JP6875716B2 - パーキンソン病モデル非ヒト動物 - Google Patents

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Description

本発明は、パーキンソン病モデル非ヒト動物、当該モデル非ヒト動物の作製方法、及び当該モデル非ヒト動物の利用に関する。
高齢化社会に突入した今日、加齢に伴う様々な疾病が急増しているが、中でも脳・神経系の破綻を原因とする老人性疾患は増加の一途を辿っている。神経変性疾患の1種であるパーキンソン病についても、有病率の上昇が確実視されるなか、病気の進行に伴う生活の質の激しい低下と付随する介護費用の増加は大きな社会問題となっている。今後予想される社会的損失を軽減させるには予防や新規治療法の開発が有効であることが、国内外での学術的分析から指摘されている。
パーキンソン病は、安静時振戦、筋強剛(筋固縮)、無動・寡動、姿勢反射障害などの運動障害を呈し、α−シヌクレインを主要構成成分とするレビー小体と呼ばれるタンパク質凝集体の形成とドーパミン神経の特異的な変性を病理学的特徴とする。しかしながら、その原因については謎が多い。パーキンソン病の治療は、主に薬物療法と手術療法であり、病気が進行してからのアプローチが中心である。一方、早期の介入が望ましいとの知見が集積しつつあるも、未だ十分な成果があったとは言い難い。そのような理由の一つに、パーキンソン病の病態を十分に再現したモデル動物が存在しないことが挙げられる。
従来、パーキンソン病のモデル動物は、神経毒を投与する方法と、パーキンソン病関連遺伝子を改変する方法の、大きく分けて二種類の方法により作製されてきた(非特許文献1)。しかしながら、神経毒投与動物では、一過性神経細胞死は起こるものの凝集体は観察されず、他方、遺伝子改変動物では、一部に凝集体類似の病理像を示すものの神経細胞死までは観察されないという欠点があった。このように、パーキンソン病に必須の凝集体形成と神経細胞死という二つの病理像をあわせもち、かつ運動障害を呈するモデル動物は得られていないのが現状であり、パーキンソン病の病態をよりよく再現したモデル動物の作出が望まれている。
一方、細胞の有するタンパク質分解系の1つにオートファジーリソソーム系がある。オートファジー関連遺伝子(autophagy related gene)の1種であるatg7遺伝子を中脳ドーパミン細胞で欠損させたマウスにおいて、樹状突起、軸索ジストロフィー、線条体のドーパミン量低下、ユビキチン化封入体が認められたことが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、レビー小体の形成、黒質緻密部でのドーパミン細胞減少、運動障害等のパーキンソン病に特有の病理、病態については記載されていない。
望月 秀樹、早川 英規、安田 徹、CRJ letters 2008. Lauren G. Friedman, M. Lenard Lachenmayer, Jing Wang, Liqiang He, Shinobu M. Poulose, Masaaki Komatsu, Gay R. Holstein, and Zhenyu Yue, The Journal of Neuroscience, 2012, 32(22): 7585-7593.
本発明の課題は、新たなパーキンソン病モデル非ヒト動物、当該モデル非ヒト動物の作製方法、及び当該モデル非ヒト動物を用いたパーキンソン病治療薬のスクリーニング方法を提供することにある。
そこで、本発明者らは、一般的に凝集体形成の要因としてタンパク質分解系(プロテアソーム系とオートファジーリソソーム系)の異常が推定されていることに鑑み、タンパク質分解系の1つであるオートファジーリソソーム系で働くatg7遺伝子に注目した。そして、ドーパミン神経特異的にオートファジー機能を欠損させるべく、Creリコンビナーゼ標的配列loxPに前後を挟まれた(floxed)atg7遺伝子をホモ接合型で有するマウス(Atg7 F/F)を作製し、これをチロシン水酸化酵素(TH)プロモーターにより発現制御されたcre遺伝子を有するマウス(TH−Cre)と交配させて、loxPに前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有し、さらにTHプロモーターにより発現制御されたcre遺伝子を有するマウス(Atg7 F/F:TH−Cre)を作製したところ、当該Atg7 F/F:TH−Creマウスにおいて、早期の段階からα−シヌクレインを含有する凝集体が認められること、黒質緻密部におけるドーパミン細胞の減少が認められることを見出した。さらに、当該Atg7 F/F:TH−Creマウスが加齢に伴い運動障害を呈し、パーキンソン病モデル動物として有用であることを見出した。
かかる知見に基づき、さらに検討した結果、当該パーキンソン病モデル動物に被験物質を投与した場合に、運動機能、レビー小体様の構造の凝集体及び黒質緻密部のドーパミン細胞から選ばれる1以上を指標とすれば、パーキンソン病治療薬のスクリーニングが可能になることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔6〕を提供するものである。
〔1〕ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したパーキンソン病モデル非ヒト動物であって、下記の(1)〜(3)の全ての性質を有することを特徴とするパーキンソン病モデル非ヒト動物。
