以下、本発明の実施形態に係る水素除去装置を添付図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、上、下、左、右等の方向を示す言葉は、図示した状態または通常の使用状態を基準とする。また、上流(または前段)および下流(または後段)は、処理対象ガス15または水素除去済みガス16の流れ方向を基準とする。
本発明の実施形態に係る水素処理装置では、水素を除去するために、過酸化物イオン(O2 2−)および金属で構成される塩である金属過酸化物や、金属酸化物を反応材として用いる。特に、複数の酸化数を取り得る金属酸化物中の高次の酸化数を持つ金属酸化物や金属過酸化物を反応材として用い、水素ガスを酸化させることによって水素ガスを消費(除去)する。
金属過酸化物や金属酸化物を反応材として用いる場合、処理対象ガスに含まれる水素ガスは、金属過酸化物または金属酸化物に含まれる酸素によって酸化されるため、必ずしも外部から酸素を供給する必要がない。
一般的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブテン(Mo)ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)等から選択される金属過酸化物が反応材として有効である。
続いて、本発明の実施形態に係る水素処理装置について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る水素除去装置の水素除去装置30(30A〜30B)の適用例を示す概略図である。
また、図1に示される各構成は、それぞれ、原子炉格納容器1、炉心2、原子炉圧力容器3、生体遮蔽壁4、上部ドライウェル5、下部ドライウェル6、ウェットウェル7、ベント管8、サプレッションプール9、主蒸気管11、安全弁12、および真空破壊弁13である。
水素処理装置30(30A〜30B)は原子炉格納容器1内の雰囲気から水素を除去する。
水素除去装置30は、例えば、原子炉格納容器1と供給配管31および戻り配管32を介して連結される。また、供給配管31には水素除去処理される雰囲気ガス(以下、「処理対象ガス」とする。)15を水素除去装置30内に導くと共に水素除去装置30内で水素除去処理後の雰囲気ガス(以下、「水素除去済みガス」とする。)16を水素除去装置30外へ送出するポンプ33が設けられる。
さらに、供給配管31および戻り配管32には、それぞれ、流路の開閉状態を切り替える開閉弁34が設けられる。開閉弁34は、水素除去が不要な場合、すなわち、原子炉が通常に運用されている場合には閉じており、例えばMetal−Water反応によって大量の水素が発生する事象が生じた場合等、水素除去装置30を稼動させる必要が生じた場合に開かれる。
水素処理装置30は、処理対象ガス15を導入して処理対象ガス15に含まれる水素ガスを酸化させて除去し、水素ガス除去後の水素除去済みガス16を外部へ排気する。水素処理装置30は、水素ガスを酸化させる水素除去手段と、水素除去促進手段とを具備する。水素除去促進手段は、処理対象ガス15が通気する方向を基準として、水素除去手段よりも上流側に配置され、水素除去手段における水素と酸素との結合反応を促進させる。
続いて、各実施形態に係る水素処理装置および当該水素処理装置を適用した水素除去方法について説明する。
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係る水素除去装置である水素除去装置30Aの構成を示す概略図である。
水素除去装置30Aは、水素除去手段50と、処理対象ガス処理対象ガス水素除去促進手段として加熱手段60Aおよび除湿手段70Aと、加熱手段60Aを制御する加熱制御手段80と、除湿手段70Aを制御する除湿制御手段90とを具備して構成される。
加熱制御手段80および除湿制御手段90には、非常時に使用される電源(以下、「非常用電源」とする。)100が接続されている。非常用電源100は、電源車や空冷式ガスタービン発電機車等であり、常用系統とは独立した電源である。
水素除去装置30Aを稼動させる場合、加熱手段60Aおよび除湿手段70Aは電力を必要とする。加熱手段60Aおよび除湿手段70Aが必要とする電力は、常用系統からの電力供給が停止する事態に陥った場合、非常用電源100から直接的に、または加熱制御手段80および除湿制御手段90を介して供給される。
水素除去手段50は、ガスが通気可能な容器51を備え、容器51の内部に、反応材を収容している反応器52が通気可能に配置されている。反応器52は、上流側領域54から処理対象ガス15が反応器52を通気せずに下流側領域55に漏れることのないように、気密性をもって配置されることが好ましい。
ここで、上流側領域54とは、容器51内であって反応器52よりも上流側に位置する領域をいい、下流側領域55とは、容器51内であって反応器52よりも下流側に位置する領域をいう。上流側領域54および下流側領域55は、それぞれ、水素除去手段50の入口部および出口部を形成する。
容器51は、水素除去手段50における流路を形成する。容器51の幅は、少なくとも供給配管31や戻り配管32の管径よりも大きくなるように設計される。そのため、水素除去手段50における面流速は供給配管31や戻り配管32における面流速よりも遅く、水素除去手段50における処理対象ガス15の滞留時間は増加する。
