JP6894625B2 - 耐火木造防災シェルター - Google Patents
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Description
例えば、地震に対しては、「耐震」、「制震」、「免震」等の技術が知られており、火災に対しては、いわゆる「耐火建築物」等の技術が知られている。
例えば、既存木造建築物内の部屋の内部で耐震補強木造部材を組立でき、部屋の大きさに合わせて部屋全体を耐震補強化させる屋内木造耐震シェルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、既存の該戸建住宅の一室を利用して設置され、剛構造の簡易木造軸組釘打ち工法よりなり、少なくとも土台、ベタコンクリート打ち上に床束、大引、柱、間柱、梁等の骨組と、該骨組に取付けられた床板、壁板、天井板等の面板と、を備えた木質耐震シェルターが知られている(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、地震の際には、同時に火災が発生する可能性が高いところ、これらの耐震シェルターは、いずれも、木造であるため、火災により燃える可能性がある。そのため、地震の際に、これらの耐震シェルターを利用しても安心することができないという欠点がある。
なお、本明細書において、「不燃」とは、接炎した際に着火しないもの、又は、建築基準法施行令第108条の二で定める不燃性能を意味する。
このとき、底壁部、側壁部及び天井壁部を構成するブロック部には断熱部が設けられているので、側壁部に囲まれた内部領域の温度上昇も抑制できる。
また、火災は一般に下方から燃え広がるところ、上記耐火木造防災シェルターにおいては、底壁部外側の外壁部の下方には、コンクリート層と、間隔をおいて配置された支持具としか有していないため、仮に、耐火木造防災シェルターの周囲で火災が発生したとしても、ハウジング部に燃え広がることを防止することができる。
このとき、連設された角外壁部と外壁部との間には、0.1〜1mmの隙間が設けられていることが好ましい。この場合、角外壁部又は外壁部が動きの自由度を有することになるため、地震の際の振動による衝撃を吸収することが可能となる。
また、防火性能をより向上させることができると共に、十分な強度を有するものとすることができる。
図1に示すように、耐火木造防災シェルターXは、中空四角柱状のハウジング部3を備え、既存建築物Hの屋内に設置される。なお、かかる既存建築物Hは、木質構造(木造)であっても、鉄骨構造であってもよい。
かかる耐火木造防災シェルターXのハウジング部3は、既存建築物Hの1階の部屋に、後述する柱部及びブロック部を持ち込んで、組み立てることにより、設置される。なお、設置方法の詳細については後述する。
図2の(a)に示すように、耐火木造防災シェルターXは、地面Gに設置された既存建築物の基礎Kの上に設けられたコンクリート層1と、該コンクリート層1の上に、間隔をおいて複数配置された支持具2と、該支持具2を介して設置されたハウジング部3とを備える。
また、ハウジング部3は、矩形状の底壁部31と、該底壁部31の周縁から起立するように設けられた4面の側壁部32と、これらの側壁部32の上面に設けられ、これらの側壁部32で囲まれた内部領域Sを封鎖する天井壁部33とからなる。
耐火木造防災シェルター1においては、底壁部31と基礎Kとの間に、コンクリート層1を設けることにより、底壁部31と基礎Kとの間の隙間を極力小さくしている。これにより、地震の際に、ハウジング部3が下方に大きく落下する等の事態が生じることを防止することができ、火災の際には、火の侵入を抑制することができる。
かかる支持具2は、後述する底壁部31の各柱部3aの直下にそれぞれ配置される。
また、支持具2は、柱部3aの長さ方向に沿って複数配置される。なお、隣合う支持具2同士の間隔は、極力、等間隔とすることが好ましい。
支持具2が免震機能を有するものである場合、地震の際に、振動がハウジング部3に伝達されるのを抑制することができる。
また、これらの中でも、支持具2は、免震ゴムであることが好ましい。この場合、設置が容易であり、免震効果も十分に発揮することができる。
具体的には、底壁部31、側壁部32及び天井壁部33は、複数の柱部3aが、互いに平行となるように、等間隔で複数配置され、その柱部3a同士の間にブロック部3bが配設された構成となっている。このため、耐火木造防災シェルターXは、比較的容易に組み立てることができる。これにより、既存建築物の屋内であっても設置が可能となる。
図3に示すように、ユニットUは、柱部3aと、該柱部3aに取り付けられたブロック部3bとからなる。
なお、ブロック部3bと、その両側の柱部3aとは、互いに、接着剤により、及び/又は、ビス、ネジ、ボルト等の留め具により、固定されている。
また、図示していないが、柱部3a及びブロック部3bの長さは、同一となっており、両端面は面一となっている。
柱部3aの材質としては、特に限定されず、赤松、檜、唐松、杉、檜葉、栗、米栂、スプルース、米ヒバ、米松等の一般的な木材を採用することができる。
