JP6900734B2 - 外装用化粧シート - Google Patents

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Description

本発明は、透明樹脂層、装飾部、及び遮断層を備え、外装に使用した際に当該透明樹脂層中から外部にラジカル捕捉剤や紫外線吸収剤が移行しにくい化粧シートに関する。本発明の化粧シートは、主に窓枠、扉、手摺、屋根、及び柵などの外装建材に使用される。
窓枠や扉などの外装建材表面に、装飾処理を施してなる化粧シートを貼り合わせ、外装建材を見た目よく装飾することが行われている。この外装用化粧シートの一例として、当該装飾処理の表面にさらに透明樹脂層が設けられたものが知られている。
耐候性の向上を目的として、透明樹脂層には通常、ラジカル捕捉剤や紫外線吸収剤等の耐候剤が使用される。しかし、時間経過や、高温環境下における長時間の使用等により、透明樹脂層中の耐候剤が透明樹脂層の外部や他の部材へ移行(ブリードアウト)し減る結果、透明樹脂層において、黄変や茶変等の変色が生じたり、樹脂劣化に伴うクラック形成、割れ、剥がれ等が起こることが知られている。このように、耐候剤の移行は、化粧シートの耐久性を損ね、製品寿命を縮める要因となる。
従来、透明樹脂層からの耐候剤の移行を防ぐ様々な技術が開発されてきた。
特許文献1には、基材の一方の面に表面保護層を有する化粧シートにおいて、表面保護層が、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)と電離放射線硬化性樹脂等との共重合体である技術が開示されている。当該文献には、HALSによりブリードアウトが抑制される結果、化粧シートに耐候性を付与できるとの記載がある。
特許文献2には、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層及び透明性ポリエステル系樹脂層が順に積層されてなる化粧シートであって、これらの層の少なくとも1つが、塩基性成分を有する紫外線吸収剤を含む技術が開示されている。当該文献には、このような紫外線吸収剤が、各層の樹脂骨格中のカルボキシル基と相互作用して、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑止する効果を奏するとの記載がある。
特許文献3には、絵柄模様のインキ層の表面側に、耐候剤としてトリアジン系の紫外線吸収剤を含む透明熱可塑性樹脂層を備える化粧シートが開示されている。当該文献には、樹脂との相溶性に問題がなければ、トリアジン骨格がブリードアウトを抑制するとの記載がある。
特許文献4には、基材シート上に模様層と透明オレフィン樹脂層とを少なくともこの順に有してなる鏡面化粧シートにおいて、透明オレフィン樹脂層中に、分子量が400以上である耐候安定剤が用いられる技術が開示されている。当該文献には、耐候安定剤の分子量と経時的なブリードアウトとの関係に関する記載がある。
特開2015−91650号公報 特開2005−238498号公報 特開2001−315270号公報 特開2012−40723号公報
しかし、特許文献1−3に記載のHALSや紫外線吸収剤等の耐候剤は、樹脂の種類により程度の差は有るものの、経時的に樹脂中からブリードアウトにより喪失減量するため、十分な耐久性を得ることが困難となっている。耐候剤の経時減量を防ぐためには、ブリードアウトにより経時的に減量する分だけ耐候剤の添加量を増量したり、分子量の大きい耐候剤を用いたり(特許文献4参照)、反応性官能基を有する耐候剤を樹脂材料と化学結合を形成させることで固定したり等の対策が試みられている。しかし、これらの対策を施しても、十分な製品寿命は得られない。即ち、耐候剤の増量の場合は、原材料費が高騰する、樹脂の透明度が低下したりヘイズが増える、樹脂表面にブリードアウトした耐候剤により樹脂層の外観に白濁を生じる等の問題を生じる。また、高分子量の耐候剤或いは反応性官能基を有する耐候剤を選択する場合は、原材料費の高騰に加え、使用可能な耐候剤の選択肢が制限される等の問題を生じる。
本発明は、耐候剤の移行に関する上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、透明樹脂層、装飾部及び遮断層を備え、外装に使用した際に透明樹脂層からラジカル捕捉剤や紫外線吸収剤が移行しにくい化粧シートを提供することを目的とする。
本発明の外装用化粧シートは、オレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂、及び、ラジカル捕捉剤及び紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1つの耐候剤を含む透明樹脂層、並びに前記透明樹脂層の少なくともいずれか一方の面の側に配置される装飾層、及び当該透明樹脂層の表面の全部又は一部が直接装飾処理されてなる装飾面からなる群より選ばれる少なくとも1つの装飾部を備える外装用化粧シートであって、
前記透明樹脂層の少なくともいずれか一方の面の側に、さらに遮断層を備え、前記遮断層全体が、鱗片状無機粒子が自己組織化してなる膜であり、当該遮断層中で、当該鱗片状無機粒子の底面は、前記透明樹脂層における前記遮断層を備える側の面に対して平行又は略平行の向きに整列し、かつ隣接し合う鱗片状無機粒子直接互いに結合しており、前記遮断層の平均厚さが、1.0〜100μmの範囲内であることを特徴とする。
本発明において、前記鱗片状無機粒子は鱗片状シリカ粒子であり、前記自己組織化してなる膜は、隣接し合う鱗片状シリカ粒子がSi−O結合により互いに結合してなる膜であってもよい。
本発明は、前記装飾部と接して前記遮断層を備えていてもよい。
本発明は、前記透明樹脂層を挟んで、前記装飾部とは反対側に前記遮断層を備えていてもよい。
本発明は、前記装飾部として少なくとも前記装飾層を備え、前記透明樹脂層と前記装飾層との間に前記遮断層を備えていてもよい。
本発明は、前記透明樹脂層の両面の側に遮断層を備えていてもよい。
本発明は、前記透明樹脂層、前記装飾部及び前記遮断層を備える積層体の一面側に、さらに基材を備えることが、外装用化粧シートの機械的強度の確保の点から好ましい。
この際、前記基材はポリ塩化ビニル系樹脂基材であってもよい。
本発明によれば、透明樹脂層の少なくとも一方の面側に、扁平状無機粒子を含む皮膜である遮断層を備えるため、当該透明樹脂層からの耐候剤の移行を防止でき、その結果、外装用化粧シートの変色、クラック形成、剥がれ及び割れを抑制でき、耐久性を向上させることができる。
透明樹脂層の両面に遮断層が形成されてなる積層体の斜視模式図である。 図1中の遮断層2表面の一部を抜き出して示した斜視模式図である。 透明樹脂層の片面に遮断層が形成されてなる積層体の断面模式図であり、遮断層中の扁平状無機粒子の底面が、透明樹脂層の一方の面に平行の向きに整列している様子を示す。 透明樹脂層の片面に遮断層が形成されてなる積層体の断面模式図であり、遮断層中の扁平状無機粒子の底面が、透明樹脂層の一方の面に略平行の向きに整列している様子を示す。 装飾処理された透明樹脂層の片面に遮断層が形成されてなる積層体の断面模式図であり、遮断層中の扁平状無機粒子の底面が、透明樹脂層の一方の面に平行の向きに整列している様子を示す。 装飾処理された透明樹脂層の片面に遮断層が形成されてなる積層体の断面模式図であり、遮断層中の扁平状無機粒子の底面が、透明樹脂層の一方の面に略平行の向きに整列している様子を示す。 装飾処理された透明樹脂層の片面に遮断層が形成されてなる積層体の断面模式図であり、当該透明樹脂層の凹部に位置する扁平状無機粒子の配列が不規則となった様子を示す。 透明樹脂層、装飾層、及び遮断層を備える積層体の断面模式図である。 透明樹脂層、装飾層、及び遮断層を備える他の積層体の断面模式図である。 装飾面を備える透明樹脂層、及び遮断層を備える積層体の断面模式図である。 装飾面を備える透明樹脂層、装飾層、及び遮断層を備える積層体の断面模式図である。 本発明の外装用化粧シートの実施形態の断面模式図である。