また、容器51は、加熱手段60Aよりも下流側に配設される。容器51と加熱手段60Aは、下流側流路66によって通気可能に接続されている。加熱手段60Aを通気して昇温された処理対象ガス15は、下流側流路66を通って上流側領域54に流入する。
さらに、容器51は、下流側領域55において戻り配管32と通気可能に接続されている。戻り配管32は水素除去装置30Aの外部と通気可能に設けられている。反応器52を通気した後の処理対象ガスである水素除去済みガス16は、下流側領域55から戻り配管32を通って水素除去装置30Aの外部へ排気される。
なお、水素除去手段50において、反応器52の温度低下を避ける観点から、図2等に例示されるように、容器51の容器壁53に断熱機能を有する断熱部57を設けてもよい。
断熱部57は、例えば、内壁53aおよび外壁53bの間を真空にする等して内壁53aおよび外壁53bの間に断熱層を形成した二重壁等の多重壁を用いて形成される。また、断熱部57の他の例としては、容器壁53の外表面、すなわち処理対象ガス15が通気する際に通気する処理対象ガス15と非接触な面を被覆可能な、グラスウールやロックウール等の材料中で熱伝導率が相対的に低い低熱伝導率材料(いわゆる断熱材として適用される材料)、上記低熱伝導率材料を溶射等によるコーティングによって形成される断熱膜等を用いて形成することもできる。
また、断熱部57は、上記多重壁、上記断熱材および上記断熱膜から選択される二つ以上を組み合わせて形成されていてもよい。例えば、内壁53aおよび外壁53bの間に断熱層を形成した二重壁構造の容器壁53を設け、さらに容器壁53の壁面、すなわち内壁53aおよび外壁53bの表面のうち、少なくとも一面に断熱膜を設けることによって、断熱効果をより高めた断熱部57を形成してもよい。
加熱手段60Aは、水素除去手段50における水素の除去効率を高める処理(以下、「水素除去促進処理」とする。)を行う。加熱手段60Aが行う水素除去促進処理は、反応器52に収容される反応材を所定の温度(以下、「所定反応材温度」とする。)以上に保つように加温する処理(以下、「反応器加温処理」とする。)、および処理対象ガス15の温度を所定の温度(以下、「所定ガス温度」とする。)以上に昇温する処理(以下、「処理対象ガス昇温処理」とする。)の少なくとも一方を含む処理を施す。
所定反応材温度は、所定ガス温度に昇温された処理対象ガス15が反応器52に収容される反応材と接した際に熱を奪われ、水素除去反応の反応速度が低下しない程度の温度である。すなわち、所定反応材温度は、所定ガス温度と同程度かそれ以上であることが好ましい。所定反応材温度は、反応材の種類等によって異なるものの、一般的に約200度(℃)以上であれば十分な速度で水素除去反応が進行すると考えられるため、約200℃以上である。
所定ガス温度は、約200℃以上とすれば十分な速度で水素除去反応が進行すると考えられるため、約200℃以上とするのが好ましい。一方で、所定ガス温度は、反応器52の構造部材への熱影響等を考慮した場合、高ければ良いというものではなく過剰な高温は耐用期間の低下等を招き得る。そのため所定ガス温度は、200℃〜400℃程度の範囲に設定することが好ましい。
なお、所定反応材温度および所定ガス温度の好ましい範囲は、使用する反応材の種類に応じて変動し得る。例えば、200℃よりも低い温度域であっても他の金属酸化物と比べて水素との反応が良好なマンガン(Mn)系の金属酸化物を反応材として適用する場合には、下限値をさらに下に設定することができる。一方、Mn系の酸化物は、約280℃になると酸素の遊離が生じる性質があるため、構造上は十分なマージンがあるとしても、酸素を遊離させないように、上限値を酸素の遊離が生じる酸素遊離温度(約280℃)未満に設定することが好ましいといえる。
加熱手段60Aは、反応器加温手段61と、ガス昇温手段62Aとを備える。反応器加温手段61は、反応器52に収容される反応材を、所定反応材温度以上に保つために反応器52の入口側部分を加温する。ガス昇温手段62Aは、水素除去手段50に導入される前に処理対象ガス15の温度を所定ガス温度以上に昇温する。すなわち、反応器加温手段61が反応器加温処理を行い、ガス昇温手段62Aが処理対象ガス昇温処理を行う。
反応器加温手段61は、反応器52の入口側(上流側)に配置されるヒータ(図示を省略)を有し、反応器52内の反応材を所定反応材温度以上に維持するために必要な熱量を供給する。反応器52内の反応材の温度は、反応器52の入口側部分が最も低くなると考えられる。そのため、反応器52の入口側部分を所定反応材温度以上に加温可能な構成を採用することで反応器52内の反応材の温度を所定反応材温度以上に維持できる。
また、水素除去手段50における上流側領域54の流路断面積は、その直前に配設される下流側(出口側)連絡流路66の流路断面積に対して通常大きく設計されるため、上流側領域54に流入する処理対象ガス15が膨張してガス温度が低下することも想定される。反応器加温手段61を反応器52の入口側(上流側)に配置しておくことで、反応器加温手段61が単に反応器52内の反応材を加温するだけでなく、上流側領域54に流入する処理対象ガス15に温熱を供給することができる。
反応器加温手段61が有するヒータは、水素除去装置30Aが稼動している間は常時入となるように構成してもよい。また、反応器52に収容される反応材の温度を温度検出可能なセンサを有する温度検出部67を設け、温度検出部67から検出される温度に基づいて加熱状態、すなわち発熱量を調整するように構成してもよい。
なお、反応器加温手段61におけるヒータの加熱状態の調整は、手動か自動かを問わない。例えば、反応器加温手段61を制御する機能を有する加熱制御手段80が設けられている場合、すなわち後述する反応器加熱制御部81が設けられている場合、反応器加熱制御部81からの制御指令に従って反応器加温手段61におけるヒータの加熱状態を制御することによって、当該ヒータの加熱状態を自動的に調整することができる。
ガス昇温手段62Aは、処理対象ガス15が通気可能な管状体であるヒータ収容部63Aにヒータ64を収容して構成される。ヒータ収容部63の上流側は上流側連絡流路65を介して除湿手段70Aと通気可能に接続されている。ヒータ収容部63の下流側は下流側連絡流路66を介して水素除去手段50と通気可能に接続されている。
ヒータ64は、反応器52の上流側の反応材を所定ガス温度以上に維持するために必要な熱量を供給する。ヒータ64は、水素除去装置30Aが稼動している間は常時入となるように構成してもよい。または、ヒータ64は、処理対象ガス15の温度検出可能なセンサを有する温度検出部68を少なくとも1箇所に設置し、温度検出部68から検出される温度に基づいてヒータ64の加熱状態、すなわち発熱量を調整するように構成してもよい。
なお、処理対象ガス15の温度を検出する観点からすれば、温度検出部68は、流路内の少なくとも1箇所に設置すれば最低限の要求を満足できるが、より適切に処理対象ガス15の温度を昇温する観点からすれば、当該流路内に3,4箇所程度設置した方が好ましい。より好ましくは、当該流路の軸(中心)から壁に向かう方向に対して、中心側の領域である中央部に1箇所、当該流路の内壁近傍の領域、すなわち中央部を取り囲む周囲部に少なくとも1箇所設置する。さらに好ましくは、中央部に1箇所、周囲部に、位相(中心と温度検出部68とを結ぶ直線の方向)を変えて複数箇所に設置することである。
また、ヒータ64を制御する機能を有する加熱制御手段80が設けられている場合、すなわち後述する処理対象ガス加熱制御部82が設けられている場合、処理対象ガス加熱制御部82からの制御指令に従ってヒータ64の加熱状態を制御することによって、ヒータ64の加熱状態を自動的に調整することができる。
ガス昇温手段62Aにおいて、ガス昇温手段62Aを通気して昇温された処理対象ガス15の温度低下を避ける観点から、ガス昇温手段62Aを構成する流路のうち、少なくともヒータ収容部63および下流側連絡流路66に断熱部69を設けてもよい。断熱部69は、断熱部57と同様にして形成することができる。
除湿手段70Aは、水素除去手段50における水素の除去効率を高める処理として、処理対象ガス15の湿分を除去する処理を施す。除湿手段70Aは、加熱手段60Aより上流に配設されており、容器71の上流側が供給配管31と通気可能に接続される。また、容器71の下流側が上流側連絡流路65を介して加熱手段60Aと通気可能に接続される。
除湿手段70Aは、ガスが通気可能な容器71の内部に、エリミネータ72と、熱交換部73とを備える。エリミネータ72は、慣性力を利用して処理対象ガス15に含まれる湿分を除去する第1の湿分除去部である。熱交換部73は、処理対象ガス15に含まれる湿分を凝縮させて除去する第2の湿分除去部である。また、容器71の底部には、凝縮水等の液体を貯留可能な液溜部74が設けられている。
また、除湿手段70Aには、例えば、熱交換部73と液溜部74とを循環可能に連絡する循環水流路75が設けられている。循環水流路75は、冷熱を供給する冷媒を、熱交換部73と液溜部74との間で循環させる流路である。除湿手段70Aでは、例えば、冷媒として水(冷却水)が使用されている。
循環水流路75には、冷却水を循環させるポンプ76と、冷却水を冷却する冷却器77とが設けられる。ポンプ76を稼動させると、冷却水が、ポンプ76、冷却器77、熱交換部73、液溜部74を経由してポンプ76に戻って循環水流路75を循環する。
循環水流路75に配設される熱交換部73では、循環水流路75を循環する冷却水と処理対象ガス15との間で熱交換される。当該熱交換の結果、循環水は温度が上昇する一方、処理対象ガス15は冷却され、その湿分が凝縮して凝縮水が発生する。発生した凝縮水は液溜部74に捕集される。
循環水流路75に配設される冷却器77は、必要に応じて、処理対象ガス15から温熱を受け取る循環水を冷却して熱交換部73へ供給する。冷却器77は、例えば、冷熱発生源(図示省略)と、この冷熱発生源を含み冷媒が循環する低温側循環系(図示省略)と高温側循環系を形成する循環水流路75とを熱的に接続する熱交換部(図示省略)とを有する。
冷却器77において、上記低温側循環系を循環する冷媒は、上記冷熱発生源から上記熱交換部へ送られる。上記熱交換部では、循環水流路75を通水する循環水に冷熱を供給する一方、自身は温熱を受け取り温められる。上記熱交換部で温熱を受け取った冷媒は、上記熱交換部から冷熱発生源に戻り、再度冷却されて上記熱交換部へ送られる。
上流側湿度検出部78は、例えば容器71の入口近傍の除湿手段70Aの上流側に設けられており、除湿制御手段90と無線または有線を介して、検出結果(湿度)を伝送可能に接続される。上流側湿度検出部78は、除湿手段70Aに導入される処理対象ガス15の湿度を検出し、検出結果を除湿制御手段90へ伝送する。
