JP6885833B2 - 状態監視システムおよびデータ処理装置 - Google Patents

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Description

この発明は、複数の風力発電装置の状態を監視する状態監視システムおよび各風力発電装置に配置されるデータ処理装置に関する。
風力発電装置においては、風力を受けるブレードに接続される主軸を回転させ、増速機により主軸の回転を増速させた上で発電機のロータを回転させることによって発電が行なわれる。主軸ならびに増速機および発電機の回転軸の各々は、転がり軸受によって回転自在に支持されており、そのような軸受の異常を診断する状態監視システム(CMS:Condition Monitoring System)が知られている。このような状態監視システムにおいては、軸受に固設された振動センサにより測定される振動波形データを用いて、軸受に損傷が発生しているか否かが診断される。
演算器等を内蔵する一般的な装置の内部機器の状態を監視する状態監視システムとして、たとえば、特開平7−159469号公報(特許文献1)には、被測定機器の内部状態を計測する回路から出力される信号に基づいて被測定機器の異常を検出したときに、この検出信号を受けて各計測要素回路および記録部に対して、計測および記録を開始させるトリガを発生させる構成が示されている。
特開平7−159469号公報
風力発電に適した地域には、複数の風力発電装置が配置されていることがしばしばみられる。このような状況では、ある風力発電装置の状態監視を行なう場合に、他の風力発電装置の状態も併せて評価したいときがある。たとえば、複数の風力発電装置の状態監視を同時刻におこなうことによって、風力発電装置を設置した地域(サイト)がどのような気象条件(風、温度など)であったのかを分析することに役立つ。上記特許文献1に開示される状態監視システムでは、ある風力発電装置にトリガが発生したとしても、他の風力発電装置に同じタイミングでトリガが発生することは期待できない。
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の風力発電装置において一斉に計測データが得られる状態監視システムおよび各風力発電装置に配置されるデータ処理装置を提供することである。
この発明は、要約すると、複数の風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、複数の風力発電装置にそれぞれ対応して設けられる複数のデータ処理装置を備える。複数のデータ処理装置の各々は、対応する風力発電装置に設置されたセンサの出力からトリガ信号を発生するトリガ発生部と、複数のデータ処理装置のうちの他のデータ処理装置からの外部トリガ信号を受信するトリガ受信部と、トリガ発生部またはトリガ受信部の出力に応じてセンサの出力の要否を判断し計測データを抽出するデータ抽出部とを備える。
好ましくは、センサは振動センサである。データ処理装置は、一定時間内に振動センサから出力される振動波形データを特徴付ける評価値を、時間的に連続して演算するように構成された評価値演算部をさらに備える。トリガ発生部は、評価値演算部により演算される評価値の時間的変化の傾向が変化したことに基づいて計測データを抽出するためのトリガ信号を発生する。
より好ましくは、トリガ発生部は、評価値の時間的変化率が閾値以上となったことを検出して、トリガ信号を発生する。
より好ましくは、トリガ発生部は、評価値の時間的変化率が第1の閾値以上となり、かつ、評価値の大きさが第2の閾値以上となったことを検出して、振動波形データの計測を開始する。
より好ましくは、評価値演算部は、一定時間内における振動波形データを統計処理することにより、評価値を演算する。
好ましくは、複数のデータ処理装置の各々は、一定時間分のセンサの出力を記憶する記憶部をさらに備える。データ抽出部は、トリガ発生部がトリガ信号を発生した場合、または、トリガ受信部が外部トリガ信号を受信した場合に、記憶部に記憶されたセンサの出力を記憶部から計測データとして読み出す。
より好ましくは、記憶部は、所定の時間間隔で、振動センサから与えられる振動波形データを格納するとともに、格納されている一定時間内における振動波形データのうち最も古い振動波形データを消去する。
この発明は、他の局面では、複数の風力発電装置の状態を監視する状態監視システムにおいて複数の風力発電装置の内の1つに配置されるデータ処理装置であって、データ処理装置は、複数の風力発電装置の内の1つに設置されたセンサの出力からトリガ信号を発生するトリガ発生部と、複数の風力発電装置のうちの他の風力発電装置からの外部トリガ信号を受信するトリガ受信部と、トリガ発生部またはトリガ受信部の出力に応じてセンサの出力の要否を判断し計測データを抽出するデータ抽出部とを備える。
この発明によれば、複数の風力発電装置において一斉に計測データが得られる状態監視システムおよび各風力発電装置に配置されるデータ処理装置が実現できる。このため、風力発電サイトの気象条件の分析を行なうために必要なデータを収集することができる。
実施の形態1に係る状態監視システムの全体構成を示す図である。 実施の形態1に係る状態監視システムが適用された風力発電装置の構成を概略的に示した図である。 図2に示したデータ処理装置の構成を機能的に示す機能ブロック図である。 図3に示した振動波形データ記憶部および評価値演算部の動作を説明する図である。 図3に示した評価値トレンド記憶部の動作を説明する図である。 図3に示した計測トリガ発生部および振動波形データ抽出部の動作を説明する図である。 実施の形態1に係る状態監視システムにおける軸受の振動波形データを格納するための制御処理を説明するフローチャートである。 実施の形態1に係る状態監視システムにおける軸受の振動波形データの計測トリガを発生するための制御処理を説明するフローチャートである。 実施の形態2に係る状態監視システムにおける軸受の振動波形データの計測トリガを発生するための制御処理を説明するフローチャートである。 実施の形態3に係る状態監視システムにおける軸受の振動波形データの計測トリガを発生するための制御処理を説明するフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る状態監視システムの全体構成を示す図である。図1を参照して、状態監視システム1は、複数の風力発電装置10−1〜10−nの状態を監視する。状態監視システム1は、複数の風力発電装置10−1〜10−nにそれぞれ対応して設けられる複数のデータ処理装置80−1〜80−nと、状態監視サーバ2とを備える。データ処理装置80−1〜80−nと状態監視サーバ2とは、ネットワーク3で相互にデータの送受信が可能である。ネットワーク3は、有線でも無線でも良い。