次に、本発明の実施の態様について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の態様に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
本発明において樹脂の硬化物とは、化学反応を経て又は経ないで固化したもののことをいう。
本発明の外装用化粧シートは、オレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂、及び、ラジカル捕捉剤及び紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1つの耐候剤を含む透明樹脂層、並びに前記透明樹脂層の少なくともいずれか一方の面の側に配置される装飾層、及び当該透明樹脂層の表面の全部又は一部が直接装飾処理されてなる装飾面からなる群より選ばれる少なくとも1つの装飾部を備える外装用化粧シートであって、
前記透明樹脂層の少なくともいずれか一方の面の側に、さらに遮断層を備え、前記遮断層は、必須成分として扁平状無機粒子を含み、さらにバインダー樹脂を含んでいてもよい皮膜であり、当該遮断層中で、当該扁平状無機粒子の底面は、前記透明樹脂層における前記遮断層を備える側の面に対して平行又は略平行の向きに整列し、かつ隣接し合う扁平状無機粒子が直接又はバインダー樹脂を介して互いに結合していることを特徴とする。
1.透明樹脂層
透明樹脂層は、装飾部を含む外装用化粧シート全体を保護する役割を担う。
特に装飾層を備える場合には、装飾層が大気に露出すると、紫外線や熱により装飾層が劣化し、剥げ、落ちる場合がある。また、例えば着色剤を含有する基材を用いる場合、当該基材が大気に露出する場合についても、同様の問題が生じるおそれがある。したがって、装飾層の劣化や基材等の色あせを防ぎ、外装用化粧シート全体を保護するために、透明樹脂層により外装用化粧シート全体が覆われることが好ましい。
透明樹脂層は、下記の樹脂及び耐候剤を含む。
透明樹脂層には、外装用化粧シートの物理的損傷や化学的劣化を防止する目的で、オレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂が使用される。
アクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸エステル(ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、等)、ポリメタクリル酸エステル(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、等)、及びこれらの共重合体等が例示できる。また、オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体等が例示できる。
これらの樹脂は、1種類のみ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
透明樹脂層には、化粧シートの表面層として求められる機能を補強することを目的として、ラジカル捕捉剤及び紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1つの耐候剤が使用される。
上記耐候剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、その添加量はラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤とも通常0.1〜5質量%程度である。一般的には、ラジカル捕捉剤と紫外線吸収剤とを併用するのが好ましいが、これらをそれぞれ単独で用いてもよい。
ラジカル捕捉剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−トリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラギス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を用いることができる。その他のラジカル捕捉剤としては、例えば、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダードアミン系;1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸等の含窒素ヒンダードフェノール系;3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルモノエチルホスホネートのカルシウム塩、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルモノエチルホスホネートのニッケル塩、これらのマグネシウム塩等の金属塩ヒンダードフェノール系;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系;ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等の硫黄系;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等の燐系等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、ベンゾエート系等の有機系の紫外線吸収剤の他、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機系の紫外線吸収剤も用いることができる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(4−イソオクチルオキシカルボニルエトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類が挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類が挙げられる。
これら耐候剤の総含有量は、例えば、透明樹脂層の質量を100質量%としたとき、0.01〜20質量%であってもよく、0.1〜10質量%であることが好ましい。
透明樹脂層には、化粧シートの表面層として求められる機能を補強するために、所望により、その他の各種添加剤、補強剤、充填剤、例えば、光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が添加される。
これらの材料を混合したものをカレンダー製法、キャスティング製法等の常用の方法により製膜して透明樹脂フィルムが得られる。この透明樹脂フィルムが透明樹脂層の形成に用いられる。透明樹脂フィルムの厚みは50〜100μm程度、好ましくは80μm程度である。通常、この透明樹脂フィルムを透明樹脂層として用いる。
本発明に係る外装用化粧シートを構成する各層(透明樹脂層、遮断層、及び必要な場合には装飾層、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、トップコート層等)の平均厚さの測定方法は以下の通りである。まず、外装用化粧シートの断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡などで観察する。測定対象となる層の厚さを3か所〜10か所程度測定し、算出される厚さの平均を、その層の平均厚さとする。
