JP6877466B2 - ナノポアを用いた電流計測装置及び電流計測方法 - Google Patents

ナノポアを用いた電流計測装置及び電流計測方法 Download PDF

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Description

本発明は,被検体がナノポアを通過するときのイオン電流を計測する電流計測装置及び電流計測方法に関する。
次世代DNAシーケンサの分野では,伸長反応や蛍光ラベルを行うことなく,DNAの塩基配列を電気的に直接計測する手法としてナノポアシーケンサが注目されている。ナノポアシーケンサでは,薄膜に埋め込まれたナノポアを通過するイオン電流を計測する。このとき,DNAがナノポアを通過すると,DNAを構成する塩基の違いによってナノポアの塞がり方が異なり電流値に違いが生じるため,塩基配列を決定できる。
ナノポアシーケンス方式には,ナノポアを構成する材料によって主にバイオナノポア方式とソリッドステートナノポア方式の2種類がある。バイオナノポア方式は脂質二重膜に埋め込まれた改変タンパク質(Mycobacterium smegmatis porin A(MspA)等)のポアを検出部としたものであり,ソリッドステートナノポア方式は無機材料に加工したポアを検出部としたものである。バイオナノポア方式と比較してソリッドステートナノポア方式は試薬依存度及び前処理工程が少なく,低コストに読み取れる方式として注目されている。
Bezrukov, S. M., et al., Current noise reveals protonation kinetics and number of ionizable sites in an open protein ion channel, Phys. Rev. Lett. 70(15), p.2352-2355 (1993). Morton, D., et al., Tailored Polymeric Membranes for Mycobacterium Smegmatis Porin A (MspA) Based Biosensors, J Mater Chem B Mater Biol Med. 3(25), p.5080-5086 (2015).
図26は,ナノポアシーケンス時の理想的な電流波形を示したものである。DNA非通過時のイオン電流をベース電流と呼び,DNA通過時のイオン電流を封鎖電流と呼ぶ。ここでベース電流にノイズが含まれると,封鎖電流にはそのノイズが重畳されるため,ベース電流を計測した段階で含まれるノイズの低減に向けた研究開発が進められている。
非特許文献1は,ベース電流に含まれる矩形波のノイズ(以下,ランダム・テレグラフ・ノイズ(RTN)とよぶ)について言及したものである。図27は,RTNを有するベース電流の実験結果を示す図である。ベース電流にこのようなRTNが含まれると,矩形波の信号である封鎖電流に対して矩形波のノイズであるRTNが重畳されるため,信号解析エラーが生じるという問題がある。
非特許文献2は,バイオナノポア方式におけるRTNの低減方法について言及したものである。バイオナノポア方式においては脂質二重膜と改変タンパク質のポアとの相互作用によってRTNが増幅することを示した。しかし,ソリッドステートナノポア方式において発生するRTNについては,その原因が明らかになっておらず低減方法も不明であった。
本発明の電流計測装置は,一態様として,第一の槽と,第二の槽と,第一の槽と第二の槽を連通するナノポアを有し第一の槽と第二の槽の間に配置された薄膜と,第一の槽に設けられた第一の電極と,第二の槽に設けられた第二の電極と,を備え,ナノポアの壁面は,第一の槽及び/又は第二の槽に充填される溶液に含まれるイオンの脱離吸着を防止するイオン吸着防止構造を有し,第一の電極と第二の電極の間に電圧を印加することでナノポアを通過するイオン電流を計測するものである。
また,本発明の電流計測方法は,一態様として,薄膜に設けられたナノポアの壁面に,当該薄膜によって分離された第一の槽と第二の槽のうち少なくとも一方の槽に導入された二族元素のイオンを含む溶液又は酸性の溶液である第一の溶液を接液する工程と,第一の槽に設けられた第一の電極と第二の槽に設けられた第二の電極の間に電圧を印加してナノポアを通過するイオン電流を計測する工程と,を有する。
本発明によると,無機材料の薄膜に設けられたナノポアを通過するイオン電流のRTNを低減することができる。
上記した以外の課題,構成及び効果は,以下の実施形態の説明により明らかにされる。
RTNが発生している様子を示す模式図。 RTNを低減して計測する一実施例を示す模式図。 RTNが発生している様子を示す模式図。 RTNを低減して計測する一実施例を示す模式図。 電流計測装置の構成例を示す断面模式図。 電流計測装置を用いた計測例を示す断面模式図。 接液によってイオン吸着防止構造を形成する手順の一例を示す断面模式図。 イオン吸着防止構造を形成する他の手順の一例を示す断面模式図。 第二の溶液で第一の溶液を置換する方法の例を示す説明図。 電流計測装置の構成例を示す断面模式図。 ナノポアアレイを備える電流計測装置の構成例を示す断面模式図。 電流計測装置の構成例を示す概略図。 電流計測装置の他の構成例を示す概略図。 電流計測装置の他の構成例を示す模式図。 一族元素を含む溶液でのベース電流の例を示す図。 ベース電流波形から取得したパワースペクトル密度の実験結果を示す図。 各種元素で計測したときのClf値の実験結果を示す図。 pHを変えて計測したときのClf値の実験結果を示す図。 第一の溶液でナノポアを開孔したときのベース電流の例を示す図。 RTN低減手順を施したときのベース電流の実験結果を示す図。 第一の溶液中の二族元素の濃度の下限について検証した結果を示す図。 印加電圧の方向を変えてベース電流を計測したときの実験結果を示す図。 第一の溶液を薄膜の片側にのみ配置したときのノイズ低減効果について検証した結果を示した図。 陽イオン吸着防止構造を設けて生体ポリマを計測した結果を示す図。 RTNの防止手順を施したときのベース電流の実験結果を示す図。 理想的なベース電流と封鎖電流を示す図。 RTNを有するベース電流の実験結果を示す図。
本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものには同一の符号を付すようにし,その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。また,本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で,その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
図面等において示す各構成の位置,大きさ,形状,範囲などは,発明の理解を容易にするため,実際の位置,大きさ,形状,範囲などを表していない場合がある。このため,本発明は,必ずしも,図面等に開示された位置,大きさ,形状,範囲などに限定されない。
本明細書で引用した刊行物,特許公報は,そのまま本明細書の説明の一部を構成する。
本明細書において単数形で表される構成要素は,特段文脈で明らかに示されない限り,複数形を含むものとする。
以下の説明で,「第一の溶液」とは,二族元素のイオンを含む溶液又は酸性溶液を指す。「第二の溶液」とは,一族元素のイオンを含む溶液,あるいは第一の溶液がpH5.5以下の酸性溶液である場合には,それよりpHが高い溶液を指す。また,「第三の溶液」とは,第一の溶液とは電解質の種類や濃度が異なる溶液を指し,第二の溶液と同等の溶液であってもよい。
ここでは,まずRTNの発生メカニズムの推定と検証を行い,発生メカニズムに基づいた解決方法を検討した。一般にRTNはある2つ以上の状態を遷移することで,各状態に対応した2つ以上の離散的な電流値をとることにより発生するノイズだと考えられている。例えば半導体デバイスの電流計測において観察されるRTNは,層間絶縁膜に形成された膜欠陥に電子の結合又は乖離が生じ,電子の結合状態と乖離状態の2つの状態に対応した電流値をとることで,RTNが発生すると考えられている。上記欠陥の数が単一である場合は一般に2準位を遷移すると考えられるが,複数欠陥を有する場合ではこうした2準位を遷移するRTNが多数含まれ,複数の準位を遷移する複合RTNとして観測される。ナノポアシーケンサで報告されているRTNは一般に複数の準位を遷移する場合が多く,複合RTNに該当する。
図1はRTNが発生している様子を示す模式図,図2はRTNを低減して計測する一実施例を示す模式図である。我々は,図1に示すとおり,薄膜3に作られたソリッドステートナノポア(以下,単にナノポアという)2についてもナノポア形成時などに生じた欠陥に対して,溶液1中に含まれるプロトン,カチオン,アニオンなどのイオンが結合又は乖離することで同様の現象が確認されると考えた。すなわち,結合又は乖離するイオンをXと表記し,結合する先のイオンの脱離吸着スポットをRと表記し,両者が結合した状態をRXと表記すると,この結合又は乖離した状態を繰返す反応は
Figure 0006877466
