JP6898625B2 - 酸性排ガス処理剤、酸性排ガス処理方法、及び酸性排ガス処理設備 - Google Patents

酸性排ガス処理剤、酸性排ガス処理方法、及び酸性排ガス処理設備 Download PDF

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Description

本発明は、火力発電所や焼却施設等の燃焼施設から発生する酸性排ガスの処理に適用される酸性排ガス処理剤、酸性排ガス処理方法、及び酸性排ガス処理設備に関する。
火力発電や廃棄物焼却等において発生する燃焼排ガス中には、塩化水素や硫黄酸化物、窒素酸化物等の有害な酸性物質が含まれている。このため、前記酸性物質を含む酸性排ガスについて、前記酸性物質を除去するための種々の方法による処理が行われている。
前記酸性物質のうち、塩化水素や硫黄酸化物については、消石灰等のアルカリ剤を用いて中和し、生成物を集塵機で捕集する乾式法や、スクラバーで中和処理する湿式法による処理が普及している。
また、窒素酸化物については、アンモニアや尿素等の還元剤を燃焼排ガスに混合した後、バナジウムや白金等をセラミック等の担体に担持させた触媒で、窒素と水に分解する選択的触媒還元法(SCR)、また、焼却炉内等に直接、アンモニアや尿素等の還元剤を噴霧して窒素酸化物を分解する無触媒還元法(SNCR)による処理が普及している。
しかしながら、上記の中和処理による処理は、中和生成物の処理工程を要し、また、窒素酸化物を別途処理する必要がある。
また、SCRやSNCRによる窒素酸化物の処理においては、還元剤や触媒等の使用、及びそのための設備やエネルギー等のコストを要するという課題を有していた。
このような課題に対して、本発明者らは、炭酸型Mg−Al系層状複水酸化物を用いて、効率的、かつ、より低コストで、前記酸性排ガスを処理することができる方法を提案している(特許文献1参照)。
特開2016−190199号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の処理方法によっても、一酸化窒素の除去処理が必ずしも十分ではない場合があった。
このため、層状複水酸化物を用いた酸性排ガスの処理において、一酸化窒素の除去効率の向上が求められていた。
本発明は、このような状況の下でなされたものであり、火力発電所や焼却施設等の燃焼施設から発生する酸性排ガスを、層状複水酸化物を用いて処理するのに際し、従来よりも一酸化窒素の除去効率を高めることができる酸性排ガス処理剤、酸性排ガス処理方法、及び酸性排ガス処理設備を提供することを目的とする。
本発明は、Mg−Al系層状複水酸化物(以下、Mg−Al LDH(Layered Double Hydroxide)とも言う。)の酸化マンガン等による複合化物が、一酸化窒素の除去性能に優れていることを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1]Mg−Al系層状複水酸化物の、酸化マンガン及び過マンガン酸化合物の少なくともいずれかによる複合化物を含む、酸性排ガス処理剤。
[2]前記複合化物が、二酸化マンガン複合Mg−Al系層状複水酸化物、及び過マンガン酸型Mg−Al系層状複水酸化物の少なくともいずれかである、上記[1]に記載の酸性排ガス処理剤。
[3]炭酸型Mg−Al系層状複水酸化物を含む、上記[1]又は[2]に記載の酸性排ガス処理剤。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の酸性排ガス処理剤を用いて酸性排ガスを処理する方法であって、前記酸性排ガス処理剤に、前記酸性排ガスを接触させて、前記酸性排ガス中の酸性物質を吸着させる工程(1)と、前記工程(1)において前記酸性排ガス処理剤に吸着された酸性物質を脱着させて、前記酸性排ガス処理剤を再生する工程(2)と、前記工程(2)において前記酸性排ガス処理剤から脱着した酸性物質を回収する工程(3)とを含む、酸性排ガス処理方法。
[5]前記工程(1)〜(3)を含む処理サイクルを繰り返し行い、前記処理サイクルの2回目以降の少なくともいずれかの処理サイクルの工程(1)において、前記酸性排ガス処理剤の少なくとも一部に、当該処理サイクル以前の少なくともいずれかの処理サイクルの工程(2)で再生した酸性排ガス処理剤を用いる、上記[4]に記載の酸性排ガス処理方法。
