JP6891097B2 - 走行経路決定装置 - Google Patents
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Description
さらに、本明細書では、作業車の作業環境という語句には、作業車の状態、作業地の状態、人(監視者、運転者、管理者など)による指令なども含めることができ、この作業環境を評価することで状態情報が求められる。この状態情報として、燃料補給や収穫物の排出などの機械的要因や天候の変動や作業地状態などの環境的要因、さらには、不測の作業中断指令などの人的要求を挙げることができる。また、複数台の作業車が協調しながら作業走行する場合には、作業車同士の位置関係なども、作業環境または状態情報の1つとなる。なお、監視者や管理者は、作業車に乗り込んでいてもよいし、作業車の近くに、あるいは作業車から遠く離れていてもよい。
この構成によれば、まず、設定された作業対象領域を網羅する走行経路要素群が算出される。この走行経路要素群を構成する走行経路要素を順次選択し、選択された走行経路要素を目標走行経路として作業走行していくことで、作業対象領域の作業が完了する。走行経路要素の選択順番を算出する機能は、第1経路要素選択部と第2経路要素選択部とによって実現される。第1経路要素選択部は、作業走行に先立って、基本優先ルールに基づいて全走行経路分の走行経路要素の選択順番を算出する。当該選択順番が算出されると、直ちに、作業車は、作業走行を開始する。第1経路要素選択部は、基本優先ルールに基づいて選択順番を算出するだけなので、演算負担が軽く、短時間で算出結果である選択順番が得られる。しかしながら、この選択順番は、作業性や走行性や経済性に関して必ずしも適正ではない。適正な選択順番を得るには、作業性や走行性や経済性に関する種々の条件を加える必要がある。ここでは、そのような条件を考慮してより適切な利益のある走行経路要素の選択順番を算定するルールをコスト評価ルールと称している。この構成では、第1経路要素選択部による選択順番の算出が終了した時点で、つまり作業走行が開始する時点で、第2経路要素選択部が、まだ走行されていない走行経路要素を再演算走行経路要素として抽出して、コスト評価ルールに基づいて、選択順番を算出する。第2経路要素選択部によって算出された選択順番は、第1経路要素選択部によって算出された選択順番より、適正なものとなるので、経路設定部が、第2経路要素選択部によって算出された選択順番をもって第1経路要素選択部によって算出された選択順番を修正する。第2経路要素選択部の演算中において、既に、作業車は走行作業を行っているので、第2経路要素選択部の演算時間が、作業走行を遅延させることは避けられる。そして、修正された選択順番での作業走行の分だけは、コストを考慮したより適切な作業走行となる。
また、作業対象領域は、種々の形態の走行経路で網羅することができる。農作業などで良く用いられるのは、平行な走行経路をUターン走行経路でつないでいく走行経路である。その際、平行な走行経路の間隔は作業幅によって規定され、Uターン走行経路のUターン幅は最小旋回半径によって規定される。一般に、Uターン幅は作業幅より大きいため、隣接する走行経路をUターン走行経路でつなぐような走行経路を採用することができない。このため、1つの走行経路からいくつかの走行経路を間に挟んで次の走行経路を選択する必要がある。このような経路の選択において、本発明による選択順番の技術が有効に利用することができる。
また、経路検索の分野においては、コスト評価ルールを用いて、各走行経路要素を通過する際に必要なコストの積算値が最小となるような選択順番を算出することで、より適切な選択順番が得られる。
また、本発明の別の特徴は、作業地を作業しながら走行する作業車のための走行経路を決定する走行経路決定装置であって、前記作業地における前記作業車の作業対象領域を設定する領域設定部と、前記作業対象領域を網羅する走行経路を構成する多数の走行経路要素の集合体である走行経路要素群を算出して、読み出し可能に格納する経路管理部と、前記作業車の作業走行の前に、基本優先ルールに基づいて、全走行経路分の前記走行経路要素の選択順番を算出する第1経路要素選択部と、前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番に基づく前記作業車の作業走行中に、前記走行経路要素群から未走行の走行経路要素を再演算走行経路要素として抽出し、コスト評価ルールに基づいて前記再演算走行経路要素の選択順番を再算出する第2経路要素選択部と、前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番を前記第2経路要素選択部によって算出された選択順番で修正する経路設定部と、を備え、前記走行経路要素群は、前記作業対象領域を短冊状に分割する互いに平行な平行線からなる平行線群であり、前記作業車のUターン走行により、1つの走行経路要素の一端から他の走行経路要素の一端への移行が実行され、前記基本優先ルールでは、順番元になる走行経路要素から順番先となる走行経路要素への優先度が予め設定されており、前記優先度は、前記順番元になる走行経路要素から所定距離だけ離れている適正離間走行経路要素が前記順番先として最も優先されるように、かつ前記順番元になる走行経路要素から前記順番先となる走行経路要素までの離間距離が大きくなるほど、低くなるように設定されていることにある。
この構成によれば、まず、設定された作業対象領域を網羅する走行経路要素群が算出される。この走行経路要素群を構成する走行経路要素を順次選択し、選択された走行経路要素を目標走行経路として作業走行していくことで、作業対象領域の作業が完了する。走行経路要素の選択順番を算出する機能は、第1経路要素選択部と第2経路要素選択部とによって実現される。第1経路要素選択部は、作業走行に先立って、基本優先ルールに基づいて全走行経路分の走行経路要素の選択順番を算出する。当該選択順番が算出されると、直ちに、作業車は、作業走行を開始する。第1経路要素選択部は、基本優先ルールに基づいて選択順番を算出するだけなので、演算負担が軽く、短時間で算出結果である選択順番が得られる。しかしながら、この選択順番は、作業性や走行性や経済性に関して必ずしも適正ではない。適正な選択順番を得るには、作業性や走行性や経済性に関する種々の条件を加える必要がある。ここでは、そのような条件を考慮してより適切な利益のある走行経路要素の選択順番を算定するルールをコスト評価ルールと称している。この構成では、第1経路要素選択部による選択順番の算出が終了した時点で、つまり作業走行が開始する時点で、第2経路要素選択部が、まだ走行されていない走行経路要素を再演算走行経路要素として抽出して、コスト評価ルールに基づいて、選択順番を算出する。第2経路要素選択部によって算出された選択順番は、第1経路要素選択部によって算出された選択順番より、適正なものとなるので、経路設定部が、第2経路要素選択部によって算出された選択順番をもって第1経路要素選択部によって算出された選択順番を修正する。第2経路要素選択部の演算中において、既に、作業車は走行作業を行っているので、第2経路要素選択部の演算時間が、作業走行を遅延させることは避けられる。そして、修正された選択順番での作業走行の分だけは、コストを考慮したより適切な作業走行となる。
また、作業対象領域は、種々の形態の走行経路で網羅することができる。農作業などで良く用いられるのは、平行な走行経路をUターン走行経路でつないでいく走行経路である。その際、平行な走行経路の間隔は作業幅によって規定され、Uターン走行経路のUターン幅は最小旋回半径によって規定される。一般に、Uターン幅は作業幅より大きいため、隣接する走行経路をUターン走行経路でつなぐような走行経路を採用することができない。このため、1つの走行経路からいくつかの走行経路を間に挟んで次の走行経路を選択する必要がある。このような経路の選択において、本発明による選択順番の技術が有効に利用することができる。
また、このような基本優先ルールを用いれば、次々と簡単に走行経路要素の選択順序を決定することができるので、走行経路要素の数が多くても、その演算は短時間で終了する。
第2経路要素選択部による再演算走行経路要素の選択順番の算出中に、再演算走行経路要素の1つが走行された場合、作業走行済の当該走行経路要素を再度走行しなければならなくなり、無駄が生じる。これを避けるために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第2経路要素選択部は、前記再演算走行経路要素として、前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番の最後から所定数の走行経路要素を抽出する。この構成では、選択順番の最後の走行経路要素から所定数の走行経路要素が選択順番の再演算の対象となるので、演算時間と走行時間とを考慮して、この所定数を、再演算走行経路要素が作業車によって走行されてしまう可能性のない数とすれば、上述した問題は解消される。