(1)加齢に伴い野生型動物に比して運動機能が低下する
(2)ドーパミン細胞にレビー小体様の構造の凝集体を有する
(3)黒質緻密部において野生型動物に比してドーパミン細胞が減少している
〔2〕Creリコンビナーゼ標的配列loxPに前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有し、さらにチロシン水酸化酵素(TH)プロモーターにより発現制御されたcre遺伝子を有するものである〔1〕記載のパーキンソン病モデル非ヒト動物。
〔3〕非ヒト動物が齧歯動物である〔1〕又は〔2〕記載のパーキンソン病モデル非ヒト動物。
〔4〕非ヒト動物がマウスである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のパーキンソン病モデル非ヒト動物。
〔5〕Creリコンビナーゼ標的配列loxPに前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有する非ヒト動物をTHプロモーターにより発現制御されるcre遺伝子を有する非ヒト動物と交配させることを特徴とするパーキンソン病モデル非ヒト動物の作製方法。
〔6〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のパーキンソン病モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、運動機能、レビー小体様の構造の凝集体及び黒質緻密部のドーパミン細胞から選ばれる1以上を測定することを特徴とするパーキンソン病治療薬のスクリーニング方法。
本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、加齢に伴い運動障害を呈するとともに、ドーパミン細胞にレビー小体様の構造の凝集体を有し、黒質緻密部においてドーパミン細胞が減少するという病理像をあわせもち、パーキンソン病の病態をよりよく再現していることから、パーキンソン病の予防や新規治療法の開発に有用である。また当該パーキンソン病モデル非ヒト動物を用いれば、パーキンソン病の治療薬のスクリーニングも可能となる。
ロタロッド試験におけるAtg7 F/F:TH−CreマウスとAtg F/Fマウスの落下潜時を示すグラフ(赤:Atg7 F/F:TH−Creマウス、青:Atg7 F/Fマウス、縦軸:落下潜時、横軸:週齢、P**<0.01)。 a:ビーム課題におけるAtg F/Fマウスの歩行状態を示す図。b:ビーム課題におけるAtg7 F/F:TH−Creマウスの歩行状態を示す図。 a:120週齢のAtg7 F/F:TH−Creマウスのドーパミン細胞の電子顕微鏡像。b:aの枠内の拡大図。 Atg7 F/F:TH−CreマウスとAtg F/Fマウスの中脳黒質部分を含む浮遊切片の免疫染色図(DAPI:Blue(核)、シヌクレイン:Green、p62:Red)。 A:Atg7 F/F:TH−CreマウスとAtg F/Fマウスの中脳黒質部分を含むパラフィン切片の免疫染色図(SNm:内側部、SNI:外側部、SNc:緻密部)。B:Atg7 F/F:TH−CreマウスとAtg F/Fマウスの中脳各部のドーパミン細胞数を示すグラフ(P**<0.01)。
本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損した非ヒト動物である。ここで、atg7遺伝子とは、オートファジー関連遺伝子の1つである。様々な種のatg7遺伝子及びatg7遺伝子を含むゲノムの塩基配列がデータベースに登録されており、例えばマウスの場合、GenBank accession No.BC058597として登録されている。atg7遺伝子は、オートファゴソームの形成に必須のE1様活性化酵素をコードしており、これを欠損するとオートファジーが正常に機能しないと考えられる。
「ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損した非ヒト動物」とは、ドーパミン細胞において染色体上のatg7遺伝子が例えば破壊又は除去されてノックアウトされ、E1様活性化酵素として機能するタンパク質を産生することができないか或いは遺伝子産物が得られてもそのタンパク質がE1様活性化酵素として機能しない非ヒト動物をいう。具体的には、ドーパミン細胞のみでatg7遺伝子のプロモーター領域又はコード領域の塩基配列の欠失、挿入又は置換等によってその機能が破壊された非ヒト動物等が挙げられる。すなわち、「ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損した非ヒト動物」とは、atg7遺伝子を遺伝子工学的な手法を用い改変(操作)して作出された、ドーパミン細胞特異的なatg7遺伝子発現不全非ヒト動物、すなわちドーパミン神経特異的オートファジー機能不全非ヒト動物を意味する。なお、当該非ヒト動物のドーパミン神経以外の組織でのatg7遺伝子の発現は、野生型非ヒト動物における発現と同等である。
「非ヒト動物」としては、atg7遺伝子を有するヒト以外の動物であればいずれでもよいが、非ヒト哺乳動物が好ましい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが挙げられるが、病態動物モデル系の作製の面から、個体発生及び生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易な齧歯動物、とりわけマウス又はラットが好ましい。
