〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るコンピュータの機能的構成の一例を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
本実施形態に係るコンピュータ1(情報処理装置)は、一例として、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータである。コンピュータ1は、据え置き型のコンピュータであってもよいし、コンピュータ1のユーザが携帯可能なコンピュータ(タブレット端末など)であってもよい。本実施形態に係るコンピュータ1は、一例として、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの利用のシミュレーションを実行し、シミュレーション結果に基づいて、シミュレーションにおけるエレベータの最大輸送能力を決定する。該シミュレーションは、例えば、エレベータの設置計画、すなわち、ビルに設置するエレベータの台数および仕様(速度、定員など)を決定する際に実行される。
乗場行先階登録システムとは、エレベータの利用者に、乗るべきかご(すなわち、複数のエレベータのうち、利用者がどの号機に乗るべきか)を通知する(指定する)システムである。この通知処理は、利用者が、エレベータのかごに乗る前に、出発階および目的階(あるいは、目的階のみ)を所定の装置(入力装置)に入力することにより行われる。該システムは、利用者が入力した出発階および目的階の情報と、エレベータの動作状況(各かごの位置、移動方向、かごを待っている人数など)とに基づいて、該利用者にとって最適なかごを特定し、通知する。以降、エレベータのかごに乗ること、かごから降りることを、単に「エレベータに乗る」、「エレベータから降りる」と記載する場合がある。
ここでは、最大輸送能力を、エレベータ(建物に設置された全てのエレベータ、あるいは、バンクに含まれるすべてのエレベータ)をフル回転させたときに、単位時間で輸送できる利用者の総数であると定義する。すなわち、本実施形態に係る最大輸送能力とは、エレベータが単位時間で輸送できる利用者数の最大値である。エレベータの設置計画においては、該最大輸送能力が基準値を満たすようにエレベータの台数および仕様を決定することが求められる。なお、一般的には単位時間は5分とされる。エレベータが5分間で輸送できる利用者数の最大値の、ビル人口に対する割合(パーセンテージ)は、一般的に「5分間輸送能力」と称される。このため、単位時間が5分間である場合、最大輸送能力は5分間輸送能力にビル人口を乗算した値と表現することもできる。
なお、バンクとは、建物に設置された複数のエレベータの各グループのことである。一例として、該複数のエレベータは、バンクごとにサービス階が異なる。例えば、或るバンクは低層階(1〜10階)を行き来し、別のバンクは中層階(1、11〜20階)を行き来し、さらに別のバンクは高層階(1、21〜30階)を行き来する。また、該複数のエレベータは、バンクごとに、設置位置が分けられていてもよい。また、該複数のエレベータは、バンクごとに、エレベータを制御するシステムが異なっていてもよい。
<コンピュータ1のハードウェア構成>
図2に示すように、コンピュータ1は、プロセッサ20、メモリ21、ストレージ22、入出力IF(Interface)23、通信IF24を備える。コンピュータ1が備えるこれらの構成は、通信バスによって互いに電気的に接続される。
プロセッサ20は、コンピュータの全体の動作を制御する。プロセッサ20は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、およびGPU(Graphics Processing Unit)を含む。プロセッサ20は、ストレージ22からプログラムを読み出し、該プログラムをメモリ21に展開する。そして、プロセッサ20は、展開したプログラムを実行する。
メモリ21は主記憶装置である。メモリ21は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等の記憶装置で構成される。メモリ21は、プロセッサ20がストレージ22から読み出したプログラムおよび各種データを一時的に記憶することにより、プロセッサ20に作業領域を提供する。メモリ21は、プロセッサ20がプログラムに従って動作している間に生成した各種データも一時的に記憶する。
本実施形態において、プロセッサ20が実行するプログラムは、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの利用のシミュレーション、および、最大輸送能力の決定を実現するためのプログラムであってもよい。シミュレーション用を実現するためのプログラムと、最大輸送能力の決定を実現するためのプログラムは、それぞれ別であってもよい。なお、本開示に係るシミュレーションは、既存のエレベータに関するシミュレーションプログラムを用いて実現してもよい。
ストレージ22は、補助記憶装置である。ストレージ22は、フラッシュメモリまたはHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置で構成される。ストレージ22には、例えば、シミュレーションおよび最大輸送能力の決定に関する各種データが格納される。ストレージ22は、これらデータのうちの一部を格納するものであってもよい。この場合、その他のデータは、例えば、コンピュータ1と通信可能に接続された記憶装置(外部記憶装置)に格納される。外部記憶装置は、いわゆる周辺機器であってもよいし、いわゆるクラウドサービスのサーバであってもよい。
入出力IF23は、コンピュータ1がデータの入力を受け付けるため、また、データを出力するためのインターフェースである。入出力IF23は、物理ボタン、マウス、キーボード、ディスプレイ、マイク、スピーカなどを含み得る。また、入出力IF23は、周辺機器との間でデータ送受信するための接続部を含み得る。
通信IF24は、コンピュータ1における各種データの送受信を制御する。通信IF24は、例えば、無線LAN(Local Area Network)を介する通信、有線LAN、無線LAN、または携帯電話回線網を介したインターネット通信、並びに、近距離無線通信などを用いた通信を制御する。