複数の風力発電装置10−1〜10−nは、各々同様な構成であるので、風力発電装置10として各構成を説明する。データ処理装置80−1〜80−n、各々同様な構成であるので、データ処理装置80として各構成を説明する。
図2は、実施の形態1に係る状態監視システムが適用された風力発電装置の構成を概略的に示した図である。図2を参照して、風力発電装置10は、主軸20と、ブレード30と、増速機40と、発電機50と、主軸用軸受(以下、単に「軸受」と称する。)60と、振動センサ70と、データ処理装置80を備える。増速機40、発電機50、軸受60、振動センサ70およびデータ処理装置80は、ナセル90に格納され、ナセル90は、タワー100によって支持される。
主軸20は、ナセル90内に進入して増速機40の入力軸に接続され、軸受60によって回転自在に支持される。そして、主軸20は、風力を受けたブレード30により発生する回転トルクを増速機40の入力軸へ伝達する。ブレード30は、主軸20の先端に設けられ、風力を回転トルクに変換して主軸20に伝達する。
軸受60は、ナセル90内において固設され、主軸20を回転自在に支持する。軸受60は、転がり軸受によって構成され、たとえば、自動調芯ころ軸受や円すいころ軸受、円筒ころ軸受、玉軸受等によって構成される。なお、これらの軸受は、単列のものでも複列のものでもよい。
振動センサ70は、軸受60に固設される。振動センサ70は、軸受60の振動波形を計測し、計測した振動波形データをデータ処理装置80へ出力する。振動センサ70は、たとえば、圧電素子を用いた加速度センサによって構成される。
増速機40は、主軸20と発電機50との間に設けられ、主軸20の回転速度を増速して発電機50へ出力する。一例として、増速機40は、遊星ギヤ、中間軸および高速軸等を含む歯車増速機構によって構成される。なお、特に図示はしないが、増速機40内にも、複数の軸を回転自在に支持する複数の軸受が設けられている。
発電機50は、増速機40の出力軸に接続され、増速機40から受ける回転トルクによって発電する。発電機50は、たとえば、誘導発電機によって構成される。なお、発電機50内にも、ロータを回転自在に支持する軸受が設けられている。
データ処理装置80は、ナセル90内に設けられ、軸受60の振動波形データを振動センサ70から受ける。データ処理装置80は、予め設定されたプログラムに従って、軸受60の振動波形データを収集する。
図3は、図2に示したデータ処理装置80の構成を機能的に示す機能ブロック図である。図3を参照して、データ処理装置80は、バンドパスフィルタ(以下、「BPF(Band Pass Filter)」と称する。)110と、実効値演算部120と、記憶部130と、振動波形データ抽出部140と、評価値演算部160と、計測トリガ発生部170と、トリガ受信部180と、トリガ送信部190とを含む。
BPF110は、軸受60の振動波形データを振動センサ70から受ける。BPF110は、たとえば、ハイパスフィルタ(HPF(High Pass Filter))を含む。HPFは、その受けた振動波形データにつき、予め定められた周波数よりも高い信号成分を通過させ、低周波成分を遮断する。HPFは、軸受60の振動波形データに含まれる直流成分を除去するために設けられたものである。なお、振動センサ70の出力が直流成分を含まないものであれば、HPFを省略してもよい。
BPF110は、HPFに加えて、またはHPFに代えてローパスフィルタ(LPF(Low Pass Filter))を含んでいてもよい。LPFは、その受けた振動波形データにつき、予め定められた周波数よりも低い信号成分を通過させる。
また、振動センサ70とBPF110との間に、エンベロープ処理部を設けてもよい。エンベロープ処理部は、軸受60の振動波形データを振動センサ70から受けると、その受けた振動波形データにエンベロープ処理を行なうことで、軸受60の振動波形データのエンベロープ波形を生成する。なお、エンベロープ処理部において演算されるエンベロープ処理には、種々の公知の手法を適用可能であり、一例として、振動センサ70から受ける軸受60の振動波形データを絶対値に整流し、LPFを通すことによって、軸受60の振動波形データのエンベロープ波形が生成される。
この場合、BPF110において、HPFは、軸受60の振動波形データのエンベロープ波形をエンベロープ処理部から受けると、その受けたエンベロープ波形につき、予め定められた周波数よりも高い信号成分を通過させ、低周波成分を遮断する。すなわち、HPFは、エンベロープ波形に含まれる直流成分を除去し、エンベロープ波形の交流成分を抽出するように構成される。
実効値演算部120は、フィルタ処理が施された軸受60の振動波形データをBPF110から受ける。実効値演算部120は、軸受60の振動波形データの実効値(「RMS(Root Mean Square)値」とも称される。)を算出し、その算出された振動波形データの実効値を記憶部130へ出力する。
実効値演算部120により演算される軸受60の振動波形の実効値は、エンベロープ処理を行なっていない生の振動波形の実効値であるので、たとえば、軸受60の軌道輪の一部に剥離が発生し、その剥離箇所を転動体が通過するときのみ振動が増加するインパルス的な振動に対しては値の増加が小さいけれども、軌道輪と転動体との接触部の面荒れまたは潤滑不良時に発生する持続的な振動に対しては値の増加が大きくなる。
一方、上述のように、エンベロープ処理部を設けた場合には、実効値演算部120により演算されるエンベロープ波形の交流成分の実効値は、軌道輪の面荒れまたは潤滑不良時に発生する持続的な振動に対しては値の増加が小さく、インパルス的な振動に対しては値の増加が大きくなる。
記憶部130は、振動波形データ記憶部132と、評価値トレンド記憶部134とを含む。振動波形データ記憶部132および評価値トレンド記憶部134は、たとえば、読み書き可能な不揮発性のメモリ等によって構成される。
