以下に添付図面を参照して、本発明に係る版取外しシステム及び印刷機の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、複数の実施形態がある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機の構成を簡単に説明する。図8は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図、図9は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図、図10は、印刷ユニットにおけるスタックのローラ配列を表す概略図である。
第1実施形態において、図8に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機(以下、単に印刷機と称する。)Pは、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとから構成されている。給紙装置Rは、複数(本実施形態では、5台)の給紙ユニットR1,R2,R3,R4,R5を有し、インフィード装置Iは、複数(本実施形態では、5台)のインフィードユニットI1,I2,I3,I4,I5を有し、印刷装置Uは、複数(本実施形態では、5台)の印刷ユニットU1,U2,U3,U4,U5を有し、ウェブパス装置Dは、1台のウェブパスユニットD1を有し、折機Fは、2台の折ユニットF1,F2を有している。なお、給紙ユニットR1,R2,R3,R4,R5、インフィードユニットI1,I2,I3,I4,I5、印刷ユニットU1,U2,U3,U4,U5の台数は、5台に限定されるものではなく、ウェブパスユニットD1、折ユニットF1,F2は、複数台としてもよい。
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1,R2,R3,R4,R5は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(巻取紙)Wがロール状に巻かれた3個の巻取紙を保持する保持アームを有し、この保持アームを回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。また、この各給紙ユニットR1〜R5は、図示しない紙継装置を有しており、給紙位置で繰り出されている巻取紙が残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙に対して、待機位置にある巻取紙を紙継することができる。
インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1,I2,I3,I4,I5は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1,U2,U3,U4,U5に送り込むウェブWのテンションを調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWのテンションを適正値に安定して維持するようにしている。例えば、各インフィードユニットI1,I2,I3,I4,I5は、インフィードローラ、ダンサローラ、ガイドローラなどを有している。そして、ダンサローラをウェブWの張り方向に付勢することでウェブWのテンションを適正にし、このダンサローラの揺動に応じてインフィードローラの周速を変更し、ウェブWの適正なテンションを維持している。
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1,U2,U3,U4,U5は、ほぼ同様の構成をなし、印刷ユニットU1,U2,U3は、2色刷りが可能であり、印刷ユニットU4,U5は、4色刷りが可能である。但し、印刷ユニットU4,U5は、上下に分割することで、それぞれを2色刷りの印刷ユニットとして使用することができる。印刷ユニットU1,U2,U3,U4,U5は、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有している。
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1,U2,U3,U4,U5に対して設けられている。ウェブパスユニットD1は、ウェブWを縦(ウェブWの天地長手方向、ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断するスリッタD11と、縦裁断したウェブWの走行経路を設定するターンバーD12と、ウェブWにおける天地長手方向における搬送位置を調整するコンペンセータD13などを有している。
折機Fにて、折ユニットF1,F2は、ほぼ同様の構成をなしている。ウェブパスユニットD1から複数のウェブWが重ねられて導入されると、折ユニットF1,F2は、それぞれウェブWを縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。
次に、印刷装置Uにおける印刷ユニットU5について詳細に説明する。なお、他の各印刷ユニットU1〜U4もほぼ同様の構成となっている。
印刷ユニットU5は、図9に示すように、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットとなっている。この印刷ユニットU5は、ウェブWの搬送方向が鉛直方向における上方となっており、下から上に向かって、墨(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)ごとの4つのスタック21,22,23,24が配置されて構成されている。各スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列となっている。
各スタック21,22,23,24は、左右に対向してブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで対接可能であり、各ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bに版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接している。そして、各スタック21,22,23,24は、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられている。また、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられている。
この場合、スタック21,23は、ブランケット胴31a,31b,33a,33bと版胴41a,41b,43a,43bがハの字形状に配列され、スタック22,24は、ブランケット胴32a,32b,34a,34bと版胴42a,42b,44a,44bが逆ハの字形状に配列されている。そして、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bにて、外周面に異なる絵柄を印刷する複数(例えば、最大で4枚)の刷版が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に並べて装着可能となっている。この場合、鉛直方向における上方に搬送されるウェブWの搬送経路に対して、左側が表面印刷を行う表面印刷ユニットであり、右側が裏面印刷を行う裏面印刷ユニットである。
ここで、上方側から2段目に配置されるスタック23について説明する。
