以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る固定具50を具備する天井構造1について説明する。
図1に示す天井構造1は、建物の天井を形成するためのものである。天井構造1は、例えば、店舗等の建物に採用される。天井構造1は、吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40及び固定具50を具備する。
吊りボルト10は、躯体Aから吊り下げられるものである。吊りボルト支持金具を用いて鋼材に取り付けられることで躯体Aに固定される(不図示)。吊りボルト10は、左右方向及び前後方向に間隔をあけて複数設けられる。
ハンガー20は、後述する野縁受け30を支持するためのものである。ハンガー20は、側面視略J字状に形成され、吊りボルト10の下端部に固定される。これにより、ハンガー20は、1つの吊りボルト10に対して1つ設けられ、左右方向及び前後方向に間隔をあけて配置される。
野縁受け30は、後述する野縁40を支持するためのものである。野縁受け30は、その長手方向を左右方向に向けた長尺状に形成される。また、野縁受け30は、側面視略C字状に形成される。野縁受け30は、上方から野縁40を受けることができる。野縁受け30は、ウェブ31、上フランジ32及び下フランジ33を具備する。
ウェブ31は、その板面を前後方向へ向けて配置される略板状の部分である。上フランジ32は、ウェブ31の上端部から前方へ突出する略板状の部分である。下フランジ33は、ウェブ31の下端部から前方へ突出する略板状の部分である。
このように構成される野縁受け30は、左右方向に間隔をあけて配置される複数のハンガー20を跨ぐように配置され、当該複数のハンガー20に支持される。また、野縁受け30は、前後方向に間隔をあけて複数設けられる。なお、本実施形態においては、前後方向(野縁受け30の長手方向及び上下方向に直交する方向)が、野縁受け30の幅方向となっている。
野縁40は、天井板(不図示)を支持するためのものである。野縁40は、その長手方向を前後方向に向けた長尺状に形成される。野縁40は、その上部が開口する正面視略U字状に形成される。野縁40は、リップ部41を具備する。
リップ部41は、野縁40に左右一対設けられ、野縁40の上端部から左右方向内側へ突出するように形成される。リップ部41には、その左右方向内側の端部からそれぞれ下方へ突出する返し部41aが形成される。
このように構成される野縁40は、野縁受け30の下方において、当該野縁受け30と直交するように配置される。また、野縁40は、前後に配置された複数の野縁受け30を跨ぐように配置される(不図示)。このような野縁40は、左右方向に間隔をあけて複数設けられる。なお、本実施形態に係る野縁40は、シングル野縁である。
固定具50は、野縁40を野縁受け30に固定するためのものである。固定具50は、野縁受け30に取り付けられる。固定具50は、天井構造1において、野縁受け30及び野縁40が交差する箇所に設けられる。固定具50は、互いに別体である2つの部材により構成される。より詳細には、固定具50は、第一固定具100及び第二固定具200により構成される。第一固定具100及び第二固定具200は、それぞれ一枚の板状の金属部材を適宜折り曲げることにより形成されている。
以下では、第一固定具100及び第二固定具200の構成について詳細に説明する。
まず、図3及び図4を用いて、第一固定具100の構成について詳細に説明する。
第一固定具100は、頂部110及び側壁120を具備する。なお、第一固定具100は、後述するように、野縁受け30に取り付けられる際、所定の取り付け位置に配置された当該第一固定具100の一部分(後述する頂部110)が、作業者によって折り曲げられる。こうして、第一固定具100は、その一部分が折り曲げられることによって、野縁受け30に取り付けられる。このように、第一固定具100は、野縁受け30への取り付け前後で、全体としての形状が変化する。そこで、以下では、特に断りが無ければ、変形後(取り付け後)の第一固定具100の構成について説明するものとする。
頂部110は、第一固定具100の上端部に形成される部分である。頂部110は、第一頂部111及び第二頂部112を具備する。
第一頂部111は、頂部110のうち、板面を上下方向へ向けた部分である。第一頂部111は、平面視で略矩形状に形成される。
