従来、この種の継手構造において、剛構造として、隣り合うセグメントの接合面を跨いで連結部材の鋼製プレートを配置し、このプレートの両側を隣り合うセグメントにアンカーボルトなどにより固定するもの(例えば特許文献1)や、前記連結部材にボルトを用いたものなどがある。また、柔構造として、セグメントの端部外周にゴム製外側止水継手を配置し、この止水継手の両側を隣り合うセグメントにボルトにより固定するもの(例えば特許文献2)などが知られている。
また、剛構造と柔構造とを組み合わせたものとして、隣り合うセグメントの接合面に鋼製枠を設け、これら鋼製枠の鋼板にボルトを挿通し、このボルトの両端にワッシャを介してナットを螺合し、前記鋼板とワッシャの間に円筒形状のゴム製弾性材料を配置した弾性継手(例えば特許文献3)もある。
ところで、図23のモデル図に示すように、例えばコンクリート製のセグメント201,201を組み立てる組立式マンホールでは、地震時の変位に対し、隣り合うセグメント201,201の目地部202において目開きが生じることでその変位に追従している。
また、前記目開き量が所定寸法を超えて大きくなり過ぎないように特許文献1などの継手構造では目開きを制御している。
そして、その制御方法はまず前記連結部材の弾性変形を用いて目開きを制御し、その連結部材が降伏点を超えた後はその引張強度までほとんど塑性変形のような弱い弾性係数で推移するという機構を用いている。
そのため、図24に示すように、組立マンホールの目地部202の1箇所で、連結部材203に塑性変形又は破断が生じると、その箇所の接合面間のみが大きく開き、他の接合面間の目開きは大きくならず、大きく開いた接合面間のみの目開きが大きくなるという挙動が起きる。
また、公知ではないが、仮に剛構造の継手に前記柔構造の前記ゴム製外側止水継手を組み合わせたとしても、接合面間の目開きが極端に大きくなると、ゴム製外側止水継手も損傷するという問題がある。
特に、近年のマンホールの深度化により、例えば地下50mに達する組立マンホールにおいて、地下深くの固い岩盤にマンホール底部が刺さった固定状態であると、浅い層は横に動き、地震等で岩盤が動くと、底部側の接合面間で大きな目開きが発生し、剛構造の継手構造において上述した塑性変形や破断が発生してしまう。
これに対して、特許文献3の弾性継手では、弾性材料が収縮した後、ボルトが弾性変形するが、薄い弾性材料により吸収できる目開き量は僅かであり、上記のような組立マンホールに用いた場合、連結部材であるボルトが破断して底部側の接合面間において大きな目開きが生じるという問題がある。
また、特許文献3の弾性継手は、鋼板とワッシャの間に円筒形状のゴム製弾性材料を配置しているため、接合面間で目開きが生じ、前記弾性材料が圧縮されて潰されると、その弾性材料の外周と内周が膨らみ、この膨らみ部分がワッシャに食い込んで弾性材料の収縮量が減ったり、弾性材料が部分的に損傷したりすることが予想される。
従って、地震等による地中の変位が終わって元に近い状態に戻っても、弾性部材が損傷しているため、再度の地震等には対応できないという問題が生じる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
以下、図面を参照して、本発明の実施例1について説明する。図1〜図6に示すように、本実施例のマンホール1は、円筒形の筒体2,2・・・を組み立てる組立式マンホールであり、前記筒体2はプレキャストコンクリートなどからなるセグメントである。また、前記筒体2の直径(内径)は2000〜3500mm程度であり、マンホール1は地中に埋設され、土圧を受ける。尚、この例では、筒体2は周方向に一体のものを用いている。
上下の筒体2,2が重ね合わされ、上下の筒体2,2の下端面3と上端面4との間に5mm程度の目地部5を設け、この目地部5には充填材6などが充填される。尚、前記目地部5が重ね合せ箇所である。また、前記下端面3と上端面4が接合面であり、この例では、前記下端面3と上端面4は平坦面に形成されている。
継手構造10として以下の構成を備える。尚、この例では、継手構造10は目地部5を挟んで上下対称に設けられている。
前記上下の筒体2,2の内周面2Nには前記目地部5を挟んで凹部11,11が形成されている。この凹部11は、前記端面3,4から離れて形成された支圧面部12と、この支圧面部12と筒体2の長さ方向に間隔を置いて配置された頂面部13と、これら支圧面部12と頂面部13との間に設けられた左,右側面部14,14及び底面部15とを備え、前記頂面部13と底面部15との間には斜面部16が設けられ、前記凹部11は筒体2の長さ方向に長く形成されている。
