以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態である管継手の雄継手と雌継手とが分離された状態が半裁断面図にて示されており、図6には、管継手の雄継手と雌継手とが連結された状態が半裁断面図にて示されている。図1及び図6に示されるように、管継手10は、いわゆる迅速継手(カップラー)であり、雄体としての雄継手12と、雌体としての雌継手32とを備えている。図示を省略するが、雄継手12は一方の配管に接続され、雌継手32は他方の配管に接続されている。雌継手32の外周面には、雌継手32と雄継手12とを連結するためのスリーブ(カラー)60が設けられている。雄継手12と雌継手32には、それぞれ先端を対向させた移動バルブ14 、34 が装備されている。
雄継手12は略筒状とされた雄継手本体13を備えている。また、雄継手本体13の内部には係止部材16が嵌め込まれ、この係止部材16にスプリング18を介して移動バルブ14が移動可能に弾着されている。雄継手12の移動バルブ14側が、後述する雌継手32の凹状挿入部50に挿入される。係止部材16は、雄継手本体13の溝に嵌め込まれた止めリング20に係止されることで、雄継手本体13内で固定されている。係止部材16には、スプリング18の内側面を支持する支持部16Aが設けられている。また、雄継手本体13の先端には、内周面が徐々に縮径されて縮径部22が形成されている。移動バルブ14は、先端側が縮径部22の形状に沿って徐々に縮径しており、縮径部22と接触する位置にゴム製のリング状のシール部材24が設けられている。移動バルブ14は、スプリング18によって縮径部22に押圧され、シール部材24が縮径部22に接触している。
移動バルブ14の先端には突部14Aが形成されており、突部14Aが雄継手本体13の先端より突出している。この突部14Aは、雌継手32側の移動バルブ34の突部34Aに突き当てられるように構成されている。また、移動バルブ14の奥側で雄継手本体13の内周側には、流体が通過可能な流路26が形成されている。
また、雄継手本体13の外周には、凹状挿入部50内に挿入されたときに、後述する硬球58を受ける溝状の凹部13Aが形成されている。この凹部13A内に硬球58が納まることによって、雄継手12が凹状挿入部50内で固定される。雄継手本体13の軸方向の移動バルブ14と反対側の端部には、一方の配管(図示省略)が接続される雌ねじ部28が形成されている。
一方、雌継手32は、略筒状とされた雌継手本体33を備えており、雌継手本体33の内部に流路80が構成されている。雌継手32の雌継手本体33には、雄継手12が挿入される凹状挿入部50が形成されている。凹状挿入部50の奥側には、雌継手本体33の内部に係止部材36が嵌め込まれ、この係止部材36にスプリング38を介して移動バルブ34が移動可能に弾着されている。係止部材36は、雌継手本体33の溝に嵌め込まれた止めリング40に係止されることで、雌継手本体33内で固定されている。係止部材36には、スプリング38の内側面を支持する支持部36Aが設けられている。また、凹状挿入部50の挿入口側には、雌継手本体33の内周面が徐々に縮径されて縮径部42が形成されている。
移動バルブ34は、先端側が縮径部42の形状に沿って徐々に縮径しており、縮径部42と接触する位置にゴム製のリング状のシール部材44が設けられている。移動バルブ34は、スプリング38によって縮径部42に押圧され、シール部材44が縮径部42に接触している。移動バルブ34の先端には突部34Aが形成されており、この突部34Aは、雄継手12側の移動バルブ14の突部14Aに突き当てられるように構成されている。
また、凹状挿入部50の内部では、縮径部42より先端側が拡径しており、その拡径部に環状の溝部46が形成され、この溝部46内にOリング48が嵌め込まれている。雌継手本体33の軸方向の係止部材36側の端部(雄継手12との連結側と反対側)には、他の配管(図示省略)が接続される雌ねじ部82が形成されている。
スリーブ(カラー)60は、筒状とされ、雌継手32の雄継手12との連結側に外装されている。スリーブ60は、雌継手本体33に対して軸方向に移動可能とされると共に、雌継手本体33に対して回転可能に構成されている。スリーブ60の内側では、雌継手本体33の外周面に段部52が形成されており、この段部52に略台形断面の孔54が同一周面上に複数形成されている。また、段部52の先端側には周溝56が形成されている。そして、段部52に他の付勢部材としてのコイルスプリング62が嵌められ、コイルスプリング62の一端が雌継手本体33に接触している。また、複数の孔54内にそれぞれロック部材としての硬球58が納められている。硬球58は、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼で形成することができる。雄継手12が凹状挿入部50に挿入されて、硬球58が凹部13Aに収まり、後述するスリーブ60の内周面70に当接された状態になって径方向外側への移動が阻止されることによって、雄継手12が凹状挿入部50内で固定される(図6参照)。