ただし、透明樹脂層が装飾面を有する場合には、装飾面が凹形状である部分の厚さと、装飾面が凸形状である部分の厚さは異なる。したがって、装飾面を備える透明樹脂層については、装飾面が凸形状である部分について上記方法により厚さを測定し、平均厚さを算出する。
2.装飾部
装飾部とは、後述する装飾層及び装飾面の総称であり、化粧シートを設置する対象(被着体)を見た目よく飾るための色彩や模様等が施された部分である。装飾部により外装用化粧シートに付与される色彩や模様等は、外装用化粧シートの用途により適宜デザインや材料、形成方法が選択されるものであり、特に限定されるものではない。
(1)装飾層
装飾層は、透明樹脂層の少なくともいずれか一方の面の側に配置される。
装飾層により透明樹脂層表面に形成される模様としては、例えば立体的模様や平面的模様等が挙げられる。
立体的模様としては、単純な凹凸模様、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が例示できる。立体的模様の凹部に着色剤を充填しても良い。充填は従来公知のワイピング法等によれば良い。着色剤としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾ化合物、ペリレン系化合物等の有機顔料あるいは染料、アルミニウム、真鍮等の金属の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等の従来公知の着色顔料が用いられる。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも良いが、一般的には、被着体を隠蔽するために不透明着色が良い。
平面的模様としては、木目、石目、布目等の天然物の表面外観を模した絵柄模様、水玉模様、縞模様、幾何学模様等の抽象柄模様、文字又は数字を含む模様等が例示できる。
装飾層により透明樹脂層表面に付与される色彩としては、例えば単色全面ベタ、複数の色彩の組み合わせ等が挙げられる。装飾層は、複数の色彩の組み合わせによって写真や絵画を再現するものであったり、それ自体が絵画であったりしてもよい。
装飾層を形成する材料としては、例えば、金属薄膜や、バインダーに上述した着色剤を分散させたインク等が挙げられる。
金属薄膜としては、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属の薄膜が例示できる。これらの金属薄膜は、真空蒸着やスパッタリング等の方法で成膜される。
インクに用いられるバインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等が挙げられる。これらバインダーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。このようなバインダーに、上述した着色剤を添加した材料が、装飾層用インクとして用いられる。
透明樹脂層に装飾層用インクを直接印刷する場合は、バインダーとして塩素化ポリオレフィンやウレタン樹脂を採用することが、接着性の点で好ましい。
装飾層は、透明樹脂層表面の全面に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。装飾層は、模様部分と色彩部分が混在していてもよい。装飾層は、上記インクにより形成される部分と、金属薄膜の部分が混在していてもよい。
装飾層は、透明樹脂層の一方の面の側のみに設けられていてもよく、両面側に設けられていてもよい。
装飾層の平均厚さは、装飾の内容や色柄の種類に応じて適宜設定することができ、0.1μm〜20μm程度が一般的で、好ましくは0.5μm〜10μmである。
(2)装飾面
装飾面とは、透明樹脂層の表面の全部又は一部が直接装飾処理されてなる面を意味する。ここで「装飾処理」とは、透明樹脂層の全部又は一部を加工することにより、当該透明樹脂層の表面の全部又は一部を装飾することを意味する。装飾処理の具体例としては、透明樹脂層の表面の全部又は一部を切削することや、透明樹脂層にエンボス加工を施すこと等が挙げられる。ここでいうエンボス加工とは、透明樹脂層の全部又は一部を加熱軟化させ、エンボス版で加圧、賦形し、冷却固定して形成することを意味する。
装飾処理により透明樹脂層に付与される模様は、上述した装飾層の場合と同様である。
3.遮断層
遮断層は、必須成分として扁平状無機粒子を含む皮膜である。後述する通り、遮断層は、さらにバインダー樹脂を含んでいてもよい。
後述する耐候剤は、長期間の紫外線の曝露によりその量が減る。外装用化粧シートが屋外で雨等に曝される場合にも、耐候剤と水との親和性にもよるが、耐候剤は少しずつ外部へ流れ出す。遮断層は、このような耐候剤の移行を防ぐ役割を果たす。
さらに本発明においては、透明樹脂層の少なくとも一方の面側に遮断層を設ける構成、すなわち、いわば透明樹脂層に蓋をして内部に耐候剤を封じ込める構成を採用するため、ブリードアウトを回避するために耐候剤の種類を制限する必要がなく、純粋に耐候性が最適な耐候剤を自由に選択できるという利点がある。また、ブリードアウトを見越して耐候剤を過剰に添加する必要もないため、耐候剤の過剰添加に伴う、生産コストの増加や、透明樹脂層の透明度低下及びヘイズ増加等の弊害もない。
図1は、透明樹脂層1の両面に遮断層2が形成されてなる積層体10の斜視模式図である。なお、図1は、遮断層の構成を説明するための模式図であって、本発明は図1に示す形態に必ずしも限定されない。図1に示すように、扁平状無機粒子12は様々な形状を有し、遮断層2の中で折り重なって存在する。
図2は、図1中の遮断層2表面の一部を抜き出して示した斜視模式図である。本発明においては、扁平状無機粒子の有する面のうち、最も面積の広い面を底面と定義する。図2に示すように、遮断層2においては、複数の扁平状無機粒子12が主に底面12a同士を介して折り重なっている。
扁平状無機粒子において、底面の径を、
(1)底面の外接円が描ける場合は、かかる外接円の直径をもって底面の径とする。
(2)底面の外接円が描けない場合は、最長の対角線長をもって底面の径とする。
(3)底面が円又は楕円の場合は、長径(又は直径)をもって底面の径とする。
と定義したとき、底面の径を、底面に略垂直な方向の長さ(厚さ)により除して得られる値が、5〜50であることが好ましく、10〜40であることがより好ましい。このように扁平な形状の場合、粒子が透明樹脂層の一方の面に平行又は略平行に配列しやすい。
扁平状無機粒子の底面の形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。
扁平状無機粒子は、底面の平均径が0.01μm〜10.00μmの範囲であり、かつ底面に略垂直な方向の平均長さ(平均厚さ)が0.01〜1.00μmの範囲であることが好ましい。この範囲であれば、粒子が透明樹脂層の一方の面に平行又は略平行に配列しやすく、成膜性が良好となる。
ここで、平均径(円の場合は直径となる)は、レーザー散乱法・回折式粒度分布計等の測定により、粒子の平均厚さは、走査電子顕微鏡を用いた測定による100個の粒子の平均値より、それぞれ算出される。
図3A及び図3Bは、透明樹脂層1の片面に遮断層2が形成されてなる積層体の断面模式図である。これらの図においては、説明のため、扁平状無機粒子の断面を長方形12で示す。
図3Aは、遮断層2中の扁平状無機粒子12の底面12aが、透明樹脂層1における遮断層2を備える側の面1aに対して平行の向きに整列している様子を示す。且つ、該扁平状無機粒子12は同図面の上方から見下ろした平面視において、図1及び図2(これらは、斜視図では有るが)から容易に理解できるように、透明樹脂層1の面1aを隙間無く、即ち、下地の面1aが露出しないように全面を被覆して成る。