[6]上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の酸性排ガス処理剤を用いて酸性排ガスを処理する設備であって、前記酸性排ガス処理剤に、前記酸性排ガスを接触させて、前記酸性排ガス中の酸性物質を吸着させる手段(1)と、前記手段(1)において前記酸性排ガス処理剤に吸着された酸性物質を脱着させて、前記酸性排ガス処理剤を再生する手段(2)と、前記手段(2)において前記酸性排ガス処理剤から脱着した酸性物質を回収する手段(3)とを備えた、酸性排ガス処理設備。
[7]上記二酸化マンガン複合Mg−Al系層状複水酸化物が、過マンガン酸カリウム水溶液にMg−Al酸化物を添加し、沈殿物をろ過、乾燥し生成させる、還元工程を必要としない製法による、上記[4]に記載の酸性排ガス処理方法。
本発明の酸性排ガス処理剤を用いることにより、火力発電所や焼却施設等の燃焼施設から発生する、塩化水素、硫黄酸化物及び窒素酸化物等の酸性排ガスを同時に除去処理することができ、特に、一酸化窒素の除去効率が、従来の層状複水酸化物を用いた場合よりも向上する。
また、前記酸性排ガス処理剤を用いた本発明の酸性排ガス処理方法によれば、従来よりも少ない処理剤量で酸性排ガスを効率的に除去することができ、また、前記酸性排ガス処理剤を再生利用することができる。
また、本発明の酸性排ガス処理装置によれば、前記酸性排ガス処理方法を好適に行うことができ、従来よりも効率的かつ低コストで酸性排ガスを処理することが可能となる。
実施例の酸性排ガス処理性能評価試験における反応管出口ガスのNOx濃度の経時変化を示したグラフである。 合成例1の生成物の粉末X線回折図である。 合成例2の生成物の粉末X線回折図である。 CO3型Mg−Al LDHの粉末X線回折図である。 合成例1の生成物のXPSスペクトルである。 合成例2の生成物のXPSスペクトルである。
以下、本発明の酸性排ガス処理剤、及びこれを用いた酸性排ガス処理方法並びに酸性排ガス処理設備について、詳細に説明する。
[酸性排ガス処理剤]
本発明の酸性排ガス処理剤は、Mg−Al LDHの、酸化マンガン及び過マンガン酸化合物の少なくともいずれか(以下、Mn−O化合物とも言う。)による複合化物を含むものである。
このように、Mg−Al LDHを、マンガンと酸素の化合物(Mn−O化合物)による複合化物としたものを酸性排ガス処理剤として用いることにより、従来の層状複水酸化物であるMg−Al LDH等を用いた場合に比べて、一酸化窒素の除去効率を向上させることができる。
これは、Mg−Al LDH自体は、一酸化窒素を吸着しにくいものの、複合化されたMn−O化合物の触媒作用によって、一酸化窒素が二酸化窒素に酸化され、さらに、硝酸イオンに酸化されやすくなり、Mg−Al LDHの複合化物に吸着されやすくなったためであると推測される。
マンガンは、+2〜+7の酸化数を取り得るが、酸化触媒としての作用の観点からは、酸化数が大きいものが好ましい。前記複合化物としては、合成容易性等の観点から、例えば、酸化数+4のマンガンによる二酸化マンガン複合Mg−Al層状複水酸化物(以下、MnO2複合Mg−Al LDHとも言う。)、又は酸化数+7のマンガンによる過マンガン酸型Mg−Al系層状複水酸化物(以下、MnO4型Mg−Al LDHとも言う。)等が好ましい。前記複合化物は、1種単独であっても、2種以上を含んでいてもよい。
MnO2複合Mg−Al LDHの構造式は下記式(1)で表され、また、MnO4型Mg−Al LDHの構造式は、下記式(2)で表される。
Mg1-xAlx(OH)2(MnO2)2.5x(Cl)x・mH2O (1)
Mg1-xAlx(OH)2(MnO4)x・mH2O (2)
前記式(1)及び(2)において、通常、x=0.20〜0.40、m=1〜12である。
前記酸性排ガス処理剤には、炭酸型Mg−Al系層状複水酸化物(以下、CO3型Mg−Al LDHとも言う。)が含まれていることが好ましい。