と表すことができる。このような現象が生じる表面では上記のRTNが発生する。そのため図2に示すように,イオン吸着防止構造8を,ナノポア2を形成している薄膜の壁面及びその近傍に設けることにより,Xの吸着が生じずRTNを抑制できる。上記の仮説の検証は,後述の実験結果で説明する。
プロトン,カチオン,アニオンなどのイオンが結合又は乖離する反応スポットをより具体的に説明すると,ナノポアで一般的に用いられるSiN膜などでは表面が酸化されてシラノール基などが露出しており,このシラノール基が反応スポットになる。図3に示すように,こうした部位には
Figure 0006877466
といった反応が生じ,特に溶液1中のプロトン(H)とカチオン(M)が脱離吸着を繰返すことでRTNを発生させる。
このとき図4に示すように,シラノール基に対して吸着しやすい陽イオン9が溶液1中に含まれ一度強く吸着すると,陽イオンの脱離や吸着や交換といった反応が抑制されるため,RTNを低減できる。このように,イオンが脱離吸着するナノポア壁面の反応スポットに選択係数が大きく吸着しやすいイオンを予め吸着させておくことで,他のイオンの脱離吸着を防ぐ表面構造をイオン吸着防止構造という。
シラノール基に対して吸着しやすい陽イオンの順序は選択係数によって決定するため,一例としては二族元素のイオン(M2+)を含む溶液又は酸性溶液(第一の溶液)に一度接液すると,ナノポア壁面をM2+又はHで覆いこれらの陽イオン9が強く吸着するため,Li,Na,K,Rb,Csなど他のカチオン種5やプロトン4の吸着を抑制し,RTNを低減できる。
RTNとして観測されるイオンの脱離吸着は,電流が集中するナノポア壁面及びナノポアの近傍において発生することから,イオン吸着防止構造は,例えばナノポア壁面やナノポアからの距離が100nm以下の領域に設けられていることが望ましい。イオン吸着防止構造は,薄膜及びナノポアを形成する壁面の材質によって陰イオン吸着防止構造又は陽イオン吸着防止構造又はその両方を有するかを選択する必要がある。例えば,表面にアミノ基などを有する場合,陰イオンを交換する機能を有し,溶液中に含まれるClイオンやBrイオンなどの陰イオンを脱離吸着する。一方で表面にカルボキシル基やシラノール基などを有する場合,陽イオンを交換する機能を有し,溶液中に含まれるCsイオンやNaイオンなどの陽イオンを脱離吸着する。さらに陰イオン吸着防止構造と陽イオン吸着防止構造のそれぞれについて,選択係数に従ってイオン吸着防止構造の素材となる元素を選ぶ必要があり,陽イオン吸着防止構造であれば二族元素やHなどを選び,陰イオン吸着防止構造であればPO4やSO4やClO4やIやNO3などを有する構造であるとよい。
一般にナノポアで用いられる薄膜3の材料には窒化ケイ素,酸化ケイ素,酸化ハフニウム,二硫化モリブデン,グラフェンが用いられることが多く,これらの材料は酸素元素を含んでいるか表面酸化される性質があり,多くの場合で表面が負に帯電する性質(例えば窒化ケイ素,酸化ケイ素であればシラノール基,グラフェンであればカルボキシル基やヒドロキシル基が負に帯電しやすい)を持つことから,陽イオンを吸着する性質を有する場合が多い。そのため,ナノポアでは一般にイオン吸着防止構造には陽イオン吸着防止構造を選ぶことが好ましい。陽イオン吸着防止構造は,例えば薄膜材料中あるいは薄膜表面に二族元素を含ませた炭酸カルシウムや酸化カルシウムやケイ酸カルシウムなどによって形成されていてもよく,あるいはSiNやSiO2などの薄膜の表面に二族元素を含む化合物などを析出させたり,鉱化作用によって炭酸カルシウムなどを化学修飾することによって形成されていてもよい。
より好ましい陽イオン吸着防止構造の形成方法は,図4で示したような,ナノポアを形成している壁面に吸着しやすい陽イオン9を含む第一の溶液を接液させるという方法であり,この方法を用いることで簡易にナノポア壁面の表面構造を変えることができる。またこの手法はナノポアの厚みや孔径などを大きく変えることなくRTNを抑制することができ,被検体としてDNAなどの生体ポリマを計測する際の塩基分解能などのセンサ特性を変えずに適用できる。
続いて,本実施例で用いるRTNを抑制して計測する手順を詳しく説明する。図5は,本実施例による電流計測装置の構成例を示す断面模式図であり,薄膜3のナノポア2が形成されている壁面及びその近傍を,イオン吸着防止構造8で覆って電流を計測する様子を示している。
ナノポア2を有する薄膜3は片面が第一の槽11,もう一方の面が第二の槽12に配置されて溶液1に接液し,第一の槽11と第二の槽12は,薄膜3によって分離され,ナノポア2を通じて連通している。第一の槽11,第二の槽12には電解質を含む溶液1が充填されており,第一の電極13と第二の電極14がそれぞれ第一の槽11,第二の槽12に設けられていて,第一の電極13は第一の槽11内の溶液に接し,第二の電極14は第二の槽12内の溶液に接している。第一の電極13と第二の電極14の間に電源装置15によって電圧を印加することで,ナノポア2を通過する電流を電流計16によって計測できる。
第一の電極13や第二の電極14などの電極は,溶液1中の電解質と電子授受反応(ファラデー反応)を行うことが可能な材質で作製されることが好ましく,典型的にはハロゲン化銀又はハロゲン化アルカリ銀で作製されたものである。電位安定性及び信頼性の観点からは,銀/銀塩化銀を電極に使用することが好ましい。電極は,分極電極となる材質で作製されてもよく,例えば金や白金などで作製されてもよい。その場合は,安定的なイオン電流を確保するために溶液に電子授受反応を補助することができる物質,例えばフェリシアン化カリウム又はフェロシアン化カリウムなどを添加することが好ましい。あるいは,電子授受反応を行うことが可能な物質,例えばフェロセン類をその分極電極表面に固定化することが好ましい。
電極の構造は,電極全てが前記材質で構成されていてもよく,あるいは前記材質が銅,アルミニウムなどの下地材の表面に被覆されていてもよい。電極の形状は特に限定されるものではないが,溶液と接液する表面積が大きくなる形状が好ましい。電極は配線と接合されて,測定回路へと電気信号が送られる。電源装置15は印加電圧を制御できるようにパソコン17と繋げていてもよく,電流計16についてもパソコンなどの装置に繋ぐことで,計測した電流をデータとして保存する計測システムとなっていてもよい。電流計16は,電圧の印加によって電極間に流れる電流を増幅するアンプとADC(Analog to Digital Converter)を有していてもよい。
本実施例におけるナノポア2は無機材料の薄膜3中に設けられており,無機材料は半導体微細加工技術で形成できる材質であればよく,典型的には窒化ケイ素,酸化ケイ素,酸化ハフニウム,二硫化モリブデン,グラフェンなどであり,好ましくは半導体プロセスで量産可能なSiの化合物である窒化ケイ素や酸化ケイ素などである。ただしDNA計測時の塩基分解能が高いグラフェンなどの膜でもあっても,イオンの吸脱着によるRTNは発生することから,このような2次元材料の膜にも本実施例は適用可能である。薄膜3を支持する構造10としては,例えば725μmの厚さのシリコンの支持基板で,厚さ1μm以下,面積100μm2以下のSiN薄膜を支持したデバイスを使用する。
薄膜3中に設けられるナノポア2は,大量生産ができるよう半導体プロセスによって形成されていてもよく,孔径が小さくなるようにTEMの電子線で形成されていてもよい。より好ましくは,孔径の小さなナノポア2を精度良く,素早く,安価に形成できるように,薄膜3に高電圧を与えることで絶縁破壊によって形成されたナノポア2を用いるとよい。
本実施例で扱うRTNは原子半径1nm以下の陽イオンの脱離吸着によって生じるため,陽イオンのサイズの100倍程度以下の,比較的寸法が小さなナノポア2を通過する電流を計測する際により顕著に見られる現象である。そのため特にナノポア2の直径が0.1nm(設計限界)以上100nm以下,長さが0.1nm(設計限界)以上100nm以下である場合において,RTNの低減効果を発揮し,ナノポア2の直径が0.1nm(設計限界)以上10nm以下,長さが0.1nm(設計限界)以上50nm以下である場合には更に顕著にRTNの低減効果が得られ,ナノポア2の直径が0.1nm(設計限界)以上5nm以下,長さが0.1nm(設計限界)以上20nm以下である場合にはその低減効果はより一層顕著になる。例えば,ナノポア2の直径が0.1nm(設計限界)以上5nm以下,長さが0.1nm(設計限界)以上20nm以下である場合に,本実施例のRTN抑制手順を用いずに計測を行うと,後述の実験結果(図15)で示すようにベース電流1nAに対してRTNによって1nAの変動が生じるため,計測精度を著しく低下させ,センサとして使うことは極めて困難になる。そのため,本手法は特に直径が0.1nm(設計限界)以上100nm以下,長さが0.1nm(設計限界)以上100nm以下の比較的小さなナノポアにおいて適用することが有効である。