第二頂部112は、頂部110のうち、板面を後上前下方向へ向けた部分である。第二頂部112は、第一頂部111の前端部から後下方に延びるように形成される。第二頂部112の前端部は、第一頂部111の前端部に一体的に接続される。
頂部110は、上述の如く、第一固定具100が野縁受け30に取り付けられる際、作業者によって折り曲げられて形成される。このように、頂部110(第一頂部111及び第二頂部112)は、後述するように、いわゆる取付部として、第一固定具100を野縁受け30に取り付ける際に使用される。
なお、図4(b)に示すように、変形前(取り付け前)において、頂部110は、第二頂部112と第一頂部111とが前後に連なって延びるように形成される。このように、変形前(取り付け前)において、頂部110は、全体として板面を上下方向へ向けた略平板状に形成される。
側壁120は、第一固定具100のうち、頂部110以外の部分である。側壁120は、板面を前後方向へ向けた略平板状に形成される。側壁120は、背面視で上下方向を長手方向とした略矩形状に形成される。側壁120は、頂部110から下方に延びるように形成される。側壁120の上端部は、第一頂部111の後端部に一体的に接続される。側壁120は、切欠部121、凸部122及び引っ掛け部123を具備する。
切欠部121は、側壁120を切り欠いたように形成された部分である。切欠部121は、側壁120の下端部近傍に形成される。切欠部121は、側壁120に左右一対形成される。
凸部122は、側壁120から前方へ突出する部分である。凸部122は、側壁120の下端部近傍で、当該側壁120を前方に凹ませることで形成される。凸部122は、長手方向を上下方向に向けた背面視で略トラック状に形成される。凸部122の上端部は、切欠部121の上端部よりも上方に形成される。また、凸部122の下端部は、切欠部121の下端部よりも下方に形成される。なお、凸部122の形状は、上述の如く略トラック状に限定するものではない。
引っ掛け部123は、野縁40のリップ部41に引っ掛け可能な部分である。引っ掛け部123は、後述するように、野縁40のリップ部41を下方から支持する。引っ掛け部123は、側壁120の左下端部及び右下端部(より詳細には、切欠部121の下方の部分)が、それぞれ後方へ折り曲げられることによって形成されている。こうして、引っ掛け部123は、側壁120に左右一対形成される。引っ掛け部123は、略板状に形成される。引っ掛け部123は、側壁120から後方へ突出するように形成される。
また、引っ掛け部123は、下方に向かうにつれて第一固定具100の左右方向内側(互いに近接する方向)に延びるように形成される。こうして、左右の引っ掛け部123は、左右方向の間隔が下方に向かうにつれて小さくなるように形成される。具体的には、左右の引っ掛け部123は、下端部における左右方向の間隔が、野縁40の左右のリップ部41の左右方向の間隔よりも小さくなるように形成される。また、左右の引っ掛け部123は、上端部における左右方向の間隔が、左右のリップ部41の左右方向の間隔よりも大きくなるように形成される。こうして、左右の引っ掛け部123の上下方向中途部において、当該左右の引っ掛け部123の左右方向の間隔(互いに近接する方向の間隔)は、左右のリップ部41の左右方向の間隔よりも大きくなるように形成される。
次に、図5を用いて、第二固定具200の構成について詳細に説明する。
第二固定具200は、頂部210、前後の側壁(後側壁220及び前側壁230)及び取付部240を具備する。本実施形態において、第二固定具200は、上述の如き第一固定具100と略同様の構成を有する。なお、第二固定具200において、第一固定具100と構成が大きく異なるのは、第二固定具200は野縁受け30への取り付け前後で、全体としての形状が略変化しないことである。
頂部210は、第二固定具200の上端部に形成される部分である。頂部210は、平面視で略矩形状に形成される。
後側壁220は、第二固定具200の前後(2つ)の側壁のうち、後側に形成された側壁である。後側壁220は、第一後側壁221及び第二後側壁222を具備する。
第一後側壁221は、後側壁220のうち、板面を前後方向へ向けた部分である。第一後側壁221は、頂部210の後端部から下方に延びるように形成される。第一後側壁221の上端部は、頂部210の後端部に一体的に接続される。