上記特許文献1に記載されているように、CO3型Mg−Al LDHは、酸性排ガスの処理に好適に用いることができる化合物であり、酸性排ガス中に含まれる、例えば、塩化水素、二酸化硫黄、二酸化窒素等の一酸化窒素以外の酸性化合物を効率的に除去することができる。このため、前記複合化物と併用することが好ましい。
この場合、前記酸性排ガス処理剤中の前記複合化物とCO3型Mg−Al LDHとの含有量の割合は、特に限定されるものではなく、処理する酸性排ガスに含まれる一酸化窒素の量等の酸性排ガスの成分組成に応じて適宜設定される。
CO3型Mg−Al LDHは、ハイドロタルサイトとして、天然に産出する粘土鉱物も存在するが、合成する場合、その合成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、上記特許文献1に記載の方法)を用いることができる。
例えば、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)と硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)をMg/Al=2/1(モル比)で混合した水溶液を、pH10.5に保持しながら、炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液に滴下することにより得ることができる。具体的には、下記実施例に示す方法で合成することができる。
また、MnO2複合Mg−Al LDH及びMnO4型Mg−Al LDHも、その合成方法は特に限定されるものではないが、CO3型Mg−Al LDHを原料化合物として、そのインターカレーションによる陰イオン交換機能を利用して、合成することができる。
例えば、CO3型Mg−Al LDHを500℃で仮焼してMg−Al酸化物を得た後、過マンガン酸カリウム(KMnO4)水溶液に添加混合することにより、過マンガン酸イオン(MnO4 -)が取り込まれたMnO4型Mg−Al LDHを合成することができる。
さらに、MnO4型Mg−Al LDHは過マンガン酸カリウム(KMnO4)水溶液中で、MnO2複合Mg−Al LDHに変化する。
また、前記MnO4型Mg−Al LDHは、塩化マンガン(MnCl2)水溶液に添加混合することにより、MnO2複合Mg−Al LDHを合成することができる。
前記酸性排ガス処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム、重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、水酸化ドロマイト、軽焼ドロマイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等の層状複水酸化物以外の薬剤が含まれていてもよい。ただし、後述する酸性排ガス処理方法において、前記酸性排ガス処理剤を再生し、これを再利用に供する場合には、再生品の純度や回収操作等の観点から、これらの薬剤は含まれていないことが好ましい。
[酸性排ガス処理方法]
前記酸性排ガス処理剤を用いて酸性排ガスを処理する方法は、特に限定されるものではないが、前記酸性排ガス処理剤(以下、単に、処理剤とも言う。)は、好ましくは、本発明の酸性排ガス処理方法に適用される。
本発明の酸性排ガス処理方法は、前記処理剤に、酸性排ガスを接触させて、前記酸性排ガス中の酸性物質を吸着させる工程(1)と、前記工程(1)において前記処理剤に吸着された酸性物質を脱着させて、前記処理剤を再生する工程(2)と、前記工程(2)において前記処理剤から脱着した酸性物質を回収する工程(3)とを含む、処理方法である。
上記のような処理方法によれば、再生された処理剤を再利用することができる。また、酸性物質は、例えば、水に溶解させて酸(水溶液)として回収され、この酸は、工業用途等での利用に供することもできる。
前記工程(1)において、前記処理剤中の前記複合化物によって、一酸化窒素が酸化され、また、層状複水酸化物の層間に、酸性排ガス中の酸性物質が取り込まれる陰イオン交換等によって、前記酸性物質が前記処理剤に吸着される。