スタック23は、図10に示すように、ブランケット胴33a,33bと、版胴43a,43bと、インキ供給装置53a,53bと、湿し装置63a,63bを有している。このインキ供給装置53a,53bは、インキ元ローラ71a,71bと、インキつぼを構成するインキキー72a,72bと、インキ受渡しローラ73a,73bと、インキ練ローラ74a,74bと、インキ往復ローラ75a,75bと、インキ練ローラ76a,76bと、インキ往復ローラ77a,77bと、2つのインキ着ローラ78a,78b,79a,79bから構成されている。また、湿し装置63a,63bは、水ライダローラ81a,81bと、水往復ローラ82a,82bと、水着ローラ83a,83bとから構成されている。
インキ供給装置53a,53bは、インキつぼ方式であって、1つのインキ元ローラ71a,71bに対して複数のインキキー72a,72bが幅方向に沿って配置されて構成されている。そして、インキ元ローラ71a,71b及びインキキー72a,72bは、予め設定された所定の流動性(粘度)を有するインキを貯留することができると共に、インキキー72a,72bを開放することで、所定量のインキを送り出すことができる。このインキ元ローラ71a,71bは、表面が金属により形成され、図示しないフレームに回転自在に支持され、後述する駆動装置により駆動回転可能となっている。
インキ受渡しローラ73a,73bは、インキ元ローラ71a,71bのインキを受け渡すものであって、表面が金属または樹脂により形成され、インキ元ローラ71a,71bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ練ローラ74a,74bは、インキ受渡しローラ73a,73bから受け渡されたインキを練るものであって、表面がゴムにより形成され、インキ受渡しローラ73a,73bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ往復ローラ75a,75bは、インキ練ローラ74a,74bにより練られたインキを幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、インキ練ローラ74a,74bに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
インキ練ローラ76a,76bは、インキ往復ローラ75a,75bから受け渡されたインキを練るものであって、表面がゴムにより形成され、インキ往復ローラ75a,75bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ往復ローラ77a,77bは、インキ練ローラ76a,76bにより練られたインキを幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、インキ練ローラ76a,76bに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
インキ着ローラ78a,78b,79a,79bは、インキ往復ローラ77a,77bにより幅方向に広げられたインキを受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、インキ往復ローラ77a,77bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、インキ受渡しローラ73a,73bとインキ往復ローラ75a,75b,77a,77bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、図示しない駆動装置により駆動回転可能となっている。また、インキ練ローラ74a,74bとインキ着ローラ78a,78b,79a,79bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により回転可能となっている。
また、水ライダローラ81a,81bは、ローラ間で受け渡される湿し水を練るものであり、表面がゴムにより形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。また、水往復ローラ82a,82bは、隣接するローラ間で受け渡される湿し水を幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。水着ローラ83a,83bは、水往復ローラ82a,82bにより幅方向に広げられた湿し水を受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、水往復ローラ82a,82bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、水往復ローラ82a,82bは、インキ往復ローラ75a,75b,77a,77bと共にギアにより同期駆動するように連結され、駆動回転可能となっている。また、水ライダローラ81a,81bと水着ローラ83a,83bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により回転可能となっている。
版胴43a,43bは、外周面に刷版が巻き付けられる金属ローラであり、水着ローラ83a,83bの湿し水が刷版の非画線部に受け渡された後、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bのインキが刷版の画線部に受け渡される。この版胴43a,43bは、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bと水着ローラ83a,83bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。ブランケット胴33a,34bは、表面に図示しないブランケット(ゴム)が巻き付けられるゴムローラであり、版胴43a,43bから受け渡されたインキをウェブWに転写するものであって、版胴43a,43bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、版胴43a,43bとブランケット胴33a,33bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、駆動装置により駆動回転可能となっている。
この場合、版胴43a,43bに装着される刷版は、絵柄のある領域(画線部)と絵柄のない領域(非画線部)が形成され、画線部が親油性であり、非画線部が親水性である。そのため、版胴43a,43bに装着された刷版に対して、水着ローラ83a,83bから湿し水が供給された後に、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bからインキが供給されると、画線部のみにインキが転写され、非画線部に湿し水が転写される。そして、版胴43a,43bに対してブランケット胴33a,33bが対接して同期回転すると、版胴43a,43bから画線部にあるインキがブランケット胴33a,33bに転写される。
なお、上述したインキ供給装置53a,53bは、デジタルインキポンプ方式であってもよく、湿し装置63a,63bは、スプレー方式であってもよい。また、ここでは、スタック23だけ説明したが、他のスタック21,22,24もほぼ同様の構成となっている。