第二後側壁222は、後側壁220のうち、板面を後上前下方向へ向けた部分である。第二後側壁222は、第一後側壁221の下端部から後下方に延びるように形成される。すなわち、第二後側壁222は、下方へ向かうにつれて、前後方向における前側壁230との間隔が大きくなるように形成される。第二後側壁222の上端部は、第一後側壁221の下端部に一体的に接続される。
前側壁230は、第二固定具200の前後(2つ)の側壁のうち、前側に形成された側壁である。前側壁230は、板面を前後方向へ向けた略平板状に形成される。前側壁230は、正面視で上下方向を長手方向とした略矩形状に形成される。前側壁230は、頂部210の前端部から下方に延びるように形成される。前側壁230の上端部は、頂部210の前端部に一体的に接続される。
前側壁230は、切欠部231、凸部232及び引っ掛け部233を具備する。
切欠部231は、前側壁230を切り欠いたように形成された部分である。切欠部231は、前側壁230の下部近傍に形成される。切欠部231は、前側壁230に左右一対形成される。
凸部232は、前側壁230から後方へ突出する部分である。凸部232は、前側壁230の下端部近傍で、当該前側壁230を後方に凹ませることで形成される。凸部232は、長手方向を上下方向に向けた正面視で略トラック状に形成される。凸部232の上端部は、切欠部231の上端部よりも上方に形成される。また、凸部232の下端部は、切欠部231の下端部よりも下方に形成される。なお、凸部232の形状は、上述の如く略トラック状に限定するものではない。
引っ掛け部233は、野縁40のリップ部41に引っ掛け可能な部分である。引っ掛け部233は、後述するように、野縁40のリップ部41を下方から支持する。引っ掛け部233は、前側壁230の左下端部及び右下端部(より詳細には、切欠部231の下方の部分)が、それぞれ前方へ折り曲げられることによって形成されている。こうして、引っ掛け部233は、前側壁230に左右一対形成される。引っ掛け部233は、略板状に形成される。引っ掛け部233は、前側壁230から前方へ突出するように形成される。
また、引っ掛け部233は、下方に向かうにつれて第二固定具200の左右方向内側に延びるように形成される。こうして、左右の引っ掛け部233は、左右方向の間隔が下方に向かうにつれて小さくなるように形成される。具体的には、左右の引っ掛け部233は、下端部における左右方向の間隔が、野縁40の左右のリップ部41の左右方向の間隔よりも小さくなるように形成される。また、左右の引っ掛け部233は、上端部における左右方向の間隔が、左右のリップ部41の左右方向の間隔よりも大きくなるように形成される。こうして、左右の引っ掛け部233の上下方向中途部において、当該左右の引っ掛け部233の左右方向の間隔(互いに近接する方向の間隔)は、左右のリップ部41の左右方向の間隔よりも大きくなるように形成される。
取付部240は、第二固定具200の上部に設けられた空間を有する部分である。具体的には、取付部240は、頂部210、後側壁220、及び、前側壁230の上部(より詳細には、前側壁230のうち、後側壁220と前後方向に対向する部分)によって構成される。取付部240が有する前記空間は、左右方向及び下方向に開放される。取付部240は、第二固定具200を野縁受け30に取り付ける際に使用される。取付部240の上部の前後方向の間隔(具体的には、前側壁230と後側壁220の第一後側壁221との前後方向の間隔)は、第一固定具100の第一頂部111の前後方向の間隔よりも若干小さく形成される。また、取付部240の下部の前後方向の間隔(具体的には、前側壁230と後側壁220の第二後側壁222との前後方向の間隔)は、下方へ向かうにつれて徐々に大きくなるように形成される。
以下では、図6から図11を用いて、固定具50を用いて野縁40を野縁受け30に固定する方法について詳細に説明する。
なお、図6から図8において、第一固定具100は、野縁受け30に取り付けられる前の状態であるため、上述の如き図4(b)に示した変形前(取り付け前)の構成(すなわち、頂部110において、第二頂部112と第一頂部111とが前後に連なって延びるように形成された構成)を有している。
図6に示すように、固定具50を用いて野縁40を野縁受け30に固定する場合、まず最初に、固定具50のうち、第一固定具100が野縁受け30に取り付けられる。