このように、扁平状無機粒子12が透明樹脂層1に対し平行に積み上がることによって、透明樹脂層1内部からの耐候剤の移行を防止することができる。
一方、図3Bは、遮断層2中の扁平状無機粒子12の底面12aが、透明樹脂層1の前記面1aに対し角度αの傾きで整列している様子を示す。且つ、図3Aの形態と同様、該扁平状無機粒子12は平面視において、透明樹脂層1の面1aを隙間無く全面を被覆して成る。この角度αが大きすぎる場合には、透明樹脂層1内部の耐候剤が扁平状無機粒子12の間をすり抜けて外部へ移行してしまい、好ましくない。角度αが十分に小さく、底面12aが面1aに対し略平行である場合、具体的には、角度αが0〜30°の範囲内であり、好ましくは0〜10°の範囲内である場合には、扁平状無機粒子12の間をすり抜けて外部へ移行する耐候剤の量が抑えられるため、本発明の効果が十分発揮される。
なお、角度αは、全ての扁平状無機粒子について等しくなくてもよく、角度の分布に幅があってもよい。また、扁平状無機粒子の整列構造が維持できる限りにおいて、図3Aに示す状態と図3Bに示す状態とが混在していてもよい。
図4A〜図4Cは、装飾処理された透明樹脂層1の片面に遮断層2が形成されてなる積層体の断面模式図である。これらの図中の長方形12は、図3A及び図3Bと同様に扁平状無機粒子の断面を示す。なお、扁平状無機粒子の向きの基準となる透明樹脂層1の面1aは、原則として、当該樹脂基材1の凸部を基準とする。なぜなら、装飾処理における凹部の底1bは、必ずしも図4A〜図4Cに示すように平坦になるとは限らないためである。
図4Aは、遮断層2中の扁平状無機粒子12の底面12aが、透明樹脂層1の前記面1aに平行の向きに整列している様子を示す。図4Aに示すように、透明樹脂層1表面の凹部においても、扁平状無機粒子12の向きは変わらず、面1aに平行に整列している。このように扁平状無機粒子12が整列することにより、上記図3Aの場合と同様に、耐候剤の移行を防止することができる。
一方、図4Bは、遮断層2中の扁平状無機粒子12の底面12aが、透明樹脂層1の前記面1aに対し角度αの傾きで整列している様子を示す。この角度αについては、上述した図3Bと同様である。さらに、図4Bに示すように透明樹脂層1表面の凹部が平坦な場合は、当該凹部において、扁平状無機粒子12の底面12aが、当該凹部の底1bに対し、角度βの傾きで整列していてもよい。角度βの数値範囲は、角度αと同じである。また、角度βと角度αとは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
図4Cは、透明樹脂層の凹部の内部に位置する扁平状無機粒子の配列が不規則となっている他は、図4Bと同様である。このように、当該凹部の内部において扁平状無機粒子の配列が不規則となっていたとしても、当該凹部を覆う遮断層の厚さ部分(図4Cの2A部分)において扁平状無機粒子が一定方向に配列していれば、上記図4A及び図4Bの場合と同様に、耐候剤の移行を防止することができる。
なお、扁平状無機粒子の整列構造が維持できる限りにおいて、図4Aに示す状態、図4Bに示す状態、及び図4Cに示す状態が混在していてもよい。
扁平状無機粒子の大きさと、装飾処理により形成される透明樹脂層表面の凹部の大きさとの比は、図4A〜図4Cに示した態様に限られない。扁平状無機粒子の径や厚さが当該凹部の幅に対して大きすぎる場合には、必ずしも扁平状無機粒子が当該凹部の内部に配置される必要はない。また、当該凹部の内部に配置される扁平状無機粒子の数密度(単位体積当たりの個数)と、それ以外の遮断層における扁平状無機粒子の数密度とが異なっていてもよい。
隣接し合う扁平状無機粒子は、直接又はバインダー樹脂を介して互いに結合する。扁平状無機粒子同士が直接結合する場合としては、例えば、後述するような共有結合による場合や、配位結合による場合、イオン結合による場合、金属結合による場合、水素結合による場合等が挙げられる。また、扁平状無機粒子同士がバインダー樹脂を介して結合する場合においては、バインダー樹脂がマトリックスとして働き、扁平状無機粒子をつなぎ止める役割を果たす。
扁平状無機粒子は、公知のセラミックス粒子及びその混合物から選択されることが好ましい。シリカ、アルミナ、マイカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸アルミ、炭化珪素、窒化珪素等の粒子が例として挙げられる。この中でも、扁平状無機粒子は、機械強度や化学的安定性に優れるシリカ粒子、アルミナ粒子及びマイカ粒子がより好ましい。また、扁平状無機粒子には、機械強度向上等を目的に異種金属元素が添加されていてもよい。
耐候剤の外部への移行防止の点から、扁平状無機粒子は鱗片状無機粒子であり、遮断層の少なくとも一部は、鱗片状無機粒子が自己組織化してなる膜であることが好ましい。
ここで、「自己組織化」とは、独立した個々の鱗片状無機粒子が、それ自体の物性により、外部からの物理的作用及び化学的影響を特段必要とすることなく、遮断層としての機能を有する集合体としてまとまることを意味する。このように、鱗片状無機粒子からなる膜は、一般の樹脂膜のように耐候剤が染み込み透過するおそれが無いため、バリア性が高い。また、鱗片状無機粒子からなる膜は、樹脂膜よりも機械的に硬いため、外装用化粧シート自体の強度を増すことができる。
バリア性向上の観点から、遮断層全体が上記自己組織化膜であってもよい。
鱗片状無機粒子は鱗片状シリカ粒子であり、自己組織化してなる膜は、隣接し合う鱗片状シリカ粒子がSi−O結合により互いに結合してなる膜であってもよい。
鱗片状シリカ粒子は、通常、その表面にシラノール基(Si−OH)を有する。隣接し合う鱗片状シリカ粒子間において、シラノール基同士が脱水縮合反応を起こすことにより、Si−O結合を形成する。Si−O結合は共有結合であり、他の化学結合(例えば、配位結合やイオン結合等)よりも一般的に強い結合であるといえるため、強固な自己組織化膜が形成される。
鱗片状シリカ粒子を用いることにより、湿潤条件下において、連続した自己組織化膜が形成できる。例えば、透明樹脂層及び/又は後述する装飾層の表面に、鱗片状シリカを含む水スラリーを塗布し、乾燥して水を除くことにより、当該表面に自己組織化膜が形成される。この塗布法は、複雑な装置を必要とせず、短時間で簡便に自己組織化膜が得られる点で、CVD等の蒸着法による膜形成法よりも優れる。
鱗片状シリカ粒子としては、例えば、サンラブリーLFS HN−150(商品名)や、サンラブリーLFS HN−050(商品名、以上AGCエスアイテック社製)等が挙げられる。
扁平状無機粒子は、板状アルミナ粒子又は箔状マイカ粒子であってもよく、これらを併用してもよい。板状アルミナ粒子及び箔状マイカ粒子は、それ自体では自己組織化能力が低いため、膜として成形するためにはバインダーを必要とする。
板状アルミナ粒子及び/又は箔状マイカ粒子を用いる場合、遮断層中の板状アルミナ粒子及び箔状マイカ粒子の総質量は、遮断層の質量を100%としたとき、50〜99質量%であることが好ましい。板状アルミナ粒子及び箔状マイカ粒子の総質量が50質量%未満の場合には、バインダーの量が多すぎるため、耐候剤が浸透し透過しやすくなるおそれがある。一方、板状アルミナ粒子及び箔状マイカ粒子の総質量が99質量%を超える場合には、バインダーの量が少なすぎるため、膜の成形性が悪化するおそれがある。
板状アルミナ粒子としては、例えば、セラフ 00610(製品名)や、セラフ 02050(製品名、以上キンセイマテック株式会社製)、セラシュール BMF−B(製品名、河合石灰工業株式会社製)等が挙げられる。
箔状マイカ粒子としては、例えば、マイカ粉 湿式粉砕グレード A−11(商品名)、マイカ粉 ハイブリッド粉砕微粒子グレード(商品名、以上松雄産業株式会社製)、非膨潤性マイカ PDM−5B(商品名、トビー工業株式会社製)等が挙げられる。