ところで、各印刷ユニットU1〜U6にて、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bは、外周面に刷版が装着されており、この刷版は、印刷物に応じて複数枚が製作され、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して印刷に必要な刷版が装着される。そのため、各印刷ユニットU1〜U6は、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bの外周面に刷版を巻き付けて固定するための版締め装置を装備している。
以下、版締め装置について説明するが、ここでは、印刷ユニットU5におけるスタック23の版胴43aに装着された版締め装置について説明する。図3は、版締め装置を表す概略図、図4は、版締め装置における版取外し動作を表す概略図である。
図3に示すように、版胴43aは、円筒状をなす外周面に刷版91が巻き付けられる。版胴43aは、外周部に軸方向に沿って溝形状をなすギャップ部92が形成され、ギャップ部92の周方向における一端部にエッジ部分が鋭角に尖った咥え部92aが形成され、他端部にエッジ部分が鋭角に尖った咥え尻部92bが形成されている。一方、刷版91は、長手方向(巻付方向、版胴43aの周方向)における一端部に端部が鋭角に屈曲した咥え側端部91aが形成され、他端部に端部がほぼ直角に屈曲した咥え尻側屈曲部91bと、咥え尻側屈曲部91bからほぼ直角に屈曲した咥え尻側端部91cが形成されている。
刷版91は、咥え側端部91aが版胴43aのギャップ部92内に浸入し、咥え部92aに当接して係止されている。また、刷版91は、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cが版胴43aのギャップ部92内に浸入し、咥え尻側端部91cが版締め装置93に係止されている。版締め装置93は、版胴43aの軸方向に沿ってギャップ部92内に配置されたテンションバー94を有している。テンションバー94は、ギャップ部92内に回転自在に設けられており、外周部に係止爪94aが突出して形成され、この係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cに係脱可能となっている。また、テンションバー94は、外周部にレバー94bが固設されている。
版胴43aは、ギャップ部92に隣接してばね支持部材95が設けられ、ガイド孔95aにガイド軸96が軸方向に移動自在に嵌合している。圧縮コイルばね97は、ガイド軸96の周囲に配置され、ばね支持部材95とガイド軸96の頭部96aとの間に張設されている。そして、テンションバー94におけるレバー94bとガイド軸96の頭部96aとが連結軸98により回動自在に連結されている。そのため、テンションバー94は、圧縮コイルばね97の付勢力により、図3の反時計回り方向に付勢され、係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cに係止する方向に付勢支持されている。
また、係止爪作動シリンダ(例えば、エアシリンダや油圧シリンダなど)99は、版胴43aの外周側に配置されており、版胴43a側に向いた係止爪作動ロッド99aをロッドの軸方向に移動可能となっている。係止爪作動ロッド99aは、版締め装置93のガイド軸96(頭部96a)を押圧可能である。
なお、版締め装置93と係止爪作動シリンダ99は、版胴43aにおける軸方向の端部側に配置されており、係止爪作動シリンダ99は、図示しない印刷機フレームに支持されている。なお、係止爪作動シリンダ99は、エアシリンダや油圧シリンダに限るものではなく、モータなどであってもよい。
本実施形態の版取外しシステムは、版締め装置93を用いた半自動式となっている。そのため、刷版91を版胴43aに装着する場合、作業者が刷版91の咥え側端部91aを版胴43aの咥え部92aに係止し、ここで、版取付け操作スイッチをONとする。すると、版押えローラ(図示略)が刷版91の咥え側端部91a側の外周面を押圧し、この状態で、版胴43aが図3の時計回り方向に回転することで、刷版91は、版胴43aの外周面に巻き付けられていき、版胴43aは、刷版91の咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92の外方に位置する角度で停止する。ここで、まず、係止爪作動シリンダ99が作動して係止爪作動ロッド99aが伸長し、ガイド軸96を押圧する。すると、テンションバー94は、圧縮コイルばね97の付勢力に抗して図3の時計回り方向に回動し、係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cから離脱する解除位置に移動する。次に、咥え尻ローラ(図示略)が刷版91の咥え尻側屈曲部91b側の外周面を押圧し、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cをギャップ部92内に押し込む。そして、係止爪作動シリンダ99が作動して係止爪作動ロッド99aが収縮すると、この係止爪作動ロッド99aがガイド軸96から離間し、テンションバー94が圧縮コイルばね99の付勢力により図3の反時計回り方向に回動し、係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cに係止し、刷版91が版胴43aの外周面に拘束される。
一方、刷版91を版胴43aから取り外す場合、版取外し操作スイッチをONとすると、図4に示すように、係止爪作動シリンダ99が作動して係止爪作動ロッド99aが伸長し、ガイド軸96を押圧する。すると、テンションバー94は、圧縮コイルばね97の付勢力に抗して図3の時計回り方向に回動し、係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cから離脱する解除位置に移動する。そして、刷版91は、咥え尻側端部91cの拘束が解除されることから、自身の弾性力により咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出し、版胴43a外方に移動する。ここで、版胴43aは、図3の反時計回り方向に回動し、外周面から刷版91が取り外される。版胴43aの回転が停止した後、作業者は、咥え側端部91aが版胴43aの咥え部92aに係止している刷版91を取外す。
ところで、版胴43aは、刷版91を締結するためのギャップ部92が設けられていることから、ギャップ部92がブランケット胴33aの外周面に接触するとき、段差により振動が発生する。そのため、版胴43aは、ギャップ部92における周方向の幅を小さく設定している。一方で、ギャップ部92の幅を小さくすると、版胴43aから刷版91を取外すとき、咥え尻側端部91cからテンションバー94の係止爪94aが離脱しても、咥え尻側端部91cがギャップ部92の端面に接触して抜け出ないことがある。刷版91は、印刷中にインキ着ローラ78a,79aやブランケット胴33aと接触して高温化することから、熱収縮や微小変形などが発生しやすい。すると、刷版91は、咥え尻側屈曲部91bの外面が版胴43aの咥え部92aに係止している咥え側端部91aに引っ掛かったり、咥え尻側端部91cが版胴43aの咥え尻部92bに引っ掛かったりしてしまう。このとき、版胴43aの幅方向における端部の咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cが引っ掛かると、咥え尻側端部91cが斜めになってしまい、取外が困難となってしまう。