第一固定具100は、野縁受け30に取り付けられる際、所定の取り付け位置(より詳細には、野縁受け30及び野縁40が交差する箇所の上方)に配置される。なお、野縁受け30及び野縁40が交差する箇所において、野縁受け30及び野縁40は、上下に互いに当接するように配置されている。こうして、取り付け位置に配置された第一固定具100は、野縁受け30及び野縁40に近接するように、下方へと移動される。
第一固定具100は、下方へと移動される際、平面視で回転するように向きが変更される。具体的には、第一固定具100において、左右に並ぶように配置されていた一対の引っ掛け部123は(図3(a)参照)、向きが変更された結果、図7(a)に示すように、前後に並ぶように配置される。
なお、第一固定具100の向きを変更しない場合、左右に並ぶように配置された一対の引っ掛け部123は、平面視で野縁40の左右のリップ部41の間から外側にはみ出ている(図7(b)参照)。すなわち、下方へと移動された一対の引っ掛け部123は野縁40の左右のリップ部41に当接するため、それ以上の下方への移動が妨げられることとなる。このように、第一固定具100の向きを変更しない場合、一対の引っ掛け部123は上方から野縁40の内側に侵入し難いこととなる。
これに対して、第一固定具100の向きを変更した場合、前後に並ぶように配置された一対の引っ掛け部123は、図7(a)に示すように、平面視で野縁40の左右のリップ部41の内側に収まることとなる。すなわち、下方へと移動された一対の引っ掛け部123は野縁40の左右のリップ部41に当接しないため、下方への移動が妨げられないこととなる。このように、第一固定具100の向きを変更した場合、一対の引っ掛け部123は上方から野縁40の内側に容易に侵入することができる。
こうして、第一固定具100は、一対の引っ掛け部123が野縁40の内側に侵入すると、図7(b)に示すように、平面視で回転するように向きが変更され、当初の向きとなる。すなわち、図8に示すように、第一固定具100において、一対の引っ掛け部123が再び左右に並ぶように配置される。
そして、第一固定具100は、一対の引っ掛け部123の上端部を野縁40のリップ部41と当接させると共に、頂部110を当該野縁受け30の上フランジ32と当接させた状態に配置される。こうして、上下方向における、第一固定具100の一対の引っ掛け部123と頂部110との間には、野縁40のリップ部41(返し部41a)及び野縁受け30が互いに略隙間無く配置される。
そして、図9に示すように、第一固定具100は、頂部110のうち前側部分(すなわち、第二頂部112)が下方へ折り曲げられる。こうして、頂部110が第一頂部111及び第二頂部112によって野縁受け30の上フランジ32に係合され、ひいては第一固定具100が野縁受け30に取り付けられる。
図10に示すように、第一固定具100が野縁受け30に取り付けられると、次に、固定具50のうち、第二固定具200が野縁受け30に取り付けられる。
第二固定具200は、野縁受け30に取り付けられる際、所定の取り付け位置(より詳細には、野縁受け30及び野縁40が交差する箇所の上方、すなわち当該野縁受け30に取り付けられた第一固定具100の上方)に配置される。こうして、取り付け位置に配置された第二固定具200は、野縁受け30、野縁40及び第一固定具100に近接するように、下方へと移動される。
第二固定具200は、下方へと移動される際、上述の如き第一固定具100とは異なって、向きが変更されない。すなわち、第二固定具200において、左右に並ぶように配置されていた一対の引っ掛け部233は、左右に並んだままである。
この場合、左右に並ぶように配置された一対の引っ掛け部233は、平面視で野縁40の左右のリップ部41の間から外側にはみ出ている。すなわち、図11(a)に示すように、下方へと移動された一対の引っ掛け部233は野縁40の左右のリップ部41に当接するため、それ以上の下方への移動が妨げられる。
第二固定具200においては、一対の引っ掛け部233が野縁40の左右のリップ部41に当接した後も、さらに下方へと押し込まれる。これによって、図11(b)に示すように、第二固定具200は、一対の引っ掛け部233によって野縁40の左右のリップ部41の間隔を押し広げながら(左右のリップ部41を弾性変形させながら)下方へと移動される。