図示していないが、コンピュータ1は、ユーザの入力操作を受け付ける入力部、処理結果に基づく画面を表示する表示部、音声の入力を受け付ける音声入力部、音声を出力する音声出力部などを備えていてもよい。
<コンピュータ1の機能的構成>
コンピュータ1は、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置としての機能と、入力操作に基づいて実行した処理の結果を出力する出力装置としての機能を有する。コンピュータ1は、プロセッサ20、メモリ21、ストレージ22、入出力IF23、通信IF24等の協働によって、図2に示す制御部10および記憶部11として機能する。
(記憶部が格納するデータ)
記憶部11は、図1に示すように、シミュレーション用データ111およびシミュレーション結果112を少なくとも格納する。シミュレーション用データ111は、コンピュータ1がシミュレーションを実行する際に参照するデータであり、例えば、シミュレーションにおける各種条件を示すデータなどを含む。シミュレーション結果112は、コンピュータ1が実行したシミュレーションの結果を示すデータである。シミュレーション結果112は、シミュレーションに基づいて生成されたデータであればよく、例えば、シミュレーションの結果そのものであってもよいし、シミュレーションの結果に基づいて決定された最大輸送能力を示すデータであってもよい。
(制御部の構成)
制御部10は、プログラムを実行することにより、コンピュータ1を統括的に制御する。例えば、制御部10は、ユーザの操作に基づいてシミュレーションを実行し、シミュレーションの結果に基づいて決定された最大輸送能力を出力する。
制御部10は、プログラムの記述に応じて、入力受付部101、シミュレーション実行部102(シミュレーション部)、最大輸送能力決定部103(第1決定部)、出力部104として機能する。制御部10は、実行される処理の内容に応じて、図示しないその他の機能ブロックとしても機能することができる。
入力受付部101は、コンピュータ1の入力部(不図示)、または、入出力IF23を介してコンピュータ1に接続された入力装置に対する、ユーザの入力操作を検知し受け付ける。入力受付部101は、入力部または入力装置に対してユーザが及ぼした作用から、いかなる入力操作がなされたかを判別し、その結果を制御部10の各機能ブロックに出力する。一例として、入力受付部101は、上記作用を、シミュレーションを実行するための入力操作と判別し、シミュレーションを実行させるための情報(通知、命令)をシミュレーション実行部102へ出力する。また、一例として、入力受付部101は、上記作用を、シミュレーションの各種条件(以下、シミュレーション条件)を設定するための入力操作と判別し、各種条件を設定するための情報をシミュレーション実行部102へ出力する。
シミュレーション実行部102は、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの利用のシミュレーションを実行する。シミュレーション実行部102は、シミュレーションの一例として、複数台のエレベータが設置された建物を仮想的に設定する。該複数のエレベータは、建物におけるすべてのエレベータであってもよいし、1つのバンクに含まれるエレベータであってもよい。該シミュレーションにおいて、エレベータの利用者は、乗場行先階システムを用いて自身の出発階および目的階を登録する。その登録に対し、群管理システム(エレベータシステムとも称する)が、該利用者にとって最適なエレベータ(号機)を決定する。利用者は、該決定されたエレベータ(号機)に乗る。なお、このシミュレーションの詳細については後述する。また、群管理システムとは、複数台のエレベータの各々の制御に関し、各エレベータの制御装置を統括して制御するシステムである。ただし、ここでの群管理システムは、シミュレーションにおける仮想的な群管理システムである。シミュレーション実行部102は、シミュレーションの結果を最大輸送能力決定部103へ出力する。
最大輸送能力決定部103は、シミュレーションの結果に基づいて、シミュレーションにおけるエレベータの最大輸送能力を決定する。この詳細についても後述する。最大輸送能力決定部103は、決定した最大輸送能力を出力部104へ出力する。
出力部104は、最大輸送能力決定部103が決定した最大輸送能力を示す情報を出力する。一例として、出力部104は、該最大輸送能力を示す画面を、コンピュータ1の表示部(不図示)、または、入出力IF23を介してコンピュータ1に接続された表示装置に表示させる。
<処理の流れ>
図3は、制御部10が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4は、シミュレーションの結果に基づき決定(算出)される各値の評価基準と、シミュレーション条件との一例を示す図である。なお、以降、制御部10が実行する、各機能ブロックとしての処理については、各機能ブロックを主語として記載する。
図4の(a)に示すように、本開示における各実施形態では、5分間輸送能力の評価基準を、ビル人口の15%以上としている。すなわち、エレベータの最大輸送能力は、ビル人口の15%以上となる必要がある。なお、乗客平均待ち時間および平均サービス完了時間については、後述する別の実施形態にて説明する。また、図4の(a)に示す評価基準は、経験に基づいて決まる値である。
入力受付部101は、ユーザの操作に基づき、シミュレーション条件を取得する(ステップS1、以下「ステップ」の記載を繰り返さない)。本実施形態におけるシミュレーション条件は、図4の(b)に示すとおりであるとする。すなわち、ビル人口が1700人、ビルの階数が10階、エレベータ台数が5台、エレベータ速度が210m/分、エレベータ定員が20人、乗客発生率の初期値が40人/5分、1回のシミュレーションの時間であるシミュレーション時間が1時間であるとする。なお、図4の(b)に示すシミュレーション条件は一例であり、本発明に係るシミュレーション条件はこの例に限定されない。例えば、エレベータの加速度、加加速度、戸開閉動作時間などがシミュレーション条件として設定可能であってもよい。なお、戸開閉動作時間とは、エレベータの乗場ドアおよびかごのドアが開き始めてから閉じるまでにかかる時間である。