また、柱部3aとしては、調湿性の観点から、丸太から切り出した木材である、いわゆる無垢材を採用することが好ましい。
具体的には、ブロック部3bは、柱部3aの間で、外側に配置されるブロック用板状体4と、その内側に配置されるブロック用板状体4と、間柱4aに挟持された断熱部3bとが、積層された3層構造となっている。
なお、ブロック部3bにおいて、ブロック用板状体4同士は、互いに、接着剤により、及び/又は、ビス、ネジ、ボルト等の留め具により、固定されており、ブロック用板状体4及び間柱4aも同様に、互いに、接着剤により、及び/又は、ビス、ネジ、ボルト等の留め具により、固定されている。
このように、耐火木造防災シェルターXにおいては、ブロック部3bに断熱部3b2が設けられているので、側壁部32に囲まれた内部領域Sの温度上昇も抑制することができる。
なお、内壁部5は、柱部3a及び間柱4aに、接着剤により、及び/又は、ビス、ネジ、ボルト等の留め具により、固定されている。
間柱4aの材質としては、特に限定されず、赤松、檜、唐松、杉、檜葉、栗、米栂、スプルース、米ヒバ、米松等の一般的な木材を採用することができる。
また、間柱4aとしては、調湿性の観点から、丸太から切り出した木材である、いわゆる無垢材を採用することが好ましい。
なお、間柱4aは、無垢材の代わりに、合板、合成木材、不燃木材、単板積層材(LVL)、板状の集成材等を採用することも可能である。
なお、ブロック用板状体4及び内壁部5は、合板の代わりに、木材(無垢材)、合成木材、不燃木材、単板積層材(LVL)、板状の集成材等を採用することも可能である。また、幅広のブロック用板状体4と、幅小のブロック用板状体4と、内壁部5とは、これらの範囲内で、同じものを採用してもよく、異なるものを採用してもよい。
不燃化された断熱材としては、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、EPS(ビーズ法ポリスチレン)、XPS(押し出し法ポリスチレン)等の発泡系断熱材を、不燃液で処理したものが挙げられる。
これらの中でも、不燃効果、断熱効果及び汎用性の観点から、不燃断熱材は、不燃化したEPSであることが好ましい。
また、例えば、特許第3485914号に記載の不燃処理液を採用することも可能である。
図4に示すように、外壁部6は、柱部3a及びブロック部3bの外側に取り付けられる。
なお、外壁部6と、柱部3a及びブロック部3bとは、互いに、接着剤により、及び/又は、ビス、ネジ、ボルト等の留め具により、固定されている。
また、図示していないが、外壁部6、柱部3a及びブロック部3bの長さは、同一となっており、両端面は面一となっている。
これにより、耐火木造防災シェルターXにおいては、火災の際に、ハウジング部3が燃焼することを防止することができる。
なお、外壁部6としては、不燃単板積層材の代わりに、木材(無垢材)、合成木材、合板、板状の集成材等の材料を不燃液で処理したものを採用することも可能である。
また、かかる不燃液は上述したものと同じである。
そして、角外壁部7は、外面が面一となるように、外壁部6に連設されている。
すなわち、耐火木造防災シェルターXは、底壁部31、側壁部32及び天井壁部33が、外壁部6又は角外壁部7により被覆された構造となっている。これにより、耐火木造防災シェルターXは、防火性能がより向上し、耐火時間もより長時間とる。
角外壁部7は、不燃材料からなる。
具体的には、角外壁部7は、不燃液が付与された単板を互いに貼り合わせた不燃単板積層材からなる。
なお、角外壁部7としては、不燃単板積層材の代わりに、木材(無垢材)、合成木材、合板、板状の集成材等の材料を不燃液で処理したものを採用することも可能である。
また、かかる不燃液は上述したものと同じである。
また、角外壁部7又は外壁部6が木質のものである場合は、含水量等に起因する木質特有の伸縮を吸収することができる。
また、床部8には、吸排気口9aが設けられており、底壁部31には該底壁部31を貫通する貫通孔9bが設けられている。このため、側壁部32に囲まれた床部8の上の内部領域Sは、吸排気口9aを介して、床部8と底壁部31との間の空間に通じ、該空間は、貫通孔9bを介して、底壁部31とコンクリート層2との間から外気に通じることになる。
このため、内部領域Sを換気することが可能となる。
ドア部10は、一対の合板10aと、合板10a同士の間に取り付けられたブロック部3bと、一方の合板10aに取り付けられた回転軸体10bとからなる。
したがって、ドア部10は、回転軸体10bを中心に回動することにより、開閉可能となっている。
なお、ブロック部3b、内壁部5及び外壁部6の構造は、上述したものと同じであるので説明を省略する。
また、ドア部10には、不燃材料からなる外壁部6が取り付けられているので、防火性能にも優れる。
耐火木造防災シェルターXは、上述したように、既存建築物の基礎を利用するため、1階に設けられる。
また、仮に、既存建築物の基礎の上に、床等が設置されている場合は、予めそれを取り除く。
