JP6883167B2 - 非晶質合金基板を用いた微小金属粒子の結晶構造解析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子後方散乱回折(Electron Back Scatter Diffraction:EBSD)法を利用した走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)による結晶構造解析方法に関し、特に、観察対象となる金属等の微小粒子(微小体)が載置される基板に非晶質合金を用いる結晶構造解析方法に関する。
EBSD法は、SEMの中で、金属材料等からなる観察対象試料への電子ビームの照射により得られる反射電子の菊池線回折図形によって、試料の局所的な結晶構造に関する情報を取得する手法であり、近年、金属材料研究の分野においては必要不可欠な構造解析手法となっている(非特許文献1参照)。
EBSD法について、より具体的に説明すると、電子ビームの入射方向に対して70度程度の傾斜された試料(観察対象)に、電子ビームが入射されると、電子は試料表面近傍において弾性散乱と非弾性散乱を繰り返しながらブラッグの回折条件に従って試料外部へと放出され、ここで、放出された電子(反射電子)の回析パターン(EBSDパターン)を獲得し、解析する手法である。
このEBSDパターンの発生領域は、入射電子線の試料中での電子ビームの散乱による拡がりに影響されることや、試料へ入射される電子線のビーム径やそのエネルギーに比例することが知られている。
近年のSEMの観察技術の発達により、SEMの電子ビームの細径制御技術や、EBSD法における反射電子検出器の検出感度や、EBSDパターンの解析精度(分解能)の向上がもたらされたおかげで、従来、EBSD法により個々の構造解析が可能な試料として、直径がミリメートルサイズの金属等のバルク材に限られていたのが、ナノメートルからマイクロメートルサイズの金属粒子等の微小粒子でも可能となった。
こうした微小粒子は、工業的にはプラズモン共鳴を利用した光学デバイスや、触媒,導電性ペーストとしての有用性が期待されているため、その構造制御技術に関する研究開発が盛んに行われている(特許文献1〜4参照)。
一般的なEBSD法による微小粒子の結晶構造解析は、前処理として、エポキシ樹脂等に試料を埋没し、機械研磨によって断面を抽出し、これをSEMの観察用チャンバ内に導入して実施する(非特許文献2、3及び4参照)。
また、一般的な結晶構造解析を行う際に用いられる微小粒子を載置する基板には、導電性と熱伝導性を有する真鍮や銅、炭素含有導電性テープが用いられる。
特開2014−69997号公報 特開2014−65971号公報 特開2007−197755号公報 特開2010−170842号公報
エレクトロニクス実装学会誌 第13巻 第6号(2010年)p.469「EBSD法の基礎原理と材料組織解析への応用」鈴木清一 溶接学会誌 第77巻 第8号(2008年)p.761「EBSD法用試料準備法」セルゲイ・ミロノフ 塑性と加工 第54巻 第6号(2013年)p.101「集合組織の測定・評価法 (2)EBSD法」森田博文 EBSD Oxford Instruments‐Sample Mounting (http://www.ebsd.com/sample-preparation/sample-preparation-for-ebsd/sample-mounting)
しかしながら、エポキシ樹脂等に試料を埋没したものを使用した場合、試料への電子ビーム照射によりエポキシ樹脂表面において電子線が帯電してしまい、その結果、チャージアップ現象が発生してしまうという問題がある。
また、微小粒子を載置する基板として、真鍮や銅等の金属基板(結晶基板)を使用し、EBSD法による微小粒子の結晶構造解析を行った場合は、上述したようなチャージアップ現象は回避することができるものの、対象とする微小粒子の構造情報と共に基板の構造情報も検出されてしまうため、個々の微小粒子の回折像を明瞭に取得することができない。特に、粒径が非常に小さく基板からの後方散乱電子の影響があり、また、観察領域に基板が存在するような粒径を持つ微小粒子を観察の対象とする場合、このような問題が生じる。
また、微小粒子を載置する基板として、炭素含有導電性テープを用いた場合には、観察時に熱変形に伴うドリフトにより明瞭な回折像を得ることができないという問題がある。