ドーパミン細胞において染色体上のatg7遺伝子をノックアウトするには、通常染色体上の遺伝子をノックアウトするのに用いられている方法を適用することができ、好ましくは、コンディショナルノックアウト法を用いることができる。コンディショナルノックアウト法は、標的遺伝子の不活化を組織又は時期特異的にコントロールする方法で、例えば、標的遺伝子の全部又は一部をDNA組換え酵素であるリコンビナーゼの標的配列で挟んだ遺伝子座を有する非ヒト動物を、当該標的配列を認識するリコンビナーゼを組織又は時期特異的に発現する非ヒト動物と交配させることで、標的遺伝子が組織又は時期特異的に不活化された非ヒト動物を得ることができる。
リコンビナーゼと標的配列の組み合わせとしては、CreリコンビナーゼとloxP配列(Cre−loxPシステム)又はFLPリコンビナーゼとFRT配列(FLP−FRTシステム)等が挙げられる。このうち、Cre−loxPシステムは、バクテリオファージP1の有する部位特異的組換えシステムを利用したもので、loxP配列と称されるバクテリオファージP1のゲノム由来の34塩基からなるDNA配列に対し、DNA組換え酵素であるCreリコンビナーゼが働き、loxP配列同士の間で部位特異的組換えを生じる。FLP−FRTシステムは、出芽酵母由来のFRT配列にFLPリコンビナーゼが働き、FRT配列同士の間で部位特異的組換えを生じる。Creリコンビナーゼ又はFLPリコンビナーゼを発現するためのプロモーターを選択することにより、標的遺伝子の改変を組織又は時期特異的にコントロールできるため、これらシステムはコンディショナルノックアウト法に好適に利用される。
本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、例えば、リコンビナーゼ標的配列に前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有する非ヒト動物を作製し、これとドーパミン細胞特異的に当該標的配列を認識するリコンビナーゼを発現する非ヒト動物とを交配することで得ることができる。以下に、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物の代表的な作製方法について、マウスを例にとり詳細に説明するが、これに限定されるものではなく、また他の非ヒト動物でも同様にして作製し得る。
(1)リコンビナーゼ標的配列で前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有するマウスの作製
まず、マウスatg7遺伝子の機能を欠損させるための相同組換え用ターゲティングベクターを作製する。ターゲティングベクターは、データベース等より得た塩基配列情報をもとに、欠失させるatg7遺伝子の領域を決め、その上流及び下流にリコンビナーゼ標的配列を同じ向きで挿入し、さらにその上流及び下流に欠失させる領域の両端のゲノム領域(1〜8kb程度)を相同組換えに必要な相同領域として配置して設計すればよい。欠失させるatg7遺伝子の領域は、特に制限されず、atg7遺伝子の全部でも一部でもよいが、一部を用いる場合、機能ドメインを含むエキソン等、その領域が失われると機能する遺伝子産物が得られなくなる領域が好ましい。例えば、活性部位のシステイン残基が存在するエキソン14を含む領域が挙げられる。このとき、リコンビナーゼを発現しない細胞では、正常な遺伝子産物が得られるようにする点に留意する。相同領域については、相同組換え効率、相同組換えを起こした細胞の同定方法等を考慮して設計するのが好ましい。
Cre−loxPシステムを利用する場合、ターゲティングベクターは、例えば、同じ向きのloxP配列で前後を挟まれたatg7遺伝子の全部又は一部を含み、その上流及び下流に相同領域を含む。Creリコンビナーゼ発現下では、染色体上のloxP配列で挟まれたatg7遺伝子は切り出され、正常な遺伝子産物が得られなくなる。
また、ターゲティングベクターには、ベクターが取り込まれた細胞や目的とする相同組換えの起こっている可能性の高い細胞を選択するためのマーカー遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(hyg)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)、ジフテリアトキシンAフラグメント遺伝子(DT−A)、チミジンキナーゼ遺伝子(tk)等の薬剤選択に通常用いられる遺伝子が挿入されていることが好ましい。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子は、ネオマイシン類似体であるG418を用いることにより相同組換えが生じた細胞の選抜を可能にするポジティブ選択用マーカー遺伝子である。また、目的細胞を選抜するためのネガティブ選択に用いるマーカー遺伝子、例えばチミジンキナーゼ遺伝子(選択剤としてガンシクロビル等を用い、それに対する感受性により非相同組換え体を選抜除去する)、ジフテリアトキシンAフラグメント遺伝子(DT−Aにより発現されたジフテリア毒素により、非相同組換え体を選抜除去する)等をポジティブ選択用マーカー遺伝子と共に用いることもできる。ターゲティングベクターにおいて、ポジティブ選択用マーカー遺伝子は、上流と下流の相同領域に挟まれた領域に位置するのが好ましく、リコンビナーゼ存在下でマーカー遺伝子が切り出されることからリコンビナーゼ標的配列に挟まれた領域に位置するのがさらに好ましい。また、ポジティブ選択用マーカー遺伝子を、atg7遺伝子の切り出しに用いるのとは異なるリコンビナーゼ標的配列で挟んでおけば、後で当該リコンビナーゼによりマーカー遺伝子のみを除去することもできる。ネガティブ選択用マーカー遺伝子は、上流又は下流の相同領域の外側の領域に位置するのが好ましい。
