH3(CH2)9, 44H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 2H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.15 (br m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 2.21 (m, CH2C(=O)NHCH, 2H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 4H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 4.34 (m, CHC(=O)NH, 1H); 5.34 (m, CH=CH, 2H)
化合物(I−g)
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 6H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, CH3(CH2)12, 50H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 2H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.15 (br m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 2.21 (m, CH2C(=O)NHCH, 2H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 4H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 4.34 (m, CHC(=O)NH, 1H); 5.34 (m, CH=CH, 2H)
化合物(I−h)
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 6H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, CH3(CH2)15, 56H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 2H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.15 (br m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 2.21 (m, CH2C(=O)NHCH, 2H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 4H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 4.34 (m, CHC(=O)NH, 1H); 5.34 (m, CH=CH, 2H)
化合物(I−i)
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 6H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, 44H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 2H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.15 (br m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 2.21 (m, CH2C(=O)NHCH, 2H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 4H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 4.34 (m, CHC(=O)NH, 1H); 5.34 (m, CH=CH, 4H)
化合物(I−j)
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.88 (t, CH2CH3, 6H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, CH3(CH2)21, 68H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)OH, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.84 (m, CH2C(=O)NH, 2H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.15 (br m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 2.21 (m, CH2C(=O)NHCH, 2H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 4H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 4.34 (m, CHC(=O)NH, 1H); 5.34 (m, CH=CH, 2H)
(2)化合物(I-k)の合成
(2−1)化合物1kの合成
実施例1(2)における化合物cの製造と同様の手法でコレステロールのp-ニトロフェノール誘導体化を行った。
Figure 0006901714
(2−2)化合物2kの合成
実施例1(7)における化合物7cの製造と同様の手法で化合物1kを化合物6cに結合させた。
Figure 0006901714
(2−3)化合物(I-k)の合成
Figure 0006901714
実施例1(8)に記載の方法と同様の方法で、化合物(I−k)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ . 0.68 (s, CH3C(CH)2CH2, 3H), 0.84-0.93 (m, CH2CH3, (CH3)2CH, CH3CH(CH)CH2, 12H); 1.00 (s, CH3C(CH)(CH2)C, 3H); 1.20-1.36 (br m, CH3CH2CH2CH2CH2 CH2CH2, CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2, NHCH2CH2CH2CH2, CH3(CH2)21, 68H); 1.38-1.53 (br m, CH2CH2CH2CH2C(=O)NH, NHCH2CH2CH2O, 4H); 1.55-1.68 (br m, CH2CH2CH2C(=O)O, CH2CH2CH(NH2), 6H); 1.70-1.91 (m, CH2C(=O)NH, CCH2CH, 4H); 2.00 (m, CH2CH=CH, 4H); 2.15 (br m, NHC(=O)CH2CH2CH2O, 2H); 2.62 (t, CH2C(=O)O, 2H); 2.85 (s, C(=O)CH2CH2C(=O), 4H); 3.24-3.40 (br m, CH2C(=O)NHCH2, CHC(=O)NHCH2, 4H); 3.50-3.88 (br m, CH2O(CH2CH2O)nCH2, OCH2CH2CH2CH2); 4.08 (br, CH(CH2)O, 1H); 4.34 (m, CHC(=O)NH, 1H); 4.47 (br, CH=C, 1H); 5.34 (m, CH=CH, 2H)