乗客発生率とは、単位時間で発生するエレベータの利用者の人数、すなわち、単位時間あたりの乗客発生数である。本開示では、単位時間を5分とするが、単位時間はこの例に限定されない。また、本実施形態では、シミュレーションにおける待ち行列のモデルとして、ポアソン到着を用いるものとする。詳細についての説明は省略するが、ポアソン到着とは、待ち行列モデルにおいて、客がポアソン過程に従って到着する到着過程である。換言すれば、シミュレーションにおいて、乗客の発生はランダムであるとする。この場合、乗客発生率は、複数回のシミュレーションにおける平均値である。例えば、乗客発生率が40人/5分であるとは、この乗客発生率のシミュレーションの実行回数を充分多くし、乗客発生率の平均値を算出した場合、該平均値が40人/5分となるということである。換言すれば、1回のシミュレーションでは、乗客発生率が必ずしも40人/5分となるとは限らない。
図4の(b)に示すように、乗客発生率が40人/5分で、シミュレーション時間が1時間である場合、シミュレーションの実行回数を充分多くすれば、発生した利用者の人数の、各シミュレーションにおける平均値が480人となる。一方、この条件のシミュレーションを1回のみ行った場合、該シミュレーションにおいて発生した利用者の人数が480人になるとは限らない。なお、待ち行列のモデルがポアソン到着であることは一例である。
また、乗客発生率を40人/5分とした複数(例えば5通り)の利用者発生系列を用意し、それぞれの発生系列について1時間のシミュレーションを複数回行ってもよい。こうすることでより精度の高いシミュレーション結果を得ることができる。ただし、ここでは説明を簡単にするため、1つの乗客発生率において1通りの発生系列を用意し、該発生系列において1回のみシミュレーションを行うとする。
また、図4の(b)の例の場合、シミュレーションにおけるエレベータの最大輸送能力としては、1700(ビル人口)×0.15(評価基準)=255人/5分以上であることが求められる。換言すれば、本実施形態では、255人/5分が最大輸送能力の評価基準値である。
入力受付部101が、シミュレーション開始操作を受け付けると(S2)、シミュレーション実行部102は、1回目のシミュレーションを実行する(S3、繰り返し処理を実行するステップ)。このシミュレーションにおいて発生した利用者は、乗場行先階登録システムにより、5台のエレベータのいずれかに振り分けられ、目的階まで移動する。シミュレーション実行部102は、このシミュレーションを1時間継続し、積み残し回数を算出する。
積み残し回数とは、利用者が振り分けられたエレベータに乗れなかった回数である。具体的には、利用者は、いずれかのエレベータに振り分けられ、そのエレベータの乗場ドアの前で待機する。かごが到着したとき、乗場ドアの前で待機していたすべての利用者がかごに乗り込もうとするが、待機していた利用者の人数が定員を超えていた場合、乗れない利用者が発生する。この、乗れない利用者の発生回数が積み残し回数である。
1回目のシミュレーションは、シミュレーション条件に基づき、乗客発生率が40人/5分で行われる。シミュレーション開始から1時間が経過すると、シミュレーション実行部102は、乗客発生率と積み残し回数とを対応付けたデータを生成し、シミュレーション結果112として記憶部11に記憶する。続いて、シミュレーション実行部102は、シミュレーションの終了条件が成立したか否かを判定する(S4)。シミュレーションの終了条件は、例えば、乗客発生率が所定値に到達した場合、積み残し回数が所定値に到達した場合などであってもよいが、この例に限定されない。
該終了条件が成立していないと判定した場合(S4でNO)、シミュレーション実行部102は、乗客発生率を変更し(S5)、再びシミュレーションを実行する(S3)。一例として、シミュレーション実行部102は、乗客発生率を1増やし、41人/5分として、2回目のシミュレーションを実行してもよい。以降、シミュレーション実行部102は、シミュレーションの終了条件が成立するまで、ステップS3〜S5を繰り返し実行する。以下、ステップS3〜S5の処理を繰り返し実行すること、すなわち、乗客発生率を変更しながら複数回のシミュレーションを実行することを「繰り返し処理」と称する場合がある。なお、この例においては、ステップS5において、乗客発生率が1ずつ増加するものとして説明するが、ステップS5における乗客発生率の増加量は1に限定されない。例えば、シミュレーション実行部102は、ステップS5を実行する度に、乗客発生率を2ずつ増加させてもよい。
終了条件が成立した場合(S4でYES)、シミュレーション実行部102は、繰り返し処理に含まれる複数のシミュレーションそれぞれに対応する、乗客発生率と積み残し回数とを対応付けた複数のデータを最大輸送能力決定部103へ出力する。
最大輸送能力決定部103は、取得した複数のデータを用いて、乗客発生率に対する積み残し回数をプロットするグラフを生成する(S6)。換言すれば、最大輸送能力決定部103は、乗客発生率に対する積み残し回数を示す点を平面上の直交座標系にプロットする。図5は、シミュレーションにおける、乗客発生率に対する積み残し回数のグラフの一例を示す図である。図5における「+」が、各乗客発生率に対する積み残し回数を示す。図5に示すように、積み残し回数は、乗客発生率が200人/5分以下では0であるが、乗客発生率が200〜250人/5分のあたりで、0より大きい数値となり、以降は、乗客発生率の増加に伴い積み残し回数も増加するという傾向となっている。換言すれば、乗客発生率が200〜250人/5分のあたりで、積み残しが発生し始める。
最大輸送能力決定部103は、積み残し回数が0でない点の近似曲線を特定する(S7)。一例として、最大輸送能力決定部103は、最小二乗法に基づき近似曲線を特定してもよい。図5の例では、近似曲線は、一次関数となっているが、近似曲線はこの例に限定されない。そして、最大輸送能力決定部103は、特定した近似曲線に基づき、最大輸送能力を決定する(S8、最大輸送能力を決定するステップ)。一例として、最大輸送能力決定部103は、近似曲線において積み残し回数が0となるときの乗客発生率を最大輸送能力として決定する。換言すれば、最大輸送能力決定部103は、図5に示すグラフにおいて、近似曲線と横軸との交点における乗客発生率を最大輸送能力として決定する。また、最大輸送能力決定部103は、利用者の積み残しの有無と、乗客発生率とに基づいて、最大輸送能力を決定すると表現することもできる。最大輸送能力決定部103は、図5の例において、最大輸送能力を239人/5分と決定する。最大輸送能力決定部103は、決定した最大輸送能力を出力部104へ出力する。出力部104は、決定した最大輸送能力を示す画面を出力する(S9)。出力部104は、最大輸送能力とともに、最大輸送能力決定部103が生成したグラフを示す画面を出力してもよい。