斯かるターゲティングベクターの調製は、通常のDNA組換え技術により行うことができ、例えば、常法に従ってクローニングしたatg7遺伝子やBACクローンを利用して、これを適当な制限酵素で切断して得られる断片、又はPCR法などにより増幅して調製したDNA断片等を、合成されたリンカーDNAやレポーター遺伝子、薬剤耐性マーカー遺伝子を含む断片等と、前記のような設計に従って適当な順序で結合させればよい。
次に、調製した相同組換え用ターゲティングベクターを、通常キメラ動物の作出に用いられる適当な細胞に導入する。ここで用いる細胞は、例えば卵細胞や胚性幹細胞(ES細胞)が挙げられるが、生体のあらゆる種類の細胞に分化することができる多分化能を有している点でES細胞が好ましい。
ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊(ICM)から樹立され、未分化状態を保ったまま増殖・培養可能な細胞株であり、ES細胞を用いる遺伝子導入の方法は、マウスについては確立されている(Mansour,S.L. et al., Nature 336:348(1988))。ES細胞としては、既に樹立された細胞株を用いてもよく、例えばマウスの場合、TT2、C57BL/6等のマウス系統由来のES細胞が挙げられる。あるいは、新たに樹立したものを用いてもよい。ES細胞は、常法に従って継代培養すればよい。
ターゲティングベクターの細胞への導入は、通常の方法、例えば、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAE−デキストラン法等によって行うことができる。このうち、簡便で多数の細胞を処理できることから、エレクトロポレーション法が好適に用いられる。エレクトロポレーション法による遺伝子導入の条件は、通常の動物細胞への遺伝子導入の条件を用いればよい。
ターゲティングベクターを導入したES細胞は、常法に従い、フィーダー細胞上で培養することで、単一細胞由来のコロニーを得ることができる。このとき、相同組換えが生じたES細胞では、ベクター中のatg7遺伝子とともにマーカー遺伝子も染色体に組み込まれているため、マーカー遺伝子の発現に基づいて、例えば適当な期間薬剤存在下で培養することにより、目的のES細胞を選択することができる。また、当該コロニーから抽出したゲノムDNAを用いて、PCR法又はサザンハイブリダイゼーション法等により、相同組換えが生じたES細胞を選択することもできる。PCR法の場合は、例えば、相同領域の外側に設計したプライマーと、マーカー遺伝子内に設計したプライマーを用い、ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、所望の長さのバンドが得られるかどうかで判断することができる。サザンハイブリダイゼーション法の場合は、例えば、相同組換えによる切断パターンの変化を観察しやすい制限酵素でゲノムDNAを消化したDNA断片と、相同領域の外側に設計したプローブ及びマーカー遺伝子に設計したプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、目的の位置にバンドが得られるかどうかで判断することができる。
次に、相同組換えを生じたES細胞を用いて、インジェクション法又はアグリゲーション法等の通常のキメラ動物の作出に用いられる方法に従い、キメラ動物を作製する。具体的には、相同組換えを生じたES細胞を胚形成の初期の適当な時期、例えば8細胞期の胚又は胚盤胞に注入し、得られた胚を偽妊娠状態の雌の仮親の子宮内に移植することにより、正常なatg7遺伝子座をもつ細胞とES細胞由来のatg7遺伝子座をもつ細胞とから構成されるキメラ動物が得られる。宿主胚をどのような系統の動物から得るのかの選択は、常法に従い毛色等の表現型によりES細胞由来の細胞と宿主胚由来の細胞とを区別することができるように行えばよい。
キメラ動物の生殖細胞の一部がES細胞由来のatg7遺伝子座をもつ場合には、キメラ個体を正常個体と交配することにより得られた個体群より、全ての組織がES細胞由来のatg7遺伝子座をもつ細胞で構成された個体(Atg7 F/+)を毛色等の判別法により選別することができる。
例えば、J1株のマウスES細胞とC57BL/6J系の宿主胚を用いて得られたキメラマウスをC57BL/6J系と交配する場合は、娩出される産仔は、キメラマウスの生殖細胞が相同組換えES細胞に由来していれば該ES細胞が由来するマウスと同じ野生色(アグーチ)を呈し、宿主胚に由来していれば該宿主胚が由来するマウスと同じ黒色を呈する。
かくして得られた個体は、相同組換えES細胞由来atg7遺伝子座を一方の相同染色体に有するヘテロ接合型である(Atg7 F/+)。このF1ヘテロ接合型の個体同士を交配すれば、F2ヘテロ接合型及びF2ホモ接合型(Atg7 F/F)の個体を得ることができる。atg7遺伝子の機能を組織特異的に欠損させるには、ホモ接合型を用いることが好ましい。
