JP6880631B2 - 太陽電池モジュール用の封止材一体型裏面保護シート、及び、それを用いてなる太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
図1及び図2に示す通り、本発明の太陽電池モジュール用の封止材一体型裏面保護シート10は、主として太陽電池素子を太陽電池モジュール外部からの衝撃から保護する機能を果たす封止材層1と、主として太陽電池モジュール外部からの水分等の侵入を阻止するバリア性を有する裏面保護層2と、が積層一体化されてなる多層シートである。封止材層1と裏面保護層とはいずれも各種の樹脂シート等により構成されるが、それぞれ求められる機能が異なるため、通常は異なる材料樹脂により構成される。そしてこれらの異なる樹脂からなる各樹脂層は、通常、接着剤を用いたドライラミネート法によって積層一体化される。
図1に示す通り、封止材一体型裏面保護シート10を構成する封止材層1は、コア層11とコア層11の両面に配置される両スキン層12、13とを含んでなる多層構造を有する。
両スキン層12、13は、封止材層1の両方の最外層に配置される層である。第1スキン層12は、太陽電池モジュール100において、太陽電池素子3の非受光面側の表面及び受光面側封止材シート4との密着面となり、第2スキン層13は、封止材一体型裏面保護シート10を形成する際の裏面保護層2との密着面となる。両スキン層12、13は、封止材層1の密着性や、太陽電池モジュールとしての一体化のためのラミネート加工時における他部材の凹凸への追従性(以下「モールディング特性」と言う)の向上に寄与する。
第1スキン層12及び第2スキン層13を形成するスキン層用の封止材組成物は、密度0.880g/cm3以上0.910g/cm3未満の低密度ポリエチレンをベース樹脂とする。この低密度ポリエチレン系樹脂のスキン層用の封止材組成物の全樹脂成分中における含有量比は80質量%以上100質量%以下であればよく、好ましくは98質量%以上100質量%以下である。そして、このベース樹脂の融点を上述の範囲とする。
コア層11は、封止材層1に、主として、耐熱性や適度な剛性を付与する機能を有する。コア層11は、低密度ポリエチレンをベース樹脂とするコア層用の封止材組成物からなる。そして、上述の通り、コア層11にも、第1スキン層12よりは少なく、第2スキン層13よりは、多くのシラン変性ポリエチレンが含有されることとなるように、コア層用の封止材組成物には適量のシラン変性ポリエチレンを添加する。そしてコア層用の封止材組成物は、更に所定の含有量比の範囲内でポリプロピレンを混合するものであってもよい。
コア層11を形成するコア層用の封止材組成物は、密度0.910g/cm3以上0.950g/cm3以下の低密度ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする。この低密度ポリエチレン系樹脂のコア層用の封止材組成物の全樹脂成分中における含有量比は、60質量%以上95質量%以下であればよく、好ましくは75質量%以上85質量%以下である。そして、このベース樹脂の融点は上述の範囲とすることが好ましい。尚、本発明に用いる樹脂組成物中の各樹脂の含有量比は、例えば、DSC(示差走査熱量測定)やIR(赤外分光法)で検出されるピーク比等から分析することができる。
スキン層用の封止材組成物及びコア層用の封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、封止材層1に、耐候性を付与するための各種の耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材組成物中に0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材層1に、長期に亘る安定した機械強度の向上や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
封止材一体型裏面保護シート10を構成する裏面保護層2は、バリア性を備える樹脂からなる単層の樹脂層として形成することができる。或いは、封止材一体型裏面保護シート10を構成する裏面保護層2は、単層の樹脂層とその他の層とが積層されて構成される、バリア性を有する多層構造の層としても形成することもできる。
本発明の封止材一体型裏面保護シートの製造方法について説明する。封止材一体型裏面保護シート10は、裏面保護層2を形成する裏面保護シートを形成する「裏面保護シート形成工程」と、封止材層1を形成する封止材シートを形成する「封止材シート形成工程」と、裏面保護層シートに封止材シートを積層して一体化する「一体化工程」と、を経ることによって製造することができる。