図5に示す例では、上述したとおり、最大輸送能力は239人/5分である。この値は、評価基準(255人/5分)を下回る。すなわち、図4の(b)に示すシミュレーション条件では、最大輸送能力の基準を満たさない。この場合、ユーザは、最大輸送能力の基準を満たすように、シミュレーション条件を再設定する必要がある。
図6は、シミュレーション条件の他の例を示す図である。図6に示すシミュレーション条件(第2シミュレーション条件)と、図4の(b)に示すシミュレーション条件(第1シミュレーション条件)との相違点は、エレベータの台数である。すなわち、第1シミュレーション条件におけるエレベータの台数は5台である一方、第2シミュレーション条件におけるエレベータの台数は、1台増えて6台となっている。換言すれば、ユーザは、エレベータの台数を1台増加させることにより、最大輸送能力の向上を図っている。ユーザは、図6に示すシミュレーション条件をコンピュータ1に入力し、コンピュータ1は、図3に示す処理を実行する。
図7は、シミュレーションにおける、乗客発生率に対する積み残し回数のグラフの他の例を示す図である。図7の例において、最大輸送能力決定部103は、最大輸送能力を300人/5分と決定する。この値は、評価基準以上であるので、図6に示すシミュレーション条件におけるエレベータの台数および仕様(速度および定員)は、シミュレーション条件におけるビル人口および階数のビルにおいて、適切な最大輸送能力を有しているといえる。
なお、図6の例では、シミュレーション条件においてエレベータの台数が変更されたが、最大輸送能力が評価基準を下回った場合におけるシミュレーション条件の変更はこの例に限定されない。例えば、エレベータの仕様、すなわちエレベータの速度または定員が変更されてもよい。
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るコンピュータ1は、エレベータの設置計画のためのコンピュータである。コンピュータ1は、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの利用における複数回のシミュレーション(繰り返し処理)を実行するシミュレーション実行部102を備える。繰り返し処理は、各回のシミュレーションにおける5分間あたりの利用者数(乗客発生率)がそれぞれ異なる、複数回のシミュレーションである。また、コンピュータ1は、複数回のシミュレーションの結果、乗客発生率に対する利用者の積み残し回数がプロットされたグラフにおいて、積み残し回数が0でない点の近似曲線を特定し、該近似曲線において積み残し回数が0の場合の乗客発生率をエレベータの最大輸送能力として決定する最大輸送能力決定部103を備える。
これにより、交通計算手法が確立されていない乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、理想的な最大輸送能力を定量的に算出することができる。そして、この最大輸送能力を用いて、乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、適切な設置計画を行うことができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図8は、本実施形態に係るコンピュータの機能的構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るコンピュータ1aと、実施形態1にて説明したコンピュータ1との相違点は、コンピュータ1aは制御部10aを備えるのに対し、コンピュータ1は制御部10を備える点である。制御部10aは、プログラムを実行することにより、コンピュータ1aを統括的に制御する。例えば、コンピュータ1aは、ユーザの操作に基づいてシミュレーションを実行し、シミュレーションの結果に基づいて決定された最大輸送能力を出力する。
制御部10aは、プログラムの記述に応じて、入力受付部101、シミュレーション実行部102、最大輸送能力決定部103、出力部104、算出部105(第1算出部)、輸送能力決定部106(第2決定部)として機能する。制御部10aは、実行される処理の内容に応じて、図示しないその他の機能ブロックとしても機能することができる。
算出部105は、シミュレーション実行部102が実行したシミュレーションの各結果において、乗客平均待ち時間を算出する。乗客平均待ち時間とは、例えば、利用者が、乗場行先階登録システムによりいずれかのエレベータに振り分けられてから、該エレベータのかごが到着するまでにかかった時間、すなわち、利用者がかごを待っていた時間(待ち時間)の平均値である。
なお、乗客平均待ち時間はこの例に限定されない。例えば、乗客平均待ち時間は、利用者が、乗場行先階登録システムによりいずれかのエレベータに振り分けられてから、該エレベータのかごが到着し、戸開動作(乗場ドア、およびかごのドアが開く動作)が開始されるまでにかかった時間の平均値であってもよい。また例えば、乗客平均待ち時間は、利用者が、乗場行先階登録システムによりいずれかのエレベータに振り分けられてから、該エレベータのかごが到着し、乗客のかごへの乗り込みが完了するまでにかかる時間の平均値であってもよい。すなわち、乗客平均待ち時間は、利用者がかごを待つ時間の平均値として適切なものであればよく、該時間の始点と終点がどのようなタイミングであるかは特に限定されない。
輸送能力決定部106は、平均待ち時間が所定値であるときの乗客発生率に基づいて、エレベータの輸送能力を決定する。ここでは、エレベータの輸送能力を、乗客平均待ち時間の評価基準を満たす、単位時間(例えば5分)で輸送できる利用者の総数であると定義する。乗客平均待ち時間の評価基準は、エレベータをフル回転させたときの利用者の待ち時間の平均値より長い。つまり、エレベータの輸送能力は、同じ条件において、エレベータの最大輸送能力以下の値となる。このため、エレベータの最大輸送能力は、理想的な最大輸送能力と表現することもできる。また、エレベータの輸送能力は、現実的な最大輸送能力と表現することもできる。