目地部5を挟んだ両側の凹部11,11間には、上,下端面3,4を貫通して両側の支圧面部12,12に連通する貫通孔17が穿設され、この貫通孔17は上下の筒体2,2に上,下貫通孔18,18を穿設してなる。尚、筒体2において、前記支圧面部12と端面3,4との間の部分が受圧部19であり、受圧部19の長さは、後述するボルト21の降伏荷重より受圧部19部分のコンクリートの押し抜きせん断耐力が大きくなるように設定することが、ボルト21から加わる荷重を受ける面から好ましい。
前記貫通孔17には棒状材たるボルト21を挿通し、このボルト21の端部21T,21Tを両凹部11,11内に臨ませ、前記端部21T,21Tに定着具たるナット22,22を螺合している。そして、前記支圧面部12とナット22との間には、ボルト21以外の弾性変形により目地部5の目開きを許容する弾性構造23が設けられている。尚、ボルト21は、鋼製のものが用いられ、JIS規格でSS400やS45Cが例示される。
前記弾性構造23は、前記支圧面部12にリング型の支圧板24を重ねて設け、また、ナット22に、リング型のナット側支圧板25を重ねて設けている。前記支圧板24,25の間には、リング型の弾性ワッシャ26,26,26を複数設け、この例では3枚用いている。また、支圧板24,弾性ワッシャ26,26,26及び支圧板25の間には支圧板27が設けられ、この支圧板27は前記支圧板24,25より薄く形成されている。また、前記支圧板24,25,27には前記ボルト21を挿通する透孔24T,25T,26Tが穿設されている。前記支圧板24,25,27の外径及び透孔24T,25T,26Tは円形である。
前記支圧板27の直径はゴム板31より大きく、鞘管36の直径より僅かに小さく、後述する充填材が硬化した後、鞘管36内の空間で、ゴム板31の圧縮時に支圧板27がボルト21の長さ方向に移動可能に構成している。また、支圧板24,25,27はゴム板31より硬質な鋼製などのものが用いられる。尚、図4などに示すように、支圧板27の直径はゴム板31の直径より大きく、支圧板27,27間におけるゴム板31の収縮時に、ゴム板31の外周への変形を許容する空間が支圧板27,27の間に形成される。このようにゴム板31は外周が拘束されていないため、収縮時に逃げる場所があることで、収縮が阻害されない。
前記弾性ワッシャ26は、弾性材料たるゴム板31を有し、このゴム板31はリング型をなし、中央に前記ボルト21を挿通する孔たる挿通孔32を有する。この挿通孔32内には、ゴム板31より硬質材料である鋼製のリング型ワッシャ33が設けられ、このワッシャ33には前記ボルト21を挿通する挿通孔33Tが設けられている。前記ゴム板31はワッシャ33より厚く形成され、ゴム板31とワッシャ33の他側面(図3(B)における下面)を面一にした状態で、ワッシャ33の一側面から上部に位置するゴム板31の部分が収縮代であり、この収縮代は、ゴム板31とワッシャ33の厚さの差である。このようにワッシャ33はゴム板31の変位量を制御するものであり、そのワッシャ33はゴム板31の挿通孔32に嵌め入れられている。また、ゴム板31とワッシャ33の外径及び挿通孔32,33Tは円形である。
また、前記ゴム板31の一側面31Mと前記挿通孔32との一側角部には、切り欠き部34を設けることにより、一側面31Mと前記挿通孔32との間にテーパー面35を設け、このテーパー面35は、一側に向かって拡大形成され、テーパー面35の他側はワッシャ33の一側面の外角部33Kから形成されている。このようにゴム板31の挿通孔32のワッシャ33より厚い部分とゴム板31の一側面31Mと間の一側角部に、切り欠き部34を設けている。この場合、テーパー面35の他側を外角部33Kより低く形成してもよく、低い場合も挿通孔33Tのストレート部分を残すことが、ゴム板31とワッシャ33の一体化を図る面で好ましい。
このように切り欠き部34を設けることより、ゴム板31が収縮し、ワッシャ33と支圧板27が重ね合わせた状態になっても、ゴム板31の一側面31Mの内側がワッシャ33と支圧板27に挟まれて収縮量を減らすことがなく、また、ゴム板31の挟まれた部分が損傷することがない。そして、前記継手構造10は筒体2の円周方向に間隔を置いて複数設けられる。
そして、本実施例の弾性構造23では複数のゴム板31,31・・・により所定の収縮代が得られるため、ゴム板31の変形がスムーズに行われ、初期状態に復帰後も再度の利用が可能となる。例えば、公知ではないが、単に所定の収縮代を得るため、従来例の円筒形状のゴム製弾性材料を長く形成した場合では、収縮時に円筒形状の弾性材料の内周面が内側に広がると共に、外周面が外側に広がり、取付用のスペースを取ったり、損傷し易くなったり、荷重に対して弾性変形が比例しなくなったりする。