湿度検出部79(以下、「下流側(出口側)湿度検出部」とする。)は、例えば容器71の出口(上流側連絡流路65の入口)近傍等の除湿手段70Aの下流側(出口側)に設けられ、除湿制御手段90と無線または有線を介して、検出結果(湿度)を伝送可能に接続される。下流側湿度検出部79は、除湿手段70Aから排気される処理対象ガス15の湿度を検出し、検出結果を除湿制御手段90へ伝送する。
上流側湿度検出部78および下流側湿度検出部79の検出結果は、ポンプ76および冷却器77の何れを稼動するか否かを切り替える必要性の有無を判断する際に用いることができる。
例えば、上流側湿度検出部78の検出結果は、除湿手段70Aの入口部において処理対象ガス15の湿度が低くエリミネータ72による処理対象ガス15の湿分除去で十分に処理対象ガス15の湿分が除去できる、すなわち除湿能力が最小でも十分に処理対象ガス15の湿分が除去できるか否かを判断する判断材料として用いることができる。
例えば、下流側湿度検出部79の検出結果は、除湿手段70Aの出口部においても処理対象ガス15の湿度が所望するレベルまで低下しない場合等のような除湿手段70Aの除湿能力をさらに高める必要がある場合において、ポンプ76および冷却器77を停止したままでよいか、冷却器77は停止したままポンプ76を稼動させるか、またはポンプ76および冷却器77を稼動させるかを判断する判断材料として用いることができる。
従って、下流側湿度検出部79の検出結果だけでなく、上流側湿度検出部78の検出結果をさらに用いることで、ポンプ76および冷却器77の好ましい入切状態をより適切に判断することができる。
なお、図2に示される除湿手段70Aは、第1の湿分除去部としてのエリミネータ72と、第2の湿分除去部としての熱交換部73とを備える例であるが、必ずしも第2の湿分除去部を備える必要はなく熱交換部73を省略して除湿手段70Aを構成してもよい。
また、図2に示される除湿手段70Aでは、熱交換部73に冷熱を供給する冷却水を循環水流路75に通水して(循環させて)利用しているが、例えば、外部から十分な量の冷却水を供給可能であれば、冷却水を通水する流路は必ずしも冷却水が循環可能な流路でなくてもよい。
さらに、図2に示される除湿手段70Aでは、熱交換部73に冷熱を供給する冷却水の通水経路として液溜部74を含む循環水流路75が形成されているが、循環水流路75から液溜部74を切り離し、循環水が液溜部74を通水しない循環水流路75が形成されてもよい。液溜部74に集められる水分は、原子炉格納容器1由来の水であるため、再利用が困難な場合も想定され得るためである。
加熱制御手段80は、反応器加温手段61およびガス昇温手段62Aを個別に制御する機能を有し、反応器加温手段61を制御する反応器加熱制御部81と、ガス昇温手段62Aを制御する処理対象ガス加熱制御部82とを備える。
反応器加熱制御部81は、温度検出部67から検出される反応器52内の反応材の温度に基づいて制御指令を生成し、制御対象となる反応器加温手段61に与える。反応器加熱制御部81からの制御指令を受けた反応器加温手段61では、当該制御指令に従って加熱状態、すなわち発熱量が制御される。
処理対象ガス加熱制御部82は、温度検出部68から検出される処理対象ガス15の温度に基づいて制御指令を生成し、制御対象となるガス昇温手段62Aに与える。処理対象ガス加熱制御部82からの制御指令を受けたガス昇温手段62Aでは、当該制御指令に従ってヒータ64の加熱状態、すなわち発熱量が制御される。
除湿制御手段90は、ポンプ76と冷却器77とを個別に制御する機能を有し、冷却器77を制御する冷却器制御部91と、ポンプ76を制御するポンプ制御部92とを備える。
冷却器制御部91は、湿度検出部79から検出される除湿手段70Aの出口部を通気する処理対象ガス15の湿度に基づいて制御指令を生成し、制御対象となる冷却器77に制御指令を与える。冷却器制御部91からの制御指令を受けた冷却器77は、当該制御指令に従って循環水の冷却状態を、少なくとも冷却無しまたは冷却有りに切り替える。
ポンプ制御部92は、例えば、湿度検出部78から検出される除湿手段70Aの入口部を通気する処理対象ガス15の湿度に基づいて制御指令を生成し、制御対象となるポンプ76に与える。ポンプ制御部92からの制御指令を受けたポンプ76は、当該制御指令に従ってポンプ76の動作状態を、稼動または停止に切り替える。
なお、除湿手段70Aにおいて、第2の湿分除去部を構成する熱交換部73に冷熱を供給するための循環水流路75にポンプ76および冷却器77が設けられている場合、除湿制御手段90は、ポンプ76と冷却器77とを個別に制御する機能を有しているので、除湿手段70Aの除湿レベルを2段階に切り替えて制御することができる。
より具体的には、ポンプ76を稼動とする一方、冷却器77を停止とすることによって、除湿能力が相対的に低い低除湿運転が可能となる。また、ポンプ76を稼動させ、かつ冷却器77を稼動させることによって、除湿能力が相対的に高い高除湿運転が可能となる。従って、除湿制御手段90は、必要とする除湿レベルに応じて除湿手段70Aを稼動させることができる。