Atg7 F/Fマウスは上述の方法等により作製できるが、既存のAtg7 F/Fマウスを用いてもよく、例えば、Komatsu et al., The Journal of Cell Biology, Vol. 169, No. 3, 2005, 425-434に記載のマウスが挙げられる。
(2)ドーパミン細胞特異的にリコンビナーゼを発現するマウスの作製
ドーパミン細胞特異的にリコンビナーゼを発現するマウスは、例えば、ドーパミン細胞特異的に作用するプロモーターの下流にリコンビナーゼをコードする遺伝子を発現可能に連結したトランスジーンを用いて、公知のトランスジェニックマウスを作製する方法により作製することができる。
まず、ドーパミン細胞特異的に作用するプロモーターにリコンビナーゼをコードする遺伝子を発現可能に連結したトランスジーンを含む発現ベクターを作製する。
Cre−loxPシステムを用いる場合、リコンビナーゼをコードする遺伝子は、Creリコンビナーゼをコードするcre遺伝子を用いればよい。cre遺伝子としては、loxP配列を認識してloxP配列に挟まれたDNA配列を切り出すことができるタンパク質をコードする遺伝子であれば特に制限されないが、好ましくはバクテリオファージP1由来のcre遺伝子が用いられる(GenBank accession No.X03453)。
cre遺伝子の発現を制御するプロモーターとしては、ドーパミン細胞特異的に機能し得るプロモーターであればよく、例えばチロシン水酸化酵素(TH)プロモーターが挙げられる。当該プロモーターにより、Creリコンビナーゼがドーパミン細胞特異的に発現される。なお、「ドーパミン細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現する」とは、ドーパミン細胞においてそれ以外の組織と比較してCreリコンビナーゼを顕著に多く発現することをいう。
発現ベクターとしては、プラスミド、バクテリオファージ、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。発現ベクターには、cre遺伝子の下流にポリAシグナルを含むことが好ましく、また、トランスジーンが導入された細胞の選抜のため、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を含むことが好ましい。
斯かる発現ベクターの調製は、通常のDNA組換え技術により行うことができ、例えば、常法に従いクローニングしたTHプロモーター及びcre遺伝子を利用して、これを適当な制限酵素で切断して得られる断片、又はPCR法などにより増幅して調製したDNA断片等を、合成されたリンカーDNAや薬剤耐性マーカー遺伝子を含む断片等と、前記のような設計に従って適当な順序で結合させればよい。
次に、発現ベクターを公知の手段を用いてマウスに導入する。発現ベクターを動物細胞又は動物個体に導入する方法としては、例えば、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、ウイルスベクターを利用する方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、導入細胞種、発現効率などを考慮して適宜選択すればよい。例えば、受精卵を用いる場合には、直鎖状にした発現ベクターDNAをマウスの前核期受精卵にマイクロインジェクション法により導入し、当該受精卵を偽妊娠状態の雌の仮親に移植し、うまれた子の中から目的遺伝子を発現している個体をPCR法やサザンハイブリダイゼーション法等により確認し、選抜することができる。
かくして得られたF0動物は、cre遺伝子を相同染色体の一方にのみ有するヘテロ接合型(TH−Cre(+/−))である。本発明においては、当該ヘテロ接合型の個体を用いればよい。以下、TH−Cre(+/−)マウスをTH−Creマウスとも称す。
TH−Creマウスは上述の方法等により作製できるが、内在性のドーパミン細胞特異的に作用するプロモーターの下流にcre遺伝子が発現可能に挿入されるように設計したターゲティングベクターを作製し、これを上記同様の相同組換えによりES細胞に導入し、ノックインマウスを作製することでも得ることができる。あるいは、既存のTH−Creマウスを用いてもよく、例えば、Savitt et al., The Journal of Neuroscience, Vol.25, No. 29, 2005, 6721-6728に記載のマウスが挙げられる。
(3)ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスの作製
本発明のドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスは、(1)で得られたリコンビナーゼ標的配列で前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有するマウスと、(2)で得られたドーパミン細胞特異的にリコンビナーゼを発現するマウスを交配することで得ることができる。例えば、(1)のAtg7 F/Fマウスと(2)のTH−Cre(+/−)マウスを交配する場合、得られるF1動物はAtg7 F/+:TH−Cre(+/−)、あるいはAtg7 F/+:TH−Cre(−/−)である。このF1動物同士を交配すれば、F2動物の一部がAtg7 F/F:TH−Cre(+/−)となる。