前記継手構造10の施工においては、下の筒体2を設置した後、下の筒体2に弾性構造23とボルト21とナット22を配置し、下の筒体2の上端面4からボルト21の上部を突出した状態で、上の筒体2の貫通孔18をボルト21に合わせて上の筒体2を吊り下し、上,下端面4,3を目地部5を挟んで重ね合わせ、上の筒体2の凹部11に突出したボルト21の端部21Tに弾性構造23を取付ける。
また、両端の支圧板27,27の間に鞘管36を設けた後、凹部11内に固化性の充填材37を充填し、凹部11を塞ぐ。尚、充填材37としては無収縮モルタルなどが例示される。また、上記とは逆に、上の筒体2にボルト21を配置し、このボルト21を下の貫通孔18に挿入するようにして下の筒体2の上の筒体2を重ねるようにしてもよい。
このように鞘管36を配置することにより、鞘管36内に充填材37が入らず、ゴム板31の外周面と鞘管36との間に隙間が形成され、鞘管36内で、ゴム板31は、その外周側が規制されることなく、厚さ方向に収縮することが可能となる。このようにして筒体2,2・・・を3個以上積み重ね、2箇所以上の目地部5を設けたマンホール1を地中に埋設する。尚、塩化ビニールパイプなどからなる鞘管36に替えて、弾性構造23の周囲に充填材37の侵入を防止するシート状の部材を配置してもよい。この場合、径大な支圧板27によりシート状の部材の位置合わせなどの作業が容易となり、また、鞘管36を設ける場合も、鞘管36の位置合わせなどの作業が容易となる。
次に、前記構成につきその作用を説明する。マンホール1に地震力などが作用した場合、マンホール1が傾き、目地部5が開くことで地震時の力を吸収し、筒体2にひび割れが生じない。例えば、最下部の筒体2が岩盤に固定されている場合、マンホール1が傾くと、最下部の筒体2の上の目地部5に目開きが発生し、継手構造10のゴム板31が弾性変形により収縮する。この間の弾性変形は、比較的小さな力により生じ、変位制御ワッシャ33に支圧板27が当接すると、目開きの力に対してボルト21の弾性変形により対抗するため、大きな力が必要となり、これにより他の目地部5、例えば上隣りの目地部5に目開きが発生する。
このように1箇所の目地部5のボルト21のみに塑性変形又は破断が生じることを抑制し、複数の目地部5によりマンホール1の変位を吸収することができる。そして、地震終了後、マンホール1が地震前に戻ると、ゴム板31が弾性復元力により元の厚さに戻り、上述したように損傷することなく、再度の地震に対応可能となる。
以下、実験例について説明する。実験では、ボルト21はM20、材質S45C、長さ530mmのものを用い、支圧板24,25は直径80mm、内径21mm、厚さ12mmの鋼製のものを用いた。支圧板27は直径96mm、内径21mm、厚さ4.5mmの鋼製のものを用いた。ゴム板31は直径80mm、挿通孔32の直径とワッシャ33の外径は42mm、ワッシャ33の挿通孔33Tは直径21mmで、ゴム板31の厚さは15mm、ワッシャ33の厚さ10mmとし、テーパー面35の角度を45度とした。また、ゴム板31は、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータを用いた硬度(JIS A硬さ)で、90度のものを用いた。また、結果は記載しないが、ボルト21をSS400とし、ゴム板31の硬度を60度としたものの実験も行った。尚、このようにゴム板31とワッシャ33の厚さを設定することにより、1枚の弾性ワッシャ26の圧縮代は5mmとなり、6枚の弾性ワッシャ26を使用することより、上述した30mmの予想目開き量に対応することができる。また、弾性ワッシャ26の枚数を増やしたり、1枚当たりの圧縮代を大きく設定したりすることにより、上述した50mmの予想目開き量にも対応できる。
厚さ200mmの鉄筋コンクリート製の平板状供試体51、52を用い、供試体51は、ボルト長さ方向の長さが750mm、幅が1500mm、供試体52は同長さが750mm、幅が800mmのものを用いた。
平面コ字形の鋼製の架台53を用い、この架台53はボルト長さ方向の一対の腕部54,54を幅方向に間隔を置いて備え、これら腕部54,54の先端に前記供試体51を固定し、それら腕部54,54の基端側が幅方向の架台本体55に固定され、前記一対の腕部54,54の間に、前記供試体52を配置し、供試体51,52の間に目地部5に相当する部分56を設けている。
前記一対の腕部54,54の中央で、前記架台本体55に引張手段たるジャッキ57を設け、このジャッキ57の伸縮杆57Aを前記供試体52に連結している。また、目地部5に相当する部分56の間隔と、供試体51の移動量を測定する複数の変位計58が設けられている。さらに、供試体51,52の下面には、水平を保つレベルプレート59が複数配置され、このレベルプレート59の上面は低摩擦面になっている。