裏面保護層シートは、上記において説明したPET等の樹脂材料を、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他の成膜化法等により成膜することにより形成することができる。尚、裏面保護層2は、本発明の効果を害さない範囲で、上記樹脂材料の他に顔料等のその他の添加物を含むシートからなるものであってもよい。
封止材層シートは、上述のスキン層用の封止材組成物とコア層用の封止材組成物とを、公知の共押出し法により一体成形して多層シート化することにより形成することができる。
封止材層1を構成する封止材シートと、裏面保護層2を構成する裏面保護シートと、及び必要に応じて同様の方法によって形成したその他の層を形成するシートとを適宜積層して、更に一体化することにより、本発明の封止材一体型裏面保護シート10を得ることができる。各シートの一体化は従来公知のドライラミネート法によることができる。ラミネート接着剤は従来公知のものが利用でき特に限定されず、ウレタン系、エポキシ系等の主剤と硬化剤とからなる2液硬化型のドライラミネート接着剤等が適宜使用可能である。尚、この一体化工程は、押出しコートラミネート法や、その応用形態であるサンドイッチラミネート法によることもできる。
本発明の封止材一体型裏面保護シート10を用いた太陽電池モジュール100の基本構成について、図3を参照しながら説明する。太陽電池モジュール100は、非受光面側から、封止材一体型裏面保護シート10、太陽電池素子3、受光面側封止材シート4、受光面側の最外層に配置される透明前面基板5が順に積層された構成である。封止材一体型裏面保護シート10は、封止材層1が太陽電池素子3の非受光面側と対面する態様で配置される。
太陽電池モジュール100は、例えば、上記の透明前面基板5、受光面側封止材シート4、太陽電池素子3、及び封止材一体型裏面保護シート10からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。例えば真空熱ラミネート加工による場合、ラミネート温度は、130℃〜180℃の範囲内とすることが好ましい。又、ラミネート時間は、5〜20分の範囲内が好ましく、特に8〜15分の範囲内が好ましい。このようにして、上記各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュール100を製造することができる。
下記の材料を用いて、上記(封止材シート形成工程)の欄に記載の製造方法により、実施例、比較例の封止材一体型裏面保護シートの封止材層を構成する封止材シートを作成した。
直鎖状低密度ポリエチレン1(LLDPE、表中「PE1」と表記):密度0.898g/cm3、融点90℃。
低密度ポリエチレン2(表中「PE2」と表記):密度0.919g/cm3、融点105℃。
シラン変性ポリエチレン(表中「PESi」と表記):密度0.900g/cm3、MFR1.1g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部と、を混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.900g/cm3のシラン変性ポリエチレンを得た。
ポリプロピレン(PP、表中「PP」と表記):ホモポリプロピレン。密度0.900g/cm3、融点155℃。MFR8.5g/10分(230℃)。
耐候安定剤:BASF株式会社製、商品名Tinuvin622SF。全ての実施例、比較例のコア層及びスキン層用の各封止材組成物に、いずれも0.2質量部添加。
酸化防止剤:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076。全ての実施例、比較例のコア層及びスキン層用の各封止材組成物に、いずれも0.05質量部添加。
上記各実施例、比較例の封止材シートと、表面にコロナ処理を施したPETフィルム(帝人デュポン社製、「Melinex S」、厚さ125μm)と、を、従来公知のドライラミネート法で積層して各実施例、比較例の封止材一体型裏面保護シートを得た。但し比較例5については、上記PETフィルムにコロナ処理を行わずに積層した。
[金属密着性試験]