スリーブ60の軸方向中間部の内周側には、段部52に対向して段部64が形成されており、このスリーブ60を雌継手本体33の外側に嵌め込み、コイルスプリング62の他端が段部64の側壁に接触している。これによって、スリーブ60を離脱方向(矢印Aに示す軸方向一方側としての雌ねじ部82の側)に移動するときに、段部64の側壁によりコイルスプリング62を押圧することとなる。また、雌継手本体33の周溝56と対向するスリーブ60の拡径部74に止めリング68の外周を突出させることで、スリーブ60の抜けが防止されている。
図2に示されるように、スリーブ60の離脱方向(図1に示す雌ねじ部82の側)の端部には、段部64の内径よりも大径とされた大径内周部90が形成されている。大径内周部90は、スリーブ60の軸方向中間部の段部64と隣り合う位置まで延在されている。大径内周部90の軸方向奥側の端部と段部64との間には、大径内周部90から半径方向内側に延びた側壁92が形成されている。スリーブ60の大径内周部90の内側には、スリーブ60の離脱方向(図1に示す雌ねじ部82の側)の端部から段部64側に向かって順に、離脱防止リング体94と、移動許容リング体としての第1移動許容リング体100と、他の移動許容リング体としての第2移動許容リング体106が配置されている。
図4(A)、(B)に示されるように、離脱防止リング体94は、円形状の環状部94Aと、環状部94Aの周方向の一部に形成されると共に半径方向外側に突出する規制部としての突起部94Bと、を備えている。突起部94Bは、環状部94Aの周方向における略180°の位置(対称位置)の2箇所に設けられている。突起部94Bは、図4(A)に示す離脱防止リング体94の軸方向に沿って切断した断面視にて、外面が略半円状に湾曲された湾曲面を備えている。本実施形態では、突起部94Bは、第1移動許容リング体100の後述する溝部102の側に、半径方向外側に向かって径が拡大する湾曲面を備えている。また、突起部94Bは、図4(B)に示す離脱防止リング体94の正面視にて、略矩形状に形成されている。図4(A)に示す離脱防止リング体94の軸方向に沿って切断した断面視にて、突起部94Bは、環状部94Aの厚さよりも厚く形成されており、環状部94Aの側に突起部94Bの底部94Cが設けられている。なお、突起部94Bは、1個でも、2個以上の複数でも構わない。
図2に示されるように、離脱防止リング体94の突起部94Bの最大外径は、スリーブ60の大径内周部90の内径よりも小さい。雌継手本体33の段部52の雌ねじ部82側(図1参照)の端部には、段部52から雌継手本体33の外周面33Aの側に延びた側壁52Aが形成されている。離脱防止リング体94の底部94Cと環状部94Aとの凹み部は、雌継手本体33の外周面33Aと側壁52Aとの角部に係止されており、底部94C、環状部94Aと、外周面33A、側壁52Aとが接着されている。これにより、離脱防止リング体94が雌継手本体33に固定されている。その際、スリーブ60が雌継手本体33の後述する固定位置P1に配置された状態で、離脱防止リング体94の突起部94Bの一部がスリーブ60の外側に露出している。離脱防止リング体94は、樹脂製又は金属製であり、更に着色したほうが好ましい。
図2に示されるように、第1移動許容リング体100は、離脱防止リング体94と僅かな間隔をおいて配置されている。第1移動許容リング体100は、円形状の環状体とされており、厚み方向(半径方向と直交する方向)の両側に側壁100A、100Bを備えている(図5(B)参照)。側壁100Aは、離脱防止リング体94側に配置されており、側壁100Bは、第2移動許容リング体106側に配置されている。第1移動許容リング体100の外径は、スリーブ60の大径内周部90の内径よりも僅かに小さい。第1移動許容リング体100の外周面には、周溝100Cが形成されている(図5(B)参照)。また、スリーブ60の大径内周部90には、周溝90Aが形成されている。周溝100Cと周溝90AにC型の止め輪110が係止されることで、スリーブ60に対して第1移動許容リング体100が止め輪110に沿って回転可能とされている。