このように、水素除去装置30Aでは、水素除去手段50の上流側に、水素の除去を促進させる水素除去促進手段として、加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの少なくとも一方を具備している。加熱手段60Aは、反応器52に導入される処理対象ガス15の温度を水素除去に好適な温度まで昇温することができ、除湿手段70Aは処理対象ガス15の湿分を水素除去に好適な湿度まで除湿することができる。
なお、図2に例示される水素除去装置30Aは、水素除去手段50の上流側に、水素除去促進手段として加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの両方を具備しているが、必ずしも加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの両方を具備している必要はない。何れか一方を省略することができ、水素除去手段50の上流側に加熱手段60Aを設置した水素除去装置30Aや水素除去手段50の上流側に除湿手段70Aを設置した水素除去装置30Aを構成することができる。
また、図2に例示される水素除去装置30Aは、加熱手段60Aとして、反応器加温手段61およびガス昇温手段62Aの両方を備えているが、必ずしも反応器加温手段61およびガス昇温手段62Aの両方を備えている必要はない。すなわち、反応器加温手段61を備える加熱手段60Aやガス昇温手段62Aを備える加熱手段60Aを構成することができる。
続いて、加熱手段60A等の水素除去促進手段を具備する水素除去装置30Aの消費電力と非常用電源100の供給能力との関係について説明する。
図1に例示される適用例の場合、水素除去装置30Aを稼動させる必要がある場合、発電所外部の電力系統に接続される電源を発電所内に引き込んで使用できない事態も想定される。発電所では非常用電源100のような、非常時に一定時間電力を供給可能な電源を準備している。非常用電源100が水素除去装置30Aを稼動させるのに必要な電力を供給可能であれば、水素除去装置30Aを無理なく運用することができるといえる。
非常用電源100として、例えば、電源車や発電機車が準備されている場合、電源車であれば1000〜3000[kW]程度、発電機車であれば4000[kW]程度の電力を供給することができる。
一方、水素除去装置30Aを適用する場合、最大では加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの両方を稼動させることになる。ここで、加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの消費電力について考察する。
加熱手段60Aでは、反応器加温手段61およびガス昇温手段62Aにおける発熱のために電力が消費される。ヒータ64等の発熱要素が必要とする消費電力、ガス昇温手段62Aを通気する処理対象ガス15を昇温するための電力、およびガス昇温手段62Aにおける流路を昇温するための電力は、それぞれ、下記式(1)、(2)および(3)を用いて算出することができる。
必要電力[kW]=反応材の比熱[J/(mol・K)]÷反応材のモル質量[kg/kmol]×反応材の密度[kg/m3]×反応材の体積[m3]×1秒当たりの上昇温度[K/sec] ……(1)
必要電力[kW]=ガスの比熱[J/(mol・K)]÷気体のモル体積(=22.4)[m3/kmol]×ガス密度[kg/m3]×ガスの1秒当たりの流量[m3/sec]×上昇温度[K] ……(2)
必要電力[kW]=流路材料の比熱[kJ/(kg・K)]×流路材料の密度[kg/m3]×流路材料の体積[m3]×1秒当たりの上昇温度[K/sec] ……(3)
また、反応器加温手段61での消費電力を計算するにあたり、設計の一例として、反応器52(図2)に収容する反応材としての金属酸化物を酸化銅(II)とし、酸化銅(II)の体積を10[m3]とし、上昇温度させる温度幅を200[℃]([K])とし、温度上昇に要する時間を3時間(=3×3600[sec])とする。なお、反応材としての酸化銅(II)の比熱および密度については、公知の文献に記載される数値、具体的には、比熱42.3[J/(mol・K)]および密度6.31[kg/dm3]を用いた。
さらに、ガス昇温手段62Aでの消費電力を計算するにあたり、設計の一例として、処理対象ガス15が通気する流路であるヒータ収容部63を形成する部材をSUS304製の管状体とし、当該部材の体積を40[m3]とし、流路内を処理対象ガス15が単位時間(ここでは1時間)当たりに通気する流量を250[m3](=[m3/hour])とし、処理対象ガス15の組成については、水素が20[vol%]、水素以外の他のガス(主成分が窒素ガス)が80[vol%]とした。
なお、水素および窒素の比熱、モル質量および密度については、それぞれ、公知の文献に記載される数値を用いた。具体的に説明すれば、水素については、比熱28.83[J/(mol・K)]、窒素については、比熱29.12[J/(mol・K)]を用い、気体のモル体積は22.4[m3/mol]を用いた。
また、SUS304の比熱および密度については、公知の文献に記載される数値、具体的には、0.59[kJ/(kg・K)]および密度7.93[kg/m3]を用い、上昇温度させる温度幅を200[℃]([K])とし、温度上昇に要する時間を1時間(=3600[sec])とした。