バインダー樹脂は硬化性樹脂の硬化物であってもよい。バインダー樹脂は、遮断層中において、硬化性樹脂の硬化物からなるマトリックスであってもよい。バインダー樹脂は、上述した透明樹脂層の原料樹脂と同一であってもよい。この場合には、透明樹脂層の原料樹脂をコア層(内層)に、扁平状無機粒子及び当該原料樹脂の混合物をスキン層(外層)に、それぞれ供給して共押出することにより、透明樹脂層と遮断層とを備える積層構造を一度に作製できる。
バインダー樹脂は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、(メタ)アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂等が挙げられる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
これらの中でも、外装用途を想定した場合、熱に強いバインダー樹脂がより好ましいという点から、電離放射線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
塩化ビニル系樹脂基材と遮断層との間の密着性向上の観点から、バインダー樹脂は、塩化ビニル系樹脂基材と密着性が高い樹脂であることが好ましい。さらに、遮断層が耐候剤の移行を防ぐ役割を果たすという観点から、遮断層中のバインダー樹脂は、耐候剤と相溶性の悪い樹脂であることが好ましい。
バインダー樹脂は、鱗片状シリカと共に使用してもよい。鱗片状シリカ粒子のみでは遮断層の柔軟性に乏しい場合において、バインダー樹脂を加えて遮断層中の鱗片状シリカ粒子の含有割合を下げ、遮断層に柔軟性を付与することができる。ただし、バインダー樹脂を併用する場合は、鱗片状シリカ粒子のみを用いる場合よりも、耐候剤に対するバリア性が低下するおそれがある。
鱗片状シリカ粒子とバインダー樹脂を併用する場合、遮断層中の鱗片状シリカ粒子の質量は、遮断層の質量を100%としたとき、50質量%以上100質量%未満であることが好ましい。鱗片状シリカ粒子の質量が50質量%未満の場合には、バインダーの量が多すぎるため、耐候剤が浸透し透過しやすくなるおそれがある。一方、鱗片状シリカ粒子は単独でも使用できるため、柔軟性を特に考慮しなければ、鱗片状シリカ粒子の含有量に上限はない。
耐候剤の移行防止の観点から、遮断層の平均厚さは、好適には0.1〜200μmの範囲内であり、より好適には0.5〜150μmの範囲内であり、さらに好適には1.0〜100μmの範囲内である。
遮断層の平均厚さが200μmを超える場合、外装用化粧シートの製造中や、完成品の外装用化粧シートを取り扱う中において、当該外装用化粧シート又はその中間体が曲げられたり折られたりすることにより、遮断層中の扁平状無機粒子の整列構造が損なわれやすく、バリア効果が不十分となるおそれがある。一方、遮断層の平均厚さが0.1μm未満の場合、遮断層中に十分な量の扁平状無機粒子が含まれないため、十分なバリア効果が得られないおそれがある。
遮断層が、隣接する他の層から浮いたり剥がれたりしない程度に当該他の層との密着性を有することは、化粧シートとして必要な特性といえる。遮断層の平均厚さが0.1〜200μmの範囲内にあることにより、遮断層と、隣接する他の層との間の密着性を確保することができる。特に、遮断層の平均厚さが200μmを超える場合、外装用化粧シート又はその中間体が曲げられたり折られたりすることにより、遮断層が、その隣接する他の層から剥がれるおそれがある。
遮断層の平均厚さが0.1〜200μmの範囲内にある場合、遮断層と、隣接する他の層とは、互いに接着し合っているといえる。ここで「接着」とは、当該他の層の表面上に存在する遮断層を手でこすったり、手で払ったりしても落ちない程度に、遮断層と当該他の層とが接合し合っていることを意味する。
透明樹脂層の装飾面に直接に遮断層を設ける場合には、当該装飾面が凹形状である部分に対応する遮断層の厚さと、当該装飾面が凸形状である部分に対応する遮断層の厚さは異なる。したがって、このような場合には、当該装飾面が凸形状である部分に対応する遮断層について厚さを測定し、平均厚さを算出する。上述した図4A〜図4Cにおける両矢印2Aで示す長さが、装飾面が凸形状である部分に対応する遮断層の厚さに相当する。
遮断層と、隣接する他の層との間の密着性の評価は、剥離試験、曲げ試験、巻付け試験等により行われる。
剥離試験の試験方法の例は以下の通りである。まず、外装用化粧シート又はその中間体(以下、これらを「外装用化粧シート等」と称する場合がある。)において、遮断層の全部又は一部が表面に現れている場合には、遮断層に粘着テープを貼りつけて引きはがす。その後、粘着テープを貼りつけた部分の遮断層が割れたり浮いたり剥がれたりしていないかを、目視により確認する。外装用化粧シート等の表面に遮断層が現れていない場合には、以下の曲げ試験や巻付け試験を行ってもよい。
曲げ試験の試験方法の例は以下の通りである。まず、外装用化粧シート等を二つ折りにする。その後、外装用化粧シート等を元の状態に戻し、遮断層が割れたり浮いたり剥がれたりしていないかを、目視により確認する。
巻付け試験の試験方法の例は以下の通りである。まず、外装用化粧シート等を直径2mmの丸棒に巻きつけ、数回しごく。その後、外装用化粧シート等において、遮断層が割れたり浮いたり剥がれたりしていないかを、目視により確認する。
曲げ試験及び巻付け試験において、遮断層が外装用化粧シート等の内部にある場合には、外装用化粧シート等の断面から遮断層の割れ等を判断する。
以上の試験は、公知の試験方法に基づいて行ってもよい。例えば、剥離試験は、JISH 8504:1999 15.1(テープ試験方法)、又は対応するISO2819(剥離試験)に準拠して行ってもよい。曲げ試験は、JISH 8504:1999 18(曲げ試験方法)、又は対応するISO2819(折曲げ試験)に準拠して行ってもよい。巻付け試験は、JISH 8504:1999 19(巻付け試験方法)、又は対応するISO2819(巻付け試験)に準拠して行ってもよい。
遮断層に使用される上記材料は、外装用化粧シートが被着体に付与する意匠(例えば、装飾部における模様及び色彩等)を損なわないよう、透明であることが好ましい。また、当該遮断層用材料は、経年劣化による変色が生じないものであることが好ましい。
4.基材
本発明の外装用化粧シートは、上述した透明樹脂層、装飾部、及び遮断層を備える積層体の一面側に、さらに基材を備えることが好ましい。基材を備えることにより、外装用化粧シートの機械的強度を増すことができる。
基材に使用される材料は特に限定されず、有機材料、無機材料及びこれらの混合材料が広く用いられる。基材の例としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂基材や、金属基材等が挙げられる。
ここで「ポリ塩化ビニル系樹脂」とは、塩化ビニルモノマー単位を50mol%以上有する樹脂を意味する。ポリ塩化ビニル系樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルブチラール共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
基材として樹脂基材を用いる場合、当該樹脂基材は可塑剤を含有していてもよい。可塑剤は、当該樹脂基材に柔軟性を付与し、その硬さを制御することを目的として用いられる。
使用される可塑剤としては、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル系、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル系、アジピン酸エステル系、アジピン酸ポリエステル系、フタル酸ポリエステル系、リン酸エステル系、クエン酸エステル系、安息香酸エステル系、テレフタル酸エステル系、エポキシ化植物油系、塩素化パラフィン系などが挙げられる。