振動波形データ記憶部132は、実効値演算部120により演算された軸受60の振動波形データの実効値を時々刻々と格納する。振動波形データ記憶部132は、一定時間内における軸受60の振動波形データの実効値を格納するように構成される。後述するように、振動波形データ記憶部132に格納された軸受60の振動波形データの実効値が読み出され、その読み出された実効値を用いて軸受60の異常が診断される。以下の説明では、振動波形データの実効値を、単に「振動波形データ」と称する。
しかし従来の状態監視システムでは、被測定機器の内部状態を計測する回路から出力される信号にノイズが重畳したときに、被測定機器の異常と検出されてトリガが発生される場合が生じる。このような場合には、ノイズの影響を受けて頻繁にトリガが発生されるため、トリガが発生されるたびに、被測定機器の内部状態の計測および記録が開始されることになる。これにより、記録部には、被測定機器が正常であるときのデータと、被測定機器が異常であるときのデータとが混在した状態で、膨大なデータが蓄積されることになる。その結果、記録部に蓄積されるデータに基づいた正確な異常診断ができなくなる可能性がある。
したがって、本実施の形態では、振動波形データに基づいて以下に説明する評価値を演算し、評価値の変化の様子に基づいて振動波形データの計測を開始するためのトリガを発生することによって、ノイズの影響を受けにくくした。
評価値演算部160は、一定時間内における軸受60の振動波形データを振動波形データ記憶部132から読み出すと、読み出した一定時間内における軸受60の振動波形データを特徴付ける評価値を演算する。評価値演算部160は、評価値を時間的に連続して演算するように構成される。
評価値トレンド記憶部134は、評価値演算部160により演算された評価値を受ける。評価値トレンド記憶部134は、評価値演算部160から時々刻々と与えられる評価値を格納する。言い換えれば、評価値トレンド記憶部134は、評価値の時間的変化の傾向を示す評価値トレンドを格納するように構成される。
図4は、図3に示した振動波形データ記憶部132および評価値演算部160の動作を説明する図である。
図4を参照して、振動波形データ記憶部132は、所定の時間間隔で、軸受60の振動波形データを実効値演算部120から受ける。図4の例では、所定の時間間隔を1秒間隔としている。図4中のD0〜D11は、1秒間隔で振動波形データ記憶部132に与えられる振動波形データを表わしている。
振動波形データ記憶部132は、一定時間内における軸受60の振動波形データを格納する。一定時間は、主軸20の回転速度に応じて設定することができる。図4の例では、一定時間を10秒間としている。たとえば、時刻t0において、振動波形データ記憶部132は、時間的に連続する合計10個(すなわち、10秒間分)の振動波形データD0〜D9を格納している。
時刻t0から1秒経過した時刻t1において、振動波形データ記憶部132は、振動波形データD10を実効値演算部120から受けると、10秒間分の振動波形データD0〜D9のうちの最も古い振動波形データD0を消去するとともに、新たに入力された振動波形データD10を追加することで、一定時間内における振動波形データを更新する。
さらに、時刻t1から1秒経過した時刻t2では、振動波形データ記憶部132は、10秒間分の振動波形データD1〜D10のうちの最も古い振動波形データD1を消去するとともに、新たに入力された振動波形データD11を追加することで、一定時間内における軸受60の振動波形データを更新する。
このようにして、振動波形データ記憶部132は、所定の時間間隔で、一定時間内における軸受60の振動波形データを更新する。評価値演算部160は、所定の時間間隔で更新される一定時間内における軸受60の振動波形データを振動波形データ記憶部132から読み出す。評価値演算部160は、読み出した一定時間内における軸受60の振動波形データを統計処理することにより評価値を演算する。
図4の例では、時刻t0において、評価値演算部160は、振動波形データ記憶部132から、10秒間分の振動波形データD0〜D9を読み出すと、読み出した振動波形データD0〜D9を統計処理することによって評価値E0を演算する。評価値E0は、時刻t0の直前の10秒間分の振動波形データD0〜D9を特徴付ける値(代表値)となる。したがって、統計処理では、評価値E0として、たとえば、振動波形データD0〜D9の平均値を演算することができる。あるいは、評価値E0として、振動波形データD0〜D9の中央値、最頻値、最小値、最大値などを演算することもできる。
時刻t1において、評価値演算部160は、10秒間分の振動波形データD1〜D10を統計処理することにより、評価値E1を演算する。時刻t2において、評価値演算部160は、10秒間分の振動波形データD2〜D11を統計処理することにより、評価値E2を演算する。
このようにして、評価値演算部160は、所定の時間間隔で、一定時間内における軸受60の振動波形データの評価値を演算する。評価値演算部160は、演算した評価値を評価値トレンド記憶部134へ出力する。
図5は、図3に示した評価値トレンド記憶部134の動作を説明する図である。
図5を参照して、評価値トレンド記憶部134は、所定の時間間隔で、評価値を評価値演算部160から受ける。図5の例では、所定の時間間隔を1秒間隔としている。図5中のE0〜E6は、1秒間隔で評価値演算部160から評価値トレンド記憶部134に与えられる評価値を表わしている。
評価値トレンド記憶部134は、時間的に連続する所定数の評価値を格納する。この時間的に連続する所定数の評価値は、評価値の時間的変化の傾向を表わす「評価値トレンド」に相当する。
図5の例では、所定数を5としている。たとえば、評価値トレンド記憶部134は、時刻t0にて評価値E0を格納し、時刻t0から1秒経過した時刻t1にて評価値E1を格納し、時刻t1から1秒経過した時刻t2にて評価値E2を格納し、時刻t2から1秒経過した時刻t3にて評価値E3を格納し、時刻t3から1秒経過した時刻t4にて評価値E4を格納する。なお、評価値E3は、時刻t3の直前の10秒間分の振動波形データD3〜D12を統計処理することにより演算されたものである。評価値E4は、時刻t4の直前の10秒間分の振動波形データD4〜D13を統計処理することにより演算されたものである。