エレベータの輸送能力が最大輸送能力より大きい場合、そのエレベータは実現不可能である。また、乗客平均待ち時間が評価基準の値(図4の(b)における35秒)である場合において、輸送能力が評価基準の値(ビル人口の15%)を下回る場合、そのエレベータは適切な輸送能力を有しているとはいえない。つまり、エレベータが適切な輸送能力を有しているとみなされるためには、最大輸送能力が、5分間輸送能力の評価基準(ビル人口の15%)以上であるとともに、輸送能力が、評価基準以上、かつ、最大輸送能力以下であることが必要である。
<処理の流れ>
図9は、制御部10aが実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、ステップS1〜S8については、図3のステップS1〜S8と同様であるため、ここでは説明を繰り返さない。また、本実施形態に係るシミュレーション条件は、図6に示すシミュレーション条件であるとする。
シミュレーション実行部102は、一例として、発生した乗客の各々について、待ち時間を計測し、シミュレーションごとに記憶部11に格納する。この処理は、繰り返し処理における各シミュレーションが終了(すなわち、シミュレーション開始から1時間経過)する度に実行される。シミュレーション実行部102は、シミュレーションの終了条件が成立した場合(ステップS5でYES)、その旨を算出部105へ通知する。
算出部105は、乗客平均待ち時間を算出する(ステップS11)。算出部105は、一例として、記憶部11から各シミュレーションの全乗客の待ち時間を読み出し、シミュレーションごとに待ち時間の平均値を算出することにより、シミュレーションごとの乗客平均待ち時間を算出する。該平均待ち時間は、換言すれば、乗客発生率ごとの乗客平均待ち時間である。また、算出部105は、乗客発生率に対する乗客平均待ち時間をプロットするグラフを生成し、輸送能力決定部106へ出力する。あるいは、算出部105は、繰り返し処理に含まれる複数のシミュレーションそれぞれに対応する、乗客発生率と乗客平均待ち時間とを対応付けた複数のデータを生成し、輸送能力決定部106へ出力してもよい。
輸送能力決定部106は、算出部105から取得したデータに基づいて、エレベータの輸送能力を決定する(S12)。輸送能力決定部106は、一例として、グラフにおける点の近似曲線を特定する。例えば、輸送能力決定部106は、最小二乗法に基づき近似曲線を特定してもよい。なお、算出部105が、各シミュレーションに対応する、乗客発生率と乗客平均待ち時間とを対応付けたデータを生成する構成の場合、輸送能力決定部106が、取得した複数のデータを用いてグラフを生成してもよい。
図10は、シミュレーションにおける、乗客発生率に対する乗客平均待ち時間のグラフの一例を示す図である。図10の例では、近似曲線は六次関数となっているが、近似曲線はこの例に限定されない。
輸送能力決定部106は、一例として、近似曲線において、乗客平均待ち時間が評価基準の値である35秒となるときの乗客発生率を輸送能力として決定する。図10の例では、乗客平均待ち時間が35秒であるときの乗客発生率は276人/5分であるので、輸送能力決定部106は、輸送能力を276人/5分と決定する。輸送能力決定部106は、決定した輸送能力を出力部104へ出力する。出力部104は、最大輸送能力および輸送能力を示す画面を出力する(S9)。出力部104は、最大輸送能力及び輸送能力とともに、各部が生成したグラフを示す画面を出力してもよい。
図10に示す例では、上述したとおり、輸送能力は276人/5分である。この値は評価基準(255人/5分)以上である。また、実施形態1で説明したとおり、本実施形態のシミュレーション条件と同一のシミュレーション条件で決定された最大輸送能力は300人/5分であるので、この値も評価基準を以上であり、また、輸送能力は最大輸送能力以下である。また、乗客平均待ち時間は35秒なので、この値は評価基準以下である。すなわち、図6に示すシミュレーション条件でのシミュレーションの結果、最大輸送能力、輸送能力、乗客平均待ち時間はいずれも評価基準を満たしている。よって、図6に示すシミュレーション条件におけるエレベータの台数および仕様(速度および定員)は、シミュレーション条件におけるビル人口および階数のビルにおいて、適切な最大輸送能力、輸送能力、乗客平均待ち時間を有しているといえる。
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るコンピュータ1aは、複数回のシミュレーションの各結果における、乗客平均待ち時間を算出する算出部105をさらに備える。また、コンピュータ1aは、エレベータの輸送能力を決定する輸送能力決定部106をさらに備える。輸送能力決定部106は、乗客発生率に対する乗客平均待ち時間がプロットされたグラフにおいて、各点の近似曲線を特定し、該近似曲線にて、乗客平均待ち時間が評価基準の値であるときの乗客発生率をエレベータの輸送能力として決定する。
これにより、交通計算手法が確立されていない乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、輸送能力(現実的な最大輸送能力)を定量的に算出することができる。また、このようなエレベータにおけるサービス性を評価するための値(乗客平均待ち時間)を算出することができる。これにより、乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、適切な設置計画を行うことができる。そして、この輸送能力を用いて、乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、適切な設置計画を行うことができる。
〔実施形態3〕
本発明のさらなる別の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