可塑剤の含有量には特に制限はなく、例えば、基材の質量を100質量部としたとき、5〜60質量部であってもよく、8〜30質量部であることが好ましい。
樹脂基材は、着色剤を含有していてもよい。着色剤は、樹脂基材の少なくとも一方の面を、所望の色相に着色させる。着色剤は上述した材料が使用できる。また、金属基材の少なくとも一方の面に着色剤を配置してもよい。
着色剤の含有量には特に制限はなく、例えば、基材の質量を100質量部としたとき、1〜30質量部であってもよく、5〜15質量部であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、樹脂基材には熱安定剤、難燃剤、ラジカル捕捉剤等を添加してもよい。熱安定剤は、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系等公知のものであリ、熱加工時の熱変色等の劣化の防止性をより向上させる場合に用いられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられ、これらは、難燃性を付与する必要がある場合に添加する。
これら添加剤の含有量は、例えば、樹脂基材の質量を100質量部としたとき、1〜35質量部であってもよく、10〜20質量部であることが好ましい。
基材の平均厚さは、その強度及び耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜設定することができ、1μm〜1,000μm程度が一般的で、好ましくは10μm〜500μmである。
基材の形成方法は特に限定されない。例えば、透明樹脂層及び遮断層を備える積層体の一面側に、接着剤等を用いて基材を貼る方法が挙げられる。
5.トップコート層
透明樹脂層の上から、さらにトップコート層を設けてもよい。なお、上記基材とトップコート層とを併用する場合には、トップコート層は、透明樹脂層を挟んで基材と反対側に設けることが好ましい。
トップコート層は、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等により形成される層である。これらの樹脂を透明樹脂層の上から塗布した後、熱付与または電離放射線照射により樹脂を硬化させて、トップコート層を形成する。熱硬化性樹脂及電離放射線硬化性樹脂の例は上述した通りである。
6.層構成
本発明の外装用化粧シートは、透明樹脂層と、装飾部と、遮断層とを備えていれば、その層構成は特に限定されない。
以下、透明樹脂層、装飾部及び遮断層を含む積層体の実施形態を、図5〜図8により説明する。なお、当該積層体の層構成は、図5〜図8に示す実施形態のみに限定されない。
図5は、透明樹脂層、装飾層、及び遮断層を備える積層体の断面模式図である。
遮断層2は、透明樹脂層1と装飾層3との間に設けられていてもよい(図5(A))。これとは反対に、遮断層2は、透明樹脂層1を挟んで装飾層3とは反対側に設けられていてもよい(図5(B))。
透明樹脂層1の両面に遮断層2が設けられる場合、さらにその遮断層2のうちの1つの層の外側に装飾層3が設けられていてもよいし(図5(C))、その両方の遮断層2の外側に装飾層3が設けられていてもよい(図5(D))。また、透明樹脂層1の一方の面に遮断層2が設けられ、さらにその積層体の両面に装飾層3が設けられていてもよい。
透明樹脂層1の一方の面の側の一部に装飾層3が設けられている場合には、その面に遮断層2が設けられていてもよい(図5(E))。遮断層2は、装飾層3が設けられた面の側に対向する透明樹脂層1の面に設けられていてもよい。
透明樹脂層1の一方の面の側の一部に装飾層3が設けられ、他方の面の全面に装飾層3が設けられている場合、これらの両面に遮断層2が設けられていてもよい(図5(F))。また、これらの2つの面のいずれか一方に遮断層2が設けられていてもよい。
透明樹脂層1の両方の面の側のそれぞれ一部に装飾層3が設けられている場合、これらの両面に遮断層2が設けられていてもよい(図5(G))。また、これらの2つの面のいずれか一方に遮断層2が設けられていてもよい。
このように、遮断層は、透明樹脂層と装飾層との間に設けられていてもよいし(図5(A)及び(C)〜(G))、透明樹脂層を挟んで装飾層とは反対側に設けられていてもよい(図5(B))。遮断層は、装飾層と接して設けられていてもよい(図5(A)及び(C)〜(G))。遮断層は、透明樹脂層の両面の側に設けられていてもよい(図5(C)、(D)、(F)及び(G))。
図6は、透明樹脂層、装飾層、及び遮断層を備える他の積層体の断面模式図である。
遮断層2は、装飾層3を挟んで透明樹脂層1とは反対側に設けられていてもよい(図6(A))。
透明樹脂層1の一方の面に装飾層3及び遮断層2がこの順に設けられる場合、他方の面に遮断層2が設けられていてもよいし(図6(B))、他方の面に遮断層2及び装飾層3がこの順に設けられていてもよいし(図6(C))、他方の面に装飾層3及び遮断層2がこの順に設けられていてもよい(図6(D))。
透明樹脂層1の一方の面の一部に装飾層3が設けられる場合、当該面にさらに遮断層2が設けられていてもよい(図6(E))。透明樹脂層1の一方の面の一部に装飾層3が設けられ、他方の面の全面に装飾層3が設けられる場合、これらの両面に遮断層2が設けられていてもよい(図6(F))。
透明樹脂層1の両方の面のそれぞれ一部に装飾層3が設けられている場合、これらの両面に遮断層2が設けられていてもよい(図6(G))。また、これらの2つの面のいずれか一方に遮断層2が設けられていてもよい。
このように、遮断層は、透明樹脂層と装飾層との間に設けられていてもよいし(図6(C))、装飾層を挟んで透明樹脂層とは反対側に設けられていてもよい(図6(A)、(B)及び(D)〜(G))。遮断層は、装飾層と接して設けられていてもよい(図6(A)〜(G))。遮断層は、透明樹脂層の両面の側に設けられていてもよい(図6(B)〜(D)、(F)及び(G))。
図7は、装飾面を備える透明樹脂層、及び遮断層を備える積層体の断面模式図である。図7及び図8において、透明樹脂層1の凹凸部分は、当該基材1の表面に形成された装飾処理を意味する。この装飾処理された部分が装飾面となる。
遮断層2は、透明樹脂層1における装飾面の側に設けられていてもよい(図7(A))。これとは反対に、遮断層2は、当該装飾面とは反対側の面に設けられていてもよい(図7(B))。
透明樹脂層1の両面の全部が装飾面である場合には、そのうち一方の面に遮断層2が設けられていてもよいし(図7(C))、両面に遮断層2が設けられていてもよい(図7(D))。
透明樹脂層1の一方の面の一部が装飾面である場合には、その面に遮断層2が設けられていてもよい(図7(E))。遮断層2は当該装飾面に対向する面に設けられていてもよい。
透明樹脂層1の一方の面の一部と他方の面の全部が装飾面である場合、透明樹脂層1の両面に遮断層2が設けられていてもよい(図7(F))。また、透明樹脂層1のいずれか一方に遮断層2が設けられていてもよい。
透明樹脂層1の両方の面のそれぞれ一部が装飾面である場合、透明樹脂層1の両面に遮断層2が設けられていてもよい(図7(G))。また、透明樹脂層1のいずれか一方に遮断層2が設けられていてもよい。
このように、遮断層は、透明樹脂層を挟んで装飾面とは反対側に設けられていてもよい(図7(B))。遮断層は、装飾面と接して設けられていてもよい(図7(A)及び(C)〜(G))。遮断層は、透明樹脂層の両面の側に設けられていてもよい(図7(D)、(F)及び(G))。
図8は、装飾面を備える透明樹脂層、装飾層、及び遮断層を備える積層体の断面模式図である。