第1実施形態の版取外しシステムは、版胴43aから刷版91を取外すときにギャップ部92から咥え尻側端部91cを適正に抜け出させることで、版取外し作業の作業性を向上させるものである。図1は、第1実施形態の版取外しシステムが適用された版胴の周辺部を表す概略図、図2は、第1実施形態の版取外しシステムを表す制御ブロック図、図5は、版胴と位置規制ロッドとの関係を表す斜視図、図6は、版胴に対する刷版の版曲線を表す概略図である。
第1実施形態において、図1に示すように、版取外しシステム100は、係止爪94aが版胴43aの外周面に巻き付けられた刷版91の端部の咥え尻側端部(係止部)91cに係止して刷版91を締結する版締め装置93と、咥え尻側端部91cに対して係止爪94aを係脱させる係止爪作動シリンダ(係止爪作動装置)99と、咥え尻側端部91cに係止する係止爪94aを係止爪作動シリンダ99により離脱させたときに刷版91の端部における版胴43aの径方向の外側への移動を規制する規制ロッド(規制部材)101とを備えている。
図5に示すように、規制ロッド101は、版胴43aの軸方向に沿って配置されており、長手方向の各端部が印刷機フレーム(図示略)に固定されている。版胴43aは、外周部に軸方向に沿ってギャップ部92が設けられ、軸方向に沿って4枚の刷版91A,91B,91C,91Dが装着可能となっている。一方、版締め装置93は、係止爪94aが各刷版91A,91B,91C,91Dの咥え尻側端部91Ac,91Bc,91Cc,91Dcを個別に係止(拘束)可能となっている。規制ロッド101は、各刷版91A,91B,91C,91Dにおける咥え尻側端部91Ac,91Bc,91Cc,91Dcの端部に対応して配置される。
そして、この規制部材101は、図6に示すように、刷版91の端部の外周面から版胴43aの径方向の外方に予め設定された所定距離だけ離間した位置に配置される。この所定距離は、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cにおける版胴43aの径方向の長さLの1倍より大きく2倍より小さい距離に設定される。
具体的に説明すると、版胴43aは、ギャップ部92が設けられており、咥え部92a咥え尻部92bのギャップ幅Gは、10m以下に設定されている。そして、規制部材101は、刷版91側の位置(版胴43aの外周面に最も近い位置)が、刷版91の端部の外周面から版胴43aの径方向の外方に予め設定された所定径方向距離S1〜S11だけ離間すると共に、版胴43aのギャップ部92から版胴43aの周方向に予め設定された所定周方向距離S2〜S21だけ離間した位置に配置される。この所定径方向距離S1〜S11は、版胴43aの外周面と最小離脱角度における版曲線との距離より大きく、版胴43aの外周面と最大離脱角度における版曲線との距離より小さい距離である。ここで、最小離脱角度における版曲線は、刷版91の端部が版胴43aのギャップ部92から完全に離脱するときの刷版91の外面の曲線を指すものであり、その距離は規制部材101を配置する周方向距離により異なる。言い換えると、所定径方向距離S1〜S11は、版胴43aの外周面から、刷版91の咥え尻側端部91cが版胴43aの外周面の延長曲線に接する位置にある刷版91の外周面までの版胴43aの径方向の長さより長い距離に設定される。
即ち、刷版91は、版胴43aの外周面に装着された状態から、係止爪94aにより拘束が解除されると、自身のばね力により、図6に二点鎖線で示すように、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cが版胴43aの外周面から離間し、刷版91の内面と版胴43aの外周面との離脱位置が咥え尻部92bから離れる方向に移動していく。ある条件、もしくはある瞬間における版胴43aの外周面から離間していく刷版91の位置を表す曲線を版曲線と定義し、そのときの刷版91と版胴43aとの離脱位置Pを咥え尻部92bからの版胴43aの周方向における離脱角度Pと定義する。
刷版91の咥え尻側端部91cがギャップ部92から完全に離脱したとき、離脱角度Pが30度であることから、最小離脱角度PAが30度の位置にある刷版91Aの外方への移動を規制する規制ロッド101の位置が所定径方向距離S1及び所定周方向距離S2の最短距離である。また、最大離脱角度PBが60度の位置にある刷版91Bの外方への移動を規制する規制ロッド101の位置が所定径方向距離S11及び所定周方向距離S21の最長距離である。所定径方向距離S1及び所定周方向距離S2より短くなると、刷版91自体がギャップ92から抜けない。また、この所定径方向距離S11および所定周方向距離S21は、実験により設定されたものであり、S11及びS21より長くなると、刷版91の咥え尻側端部91cが係止爪94aによる拘束から解除されたとき、刷版91が規制部材101に当接するまでの間に咥え尻側端部91cが斜めになってしまい、さらに、斜めになった版が矯正されない確率が高い。
この場合、所定径方向距離S1の最短距離は、刷版91が最小離脱角度PA=30度の位置にあるときの版胴43aの外周面から刷版91の外周面までの版胴43aの径方向における長さである。また、所定周方向距離S2の最短距離は、刷版91が最小離脱角度PA=30度の位置にあるときの版胴43aのギャップ部92から刷版91の端部までの版胴43aの周方向における長さである。一方、所定径方向距離S11の最長距離は、刷版91が最大離脱角度PB=60度の位置にあるときの版胴43aの外周面から刷版91の外周面までの版胴43aの径方向における長さである。また、所定周方向距離S21の最長距離は、刷版91が最大離脱角度PB=60度の位置にあるときの版胴43aのギャップ部92から刷版91の端部までの版胴43aの周方向における長さである。所定径方向距離S1〜S11は、刷版91の周方向位置で相違する。即ち、所定径方向距離S1は、版胴43aの外周面から最小離脱角度PA=30度の位置にある刷版91Aの版曲線までの距離であり、刷版91の咥え尻側端部91cに行くほどに長くなり、規制部材101Aにおける刷版91の外面に最も近い位置がこの刷版91Aの版曲線上にあればよい。また、所定径方向距離S11は、版胴43aの外周面から最大離脱角度PB=60度の位置にある刷版91Bの版曲線までの距離であり、刷版91の咥え尻側端部91cに行くほどに長くなり、規制部材101Bにおける刷版91の外面に最も近い位置がこの刷版91Bの版曲線上にあればよい。
また、所定径方向距離S1,S11の最短距離と最長距離及び所定周方向距離S2,S21の最短距離と最長距離は、上述したように設定されることから、規制ロッド101の配置領域は、図6に斜線で表した領域となり、所定周方向距離S2は、版胴43aの咥え尻部92bから版胴43aの周方向における角度で表すと、2度から60度の範囲であるが、10度から30度の範囲が好ましい。
版取外しシステム100は、咥え尻側端部91cに係止する係止爪94aを係止爪作動シリンダ99により離脱させたとき、刷版91の外周面を押える版押え補助ローラが設けられる。本実施形態にて、版押え補助ローラとして水着ローラ83aを適用している。版胴43aが版取外し位置にあるとき、版押え補助ローラは、版胴43aの外周面における刷版91の端部(咥え尻側端部91c)の係止位置に対して刷版91の中間部側に版胴43aの90度から180度までの領域に設けられることが望ましく、水着ローラ83aは、この位置に配置されている。