算出部105(第2算出部)は、乗客平均待ち時間を算出することに代えて、平均サービス完了時間を算出してもよい。平均サービス完了時間とは、例えば、利用者が、エレベータの出発階(乗場行先階登録システムで登録した出発階)におけるエレベータ乗場(例えば、エレベータホール)に到着してから、エレベータ(かご)に乗り、目的階(乗場行先階登録システムで登録した目的階)で降りるまでに要する時間の平均値である。
なお、平均サービス完了時間はこの例に限定されない。例えば、平均サービス完了時間は、利用者が、上記エレベータ乗場に到着してからエレベータに乗り、目的地に到着して戸開動作が開始されるまでにかかる時間であってもよい。すなわち、平均サービス完了時間は、利用者によるエレベータの利用開始から利用終了までの時間の平均値として適切なものであればよく、該時間の始点と終点がどのようなタイミングであるかは特に限定されない。
<処理の流れ>
図11は、制御部10aが実行する処理の流れの他の例を示すフローチャートである。なお、ステップS1〜S9、S12については、図3のステップS1〜S9、図9のステップS12と同様であるため、ここでは説明を繰り返さない。また、本実施形態に係るシミュレーション条件は、図6に示すシミュレーション条件であるとする。
シミュレーション実行部102は、一例として、発生した乗客の各々について、出発階に到着してから、エレベータに乗り、目的階で降りるまでの時間(サービス完了時間)を計測し、シミュレーションごとに記憶部11に格納する。この処理は、繰り返し処理における各シミュレーションが終了(すなわち、シミュレーション開始から1時間経過)する度に実行される。シミュレーション実行部102は、シミュレーションの終了条件が成立した場合(ステップS5でYES)、その旨を算出部105へ通知する。
算出部105は、平均サービス完了時間を算出する(ステップS21)。算出部105は、一例として、記憶部11から各シミュレーションの全乗客のサービス完了時間を読み出し、シミュレーションごとにサービス完了時間の平均値を算出することにより、シミュレーションごとの平均サービス完了時間を算出する。該兵器サービス完了時間は、換言すれば、乗客発生率ごとの平均サービス完了時間である。また、算出部105は、乗客発生率に対する平均サービス完了時間をプロットするグラフを生成し、輸送能力決定部106(第3決定部)へ出力する。あるいは、算出部105は、繰り返し処理に含まれる複数のシミュレーションそれぞれに対応する、乗客発生率と平均サービス完了時間とを対応付けたデータを生成し、輸送能力決定部106へ出力してもよい。
図12は、シミュレーションにおける、乗客発生率に対する平均サービス完了時間のグラフの一例を示す図である。図12の例では、近似曲線は六次関数となっているが、近似曲線はこの例に限定されない。
輸送能力決定部106は、一例として、近似曲線において、平均サービス完了時間が評価基準の値である80秒(図4の(a)参照)となるときの乗客発生率を輸送能力として決定する。なお、算出部105が、各シミュレーションに対応する、乗客発生率と平均サービス完了時間とを対応付けたデータを生成する構成の場合、輸送能力決定部106が、取得した複数のデータを用いてグラフを生成してもよい。
図10の例では、乗客平均待ち時間が80秒であるときの乗客発生率は288人/5分であるので、輸送能力決定部106は、輸送能力を288人/5分と決定する。輸送能力決定部106は、決定した輸送能力を出力部104へ出力する。
図12に示す例では、上述したとおり、輸送能力は288人/5分である。この値は評価基準(255人/5分)以上である。また、実施形態1で説明したとおり、本実施形態のシミュレーション条件と同一のシミュレーション条件で決定された最大輸送能力は300人/5分であるので、この値も評価基準以上であり、また、輸送能力は最大輸送能力以下である。また、平均サービス完了時間は80秒なので、この値は評価基準以下である。すなわち、図6に示すシミュレーション条件でのシミュレーションの結果、最大輸送能力、輸送能力、平均サービス完了時間はいずれも評価基準を満たしている。よって、図6に示すシミュレーション条件におけるエレベータの台数および仕様(速度および定員)は、シミュレーション条件におけるビル人口および階数のビルにおいて、適切な最大輸送能力、輸送能力、平均サービス完了時間を有しているといえる。
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るコンピュータ1aは、複数回のシミュレーションの各結果における、平均サービス完了時間を算出する算出部105をさらに備える。また、コンピュータ1aは、エレベータの輸送能力を決定する輸送能力決定部106をさらに備える。輸送能力決定部106は、乗客発生率に対する平均サービス完了時間がプロットされたグラフにおいて、各点の近似曲線を特定し、該近似曲線にて、平均サービス完了時間が評価基準の値であるときの乗客発生率をエレベータの輸送能力として決定する。
これにより、交通計算手法が確立されていない乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、輸送能力(現実的な最大輸送能力)を定量的に算出することができる。また、このようなエレベータにおけるサービス性を評価するための値(平均サービス完了時間)を算出することができる。これにより、乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、適切な設置計画を行うことができる。そして、この輸送能力を用いて、乗場行先階登録システムを採用したエレベータについて、適切な設置計画を行うことができる。
〔実施形態4〕
本発明のさらなる別の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図13は、本実施形態に係るコンピュータの機能的構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るコンピュータ1bと、実施形態1にて説明したコンピュータ1との相違点は、コンピュータ1bは制御部10bを備えるのに対し、コンピュータ1は制御部10を備える点である。制御部10bは、プログラムを実行することにより、コンピュータ1bを統括的に制御する。例えば、コンピュータ1bは、ユーザの操作に基づいてシミュレーションを実行し、シミュレーションの結果に基づいて決定された最大輸送能力を出力する。