本実施形態では、第1移動許容リング体100の側壁100Aが離脱防止リング体94の突起部94Bに当たる(接触する)ことで、スリーブ60の離脱方向(雌ねじ部82側)の後述する中間位置P3への移動が規制されるようになっている(図6参照)。
図3及び図5(B)に示されるように、第1移動許容リング体100の内周面の周方向の一部には、突起部94Bが挿入可能な第1移動許容部としての溝部102が形成されている。溝部102は、第1移動許容リング体100の内周面から半径方向外側に凹んだ形状とされている。溝部102は、第1移動許容リング体100の周方向における略180°の位置(対称位置)の2箇所に設けられている。本実施形態では、溝部102の内径は、大径内周部90の内径よりも小さく、溝部102と大径内周部90との間に段差が設けられている(図2参照)。溝部102は、離脱防止リング体94の突起部94Bと接触しない構成とされ、突起部94Bが溝部102に挿入されることで、スリーブ60の固定位置P1から離脱方向の中間位置P3への移動が許容されるようになっている(図8(A)参照)。なお、溝部102の形成は、前記の突起部94Bの数量及び着脱操作性を加味し、2箇所でなくてもよい。また、本実施形態では、溝部102の周方向の幅は、突起部94Bの周方向の幅よりも若干大きい構成とされているが、操作性を優先させ、溝部102の周方向の幅を更に大きくすることで、操作性を向上させることも可能である。
図5(B)に示されるように、第1移動許容リング体100の側壁100B(第2移動許容リング体106側の側壁100B)には、厚み方向に凹んだ収容溝100Dが形成されている。収容溝100Dは、第1移動許容リング体100の周方向の約1/6の範囲に形成されている。収容溝100Dには、付勢部材としてのスプリング104が収容されている。スプリング104の一端部には、第2移動許容リング体106の後述する側壁106Aに設けられた突起109が挿入されている。突起109は、矩形の平板状とされている。また、第1移動許容リング体100の側壁100Bには、収容溝100Dの反対側の位置に突起103が設けられている。突起103は、矩形の平板状とされている。第1移動許容リング体100は、樹脂又は金属で形成されている。
図2に示されるように、第2移動許容リング体106は、第1移動許容リング体100と接触するように配置されている。第2移動許容リング体106は、円形状の環状体とされており、厚み方向(半径方向と直交する方向)の両側に側壁106A、106Bを備えている(図5(A)参照)。側壁106Aは、第2移動許容リング体106の側壁100Bと接触するように配置されており、側壁106Bは、スリーブ60の側壁92と接触している。第2移動許容リング体106の外径は、スリーブ60の大径内周部90の内径よりも僅かに小さい。側壁106Bには、凹部106Cに嵌め込まれた突起107が設けられている。スリーブ60の側壁92には、凹部92Aが形成されており、突起107が凹部92Aに嵌め込まれることで、第2移動許容リング体106がスリーブ60に固定されている。なお、図2では、第2移動許容リング体106がスリーブ60に固定される構成を分かりやすくするために、凹部106C、突起107、及び凹部92Aが示されているが、凹部106C、突起107、及び凹部92Aは、実際には、別の箇所に複数(例えば、2個)設けられている(図5(A)参照)。なお、突起107は、第2移動許容リング体106に一体成形されたものでも構わない。
本実施形態では、第2移動許容リング体106の側壁106Aが離脱防止リング体94の突起部94Bに当たる(接触する)ことで、スリーブ60の中間位置P3から離脱方向(雌ねじ部82側)の後述する離脱位置P2への移動が規制されるようになっている(図8参照)。
図3及び図5(A)に示されるように、第2移動許容リング体106の内周面の周方向の一部には、突起部94Bが挿入可能な第2移動許容部としての溝部(他の溝部)108が形成されている。溝部108は、第2移動許容リング体106の内周面から半径方向外側に凹んだ形状とされている。溝部108は、第2移動許容リング体106の周方向における略180°の位置(対称位置)の2箇所に設けられている。本実施形態では、溝部108の内径及び周方向の幅は、第1移動許容リング体100の溝部102の内径及び周方向の幅とほぼ同じに形成されている。溝部108は、離脱防止リング体94の突起部94Bと接触しない構成とされ、突起部94Bが溝部108に挿入されることで、スリーブ60の中間位置P3から離脱方向の離脱位置P2への移動が許容されるようになっている(図10(A)参照)。