また計測内容によってナノポアの直径はより厳密に定めることが好ましく,例えば直径10nm程度の生体ポリマやビーズなどを分析する場合には100nm以下,好ましくは50nm以下であり,具体的にはおよそ0.9nm以上10nm以下などである。例えば直径が約1.4nmであるssDNA(1本鎖DNA)の分析に用いるナノポアの直径は,好ましくは1.4nm〜10nm程度,より好ましくは1.4nm〜2.5nm程度である。また,例えば直径が約2.6nmであるdsDNA(2本鎖DNA)の分析に用いるナノポアの直径は,好ましくは3nm〜10nm程度,より好ましくは3nm〜5nm程度である。
同様に計測内容によってナノポアの厚さについても,より厳密に定めることが好ましく0.1nm以上200nm以下であるとよく,より好ましくは0.1nm以上100nm以下である。被検体として生体ポリマなどを分析する場合には,生体ポリマを構成するモノマ単位の2倍以上,好ましくは3倍以上,より好ましくは5倍以上の大きさとする。例えば生体ポリマが核酸から構成されている場合には,厚さは塩基3個以上の大きさ,例えば約1nm以上とすることが好ましい。一方でナノポアセンサの分解能という観点でみると,生体ポリマの形状や構成物質(DNAであれば塩基の種類等)を把握するためには,ナノポアの厚さは薄いことが好ましい。例えば生体ポリマの大きさが1〜10μm程度の連鎖球菌などを計測し,その直鎖状に連なった形状を把握するためには,ナノポアの厚さは200nm以下にすることが好ましく,より好ましくは100nm以下である。さらに生体ポリマが核酸から構成されているDNAの塩基種などを解析するためには,塩基毎の間隔が0.5nm程度と短いことから,ナノポアの厚さは30nm以下にすることが好ましく,より好ましくは10nm以下である。これにより,生体ポリマの形状や構成物質などを高分解能で解析可能となる。また,ナノポアの形状は,基本的には円形であるが,楕円形や多角形とすることも可能である。
本実施例の電流計測装置を用いた計測例としては,ナノポア2を流れる電流値から溶液中に含まれるイオン種を同定するなどがあり,本手法によってRTNを抑制することで測定精度を向上させることができる。図6は,本実施例の計測装置を用いた計測例を示す断面模式図である。図6は,DNAなどの生体ポリマ51をナノポア2に通して封鎖電流を計測する例を示している。
こうした計測において計測信号にRTNが含まれるとRTNによる変動と封鎖電流による変動の区別がつかなくなるため,RTN低減効果は特に封鎖電流計測の場において発揮される。分析する対象となる生体ポリマ51は,ナノポア2通過時に電気的特性,特に抵抗値を変化させる対象物であればよく,核酸から構成されるものである。具体的には,RNA(一本鎖RNA若しくは二本鎖RNA),DNA(一本鎖DNA若しくは二本鎖DNA),PNA(ペプチド核酸),オリゴヌクレオチド,アプタマー,並びにそれらの組み合わせ(例えば,ハイブリッド核酸)である。
生体ポリマ51は,生体に存在するものであってもよいし,生体に存在するものから誘導されるものであってもよい。例えば,自然には存在しない配列や構成要素を含むポリマ,例えばpoly(A),poly(T)などの配列,人為的に合成されたポリマ分子,PCRなどの核酸増幅技術によって調製された核酸,ベクターにクローニングされている核酸なども含まれる。これらの生体ポリマの調製方法は,当技術分野で周知であり,当業者であれば生体ポリマの種類に応じて適宜調製方法を選択することができる。本実施例において,生体ポリマの分析とは,生体ポリマを構成する核酸の特性解析を指す。例えば,生体ポリマを構成する核酸のモノマの配列順序の分析(配列決定),核酸の長さの決定,一塩基多型の検出,生体ポリマ数の決定,生体ポリマ中の構造多型(コピー数多型,挿入,欠失など)の検出などを指す。
薄膜のナノポアにイオン吸着防止構造を設けて電流を計測する手順は複数あり,例えば,イオン吸着防止構造を設けた後に,薄膜の上下に溶液を流し込み,電流を計測するという手順であってもよい。あるいは,薄膜に半導体プロセス等によってナノポアを設けた後に,液相中での化学反応等を用いた表面修飾によってイオン吸着防止構造を設け,電流を計測するという手順であってもよい。あるいは,薄膜の上下に溶液を流し込み,絶縁破壊によってナノポアを開孔した後,液相中での化学反応等を用いた表面修飾によってイオン吸着防止構造を設け,電流を計測するという手順であってもよい。
陽イオン吸着防止構造のより好ましい形成方法は,図4で示したような二族元素のイオンを含む溶液又は酸性溶液である第一の溶液を,ナノポアを有する壁面に接液させるという方法である。この方法を用いることで簡易にナノポア壁面の表面構造を変え,陽イオン吸着防止構造を形成することができる。またこの方法は,ナノポアの厚みや孔径などを大きく変えることなくRTNを抑制することができ,DNAなどの生体ポリマを計測する際の塩基分解能などのセンサ特性を変えずに適用できる。
図7は,接液によってナノポア壁面にイオン吸着防止構造を形成する手順の一例を示す断面模式図である。最初に,薄膜3に半導体プロセス等によってナノポア2を設けた後に,図7(A)に示すように,その薄膜3を用いて計測装置を組み立てる。次に,図7(B)に示すように,計測装置の第一の槽11及び第二の槽12に二族元素のイオンを含む溶液又は酸性溶液である第一の溶液21を導入し,薄膜3の表面及びナノポア2の壁面を第一の溶液21に接液させてイオン吸着防止構造8を形成し,その後例えば第一の槽11に試料を注入してナノポア2を流れるイオン電流を計測すればよい。このように接液によって表面状態を変える場合,膜表面にエネルギーを与えることによって膜の表面状態を大きく変更することができイオン吸着防止構造8をより効率的に形成できるため,接液後に膜に0.1V以上などの電圧を1秒以上などの時間印加することが望ましい。
ナノポア壁面に陽イオン吸着防止構造を形成して電流計測を行うより好ましい方法は,接液によって壁面の表面状態を変える方法と,絶縁破壊によってナノポアを開孔する方法とを組み合わせることである。図8は,この電流計測方法を説明する断面模式図である。具体的な計測手順の一例は,図8(A)に示すように第一の溶液21を薄膜3の両側の第一の槽11及び第二の槽12に満たした後に,図8(B)に示すように,第一の電極13と第二の電極14の間に1[V]以上の電位差を与えることによって絶縁破壊によって薄膜3にナノポア2を開孔し,その後ナノポア2を通過するイオン電流を計測する,という手順である。このように絶縁破壊すると,より高電圧を与えられるため膜の表面状態を変更し長時間維持することが可能になり,またナノポア2の開孔と陽イオン吸着防止構造8の形成を同時に行うことができるため,より簡易にナノポア2と陽イオン吸着防止構造8とを有する薄膜を製作できる。
上記で述べたような手順で,薄膜に対して電圧印加によるエネルギーを与えることで表面状態を変えてイオン吸着防止構造を形成する場合には,表面状態変更時に与えた電圧の向きと,ナノポアを通過するイオン電流計測時における電圧の向きは一致させることが望ましい。具体的には,例えば図7(B)において第二の電極14の電位を0[V]と基準としたとき,第一の電極13に対して正の電圧+V1[V]を与えることで膜の表面にエネルギーを与えた場合には,ナノポア2を通過するイオン電流を計測する際にも第一の電極13に対して正の電圧+V2[V]を与えることでイオン電流を計測することが望ましい。
図8(B)のように絶縁破壊で薄膜にナノポアを開孔する場合でも同様であり,第二の電極14の電位を0[V]と基準としたとき,第一の電極13に対して正の電圧+V1[V]を与えることで絶縁破壊によって薄膜にナノポアを開孔した場合には,ナノポア2を通過するイオン電流を計測する際にも第一の電極13に対して正の電圧+V2[V]を与えることでイオン電流を計測することが望ましい。
また電圧の向きを逆にして第一の電極13を負の電圧としてもよく,例えば図7(B)において第二の電極14の電位を0[V]と基準としたとき,第一の電極13に対して負の電圧−V1[V]を与えることで膜の表面にエネルギーを与えた場合には,ナノポア2を通過するイオン電流を計測する際にも第一の電極13に負の電圧−V2[V]を与えてイオン電流を計測することが望ましい。
このように表面状態変更時,すなわちイオン吸着防止構造形成時に与えた電圧の向きと,ナノポア2を通過するイオン電流計測時における電圧の向きを一致させる理由を以下で説明する。例えば第一の溶液21に二族元素を含むCaCl2水溶液を用いることとし,図7(B)において第二の電極14の電位を0[V]と基準として,第一の電極13に対して正の電圧+V1[V]を与えることで膜の表面にエネルギーを与えた場合には,溶液中に電離している正に帯電したCa2+イオンは第二の電極14側へと引き付けられるため,図7(B)に図示した薄膜3の上側において反応が進みやすく,薄膜3の下側に比べて上側の方が陽イオン吸着防止構造8のロバスト性が向上する。
その後,ナノポア2を通過するイオン電流を計測する際に,仮に第一の電極13に対して負の電圧−V2[V]を与えたとすると,薄膜3の上側に吸着したCa2+イオンが第一の電極13に引き付けられて脱離することで陽イオン吸着防止構造8が失われ,RTNが発生しやすくなる。また第一の電極13に対して負の電圧−V2[V]を与えたとき,薄膜3の下側では溶液中に含まれる陽イオンが第一の電極13側へと強く引き付けられるのに対して,薄膜3の下側の陽イオン吸着防止構造8のロバスト性は薄膜3上側と比べて低いために,RTNが発生しやすくなる。そのため,上記の例ではナノポア2を通過するイオン電流を計測する際には,第一の電極13に対して正の電圧+V2[V]を与えることが好ましい。