Atg7 F/F:TH−cre(+/−)マウスは、THプロモーターの働きにより、ドーパミン細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現し、当該Creリコンビナーゼにより染色体上のatg7遺伝子が切り出されるため、ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスとなる。当該マウスは、ドーパミン神経特異的にオートファジーを欠損する。以下、Atg7 F/F:TH−cre(+/−)マウスをAtg7 F/F:TH−creマウスとも称す。
後記実施例に示す通り、本発明のドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損した非ヒト動物は、下記の(1)〜(3)の全ての性質を有する。
(1)加齢に伴い野生型動物に比して運動機能が低下する
(2)ドーパミン細胞にレビー小体様の構造の凝集体を有する
(3)黒質緻密部において野生型動物に比してドーパミン細胞が減少している
(1)〜(3)の性質はパーキンソン病に特徴的な運動障害と2つの病理像を再現するものであることから、本発明の非ヒト動物は、パーキンソン病モデル非ヒト動物として有用である。
後記実施例に示す通り、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、加齢に伴い野生型動物に比して運動機能が低下する。運動機能は、常法に従い、ロタロッド試験、ビーム課題等により評価することができ、例えば、ロタロッド試験では落下潜時の短縮、ビーム課題では後脚をひきずるような運動症状がみられる。ここで、「野生型動物」とは、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物と同系統、かつドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損していない非ヒト動物のことであり、例えば、遺伝子改変を行っていない非ヒト動物、Atg7 F/F非ヒト動物等が挙げられる。野生型動物に比した運動機能の低下が生じる週齢は、動物種により異なり得るが、マウスの場合、100週以降、好ましくは110週以降、更に好ましくは120週以降である。例えば、本発明のパーキンソン病モデルマウスを用いれば、従来寿命内では困難とされた運動障害の観察が可能となる。
後記実施例に示す通り、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、ドーパミン細胞にレビー小体様の構造の凝集体を有する。「レビー小体様の構造の凝集体」とは、レビー小体と同様に細胞質に局在し、内部に繊維状の微細構造を有する球形状の封入体のことをいう。当該凝集体の存在は、例えば、ドーパミン細胞を電子顕微鏡で観察することで確認することができる。また、当該凝集体には、レビー小体の主要構成成分であるα−シヌクレインの他、p62が含まれることが、免疫染色により確認できる。レビー小体の形成は、パーキンソン病に特徴的な病理像の1つであり、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、当該特徴を再現することができる。
後記実施例に示す通り、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、黒質緻密部において、野生型動物に比してドーパミン細胞が減少している。「野生型動物」については、上述の通りである。野生型動物に比したドーパミン細胞の減少が生じる週齢は、動物種により異なり得るが、マウスの場合、特に限定されず、好ましくは100週以降、更に好ましくは110週以降、更に好ましくは120週以降である。ドーパミン細胞の減少は、例えば、免疫染色法により検出することができる。黒質緻密部におけるドーパミン細胞の減少も、パーキンソン病に特徴的な病理像の1つであり、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、当該特徴をも再現することができる。
本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物は、加齢に伴い運動機能低下を生じるというパーキンソン病による運動障害を再現し、レビー小体様の構造の凝集体の形成及びドーパミン神経の特異的な変性というパーキンソン病に必須の2つの病理像をあわせもつ。従って、当該モデル非ヒト動物を用いれば、パーキンソン病治療薬をスクリーニングすることができる。すなわち、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、運動機能、レビー小体様の構造の凝集体及び黒質緻密部のドーパミン細胞から選ばれる1以上を測定すれば、パーキンソン病治療薬をスクリーニングすることができる。測定項目としては、上記のいずれか1以上を測定すればよく、レビー小体様の構造の凝集体及び黒質緻密部のドーパミン細胞を測定することが好ましく、全てを測定するのがさらに好ましい。
本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物に被験物質を投与した場合に、野生型非ヒト動物と比較した時の運動機能低下が改善される、凝集体形成が抑制される及び/又は野生型非ヒト動物と比較した時のドーパミン細胞減少が抑制されれば、その被験物質はパーキンソン病治療薬である。「野生型非ヒト動物」は、上述の通りである。