図5(A)に示されるように、第2移動許容リング体106の側壁106A(第1移動許容リング体100側の側壁106A)には、厚み方向に凹んだ収容溝106Dが形成されている。収容溝106Dは、第2移動許容リング体106の周方向の約1/6の範囲に形成されている。収容溝106Dには、付勢部材としてのスプリング104が収容されている。スプリング104の一端部には、第1移動許容リング体100の側壁106Bの突起103が挿入されている。第2移動許容リング体106は、樹脂又は金属で形成されている。
図3に示されるように、第2移動許容リング体106の収容溝106Dのスプリング104によって、第1移動許容リング体100の突起103が収容溝106Dの長手方向の端壁と接触するように押圧されている。また、第1移動許容リング体100の収容溝100Dのスプリング104によって、第2移動許容リング体106の突起109が収容溝100Dの長手方向の端壁と接触するように押圧されている。これにより、スリーブ60に固定された第2移動許容リング体106に対して、第1移動許容リング体100は、スプリング104により第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108とが対向しない位置に回転するようになっている。本実施形態では、第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108とは、約45°ずれている。第1移動許容リング体100の突起103がスプリング104を圧縮させると共に、第2移動許容リング体106の突起109がスプリング104を圧縮させることで、第2移動許容リング体106と第1移動許容リング体100とが相対的に約45°回転するようになっている。離脱防止リング体94の突起部94Bの厚みは、分離作業時におけるスプリング104の付勢力による第1移動許容リング体100の戻りを防止すべく、第2移動許容リング体106の厚みよりも厚くすることが好ましい。
図1に示されるように、スリーブ60の内周には、硬球58の当たり面となる内周面70が構成されている。内周面70は、段部64の内径よりも小さい内径になるように形成されている。硬球58が内周面70に当たっているときには、硬球58は雌継手本体33の径方向内側へ押されて、雌継手本体33の内周面から内側へ突出している(図1及び図6参照)。雄継手12が凹状挿入部50に挿入されて硬球58が凹部13A内に収まっているときに、硬球58が内周面70により押されると、雄継手12と雌継手32の抜け方向の相対移動が阻止され、連結状態が維持される(図6参照)。このときのスリーブ60の位置を固定位置P1とする(図1及び図6参照)。
また、スリーブ60は、筒軸方向(雄継手12の挿入方向)に移動可能とされており、雌継手本体33に対して雌ねじ部82側(矢印A方向)へ移動して、硬球58を拡径部74に対応する位置に配置させることができる(図11参照)。このとき、硬球58は雌継手本体33の内周から突出しないように径方向外側へ移動可能となる。硬球58が雌継手本体33の径方向外側へ移動すると、硬球58が凹部13Aから外れ、雄継手12と雌継手32の抜け方向の相対移動が許容される。このときのスリーブ60の位置を離脱位置P2とする(図11参照)。
図示を省略するが、スリーブ60の外周面には、ユーザーがスリーブ60を指でつかんで移動しやすくするために、細かい凹凸が形成されていることが一般的である。
スリーブ60は、通常時にはコイルスプリング62に付勢されて、図1及び図6に示す固定位置P1に配置されている。スリーブ60は、雌継手本体33に対して離脱方向の中間位置P3を介して離脱位置P2に移動可能とされている(図8(A)及び図10(A)参照)。スリーブ60が固定位置P1に配置されているときには、図6に示されるように、第1移動許容リング体100の側壁100Aが離脱防止リング体94の突起部94Bに当たる(接触する)ことで、スリーブ60の矢印A方向、すなわち、中間位置P3へ向かう方向(離脱方向)への移動を阻止している。
また、図11(A)に示されるように、離脱防止リング体94の突起部94Bが、第2移動許容リング体106の溝部108に挿入された際には、離脱防止リング体94の突起部94Bに規制されず、離脱位置P2へ移動可能とされている。
図2に示されるように、スリーブ60の外周面には、第1移動許容リング体100の溝部102と対応する位置に少なくとも一箇所の目印114が設けられている(図8等参照)。本実施形態では、スリーブ60の外周面から突出する突起状の目印114とされている。これにより、スリーブ60の目印114により第1移動許容リング体100の溝部102を離脱防止リング体94の突起部94Bと対応する位置に回転させることが容易となる。なお、本実施形態では、目印114は、2つの溝部102と対応する位置にそれぞれ設けられているが、目印114は、2つの溝部102のいずれか一方と対応する位置に最低一箇所設けてもよい。また、目印の形態は、変更可能であり、例えば、スリーブ60の外周面に色付けしたもの、凹部、刻印などを施したものなどでもよい。また、本実施形態では、離脱防止リング体94を着色しておくことで、突起部94Bの位置を視認しやすくしてもよい。