次いで、前記工程(2)においては、前記処理剤に吸着された前記酸性物質を、可逆的な陰イオン交換等により、該処理剤から脱着させる。この場合の陰イオン交換は、例えば、CO3型Mg−Al LDH、MnO2複合Mg−Al LDH及びMnO4型Mg−Al LDHの合成方法と同様に、各種水溶液を用いて、混合撹拌することにより行うことができ、これにより、処理剤を容易に再生することができる。
このようにして再生された処理剤は、再利用することが可能であるため、酸性排ガスの処理コストを低減させることができる。
前記工程(3)においては、前記工程(2)で前記処理剤から脱着した酸性物質を回収する。例えば、水に溶解させて酸(水溶液)として回収することができ、前記酸は、工業用途等での利用に供することもできる。
このように、本発明に係る処理方法は、前記処理剤のみならず、処理対象となる酸性排ガスについても、リサイクル性に優れた方法である。
前記処理方法においては、前記工程(1)〜(3)を含む処理サイクルを繰り返し行い、前記処理サイクルの2回目以降の少なくともいずれかの処理サイクルの工程(1)において、前記処理剤の少なくとも一部に、当該処理サイクル以前の少なくともいずれかの処理サイクルの工程(2)で再生した処理剤を用いることが好ましい。
このように、前記処理方法を繰り返し行う場合に、前の工程で再生された処理剤を再利用することにより、酸性排ガスの処理に必要な処理剤の総使用量を低減することができ、酸性排ガスの処理コストの低減にもつながる。
上記のような本発明の酸性排ガスの処理方法は、酸性排ガス中の各種酸性物質を1種の処理剤で同時に除去処理することができるため、作業効率に優れている。特に、処理剤として前記複合化物を用いることにより、従来よりも、一酸化窒素の除去効率を高めることができる。
また、処理時に中和生成物が生じることがなく、処理に伴って発生する廃棄物の処理負荷を軽減することができる。
[酸性排ガス処理設備]
前記酸性排ガス処理剤を用いて酸性排ガスを処理するための設備は、特に限定されるものではないが、前記処理剤は、好ましくは、本発明の酸性排ガス処理設備において適用される。
本発明の酸性排ガス処理設備は、前記処理剤に、酸性排ガスを接触させて、前記酸性排ガス中の酸性物質を吸着させる手段(1)と、前記手段(1)において前記処理剤に吸着された酸性物質を脱着させて、前記処理剤を再生する手段(2)と、前記手段(2)において前記処理剤から脱着した酸性物質を回収する手段(3)とを備えた処理設備である。
前記手段(1)は、例えば、前記処理剤が収容された容器に、酸性排ガスの流通路を設けることにより構成することができる。
前記手段(2)は、例えば、酸性排ガスを流通させた後の前記容器内から取り出した処理剤を、上述したCO3型Mg−Al LDH、MnO2複合Mg−Al LDH及びMnO4型Mg−Al LDHの合成方法と同様の方法により、Mg−Al LDHに複合化させる化学種に応じて、各種水溶液に浸漬させて、混合撹拌することができる浸漬槽として構成することができる。
前記手段(3)は、例えば、水に溶解させて酸(水溶液)として回収する水溶液収容タンクとして構成することができる。
前記酸性排ガス処理設備は、火力発電や廃棄物焼却等における燃焼設備に付設させることができる。例えば、廃棄物焼却炉で発生する酸性排ガスを処理する場合、焼却炉本体の燃焼排ガス系統に順次設けられているボイラ、排ガス冷却装置、集塵機に続いて、前記酸性排ガス処理設備を設け、該酸性排ガス処理設備からの処理済み排ガスを、誘引通風機等で煙突に導いて、該煙突から大気中に放出させるように構成することができる。
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
[合成例1] MnO2複合Mg−Al LDHの合成
硝酸マグネシウム六水和物及び硝酸アルミニウム九水和物を用いて、マグネシウム濃度0.33モル/L、アルミニウム濃度0.17モル/Lの混合水溶液(マグネシウム/アルミニウム=2/1(モル比))を調製した。
この混合溶液を、濃度0.1モル/Lの炭酸ナトリウム水溶液に、30℃で撹拌しながら滴下した。このとき、濃度1.25モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴下により、pHを10.5に保持した。