第一の溶液21の候補としてはMg,Ca,Sr,Baなどの二族元素を含む溶液又は酸性溶液であり,前者は二族元素を,後者はプロトンをナノポア2表面に吸着させる方法である。第一の溶液21に含まれるアニオンとしては,電離するアニオン類を用いることができ,電極の材質との相性によって選定することが好ましい。例えば電極材質としてハロゲン化銀を用いた場合,I,Br,Clなどのハロゲン化物のイオンをアニオンとして用いることが好ましい。またアニオンは,グルタミン酸イオン等に代表される有機アニオン類であってもよい。
陽イオンを吸着させる場合には,陽イオン交換樹脂等において一般に選択係数が大きいとされる陽イオンを用いることが望ましく,例えば二族元素のイオンなどを用いるとよい。このうち特に選択係数が大きなカチオンとしてCa,Sr,Baなどを選ぶと,より膜表面に吸着しやすくRTNを低減できる。このような二族元素のカチオンなどを溶液中に含ませる場合には,その濃度は濃いことが望ましい。下限値は10mMであればRTNの低減効果が得られることが判明しており,10mM以上飽和濃度以下に調整することが望ましい。
プロトンを吸着させる場合には,RTN低減効果が高まるpH5.5以下の酸性溶液を用いることが好ましく,pH1などのより低いpHに調整することがより望ましい。すなわち,第一の溶液21に含まれる[H]濃度は10-5.5M以上飽和濃度以下とするのが好ましい。このとき二族元素を含む酸性溶液であってもよく,あるいはアルカリ金属元素も二族元素も含まないHClなどの溶液であってもよい。
一方で,第一の溶液21を用いてRTNを低減してDNAなどの生体ポリマを計測する場合,溶液中に二族元素が含まれるとDNAなどの生体ポリマと強く相互作用してTm値が大きく変動することが知られており,立体構造を形成してDNAなどの生体ポリマがナノポアを通過する挙動が変化したり,ナノポアを通過できなくなる可能性がある。またpHが小さい酸性溶液はDNAの脱プリン反応などを引き起こすことが知られており,もとの構造を維持できなくなる。
そのため,ナノポア壁面に第一の溶液を接液させた後,第一の溶液に対して一族元素のイオンを含む第二の溶液を導入し,第一の溶液の濃度を下げることが望ましい。このように新たに第二の溶液を導入しても,一族元素の選択係数が小さいために陽イオン吸着防止構造は維持されて一族元素の吸着を防ぎ,RTNを抑制した状態を維持できる。第二の溶液に含まれる一族元素の代替カチオンには,有機物から構成される有機カチオン類を用いることができ,例えばアンモニウムイオンなどに代表される電離するカチオンを用いることもできる。
第一の溶液がpH5.5以下の酸性溶液である場合には,第二の溶液は第一の溶液と比較してpHが高い必要があり,pH5.5以上であるとよい。pH値の上限は以下のように決定する。測定溶液のpH値の上限は,デバイスの耐性限界及び測定対象とする生体ポリマの耐性限界によって決定される。半導体ナノポアにおいて典型的に用いられるシリコンウェハーを基板として用い,シリコンのエッチングが開始されるpH14付近がデバイスの耐性限界である。このようなエッチングレートは既知である(Lloyd D. Clark, et al. Cesium Hydroxide (CsOH): A Useful Etchant for Micromachining Silicon, Technical Digest, Solid-State Sensor and Actuator Workshop, IEEE, 1988.)。なお,しばしば薄膜材質として採用される窒化ケイ素は,高アルカリ領域のpHにおいてもエッチングされることはないが,土台としてのシリコン又は酸化ケイ素がエッチングされていくため,pHの上限値としては14を設定することが好ましい。すなわち,第二の溶液に含まれる[H]濃度は10-14M以上10-5.5M以下とするのが好ましい。他の半導体材質では,その材質のデバイス耐性限界によって同様に決定される。
一方,生体ポリマ(特にDNAなど)は,溶液中の水酸化ナトリウム(NaOH)が0.3M以上の場合に,長鎖が切断されることが確認されている。濃度依存性があることが分かっている,カチオン種の異なる水酸化物溶液でも同様の結果となる。生体ポリマがDNAの場合,pH12以下にすることが望まれる。ところで,測定溶液は,大気に触れていると大気中の二酸化炭素と反応して徐々にpHが酸性側へと移行してしまう現象が発生する。この二酸化炭素の影響を少なくするためには,pHを,初期状態からより高いアルカリ側へ設定しておくか,又は,pH調整剤の濃度を高濃度にすればよい。pH調整剤の濃度は高いほど好ましく,好ましくは50mM以上,より好ましくは100mM以上である。
また第二の溶液に含まれる一族元素の種類は,溶媒として水を用いた場合に例えば1mol/kgの塩化アルカリ水溶液の電気伝導度は25℃において,LiCl:7.188Sm-1,NaCl:8.405Sm-1,KCl:10.84Sm-1,RbCl:11.04Sm-1,CsCl:10.86Sm-1であることが知られていることから,電気伝導度が高いK,Rb,Csなどが好ましく,より好ましくは水への溶解度が最も大きいため濃度を大きくすることで電気伝導度を増幅できるCsである。一方で一族元素のうちKとRb,特にCsは選択係数が大きく,RTNが増幅しやすいというトレードオフが懸念されていた。しかし,第一の溶液からCsを含む第二の溶液へ置換するという手順により,生体ポリマ解析時の信号量の増幅とRTNの低減を両立できる。
イオン濃度については,信号対ノイズ比の観点から,電解質濃度の下限を設けることが好ましい。Venta, K., et al., Differentiation of Short, Single-Stranded DNA Homopolymers in Solid-State Nanopores, ACS Nano, 7, 4629 (2013)によると1Mのイオンを含んだ溶液下では塩基間の封鎖電流量差が500pA程度であることが明らかとなっている。この封鎖電流量差はナノポアの電気伝導度に正に依存し,溶媒として水を用いた場合,Ralph M. M. Smeets, et al. Salt Dependence of Ion Transport and DNA Translocation through Solid-State Nanopores, Nano Lett. 6, 89, 2006に開示されているように,電気伝導度は1mM程度までは電解質濃度に概ね線形に応答することが知られる。したがって,電解質濃度を1桁減少すると封鎖電流量差も1桁減少する。そのため,塩基間の封鎖電流量差は,100mMでは50pA,10mMでは5pA,1mMでは0.5pAと減少していく。一方で,計測時に発生する高周波の電流ノイズとしてはデバイス由来のノイズとアンプ由来のノイズの2種類に大別することができるが,容量を低減する等の対策によってデバイス由来のノイズを低減してもアンプ由来のノイズ以下にまで低減することは困難である。したがって,アンプ由来ノイズによって電解質濃度の下限は定義されるが,Adrian Balan, et al. Improving Signal-to-Noise Performance for DNA Translocation in Solid-State Nanopores at MHz Bandwidths, Nano Lett. 14, 7215, (2014)に開示されているように,しばしば用いられる周波数域(5〜10kHz)において,アンプ由来ノイズは約1pAである。よって,統計的に有意な信号対ノイズ比として5がしばしば定義されることから,電解質濃度の下限は10mMである必要がある。一方,電解質濃度の上限を妨げる要件はなく,飽和濃度まで許容することができる。すなわち,測定溶液のイオン濃度は,10mM以上,飽和濃度以下となる。
第二の溶液の導入手順については,第一の溶液が含まれた状態で薄膜にエネルギーを与えることによって膜の表面状態を大きく変更できるため,第一の溶液中の薄膜に0.1V以上などの電圧を印加した後に第二の溶液を導入することが望ましい。より好ましくは,第一の溶液に接液した状態で薄膜に高電圧を印加して絶縁破壊によりナノポアを開孔した後に,第二の溶液を導入するという手順であり,この場合,より高電圧を与えられるため膜の表面状態を効果的に変更して陽イオン吸着防止構造を形成でき,長時間RTNの抑制が可能になる。
第二の溶液を導入する際には第一の溶液の濃度を十分に低減させることが望ましく,第二の溶液導入後の第一の溶液の濃度は20%以下になることが好ましく,より好ましくは10%以下であり,具体的には0.01%〜1%などであるとよい。導入手順の詳細については,例えば第一の溶液の溶液量を100μL程度にしておき,第二の溶液を1000μL程度導入すると,十分に第一の溶液の濃度を低減させることができる。