次に、本実施形態の管継手10の作用について説明する。
図6に示されるように、雄継手12と雌継手32とが結合された状態では、スリーブ60は、コイルスプリング62の力により固定位置P1に配置されている。管継手10では、スリーブ60の内周面70に押されて硬球58が雄継手本体13の凹部13A内に納まり、雌継手32と雄継手12とが連結されている。雄継手12は、雌継手32のOリング48によってシールされる。この状態では、移動バルブ14のシール部材24と縮径部22との間、及び移動バルブ34のシール部材44と縮径部42との間に隙間が形成され、雄継手12と雌継手32の流路26、80が連通している。これにより、この流路26、80を圧力下で流体が通過することになる。
その際、雌継手本体33に対するスリーブ60の回転位置により、第1移動許容リング体100の側壁100Aが離脱防止リング体94の突起部94Bと対応する位置に配置されていることで、スリーブ60の軸方向の移動がロックされる。この状態では、第1移動許容リング体100の側壁100Aが離脱防止リング体94の突起部94Bに当たる(接触する)ことで、スリーブ60の矢印A方向、すなわち、中間位置P3へ向かう方向(離脱方向)への移動が規制される(阻止される)。これにより、意図しない雌継手32と雄継手12の分離を防止又は抑制することができる。
一方、雄継手12と雌継手32を分離する際には、図2及び図7に示されるように、スリーブ60を周方向に回転させて、第1移動許容リング体100の溝部102を離脱防止リング体94の突起部94Bと対応する位置に移動させる。その際、図2に示されるように、スリーブ60の外周面の目印114は、第1移動許容リング体100の溝部102と対応する位置に設けられているため、目印114と離脱防止リング体94の突起部94Bとの位置を合わせることで、溝部102と突起部94Bとの位置を合わせる。そして、図8(A)、(B)に示されるように、コイルスプリング62の力に抗して、第1移動許容リング体100の溝部102を離脱防止リング体94の突起部94Bに挿入させつつスリーブ60を固定位置P1から矢印A(図2参照)に示す中間位置P3に移動させる(スリーブ60を押す)。
この状態では、スリーブ60に固定された第2移動許容リング体106に対して第1移動許容リング体100が、スプリング104の力により、第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108とが対向しない位置に回転している(図7参照)。このため、図8(A)に示されるように、第2移動許容リング体106の側壁106Aが離脱防止リング体94の突起部94Bに当たる(接触する)ことで、スリーブ60の中間位置P3から離脱方向の離脱位置P2への移動が規制される。このため、雄継手12と雌継手32との連結が不用意に解除されることを効果的に防止又は抑制することができる。
さらに、図9に示されるように、スリーブ60を中間位置P3に移動させた状態(押した状態)で、スプリング104の力に抗して、スリーブ60を雌継手本体33に対して矢印B方向(図8参照)に約45°回転させる。その際、離脱防止リング体94の突起部94Bが第1移動許容リング体100の溝部102に挿入されているため、スリーブ60を回転させると、スリーブ60に固定された第2移動許容リング体106と、第1移動許容リング体100とが相対的に回転する。これにより、図9及び図10に示されるように、第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108とが対向する位置に移動する。
そして、図11に示されるように、第2移動許容リング体106の溝部108を離脱防止リング体94の突起部94Bに挿入させつつ、このままスリーブ60を中間位置P3から矢印A(図10参照)に示す離脱位置P2に移動させる。これにより、図12に示されるように、管継手10では、硬球58が拡径部74内に退避可能となり、硬球58を凹部13Aから離脱させて、雄継手12を凹状挿入部50から引き抜くことができる。その後、スリーブ60は、コイルスプリング62により付勢されて固定位置P1へ戻る。