図5の例では、評価値トレンド記憶部134は、たとえば、時刻t5において、合計5個の評価値E0〜E4を格納している。時刻t5から1秒経過した時刻t6において、評価値トレンド記憶部134は、時刻t5の直前の10秒間分の振動波形データD5〜D14の評価値E5を評価値演算部160から受けると、合計5個の評価値E0〜E4のうちの最も古い評価値E0を消去するとともに、新たに入力された評価値E5を追加することにより、所定数の評価値を更新する。
さらに、時刻t5から1秒経過した時刻t6では、評価値トレンド記憶部134は、時刻t6の直前の10秒間分の振動波形データD6〜D15の評価値E6を評価値演算部160から受けると、合計5個の評価値E1〜E5のうちの最も古い評価値E1を消去するとともに、新たに入力された評価値E6を追加することにより、所定数の評価値を更新する。
このようにして、評価値トレンド記憶部134は、所定の時間間隔で、時間的に連続する所定数の評価値(評価値トレンド)を更新する。
図3に戻って、計測トリガ発生部170は、対応する風力発電装置に設置されたセンサの出力からトリガ信号を発生する。すなわち、計測トリガ発生部170は、評価値トレンド記憶部134から時間的に連続する所定数の評価値(評価値トレンド)を読み出すと、読み出した評価値トレンドに基づいて、振動波形データの計測を開始するためのトリガ(以下、「計測トリガ」とも称する。)を発生する。計測トリガ発生部170は、発生した計測トリガを振動波形データ抽出部140へ出力する。
図6は、図3に示した計測トリガ発生部170および振動波形データ抽出部140の動作を説明する図である。図6には、評価値トレンド記憶部134に格納される評価値トレンドと、これに基づいて計測トリガ発生部170から発生される計測トリガ、および振動波形データ抽出部140から出力される軸受60の振動波形データの一例を示している。
図6中のEi−4,Ei−3,・・・Ei,Ei+1は、所定の時間間隔で、評価値トレンド記憶部134に与えられる評価値を表わしている。図6の例では、所定の時間間隔を1秒間隔としている。Eiは時刻tiにおいて評価値トレンド記憶部134に与えられる評価値を示し、Ei−1は時刻ti−1において評価値トレンド記憶部134に与えられる評価値を示し、Ei+1は時刻ti+1において評価値トレンド記憶部134に与えられる評価値を示す。
計測トリガ発生部170は、評価値の時間的変化の傾向を表わす評価値トレンドが変化したか否かを判定する。評価値トレンドが変化したと判定されると、計測トリガ発生部170は計測トリガを発生する。具体的には、計測トリガ発生部170は、評価値の時間的変化率、すなわち単位時間内の変化量に基づいて、評価値トレンドが変化したか否かを判定する。
図6の例では、計測トリガ発生部170は、時刻tiにて評価値Eiが評価値トレンド記憶部134に格納されると、時刻tiにおける評価値Eiと時刻ti+1における評価値Ei−1との差に基づいて、評価値の時間的変化率を演算する。時刻tiにおける評価値の時間的変化率をdEiとすると、dEiは式(1)で表される。
dEi=(Ei−Ei+1)/(ti−ti+1) …(1)
計測トリガ発生部170は、演算した時間的変化率dEiと予め定められた閾値αとを比較する。時間的変化率dEiが閾値α以上である場合、計測トリガ発生部170は、計測トリガをオンに設定する。一方、時間的変化率dEiが閾値αより小さい場合、計測トリガ発生部170は、計測トリガをオフに設定する。図6には、時刻ti+1における時間的変化率dEi+1が閾値α以上である場合が示されている。この場合、時刻ti+1において、計測トリガ発生部170は、計測トリガをオフからオンに切り替える。計測トリガ発生部170は、計測トリガを振動波形データ抽出部140へ出力する。
計測トリガ発生部170は、計測トリガを振動波形データ抽出部140へ出力するとともに、トリガ送信部190にも出力する。トリガ送信部190は、他の風力発電装置に搭載されたデータ処理装置80に、トリガ信号を送信する。また、トリガ受信部180は、他の風力発電装置に搭載されたデータ処理装置80から、同様に発生されたトリガ信号(外部トリガ信号)を受信する。風力発電装置の数がnであるとすると、外部トリガ信号の数は、自分を除いたn−1である。
振動波形データ抽出部140は、計測トリガ発生部170またはトリガ受信部180の出力に応じてセンサの出力の要否を判断し計測データを抽出する。
すなわち、振動波形データ抽出部140は、計測トリガ発生部170から計測トリガを受けるか、またはトリガ受信部180から外部トリガ信号を受信すると、振動波形データ記憶部132に格納されている、一定時間内における軸受60の振動波形データを計測データとして読み出す。この一定時間内における軸受60の振動波形データは、計測トリガが発生した時点の直前の一定時間内における軸受60の振動波形データに相当する。図6の例では、時刻ti+1の直前の10秒間分の振動波形データDi−9〜Diが振動波形データ記憶部132から読み出される。
振動波形データ抽出部140は、さらに、時刻ti+1以降における軸受60の振動波形データを実効値演算部120から受ける。図6の例では、振動波形データ抽出部140は、時刻ti+1以降の10秒間分の振動波形データDi+1〜Di+10を実効値演算部120から受ける。
振動波形データ抽出部140は、計測トリガが発生した時点である時刻ti+1の直前の一定時間内における軸受60の振動波形データDi−9〜Diと、計測トリガが発生した時点である時刻ti+1以降における軸受60の振動波形データDi+1〜Di+10とをひとまとめにして、ネットワーク3を経由して状態監視サーバ2へ出力する。なお、振動波形データそのものを送信する代わりに、データ量を削減するために、図示しない診断部で診断した結果や抽出した特徴量を送信するようにしても良い。
状態監視サーバ2は、ひとまとめにされた軸受60の振動波形データDi−9〜Di+10を受けると、これに基づいて軸受60の異常を診断する。すなわち、状態監視サーバ2は、評価値の時間的変化の傾向が変化したことによって風力発電装置10−1〜10−nのいずれかにおいて計測トリガが発生されると、風力発電装置10−1〜10−nのすべてにおける振動波形データの計測を開始するように構成される。