実施例5と同様の方法でマイクロ流路にBSAのコート、続いて各種PEG脂質誘導体の修飾を行った。ただし、PEG脂質をH2O:DMSO=1:1(v/v)に溶解した溶液を基板修飾に用いた。また、PEG脂質修飾後の洗浄は、PBSによって行った。100 μLのBa/F3(EGFP)細胞(1×107 cells/mL)PBS懸濁液をマイクロ流路の片方のチャンバーにのみ入れ、大気圧により流路内に細胞を流れ込ませた。30分静置後、1 mLのPBSで非固定化細胞を洗浄除去し、流路内に固定化されている細胞数を計測した。結果を図18に示す。
脂質膜結合阻害基がメチル基である場合のモデルである化合物(I-e)を修飾した流路には、細胞が固定化され、細胞固定化機能が阻害されることが無かった。一方、脂質膜結合阻害基が、メチルよりも長鎖のアルキル基(C11、C14、C17及びC23)及びコレステリル基などの疎水性基である場合のモデルである化合物(I-f、I-g、I-h、I-i、I-j、I-k)を修飾した流路には細胞が固定化されず、脂質膜結合機能が阻害された。したがって、脂質膜結合阻害基が疎水性基である場合に、脂質膜結合機能の阻害が好適になされることが示された。
本発明によれば、単一種類の脂質膜含有物のみならず、複数種類の脂質膜含有物も迅速かつ簡便にパターニングすることが可能である。そのため、例えば、同一基板上に複数の異なる種類の細胞を配置して、薬剤候補品が効果を示す病態を一度に調べるなど、ハイスループットな薬剤スクリーニングが可能となる。また、単に細胞をランダムに混ぜ合わせただけの組織様構造物よりも、実際の生体組織に近い機能を有する組織を構築可能である。さらに、特定の細胞を選択的に単離することも可能である。

Claims (14)

  1. 以下の式(I)
    Figure 0006901714
    [式中、
    1及びA2は、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、ここでA1は、脂質膜含有物中の脂質膜と結合する脂質膜結合基であり、A2は、前記脂質膜結合基の脂質膜への結合を阻害する脂質膜結合阻害基であり、
    3は、以下の2−ニトロベンジル骨格:
    Figure 0006901714
    式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k 1 が0の場合にはA 2 への連結を示し、k 1 が1の場合にはL 1 への連結を示し、L 6 はエチニレン基であるか、又は存在しない。
    有する二価の光反応基であり;
    4は、以下:
    Figure 0006901714
    [式中、
    Zは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、かつ2≦n≦500であり、
    左側の矢印は、A6への連結を示し、右側の矢印は、k2が0の場合にはA5への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示す]
    で表される親水性基であり、
    5は、以下の置換基:
    Figure 0006901714
    [式中、
    矢印は、k2が0の場合にはA4への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示し、
    Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン及びC1-10アルコキシ基からなる群から選択される]
    からなる群から選択される修飾対象基材への反応基であり、
    6は、以下:
    Figure 0006901714
    [式中、
    3、L4及びL5は、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよく、
    3、k4及びk5は、それぞれ独立して0又は1であり、
    (A1)、(A3)及び(A4)への矢印はそれぞれ、A1、A3及びA4への連結を示す]
    で表されるリンカーであり、
    1及びk2は、それぞれ独立して0又は1である]
    で表される化合物であって、光反応により、脂質膜結合阻害基による結合阻害が解消されて、前記脂質膜結合基が脂質膜に結合可能となる足場部位であり、
    1及びL2は、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよい、前記化合物。
  2. 前記脂質膜含有物が、細胞、細胞小器官、小胞、ウイルス、リポソーム、ミセル及び脂質で被覆された量子ドットからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記修飾対象基材が、ウシ血清アルブミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1つで被覆された基材である、請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 以下の式(I−a):
    Figure 0006901714
    [式中、
    1及びA2は、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
    1〜L5は、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよく、
    3は、以下の2−ニトロベンジル骨格:
    Figure 0006901714
    [式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k 1 が0の場合にはA 2 への連結を示し、k 1 が1の場合にはL 1 への連結を示し、L 6 はエチニレン基であるか、又は存在しない。]
    有する二価の光反応基であり、
    5は、以下の置換基:
    Figure 0006901714
    (式中、
    矢印は、L2への連結を示し、
    Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される)
    からなる群から選択される]
    で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 以下の式(I−b):
    Figure 0006901714
    [式中、
    1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群からから選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
    nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500であり、
    pは1〜8であり、
    q及びsは、それぞれ独立して1〜7であり、
    rは0〜10であり、
    5が、以下の置換基:
    Figure 0006901714
    (式中、