15mm幅にカットした実施例、比較例の封止材一体型裏面保護シートの封止材層を、それぞれ銅箔(75mm×50mm×0.035mm)上に密着させて、下記真空加熱ラミネート条件(a)〜(d)と同条件で、真空加熱ラミネータ処理を行い、それぞれの実施例、比較例について金属密着性評価用サンプルを得た。これらの各金属密着性評価用サンプルについて、下記の試験条件における密着強度を測定して金属密着性を評価した。
測定は、上記の金属密着性評価用サンプルにおいて、銅箔上に密着している封止材シートを、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、測定結果を、以下の評価基準A〜Cにより評価した。
(真空加熱ラミネート条件) (a)真空引き:6.0分
(b)加圧(0kPa〜70kPa):1.5分
(c)圧力保持(70kPa):10.0分
(d)温度165℃
(評価基準) A:15.0N/15mm以上
B:10.0N/15mm以上15.0N/15mm未満
C:10.0N/15mm未満
15mm幅にカットした実施例、比較例の封止材シートの第2スキン層を上記の裏面保護層用のPETフィルム(75mm×50mm×0.035mm)上向けて、アクリル系接着剤によるドライラミネーションによる接着を試みた。コロナ処理を行わなかった比較例6のみが、実用に耐えるレベルでの接着が不能であった。
[耐久性試験]
本発明の封止材シートの耐光性を評価するために、評価例1で用いた封止材一体型裏面保護シート各試料について、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で「ダンプヒート試験」を行い、封止材層と裏面保護層の間に目視で視認可能な剥離が生じるまでの時間により耐久性を評価した。結果は「耐久性」として表2に示す。評価基準は以下の通りとした。
(評価基準) A:2000時間経過後に剥離発生せず
B:上記剥離発生までの時間が1000時間以上2000時間未満
C:上記剥離発生までの時間が1000時間未満
11 コア層
12 第1スキン層
13 第2スキン層
2、7 裏面保護層
3 太陽電池素子
4 受光面側封止材シート
5 透明前面基板
6 非受光面側封止材シート
10 封止材一体型裏面保護シート
100 太陽電池モジュール
Claims (4)
- ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする封止材層とポリエステル系樹脂をベース樹脂とする裏面保護層とが積層されてなる、太陽電池モジュール用の封止材一体型裏面保護シートであって、
前記封止材層は、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とするコア層用の封止材組成物からなるコア層と、
前記コア層用の封止材組成物よりも密度の低い第1スキン層用の封止材組成物からなり、前記封止材一体型裏面保護シートにおける封止材層側の最表面に配置されている第1スキン層と、
第2スキン層用の封止材組成物からなり、前記裏面保護層との界面側に配置されている第2スキン層と、を含んでなる多層構造を有し、
前記第2スキン層の前記裏面保護層側の表面、又は、前記裏面保護層の前記第2スキン層側の表面のうち、少なくとも何れかの面に、コロナ処理が施されていて、
少なくとも前記コア層及び第1スキン層は、低密度ポリエチレンにエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト重合したシラン変性ポリエチレンを含有し、
前記第1スキン層は、前記コア層よりも前記シラン変性ポリエチレンの含有量比が大きく、
前記第2スキン層は、前記シラン変性ポリエチレンを含有しないか、或いは、前記シラン変性ポリエチレンを前記コア層よりも小さい含有量比で含有する、封止材一体型裏面保護シート。 - 前記第1スキン層用の封止材組成物中における重合シラン量が、300ppm以上2000ppm以下、コア層用の封止材組成物中における重合シラン量が、40ppm以上300ppm未満、又、前記第2スキン層用の封止材組成物中における重合シラン量が40ppm未満である、請求項1に記載の封止材一体型裏面保護シート。
- 前記裏面保護層が、ポリエチレンテレフタレート層及び/又は耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート層を含んで構成されている請求項1又は2に記載の封止材一体型裏面保護シート。
- 請求項1から3のいずれかに記載の封止材一体型裏面保護シートが、太陽電池素子の非受光面側に前記第1スキン層が対面する態様で、積層されている太陽電池モジュール。
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