そして、供試体51,52に前記継手構造10を配置し、ジャッキ57により目地部5を開く実験を行い、図6のグラフ図に、目地部5に相当する部分56等の測定結果を示す。同グラフ図は縦軸にジャッキ57により加えた引張の荷重P(単位kN)、横軸に目開き量が0からの変位δ(単位mm)を取り、グラフ1は目開き量、グラフ2は供試体51の変位、グラフ3はグラフ1の近似直線である。また、近似直線におけるグラフ1の変位0側の近似直線は、ゴム板31の弾性変形範囲であり、直線の勾配の変わる直線変化点(A)から弾性限界点(B)までの近似直線がボルト21の弾性変位範囲である。これらを下記の表1に示す。また、実験から近似直線におけるグラフ1の変位0側の近似直線(下記の近似第一)は、P=0.38δ、直線変化点(A)から弾性限界点(B)までの近似直線(下記の近似第二)は、P=44.14δ−1117.89であった
上記のように、目地部5を開く力が加わると、初期には小さな力で目開きが起き、ゴム板31の圧縮が終わる直線変位点(A)からは、目開きに大きな力が必要となることがコンクリート供試体51,52を用いた実験でも確認された。
このように本実施例では、請求項1に対応して、隣り合うセグメントたる筒体2,2の接合面たる上,下端面4,3同士を合わせて接合するセグメントの継手構造において、隣り合う筒体2,2の表面に凹部11,11を形成すると共に、これら凹部11,11の端面4,3側の底部たる支圧面部12,12間に、端面4,3を貫通する貫通孔17を形成し、貫通孔17に棒状材たるボルト21を挿通すると共に、凹部11,11内においてボルト21の端部21Tに定着具たるナット22を設け、支圧面部12とナット22の間に弾性部材たる弾性ワッシャ26を配置し、弾性部材たる弾性ワッシャ26の周囲に充填材37の侵入を防止する部材たる鞘管36を設け、凹部11に充填材37を充填したから、上,下端面4,3に目開きが生じると、弾性係数の小さい弾性ワッシャ26が収縮し、目開きが所定量に達すると、弾性係数の大きなボルト21に張力が働き、目開きが抑えられ、他の上,下端面4,3間において目開きが発生する。また、凹部11,11間に棒状材たるボルト21を挿通し、このボルト21の端部21T,21Tに弾性構造23,23を設け、これら弾性構造23,23を凹部11,11内に収納したから、構造簡易にして、筒体2の厚さ内に継手構造10を配置することができる。また、弾性ワッシャ26は、その周囲が充填材37により規制されることがなく、収縮することが可能となる。
このように本実施例では、請求項2に対応して、弾性部材たる弾性ワッシャ26の外周面と充填材37の侵入を防止する部材たる鞘管36との間に隙間が形成されているから、弾性ワッシャ26が充填材37により拘束されることがない。
このように本実施例では、請求項3に対応して、充填材37の侵入を防止する部材が鞘管36であるから、鞘管36内に充填材37が入らず、弾性ワッシャ26の周囲に充填材37が侵入することを防止できる。
このように本実施例では、請求項4に対応して、底部たる支圧面部12と定着具たるナット22の間に複数の弾性部材たる弾性ワッシャ26,26を配置したから、接合面たる上,下端面4,3に目開きが生じると、弾性係数の小さい複数の弾性ワッシャ26,26が収縮する。
このように本実施例では、請求項5に対応して、貫通孔17に棒状材たるボルト21を挿通したから、貫通孔17と弾性ワッシャ26にボルト21が挿通される。
以下、実施例上の効果として、このように本実施例では、底部たる支圧面部12と定着具たるナット22の間に複数の弾性部材たる弾性ワッシャ26を配置したから、上,下端面4,3に目開きが生じると、弾性係数の小さい複数の弾性ワッシャ26が収縮し、目開きが所定量に達すると、弾性係数の大きなボルト21に張力が働き、目開きが抑えられ、他の上,下端面4,3間において目開きが発生する。
このように本実施例では、弾性部材たる弾性ワッシャ26がゴム板31を有し、このゴム板31に棒状材たるボルト21を挿通する孔たる挿通孔32を形成したから、目地部5の目開きにより、複数のゴム板31,31が圧縮変形することにより所定の圧縮代が得られる。
このように本実施例では、複数のゴム板31,31の間に支圧板27を配置したから、目開きにより支圧板27に挟まれたゴム板31が略均一に圧縮変形する。
このように本実施例では、ゴム板31の外形より支圧板27の外形が大きいから、外形の大きな支圧板27,27間により、収縮時のゴム板31の外側への変形を許容するスペースを確保することができる。
このように本実施例では、弾性部材たる弾性ワッシャ26には、挿通孔32と棒状材たるボルト21との間に、硬質材料からなりゴム板31より薄いワッシャ33を配置したから、ゴム板31がワッシャ33の厚さになるまで圧縮され、圧縮量が制御される。