図8(A)には、透明樹脂層1の一方の面が装飾面であり、他方の面上に装飾層3が設けられており、遮断層2がさらに両面に備えられている積層体を示す。
図8(B)には、透明樹脂層1の一方の面の一部が装飾面であり、遮断層2が当該樹脂基材1の両面に設けられ、さらにその上から装飾層3が設けられている積層体を示す。なお、透明樹脂層1の当該一方の面においては、装飾面以外の部分について装飾層3が設けられている。
図8(C)〜(E)に示す積層体においては、透明樹脂層1の両面の全部又は一部が装飾面であり、さらにその両面の外側に遮断層2が設けられている。このうち図8(C)に示す積層体においては、透明樹脂層1の一方の面の装飾面以外の部分について、装飾層3が設けられている。また、図8(D)に示す積層体においては、透明樹脂層1の両方の面の装飾面以外の部分について、それぞれ装飾層3が設けられている。さらに、図8(E)に示す積層体においては、透明樹脂層1の両方の面の装飾面以外の部分の、さらにその一部について装飾層3が設けられている。
図5〜図8に示した積層体に対し、少なくとも積層体の一方の面側に基材、及び必要な場合にはさらにその他方の面側にトップコート層を設け、本発明の外装用化粧シートが完成する。図5〜図8には、遮断層の面積が透明樹脂層の面積と等しい態様が描かれているが、遮断層の面積は透明樹脂層の面積より小さくてもよい。すなわち、遮断層は、透明樹脂層の一部のみに設けられていてもよい。
図9は、本発明の外装用化粧シートの実施形態の断面模式図である。図9中の積層体10は、図5(C)の積層体10に相当する。この積層体10において、装飾層3が面する側に基材4を設け、かつ積層体10を挟んで基材4とは反対側にトップコート層5をさらに設け、外装用化粧シート100が得られる。
なお、本発明は、図9に示す構造に限定されるものではない。
外装用化粧シートの層構成は、当該化粧シートを設置する対象(被着体)に合わせて適宜選択できる。例えば、被着体が金属等の無機物である場合には、耐候剤が主に移行しやすいのは、大気に露出する表側(被着体の反対側の面)となるため、表側に遮断層を設ければよい。これは、外装用化粧シートに金属基材を用いる場合も同様である。
一方、被着体が有機物である場合には、耐候剤は被着体に対し移行しやすくなるため、遮断層は透明樹脂層と被着体との間に設けるのが好ましい。これは、外装用化粧シートに樹脂基材を用いる場合も同様であり、この場合には、遮断層は透明樹脂層と樹脂基材との間に設けるのが好ましい。
しかし、被着体が無機物であったとしても、外装用化粧シートと被着体とが接着剤により接合された場合には、耐候剤は接着剤に向かって移行し、外装用化粧シートの被着体に対する接着性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、当該接合面の側にも遮断層は必要となる。これは、外装用化粧シートに基材を用いる場合に、基材と透明樹脂層との接合に接着剤を用いるときも同様である。
このように、外装用化粧シートに接する材料及び/又は透明樹脂層と隣り合う材料が、耐候剤の浸透しやすい材料であるか否かによって、遮断層の要否が決まる。したがって、透明樹脂層の両面の側に遮断層を設けるのが、本来的には好ましい。ただし、遮断層を2面分設けるとなると、コストの問題や、外装用化粧シートの積層構造内部における密着性の問題が生じる場合がある。したがって、耐候剤が移行しやすい被着体に対しては遮断層を両面備える外装用化粧シートを用い、耐候剤が移行しにくい被着体に対しては遮断層を片面備える外装用化粧シートを用いる等、異なる層構成を備える外装用化粧シートを使い分けてもよい。
外装用化粧シートの平均厚さは特に限定されず、10μm〜1,000μm程度が一般的で、好ましくは50μm〜300μmである。
7.化粧シートの用途
本発明の化粧シートは、外装用であれば特に制限されず、各種被着体の表面化粧に用いる。被着体としては、外装用の各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。例えば、板材や立体形状物品等として用いられる素材としては、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の木質板素材、或いは、ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の窯業系素材があり、板材や立体形状物品或いはシート等として用いられる素材としては、鉄、アルミニウム等の金属素材、或いは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂素材があり、専らシートとして用いられる素材としては、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、ガラス、合成樹脂等の繊維からなる不織布または織布がある。
これらの各種被着体への化粧シートの積層方法としては、例えば接着剤を間に介して板状基材に加圧ローラーで加圧して積層する方法、化粧シートを射出成形の雌雄両金型間に配置した後、溶融樹脂を型内に射出充填し、樹脂成型品の成形と同時にその表面に化粧シートを接着積層する、所謂射出成形同時ラミネート方法、成形品等の立体形状物品の表面に化粧シートを、間に接着剤を介して対向又は載置し、立体形状物品側からの真空吸引による圧力差により化粧シートを立体形状物品の表面に積層する、所謂真空プレス積層方法、円柱、多角柱等の柱状基材の長軸方向に、化粧シートを間に接着剤層を介して供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状基材を構成する複数の側面に順次化粧シートを加圧接着して積層してゆく、所謂ラッピング加工方法が有る。
なお、化粧シートを積層して化粧板とした物に対する更なる加工法としては、まず化粧シートを板状基材に間に接着剤層を介して積層して化粧板とし、化粧シートとは反対側の面に、化粧シートと板状基材との界面に到達する、断面がV字状、又はU字状溝を切削し、次いで該溝内に接着剤層を塗布した上で該溝を折り曲げ箱体又は柱状体を成形する所謂、Vカット又はUカット加工法等がある。
なお、化粧シートの積層物は、被着体が板材の場合は化粧板として使用され、被着体がシートの場合は積層物自体も化粧シートとして使用されることもある。そして、化粧シートを積層し化粧された物品は、例えば、外壁、塀、屋根等の建築物の外装、窓枠、扉枠、扉、手摺等の建具類の表面化粧、自動車、電車、航空機、船舶等の乗物の内装、或いは化粧された窓ガラス等として用いられる。
1.積層体の製造
[実施例1]
耐候剤の移行(ブリードアウト)の程度を評価するため、透明樹脂層の一方の表面に遮断層が積層した積層体を製造した。
ラジカル捕捉剤、及び紫外線吸収剤を含むポリプロピレン系樹脂 プライムポリプロ F219DA(商品名、株式会社プライムポリマー製)を用いて、カレンダー製法により厚さ80μmのポリプロピレン系樹脂基材を作製し、これを透明樹脂層として用いた。
一方、扁平状無機粒子を含む水性スラリーとして、シリカ水分散体(サンラブリー LFS HN−050(商品名)、AGCエスアイテック社製、固形分15%)を用意した。このシリカ水分散体をエタノールで1.5倍に希釈したものを、遮断層用インクとした。
上記透明樹脂層の一方の表面に、アプリケーターを用いて上記遮断層用インクを塗布して、大気中、常温で一晩乾燥させた。透明樹脂層の一方の表面に、シリカ水分散体由来の鱗片状シリカ粒子を含む遮断層が形成された。
得られた積層体の断面を電子顕微鏡により観察し、遮断層の厚さを10か所程度測定し、その平均を算出したところ、遮断層の平均厚さは1.0μmであった。
[実施例2−実施例10]