次に、コンクリート層2の上に、支持具2を配置する。具体的には、支持具2は、次に設置される予定の底壁部31の柱部3aの位置に対応する位置に配置する。
次に、床部8を設置し、底壁部31、ドア部10を含む側壁部32及び天井壁部33に、内壁部5及び外壁部6を設けることにより、耐火木造防災シェルターXが設置される。
同様に、合板の代わりに、不燃液で処理した、木材(無垢材)、合成木材、不燃木材、単板積層材(LVL)、板状の集成材等を採用してもよい。
なお、かかる不燃液は上述したものと同じである。
また、断熱材として、発泡系断熱材の代わりに、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、炭化コルク、羊毛断熱材等の繊維系断熱材を採用することも可能である。
図6は、実施例で用いたブロック部のサンプルを示す斜視図である。
図6に示すように、サンプル3b’は、内壁部5からなる層と、断熱部3b2及び断熱部3b2両側に設けられた間柱4aからなる層と、1枚のブロック用板状体4からなる層と、外壁部6からなる2層とがこの順序で積層された構造となっている。
サンプル3b’において、内壁部5及びブロック用板状体4としては合板を用い、断熱部3b2としては不燃化されたEPSを用い、間柱4aとしては杉の無垢材を用い、外壁部6としては不燃化された不燃単板積層材を用いている。
なお、これらは、互いに、接着剤及びビスにより固定されている。
すなわち、標準加熱時間−温度曲線が規定されたISO834加熱曲線に沿った加熱を1時間行い、加熱終了後に加熱の3倍以上の時間(180分間)の冷却を行った。
得られた温度グラフを図7に示す。
図7に示すように、本発明に係る耐火木造防災シェルターのブロック部は、CH1、CH2、CH3、CH4及びCH5のいずれもが最高温度260℃以下であり、炭化は認められなかった。
このことから、本発明に係る耐火木造防災シェルターが、防火性能に優れることがわかった。
本発明に係る耐火木造防災シェルターXは、耐震性能だけでなく、防火性能にも優れるものである。
10・・・ドア部
10a・・・合板
10b・・・回転軸体
2・・・支持具
3・・・ハウジング部
31・・・底壁部
32・・・側壁部
33・・・天井壁部
3a・・・柱部
3b・・・ブロック部
3b1・・・基部
3b2・・・断熱部
4・・・ブロック用板状体
4a・・・間柱
5・・・内壁部
6・・・外壁部
7・・・角外壁部
8・・・床部
8a・・・支柱
9a・・・吸排気口
9b・・・貫通孔
G・・・地面
H・・・既存建築物
K・・・基礎
S・・・内部領域
U・・・ユニット
W・・・壁
X・・・耐火木造防災シェルター
Claims (8)
- 既存建築物の屋内に設置可能な耐火木造防災シェルターであって、
前記既存建築物の基礎の上に設けられたコンクリート層と、
該コンクリート層の上に、間隔をおいて複数配置された支持具を介して設置された底壁部、該底壁部の周縁から起立するように設けられた側壁部、及び、該側壁部の上面に設けられ、該側壁部で囲まれた内部領域を封鎖する天井壁部、からなるハウジング部と、
を備え、
前記底壁部、前記側壁部及び前記天井壁部が、いずれも、複数の柱部と、該柱部同士の間に配設されるブロック部とからなるものであり、
該ブロック部が、基部と、該基部に内設された断熱部とを有し、
前記底壁部、前記側壁部及び前記天井壁部の外側には、不燃材料からなる外壁部が取り付けられている耐火木造防災シェルター。 - 前記断熱部が不燃化された不燃断熱材からなる請求項1記載の耐火木造防災シェルター。
- 角に位置する柱部の外側には、断面視L字状の不燃材料からなる角外壁部が配置されており、
前記角外壁部が前記外壁部に連設され、
前記底壁部、前記側壁部及び前記天井壁部が、前記外壁部又は前記角外壁部により被覆されている請求項1又は2に記載の耐火木造防災シェルター。 - 前記角外壁部と前記外壁部との間には、0.1〜1mmの隙間が設けられている請求項3記載の耐火木造防災シェルター。
- 前記側壁部には、ドア部が設けられており、
該ドア部が前記ブロック部からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐火木造防災シェルター。 - 前記支持具が免震ゴムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐火木造防災シェルター。
- 前記底壁部の上には、床部が設けられており、
該床部には吸排気口が設けられ、前記底壁部には該底壁部を貫通する貫通孔が設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐火木造防災シェルター。 - 前記不燃材料が、不燃液が付与された単板を互いに貼り合わせた不燃単板積層材からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐火木造防災シェルター。
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