作業車の作業走行時間及び第2経路要素選択部による演算時間は一定ではないので、再演算中に再演算走行経路要素が作業車によって走行されないことが保証されるような所定数を正確に決定することは難しい。安全を見越して、所定数を小さく設定すると、適正な選択順番をもつ走行経路要素の数は少なくなってしまう。この問題を合理的に解消するため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第2経路要素選択部は、前記再演算走行経路要素を抽出して選択順番を再算出する処理を、選択順番の遅い走行経路要素を新たに追加抽出することで、前記所定数をインクリメントしながら繰り返し、最後に追加抽出された走行経路要素が走行中の走行経路要素であれば、前記処理の繰り返しを停止する。この構成では、所定数を、再演算走行経路要素が作業車によって走行されてしまう可能性がない数として、選択順番の再演算を行い、さらに時間的に余裕があれば、所定数をインクリメントして、再演算走行経路要素の数を増やして、さらにまた選択順番の再演算を行う。このように所定数をインクリメントしていく際に、あらたにインクリメントされることによって再演算走行経路要素として追加抽出された走行経路要素が走行中となっておれば、その再演算は停止する。これにより、それまでの間に得られた再演算の結果をもって修正された選択順番がそのまま有効となり、できるだけ適切な走行経路に沿った作業走行が実現する。なお、この出願で用いられたインクリメントなる語句は、所定数を1ずつ増加させるという限定的な意味ではなく、その増加数として、1のみならず2以上の数が用いられてもよい。また、実際の作業走行時間と演算時間を比較して、一定の増加数を用いるのではなく、インクリメントのタイミングでその増加数を変えてもよい。
図1には、本発明による技術を採用した作業車自動走行システムによる作業走行が模式的に示されている。この実施形態では、作業車は、作業走行として、走行しながら農作物を収穫する収穫作業(刈取作業)を行う収穫機1であり、一般に普通型コンバインと呼ばれている機種である。収穫機1によって作業走行される作業地は圃場と呼ばれる。圃場における収穫作業では、収穫機1が畦と呼ばれる圃場の境界線に沿って作業を行いながら周回走行した領域が外周領域SAとして設定される。外周領域SAの内側は作業対象領域CAとして設定される。外周領域SAは、収穫機1が収穫物の排出や燃料補給のための移動用スペース及び方向転換用スペース等として利用される。外周領域SAの確保のため、収穫機1は、最初の作業走行として、圃場の境界線に沿って3〜4周の周回走行を行う。周回走行では、一周毎に収穫機1の作業幅分だけ、圃場が作業されることになるので、外周領域SAは収穫機1の作業幅の3〜4倍程度の幅を有する。このことから、特別に注記しない限り、外周領域SAは既刈地(既作業地)として扱われ、作業対象領域CAは未刈地(未作業地)として扱われる。なお、この実施形態では、作業幅は、刈取り幅にオーバーラップ量を減算した値として取り扱われる。しかしながら、作業幅の概念は、作業車の種類によって異なる。本発明での作業幅は、作業車の種類や作業種類によって規定されるものである。
本発明の作業車自動走行システムに組み込まれた収穫機1が、収穫作業を自動走行で行うためには、走行の目標となる走行経路を生成し、その走行経路を管理する走行経路管理装置が必要となる。この走行経路管理装置の基本的な構成と、この走行経路管理装置を用いた自動走行制御の基本的な流れとを、図2を用いて説明する。
走行経路要素群の一例として、図3には、作業対象領域CAを短冊状に分割する多数の平行分割直線を走行経路要素とする走行経路要素群が示されている。この走行経路要素群は2つのノード(両端点であって、ここで経路変更可能である経路変更可能点と称する)を1本のリンクで連結した直線状の走行経路要素を平行に並べたものである。走行経路要素は、作業幅のオーバーラップ量を調整することにより、等間隔を開けて並ぶように設定される。1つの直線で示される走行経路要素の端点から他の直線で示される走行経路要素の端点への移行には、Uターン走行(例えば180°の方向転換走行)が行われる。このような平行な走行経路要素をUターン走行によって繋ぎながら自動走行することを、以降は、『直線往復走行』と称する。