滴下終了後、30℃で1時間撹拌した。その後、沈殿物をろ過し、繰り返し洗浄した後、40℃で40時間減圧乾燥し、CO3型Mg−Al LDHを得た。
得られたCO3型Mg−Al LDHを500℃で2時間仮焼した後、濃度0.2モル/Lの過マンガン酸カリウム水溶液に、窒素ガス気流下で投入し、30℃で6時間撹拌した。その後、沈殿物をろ過し、繰り返し洗浄した後、40℃で40時間減圧乾燥して得られた生成物を、濃度0.1モル/Lの塩化マンガン水溶液に窒素ガス気流下で投入し、30℃で3時間撹拌した。その後、沈殿物をろ過し、繰り返し洗浄した後、40℃で減圧乾燥し、MnO2複合Mg−Al LDH(Mg0.62Al0.38(OH)2(MnO2)0.95(Cl)0.38・1.13H2O)を得た。
[合成例2] MnO2複合Mg−Al LDHの合成
硝酸マグネシウム六水和物及び硝酸アルミニウム九水和物を用いて、マグネシウム濃度0.33モル/L、アルミニウム濃度0.17モル/Lの混合水溶液(マグネシウム/アルミニウム=2/1(モル比))を調製した。
この混合溶液を、濃度0.1モル/Lの炭酸ナトリウム水溶液に、30℃で撹拌しながら滴下した。このとき、濃度1.25モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴下により、pHを10.5に保持した。
滴下終了後、30℃で1時間撹拌した。その後、沈殿物をろ過し、繰り返し洗浄した後、40℃で40時間減圧乾燥し、CO3型Mg−Al LDHを得た。
得られたCO3型Mg−Al LDHを500℃で2時間仮焼した後、濃度0.2モル/Lの過マンガン酸カリウム水溶液に、窒素ガス気流下で投入し、30℃で6時間撹拌した。その後、沈殿物をろ過し、繰り返し洗浄した後、40℃で40時間減圧乾燥した。
なお、合成例1及び合成例2におけるCO型Mg−Al LDH、MnO型Mg−Al LDH、及びMnO2複合Mg−Al LDHは、粉末X線回折測定法(粉末XRD)により相同定した。CO型Mg−Al LDHについて、図4に粉末X線回折図を示す。なお、使用したX線回折測定装置は、(株)リガク製「RINT−2200VHF」であり、特性X線として、CuKα線(1.5418A)を用いて測定した。また、Mn−O化合物による複合化物については、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)による元素分析値も示す。また、合成例1及び合成例2におけるMnO型Mg−Al LDH、及びMnO2複合Mg−Al LDHは、X線光電子分光法(XPS)を用いてMnの酸化数を特定することにより同定した。
[酸性排ガス処理性能評価試験]
(実施例1)
合成例1で得られたMnO2複合Mg−Al LDH 1.0gを、管状電気炉の反応管(内径16mm)内のグラスウール上に充填した。管状電気炉の設定温度を170℃とし、試験ガス(キャリアガス:窒素、一酸化窒素ガス濃度150volppm、酸素ガス濃度10vol %)を、マスフローコントローラーにて流量調整して、線速度1.0m/minで反応管に流した。反応管の出口ガスのNOx濃度の経時変化(90分間)を定電位電解法による燃焼排ガス分析計(株式会社テストー製)により測定した。
(比較例1)
実施例1において、MnO2複合Mg−Al LDHを、合成例1の合成過程で得られたCO3型Mg−Al LDHに変えて、それ以外は実施例1と同様にして、評価試験を行った。
図1に、実施例1及び比較例1における反応管の出口ガスのNOx濃度の経時変化をグラフにして示す。
また、NOx濃度の積算濃度から、試験ガス中の一酸化窒素ガスの反応率を求めたところ、実施例1では91.5vol %、比較例1では2.2vol %であった。
これらの結果から、二酸化マンガンとMg−Al系層状複水酸化物の複合化物は、CO3型Mg−Al LDHよりも、一酸化窒素の除去性能に優れていることが認められた。
[合成例1及び合成例2によるMnO複合Mg−Al LDHの存在比の分析]
図2及び図3に、合成例1及び合成例2による生成物の粉末X線回折図を示す。また、図5及び図6に、合成例1及び合成例2による生成物のXPSスペクトルを示す。