なお、第二固定具200が下方へと移動される際には、当該第二固定具200の取付部240の内側に、第一固定具100の頂部110が徐々に嵌め込まれていく。第二固定具200の取付部240は、第一固定具100の頂部110によって押し広げられるように弾性変形しながら当該頂部110を受け入れる。こうして、第二固定具200の取付部240が、第一固定具100に対してそれ以上下方へと移動されなくなると(本実施形態においては、第二固定具200の頂部210の下面に第一固定具100の第一頂部111の上面が当接すると)、第二固定具200が第一固定具100に嵌め込まれた状態となる。このように、第二固定具200は、第一固定具100に嵌め込まれた状態になると、当該第一固定具100を介して野縁受け30に取り付けられる。
また、上述の如く、第二固定具200が第一固定具100に嵌め込まれた状態になった場合には、当該第二固定具200の一対の引っ掛け部233が、野縁40の内側に完全に侵入する。具体的には、第二固定具200の一対の引っ掛け部233の上端部が、リップ部41の返し部41aの下端部よりも下方へと移動される。これにより、図11(c)に示すように、弾性変形していた左右のリップ部41の形状が復元され、当該リップ部41の返し部41aが一対の引っ掛け部233の上方に位置される。
こうして、第二固定具200においては、野縁受け30に取り付けられる場合、第一固定具100とは異なり、一対の引っ掛け部233を野縁40の左右のリップ部41に当接させた後、さらに下方へと押し込むことにより、第一固定具100を介して野縁受け30に取り付けられる。
このように、第二固定具200を野縁受け30に取り付ける場合、例えば第一固定具100を野縁受け30に取り付ける場合のように、折り曲げる等の作業が必要がなく、第二固定具200をそのまま押し込むだけでよいため、施工性の向上を図ることができる。
また、第二固定具200において、取付部240の下部は、下方へ向かうにつれ前後方向の間隔が徐々に大きくなるように形成される。これによって、第二固定具200を野縁受け30に取り付ける場合、取付部240の内側に第一固定具100の頂部110を案内し易くすることができる。こうして、施工性の向上を図ることができる。
以下では、図2、図12から図16を用いて、固定具50を用いて野縁40が野縁受け30に固定された場合の、当該固定具50、野縁受け30及び野縁40の組み付け構成について詳細に説明する。
上述の如く、第一固定具100においては、一対の引っ掛け部123の上端部を野縁40のリップ部41と当接させると共に、頂部110を当該野縁受け30の上フランジ32と当接させた状態で、頂部110が下方へ折り曲げられることによって、野縁受け30に取り付けられている。このように、図15(a)及び図16に示すように、第一固定具100は、一対の引っ掛け部123が野縁40の左右のリップ部41を下方から支持することによって、当該野縁40を野縁受け30に固定している。
これによれば、図14から図16に示すように、第一固定具100の一対の引っ掛け部123と頂部110との間に、野縁40(リップ部41)及び野縁受け30が互いに略隙間無く配置される。これによって、第一固定具100と野縁受け30と野縁40とが互いに当接することにより相対移動不能であるため、例えば地震等が発生して天井が揺れた場合であっても、がたつきが発生するのを抑制することができる。
また、第一固定具100の凸部122は、野縁受け30(下フランジ33の後端部)と前後方向に対向するよう配置される。凸部122は、側壁120から前方へ突出するように形成される。こうして、側壁120の凸部122は、野縁受け30を前方へ向けて押圧している。また、第二固定具200の凸部232は、野縁受け30(下フランジ33の前端部)と前後方向に対向するよう配置される。凸部232は、前側壁230から後方へ突出するように形成される。こうして、前側壁230の凸部232は、野縁受け30を後方へ向けて押圧している。
こうして、第一固定具100及び第二固定具200においては、第一固定具100の側壁120及び第二固定具200の前側壁230によって野縁受け30を前後方向の内側に挟持する。これによって、第一固定具100及び第二固定具200(固定具50)が野縁受け30から外れるのを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態においては、第二固定具200の取付部240は、弾性変形した状態(すなわち、第一固定具100に対して取付部240の復元力が作用している状態)で当該第一固定具100の側壁120の上部を受け入れている。これによって、例えば取付部240の復元力が作用していない状態と比べて、側壁120の凸部122が野縁受け30を押圧する力をより強くさせることができる。すなわち、第一固定具100及び第二固定具200(固定具50)が野縁受け30から外れるのを効果的に抑制することができる。