このUターン走行には、ノーマルUターン走行と、スイッチバックターン走行とが含まれる。ノーマルUターン走行は、収穫機1の前進だけで行われ、その走行軌跡はU字状となる。スイッチバックターン走行は、収穫機1の前進と後進とを用いて行われ、その走行軌跡はU字状とはならないが、結果的には、収穫機1はノーマルUターン走行と同じ方向転換走行が得られる。ノーマルUターン走行を行うためには、方向転換走行前の経路変更可能点と方向転換走行後の経路変更可能点との間に2本以上の走行経路要素を挟む距離が必要となる。それより短い距離では、スイッチバックターン走行が用いられる。つまり、スイッチバックターン走行は、ノーマルUターン走行と異なって後進を行うため、収穫機1の旋回半径の影響がなく、移行する走行経路要素の選択肢が多い。しかし、スイッチバックターン走行では前後進の切替えが行われるため、スイッチバックターン走行は、基本的には、ノーマルUターン走行と比べて時間がかかる。
図2に示すように、経路要素選択部63は、第1経路要素選択部631と第2経路要素選択部632とを有する。第1経路要素選択部631は、時間をかけずに妥当な結果を出力する基本的な経路選択アルゴリズムをルール化した基本優先ルールに基づいて、全走行経路分の前記走行経路要素の選択順番を算出する。第2経路要素選択部632は、時間をかけてより精密な結果を出力する本格的な経路選択アルゴリズムをルール化したコスト評価ルールに基づいて前記再演算走行経路要素の選択順番を再算出する。なお、経路要素選択部63による選択順番の算出の前に、作業対象領域に対して行われる作業走行の走行パターンが設定される。この走行パターンには、例えば、図3に示すようなUターン走行を行いながら直線往復走行を実現するように直線往復走行パターンがある。作業走行に先立って、第1経路要素選択部631は、全走行経路分の走行経路要素の選択順番を算出する。作業車は、選択された走行経路要素を目標走行経路として、自動走行することができる。第1経路要素選択部631による選択順番の算出が完了すると、作業車の自動走行が開始されるとともに、第2経路要素選択部632による、走行経路要素の選択順番の再算出が行われる。第2経路要素選択部632における選択順番の再算出の対象となる走行経路要素(再演算走行経路要素)は、第1経路要素選択部631によって選択された走行経路要素の内で未走行の走行経路要素である。第1経路要素選択部631によって算出された選択順番は、第2経路要素選択部632によって再算出された選択順番によって書き換えられる。
図5は、この実施の形態での説明に採用されている作業車としての収穫機1の側面図である。この収穫機1は、クローラ式の走行機体11を備えている。走行機体11の前部には、運転部12が設けられている。運転部12の後方には、脱穀装置13及び収穫物を貯留する収穫物タンク14が、左右方向に並設されている。また、走行機体11の前方には、収穫部15が高さ調整可能に設けられている。収穫部15の上方には、穀稈を起こすリール17が高さ調節可能に設けられている。収穫部15と脱穀装置13との間には刈取穀稈を搬送する搬送装置16、収穫物タンク14から収穫物を排出する排出装置18が設けられている。収穫物タンク14の下部に収穫物の重量(収穫物の貯留状態)を検出するロードセンサが装備され、収穫物タンク14の内部や周辺に、収量計や食味測定装置が装備されている。食味測定装置からは、品質データとして収穫物の水分値とタンパク値の測定データが出力される。収穫機1には、GNSSモジュールやGPSモジュールなどとして構成される衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GPS信号やGNSS信号を受信するための衛星用アンテナが走行機体11の上部に取り付けられている。なお、衛星測位モジュール80には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。
図6には、この収穫機1に構築されている制御系と、通信端末4の制御系が示されている。この実施形態では、収穫機1のための走行経路を管理する走行経路管理装置は、通信端末4に構築された第1走行経路管理モジュールCM1と、収穫機1の制御ユニット5に構築された第2走行経路管理モジュールCM2とから構成されている。
(a)走行パターン(直線往復走行、渦巻き走行、ジグザグ走行等)
(b)運搬車CVの支援車の駐車位置や収穫物排出等のための収穫機の駐車位置