このように本実施例では、ゴム板31は、孔たる挿通孔32の一側にワッシャ33より厚い部分を有し、挿通孔32とゴム板31の一側面31Mとの間の一側角部に切り欠き部34を設けたから、ゴム板31が圧縮され、ゴム板31の内,外周面が膨らんでも、切り欠き部34により一側角部が支圧板27とワッシャ33に挟まれて損傷することを防止できる。
このように本実施例では、ゴム板31の他側面と挿通孔32の他側角部に切り欠き部34Aを設けたから、ゴム板31の内周面側の損傷を更に防止できる。
このように本実施例では、筒体2の内面たる内周面2Nに凹部11を形成し、凹部11に充填材37を充填したから、凹部11内の部材の防水性を確保することができ、内部に水が浸入する構造物に適した構造となる。
また、実施例上の効果として、ゴム板31の厚さが15mm、ワッシャ33の厚さ10mmで、ゴム板31の圧縮代がゴム板31の厚さの1/2以下であるから、荷重に対して比例した弾性変形が確実になされると共に、大きく潰されないため圧潰することがなく、復帰後も再度同様な弾性変形による効果を奏することができ、このためゴム板31の圧縮代をゴム板31の厚さの0.2〜0.5倍とすることが好ましい。
また、凹部11,11が端面3,4から離れているから、ボルト21の長さを稼ぐことができる。さらに、ゴム板31の外周面と硬化した充填材37との間に隙間が形成されるから、拘束されることなく充填材37内でゴム板31が収縮可能となる。また、凹部11を筒体2の内周面2Nに設けたから、地中構造物であるマンホール1の内部に作業員が入って弾性構造23の取付作業を行うことができる。
図7は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では、前記ゴム板31の他側面の内角部に切り欠き部34Aを設け、テーパー面35Aを形成している。
このように本実施例においても、上記実施例1と同様な作用・効果を奏し、また、この例では、前記ゴム板31の他側面の内角部に切り欠き部34Aを設けることにより、一層、圧縮時のゴム板31の損傷を防止することができる
図8は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では、弾性構造23として、支圧板24,25の間に、弾性部材たる圧縮コイルバネ41を配置している。この圧縮コイルバネ41は、断面が方形で、厚さ方向を前記ボルト21の長さ方向に配置している。
従って、目地部5に目開きが生じると、始めは圧縮コイルバネ41が収縮した後、ボルト21が伸びる方向に弾性変形が生じる。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。また、この例では、1本の圧縮コイルバネ41により所定の圧縮代が得られるから、部品点数を削減することができ、部品管理及び取付作業が容易となる。さらに、収縮時における圧縮コイルバネ41の径方向の拡大が僅かであるから、ゴム板31に比べて弾性構造23の直径寸法を抑えることができる
図9は本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では、弾性構造23として、支圧板24とナット22との間に、弾性部材たる複数のスプリングワッシャ43,43・・・を配置すると共に、隣り合うナット22,スプリングワッシャ43,43,支圧板24の間に支圧板27を配置している。
従って、目地部5に目開きが生じると、初めは複数のスプリングワッシャ43が偏平になるように収縮した後、ボルト21が伸びる方向に弾性変形が生じ、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する
図10は本発明の実施例5示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では、弾性構造23として、支圧板24とナット22側の支圧板27との間に、弾性部材たる複数の皿バネ45,45・・・を配置し、この皿バネ45にボルト21を挿通しており、前記ナット22に支圧板27の一側面を当てて配置し、この支圧板27の他側面に皿バネ45の内周側を当てて配置し、この皿バネ45の外周側に下の皿バネ45の外周側を当てて配置し、このように皿バネ45の向きを交互に上下にして配置し、前記支圧板24の一側面には皿バネ45の内周側が当接している。