遮断層用インクの塗布量を変えたこと以外は、実施例1と同様に、透明樹脂層の一方の表面に遮断層が積層した積層体を製造した(実施例2−実施例10)。実施例2−実施例10における遮断層の平均厚さを、下記表1に示す。
[比較例1]
比較のため、遮断層が形成されていない透明樹脂層(透明樹脂フィルム)そのものを、以下の分析及び試験に供した。
2.FT−IR分析
実施例1−実施例10の積層体を、2枚のオレフィンシートで挟んで十分に密着させた。さらに、得られた積層体を2枚のガラス板で挟むことにより、6層構成(ガラス板/オレフィンシートA/遮断層/透明樹脂層/オレフィンシートB/ガラス板)を有する評価用積層体を作製した。
また、比較例1の透明樹脂層についても、同様に2枚のオレフィンシート及び2枚のガラス板で挟み、5層構成(ガラス板/オレフィンシート/透明樹脂層/オレフィンシート/ガラス板)を有する評価用積層体を作製した。
各評価用積層体を80℃の乾燥オーブンに静置した。2日後、評価用積層体を乾燥オーブンから取り出し、室温まで冷ました。評価用積層体の両面からガラス板2枚とオレフィンシート2枚をそれぞれ剥がした。
(a)評価用積層体に使用しなかったオレフィンシートの表面、(b)オレフィンシートAにおける遮断層との接触面、(c)オレフィンシートBにおける透明樹脂層との接触面について、FT−IR分析を行った。
評価用積層体に使用しなかった透明樹脂層の両面についても、FT−IR分析を行った。
各評価用積層体における耐候剤の移行量を以下の方法により決定した。まず、オレフィンシートのFT−IRスペクトル中、1600cm−1とは異なる波長において基準ピークを1つ決めた。次に、比較例1の評価用積層体に用いたオレフィンシートのFT−IRスペクトルにおいて、耐候剤に由来する赤外吸収ピーク(1600cm−1付近に現れるブロードな吸収ピーク)のピーク面積A、上記基準ピークのピーク面積Bをそれぞれ算出した。
一方、実施例1−実施例10の評価用積層体に用いたオレフィンシートAのFT−IRスペクトルにおいて、耐候剤に由来する赤外吸収ピーク(1600cm−1付近に現れるブロードな吸収ピーク)のピーク面積A(x=1〜10)、上記基準ピークのピーク面積B(x=1〜10)をそれぞれ算出した。ここで、xの数字は実施例番号に対応する。
下記式1により、耐候剤移行量P(%)を算出した。なお、比較例1の評価用積層体に関する耐候剤移行量は100%とした。
式1:P=[(A/B)/(A/B)]×100
(上記式1中、Pは耐候剤移行量(%)を、A、B、A、Bはそれぞれ上記各ピーク面積を、それぞれ示す。)
3.密着性評価
実施例1−実施例10の積層体について、遮断層の透明樹脂層に対する密着性を以下の試験により評価した。
遮断層が外側に位置するように、各積層体を直径2mmの丸棒に巻きつけ、数回しごいた後、遮断層が割れたり浮いたり剥がれたりしていないかを、目視により確認した(巻付け試験)。引き続き、遮断層が外側に位置するように二つ折りにした後、同様に遮断層が損傷していないか目視により確認した(曲げ試験)。
以下の基準に基づき密着性評価を行った。
A:巻付け試験及び曲げ試験のいずれによっても遮断層の割れ、浮き、剥離は見られなかった。
B:巻付け試験又は曲げ試験のいずれかにより、遮断層の一部に割れ、浮き、又は剥離の症状が見られた。
C:巻付け試験及び曲げ試験のいずれによっても遮断層の大部分がぼろぼろと崩れ落ちた。
F:巻付け試験及び曲げ試験のいずれによっても遮断層全体が完全に割れて砕けた。
Figure 0006900734
4.考察
上記表1より、実施例1と比較例1の各耐候剤移行量Pを比較すると、平均厚さ1.0μmの遮断層を設けることによって、オレフィンシートへの耐候剤の移行量を18%も遮断できることが分かる。また、実施例1〜実施例10の遮断層の平均厚さと各耐候剤移行量Pとを比較すると、遮断層の平均厚さが増えるにつれて、耐候剤移行量Pが減ることが分かる。したがって、透明樹脂層の表面の遮断層の厚さが増すほど、耐候剤がより移行しにくくなる効果が実証された。
相関性は必ずしも明確ではないものの、上記表1の結果より、例えば、遮断層のない従来の化粧シートと比較して、耐久性を2倍に向上するために耐候剤の移行量を2分の1にする必要があるとする場合、遮断層の平均厚さを10μm以上とする必要があると推測される。
一方、上記表1より、遮断層の平均厚さが十分薄い場合(実施例1−実施例7)には、遮断層の割れ等が見られなかったことから、透明樹脂層表面に対し、遮断層が優れた密着性を示すといえる。また、遮断層の平均厚さが比較的厚い場合(実施例8−実施例10)であっても、遮断層の一部に割れ等が見られたにすぎないことから、外装用化粧シートとして要求される密着性の水準は満たすものと考えられる。
1 透明樹脂層
1a 透明樹脂層における遮断層を備える側の面
1b 装飾処理された透明樹脂層の凹部の底
2 遮断層
2A 遮断層の厚さ
3 装飾層
4 基材
5 トップコート層
10 少なくとも透明樹脂層及び遮断層を備える積層体
12 扁平状無機粒子
12a 扁平状無機粒子の底面
100 外装用化粧シート
α,β 扁平状無機粒子の底面と、透明樹脂層の一方の面とのなす角

Claims (8)

  1. オレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂、及び、ラジカル捕捉剤及び紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1つの耐候剤を含む透明樹脂層、並びに
    前記透明樹脂層の少なくともいずれか一方の面の側に配置される装飾層、及び当該透明樹脂層の表面の全部又は一部が直接装飾処理されてなる装飾面からなる群より選ばれる少なくとも1つの装飾部を備える外装用化粧シートであって、
    前記透明樹脂層の少なくともいずれか一方の面の側に、さらに遮断層を備え、
    前記遮断層全体が、鱗片状無機粒子が自己組織化してなる膜であり、当該遮断層中で、当該鱗片状無機粒子の底面は、前記透明樹脂層における前記遮断層を備える側の面に対して平行又は略平行の向きに整列し、かつ隣接し合う鱗片状無機粒子直接互いに結合しており、前記遮断層の平均厚さが、1.0〜100μmの範囲内であることを特徴とする外装用化粧シート。
  2. 前記鱗片状無機粒子は鱗片状シリカ粒子であり、
    前記自己組織化してなる膜は、隣接し合う鱗片状シリカ粒子がSi−O結合により互いに結合してなる膜である、請求項に記載の外装用化粧シート。
  3. 前記装飾部と接して前記遮断層を備える、請求項1又は2に記載の外装用化粧シート。
  4. 前記透明樹脂層を挟んで、前記装飾部とは反対側に前記遮断層を備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の外装用化粧シート。
  5. 前記装飾部として少なくとも前記装飾層を備え、
    前記透明樹脂層と前記装飾層との間に前記遮断層を備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の外装用化粧シート。
  6. 前記透明樹脂層の両面の側に遮断層を備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の外装用化粧シート。
  7. 前記透明樹脂層、前記装飾部及び前記遮断層を備える積層体の一面側に、さらに基材を備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の外装用化粧シート。
  8. 前記基材はポリ塩化ビニル系樹脂基材である、請求項に記載の外装用化粧シート。
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