そこで、本発明は、EBSD法による、直径がナノメートルからマイクロメートルオーダの金属材料からなる微小粒子の結晶構造解析であっても、明瞭な個々の微小粒子の回析像を取得することができる方法を提供することを目的とする。
本発明の結晶構造解析方法は、非晶質構造を有する基板上に金属からなる微小粒子を載置し、微小粒子が載置された基板に対し、電子線、X線、イオン線及び中性子線のいずれかを照射し、微小粒子が載置された基板から生ずる回折パターンを取得し解析する方法であって、非晶質構造を有する基板は、非晶質合金からなるもの、または、平板上に金属ガラス薄膜が成膜されたものであることを特徴とする方法である。
ここで、上記結晶構造解析方法は、微小粒子が載置された基板に対し電子線を照射する電子線後方散乱(EBSD)法であることが好ましい。
また、微小粒子は、集束イオンビームにより表面が削られた断面試料であってもよい。
非晶質合金は、臨界冷却速度以上の冷却速度で得られる金属ガラスであることが好ましい。
本発明は、EBSD法による微小粒子の結晶構造解析を行う際に、金属ガラス等の非晶質合金を基板材料として用い、この基板上に微小粒子を載置する、または載置した後、粒子断面を形成することにより、個々の微小粒子の構造情報と基板の構造情報が区別され、個々の微小粒子のみの結晶構造解析を行うことが可能となる。
また、微小粒子等が載置された基板のバックグラウンド情報を含まない微小粒子等のみの結晶構造解析情報が得られるようになるため、例えば、液相合成法や、液中レーザ溶融法によって作製される直径がナノメートルからマイクロメートルオーダの微小粒子の構造や形状、機能のプロセス制御技術の発展に寄与することができる。
本発明の一実施形態に使用するCu基金属ガラスを製造する装置を概略的に示す図である。 本発明の一実施形態に使用するCu基金属ガラス基板上に載置されたAgナノ粒子に断面を作製する方法を概略的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るEBSD法によるCu基金属ガラス基板上に載置されたAgナノ粒子の断面の結晶構造解析方法を概略的に示す図である。 図4(A)は、SEMで取得したCu基金属ガラス基板上に載置されたAgナノ粒子の二次電子観察像を示す図、図4(B)は、図4(A)に示すSEMの観察領域に対応する領域のEBSD測定結果から得られた結晶方位マッピング像を示す図面の代用写真である。 図5(A)は、比較例1に係る観察試料の模式図を示す図であり、図5(B)は、SEM内での観察試料の配置を示す図である。 図6(A)〜(D)は、SEMで取得した比較例1に係る試料の二次電子観察像を示す図であり、図6(A)は、電子線照射開始時に取得された広域像を示し、図6(B)は、電子線照射開始から約1分後に取得された広域像を示し、図6(C)は、図6(A)の点線内拡大図を示し、図6(D)は、図6(B)の点線内拡大図を示す。 図7(A)は、比較例2に係る観察試料の模式図を示す図であり、図7(B)は、SEM内での観察試料の配置を示す図である。 図8(A)及び(B)は、EBSD分析前後にSEMで取得した比較例2に係る試料の二次電子観察像を示す図であり、図8(A)は、EBSD分析前の図を示し、図8(B)は、約1時間のEBSD分析後の図を示す。 図9は、EBSD分析前にSEMで取得した比較例2に係る試料の二次電子観察像に、EBSD分析後にSEMの観察位置で取得したEBSD測定結果から得られた結晶方位マッピング像を重ねた図面の代用写真である。 図10(A)は、SEMで取得した比較例3に係る観察試料のバンドコントラストを示す図であり、図10(B)は、図10(A)に示すSEMの観察領域に対応する領域のEBSD測定結果から得られた結晶方位マッピング像を示す図面の代用写真である。
以下、本発明による結晶構造解析方法の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
本実施形態の結晶構造解析方法は、試料である金属からなる微小粒子を、非晶質構造を有するガラス基板上に載置し、集束イオンビームを用いて断面試料を作製したものをEBSD法による分析が可能な走査型電子顕微鏡(SEM)により解析するものである。
なお、ここでの「微小粒子」は、必ずしも真球の形状に限定されず、球状や楕円体状などの表面が概ね球面で構成されたものや、多面体形状や、多面体形状の角が丸まっているものを含むものとする。