なお、第二固定具200においては、一対の引っ掛け部233が野縁40のリップ部41(返し部41a)の下方に若干離間している。すなわち、第二固定具200は、一対の引っ掛け部233において野縁40に当接していない。これに対して、第一固定具100は、一対の引っ掛け部123が野縁40の左右のリップ部41に下方から当接している。以下では、図15から図18を用いて、このような構成から得られる効果について説明する。
ここで、例えば地震が発生して天井が揺れると、野縁40や野縁受け30が意図せぬ動きをする場合がある。このような場合、固定具50は、野縁40や野縁受け30の動きに耐え切れずに変形し、野縁受け30から外れてしまうおそれがある。
本実施形態において、固定具50(第一固定具100及び第二固定具200)が野縁受け30に取り付けられた状態においては、第一固定具100だけが野縁40に当接している。そのため、例えば地震が発生して天井が揺れて、固定具50が野縁40等の動きに耐え切れなくなると、まず第一固定具100が徐々に変形していく。こうして、第一固定具100が徐々に変形していくと、当該変形に伴って野縁40が第一固定具100(野縁受け30)に対して相対的に下方へと移動することとなる。
このように、野縁40が第一固定具100に対して相対的に下方へと移動すると、図17及び図18に示すように、野縁40は、(第一固定具100の一対の引っ掛け部123よりも下方に位置している)第二固定具200の一対の引っ掛け部233に上方から当接することとなる。こうして、若干変形した第一固定具100と合わさって、第二固定具200は、一対の引っ掛け部233が野縁40の左右のリップ部41を下方から支持することができ、ひいては固定具50が野縁受け30から外れてしまうのを抑制することができる。
ここで、例えば第一固定具100の一対の引っ掛け部123及び第二固定具200の一対の引っ掛け部233が最初から野縁40に当接している構成を想定すると、当該想定した構成は、本実施形態に係る構成と比べて、固定具50の耐力及び剛性が高くなる。しかしながら、耐力及び剛性が共に高くなると、比較的小さな変形で野縁40の破壊が発生してしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態に係る構成においては、前記想定した構成と比べて、変形が開始された直後において第一固定具100のみが変形する。しかしながら、図19のように、第一固定具100がある程度変形すると、直後に第二固定具200が野縁40に当接するため、第二固定具200の変形が開始される。こうして、本実施形態に係る構成においては、変形が開始された直後において第一固定具100のみが変形するようにし、第一固定具100が耐力に到達する変形に至る前に第二固定具200が野縁40に当接するように隙間の距離を調整しておけば、剛性不変のまま耐力のみを高くすることができるため、固定具50の変形能力が改善され、最終的には前記想定した構成と比べて、固定具50が野縁受け30から外れてしまうのを効果的に抑制することができる。
なお、図19に記載のグラフは、固定具として、第一固定具100のみを使用した場合と、第一固定具100及び第二固定具200を互いに隙間がある状態(すなわち、本実施形態に係る構成)で使用した場合と、第一固定具100及び第二固定具200を互いに隙間がない状態(すなわち、前記想定した構成)で使用した場合との、それぞれの場合における耐力及び変形の関係を示している。
また、本実施形態に係る構成においては、例えば第一固定具100に相当する固定具を用いて野縁が野縁受けに固定されている既存の天井構造に対して、第二固定具200を前記野縁受けに取り付けることができる。すなわち、既存の天井構造に対して、第二固定具200を用いることによって、固定具50が野縁受け30から外れてしまうのを効果的に抑制することができる。
このように、第二固定具200は、既設の第一固定具100(第一固定具100に相当する固定具)に対して、後付けできるものである。ここで、既設の第一固定具100に対して第二固定具200を後付けする場合、同時に取り付ける場合と比べて施工条件が低下していることが多く、作業者の作業が煩雑となることが想定される。しかしながら、第二固定具200は、上方から押し込むことにより(簡易な作業により)取り付けられるため、施工条件が低下している場合であっても、作業者の作業が煩雑となるのを防止することができる。