雄継手12と雌継手32とを分離すると、図1に示されるように、雄継手12の移動バルブ14がスプリング18で縮径部22に押圧され、シール部材24と縮径部22との当り面でシールされる。また、雌継手32の移動バルブ34がスプリング38で縮径部42に押圧され、シール部材44と縮径部42との当り面でシールされる。
一方、雄継手12と雌継手32とを結合させるには、上記の分離操作と逆の操作を行えばよい。図示を省略するが、雄継手12を雌継手32の凹状挿入部50内に挿入すると、雄継手本体13の先端に複数の硬球58が乗り上げ、雄継手12を奥まで挿入すると、移動バルブ14,34が突き合わされて突部14Aと突部34Aが押圧され、移動バルブ14,34はそれぞれスプリング18,38の力に抗して押し込まれる。
上記の管継手10では、スリーブ60に固定された第2移動許容リング体106に対して第1移動許容リング体100は、スプリング104の力により、第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108とが対向しないロック状態の位置にある(図1等参照)。このため、雄継手12と雌継手32との連結を解除するには、スプリング104の力に抗してスリーブ60を約45°回転させ、第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108との位置を合わせる必要がある(図9参照)。言い換えると、スプリング104の力に抗して強制的にスリーブ60を約45°回転させ、第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108との位置を合わせない限り、雄継手12と雌継手32とを分離することができない。また、離脱防止リング体94は、スリーブ60の大径内周部90の内側に配置されているため、外力によりスリーブ60と離脱防止リング体94とが相対的に回転することが抑制される。このため、構造を複雑化することなく、スリーブ60が不用意に離脱方向へ移動することを効果的に防止又は抑制することができる。すなわち、想定外での雄継手12と雌継手32との分離を限りなくゼロに近づけることができる。
また、上記の管継手10では、離脱防止リング体94の突起部94Bは、第1移動許容リング体100の溝部102の側に、半径方向外側に向かって径が拡大する湾曲面を備えている(図2参照)。これにより、スリーブ60を固定位置P1から離脱方向の中間位置P3に移動させる際に、突起部94Bの湾曲面から溝部102に挿入されるため、突起部94Bが第1移動許容リング体100の溝部102にスムーズに挿入される。
また、上記の管継手10では、離脱防止リング体94の一部が、スリーブ60の軸方向(離脱方向)の外側に露出している。これにより、離脱防止リング体94の突起部94Bの位置を確認することが容易となり、スリーブ60の回転により、離脱防止リング体94の突起部94Bを第1移動許容リング体100の溝部102の位置に合わせることが容易となる。また、離脱防止リング体94が半径方向外側にスリーブ60より飛び出しておらず、スリーブ60に覆われた形態であるため、外力による離脱防止リング体94の破損が回避できる。
さらに、上記の管継手10では、スリーブ60の外周面における第1移動許容リング体100の溝部102と対応する位置の少なくとも一箇所に目印114が設けられている。このため、スリーブ60の目印114により第1移動許容リング体100の溝部102を離脱防止リング体94の突起部94Bと対応する位置に回転させることが容易となる。
図13には、第1比較例の管継手200のスリーブ204付近が拡大断面図にて示されている。図13に示されているように、管継手200では、雌継手202の雌継手本体203の外周面にねじ孔203Aが設けられており、後付によりピン208の雄ねじ部(図示省略)がねじ孔203Aに螺合されている。スリーブ204の離脱方向(矢印A方向)の端部には、スリーブ204の軸方向に沿って切り欠かれた解除溝206が形成されており、ピン208が解除溝206に挿入可能とされている。解除溝206は、スリーブ204の周方向の一部に形成されている。
上記の管継手200では、スリーブ204の回転により解除溝206をピン208と対応しない位置に配置したときは、スリーブ204の離脱方向(矢印A方向)の端面204Aがピン208に当たることで、スリーブ204の離脱方向への移動が規制される。また、スリーブ204の回転により、解除溝206をピン208の位置に対応させることで、解除溝206にピン208が挿入され、スリーブ204を離脱方向(矢印A方向)に移動させることができる。