本発明の試料は、粒径が50nm以上の金属材料からなる微小粒子を対象とする。中でも、EBSD法により観察を行う際、粒径が非常に小さく観察領域に基板が存在し、且つ、基板からの後方散乱電子の影響を受ける粒径50nm以上1μm以下のナノまたはサブミクロン粒子が、特に本発明に適しており、本発明の高い効果を得ることができる。
EBSDパターンの発生領域は、試料表面から30〜50nm程度の深さであり、この発生領域は、入射電子線のエネルギーに依存する。例えば、入射電子線エネルギーが5keV等である場合、EBSDパターンの発生領域は、試料の表面から数nm程度の領域となる。そのため、EBSD法により観察を行う際、微小粒子の粒径が少なくとも50nmあれば、適切にEBSD分析を行うことができる。
本実施形態では、粒径が100nm以下のAgからなるAgナノ粒子(Agサブミクロン粒子ともいう)であり、液中レーザ溶融法を用いて作製する。具体的には、粒径100nm以下の銀粒子を超純水中に分散した銀コロイド溶液に対し、Nd:YAGナノ秒パルスレーザーの三倍高調波(λ=355nm)を50mJ/cmで一定時間照射することにより作製することができる。
Agナノ粒子が載置されるガラス基板は、導電性を有する非晶質合金から成る基板であり、本実施形態では、その組成がCu36Zr48AgAl(at.%)のCu基金属ガラスを用いる。なお、本実施形態における基板の組成は、上述したとおりであるが、観察対象である試料の構成元素を含まないことが好ましい。
Agナノ粒子が載置されるガラス基板として、導電性を有する非晶質合金(アモルファス合金)、すなわち、非晶質構造(アモルファス構造)を有する金属ガラス基板を用いれば、電子線照射により生じる問題、すなわち、電子線照射による基板の変形により観察対象のドリフト(移動)が生じたり、基板表面のチャージアップによる異常コントラスト(試料の表面形態に依存しないコントラスト)が生じたりすることなく、精度の高い結晶構造解析を行うことができる。
また、非晶質材を用いれば、基板の結晶情報が検出されないため、基板と試料(金属微粒子)の結晶情報を容易に区別することもできる。
また、試料断面を形成するために集束イオンビーム(FIB)が照射されても基板が結晶化することがないという効果も有する。そのため、試料(金属微粒子)がどのような結晶構造を有していても、また、試料がどのような大きさでも、基板と試料(金属微粒子)とを明瞭に区別して検出することができる。
ここで、図1を参照して、Cu基金属ガラスの作製方法を説明する。図1は、急冷鋳造法を利用してCu基金属ガラスを製造する装置の概略図である。
図1に示すCu基金属ガラス製造装置は、真空チャンバ1と、真空チャンバ1内に設置された銅ハース2と、アーク放電プラズマ5を放出する電極4と、鋳型(銅鋳型)6およびピストン7から構成される。
真空チャンバ1内に設置された銅ハース2上に金属ガラス母合金3を置き、ハース2上に設置された電極4からアーク放電プラズマ5を放出することにより金属ガラス母合金3を溶融する。その後、鋳型6のキャビティと真空チャンバ1との圧力差により、溶融した金属ガラス母合金3を臨界冷却速度以上の冷却速度と高充填率が得られるようにピストン7を下降させてキャビティに鋳込み、急冷凝固することにより、金属ガラスの丸棒8や板材のバルク金属ガラス材を作製する。ここで、Cu基金属ガラスは、臨界冷却速度が約10K/s程度であるため、10K/s以上の速度で溶融状態から凝固点以下まで冷却すれば金属ガラス母合金3をアモルファス化することができる。
本実施形態では、鋳型6内のキャビティは直径12mmの円柱形状としたが、Cu基金属ガラスの形状は、臨界冷却速度以上で冷却されることにより得られる非晶質構造を有していれば、特に、円柱や板状であることに限定されない。
また、Cu基金属ガラスは、上述したような急冷鋳造法で得られるバルク材に限定されず、マグネトロンスパッタリング法や、レーザデポジション法、電析法等により、平板上に金属ガラス薄膜を成膜したものであっても良い。
上記装置による急冷鋳造法によって得られた円柱形状のCu基金属ガラス11は、図示しない精密切断機により、直径12mm、厚さ1mm程度の形状に切り出され、その切断面を算術平均粗さ1μm以下の精度で機械研磨される。この切り出しや機械研磨においては、試料が載置される表面の平坦性が重要であるため、その厚さや外形寸法は特に限定されない。
このように、Agナノ粒子9をCu基金属ガラス基板上に載置すれば、EBSD法により結晶構造解析を行う際、基板からの電子線回析の影響を低減することができる。