あるいは、本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物に被験物質を投与した場合に、被験物質を投与していない本発明のパーキンソン病モデル非ヒト動物と比較して、運動機能低下が改善される、凝集体形成が抑制される及び/又はドーパミン細胞減少が抑制されれば、その被験物質はパーキンソン病治療薬である。比較の明確さの点で、被験物質を投与していないパーキンソン病モデル非ヒト動物をコントロールとするのが好ましい。
本発明における被験物質は、パーキンソン病に対する治療効果を予測したい薬物であればよく、特に限定されない。被験物質の投与方法としては、特に制限はなく、投与される動物種や被験物質の特性に応じて適宜選択すればよい。例えば、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、直腸内投与等が挙げられる。被験物質の投与量も、投与される動物種や被験物質の特性に応じて適宜設定すればよい。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 ドーパミン細胞特異的にリコンビナーゼを発現するマウスの作製
ドーパミン細胞特異的に作用するTHプロモーターの下流にリコンビナーゼをコードするマウスとして、Savitt et al., The Journal of Neuroscience, Vol.25, No. 29, 2005, 6721-6728に記載のTH−Creマウスを用いた。当該マウスは、リニアライズされたTH−Creベクターを胚形成初期のB6/SJLF2胚にマイクロインジェクションすることにより作製した。THプロモーターとして既にクローニング済みであったpTH9000プラスミド(Min et al., Brain Res Mol Brain Res, Vol. 27, 1994, 281-289)からプロモーター部分を切り出し、pSP73bベクターの上流にクローニングし、その下流にCreをコードするカセットを連結し、さらに下流にはポリAシグナルを配置した。インジェクションによって生まれた5ラインのマウスの尾尻からDNAを抽出し、Cre配列上に設定したプライマーによってPCRを行い、予想されるPCR断片(300bp)を検出したラインのマウスをTH−Creマウスとして採用した。マウスは病原体の外部から侵入を防ぐ陽圧の飼育室にて一定温度、12時間サイクルの明暗が設定された環境にて系統維持した。
実施例2 ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスの作製
リコンビナーゼ標的配列で前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有するマウスとして、Komatsu et al., The Journal of Cell Biology, Vol. 169, No. 3, 2005, 425-434に記載のAtg7 F/Fマウスを用いた。当該マウスの作製では、リニアライスされたターゲットベクターをエレクトロポレーション法によってTT2 ES細胞に導入し、相同組み換えを誘導した。PCRにて組み換えを確認後、8細胞期胚にマイクロインジェクションを行うことによりキメラマウスを作製した。ターゲットベクターとしてブルースクリプトベクターを用いた。Atg7遺伝子のエキソン14をバクテリオファージ由来のloxP配列で挟んだDNA断片を作製し、同ベクターにクローニングし、同エキソンの上流と下流の相同配列をloxP配列の上流と下流にクローニングし配置した。さらに5’側loxP配列の直前にはneo−poly Aカセットをクローニングし、相同組み換えが起こったES細胞をG418にてセレクションした。インジェクションによって生まれたキメラマウスはC57BL/6Jマウスと掛け合わせ、最終的にサザンブロティングにより予想された相同組み換え(7.5kbバンド)を確認したものについてAtg7 F/Fマウスとして交配に用いた。マウスは病原体の外部から侵入を防ぐ陽圧の飼育室にて一定温度、12時間サイクルの明暗が設定された環境にて飼育した。Atg7 F/Fマウスを実施例1にて作製したTH−Creマウスと交配した結果としてAtg 7 F/+とAtg 7 F/+:TH−Creを得た。さらにAtg 7 F/+とAtg 7 F/+:TH−Creを掛け合わせることにより、Atg 7 F/FあるいはAtg 7 F/F: TH−Creを作製した。Atg 7 F/F: TH−Creマウスは上述のごとくドーパミン細胞特異的にAtg7遺伝子機能が欠損したマウスとして維持管理した。Atg7 F/Fはそれに対する対照として同様に維持管理した。一定の週齢が経過後実験を行った。
実施例3 ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスの運動機能評価(1)
ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスについて、ロタロッド試験により、運動機能の評価を行った。