上記式(1)とこれらの数値とを用いて、反応器加温手段61での消費電力[kW]を計算すると、得られる必要電力[kW]は、約30[kW]となる。実際には、電圧変動や制御誤差などの影響や放熱の影響があるため、その分を考慮すると、約2倍程度、すなわち60[kW]程度の電力が必要であることが推察される。
一方、上記式(2)と前記数値とを用いて、ガス昇温手段62Aを通気する処理対象ガス15を昇温するために必要な電力[kW]を計算すると、水素については約3.6[kW]、水素以外の他のガス(主成分が窒素ガス)については約14.5[kW]となる。また、上記式(3)と前記数値とを用いて、ヒータ収容部63を処理対象ガス15と同じ温度に昇温するために必要な電力[kW]を計算すると、約10.4[kW]となる。
従って、ガス昇温手段62Aでは全体として約28.5[kW]となり、実際には、電圧変動や制御誤差などの影響や放熱の影響があるため、その分を考慮すると、約2倍程度、すなわち57.0[kW]程度の電力が必要であることが推察される。
故に、加熱手段60A全体では、117[kW]程度の電力が必要であることが推察される。
なお、除湿手段70Aにて消費される電力に関しては、最大でも冷却水を循環させるためのポンプ76での消費電力と冷却器77での消費電力である。
例えば、除湿手段70Aで必要となる冷却能力は、除湿手段70A内に流入する処理対象ガス15は常温と考えられるため、凝縮させるために低下させる処理対象ガス15の温度幅は多く見積もっても20℃程度であり、ガス昇温手段62Aが昇温させる温度幅(200℃(K))の約10%と考えられる。従って、除湿手段70Aで必要となる消費電力は、設計余裕を多めに見込んで冷却能力を見積もってもガス昇温手段62Aが必要とする57.0[kW]と同程度あれば十分と考えられる。
ここで、ポンプ76および冷却器77に相当する要素を備える水冷式の冷却装置(チラー)の消費電力を参考にすると、例えば、メーカから公表されている消費電力([kW])の値は、メーカ間で多少の相違はあるもののいずれも冷却能力([kW])の値よりも小さいことから、消費電力としては冷却能力と同等の57.0[kW]を見込んでおけば十分と考えられる。
そうすると、水素除去装置30Aを適用する際に加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの両方を稼動させたとしても、推定される最大消費電力はせいぜい200[kW]程度であり、電源車等を非常用電源100として確保すれば、加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの両方を稼動させた状態で水素除去装置30Aを稼動させたとしてもその電力を十分に賄うことができる。
従って、例えば、原子炉隔離時冷却系などによる注水が24時間行われた後に炉心が落下してMetаl−Wаter反応が発生する場合等、水素除去装置30A周辺が低温度にある状況下においても、非常用電源100からの電力供給を受けてポンプ76および冷却器77の少なくとも一方を稼動させて処理対象ガス15に含まれる水蒸気を凝縮させてより多くの湿分を除去したり、非常用電源100からの電力供給を受けて加熱手段60Aが処理対象ガス15を約200℃昇温させることができる。
次に、図2に示される水素除去装置30Aを原子炉格納容器1(図1)の雰囲気から水素を除去する際に適用する場合を例に、当該水素除去装置30Aを用いた水素除去方法について説明する。
原子炉格納容器1の内部は常時不活性な窒素ガスが充填されている。従って、原子炉事故に起因してMetal−Water反応が生じている場合、蒸発した冷却水に由来する水蒸気が主に発生するので、処理対象ガス15に含まれるガスの主成分は窒素、水素および水蒸気の3種となる。
なお、厳密にいえば、燃料デブリ由来の核反応生成物のうち気体成分であるハロゲンが処理対象ガス15に混在する可能性も考えられるが、本実施形態で用いる反応材が、複数の酸化数を取り得る金属酸化物中の高次の酸化数を持つ材料であり、ハロゲンとの反応には不活性な金属酸化物である点を考慮すれば、燃料デブリ由来のハロゲンの影響は無視できる程度に小さいと考えられる。
まず、水素除去装置30Aを用いた水素除去方法では、窒素、水素および水蒸気を主成分とする原子炉格納容器1の内部の雰囲気(処理対象ガス15)から水素を除去するため、開閉弁34(図1)を開放する(閉→開)。一般的には、原子炉格納容器1の内部と水素除去装置30Aとの圧力差が駆動力となって処理対象ガス15が原子炉格納容器1側から水素除去装置30A側へ流動すると考えられるが、十分でない場合も考慮してポンプ33(図1)を駆動してもよい。
続いて、処理対象ガス15が水素除去装置30Aに流入すると、まず、除湿手段70A(容器71A)に流入する。除湿手段70Aでは、第1の湿分除去部としてのエリミネータ72と、第2の湿分除去部としての熱交換部73とが処理対象ガス15に含まれる湿分を除去する。
除湿手段70Aに流入する処理対象ガス15には、水蒸気が数十パーセント[%]程度含まれ得るが、除湿手段70Aを通気する過程で大部分の水蒸気が除去される。従って、除湿手段70A(容器71A)から流出する処理対象ガス15の成分は、処理対象ガス15から水蒸気がほとんど除去される。この結果、処理対象ガス15の成分は、主に窒素と水素とが占める状態になっていると考えられる。
除湿手段70Aにおいて、湿分が除去された処理対象ガス15は、除湿手段70A(容器71A)から流出し、続いて加熱手段60Aに流入する。