制御部10bは、プログラムの記述に応じて、入力受付部101(取得部)、シミュレーション実行部102、最大輸送能力決定部103、出力部104、算出部105、輸送能力決定部106、判定部107(取得部、判定部)、設置計画生成部108(生成部)として機能する。制御部10bは、実行される処理の内容に応じて、図示しないその他の機能ブロックとしても機能することができる。
判定部107は、最大輸送能力決定部103が決定した最大輸送能力、および、輸送能力決定部106が決定した輸送能力が、評価基準を満たしているか否かを判定する。判定部107は、一例として、最大輸送能力および輸送能力が、ビル人口と5分間輸送能力の評価基準(図4の例では、それぞれ1700人、15%)から求められる、5分間輸送能力の評価基準値(図4の例では、255人/5分)以上であるか否かを判定する。
ビル人口および評価基準の情報は、ユーザが入力(すなわち、入力受付部101が取得)してもよいし、シミュレーション用データ111として記憶部11に記憶されていてもよい。後者の場合、判定部107は、記憶部11からビル人口および評価基準の情報を読み出す。ビル人口および評価基準の情報のうち、一方をユーザが入力し、他方が記憶部11に記憶されていてもよい。判定部107は、このビル人口および評価基準の情報を用いて、評価基準値を算出する。
あるいは、評価基準値そのものをユーザが入力してもよいし、該評価基準値がシミュレーション用データ111として記憶部11に記憶されていてもよい。以上より、入力受付部101および判定部107のいずれか一方が、評価基準を取得する機能を有していると表現することができる。
判定部107は、最大輸送能力および輸送能力が評価基準値以上であると判定した場合、シミュレーション実行部102が実行したシミュレーションのシミュレーション条件、最大輸送能力、輸送能力、乗客平均待ち時間(あるいは、平均サービス完了時間)を設置計画生成部108へ出力する。設置計画生成部108へ出力するこれらの情報は、制御部10bの各機能ブロックから取得してもよいし、記憶部11に記憶されている情報を読み出してもよい。
一方、最大輸送能力および輸送能力の少なくとも一方が評価基準値未満であると判定した場合、判定部107は、シミュレーション実行部102へその旨を通知する。シミュレーション実行部102は、該通知を受けると、シミュレーション条件を変更して、シミュレーションを再度実行する。具体的には、シミュレーション実行部102は、かご(エレベータ)の台数、移動速度、定員の少なくとも何れかを変更し、乗客発生率を変更させながら行う複数回のシミュレーションを再度実行する。
設置計画生成部108は、建物におけるエレベータの設置計画を生成する。具体的には、設置計画生成部108は、取得したシミュレーション条件、最大輸送能力、輸送能力、乗客平均待ち時間(あるいは、平均サービス完了時間)を用いて、設置計画を生成し、出力部104に該設置計画を出力させる。出力部104は、設置計画を示す画面を出力してもよいし、周辺機器としてのプリンタ(不図示)に、設置計画を印刷させてもよい。
<処理の流れ>
図14は、制御部10bが実行する処理の流れのさらなる別の例を示すフローチャートである。なお、ステップS1〜S8、S11、S12については、図3のステップS1〜S8、図9のステップS11、S12と同様であるため、ここでは説明を繰り返さない。また、本実施形態に係るシミュレーション条件は、図6に示すシミュレーション条件であるとする。また、本実施形態では、算出部105は、乗客平均待ち時間を算出するものとする。
判定部107は、ステップS8にて最大輸送能力決定部103が決定した最大輸送能力、および、ステップS12にて輸送能力決定部106が決定した輸送能力が、評価基準を満たすか否か、すなわち、評価基準値以上であるか否かを判定する(S31)。
最大輸送能力および輸送能力が評価基準値以上であると判定した場合(S31でYES)、判定部107は、シミュレーション実行部102が実行したシミュレーションのシミュレーション条件、最大輸送能力、輸送能力、乗客平均待ち時間を設置計画生成部108へ出力する。設置計画生成部108は、取得した各情報に基づいて設置計画を生成し(S32)、該設置計画を出力部104へ出力する。出力部104は、取得した設置計画を出力する(S33)。例えば、設置計画を示す画面を表示させるとともに、設置計画を印刷させる。
一方、最大輸送能力および輸送能力の少なくとも一方が評価基準値未満であると判定した場合(S31でNO)、判定部107は、シミュレーション実行部102へその旨を通知する。シミュレーション実行部102は、該通知を受けると、シミュレーション条件、具体的には、エレベータの台数、移動速度、定員の少なくとも何れかを変更する(S34)。そして、図14に示す処理は、ステップS3に戻る。すなわち、シミュレーション実行部102は、シミュレーションを再度実行する。換言すれば、図14に示す処理において、シミュレーション実行部102は、判定部107が、最大輸送能力および輸送能力が評価基準値以上であると判定するまで、客発生率を変更させながら行う複数回のシミュレーションを繰り返し実行する。
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るコンピュータ1bは、最大輸送能力決定部103が決定した最大輸送能力、および、輸送能力決定部106が決定した輸送能力が、所定の評価基準を満たしているか否かを判定する判定部107をさらに備える。
これにより、コンピュータ1bのユーザが、最大輸送能力および輸送能力が、評価基準を満たしているか否かを判断する必要が無くなるため、ユーザの負担が低減される。換言すれば、ユーザは、エレベータの最大輸送能力および輸送能力が基準を満たしているか否かの判定結果を容易に取得することができる。
また、本実施形態に係るコンピュータ1bのシミュレーション実行部102は、最大輸送能力および輸送能力の少なくとも一方が評価基準値を満たしていないと判定された場合、以下の処理を実行する。すなわち、シミュレーション実行部102は、判定部が、最大輸送能力および輸送能力が評価基準を満たしていると判定するまで、エレベータの台数、移動速度、および定員の少なくともいずれかを変更して、複数回のシミュレーションを実行する。