次に、図2を参照して、Cu基ガラス基板上に載置されたAgナノ粒子9に断面を作製する方法を説明する。
図2に示すように、板状のCu基金属ガラス基板11の上に、液中レーザ溶融法で作製した粒径100nm以下のAgナノ粒子9を載置したものを、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)等を用いるイオンスパッタリング加工装置のチャンバ内に導入し、Agナノ粒子の断面を形成した。具体的には、まず、イオン源10から加速電圧が30kV、ビーム電流が7.0pA(または、18pA)のGaイオンビームを、矢印で示すように、基板表面と水平方向に照射することで、試料表面を削り取り(断面出しを行い)、その後、加速電圧5kV、ビーム電流16pAのGaイオンビームで、加速電圧30kVでの加工時に生じたダメージ層の除去を行った。
次に、図3を参照して、Cu基ガラス基板上に載置されたAgナノ粒子9の断面をEBSD法による構造解析機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)により解析する方法を説明する。
図3に示すように、先述したように、集束イオンビームにより断面が形成されたAgナノ粒子9が載置されたCu基金属ガラス基板11をEBSD法による分析が可能なSEM装置に導入し、電子源12から、所定の加速電圧で引き出される所定の電子線電流密度の電子ビーム(例えば、電子線加速電圧が15kV、電子線電流密度が1.3nAの電子ビーム)がCu基金属ガラス基板11へ照射されると、Agナノ粒子9の表面から数十nmの領域から反射電子が放出される。このうち微小粒子等の結晶方位に依存したEBSDパターンをEBSD検出器13により取得しAgナノ粒子9の断面における構造解析を行う。
この時、基板が非晶質構造であれば、入射された電子線はブラッグの回折条件には則らずに明瞭な回折像は発生しない。そのため、非晶質基板とこれに載置された微小粒子等の回折パターンを明瞭に区別することができるため、結果的に個々の微小粒子等単体の結晶構造解析を行うことができる。
なお、上記実施形態においては、微小粒子の結晶構造解析のために、微小粒子が載置された基板に対し電子線を照射し解析を行ったが、これに限定されず、微小粒子が載置された基板に対し、X線、イオン線または中性子線を照射して解析を行うこともできる。
(実施例1)
上記実施の形態で説明したように、まず、粒径100nm以下の銀粒子を超純水中に分散した銀コロイド溶液に対し、Nd:YAGナノ秒パルスレーザーの三倍高調波(λ=355nm)を50mJ/cmで一定時間照射することにより銀サブミクロン球状粒子を作製した。作製した粒子は、図3に示すように、銅基バルク金属ガラス上に銀粒子溶液を滴下し乾燥させることで載置した後、粒子表面を集束イオンビーム(FIB)により削り取り、作製された断面試料をEBSD法による分析が可能なSEMで観察及び解析を行った。また、本実施例で用いた銅基バルク金属ガラスのみのEBSD分析で得られたバンドコントラスト像も取得した。
図4(A)は、SEMで観察したAgナノ粒子の二次電子像、図4(B)は、SEMに付属されたEBSD分析器により得た結晶方位マッピング像を示すものである。図4(B)のマッピング像は、図4(A)に示したSEM写真を同観察位置で取得した像である。
図4(A)と図4(B)から、図4(B)の結晶方位マッピング像において、Agナノ粒子のどの領域でも精度良い指数付けがなされていることが分かる。また、Agナノ粒子がどのような大きさでも精度良い指数付けがなされていることが分かる。
図4(A)の二次電子像で見られる金属ガラス基板11は、図4(B)の結晶方位マッピング像において黒色であるが、図4(A)の二次電子像より中空構造を含む粒子であることがわかるAgナノ粒子9は、図4(B)の結晶方位マッピング像において、結晶方位を示す彩色と、中空部分に金属ガラス基板を示す黒色があり、明瞭な結晶構造情報、すなわち、基板の結晶情報と、Agナノ粒子の結晶情報が区別して獲得されていることが分かる。
また、得られた銅基バルク金属ガラスのみのバンドコントラスト像(図示せず)は、像全体が黒く、白い領域が全く確認されなかった。一般に、バンドコントラスト像では、結晶性を有する領域は白く、アモルファス及び結晶性に乏しい領域は黒く示されるため、本実施例で用いた銅基バルク金属ガラスはアモルファスであり、結晶性を有していないことが分かる。