以上のように、実施の形態1に係る状態監視システムによれば、一定時間内における振動波形データを特徴付ける評価値を演算し、この評価値の時間的変化の傾向を示す、評価値の時間的変化率が風力発電装置10−1〜10−nのいずれかにおいて変化したときに、振動波形データの計測を開始させるトリガを発生する。このようにすると、振動波形データに重畳するノイズの影響が適切に排除された評価値に基づいて、トリガを発生させることができるため、ノイズの影響を受けて頻繁にトリガが発生することを防止することができる。この結果、軸受60に故障が発生したときの振動波形データを確実かつ効率的に計測することができるため、正確な異常診断を実現することができる。さらに、計測トリガが発生していない風力発電装置の振動波形データも記録されているので、計測トリガが発生した風力発電装置の周囲の気象条件を分析することも可能となる。
ここで、状態監視サーバ2に出力される、ひとまとめにされた軸受60の振動波形データDi−9〜Di+10は、計測トリガが発生した時点、すなわち、評価値の時間的変化の傾向が変化した時点の前後にわたって取得された軸受60の振動波形データに相当するものである。したがって、状態監視サーバ2は、これらの振動波形データを分析することで、評価値の時間的変化の傾向が変化した時点前後での軸受60の状態を、事後に調査することができる。また、同時刻における計測トリガが発生していない風力発電装置の軸受60の状態も、事後に調査することができる。
なお、状態監視サーバ2を使用せず、各風力発電装置において振動波形データを記録しておく場合には、振動波形データ記憶部132は、計測トリガが発生した時点および外部トリガ信号が入力された時点の直前の一定時間内における軸受60の振動波形データを格納する一方で、計測トリガが発生しておらず、かつ外部トリガ信号を受信しないときの軸受60の振動波形データを消去するように構成される。これによれば、振動波形データ記憶部132を、事後の調査に有用となるデータのみを格納することができる記憶容量とすればよいため、データ処理装置80に内蔵されるメモリの記憶容量が大きくなりすぎることを回避することができる。
また、データ処理装置80において、振動波形データ記憶部132および評価値トレンド記憶部134を、実効値演算部120から出力される振動波形データを時々刻々と格納するための記憶部とは独立したメモリによって構成することができる。このようにすると、風力発電装置10の用途および状況などに応じて、振動波形データ記憶部132および評価値トレンド記憶部134を増設または撤去を容易に行なうことができる。
次に、図7および図8を参照して、実施の形態1に係る状態監視システムにおける軸受60の異常診断のための制御処理を説明する。
図7は、実施の形態1に係る状態監視システムにおける軸受60の振動波形データを格納するための制御処理を説明するフローチャートである。図7に示される制御処理は、振動波形データ記憶部132により、所定の時間間隔で繰り返し実行される。たとえば、図4の例では、図7に示される制御処理が、1秒間隔で繰り返し実行される。
図7を参照して、振動波形データ記憶部132は、ステップS01により、軸受60の振動波形データを実効値演算部120から受ける。振動波形データ記憶部132は、ステップS02により、格納されている軸受60の振動波形データの数が所定数X以上であるか否かを判定する。この所定数Xは、一定時間内に取得される軸受60の振動波形データの数に値する。図4の例では、一定時間を10秒間としているため、所定数Xは、一定時間を所定の時間間隔で除算した値である「10」に設定される。
格納されている軸受60の振動波形データの数が所定数X以上である場合(S02のYES判定時)、振動波形データ記憶部132は、ステップS03に進み、所定数Xの振動波形データのうちの最も古い振動波形データを消去する。そして、振動波形データ記憶部132は、ステップS04により、ステップS01で取得された振動波形データを追加する。
一方、格納されている軸受60の振動波形データの数が所定数Xよりも少ない場合(S02のNO判定時)、振動波形データ記憶部132は、ステップS04に進み、ステップS01で取得された振動波形データを追加する。このようにして、振動波形データ記憶部132は、所定の時間間隔で、一定時間内における振動波形データを更新する。
図8は、実施の形態1に係る状態監視システムにおける軸受60の振動波形データの計測トリガを発生するための制御処理を説明するフローチャートである。図8に示される制御処理は、評価値演算部160、評価値トレンド記憶部134、計測トリガ発生部170振動波形データ抽出部140、トリガ受信部180およびトリガ送信部190により、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
図8を参照して、評価値演算部160は、ステップS11により、振動波形データ記憶部132から、一定時間内における軸受60の振動波形データを読み出す。
評価値演算部160は、ステップS12により、ステップS11で読み出した一定時間内における軸受60の振動波形データを統計処理することにより、一定時間内における軸受60の振動波形データの評価値を演算する。評価値演算部160は、演算した評価値を評価値トレンド記憶部134へ出力する。
評価値トレンド記憶部134は、ステップS13により、格納されている評価値のデータ数が所定数Y以上であるか否かを判定する。この所定数Yは、評価値の時間的変化の傾向を表す評価値トレンドを取得するために必要なデータ数に相当する。所定数Yは2以上の数に設定される。図5の例では、所定数Yは5に設定されている。
格納されている評価値のデータ数が所定数Y以上である場合(S13のYES判定時)、評価値トレンド記憶部134は、ステップS14に進み、所定数Yの評価値のうちの最も古い評価値を消去する。そして、評価値トレンド記憶部134は、ステップS15により、ステップS12で演算した評価値を追加して記憶する。
一方、格納されている評価値のデータ数が所定数Yよりも少ない場合(S13のNO判定時)、評価値トレンド記憶部134は、ステップS15に進み、ステップS12で演算した評価値を追加して記憶する。このようにして、評価値トレンド記憶部134は、所定の時間間隔で、所定数Yの評価値を更新する。