加熱手段60Aでは、ガス昇温手段62Aが湿分除去後の処理対象ガス15を昇温して金属酸化物との再結合反応がより速く進行する約200℃以上まで昇温する。昇温された処理対象ガス15は、ガス昇温手段62Aから流出し、続いて水素除去手段50(容器51)に流入する。
水素除去手段50では、容器51内の上流側領域54に配設される反応器加温手段61が反応器52の入口側部分を所定反応材温度以上に加温し、反応器52の入口側部分が所定反応材温度以上に保たれている。
処理対象ガス15は、容器51内の上流側領域54に流入すると、反応器52を通気して下流側領域55へと流動する。処理対象ガス15は、反応器52を通気する過程で、含まれている水素が反応器52に収容されている反応材としての金属酸化物に含まれる酸素と反応して除去される。
また、水素除去手段50では、反応器52の入口側部分が所定反応材温度以上に保たれている。そのため、処理対象ガス15が反応材と接する際に、処理対象ガス15の大幅な温度低下が抑制される。従って、水素除去手段50では、十分な速度で安定的に水素除去反応が進行する。
続いて、反応器52を通気して水素ガスが除去された水素除去済みガス16は、下流側領域55へと流出する。そして、下流側領域55と通気可能に接続される戻り配管32を通って水素除去装置30Aの外部へ排気される。
このような水素除去装置30Aおよび水素除去装置30Aを用いた水素除去方法では、非常用電源100が確保できる状況下にあれば、水素除去促進手段としての加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの少なくとも一方を稼動させて、水素除去に適切なガス温度や湿分に処理対象ガス15を調整することができる。
従って、水素除去装置30Aおよび水素除去装置30Aを用いた水素除去方法では、水素除去に適切なガス温度や湿分に処理対象ガス15を調整し、水素除去手段50に導入することができ、安定的に水素を除去することができる。すなわち、発生するガスの温度や水蒸気組成の変動が生じても、水素除去に適切なガス温度や湿分の処理対象ガス15を水素除去手段50に導入することができ、水素除性能を低下させることなく必要な水素除去性能を確保することができる。
水素除去装置30Aおよび水素除去装置30Aを用いた水素除去方法によれば、水素除去装置30Aが水素除去促進手段として、反応器加温手段61を備える加熱手段60Aを具備する場合、反応器52内の反応材が所定反応材温度以上になるように加温することができるので、処理対象ガス15が反応材と接触した際に処理対象ガス15の温度が低下することを防ぎ、反応温度低下に伴う水素除去量の低下を防ぐことができる。
また、水素除去装置30Aが水素除去促進手段として、ガス昇温手段62Aを備える加熱手段60Aを具備する場合、処理対象ガス15の温度を水素除去処理反応(再結合反応)が十分な速度をもって開始するために必要な温度まで昇温することができるので、十分な速度をもって水素除去処理反応(再結合反応)が進行し、安定的に水素を除去することができる。
さらに、水素除去装置30Aが水素除去促進手段として、湿分除去手段70Aを具備する場合、水素除去処理反応(再結合反応)の進行を妨げ得る湿分(水蒸気)を処理対象ガス15から除去することができるため、水素除去性能の低下を防止することができる。
また、図2に例示される除湿手段70Aのように、除湿手段70Aが第1の湿分除去部としてのエリミネータ72と、第2の湿分除去部としての熱交換部73とを備える場合、除湿手段70Aの除湿能力を段階的に切り替えて運用することができる。
さらに、水素除去促進手段として加熱手段60Aおよび除湿手段70Aを具備し、加熱手段60Aが除湿手段70Aの下流側(後段)であって、水素除去手段50の上流側(前段)に配置される場合、処理対象ガス15が昇温前の常温に近い温度帯、すなわち相対湿度が高くなる温度帯で除湿を行うことができるので、処理対象ガス15の除湿をより効率的に行うことができる。
なお、上述した水素除去装置30Aでは、水素除去の必要性が生じてから稼働する場合を説明しているが、加熱手段60A等の処理対象ガス15や反応器52内の反応材に熱を供給する一部構成について常時または定期的に稼動させてもよい。
水素除去の必要性が生じるのに先立って処理対象ガス15や反応器52内の反応材に熱を供給しておくことで、水素除去装置30Aを稼働してからより短時間で水素除去反応を十分な速度で安定的に進行する状態に移行させることができる。また、常用系統からの電力供給があるうちに、常時または定期的に稼動させておくことで、熱量発生に必要な電力を節約できるため、非常用電源100が必要とする電力を節減することができる。
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態に係る水素除去装置の一例である水素除去装置30Bの構成を示す概略図である。なお、図3では、図の煩雑化を防ぐ観点から、図2に示される温度検出部67および68と湿度検出部78および79との図示を省略している。
第2の実施形態に係る水素除去装置は、第1の実施形態に係る水素除去装置に対して、水素除去促進手段の構成、すなわち加熱手段および除湿手段の少なくとも一方の構成が異なる点で相違するが、その他の点は実質的に相違しない。そこで、本実施形態の説明では、第1の実施形態に対する相違点を中心に説明し、第1の実施形態に係る水素除去装置と実質的に相違しない構成要素については、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