図14には、第2比較例の管継手220のスリーブ204付近が拡大断面図にて示されている。図11に示されているように、管継手220は、雌継手222の雌継手本体223の外周面に孔部223Aが設けられており、孔部223Aにボール(鋼球)228が嵌め込まれている。孔部223Aは、ボール228の湾曲面の形状に合わせて形成されており、後付によりボール228が孔部223Aに圧入可能な寸法に形成されている。スリーブ204の端部には、ボール228が挿入される解除溝206が設けられている。
上記の管継手220では、スリーブ204の離脱方向(矢印A方向)の端面204Aがボール228に当たることで、スリーブ204の離脱方向への移動が規制される。また、スリーブ204の回転により、解除溝206をボール228の位置に対応させることで、解除溝206にボール228が挿入され、スリーブ204を離脱方向(矢印A方向)に移動させることができる。
上記のような管継手200、220では、ピン208又はボール228が他の部材と接触することにより、スリーブ204と雌継手本体203、223とが相対的に回転しやすく、ピン208又はボール228が解除溝206と対応する位置に回転する可能性がある。また、管継手200、220では、他の部材と接触したときの外力により、ピン208又はボール228が雌継手本体203、223から外れる場合がある。また、ねじ孔203Aの加工や、孔部223Aの加工の工数が大きくなる。
これに対して、本実施形態の管継手10では、強制的にスプリング104の力に抗してスリーブ60を約45°回転させ、第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108との位置を合わせない限り、雄継手12と雌継手32とを分離することができない。このため、想定外での雄継手12と雌継手32との分離を限りなくゼロに近づけることができる。
また、本実施形態の管継手10では、スリーブ60の大径内周部90の内側に離脱防止リング体94が配置されており、離脱防止リング体94がスリーブ60により覆われている。このため、離脱防止リング体94とスリーブ60とが相対的に回転することが抑制される。また、スリーブ60により離脱防止リング体94が他の部材と接触することが抑制され、外力により離脱防止リング体94が雌継手本体33から外れることを防止又は抑制することができる。また、本実施形態の管継手10では、スリーブ60の内周側に第1移動許容リング体100の溝部102と第2移動許容リング体106の溝部108が設けられているため、管継手200、220のスリーブ204に外側に露出する解除溝206を設けた構成と比較して、スリーブ60の外面から水、塵などが入り込むことを抑制することができる。
なお、本実施形態では、離脱防止リング体94の突起部94Bは、第1移動許容リング体100の溝部102の側に湾曲面を備えているが、本発明は、この構成に限定されず、例えば、離脱防止リング体94の突起部94Bは、第1移動許容リング体100の溝部102の側にテーパ面を備える構成でもよい。
また、本実施形態では、離脱防止リング体94の突起部94Bの形状、位置、及び数は、変更可能である。例えば、離脱防止リング体94の突起部94Bは、側面視にて、略半円状の湾曲面を備えているが、本発明はこの形状に限定されず、例えば、突起部は、側面視にして略矩形状としてもよい。また、離脱防止リング体の突起部の形状、位置、及び数に合わせて、第1移動許容リング体の溝部や第2移動許容リング体の溝部の形状、位置、及び数も変更可能である。
また、本実施形態では、スリーブ60に固定された第2移動許容リング体106に溝部108が設けられているが、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、第2移動許容リング体を設けずに、スリーブと一体の部位に溝部を設ける構成でもよい。
また、本実施形態の管継手10の構成に代えて、離脱防止リング体の周方向の一部に凹溝(規制部以外の部位)を設け、第1移動許容リング体の周方向の一部に凹溝に挿入可能な第1移動許容部としての第1凸部を設けると共に、第2移動許容リング体又はスリーブの周方向の一部に凹溝に挿入可能な第2移動許容部としての第2凸部を設ける構成でもよい。
また、本実施形態では、管継手10は、雌継手本体33と雄継手本体13とを備えているが、雌継手本体33及び雄継手本体13の構成(例えば、移動バルブ14、34、雌ねじ部28、82など)は、変更可能である。例えば、雄継手(雄継手本体)と雌継手(雌継手本体)は、共に移動バルブを有しない構成でもよいし、雄継手(雄継手本体)と雌継手(雌継手本体)のいずれか一方が、移動バルブを有しない構成でもよい。また、例えば、雄継手(雄継手本体)、雌継手(雌継手本体)の他の配管との接続部も、雌ねじ部28、82に限らず、雄ねじやフランジ形状などの接続部に変更可能である。