従って、目地部5に目開きが生じると、始めは複数の皿バネ45が偏平になるように収縮した後、ボルト21が伸びる方向に弾性変形が生じ、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図11は本発明の実施例6を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例のセグメントは、ボックスカルバートを構成する箱形の筒体2であり、隣り合う筒体2の頂板部47、底板部48及び左右側板部49,49の内面に前記凹部11,11を形成し、筒体2の長さ方向の接合面5S,5Sを合わせ、接合面5S,5S間に目地部5を形成し、この目地部5を挟んで継手構造10を設けている。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。また、上記各実施例がセグメントを上下に積み重ねるのに対して、この例のように、左右にセグメントを連結する地中構造物にも本継手構造10を適用することができる。
図12〜図21は本発明の実施例7を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では、上記各実施例の継手構造10に、止水継手構造101を組み合わせている。
止水継手構造101として以下の構成を備える。前記上下の筒体2,2の外周には前記目地部5の上下を跨ぐように、侵入防止部材111が設けられている。この侵入防止部材111は、鉄板やステンレス鋼板などからなり、高さが一定なリング体を分割した複数の円弧状分割体112,112・・・からなり、図14では円周方向等間隔で5分割したものを例示している。尚、前記リング体の分割数は分割体112を人力で取り扱える重量を基準にして決めるので、筒体2が大きくなれば増加する。
前記侵入防止部材111は、厚さが0.5〜2mm程度で、前記高さHが70〜150mm程度である。前記高さHは、予想される地震などにより目地部5が開く量の2倍以上とし、これにより地震時などでも目地部5を覆うことができる。また、直径(内径)が2000〜3500mm程度で、地震などにより目地部5が開く量は略30mmと予想されるから、上記の寸法とした。前記侵入防止部材111は上下の筒体2のずれによるせん断等に対抗する構造材ではなく、後述する弾性筒状体121の目地部5への侵入を防止するものであるから、上記の厚さとした。尚、条件により目地部5が開く量は略50mmと予想して設計する場合もある。
前記円弧状分割体112はゴム系接着剤により前記上下の筒体2,2の目地部5に跨って貼り付けられる。この場合、周方向に隣り合う円弧状分割体112,112・・・の周方向端縁112F,112F同士を合わせるように貼り付けることが好ましいが、必ずしも端縁112F,112F同士を密着させる必要はなく、端縁112F,112F間に多少の隙間があっても弾性筒状体121が目地部5に侵入しなければよい。
また、円弧状分割体112を筒体2の外周に貼り付ける際は、円弧状分割体112の高さ方向中央が目地部5に位置するようにする。この場合、全ての前記円弧状分割体112,112・・・の内周には、図15に示すように、その高さ方向中央に係合部113を設け、この係合部113が前記目地部5に係入する。前記係合部113はT形リブや突起などからなり、前記円弧状分割体112の内周に溶着して設けられる。また、図15に示したように、下端面3と上端面4の外周側の面取り部3M,4Mの間に前記係合部113を挿入するようにしてもよい。尚、1つの円弧状分割体112の内周に、周方向に間隔を置いて複数の係合部113を設けてもよい。このように目地部5に係合部113を係合することにより、貼り付け時の作業が容易となり、また、目地部5に対する円弧状分割体112の高さ位置の偏りを防止することができる。
また、前記上下の筒体2,2の外周には、止水のために上,下弾性リング部材114A,114Bが配置され、これら上,下弾性リング部材114A,114Bは環状の丸ゴムなどからなる。このため、上下の筒体2,2の外周には、上,下リング部材用溝部115A,115Bが周設されている。この例では、断面円形の弾性リング部材114A,114Bに対応して、略半円形のリング部材用溝部115A,115Bが形成されている。これらリング部材用溝部115A,115Bの深さは弾性リング部材114A,114Bの直径の1/2〜1/3程度が好ましい。また、リング部材用溝部115A,115Bに嵌めることにより接着を不要とすることができる。
また、図13に示すように、上側のリング部材用溝部115Aは、前記侵入防止部材111の上端より上方に設けられ、下側のリング部材用溝部115Bは、前記侵入防止部材111の下端より下方に設けられ、上端と上側のリング部材用溝部115Aのリング部材114Aとの間隔H1と、下端と下側のリング部材用溝部115Bのリング部材114Bとの間隔H1とは、10mm以上が望ましく、前記間隔H1を15〜20mm程度としている。即ち、弾性リング部材114A,114Bの位置は、弾性リング部材114A,114Bの外側に侵入防止部材111が乗り上げるか、または弾性リング部材114A,114Bが侵入防止部材111の外周に乗り上げると止水性がなくなるので、侵入防止部材111から離れた位置にしており、上述したように間隔H1を10mm以上とした。尚、施工性は劣るが、溝部115A,115Bを設けないようにすることもでき、この場合は筒体2の外周に接着することが好ましい。