図9は,第二の溶液で第一の溶液を置換する方法の例を示す説明図である。例えば溶液槽の容量を100μL程度としておき,図9に示すように溶液槽に注入口31a及び排出口31bを設ける。第一の槽11及び第二の槽12に第一の溶液21を注入し,薄膜3及びナノポア2の壁面を第一の溶液21に接液させて陽イオン吸着防止構造8を形成した後,ピペット32等によって第二の溶液22を注入口31aから導入する。この操作により第一の溶液21を排出口31bから溢れさせることができるため,溢れた溶液を回収すると,より効率よく第一の溶液21の濃度を低減できる。あるいは,もともとは100μL入っていた溶液槽内の第一の溶液21を回収して10μL程度まで減少させた後に第二の溶液22を1000μL程度導入すると,より効率よく第一の溶液21の濃度を低減できる。第一の溶液21を全て回収してから第二の溶液22を流し込んでもよく,この方がより第一の溶液21の残存を防止できる。一方で,溶液を導入する際にナノポア2近傍では気泡が発生しやすいため,ナノポア2の近傍の第一の溶液21を残して第二の溶液22を流し込んだ方が,第二の溶液22導入時の気泡の発生を抑制できる。また第一の溶液21が十分に第二の溶液22に置換されたかを判別できるように,溶液槽に濃度を計測できるモニタを有していてもよい。
二族元素のイオンを含むあるいは酸性の第一の溶液は,多量に用意せずに済むように第一の槽11及び第二の槽12のうち一方の槽にのみ満たされており,他方の槽は第一の溶液21とは電解質の種類や濃度が異なる第三の溶液で満たしてもよい。このように片側の槽にのみ第一の溶液を満たしても,ナノポアの壁面との接液により陽イオン吸着防止構造8を設けることができるため,RTNの低減効果が得られる。またこのような配置にすると,特にナノポアをアレイ化した構造において,多量に第一の溶液を用意せずに済み,溶液の価格が第一の溶液>第三の溶液である場合には低コスト化できるといった利点がある。より好ましくは,第三の溶液には一族元素のイオンが含まれており,第一の溶液と第三の溶液を薄膜及びナノポアの壁面に接液させた後,第一の溶液へ第二の溶液を導入するのがよい。
図10は,上記手順を実施するに適した計測装置の構成例を示す断面模式図である。第一の槽11には二族元素のイオンを含む溶液あるいは酸性の溶液である第一の溶液21が満たされ,第二の槽12には一族元素のイオンを含む第三の溶液23が満たされている。この場合,Cs等の一族元素のイオンを含む第二の溶液22は,陽イオン吸着防止構造8を形成した後で第一の槽11にのみ導入すればよい。第二の槽12に満たされている第三の溶液23には既に一族元素が含まれているため,新たに第二の溶液22を導入する必要がない。このような構成にすると,溶液の導入機構を第一の溶液を満たす第一の槽11にのみ設ければ済むため,装置構成が簡単になる。
より好ましい手順は,第一の槽11に二族元素のイオンを含む溶液あるいは酸性の溶液である第一の溶液21が満たされ,第二の槽12には一族元素のイオンを含む第三の溶液23が満たされている状態で,薄膜3に高電圧を印加して絶縁破壊によりナノポア2を設けた後に,第一の槽11にのみ第二の溶液22を導入するという手順である。この場合,薄膜3により高電圧を与えられるため効率的に膜の表面状態を変更して陽イオン吸着防止構造8を形成し,長時間RTNの抑制が可能になる。このように膜に対して電圧印加によるエネルギーを与えることで表面状態を変える場合には,表面状態変更時に与えた電圧の向きと,ナノポア2を通過するイオン電流計測時における電圧の向きは一致させることが好ましい。
具体的な計測手順の一例を挙げると,絶縁破壊によりナノポア2を開孔する際に,第一の槽11には第一の溶液21を満たし,第二の槽12には第三の溶液23を満たして,第一の槽11に設けられた第一の電極13の電位を0[V]と基準としたとき,第二の槽12に設けられた第二の電極14に対して正の電圧+V1[V]を与えることで膜の表面にエネルギーを与える。この後,ナノポア2を通過するイオン電流を計測する際には第一の槽11へ第二の溶液22を導入し,第二の電極14に対して正の電圧+V2[V]を与えることでイオン電流を計測することが望ましい。また生体ポリマの封鎖電流を取得する際には,第一の槽11に生体ポリマ51を含ませることが望ましい。
またより好ましくは,第三の溶液23を用いる上記の構成を,ナノポア2をアレイ化した構造において適用するとよい。図11は,ナノポアアレイを備える計測装置の構成例を示す断面模式図である。第一の槽11と第二の槽12は,複数のナノポア2が形成された薄膜3によって分離されている。第一の槽11は複数のナノポア2に対して1つの共通槽を構成する。一方,第二の槽12は,個々のナノポアに対応する複数の個別槽に分割されている。共通槽には1個の第一の電極(共通電極)13が配置され,各個別槽には個別電極が1個ずつ配置される。
ナノポアアレイでは,図11に示すように薄膜3の各ナノポア2に対して独立して設けられた個別槽に各々満たされる溶液と,各ナノポア2に対して共通の共通槽に満たされる溶液とが存在する構成が考えられる。このとき各ナノポア2に個別に満たされる溶液は互いの電位が異なるように配置されることが望ましく,各個別槽は絶縁性の隔壁41によって互いに仕切られている。この絶縁性の隔壁41の素材は固体,液体,気体のいずれであってもよく,例えば固体である場合にはPMMAなどの樹脂で仕切られており,好ましくは耐薬品性の高いポリイミドやテフロン(登録商標)などであるとよい。また隔壁41が液体である場合であって,各ナノポア2に個別に満たされる溶液の溶媒が水である場合には,例えば水と混合しない有機溶媒などを用いるとよい。また隔壁41を空気やN2などの気体にすることで絶縁されていてもよい。
このように共通の溶液を設ける構成は,ナノポア2の上下に満たす溶液を全て個別溶液とする構成と比較して,溶液の導入機構が簡単になるという利点があり,また共通の溶液にのみ生体ポリマを含ませるだけで,全てのナノポアで同時に生体ポリマの封鎖電流を取得できるという利点がある。このとき図11に示す構成のとおり,隔壁41で仕切られた個別槽に満たす個別溶液を第三の溶液23とし,共通槽に満たす共通溶液を第一の溶液21とすることで,第一の溶液21にのみ第二の溶液22を導入すればよく,生体ポリマの封鎖電流を取得する際には第二の溶液22に生体ポリマを含ませることが望ましい。
また生体ポリマ解析時の信号量を大きくするためには,第三の溶液に含まれる一族元素はCsであることが望ましい。Csイオン濃度については,信号対ノイズ比の観点から,電解質濃度に下限を設けることが好ましい。本実施例の場合,電解質濃度の下限は10mMである必要がある。一方,電解質濃度の上限を妨げる要因はなく,飽和濃度まで許容することができる。すなわち,測定溶液のCsイオン濃度は,10mM以上,飽和濃度以下となる。好ましくは0.1M以上飽和濃度以下となる。図11に示すようなナノポアアレイ構造では,計測のスループットを飛躍的に上昇させることができるという利点がある。このナノポアアレイ構造では,ナノポア2を規則的に配列することが好ましい。複数のナノポアを配置する間隔は,使用する電極,電気測定系の能力や半導体プロセスの加工限界などに応じて,0.1μm〜10μm,好ましくは0.5μm〜4μmとすることができる。
続いて,上記で述べた第一の溶液へ第二の溶液を導入する手順を含んだ電流計測を実現するための装置の構成例を詳しく説明する。
図12は,第一の溶液21へ第二の溶液22を導入する機構を有する計測装置の構成例を示す概略図である。少なくとも第一の溶液21が導入される溶液槽には第二の溶液22を導入する注入口31aがあり,第二の溶液22を導入することによって第一の溶液21を外部に排出できるように排出口31bが設けられているとよい。排出口31bからは排出用流路102が設けられていてもよく,さらに排出用流路102が廃液槽103へと繋がっていてもよい。また第二の溶液22を導入する注入口31aには注入用流路104が繋がっているとよく,注入用流路104は第二の溶液22を格納する第三の槽105に繋がっていることが望ましい。
また,第二の溶液22を輸送する流体制御部101を有していることが望ましい。流体制御部101は具体的にはポンプによって送り出す構成になっていてもよく,バルブや弁で構成されていてもよい。また流体制御部101は注入用流路104,排出用流路102,第三の槽105,廃液槽103のいずれに設けられていてもよく,例えば排出用流路102,廃液槽103に設けて,廃液槽103や排出用流路102を陰圧にすることで,第二の溶液22を輸送する機構になっていてもよい。流体制御部101は例えば10mL/s以下の流量で溶液を流し込む。好ましくは100μL/s以下,より好ましくは10μL/s以下の比較的ゆっくりした流入速度で流し込むことで,薄膜3近傍の乱流や水圧によって薄膜3が壊れることを防止できる。この流体制御部101は,第二の溶液22を任意のタイミングで第一の溶液21を有する溶液槽へと導入できるようにパソコン17などと接続されて制御されていてもよい。