この結果により、本発明の結晶構造解析方法によれば、Agナノ粒子単体の明瞭な回折像を取得することでき、粒子単体での構造を評価することができることがわかる。
(比較例1)
図5(A)に示すように、Si基板14上に塗布されたカーボンペースト15上に銀微粒子溶液を滴下して(すなわち、実施例1と同様の方法で作製した銀サブミクロン球状粒子9をカーボンペースト15に混合して)カーボンペースト15と共に溶液を乾燥させた積層体を得た。その後、その積層体の端部に、断面試料作製装置(日本電子製 IB−09020CP)を用いてArビームを照射し、試料断面を作製した。作製した観察試料は、図5(B)に示すように、矢印で示す電子ビームの入射方向に対して70度傾斜するように、EBSD検出器13を備えるSEM内に配置した後、二次電子観察像を継時的に取得した。その結果を図6(A)〜(D)に示す。
図6(A)は、電子線照射開始時に取得された広域像を示し、図6(B)は、電子線照射開始から約1分後に取得された広域像を示し、図6(C)は、図6(A)の点線内拡大図を示し、図6(D)は、図6(B)の点線内拡大図を示す。
図6(A)と図6(B)を比較すると、図6(B)に示される電子線照射約1分後の広域像には、図6(A)に示される電子線照射後の広域像には観察されなかったくぼみが見られた。また、それぞれの拡大像である図6(C)と図6(D)を比較すると、図6(D)に示される電子線照射約1分後では、図6(C)に示される電子線照射開始時に見られる観察対象物が数百nm程度移動している様子が観察された。これは、カーボンペースト15が電子線照射により発生した熱で変形したためであると考えられる。また、図6(B)では、帯電による異常コントラストも確認された。
この結果により、カーボンペーストを用いて作製した観察試料では、精度のよいEBSD分析ができないことが分かった。
(比較例2)
図7(A)に示すように、まず、Si基板14a上にくぼみを作製し、そのくぼみへ銀微粒子溶液(すなわち、実施例1と同様の方法で作製した銀サブミクロン球状粒子)を滴下して、溶液を乾燥させ、その後、さらに、エポキシ樹脂16(EPOXY TECHNOLOGY社製 G−2)を塗布し、さらに、その上にSi基板14bを配置した後、エポキシ樹脂16を加熱により硬化させ、サンドイッチ構造の積層体を作製した。ついで、そのサンドイッチ構造の積層体の端部が平坦になるように機械研磨した後、断面試料作製装置(日本電子製 IB−09020CP)を用いてArビームを照射し、試料断面を作製した。その後、エポキシ樹脂へ導電性を付与するために試料断面に数nm程度のカーボンペースト15をコーティングした。
作製した観察試料は、図7(B)に示すように、矢印(1)に示す電子ビームの入射方向に対して70度傾斜するように、EBSD検出器13を備えるSEM内に配置した後、二次電子観察像をEBSD分析前後に取得した。その結果を図8(A)及び(B)に示す。
また、作製した観察試料は、SEMを使って、図7(A)の矢印(1)、すなわち、図7(B)の矢印(1)に示す方向から、電子ビームを入射して、二次電子観察像をEBSD分析前後に取得するとともに、SEMの観察領域に対応する領域のEBSD測定結果から得られた結晶方位マッピング像を取得した。
図8(A)は、EBSD分析前の図を示し、図8(B)は、約1時間のEBSD分析後の図を示す。
図8(A)及び図8(B)を比較すると、図8(B)に示す約1時間の分析後では、図8(A)に示す分析前に比べ、分析領域、すなわち、Agナノ粒子9の周辺のエポキシ樹脂16が変形した状態にあることが観察された。
図9は、EBSD分析前に、SEMを使って、図7(A)の矢印(2)に示す方向から、電子ビームを入射して取得した観察試料の二次電子観察像に、EBSD分析後にSEMの観察位置で取得したEBSD測定結果から得られた結晶方位マッピング像を重ねた図である。
図9によれば、EBSD分析前の二次電子観察像に示されるAgナノ粒子と、EBSD分析後の結晶方位マッピングに示されるAgナノ粒子の位置が一致しないことが分かった。これは、比較例1と同様に、エポキシ樹脂16が電子線照射により発生した熱で変形したことに伴い、Agナノ粒子が移動したために生じた結果と考えられる。
この結果により、エポキシ樹脂を用いて作製した観察試料では、精度のよいEBSD分析ができないことが分かった。
(比較例3)
銀サブミクロン粒子を載置する基板に、結晶金属基板であるMo基板(Mo,99.9%)を使用した以外は実施例1と同様に観察試料を作製し、SEM観察及びEBSD解析を行った。