(c)作業形態(一台の収穫機1による作業、複数台の収穫機1による作業)
(d)いわゆる中割ライン
(e)収穫対象となる作物種(稲(ジャポニカ米、インディカ米)、麦、大豆、菜種、そば等)に応じた車速や脱穀装置13の回転速度の値等。
特に(e)の情報から、作物種に応じた走行機器パラメータの設定や収穫機器パラメータの設定が自動的に実行されるので、設定ミスが回避される。
作業車自動走行システムにおける自動走行の例を、短冊経路要素算出部602によって算出された走行経路要素群を用いて直線往復走行する例を挙げて説明する。
次に、経路要素選択部63の第1経路要素選択部631及び第2経路要素選択部632による走行経路要素の選択順番を決定する具体的な処理工程の一例を説明する。
これから説明する例でも、説明を簡単にするため、図8で示されたような走行経路要素群から順次、次に走行すべき次走行経路要素が選択されることで、直線往復走行する収穫機1の走行経路が決定されることにする。したがって、図10は、第1経路要素選択部631による走行経路要素選択順番算出過程の途中の状態が示されていることになる。図10及び図11では、図8で示された走行経路要素群と同様に、短冊状の走行経路要素が21本示されており、各経路の上側に経路番号が付与されている。図11では、走行経路要素の中央に、優先度ではなく、これまでに選択した順番が付与されている。また、選択された走行経路要素、つまり仮想的には既作業となった走行経路要素は黒く塗られている。このように、移行先の走行経路要素が決定するごとに、当該走行経路要素を収穫機1の現在位置として、図8に示すような優先度が設定され、その優先度に基づいて、次に移行する走行経路要素が決定される。これを繰り返すことで、全走行経路が作り出される。
上述したように、周回走行による作業によって外周領域SAが作り出されると、領域設定部44によって、圃場が、外周領域SAと作業対象領域CAとに区分けされ、さらに作業対象領域CAには、短冊経路要素算出部602によって算出される走行経路要素群が設定される。作業走行開始点は、収穫機1の現在位置、または、監視者が通信端末4を通じて入力した位置が採用される。ここでは、経路番号:16の一端が作業走行開始点として選択されている。
自動走行の開始が指令されると、走行作業開始点である経路番号:16の走行経路要素の端点からこの走行経路要素に沿った作業走行が実行される。
第1経路要素選択部631によって算定され、経路設定部64によって設定された全走行経路に基づいて、経路番号:13の走行経路要素が選択され、その走行経路要素に沿った作業走行が実行される。
同様に、以降の作業走行は、経路設定部64に設定された全走行経路に基づいて順次進められる。
この段階で、第2経路要素選択部632による走行経路要素の選択順番の算出が終了したとする。第2経路要素選択部632は、第1経路要素選択部631によって算定された選択順番の最後となる走行経路要素から遡って3つ分の走行経路要素を抽出し、それらの走行経路要素間での最適な走行順を算定し始め、実走行が経路番号:10(仮の全走行経路における選択順番3番目)まで進んだときに、ラスト3つ目の走行経路要素から残りの走行経路要素2つを走行するのに最適な選択順番が算出されている。図11のステップ#05で示されている例では、元の選択順番が、『経路番号:19→経路番号:9→経路番号:12(走行時間/移動量:13)』であるのに対して、再算出された選択順番が、『経路番号:19→経路番号:12→経路番号:9(走行時間/移動量:10)』であり、これらが比較され、再算出された選択順番の方が、走行時間(移動量)が小さいと判定される。つまり、再算出された選択順番が最適な経路選択であることになる。
ステップ#05で再算出された選択順番によって、対応する走行経路要素の選択順番が置き換えられる。この間に、収穫機1は、仮の全走行経路における選択順番4番目である経路番号:7に移動している。しかし、実走行している収穫機1が、置き換えられていない元の選択順番に則って、置き換えられた選択順番19番目の経路番号:19に到達するには、まだまだ時間的な余裕がある。そこで、即ち、選択順番の再算出は、抽出する所定数を、仮の全走行経路の最終走行経路要素側から1つずつ増やしながら、実走行している走行経路要素が、再算出のために抽出される走行経路要素に含まれるまで繰り返される。これにより、より多くの走行経路要素が適正選択順番となる。ただし、再算出された選択順番が、仮の全走行経路の選択順番と同じである場合もあり、この場合は、上記の置き換えはスキップされる。なお、この実施形態は、上記アルゴリズムを説明するための例示に過ぎず、例えば、仮の全走行経路における選択順番は、図8から図10に基づいて説明した基本ルール通りになっていない箇所がある。
