JP6895675B2 - 繊維強化樹脂材と金属材との接合構造及びその接合方法 - Google Patents
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Description
そこで例えば輸送機器等の分野では、高強度、軽量化を図るマルチマテリアル構造の具現化手段として、近年、繊維強化樹脂材と金属材との異材接合技術が検討されている。
特許文献2には、金属に加熱された樹脂が浸入する凹部を形成した接合方法を開示する。
特許文献3には、レーザ照射にて接合する際に発生する分解ガスが外部に排出するように通路を形成した接合方法を開示する。
しかし、これらはいずれもマトリックス樹脂と金属との接合界面の密着性に関するものであり、繊維強化樹脂材本来の物性(高強度等)が活かされていないものである。
特許文献4には、熱可塑性繊維強化樹脂材を一部重ね合せ、この重ね合せの上から繊維強化樹脂シートを押し込みピンにて押し込む接合方法を開示する。
しかし、同公報に開示する技術は樹脂と金属等との素材が全く異なる異材の接合には適用できない。
なお、孔部内に押し込まれた樹脂材が冷却し、硬化することで接合が完了する。
ここで、孔部の形状に制限はない。
例えば円形状、楕円形状、多角形、星形等が例として挙げられる。
マトリックス樹脂の軟化状態にてと表現したのは繊維強化樹脂材のマトリックス樹脂が軟化温度に加熱されていればよく、繊維強化樹脂材のみならず金属材も予熱されていてもよく、また加熱(予熱)方法に制限はない。
また、前記金属材の孔部は貫通孔であり、前記押込部材にて前記繊維強化樹脂材を前記金属材の孔部に押し込むと同時又は時間差を設けて背圧を負荷するようにしてもよい。
このようにすると、プレス機を用いて接合することもできる。
この場合に押込部材を上側パンチとし、背圧を負荷する部材を下側パンチとすることができる。
上側パンチは、挿入量を金属材に設けた孔部の上下方向途中、底部あるいは底面よりさらに突き出すこともできる。
上側パンチを孔部の底面より突き出す場合には、下側パンチの下からの加圧により、押し込まれた繊維強化樹脂材に拡径したかえり部を形成することでカシメに似た接合構造にすることもできる。
このようにすると繊維強化樹脂材の一部が変形し、金属材の孔部に押し込まれる際に、この繊維強化樹脂材の繊維の損傷を防止あるいは緩和する。
よって本発明に係る接合構造は、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂材と、孔部を有する金属材との接合構造であって、前記繊維強化樹脂材が部分的に変形し、前記金属材の孔部に嵌め込まれていることを特徴とする。
また、プレス加工機等により、連続的に生産も可能であり生産性に優れる。
図1に示した実施例は、ダイクッション(DC)として背圧制御機30を有するサーボプレス機を用いて接合する例を示す。
ベッド13のボルスタ12に下型22をセットし、上部側のスライド11に上型21をセットする。
上型21と下型22とからなる金型の外観を図2に示す。
上型21は、下型22に対して離間方向に付勢されたスプリング24を有する。
本実施例では、上型21の下側に接合時にワークを押える押え型21aをスプリングを介して有し、図2に金型逃げ(シワ形成部)と表記したように押え型21aに切欠き部を形成してある。
上型21には、押え型21aを貫通させて上側パンチ23を有し、下型22にはこの下型を貫通させて下側パンチ31を有する。
この下側パンチ31は、ロッドを介して背圧制御機30により下側からの背圧量が制御されている。
図2では、上側パンチを単にパンチ、下側パンチ31を裏当て用パンチと表記してある。
本実施例では下型22が金型温調(PID)可能になっている。
図1(a)に示すように、下型22の上面に金属材2を載置する。
金属材2には、図3に示すように接合部に孔部2aを有する。
本実施例では、孔部の形状が円孔になっているが形状に制限はない。
この金属材2の孔部2aに、樹脂材1の接合部が重なるように上側に載置する。
なお、樹脂材1はマトリックス樹脂が軟化状態にあるように予熱されている。
また、金属材2に重ね合せる際に、樹脂材1が急冷されないように、この金属材2も予熱するのが好ましい。