図12の例では,薄膜3の両側に満たされている溶液をいずれも第一の溶液21としているため,第二の溶液22を導入する機構は薄膜3の両側に導入する機構であることが望ましい。より好ましくは,薄膜3の片側,例えば第一の槽11にのみ第一の溶液21を満たし,第二の槽12には第三の溶液23を満たす構成であるとよい。この構成であれば,第三の溶液23に第二の溶液22を導入する機構は無くてもよいという利点があり,装置機構が簡単になる。個別に満たされる第三の溶液23は,好ましくは一族元素を含み,より好ましくはその一族元素がCsであるとよい。
図13は,第一の溶液21へ第二の溶液22を導入する機構を有する計測装置の他の構成例を示す概略図である。本例のように第一の溶液21を格納する第四の槽106を用意しておき,第二の溶液22と同様に第一の溶液21を導入する機構を有していることがより望ましい。
この構成が好ましい理由を以下で説明する。例えば本実施例の計測システムをあるユーザーのもとで用いるとき,図12に示した構成にすると,薄膜3の両側に溶液を導入しておき,薄膜3の両側の液槽に溶液が満たされた状態で販売元からユーザーのもとに届ける場合がある。しかし,薄膜3の両側の液槽に溶液を満たした状態で出荷又は長時間放置されると,薄膜3の両側を満たす溶液の電位差によって薄膜3に孔が開くなどの問題が生じたり(Matsui, K., Yanagi, I., Goto, Y. & Takeda, K. Prevention of dielectric breakdown of nanopore membranes by charge neutralization. Sci. Rep. 5, 17819 (2015)),満たした溶液によって薄膜3が酸化又はエッチングされて孔が開くなどの問題が生じる。そのため,図示の例のように薄膜3の片側にのみ溶液を導入した状態や,いずれの槽にも溶液が導入されていない乾燥状態で出荷することがより好ましい。この場合,溶液を薄膜3の片側あるいは両側に導入するのはユーザーのもとで行うことになる。そのため,図13のように第一の溶液21を格納する第四の槽106を用意することで,ユーザーのもとで薄膜3の両側に溶液を満たす機構を実現できるようになる。第三の槽105と注入用流路104の間及び第四の槽106と注入用流路104の間には,それぞれ流体制御部101a,101bが設けられる。
図14は,本実施例の計測装置の他の構成例を示す模式図である。ナノポア2を有する薄膜3は,スループットを向上できるように図14のようにナノポア2がアレイ化されていることが望ましい。第二の槽12に設けられた複数の個別槽に個別に満たされている溶液は第一の溶液21などとしてもよいが,好ましくは第三の溶液23を満たすとよい。この構成であれば,第三の溶液23に第二の溶液22を導入する機構は無くてもよく,装置機構が簡単になる。個別槽に満たされる第三の溶液23は,好ましくは一族元素を含み,より好ましくはその一族元素がCsであるとよい。
図14に示した計測装置に溶液を導入する手順の一例について説明する。まず図14に示した状態から,流体制御部101aを用いて第四の槽106から注入用流路104を介して第一の槽11まで第一の溶液21を導入する。このとき第一の溶液21は,排出用流路102又は廃液槽103にまで導入されてもよい。この操作により薄膜3のナノポア2は第一の溶液21に接液し,複数のナノポア2の壁面にイオン吸着防止構造が形成される。ここで第一の槽11に配置された第一の電極(共通電極)13と,第二の槽12を区画した複数の個別槽に配置された複数の第二の電極(個別電極)14の間に電圧を印加することで,イオン吸着防止構造を効率的に形成するのが好ましい。その後,流体制御部101bを用いて第三の槽105から注入用流路104を介して第一の槽11まで第二の溶液22を導入する。このとき,第一の槽11を満たしていた第一の溶液21は,排出用流路102を介して廃液槽103に導入され,第一の槽11の内部は大部分が第二の溶液22で置換される。このとき第二の溶液22は,排出用流路102又は廃液槽103にまで導入されてもよい。
以上では第三の槽105と第四の槽106を有し,かつアレイデバイスを有する計測装置における溶液導入手順を示したが,例えば図12,図13に示した計測装置において,本手順と同様の手順で溶液を導入してもよい。また図14を用いて説明した溶液導入手順は単なる一例であり,必ずしも上記の手順によらなくてもよい。例えば第一の溶液21や第二の溶液22を導入する量などは上記の限りではない。また図14の例では第一の溶液21が導入される前にナノポア2が開孔されていたが,ナノポア2を有していない薄膜3に対して第一の溶液を導入して,絶縁破壊によってナノポア2を開孔することがより好ましい。
第一の槽11,第二の槽12,第三の槽105,第四の槽106,廃液槽103などの溶液槽の素材は例えばPMMAであってもよく,耐薬品性にすぐれたテフロンなどで構成されていてもよい。各溶液槽の容量は例えば100mL以下のものを使用する。注入用流路104や排出用流路102などの流路の素材は例えばPMMAであってもよく,耐薬品性に優れたテフロンなどであってもよい。注入用流路104や排出用流路102としては,例えば全長1m以下で直径1cm以下のものを使用する。
第一の溶液21,第二の溶液22,第三の溶液23などの溶液は,使用手順や使用量などを記載した説明書と共に提供され得る。溶液の溶媒としては,生体ポリマを安定に分散可能であり,かつ電極が溶媒に溶解せず,電極との電子授受を阻害しない溶媒を用いることができる。例えば,水,アルコール類(メタノール,エタノール,イソプロパノールなど),酢酸,アセトン,アセトニトリル,ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。生体ポリマとして核酸を測定対象とする場合,最も好ましい溶媒は水である。各溶液は,各溶液槽に液体が満たされた状態で提供する形態であってもよいし,各溶液を封入したパックや液槽が提供され,第一から第四の槽に必要に応じて補充や交換をする形態であってもよい。また各溶液は,即時使用可能な状態(液体)で提供されてもよいし,使用時に適当な溶媒で希釈するための濃縮液として提供されてもよいし,あるいは,使用時に適当な溶媒で再構成するための固形状態(例えば粉末など)であってもよい。そのような溶液の形態及び調製は,当業者であれば理解することができる。
電流を計測するシステムと溶液を導入するシステムとは,必ずしも同一の装置内に設けられている必要はなく,例えば電流計測装置と溶液導入装置とが分離されていて個別の装置として提供されてもよい。
以下に,本実施例の効果を検証した実験例を示す。
前述のように,RTNはナノポアを有する壁面及びその近傍におけるイオンの脱離吸着現象に由来すると仮定すると,例えば一般にナノポアで用いられるSiN薄膜では,RTNがシラノール基表面での陽イオンの脱離吸着によって生じる現象に由来すると考えられる。一般にシラノール基の選択係数はLi<Na<K<Rb<Cs<二族元素(Ca,Ba等)となることが知られており,Liなどのシラノール基に吸着しづらいカチオン種ではシラノール基表面からの脱離状態で安定化し,一方でCaやBaなどのシラノール基に吸着しやすいカチオン種ではシラノール基表面に吸着した状態で安定化すると考えられる。
図15は,一族元素を含む溶液でのベース電流の例を示す図である。図8に示した計測装置の第一の槽11及び第二の槽12にそれぞれ濃度1MのLiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsClを含む中性溶液を満たし,膜厚5〜10nm程度のSiN薄膜に絶縁破壊により1〜10nm程度のナノポア2を開孔した。その後,第一の電極13と第二の電極14の間に0.2Vの電圧を印加し,ナノポアを通過して流れるイオン電流を計測した。図15の結果から,Li<Na<K<Rb<Csの関係でRTNが増幅していくことが判明し,本仮説を支持することが分かった。
ところでRTNを評価する際にはベース電流の波形だけでなく,パワースペクトル密度も用いられることがある。ナノポアシーケンサで報告されているRTNは一般に複数の準位を遷移する場合が多く,2準位を遷移するRTNが多数含まれた複合RTNに該当する。2準位遷移するRTNのパワースペクトル密度は,対数表示において1/f2に比例して減衰するローレンツ型であることが知られており,1/f2ノイズと呼ばれている。一方で複合RTNでは様々な時定数を持った1/f2ノイズが重ね合わさった状態で観測されるため,パワースペクトル密度は複数のローレンツ曲線の重ね合わせになり,対数表示において1/fα(0<α<2,α≒1)に比例して減衰し,下記の式で表せる(Heerema S. J., et al., 1/f noise in graphene nanopores, Nanotech. 26(7), 074001 (2015))。
[式1]
S(f)=Clf・I2/fα
f:周波数
S(f):パワースペクトル密度
lf:低周波ノイズ係数
I:電流値
α:係数
このときClfを比較することでノイズ量を評価でき,Clfが大きいほどノイズが大きいことを意味する。よって図15に示したベース電流波形から図16のようなパワースペクトル密度を取得し,パワースペクトル密度からClf=S(1Hz)/I2を算出することで,ノイズ量を定量的に評価できる。