    矢印は、化合物の残りの部分への連結を示し、
    Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される)
    からなる群から選択される]
    で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
  6. 以下の式(I−c)
    Figure 0006901714
    [式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
    で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
  7. 以下の式(II−a)
    Figure 0006901714
    [式中、
    1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群からから選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、
    nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500であり、
    pは1〜8であり、
    qは、それぞれ独立して1〜7であり、
    rは0〜10であり、
    5が、以下の置換基:
    Figure 0006901714
    (式中、
    矢印は、化合物の残りの部分への連結を示し、
    Xはハロゲンであり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、C1-10アルキル基、ハロゲン、C1-10アルコキシ基からなる群から選択される)
    からなる群から選択される]
    で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 以下の式(II−b)
    Figure 0006901714
    [式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
    で表される、請求項7に記載の化合物。
  9. 以下の式(I−d)
    Figure 0006901714
    [式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
    または、以下の式(II−c)
    Figure 0006901714
    [式中、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、かつ45≦n≦500である]
    で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物とその修飾対象基材とを反応させて得られた、脂質膜含有物を固定化するための基材。
  11. 以下の式(III)の基:
    Figure 0006901714
    [式中、
    1及びA2が、それぞれ独立してC7-22アルキル基、C6-14アリール基、C6-14アリールC7-22アルキル基及びC7-22アルキルC6-14アリール基からなる群から選択され、ここで前記C7-22アルキル基中の隣接する炭素原子は、1〜3個の不飽和結合によって連結されていてもよく、ここでA1は、脂質膜含有物中の脂質膜と結合する脂質膜結合基であり、A2は、前記脂質膜結合基の脂質膜への結合を阻害する脂質膜結合阻害基であり、
    3が、以下の2−ニトロベンジル骨格:
    Figure 0006901714
    [式中、右側の矢印は足場部位への連結を示し、左側の矢印は、k 1 が0の場合にはA 2 への連結を示し、k 1 が1の場合にはL 1 への連結を示し、L 6 はエチニレン基であるか、又は存在しない。]
    を有する二価の光反応基であり
    4は、以下:
    Figure 0006901714
    [式中、
    Zは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、かつ2≦n≦500であり、
    左側の矢印は、A6への連結を示し、右側の矢印は、k2が0の場合にはA 7 への連結を示し、k2が1の場合にはL2への連結を示す]
    で表される親水性基であり、
    6は、以下:
    Figure 0006901714
    [式中、
    3、L4及びL5は、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよく、
    3、k4及びk5は、それぞれ独立して0又は1であり、
    (A1)、(A3)及び(A4)への矢印はそれぞれ、A1、A3及びA4への連結を示す]
    で表されるリンカーであり、
    1及びk2は、それぞれ独立して0又は1である]
    で表される化合物であって、光反応により、脂質膜結合阻害基による結合阻害が解消されて、前記脂質膜結合基が脂質膜に結合可能となる足場部位であり、
    1及びL2は、それぞれ独立して、C6-14アリーレン基又はC1-10アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の炭素原子は1〜5個のオキソ基で置換されていてもよく、隣接する炭素原子同士が1〜5個の不飽和結合で結ばれていてもよく、そして前記アルキレン基中の炭素原子のうち、1〜4個の炭素原子がNH、N(C1-10アルキル)、O又はSで置き換えられていてもよい、
    7は、式(III)のその他の部分と基材とを連結する二価の基であるか、又は基材と非共有結合で連結可能な反応基であり、
    矢印は、基材への共有結合又は非共有結合による連結を示す]
    を有する、脂質膜含有物を固定化するための基材。
  12. 基材上に脂質膜含有物をパターニングする方法であって、以下のステップ:
    (1)請求項10又は11に記載の脂質膜含有物を固定化するための基材上において脂質膜含有物のパターンを形成する部分に光を照射して、当該部分の脂質膜結合基を脂質膜と結合可能な状態とし;
    (2)前記脂質膜含有物を前記脂質膜結合基と反応させて前記脂質膜含有物のパターンを形成すること
    を含む、前記方法。
  13. 以下のステップ:
    (3)ステップ(2)で得られた基材を洗浄して、未反応の脂質膜含有物を基材から除去し;
    (4)以前のステップで使用した脂質膜含有物とは異なる脂質膜含有物を使用して、ステップ(1)〜(3)を繰り返すことで、複数の異なる脂質膜含有物のパターンを形成すること
    をさらに含む、請求項12に記載の方法。
  14. 脂質膜含有物を単離する方法であって、以下のステップ:
    (1)請求項10又は11に記載の脂質膜含有物を固定化するための基材に、脂質膜含有物を含む試料を適用し;
    (2)基材上の前記脂質膜含有物の位置を顕微鏡観察に基づいて検出し;
    (3)前記位置に光を照射して、前記位置の脂質膜結合基を脂質膜と結合可能な状態とし、基材上に前記脂質膜含有物を固定化し;
    (4)ステップ(3)で得られた基材を洗浄して、基材に固定化されていない物質を基材から除去すること
    を含む、前記方法。
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