また、図2に示すように、版取外しシステム100は、制御装置102を備えている。制御装置102は、版取付け操作スイッチ103と版取外し操作スイッチ104と刷版検出センサ105が接続されている。版取付け操作スイッチ103は、作業者により操作されることで、制御装置102は、刷版91の装着作業を開始する。版取外し操作スイッチ104は、作業者により操作されることで、制御装置102は、刷版91の取外し作業を開始する。刷版検出センサ105は、版胴43aからの刷版91の咥え尻側端部91cの離脱を検出するものである。また、制御装置102は、版胴駆動モータ106と係止爪作動シリンダ99と水着ローラ着脱シリンダ107が接続される。版胴駆動モータ106は、版胴43aを正転または逆転駆動するものである。係止爪作動シリンダ99は、係止爪94aを係脱するものである。水着ローラ着脱シリンダ107は、版胴43aに対して水着ローラ83aを着脱するものである。
ここで、本実施形態の版取外しシステム100による版取外し作業について詳細に説明する。図7は、版取外しシステムにより版取外し工程を表すタイムチャートである。
版取外しシステム100による版取外し作業において、図3及び図7に示すように、版胴43aに装着された刷版91を取り外す場合、作業者は、時間t1にて、版取外し操作スイッチ104をONとする。すると、時間t2にて、制御装置102は、版胴駆動モータ106を制御して版胴43aを逆転駆動することで、係止爪作動シリンダ99に対する版胴43aの位置決めを行う。そして、版胴43aが、係止爪作動シリンダ99の係止爪作動ロッド99aと版胴43aにおける版締め装置93のガイド軸96とが対向する位置に位置決めされると、時間t3にて、版胴43aの逆転駆動を停止する。また、この時間t3にて、制御装置102は、離間していた水着ローラ83aを水着ローラ着脱シリンダ107により移動して刷版91に密着させて保持する。
ここで、時間t4にて、制御装置102は、係止爪作動シリンダ99を作動して係止爪作動ロッド99aを伸長させることで、ガイド軸96を押圧する。すると、テンションバー94は、圧縮コイルばね97の付勢力に抗して図3の時計回り方向に回動し、係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cから離脱する解除位置に移動する。このとき、制御装置102は、係止爪作動シリンダ99を所定時間の間で数回往復移動し、係止爪94aの係脱を数回繰り返す。すると、刷版91は、咥え尻側端部91cの拘束が解除されることから、自身の弾性力により咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出し、版胴43a外方に移動し、外周面が規制ロッド101に当接する。このとき、刷版91は、端部が規制ロッド101に当接して移動量が規制されることから、斜めにならずに版胴43aの外周面と略平行になるようにその姿勢が矯正される。ここで、刷版91は、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92から完全に抜き出されており、時間t5にて、刷版検出センサ105がギャップ部92から抜け出た咥え尻側端部91cを検出する。
すると、時間t6にて、制御装置102は、刷版検出センサ105からの信号により咥え尻側端部91cがギャップ部92から完全に抜き出されていることを確認し、係止爪作動シリンダ99を作動し、係止爪作動ロッド99aを収縮し、係止爪94aを拘束位置に移動する。また、制御装置102は、版胴43aに対接していた水着ローラ83aを離間させる。そして、時間t7にて、制御装置102は、版胴駆動モータ106を制御して版胴43aを逆転駆動することで、外周面から刷版91を取り外していく。時間t8にて、版胴43aの逆転駆動が停止すると、作業者は、咥え側端部91aが版胴43aの咥え部92aに係止している刷版91を取外す。
このように第1実施形態の版取外しシステムにあっては、係止爪94aが版胴43aの外周面に巻き付けられた刷版91の端部の咥え尻側端部(係止部)91cに係止して刷版91を締結する版締め装置93と、咥え尻側端部91cに対して係止爪94aを係脱させる係止爪作動シリンダ(係止爪作動装置)99と、咥え尻側端部91cに係止する係止爪94aを係止爪作動シリンダ99により離脱させたときに刷版91の端部における版胴43aの径方向の外側への移動を規制する規制ロッド(規制部材)101とを備えている。
従って、版胴43aから刷版91を取外すとき、係止爪作動シリンダ99により係止爪94aを咥え尻側端部91cから離脱させると、刷版91は自身のばね力により咥え尻側端部91cが径方向の外側へ移動してギャップ部92から抜け出ようとする。このとき、刷版91は、咥え尻側端部91c側の刷版端部の外周面が規制ロッド101に当接して外側への移動が規制される。即ち、刷版91は、咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出ようとするとき、刷版端部の外周面が規制ロッド101に当接して斜めにならずに版胴43aの外周面と略平行になるようにその姿勢が矯正される。そのため、刷版91は、咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cにおける幅方向の端部が咥え側端部91aや咥え尻部92bに引っ掛かって斜めになることが抑制され、ギャップ部92から咥え尻側端部91cを適正に抜け出させることで、版取外し作業の作業性の向上を図ることができる。
第1実施形態の版取外しシステムでは、規制ロッド101を刷版91の咥え尻側端部91c側の端部の外周面から版胴43aの径方向の外方に所定径方向距離S1だけ離間させると共に、版胴43aの咥え尻部92bから版胴43aの周方向に所定周方向距離S2だけ離間させた位置に配置している。従って、刷版91は、咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出る途中で外周面が規制ロッド101に当接するため、ここで、端部が斜めにならずに版胴43aの外周面と平行になるようにその姿勢を適正に矯正することができる。
第1実施形態の版取外しシステムでは、所定径方向距離S1を版胴43aの外周面と最小離脱角度における版曲線との距離より大きい距離としている。従って、刷版91は、咥え尻側端部91cが外方に移動して外周面が規制ロッド101に当接して移動が規制されたとき、この咥え尻側端部91cは、少なくとも端部が最小離脱角度における版曲線より外側にあることから、この状態で版胴43aを回転することで、刷版91を適正に版胴43aの外周面から取り外すことができ、刷版取外し作業の作業性の向上を図ることができる。
第1実施形態の版取外しシステムでは、規制ロッド101を版胴43aの軸方向に沿って配置し、長手方向の各端部を印刷機フレームに固定している。構造の簡素化及び高コスト化を抑制することができる。
第1実施形態の版取外しシステムでは、版胴43aの外周面における刷版91の咥え尻側端部91cの係止位置に対して版胴43aの90度から180度までの領域に刷版91の外周面を押える版押え補助ローラとしての水着ローラ83aを設けている。90度より近い箇所を押えた場合、咥え尻側屈曲部91bが咥え側端部91aに接触した際に刷版91が周方向にずれるためにギャップ部92から外れにくい。180度より遠い箇所を押えたり押えるローラがない場合、刷版91が一度周方向にずれたあと、元に戻す力が働かないために咥え尻側端部91cが版胴43aの咥え尻部92bに引っ掛かり易い。従って、咥え尻側端部91cから係止爪94aを解除するとき、水着ローラ83aが版胴43aの外周面における刷版91の咥え尻側端部91cの係止位置に対して版胴43aの90度から180度までの領域を押えることにより、ギャップ部92からの咥え尻側端部91cの抜け出し動作を阻害することなく、版胴43aに対する刷版91のずれを抑制することができる。