図15を用いて、Uターン経路算出部603がUターン走行経路を生成する基本原理を説明する。図15では、LS0で示された旋回元の走行経路要素からLS1で示された旋回先の走行経路要素に移行するUターン走行経路が示されている。通常の走行では、LS0が作業対象領域CAにおける走行経路要素であれば、LS1が外周領域SAでの走行経路要素(=中間直進経路)となり、逆に、LS1が作業対象領域CAにおける走行経路要素であれば、LS0が外周領域SAでの走行経路要素(=中間直進経路)となるのが一般的である。走行経路要素LS0とLS1の直線式(または直線上の2点)がメモリに記録されており、これらの直線式からその交点(図15ではPXで示されている)及び交差角(図15ではθで示されている)が算出される。次に、走行経路要素LS0及び走行経路要素LS1に接するとともに、収穫機1の最小旋回半径と等しい半径(図15ではrで示されている)の接円が算出される。この接円と走行経路要素LS0及びLS1との接点(図15ではPS0,PS1で示されている)を結ぶ円弧(接円の一部)が、旋回経路となる。そこで、走行経路要素LS0とLS1との交点PXと、円との接点までの距離Yを、
Y=r/(tan(θ/2))
で求める。最小旋回半径が収穫機1の仕様により実質的に決まっているため、rは規定値である。なお、rは、最小旋回半径と同一の値でなくても良く、無理のない旋回半径を予め通信端末4等によって設定し、その旋回半径となるような旋回操作をプログラミングしてあれば良い。走行制御的には、収穫機1は、旋回元の走行経路要素LS0を走行中に、交点までの距離がYである位置座標(PS0)に到達すると、旋回走行を開始し、次いで、旋回走行中に収穫機1の方位と旋回先の走行経路要素LS1の方位との差が許容値に収まれば旋回走行を終了する。その際、収穫機1の旋回半径は正確に半径rに一致しなくてもよい。旋回先の走行経路要素LS1との距離及び方位差に基づいて操舵制御されることで、収穫機1は旋回先の走行経路要素LS1に移行することができる。
図19には、上述した渦巻き走行において、走行経路要素の経路変更可能点である交点での経路変更に用いられる方向転換走行の一例が示されている。以降、この方向転換走行をαターン走行と称する。このαターン走行における走行経路(αターン走行経路)は、いわゆる切り返し走行経路の一種であり、走行元の走行経路要素(図19ではLS0で示されている)と旋回先の走行経路要素(図19ではLS1で示されている)の交点から、前進での旋回経路を経て、後進での旋回経路で旋回先の走行経路要素に接する経路である。αターン走行経路は、αターン走行経路は基準化されているので、走行元の走行経路要素と旋回先の走行経路要素との交差角に応じて生成されたαターン走行経路が予め登録されている。したがって、経路管理部60は、算出された交差角に基づいて適正なαターン走行経路を読み出し、経路設定部64に与える。この構成に代えて、交差角毎の自動制御プログラムを自動走行制御部511に登録しておき、経路管理部60によって算出された交差角に基づいて、自動走行制御部511が適正な自動制御プログラム読み出すような構成を採用してもよい。
経路要素選択部63は、上述したような第1経路要素選択部631及び第2経路要素選択部632による走行経路要素の選択機能以外に、緊急避難的な走行経路要素を選択する機能も有する。これは、第1経路要素選択部631または第2経路要素選択部632によって算出された走行経路要素の選択順番に基づく走行を一時的に停止し、別な走行経路要素を選択して例外的な走行を行う例外処理である。このような例外処理は、作業状態評価部55から出力される状態情報に基づいて決定される。以下に、例外処理における経路選択ルールA1からA11を例示する。