計測トリガ発生部170は、ステップS16により、評価値トレンド記憶部134から時間的に連続する所定数Yの評価値(評価値トレンド)を読み出すと、読み出した評価値トレンドにおける評価値の時間的変化率を演算する。ステップS16において、計測トリガ発生部170は、ステップS15で追加された評価値と、この評価値の1つ前に追加された評価値とを評価値トレンド記憶部134から読み出す。そして、計測トリガ発生部170は、上記式(1)を用いて、読み出した2つの評価値の差に基づいて、評価値の時間的変化率を演算する。
計測トリガ発生部170は、ステップS17により、ステップS16で演算した評価値の時間的変化率と閾値αとを比較する。評価値の時間的変化率が閾値α以上である場合(S17のYES判定時)、計測トリガ発生部170はステップS18においてトリガ送信部190を経由して他の風力発電装置へ外部トリガ信号を出力し、かつステップS19において振動波形データ抽出部140にも計測トリガ信号を出力する。一方、評価値の時間的変化率が閾値αよりも小さい場合(S17のNO判定時)、振動波形データ抽出部140は、ステップS20において外部トリガ信号の有無を判断する。外部トリガ信号が無い場合(S20のNO判定時)、以降の処理S21〜S23はスキップされる。一方、外部トリガ信号がある場合(S20のYES判定時)、または、計測トリガ発生部170でステップS19において計測トリガが発生された場合、振動波形データ抽出部140は、データ抽出を行なう。
振動波形データ抽出部140は、計測トリガ発生部170またはトリガ受信部180からトリガ信号を受けると、ステップS21により、振動波形データ記憶部132に時々刻々と格納される、計測トリガが発生した時点以降における軸受60の振動波形データを読み出す。
振動波形データ抽出部140は、さらに、ステップS22により、振動波形データ記憶部132に格納されている、一定時間内における軸受60の振動波形データを読み出す。図6で説明したように、この一定時間内における軸受60の振動波形データは、計測トリガが発生した時点の直前の一定時間内における軸受60の振動波形データに相当する。
振動波形データ抽出部140は、ステップS23により、ステップS22で読み出された、計測トリガが発生した時点の直前の一定時間内における軸受60の振動波形データと、ステップS21で取得された、計測トリガが発生した時点以降における軸受60の振動波形データをひとまとめにして、状態監視サーバ2へ出力する。これにより、状態監視サーバ2では、ひとまとめにされた軸受60の振動波形データを用いて軸受60の異常が診断される。さらに、計測トリガが発生していない風力発電装置においても同時刻における振動波形データを収集することができる。また振動波形データに加えて、風速データや回転速度のデータを送信するようにすれば、いずれかの風力発電装置において計測トリガが発生した時点における周囲の気象条件に関するデータを収集することができる。
(実施の形態1の変形例)
上記の実施の形態1では、時間的に連続する2つの評価値(たとえば、図6の評価値Ei−1,Ei)の間の時間的変化率(たとえば、図6のdEi)を演算し、その演算した時間的変化率と閾値αとを比較した結果に基づいて、計測トリガを発生する構成について説明した。しかしながら、この構成においては、2つの評価値のいずれか一方にノイズが重畳すると、このノイズの影響を受けて評価値の時間的変化率が一時的に閾値αを超える場合が起こり得る。このような場合には、計測トリガ発生部170が計測トリガを誤って発生してしまう可能性がある。
そこで、このようなノイズの影響により計測トリガを誤って発生することを防ぐため、計測トリガ発生部170では、評価値の時間的変化率が閾値α以上であるという判定結果が複数回連続して得られた場合に、計測トリガを発生するように構成することができる。たとえば、図6の例では、時刻ti+1における時間的変化率dEi+1、および時刻ti+2における時間的変化率dEi+2がともに閾値α以上であると判定された場合に、計測トリガ発生部170が計測トリガを発生する構成とすることができる。
このようにすると、時刻ti+1における時間的変化率dEi+1が閾値α以上となる一方で、時刻ti+2における時間的変化率dEi+2が閾値αよりも小さくなる場合には、計測トリガ発生部170は、計測トリガを発生させない。時間的変化率dEi+1の増加がノイズの影響による一時的なものであるとみなされるため、計測トリガが誤って発生することを防ぐことができる。
[実施の形態2]
上述した実施の形態1では、一定時間内における軸受60の振動波形データの評価値の時間的変化の傾向が変化したことを評価値の時間的変化率に基づいて判定して、計測トリガを発生する構成について説明した。実施の形態2では、評価値の時間的変化の傾向が変化したことを評価値の大きさに基づいて判定して、計測トリガを発生する構成について説明する。
図9は、実施の形態2に係る状態監視システムにおける軸受60の振動波形データの計測トリガを発生するための制御処理を説明するフローチャートである。図9に示される制御処理は、評価値演算部160、評価値トレンド記憶部134、計測トリガ発生部170および振動波形データ抽出部140により、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
図9を図8と比較して、実施の形態2に係る状態監視システムでは、図8と同様のステップS11〜S15の処理後に、ステップS16,S17に代えて、ステップS17Aを実行する。
すなわち、ステップS15により、評価値トレンド記憶部134がステップS12で演算した評価値を追加すると、計測トリガ発生部170は、ステップS17Aにより、ステップS15で追加された評価値と閾値βとを比較する。評価値が閾値β以上である場合(S17AのYES判定時)、計測トリガ発生部170はステップS18においてトリガ送信部190を経由して他の風力発電装置へ外部トリガ信号を出力し、かつステップS19において振動波形データ抽出部140にも計測トリガ信号を出力する。一方、評価値が閾値βよりも小さい場合(S17AのNO判定時)、振動波形データ抽出部140は、ステップS20において外部トリガ信号の有無を判断する。外部トリガ信号が無い場合(S20のNO判定時)、以降の処理S21〜S23はスキップされる。一方、外部トリガ信号がある場合(S20のYES判定時)、または、計測トリガ発生部170でステップS19において計測トリガが発生された場合、振動波形データ抽出部140は、データ抽出を行なう。