図10(A)は、SEMで観察したAgナノ粒子のバンドコントラスト、図10(B)は、SEMに付属されたEBSD分析器により得た結晶方位マッピング像を示すものである。図10(B)のマッピング像は、図10(A)に示したバンドコントラスト像と同観察位置で取得した像である。
図10(A)のバンドコントラストによれば、Agナノ粒子9の周辺が黒くなっていることが分かる。これは、集束イオンビーム(FIB)により、試料表面を削り、断面を作製する際、基板の結晶相が非晶質相に変化したことにより生じたと考えられる。
また、図10(B)の結晶方位マッピング像によれば、Agナノ粒子9の周辺が指数付けされていない黒い領域があることがわかった。
つまり、結晶金属基板を使用した場合、集束イオンビーム(FIB)によるダメージで基板が非晶質に変化した場合は、基板とAgナノ粒子9とのエッジ部を明瞭に区別して検出することができるものの、試料のエッジ部では基板の結晶情報が重畳する可能性があることが分かった。また、試料の厚さが薄い場合においても基板の結晶情報が重畳する可能性があることが分かった。
この結果により、結晶金属基板を用いて作製した観察試料では、精度のよいEBSD分析ができないことが分かった。
実施例1と、比較例1及び2の結果から、Agナノ粒子9が載置されるガラス基板として、Cu基金属ガラス基板11を用いれば、電子線照射による基板の変形により観察対象のドリフトや、基板表面のチャージアップによる異常コントラストが生じたりすることなく、精度の高い結晶構造解析を行うことができることが分かった。
実施例1と比較例3の結果から、Agナノ粒子9が載置されるガラス基板として、Cu基金属ガラス基板11を用いれば、試料断面を形成するために用いられる集束イオンビーム(FIB)が基板に照射されても、基板が結晶化することがないため、試料の結晶構造を基板と異なるものに限定することなく、どのような結晶構造の試料でも精度良く測定することができることが分かった。また、どのような大きさの試料でも精度良く測定することができることが分かった。
以上、本発明の結晶構造解析方法について、実施形態及び実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、その実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
液相合成法や液中レーザ溶融法によって作製される微小粒子体において詳細な構造情報を取得することが可能になるため、当該微小粒子体等の構造や形状を制御し、さらには発現する機能を制御し得るプロセス技術の研究開発に利用することができる。
1 真空チャンバ、2 銅ハース、3 金属ガラスの母合金、4 電極、5 アーク放電プラズマ、6 鋳型、7 ピストン、8 金属ガラス、9 Agナノ粒子、10 イオン源、11 Cu基ガラス基板、12 電子源、13 EBSD検出器、14 Si基板、15 カーボンペースト、16 エポキシ樹脂

Claims (4)

  1. 非晶質構造を有する基板上に金属からなる微小粒子を載置し、
    前記微小粒子が載置された前記基板に対し、電子線、X線、イオン線及び中性子線のいずれかを照射し、
    前記微小粒子が載置された基板から生ずる回折パターンを取得し解析する方法であって、
    前記非晶質構造を有する基板は、非晶質合金からなるもの、または、平板上に金属ガラス薄膜が成膜されたものであることを特徴とする、
    結晶構造解析方法。
  2. 前記微小粒子が載置された前記基板に対し電子線を照射する電子線後方散乱(EBSD)法であることを特徴とする請求項1に記載の結晶構造解析方法。
  3. 前記微小粒子は、集束イオンビームにより表面が削られた断面試料であることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶構造解析方法。
  4. 前記非晶質合金は、臨界冷却速度以上の冷却速度で得られるバルク金属ガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の結晶構造解析方法。
JP2016138413A 2016-02-29 2016-07-13 非晶質合金基板を用いた微小金属粒子の結晶構造解析方法 Active JP6883167B2 (ja)

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