第1実施形態の版取外しシステムでは、係止爪作動シリンダ99により咥え尻側端部91cに対して係止爪94aを複数回係脱させる。従って、版胴43aから刷版91を取外すとき、咥え尻側端部91cに対して係止爪94aが複数回係脱することから、咥え尻側端部91cに係止爪94aが複数回接触して振動を付与することで、刷版91の咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cにおける版胴43a側への引っ掛かりを解除して刷版91の咥え尻側端部91cをギャップ部92から適正に抜き出すことができる。
また、本実施形態の印刷機にあっては、インキを供給するインキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bと、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bと、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bと、版取外しシステム100とを備えている。
従って、版胴43aから刷版91を取外すとき、係止爪94aを咥え尻側端部91cから離脱させると、刷版91は自身のばね力により咥え尻側端部91cが径方向の外側へ移動してギャップ部92から抜け出ようとする。このとき、刷版91は、咥え尻側端部91c側の端部の外周面が規制ロッド101に当接して外側への移動が規制される。即ち、刷版91は、咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出ようとするとき、端部の外周面が規制ロッド101に当接して斜めにならずに版胴43aの外周面と略平行になるようにその姿勢が矯正される。そのため、刷版91は、咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cにおける幅方向の端部が咥え側端部91aや咥え尻部92bに引っ掛かって斜めになることが抑制され、ギャップ部92から咥え尻側端部91cを適正に抜け出させることで、版取外し作業の作業性の向上を図ることができる。
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態の版取外しシステムが適用された版胴の周辺部を表す概略図、図12は、第2実施形態の版取外しシステムを表すブロック構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第2実施形態において、図11に示すように、版取外しシステム110は、係止爪94aが版胴43aの外周面に巻き付けられた刷版91の端部の咥え尻側端部(係止部)91cに係止して刷版91を締結する版締め装置93と、咥え尻側端部91cに対して係止爪94aを係脱させる係止爪作動シリンダ(係止爪作動装置)99と、咥え尻側端部91cに係止する係止爪94aを係止爪作動シリンダ99により離脱させたときに刷版91の端部における版胴43aの径方向の外側への移動を規制する咥え尻ローラ(規制部材)113とを備えている。
版胴43aの上方であって、係止爪作動シリンダ99より版胴43aの時計回り方向側に版押えローラ111が設けられており、版押えローラ111は、版押えシリンダ112により版胴43aの外周面に対して接近離反自在に支持されている。この版押えローラ111は、版取付け時や版取外し時に、版押えシリンダ112により版胴43a(刷版91)の外周面に接触させることで刷版91を版胴43aの外周面に押え付け、版胴43aに対する刷版91のずれを抑制するためのものである。また、版胴43aの上方であって、係止爪作動シリンダ99より版胴43aの反時計回り方向側に咥え尻ローラ113が設けられており、咥え尻ローラ113は、咥え尻シリンダ114により版胴43a(刷版91)の外周面に対して接近離反自在に支持されている。この咥え尻ローラ113は、版取付け時に、咥え尻シリンダ114により刷版91の咥え尻側端部91c側の端部の外周面を押圧することで、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cをギャップ部92内に押し込むためのものである。
本実施形態では、規制部材として、既設の咥え尻ローラ113を適用し、規制部材移動装置として咥え尻シリンダ114を適用する。咥え尻ローラ113は、版胴43aの軸方向に沿って平行をなすように配置されており、上述したように、咥え尻シリンダ114により版胴43aの端部に対して版胴43aの径方向に沿って移動自在に支持される。
なお、版押えローラ111と咥え尻ローラ113は、ほぼ同様の構成をなしている。版押えローラ111と咥え尻ローラ113は、版胴43aの軸方向長さと同等の長さを有する円柱部材であってもよく、また、それより短い円柱部材を複数軸方向に直列に連結したものであってもよく、更に、支持軸に複数の円板部材を所定間隔を空けて固定したものであってもよい。そして、版押えローラ111と咥え尻ローラ113は、駆動源を有しておらず、連れ回りが可能なものとなっている。また、版押えシリンダ112や咥え尻シリンダ114は、エアシリンダ、油圧シリンダ、モータなどとしてもよい。
また、図12に示すように、版取外しシステム110は、制御装置102を備えている。制御装置102は、版取付け操作スイッチ103と版取外し操作スイッチ104と刷版検出センサ105が接続されている。また、制御装置102は、版胴駆動モータ106と係止爪作動シリンダ99と水着ローラ着脱シリンダ107と版押えシリンダ112と咥え尻シリンダ114が接続される。
そして、版取外し時に、制御装置102は、まず、咥え尻シリンダ114により咥え尻ローラ113を刷版91の咥え尻側端部91c側の端部に接触した位置、または、刷版91の咥え尻側端部91c側の端部から所定距離だけ離間した位置に移動し、次に、係止爪作動シリンダ99により咥え尻側端部91cから係止爪94aを離脱させ、その後、咥え尻シリンダ114により咥え尻ローラ113を刷版91の径方向の外側に移動する。ここで、咥え尻シリンダ114により咥え尻ローラ113を刷版91の咥え尻側端部91c側の端部から所定距離だけ離間した位置とは、咥え尻ローラ113と刷版91の外周面との間に所定隙間が確保された位置である。この所定隙間とは、刷版91の咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cにおける径方向の長さより短い距離である。この場合、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cにおける径方向の長さとは、刷版91が版胴43aに装着された状態における咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cの版胴43aの径方向の長さである。咥え尻ローラ113がこの位置にあるとき、刷版91は、咥え尻側端部91cから係止爪94aが離脱して外方に移動しても、少なくとも咥え尻側端部91cの一部が版胴43aの外周面の延長線より内側、つまり、ギャップ部92内に位置している。