また、第二固定具200は、天井における必要な箇所だけに取り付けることができる。なお、必要な箇所とは、地震が発生して天井が揺れた場合に、他の箇所よりも固定具50が野縁受け30から外れ易い箇所のことを指す。具体的には、必要な箇所として、前記天井のうち壁際や、柱周り、空調機が設置している箇所近傍が想定される。こうして、第二固定具200は必要な箇所だけに取り付けることにより、コスト削減を図ることができる。
以上のように、一実施形態に係る固定具50を具備する天井構造1においては、
リップ部41を有する野縁40と、
前記野縁40を上方から受ける野縁受け30と、
前記野縁受け30に取り付けられ、前記野縁40を前記野縁受け30に固定する固定具50と、
を具備する天井構造であって、
前記固定具50は、
互いに別体として構成される第一固定具100及び第二固定具200を有し、
前記第一固定具100及び前記第二固定具200は、
それぞれ前記リップ部41を下方から支持するための支持部を有し、
前記第一固定具100の引っ掛け部123(支持部)は、
前記リップ部41と当接して設けられ、
前記第二固定具200の引っ掛け部233(支持部)は、
前記リップ部41の下方に前記リップ部41から離間して設けられるものである。
このような構成により、野縁40を野縁受け30に固定する固定具50が野縁受け30から外れるのを抑制することができる。
より詳細には、地震等が発生して天井が揺れた場合に固定具50が開くのを抑制できる。これによって、固定具50が野縁受け30から外れるのを抑制することができ、野縁40や当該野縁40に取り付けられる天井板(不図示)等が脱落するのを抑制できる。
また、天井構造1においては、
前記第一固定具100及び前記第二固定具200は、
それぞれ前記野縁受け30に取り付けられるための取付部を有し、
前記第二固定具200の取付部240は、
上方から嵌め込まれることにより、前記第一固定具100の頂部110(取付部)を介して前記野縁受け30に取り付けられるものである。
このような構成により、施工性を向上させることができる。
また、天井構造1においては、
前記第一固定具100の引っ掛け部123(支持部)は、
前記第一固定具100の取付部240の後側(前記野縁受け30の幅方向の一側)から下方へ延びた側壁120(側板)の下部に設けられ、
前記第二固定具200の引っ掛け部233(支持部)は、
前記第二固定具200の頂部110(取付部)の前側(前記野縁受け30の幅方向の他側)から下方へ延びた前側壁230(側板)の下部に設けられ、
前記第一固定具100の側壁120(側板)及び前記第二固定具200の前側壁230(側板)は、
前記野縁受け30を前記野縁受け30の幅方向内側に挟持するものである。
このような構成により、野縁40を野縁受け30に固定する固定具50が野縁受け30から外れるのを、より効果的に抑制することができる。
また、一実施形態に係る固定具50においては、
野縁受け30に取り付けられ、リップ部41を有する野縁40を前記野縁受け30に固定する固定具50であって、
互いに別体として構成される第一固定具100及び第二固定具200を有し、
前記第一固定具100及び前記第二固定具200は、
それぞれ前記リップ部41を下方から支持するための支持部を有し、
前記第一固定具100の引っ掛け部123(支持部)は、
前記リップ部41と当接して設けられ、
前記第二固定具200の引っ掛け部233(支持部)は、
前記リップ部41の下方に前記リップ部41から離間して設けられるものである。
このような構成により、野縁40を野縁受け30に固定する固定具50が野縁受け30から外れるのを抑制することができる。
なお、第一固定具100の引っ掛け部123は、第一固定具の支持部の実施の一形態である。
また、第二固定具200の引っ掛け部233は、第二固定具の支持部の実施の一形態である。
また、第二固定具200の頂部110は、第二固定具の取付部の実施の一形態である。
また、前後方向は、野縁受けの幅方向の実施の一形態である。
以上、一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態において、野縁40は、シングル野縁であるものとしたが、シングル野縁よりも左右方向幅が大きなダブル野縁であってもよい。