元素分析値から、合成例1及び合成例2の生成物のMg/Alモル比は、それぞれ1.9及び1.6となり、初期Mg/Alモル比(2.0)とほぼ一致した。
図2及び図3の粉末X線回折図より、いずれもLDHに帰属されるX線ピークを示しており、面間隔(d003)も7.6Å、7.5Åといずれの生成物もLDH構造が確認された。
図5及び図6のXPSスペクトルから、MnO由来のMn(IV)のピークが確認されており、ピーク面積よりいずれもMn(IV)が、Mnの総量に対して、95%以上存在することが確認された。
これらの結果から、合成例2のように合成例1に示す塩化マンガン水溶液に投入する還元工程がなくともMnO2複合Mg−Al LDHを合成することができることが確認された。
合成例2でMnO2複合Mg−Al LDHは、以下のように生成したと考えられる。
まず、CO3型Mg−Al LDHを500℃で2時間仮焼した後、生成したMg−Al酸化物(Mg1−xAl1+x/2)を濃度0.2モル/Lの過マンガン酸カリウム水溶液に、窒素ガス気流下で投入し、30℃で6時間撹拌すると、(3)式で示されるようにMnO型Mg−Al LDH(Mg1−xAl(OH)(MnO)が生成する。
Mg1-xAlxO1+x/2 + xMnO4 - + (1+x/2)H2O → Mg1-xAlx(OH)2(MnO4)x + xOH- (3)
さらに過マンガン酸カリウム水溶液中で(4)式に示す反応が生じ、MnO2型Mg−Al LDH(Mg1−xAl(OH)(MnO2)が生成する。
Mg1-xAlx(OH)2(MnO4)x + x/2H2O → Mg1-xAlx(OH)2(MnO2)x + 3/4xO2 + xOH- (4)

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかの複合化物を含有する、酸性排ガス処理剤。
    Mg1-xAlx(OH)2(MnO2)2.5x(Cl)x・mH2O (1)
    Mg1-xAlx(OH)2(MnO4)x・mH2O (2)
    前記式(1)及び(2)において、x=0.20〜0.40、m=1〜12である。
  2. 炭酸型Mg−Al系層状複水酸化物を含む、請求項1に記載の酸性排ガス処理剤。
  3. 請求項1又は2に記載の酸性排ガス処理剤を用いて酸性排ガスを処理する方法であって、
    前記酸性排ガス処理剤に、前記酸性排ガスを接触させて、前記酸性排ガス中の酸性物質を吸着させる工程(1)と、
    前記工程(1)において前記酸性排ガス処理剤に吸着された酸性物質を脱着させて、前記酸性排ガス処理剤を再生する工程(2)と、
    前記工程(2)において前記酸性排ガス処理剤から脱着した酸性物質を回収する工程(3)とを含む、酸性排ガス処理方法。
  4. 前記工程(1)〜(3)を含む処理サイクルを繰り返し行い、前記処理サイクルの2回目以降の少なくともいずれかの処理サイクルの工程(1)において、前記酸性排ガス処理剤の少なくとも一部に、当該処理サイクル以前の少なくともいずれかの処理サイクルの工程(2)で再生した酸性排ガス処理剤を用いる、請求項3に記載の酸性排ガス処理方法。
  5. 請求項1又は2に記載の酸性排ガス処理剤を用いて酸性排ガスを処理する設備であって、
    前記酸性排ガス処理剤に、前記酸性排ガスを接触させて、前記酸性排ガス中の酸性物質を吸着させる手段(1)と、
    前記手段(1)において前記酸性排ガス処理剤に吸着された酸性物質を脱着させて、前記酸性排ガス処理剤を再生する手段(2)と、
    前記手段(2)において前記酸性排ガス処理剤から脱着した酸性物質を回収する手段(3)とを行う装置を備えた、酸性排ガス処理設備。
  6. 前記二酸化マンガン複合Mg−Al系層状複水酸化物が、過マンガン酸カリウム水溶液にMg−Al酸化物を添加し、沈殿物をろ過、乾燥し生成させる、還元工程を必要としない製法による請求項3記載の酸性排ガス処理方法
JP2019193749A 2019-04-19 2019-10-24 酸性排ガス処理剤、酸性排ガス処理方法、及び酸性排ガス処理設備 Active JP6898625B2 (ja)

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