本実施例では、プレス機を用いたので本発明に係る押込部材を上側パンチと表現したが、樹脂材1を部分的に変形させ金属材2の孔部2aに嵌め込ませるものであれば、例えば油圧機にて上記押込部材を上下動作させてもよく、本実施例に限定されない。
上側パンチ23の外径は、樹脂材1の肉厚等を考慮し、金属材2の孔部2aの内径より小さく設定してある。
この状態を、図3に模式的に示す。
樹脂材1には、金属材2の孔部2aに押し込まれた嵌合部1aが形成される。
金属材2に形成した孔部2aは有底の孔部形状(凹部形状)にしてもよいが、本実施例では貫通孔になっており、樹脂材1の押込成形時にこの嵌合部1aを下側から支えたり、加圧成形させることができるように下側パンチ31が背圧制御機(油圧制御機)30にて上昇制御されている。
下側パンチ31の外径は金属材の孔部2aの内径より小さいと、樹脂材の嵌合部1aの底面を孔部2aの上下方向途中に抑えたり、孔部2aの底面に合せて背圧支持することができる。
また、樹脂材の嵌合部1aの底面を金属材の孔部2aの底面よりさらに下側に突き出し、下側パンチ31にて加圧成形し、カエリ部を形成してもよい。
金属材は、JIS A6061材からなるアルミニウム合金の板材(幅50mm×長さ150mm×厚さ3mm)を用いた。
繊維強化樹脂材は、熱可塑性炭素繊維強化樹脂材(CFRTP)として、マトリックス樹脂ポリアミド6(PA6)、炭素繊維含有率50〜55体積%の板材(幅50mm×長さ150mm×厚さ3mm)を用いた。
アルミ材には、内径15mmの円孔を形成した。
プレス金型は、図2に示したものを用い上型パンチ外径11mm(半径方向クリアランス2mm)、下側パンチ外径14.5mm、金型を約150℃に温調し、樹脂材を280℃に余熱した。
上側パンチで樹脂材側からアルミ材の孔部内に向けて約4mm押込みプレスし、そのまま冷却または図1(c)に示すように払い出し、その後冷却した。
樹脂材の金属材孔部底面からの凸量は、約0.4mmであった。
接合部の外観写真を図4に示す。
パンチ挿入側(CFRTP側)の写真に示すように押込成形により、嵌合部(1a)が形成されるが炭素繊維に切断が認められず、また図2の金型逃げ部に対応して、シワ部1bが形成されていた。
なお、この金型逃げ部は図2に示した切り欠きに限定されるものではなく、押え型21aであって、孔部2aの外周部付近に逃げ凹部を形成してもよい。
CFRTPが破損し、孔部から抜け出した破壊荷重は6,905Nであった。
上側パンチと孔部との半径方向クリアランス2mmであることから、樹脂材の嵌合部断面積81.64mm2とすると、嵌合部の最大せん断応力は約169MPaと試算される。
これは、マトリックス樹脂PA6のせん断強さ62MPaよりも大きく、炭素繊維によるものと推定される。
これにより、本発明に係る接合方法による接合構造にあっては、繊維強化樹脂材の特性を充分に発揮した接合構造になることが明らかになった。
2 金属材
11 スライド
12 ボルスタ
13 ベッド
21 上型
21a 押え型
22 下型
23 上側パンチ
30 背圧制御機
31 下側パンチ
Claims (2)
- マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂材と金属材との少なくとも接合部位を重ね合せ、
前記金属材は前記接合部位に孔部を有し、
前記金属材に前記繊維強化樹脂材を重ねた状態で前記接合部位であって繊維強化樹脂材側から押える押え型と、前記押え型を貫通して配置した押込部材を有し、前記押え型は前記金属材の孔部付近に金型逃げ部を形成してあり、
前記繊維強化樹脂材のマトリックス樹脂の軟化状態にて、前記繊維強化樹脂材側から前記金属材の孔部内に前記押込部材を挿入することで前記繊維強化樹脂材が部分的に変形し、前記孔部内に押し込まれるとともに前記金型逃げ部にシワ部が形成されることを特徴とする繊維強化樹脂材と金属材との接合方法。 - 前記金属材の孔部は貫通孔であり、
前記押込部材にて前記繊維強化樹脂材を前記金属材の孔部に押し込むと同時又は時間差を設けて背圧を負荷することを特徴とする請求項1記載の繊維強化樹脂材と金属材との接合方法。
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