また、本実施形態において、第一固定具100の凸部122は、本実施形態のような正面視略トラック状に限定されるものではなく、任意の形状を選択することができる。凸部122は、例えば、正面視略矩形状や正面視略円状に形成されるものであってもよい。さらに、第一固定具100の凸部122は、1つ設けられると共に長手方向を上下方向に向けて形成されたが、これに限定するものではない。例えば、凸部122は、2つ設けられると共に長手方向を左右方向に向けて形成し、かつ、2つの凸部122で野縁受け30の下フランジ33を挟持するように形成してもよい。このような構成により、第一固定具100と野縁受け30とのがたつきを効果的に抑制することができる。なお、第二固定具200の凸部232も同様に構成することができる。
また、本実施形態においては、第二固定具200が第一固定具100に嵌め込まれた状態とは、第二固定具200の頂部210の下面に第一固定具100の第一頂部111の上面が当接した状態としたが、これに限定するものではない。第二固定具200が第一固定具100に嵌め込まれた状態とは、第二固定具200の頂部210の下面に第一固定具100の第一頂部111の上面が当接していなくとも、第二固定具200の取付部240の内側に第一固定具100がそれ以上侵入できない状態であればよい。
また、第二固定具200の取付部240及び支持部(引っ掛け部233)の構成(例えば形状や大きさ等)は、本実施形態のような構成に限定されるものではなく、任意の構成を選択することができる。また同様に、第一固定具100の取付部(頂部110)及び支持部(引っ掛け部123)の構成(例えば形状や大きさ等)は、本実施形態のような構成に限定されるものではなく、任意の構成を選択することができる。
以下では、図20を用いて、別実施形態に係る第一固定具500の構成について説明する。
図20に示す第一固定具500は、一般的に市販されているものである。第一固定具500は、頂部510及び側壁520を具備する。なお、図20においては、変形前(取り付け前)の第一固定具500の構成を示している。
頂部510は、第一固定具500の上端部に形成される部分である。頂部510は、第一頂部511、第二頂部512及び切欠部513を具備する。
第一頂部511及び第二頂部512は、第一実施形態に係る第一固定具100の第一頂部111及び第二頂部112と、それぞれ略同様に構成される。
切欠部513は、頂部510を切り欠いたように形成された部分である。切欠部513は、頂部510の前端部から後方へ延びるように形成される。切欠部513の後端部は、第一頂部511と第二頂部512との境界よりも第一頂部511側(後方)に位置している。このような切欠部513によって、第一固定具500が野縁受け30に取り付けられる場合、頂部510が折り曲げられ易くなっている。
側壁520は、第一固定具500のうち、頂部510以外の部分である。側壁520は、切欠部521、凸部522及び引っ掛け部523を具備する。
切欠部521は、側壁520を切り欠いたように形成された部分である。切欠部521は、側壁520の下端部近傍に形成される。切欠部521は、側壁520に左右一対形成される。
凸部522は、側壁520から前方へ突出する部分である。凸部522は、側壁520の略全面に亘って、当該側壁520を前方に凹ませることで形成される。凸部522の上端部は、切欠部521の上端部よりも上方に形成される。また、凸部522の下端部は、切欠部521の下端部と上下方向の位置が略同一となるように形成される。
引っ掛け部523は、野縁40のリップ部41に引っ掛け可能な部分である。引っ掛け部523は、野縁40のリップ部41を下方から支持する。引っ掛け部523は、側壁520の左下端部及び右下端部に形成される。より詳細には、引っ掛け部523は、側壁520の下端部うち、切欠部521によって切り欠かれた残りの部分である。切欠部521の外縁部は、前方へ折り曲げられている。こうして、引っ掛け部523は、折り曲げられた角部を有することにより、剛性が高くなるように形成される。
このように、本発明に係る第一固定具としては、一般的に市販されているものであってもよく、例えば一般的に市販されている第一固定具500を用いて野縁が野縁受けに固定されている既存の天井構造に対しても、第二固定具200を野縁受けに取り付けることができる。このように、本発明に係る第一固定具としては、種々の構成を採用することができ、例えば上述の如き第一実施形態に係る第一固定具100と別実施形態に係る第一固定具500とを組み合わせた構成とすることもできる。