また、前記弾性リング部材114A,114Bは、硬い方が丸ゴムの効果が発揮できるので、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータを用いた硬度(JIS A硬さ)で、50〜70度、60度程度が好ましい。
ゴムなどの弾性体からなる前記弾性筒状体121は、円筒形の筒本体122と、この筒本体122の上下に一体に設けられた上,下取付部123A,123Bとを一体に備え、上,下取付部123A,123Bは前記筒本体122より肉厚に形成されている。前記弾性筒状体121の高さH2は、侵入防止部材111の高さと上,下取付部123A,123Bの高さから決まるが、侵入防止部材111の高さに200mm程度加えた高さが好ましい。尚、前記弾性筒状体121は上下対称である。尚、弾性筒状体121は、筒本体122と上,下取付部123A,123Bとを同じ肉厚にすることもできる。
また、前記筒本体122の内周長は、前記筒体2の外周長と同じか若干短めに形成されている。即ち、筒体2が円筒形状の場合、筒本体122の内径は筒体2の外径と同一か若干小さく形成されている。したがって、実際の装着状態では図13に示すように、筒本体122は筒体2の外周及び侵入防止部材111の外周に接する。また、図17などに示すように、上,下取付部123A,123Bは、前記筒本体122に比べて厚く、且つ前記筒本体122の内径と、凹凸部116を除いた上,下取付部123A,123Bの内径Dが略同一に形成されている。即ち、筒本体122の内面の周長と、凹凸部126を除いた上,下取付部123A,123Bの内面の周長が略同一に形成されている。
前記上,下取付部123A,123Bの外周には、上下にバンド用の凹部124,124を形成し、これら凹部124,124にそれぞれ締付手段たる締付バンド125,125を装着する。図12では、締付バンド125は上,下取付部123A,123Bに2本ずつ装着しているが、1本でもよく、3本以上でもよい。また、上,下取付部123A,123Bの内周には、断面が略三角形の凹部と凸部が上下に並んだ凹凸部126が形成されている。さらに、前記上下の筒体2,2の外周には、前記上,下取付部123A,123Bに対応して、取付部用溝部127,127が周設されており、この取付部用溝部127の底部は筒体2の外周より小径に形成されている。
そして、上下の取付部用溝部127,127に前記上,下取付部123A,123Bを配置し、締付バンド125,125により前記上,下取付部123A,123Bを締め付けて筒体2に取付固定する。尚、弾性筒状体121の前記硬度は、40〜50程度であり、前記弾性リング部材114A,114Bに比べて柔らかい。このように上,下取付部123A,123Bが比較的柔らかいため、締付バンド125,125による締付により、凹凸部126が凹んで溝部127の底部との接触面積が大きくなり止水性が向上する。また、取付部用溝部127を設けることにより、溝部127からの上,下取付部123A,123Bの抜け出し防止、位置決めの目安、さらに、溝部127を接着剤又は滑材のスペースとして使用することができる。
また、取付部用溝部127を設けることにより上,下取付部123A,123Bの取付周長が短くなることにより、取付状態において上,下取付部123A,123Bの伸びを緩和することができる。即ち、上述したように弾性筒状体121の内周長は、筒体2の外周長と同一か若干短く形成されているから、筒体2の外周には弾性筒状体121を周方向に伸ばしながら装着する必要があるが、溝部127により上,下取付部123A,123Bの伸びが軽減され、加わるストレスが減る。そして、取付部123A,123Bと筒本体122の内径は略同一であり、目地部5が開いたときに、筒体2に比べて周長の短い取付部用溝部127の取付部123A,123Bに加わる引っ張り力は、他の筒本体122より小さくなり、締め付け力の効果が上がる。
次に、前記止水継手構造101の施工方法について説明する。上,下リング部材用溝部115A,115Bに上,下弾性リング部材114A,114Bを装着する。また、上,下の筒体2,2のいずれか一方に弾性筒状体121を外装する。この場合、上リング部材用溝部115Aの上方又は下リング部材用溝部115Bの下方に弾性筒状体121を外装しておく。