これにより、最大輸送能力および輸送能力の少なくとも一方が評価基準を満たしていない場合に、コンピュータ1bのユーザが、シミュレーションを再度実行するための操作を入力せずとも、条件を異ならせたシミュレーションが再度実行される。これにより、ユーザの負担が低減される。また、ユーザは、評価基準を満たすエレベータの台数、移動束、および定員を容易に認識することができる。
また、本実施形態に係るコンピュータ1bは、エレベータの設置計画を生成する設置計画生成部108をさらに備える。設置計画生成部108は、判定部107が、最大輸送能力および輸送能力が評価基準を満たしていると判定した、複数回のシミュレーションにおけるエレベータの台数、移動速度、定員に基づいて、該設置計画を生成する。
これにより、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画を自動的に作成することができるので、ユーザの負担が低減される。
なお、シミュレーション実行部102が変更可能なシミュレーション条件は、かご(エレベータ)の台数、移動速度、定員に限定されない。例えば、シミュレーション実行部102は、かごの加速度、かごの加加速度、戸開閉動作時間などを変更可能であってもよい。シミュレーション実行部102は変更可能なシミュレーション条件は、最大輸送能力および輸送能力を変化させ得るエレベータのパラメータの少なくとも何れかであればよい。
また、設置計画生成部108は、該パラメータに基づいて設置計画を生成すればよい。例えば、設置計画生成部108は、上記エレベータの台数、移動速度、定員に代えて、又は加えて、かごの加速度、かごの加加速度、戸開閉動作時間などに基づいて、設置計画を生成してもよい。
〔変形例〕
上述した例では、最大輸送能力決定部103は、積み残しが発生したシミュレーションにおける乗客発生率と、積み残しの発生回数(積み残し回数)とを示す点を、平面状の直交座標系(グラフ)にプロットしていた。そして、最大輸送能力決定部103は、プロットした点に基づく近似曲線を特定し、該近似曲線において積み残し回数がゼロとなるときの乗客発生率の値を前記最大輸送能力として決定していた。これに対し、最大輸送能力決定部103は、積み残しが無いシミュレーションにおける乗客発生率のうちの最大値を、最大輸送能力として決定してもよい。この変形例についても、最大輸送能力決定部103は、利用者の積み残しの有無と、乗客発生率とに基づいて、最大輸送能力を決定すると表現することができる。
これにより、最大輸送能力の決定処理を短時間化することができる。ただし、より正確な最大輸送能力の決定が必要である場合、実施形態1にて説明した方法で最大輸送能力を決定することが好ましい。
実施形態4において、制御部10bは、設置計画生成部108を含まない構成であってもよい。この例の場合、出力部104は、実施形態2および3と同様に、評価基準を満たす最大輸送能力および輸送能力を出力する。そして、コンピュータ1bのユーザがこの最大輸送能力および輸送能力、並びにシミュレーション条件に基づいて、設置計画を生成する。
実施形態4において、シミュレーション実行部102は、判定部107の判定結果に依らず、シミュレーション条件を変更した複数回のシミュレーションを実行する構成であってもよい。換言すれば、コンピュータ1bは、評価基準を満たす最大輸送能力および輸送能力の組み合わせを、複数決定する構成であってもよい。これはすなわち、設置計画において、エレベータの台数および仕様の案を複数作成することに相当する。結果として、エレベータを設置する建物の管理者(エレベータ設置における担当者)に、エレベータの台数および仕様の案を複数提示することができる。
なお、ユーザの入力に基づいて、シミュレーション条件を変更した複数回のシミュレーションを実行する構成である実施形態1においても、コンピュータ1は、評価基準を満たす最大輸送能力を複数決定してもよい。同様に、実施形態2、3においても、コンピュータ1aは、評価基準を満たす最大輸送能力および輸送能力の組み合わせを複数決定してもよい。換言すれば、コンピュータ1、またはコンピュータ1aのユーザは、最大輸送能力、または、最大輸送能力および輸送能力の組み合わせが評価基準を満たしていたとしても、シミュレーション条件を変更し、複数回のシミュレーションを再度実行してもよい。
シミュレーション実行部102は、エレベータの利用者が、建物におけるエレベータが設置された空間(例えば、エレベータホール)に到着してから、出発階および目的階の入力までにかかる待ち時間を、シミュレーションにおいて考慮してもしなくてもよい。該待ち時間とは、例えば、エレベータホールに設置された入力装置において、先に入力している利用者がいる場合、先に入力している利用者の入力が終了するまで、待機する時間のことである。乗場行先階登録システムにおいて、この入力装置を採用する場合、シミュレーションにおいて該待ち時間を考慮に入れたシミュレーションを実行すれば、より正確なシミュレーションを行うことができる。この場合、シミュレーション条件には、入力装置の台数が含まれていてもよい。この入力装置の台数は、エレベータの台数および仕様と同様に、変更可能な条件であってもよい。
一方、利用者が自身の携帯端末(スマートフォンなど)を用いて、出発階および目的階を入力する乗場行先階登録システムもある。この場合、利用者は、エレベータホールへの到着前に出発階および目的階を入力することも可能であるため、この乗場行先階登録システムを採用する場合は、上記待ち時間は考慮しない(ゼロとする)としてもよい。
上述した各実施形態では、最大輸送能力および輸送能力を「利用者の総数」と定義し、コンピュータ1は、該最大輸送能力および該輸送能力を決定するものとして説明した。これに対し、最大輸送能力および輸送能力を「利用者の総数のビル人口に対する割合(パーセンテージ)」と定義してもよい。換言すれば、この例におけるコンピュータ1は、最大輸送能力および輸送能力として、「利用者の総数のビル人口に対する割合」を決定する。
〔ソフトウェアによる実現例〕
コンピュータ1、1a、1bの制御ブロック(特に制御部10、10a、10b)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、コンピュータ1、1a、1bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。