Atg7 F/F:TH−Creマウス又は比較対照としてのAtg7 F/Fマウスを直径3cmのマウス用回転ローラー上で静置させ、45rpm/300secの一定加速度で回転させた際の落下に要するまでの時間(落下潜時)を測定した。結果を図1に示す(縦軸:落下潜時、横軸:週齢、P**<0.01)。Atg7 F/F:TH−Creマウスは、Atg7 F/Fマウスに比して、加齢に伴い落下潜時が短縮傾向にあり、運動機能の低下が見られた。運動機能の低下は、100週齢以降、特に120週齢で顕著に認められた。
実施例4 ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスの運動機能評価(2)
ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスについて、ビーム課題により、運動機能の評価を行った。
Atg7 F/F:TH−Creマウス又は比較対照としてのAtg7 F/Fマウスを、幅12mmのバランスビーム上で80cmの距離歩行させ、歩行状態を観察した。結果を図2に示す。Atg7 F/F:TH−Creマウスは、後脚を頻回にすべらせて歩行するのが観察された。
実施例5 ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスにおける凝集体検出(1)
120週齢のAtg7 F/F:TH−Creマウスのドーパミン細胞を電子顕微鏡で観察した。具体的には、マウスを5% グルタールアルデヒド/0.1(mol/L) phosphate bufferで環流固定後、脳を取り出し中脳黒質部分を切り出し数ミリ角に細切した。切片はエポン樹脂に埋め込み固定後、70nmの超薄切片を作製した。観察は日立HT7700電子顕微鏡にて行った。結果を図3に示す。ドーパミン細胞の細胞質に球形の凝集体が観察された(図3a)(スケールバー:5μm)。図3b(スケールバー:2μm)は凝集体を拡大したものであり、凝集体内部には繊維状の構造も確認された。
実施例6 ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスにおける凝集体検出(2)
70週齢のAtg7 F/F:TH−Creマウス2個体又は比較対照としてのAtg7 F/Fマウスを4% パラフォルムアルデヒドで環流固定し48時間後20% スクロースに置換した。脳はドライアイスにて急速凍結後、クライオスタットにて30μm厚の浮遊切片を作製した。中脳黒質部分を選択し、一次抗体としてp62(guinea pig)とシヌクレイン(rabbit)に対する抗体を4℃にて24時間反応後、抗guinea pig蛍光二次抗体(Alexa 594),抗rabbit蛍光二次抗体(Alexa 488)を室温にて1時間反応させた。さらにDAPIにより核染色を行い0.1% Tween20/PBSで洗浄後、蛍光マウント剤にて封入した。観察はZeissの共焦点レーザー顕微鏡(LSM710)にて行った。結果を図4に示す。Atg7 F/F:TH−Creマウスでは、p62とシヌクレインが共局在することが確認された一方、Atg7 F/Fマウスでは染色がみられなかった。したがって、Atg7 F/F:TH−Creマウスでは、p62とシヌクレインを含む凝集体の存在が示唆された。
実施例7 ドーパミン神経においてatg7遺伝子の機能が欠損したマウスの黒質緻密部のドーパミン細胞の評価
120週齢のAtg7 F/F:TH−Creマウス又は比較対照としてのAtg7 F/Fマウスを4% パラフォルムアルデヒドで環流固定後、48時間後に20% スクロースに置換した。中脳黒質部分を細切しパラフィン包埋後4μm厚のパラフィン切片を作製した。一次抗体(チロシン水酸化酵素(TH)rabbit抗体)を4℃で一晩反応後、DAB染色にて検出し細胞数を測定した。具体的には、黒質を内側部(SNm)、外側部(SNI)、緻密部(SNc)に分割し、単位面積当たりの細胞数を集計し、その平均値をstudent’s−t検定にて比較した。結果を図5に示す(P**<0.01)。Atg7 F/F:TH−Creマウスでは、パーキンソン病におけるのと同様に、黒質緻密部のドーパミン細胞数が、Atg7 F/Fマウスに比して有意に減少していた。

Claims (3)

  1. ドーパミン神経特異的にatg7遺伝子の機能が欠損したパーキンソン病モデルマウスであって、Creリコンビナーゼ標的配列loxPに前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有し、さらにチロシン水酸化酵素(TH)プロモーターにより発現制御されたcre遺伝子を有し、かつ下記の(1)〜(3)の全ての性質を有することを特徴とするパーキンソン病モデルマウス
    (1)100週齢以降に野生型に比して運動機能が低下する
    (2)ドーパミン細胞にレビー小体様の構造の凝集体を有する
    (3)黒質緻密部において野生型に比してドーパミン細胞が減少している
  2. Creリコンビナーゼ標的配列loxPに前後を挟まれたatg7遺伝子をホモ接合型で有するマウスをTHプロモーターにより発現制御されるcre遺伝子を有するマウスと交配させることを特徴とするパーキンソン病モデルマウスの作製方法。
  3. 請求項1記載のパーキンソン病モデルマウスに被験物質を投与し、運動機能、レビー小体様の構造の凝集体及び黒質緻密部のドーパミン細胞から選ばれる1以上を測定することを特徴とするパーキンソン病治療薬のスクリーニング方法。
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