この後、上下の筒体2,2を重ね合せ、その目地部5に係合部113を挿入して複数の円弧状分割体112により目地部5を囲み、円弧状分割体112を上,下の筒体2,2の少なくとも一方の外周に接着剤により接着する。尚、この例では、下の筒体2の外周に円弧状分割体112を接着する。このようにして侵入防止部材111を目地部5の上下に跨って取り付けた後、上,下の筒体2,2のいずれか一方に外装していた弾性筒状体121を移動し、上,下の取付部用溝部127,127に上,下取付部123A,123Bを嵌める。この場合、外装していた弾性筒状体121を周方向に伸ばした状態で移動する。
上,下取付部123A,123Bの凹部124,124に締付バンド125,125を外装し、これら締付バンド125,125により上,下取付部123A,123Bを締め付けて凹部124,124に固定する。
尚、筒体2の外周に取付部用溝部127を設けずに、筒体2の外周に上,下取付部123A,123Bを取付固定してもよい。
そして、マンホール1に地震力などが作用した場合、マンホール1が傾き、目地部5が開くことで地震時の力を吸収し、筒体2にひび割れが生じない。そして、図20に示すように、下の筒体2に対して上の筒体2が傾くと、傾いた反対側の目地部5が広がる。上の筒体2が傾くと、侵入防止部材111は上下の筒体2,2に接着されているが、接着剤はゴム糊であり、筒体2の動きを止めるほどの力はないので、目地部5が開き、主として筒本体122が伸びる。この時も外部から地下水圧がマンホール1に作用し続けており、筒本体122は水圧でマンホール1の内側に押されるが、薄板鋼板などからなる侵入防止部材111が開いた目地部5を覆っているため、目地部5に筒本体122が嵌ることがない。このように筒本体122は上下方向のみに伸び、地震終了後は、地震前に戻ることができる。
このように目地部5が開く場合、上記各実施例での継手構造10を組み合わせることにより、初めは弾性構造23が収縮し、この後、ボルト21が弾性変形することにより、1箇所の目地部5のみの目開きが拡大することなく、複数の目地部5において、目開きが行われる。
従って、本実施例の止水継手構造101や他の従来の止水継手構造において、1箇所の目地部5のみが大きく開くことを防止し、他の従来の止水継手構造の弾性材料が伸びきったり、損傷したりすることを防止できる。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。また、この例のように、目地部5に跨って止水継手構造101を設け、ゴムなどの弾性体により目地部5からの水の侵入を防止する止水継手構造101に、上記各実施例の継手構造10を組み合わせることができる。
図22は本発明の実施例8を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では、ゴム板31の他側面が前記ワッシャ33の他側面より離れた位置にあり、即ち、ゴム板31のワッシャ33より厚い部分がワッシャ33の一側面と他側面にそれぞれ設けられ、例えばゴム板31の厚さが20mm、ワッシャ33の厚さ10mmで、一側面31M側と他側面側にそれぞれ5mmの圧縮代があり、ゴム板31の圧縮代はゴム板31の厚さの1/2以下である。
また、ゴム板31の挿通孔32のワッシャ33より厚い部分とゴム板31の他側面との間の他側角部に、切り欠き部34Bを設けることにより、ゴム板31の他側面と前記挿通孔32と間にテーパー面35Bを設け、このテーパー面35Bは、他側に向かって拡大形成され、テーパー面35Bの一側はワッシャ33の他側面の外角部33K´から形成されている。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏し、また、この例では、前記ゴム板31の一側面及び他側面の内角部に切り欠き部34,34Bを設けることにより、一層、圧縮時のゴム板31の損傷を防止することができると共に圧縮代を大きく取ることができる。さらに、ゴム板31のワッシャ33より厚い部分をゴム板31の一側面と他側面にそれぞれ等しく設けた場合、弾性ワッシャ26が上下対称となるから、取付け時に向きを気にする必要がなくなり、作業性が向上する。
尚、本発明は以上の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、セグメントが平面円形のマンホールに用いるものを例に説明したが、筒体は平面角形でもよい。また、棒状材はボルトに限らず、螺子部のない鋼棒やPC鋼材などの棒状のものでもよい。さらに、切り欠き部はテーパー状に切欠く以外でも、R状に切欠いたものでもよい。また、実施例では、セグメントの内面に凹部を設けたが、外面に凹部を設けてもよく、さらに、目地部を挟む一方の凹部を内面、他方の凹部を外面に設けてもよい。