図17は,各種元素で計測したときのClf値の実験結果を示す図である。図17では,中性に調整した1M LiCl,1M NaCl,1M KCl,1M RbCl,1M CsCl,1M MgCl2,1M CaCl2を用いてSiN薄膜に絶縁破壊によりナノポアを開孔した後のClfを実験回数N=3回取得し,その平均値を比較した。結果,一族元素についてはClfがLi<Na<K<Rb<Csとなることが判明し,またCsと比較してCaやBaなどの二族元素ではClfが減少することが判明した。この結果は我々によるRTNの仮説を支持するものである。
またDNA計測溶液は,中性に調整された一族元素を含む溶液を用いることが一般的であり,特に含有する一族元素がK,Rb,Csであるときに電気伝導度が高いことが判明していて,中でもCsは水に対する溶解度も高く,濃度を大きくすることでより電気伝導度を高めることができる。しかしながら,図15や図17に示すとおり計測溶液に含まれるRTNはLi<Na<K<Rb<Csとなることが判明した。すなわち従来の手法ではCsによって信号量の増幅を実現するとRTNが増幅するという二律背反があり,本実施例のRTN低減法によって初めて両立されることを確認できた。
続いて,RTNの発生メカニズムの仮説が正しいとすると,pHが低い条件では飽和に存在するHがシラノール基に吸着した状態で安定化すると考えられる。そこで1M CsClのpHを1〜8の範囲で変えてSiN薄膜に絶縁破壊によりナノポアを開孔した後のClfを実験回数N=3回取得し,その平均値を比較した。図18は,pHを変えて計測したときのClf値の実験結果を示す図である。図18に示されている通り,pH7〜8程度の中性条件と比較して,ClfはpH5.5以下で大幅に減少することが判明した。この結果はやはり上記の仮説を支持するものである。
次に,RTNが低減する条件についてまとめると,図17及び図18から二族元素又は酸性溶液でRTNが減少することが分かる。図19は,上記で述べた二族元素である1M MgCl2,1M CaCl2,1M SrCl2,1M BaCl2又は酸性溶液である1M CsCl(pH1)でナノポアを開孔したときのベース電流の例を示す図である。ベース電流測定時の印加電圧は0.3Vである。図19から,確かにRTNの低減効果があることが電流波形からも確かめることができた。二族元素の中で比較すると,MgはMg,Ca,Sr,Baの4種類の中ではシラノール基の選択係数が小さくRTNは発生しやすい傾向にあるため,Ca,Sr,BaであればよりRTNを低減できる。また酸性溶液でよりRTNを低減するには,図18で示したとおりpHが小さくなるほどClfが小さくなる傾向があり,pH5.5以下の範囲でより小さいpHを選ぶことが好ましい。
図20は,図19に示した二族元素のイオンを含む溶液又は酸性溶液を介してSiN膜に高電圧を与え,絶縁破壊によってナノポアを形成した後に,1M CsCl(pH8)の溶液導入後のベース電流を示している。ベース電流測定時の印加電圧は0.3Vである。図20に示すとおり,RTNを発生させやすいCsを導入した後もRTNを抑制していることから,ナノポア壁面を二族元素又はHで覆い,Csなどの他のカチオン種の脱離吸着を防止できることが判明した。以上の実験を通じて,RTNの発生メカニズムの検証を行うとともにその抑制方法が判明した。
図21は,二族元素でRTNを低減した場合における,二族元素の濃度の下限について検証した結果を示す図である。図21は,CaCl2を含まない1M CsCl,10mM CaCl2を含む1M CsCl,100mM CaCl2を含む1M CsCl,1M CaCl2を含む1M CsCl,という4つの条件で絶縁破壊によってナノポアを開孔し,その後CaCl2を含まない1M CsClの溶液を導入した後のベース電流を示したものである。ベース電流測定時の印加電圧は0.3Vである。この結果から明らかなように,二族元素を溶液中に含ませる場合には,10mM以上含むとRTN抑制効果があり,二族元素の濃度は10mM以上飽和濃度以下に調整することが望ましい。
図22は,印加電圧の向きについて検証した結果を示した図である。図22(A)はCaCl2の溶液を介してSiN膜に正の高電圧(+5〜10V)を与えて絶縁破壊によってナノポアを形成した後に,正電圧(+0.2V)及び負電圧(−0.2V)を与えたときのベース電流を示している。ここで印加電圧の向きは,正電圧の場合にはナノポア形成時と同じ向き,負電圧の場合にはナノポア形成時と逆向きである。図22(A)に示すとおり,負電圧印加時と比較して正電圧印加時に,よりRTNの発生を抑制できることが判明した。また図22(B)はCaCl2の溶液を介してSiN膜に正の高電圧(+5〜10V)を与え,絶縁破壊によってナノポアを形成した後に,CsClの溶液を導入し,正電圧(+0.2V)及び負電圧(−0.2V)を与えたときのベース電流を示している。この場合にも,イオン電流計測時の印加電圧はナノポア形成時と同じ向きにすることでRTNの発生を抑制できているのが分かる。この結果から明らかなように,イオン吸着防止構造を形成したときに印加した電圧の方向と,ナノポアを通過するイオン電流計測時における電圧の印加方向は一致させることが望ましいことが判明した。
図23は,薄膜の両側に配置される2つの溶液のうち,第一の溶液を薄膜の片側にのみ配置したときのノイズ低減効果について検証した結果を示した図である。図23は,1M CaCl2の溶液を片側に,1M CsClの溶液をもう一方の側に満たして,絶縁破壊によってナノポアを開孔し,1M CaCl2の溶液を含む溶液槽に1M CsClの溶液を導入してイオン電流を計測したときのベース電流を示している。この結果から明らかなように,第一の溶液を片側にのみ満たした場合でも,ナノポア壁面との接液により陽イオン吸着防止構造8を設けることができるため,RTNの低減効果が得られることが判明した。
図23の実験と同様に第一の溶液を薄膜の片側にのみ配置し,かつ図22の実験と同様にイオン吸着防止構造構成時の印加電圧の方向とナノポアを通過するイオン電流計測時における印加電圧の方向とを一致させ,生体ポリマとしてssDNAを計測した。図24は,このときの実験結果を示した図である。この実験では,絶縁破壊によりナノポアを開孔する際の溶液を,負電圧側を1M CaCl2の溶液,高電圧側(+5〜10V)を1M CsClの溶液とした。ナノポア開孔後には1M CaCl2の溶液を含む溶液槽(負電圧を印加する側)にDNAを含む1M CsClの溶液を導入し,高電圧側に+0.2Vを印加した。このとき図24に示すように,DNAは負に帯電しているため,高電圧側へと泳動されてナノポアを通過して封鎖電流を発生させる。この結果から明らかなように,片側にのみ第一の溶液を満たし,かつイオン吸着防止構造構成時の印加電圧の方向とナノポアを通過するイオン電流計測時における印加電圧の方向とを一致させ,生体ポリマを計測できることが判明した。
図24までの実験では,絶縁破壊によってナノポアを形成する際に第一の溶液を用いることでイオン吸着防止構造を形成しRTNを抑制した。図25は,既に形成されているナノポアに対して第一の溶液を接液させることでイオン吸着防止構造を形成し,RTNを抑制した結果を示す図である。図25(A)はイオン吸着防止構造を設ける前のCsClの溶液で計測しRTNが発生したときのベース電流,図25(B)はCaCl2の溶液を導入してイオン吸着防止構造を形成しRTNを抑制したときのベース電流,図25(C)は再度CsClの溶液を導入しイオン吸着防止構造を維持したままRTNを抑制したときのベース電流である。この結果から明らかなように,イオン吸着防止構造を持たない薄膜に対して,第一の溶液を導入しても,イオン吸着防止構造を構築してRTNを抑制できることが判明した。
以上の実験例では,膜表面にシラノール基を有するSiN膜での実験結果を例示したが,当然のことながら陽イオンの脱離吸着現象はSiN膜に限定されるものではなく,膜の材質がグラフェンなどであってもカルボキシル基表面などで同様に陽イオンの脱離吸着現象によるRTNは発生し,本手法を適用できる。また以上の実験例では,溶液を接液させることによって陽イオン吸着防止構造を設けたが,陽イオン吸着防止構造の形成方法は,例えば薄膜の材料中あるいは表面に二族元素を含ませた炭酸カルシウムや酸化カルシウムやケイ酸カルシウムなどによって形成されていてもよく,あるいはSiNやSiO2などの薄膜の表面に二族元素を含む化合物などを析出させたり,鉱化作用によって炭酸カルシウムなどを化学修飾することによっても製作できる。
なお,本発明は上記した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また,ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり,また,ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また,各実施例の構成の一部について,他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