振動波形データ抽出部140は、図8と同様のステップS21〜S23の処理を行なうことにより、計測トリガが発生した時点の直前の一定時間内における軸受60の振動波形データと、計測トリガが発生した時点以降における軸受60の振動波形データをひとまとめにして、状態監視サーバ2へ出力する。
以上のように、実施の形態2によれば、一定時間内における振動波形データを特徴付ける評価値を演算し、この評価値の大きさが閾値β以上となったときに評価値の時間的変化の傾向が変化したと判定して、振動波形データの計測を開始させるトリガを発生する。このようにすると、振動波形データに重畳するノイズの影響が適切に排除された評価値に基づいてトリガを発生させることができる。したがって、実施の形態2においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態2の変形例)
上記の実施の形態2では、評価値と閾値βとを比較した結果に基づいて、計測トリガを発生する構成について説明した。しかしながら、この構成においては、評価値にノイズが重畳することによって評価値が一時的に閾値β以上となる場合に、計測トリガ発生部170が計測トリガを誤って発生してしまう可能性がある。
このようなノイズの影響により計測トリガを誤って発生することを防ぐため、計測トリガ発生部170では、評価値が閾値β以上であるという判定結果が複数回連続して得られた場合に、計測トリガを発生するように構成することができる。たとえば、図6の例では、時刻ti+1における評価値Ei+1、および時刻ti+2における評価値Ei+2がともに閾値β以上であると判定された場合に、計測トリガ発生部170が計測トリガを発生する構成とすることができる。
このようにすると、時刻ti+1における評価値Ei+1が閾値β以上となる一方で、時刻ti+2における評価値Ei+2が閾値βよりも小さくなる場合には、計測トリガ発生部170は、計測トリガを発生させない。評価値Ei+1の増加がノイズの影響による一時的なものであるとみなされるため、計測トリガが誤って発生することを防ぐことができる。
[実施の形態3]
実施の形態3では、評価値の時間的変化の傾向が変化したことを評価値の時間的変化率および大きさに基づいて判定して、計測トリガを発生する構成について説明する。
図10は、実施の形態3に係る状態監視システムにおける軸受60の振動波形データの計測トリガを発生するための制御処理を説明するフローチャートである。図10に示される制御処理は、評価値演算部160、評価値トレンド記憶部134、計測トリガ発生部170および振動波形データ抽出部140により、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
図10を図8と比較して、実施の形態3に係る状態監視システムでは、図8と同様のステップS11〜S16の処理後に、ステップS17に加えて、ステップS17Aを実行する。
すなわち、ステップS15により、評価値トレンド記憶部134がステップS12で演算した評価値を追加すると、計測トリガ発生部170は、ステップS17により、ステップS16で演算した評価値の時間的変化率と閾値α(第1の閾値)とを比較する。
評価値の時間的変化率が閾値α以上である場合(S17のYES判定時)、計測トリガ発生部170は、ステップS17Aに進み、ステップS15で追加された評価値と閾値β(第2の閾値)とを比較する。評価値が閾値β以上である場合(S17AのYES判定時)、計測トリガ発生部170はステップS18においてトリガ送信部190を経由して他の風力発電装置へ外部トリガ信号を出力し、かつステップS19において振動波形データ抽出部140にも計測トリガ信号を出力する。
一方、評価値の時間的変化率が閾値αよりも小さい場合(S17のNO判定時)、または評価値が閾値βよりも小さい場合(S17AのNO判定時)、以降の処理S18〜S19はスキップされ、振動波形データ抽出部140は、ステップS20において外部トリガ信号の有無を判断する。
外部トリガ信号が無い場合(S20のNO判定時)、以降の処理S21〜S23はスキップされる。一方、外部トリガ信号がある場合(S20のYES判定時)、または、計測トリガ発生部170でステップS19において計測トリガが発生された場合、振動波形データ抽出部140は、データ抽出を行なう。
振動波形データ抽出部140は、図8と同様のステップS21〜S23の処理を行なうことにより、計測トリガが発生した時点の直前の一定時間内における軸受60の振動波形データと、計測トリガが発生した時点以降における軸受60の振動波形データをひとまとめにして、状態監視サーバ2へ出力する。
以上のように、実施の形態3によれば、一定時間内における振動波形データを特徴付ける評価値を演算し、この評価値の時間的変化率が閾値α以上となり、かつ、評価値の大きさが閾値β以上となったときに評価値の時間的変化の傾向が変化したと判定して、振動波形データの計測を開始させるトリガを発生する。評価値の時間的変化率が閾値α以上となった場合であっても、評価値の大きさが閾値βよりも小さいときには、軸受60の振動の大きさである振動度が小さいためにノイズの影響度が大きくなっているものと判定することができる。このような場合には、トリガを発生させない構成とすることで、振動波形データに重畳するノイズの影響が適切に排除された評価値に基づいてトリガを発生させることができる。したがって、実施の形態3においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3の変形例)
上述のように、評価値にノイズが重畳すると、評価値の時間的変化率が一時的に閾値α以上となる、または、評価値が一時的に閾値β以上となることで、計測トリガ発生部170が計測トリガを誤って発生してしまう可能性がある。
そこで、計測トリガ発生部170では、評価値の時間的変化率が閾値α以上であるという判定結果が複数回連続して得られ、かつ、評価値が閾値β以上であるという判定結果が複数回連続して得られた場合に、計測トリガを発生するように構成することができる。これによれば、評価値の増加がノイズの影響による一時的なものであるとみなされるため、計測トリガが誤って発生することを防ぐことができる。