ここで、本実施形態の版取外しシステム110による版取外し作業について詳細に説明する。図13は、版締め装置を表す概略図、図14から図17は、版締め装置の作動を表す概略図、図18は、版取外しシステムにより版取外し工程を表すフローチャートである。
版取外しシステム110による版取外し作業において、図13及び図18に示すように、版胴43aに装着された刷版91を取り外す場合、作業者は、時間t11にて、版取外し操作スイッチ104をONとする。すると、時間t12にて、制御装置102は、版胴駆動モータ106を制御して版胴43aを逆転駆動することで、係止爪作動シリンダ99に対する版胴43aの位置決めを行う。そして、版胴43aが、係止爪作動シリンダ99の係止爪作動ロッド99aと版胴43aにおける版締め装置93のガイド軸96とが対向する位置に位置決めされると、時間t13にて、版胴43aの逆転駆動を停止する。
また、この時間t13にて、制御装置102は、離間していた水着ローラ83aを水着ローラ着脱シリンダ107により版胴43a側に移動して刷版91に密着させて保持する。更に、図14及び図18に示すように、制御装置102は、離間していた咥え尻ローラ113を咥え尻シリンダ114により移動して刷版91に密着させて保持する。この場合、図15に示すように、制御装置102は、離間していた咥え尻ローラ113を咥え尻シリンダ114により版胴43aに接近するように移動し、刷版91の外周面との間に所定隙間が確保された位置に保持してもよい。
ここで、時間t14にて、図16及び図18に示すように、制御装置102は、係止爪作動シリンダ99を作動して係止爪作動ロッド99aを伸長させることで、ガイド軸96を押圧する。すると、テンションバー94は、圧縮コイルばね97の付勢力に抗して図15の時計回り方向に回動し、係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cから離脱する解除位置に移動する。係止爪94aが咥え尻側端部91cから離脱すると、刷版91は、咥え尻側端部91cの拘束が解除されることから、自身の弾性力により咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出し、版胴43a外方に移動し、外周面が咥え尻ローラ113に当接する。このとき、刷版91は、端部が咥え尻ローラ113に当接して移動量が規制されることから、斜めにならずに版胴43aの外周面と略平行になるようにその姿勢が矯正される。
そして、時間t15にて、制御装置102は、図17及び図18に示すように、版胴43a側に移動していた咥え尻ローラ113を咥え尻シリンダ114により版胴43aから離間するように移動する。このとき、外周面が咥え尻ローラ113に接触している刷版91は、自身の付勢力により咥え尻ローラ113と共に外方に移動し、咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92から完全に抜き出される。時間t16にて、刷版検出センサ105がギャップ部92から抜け出た咥え尻側端部91cを検出する。
すると、時間t17にて、制御装置102は、刷版検出センサ105からの信号により咥え尻側端部91cがギャップ部92から完全に抜き出されていることを確認し、係止爪作動シリンダ99を作動し、係止爪作動ロッド99aを収縮し、係止爪94aを拘束位置に移動する。また、制御装置102は、版胴43aに対接していた水着ローラ83aを離間させる。そして、時間t18にて、制御装置102は、版胴駆動モータ106を制御して版胴43aを逆転駆動することで、外周面から刷版91を取り外していく。時間t19にて、版胴43aの逆転駆動が停止すると、作業者は、咥え側端部91aが版胴43aの咥え部92aに係止している刷版91を取外す。
このように第2実施形態の版取外しシステムにあっては、係止爪94aが版胴43aの外周面に巻き付けられた刷版91の端部の咥え尻側端部(係止部)91cに係止して刷版91を締結する版締め装置93と、咥え尻側端部91cに対して係止爪94aを係脱させる係止爪作動シリンダ(係止爪作動装置)99と、咥え尻側端部91cに係止する係止爪94aを係止爪作動シリンダ99により離脱させたときに刷版91の端部における版胴91の径方向の外側への移動を規制する咥え尻ローラ(規制部材)113とを備えている。
従って、版胴43aから刷版91を取外すとき、係止爪作動シリンダ99により係止爪94aを咥え尻側端部91cから離脱させると、刷版91は自身のばね力により咥え尻側端部91cが径方向の外側へ移動してギャップ部92から抜け出ようとする。このとき、刷版91は、咥え尻側端部91c側の端部の外周面が咥え尻ローラ113に当接して外側への移動が規制される。即ち、刷版91は、咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出ようとするとき、端部の外周面が咥え尻ローラ113に当接して斜めにならずに版胴43aの外周面と略平行になるようにその姿勢が矯正される。そのため、刷版91は、咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cにおける幅方向の端部が咥え側端部91aや咥え尻部92bに引っ掛かって斜めになることが抑制され、ギャップ部92から咥え尻側端部91cを適正に抜け出させることで、版取外し作業の作業性の向上を図ることができる。
第2実施形態の版取外しシステムでは、咥え尻ローラ113を版胴43aの軸方向に沿って配置し、咥え尻シリンダ114により刷版91の端部に対して版胴43aの径方向に沿って移動自在に支持している。従って、咥え尻ローラ113の配置位置を調整することで、咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出るときの咥え尻ローラ113との当接位置を調整することができ、このときの版胴43aの姿勢を適正に矯正することができる。
第2実施形態の版取外しシステムでは、制御装置102は、咥え尻シリンダ114により咥え尻ローラ113を刷版91の端部に接触した位置から咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cにおける版胴43aの径方向の長さより短い距離だけ離間した位置までの領域に移動し、係止爪作動シリンダ99により咥え尻側端部91cから係止爪94aを離脱させた後、咥え尻シリンダ114により咥え尻ローラ113を刷版91の径方向の外側に移動するように制御する。従って、まず、咥え尻ローラ113を刷版91側に接近した位置に移動し、次に、咥え尻側端部91cから係止爪94aを離脱させると、咥え尻ローラ113により刷版91の端部の外方への移動が規制されて刷版91の端部の姿勢が矯正される。そのため、その後、咥え尻ローラ113を外側に移動すると、咥え尻ローラ113に追従して刷版91の端部が外方へ移動することとなり、刷版91の咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cをギャップ部92から適正に抜き出すことができる。
第2実施形態の版取外しシステムでは、規制部材を咥え尻ローラ113としている。従って、部品点数の増加を抑制して構造の複雑化及び高コスト化を抑制することができる。なお、上述の説明では、規制部材を咥え尻ローラ113としたが、規制部材を版押えローラ111としてもよく、この場合であっても、部品点数の増加を抑制して構造の複雑化及び高コスト化を抑制することができる。また、規制部材を咥え尻ローラ113や咥え尻ローラ113とせずに、別途、専用の規制ローラを設けてもよい。
[第3実施形態]