2 ナノポア
3 薄膜
8 イオン吸着防止構造
11 第一の槽
12 第二の槽
13 第一の電極
14 第二の電極
15 電源装置
21 第一の溶液
22 第二の溶液
23 第三の溶液
41 隔壁
51 生体ポリマ
101 流体制御部
105 第三の槽
106 第四の槽

Claims (26)

  1. 第一の槽と,
    第二の槽と,
    前記第一の槽と前記第二の槽を連通するナノポアを有し,前記第一の槽と前記第二の槽の間に配置されたSiを含む薄膜と,
    前記第一の槽に設けられた第一の電極と,
    前記第二の槽に設けられた第二の電極と,を備え,
    前記ナノポアの壁面は,前記第一の槽及び/又は前記第二の槽に充填される溶液に含まれる第一のイオンの吸着を阻害する第二のイオンが吸着したイオン吸着防止構造を有し,
    前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加することで前記ナノポアを通過するイオン電流を計測する,電流計測装置。
  2. 前記イオン吸着防止構造は前記溶液に含まれる第一のイオンのうち陽イオンが脱離吸着することを防止する,請求項1に記載の電流計測装置。
  3. 前記ナノポアは直径が0.1nm以上100nm以下,長さが0.1nm以上100nm以下である,請求項1に記載の電流計測装置。
  4. 前記第一の槽又は前記第二の槽に被検体である生体ポリマを導入し,当該生体ポリマが前記ナノポアを通過するときのイオン電流の変化を計測する,請求項1に記載の電流計測装置。
  5. Siを含む薄膜に設けられたナノポアの壁面に,当該薄膜によって分離された第一の槽と第二の槽のうち少なくとも一方の槽に導入された二族元素のイオンを含む溶液又は酸性の溶液である第一の溶液を接液して,前記第一の槽及び/又は前記第二の槽に充填される溶液に含まれる第一のイオンの吸着を阻害する第二のイオンが吸着したイオン吸着防止構造を形成する工程と,
    前記第一の槽に設けられた第一の電極と前記第二の槽に設けられた第二の電極の間に電圧を印加して前記ナノポアを通過するイオン電流を計測する工程と,
    を有する電流計測方法。
  6. 前記ナノポアは前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記薄膜を絶縁破壊することによって開孔したナノポアである,請求項5に記載の電流計測方法。
  7. 前記ナノポアを開孔する際,前記第一の槽と前記第二の槽のうち少なくとも一方の槽に前記第一の溶液が満たされている,請求項6に記載の電流計測方法。
  8. 前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記薄膜を絶縁破壊することによって前記ナノポアを開孔するときの電圧の方向と,前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記ナノポアを通過する電流を計測するときの電圧の方向とが一致している,請求項7に記載の電流計測方法。
  9. 前記二族元素がCa,Sr,Baのいずれかである,請求項5に記載の電流計測方法。
  10. 前記二族元素のイオン濃度が10mM以上飽和濃度以下である,請求項5に記載の電流計測方法。
  11. 前記イオン電流を計測する工程の前に,前記第一の溶液が導入された槽に一族元素のイオンを含む第二の溶液を導入する工程を有する,請求項5に記載の電流計測方法。
  12. 前記第二の溶液を導入する前に,前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加する工程を有する,請求項11に記載の電流計測方法。
  13. 前記第二の溶液を導入する前に前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加するときの電圧の方向と,前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記ナノポアを通過する電流を計測するときの電圧の方向とが一致している,請求項12に記載の電流計測方法。
  14. 前記第二の溶液に含まれる一族元素がCsであって,そのイオン濃度が10mM以上飽和濃度以下である,請求項11に記載の電流計測方法。
  15. 前記第一の溶液は前記第一の槽と前記第二の槽のうち一方の槽に導入され,他方の槽には一族元素のイオンを含む第三の溶液が導入される,請求項5に記載の電流計測方法。
  16. 前記第三の溶液に含まれる一族元素がCsであって,そのイオン濃度が10mM以上飽和濃度以下である,請求項15に記載の電流計測方法。
  17. 前記ナノポアは前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記薄膜を絶縁破壊することによって開孔したナノポアであり,
    前記ナノポアを開孔する際,前記第一の槽と前記第二の槽のうち少なくとも一方の槽に前記第一の溶液として酸性の溶液が満たされており,
    前記イオン電流を計測する工程の前に,前記第一の溶液を含む液槽に前記第一の溶液よりも[H]濃度が小さく,かつ一族元素のイオンを含む第二の溶液を導入する工程を有する,請求項5に記載の電流計測方法。
  18. 前記第一の溶液に含まれる[H]濃度が10-5.5M以上飽和濃度以下である,請求項17に記載の電流計測方法。
  19. 前記第二の溶液に含まれる[H]濃度が10-14M以上10-5.5M以下である,請求項17に記載の電流計測方法。
  20. 前記第一の槽及び前記第二の槽には二族元素のイオンを含む溶液又は酸性の溶液である第一の溶液が満たされており,
    一族元素のイオンを含む第二の溶液が入った第三の槽と,
    前記第三の槽と前記第一の槽又は前記第二の槽とを接続する注入用流路と,
    前記第二の溶液を前記第三の槽から前記注入用流路を介して前記第一の槽又は前記第二の槽に注入するための流体制御部と,
    を有する請求項1に記載の電流計測装置。
  21. 一族元素のイオンを含む第二の溶液を入れる第三の槽と,
    二族元素のイオンを含む溶液又は酸性の溶液である第一の溶液を入れる第四の槽と,
    前記第三の槽及び前記第四の槽と前記第一の槽又は前記第二の槽とを接続する注入用流路と,
    前記第一の溶液を前記第四の槽から前記注入用流路を通して前記第一の槽又は前記第二の槽に注入するための第一の流体制御部と,
    前記第二の溶液を前記第三の槽から前記注入用流路を通して前記第一の槽又は前記第二の槽に注入するための第二の流体制御部と,
    を有する請求項1に記載の電流計測装置。
  22. 前記薄膜は前記ナノポアを複数有し,
    前記第二の槽は複数の前記ナノポアのそれぞれに対応する複数の個別槽に分割され,
    前記複数の個別槽には前記第二の電極がそれぞれ設けられ,
    前記複数の個別槽には一族元素のイオンを含む第三の溶液が満たされており,
    二族元素のイオンを含む溶液又は酸性の溶液である第一の溶液を入れる第四の槽と,
    前記第四の槽と前記第一の槽とを接続する注入用流路と,
    前記第一の溶液を前記第四の槽から前記注入用流路を通して前記第一の槽に注入するための流体制御部と,
    を有する請求項1に記載の電流計測装置。
  23. 前記ナノポアは前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記薄膜を絶縁破壊することによって開孔したナノポアである,請求項1に記載の電流計測装置。
  24. 前記第二のイオンがCa,Sr,Baのいずれかである,請求項1に記載の電流計測装置。
  25. 前記ナノポアは前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記薄膜を絶縁破壊することによって開孔したナノポアであり,
    前記ナノポアを開孔する際,前記第一の槽と前記第二の槽のうち少なくとも一方の槽に酸性の第一の溶液が満たされており,
    前記イオン電流を計測する前に,前記第一の溶液を含む液槽に前記第一の溶液よりも[H ]濃度が小さく,かつ前記第一のイオンとして一族元素のイオンを含む第二の溶液が導入され,
    前記第一の溶液に含まれる[H ]濃度が10 -5.5 M以上飽和濃度以下である,請求項1に記載の電流計測装置。
  26. 前記ナノポアは前記第一の電極と前記第二の電極の間に電圧を印加して前記薄膜を絶縁破壊することによって開孔したナノポアであり,
    前記ナノポアを開孔する際,前記第一の槽と前記第二の槽のうち少なくとも一方の槽に酸性の第一の溶液が満たされており,
    前記イオン電流を計測する前に,前記第一の溶液を含む液槽に前記第一の溶液よりも[H ]濃度が小さく,かつ前記第一のイオンとして一族元素のイオンを含む第二の溶液が導入され,
    前記第二の溶液に含まれる[H ]濃度が10 -14 M以上10 -5.5 M以下である,請求項1に記載の電流計測装置。
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