なお、上記の各実施の形態においては、風力発電装置10を構成する機械要素の1つである軸受60に振動センサ70を設置して、軸受60の異常を診断するものとしたが、診断対象となる機械要素は軸受60に限定されない点について確認的に記載する。たとえば、軸受60とともに、または軸受60に代えて、増幅器40内または発電機50内に設けられる軸受に振動センサを設置し、上記の各実施の形態と同様の手法によって、増幅器40内または発電機50内に設けられる軸受や歯車等の異常を診断することができる。
また、上記の各実施の形態においては、一定時間内における振動波形データを特徴付ける評価値を、当該一定時間内における振動波形データの実効値を統計処理することによって演算する構成について説明したが、当該一定時間内における振動波形データのピーク値を統計処理することによって、評価値を演算する構成としてもよい。この構成において、振動波形データのピーク値とは、振動波形の最大値または最小値の絶対値に相当する。あるいは、当該一定時間内における振動波形データの波高率を統計処理することによって、評価値を演算する構成としてもよい。この構成において、振動波形データの波高率とは、振動波形の最大値に対する実効値の比率に相当する。
また、上記の各実施の形態においては、一定時間内における振動波形データを特徴付ける評価値を1つとし、この1つの評価値の時間的変化の傾向が変化したことをトリガとして振動波形データの計測を開始する構成について説明したが、複数の評価値の時間的変化の傾向が変化したことをトリガとする構成としてもよい。
また、上記の各実施の形態において、データ処理装置80は、この発明における「データ処理装置」の一実施例に対応し、記憶部130、評価値演算部160および振動波形データ抽出部140は、この発明における「記憶部」、「評価値演算部」および「振動波形データ抽出部」の一実施例に対応する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 状態監視システム、2 状態監視サーバ、3 ネットワーク、10 風力発電装置、20 主軸、30 ブレード、40 増速機、50 発電機、60 軸受、70 振動センサ、80 データ処理装置、90 ナセル、100 タワー、120 実効値演算部、130 記憶部、132 振動波形データ記憶部、134 評価値トレンド記憶部、140 振動波形データ抽出部、160 評価値演算部、170 計測トリガ発生部、180 トリガ受信部、190 トリガ送信部。

Claims (5)

  1. 複数の風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、
    前記複数の風力発電装置にそれぞれ対応して設けられる複数のデータ処理装置を備え、
    前記複数のデータ処理装置の各々は、
    対応する風力発電装置に設置されたセンサの出力からトリガ信号を発生するトリガ発生部と、
    前記複数のデータ処理装置のうちの他のデータ処理装置からの外部トリガ信号を受信するトリガ受信部と、
    前記トリガ発生部または前記トリガ受信部の出力に応じて前記センサの出力の要否を判断し計測データを抽出するデータ抽出部とを備え
    前記センサは振動センサであり、
    前記データ処理装置は、
    一定時間内に前記振動センサから出力される振動波形データを特徴付ける評価値を、時間的に連続して演算するように構成された評価値演算部をさらに備え、
    前記トリガ発生部は、前記評価値演算部により演算される前記評価値の時間的変化の傾向が変化したことに基づいて前記計測データを抽出するための前記トリガ信号を発生し、
    前記トリガ発生部は、前記評価値の時間的変化率が第1の閾値以上となり、かつ、前記評価値の大きさが第2の閾値以上となったことを検出して、前記振動波形データの計測を開始する、状態監視システム。
  2. 前記評価値演算部は、前記一定時間内における前記振動波形データを統計処理することにより、前記評価値を演算する、請求項に記載の状態監視システム。
  3. 前記複数のデータ処理装置の各々は、一定時間分の前記センサの出力を記憶する記憶部をさらに含み、
    前記データ抽出部は、前記トリガ発生部が前記トリガ信号を発生した場合、または、前記トリガ受信部が前記外部トリガ信号を受信した場合に、前記記憶部に記憶された前記センサの出力を前記記憶部から前記計測データとして読み出す、請求項1に記載の状態監視システム。
  4. 記記憶部は、所定の時間間隔で、前記振動センサから与えられる振動波形データを格納するとともに、格納されている前記一定時間内における前記振動波形データのうち最も古い前記振動波形データを消去する、請求項に記載の状態監視システム。
  5. 複数の風力発電装置の状態を監視する状態監視システムにおいて前記複数の風力発電装置の内の1つに配置されるデータ処理装置であって、
    前記データ処理装置は、
    前記複数の風力発電装置の内の1つに設置されたセンサの出力からトリガ信号を発生するトリガ発生部と、
    前記複数の風力発電装置のうちの他の風力発電装置からの外部トリガ信号を受信するトリガ受信部と、
    前記トリガ発生部または前記トリガ受信部の出力に応じて前記センサの出力の要否を判断し計測データを抽出するデータ抽出部とを備え
    前記センサは振動センサであり、
    前記データ処理装置は、
    一定時間内に前記振動センサから出力される振動波形データを特徴付ける評価値を、時間的に連続して演算するように構成された評価値演算部をさらに備え、
    前記トリガ発生部は、前記評価値演算部により演算される前記評価値の時間的変化の傾向が変化したことに基づいて前記計測データを抽出するための前記トリガ信号を発生し、
    前記トリガ発生部は、前記評価値の時間的変化率が第1の閾値以上となり、かつ、前記評価値の大きさが第2の閾値以上となったことを検出して、前記振動波形データの計測を開始する、データ処理装置。
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