図19は、第3実施形態の版取外しシステムにおける版締め装置を表す概略図、図20は、版取外しシステムにより版取外し工程を表すフローチャートである。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第3実施形態の版取外しシステムは、基本的な構成が第2実施形態の版取外しシステム110とほぼ同様の構成をなしていることから、説明は省略する。第3実施形態の版取外しシステムでは、図19に示すように、刷版91の端部から版胴43aの周方向における所定長さの領域に刷版91の外周面を叩く版叩きローラが設けられている。本実施形態にて、版叩きローラとして咥え尻ローラ113を適用するが、版押えローラ111を適用してもよく、別途、専用の版叩きローラを設けてもよい。そして、版叩きローラとしての咥え尻ローラ113は、刷版91の咥え尻側端部91c側の端部に対して版胴43aの15度から50度までの領域に設けられている。
ここで、本実施形態の版取外しシステムによる版取外し作業について詳細に説明する。
版取外しシステムによる版取外し作業において、図19及び図20に示すように、版胴43aに装着された刷版91を取り外す場合、作業者は、時間t21にて、版取外し操作スイッチ104をONとする。すると、時間t22にて、制御装置102は、版胴駆動モータ106を制御して版胴43aを逆転駆動することで、係止爪作動シリンダ99に対する版胴43aの位置決めを行う。そして、版胴43aが、係止爪作動シリンダ99の係止爪作動ロッド99aと版胴43aにおける版締め装置93のガイド軸96とが対向する位置に位置決めされると、時間t23にて、版胴43aの逆転駆動を停止する。また、この時間t23にて、制御装置102は、離間していた水着ローラ83aを水着ローラ着脱シリンダ107により版胴43a側に移動して刷版91に密着させて保持する。
時間t24にて、制御装置102は、係止爪作動シリンダ99を作動して係止爪作動ロッド99aを伸長させることで、ガイド軸96を押圧する。すると、テンションバー94は、圧縮コイルばね97の付勢力に抗して回動し、係止爪94aが刷版91の咥え尻側端部91cから離脱する解除位置に移動する。このとき、制御装置102は、係止爪作動シリンダ99を所定時間の間で数回往復移動し、係止爪94aの係脱を数回繰り返す。
また、時間t25にて、制御装置102は、版胴駆動モータ106を制御して版胴43aを所定角度だけ逆転駆動することで、版胴43aと咥え尻ローラ113の位置関係を相違させる。つまり、版胴43aを所定角度だけ逆転駆動すると、版胴43aに対して、咥え尻ローラ113は、図19に二点鎖線で表す位置から、実線で表す位置に変更される。つまり、咥え尻ローラ113は、刷版91の咥え尻側端部91c側の端部に対して版胴43aの15度から50度までの領域に移動する。そして、時間t26にて、離間していた咥え尻ローラ113を咥え尻シリンダ114により移動して刷版91に密着させて保持する。このとき、制御装置102は、咥え尻シリンダ114を所定時間の間で1回もしくは数回往復移動し、刷版91の外周面に対して咥え尻ローラ113の接触を1回もしくは数回繰り返す。
咥え尻ローラ113が1回もしくは数回にわたって刷版91の外周面に接触することから、刷版91は、振動して咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出しやすくなる。係止爪94aが咥え尻側端部91cから離脱すると、刷版91は、咥え尻側端部91cの拘束が解除されることから、自身の弾性力により咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出し、版胴43a外方に移動する。
そして、時間t27にて、刷版検出センサ105がギャップ部92から抜け出た咥え尻側端部91cを検出する。すると、時間t28にて、制御装置102は、刷版検出センサ105からの信号により咥え尻側端部91cがギャップ部92から完全に抜き出されていることを確認し、係止爪作動シリンダ99を作動し、係止爪作動ロッド99aを収縮し、係止爪94aを拘束位置に移動する。また、制御装置102は、版胴43aに対接していた水着ローラ83aを離間させる。更に、制御装置102は、咥え尻シリンダ114を作動し、咥え尻ローラ113を刷版91に密着させる。そして、時間t29にて、制御装置102は、版胴駆動モータ106を制御して版胴43aを逆転駆動することで、外周面から刷版91を取り外していく。時間t29にて、版胴43aの逆転駆動が停止すると、作業者は、咥え側端部91aが版胴43aの咥え部92aに係止している刷版91を取外す。
このように第3実施形態の版取外しシステムにあっては、係止爪94aが版胴43aの外周面に巻き付けられた刷版91の端部の咥え尻側端部(係止部)91cに係止して刷版91を締結する版締め装置93と、咥え尻側端部91cに対して係止爪94aを係脱させる係止爪作動シリンダ(係止爪作動装置)99と、咥え尻側端部91cに係止する係止爪94aを係止爪作動シリンダ99により離脱させたときに刷版91の咥え尻側端部91c側の端部から版胴43aの周方向における所定長さの領域に設けられて刷版91の外周面を叩く咥え尻ローラ(版叩きローラ)113とを備えている。
従って、版胴43aから刷版91を取外すとき、係止爪作動シリンダ99により係止爪94aを咥え尻側端部91cから離脱させると、刷版91は自身のばね力により咥え尻側端部91cが径方向の外側へ移動してギャップ部92から抜け出ようとする。このとき、咥え尻ローラ113が刷版91の端部から所定長さ離れた刷版91の外周面を叩くことから、刷版91に振動を付与される。即ち、刷版91は、咥え尻側端部91cがギャップ部92から抜け出ようとするときに振動することから、咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cにおける幅方向の端部が咥え側端部91aや咥え尻部92bに引っ掛かって斜めになることが抑制され、ギャップ部92から咥え尻側端部91cを適正に抜け出させることで、版取外し作業の作業性の向上を図ることができる。また、咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cにおける幅方向の端部がギャップ部92から離脱する際、咥え尻側屈曲部91bや咥え尻側端部91cにおける幅方向の端部の片側のみ外れてしまった場合には、刷版91の外周面を叩くことで、ギャップ部92と版胴43aの外周面との境界線を支点としたシーソー効果により、外れていない側を容易に外すことができる。
第3実施形態の版取外しシステムでは、咥え尻ローラ113を刷版91の端部に対して版胴43aの15度から50度までの領域に設けている。従って、咥え尻ローラ113により刷版91の適正位置の外周面を叩くため、刷版91を変形させることなく適度な振動を付与し、刷版91の咥え尻側屈曲部91b及び咥え尻側端部91cの版胴43aへの引っ掛かりを適正に解除することができる。
なお、第3実施形態にて、版胴43aを所定角度だけ逆転駆動することで、版胴43a(刷版91)と咥え尻ローラ113との位置関係を相違させたが、咥え尻ローラ113を版胴43aの周方向に移動自在とし、咥え尻ローラ113を移動することで、版胴43a(刷版91)と咥え尻ローラ113との位置関係を相違させてもよい。
また、上述した実施形態では、印刷機として新聞用オフセット輪転印刷機Pを適用したが、商業用オフセット輪転印刷機やオフセット枚葉印刷機などに適用してもよい。