水素除去装置30Bは、水素除去装置30Aに対して、水素除去促進手段としての加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの構成が異なる一方、その他の構成要素については実質的に異ならない。水素除去装置30Bは、加熱手段60Aの代わりに加熱手段60Bを、除湿手段70Aの代わりに除湿手段70Bを、または加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの代わりに加熱手段60Bおよび除湿手段70Bを具備して構成される。また、加熱手段60Bは、加熱手段60Aに対して、ガス昇温手段62Aの代わりにガス昇温手段62Bを備えて構成される。
図3に示される水素除去装置30Bは、図2に示される水素除去装置30Aに対して、加熱手段60Aおよび除湿手段70Aの代わりに、加熱手段60Bおよび除湿手段70Bを具備する。すなわち、図3に示される水素除去装置30Bは、水素除去手段50と、加熱手段60Bと、除湿手段70Bと、加熱制御手段80と、除湿制御手段90とを具備して構成される。
加熱手段60Bでは、ガス昇温手段62Bにおいて処理対象ガス15が通気する流路を構成するヒータ収容部63Bの流路断面積が、ガス昇温手段62Aにおけるヒータ収容部63Aの流路断面積に対して相対的に大きく構成されている点で相違するが、その他の点は実質的に相違しない。
除湿手段70Bでは、除湿手段70Bにおいて処理対象ガス15が通気する流路を構成する容器71Bの流路断面積が、容器71Aの流路断面積に対して相対的に大きく構成されている点で相違するが、その他の点は実質的に相違しない。
このように構成される水素除去装置30Bでは、水素除去装置30Aと同様に、発生するガスの温度や水蒸気組成の変動が生じても、水素除去に適切なガス温度や湿分の処理対象ガス15を水素除去手段50に導入することができ、水素除性能を低下させることなく必要な水素除去性能を確保することができる。
また、加熱手段60Bを具備する水素除去装置30Bでは、ガス昇温手段62Bにおける流路断面積が、ガス昇温手段62Aの流路断面積に対して相対的に大きくなるので、面流速を相対的に遅くすることができる。従って、ガス昇温手段62Bにおける処理対象ガス15の滞留時間をガス昇温手段62Aよりも相対的に長くすることができる。
故に、加熱手段60Bを具備する水素除去装置30Bでは、処理対象ガス15の滞留時間がガス昇温手段62Aよりも増加するため、ガス昇温手段62Bの消費電力がガス昇温手段62Aと同じであれば、処理対象ガス15をよりも高い温度に昇温することができる。一方、所定ガス温度まで昇温するために必要な熱量が同じであれば、ガス昇温手段62Bの消費電力をガス昇温手段62Aの消費電力よりも小さく抑えることができる。
また、除湿手段70Bを具備する水素除去装置30Bでは、除湿手段70Bにおける流路断面積が、除湿手段70Aの流路断面積に対して相対的に大きくなるので、面流速を相対的に遅くすることができる。従って、除湿手段70Bにおける処理対象ガス15の滞留時間を除湿手段70Aよりも相対的に長くすることができる。
故に、除湿手段70Bを具備する水素除去装置30Bでは、除湿手段70Bにおいて湿分除去部との接触時間が除湿手段70Aよりも増加するので、当該湿分除去部における除湿効率を向上させることができる。
なお、上述した本実施形態の説明は、水素除去促進手段を構成する加熱手段60Bおよび除湿手段70Bについて流路断面積をより大きくすることおよびその作用および効果について説明した内容であるが、流路断面積をより大きくする概念の適用対象は水素除去促進手段に限定されない。上記概念は、例えば、水素除去手段50に対しても適用できる。水素除去手段50に対して適用した場合、水素除去手段50における面流速が相対的に遅くなるので、反応器52における処理対象ガス15の滞留時間が増え、反応効率が同じであれば水素除去量をより増やすことができる。
以上、水素除去装置30および水素除去装置30を用いた水素除去方法によれば、水素除去装置30が水素除去促進手段を具備しているので、発生するガスの温度や水蒸気組成の変動が生じていても、水素除去促進手段が水素除去に適切なガス温度や湿分に調整した処理対象ガス15を水素除去手段50に導入することができ、安定的に水素を除去することができる。
また、上述した水素除去装置30B等のように、供給配管31や戻り配管32によって構成される水素除去装置30と処理対象ガス15の供給源としての原子炉格納容器1とを連絡する流路の断面積に対して、水素除去促進手段や水素除去手段50における流路の断面積を大きく構成することで、面流速が相対的に遅くなるので、水素除去促進手段や水素除去手段50における処理対象ガス15の滞留時間を増やすことができる。この結果、水素除去効率を高める処理の効果をより高めたり、水素除去量をより増やしたりすることができる。
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することができる。本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。