上述した実施形態では、圃場の作業走行は1台の収穫機1で行われていた。もちろん、本発明は、複数台の作業車の使用にも適用可能である。ここでは、理解のしやすさのために、2台の収穫機1によって作業走行(自動走行)する形態を説明する。図2119には、マスタ収穫機1mとして機能する第1作業車と、スレーブ収穫機1sとして機能する第2作業車とが協調して、1つの圃場を作業走行する様子が示されている。マスタ収穫機1mには、監視者が乗り込んでおり、監視者は、マスタ収穫機1mに持ち込まれた通信端末4を操作する。便宜的に、マスタ及びスレーブという用語を使用したが、これらに主従関係はなく、マスタ収穫機1m及びスレーブ収穫機1sは、上述した走行経路設定ルーチン(走行経路要素の選択ルール)に基づいてそれぞれ独自にルート設定して自動走行を行う。ただし、マスタ収穫機1mとスレーブ収穫機1sとの間はそれぞれの通信処理部70を介してデータ通信可能であり、各種情報の交換を行う。通信端末4は、マスタ収穫機1mに監視者の指令や走行経路に関するデータなどを与えるだけでなく、通信端末4とマスタ収穫機1mとを介して、スレーブ収穫機1sにも監視者の指令や走行経路に関するデータを与えることができる。
なお、図22及び図23では、互いに平行な直線からなる平行直線群は、L01、L02、・・・L10で示されており、L01−L04が既作業の走行経路要素であり、L05−L10が未作業の走行経路要素である。図22では、マスタ収穫機1mが駐車位置に向かうために外周領域SAを走行し、スレーブ収穫機1sが作業対象領域CAの下端で、詳しくは走行経路要素L04の下端で一時停止している。スレーブ収穫機1sが走行経路要素L04からUターン走行で走行経路要素L07に移行するために外周領域SAに進入すると、マスタ収穫機1mと衝突するので、スレーブ収穫機1sが、衝突回避行動として一時停車しているのである。そして、駐車位置にマスタ収穫機1mが駐車した場合、走行経路要素L05、L06、L07を用いた作業対象領域CAへの進入や作業対象領域CAからの離脱は不可能となるので、走行経路要素L05、L06、L07は一時的に走行禁止(選択禁止)となる。マスタ収穫機1mが排出作業を終え、駐車位置から移動すると、スレーブ収穫機1sの経路要素選択部63が、マスタ収穫機1mの走行経路を加味して、走行経路要素L05−L10から、次に移行すべき走行経路要素を選択し、スレーブ収穫機1sは自動走行を再開する。
マスタ収穫機1mとスレーブ収穫機1sとが協調して作業走行する場合、通常マスタ収穫機1mには、監視者が搭乗しているので、マスタ収穫機1mについては、必要に応じて、通信端末4を通じて、自動走行制御における車両走行機器群71や作業装置機器群72に対するパラメータの値を微調整できる。マスタ収穫機1mの車両走行機器群71や作業装置機器群72に対するパラメータの値を、スレーブ収穫機1sにおいても実現するため、図27に示すように、マスタ収穫機1mからスレーブ収穫機1sのパラメータを調整できる構成を採用することができる。ただし、通信端末4は、スレーブ収穫機1sにも備えられていても何ら問題はない。なぜならば、スレーブ収穫機1sも、単独自動走行をする場合も、マスタ収穫機1mとして使用される場合もあるからである。
4 :通信端末
5 :制御ユニット
41 :タッチパネル
42 :作業地データ入力部
43 :外形データ生成部
44 :領域設定部
50 :通信処理部
51 :走行制御部
53 :自車位置算出部
54 :報知部
60 :経路管理部
601 :メッシュ経路要素算出部
603 :Uターン経路算出部
62 :短冊経路要素算出部
63 :経路要素選択部
631 :第1経路要素選択部
632 :第2経路要素選択部
64 :経路設定部
70 :通信処理部
SA :外周領域
CA :作業対象領域
Claims (7)
- 作業地を作業しながら走行する作業車のための走行経路を決定する走行経路決定装置であって、
前記作業地における前記作業車の作業対象領域を設定する領域設定部と、
前記作業対象領域を網羅する走行経路を構成する多数の走行経路要素の集合体である走行経路要素群を算出して、読み出し可能に格納する経路管理部と、
前記作業車の作業走行の前に全走行経路分の前記走行経路要素の選択順番を算出する第1経路要素選択部と、
前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番に基づく前記作業車の作業走行中に、前記走行経路要素群から未走行の走行経路要素を再演算走行経路要素として抽出し、前記作業車が前記再演算走行経路要素を走行した際に発生するコストに基づいて前記再演算走行経路要素の選択順番を再算出する第2経路要素選択部と、
前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番を前記第2経路要素選択部によって算出された選択順番で修正する経路設定部と、を備えた走行経路決定装置。 - 前記走行経路要素群は、前記作業対象領域を短冊状に分割する互いに平行な平行線からなる平行線群であり、前記作業車のUターン走行により、1つの走行経路要素の一端から他の走行経路要素の一端への移行が実行される請求項1に記載の走行経路決定装置。
- 作業地を作業しながら走行する作業車のための走行経路を決定する走行経路決定装置であって、
前記作業地における前記作業車の作業対象領域を設定する領域設定部と、
前記作業対象領域を網羅する走行経路を構成する多数の走行経路要素の集合体である走行経路要素群を算出して、読み出し可能に格納する経路管理部と、
前記作業車の作業走行の前に、基本優先ルールに基づいて、全走行経路分の前記走行経路要素の選択順番を算出する第1経路要素選択部と、
前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番に基づく前記作業車の作業走行中に、前記走行経路要素群から未走行の走行経路要素を再演算走行経路要素として抽出し、コスト評価ルールに基づいて前記再演算走行経路要素の選択順番を再算出する第2経路要素選択部と、
前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番を前記第2経路要素選択部によって算出された選択順番で修正する経路設定部と、を備え、
前記走行経路要素群は、前記作業対象領域を短冊状に分割する互いに平行な平行線からなる平行線群であり、前記作業車のUターン走行により、1つの走行経路要素の一端から他の走行経路要素の一端への移行が実行され、
前記コスト評価ルールで評価されるコストは、前記第2経路要素選択部によって算出された選択順番で前記走行経路要素を前記作業車が走行した際に発生するコストであり、
前記コストが最も低くなる選択順番が前記第2経路要素選択部によって算出される走行経路決定装置。 - 前記コストは、前記Uターン走行の走行距離に依存する請求項2または3に記載の走行経路決定装置。
- 作業地を作業しながら走行する作業車のための走行経路を決定する走行経路決定装置であって、
前記作業地における前記作業車の作業対象領域を設定する領域設定部と、
前記作業対象領域を網羅する走行経路を構成する多数の走行経路要素の集合体である走行経路要素群を算出して、読み出し可能に格納する経路管理部と、
前記作業車の作業走行の前に、基本優先ルールに基づいて、全走行経路分の前記走行経路要素の選択順番を算出する第1経路要素選択部と、
前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番に基づく前記作業車の作業走行中に、前記走行経路要素群から未走行の走行経路要素を再演算走行経路要素として抽出し、コスト評価ルールに基づいて前記再演算走行経路要素の選択順番を再算出する第2経路要素選択部と、
前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番を前記第2経路要素選択部によって算出された選択順番で修正する経路設定部と、を備え、
前記走行経路要素群は、前記作業対象領域を短冊状に分割する互いに平行な平行線からなる平行線群であり、前記作業車のUターン走行により、1つの走行経路要素の一端から他の走行経路要素の一端への移行が実行され、
前記基本優先ルールでは、順番元になる走行経路要素から順番先となる走行経路要素への優先度が予め設定されており、
前記優先度は、前記順番元になる走行経路要素から所定距離だけ離れている適正離間走行経路要素が前記順番先として最も優先されるように、かつ前記順番元になる走行経路要素から前記順番先となる走行経路要素までの離間距離が大きくなるほど、低くなるように設定されている走行経路決定装置。 - 前記第2経路要素選択部は、前記再演算走行経路要素として、前記第1経路要素選択部によって算出された選択順番の最後から所定数の走行経路要素を抽出する請求項1から5のいずれか一項に記載の走行経路決定装置。
- 前記第2経路要素選択部は、前記再演算走行経路要素を抽出して選択順番を再算出する処理を、選択順番の遅い走行経路要素を新たに追加抽出することで、前記所定数をインクリメントしながら繰り返し、最後に追加抽出された走行経路要素が走行中の走行経路要素であれば、前記処理の繰り返しを停止する請求項6に記載の走行経路決定装置。
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